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特許7493149光屈折部材、光学システム、照明システム、表示システム、移動体及び金型
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】光屈折部材、光学システム、照明システム、表示システム、移動体及び金型
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/00 20060101AFI20240524BHJP
   B29C 45/37 20060101ALI20240524BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240524BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240524BHJP
   F21V 5/00 20180101ALI20240524BHJP
   F21V 5/02 20060101ALI20240524BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20240524BHJP
   G02B 30/26 20200101ALI20240524BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240524BHJP
   F21Y 115/15 20160101ALN20240524BHJP
【FI】
G02B5/00 Z
B29C45/37
B60K35/23
F21S2/00 330
F21S2/00 431
F21V5/00 100
F21V5/02 100
G02B5/00 A
G02B27/01
G02B30/26
F21Y115:10
F21Y115:15
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020180865
(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公開番号】P2022071745
(43)【公開日】2022-05-16
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪口 知久
(72)【発明者】
【氏名】上水 和平
(72)【発明者】
【氏名】高田 和政
(72)【発明者】
【氏名】藤田 勝
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-544303(JP,A)
【文献】特開2013-097876(JP,A)
【文献】特表2004-507866(JP,A)
【文献】特開2018-163259(JP,A)
【文献】特開2011-090832(JP,A)
【文献】国際公開第2008/062638(WO,A1)
【文献】特開2018-004817(JP,A)
【文献】特開2015-082019(JP,A)
【文献】特開2020-020955(JP,A)
【文献】国際公開第2019/130948(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104216037(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00- 5/136
G02B27/00-30/60
G09F 9/00
B60K35/23-35/235
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載されるヘッドアップディスプレイに適用される光屈折部材であって、
前記ヘッドアップディスプレイは、前記光屈折部材からの出射光を受けて画像を表示し、
前記光屈折部材は、
面状光が入射する入射面と、
前記面状光を屈折させる複数の屈折部と、
前記面状光が、前記複数の屈折部により屈折され、出射光として出射される出射面と、を備え、
前記複数の屈折部は、
前記入射面と前記出射面との少なくともいずれか一方に、一方向において並んで設けられており、
前記出射光の前記出射面上の配光範囲が、前記一方向に交差する交差方向における前記画像の上方向に対応する方向ほど前記一方向に広がるように、前記交差方向に沿って、前記面状光を屈折させる方向が変化する領域を有する、
光屈折部材。
【請求項2】
前記複数の屈折部が、前記一方向に交差する方向に沿って連続している、
請求項1に記載の光屈折部材。
【請求項3】
前記複数の屈折部が、前記一方向に交差する方向に沿って延伸する溝を有し、
前記溝の深さが前記一方向に交差する方向に沿って線形に変化する、
請求項1又は2に記載の光屈折部材。
【請求項4】
前記複数の屈折部が、前記一方向に交差する方向に沿って延伸する溝を有し、
前記溝の深さhが0.01mm≦h≦5mmである、
請求項1~3のいずれか1項に記載の光屈折部材。
【請求項5】
前記入射面に入射する前記面状光に対して負の屈折力を持つ、
請求項1~4のいずれか1項に記載の光屈折部材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の光屈折部材と、
光源からの光源光が入射する光源入射面、並びに互いに対向する第1面及び第2面を有する導光部材と、
前記第1面に設けられて、前記導光部材の内部を通る前記光源光を前記第2面に向けて反射するプリズムと、を備え、
前記導光部材は、前記光源入射面から入射した前記光源光を前記プリズムにて直接反射して前記第2面から前記面状光として出射させるダイレクト光路を含む、
光学システム。
【請求項7】
前記一方向に沿って、前記光源光が前記光源入射面に入射する、
請求項6に記載の光学システム。
【請求項8】
前記一方向に交差する方向に沿って、前記光源光が前記光源入射面に入射する、
請求項6に記載の光学システム。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項に記載の光学システムと、
前記光源光を前記光源入射面に出射する光源と、を備える、
照明システム。
【請求項10】
請求項9に記載の照明システムと、
前記出射光を受けて画像を表示する表示器と、を備える、
表示システム。
【請求項11】
請求項10に記載の表示システムと、
前記表示システムを搭載する移動体本体と、を備える、
移動体。
【請求項12】
移動体に搭載されるヘッドアップディスプレイに適用される光屈折部材を形成するための金型であって、
前記ヘッドアップディスプレイは、前記光屈折部材からの出射光を受けて画像を表示し、
前記金型は、
キャビティを備えた第1型部と、
前記第1型部と型締される第2型部と、
溶融樹脂を前記キャビティ内に供給する供給路と、を備え、
前記キャビティは前記光屈折部材を形成するための形状を有し、
前記光屈折部材は、
面状光が入射する入射面と、
前記面状光を屈折させる複数の屈折部と、
前記面状光が、前記複数の屈折部により屈折され、出射光として出射される出射面と、を備え、
前記複数の屈折部は、
前記入射面と前記出射面との少なくともいずれか一方に、一方向において並んで設けられており、
前記出射光の前記出射面上の配光範囲が、前記一方向に交差する交差方向における前記画像の上方向に対応する方向ほど前記一方向に広がるように、前記交差方向に沿って、前記面状光を屈折させる方向が変化する領域を有する、
金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に光屈折部材、光学システム、照明システム、表示システム、移動体及び金型に関する。より詳細には、本開示は、入射面から入射した光を制御して出射面から出射させる光屈折部材、光学システム、照明システム、表示システム、移動体及び光屈折部材を形成するための金型に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、対象空間に虚像を投影する画像表示装置(表示システム)を開示する。この画像表示装置は、自動車用HUD(Head-Up Display)装置である。ダッシュボード 内の自動車用HUD装置(光学システム)から発せられる画像光である投射光がフロントガラスで反射され、視認者である運転者に向かう。これにより、ユーザ(運転者)は、ナビゲーション画像等の画像を虚像として視認することができ、路面等の背景に虚像が重畳されているように視認する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-142491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、端部の光の強度低下を補正した適切な画像をユーザに視認させることができる光屈折部材、光学システム、照明システム、表示システム、移動体及び金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る光屈折部材は、移動体に搭載されるヘッドアップディスプレイに適用される光屈折部材である。前記ヘッドアップディスプレイは、前記光屈折部材からの出射光を受けて画像を表示する。前記光屈折部材は、面状光が入射する入射面と、前記面状光を屈折させる複数の屈折部と、前記面状光が、前記複数の屈折部により屈折され、出射光として出射される出射面と、を備える。前記複数の屈折部は、前記入射面と前記出射面との少なくともいずれか一方に、一方向において並んで設けられている。前記複数の屈折部は、前記出射光の前記出射面上の配光範囲が、前記一方向に交差する交差方向における前記画像の上方向に対応する方向ほど前記一方向に広がるように、前記交差方向に沿って、前記面状光を屈折させる方向が変化する領域を有する。
