(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】不良予測システム、不良予測方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20240524BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240524BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20240524BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20240524BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G05B23/02 R
G06Q50/04
G06Q10/04
(21)【出願番号】P 2023522267
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2022011615
(87)【国際公開番号】W WO2022244420
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2021084847
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナインゴラン ジェッフリー
(72)【発明者】
【氏名】菅澤 裕也
(72)【発明者】
【氏名】村田 久治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 吉宣
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-61598(JP,A)
【文献】特許第6811896(JP,B2)
【文献】特開平9-50949(JP,A)
【文献】特開2020-144415(JP,A)
【文献】特開2012-226511(JP,A)
【文献】特許第5604945(JP,B2)
【文献】特開2019-197245(JP,A)
【文献】特許第5867349(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G05B 23/02
G06Q 50/04
G06Q 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工程により製造される製品の不良に関する予測をする不良予測システムであって、
前記複数の工程の各々は、互いに並列な複数の生産ラインを含み、
前記不良予測システムは、
前記複数の工程のうち少なくとも1つの工程の、前記複数の生産ラインの各々における、前記製品の過去の不良数に関する過去の不良関連数を取得する取得部と、
前記取得部で取得された前記過去の不良関連数に基づいて、前記複数の工程の各々の、前記複数の生産ラインの各々における前記製品の将来の不良数に関する将来の不良関連数を予測する不良関連数予測部と、
前記不良関連数予測部で予測された前記複数の工程の各々の、前記複数の生産ラインの各々における前記将来の不良関連数に基づいて、前記複数の生産ラインの前記将来の不良関連数の総和である将来の総不良関連数の増加の原因となる生産ラインを予測する原因予測部と、を備える、
不良予測システム。
【請求項2】
前記不良関連数予測部で予測された前記将来の総不良関連数が注意閾値以上である場合に、管理者に注意を促すための警告情報を生成する警告部を更に備える、
請求項1に記載の不良予測システム。
【請求項3】
前記取得部は、
前記複数の工程のうち特定の工程の、前記複数の生産ラインの各々における前記過去の不良関連数と、
前記複数の工程の各々の、前記複数の生産ラインの各々における前記製品の識別情報と、を取得し、
前記不良関連数予測部は、前記取得部で取得された前記識別情報を参照することで、前記特定の工程よりも上流の工程の前記複数の生産ラインの各々における前記過去の不良関連数を求める、
請求項1又は2に記載の不良予測システム。
【請求項4】
前記原因予測部は、前記複数の生産ラインのうち、前記不良関連数予測部で予測された前記将来の不良関連数が原因閾値以上である生産ラインを、前記将来の総不良関連数の増加の原因となる生産ラインであると予測する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の不良予測システム。
【請求項5】
前記原因予測部は、前記生産ラインごとの前記将来の不良関連数の分布に基づいて、前記原因閾値を決定する、
請求項4に記載の不良予測システム。
【請求項6】
前記原因予測部は、前記複数の工程の各々について、前記複数の生産ラインの将来の不良数の総和が所定範囲となるように、前記複数の生産ラインの前記将来の不良数を調整し、調整された不良数の分布に基づいて、前記原因閾値を決定する、
請求項5に記載の不良予測システム。
【請求項7】
前記原因予測部は、前記生産ラインごとの前記将来の不良数の分布の分位数に基づいて、前記原因閾値を決定する、
請求項5又は6に記載の不良予測システム。
【請求項8】
前記不良関連数予測部は、前記過去の不良関連数の推移に基づく回帰分析により、前記将来の不良関連数を予測する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の不良予測システム。
【請求項9】
前記不良関連数予測部は、機械学習により生成された学習済みモデルを用いて、前記将来の不良関連数を予測する、
請求項1~8のいずれか一項に記載の不良予測システム。
【請求項10】
情報を提示装置へ出力する出力部を更に備え、
前記提示装置は、前記出力部から入力された情報を提示する、
請求項1~9のいずれか一項に記載の不良予測システム。
【請求項11】
前記出力部は、前記不良関連数予測部で予測された前記将来の不良関連数を示す情報と、前記原因予測部で予測された前記将来の総不良関連数の増加の原因となる生産ラインを特定する情報と、のうち少なくとも一方を前記提示装置へ出力する、
請求項10のいずれか一項に記載の不良予測システム。
【請求項12】
前記出力部は、所定の生産ラインが前記将来の総不良関連数の増加の原因であると予測された根拠を示す情報を更に出力する、
請求項11に記載の不良予測システム。
【請求項13】
複数の工程により製造される製品の不良に関する予測をする不良予測方法であって、
前記複数の工程の各々は、互いに並列な複数の生産ラインを含み、
前記不良予測方法は、
前記複数の工程のうち少なくとも1つの工程の、前記複数の生産ラインの各々における、前記製品の過去の不良数に関する過去の不良関連数を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得された前記過去の不良関連数に基づいて、前記複数の工程の各々の、前記複数の生産ラインの各々における前記製品の将来の不良数に関する将来の不良関連数を予測する不良関連数予測ステップと、
