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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】戸開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/643 20150101AFI20240524BHJP
   E05D 15/06 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
E05F15/643
E05D15/06 119
E05D15/06 125Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020146753
(22)【出願日】2020-09-01
(65)【公開番号】P2022041518
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】奥村 勝之
(72)【発明者】
【氏名】津守 達啓
(72)【発明者】
【氏名】管藤 駆
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-62939(JP,U)
【文献】特開2010-116710(JP,A)
【文献】特開2000-104449(JP,A)
【文献】実開昭48-66328(JP,U)
【文献】国際公開第93/23324(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108756626(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00 - 15/79
E05D 15/00 - 15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸パネルの戸幅方向両側の上端部に連結される第1被ガイド部材及び第2被ガイド部材をガイドし、該引戸パネルを戸幅方向にスライド自在に吊下保持する上レールと、前記第1被ガイド部材に連結され、該第1被ガイド部材を戸幅方向にスライドさせる駆動機構と、を備えており、
前記駆動機構は、戸幅方向に離間した位置に設けられる第1回転車及び第2回転車と、これら第1回転車及び第2回転車のそれぞれに巻き掛けられ、前記第1被ガイド部材に連結された紐状伝動体と、該紐状伝動体に駆動を伝達する駆動部と、を備えており、
前記上レールは、前記引戸パネルの予め設定された最大戸幅の概ね2倍の長さが最長とされ、この最長の上レールの長手方向一方側の第1半部に前記駆動機構が固定されていることを特徴とする戸開閉装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記最長の上レールの長手方向他方側の第2半部は、切断可能とされていることを特徴とする戸開閉装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1回転車が前記最長の上レールの第1半部の長手方向一方側の第1端部に位置し、前記第2回転車が前記最長の上レールの第1半部の長手方向他方側の第2端部に位置するように設けられていることを特徴とする戸開閉装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記上レールには、前記第1被ガイド部材及び前記第2被ガイド部材を受け入れるガイド溝が下向きに開口するように設けられており、
前記駆動機構は、前記ガイド溝の溝底を区画する溝底板状部上に固定されていることを特徴とする戸開閉装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記駆動機構よりも上下方向に沿う寸法が大とされ、前記上レールの固定対象に固着具によって固定される固定具が前記上レールの溝底板状部上に長手方向に沿って間隔を空けて複数箇所に取り付けられることを特徴とする戸開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸パネルを開閉する戸開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、モータの回転駆動を伝達して引戸を開閉する戸開閉装置が知られている。
例えば、下記特許文献1には、引戸が吊り下げられるレールベースと、引戸を駆動するモータと、このモータによって回転される駆動プーリと、この駆動プーリと従動プーリとに掛けられたタイミングベルトと、を備えた引戸駆動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-33824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された引戸駆動装置は、モータ及び駆動プーリがレールベースのうち戸袋内に位置する部分に設置され、従動プーリがレールベースのうち戸袋外に位置する部分に設置されている。そのため、戸幅寸法が異なる引戸に適用する場合には、モータ及び駆動プーリや従動プーリの設置位置を変更したり、タイミングベルトの長さを変更したりする必要が生じ、更なる改善が望まれる。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、汎用性を向上し得る戸開閉装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る戸開閉装置は、引戸パネルの戸幅方向両側の上端部に連結される第1被ガイド部材及び第2被ガイド部材をガイドし、該引戸パネルを戸幅方向にスライド自在に吊下保持する上レールと、前記第1被ガイド部材に連結され、該第1被ガイド部材を戸幅方向にスライドさせる駆動機構と、を備えており、前記駆動機構は、戸幅方向に離間した位置に設けられる第1回転車及び第2回転車と、これら第1回転車及び第2回転車のそれぞれに巻き掛けられ、前記第1被ガイド部材に連結された紐状伝動体と、該紐状伝動体に駆動を伝達する駆動部と、を備えており、前記上レールは、前記引戸パネルの予め設定された最大戸幅の概ね2倍の長さが最長とされ、この最長の上レールの長手方向一方側の第1半部に前記駆動機構が固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る戸開閉装置は、上述のような構成としたことで、汎用性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)、(b)は、本発明の一実施形態に係る戸開閉装置の一例を模式的に示す一部を省略した一部破断概略正面図である。
図2】同戸開閉装置の一部破断概略側断面図である。
図3】同戸開閉装置の一部を省略した一部破断概略斜視図である。
図4】同戸開閉装置の一部を省略した一部破断概略斜視図である。
図5】同戸開閉装置の一部を省略した一部破断概略斜視図である。
図6】(a)~(c)は、同戸開閉装置の一部を省略した概略斜視図である。
図7】(a)、(b)は、同戸開閉装置の一部を省略した一部破断概略斜視図である。
図8】(a)は、同戸開閉装置の一部を省略した概略分解斜視図、(b)は、同戸開閉装置の一部を省略した一部破断概略正面図である。
図9】(a)は、同戸開閉装置の一部を省略した一部破断概略分解斜視図、(b)~(d)は、同戸開閉装置の一部を省略した一部破断概略正面図である。
図10】(a)、(b)は、同戸開閉装置の一変形例を模式的に示す一部を省略した一部破断概略正面図である。
図11】(a)~(c)は、同戸開閉装置の他の変形例を模式的に示す一部を省略した一部破断概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
また、以下の実施形態では、本実施形態に係る戸開閉装置を施工した状態を基準として上下方向等の方向を説明する。
【0010】
図1図11は、本実施形態に係る戸開閉装置の一例及び変形例を模式的に示す図である。
本実施形態に係る戸開閉装置1は、図1(a)、(b)に示すように、引戸パネル9の上端部9aに連結される被ガイド部材29をガイドし、この引戸パネル9を戸幅方向にスライド自在に吊下保持する上レール10を備えている。また、戸開閉装置1は、被ガイド部材29に連結され、被ガイド部材29を戸幅方向にスライドさせる駆動機構20を備えている。このような構成とすれば、駆動機構20を駆動すれば、被ガイド部材29が戸幅方向に移動され、引戸パネル9を開閉(開放及び閉鎖)することができる。つまり、引戸パネル9を自動ドアとして機能させることができる。
【0011】
また、戸開閉装置1は、上レール10が固定される固定対象としての上枠3を備えている。この戸開閉装置1は、上枠3を含む戸枠2と引戸パネル9とによって引戸装置を構成するものであってもよい。また、戸開閉装置1の設置箇所としては、戸建住宅や集合住宅等の一般住宅であってもよく、宿泊施設や医療施設、福祉施設等の公共的な施設や、事務所等の商業施設、各種店舗等、種々の箇所に設置可能である。
本実施形態では、一枚の引戸パネル9を片引き状に建て付けた例を示している。図例では、引戸パネル9を袖壁納め状に建て付けた例を示しているが、戸袋納めやアウトセット納め等の適宜の納め態様で建て付け可能である。
【0012】