【0006】
本開示の一態様に係る光学システムは、前記光屈折部材と、導光部材と、プリズムと、を備える。前記導光部材は、光源からの光源光が入射する光源入射面、並びに互いに対向する第1面及び第2面を有する。前記プリズムは、前記第1面に設けられて、前記導光部材の内部を通る前記光源光を前記第2面に向けて反射する。さらに、前記導光部材は、前記光源入射面から入射した前記光源光を前記プリズムにて直接反射して前記第2面から前記面状光として出射させるダイレクト光路を含む。
【0007】
本開示の一態様に係る照明システムは、前記光学システムと、前記光源光を前記光源入射面に出射する光源と、を備える。
【0008】
本開示の一態様に係る表示システムは、前記照明システムと、前記出射光を受けて画像を表示する表示器と、を備える。
【0009】
本開示の一態様に係る移動体は、前記表示システムと、前記表示システムを搭載する移動体本体と、を備える。
【0010】
本開示の一態様に係る金型は、移動体に搭載されるヘッドアップディスプレイに適用される光屈折部材を形成するための金型である。前記ヘッドアップディスプレイは、前記光屈折部材からの出射光を受けて画像を表示する。前記金型は、キャビティを備えた第1型部と、前記第1型部と型締される第2型部と、溶融樹脂を前記キャビティ内に供給する供給路と、を備える。前記キャビティは前記光屈折部材を形成するための形状を有する。前記光屈折部材は、面状光が入射する入射面と、前記面状光を屈折させる複数の屈折部と、前記面状光が、前記複数の屈折部により屈折され、出射光として出射される出射面と、を備える。前記複数の屈折部は、前記入射面と前記出射面との少なくともいずれか一方に、一方向において並んで設けられている。前記複数の屈折部は、前記出射光の前記出射面上の配光範囲が、前記一方向に交差する交差方向における前記画像の上方向に対応する方向ほど前記一方向に広がるように、前記交差方向に沿って、前記面状光を屈折させる方向が変化する領域を有する。
【発明の効果】
【0011】
本開示では、端部の光の強度低下を補正した適切な画像をユーザに視認させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1Aは、実施形態に係る光学システムを模式的に示す断面図である。図1Bは、図1Aの領域A1を拡大した断面図である。
図2図2は、同上の光学システムを模式的に示す斜視図である。
図3図3は、同上の光学システムを模式的に示す平面図である。
図4図4Aは、同上の光学システムが備える光屈折部材を模式的に示す平面図及び側面図である。図4Bは、図4AのF1-F1線断面図である。
図5図5は、同上の光学システムを用いた表示システムの説明図である。
図6図6は、同上の表示システムを備える移動体の説明図である。
図7図7Aは、同上の光学システムの平面図である。図7Bは、同上の光学システムの正面図である。図7Cは、同上の光学システムの下面図である。図7Dは、同上の光学システムの側面図である。
図8図8Aは、図7Cの領域A1を拡大した模式図である。図8Bは、図8AのB1-B1線断面図である。
図9図9は、比較例の光学システムの配光を模式的に示す平面図である。
図10図10は、実施形態の光学システムの配光を模式的に示す平面図である。
図11図11は、実施形態に係る金型を模式的に示す斜視図である。
図12図12は、同上の金型を模式的に示すY-Z平面断面図である。
図13図13は、同上の金型が備えるキャビティを模式的に示すX-Z平面断面図である。
図14図14は、同上の光学システムの変形例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に説明する実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、実施形態及び変形例に限定されない。この実施形態及び変形例以外であっても、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0014】
(1)概要
まず、本実施形態に係る光学システム100、及び光学システム100を用いた照明システム200について、図1A図3を参照して説明する。
【0015】
本実施形態に係る光学システム100(図1A及び図1B参照)は、光源入射面10から入射した光源光を制御して出射面7から出射させる機能を有する。光学システム100、光屈折部材8と、導光部材1と、プリズム3と、を備える。また、光学システム100は光制御体2を更に備えてもよい。
【0016】
光学システム100は、光源4と共に照明システム200を構成する。言い換えれば、本実施形態に係る照明システム200は、光学システム100と、光源4と、を備える。光源4は、光源入射面10に入射する光源光を出射する。詳しくは後述するが、光学システム100が光制御体2を備える場合には、光源4からの光源光は、導光部材1に直接入射するのではなく、光制御体2を通して導光部材1に入射する。つまり、光源4は、光制御体2を通して光源入射面10に光源光を出射する。
【0017】
このように、本実施形態では、光学システム100は、光屈折部材8、導光部材1、及びプリズム3に加えて、光制御体2を更に備えている。光制御体2は、光源4と導光部材1の光源入射面10との間に位置し、光源4から出射されて光源入射面10に入射する光源光を制御する。特に、本実施形態では、導光部材1と光制御体2とは、一体成形品として一体化されている。つまり、本実施形態では、導光部材1と光制御体2とは一体成形品であって、一体不可分の関係にある。言い換えれば、導光部材1の光源入射面10に対して光制御体2は継ぎ目なく連続しており、導光部材1と光制御体2とはシームレスに一体化されている。そのため、本実施形態では、導光部材1における光源入射面10は、導光部材1及び光制御体2の一体成形品の内部に規定される「仮想面」であって、実体を伴わない。なお、光制御体2は導光部材1と分離した形態に形成されてもよい。また、光制御体2は光学システム100に必須の構成ではなく、適宜省略が可能である。
【0018】
本実施形態では、導光部材1は、光源4からの光源光が入射する光源入射面10、並びに互いに対向する第1面11及び第2面12を有している。プリズム3は、 第1面11に設けられている。プリズム3は、導光部材1の内部を通る光源光を第2面12に向けて反射する。
【0019】
ここで、導光部材1は、ダイレクト光路L1(図1A及び図1B参照)を含む。ダイレクト光路L1は、光源入射面10から入射した光源光をプリズム3にて直接反射して第2面12から面状光9として出射させる光路である。なお、ここで言う面状光9とは、プリズム3による反射により、光源光の第2面での出射範囲が、光源光の光源入射面10での入射範囲よりも広がった状態を示している。さらに言えば、導光部材1は、光源入射面10から導光部材1内に入射した光源光を、導光部材1の内部においてはプリズム3での1回の反射のみで第2面から出射させるような光路(ダイレクト光路L1)を含んでいる。ダイレクト光路L1を通る光源光は、光源入射面10から導光部材1に入射すると、プリズム3以外で反射されることなく、プリズム3での1回の反射のみで第2面12に到達し、そのまま第2面12から導光部材1外に面状光9として出射される。
【0020】
本実施形態では、光源入射面10から導光部材1に入射して第2面12から出射される光源光の大部分が、ダイレクト光路L1を通して導光部材1の内部を導光される。そのため、本実施形態では、光源入射面10から導光部材1に入射した光の大部分は、プリズム3以外で反射されることなく、かつプリズム3で1回反射されるのみで、第2面から導光部材1外に出射される。
