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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】荷重センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/14 20060101AFI20240524BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
G01L1/14 J
G01L5/00 101Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021552361
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2020038205
(87)【国際公開番号】W WO2021075356
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-09-11
(31)【優先権主張番号】P 2019188875
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】森浦 祐太
(72)【発明者】
【氏名】浮津 博伸
(72)【発明者】
【氏名】浦上 進
(72)【発明者】
【氏名】松本 玄
(72)【発明者】
【氏名】古屋 博之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/096901(WO,A1)
【文献】特開2016-183956(JP,A)
【文献】特開2000-162055(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第2443208(GB,A)
【文献】特開2018-115873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/14
G01L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有する絶縁性の基材と、
前記基材の上面に形成され弾性を有する電極と、
前記電極の上面に重ねて配置され表面が誘電体で被覆された導電性の線材と、を備え、
前記基材の厚みに対する前記電極の厚みの比率は、0.02以上0.3以下である、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の荷重センサにおいて、
前記電極は、所定の印刷工法により形成されている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の荷重センサにおいて、
前記電極は、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、またはグラビアオフセット印刷により形成されている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の荷重センサにおいて、
前記電極は、前記基材の上面に互いに離間して複数形成されている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項5】
請求項4に記載の荷重センサにおいて、
前記各電極は、一方向に長い帯状の形状を有し、
前記線材は、前記複数の電極に跨がるように配置されている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項6】
請求項5に記載の荷重センサにおいて、
前記線材は、前記電極の長手方向に沿って複数配置されている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一項に記載の荷重センサにおいて、
前記線材は、周期的に折り曲げられている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか一項に記載の荷重センサにおいて、
前記線材は、長手方向に移動可能に、接続部材で前記基材に接続されている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか一項に記載の荷重センサにおいて、
前記電極の厚みは、150μm以下である、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項10】
請求項9に記載の荷重センサにおいて、
前記電極の厚みは、10μm以上である、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項11】
請求項1ないし10の何れか一項に記載の荷重センサにおいて、
前記基材の厚みは、0.5mm以上である、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項12】
請求項11に記載の荷重センサにおいて、
前記基材の厚みは、0.5mmである、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項13】
請求項1ないし12の何れか一項に記載の荷重センサにおいて、
前記基材および前記電極からなる構造体と同様の構成を有する他の構造体を備え、
前記他の構造体の前記電極が前記線材に重なるように前記他の構造体が配置される、
ことを特徴とする荷重センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量の変化に基づいて外部から付与される荷重を検出する荷重センサに関する。
【背景技術】
【0002】
荷重センサは、産業機器、ロボットおよび車両などの分野において、幅広く利用されている。近年、コンピュータによる制御技術の発展および意匠性の向上とともに、人型のロボットおよび自動車の内装品等のような自由曲面を多彩に使用した電子機器の開発が進んでいる。それに合わせて、各自由曲面に高性能な荷重センサを装着することが求められている。
【0003】
以下の特許文献1には、押圧力が付与される感圧部と、押圧力を検出する検出器と、を備えた感圧素子が記載されている。この感圧素子において、感圧部は、第1の導電部材と、第2の導電部材と、誘電体と、を有する。第1の導電部材は、弾性を有する。誘電体は、第1の導電部材と第2の導電部材との間に配置され、第1の導電部材または第2の導電部材の表面を少なくとも部分的に覆う。検出器は、第1の導電部材と第2の導電部材との間の静電容量の変化に基づいて、押圧力を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/096901号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような荷重センサでは、荷重付与時および除荷時において、静電容量の変化に特性ずれ(ヒステリシス)が発生する。弾性を有する導電部材は、ゴムなどの弾性体中にフィラーが添加されることにより導電性が付与された部材である。このようにゴム中にフィラーが添加されると、フィラーが導電部材の弾性復帰に対して阻害要因となって、弾性復帰のレスポンスが低下する。これに起因して、荷重付与時および除荷時における静電容量の変化が、互いにずれてしまう。このため、同じ荷重の値でも、荷重付与時と除荷時とで、静電容量の値が異なってしまい、荷重センサの検出値にずれが生じる。
