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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】光学系
(51)【国際特許分類】
   G02B 17/08 20060101AFI20240524BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20240524BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
G02B17/08
G02B13/18
G02B26/10 F
G02B26/10 C
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021513723
(86)(22)【出願日】2020-04-10
(86)【国際出願番号】 JP2020016169
(87)【国際公開番号】W WO2020209374
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2019076468
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】葛原 聡
(72)【発明者】
【氏名】内田 恒夫
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-194617(JP,A)
【文献】特開2015-072437(JP,A)
【文献】特開2006-276816(JP,A)
【文献】特開2007-047243(JP,A)
【文献】特開2007-094121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 17/08
G02B 13/18
G02B 26/10
G02B 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射面と出射面と1面以上の反射面とを有するプリズムと、
前記プリズムの入射面にレーザ光を照射するレーザ素子と、を備え、
前記レーザ素子から出射されるレーザ光の瞳径の長径方向が第1方向であり、前記レーザ素子から出射される前記レーザ光の瞳径の短径方向が第2方向であり、前記第1方向および前記第2方向は互いに直交し、
前記プリズムの内部に前記第1方向の前記レーザ光の光束の第1中間結像位置と、前記第1中間結像位置と異なり、前記第2方向の前記レーザ光の光束の第2中間結像位置とを有し、
前記第2中間結像位置は、前記第1中間結像位置より前記入射面側に位置している、
光学系。
【請求項2】
入射する光を前記第1方向に走査する第1走査素子と、
入射する光を前記第2方向に走査する第2走査素子と、を備え、
前記プリズムは、前記第1走査素子から前記第2走査素子への光路の間に配置されている、
請求項に記載の光学系。
【請求項3】
前記第2中間結像位置が、前記第1中間結像位置より前記入射面側に位置することにより、前記第1方向の光学倍率より前記第2方向の光学倍率が大きい、
請求項1に記載の光学系。
【請求項4】
前記第1方向よりも前記第2方向の方が焦点距離が大きい、
請求項1からのいずれか1つに記載の光学系。
【請求項5】
前記プリズムの前記反射面は、前記第1方向と前記第2方向とで異なる曲率を有する、
請求項1からのいずれか1つに記載の光学系。
【請求項6】
前記プリズムの前記反射面は、入射光に対して偏心している、
請求項1からのいずれか1つに記載の光学系。
【請求項7】
前記プリズムは、少なくとも2つの前記反射面を有する、
請求項1からのいずれか1つに記載の光学系。
【請求項8】
少なくとも2つの前記反射面は、入射光に対して凹面形状を有する、
請求項に記載の光学系。
【請求項9】
前記光学系は、前記第2方向に中間結像作用を有さない、
請求項1からのいずれか1つに記載の光学系。
【請求項10】
前記第1中間結像位置は、前記レーザ光が前記反射面での反射後に形成される、
請求項に記載の光学系。
【請求項11】
前記出射面から出射した前記レーザ光の瞳径は、円形状に形成される、
請求項に記載の光学系。
【請求項12】
前記レーザ素子から出射する前記第1方向の第1出射瞳径φx1および前記第2方向の第2出射瞳径φy1と、前記プリズムの出射面を通って投斜面に到達する前記第1方向の第1投射瞳径φx2および前記第2方向の第2投射瞳径φy2との関係が、
0.1<(φx1×φy1)/(φx2×φy2)<0.8
である、請求項10または11に記載の光学系。
【請求項13】