前記不良関連数予測ステップで予測された前記複数の工程の各々の、前記複数の生産ラインの各々における前記将来の不良関連数に基づいて、前記複数の生産ラインの前記将来の不良関連数の総和である将来の総不良関連数の増加の原因となる生産ラインを予測する原因予測ステップと、を含む、
不良予測方法。
【請求項14】
請求項13に記載の不良予測方法を、コンピュータシステムの1以上のプロセッサに実行させるための、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に不良予測システム、不良予測方法及びプログラムに関し、より詳細には、製品の不良に関する予測をする不良予測システム、不良予測方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製品の不良に関する判定を行うシステムの従来例として、特許文献1を挙げる。特許文献1に記載の不良原因装置特定システムは、要因効果データ作成部と、要因効果図作成部と、不良ロット選択最適化部と、装置差異分析部、とを備える。要因効果データ作成部は、特定の不良形態を有するロットの不良ロット群情報、に基づき要因効果データを作成する。要因効果図作成部は、要因効果データと不良ロット識別情報が一致するか否かを表示する要因効果図を作成する。不良ロット選択最適化部は、要因効果図に基づき、同一の不良原因に起因する複数の不良ロットを選択する。装置差異分析部は、選択された複数の不良ロットを処理した製造装置群の履歴情報を装置履歴情報データベースから読み出し、複数の不良ロットに共通する製造装置を特定する。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の不良原因装置特定システムでは、不良数の増加の原因が特定されたときには既に製品の不良数が増加している。そのため、特許文献1に記載の不良原因装置特定システムでは、不良数が多くなるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示は、製品の不良数が増加する前に不良数の増加の原因を特定することができる不良予測システム、不良予測方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【0006】
本開示の一態様に係る不良予測システムは、複数の工程により製造される製品の不良に関する予測をする不良予測システムである。前記複数の工程の各々は、互いに並列な複数の生産ラインを含む。前記不良予測システムは、取得部と、不良関連数予測部と、原因予測部と、を備える。前記取得部は、前記複数の工程のうち少なくとも1つの工程の、前記複数の生産ラインの各々における、前記製品の過去の不良関連数を取得する。前記過去の不良関連数は、過去の不良数に関する数である。前記不良関連数予測部は、前記取得部で取得された前記過去の不良関連数に基づいて、前記複数の工程の各々の、前記複数の生産ラインの各々における前記製品の将来の不良関連数を予測する。前記将来の不良関連数は、将来の不良数に関する数である。前記原因予測部は、前記不良関連数予測部で予測された前記複数の工程の各々の、前記複数の生産ラインの各々における前記将来の不良関連数に基づいて、将来の総不良関連数の増加の原因となる生産ラインを予測する。前記将来の総不良関連数は、前記複数の生産ラインの前記将来の不良関連数の総和である。
【0007】
本開示の一態様に係る不良予測方法は、複数の工程により製造される製品の不良に関する予測をする不良予測方法である。前記複数の工程の各々は、互いに並列な複数の生産ラインを含む。前記不良予測方法は、取得ステップと、不良関連数予測ステップと、原因予測ステップと、を含む。前記取得ステップでは、前記複数の工程のうち少なくとも1つの工程の、前記複数の生産ラインの各々における、前記製品の過去の不良関連数を取得する。前記過去の不良関連数は、過去の不良数に関する数である。前記不良関連数予測ステップでは、前記取得ステップで取得された前記過去の不良関連数に基づいて、前記複数の工程の各々の、前記複数の生産ラインの各々における前記製品の将来の不良関連数を予測する。前記将来の不良関連数は、将来の不良数に関する数である。前記原因予測ステップでは、前記不良関連数予測ステップで予測された前記複数の工程の各々の、前記複数の生産ラインの各々における前記将来の不良関連数に基づいて、将来の総不良関連数の増加の原因となる生産ラインを予測する。前記将来の総不良関連数は、前記複数の生産ラインの前記将来の不良関連数の総和である。
【0008】
本開示の一態様に係るプログラムは、前記不良予測方法を、コンピュータシステムの1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る不良予測システムのブロック図である。
【
図2】
図2は、同上の不良予測システムが適用される製品の製造工程を示す説明図である。
【
図3】
図3は、同上の不良予測システムにおける処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、同上の不良予測システムにおける処理を説明するためのグラフである。
【
図5】
図5A~
図5Dは、同上の不良予測システムにおける処理を説明するためのグラフである。
【
図6】
図6A~
図6Dは、同上の不良予測システムにおける処理を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る不良予測システムについて、図面を用いて説明する。ただし、下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の1つに過ぎない。下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0011】
(概要)
まず、
図1を参照して説明する。本実施形態の不良予測システム1は、複数の工程により製造される製品の不良に関する予測をする不良予測システムである。複数の工程の各々は、互いに並列な複数の生産ラインを含む。不良予測システム1は、取得部11と、不良関連数予測部12と、原因予測部13と、を備える。取得部11は、複数の工程のうち少なくとも1つの工程の、複数の生産ラインの各々における、製品の過去の不良関連数を取得する。不良関連数は、不良数に関する数である。過去の不良関連数は、過去の不良数に関する数である。不良関連数予測部12は、取得部11で取得された過去の不良関連数に基づいて、複数の工程の各々の、複数の生産ラインの各々における製品の将来の不良関連数を予測する。将来の不良関連数は、将来の不良数に関する数である。原因予測部13は、不良関連数予測部12で予測された複数の工程の各々の、複数の生産ラインの各々における将来の不良関連数に基づいて、将来の総不良関連数の増加の原因となる生産ラインを予測する。将来の総不良関連数は、複数の生産ラインの将来の不良関連数の総和である。
