(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】エッチング方法および素子チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240524BHJP
H01L 21/461 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
H01L21/302 104H
H01L21/461
H01L21/302 101C
(21)【出願番号】P 2020041311
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】置田 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】針貝 篤史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰宏
【審査官】原島 啓一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/236175(WO,A1)
【文献】特開2019-125723(JP,A)
【文献】特開2008-193034(JP,A)
【文献】特表2015-521799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/301-21/302
H01L 21/461
H01L 21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層と、前記樹脂層に支持された電子部品と、を準備する準備工程と、
前記樹脂層をエッチングする樹脂エッチング工程と、を備え、
前記電子部品は、保護膜で覆われた第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面と、前記第1の面と前記第2の面との間にある側壁と、を備えるとともに、前記第2の面が前記樹脂層に対向しており、
前記第1の面側から見たとき、前記樹脂層は、前記電子部品よりも大きく、
前記樹脂エッチング工程は、
第1のプラズマを用いて、前記保護膜および前記樹脂層の表面に第1の膜を堆積させる堆積工程と、
第2のプラズマを用いて、前記樹脂層に堆積する前記第1の膜とともに、前記樹脂層の少なくとも一部を除去する除去工程と、を備え
るとともに、
前記堆積工程において、前記第1の膜が前記保護膜の表面に堆積する速度RD1に対する前記第1の膜が前記樹脂層の表面に堆積する速度RD2の比:RD2/RD1と、
前記除去工程において、前記保護膜の表面の前記第1の膜が除去される速度RR1に対する前記樹脂層の表面の前記第1の膜が除去される速度RR2の比:RR2/RR1とが、
RR2/RR1>RD2/RD1の関係を満たすように行われ、
前記樹脂エッチング工程において、前記保護膜が残存するように、前記堆積工程と前記除去工程とは交互に複数回繰り返される、エッチング方法。
【請求項2】
前記樹脂エッチング工程は、処理室と、処理室内に配置され、かつ、前記電子部品が載置されるステージと、前記ステージに内蔵される第2の電極と、を備えるプラズマ処理装置を用いて行われ、
前記堆積工程における前記処理室の圧力PD1と、
前記除去工程における前記処理室の圧力PR1とは、
PD1>PR1の関係を満たす、請求項
1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記樹脂エッチング工程は、前記電子部品が載置されるステージと、前記ステージに対向するように配置される第1の電極と、前記ステージに内蔵される第2の電極と、を備えるプラズマ処理装置を用いて行われ、
前記堆積工程において、前記第2の電極に印加される高周波電力PD2と、
前記除去工程において、前記第2の電極に印加される高周波電力PR2とは、
PD2<PR2の関係を満たす、請求項
1または2に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記樹脂エッチング工程では、複数の前記電子部品が処理され、
任意の2つの前記電子部品の対向する前記側壁同士の距離Wと、いずれか一方の前記電子部品の当該側壁の高さHとは、
H≧2×Wの関係を満たす、請求項1~
3のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記樹脂層は、ダイアタッチフィルムである、請求項1~
4のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記樹脂層は、接着層であり、
前記電子部品は、前記接着層とともに支持部材により支持されている、請求項1~
4のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記第1のプラズマは、炭素原子を含むプロセスガスにより発生される、請求項1~
6のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記第2のプラズマは、酸素原子を含むプロセスガスにより発生される、請求項1~
7のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項9】
複数の素子領域および前記素子領域を画定する分割領域を備えるとともに、第1の面および前記第1の面とは反対側の第2の面を有する基板と、前記第2の面側に配置された樹脂層と、を備える積層体を準備する準備工程と、
前記第1の面を保護膜で被覆する保護膜形成工程と、
前記分割領域に対応する少なくとも前記保護膜を除去して、開口を形成する開口形成工程と、
前記開口から露出する前記基板を前記第1の面から前記第2の面までエッチングする基板エッチング工程と、
前記基板エッチング工程の後、前記基板のエッチングにより形成された溝の底部に露出する前記樹脂層をエッチングする樹脂エッチング工程と、を備え、
前記樹脂エッチング工程は、
第1のプラズマを用いて、前記保護膜および前記樹脂層の表面に第1の膜を堆積させる堆積工程と、
第2のプラズマを用いて、前記樹脂層に堆積する前記第1の膜とともに、前記樹脂層の少なくとも一部を除去する除去工程と、を備え
るとともに、
前記堆積工程において、前記第1の膜が前記保護膜の表面に堆積する速度RD1に対する前記第1の膜が前記樹脂層の表面に堆積する速度RD2の比:RD2/RD1と、
前記除去工程において、前記保護膜の表面の前記第1の膜が除去される速度RR1に対する前記樹脂層の表面の前記第1の膜が除去される速度RR2の比:RR2/RR1とが、
RR2/RR1>RD2/RD1の関係を満たすように行われ、
前記樹脂エッチング工程において、前記保護膜が残存するように、前記堆積工程と前記除去工程とは交互に複数回繰り返される、素子チップの製造方法。
【請求項10】
前記樹脂層は、ダイアタッチフィルムを含み、
前記準備工程は、前記基板を、前記ダイアタッチフィルムを介して、フレームに固定された保持シートに貼着する工程を含む、請求項
9に記載の素子チップの製造方法。
【請求項11】
前記樹脂層は、接着層を含み、
前記準備工程は、前記基板を、前記接着層を介して支持部材に接着する工程を含む、請求項
9に記載の素子チップの製造方法。
【請求項12】
前記基板エッチング工程及び前記樹脂エッチング工程は、同じプラズマ処理装置を使用して、連続して行われる、請求項9に記載の素子チップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング方法および素子チップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1枚の基板から、例えばフラッシュメモリ等の多段積層される複数の素子チップを作製する際、基板をダイアタッチフィルムに貼り付けた状態で、ダイシングが行われる場合がある(特許文献1)。ダイアタッチフィルム(DAF)は、例えば、樹脂と無機フィラーとを含む樹脂組成物により形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、DAFに貼り付けられた基板のダイシングでは、まず、基板をメカニカルダイシングやステルスダイシングなどの物理的な手法でダイシング(あるいはハーフカット)し、その後、他の方法でDAFが分断される。DAFを分断する方法としては、例えば、クールエキスパンド法、レーザーアブレーション法等が挙げられる。
【0005】
パッケージの小型化および薄型化に伴い、基板の薄化が進んでいる。フラッシュメモリなどのデバイスでは、多段積層技術の進展に伴い、基板の厚みは30μm程度にまで小さくなっている。今後さらに、基板の厚みは10μm程度にまで小さくなると考えられる。
【0006】
クールエキスパンド法では、ダイシング用のテープ(保持テープ)およびDAFに貼着された基板がハーフカットされた後、保持テープを伸張する。基板は、ハーフカットされた位置で分割されて、複数の素子チップが形成される。このとき、基板に貼着していたDAFも分断される。しかし、基板が薄くなると、その物理的な強度も低下する。そのため、基板の損傷を抑制しながら、DAFが分断される程度の伸張力を、保持テープにかけることが難しくなってきている。また、機能の多様化に伴い、基板の材料であるシリコンの結晶方位が多様化したり、シリコンへの注入イオン濃度が高くなっている。そのため、基板の分割する方向が定まらず、DAFの分断方向も不安定になり易い。