前記プリズムの入射前、または、出射後の光路上に非点収差補正素子を備え、
前記プリズムの前記反射面は、前記第1方向と前記第2方向とで異なる曲率を有する、
請求項に記載の光学系。
【請求項14】
前記非点収差補正素子は、前記第1走査素子の走査方向の屈折力よりも、前記走査方向と垂直な方向の屈折力の方が大きい、
請求項13に記載の光学系。
【請求項15】
前記非点収差補正素子は、シリンドリカル形状、トロイダル形状、自由曲面形状、または、これらの形状の組み合わせを有する、
請求項13または14に記載の光学系。
【請求項16】
前記非点収差補正素子は、レンズである、
請求項15に記載の光学系。
【請求項17】
前記非点収差補正素子は、ミラーである、
請求項15に記載の光学系。
【請求項18】
前記プリズムの入射前または出射後の光路上に配置された視度補正素子を備える、
請求項15に記載の光学系。
【請求項19】
前記視度補正素子は、回転対称な屈折力を有する、
請求項18に記載の光学系。
【請求項20】
前記視度補正素子は、前記レーザ素子から前記第1走査素子への光路上に配置されている、
請求項18に記載の光学系。
【請求項21】
前記視度補正素子は、球面レンズ、または、非球面レンズである、
請求項19または20に記載の光学系。
【請求項22】
前記プリズムの反射面は、入射光に対して偏心している、
請求項13から21のいずれか1つに記載の光学系。
【請求項23】
入射面と出射面と1面以上の反射面とを有するプリズムを備え、
前記プリズムに入射される光束の瞳は楕円形であり、前記光束の瞳径の長径方向が第1方向であり、前記プリズムに入射される前記光束の瞳径の短径方向が第2方向であり、前記第1方向および前記第2方向は互いに直交し、
前記プリズムの内部に前記第1方向の光束の第1中間結像位置と、前記第1中間結像位置と異なり、前記第2方向の光束の第2中間結像位置とを有し、
前記第2中間結像位置が、前記第1中間結像位置より前記入射面側に位置していることにより、前記第1方向の光学倍率より前記第2方向の光学倍率が大きい、
光学系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリズムを用いた光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、2方向にそれぞれ走査する走査装置を有する光学系を開示する。この光学系は、走査されたレーザをミラーを用いて伝送することが記載されている。ミラーを用いてレーザを伝送すると、ミラー間に空気の層があるので、光学系のサイズを小型化しにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-108400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学系のサイズを小型化するために、ミラー間をプリズムの媒質で埋めると、プリズムに入射した光の結像点にプリズム内の傷やゴミが存在する場合、レーザ光が消失してしまうおそれがある。
【0005】
本開示は、サイズの小型化が可能で、かつ、プリズム内の傷の影響を低減した光学系を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の光学系は、入射面と出射面と1面以上の反射面とを有するプリズムを備え、前記プリズムの内部に第1方向の光束の第1中間結像位置を有し、前記第1中間結像位置は、前記第1方向と直交する第2方向の光束の第2中間結像位置と異なる。
【0007】
本開示の光学系は、入射面と出射面と1面以上の反射面とを有するプリズムを備え、前記プリズムの内部に第1方向の光束の第1中間結像位置を有し、前記第1方向と直交する第2方向の光束は中間結像を行わない。
【発明の効果】
【0008】
本開示におけるプリズムは、サイズの小型化が可能で、かつ、プリズム内の傷の影響を低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1における光学系の構成を示す断面図
図2】実施形態1におけるレーザ素子から照射直後のレーザ光の瞳径を示す図
図3】レーザ光のX成分およびY成分のそれぞれの中間結像位置を示す図
図4】中間結像位置(Px)におけるレーザ光の瞳径を示す図
図5】中間結像位置(Py)におけるレーザ光の瞳径を示す図
図6】プリズムを出射したレーザ光の瞳径を示す図
図7】レーザ光のX成分の中間結像位置を示す図
図8】実施形態2における光学系の構成を示す断面図
図9】実施形態2の変形例における光学系の構成を示す断面図
図10】実施形態2の変形例における光学系の構成を示す断面図
図11】実施形態2の変形例における光学系の構成を示す断面図