【0012】
本実施形態の不良予測システム1によれば、製品の総不良関連数が増加する前に総不良関連数の増加の原因を特定(予測)することができる。そのため、原因を早期に取り除き、製品の総不良関連数の削減を図ることができる。
【0013】
本開示において、ある生産ラインの「不良関連数」は、不良品の個数、すなわち、不良数であってもよいし、上記ある生産ラインの製造個数全体に対する不良品の個数、すなわち、不良率であってもよい。
【0014】
複数の生産ラインが並列であるとは、複数の生産ラインの各々で得られる結果が実質的に同じであって、複数の生産ラインのうち任意の1つの生産ラインにおける作業が、他の生産ラインでの作業に依らずに完結していることを意味する。例えば、同じ作業が、互いに並列な複数の生産ラインでそれぞれ行われる。ある工程から後の工程へ製品が供給される際に、上記ある工程の複数の生産ラインのうち、いずれの生産ラインから製品が供給されてもよいし、上記後の工程の複数の生産ラインのうち、いずれの生産ラインへ製品が供給されてもよい。
【0015】
(詳細)
(1)複数の工程及び複数の生産ラインの説明
図2に示すように、本実施形態における複数の工程は、製品の材料を用意する工程(材料工程)と、製品を製造するための作業を行う3つの工程、すなわち、第1工程、第2工程及び第3工程と、を含む。材料工程は最も上流の工程であり、材料工程から第1工程、第2工程、第3工程の順で下流の工程となっている。
【0016】
材料工程は、9つの生産ラインM1~M9を含む。第1工程は、10個の生産ラインA1~A10を含む。第2工程は、6つの生産ラインB1~B6を含む。第3工程は、5つの生産ラインC1~C5を含む。ただし、各工程における生産ラインの個数は、これに限定されない。
【0017】
材料工程の生産ラインM1~M9の各々で用意される材料は、同一である。生産ラインM1~M9は、例えば、材料のロット番号により区別される生産ラインである。すなわち、第1~第9のロット番号をそれぞれ異なるロット番号とすると、生産ラインMi(i=1、2、3、……、又は、9)は、第iのロット番号を付与された材料を用意する工程である。
【0018】
第1工程の生産ラインA1~A10の各々で行われる作業は、同一である。生産ラインA1~A10は、例えば、第1工程を行う装置又はシステムにより区別される生産ラインである。すなわち、生産ラインA1~A10の個数と同数(10個)の第1~第10の装置又はシステムが用意され、生産ラインAj(j=1、2、3、……、又は、10)は、第jの装置又はシステムで作業を行う工程である。
【0019】
同様に、第2工程の生産ラインB1~B6の各々で行われる作業は、同一である。生産ラインB1~B6は、例えば、第2工程を行う装置又はシステムにより区別される生産ラインである。
【0020】
同様に、第3工程の生産ラインC1~C5の各々で行われる作業は、同一である。生産ラインC1~C5は、例えば、第3工程を行う装置又はシステムにより区別される生産ラインである。
【0021】
第1~第3工程を行う各装置又はシステムは、例えば、材料(製品)に対する操作を行う操作部材、操作部材を駆動するモータ、材料を加熱又は冷却する温度調節機構、材料に化学処理を行う化学処理機構、及び、装置又はシステム全体を制御する制御機構等を含む。
【0022】
図2の複数の正方形は、それぞれ、生産ラインを表す。
図2の矢印は、矢印の根本側の上流の工程の生産ラインから、矢印の先端側の下流の工程の生産ラインへ材料(製品)が供給されることを表す。
【0023】
材料工程の各生産ラインM1~M9で用意された材料は、第1工程のいずれかの生産ラインに供給される。材料工程の生産ラインで用意された複数の材料が、第1工程の生産ラインA1~A10のうち1つの生産ラインに供給されてもよいし、第1工程の2以上の生産ラインに分かれて供給されてもよい。
【0024】
同様に、第1工程の各生産ラインA1~A10で用意された複数の材料は、第2工程のいずれかの生産ラインに供給される。第2工程の各生産ラインB1~B6で用意された複数の材料は、第3工程のいずれかの生産ラインに供給される。
【0025】
材料には、シリアル番号等の識別情報が付される。材料の識別情報は、遅くとも材料が第1工程の生産ラインへ提供されるまでに材料に付される。材料の識別情報は、例えば、材料に取り付けられるICタグに記録されてもよいし、材料に刻印されてもよい。
【0026】
材料に付された識別情報は、材料が供給された(言い換えると、現在作業が行われている)生産ラインの識別情報(識別コード等)と対応付けて、データベースに記録される。ある工程で不良品が発見された場合、不良予測システム1は、不良品の識別情報を参照することで、不良品が上流の工程のいずれの生産ラインから供給されたかを調べられる。
【0027】
(2)構成
図1に示すように、不良予測システム1は、取得部11と、不良関連数予測部12と、原因予測部13と、警告部14と、学習部15と、出力部16と、を備える。なお、これらは、不良予測システム1によって実現される機能を示しているに過ぎず、必ずしも実体のある構成を示しているわけではない。
【0028】
不良予測システム1は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムを、コンピュータシステムのプロセッサが実行することにより、不良予測システム1の少なくとも一部の機能が実現される。プログラムは、メモリに記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0029】
また、不良予測システム1は、検査システム2及び提示装置3と共に用いられる。
【0030】
検査システム2は、製品の不良の有無を検査する。検査システム2は、センサと、判定装置と、を含む。センサは、製品に関する物理量を検知する。判定装置は、センサで検知された物理量に基づいて、製品の不良の有無を判定する。検査システム2が製品のどのような状態を不良とするかは、製品の品質基準等に応じて適宜決定されればよい。
【0031】
取得部11は、検査システム2から製品の過去の不良関連数を取得する。例えば、不良予測システム1は、通信インタフェース装置を更に備えており、取得部11は、通信インタフェース装置を介して製品の過去の不良関連数を取得する。「過去」とは、現在の直前の時点を含む概念である。例えば、取得部11が検査システム2からリアルタイムで不良関連数を取得する場合も、取得部11が過去の不良関連数を取得すると言う。
【0032】