戸枠2は、建物の壁体に設けられた開口部に設置される。この戸枠2は、引戸パネル9によって開閉される出入口8の上側を区画する上枠3(上レール10)と、引戸パネル9の戸先側に配される戸先側縦枠4と、引戸パネル9の戸尻側に配される戸尻側縦枠5と、中方立(中間縦枠)6と、を備えている。中方立6は、図示省略の袖壁の出入口8側端部に沿うように配され、戸先側縦枠4とによって出入口8の開口幅方向両側を区画する。なお、上枠3は、天井に付設状や埋込状に設けられるものであってもよく、垂れ壁の下端部に沿うように設けられるものであってもよい。また、出入口8の下側は、床や適宜の下枠によって区画されるものでもよい。
【0013】
上枠3は、図1(a)に示すように、戸幅方向に長尺状とされている。この上枠3の長さ寸法は、引戸パネル9の戸幅(後記する最大戸幅)W1(図1(b)参照)の概ね2倍程度の寸法とされている。また、上枠3は、図2に示すように、厚さ方向が上下方向となるように配される。また、この上枠3は、袖壁側に配される袖壁側部位の見込寸法(戸厚方向に沿う寸法)が出入口8側に配される出入口8側部位の見込寸法よりも小とされている(図5も参照)。
また、この上枠3には、後記する駆動機構20の上側部位を受け入れる受入溝3aが設けられている。このような構成とすれば、駆動機構20を設けた上レール10の位置合わせを容易に行うことができる。受入溝3aは、下方側に向けて開口し、上枠3の全長に亘って延びるように設けられている。なお、この上枠3は、まぐさ等の適宜の上枠下地にねじや釘等の固着具によって固定されるものであってもよい。
【0014】
戸先側縦枠4、戸尻側縦枠5及び中方立6は、図1(a)に示すように、戸高方向(上下方向)に長尺状とされている。これら戸先側縦枠4、戸尻側縦枠5及び中方立6の長さ寸法は、引戸パネル9の戸高寸法に、駆動機構20を含む上レール10や上枠3の上下方向に沿う寸法を足し合わせた寸法と概ね同寸法とされている。また、これら戸先側縦枠4、戸尻側縦枠5及び中方立6は、厚さ方向が戸幅方向となるように配される。戸尻側縦枠5及び中方立6の見込寸法は、戸先側縦枠4の見込寸法よりも小とされている(図2参照)。
戸先側縦枠4及び戸尻側縦枠5は、柱等の適宜の縦枠下地に固着具によって固定されるものであってもよい。また、これら戸先側縦枠4及び戸尻側縦枠5と上枠3とは、三方枠状に組付けられた状態で縦枠下地及び上枠下地に固定されるものであってもよい。図例では、これら戸先側縦枠4及び戸尻側縦枠5の上端部の互いに向き合う見込面を上枠3の長手方向両側の各端面に突き合わせ、これら戸先側縦枠4及び戸尻側縦枠5と上枠3とを縦勝状に組付けた例を示している。
【0015】
また、これら戸先側縦枠4及び戸尻側縦枠5の互いに向き合う見込面に、引戸パネル9の戸幅方向両側の各端部(戸先側端部及び戸尻側端部)を受け入れる戸じゃくり溝を設けた構成としてもよい。
中方立6は、上端部が上枠3に固定され、下端部が床に固定されるものであってもよい。なお、この中方立6の引戸パネル9側の端部に、引戸パネル9の厚さ方向一方面に擦るように接するモヘア等の隙間遮蔽部材を設けた構成としてもよい。また、戸枠2としては、上記したような構成とされたものに限られず、その他、種々の構成とされたものであってもよい。
【0016】
引戸パネル9は、一方向(上下方向)に長尺な略矩形平板状とされている。この引戸パネル9の戸高寸法(長さ寸法)は、当該引戸パネル9によって開閉される出入口8の開口高に応じた寸法であればよく、標準的な戸高寸法、例えば、1800mm~2100mm程度でもよい。また、引戸パネル9は、戸高寸法が天井高と略同高さ、例えば、2300mm~3000mm程度とされたハイドアを構成するものでもよい。また、引戸パネル9の戸厚寸法は、20mm~40mm程度でもよい。
また、この引戸パネル9の戸幅寸法は、予め設定された最大戸幅W1とされている。この最大戸幅W1は、上記したような種々の設置箇所に対応可能なように、例えば、1200mm~1800mm程度であってもよい。この引戸パネル9は、室内に設置する場合には、一般的な室内引戸として適用される木質系材料や金属系材料等から形成された枠状芯材を含むパネル芯材に表面材を貼着した構成とされたいわゆるフラッシュパネル等の比較的に軽量なパネルであってもよい。この引戸パネル9としては、このようなフラッシュパネルに限られず、設置箇所等に応じて適宜の構成とされたものであってもよい。
【0017】
この引戸パネル9の戸幅方向一方側となる戸先側の上端部9aには、被ガイド部材29を構成する第1被ガイド部材29Aが連結され、戸幅方向他方側となる戸尻側の上端部9aには、被ガイド部材29を構成する第2被ガイド部材29Bが連結されている。これら第1被ガイド部材29A及び第2被ガイド部材29Bは、互いに概ね同様の構成とされている。これら第1被ガイド部材29A及び第2被ガイド部材29Bには、図2に示すように、引戸パネル9の取付部に取り付けられる被取付部29aが設けられている。引戸パネル9の取付部は、引戸パネル9の戸幅方向両側の上端部9aのそれぞれに戸幅方向外側及び上方側に向けて開口するように設けられ、被取付部29aが嵌め込まれる凹所状のカップ部とされている。
【0018】
また、これら第1被ガイド部材29A及び第2被ガイド部材29Bは、被取付部29aから上方側に向けて突出するように設けられた支持軸29bと、この支持軸29bの上端部に固定されたガイド本体29cと、を備えている。ガイド本体29cには、後記する上レール10のガイド片部13a上を走行する転動体29dが設けられている。図例では、戸厚方向に沿う軸回りに回転する転動体29dを、ガイド本体29cの戸厚方向両側のそれぞれに設けた例を示している。なお、戸厚方向両側の転動体29dを、ガイド本体29cの戸幅方向に間隔を空けて複数箇所に設けた構成としてもよい。
【0019】
また、戸幅方向両側のうちの一方側となる第1被ガイド部材29Aに、詳細については後述するが、駆動機構20が連結されている。つまり、この第1被ガイド部材29Aが駆動機構20によって戸幅方向にスライドされ、駆動機構20に連結されていない他方側の第2被ガイド部材29Bが言わば従動的に戸幅方向にスライドされる。
なお、これら第1被ガイド部材29A及び第2被ガイド部材29Bとしては、上記したような構成とされたものに限られず、後記する上レール10に応じて適宜の構成とされたものであってもよい。
また、引戸パネル9の下端部に、床側に設けられるガイドピン等の下端ガイド部材が差し込まれるガイド溝等が設けられていてもよい。
【0020】
上レール10は、図1(b)に示すように、引戸パネル9の最大戸幅W1の概ね2倍の長さL1が最長とされている。本実施形態では、この上レール10は、長さL1が最長とされた最長の上レール10を構成し、その長手方向一方側の第1半部10Aに駆動機構20を固定した構成とされている。このような構成とすれば、本実施形態のように、引戸パネル9が最大戸幅W1である場合には、この最長の上レール10の第1半部10Aにおいて第1被ガイド部材29Aをスライドさせ、最長の上レール10の第2半部10B側において第2被ガイド部材29Bをスライドさせることで、引戸パネル9を開閉することができる。また、引戸パネル9の戸幅が最大戸幅W1よりも小さい場合には、この戸幅の概ね2倍の長さとなるように上レール10の長さを、例えば、第2半部10B側を切断したり、予め短くしたり等して調整することで、共通の駆動機構20を適用することができる。
【0021】
つまり、最長の上レール10の第2半部10B側の寸法を短くしても駆動機構20が固定された第1半部10A側に影響を与えるようなことがなく、また、駆動機構20の設置位置等を変更する必要も生じない。これにより、共通の駆動機構20を、最大戸幅W1の引戸パネル9からその概ね1/2程度の戸幅(最小戸幅)W2の引戸パネル9A(図10参照)にまで適用することができ、汎用性を向上させることができる。換言すれば、駆動機構20のレール長手方向(戸幅方向)に沿う寸法を、最小戸幅W2の引戸パネル9Aの開閉が可能なように、最小戸幅W2の概ね2倍の寸法以下としている。
つまりは、図10(a)、(b)において示す変形例に係る戸開閉装置1Aは、戸幅W2が上記した最大戸幅W1の引戸パネル9の概ね1/2程度とされた引戸パネル9Aを開閉する構成とされている。この戸開閉装置1Aの上レール10Cの長さL2は、引戸パネル9Aの戸幅W2の概ね2倍程度で、上記した最長の上レール10の長さL1の概ね1/2程度とされている。換言すれば、この上レール10Cの長さL2は、上記した最長の上レール10の第1半部10Aの長さと概ね同長さとされている。
【0022】
なお、変形例に係る戸開閉装置1Aにおける他の構成については、図1等に示す戸開閉装置1と同様の構成であるので同一符号を付し、説明を省略する。
また、各例において、上レール10,10Cの長さL1,L2は、戸幅W1,W2の2倍よりも小さい寸法とされている。上レール10,10Cの長さL1,L2は、閉鎖状態の引戸パネル9,9Aの戸尻側端部と中方立6(袖壁)との重ね合わせ寸法や全開状態の引戸パネル9,9Aの引き残し寸法等に応じて適宜の寸法とすればよい。換言すれば、上レール10,10Cの長さL1,L2は、上記重ね合わせ寸法を2倍した寸法を、引戸パネル9,9Aの戸幅W1,W2を2倍した寸法から差し引いた寸法と略同寸法としてもよい。
【0023】