図12】解像度の向上を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、発明者(ら)は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0011】
(実施形態1)
以下、図1図6を用いて、実施形態1を説明する。なお、本実施形態において、図2に示すように、例えば、X方向は、レーザ素子11から出射されるレーザ光Rの瞳径11aの長径方向であり、Y方向は、レーザ素子11から出射されるレーザ光Rの瞳径11aの短径方向である。X方向およびY方向は互いに直交し、XY平面に直交する方向がZ方向である。
[1-1.構成]
図1は、本開示に係る光学系1の構成示す断面図である。光学系1は、レーザ素子11と、第1走査素子13と、プリズム15と、第2走査素子17とを備える。
【0012】
レーザ素子11は、例えば、半導体レーザである。レーザ素子11から照射されるレーザは、X方向とY方向とで瞳径が異なる平行光である。例えば、図2に示すように、レーザ素子11から照射直後のレーザ光Rの瞳径11aは、X方向に延びた楕円形を有する。レーザ素子11から照射されるレーザ光Rは、第1走査素子13によりX方向に走査されてプリズム15の入射面15aに入射する。
【0013】
第1走査素子13は、入射したレーザ光を第1方向としてのX方向に走査する。第1走査素子13は、例えば、圧電駆動によりY方向を回転軸として回転駆動されるミラーである。第1走査素子は、例えば、垂直方向のスキャナである。これにより、平行光がX方向に拡散される。
【0014】
プリズム15は、入射面15aと、出射面15dとを有する。プリズム15は、入射面15aから出射面15dまでの光路間に、さらに、1面以上の反射面を有しており、本実施形態では、例えば、第1反射面15bと、第2反射面15cとを有する。入射面15aおよび出射面15dは、例えば、平板形状を有する。プリズム15は、例えば、樹脂製またはガラス製である。
【0015】
入射面15aは、第1走査素子13と対向しており、第1走査素子13によりX方向に走査されたレーザ光Rが入射面15aを通ってプリズム15内へ入射される。入射面15aと第1反射面15bとは対向しており、入射面15aから入射したレーザ光は、第1反射面15bでプリズム15内に反射される。
【0016】
第1反射面15bで反射されたレーザ光は、出射面15dに対向して配置された第2反射面15cで再びプリズム15内に反射される。第2反射面15cで反射されたレーザ光は、出射面15dに進行し、出射面15dからプリズム15外へ出射される。
【0017】
第1反射面15bおよび第2反射面15cは、それぞれ、第1方向としてのX方向と第2方向としてのY方向とで異なる曲率を有する。したがって、第1反射面15bおよび第2反射面15cは、自由曲面形状を有している。
【0018】
また、第1反射面15bおよび第2反射面15cは、それぞれ、入射光に対して偏心している。これにより、ビームスプリッタ等の光学素子を用いずに、入射光の光路を分離することが可能となる。また、第1反射面15bおよび第2反射面15cは、それぞれ、入射光に対して凹面形状を有する。
【0019】
第2走査素子17は、プリズム15から出射されたレーザ光をY方向に走査して、投影面19に投影する。第2走査素子17は、例えば、圧電駆動によりX方向を回転軸として回転駆動されるミラーである。第2走査素子17は、例えば、水平スキャナである。また、第2走査素子17は第1走査素子13と同期して走査しており、これにより二次元画像を投影面19に投影することが出来る。
【0020】
本実施形態における光学系1は、レーザ素子11からの光路の順に、第1走査素子13と、プリズム15の入射面15aと、プリズム15の第1反射面15bと、プリズム15の第2反射面15cと、プリズム15の出射面15dと、第2走査素子17が配置されている。したがって、プリズム15は、第1走査素子13から第2走査素子17への光路の間に配置されている。
【0021】
図3に示すように、光学系1は、プリズム15内の第1反射面15bと、プリズム15内の第2反射面15cとの間で、レーザ光Rの光束のX方向において中間結像位置Pxを有する。中間結像位置Pxは、X方向と直交するY方向のレーザ光Rの光束と同じ位置で交わらない。したがって、中間結像位置Pxにおけるレーザ光Rの瞳径11cは直線形状を有する。
【0022】