検査システム2は、個々の製品の不良の有無を検査し、不良の有無に関する情報を取得部11へ出力する。取得部11は、不良の有無に関する情報を集計して、製品の過去の不良関連数を求める。なお、検査システム2が集計を行ってもよい。
【0033】
本実施形態では、検査システム2は、最下流の工程(第3工程)の複数の生産ラインの各々における、製品の不良の有無を検査する。取得部11は、最下流の工程(第3工程)の複数の生産ラインの各々における、製品の過去の不良関連数を取得する。
【0034】
不良関連数予測部12及び原因予測部13の機能については、後述する。
【0035】
警告部14は、不良関連数予測部12で予測された将来の総不良関連数が注意閾値Th1(
図4参照)以上である場合に、管理者に注意を促すための警告情報を生成する。警告情報は、出力部16により提示装置3へ出力される。
【0036】
学習部15は、不良関連数予測部12が将来の不良関連数を予測するための学習済みモデルを、機械学習により生成する。機械学習の詳細については、後述する。
【0037】
出力部16は、情報を提示装置3へ出力する。出力部16は、例えば、通信インタフェース装置を介して情報を出力する。
【0038】
提示装置3は、出力部16から入力された情報を提示する。提示装置3は、例えば、画像、音、又は、画像と音との両方により、情報を提示する。本実施形態の提示装置3は、ディスプレイを含む。提示装置3は、出力部16から入力された情報に対応した表示をする。
【0039】
図5A~
図5Dに、提示装置3の表示態様の一例を示す。
図5A~
図5Dでは、不良関連数予測部12で予測された将来の不良関連数(不良数)が表示されている。また、
図5Bで「不良増加原因」と記されている生産ラインA2、及び、
図5Cで「不良増加原因」と記されている生産ラインB2が、将来の総不良関連数の増加の原因であると原因予測部13で予測された生産ラインである。このように、
図5A~
図5Dでは、いずれの生産ラインが将来の総不良関連数の増加の原因であると予測されるかが表示されている。
【0040】
つまり、出力部16は、不良関連数予測部12で予測された将来の不良関連数を示す情報と、原因予測部13で予測された将来の総不良関連数の増加の原因となる生産ラインを特定する情報と、のうち少なくとも一方(本実施形態では、両方)を提示装置3へ出力する。
【0041】
(3)不良関連数の予測及び原因の予測の詳細
次に、不良関連数予測部12が将来の不良関連数を予測する処理、及び、原因予測部13が将来の総不良関連数の増加の原因となる生産ラインを予測する処理について説明する。不良関連数は、不良数であるとする。
【0042】
不良予測システム1における処理の流れを、
図3に示す。なお、
図3に示すフローチャートは、処理の流れの一例に過ぎず、処理の順序が適宜変更されてもよいし、処理が適宜追加又は省略されてもよい。
【0043】
検査システム2は、第3工程において製品の不良の有無を検査する。取得部11は、第3工程の複数の生産ラインC1~C5の各々における、製品の過去の不良関連数(不良数)を検査システム2から取得する(ステップST1)。より詳細には、[表1]に示すように、生産ラインの識別情報と、各検査時点の不良関連数(不良数)と、の関係を表す情報が取得部11で取得される。
【0044】
【0045】
例えば、検査時点tにおいて、生産ラインC1の不良数は、5である。また、検査時点tにおいて、生産ラインC1~C5の不良数の合計は、24である。
【0046】
検査時点t-2、t-1、t、t+1([表1]、及び、後に示す[表2]~[表8]参照)はそれぞれ、第3工程で製品の不良の有無を検査する時点を指す。[表1]~[表8]には、各生産ラインと検査時点との対応を示している。
【0047】
材料工程の特定の生産ラインに対応する検査時点がT(T=t-2、t-1、t、又は、t+1)であるとは、次のことを意味する。すなわち、材料が、材料工程の上記特定の生産ラインから第1工程、第2工程、第3工程へ順に提供され、その後の時点Tに、不良の有無が検査されることを意味する。
【0048】
第1工程の特定の生産ラインに対応する検査時点がTであるとは、材料が、第1工程の上記特定の生産ラインから第2工程、第3工程へ順に提供され、その後の時点Tに、不良の有無が検査されることを意味する。
【0049】
第2工程の特定の生産ラインに対応する検査時点がTであるとは、材料が、第2工程の上記特定の生産ラインから第3工程へ提供され、その後の時点Tに、不良の有無が検査されることを意味する。
【0050】
第3工程の特定の生産ラインに対応する検査時点がTであるとは、材料が、第3工程の上記特定の生産ラインへ提供され、その後の時点Tに、不良の有無が検査されることを意味する。
【0051】
検査時点t+1は将来の時点であり、検査時点tは現在に最も近い時点であり、検査時点t-1は検査時点tより前の時点であり、検査時点t-2は検査時点t-1より前の時点である。
【0052】
検査時点T(T=t-2、t-1、t、又は、t+1)に対応する不良数は、検査時点Tに明らかとなった不良数である。そのため、検査時点Tに対応する不良数は、検査時点Tよりも前に明らかとなった不良数を含まない。
【0053】
製品(材料)には識別情報が付されており、取得部11は、各製品の識別情報を更に取得する。つまり、取得部11は、複数の工程のうち特定の工程(第3工程)の、複数の生産ラインC1~C5の各々における過去の不良関連数を取得し、さらに、複数の工程の各々の、複数の生産ラインの各々における製品の識別情報を取得する。
【0054】
不良関連数予測部12は、取得部11で取得された識別情報を参照することで、特定の工程よりも上流の工程の複数の生産ラインの各々における過去の不良関連数を求める。例えば、ある製品が、材料工程の生産ラインM1、第1工程の生産ラインA3、第2工程の生産ラインB6、及び、第3工程の生産ラインC2に通されたとする。さらに、第3工程の生産ラインC2において当該製品が不良品として検出されたことが、取得部11で取得された情報から判明した、とする。各生産ラインでは、当該製品(不良品)の識別情報を生産ラインの識別情報と対応付けてデータベースに記録する処理が行われる。不良関連数予測部12は、データベースに記録された情報を参照することで、当該製品が材料工程の生産ラインM1、第1工程の生産ラインA3、第2工程の生産ラインB6、及び、第3工程の生産ラインC2に通されたことを特定する。不良関連数予測部12は、全ての不良品に対して、このように、各工程でいずれの生産ラインに通されたかを調べる。これにより、上記の[表1]及び下記の[表2]~[表4]に示すように、各工程の生産ラインと、過去の不良関連数と、の関係が求められる。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