【0007】
レーザーアブレーション法を用いる場合、DAFは粘着性を有するため、バリが発生しやすい。そのため、素子チップの端面とDAFの端面とが面一になり難い。さらに、このバリによって、分断されたDAF同士が再付着することもある。また、レーザ照射は、素子チップ間を狙って行われる。そのため、基板のダイシング後、素子チップの位置をマッピングする必要があり、工程時間が長くなり易い。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面は、樹脂層と、樹脂層に支持された電子部品と、を準備する準備工程と、前記樹脂層をエッチングする樹脂エッチング工程と、を備え、前記電子部品は、保護膜で覆われた第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面と、前記第1の面と前記第2の面との間にある側壁と、を備えるとともに、前記第2の面が前記樹脂層に対向しており、前記第1の面側から見たとき、前記樹脂層は、前記電子部品よりも大きく、前記樹脂エッチング工程は、第1のプラズマを用いて、前記保護膜および前記樹脂層の表面に第1の膜を堆積させる堆積工程と、第2のプラズマを用いて、前記樹脂層に堆積する前記第1の膜とともに、前記樹脂層の少なくとも一部を除去する除去工程と、を備え、前記樹脂エッチング工程において、前記保護膜が残存するように、前記堆積工程と前記除去工程とは交互に複数回繰り返される、エッチング方法に関する。
【0009】
本発明の他の一局面は、複数の素子領域および前記素子領域を画定する分割領域を備えるとともに、第1の面および前記第1の面とは反対側の第2の面を有する基板と、前記第2の面側に配置された樹脂層と、を備える積層体を準備する準備工程と、前記第1の面を保護膜で被覆する保護膜形成工程と、前記分割領域に対応する少なくとも前記保護膜を除去して、開口を形成する開口形成工程と、前記開口から露出する前記基板を前記第1の面から前記第2の面までエッチングする基板エッチング工程と、前記基板エッチング工程の後、前記基板のエッチングにより形成された溝の底部に露出する前記樹脂層をエッチングする樹脂エッチング工程と、を備え、前記樹脂エッチング工程は、第1のプラズマを用いて、前記保護膜および前記樹脂層の表面に第1の膜を堆積させる堆積工程と、第2のプラズマを用いて、前記樹脂層に堆積する前記第1の膜とともに、前記樹脂層の少なくとも一部を除去する除去工程と、を備え、前記樹脂エッチング工程において、前記保護膜が残存するように、前記堆積工程と前記除去工程とは交互に複数回繰り返される、素子チップの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電子部品に与えるダメージを低減しながら、樹脂層を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る樹脂エッチング工程に供される電子部品の要部を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る1回目の堆積工程後の電子部品の要部を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る1回目の除去工程後の電子部品の要部を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るN回目(N≧2)の堆積工程後の電子部品の要部を模式的に示す断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るN回目(N≧2)の除去工程後の電子部品の要部を模式的に示す断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る樹脂エッチング工程に供される電子部品の要部を模式的に示す断面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るN回目(N≧2)の除去工程後の電子部品の要部を模式的に示す断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る電子部品のエッチング方法を示すフローチャートである。
【
図9A】本発明の一実施形態に係る準備工程で準備された電子部品を模式的に示す上面図である。
【
図10A】本発明の他の実施形態に係る準備工程で準備された電子部品を模式的に示す上面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る素子チップの製造方法を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の第I実施形態に係る素子チップの製造方法を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の第I実施形態に係る準備工程により準備された積層体を模式的に示す上面図である。
【
図14】本発明の第I実施形態に係る準備工程により準備された積層体の一部を模式的に示す断面図である。
【
図15】本発明の第I実施形態に係る保護膜形成工程後の積層体の一部を模式的に示す断面図である。
【
図16】本発明の第I実施形態に係る開口形成工程後の積層体の一部を模式的に示す断面図である。
【
図17】本発明の第I実施形態に係る基板エッチング工程で作製された素子チップを模式的に示す断面図である。
【
図18】本発明の第I実施形態に係る樹脂エッチング工程後の素子チップを模式的に示す断面図である。
【
図19】本発明の第I実施形態に係る保護膜除去工程後の素子チップを模式的に示す断面図である。
【
図20】本発明の第II実施形態に係る素子チップの製造方法を示すフローチャートである。
【
図21】本発明の第II実施形態に係る準備工程により準備された積層体を模式的に示す上面図である。
【
図22】本発明の第II実施形態に係る準備工程により準備された積層体の一部を模式的に示す断面図である。
【
図23】本発明の第II実施形態に係る保護膜除去工程後の素子チップを、模式的に示す断面図である。
【
図24】本発明の一実施形態で使用されるプラズマ処理装置の構造を概略的に示す断面図である。
【
図25】本発明の一実施形態で使用されるプラズマ処理装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
基板をダイシングする方法として、基板にプラズマエッチングを施して個々のチップに分割するプラズマダイシングが注目されている。プラズマダイシングにおいて、通常、基板の素子領域はマスクによって保護されており、素子領域を画定する分割領域のみがプラズマによりエッチングされる。マスクは、例えば、基板の表面を保護膜で覆った後、分割領域における保護膜を除去することにより形成される。マスクは、製造中の基板および流通後の電子部品を保護するために、予め基板の表面に設けられている場合もある。保護膜には、これら基板に後から付与される樹脂製の膜および基板に予め設けられている絶縁性の膜(例えば、ポリイミド、窒化ケイ素(Si3N4)、シリコン酸化膜(SiO2))が含まれる。
【0013】
プラズマエッチングにおいて、プラズマの発生に用いられるプロセスガスは、加工対象物の材料や厚み等によって変える必要がある。上記のような基板および樹脂材料を含む対象物をプラズマダイシングする場合、主に半導体材料からなる基板をエッチングするためのプロセスガスと、有機物である樹脂材料をエッチングするためのプロセスガスとは異なる。
【0014】
マスク、すなわち保護膜は、素子領域を保護するために設けられており、プラズマエッチングの対象ではない。つまり、基板とDAFとを含む積層体をプラズマエッチングする場合、DAFをエッチングしつつ、保護膜を残存させることが求められる。保護膜が除去されてしまうと、素子領域が損傷する場合がある。しかし、保護膜が、DAFと同様に樹脂材料によって形成されている場合、DAFのみを選択的にプラズマエッチングすることは難しい。
【0015】
樹脂製の保護膜を残存させるには、厚く形成することが考えられる。しかし、厚い保護膜を均一に形成することは難しい。保護膜の厚みが不均一であると、エッチングの質が低下して、得られる素子チップの品質が低下し易い。また、厚いマスクは、除去するのに時間がかかってコスト高の要因になる場合がある。
【0016】
保護膜がSi3N4からなる場合も同様に、保護膜を残存させつつ、DAFのみを選択的にプラズマエッチングすることは難しいSi3N4もまた樹脂材料をエッチングするためのプロセスガスによりエッチングされる上に、Si3N4を用いて厚い膜を形成することが難しいためである。
【0017】
さらに、DAFには通常、フィラーが配合されている。フィラーの近傍では、プラズマエッチングが進行し易い。プラズマエッチングの際、フィラーが飛散して保護膜に付着すると、その付着した部分の近傍において局所的にプラズマエッチングが進行し、保護膜にピンホールが生じる場合もある。
【0018】