また、本実施形態では、最長の上レール10の長手方向他方側の第2半部10Bは、切断可能とされている。このような構成とすれば、引戸パネル9Aの戸幅W2が最大戸幅W1よりも小さい場合には、この戸幅W2の概ね2倍の長さとなるように、第2半部10B側を切断することで、引戸パネル9Aのガイドが可能な長さL2の上レール10Cとすることができる。これにより、例えば、駆動機構20を第1半部10Aに取り付けた状態で、第2半部10B側を切断するようなことも可能となり、工場出荷後でも容易に対応可能となる。この上レール10は、少なくとも第2半部10Bが全長に亘って一様な断面形状とされ、適宜の切断具によって切断可能な金属製であってもよい。
【0024】
また、上レール10には、図2に示すように、被ガイド部材29(第1被ガイド部材29A及び第2被ガイド部材29B)を受け入れるガイド溝11が下向きに開口するように設けられている。ガイド溝11は、上レール10の全長に亘って延びるように設けられている。このガイド溝11に、被ガイド部材29のガイド本体29cが挿入され、ガイドされる。
この上レール10は、ガイド溝11の溝底を区画する溝底板状部12と、ガイド溝11の溝幅方向両側を区画する両側の側板状部13,13と、これら側板状部13,13の下端部から互いに向き合う方向に延出するガイド片部13a,13aと、を備えている。また、上レール10は、溝底板状部12の上面側の溝幅方向両側縁部から上方側に向けて突出するように設けられた両側の突片部14,14を備えている。
【0025】
両側のガイド片部13a,13aの延出方向先端部には、上方側に向けて突出する突条が上レール10の全長に亘って延びるように設けられている。これらガイド片部13a,13aの突条に、被ガイド部材29の転動体29d,29dの外周面に設けられた環状溝が係合し、これらガイド片部13a,13aの突条に沿って転動体29d,29dが走行する。なお、上レール10としては、戸厚方向両側に間隔を空けて設けられたそれぞれの転動体29d,29dが走行するガイド片部13a,13aを有したものに限られない。上レール10としては、例えば、被ガイド部材29の戸厚方向一方側のみに設けられた転動体29dが引っ掛けられるように保持される一つのガイド片部を備えたものであってもよく、その他、種々の構成とされたものであってもよい。
【0026】
駆動機構20は、図2図5に示すように、上記した上レール10の溝底板状部12上に固定されている。このような構成とすれば、駆動機構20を上レール10に一体化した状態で、引戸パネル9が建て付けられる戸枠2の上枠3等の固定対象に対して上レール10を固定することができる。また、例えば、上レール10の側板状部13等に駆動機構20を固定したものと比べて、戸厚方向に沿う寸法のコンパクト化を図ることができる。
この駆動機構20は、図3及び図4に示すように、戸幅方向に離間した位置に設けられる第1回転車を構成する第1従動回転車21及び第2回転車を構成する第2従動回転車25を備えている。また、駆動機構20は、これら第1従動回転車21及び第2従動回転車25のそれぞれに巻き掛けられ、第1被ガイド部材29Aに連結された紐状伝動体28と、この紐状伝動体28に駆動を伝達する駆動部30と、を備えている。このような構成とすれば、駆動部30を駆動すれば、紐状伝動体28に連結された第1被ガイド部材29Aが戸幅方向に移動され、引戸パネル9を開閉することができる。
【0027】
第1従動回転車21は、最長の上レール10の第1半部10Aの長手方向一方側の第1端部10aに位置するように設けられている。第2従動回転車25は、最長の上レール10の第1半部10Aの長手方向他方側の第2端部10bに位置するように設けられている。このような構成とすれば、これらに巻き掛けられた紐状伝動体28によって最長の上レール10の第1半部10Aの概ね全長に亘って第1被ガイド部材29Aをスライドさせることができる。また、異なる戸幅W1,W2に適用する場合にも、これら第1従動回転車21及び第2従動回転車25の設置位置や、紐状伝動体28の長さを変更することなく適用することができる。
【0028】
駆動部30は、これら第1従動回転車21及び第2従動回転車25の間に位置するように、かつ上レール10の上方側に位置するように設けられ、紐状伝動体28に駆動を伝達する駆動回転車31と、この駆動回転車31を回転させるモータ35と、を備えている。このような構成とすれば、モータ35によって駆動回転車31を回転させれば、紐状伝動体28に連結された第1被ガイド部材29Aが戸幅方向に移動され、引戸パネル9を開閉することができる。また、駆動回転車31及びモータ35を戸幅方向一方側端部に設けたものと比べて、戸幅方向に沿う寸法のコンパクト化を図ることができる。また、駆動回転車31を上レール10の戸厚方向一方側に設けたようなものと比べて、戸厚方向に沿う寸法のコンパクト化を図ることができる。これらにより、住居等の一般的な建物内に設置される引戸装置の戸枠と同程度の戸枠2に対して設置することも可能となる。また、例えば、既設の戸枠2に対して設置することも可能であり、新築時のみならず、改築や改装時にも適用可能である。これにより、既設の戸建住宅や集合住宅等の一般住宅や、宿泊施設や医療施設、福祉施設等の公共的な施設、事務所等の商業施設、各種店舗等の室内に設置される引戸パネル9を開閉する戸開閉装置1として好適に用いることができる。また、戸開閉装置1は、コンパクトであるため、引戸パネル9を自動ドアとして機能させることが可能でありながらも、室内引戸として設置しても外観上の違和感(ノイズ)を小さくすることができ、室内用として好適に用いることができる。
【0029】
第1従動回転車21及び第2従動回転車25は、それぞれの軸となる第1従動車軸22及び第2従動車軸26が互いに平行状とされている。また、これら第1従動車軸22及び第2従動車軸26は、軸方向が戸高方向となるように設けられた駆動回転車31の駆動車軸32の軸方向に交差するように設けられている。このような構成とすれば、駆動回転車31の軸方向を戸厚方向とし、その戸厚方向に隣接させてモータ35を設けたようなものと比べて、戸厚方向に沿う寸法のコンパクト化を図ることができる。また、紐状伝動体28における第1被ガイド部材29Aに連結された部位と駆動回転車31に駆動を伝達される部位とを上下に配置することができる。これにより、第1従動回転車21及び第2従動回転車25の軸方向を戸高方向としたものと比べて、戸厚方向に沿う寸法のコンパクト化をより効果的に図ることができる。
【0030】
また、図7に示すように、モータ35は、出力軸36の軸方向が戸幅方向となるように駆動回転車31の戸幅方向一方側に配置され、歯車33,37を介して駆動回転車31を回転させる構成とされている。このような構成とすれば、出力軸36の軸方向が戸高方向となるようにモータ35を設けたものと比べて、戸高方向に沿う寸法のコンパクト化を図ることができる。なお、これら駆動回転車31及びモータ35を含む駆動部30の具体的構成については、後述する。
【0031】
第1従動回転車21及び第2従動回転車25には、紐状伝動体28が平行掛状に巻き掛けられている(図4参照)。紐状伝動体28は、下側変位部28bが第1被ガイド部材29Aに連結されて戸幅方向に変位し、上側変位部28aが下側変位部28bとは戸幅方向で逆側に変位する(図2参照)。第1従動回転車21及び第2従動回転車25は、紐状伝動体28における下側変位部28bと上側変位部28aとが上レール10の戸厚方向で異なる位置となるように、第1従動車軸22及び第2従動車軸26が傾斜状に設けられている。このような構成とすれば、紐状伝動体28の下側変位部28bと上側変位部28aとが戸厚方向でずれた位置に配置されることとなり、下側変位部28b及び上側変位部28aの一方の戸厚方向側方の空間を利用して種々の機器や部材を配置することができる。
【0032】
第1従動回転車21及び第2従動回転車25は、下側変位部28bが上レール10の戸厚方向で概ね中央部に位置し、上側変位部28aが上レール10の戸厚方向で一方側に片寄った位置となるように第1従動車軸22及び第2従動車軸26が傾斜状に設けられている。このような構成とすれば、上レール10の戸厚方向で概ね中央部に位置する下側変位部28bを第1被ガイド部材29Aに連結することができる。これにより、下側変位部28bを第1被ガイド部材29Aや引戸パネル9の上端部9aの戸厚方向一方側に連結部材によって連結したようなものと比べて、第1被ガイド部材29Aを安定的に戸幅方向に移動させることができる。また、上レール10の戸厚方向で一方側に片寄った位置において変位する上側変位部28aの戸厚方向側方の空間を利用して種々の機器や部材を配置することができる。
【0033】
また、後記する駆動回転車31及びモータ35を上側変位部28aの戸厚方向一方側に位置するように設けた構成としている。このような構成とすれば、上側変位部28aの戸厚方向一方側の空間を利用して駆動部30を構成する駆動回転車31及びモータ35を配置することができる。
また、下側変位部28bは、ガイド溝11内に配置され、上側変位部28aは、溝底板状部12の上方側に配置されている。このような構成とすれば、戸幅方向で互いに逆側に変位する下側変位部28bと上側変位部28aとの間に溝底板状部12が介在されることとなり、互いの干渉を抑制することができる。また、本実施形態のように、上側変位部28aを上レール10の戸厚方向で一方側に片寄った位置に設けた構成とすれば、溝底板状部12の上方側空間を有効的に活用することができる。
