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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】縦型洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 39/12 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
D06F39/12 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018170124
(22)【出願日】2018-09-12
(65)【公開番号】P2020039656
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-04-07
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】徳崎 雅朗
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】長馬 望
【審判官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-46786(JP,A)
【文献】特開2013-143992(JP,A)
【文献】特開2018-122016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 39/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体の上部後方部に設けられた収容部に配置され、洗い、濯ぎ、脱水などの一連の洗濯運転を実行する制御装置と、を備え、前記制御装置には、電装部品が配設された基板と、前記電装部品と接する放熱部と、前記基板の前記電装部品が配設されている第1の面を覆うように配設されるカバーと、が設けられており、
前記カバーは、
前記基板の前記第1の面と対向し、前記第1の面を覆う第2の面と、
前記第2の面に開口して設けられている開口部と、
を有しており、
前記放熱部は、前記開口部に貫入するように、前記基板から延伸し、
前記収容部の背面には、前記収容部内と前記筐体外とを連通させる収容部開口部が設けられた、縦型洗濯機。
【請求項2】
前記カバーは、金属により形成されている、請求項1に記載の縦型洗濯機。
【請求項3】
前記制御装置は、上方側に操作表示部を有し、前記基板は、前記操作表示部の下方側に設けられ、前記カバーは、下方より、前記基板の前記第1の面を覆う、請求項1または2に記載の縦型洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置を備えた縦型洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、特許文献1に記載された従来の洗濯機を示すものである。
【0003】
図6に示すように、従来の洗濯機は、モータなど電動部材の電力供給や運転を制御する電子回路基板装置200を備える。電子回路基板装置200は、パワーモジュール102及び電子部品103が設けられた実装基板100と、パワーモジュール102に取り付けられた放熱板104と、実装基板100及び放熱板104を収納する回路ケース106により構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-252663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、実装基板100上に実装されたパワーモジュール102が発熱した場合、熱せられた空気が回路ケース106内に滞留することにより実装基板100が高温となるため、パワーモジュール102や電子部品103の故障や誤作動を引き起こす虞があった。
【0006】
本開示は、制御装置内で発生した熱を外部へ放出することで、制御装置の故障や誤動作を抑止する縦型洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示における縦型洗濯機は、筐体と、前記筐体の上部後方部に設けられた収容部上に配置され、洗い、濯ぎ、脱水などの一連の洗濯運転を実行する制御装置と、を備える。前記制御装置には、電装部品が配設された基板と、前記電装部品と接する放熱部と、前記基板の前記電装部品が配設されている第1の面を覆うように配設されるカバーと、が設けられており、前記カバーは、前記基板の前記第1の面と対向し、前記第1の面を覆う第2の