[表2]~[表4]は、第3工程で不良品と判明した製品が、第3工程よりも上流の工程においていずれの生産ラインに通されたかを示している。そのため、各時点において、各工程の不良関連数の合計(総不良関連数)は、一定の値である。[表1]~[表4]は、製品がどの工程において不良品となったかを直接的には示していない。
【0059】
不良関連数予測部12は、過去の不良関連数に基づいて、複数の生産ラインの各々における将来の(検査時点t+1の)不良関連数を予測する(ステップST2)。より詳細には、不良関連数予測部12は、機械学習により生成された学習済みモデルを用いて、将来の不良関連数を予測する。
【0060】
学習済みモデルは、例えば、学習済みのニューラルネットワークを用いた分類器を含む。学習済みのニューラルネットワークは、例えばCNN(Convolutional Neural Network:畳み込みニューラルネットワーク)、又はBNN(Bayesian Neural Network:ベイズニューラルネットワーク)等を含み得る。学習済みモデルは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路に、学習済みのニューラルネットワークを実装することで実現される。
【0061】
学習部15は、各生産ラインの過去の不良関連数を教師データとして機械学習を行い、学習済みモデルを生成する。学習済みモデルは、過去の不良関連数を入力とし、将来の不良関連数を出力する。
【0062】
本実施形態では一例として、学習済みモデルは、回帰モデルである。つまり、不良関連数予測部12は、過去の不良関連数の推移に基づく回帰分析により、将来の不良関連数を予測する。例えば、学習済みモデルが多項式による回帰モデルであれば、学習は、不良関連数を表す多項式の係数を最適化する処理である。すなわち、学習により、不良関連数を求めるための回帰式(例えば、
図4において曲線E1で表される式)が求められる。
【0063】
学習部15は、生産ラインごとに適した学習済みモデルを生成する。例えば、第3工程の生産ラインC1の将来の不良関連数を出力する学習済みモデルは、生産ラインC2~C5の各々の将来の不良関連数を出力する学習済みモデル、及び、他の工程の生産ラインの将来の不良関連数を出力する学習済みモデルとは異なり得る。第3工程の生産ラインC1の将来の不良関連数を出力する学習済みモデルは、生産ラインC1の過去の不良関連数を入力とし、生産ラインC1の将来の不良関連数を出力する。同様に、特定の生産ラインに対応する学習済みモデルは、当該生産ラインの過去の不良関連数を入力とし、当該生産ラインの将来の不良関連数を出力する。なお、入力としての過去の不良関連数は、過去の複数の検査時点に対応する複数の不良関連数であってよい。例えば、検査時点t-2、t-1、t([表1]~[表4]参照)の各々に対応する不良関連数を入力としてもよい。
【0064】
不良関連数予測部12で予測された将来の不良関連数(不良数)の一例を、[表5]~[表8]に示す。[表5]、[表6]、[表7]、[表8]のデータはそれぞれ、[表2]、[表3]、[表4]、[表1]のデータに基づいて生成される。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
不良関連数予測部12は、不良関連数予測部12で予測された、各工程の将来の総不良関連数を注意閾値Th1と比較する(ステップST3)。当該総不良関連数が注意閾値Th1以上であると(ステップST3:YES)、警告部14は、管理者に注意を促すための警告情報を生成する(ステップST4)。ここで注意閾値Th1と比較される総不良関連数は、将来のある検査時点に対応する不良関連数の総和である。例えば、[表8]を参照すると、第3工程の検査時点t+1に対応する総不良関連数(不良数)は30個である。
【0070】
第3工程に関して、[表1]、[表8]に示された、各検査時点に対応する総不良関連数を、
図4にグラフとして示す。
図4に示すように、検査時点t+1に対応する総不良関連数は、注意閾値Th1を超えている。そのため、不良関連数予測部12は、不良が多発するという予測結果を出力する。これに応じて、警告部14は、警告情報を生成し、出力部16を介して提示装置3へ出力する。提示装置3は、不良が多発すると予測される旨を提示する。提示装置3は、例えば、不良が多発すると予測される旨のメッセージをディスプレイに表示する。また、出力部16は、不良関連数予測部12で予測された将来の不良関連数を示す情報を提示装置3へ出力する。提示装置3は、将来の不良関連数を提示する。例えば、提示装置3は、[表8]又は
図4のような表示をする。
【0071】
[表5]~[表8]に示すように、複数の工程にそれぞれ対応して、将来の総不良関連数が求められる。不良関連数予測部12は、少なくとも1つの工程に対応する将来の総不良関連数が注意閾値Th1を超えている場合に、不良が多発するという予測結果を出力すればよい。
【0072】
次に、原因予測部13は、将来の総不良関連数の増加の原因となる生産ラインを予測する。原因予測部13は、複数の生産ラインのうち、不良関連数予測部12で予測された将来の不良関連数が原因閾値Th2(
図6A~
図6D参照)以上である生産ラインを、将来の総不良関連数の増加の原因となる生産ラインであると予測する。
【0073】
原因予測部13は、生産ラインごとの将来の不良関連数の分布に基づいて、原因閾値Th2を決定する。より詳細には、原因予測部13は、複数の工程の各々について、複数の生産ラインの将来の不良数の総和が所定範囲となるように、複数の生産ラインの将来の不良数を調整し、調整された不良数の分布に基づいて、原因閾値Th2を決定する。また、原因予測部13は、生産ラインごとの将来の不良関連数の分布の分位数に基づいて、原因閾値Th2を決定する。ここで言う、不良数を調整するとは、実際に製造される不良品の個数を変更することではない。ここで言う、不良数を調整するとは、原因閾値Th2を決定するための演算において、不良数が実際よりも多い又は少ないとみなすことを意味する。以下、図面を参照して説明する。
【0074】
図5A~
図5Dは、[表5]~[表8]から作成されたグラフである。
図5A~
図5Dは、生産ラインごとの、検査時点t+1に対応する不良数の分布(予測値)を表す。原因予測部13は、複数の工程の各々について、複数の生産ラインの将来の不良数の総和が所定範囲となるように、複数の生産ラインの将来の不良数を調整する。好ましくは、原因予測部13は、複数の工程の各々について、複数の生産ラインの将来の不良数の総和が所定の値となるように、複数の生産ラインの将来の不良数を調整する(ステップST5)。ここでいう所定の値とは、過去の不良数の合計から予測された、将来の不良数の合計である。例えば、不良関連数予測部12は、検査時点t-2、t-1、tにおける不良数の合計が18、20、24であるのに対して検査時点t+1における不良数の合計が48と予測する。将来の不良数の調整がこの48に対して行われる。調整は、不良率ではなく、不良数に対して行われる。なお、所定の値として予測値の代わりに一定値を使ってもよい。