【0034】
第1従動回転車21及び第2従動回転車25は、互いに同寸同形状とされている。また、これら第1従動回転車21及び第2従動回転車25は、第1従動車軸22及び第2従動車軸26の軸方向に沿う寸法が比較的に小とされた薄型円板状とされている。また、これら第1従動回転車21及び第2従動回転車25は、それぞれの外周面に、ロープ状部材とされた紐状伝動体28が係合する環状溝21a,25a(図6参照)を設けたプーリとされている。また、これら第1従動回転車21及び第2従動回転車25は、戸幅方向に見て互いに一致した位置となるように設けられている。また、これら第1従動回転車21及び第2従動回転車25は、下端側部位がガイド溝11内の溝幅方向略中央部に位置し、上端側部位が溝底板状部12の上方側において溝幅方向一方側に片寄った位置となるように設けられている(図2参照)。これら第1従動回転車21及び第2従動回転車25の第1従動車軸22及び第2従動車軸26は、上レール10の長手方向に対して直交するように設けられ、かつ水平面(溝底板状部12上面)に対して傾斜するように設けられている。これら第1従動車軸22及び第2従動車軸26の水平面(溝底板状部12上面)に対する傾斜角度は、10度~60度程度でもよく、図例では、概ね30度程度とした例を示している。
【0035】
また、第1従動回転車21及び第2従動回転車25のうちの少なくとも一方を、戸幅方向に位置調整可能に上レール10に保持させた構成としている。このような構成とすれば、紐状伝動体28の張力を調整することができる。本実施形態では、第1従動回転車21を、戸幅方向に位置調整可能としている。
第1従動回転車21は、図6(a)、(b)に示すように、溝底板状部12に固定される固定部材24に対して戸幅方向に位置調整可能に保持された保持部材23に対して第1従動車軸22回りに回転自在に保持されている。
固定部材24は、溝底板状部12の上面に沿うように固定される固定片部24aと、この固定片部24aのレール幅方向(戸厚方向)一方側縁部から立ち上がるように設けられた保持片部24bと、を備えている。保持部材23は、保持片部24bの戸厚方向一方側の面に沿うように配される被保持片部23aを備えている。
【0036】
固定部材24の保持片部24bには、保持部材23の被保持片部23aに戸厚方向に貫通するように設けられた雌ねじ孔にねじ合わされる固着具7の軸部が挿通されるねじ挿通孔24cが戸厚方向に貫通するように設けられている。このねじ挿通孔24cは、固定部材24に対する保持部材23の戸幅方向の位置調整が可能なように、戸幅方向に長径状の長孔とされている。また、保持部材23の被保持片部23aに戸幅方向に間隔を空けて複数(図例では、2つ)の雌ねじ孔を設け、これら雌ねじ孔にねじ合わされる固着具7の軸部が挿通される複数のねじ挿通孔24c,24cを固定部材24の保持片部24bに設けた例を示している。
【0037】
また、固定部材24には、保持部材23に戸幅方向に貫通するように設けられた雌ねじ孔にねじ合わされる固着具7の軸部が挿通されるねじ挿通孔が戸幅方向に貫通するように設けられている。このような構成とすれば、固着具7を軸回りに回転させることで、固定部材24に対して保持部材23を戸幅方向に移動させることができる。図例では、保持部材23の被保持片部23aの戸幅方向一端部に、戸厚方向に突出し、雌ねじ孔が設けられた軸部受片部23cを設けた例を示している。また、固定部材24の保持片部24bの戸幅方向一端部に、戸厚方向に突出し、ねじ挿通孔が設けられた頭部受片部24dを設けた例を示している。また、図例では、固定部材24の保持片部24bの上端縁に、戸厚方向に突出する突出片部を設け、保持部材23の被保持片部23aの上端縁に、保持片部24bの突出片部の下面に沿わせられる突出片部を設けた例を示している。
【0038】
また、保持部材23の被保持片部23aには、戸幅方向一端側の下端縁部から下方側に向けて延出するように車軸受片部23bが設けられている。この車軸受片部23bに、第1従動車軸22が設けられている。図例では、車軸受片部23bを、厚さ方向が第1従動車軸22の軸方向となるように被保持片部23aに対して傾斜状に設けた例を示している。第1従動回転車21は、この車軸受片部23bに対して固定的に設けられた第1従動車軸22に対して回転自在とされていてもよく、車軸受片部23bに対して回転自在に保持された第1従動車軸22に対して固定的に設けられていてもよい。
これら固定部材24、保持部材23及び第1従動回転車21を含む第1従動回転車ユニットは、固定部材24が第1半部10Aの第1端部10aの溝底板状部12上に、ねじ等の固着具によって固定されて上レール10に対して取り付けられる(図3及び図4も参照)。
【0039】
また、第1従動回転車21を戸幅方向に位置調整する際には、固定部材24の保持片部24bのねじ挿通孔24c,24cに挿通された固着具7,7を緩め、固定部材24の頭部受片部24dのねじ挿通孔に挿通された固着具7をねじ操作して行うようにしてもよい。この際、紐状伝動体28が巻き掛けられた状態で行うことができるので、作業性を向上させることができる。また、第1従動回転車21の戸幅方向における位置調整がなされれば、固定部材24の保持片部24bのねじ挿通孔24c,24cに挿通された固着具7,7を締め付けるようにすればよい。なお、第1従動回転車21を戸幅方向に位置調整可能とする態様としては、上記したような態様に限られず、その他、種々の態様とされたものであってもよい。また、第1従動回転車21を上レール10に固定する固定部材24としては、上記したような構成とされたものに限られず、その他、種々の構成とされたものであってもよい。
【0040】
第2従動回転車25は、図6(c)に示すように、溝底板状部12に固定される固定部材27に対して第2従動車軸26回りに回転自在に保持されている。
固定部材27は、溝底板状部12の上面に沿うように固定される固定片部27aと、この固定片部27aの戸厚方向一方側縁部から立ち上がるように設けられた保持片部27bと、を備えている。保持片部27bには、戸幅方向一端側の下端縁部から下方側に向けて延出するように車軸受片部27cが設けられている。この車軸受片部27cに、第2従動車軸26が設けられている。図例では、上記同様、車軸受片部27cを、厚さ方向が第2従動車軸26の軸方向となるように保持片部27bに対して傾斜状に設けた例を示している。第2従動回転車25は、この車軸受片部27cに対して固定的に設けられた第2従動車軸26に対して回転自在とされていてもよく、車軸受片部27cに対して回転自在に保持された第2従動車軸26に対して固定的に設けられていてもよい。また、図例では、保持片部27bの上端縁に、戸厚方向に突出する突出片部を設けた例を示している。
【0041】
これら固定部材27及び第2従動回転車25を含む第2従動回転車ユニットは、固定部材27が第1半部10Aの第2端部10bの溝底板状部12上に、ねじ等の固着具によって固定されて上レール10に対して取り付けられる(図3及び図4も参照)。
なお、第2従動回転車25を上レール10に固定する固定部材27としては、上記したような構成とされたものに限られず、その他、種々の構成とされたものであってもよい。
【0042】
上レール10の溝底板状部12には、第1従動回転車21及び第2従動回転車25の下側部位を受け入れる切欠状の凹所や貫通孔が設けられている(図4参照)。また、第1被ガイド部材29A及び第2被ガイド部材29Bのガイド本体29c,29cには、図2に示すように、戸幅方向に見て第1従動回転車21及び第2従動回転車25の下端側部位を受け入れるように、上方側及び戸幅方向両側に開口する凹所が設けられている。このような構成とすれば、第1従動回転車21及び第2従動回転車25との干渉を抑制しながらも、上下方向に沿う寸法のコンパクト化を図ることができる。また、第1被ガイド部材29Aのガイド本体29cには、紐状伝動体28の下側変位部28bが連結された連結部29eが設けられている。この連結部29eは、ガイド本体29cの凹所内に位置するように設けられている。
【0043】
紐状伝動体28は、図2に示すように、第1従動回転車21及び第2従動回転車25の環状溝21a,25aの溝底周面の上面側において変位する上側変位部28aが溝底板状部12の上方側において戸厚方向一方側に片寄った位置に配されている。また、紐状伝動体28は、第1従動回転車21及び第2従動回転車25の環状溝21a,25aの溝底周面の下面側において変位する下側変位部28bがガイド溝11内の溝幅方向中央部に位置するように配されている。この紐状伝動体28は、環状に形成された一部に第1被ガイド部材29Aの連結部29eが固定されたものでもよく、または、長手方向両側端部が連結部29eの戸幅方向両側に連結されて略環状に形成されたものであってもよい。また、この紐状伝動体28は、伸長し難い構成とされたものであればよく、例えば、金属製ワイヤや、適宜の繊維を撚り合わせた撚紐や繊維を組み合わせた組紐等であってもよい。
【0044】
このようにロープ状部材とされた紐状伝動体28は、図7に示すように、駆動回転車31に一周以上巻き掛けられている。このような構成とすれば、紐状伝動体28を、ベルトやチェーン等としたものと比べて、駆動回転車31の軸方向のコンパクト化が図れ、また騒音の発生等の抑制が可能でありながらも、紐状伝動体28が駆動回転車31に対して滑るようなことを抑制することができる。