面と、前記第2の面に開口して設けられている開口部と、を有しており、前記放熱部は、前記開口部に貫入するように、前記基板から延伸し、前記収容部の背面には、前記収容部内と前記筐体外とを連通させる収容部開口部が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本開示における縦型洗濯機は、制御装置内で発生した熱を外部へ放出することができる。そのため、熱せられた空気の滞留が原因で生じる制御装置の故障や誤動作を抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1における洗濯機の縦断面図
図2】同洗濯機の制御装置の要部分解斜視図
図3】同洗濯機の上部枠体後部の要部断面図
図4】同洗濯機の制御部の背面外観図
図5】同洗濯機の制御部の排熱により温められた空気の流れを示す模式図
図6】従来の洗濯機の断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
(実施の形態)
本実施の形態1においては、洗濯機として、縦型洗濯機を例に説明する。
【0012】
図1は、実施の形態1における洗濯機の縦断面図である。
【0013】
図1に示すように、洗濯機10は、筐体11の内部に水槽13を有している。水槽13は、有底円筒型に形成されており、サスペンション12により筐体11に防振支持されている。洗濯槽15は、同じく有底円筒型に形成されており、水槽13の内部に回転自在に配設されている。洗濯槽15は、側壁に多数の通水孔16が形成されており、脱水槽として兼用される。また、洗濯槽15の上部には流体バランサ17が配設されており、洗濯槽15内の衣類の偏りによって生じる水槽13の異常振動を抑止する。
【0014】
パルセータ18は、洗濯槽15の中央底部に回転自在に配設されている。回転軸14は、洗濯槽15の底面を貫通するように配置されており、上端にパルセータ18が取り付けられ、下端に伝達機構19が取り付けられている。回転軸14は、中空で2軸構造になっており、洗濯槽15又はパルセータ18をそれぞれ別々に回転させることができる。伝達機構19の内部には、減速ギア(図示せず)と、クラッチ(図示せず)と、ブレーキ(図示せず)が内蔵されている。
【0015】
モータ20は、水槽13の底部に取り付けられ、ベルト23により伝達機構19と架橋されている。モータ20の回転駆動力は、モータ側プーリ21、ベルト23、伝達機構19の有するメカ側プーリ22、の順に伝達され、回転軸14を回転させる。
【0016】
筐体11は、上部に上部枠体24を有している。上部枠体24は、開口である衣類投入口24aを有しており、衣類投入口24aは、蓋体25により開閉自在に覆われている。使用者は、蓋体25を上方に持ち上げて開状態にすることで、衣類投入口24aを介して洗濯槽15の内部へ衣類を出し入れできる。
【0017】
図2は、本実施の形態における洗濯機の制御装置の要部分解斜視図、図3は、同洗濯機の上部枠体後部の要部断面部、図4は、同洗濯機の制御部の背面外観図である。
【0018】
図2に示すように、上部枠体24の後方部には凹状の収容部24bが形成されており、収容部24bの上には制御装置50が配設されている。本実施の形態における制御装置50は、主に、上側に配設された操作表示部60と、操作表示部60の下側に配設された制御部70により構成されている。操作表示部60は、ユーザにより入力された洗濯指示等を制御部70へと伝達するとともに、洗濯運転状況を表示する。制御部70は、モータ20等などの電装部を制御することで一連の洗濯運転を実行する。
【0019】
次に、操作表示部60の詳細な構成について説明する。
【0020】
操作表示部60は、主に、操作表示パネル61と、操作ボタン62と、操作基板63と、により構成されている。図2及び図3に示すように、操作表示パネル61は、樹脂によりシート状に形成されており、各種選択ボタン表示が印刷されている。操作表示パネル61の下方には、液晶部(図示せず)及び操作ボタン62が配設されている。液晶部は、残り洗濯時間等を示す各種数字を表示する。操作ボタン62は、ユーザが操作表示パネル61を押下した力を下方へと伝達すると同時に、ユーザにクリック感を与える。操作ボタン62の下方に配置された操作基板63は、操作ボタン62により伝達された力を電気信号へと変換し、制御部70へ送信する。
【0021】
続いて、制御装置50の詳細な構成について説明する。
【0022】
制御部70は、主に、電源基板71と、放熱板73と、金属カバー76と、により構成されている。図2及び図3に示すように、舟状ケース74は、上面で操作基板63を保持しており、下面で電源基板71を保持している。舟状ケース74は、難燃性樹脂により形成されており、舟状ケース74と電源基板71との間には絶縁性不燃材シート75が設けられている。