本実施形態では、電子部品の主面とこれを支持する樹脂層との間におけるプラズマ処理のされ易さの違いを利用して、樹脂層を除去する。これにより、電子部品の主面を被覆する保護膜を残存させたまま、樹脂層を除去することができる。本実施形態の樹脂エッチング工程では、下記の堆積工程と除去工程とが繰り返される。
【0019】
堆積工程では、第1のプラズマを用いて、電子部品の一方の主面(第1の面)を被覆する保護膜および樹脂層の表面に、第1の膜を堆積させる。第1の膜は、プラズマが照射され易い保護膜の表面により厚く堆積する。一方、第1の膜は、樹脂層に保護膜の表面よりも薄く堆積する。第1の面は、保護膜および厚い第1の膜によって保護される。
【0020】
除去工程では、第2のプラズマを用いて、樹脂層に堆積する第1の膜とともに、樹脂層の少なくとも一部を除去する。上記の通り、樹脂層には第1の膜がより薄く堆積しているため、除去工程によって、第1の膜とともに樹脂層も除去される。一方、第1の面には第1の膜が厚く堆積しているため、除去工程によって保護膜はエッチングされないか、あるいは、そのエッチング量が抑制される。保護膜表面の第1の膜は除去される。
【0021】
上記の堆積工程と除去工程との繰り返しによって、第1の面では、第1の膜の堆積および除去が繰り返される。言い換えれば、堆積工程と除去工程とを繰り返しても、保護膜自体のエッチングは抑制される。よって、樹脂エッチング工程による第1の面の損傷は抑制される。一方、樹脂層の表面では、第1の膜の堆積および除去が繰り返されるとともに、第1の膜が除去される際に、樹脂層自体も除去される。繰返し回数は特に限定されず、樹脂層が除去されるまで繰り返すことができる。上記の通り、保護膜自体のエッチングは抑制されるためである。
【0022】
本実施形態に係るエッチング方法によれば、保護膜を残存させながら、樹脂層を簡便な方法で除去することができる。そのため、本実施形態に係るエッチング方法は、電子部品に貼り付いたDAFの除去に特に適している。本実施形態に係るエッチング方法は、また、電子部品に貼り付いた接着剤の除去に特に適している。
【0023】
本実施形態は、樹脂層と基板とを含む積層体から素子チップを製造する方法を包含する。本実施形態に係る素子チップの製造方法によれば、高品質の素子チップが得られる。上記積層体は、樹脂層と樹脂層の一方の面側に配置された1以上の基板との積層体であってよく、樹脂層と樹脂層の両面側にそれぞれ配置された1以上の基板との積層体(例えば、貼り合わせ基板)であってよい。
【0024】
以下、樹脂エッチング工程を詳細に説明する。
樹脂エッチング工程は、堆積工程および除去工程を含む。樹脂エッチング工程において、堆積工程と除去工程とは交互に複数回繰り返される。
【0025】
(a)堆積工程
本工程では、保護膜および樹脂層の表面に第1の膜を堆積させる。
【0026】
第1の膜の堆積には、例えば、炭素原子(C)を含む第1のプロセスガスにより発生する第1のプラズマが用いられる。炭素原子を含むガスによって、保護膜および側壁の表面に第1の膜が効率よく堆積する。炭素原子を含むガスとしては、例えば、C4F8、C5F8等のフッ化炭素ガス;CHF3、CH2F2等のフッ化炭化水素等が挙げられる。
【0027】
第1のプロセスガスは、その他のガス、例えばAr、CH4、H2、N2等を含んでいてもよい。炭素原子を含むガスの第1のプロセスガスに占める割合は、10体積%以上100体積%未満であってよく、30体積%以上98体積%以下であってよい。
【0028】
保護膜の表面に堆積する第1の膜の厚みは特に限定されない。保護膜の表面に堆積する第1の膜の厚みは、除去工程の条件、生産性等を考慮して適宜設定すればよい。保護膜の表面に堆積する第1の膜の厚みは、3nm以上660nm以下であってよく、50nm以上300nm以下であってよい。このような第1の膜は、堆積速度200nm/分以上2000nm/分以下、堆積時間1秒以上20秒以下の条件で形成できる。
【0029】
第1の膜は、樹脂層の表面に過度に堆積されないことが望ましい。保護膜の表面に堆積する第1の膜の厚みD1に対する樹脂層の表面に堆積する第1の膜の厚みD2の比:D2/D1は、4/10以下であることが好ましく、3/10以下であることがより好ましい。D2/D1は、1/100以上であることが好ましく、1/50以上であることがより好ましい。厚みD2は、樹脂層の表面に堆積する第1の膜の任意の5点の平均値である。
【0030】
第1のプラズマを発生させる条件は、第1の膜の厚みおよび成分等に応じて適宜設定される。なかでも、第1のプラズマは、保護膜の表面に十分な厚みの第1の膜が堆積する一方、樹脂層の表面に第1の膜が過度に堆積しないような条件で行うことが望ましい。これにより、少ないサイクル数で樹脂層を除去することができて、生産性が向上する。
【0031】
堆積工程における第1の膜が保護膜の表面に堆積する速度を、速度RD1とする。堆積工程における第1の膜が樹脂層の表面に堆積する速度を、速度RD2とする。上記の観点から、速度RD1に対する速度RD2の比:RD2/RD1は、4/10以下であることが好ましく、3/10以下であることがより好ましい。RD2/RD1は、1/100以上であることが好ましく、1/50以上であることがより好ましい。
【0032】
第1の膜の堆積速度は、例えば、樹脂エッチング工程に用いられるプラズマ処理装置において、電子部品が載置されるステージに対向するように配置される第1の電極に印加される高周波電力、ステージに内蔵される第2の電極に印加される高周波電力、ガスの流量および、電子部品の温度等により制御することができる。第2の電極に高周波電力が印加されることにより、ステージにバイアス電圧がかかる。ただし、堆積工程において第2の電極に印加される高周波電力は低い方が望ましく、0Wであってもよい。これにより、第1の膜が樹脂層の表面に堆積する速度RD2を抑制することができる。
【0033】
保護膜の表面に十分な厚みの第1の膜を堆積させながら、樹脂層の表面に第1の膜が過度に堆積しないようにするには、処理室内の圧力を高くする方法が挙げられる。特に、第1の膜の堆積速度の絶対値を大きくしながら、処理室内の圧力を高くする方法が効果的である。これにより、単位時間に第1の膜が保護膜の表面に堆積する量と樹脂層の表面に堆積する量との差がより大きくなって、RD2/RD1は小さくなり易い。
【0034】
処理室内の圧力を高くするには、例えば、ガス流量を増加する方法が挙げられる。第1の膜の堆積速度の絶対値を大きくするには、例えば、ガス流量を増加する方法、第1の電極に印加される高周波電力を大きくする方法、電子部品の温度を下げる方法等が挙げられる。ただし、ガス流量には、第1の電極に印加される高周波電力の電力値に応じて、上限値(閾値)が設定されている。したがって、ガス流量をこの上限値付近に設定した上で排気速度を調整することにより、処理室内の圧力の増加と第1の膜の堆積速度の絶対値の増加とを両立することができる。上記の方法の2つ以上を組み合わせてもよい。例えば、ガス流量を増加させながら、電子部品を冷却し、さらに、第1の電極に印加される高周波電力を増加してもよい。堆積工程において、処理室内の圧力は10Pa以上であることが好ましい。電子部品の冷却は、例えば、冷却されたステージに強く吸着させることにより行うことができる。
【0035】
第1のプラズマを発生させる条件は、例えば以下の通りである。プロセスガスとしてC4F8を、100sccm以上600sccm以下で処理室(真空チャンバ)に供給する。真空チャンバ内の圧力は10Pa以上40Pa以下であり、高周波電力PD1は1000W以上4800W以下、高周波電力PD2は0W以上100W以下である。ステージ温度は-15℃以上15℃以下である。以上の条件によれば、堆積速度は100nm/分以上2500nm/以下程度になる。処理時間は、保護膜の表面に堆積する第1の膜の厚みを考慮して設定すればよい。処理時間は、例えば、1秒以上10秒以下である。
【0036】
(b)除去工程
本工程では、樹脂層の少なくとも一部を、第2のプラズマにより除去する。樹脂層は、第1の膜とともに除去される。このとき、保護膜の表面を被覆する第1の膜も除去され得る。ただし、保護膜上の第1の膜は厚いため、保護膜の損傷は抑制される。
【0037】
樹脂層および/または第1の膜(以下、樹脂層等と総称する場合がある。)の除去には、例えば、酸素原子を含む第2のプロセスガスにより発生する第2のプラズマが用いられる。有機物を主成分として含む樹脂層等は、酸素原子を含むガス由来の第2のプラズマにより効率よく除去される。酸素原子を含むガスとしては、例えば、O2、CO2、CO、H2Oが挙げられる。
【0038】
第2のプロセスガスは、その他のガス、例えばフッ素含有ガスやAr等の希ガスを含んでもよい。フッ素含有ガスにより、樹脂層がシリカ等のフィラーを含有する場合であっても、樹脂層等の除去効果が高まり易くなる。希ガスにより、第2のプラズマによる物理的スパッタリング効果を高めることができる。フッ素含有ガスとしては、例えば、CF4、C4F8等のフッ化炭素ガスおよびCHF3等のフッ化炭化水素、SF6等が挙げられる。酸素原子を含むガスの第2のプロセスガスに占める割合は、10体積%以上100体積%未満であってよく、30体積%以上98体積%以下であってよい。
【0039】
第2のプラズマを発生させる条件は、樹脂層等の量および成分等に応じて適宜設定される。ただし、第2のプラズマは、保護膜上の第1の膜が過度に除去されないような条件で行うことが望ましい。これにより、保護膜の損傷が抑制されて、第1の面が保護される。