また、レーザ光RのX方向の成分であるRxとY方向の成分であるRyの焦点距離も異なっているので、レーザ光RのX成分Rxの中間結像位置PxとY成分Ryの中間結像位置Pyとは異なっている。また、X成分RxとY成分Ryのそれぞれの焦点距離が異なっているので、プリズム15の出射面15dから出射される際のそれぞれの拡大率も異なる。すなわち、光学系1は、X方向とY方向とで異なる光学倍率を有する。例えば、本実施形態において、X方向よりもY方向の方が焦点距離が大きいので、X方向よりもY方向の光学倍率が大きい。
【0023】
レーザ光RのX成分Rxの中間結像位置Pxは、レーザ光RのY成分Ryの中間結像位置Pyと同じ位置にならない。これにより、図4に示すように、中間結像位置Pxにおけるレーザ光Rの瞳径11bは、Y方向に延びた直線形状を有している。これにより、中間結像位置Pxにゴミや傷があった場合に、レーザ光Rの瞳径11bが消失することを防ぐことが出来る。
【0024】
また、図5に示すように、レーザ光RのY成分Ryの中間結像位置Pyにおいて、レーザ光Rの瞳径11cは、レーザ光RのX成分Rxが結像する前に存在する。このように、中間結像位置Pyにおけるレーザ光Rの瞳径11cも、X方向に延びた直線形状を有している。なお、光学系1の光学倍率がX方向よりもY方向の方が大きいので、出射面15dから出射したレーザ光Rの瞳径11dは、図6に示すように、円形状に形成されている。
【0025】
レーザ素子11から出射するX方向の第1出射瞳径φx1およびY方向の第2出射瞳径φy1と、プリズム15の出射面15dを通って投射面19に到達するX方向の第1投射瞳径φx2およびY方向の第2投射瞳径φy2との関係が、
0.1<(φx1×φy1)/(φx2×φy2)<0.8
である。この関係を満たすことで、中間結像位置Px、Pyにおけるスポットサイズが大きくなり、プリズム15の内部におけるゴミや傷の影響を効果的に軽減することが出来る。
【0026】
なお、本実施形態において、光学系1は、Y方向の中間結像位置Pyを有していたが、図7のようにY方向に中間結像作用を有しておらず、中間結像位置Pyのない構成でもよい。この場合、第1反射面15bで反射したレーザ光RのY成分Ryが徐々に拡大するように、第1反射面15bの曲率が設計されていてもよい。
【0027】
なお、本実施形態において、第1走査素子13を垂直方向のスキャナ、第2走査素子17を水平方向のスキャナの組合せとしたが、第1走査素子13を水平方向のスキャナ、第2走査素子17を垂直方向のスキャナの組合せとしてもよい。
【0028】
なお、本実施形態において、プリズム15は、第1反射面15b、第2反射面15cの2面の反射面を有しているが、第1反射面15bだけを有していてもよいし、少なくとも2面以上の反射面を有していてもよい。
【0029】
[1-2.効果等]
実施形態1に係る光学系1は、入射面15aと出射面15dと1面以上の反射面15b、15cとを有するプリズム15を備える。プリズム15の内部にX方向の光束であるレーザ光RのX成分Rxの中間結像位置Pxを有し、中間結像位置Pxは、X方向と直交するY方向の光束であるレーザ光RのY成分Ryの中間結像位置Pyと異なる。したがって、レーザ光RのX成分Rxの中間結像位置Pxに傷やゴミなどがあったとしても、中間結像位置PxがY方向に長い形状になるので、レーザ光Rの瞳径11bが消失することを防ぎ、傷やゴミの影響を低減することができる。また、レーザ光RのY成分Ryの中間結像位置Pyに傷やゴミなどがあったとしても、中間結像位置PyがX方向に長い形状になるので、レーザ光Rの瞳径11cが消失することを防ぎ、傷やゴミの影響を低減することができる。また、プリズム内をレーザ光Rを通すことで、プリズム15のインデックス分だけ光路長を短縮することができ、光学系1を小型化することができる。
【0030】
また、実施形態1に係る光学系1は、さらに、入射する光をX方向に走査する第1走査素子13と、入射する光をY方向に走査する第2走査素子17と、を備え、プリズム15は、第1走査素子13から第2走査素子17への光路の間に配置されている。X方向の光束の向きに第1走査素子13が光を走査し、Y方向の光束の向きに第2走査素子17が光を走査することで、走査方向に合わせて光学倍率を調整することができる。
【0031】
(実施形態2)
次に、図8を用いて、実施形態2を説明する。
[2-1.構成]
図8は、実施形態2に係る光学系1Aの構成を示す図である。図8に示すように、本実施形態の光学系1Aは、実施形態1の光学系1に、さらに、非点収差補正素子31と視度補正素子33とを備える。これらの相違点以外の構成について、実施形態1に係る光学系1と本実施形態の光学系1Aとは共通である。
【0032】