【0021】
ところで、本実施形態に係る光学システム100では、図1Aに示すように、光源入射面10から入射する光の光軸Ax1は、光源入射面10から離れるほど第1面11までの距離が小さくなるように、第1面11に対して傾斜している。すなわち、本実施形態では、光源入射面10から入射する光源光の光軸Ax1は、第1面11に対して平行ではなく傾斜しており、その傾斜によって、光源入射面10から離れるほど第1面11に近づくことになる。
【0022】
これにより、光源入射面10から入射した光源光は、光源入射面10から離れるほど、つまり導光部材1の内部を進むにつれて、第1面11に近づくことになり、第1面11(プリズム3を含む)に対して入射しやすい。そのため、光源入射面10から入射した光源光の大部分は、導光部材1のうち光源入射面10と対向する端面13に到達する前に、第1面11に入射しやすくなる。言い換えれば、光源入射面10から入射した光源光の大部分は、導光部材1のうち光源入射面10とは反対側の端面13に到達しにくくなるので、端面13から光源光が漏れにくくなる。結果的に、ダイレクト光路L1を通して第2面12から導光部材1外に出射される面状光9の、光源入射面10から入射した光源光に占める割合を高くなり、光源光の取り出し効率の向上を図ることができる。
【0023】
また、本実施形態に係る光学システム100は、図1A図4Bに示すように、光屈折部材8を備えている。光屈折部材8は第2面12から取り出される光源光(面状光9)の配光を制御する。なお、ここで言う「配光」とは光の照射方向の光軸と交差する平面内での光の強度分布を示す。
【0024】
図1A図4Bに示すように、光屈折部材8は、入射面6と、複数の屈折部81と、出射面7と、を備える。入射面6には、導光部材1の第2面12から出射される面状光9が入射する。複数の屈折部81は、入射面6に入射した面状光9を屈折させる。出射面7からは、面状光9を複数の屈折部81で屈折した光が、出射光14として出射される。ここで、複数の屈折部81は、入射面6と出射面7との少なくともいずれか一方に、一方向に並んで設けられている。
【0025】
本実施形態では、光屈折部材8は、入射面6が導光部材1の第2面に対向するように設けられている。また、複数の屈折部81は、出射面7と平行な方向であって、導光部材1の奥行き方向(図1Aにおいて光軸Ax1が延びる方向)に並んで、入射面6に設けられている。換言すると、複数の屈折部81が光屈折部材8の入射面6に並ぶ方向に沿って、光源光が導光部材1の光源入射面10に入射する。複数の屈折部81は、それぞれ、導光部材1の奥行き方向において曲率を有し、入射面6に対して窪んだ形状を持つ曲面レンズである。
【0026】
これにより、入射面6に入射された面状光9は、複数の屈折部81によって屈折され、出射面7から出射光14として出射される。
【0027】
また、図3に示すように、複数の屈折部81は、導光部材1の幅方向(図3において複数の光源4が並ぶ方向)において、面状光9を屈折させる方向が変化する領域を有する。また、複数の屈折部81は、導光部材1の奥行き方向と垂直に交差する、導光部材1の幅方向に沿って連続している。
【0028】
つまり、それぞれが曲面レンズである複数の屈折部81は、光屈折部材8に入射した光を光軸の方向を保ったまま導光部材1の幅方向に沿って移動させたときに、出射光14の光軸の方向が連続的に変化していく領域を有する。なお、ここで言う「光軸」は、系全体を通過する光束の代表となる仮想的な光線を意味する。
【0029】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る光屈折部材8、光屈折部材8を用いた光学システム100、光学システム100を用いた照明システム200、照明システム200を用いた表示システム300、移動体B1、及び光屈折部材8を形成するための金型17について、 図1A図13を参照して詳しく説明する。
【0030】
(2.1)前提
以下の説明では、導光部材1の幅方向(図3において複数の光源4が並ぶ方向)を「X軸方向」、導光部材1の奥行き方向(図1Aにおいて光軸Ax1が延びる方向)を「Y軸方向」とする。また、以下の説明では、導光部材1の厚み方向(図1Aにおいて第1面11及び第2面12が並ぶ方向)を「Z軸方向」とする。これらの方向を規定するX軸、Y軸及びZ軸は、互いに直交する。なお、図面における「X軸方向」、「Y軸方向」及び「Z軸方向」を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0031】
また、本開示でいう「取り出し効率」とは、導光部材1の光源入射面10に入射する光源光の光量に対して、導光部材1の第2面12から出射する面状光9の光量が占める割合をいう。すなわち、導光部材1の光源入射面10に入射する光源光の光量に対して、導光部材1の第2面12から出射する光源光(面状光9)の光量の相対的な比率が大きくなれば、光の取り出し効率は高く(大きく)なる。一例として、導光部材1の光源入射面10に入射する光源光の光量が「100」であるのに対して、導光部材1の第2面12から出射する面状光9の光量が「10」であれば、導光部材1における光の取り出し効率は10%となる。
【0032】
また、本開示でいう「平行」とは、2者間が略平行であること、つまり2者が厳密に平行な場合に加えて、2者間の角度が数度(例えば5度未満)程度の範囲に収まる関係にあることをいう。
【0033】
また、本開示でいう「直交」とは、2者間が略直交であること、つまり2者が厳密に直交する場合に加えて、2者間の角度が90度を基準に数度(例えば5度未満)程度の範囲に収まる関係にあることをいう。
【0034】
(2.2)表示システム
まず、表示システム300について、図5及び図6を参照して説明する。
【0035】
本実施形態に係る照明システム200は、図5に示すように、表示器5と共に表示システム300を構成する。言い換えれば、本実施形態に係る表示システム300は、照明システム200と、表示器5と、を備える。表示器5は、照明システム200から出射される出射光14を受けて画像を表示する。ここで言う「画像」は、ユーザU1(図6参照)が視認可能な態様で表示される画像であって、図形、記号、文字、数字、図柄若しくは写真等又は これらの組み合わせであってもよい。表示システム300にて表示される画像は、動画 (動画像)及び静止画(静止画像)を含む。さらに、「動画」は、コマ撮り等により得られる複数の静止画にて構成される画像を含む。
【0036】
また、本実施形態に係る表示システム300は、図6に示すように、移動体本体B11と共に自動車等の移動体B1を構成する。言い換えれば、本実施形態に係る移動体B1は、表示システム300と、移動体本体B11と、を備える。移動体本体B11は、表示システム300を搭載する。本実施形態では一例として、移動体B1は、人が運転する自動車(乗用車)であることとする。この場合において、表示システム300にて表示される画像を視認するユーザU1は、移動体B1の乗員であって、本実施形態では一例として、移動体B1としての自動車の運転者(driver)がユーザU1であると仮定する。
【0037】
本実施形態においては、表示システム300は、例えば、移動体B1に搭載されるヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up Display)に用いられる。表示システム300は、例えば、移動体B1の速度情報、コンディション情報及び運転情報等に関連する運転支援情報をユーザU1の視界に表示するために用いられる。移動体B1の運転情報としては、例えば、走行経路等を表示するナビゲーション関連の情報、並びに、走行速度及び車間距離を一定に保つACC(Adaptive Cruise Control)関連の情報等がある。
【0038】
表示システム300は、図5及び図6に示すように、画像表示部310と、光学系320と、制御部330と、を備えている。また、表示システム300は、画像表示部310、光学系320及び制御部330を収容するハウジング340を更に備えている。
【0039】
ハウジング340は、例えば合成樹脂の成型品等で構成されている。ハウジング340には、画像表示部310、光学系320及び制御部330等が収容されている。ハウジング340は、移動体本体B11のダッシュボードB13に取り付けられている。光学系320の第2ミラー322(後述する)によって反射された光は、ハウジング340の上面の開口部を通して反射部材(ウィンドシールドB12)に出射され、ウィンドシールドB12によって反射された光がアイボックスC1に集光される。反射部材は、ウィンドシー ルドB12に限らず、例えば、移動体本体B11のダッシュボードB13上に配置されるコンバイナ等で実現されてもよい。