【0040】
除去工程における保護膜の表面の第1の膜が除去される速度を、速度RR1とする。除去工程において樹脂層の表面の第1の膜が除去される速度を、速度RR2とする。上記の観点から、速度RR1に対する速度RR2の比:RR2/RR1は、例えば、3/10以上10/10以下であることが好ましい。
【0041】
樹脂層の表面の第1の膜の除去速度もまた、第1の電極に印加される高周波電力、第2の電極に印加される高周波電力、処理室内の圧力およびガスの流量等により制御することができる。
【0042】
樹脂層の表面の第1の膜の除去を効率的に行うためには、例えば、処理室内の圧力を低くする方法、第2の高周波電極に印加される高周波電力を大きくする方法が挙げられる。特に、第1の膜の除去速度の絶対値を大きくしながら、処理室内の圧力を低くする方法が効果的である。第1の膜の除去速度の絶対値を大きくするには、第1の高周波電極に印加される高周波電力を大きくする方法が挙げられる。これらの方法は、組み合わせて用いられてもよい。すなわち、処理室内の圧力を低くしながら、第2の電極に印加される高周波電力を増加させ、さらに、第1の電極に印加される高周波電力を増加してもよい。
【0043】
除去工程において、処理室内の圧力は15Pa以下が好ましく、第2の電極に印加される高周波電力は、単位面積あたり0.42W/cm2以上(第2の電極の寸法が直径300mmの場合に換算すると300W以上)が好ましい。
【0044】
第2のプラズマを発生させる条件は、例えば以下の通りである。プロセスガスとしてO2、O2およびSF6の混合ガス(流量比O2/CO2/SF6=175/175/50)を、50sccm以上600sccm以下で真空チャンバに供給する。真空チャンバ内の圧力は1Pa以上15Pa以下であり、高周波電力PR1は1000W以上4000W以下、高周波電力PR2は100W以上1000W以下、ステージ温度は-15℃以上15℃以下である。以上の条件によれば、第1の膜の除去速度は200nm/分以上3000nm/分以下程度となる。また、樹脂層の除去速度は、フィラーを含まないダイアタッチフィルムの場合3300nm/分程度、フィラー含有率10%のダイアタッチフィルムの場合3200nm/分程度、フィラー含有率30%のダイアタッチフィルムの場合1500nm/分程度となる。処理時間は、堆積工程で保護膜の表面に堆積した第1の膜の膜厚が除去される程度に設定すればよい。処理時間は、例えば、1秒以上200秒以下であり、好ましくは4秒以上200秒以下である。
【0045】
堆積工程と除去工程とは交互に複数回繰り返される。除去工程を行うごとに、樹脂層の量は減少していく。一方、保護膜の厚みは維持される。各堆積工程は、同じ条件で行われてもよいし、異なる条件で行われてもよい。例えば、堆積工程における処理時間を徐々に短くしてもよい。各除去工程も同様に、同じ条件で行われてもよいし、異なる条件で行われてもよい。例えば、除去工程における処理時間を徐々に長くしてもよい。あるいは、除去工程において、第2の電極に印加される高周波電力PR2を時間の経過とともに増加させてもよい。樹脂エッチング工程は、堆積工程から開始されてもよいし、除去工程から開始されてもよい。ただし、除去工程で終了することが望ましい。
【0046】
樹脂エッチング工程は、上記の通り、電子部品の主面と樹脂層との間におけるプラズマ処理のされ易さの違いを利用して行われる。樹脂エッチング工程は、堆積工程における速度RD1に対する速度RD2の比:RD2/RD1と、除去工程における速度RR1に対する速度RR2の比:RD2/RD1とが、RR2/RR1>RD2/RD1の関係を満たすように行われることが好ましい。すなわち、保護膜上の第1の膜との比較において、樹脂層には第1の膜が堆積し難い一方、樹脂層およびその表面の第1の膜が除去され易い条件で、樹脂エッチング工程を行うことが好ましい。これにより、樹脂層の除去がより効率的に行われる。
【0047】
RR2/RR1>RD2/RD1の関係を満たすには、例えば、堆積工程における処理室の圧力PD1と、除去工程における処理室の圧力PR1とを、PD1>PR1の関係を満たすように制御すればよい。
【0048】
また、堆積工程において第2の電極に印加される高周波電力PD2と、除去工程において第2の電極に印加される高周波電力PD2とを、PD2<PR2の関係を満たすように制御してもよい。
【0049】
樹脂エッチング工程では、複数の電子部品が同時に処理されてもよい。これにより、生産性が向上する。この場合、任意の2つの電子部品の対向する側壁同士の距離Wと、いずれか一方の電子部品の当該側壁の高さHとは、H≧2×Wの関係を満たしていてもよい。このように高アスペクト比の凹凸がある場合にも、本実施形態によれば、電子部品の主面を被覆する保護膜を残存させたまま、樹脂層を除去することができる。さらに、H≦50×Wの関係を満たしていてもよい。
【0050】
上記側壁の高さHは特に限定されない。側壁の高さHは、例えば20μm以上である。上記側壁同士の距離Wも特に限定されない。側壁同士の距離Wは、例えば4μm以上60μm以下である。
【0051】
距離Wは、任意の2つの電子部品の対向する側壁の第1の面側の端部同士の任意の2点における最短距離の平均値である。側壁の全面が対向していない場合、側壁の対向する部分同士の最短距離を測定すればよい。側壁の高さHは、距離Wを算出するのに使用された2つの側壁(あるいはその部分)の任意の2点の高さの平均値のうち、低い方の高さである。側壁の高さは、当該側壁が繋いでいる第1の面と第2の面との間の最短距離である。
【0052】
[第1実施形態]
本実施形態において、樹脂層はダイアタッチフィルム(DAF)を含む。電子部品は、DAFに貼着されることにより支持されている。
【0053】
(DAF)
DAFは、粘着性を有し、ダイシングテープとボンディング材としての機能を併せ持っている。例えばフラッシュメモリ等の多段積層される複数の素子チップを作製する際、基板をDAFに貼り付けた状態で、基板がダイシングされる。
【0054】
DAFは、例えば、樹脂と無機フィラーとを含む樹脂組成物により形成される。
樹脂としては、例えば、フェノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、クレゾール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、キシレノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、レゾルシノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、フェノール-ナフトール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂等の感光性を有するフェノール樹脂が挙げられる。
【0055】
無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、シリカ等が挙げられる。
【0056】
DAFの厚みは特に限定されない。DAFの厚みは、取り扱い性等の観点から、5μm以上100μm以下であってよく、5μm以上20μm以下であってよい。
【0057】
以下、半導体層と配線層とを有する電子部品を例示して、図面を参照しながら第1実施形態を具体的に説明する。ただし、本実施形態に係る電子部品はこれに限定されない。
【0058】
図1は、樹脂エッチング工程に供される電子部品の要部を模式的に示す断面図である。複数の電子部品200が、DAF30Aおよび保持シート22に支持されている。保持シート22はハンドリング性向上のために使用されており、必ずしも要しない。保持シート22については後述する。
【0059】
電子部品200は、半導体層11と、半導体層11の第1の面200X側に配置された配線層12と、を備える。第1の面200Xは、保護膜40により被覆されている。第2の面200Yは、DAF(樹脂層)30Aに貼着されている。
【0060】
図2は、1回目の堆積工程後の電子部品の要部を模式的に示す断面図である。第1の膜50は、保護膜40の表面、および、隣接する電子部品200の隙間から露出するDAF30Aの表面にそれぞれ堆積している。ただし、保護膜40の表面に堆積する第1の膜50よりも、DAF30Aの表面に堆積する第1の膜50は薄い。
【0061】
図3は、1回目の除去工程後の電子部品の要部を模式的に示す断面図である。堆積工程により堆積された第1の膜50とともにDAF30Aの一部も除去されて、DAF30Aは薄くなっている。
【0062】
図4は、N回目(N≧2)の堆積工程後の電子部品の要部を模式的に示す断面図である。保護膜40の表面およびDAF30Aの表面に、それぞれ第1の膜50が堆積している。保護膜40の表面に堆積する第1の膜50よりも、DAF30Aの表面に堆積する第1の膜50は薄い。
【0063】
図5は、N回目(N≧2)の除去工程後の電子部品の要部を模式的に示す断面図である。DAF30Aの残部が除去されている。
【0064】
[第2実施形態]