【0075】
例えば、第3工程について、複数の生産ラインC1~C5の将来の不良数の総和は30個である。原因予測部13は、第3工程の複数の生産ラインC1~C5の将来の不良数の総和が48個となるように、各生産ラインC1~C5の不良数を調整する。具体的には、第3工程の不良数の総和である30と、48と、の比である48/30を、各生産ラインC1~C5の不良数にそれぞれ乗じることで、不良数を調整する。ただし、各生産ラインの不良数が整数となるように、小数点以下を切り上げる又は切り下げる。例えば、ある工程の不良数を調整する前後で、上記ある工程の複数の生産ラインの不良数の変動係数の変化量が最小となるように、不良数を調整する。
【0076】
原因予測部13は、第3工程以外の工程についても同様に、不良数の総和が48個となるように不良数を調整する。不良数を調整した後の不良数の分布を、
図6A~
図6D及び[表9]~[表12]に示す。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
次に、原因予測部13は、調整された不良数の分布に基づいて、原因閾値Th2を決定する。具体的には、原因予測部13は、不良数の分布の四分位数に基づいて、原因閾値Th2を決定する。第一四分位数をQ1、第三四分位数をQ3とする。対象の複数の数値を降順に並べ、4等分した1つ目の境界の値が第一四分位数、3つ目の境界の値が第三四分位数である。境界が2つの数値の間にある場合は、これら2つの数値にそれぞれ境界との距離に応じた重みを付すことで算出される、2つの数値の加重平均を、第一四分位数(又は第三四分位数)とする。原因予測部13は、[数1]により原因閾値Th2を決定する。
[数1]
Th2=Q3+(Q3-Q1)×1.5
図6A~
図6Dの分布に[数1]を当てはめると、材料工程に対応する第一四分位数Q1は5、第三四分位数Q3は6、原因閾値Th2は7.5である。第1工程に対応する第一四分位数Q1は4、第三四分位数Q3は5、原因閾値Th2は6.5である。第2工程に対応する第一四分位数Q1は(5×0.75)+(6×0.25)=5.25、第三四分位数Q3は(8×0.25)+(10×0.75)=9.5、原因閾値Th2は15.875である。第3工程に対応する第一四分位数Q1は10、第三四分位数Q3は11、原因閾値Th2は12.5である。
【0082】
第1工程の生産ラインA2の不良数、及び、第2工程の生産ラインB2の不良数はそれぞれ、対応する原因閾値Th2を超えている(ステップST6:YES)。そのため、原因予測部13は、生産ラインA2、B2を、将来の不良数(総不良関連数)の増加の原因となる生産ラインであると予測する(ステップST7)。
【0083】
ある工程において、不良数を調整しない際には全ての生産ラインの不良数が原因閾値Th2未満である場合であっても、不良数を調整した後にはいずれかの生産ラインの不良数が原因閾値Th2を超えることがある。不良数を調整することで、将来の不良数の増加の原因となる生産ラインを予測できる可能性が高まる。
【0084】
出力部16は、原因予測部13で予測された将来の総不良関連数の増加の原因となる生産ラインを特定する情報を、提示装置3へ出力する。提示装置3は、将来の総不良関連数の増加の原因となる生産ラインを特定する情報を提示する(ステップST8)。また、出力部16は、所定の生産ラインが将来の総不良関連数の増加の原因であると予測された根拠を示す情報を更に出力する。提示装置3は、上記根拠を提示する。例えば、提示装置3は、
図5A~
図6Dのような表示をする。
図6B、
図6Cには、生産ラインA2、B2が原因閾値Th2を超えていることが示されているので、管理者は、生産ラインA2、B2が将来の総不良関連数の増加の原因であると把握できる。また、
図6B、
図6Cに表示されているように、生産ラインA2、B2が原因閾値Th2を超えていることが、生産ラインA2、B2が将来の総不良関連数の増加の原因であると予測された根拠である。
【0085】
(変形例1)
以下、変形例1に係る不良予測システム1について説明する。実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0086】
実施形態では、取得部11は、複数の工程のうち第3工程のみにおける過去の不良関連数を取得する。これに対して、本変形例1では、取得部11は、複数の工程のうち1以上の工程における過去の不良関連数を取得する。つまり、検査システム2は、複数の工程のうち1以上の工程において製品の不良の有無を検査する。
【0087】
例えば、取得部11は、第2工程の複数の生産ラインの各々における過去の不良関連数を取得する。不良関連数予測部12は、第2工程の複数の生産ラインの各々における過去の不良関連数の推移に基づいて、第2工程の複数の生産ラインの各々における将来の不良関連数を予測することができる。例えば、不良関連数予測部12は、回帰分析により予測を行う。
【0088】
さらに、不良関連数予測部12は、取得部11で取得された識別情報を参照することで、第2工程よりも上流の工程(材料工程及び第1工程)の複数の生産ラインの各々における過去の不良関連数を求めることができる。
【0089】
また、例えば、取得部11は、第1工程の複数の生産ラインの各々における過去の不良関連数を取得する。不良関連数予測部12は、第1工程の複数の生産ラインの各々における過去の不良関連数の推移に基づいて、第1工程の複数の生産ラインの各々における将来の不良関連数を予測することができる。例えば、不良関連数予測部12は、回帰分析により予測を行う。
【0090】
さらに、不良関連数予測部12は、取得部11で取得された識別情報を参照することで、第1工程よりも上流の工程(材料工程)の複数の生産ラインの各々における過去の不良関連数を求めることができる。
【0091】
また、例えば、取得部11は、材料工程の複数の生産ラインの各々における過去の不良関連数を取得する。不良関連数予測部12は、材料工程の複数の生産ラインの各々における過去の不良関連数の推移に基づいて、材料工程の複数の生産ラインの各々における将来の不良関連数を予測することができる。例えば、不良関連数予測部12は、回帰分析により予測を行う。
【0092】
(実施形態のその他の変形例)
以下、実施形態のその他の変形例を列挙する。以下の変形例は、適宜組み合わせて実現されてもよい。また、以下の変形例は、上述の変形例1と適宜組み合わせて実現されてもよい。
【0093】