【0040】
このような表示システム300によれば、ユーザU1は、移動体B1の前方(車外)の空間に投影された虚像を、ウィンドシールドB12越しに視認することになる。本開示でいう「虚像」は、表示システム300から出射される光がウィンドシールドB12等の反射部材にて発散するとき、その発散光線によって、実際に物体があるように結ばれる像を意味する。そのため、移動体B1を運転しているユーザU1は、移動体B1の前方に広がる実空間に重ねて、表示システム300にて投影される虚像としての画像を視認する。要するに、本実施形態に係る表示システム300は、画像として、虚像を表示する。表示システム300が表示可能な画像(虚像)は、移動体B1の走行面D1に沿って重畳された虚像E1、及び走行面D1と直交する平面PL1に沿って立体的に描画される虚像を含む。
【0041】
画像表示部310は、ケース311を備えている。画像表示部310は、画像中の対象物から複数の方向に放出される光を再現することで対象物を立体的に見せるライトフィールド(Light Field)方式により、立体画像を表示する機能を有している。ただし、画像表示部310が、立体描画の対象物の虚像を立体的に表示する方式はライトフィールド方式に限定されない。画像表示部310は、ユーザU1の左右の目に、互いに視差がある画像をそれぞれ投影することで、ユーザU1に立体描画の対象物の虚像を視認させる視差方式を採用してもよい。
【0042】
画像表示部310は、表示器5と、光学システム100を含む照明システム200と、を備えている。表示器5は、例えば、液晶ディスプレイ等であって、照明システム200から出射される光を受けて画像を表示する。つまり、照明システム200は、表示器5の背後から、表示器5に向けて光を出射し、照明システム200からの光が、表示器5を透過することで、表示器5は画像を表示する。言い換えれば、照明システム200は、表示器5のバックライトとして機能する。
【0043】
画像表示部310が備えるケース311には、光学システム100及び光源4を含む照明システム200と、表示器5と、が収容されている。照明システム200及び表示器5は、ケース311に保持されている。ここでは、表示器5はケー ス311の上面に沿って配置されており、ケース311の上面から表示器5の一面が露出する。照明システム200は、ケース311内における表示器5の下方に配置されており、表示器5の下方から表示器5に向けて光を出力する。これにより、ケース311の上面は、画像が表示される表示面312を構成する。
【0044】
画像表示部310は、ハウジング340の内部に、表示面312を第1ミラー321(後述する)に向けた状態で収容されている。画像表示部310の表示面312は、ユーザU1に投影する画像の範囲、つまりウィンドシールドB12の形状に合わせた形状(例えば矩形状)である。画像表示部310の表示面312には、複数の画素がアレイ状に配置されている。画像表示部310の複数の画素は、制御部330の制御に応じて発光し、画像表示部310の表示面312から出力される光によって、表示面312に画像が表示される。
【0045】
画像表示部310の表示面312に表示された画像は、ウィンドシールドB12に出射され、ウィンドシールドB12によって反射された光がアイボックスC1に集光される。つまり、表示面312に表示された画像は、光学系320を通して、アイボックスC1内に視点があるユーザU1に視認される。このとき、ユーザU1は、移動体B1の前方(車外)の空間に投影された虚像を、ウィンドシールドB12越しに視認することになる。
【0046】
光学系320は、画像表示部310の表示面312から出力される光を、アイボックスC1に集光する。本実施形態では、光学系320は、例えば、凸面鏡である第1ミラー321と、凹面鏡である第2ミラー322と、ウィンドシールドB12と、を備えている。
【0047】
第1ミラー321は、画像表示部310から出力される光を反射して、第2ミラー322に入射させる。第2ミラー322は、第1ミラー321から入射した光をウィンドシールドB12に向かって反射する。ウィンドシールドB12は、第2ミラー322から入射した光を反射してアイボックスC1に入射させる。
【0048】
制御部330は、例えば、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしての1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを主構成とする。コンピュータシステムの1以上のメモリ又は記憶部334に記録されたプログラムを1以上のプロセッサが実行することによって、制御部330の機能(例えば、描画制御部331、画像データ作成部332及び出力部333等の機能)が実現される。プログラムは、コンピュータシステムの1以上のメモリ又は記憶部334に予め記録されている。プログラムは、電気通信回線を通じて提供されてもよいし、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク又はハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0049】
記憶部334は、例えば、書換可能な不揮発性の半導体メモリ等の非一時的記録媒体にて実現される。記憶部334は、制御部330が実行するプログラム等を記憶する。また、表示システム300は、既に述べたように、移動体B1の速度情報、コンディション情報及び運転情報等に関連する運転支援情報をユーザU1の視界に表示するために用いられる。このため、表示システム300が表示する虚像の種類は予め決まっている。そして、記憶部334には、虚像(平面描画の対象物である虚像E1、及び、立体描画の対象物である虚像)を表示するための画像データが予め記憶されている。
【0050】
描画制御部331は、移動体B1に搭載された各種のセンサ350から検出信号を受け取る。センサ350は、例えば先進運転システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)に使用される各種の情報を検出するためのセンサである。センサ350は、例えば、移動体B1の状態を検出するためのセンサ、及び移動体B1の周囲の状態を検出するためのセンサのうちの少なくとも1つを含む。移動体B1の状態を検出するためのセンサは、例えば、移動体B1の車速、温度又は残燃料等を測定するセンサを含む。移動体B1の周囲の状態を検出するためのセンサは、移動体B1の周囲を撮影する画像センサ、ミリ波レーダ又はLiDAR(Light Detection and Ranging)等を含む。
【0051】
描画制御部331は、センサ350から入力される検出信号に基づいて、この検出信号に関する情報を表示するための1又は複数の画像データを記憶部334から取得する。ここで、画像表示部310に複数種類の情報を表示する場合、描画制御部331は、複数種類の情報を表示するための複数の画像データを取得する。また、描画制御部331は、センサ350から入力される検出信号に基づいて、虚像を表示する対象空間において虚像を表示する位置に関する位置情報を求める。そして、描画制御部331は、表示対象の虚像の画像データと位置情報とを、画像データ作成部332に出力する。
【0052】
画像データ作成部332は、描画制御部331から入力される画像データ及び位置情報に基づいて、表示対象の虚像を表示するための画像データを作成する。
【0053】
出力部333は、画像データ作成部332によって作成された画像データを画像表示部310に出力し、画像表示部310の表示面312に、作成された画像データに基づく画像を表示させる。表示面312に表示された画像が、ウィンドシールドB12に投影されることで、表示システム300により画像(虚像)が表示される。このようにして、表示システム300により表示される画像(虚像)は、ユーザU1に視認される。
【0054】
(2.3)光学システム
次に、光学システム100について、図1A図4B、及び図7図10を参照して説明する。
【0055】
本実施形態では、光学システム100は、光屈折部材8と、導光部材1と、複数の光制御体2と、複数のプリズム3と、を備えている。すなわち、本実施形態に係る光学システム100は、光制御体2を複数備え、さらに、プリズム3についても複数備えている。
【0056】
また、本実施形態では、光学システム100は、複数の光源4と共に照明システム200を構成している。すなわち、本実施形態に係る照明システム200は、光学システム100と、複数の光源4と、を備えている。
【0057】