本実施形態において、樹脂層は接着層である。1以上の電子部品は、接着層とともに支持部材により支持されている。電子部品と接着層と支持部材との積層体は、例えば多層基板である。堆積工程および除去工程が複数回繰り返されて、接着層は除去される。
【0065】
(接着層)
接着層の材料は特に限定されず、基板および支持部材の材料に応じて適宜選択すればよい。接着層の材料としては、例えば、未硬化あるいは半硬化のUV硬化性樹脂、未硬化あるいは半硬化の熱硬化性樹脂、感圧接着剤、熱可塑性樹脂等が挙げられる。UV硬化性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。感圧接着剤としては、例えば、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0066】
接着層の厚みは特に限定されない。接着層の厚みは、例えば、5μm以上、100μm以下であってよく、5μm以上、15μm以下であってよい。
【0067】
(支持部材)
支持部材は、電子部品を支持する。
支持部材の材質は特に限定されない。支持部材としては、例えば、ガラス基板、樹脂基板、ガラスエポキシ基板、セラミック基板およびシリコン基板等の基板が挙げられる。
【0068】
支持部材の厚みは特に限定されない。支持部材の厚みは、例えば、50μm以上2mm以下であってよく、100μm以上500μm以下であってよい。
【0069】
以下、半導体層と配線層とを有する電子部品を例示して、図面を参照しながら第2実施形態を具体的に説明する。ただし、本実施形態に係る電子部品はこれに限定されない。
【0070】
図6は、樹脂エッチング工程に供される電子部品の要部を模式的に示す断面図である。複数の電子部品200が、接着層30Bとともに支持部材70により支持されている。電子部品200は、半導体層11と、半導体層11の第1の面200X側に配置された配線層12と、を備える。第1の面200Xは、保護膜40により被覆されている。第2の面200Yは、接着層(樹脂層)30Bの一方の面に貼着されている。接着層30Bの他方の面には、支持部材70が貼着している。
【0071】
図7は、N回目(N≧2)の除去工程後の電子部品の要部を模式的に示す断面図である。接着層30Bが除去されて、隣接する電子部品200の隙間から支持部材70が露出している。
図6と
図7との間では、
図2から
図4と同様に堆積工程および除去工程が繰り返されている。
【0072】
次に、上記の樹脂エッチング工程を備えるエッチング方法を説明する。
A.エッチング方法
本実施形態に係るエッチング方法は、樹脂層と、樹脂層に支持された電子部品と、を準備する準備工程と、樹脂層をエッチングする樹脂エッチング工程と、を備える。電子部品は、保護膜で覆われた第1の面と、第1の面とは反対側の第2の面と、第1の面と第2の面との間にある側壁と、を備える。第2の面は樹脂層に対向している。第1の面側から見たとき、樹脂層は、電子部品よりも大きい。
【0073】
樹脂エッチング工程は、第1のプラズマを用いて、保護膜および樹脂層の表面に第1の膜を堆積させる堆積工程と、第2のプラズマを用いて、樹脂層に堆積する第1の膜とともに、樹脂層の少なくとも一部を除去する除去工程と、を備える。堆積工程と除去工程とは、保護膜が残存するように、交互に複数回繰り返される。
図8は、本実施形態に係るエッチング方法を示すフローチャートである。
【0074】
(i)準備工程(S01)
保護膜で覆われた第1の面と、第1の面とは反対側の第2の面と、第1の面と第2の面との間にある側壁と、を備える少なくとも1つの電子部品と、これを支持する樹脂層と、を準備する。電子部品の第2の面が樹脂層に対向している。電子部品は、例えば、ボッシュプロセスによって、基板をプラズマダイシングすることにより作製される素子チップである。側壁には、スキャロップ、すなわち凹部と凸部とが形成されていてもよい。
【0075】
電子部品は、例えば、半導体層と配線層とを備える。
半導体層は、例えば、シリコン(Si)、ガリウム砒素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、炭化ケイ素(SiC)等を含む。電子部品における半導体層の厚みは特に限定されず、例えば、20μm以上1000μm以下であり、50μm以上300μm以下であってもよい。
【0076】
配線層は、例えば、半導体回路、電子部品素子(LED、レーザ、MEMS等)等を構成しており、絶縁膜、金属材料、樹脂層(例えば、ポリイミド)、レジスト層、電極パッド、バンプ等を備えてもよい。絶縁膜は、配線用の金属材料との積層体(多層配線層あるいは再配線層)として含まれてもよい。
【0077】
保護膜は、例えば、ポリイミド等の熱硬化性樹脂、フェノール樹脂等のフォトレジスト、あるいは、アクリル樹脂等の水溶性レジスト等の、いわゆるレジスト材料を含む。このようなレジスト材料により形成される保護膜は、通常、製造中の電子部品を保護するために形成され、電子部品が完成するまでの間に除去される。電子部品の最表面に配置されている絶縁膜(窒化ケイ素やシリコン酸化膜など)および/または樹脂層(ポリイミド)を、保護膜としてもよい。このような絶縁膜により形成される保護膜は、製造中のみならず、流通後の電子部品を保護するために形成されており、除去されない。
【0078】
保護膜の厚みは特に限定されない。ただし、保護膜が上記のレジスト材料により形成される場合、保護膜の厚みは、ボッシュプロセスを用いたエッチング工程により完全には除去されない程度であることが好ましい。保護膜の厚みは、例えば、上記エッチング工程において保護膜がエッチングされる量(厚み)を算出し、このエッチング量以上になるように設定される。保護膜の厚みは、例えば、5μm以上60μm以下である。なお、保護膜が上記の絶縁膜等である場合、上記エッチング工程における保護膜のエッチング量が数μm以下になるように、ボッシュプロセスの条件を調整する。
【0079】
樹脂エッチング工程において複数の電子部品が同時に処理される場合、ハンドリング性の観点から、複数の電子部品は、フレームに固定された保持シートに貼着されていることが望ましい。フレームとフレームに固定された保持シートとを備える部材を、搬送キャリアと称す。
【0080】
(搬送キャリア)
フレームは、複数の電子部品を囲める程度の開口を有した枠体であり、所定の幅および略一定の薄い厚みを有している。フレームは、保持シートおよび複数の電子部品を保持した状態で搬送できる程度の剛性を有している。フレームの開口の形状は特に限定されないが、例えば、円形や、矩形、六角形など多角形であってもよい。フレームの材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属や、樹脂等が挙げられる。
【0081】
保持シートの材質は特に限定されない。なかでも、電子部品が貼着され易い点で、保持シートは、粘着層と柔軟性のある非粘着層とを含むことが好ましい。
【0082】
非粘着層の材質は特に限定されず、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル等の熱可塑性樹脂が挙げられる。樹脂フィルムには、伸縮性を付加するためのゴム成分(例えば、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等)、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、導電性材料等の各種添加剤が配合されていてもよい。また、上記熱可塑性樹脂は、アクリル基等の光重合反応を示す官能基を有していてもよい。非粘着層の厚みは特に限定されず、例えば、50μm以上300μm以下であり、好ましくは50μm以上150μm以下である。
【0083】
粘着層を備える面(粘着面)の外周縁は、フレームの一方の面に貼着しており、フレームの開口を覆っている。粘着面のフレームの開口から露出した部分に、樹脂層を備える電子部品が間接的に貼着される。
【0084】
粘着層は、紫外線(UV)の照射によって粘着力が減少する粘着成分からなることが好ましい。これにより、保護膜除去工程後に電子部品をピックアップする際、UV照射を行うことにより、電子部品が粘着層から容易に剥離されて、ピックアップし易くなる。例えば、粘着層は、非粘着層の片面に、UV硬化型アクリル粘着剤を5μm以上100μm以下(好ましくは5μm以上15μm以下)の厚みに塗布することにより得られる。
程については後述する。
【0085】
図9Aは、準備工程で準備された電子部品を模式的に示す上面図である。
図9Bは、
図9AのA-A線における断面図である。
図9Aおよび
図9Bにおいて、樹脂層はDAFである。電子部品は、DAFおよび保持シートに支持されている。
【0086】
搬送キャリア20は、フレーム21とフレーム21に固定された保持シート22とを備える。フレーム21には、位置決めのためのノッチ21aやコーナーカット21bが設けられていてもよい。保持シート22は、粘着面22Xと非粘着面22Yとを備えており、粘着面22Xの外周縁は、フレーム21の一方の面に貼着している。粘着面22Xのフレーム21の開口から露出した部分に、電子部品200を支持するDAF30Aが貼着される。
【0087】