駆動回転車31は、駆動車軸32の軸方向に沿う寸法が比較的に小とされた薄型円板状とされている。また、駆動回転車31は、外周面に紐状伝動体28が係合する環状溝31aを設けたプーリとされている。この駆動回転車31は、厚さ方向一方面を溝底板状部12の上面に対面させるようにして設置されている。また、駆動回転車31は、環状溝31aの溝底周面の戸厚方向一方側部位が戸厚方向一方側に配された紐状伝動体28の上側変位部28aの位置に応じた位置となるように設けられている。この駆動回転車31には、紐状伝動体28の上側変位部28aが略一周巻き掛けられている。このように駆動回転車31に巻き掛けられた上側変位部28aの交差部が戸幅方向に見て第1従動回転車21及び第2従動回転車25の上面部位と概ね一致した位置となるように設けられている。なお、この駆動回転車31や、第1従動回転車21、第2従動回転車25の紐状伝動体28が巻き掛けられる外周面(環状溝21a,25a,31aの溝底周面)が二色成形等によって滑り止め性を有した軟質材によって構成されていてもよい。
【0045】
この駆動回転車31には、この駆動回転車31を回転させるモータ35に設けられた歯車(モータ側歯車)37に回転を伝達する歯車(回転車側歯車)33が設けられている。本実施形態では、互いに交差するように設けられた駆動回転車31の駆動車軸32とモータ35の出力軸36とに対応させて、これら回転車側歯車33及びモータ側歯車37を、互いに噛み合うかさ歯車(図例では、すぐばかさ歯車)とした例を示している。回転車側歯車33は、駆動回転車31の駆動車軸32の一端部(図例では上端部)に対して回転不能に取り付けられている。モータ側歯車37は、モータ35の出力軸36に対して回転不能に取り付けられている。なお、これら回転車側歯車33及びモータ側歯車37としては、駆動回転車31及びモータ35の配置態様に応じて適宜の構成とされたものでもよい。また、これら回転車側歯車33及びモータ側歯車37としては、直接的に噛み合う構成とされたものに限られず、適宜の中間歯車等を介して回転を伝達する構成とされたものであってもよい。
【0046】
また、駆動機構20には、駆動回転車31を上レール10に固定する第1固定部材34と、この第1固定部材34とは別体とされ、駆動回転車31が固定された上レール10に対してモータ35を着脱可能に固定する第2固定部材38と、が設けられている。このような構成とすれば、モータ35を脱離させる際には、上レール10に駆動回転車31を固定した状態で、互いの歯車33,37の回転伝達状態(本実施形態では、噛み合い)を解除する。そして、第2固定部材38を上レール10から取り外すことでモータ35を上レール10から脱離させることができる。また、モータ35を固定する際には、上レール10に駆動回転車31を固定した状態で、互いの歯車33,37を回転伝達状態として(本実施形態では、噛み合わせて)第2固定部材38を介してモータ35を上レール10に固定することができる。これにより、モータ35を上レール10に対して着脱する際に、紐状伝動体28の取り外しや巻き掛け、張力調整等を行う必要がなく、メンテナンス性を向上させることができる。つまり、駆動回転車31を紐状伝動体28に対して駆動の伝達を可能とした状態で、言わばモータ35のみを上レール10に対して着脱することができる。これら第1固定部材34及び第2固定部材38を介して駆動回転車31及びモータ35が溝底板状部12上に固定されている。
【0047】
また、第2固定部材38には、第1固定部材34に設けられた被固定部34d,34eに対して固定される固定部38d,38eが設けられている。このような構成とすれば、第1固定部材34の被固定部34d,34eに対して第2固定部材38の固定部38d,38eを固定することで、駆動回転車31に対するモータ35の位置合わせを比較的に確実に行うことができる。これにより、駆動回転車31の回転車側歯車33とモータ35のモータ側歯車37とを比較的に確実に回転伝達状態とする(本実施形態では、噛み合わせる)ことができる。
また、第1固定部材34及び第2固定部材38のうちの一方には、他方に設けられた位置決め凹部38cに嵌め込まれる位置決め突起34cが設けられている。このような構成とすれば、第1固定部材34に対して第2固定部材38を固定する際における位置合わせを容易に行うことができる。
【0048】
第1固定部材34は、溝底板状部12の上面に沿うように固定され、駆動回転車31の駆動車軸32の一端部(図例では下端部)を回転自在に保持する固定片部34aと、駆動車軸32の上端側を回転自在に保持する車軸受片部34bと、を備えている。固定片部34aは、ねじ等の適宜の固着具によって溝底板状部12に固定されるものであってもよい。車軸受片部34bは、固定片部34aの上方側に駆動回転車31の配設スペースを隔てて対向するように配されている。回転車側歯車33は、この車軸受片部34bの上面側において露出するように設けられている。
【0049】
第1固定部材34の被固定部34d,34eは、戸厚方向一方側の第1被固定部34dと、戸厚方向他方側の第2被固定部34eと、を備えている。これら第1被固定部34dと第2被固定部34eとは、厚さ方向が戸厚方向とされた略平板状とされ、互いに戸厚方向に間隔を空けて設けられている。図例では、第1被固定部34dは、車軸受片部34bの戸厚方向一方側縁部から垂れ下がるように設けられている。また、第2被固定部34eは、車軸受片部34bの戸厚方向他方側縁部から立ち上がるように設けられている。
また、第1固定部材34の車軸受片部34bの戸幅方向一端部から突出するように位置決め突起34cが設けられている。
【0050】
第2固定部材38は、溝底板状部12の上面に沿うように固定される固定片部38aを備えている。図例では、この固定片部38aを、モータ35の軸方向で出力軸36とは異なる側の端部に固定された板状部の下端部に設けた例を示している。この固定片部38aは、ねじ等の適宜の固着具によって溝底板状部12に固定されるものであってもよい。
また、第2固定部材38は、モータ35の軸方向で出力軸36側の端部に固定された板状の保持片部38bを備えている。この保持片部38bには、出力軸36が挿通される貫通孔が設けられている。また、この保持片部38bは、ねじ等の適宜の固着具によってモータ35(モータケース)に固定されている。また、この保持片部38bに、位置決め突起34cが嵌め込まれる位置決め凹部38cが設けられている。
【0051】
第2固定部材38の固定部38d,38eは、第1固定部材34の被固定部34d,34eに対応させて、戸厚方向一方側の第1固定部38dと、戸厚方向他方側の第2固定部38eと、を備えている。これら第1固定部38dと第2固定部38eとは、厚さ方向が戸厚方向とされた略平板状とされ、互いに戸厚方向に間隔を空けて設けられている。図例では、第1固定部38dは、保持片部38bの戸厚方向一方側縁部から戸幅方向に突出するように設けられている。また、第2固定部38eは、保持片部38bの戸厚方向他方側縁部から戸幅方向に延出するように設けられている。これら第1固定部38d及び第2固定部38eは、第1固定部材34の第1被固定部34d及び第2被固定部34eのそれぞれの戸厚方向一方側に沿わせられてねじ等の適宜の固着具によって固定される。また、これら第1固定部38d及び第2固定部38eには、第1固定部材34の第1被固定部34d及び第2被固定部34eのそれぞれに設けられた雌ねじ孔に連通するように、固着具の軸部が挿通される挿通孔が設けられている。
【0052】
また、第2固定部38eの下端部に、第1固定部材34の車軸受片部34bの上面に下端面が面接触的に当接される当接部38fを設けた構成としている。このような構成とすれば、上記した位置決め突起34c及び位置決め凹部38cを嵌合させ、当接部38fを車軸受片部34bの上面に当接させることで、第1固定部材34に対する第2固定部材38の位置合わせを容易に行うことができる。
上記のような構成とされた第2固定部材38及びモータ35を含むモータユニットは、第1固定部材34及び駆動回転車31を含む回転車ユニットが上レール10に取り付けられた状態で、上レール10に対して着脱可能とされている。つまり、固定片部38aを溝底板状部12から取り外し、第1固定部38d及び第2固定部38eを第1固定部材34の第1被固定部34d及び第2被固定部34eから取り外せば、モータユニットを上レール10から容易に取り外すことができる。なお、駆動回転車31を上レール10に固定する第1固定部材34及びモータ35を上レール10に固定する第2固定部材38としては、上記したような構成とされたものに限られず、その他、種々の構成とされたものであってもよい。
【0053】
また、モータ35としては、正逆回転可能で回転数の制御可能なサーボモータ等であってもよい。
また、上記した例では、駆動回転車31の駆動車軸32を戸高方向となるように設けた例を示しているが、戸厚方向となるように設けた構成としてもよい。このような構成によっても、戸幅方向一方側に配置されるモータ35の回転を歯車33,37を介して駆動回転車31に伝達することができ、軸方向が戸高方向となるようにモータ35を設けたものと比べて、戸高方向に沿う寸法のコンパクト化を図ることができる。また、この場合は、第1固定部材34や第2固定部材38を適宜、変形するようにすればよい。