複数の光制御体2は、共通の構成を採用しているので、以下、特に断りが無い限り、1つの光制御体2について説明する構成は、他の光制御体2についても同様である。さらに、複数のプリズム3は、共通の構成を採用しているので、以下、特に断りが無い限り、1つのプリズム3について説明する構成は、他のプリズム3についても同様である。さらに、複数の光源4は、共通の構成を採用しているので、以下、特に断りが無い限り、1つの光源4について説明する構成は、他の光源4についても同様である。
【0058】
光源4は、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)素子又は有機EL(OEL:Organic Electro-Luminescence)素子等の固体発光素子である。本実施形態では一例として、光源4は、チップ状の発光ダイオード素子である。このような光源4は、実際には、その表面(発光面)がある程度の面積をもって発光するが、理想的には、その表面の一点から光を放射する点光源とみなすことができる。そこで、以下では、光源4は、理想的な点光源であると仮定して説明する。
【0059】
本実施形態では、光制御体2は、導光部材1と一体である。本開示でいう「一体」は、複数の要素(部位)について物理的に一体として取り扱うことができる態様を意味する。つまり、複数の要素が一体である、とは、複数の要素が一つにまとまっており、1つの部材のように扱うことができる態様にあることを意味する。この場合において、複数の要素は、一体成形品のように一体不可分の関係にあってもよいし、又は、別々に作成された複数の要素が、例えば、溶着、接着又はかしめ接合等により機械的に結合されていてもよい。すなわち、導光部材1と光制御体2とは、適宜の態様で一体化されていればよい。
【0060】
より具体的には、本実施形態では、上述したように、導光部材1と光制御体2とは、一体成形品として一体化されている。つまり、本実施形態では、導光部材1と光制御体2とは一体成形品であって、一体不可分の関係にある。そのため、導光部材1における光源入射面10は、上述したように、導光部材1及び光制御体2の一体成形品の内部に規定される「仮想面」であって、実体を伴わない。
【0061】
ここで、複数の光源4は、図2に示すように、X軸方向に所定の間隔を空けて並ぶように配置されている。複数の光源4は、複数の光制御体2と一対一に対応している。つまり、複数の光制御体2についても、複数の光源4と同様に、X軸方向に並ぶように配置されている。ここで、X軸方向における複数の光源4のピッチと、複数の光制御体2のピッチとは等しい。
【0062】
導光部材1は、光源4からの光源光を、光源入射面10から導光部材1内に取り込み、導光部材1内を通して第2面12に導く、つまり導光する部材である。導光部材1は、本実施形態では一例として、アクリル樹脂等の透光性を有する樹脂材料の成形品であって、板状に形成されている。つまり、導光部材1は、ある程度の厚みを有する導光板である。
【0063】
導光部材1は、上述したように、光が入射する光源入射面10、並びに互いに対向する第1面11及び第2面12を有している。さらに、導光部材1は、光源入射面10と対向する端面13を有している。
【0064】
具体的には、本実施形態では、図7A図7Dに示すように、導光部材1は、矩形板状であって、導光部材1の厚み方向において対向する2面がそれぞれ第1面11及び第2面12である。また、導光部材1の4つの端面(周面)のうちの1つの端面が光源入射面10である。つまり、導光部材1は、平面視において(Z軸方向の一方から見て)、矩形状に形成されている。ここでは一例として、導光部材1は、X軸方向よりもY軸方向の寸法が小さい、長方形状に形成されている。そして、導光部材1の厚み方向(Z軸方向)の両面が、それぞれ第1面11及び第2面12を構成する。さらに、導光部材1の短手方向(Y軸方向)の両面が、それぞれ光源入射面10及び端面13を構成する。
【0065】
このように、導光部材1のY軸方向において互いに対向する2つの端面のうちの一方の端面(図1Aにおける左面)は、複数の光源4から出射される光源光が、それぞれ複数の光制御体2を通して入射する光源入射面10である。導光部材1の第1面11は、図1Aにおける下面であり、第2面12は、図1Aにおける上面である。そして、第2面12は、導光部材1の内部から外部へと面状光9を出射する。したがって、導光部材1は、光源入射面10である一方の端面から光源光が入射することにより、第2面12が面発光する。
【0066】
また、本実施形態では、第2面12は、X-Y平面と平行な平面である。また、光源入射面10は、X-Z平面と平行な平面である。ここで言う「X-Y平面」は、X軸及びY軸を含む平面であって、Z軸と直交する平面である。同様に、ここで言う「X-Z平面」とは、X軸及びZ軸を含む平面であって、Y軸と直交する平面である。言い換えれば、第2面12はZ軸と直交する平面であって、光源入射面10はY軸と直交する平面である。そのため、第2面12と光源入射面10とは互いに直交する。
【0067】
一方、第1面11は、X-Y平面に対して平行ではなく、X-Y平面に対して傾斜した平面である。つまり、第1面11と光源入射面10とは互いに直交していない。具体的には、第1面11は、光源入射面10から遠ざかるにつれて第2面12に近づくように、X-Y平面に対して傾斜している。つまり、本実施形態では、第1面11と第2面12とは、互いに傾斜している。
【0068】
光制御体2は、光源4と導光部材1の光源入射面10との間に配置されている。光制御体2は、光源4から出力されて光源入射面10に入射する光源光を制御する。本実施形態では、光制御体2は、光源4から出力された光源光を平行光に近づけるコリメート機能を有している。すなわち、光制御体2は、光源4から放射状に広がる光源光が入射すると、この光源光を光源入射面10に向けて集光することで、平行光に近づけるコリメートレンズである。ここで、光源4から出射される光源光は、光制御体2を通して導光部材1の光源入射面10に入射する。そのため、光源4からの光源光は、コリメート機能を有する光制御体2にて広がり角を狭めるように制御され、導光部材1の光源入射面10に向けて出射される。本実施形態では、理想的な点光源としての光源4からの光源光が、光制御体2にて、理想的な平行光に制御されることと仮定して説明する。
【0069】
本実施形態では、図1Aに示すように、導光部材1の光源入射面10から入射する光源光の光軸Ax1は、光源入射面10から離れるほど第1面11までの距離が小さくなるように、第1面11に対して傾斜している。そのため、光制御体2から導光部材1の光源入射面10に出射される平行光は、光源入射面10から離れるほど第1面11までの距離が小さくなるように、第1面11に対して傾斜した平行光となる。また、図面における点線の矢印は、光線(又は光路)を概念的に表しているのであって、実体を伴わない。
【0070】
本実施形態では、図2に示すように、複数の光制御体2は、導光部材1の光源入射面10を構成する端部において、X軸方向に並ぶように形成されている。つまり、本実施形態では、光制御体2は、導光部材1と一体である。また、複数の光制御体2は、既に述べたように、それぞれ複数の光源4と一対一に対応している。したがって、複数の光制御体2は、それぞれ対応する光源4が出射する光源光の広がり角を制御して、光源入射面10へと入射させる。
【0071】
プリズム3は、第1面11に設けられており、導光部材1の内部を通る光源光を第2面12に向けて反射する。本実施形態では、プリズム3は、第1面11に複数設けられている。プリズム3は、入射する光源光を全反射するように構成されている。もちろん、プリズム3は、入射する光源光を全て全反射する態様に限らず、一部の光源光が全反射せずにプリズム3を透過する態様も含み得る。
【0072】
導光部材1においては、光源入射面10から入射した光源光の大部分は、第1面11又は第2面12のうちプリズム3を除いた部位で反射することなく、プリズム3にて反射することで、第2面12から出射される。つまり、導光部材1は、光源入射面10から入射した光源光をプリズム3にて直接反射して第2面12から出射させるダイレクト光路L1を含む。
【0073】
本実施形態では、プリズム3は、X軸方向の一方から見た断面が三角形状の凹部となるように、第1面11に形成されている。プリズム3は、例えば、導光部材1の第1面11に加工を施すことで形成されている。プリズム3は、図1Bに示すように、導光部材1の内部を通って入射する光源光を第2面12に向けて反射する反射面30を有している。図1Bは、図1Aの領域A1を拡大した模式的な端面図である。
【0074】