複数の電子部品200は、DAF30Aに間隔を空けて貼着されている。隣接する電子部品200の隙間からDAF30Aが露出している。このような複数の電子部品200は、例えば、ボッシュプロセスによって、基板をプラズマダイシングすることにより得られる。電子部品200は、半導体層11と、半導体層11の第1の面200X側に積層される配線層12と、を備える。電子部品200の第1の面200Xに、保護膜40が形成されている。
【0088】
図10Aは、準備工程で準備された他の電子部品を模式的に示す上面図である。
図10Bは、
図10AのB-B線における断面図である。
図10Aおよび
図10Bにおいて、樹脂層は接着層である。電子部品は、接着層および支持部材に支持されている。
【0089】
搬送キャリア20は、
図9Aおよび
図9Bと同様の構成を有する。粘着面22Xのフレーム21の開口から露出した部分に、電子部品200を支持する支持部材70が貼着される。複数の電子部品200は、接着層30Bに間隔を空けて貼着されている。隣接する電子部品200の隙間から接着層30Bが露出している。このような電子部品200は、例えば、ボッシュプロセスによって、基板をプラズマダイシングすることにより得られる。
【0090】
(ii)樹脂エッチング工程(S02)
樹脂エッチング工程は、上記の(a)堆積工程(S021)および(b)除去工程(S022)により実行される。上記樹脂エッチング工程によれば、保護膜を残存させながら、樹脂層を除去することができる。堆積工程と除去工程とは、樹脂層が除去されるまで繰り返される。
【0091】
B.素子チップの製造方法
本実施形態に係る素子チップの製造方法は、複数の素子領域および素子領域を画定する分割領域を備えるとともに、第1の面および第1の面とは反対側の第2の面を有する基板と、第2の面側に配置された樹脂層と、を備える積層体を準備する準備工程と、第1の面を保護膜で被覆する保護膜形成工程と、記分割領域に対応する少なくとも保護膜を除去して、開口を形成する開口形成工程と、開口から露出する基板を第1の面から第2の面までエッチングする基板エッチング工程と、基板エッチング工程の後、基板のエッチングにより形成された溝の底部に露出する樹脂層をエッチングする樹脂エッチング工程と、を備える。基板に予め保護膜が形成されている場合、保護膜形成工程は省略される。
【0092】
樹脂エッチング工程は、第1のプラズマを用いて、保護膜および樹脂層の表面に第1の膜を堆積させる堆積工程と、第2のプラズマを用いて、樹脂層に堆積する第1の膜とともに、樹脂層の少なくとも一部を除去する除去工程と、を備える。堆積工程と除去工程とは、保護膜が残存するように、交互に複数回繰り返される。
図11は、本実施形態に係る素子チップの製造方法を示すフローチャートである。
【0093】
(1)積層体の準備工程(S11)
まず、処理の対象となる積層体を準備する。
【0094】
積層体は、基板と接着層とを備えている。
接着層は、あらかじめ所定の形状に成形された後、基板の第2の面に貼着されることにより形成されてもよいし、基板の第2の面に接着層の原料(接着剤)を塗布することにより形成されてもよい。
【0095】
(基板)
基板は、第1の面および第2の面を備えるとともに、複数の素子領域と素子領域を画定する分割領域とを備える。基板は、上記の半導体層を備える。基板の素子領域は、さらに上記の配線層を備えてよい。基板の分割領域は、さらに絶縁膜とTEG(Test Element Group)等の金属材料とを備えてよい。分割領域における基板をエッチングすることにより、複数の素子チップが得られる。
【0096】
基板の大きさは特に限定されず、例えば、最大径50mm~300mm程度である。基板の形状も特に限定されず、例えば、円形、角型である。また、基板には、オリエンテーションフラット(オリフラ)、ノッチ等の切欠きが設けられていてもよい。
【0097】
分割領域の形状は、直線に限られず、所望の素子チップの形状に応じて設定されればよく、ジグザグであってもよいし、波線であってもよい。なお、素子チップの形状としては、例えば、矩形、六角形等が挙げられる。
【0098】
分割領域の幅は特に限定されず、基板や素子チップの大きさ等に応じて、適宜設定すればよい。分割領域の幅は、例えば、10μm以上300μm以下である。複数の分割領域の幅は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。分割領域は、通常、複数本、基板に配置されている。隣接する分割領域同士のピッチも特に限定されず、基板や素子チップの大きさ等に応じて、適宜設定すればよい。
【0099】
(樹脂層)
樹脂層は、有機物を主成分(50質量%以上)として含む。樹脂層としては、例えば上記のようなDAFおよび接着層が挙げられる。
【0100】
積層体は、フレームに固定された保持シートに貼着されてもよい。これにより、ハンドリング性が向上する。保持シートに貼着された積層体をエッチングすることにより、保持シート上に間隔を空けて配置された複数の電子部品が得られる。フレームおよび保持シートの形状、材質等は上記の通りである。
【0101】
(2)保護膜形成工程(S12)
基板の第1の面を被覆する保護膜を形成する。
保護膜は、基板の素子領域をプラズマ等から保護するために設けられる。樹脂エッチング工程後、保護膜は除去される。保護膜の材料、厚みは上記の通りである。
【0102】
保護膜は、例えば、レジスト材料をシート状に成型した後、このシートを基板に貼り付けるか、あるいは、レジスト材料の原料液を、スピンコートやスプレー塗布等の方法を用いて、基板に塗布することにより形成される。原料液の塗布量を変えなから塗布することにより、保護膜の厚みを部分的に変えることができる。スピンコートとスプレー塗布とを併用して、塗布量を調整してもよい。
【0103】
(3)開口形成工程(S13)
保護膜に開口を形成して、基板の分割領域を露出させる。
【0104】
開口は、例えば、フォトレジストにより形成された保護膜のうち、分割領域に対応する領域をフォトリソグラフィ法によって除去することにより形成される。熱硬化性樹脂あるいは水溶性レジストにより形成された保護膜のうち、分割領域に対応する領域をレーザスクライビングによりパターニングして、開口を形成してもよい。
【0105】
開口は、分割領域における保護膜および配線層が除去されることにより形成されてもよい。分割領域における配線層の除去は、後述する基板エッチング工程において行ってもよい。この場合、配線層を除去するためのプラズマを発生させる条件と、基板をエッチングするためのプラズマを発生させる条件とは異なり得る。
【0106】
開口形成工程の後、基板エッチング工程を行う前に、開口にレーザ光あるいはプラズマを照射してもよい。この工程は、例えば、開口形成工程に起因する残渣を低減する目的で行われる。これにより、高品質のプラズマエッチングを行うことが可能になる。
【0107】
(4)基板エッチング工程(S14)
基板をプラズマに晒して、開口から露出する分割領域を第2の面までエッチングし、基板から複数の素子チップを形成する。本工程において、樹脂層はエッチングされなくてよい。
【0108】
基板エッチング工程は、いわゆるボッシュプロセスにより行われる。ボッシュプロセスでは、基板に、分割領域に対応する溝を形成するエッチングステップと、溝の内壁に膜を堆積させる堆積ステップと、を含むサイクルが1回以上、行われる。さらに、エッチングステップと堆積ステップとの間には、上記膜(堆積膜)の除去ステップが行われる。
【0109】
1回目のサイクルのエッチングステップにより、まず、分割領域に対応する浅い凹部が形成される。続いて、堆積ステップにより、形成された浅い凹部の内壁に堆積膜が形成される。2回目のサイクルは、堆積膜の除去ステップから開始される。堆積膜除去ステップでは、異方性エッチングが行われる。つまり、凹部の内壁のうち、底部を被覆する堆積膜が除去される。続いて、エッチングステップが行われ、凹部の底部が等方的にエッチングされる。エッチングステップの後、再び堆積ステップを行い、凹部の内壁に堆積膜を形成する。このように2回目のサイクル(堆積膜除去ステップ、エッチングステップおよび堆積ステップ)を繰り返すことにより、保護膜で覆われた第1の面と、第2の面と、側壁と、を備える少なくとも1つの素子チップが得られる。形成される素子チップの側壁には、スキャロップが形成されていてもよい。
【0110】
堆積膜除去ステップにおける処理条件は、例えば以下の通りである。プロセスガスとしてSF6を200sccm以上1000sccm以下で、O2を0sccm以上20sccm以下で、真空チャンバに供給する。真空チャンバ内の圧力は5Pa以上30Pa以下であり、第1の電極に印加される高周波電力は1500W以上4800W以下であり、第2の電極に印加される高周波電力は50W以上200W以下である。処理時間は、1秒以上5秒以下である。
【0111】
エッチングステップにおける処理条件は、例えば以下の通りである。プロセスガスとしてSF6を200sccm以上1000sccm以下で、O2を0sccm以上20sccm以下で、真空チャンバに供給する。真空チャンバ内の圧力は5Pa以上30Pa以下であり、第1の電極に印加される高周波電力は1500W以上4800W以下であり、第2の電極に印加される高周波電力は0W以上100W以下である。処理時間は、3秒以上30秒以下である。
【0112】