【0054】
また、本実施形態では、図3図5に示すように、モータ35の回転を制御する制御ブロック39をモータ35の戸幅方向一方側に設けた構成としている。この制御ブロック39には、モータ35に駆動電源を供給する電源部や、モータ35に適宜の信号線等を介して接続された制御回路等が設けられている。この制御ブロック39によってモータ35が制御されて正回転または逆回転され、引戸パネル9が全開位置または閉鎖位置に移動される。図例では、制御ブロック39を、戸幅方向に長尺な略四角柱状とした例を示している。また、この制御ブロック39の戸厚方向一方側の下端側部位に沿うように、紐状伝動体28の上側変位部28aが配されている(図4参照)。なお、この制御ブロック39の戸厚方向一方側の下端側部位に、上側変位部28aを受け入れる切欠状の凹所を全長に亘って延びるように設けた構成としてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、図3図4及び図8に示すように、紐状伝動体28の変位を伴って回転される可変抵抗器44を含み、引戸パネル9の位置を検知する位置検知部40を備えている。このような構成とすれば、可変抵抗器44の抵抗値(電圧)によって引戸パネル9の位置(絶対位置)を検知することができる。
また、本実施形態では、図8に示すように、位置検知部40は、紐状伝動体28によって回転されて可変抵抗器44を回転させる検知回転車41と、この検知回転車41を紐状伝動体28に押し付けるように付勢する付勢部材48と、を備えている。このような構成とすれば、紐状伝動体28の緩みを抑制することができ、位置検知部40を、紐状伝動体28の張力(テンション)を増大させる張力付加機構としても機能させることができる。
【0056】
この位置検知部40は、制御ブロック39の戸幅方向一方側に設けられている。この位置検知部40と駆動部30との間に位置するように、制御ブロック39が設けられている。また、これら駆動部30、制御ブロック39及び位置検知部40は、第1従動回転車21と第2従動回転車25との間に位置するように設けられている。
この位置検知部40は、図8(a)、(b)に示すように、検知回転車41を軸方向に沿う戸厚方向両側から挟むように保持する一対の保持部材46,46を備えている。また、位置検知部40は、これら保持部材46,46を戸厚方向に沿う軸(被保持軸)47回りに回転自在に保持し、上レール10に固定される検知固定部材49を備えている。
【0057】
検知回転車41は、軸方向に沿う寸法が比較的に小とされた薄型円板状とされ、外周面に紐状伝動体28が係合する環状溝を設けたプーリ状とされている。この検知回転車41は、その車軸が両側の保持部材46,46に対して回転自在に保持されている。本実施形態では、この検知回転車41に同軸状に固定的に設けられた歯車部41aの回転を伝達して可変抵抗器44を回転させる歯車として第1歯車42と第2歯車43とを設けた構成としている。
検知回転車41の歯車部41aは、比較的に小径状とされ、検知回転車41の軸方向一方側に設けられている。第1歯車42は、歯車部41aよりも大径状とされ、歯車部41aに噛み合うように設けられている。この第1歯車42の車軸は、一方の保持部材46に保持されている。第2歯車43は、歯車部41aよりも大径状で第1歯車42よりも小径状とされ、第1歯車42に噛み合うように設けられている。この第2歯車43の車軸の一端部は、一方の保持部材46に保持され、この第2歯車43の車軸の他端部は、可変抵抗器44のロータ44aを回転させるようにロータ44aに連結されている。
【0058】
これら歯車部41a、第1歯車42及び第2歯車43は、検知回転車41の回転を減速させて可変抵抗器44に伝達する減速機構を構成する。これら歯車部41a、第1歯車42及び第2歯車43は、引戸パネル9(最大戸幅W1の引戸パネル9)が閉鎖位置から全開位置まで移動される際に、可変抵抗器44のロータ44aが検出可能な範囲内の回転(一回転以内)となるように構成されていてもよい。
可変抵抗器44は、ロータ44aの回転角度に比例した電圧(抵抗値)を出力する、いわゆるロータリポジションセンサであってもよい。
また、位置検知部40には、この可変抵抗器44が固定され、可変抵抗器44の出力電圧を制御ブロック39に送信する検知基板45が設けられている。この検知基板45は、他方の保持部材46に適宜の固着具によって固定されている。
【0059】
上記構成とされた位置検知部40においては、紐状伝動体28の上側変位部28aの戸幅方向への変位を伴って検知回転車41が回転し、その回転が第1歯車42及び第2歯車43によって伝達されて可変抵抗器44のロータ44aが回転される。このロータ44aの回転角度に応じて出力される電圧(抵抗値)に基づいて算出される引戸パネル9の位置情報や移動方向(閉鎖側または開放側)情報に応じてモータ35が制御され、引戸パネル9が開閉される。
なお、最大戸幅W1の引戸パネル9の位置の検出が可能な可変抵抗器44を設け、異なる戸幅W2の引戸パネル9Aを建て付ける場合には、この引戸パネル9Aの移動範囲に応じて適宜、ロータ44aの回転角度の検出範囲等を設定変更するようにしてもよい。
【0060】
一対の保持部材46,46は、厚さ方向が戸厚方向となるように配される略平板状とされ、戸幅方向に長尺状とされている。一方の保持部材46には、他方の保持部材46に設けられたボス状突起部の雌ねじ孔にねじ合わされる固着具7の軸部が挿通される挿通孔が設けられている。
これら保持部材46,46の長手方向一方側に検知回転車41が回転自在に保持され、長手方向他方側端部の下端側に設けられたボス状突起部が検知固定部材49に回転自在に保持される被保持軸47を構成する。
【0061】
検知固定部材49は、溝底板状部12の上面に沿うように固定される固定片部と、この固定片部の戸厚方向両側縁部から立ち上がるように設けられた両側の支持片部と、を備えており、上方側及び戸幅方向両側に開口する形状とされている。この検知固定部材49の両側の支持片部間に、検知回転車41等を保持した保持部材46,46が差し込まれ、被保持軸47が保持されている。この検知固定部材49の一方の支持片部に設けられた軸部挿通孔に軸部が挿通された固着具7を介して保持部材46,46の被保持軸47が保持されていてもよい。また、他方の保持部材46の戸厚方向外側面に、検知固定部材49の他方の支持片部に設けられた挿通孔に回転自在に挿通される被保持軸47と同軸状の軸部が設けられていてもよい。なお、検知回転車41等を保持した保持部材46,46を被保持軸47回りに回転自在に保持する態様としては、このような態様に限られず、その他、種々の変形が可能である。
【0062】
付勢部材48は、コイル部に被保持軸47が挿通されたねじりコイルばね(トーションばね)とされている。この付勢部材48の一方のアーム端部48aが検知回転車41を保持する保持部材46の長手方向他方側端部の上端側に当接され、付勢部材48の他方のアーム端部48bが検知固定部材49の固定片部の上面に当接されている。このような構成により、付勢部材48は、検知回転車41を下方側の紐状伝動体28の上側変位部28aに向けて押し付けるように付勢する構成とされている。なお、付勢部材48としては、ねじりコイルばねに限られず、板ばねや、圧縮コイルばね、引張コイルばね等の他のばね部材であってもよく、また、ばね部材に限られず、ゴム材等であってもよい。
また、位置検知部40としては、紐状伝動体28の張力を増大させる張力付加機構として機能するものに限られない。例えば、第1従動回転車21、第2従動回転車25及び駆動回転車31のうちのいずれか一つに連動して回転されるように可変抵抗器44を設けた構成とされたものであってもよい。また、このような可変抵抗器44を設けた態様に代えて、引戸パネル9の位置の検知が可能なように適宜の位置センサを複数箇所に設けた態様や、閉鎖位置及び全開位置のそれぞれにおいて操作されるリミットスイッチを設けた態様等としてもよい。
【0063】
図5及び図9に示すように、上レール10及び上枠3のうちの一方には、水平方向に変位自在に保持された引掛部17が戸幅方向に間隔を空けて複数箇所に設けられている。また、上レール10及び上枠3のうちの他方には、これら引掛部17のそれぞれを受け入れる水平方向に開口する受入凹所16が戸幅方向に間隔を空けて複数箇所に設けられている。このような構成とすれば、一方に設けられた引掛部17を他方に設けられた受入凹所16に差し込むことで、上枠3に対して上レール10を固定(仮固定)することができる。また、上レール10の長手方向の複数箇所を、上枠3の長手方向の複数箇所に対して固定することができるので、上枠3に対して上レール10が傾いて固定されるようなことが生じ難く、施工性を向上させることができる。また、水平方向に変位される引掛部17を水平方向に開口する受入凹所16に差し込んで固定することができる。そのため、例えば、上レール10に上下方向に貫通するように設けられた貫通孔に、弾性変形を伴って挿入される弾性爪片部を上枠3側に設けたようなものと比べて、比較的に強固に固定することができる。また、互いに水平方向に僅かに位置ずれがあったような場合にも位置ずれを吸収、つまり、引掛部17を受入凹所16に差し込むことができる。