【0023】
電源基板71の下面には、操作基板からの信号を受け取るコネクタ(図示せず)やパワーモジュール等の電装部品72が配設されている。電装部品72には、アルミニウムで形成された放熱板73が配設されている。また、電源基板71のほぼ全体を覆うように、ウレタン樹脂により形成されたポッティング剤(図示せず)が充填されており、水により電源基板71が故障することを抑止する。
【0024】
図4及び図5に示すように、金属カバー76は、電源基板71の下方を覆うように設けられており、放熱板73の一部が貫通するように開口部76aが設けられている。この開口部76aは、放熱板73よりも大きくなるように形成されている。
【0025】
以上のように構成された洗濯機について、その動作を以下説明する。
【0026】
初めに、洗濯運転の基本動作について説明する。
【0027】
ユーザは、蓋体25を開状態にして衣類を洗濯槽15に投入するとともに、洗剤及び柔軟剤を所定の場所に投入し、操作表示部60を介して洗濯運転に関する指示を入力する。これにより、制御部70は洗濯運転を開始し、洗い工程を行う。洗い工程において、制御装置は、給水弁37を開いて所定の水位まで給水した後、モータ20を駆動する。このとき、モータ20の駆動力は回転軸14を介してパルセータ18に伝達され、パルセータ18の回転により衣類が撹拌される。所定の時間、攪拌動作が行われた後、制御部70は排水弁(図示せず)を開き、汚れた洗濯液を排出させる。続いて、洗濯槽15を高速回転させる脱水動作が開始される。脱水動作が開始されると、制御部70は、伝達機構19のクラッチを脱水側に切り換える。すると、モータ20の回転駆動力は、回転軸14を介して洗濯槽15に伝達され、洗濯槽15を回転させる。これにより、遠心力で水分を衣類から分離し、脱水を行う。脱水動作が終了すると、洗い工程は終了する。
【0028】
次に、濯ぎ工程が開始されると、排水弁が閉じられるとともに給水弁37が開かれ、洗濯槽15内に水道水が給水される。濯ぎ工程でも、パルセータ18の回転による攪拌動作が行われた後、洗濯槽15内の水が排水される。続いて、脱水工程が開始される。脱水工程でも、洗濯槽15を高速回転させる脱水動作が行われ、衣類の水分が取り除かれる。脱水動作の終了とともに全工程が終了となり、洗濯運転が終了する。
【0029】
続いて、図5を用いて、洗濯運転中における制御部70の動作について説明する。
【0030】
図5は、本実施の形態における洗濯機の制御部70の発熱により温められた空気の流れを示す模式図である。
【0031】
モータ20を駆動させる時、制御部70は、電源基板71上の電装部品を介してモータ20に電流を流す。モータ20の駆動には大電流が必要となるため、電装部品72にも大電流が流されることになり、電装部品72においてジュール熱が発生する。発生した熱は、電装部品72上に接する放熱板73に伝熱され、周囲の空気に放熱される。
【0032】
この時、放熱板73において金属カバー76の外部へと露出する部分は、比較的低い温度である外部の空気によって効果的に冷却される。矢印Aで示すように、温められた空気は上昇し、収容部24bから操作表示パネル61の後方部へと移動する。
【0033】
操作表示パネル61の後方部には、第3のリブ61bと、第3のリブよりも背面側に形成された第2のリブ61aと、第2のリブ61aと第3のリブ61bとの間に設けられ、上部枠体24から延伸するように形成された第1のリブ24cと、が配置されている。第3のリブ61bには、第1の開口部61cが設けられており、操作表示パネル61の背面において第1の開口部61cよりも低い位置に、第2の開口部61dが設けられている。温められた空気は、第2の開口部61d、第1の開口部61cを通過して、筐体外部に排気される。
【0034】
また、放熱板73において金属カバー76の内部に収納されている部分は、金属カバー76の内部の空気を温めてしまう。しかし、温められた空気は拡散する性質があるため、矢印Bで示すように、開口部76aを通過して金属カバー76の外部の空気と入り混じり、筐体11外部へと排気される。また、一部の熱は、金属カバー76を介して金属カバー76の外部の空気へと伝達される。
【0035】
次に、本実施の形態における作用を説明する。
【0036】
本実施の形態における本実施の形態における放熱板73は、開口部76aから金属カバー76の外部に露出している。従って、放熱板73が外部の冷えた空気に直接晒されているため、放熱効率が高い。また、金属カバー76の内部に収納される構成と比較すると、放熱板73を大きく設けることができるため、更なる放熱効率の向上が期待できる。
【0037】