反射面30と第1面11とがなす角度(つまり、反射面30の傾斜角度)θ1は、反射面30に入射する光源光の入射角θ0が臨界角以上となるような角度である。つまり、反射面30は、入射する光源光が全反射するように、第1面11に対して傾斜している。また、反射面30の傾斜角度θ1は、反射面30にて全反射した光源光が、第2面12に対して垂直な方向で入射するように設定されている。
【0075】
本実施形態では、図8A及び図8Bに示すように、複数のプリズム3は、Z軸方向の一方から見て、第1面11上において千鳥状(zigzag pattern)に配置されている。ここで、図8Aは、図7Cの領域A1を拡大した模式的な平面図である。図8Bは、図8AのB1-B1線の断面を模式的に表す図面である。図8Aでは、第1面11の一部のみを示しているが、実際には、第1面11の略全域にわたって、複数のプリズム3が形成されている。
【0076】
具体的には、各プリズム3はX軸方向に長さを有しており、その長手方向(X軸方向)に間隔を空けて複数のプリズム3が並ぶように形成されている。さらに、複数のプリズム3は、Y軸方向においても、間隔を空けて並ぶように形成されている。そして、X軸方向に並ぶ複数のプリズムの列を、Y軸方向において光源入射面10側から数えて1列目、2列目、3列目…とする場合に、偶数列に含まれる複数のプリズム3と、奇数列に含まれる複数のプリズム3とは、互いにX軸方向にずれた位置にある。ここで、偶数列に含まれる複数のプリズム3と、奇数列に含まれる複数のプリズム3とは、各々の長手方向(X軸方向)の端部同士が、Y軸方向において重複するように配置されている。このような配置によれば、光源入射面10から見て、複数のプリズム3はX軸方向に隙間なく並ぶことになり、光源入射面10から導光部材1の内部に入射した光源光は、複数のプリズム3のうちのいずれかのプリズム3にて反射することになる。
【0077】
本実施形態では一例として、複数のプリズム3は、全て同一の形状である。そのため、図8Bに示すように、Y軸方向に並ぶ複数のプリズム3においては、反射面30の傾斜角度θ1は同一角度である。また、プリズム3の長手方向の寸法、及びプリズム3としての凹部の深さd(言い換えれば、プリズム3の高さ)等の、プリズム3の大きさについても、複数のプリズム3において同一である。すなわち、本実施形態では、プリズム3は、光源入射面10に光源光が入射する方向(Y軸方向)において複数並ぶように設けられている。ここで、複数のプリズム3は、同一形状である。そのため、反射面30に入射する光源光の入射角θ0が一定であれば、複数のプリズム3のうちのいずれのプリズム3に光源光が入射する場合でも、プリズム3の反射面30で反射された光源光の向きは同一となる。したがって、複数のプリズム3で反射された全ての光源光を、第2面12に対して垂直な方向で入射させることが可能である。
【0078】
さらに、一例として、プリズム3としての凹部の深さd(言い換えれば、プリズム3の高さ)は、1μm以上、かつ、100μm以下である。同様に、一例として、複数のプリズム3のY軸方向におけるピッチは1μm以上、かつ、1000μm以下である。具体例として、プリズム3としての凹部の深さdは十数μmであって、複数のプリズム3のY軸方向におけるピッチは百数十μmである。
【0079】
光屈折部材8は、図1Aに示すように、導光部材1の第2面12から取り出される面状光9を、入射面6から光屈折部材8内に取り込み、光屈折部材8が備える複数の屈折部81によって、面状光9を屈折させて、出射面7から出射光14として出射する。光屈折部材8は、本実施形態では一例として、アクリル樹脂等の透光性を有する樹脂材料の成形品であって、板状に形成されている。
【0080】
光屈折部材8は、上述したように、入射面6と、複数の屈折部81と、出射面7と、を備えており、入射面6が導光部材1の第2面12に対向するように設けられている。
【0081】
具体的には、本実施形態では、図1A及び図2図4Bに示すように、光屈折部材8は、矩形板状であって、光屈折部材8の厚み方向(Z軸方向)において対向する2面がそれぞれ入射面6及び出射面7である。また、入射面6と出射面7とは、互いに平行な平面であり、両者ともにX-Y平面と平行に設けられる。
【0082】
複数の屈折部81は、本実施形態では、入射面6にY軸方向に並んで設けられている。
【0083】
また、複数の屈折部81は、例えば、X軸方向に延伸する溝82を有する。本実施形態では、複数の屈折部81は、それぞれ、X軸方向に沿って延伸する1つの溝82である。つまり、複数の屈折部81は複数の溝82である。図3及び図4Aに示すように、1つの屈折部81(1つの溝82)はX軸方向に延伸する2つの山部83と、2つの山部83の間に設けられる1つの谷部84とを備え、2つの山部83と1つの谷部84とはY軸方向において平行に設けられている。ここで山部83とは、複数の屈折部81(複数の溝82)において、光屈折部材8のZ軸方向の厚みが、Y方向に沿って増加から減少に転じる部分である。また、谷部84とは、複数の屈折部81(複数の溝82)において、光屈折部材8のZ軸方向の厚みが、Y方向に沿って減少から増加に転じる部分である。
【0084】
また本実施形態では、入射面6は、複数の屈折部81(複数の溝82)が備える複数の山部83が接する仮想平面である。なお、複数の山部83の一部が入射面6に接していなくてもよい。
【0085】
また複数の屈折部81は、それぞれ、Y軸方向に曲率をもつ曲面レンズでもある。つまり、図4Aに示すように、1つの屈折部81(1つの溝82)の1つの山部83と1つの谷部84とはX軸方向から見て、連続した曲線でつながっており、その曲線の部分が曲面レンズとなる。よって、複数の屈折部81を備える光屈折部材8は、入射面6に入射する面状光9を屈折させて、発散又は集束させるための光学素子としてのレンズの機能を有している。
【0086】
また、本実施形態において、溝82の深さhはX軸方向に沿って、線形に変化する。ここで、図4Aに示すように、溝82の深さhとは、Z軸方向における入射面6と、谷部84との間の距離である。つまり、図4Bに示すように、溝82の深さhがX軸方向に沿って線形に変化するとき、谷部84は、X-Z平面に平行な断面において入射面6に対して傾きを持った直線となる。なお、図4Bは、図4AのF1-F1線の断面を模式的に表す図面である。
【0087】
一方、山部83は、X-Z平面に平行な断面において入射面6に対して平行な直線となる。また本実施形態では、複数の屈折部81は、X軸方向に沿って連続した面である。
【0088】
これにより、本実施形態では、山部83と谷部84の間の屈折部81のY軸方向の曲率は、X軸方向の一方向に沿って連続的に増加するか、もしくは減少するかのいずれかとなる。よって、入射面6から入射した面状光9が複数の屈折部81によって屈折される角度は、X軸方向の一方向に沿って増加するか、もしくは減少するかのいずれかとなる。
【0089】
これらの光屈折部材8の構成により、入射面6から入射した面状光9を屈折させる角度を制御し、出射面7で、所望の配光の出射光14を得ることができる。
【0090】
なお、溝82の深さhの範囲は、出射光14が出射面7上で所望の配光を得られるように設定され、例えば0.01mm≦h≦5mmを満たすことが好ましく、0.05mm≦h≦1mmを満たすことが更に好ましい。一例として、溝82の深さhは最も浅い部分が0.1mm、最も深い部分が0.2mmに形成される。つまり、本実施形態では、図4A及び図4Bに示すように、光屈折部材8のX軸方向における端面15と端面16のそれぞれにおける溝82の深さh1、h2がそれぞれ0.1mm、0.2mmとなる。
【0091】
また、図4Aに示すように、本実施形態では、複数の屈折部81(複数の溝82)は、それぞれ溝82の幅wが異なる。ここで、溝82の幅wとは、1つの屈折部81(1つの溝82)の2つの山部83の間のY軸方向における距離である。なお、溝82の幅wが異なるとは、複数の屈折部81(複数の溝82)の溝82の幅wがすべて異なっている場合に限らず、一部の溝が異なった幅をもつ場合も含む。
【0092】
本実施形態では、光屈折部材8は、入射面6に入射する面状光9を発散させるように、複数の屈折部81のY軸方向の曲率がそれぞれ設定される。換言すると、光屈折部材8は、入射面6に入射する面状光9に対して負の屈折力を持つ。これにより、出射光14の出射面7上での出射範囲は、面状光9の入射面6上での入射範囲よりも大きくなる。
【0093】
以下、本実施形態の光学システム100の発光原理について図1A及び図1Bを用いて説明する。
【0094】
まず、図1Aに示すように、光源4から出射される光源光は、対応する光制御体2を通過することにより、広がり角を制御される。そして、光制御体2から導光部材1の光源入射面10に向かって、広がり角を制御された光源光が出射される。本実施形態では、光制御体2から出射される光源光は、第2面12と平行な平行光となり、光源入射面10に対して垂直に入射する。