【0064】
引掛部17は、一方に対して戸幅方向に変位自在に保持され、受入凹所16は、戸幅方向に開口している。このような構成とすれば、戸幅方向に変位される引掛部17を戸幅方向に開口する受入凹所16に差し込んで固定することができる。これにより、引掛部17を、比較的に幅狭となる上レール10のレール幅(戸厚)方向に沿って変位される構成としたものと比べて、引掛部17の引掛代を効果的に大きくすることができる。
また、引掛部17は、一方に設けられた保持部18に対して付勢部材19によって突出方向に付勢されている。また、引掛部17の突出方向先端部及びこの先端部が当接される受入凹所16を区画する凹所区画部位15の両方または一方には、互いの当接によるガイド作用によって引掛部17を後退させる傾斜ガイド面17aが設けられている。このような構成とすれば、枠下地等に固定された上枠3に対して上レール10を上方側に移動させれば、引掛部17の先端部及び凹所区画部位15の両方または一方に設けられた傾斜ガイド面17aによって引掛部17が付勢部材19の付勢に抗して後退する。また、更に上レール10を上方側に移動させて引掛部17が受入凹所16の開口内に位置すれば、付勢部材19の付勢によって引掛部17が突出し、受入凹所16に差し込まれる。これにより、引掛部17を手指等によってスライドさせる必要があるものと比べて、施工性をより向上させることができる。
【0065】
受入凹所16は、他方としての上レール10に設けられ、受入凹所16を区画する凹所区画部位15に、上枠3に止着される固着具7の挿通孔15dを設けた構成とされている。このような構成とすれば、引掛部17を受入凹所16に差し込んで仮固定した状態で、凹所区画部位15の挿通孔15dを介して固着具7を上枠3に止着することで本固定することができる。また、凹所区画部位15を固着具7の挿通箇所として機能させることができ、他の部位に固着具7の挿通孔を設けたものと比べて、構造の簡略化を図ることができる。
つまり、受入凹所16を区画する凹所区画部位15は、上レール10の固定対象としての上枠3に固着具7によって固定される固定具として機能する。この凹所区画部位15は、駆動機構20よりも上下方向に沿う寸法が大とされ、上レール10の溝底板状部12上に長手方向に沿って間隔を空けて複数箇所に取り付けられる。このような構成とすれば、複数の凹所区画部位15を介して固着具7を上枠3に止着することで上レール10を上枠3に固定することができる。また、戸幅W1,W2に応じて上レール10の寸法調整がなされた場合にも、これら凹所区画部位15の取付位置を変更することで対応することができる。また、これら凹所区画部位15の上下方向に沿う寸法が駆動機構20よりも大とされているので、駆動機構20を上枠3に干渉させることなく上レール10を上枠3に固定することができる。換言すれば、上枠3側に駆動機構20を受け入れる凹所等を設けることなく上レール10を上枠3に固定することができる。
【0066】
また、上レール10に設けられる受入凹所16は、上記した駆動機構20の構成部材が設置されていないスペースに設けられている(図3及び図4参照)。このような構成とすれば、駆動機構20の構成部材が設置された以外の空きスペースを利用して受入凹所16を設けることができ、上レール10の上下方向に沿う寸法のコンパクト化を図ることができる。図例では、第1従動回転車ユニットと位置検知部40との間及び駆動部30と第2従動回転車ユニットとの間のそれぞれに、受入凹所16を区画する凹所区画部位15を設けた例を示している。また、上レール10の長さに応じて、適宜の個数の凹所区画部位15を戸幅方向に間隔を空けて設けた構成としてもよい。図1では、上記した最長の上レール10の第1半部10A及び第2半部10Bのそれぞれに、二つの凹所区画部位15,15を設けた例を示している。つまり、上レール10に、長手方向に間隔を空けて四つの凹所区画部位15,15,15,15を設けた例を示している。図10では、最長の上レール10の第1半部10Aと概ね同長さとされた上レール10Cに、長手方向に間隔を空けて二つの凹所区画部位15,15を設けた例を示している。
【0067】
凹所区画部位15は、溝底板状部12の上面に沿うように固定される固定片部15aと、この固定片部15aから立ち上がるように設けられ、受入凹所16が設けられた凹所区画片部15bと、を備えている。本実施形態では、戸幅方向に間隔を空けて対状に凹所区画片部15b,15bを設け、それぞれの下端部に、固定片部15a,15aを設けた構成としている。また、凹所区画片部15b,15bのそれぞれに、戸幅方向に貫通するように受入凹所16を設けた構成としている。図例では、受入凹所16を、戸幅方向に見て略方形孔状とした例を示している。
また、凹所区画部位15は、これら凹所区画片部15b,15bの上端部間に架け渡されるように設けられ、挿通孔15dが上下方向に貫通するように設けられた被固定片部15cを備えている。この凹所区画部位15は、両側の固定片部15a,15aがねじ等の適宜の固着具によって溝底板状部12に固定されるものであってもよい。なお、凹所区画部位15としては、固定片部15a,15a、凹所区画片部15b,15b及び被固定片部15cを備えた略U字状とされたものに限られず、その他、種々の構成とされたものであってもよい。
【0068】
引掛部17は、図5に示すように、一方としての上枠3に固定される保持部18に保持されている。本実施形態では、保持部18を、上枠3に設けられた受入溝3aの溝底に固定した例を示している。これら引掛部17及び保持部18を含む引掛ユニットは、上記した凹所区画部位15に設けられた受入凹所16に引掛部17の差し込みが可能なように、上枠3の長手方向に間隔を空けて複数箇所に設けられている。図例では、上枠3の長手方向に隣り合う引掛ユニットを、それぞれの引掛部17,17の保持部18,18に対する突出方向が戸幅方向で逆側となるように設けた例を示している。
また、引掛部17は、図9に示すように、戸幅方向に長尺な略直方体状とされている。本実施形態では、この引掛部17の戸幅方向一端部となる突出方向先端部に、傾斜ガイド面17aを設けた例を示している。この傾斜ガイド面17aは、戸幅方向かつ斜め下方側に向くように形成され、引掛部17の突出方向先端面の概ね全面に亘って設けられている。
【0069】
また、引掛部17には、保持部18に設けられたガイド溝18bに差し込まれる抜止突起17bが設けられている。この抜止突起17bは、図示省略しているが、引掛部17の戸厚方向両側面のそれぞれに設けられている。
また、引掛部17の戸幅方向他端部となる基端部には、付勢部材19の一端側を受け入れる受入凹部17cが戸幅方向外側に向けて開口するように設けられている。
保持部18は、戸幅方向に開口して引掛部17を受け入れる受入凹所を区画するように形成されている。図例では、保持部18に、引掛部17の下面側に沿わせられる下面片部と、引掛部17の戸厚方向両側面に沿わせられる両側片部と、引掛部17の基端部に対向される基端片部と、を設けた例を示している。この保持部18の基端片部に、付勢部材19の他端部が当接される。
【0070】
また、保持部18の両側片部及び基端片部のそれぞれに、上枠3の受入溝3aの溝底に沿うように固定される固定片部18aを設けた例を示している。これら固定片部18aには、上枠3に止着されるねじ等の固着具の軸部が挿通される挿通孔が設けられている。
また、保持部18の両側片部に、引掛部17の抜止突起17bを戸幅方向に変位自在に受け入れるガイド溝18b,18bを設けた例を示している。これらガイド溝18b,18bは、戸幅方向に延びるように設けられている。また、保持部18の両側片部に、引掛部17の上面側に沿わせられる上面片部18c,18cを設けた例を示している。
付勢部材19は、引掛部17を保持部18に対して押し出すように付勢する構成とされている。この付勢部材19は、例えば、圧縮コイルばねであってもよい。
【0071】
上記のような構成とされた引掛ユニットが固定された上枠3に対して凹所区画部位15が固定された上レール10を仮固定する際には、図9(b)に示すように、上枠3に対して上レール10を上方側に向けて移動させる。上レール10を上方側に移動させれば、図9(c)に示すように、凹所区画部位15の一方の凹所区画片部15bと被固定片部15cとの角部が引掛部17の傾斜ガイド面17aに当接し、ガイド作用によって引掛部17が保持部18に押し込まれるように変位する。そして、上レール10を更に上方側に移動させれば、図9(d)に示すように、引掛部17が凹所区画部位15の受入凹所16に差し込まれ、上レール10が上枠3に対して仮固定(仮保持)される。このように上レール10を上枠3に対して仮固定した状態で、凹所区画部位15の挿通孔15dを介して固着具7を上枠3に止着し、上レール10を上枠3に対して本固定するようにしてもよい。なお、図示省略しているが、上レール10の溝底板状部12には、固着具7の頭部よりも大径状の挿通孔が設けられている。
【0072】
また、引掛部17及びこれを保持する保持部18並びに保持部18に対して引掛部17を突出方向に付勢する付勢部材19としては、上記したような構成とされたものに限られず、その他、種々の構成とされたものであってもよい。また、上記した例では、引掛部17の先端部に傾斜ガイド面17aを設けた例を示しているが、このような態様に代えて、または加えて、凹所区画部位15における引掛部17の先端部が当接される部位に傾斜ガイド面を設けた構成としてもよい。また、上記した例では、上枠3に引掛部17を設け、上レール10に受入凹所16を設けた例を示しているが、これらを逆側に設けるようにしてもよい。つまり、上枠3に受入凹所16を設け、上レール10に引掛部17を設けた構成としてもよい。