非点収差補正素子31は、プリズム15の入射前、または、出射後の光路上に配置される。本実施形態において、非点収差補正素子31は、第1走査素子13とプリズム15の入射面15aとの間の光路上に配置されている。非点収差補正素子31は、Y方向に曲率を有しX方向には曲率をほぼ有さない素子である。非点収差補正素子31は、第1走査素子13の走査方向(X方向)の屈折力よりも、走査方向と垂直な方向(Y方向)の屈折力の方が大きい。
【0033】
非点収差補正素子31は、例えば、シリンドリカル形状、トロイダル形状、自由曲面形状、または、これらの形状の組み合わせを有する。非点収差補正素子31は、レンズであってもよいし、ミラーであってもよい。非点収差補正素子31は、例えば、シリンドリカルレンズである。
【0034】
視度補正素子33は、プリズム15の入射前または出射後の光路上に配置される。本実施形態において、プリズム15の出射面15dと第2走査素子17との間の光路上に配置されている。視度補正素子33は、回転対称な屈折力を有するので、光路に沿って移動することで、X方向およびY方向の両方の解像度を調整することができる。したがって、出射面15dから出射したレーザ光Rの光路に沿って移動することで、X方向およびY方向の解像度を調整することができる。視度補正素子33は、例えば、球面レンズ、または、非球面レンズである。
【0035】
なお、非点収差補正素子31および視度補正素子33の配置は、図8に示される例に限定されない。例えば、図9に示すように、視度補正素子33をレーザ素子11と第1走査素子13との間の光路上に配置してもよい。また、図10に示すように、非点収差補正素子31をレーザ素子11と第1走査素子13との間の光路上に配置してもよい。また、図11に示すように、非点収差補正素子31と視度補正素子33をレーザ素子11と第1走査素子の光路上に配置してもよい。
【0036】
なお、非点収差補正素子31の作用により、Y方向の中間結像位置が第1走査素子とプリズム15の入射面15aの間に位置する場合も、レーザ光RのX成分Rxの中間結像位置Pxのいずれかの点に傷やゴミなどがあったとしても、レーザ光RのX成分が消失することを防ぎ、傷やゴミの影響を低減する効果を得ることができる。
【0037】
[2-2. 効果等]
非点収差補正素子31を備える光学系1Aは、X方向またはY方向のいずれかの解像度を調整することができるので、出射面15dから出射したレーザ光Rの光路に沿って移動することで、X方向またはY方向の解像度のずれを補正することができる。
【0038】
(他の実施形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態1および2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用できる。また、上記実施形態1および2で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
【0039】
実施形態1、2では、レーザ素子11から出射したレーザ光Rを第1走査素子13および第2走査素子17によりそれぞれ、X方向、Y方向に走査することで映像を投射していたが、これに限定されるものではない。レーザ素子11の代わりに表示素子41を配置して、第1走査素子13および第2走査素子17を省略してもよい。
【0040】
この実施形態によれば、図12に示すように、表示素子41の解像度を上げて投射面19に投射することができる。また、X方向およびY方向のそれぞれの解像度の上げる率を変えることができる。
【0041】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0042】
また、上述の実施形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【0043】
(実施形態の概要)
(1)本開示の光学系は、入射面と出射面と1面以上の反射面とを有するプリズムを備え、プリズムの内部に第1方向の光束の第1中間結像位置を有し、第1中間結像位置は、第1方向と直交する第2方向の光束の第2中間結像位置と異なる。
【0044】
このように、プリズム内において、第1方向の光束の第1中間結像位置が第2方向の光束の第2中間結像位置になっていないので、プリズム内の第1方向の光束の第1中間結像位置の一部に傷やゴミが存在しても、第1方向の光束への影響を低減することができる。また、プリズムを用いることで、ミラーを用いるよりも、光路を短くすることができるので、光学系を小型化することができる。
【0045】
(2)本開示の光学系は、入射面と出射面と1面以上の反射面とを有するプリズムを備え、プリズムの内部に第1方向の光束の第1中間結像位置を有し、前記第1方向と直交する第2方向の光束は中間結像を行わない。