【0095】
また、既に述べたように、導光部材1の光源入射面10から入射する光源光の光軸Ax1は、光源入射面10から離れるほど第1面11までの距離が小さくなるように、第1面11に対して傾斜している。そのため、光源入射面10に入射する光源光の大部分は、第2面12、及び導光部材1の光源入射面10と対向する端面13に到達せずに、第1面11に到達することになる。
【0096】
そして、図1Bに示すように、光源入射面10に入射する光源光の大部分は、第1面11及び第2面12にて反射することなく、第1面11に設けられた複数のプリズム3のうちのいずれかのプリズム3の反射面30にて全反射する。つまり、導光部材1は、光源入射面10から入射した光源光をプリズム3にて直接反射して第2面12から出射させるダイレクト光路L1を含んでいる。さらに、本実施形態では、ダイレクト光路L1は、プリズム3にて全反射する光源光の光路を含んでいる。プリズム3の反射面30にて全反射した光は、第2面12と直交する光路を辿り、第2面12から面状光9として出射される。
【0097】
ここで、本実施形態では、上述したように、複数のプリズム3において反射面30の傾斜角度θ1は同一角度である。このような複数のプリズム3に対して、第2面12と平行な平行光が入射することで、反射面30に入射する光の入射角θ0も一定になる。そのため、複数のプリズム3のうちのいずれのプリズム3においても、反射面30で反射された光の向きは同一となる。したがって、本実施形態では、ダイレクト光路L1で第2面12に到達する光源光は全て、第2面12に対して同一の角度で入射する。ここで言う「同一の角度」は、厳密に同一の角度だけでなく、2度又は3度程度までの誤差を含んでいてもよい。理想的には、ダイレクト光路L1で第2面12に到達する光源光は全て、第2面12に対して90度、つまり直交する向きで入射する。
【0098】
本実施形態では、複数のプリズム3が第1面11の全域にわたって配置されているので、上述したようなダイレクト光路L1を通した光源光は、導光部材1の第2面12の全域から万遍なく出射される。これにより、第2面12全体が面発光し、Z軸方向において平行化された面状光9が出射されることになる。
【0099】
第2面12全体から出射されるZ軸方向に平行化された面状光9は、導光部材1と対向して設けられた光屈折部材8の入射面6に入射する。本実施形態では、導光部材1の第2面12と光屈折部材8の入射面6はZ軸方向において互いに平行に設けられており、第2面12と直交して出射される面状光9は、入射面6に対しても直交して入射する。
【0100】
入射面6に直交して入射した面状光9は、入射面6に設けられた複数の屈折部81によって屈折され、面状光9はZ軸方向に平行化された状態から、Z軸方向に対して傾きを持つ状態となる。上述したように、光屈折部材8は面状光9に対して負の屈折力を持つため、面状光9は、出射面7上での出射光14の出射範囲が、面状光9の入射面6上での入射範囲よりも大きくなるように屈折される。このように、出射光14の配光は、光屈折部材8の複数の屈折部81によって制御される。
【0101】
以下、X軸方向に沿って面状光9を屈折させる方向が変化する光屈折部材8を備える、本実施形態の光学システム100の利点について、図9及び図10を参照して以下に説明する。
【0102】
一般的な、例えばリニアフレネルレンズ18などの光屈折部材(以下、比較例の光屈折部材と言う)では、X軸方向に沿ってY軸方向のレンズの曲率は一定のため、面状光9を屈折させる方向はX軸方向に沿って一定である。つまり、図9に示すように、リニアフレネルレンズ18によって制御された、出射光14の出射面7上の配光範囲AR1は、Y軸方向における広がりがX軸方向に沿って一定である。なお、図9及び図10に示した配光範囲AR1及び配光範囲AR2は、出射光14の出射面7上での配光を模式的に示したものである。
【0103】
しかし、本実施形態に係る表示システム300のように、移動体B1に搭載されるヘッドアップディスプレイに、光屈折部材を含む光学システムを適用する場合、光屈折部材8については、X軸方向に沿って、出射光14のY軸方向における配光の広がりを適切に制御することが、以下のような理由で要求される。
【0104】
ヘッドアップディスプレイの画像表示部310の表示面312は、光屈折部材8からの出射光14を受けて画像を表示する。表示面312はユーザU1に投影する画像の範囲、つまりウィンドシールドB12の形状に合わせた形状(例えば矩形状)である。光屈折部材8の出射面7も表示面312に合わせた形状で設けられる。
【0105】
ここで、表示面312に表示される画像は、ウィンドシールドB12に反射されてユーザU1に視認されるまでに、配光が変化する部分が存在する。よって、表示面312のバックライトとして機能する光屈折部材8からの出射光14に、ユーザU1が視認したときに最適な画像となるような配光を予め与えることが必要となる。
【0106】
例えば、本実施形態では、矩形状の表示面312に表示される画像は、ユーザU1が視認するまでにウィンドシールドB12のユーザU1から見て上方向に沿って、ウィンドシールドB12の左右端部の光の強度が低下していく。これは、表示面312とウィンドシールドB12との間の光路の長さが、ウィンドシールドB12の上方向、かつ、左右端部方向に行くにしたがって長くなり、光が強く散乱されるためである。なお本実施形態では、ウィンドシールドB12のユーザU1から見た上下方向は、図9及び図10のX軸方向が上下逆転して対応し、ウィンドシールドB12のユーザU1から見た左右方向はY軸方向が左右逆転して対応する。
【0107】
よって図10に示すように、光屈折部材8の複数の屈折部81の曲率の設定によって、出射光14の出射面7上の配光範囲AR2を、X軸方向における下側ほどY軸方向に広げている。これにより、ウィンドシールドB12の上方向に沿った、左右端部の光の強度低下を補正し、適切な画像をユーザU1に視認させることができる。
【0108】
(2.4)光屈折部材を形成するための金型
本実施形態における光屈折部材8を形成するための金型17について、図11図13を用いて説明する。なお、図面における「X軸方向」、「Y軸方向」及び「Z軸方向」を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0109】
図11及び図12に示すよう金型17は、第1型部171と、第2型部172と、供給路173と、を備える。第1型部171は溶融樹脂が供給される空間であるキャビティ174を備える。キャビティ174は光屈折部材8を形成するための形状を有する。第2型部172は第1型部171と型締される。供給路173は溶融樹脂をキャビティ174内に供給する。
【0110】
第1型部171及び第2型部172は、例えばステンレス合金製であり、ステンレス合金の上にニッケル合金メッキが施される。
【0111】
図13に示すように、第1型部171のキャビティ174には光屈折部材8の複数の屈折部81である複数の溝82を形成するための凸部175が設けられる。凸部175が形成される面は、鏡面仕上げに成形されている。
【0112】
供給路173は、第2型部172を貫通して、第1型部のキャビティ174に到達するように設けられる。第1型部171と第2型部172とが、圧力がかけられ固定された状態で、溶融したアクリル樹脂が供給路173からキャビティ174内に充填される。キャビティ174内に充填されたアクリル樹脂は、冷却による硬化後、金型17から取り外され、研磨などの仕上げ加工を経て光屈折部材8となる。
【0113】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、上記実施形態において説明し た各図は模式的な図であり、図中の構成要素の大きさ及び厚みの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0114】
以下、上記実施形態の変形例を列挙する。ただし上記実施形態と共通する構成要素については同じ参照符号を付して、適宜その説明を省略する。また、以下に説明する変形例の各構成は、上記実施形態で説明した各構成と適宜組み合わせて適用可能である。
【0115】
(3.1)変形例1
上記実施形態の光学システム100は、複数の屈折部81が光屈折部材8の入射面6に並ぶ方向に沿って、光源光が導光部材1の光源入射面10に入射する。一方、変形例1の光学システム100は、複数の屈折部81が光屈折部材8の入射面6に並ぶ方向と交差する方向に沿って、光源光が導光部材1の光源入射面10に入射する点で、上記の実施形態と相違する。