堆積ステップにおける処理条件は、例えば以下の通りである。プロセスガスとしてC4F8を100sccm以上600sccm以下で真空チャンバに供給する。真空チャンバ内の圧力は5Pa以上30Pa以下であり、第1の電極に印加される高周波電力は1500W以上4800W以下であり、第2の電極に印加される高周波電力は0W以上100W以下である。処理時間は、1秒以上10秒以下である。
【0113】
上記のような条件で、堆積ステップ、堆積膜除去ステップおよびエッチングステップを繰り返すことにより、半導体層は、10μm/分以上20μm/分以下の速度で深さ方向に垂直にエッチングされ得る。
【0114】
(5)樹脂エッチング工程(S15)
分割領域における基板が除去されることにより、積層体には溝が形成される。溝の底部からは樹脂層が露出している。この露出した樹脂層をエッチングして除去する。樹脂エッチング工程は、上記のエッチング方法における樹脂エッチング工程(ii)により実行される。本実施形態に係る樹脂エッチング工程によれば、保護膜を残存させながら、樹脂層を除去することができる。
【0115】
基板エッチング工程および樹脂エッチング工程で使用されるプラズマ処理装置は同じであってもよく、異なっていてもよい。同じプラズマ処理装置を使用する場合、両方のエッチング工程は連続して行われてもよい。
【0116】
(6)保護膜除去工程(S16)
最後の除去工程の後、保護膜を除去してもよい。保護膜が、電子部品の最表面に配置されている絶縁膜および/または樹脂層である場合、保護膜を除去しなくてもよい。このような保護膜は、製造中に加えて、流通後の電子部品を保護するために形成されているためである。
【0117】
保護膜の除去には、例えば、酸素ガス(O2)を含む第3のプロセスガスにより発生する第3のプラズマが用いられる。第3のプロセスガスは、O2とともにフッ素含有ガスを含んでもよい。フッ素含有ガスとしては、上記と同様の化合物が挙げられる。O2の第3のプロセスガスに占める割合は、10体積%以上100体積%未満であってよく、30体積%以上98体積%以下であってよい。
【0118】
第3のプラズマを発生させる条件は、保護膜の量および成分等に応じて適宜設定される。
第3のプラズマを発生させる条件は、例えば以下の通りである。アッシングガスとしてCF4とO2との混合ガス(流量比CF4/O2=0%以上10%以下)を50sccm以上600sccm以下で、真空チャンバに供給する。真空チャンバ内の圧力は1Pa以上30Pa以下であり、第1の電極に印加される高周波電力PA1は、1000W以上4800W以下であり、第2の電極に印加される高周波電力PA2は、0W以上100W以下である。アッシング工程において第2の電極に印加される高周波電力PA2は、エッチング工程における第2の電極への印加電力よりも小さくなるように設定することが望ましい。処理時間は、保護膜の量に応じて適宜設定されるが、例えば、3秒以上、300秒以下である。
【0119】
保護膜が水溶性である場合、第3のプラズマに替えて、水洗により保護膜を除去してもよい。
【0120】
樹脂エッチング工程あるいは保護膜除去工程の後、素子チップは、保持シートから取り外される。
素子チップを、例えば、保持シートの非粘着面側から、保持シートとともに突き上げピンで突き上げる。これにより、素子チップの少なくとも一部は、保持シートから浮き上がる。その後、ピックアップ装置により、素子チップは保持シートから取り外される。
【0121】
以下、素子チップの製造方法を、図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、本実施形態はこれに限定されるものではない。
【0122】
[第I実施形態]
本実施形態において、樹脂層はDAFである。積層体の準備工程は、基板を、DAFを介して、フレームに固定された保持シートに貼着する工程(S111)を含む。本実施形態は、これ以外、上記の工程により実行される。
図12は、本実施形態に係る製造方法を示すフローチャートである。
【0123】
基板を貼着する工程では、保持シート上に配置されたDAFに、基板を貼着してもよい。この場合、DAFは、例えば、DAFの材料である上記樹脂組成物を保持シートの所定の位置に塗布することにより形成される。あるいは、DAFは、あらかじめ所定の形状に成形された後、保持シートの所定の位置に配置されてもよい。
【0124】
図13は、本実施形態に係る積層体の準備工程により準備された積層体を模式的に示す上面図である。
図14は、当該積層体の一部を模式的に示す断面図である。積層体は、基板10とDAF30Aとを備えている。積層体は、フレームに固定された保持シート22に貼着されている。基板10は、第1の面10Xおよび第2の面10Yを備えるとともに、複数の素子領域101と素子領域101を画定する分割領域102とを備える。素子領域101は、半導体層11と、半導体層11の第1の面10X側に積層される配線層12と、を備える。分割領域102は、半導体層11と、絶縁膜14とを備える。
【0125】
図15は、本実施形態に係る保護膜形成工程後の積層体の一部を模式的に示す断面図である。基板10の第1の面10Xに、保護膜40が形成されている。
【0126】
図16は、本実施形態に係る開口形成工程後の積層体の一部を模式的に示す断面図である。分割領域102における保護膜40および絶縁膜14が除去されて、開口から分割領域102において半導体層11が露出している。
【0127】
図17は、本実施形態に係る基板エッチング工程で作製された素子チップを、模式的に示す断面図である。基板の分割領域102がエッチングされて、基板から複数の素子チップ200が形成されている。素子チップ200の第1の面200Xは、保護膜40により覆われている。隣接する素子チップ200の隙間からDAF30Aが露出している。
【0128】
図18は、本実施形態に係る樹脂エッチング工程後の素子チップを、模式的に示す断面図である。露出していたDAF30Aが除去されている。
【0129】
図19は、本実施形態に係る保護膜除去工程後の素子チップを、模式的に示す断面図である。第1の面200Xを覆っていた保護膜40が除去されている。
【0130】
[第II実施形態]
本実施形態において、樹脂層は接着層である。積層体の準備工程は、基板を、接着層を介して支持部材に接着する工程(S112)を含む。本実施形態は、これ以外、第I実施形態と同様である。
図20は、本実施形態に係る製造方法を示すフローチャートである。
【0131】
基板を接着する工程では、接着層の材料である接着剤を支持部材の所定の位置に塗布してもよい。保護膜形成工程以降の工程は、DAFを接着層に替えて、第1実施形態と同様に行われる。樹脂層がDAFである場合以外にも、ハンドリング性の観点から、保護膜形成工程以降、特に基板エッチング工程以降の工程は、積層体を搬送キャリアで保持した状態で行ってよい。
【0132】
図21は、本実施形態に係る積層体の準備工程により準備された積層体を模式的に示す上面図である。
図22は、当該積層体の一部を模式的に示す断面図である。積層体は、基板10と支持部材70とこれらの間に介在する接着層(樹脂層)30Bとを備えている。積層体は、フレームに固定された保持シート22に貼着されている。
【0133】
図23は、本実施形態に係る保護膜除去工程後の素子チップを、模式的に示す断面図である。隣接する素子チップの隙間に露出する接着層30Bが除去されている。第1の面200Xを覆っていた保護膜40も除去されている。
【0134】
以下、基板エッチング工程および樹脂エッチング工程で用いられるプラズマ処理装置について、
図24を参照しながら具体的に説明する。ただし、プラズマ処理装置は、これに限定されるものではない。
図24は、プラズマ処理装置100の構造を概略的に示す断面図である。
図24において、複数の電子部品(素子チップ)は、搬送キャリアに保持されている。
【0135】
(プラズマ処理装置)
プラズマ処理装置100は、ステージ111を備えている。複数の電子部品200を保持する搬送キャリア20は、保持シート22の電子部品200を保持している面が上方を向くように、ステージ111に搭載される。ステージ111は、搬送キャリア20の全体を載置できる程度の大きさを備える。ステージ111の上方には、少なくとも1つの電子部品200を露出させるための窓部124Wを有するカバー124が配置されている。カバー124には、フレーム21がステージ111に載置されている状態のとき、フレーム21を押圧するための押さえ部材107が配置されている。押さえ部材107は、フレーム21と点接触できる部材(例えば、コイルバネや弾力性を有する樹脂)であることが好ましい。これにより、フレーム21およびカバー124の熱が互いに影響し合うことを抑制しながら、フレーム21の歪みを矯正することができる。
【0136】
ステージ111およびカバー124は、真空チャンバ103内に配置されている。真空チャンバ103は、上部が開口した概ね円筒状であり、上部開口は蓋体である誘電体部材108により閉鎖されている。真空チャンバ103を構成する材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、表面をアルマイト加工したアルミニウム等が例示できる。誘電体部材108を構成する材料としては、酸化イットリウム(Y2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al2O3)、石英(SiO2)等の誘電体材料が例示できる。誘電体部材108の上方には、上部電極としての第1の電極109が配置されている。第1の電極109は、第1の高周波電源110Aと電気的に接続されている。ステージ111は、真空チャンバ103内の底部側に配置される。ステージ111と第1の電極109とは対向している。