【0046】
このように、プリズム内において、第1方向の光束の中間結像位置が第2方向の光束の中間結像位置になっていないので、プリズム内の第1方向の光束の中間結像位置の一部に傷やゴミが存在しても、第1方向の光束への影響を低減することができる。また、プリズムを用いることで、ミラーを用いるよりも、光路を短くすることができるので、光学系を小型化することができる。
【0047】
(3)(1)または(2)の光学系において、入射する光を第1方向に走査する第1走査素子と、入射する光を第2方向に走査する第2走査素子と、を備え、プリズムは、第1走査素子から第2走査素子への光路の間に配置されている。
【0048】
(4)(1)ないし(3)のいずれか1つの光学系において、第1方向と第2方向とで異なる光学倍率を有する。したがって、第1方向と第2方向とでプリズムから出射される光束の倍率をそれぞれ変えることができる。
【0049】
(5)(1)ないし(4)のいずれか1つの光学系において、第1方向よりも第2方向の方が焦点距離が大きい。
【0050】
(6)(1)ないし(5)のいずれか1つの光学系において、プリズムの反射面は、第1方向と第2方向とで異なる曲率を有する。
【0051】
(7)(1)ないし(6)のいずれか1つの光学系において、プリズムの反射面は、入射光に対して偏心している。
【0052】
(8)(1)ないし(7)のいずれか1つの光学系において、プリズムは、少なくとも2つの反射面を有する。
【0053】
(9)(8)の光学系において、少なくとも2つの反射面は、入射光に対して凹面形状を有する。
【0054】
(10)(1)ないし(9)のいずれか1つの光学系において、光学系は、第2方向に中間結像作用を有さない。
【0055】
(11)(1)ないし(10)のいずれか1つの光学系において、プリズムの入射面にレーザ光を照射するレーザ素子を備える。
【0056】
(12)(11)の光学系において、レーザ素子が照射するレーザは、第1方向と第2方向とで瞳径が異なる。
【0057】
(13)(11)または(12)の光学系において、レーザ素子から出射する第1方向の第1出射瞳径φx1および第2方向の第2出射瞳径φy1と、プリズムの出射面を通って投斜面に到達する第1方向の第1投射瞳径φx2および第2方向の第2投射瞳径φy2との関係が、0.1<(φx1×φy1)/(φx2×φy2)<0.8である。
【0058】
(14)(3)の光学系において、プリズムの入射前、または、出射後の光路上に非点収差補正素子を備え、プリズムの反射面は、第1方向と第2方向とで異なる曲率を有する。
【0059】
(15)(14)の光学系において、非点収差補正素子は、第1走査素子の走査方向の屈折力よりも、走査方向と垂直な方向の屈折力の方が大きい。
【0060】
(16)(14)または(15)の光学系において、非点収差補正素子は、シリンドリカル形状、トロイダル形状、自由曲面形状、または、これらの形状の組み合わせを有する。
【0061】
(17)(16)の光学系において、非点収差補正素子は、レンズである。
【0062】
(18)(16)の光学系において、非点収差補正素子は、ミラーである。
【0063】
(19)(16)の光学系において、プリズムの入射前または出射後の光路上に配置された視度補正素子を備える。
【0064】
(20)(19)の光学系において、視度補正素子は、回転対称な屈折力を有する。
【0065】
(21)(16)の光学系において、プリズムの入射面にレーザ光を照射するレーザ素子を備える。
【0066】
(22)(19)の光学系において、視度補正素子は、前記レーザ素子から前記第1走査素子への光路上に配置されている。
【0067】
(23)(20)または(22)の光学系において、視度補正素子は、球面レンズ、または、非球面レンズである。
【0068】
(24)(14)ないし(23)のいずれか1つの光学系において、プリズムの反射面は、入射光に対して偏心している。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本開示は、プリズムなどの屈折光学系を用いた光学装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 光学系
11 レーザ素子
11a 瞳径
13 第1走査素子
15 プリズム
15a 入射面
15b 第1反射面
15c 第2反射面
15d 出射面
17 第2走査素子
19 投射面
31 非点収差補正素子
33 視度補正素子
41 表示素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12