【0116】
つまり変形例1では、図14に示すように、複数の屈折部81(複数の溝82)は、導光部材1の幅方向(X軸方向)にならんで、入射面6に設けられている。つまり、入射面6に入射された面状光9は、X軸方向に並んで設けられた複数の屈折部81によって屈折され、出射面7から出射光14として出射される。
【0117】
変形例1の光学システム100の利点について、以下に説明する。
【0118】
例えば、矩形状の表示面312に表示される画像が、ユーザU1が視認するまでにウィンドシールドB12の左方向に沿って、ウィンドシールドB12の上下端部の光の強度が低下していく場合を想定する。このとき、変形例1の、X軸方向に並んだ複数の屈折部81の曲率の設定によって、Y軸方向右向きに沿って、X軸方向における出射光14の配光範囲を広げる。これにより、ウィンドシールドB12の左方向に沿った、上下の端部の光の強度低下を補正し、適切な画像をユーザU1に視認させることができる。
【0119】
(3.2)その他の変形例
以下、実施形態のその他の変形例を列挙する。以下の変形例は、適宜組み合わせて実現されてもよい。
【0120】
複数の屈折部81は、出射面7に設けられてもよいし、入射面6と出射面7の両方に設けられてもよい。
【0121】
複数の屈折部81は、導光部材1の奥行き方向と垂直に交差する導光部材1の幅方向に沿って不連続な点を有していてもよい。つまり、複数の屈折部81は曲面レンズであり、複数の屈折部81に入射した光を、光軸の方向を保ったまま導光部材1の幅方向に沿って移動させたときに、出射光14の光軸の方向が変化していき、その変化が不連続となる点が存在してもよい。
【0122】
複数の屈折部81(複数の溝82)の深さhはX軸方向に沿って、非線形に変化してもよい。例えば、深さhはX軸方向の一方向に沿って、非線形に増減してもよい。つまり、複数の屈折部81のY軸方向の曲率は、X軸方向の一方向に沿って非線形に増減してもよく、入射面6から入射した面状光9が複数の屈折部81によって屈折される角度は、X軸方向の一方向に沿って非線形に増減してもよい。
【0123】
(4)まとめ
以上説明したように、第1の態様の光屈折部材(8)は、面状光(9)が入射する入射面(6)と、面状光(9)を屈折させる複数の屈折部(81)と、面状光(9)が、複数の屈折部(81)により屈折され、出射光(14)として出射される出射面(7)と、を備える。複数の屈折部(81)は、入射面(6)と出射面(7)との少なくともいずれか一方に、一方向において並んで設けられており、前記一方向に交差する方向に沿って、面状光(9)を屈折させる方向が変化する領域を有する。
【0124】
第1の態様によれば、出射光(14)の配光を制御することができる。
【0125】
第2の態様の光屈折部材(8)では、第1の態様において、複数の屈折部(81)が、前記一方向に交差する方向に沿って連続している。
【0126】
第2の態様によれば、出射光(14)の配光を制御することができる。
【0127】
第3の態様の光屈折部材(8)では、第1又は第2の態様において、複数の屈折部(81)が、前記一方向に交差する方向に沿って延伸する溝(82)を有し、溝(82)の深さ(h)が前記一方向に交差する方向に沿って線形に変化する。
【0128】
第3の態様によれば、出射光(14)の配光を制御することができる。
【0129】
第4の態様の光屈折部材(8)では、第1~第3のいずれかの1つの態様において、複数の屈折部(81)が、前記一方向に交差する方向に沿って延伸する溝(82)を有し、溝(82)の深さ(h)が0.01mm≦h≦5mmである。
【0130】
第4の態様によれば、出射光(14)の配光を制御することができる。
【0131】
第5の態様の光屈折部材(8)では、第1~第4のいずれかの1つの態様において、入射面(6)に入射する面状光(9)に対して負の屈折力を持つ。
【0132】
第5の態様によれば、面状光(9)を拡散することができる。
【0133】
第6の態様の光学システム(100)は、第1~第5のいずれか1つの態様の光屈折部材(8)と、導光部材(1)と、プリズム(3)と、を備える。導光部材(1)は、光源からの光源光が入射する光源入射面(10)、並びに互いに対向する第1面(11)及び第2面(12)を有する。プリズム(3)は第1面(11)に設けられて、導光部材(1)の内部を通る光源光を第2面(12)に向けて反射する。導光部材(1)は、光源入射面(10)から入射した光源光をプリズム(3)にて直接反射して第2面(12)から面状光(9)として出射させるダイレクト光路(L1)を含む。
【0134】
第6の態様によれば、光源入射面(10)から入射した光源光を、第2面(12)から面状光(9)として取り出す、取り出し効率を向上させることができる。また、出射光(14)の配光を制御することができる。
【0135】
第7の態様の光学システム(100)は、第6の態様において、前記一方向に沿って、光源光が光源入射面(10)に入射する。
【0136】
第7の態様によれば、光源入射面(10)から入射した光源光を、第2面(12)から面状光(9)として取り出す、取り出し効率を向上させることができる。また、出射光(14)の配光を制御することができる。
【0137】
第8の態様の光学システム(100)は、第6の態様において、前記一方向に交差する方向に沿って、光源光が光源入射面(10)に入射する。
【0138】
第8の態様によれば、光源入射面(10)から入射した光源光を、第2面(12)から面状光(9)として取り出す、取り出し効率を向上させることができる。また、出射光(14)の配光を制御することができる。
【0139】
第9の態様の照明システム(200)は、第6~第8のいずれか1つの態様の光学システム(100)と、光源光を光源入射面(10)に出射する光源(4)と、を備える。
【0140】
第9の態様によれば、光源入射面(10)から入射した光源光を、第2面(12)から面状光(9)として取り出す、取り出し効率を向上させることができる。また、出射光(14)の配光を制御することができる。
【0141】
第10の態様の表示システム(300)は、第9の態様の照明システム(200)と、出射光(14)を受けて画像を表示する表示器(5)と、を備える。
【0142】
第10の態様によれば、光源入射面(10)から入射した光源光を、第2面(12)から面状光(9)として取り出す、取り出し効率を向上させることができる。また、出射光(14)の配光を制御することができる。
【0143】
第11の態様の移動体(B1)は、第10の態様の表示システム(300)と、表示システム(300)を搭載する移動体本体(B11)と、を備える。
【0144】
第11の態様によれば、光源入射面(10)から入射した光源光を、第2面(12)から面状光(9)として取り出す、取り出し効率を向上させることができる。また、出射光(14)の配光を制御することができる。
【0145】
第12の態様の金型(17)は、光屈折部材(8)を形成するための金型であって、キャビティ(174)を備えた第1型部(171)と、第1型部(171)と型締される第2型部(172)と、溶融樹脂をキャビティ(174)内に供給する供給路(173)と、を備える。キャビティ(174)は光屈折部材(8)を形成するための形状を有する。光屈折部材(8)は、面状光(9)が入射する入射面(6)と、面状光(9)を屈折させる複数の屈折部(81)と、面状光(9)が、複数の屈折部(81)により屈折され、出射光(14)として出射される出射面(7)と、を備える。複数の屈折部(81)は、入射面(6)と出射面(7)との少なくともいずれか一方に、一方向において並んで設けられており、前記一方向に交差する方向に沿って、面状光(9)を屈折させる方向が変化する領域を有する。
【0146】
第12の態様によれば、出射光(14)の配光を制御することができる光屈折部材(8)を形成することができる。
【0147】
なお、第2~第5の態様は光屈折部材(8)に必須の構成ではなく、適宜省略が可能である。また、第7及び第8の態様は光学システム(100)に必須の構成ではなく、適宜省略が可能である。
【符号の説明】
【0148】
1 導光部材
3 プリズム
4 光源
5 表示器
6 入射面
7 出射面
8 光屈折部材
81 屈折部
82 溝
9 面状光
10 光源入射面
11 第1面
12 第2面
14 出射光
17 金型
171 第1型部
172 第2型部
173 供給路
174 キャビティ
100 光学システム
200 照明システム
300 表示システム
B1 移動体
B11 移動体本体
h 深さ
L1 ダイレクト光路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14