【0137】
真空チャンバ103には、ガス導入口103aが接続されている。ガス導入口103aには、プラズマ発生用ガス(プロセスガス)の供給源であるプロセスガス源112およびアッシングガス源113が、それぞれ配管によって接続されている。また、真空チャンバ103には、排気口103bが設けられており、排気口103bには、真空チャンバ103内のガスを排気して減圧するための真空ポンプを含む減圧機構114が接続されている。真空チャンバ103内にプロセスガスが供給された状態で、第1の電極109に第1の高周波電源110Aから高周波電力が供給されることにより、真空チャンバ103内にプラズマが発生する。
【0138】
ステージ111は、第2の電極120を内蔵している。具体的には、ステージ111は、それぞれ略円形の電極層115と、金属層116と、電極層115および金属層116を支持する基台117と、電極層115、金属層116および基台117を取り囲む外周部118とを備える。電極層115の内部には、静電吸着(Electrostatic Chuck)用電極(以下、ESC電極119と称す。)と、第2の高周波電源110Bに電気的に接続された第2の電極120とが配置されている。外周部118は導電性および耐エッチング性を有する金属により構成されており、電極層115、金属層116および基台117をプラズマから保護する。外周部118の上面には、円環状の外周リング129が配置されている。外周リング129は、外周部118の上面をプラズマから保護する役割をもつ。電極層115および外周リング129は、例えば、上記の誘電体材料により構成される。
【0139】
ESC電極119には、直流電源126が電気的に接続されている。静電吸着機構は、ESC電極119および直流電源126により構成されている。静電吸着機構によって、保持シート22はステージ111に押し付けられて固定される。以下、保持シート22をステージ111に固定する固定機構として、静電吸着機構を備える場合を例に挙げて説明するが、これに限定されない。保持シート22のステージ111への固定は、図示しないクランプによって行われてもよい。
【0140】
金属層116は、例えば、表面にアルマイト被覆を形成したアルミニウム等により構成される。金属層116内には、冷媒流路127が形成されている。冷媒流路127は、ステージ111を冷却する。ステージ111が冷却されることにより、ステージ111に搭載された保持シート22が冷却されるとともに、ステージ111にその一部が接触しているカバー124も冷却される。これにより、電子部品200や保持シート22が、プラズマ処理中に加熱されることによって損傷されることが抑制される。冷媒流路127内の冷媒は、冷媒循環装置125により循環される。
【0141】
ステージ111の外周付近には、ステージ111を貫通する複数の支持部122が配置されている。支持部122は、搬送キャリア20のフレーム21を支持する。支持部122は、第1の昇降機構123Aにより昇降駆動される。搬送キャリア20が真空チャンバ103内に搬送されると、所定の位置まで上昇した支持部122に受け渡される。支持部122の上端面がステージ111と同じレベル以下にまで降下することにより、搬送キャリア20は、ステージ111の所定の位置に載置される。
【0142】
カバー124の端部には、複数の昇降ロッド121が連結しており、カバー124を昇降可能にしている。昇降ロッド121は、第2の昇降機構123Bにより昇降駆動される。第2の昇降機構123Bによるカバー124の昇降の動作は、第1の昇降機構123Aとは独立して行うことができる。
【0143】
制御装置128は、第1の高周波電源110A、第2の高周波電源110B、プロセスガス源112、アッシングガス源113、減圧機構114、冷媒循環装置125、第1の昇降機構123A、第2の昇降機構123Bおよび静電吸着機構を含むプラズマ処理装置100を構成する要素の動作を制御する。
図25は、本実施形態で使用されるプラズマ処理装置のブロック図である。
【0144】
電子部品200へのプラズマ処理は、電子部品200が保持された搬送キャリア20を真空チャンバ内に搬入し、電子部品200がステージ111に載置された状態で行われる。
搬送キャリア20の搬入の際、真空チャンバ103内では、昇降ロッド121の駆動により、カバー124が所定の位置まで上昇している。図示しないゲートバルブが開いて搬送キャリア20が搬入される。複数の支持部122は、上昇した状態で待機している。搬送キャリア20がステージ111上方の所定の位置に到達すると、支持部122に搬送キャリア20が受け渡される。搬送キャリア20は、保持シート22の粘着面が上方を向くように、支持部122の上端面に受け渡される。
【0145】
搬送キャリア20が支持部122に受け渡されると、真空チャンバ103は密閉状態に置かれる。次に、支持部122が降下を開始する。支持部122の上端面が、ステージ111と同じレベル以下にまで降下することにより、搬送キャリア20は、ステージ111に載置される。続いて、昇降ロッド121が駆動する。昇降ロッド121は、カバー124を所定の位置にまで降下させる。このとき、カバー124に配置された押さえ部材107がフレーム21に点接触できるように、カバー124とステージ111との距離は調節されている。これにより、フレーム21が押さえ部材107によって押圧されるとともに、フレーム21がカバー124によって覆われ、基板10は窓部124Wから露出する。
【0146】
カバー124は、例えば、略円形の外形輪郭を有したドーナツ形であり、一定の幅および薄い厚みを備えている。窓部124Wの直径はフレーム21の内径よりも小さく、その外径はフレーム21の外径よりも大きい。したがって、搬送キャリア20をステージ111の所定の位置に搭載し、カバー124を降下させると、カバー124は、フレーム21を覆うことができる。窓部124Wからは、少なくとも1つの電子部品200が露出する。
【0147】
カバー124は、例えば、セラミックス(例えば、アルミナ、窒化アルミニウムなど)や石英などの誘電体や、アルミニウムあるいは表面がアルマイト処理されたアルミニウムなどの金属で構成される。押さえ部材107は、上記の誘電体や金属の他、樹脂材料で構成され得る。
【0148】
搬送キャリア20が支持部122に受け渡された後、直流電源126からESC電極119に電圧を印加する。これにより、保持シート22がステージ111に接触すると同時にステージ111に静電吸着される。なお、ESC電極119への電圧の印加は、保持シート22がステージ111に載置された後(接触した後)に、開始されてもよい。
【0149】
プラズマ処理が終了すると、真空チャンバ103内のガスが排出され、ゲートバルブが開く。複数の電子部品200を保持する搬送キャリア20は、ゲートバルブから進入した搬送機構によって、プラズマ処理装置100から搬出される。搬送キャリア20が搬出されると、ゲートバルブは速やかに閉じられる。搬送キャリア20の搬出プロセスは、上記のような搬送キャリア20をステージ111に搭載する手順とは逆の手順で行われてもよい。すなわち、カバー124を所定の位置にまで上昇させた後、ESC電極119への印加電圧をゼロにして、搬送キャリア20のステージ111への吸着を解除し、支持部122を上昇させる。支持部122が所定の位置まで上昇した後、搬送キャリア20は搬出される。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明によれば、保護膜を残存させたまま、樹脂層を除去することができるため、樹脂層を含む種々の電子部品のエッチング方法として有用である。
【符号の説明】
【0151】
200:電子部品(素子チップ)
200X:第1の面
200Y:第2の面
200Z:側壁
10:基板
10X:第1の面
10Y:第2の面
101:素子領域
102:分割領域
11:半導体層
12:配線層
14:絶縁膜
20:搬送キャリア
21:フレーム
21a:ノッチ
21b:コーナーカット
22:保持シート
22X:粘着面
22Y:非粘着面
30A:ダイアタッチフィルム(DAF)
30B:樹脂層
40:保護膜
50:第1の膜
70:支持部材
100:プラズマ処理装置
103:真空チャンバ
103a:ガス導入口
103b:排気口
108:誘電体部材
109:第1の電極
110A:第1の高周波電源
110B:第2の高周波電源
111:ステージ
112:プロセスガス源
113:アッシングガス源
114:減圧機構
115:電極層
116:金属層
117:基台
118:外周部
119:ESC電極
120:第2の電極
121:昇降ロッド
122:支持部
123A:第1の昇降機構
123B:第2の昇降機構
124:カバー
124W:窓部
125:冷媒循環装置
126:直流電源
127:冷媒流路
128:制御装置
129:外周リング