不良関連数予測部12は、特定の不良がある製品のみを、不良数としてカウントしてもよい。例えば、製品に生じ得る不良の種類として、第1の不良と第2の不良とがある場合に、不良関連数予測部12は、将来における第1の不良の発生数を予測してもよいし、将来における第2の不良の発生数を予測してもよい。あるいは、不良関連数予測部12は、将来における第1の不良の発生数と、将来における第2の不良の発生数と、を個別に予測してもよい。さらに、原因予測部13は、将来における第1の不良の発生数の増加の原因と、将来における第2の不良の発生数の増加の原因と、を個別に予測してもよい。
【0094】
製品を製造する少なくとも一部の工程が、作業者による作業を含んでいてもよい。すなわち、少なくとも一部の工程を行うシステムは、作業者を含むシステムであってもよい。
【0095】
第3工程よりも下流の工程が更に存在してもよい。
【0096】
複数の工程は、少なくとも、第1工程と、第2工程又は材料工程と、を含んでいればよい。第1工程及び第2工程は、製品を製造するための作業を行う工程である。材料工程は、製品の材料を用意する工程である。
【0097】
不良関連数予測部12で用いられる学習済みモデルは、学習部15で生成されることに代えて、不良予測システム1の外部の装置で生成されて不良予測システム1に提供されてもよい。
【0098】
不良関連数予測部12は、機械学習によらずに生成されたアルゴリズムで将来の不良関連数を予測してもよい。例えば、不良予測システム1のメモリに、将来の不良関連数を予測するための複数の回帰式を記憶しておき、条件に応じて、複数の回帰式の中から将来の不良関連数の予測に用いられる回帰式が選択されてもよい。
【0099】
実施形態では、不良関連数予測部12は、1つの検査時点t+1に対応する不良関連数のみを予測する。これに対して、不良関連数予測部12は、複数の検査時点に対応する不良関連数を予測してもよい。
【0100】
原因閾値Th2を超えた生産ラインが複数存在する場合、原因予測部13は、不良関連数が最も大きい生産ラインのみを、総不良関連数の増加の原因としてもよいし、原因閾値Th2を超えた全ての生産ラインを、総不良関連数の増加の原因としてもよい。
【0101】
不良数と閾値との比較においては、製品の個数に閾値を比例させてもよい。製品の個数は、不良数と、不良でない製品の個数と、の和である。
【0102】
実施形態に係る不良予測システム1の種々の構成(変形例を含む)は、不良予測方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体にて具現化可能とされてもよい。
【0103】
一態様に係る不良予測方法は、複数の工程により製造される製品の不良に関する予測をする不良予測方法である。複数の工程の各々は、互いに並列な複数の生産ラインを含む。不良予測方法は、取得ステップと、不良関連数予測ステップと、原因予測ステップと、を含む。取得ステップでは、複数の工程のうち少なくとも1つの工程の、複数の生産ラインの各々における、製品の過去の不良関連数を取得する。過去の不良関連数は、過去の不良数に関する数である。不良関連数予測ステップでは、取得ステップで取得された過去の不良関連数に基づいて、複数の工程の各々の、複数の生産ラインの各々における製品の将来の不良関連数を予測する。将来の不良関連数は、将来の不良数に関する数である。原因予測ステップでは、不良関連数予測ステップで予測された複数の工程の各々の、複数の生産ラインの各々における将来の不良関連数に基づいて、将来の総不良関連数の増加の原因となる生産ラインを予測する。将来の総不良関連数は、複数の生産ラインの将来の不良関連数の総和である。
【0104】
一態様に係るプログラムは、上記の不良予測方法をコンピュータシステムの1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。プログラムは、コンピュータで読み取り可能な非一時的記録媒体に記録されていてもよい。
【0105】
本開示における不良予測システム1は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における不良予測システム1としての機能の少なくとも一部が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0106】
また、不良予測システム1における複数の機能が、1つの装置に集約されていることは不良予測システム1に必須の構成ではなく、不良予測システム1の構成要素は、複数の装置に分散して設けられていてもよい。さらに、不良予測システム1の少なくとも一部の機能、例えば、不良関連数予測部12及び原因予測部13のうち少なくとも一方の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0107】
反対に、実施形態において、複数の装置に分散されている機能が、1つの装置に集約されていてもよい。例えば、不良予測システム1と提示装置3とが、1つの装置に集約されていてもよい。
【0108】
本開示での2値の比較において、「以上」としているところは、2値が等しい場合、及び2値の一方が他方を超えている場合との両方を含む。ただし、これに限らず、ここでいう「以上」は、2値の一方が他方を超えている場合のみを含む「より大きい」と同義であってもよい。つまり、2値が等しい場合を含むか否かは、基準値等の設定次第で任意に変更できるので、「以上」か「より大きい」かに技術上の差異はない。同様に、「以下」においても「未満」と同義であってもよい。
【0109】
(まとめ)
以上説明した実施形態等から、以下の態様が開示されている。
【0110】
第1の態様に係る不良予測システム(1)は、複数の工程により製造される製品の不良に関する予測をする不良予測システム(1)である。複数の工程の各々は、互いに並列な複数の生産ラインを含む。不良予測システム(1)は、取得部(11)と、不良関連数予測部(12)と、原因予測部(13)と、を備える。取得部(11)は、複数の工程のうち少なくとも1つの工程の、複数の生産ラインの各々における、製品の過去の不良関連数を取得する。過去の不良関連数は、過去の不良数に関する数である。不良関連数予測部(12)は、取得部(11)で取得された過去の不良関連数に基づいて、複数の工程の各々の、複数の生産ラインの各々における製品の将来の不良関連数を予測する。将来の不良関連数は、将来の不良数に関する数である。原因予測部(13)は、不良関連数予測部(12)で予測された複数の工程の各々の、複数の生産ラインの各々における将来の不良関連数に基づいて、将来の総不良関連数の増加の原因となる生産ラインを予測する。将来の総不良関連数は、複数の生産ラインの将来の不良関連数の総和である。
【0111】
上記の構成によれば、製品の総不良関連数が増加する前に総不良関連数の増加の原因を特定(予測)することができる。そのため、原因を早期に取り除き、製品の総不良関連数の削減を図ることができる。