【0073】
また、戸開閉装置1は、図2に示すように、上枠3と上レール10との間を覆うように、上レール10の戸厚方向両側に配されるカバー50,50を備えていてもよい。これらカバー50,50は、適宜の接着剤や固着具等によって上レール10に固定されるものであってもよく、または、上レール10に設けられた被係止部に係止する係止部を設けた構成とされたものでもよい。また、上記のように袖壁納めとした場合には、袖壁側のカバー50は、戸先側縦枠4から中方立6までを覆うように設けられたものであってもよい。
【0074】
次に、戸開閉装置の一変形例について、図11を参照しながら説明する。
なお、上記した例との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略に説明する。また、上記した例と同様に奏する作用効果についても説明を省略または簡略に説明する。
【0075】
本変形例に係る戸開閉装置1Bは、図11(a)~(c)に示すように、引掛部17A及び受入凹所16Aの構成が上記した例とは主に異なる。
本変形例では、受入凹所16Aを区画する凹所区画部位15A及び引掛部17Aのうちの一方に、ねじ操作されて引掛部17Aを受入凹所16A内において固定する固定ねじ19Aを設けた構成としている。このような構成とすれば、引掛部17Aを受入凹所16Aに差し込んだ状態で、固定ねじ19Aをねじ操作することで、引掛部17Aを受入凹所16A内において固定することができる。
また、本変形例では、凹所区画部位15Aを上枠3側に設け、引掛部17Aを含む引掛ユニットを上レール10D側に設けた構成としている。なお、図例では、一組の凹所区画部位15A及び引掛ユニットを例示しているが、上記同様、上レール10Dの長手方向に間隔を空けて複数箇所に凹所区画部位15A及び引掛ユニットが設けられている。
【0076】
引掛部17Aは、上レール10Dに設けられた保持部18Aに対して戸幅方向に変位自在に保持されている。この引掛部17Aは、戸幅方向に延びるように設けられ、厚さ方向が上下方向となるように配される略平板状とされたものであってもよい。
また、この引掛部17Aの受入凹所16Aに差し込まれる戸幅方向一端側の先端部には、固定ねじ19Aがねじ合わされる雌ねじ孔が上下方向に貫通するように設けられている。また、この引掛部17Aの戸幅方向他端側の基端部には、当該引掛部17Aを戸幅方向に変位させる際の手掛部17Abが設けられている。図例では、手掛部17Abを、引掛部17Aの基端部から下方側に向けて垂れ下がるように設けられた片部とした例を示している。
【0077】
保持部18Aは、上レール10Dの溝底板状部12(図2等参照)に固定され、上方側に向けて突出するように設けられ、その上端部に、引掛部17Aを戸幅方向に変位自在に保持する戸幅方向に貫通する保持孔を設けた構成とされている。
固定ねじ19Aは、軸部(雄ねじ部)側を上方側に向けて配され、下端部に操作部となる頭部を設けた構成とされている。この固定ねじ19Aの頭部は、手指で操作が可能な構成とされたものであってもよく、適宜の工具によって操作されるものであってもよい。
凹所区画部位15Aは、引掛部17Aの先端部を受け入れるように戸幅方向に向けて受入凹所16Aを開口させた構成とされている。図例では、受入凹所16Aを、戸幅方向一方側及び戸厚方向両側に開口させた例を示している。
【0078】
この凹所区画部位15Aは、上枠3の受入溝3aの溝底に固定される固定片部15Aaと、この固定片部15Aaの戸幅方向他方側端部の縁部から垂れ下がる垂下片部15Abと、を備えている。また、凹所区画部位15Aは、この垂下片部15Abの下端部から戸幅方向一方側に向けて延出する保持片部15Acを備えている。これら固定片部15Aa、垂下片部15Ab及び保持片部15Acによって受入凹所16Aが区画されている。また、保持片部15Acには、固定ねじ19Aの軸部を受け入れる切欠状の凹所が戸幅方向一方側に向けて開口し、かつ上下方向に貫通するように設けられている。また、図例では、保持片部15Acの先端部に、下方側に向けて屈曲し、固定ねじ19Aの頭部の戸幅方向一方側への移動を抑止する移動抑止部を設けた例を示している。なお、この凹所区画部位15Aは、固定片部15Aaが適宜の固着具によって上枠3に固定されるものであってもよい。
【0079】
本変形例において、上枠3に対して上レール10Dを固定する際には、図11(a)に示すように、上枠3に固定された凹所区画部位15Aの受入凹所16Aに引掛部17Aの差し込みが可能な位置に上レール10Dを位置付ける。この際、固定ねじ19Aの頭部と引掛部17Aの先端部との間に保持片部15Acの受け入れが可能なように固定ねじ19Aを緩めておくようにしてもよい。そして、図11(b)に示すように、引掛部17Aを戸幅方向に変位させ、その先端部を受入凹所16Aに差し込む。次いで、図11(c)に示すように、固定ねじ19Aを締め付け、その頭部と引掛部17Aの先端部との間に保持片部15Acを挟み込むように保持させて上枠3に対して上レール10Dを固定するようにしてもよい。なお、このように固定した後に、適宜の固定具やねじ等の固着具によって上レール10Dの適所を更に上枠3に対して固定するようにしてもよい。
【0080】
また、本変形例においても、引掛部17Aを突出方向に付勢する上記したような付勢部材や傾斜ガイド面を設けた構成としてもよい。
また、上記した各例では、引掛部17,17Aを戸幅方向に変位自在とし、受入凹所16,16Aを戸幅方向に開口させた例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、引掛部17,17Aを戸厚方向や戸厚方向に対して斜め水平方向等に変位自在とし、受入凹所16,16Aを引掛部17,17Aの受け入れが可能な方向に開口させた構成としてもよい。
また、上記した各例に係る戸開閉装置1,1A,1Bに、このような引掛部17,17Aを含む引掛ユニットや、受入凹所16,16Aを設けていない構成としてもよい。この場合は、適宜の固定具やねじ等の固着具によって上レール10,10C,10Dの適所を上枠3に対して固定するようにしてもよい。
また、上記した例では、駆動回転車31を固定する第1固定部材34とモータ35を固定する第2固定部材38とを別体とした例を示しているが、このような態様に限られない。
また、上記した例では、第1従動回転車21及び第2従動回転車25の第1従動車軸22及び第2従動車軸26を傾斜状に設けた例を示しているが、これらを戸厚方向や戸高方向となるように設けた構成としてもよい。
【0081】
また、上記した例では、第1従動回転車21と第2従動回転車25との間に駆動回転車31及びモータ35を設けた例を示しているが、このような態様に限られない。第1従動回転車21及び第2従動回転車25のうちの一方を、紐状伝動体28が巻き掛けられる第1回転車を構成する駆動回転車とし、他方を、第2回転車を構成する従動回転車としてもよい。この場合は、この駆動回転車に回転の伝達が可能となるように適宜のモータを設けた構成としてもよい。
また、上記した例では、上レール10,10C,10Dに、下向きに開口するガイド溝11を設けた例を示しているが、戸厚方向一方側や上方側に向けて開口するようなガイド溝11を設けた構成としてもよい。この場合は、被ガイド部材29や駆動機構20を適宜、変形するようにすればよい。
また、上記した例では、駆動回転車31、第1従動回転車21及び第2従動回転車25を、プーリ(滑車)とした例を示しているが、歯車(スプロケット)等としてもよい。また、紐状伝動体28も、駆動回転車31、第1従動回転車21及び第2従動回転車25に合わせてロープ状部材とされたものに限られず、ベルトやボールチェーン、チェーン等であってもよい。また、駆動機構20としては、このような駆動回転車31によって変位される紐状伝動体28を備えた構成に限られない。例えば、モータによって回転されるスクリューによって戸幅方向に変位される連結部を第1被ガイド部材29Aに連結したような構成等でもよく、駆動機構20としては、その他、種々の構成とされたものであってもよい。本実施形態に係る戸開閉装置1,1A,1Bの上記した各機器、各部材及び各部の構成は、一例に過ぎず、その他、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1,1A,1B 戸開閉装置
3 上枠(固定対象)
10,10C,10D 上レール
10A 第1半部
10a 第1端部
10b 第2端部
10B 第2半部
11 ガイド溝
12 溝底板状部
15 凹所区画部位(固定具)
20 駆動機構
21 第1従動回転車(第1回転車)
25 第2従動回転車(第2回転車)
28 紐状伝動体
29A 第1被ガイド部材
29B 第2被ガイド部材
30 駆動部
7 固着具
9 引戸パネル
9a 上端部
W1 最大戸幅
L1 長さ(最長の上レールの長さ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11