また、本実施の形態における開口部76aは、放熱板73よりも大きくなるように形成されている。従って、開口部76aの壁面と放熱板73との間に間隙が存在するため、金属カバー76内外の空気が入り混じることができる。
【0038】
また、本実施の形態における操作表示パネル61に設けられた第2の開口部61dは、第2のリブ61aに設けられた第1の開口部61cより方に位置することで、本体外部からの水の浸入を防ぎ、安全性を向上させることができる。
【0039】
以上のように、本実施の形態において、洗濯機は、筐体11と、筐体11に設けられた収容部24b上に配置され、洗い、濯ぎ、脱水などの一連の洗濯運転を実行する制御部70と、を備える。制御部70には、電装部品72が配設された電源基板71と、電装部品72と接する放熱板73と、放熱板73を覆うように配設される金属カバー76と、が設けられており、金属カバー76は、電源基板71と対向する面に開口部76aを有しており、放熱板73は、開口部76aに貫入するように、電源基板71から延伸する。
【0040】
これにより、放熱板73が金属カバー76の外部へと露出しているため、制御装置内で発生した熱を効率よく金属カバー76の外へと放出することができる。そのため、熱せられた空気が金属カバー76内に滞留することで生じる制御装置の故障や誤動作を抑止できる。
【0041】
本実施の形態のように、カバーは、金属により形成されているようにしてもよい。これにより、金属の熱伝導性によりカバーを介した放熱効果も期待できるため、放熱部の放熱効率を向上させることができる。
【0042】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。
【0043】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0044】
実施の形態1では、洗濯機の一例として縦型洗濯機を説明した。洗濯機は、布を水洗できるものであればよい。したがって、洗濯機は、縦型洗濯機に限定されず、ドラム式洗濯機や二槽式洗濯機であってもよい。
【0045】
実施の形態1では、制御装置の一例として、操作表示部60及び制御部70を備える制御装置50を説明した。制御装置は、電装部品が配設された基板と、電装部品と接する放熱部と、基板において電装部品が配設されている面を覆うように配設されるカバーと、を備えていればよい。従って、制御装置は、操作表示部60を備えていなくてもよく、制御部70と操作表示部60が別の位置に配設されていてもよい。従って、制御装置は、筐体の上部に設けられていなくてもよく、筐体の背面や下部に設けられていてもよい。
【0046】
実施の形態1では、鉛直方向に積層された電源基板71及び金属カバー76を説明した。カバーは、基板において前記電装部品が配設されている面を覆うように設けられていればよい。従って、基板及びカバーは、鉛直方向に配置されていても水平方向に配置されていても構わない。また、実施の形態1では、開口部の一例として、開口部76aを説明した。開口部は、電装部品が配設された基板と対向する面に設けられていればよいので、鉛直方向であっても水平方向で合っても構わない。
【0047】
実施の形態1では、基板において電装部品が配設されている面を覆うように配設されるカバーの一例として、金属カバー76を説明した。カバーは、基板と対向する面に開口部を有していればよく、材質は金属に限定されない。従って、樹脂やセラミック材料で形成されたカバーを用いてもよい。ただし、金属で形成することによって、カバーの熱導電性、耐火性、及び耐久性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本開示は、制御装置を備えた洗濯機に適用可能である。具体的には、縦型洗濯機、ドラム式洗濯機、二槽式洗濯機などに、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
11 筐体
12 サスペンション
13 水槽
14 回転軸
15 洗濯槽
16 通水孔
17 流体バランサ
18 パルセータ
19 伝達機構
20 モータ
21 モータ側プーリ
22 メカ側プーリ
23 ベルト
24 上部枠体
24a 衣類投入口
24b 収容部
24c 第1のリブ
25 蓋体
37 給水弁
50 制御装置
60 操作表示部
61 操作表示パネル
61a 第2のリブ
61b 第3のリブ
61c 第1の開口部(収容部開口部)
61d 第2の開口部(収容部開口部)
62 操作ボタン
63 操作基板
70 制御部
71 電源基板
72 電装部品
73 放熱板
74 舟状ケース
75 絶縁性不燃材シート
76 金属カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6