【0112】
また、第2の態様に係る不良予測システム(1)は、第1の態様において、警告部(14)を更に備える。警告部(14)は、不良関連数予測部(12)で予測された将来の総不良関連数が注意閾値(Th1)以上である場合に、管理者に注意を促すための警告情報を生成する。
【0113】
上記の構成によれば、製品の総不良関連数の増加が予測されることを管理者に把握させることができる。
【0114】
また、第3の態様に係る不良予測システム(1)では、第1又は2の態様において、取得部(11)は、複数の工程のうち特定の工程の、複数の生産ラインの各々における過去の不良関連数と、複数の工程の各々の、複数の生産ラインの各々における製品の識別情報と、を取得する。不良関連数予測部(12)は、取得部(11)で取得された識別情報を参照することで、特定の工程よりも上流の工程の複数の生産ラインの各々における過去の不良関連数を求める。
【0115】
上記の構成によれば、不良関連数予測部(12)は、特定の工程よりも上流の工程の過去の不良関連数を求めることができ、過去の不良関連数に基づいて将来の不良関連数を予測することができる。
【0116】
また、第4の態様に係る不良予測システム(1)では、第1~3の態様のいずれか1つにおいて、原因予測部(13)は、複数の生産ラインのうち、不良関連数予測部(12)で予測された将来の不良関連数が原因閾値(Th2)以上である生産ラインを、将来の総不良関連数の増加の原因となる生産ラインであると予測する。
【0117】
上記の構成によれば、複数の生産ラインのうち不良関連数が比較的大きくなることが予測される生産ラインを、将来の総不良関連数の増加の原因として特定できる。
【0118】
また、第5の態様に係る不良予測システム(1)では、第4の態様において、原因予測部(13)は、生産ラインごとの将来の不良関連数の分布に基づいて、原因閾値(Th2)を決定する。
【0119】
上記の構成によれば、原因閾値(Th2)を自動的に決定することができる。
【0120】
また、第6の態様に係る不良予測システム(1)では、第5の態様において、原因予測部(13)は、複数の工程の各々について、複数の生産ラインの将来の不良数の総和が所定範囲となるように、複数の生産ラインの将来の不良数を調整し、調整された不良数の分布に基づいて、原因閾値(Th2)を決定する。
【0121】
上記の構成によれば、不良数を調整することで、将来の不良数(総不良関連数)の増加の原因となる生産ラインを予測できる可能性が高まる。
【0122】
また、第7の態様に係る不良予測システム(1)では、第5又は6の態様において、原因予測部(13)は、生産ラインごとの将来の不良数の分布の分位数に基づいて、原因閾値(Th2)を決定する。
【0123】
上記の構成によれば、原因閾値(Th2)を自動的に決定することができる。
【0124】
また、第8の態様に係る不良予測システム(1)では、第1~7の態様のいずれか1つにおいて、不良関連数予測部(12)は、過去の不良関連数の推移に基づく回帰分析により、将来の不良関連数を予測する。
【0125】
上記の構成によれば、将来の不良関連数を予測できる。
【0126】
また、第9の態様に係る不良予測システム(1)では、第1~8の態様のいずれか1つにおいて、不良関連数予測部(12)は、機械学習により生成された学習済みモデルを用いて、将来の不良関連数を予測する。
【0127】
上記の構成によれば、将来の不良関連数の予測精度の向上を図ることができる。
【0128】
また、第10の態様に係る不良予測システム(1)は、第1~9の態様のいずれか1つにおいて、情報を提示装置(3)へ出力する出力部(16)を更に備える。提示装置(3)は、出力部(16)から入力された情報を提示する。
【0129】
上記の構成によれば、不良予測システム(1)で生成された情報を管理者等に提示できる。
【0130】
また、第11の態様に係る不良予測システム(1)では、第10の態様において、出力部(16)は、不良関連数予測部(12)で予測された将来の不良関連数を示す情報と、原因予測部(13)で予測された将来の総不良関連数の増加の原因となる生産ラインを特定する情報と、のうち少なくとも一方を提示装置(3)へ出力する。
【0131】
上記の構成によれば、不良予測システム(1)で生成された情報を管理者等に提示できる。
【0132】
また、第12の態様に係る不良予測システム(1)では、第11の態様において、出力部(16)は、所定の生産ラインが将来の総不良関連数の増加の原因であると予測された根拠を示す情報を更に出力する。
【0133】
上記の構成によれば、将来の総不良関連数の増加の原因を管理者等に提示できる。
【0134】
第1の態様以外の構成については、不良予測システム(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【0135】
また、第13の態様に係る不良予測方法は、複数の工程により製造される製品の不良に関する予測をする不良予測方法である。複数の工程の各々は、互いに並列な複数の生産ラインを含む。不良予測方法は、取得ステップと、不良関連数予測ステップと、原因予測ステップと、を含む。取得ステップでは、複数の工程のうち少なくとも1つの工程の、複数の生産ラインの各々における、製品の過去の不良関連数を取得する。過去の不良関連数は、過去の不良数に関する数である。不良関連数予測ステップでは、取得ステップで取得された過去の不良関連数に基づいて、複数の工程の各々の、複数の生産ラインの各々における製品の将来の不良関連数を予測する。将来の不良関連数は、将来の不良数に関する数である。原因予測ステップでは、不良関連数予測ステップで予測された複数の工程の各々の、複数の生産ラインの各々における将来の不良関連数に基づいて、将来の総不良関連数の増加の原因となる生産ラインを予測する。将来の総不良関連数は、複数の生産ラインの将来の不良関連数の総和である。
【0136】
上記の構成によれば、製品の総不良関連数が増加する前に総不良関連数の増加の原因を特定(予測)することができる。そのため、原因を早期に取り除き、製品の総不良関連数の削減を図ることができる。
【0137】
また、第14の態様に係るプログラムは、第13の態様に係る不良予測方法を、コンピュータシステムの1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0138】
上記の構成によれば、製品の総不良関連数が増加する前に総不良関連数の増加の原因を特定(予測)することができる。そのため、原因を早期に取り除き、製品の総不良関連数の削減を図ることができる。
【符号の説明】
【0139】
1 不良予測システム
3 提示装置
11 取得部
12 不良関連数予測部
13 原因予測部
16 出力部
Th1 注意閾値
Th2 原因閾値