【0006】
かかる課題に鑑み、本発明は、荷重付与時と除荷時における検出値のずれを抑制することが可能な荷重センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の主たる態様は、荷重センサに関する。本態様に係る荷重センサは、弾性を有する絶縁性の基材と、前記基材の上面に形成され弾性を有する電極と、前記電極の上面に重ねて配置され表面が誘電体で被覆された導電性の線材と、を備える。ここで、前記基材の厚みに対する前記電極の厚みの比率は、0.02以上0.3以下である。
【0008】
本態様に係る荷重センサによれば、基材の厚みに対する電極の厚みの比率を、0.02以上0.3以下に設定することにより、基材の厚みに比べて電極の厚みを十分に小さくできる。これにより、荷重付与時および除荷時における電極および基材の変形において、電極の変形による影響が抑制され、基材による変形の影響が支配的となる。このため、電極の弾性復帰におけるレスポンス低下の影響を抑制でき、その結果、荷重付与時および除荷時における静電容量の変化を、ほぼ一致させることができる。よって、荷重付与時と除荷時における荷重センサの検出値のずれを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
以上のとおり、本発明によれば、荷重付与時と除荷時における検出値のずれを抑制することが可能な荷重センサを提供できる。
【0010】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(a)~(c)は、実施形態1に係る、荷重センサの各部の構成を模式的に示す斜視図である。
図2図2(a)は、実施形態1に係る、荷重センサの各部の構成を模式的に示す斜視図である。図2(b)は、実施形態1に係る、組み立て完了後の荷重センサの構成を模式的に示す斜視図である。
図3図3(a)~(c)は、実施形態1に係る、スクリーン印刷を説明するための模式図である。
図4図4は、実施形態1に係る、グラビア印刷を説明するための模式図である。
図5図5は、実施形態1に係る、フレキソ印刷を説明するための模式図である。
図6図6は、実施形態1に係る、オフセット印刷を説明するための模式図である。
図7図7は、実施形態1に係る、グラビアオフセット印刷を説明するための模式図である。
図8図8は、実施形態1に係る、Z軸負方向に見た場合の荷重センサを模式的に示す平面図である。
図9図9(a)、(b)は、実施形態1に係る、X軸負方向に見た場合のワイヤー周辺を模式的に示す断面図である。
図10図10(a)は、実施形態1に係る、ワイヤーの位置でX-Z平面に平行な平面で切断した状態の荷重センサをY軸正方向に見た場合の模式図である。図10(b)は、実施形態1の比較例に係る、ワイヤーの位置でX-Z平面に平行な平面で切断した状態の荷重センサをY軸正方向に見た場合の模式図である。
図11図11は、実施形態1に係る、荷重センサの各部の好ましいサイズについて説明するための模式図である。
図12図12は、実施形態2に係る、荷重センサの各部の構成を模式的に示す斜視図である。
図13図13は、実施形態2に係る、組み立て完了後の荷重センサの構成を模式的に示す斜視図である。
図14図14(a)、(b)は、実施形態2に係る、X軸負方向に見た場合のワイヤー周辺を模式的に示す断面図である。
図15図15(a)は、実施形態2の比較例に係る、X軸負方向に見た場合のワイヤー周辺を模式的に示す断面図である。図15(b)は、実施形態2に係る、X軸負方向に見た場合のワイヤー周辺を模式的に示す断面図である。
図16図16(a)は、実施形態2の比較例に係る、荷重と静電容量との関係を示すグラフである。図16(b)は、実施形態2に係る、荷重と静電容量との関係を示すグラフである。
図17図17(a)は、実施形態2に係る、ヒステリシスの算出を説明するための図である。図17(b)は、実施形態2に係る、電極の厚みとヒステリシスとの関係を示すグラフである。図17(c)は、実施形態2に係る、電極の厚みと電極の体積抵抗率との関係を示すグラフである。
図18図18は、実施形態2に係る、電極の弾性係数が異なる場合の電極の厚みとヒステリシスとの関係を示すグラフである。
図19図19は、実施形態3に係る、荷重センサの各部の構成を模式的に示す斜視図である。
図20図20(a)、(b)は、実施形態3に係る、基材および電極の伸縮に合わせてワイヤーの形状が変化することを説明する模式図である。
【0012】
ただし、図面はもっぱら説明のためのものであって、この発明の範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、付与された荷重に応じて処理を行う管理システムや電子機器の荷重センサに適用可能である。
【0014】
管理システムとしては、たとえば、在庫管理システム、ドライバーモニタリングシステム、コーチング管理システム、セキュリティー管理システム、介護・育児管理システムなどが挙げられる。
【0015】
在庫管理システムでは、たとえば、在庫棚に設けられた荷重センサにより、積載された在庫の荷重が検出され、在庫棚に存在する商品の種類と商品の数とが検出される。これにより、店舗、工場、倉庫などにおいて、効率よく在庫を管理できるとともに省人化を実現できる。また、冷蔵庫内に設けられた荷重センサにより、冷蔵庫内の食品の荷重が検出され、冷蔵庫内の食品の種類と食品の数や量とが検出される。これにより、冷蔵庫内の食品を用いた献立を自動的に提案できる。
【0016】
ドライバーモニタリングシステムでは、たとえば、操舵装置に設けられた荷重センサにより、ドライバーの操舵装置に対する荷重分布(たとえば、把持力、把持位置、踏力)がモニタリングされる。また、車載シートに設けられた荷重センサにより、着座状態におけるドライバーの車載シートに対する荷重分布(たとえば、重心位置)がモニタリングされる。これにより、ドライバーの運転状態(眠気や心理状態など)をフィードバックすることができる。
【0017】
コーチング管理システムでは、たとえば、シューズの底に設けられた荷重センサにより、足裏の荷重分布がモニタリングされる。これにより、適正な歩行状態や走行状態へ矯正または誘導することができる。
【0018】
セキュリティー管理システムでは、たとえば、床に設けられた荷重センサにより、人が通過する際に、荷重分布が検出され、体重、歩幅、通過速度および靴底パターンなどが検出される。これにより、これらの検出情報をデータと照合することにより、通過した人物を特定することが可能となる。
【0019】
介護・育児管理システムでは、たとえば、寝具や便座に設けられた荷重センサにより、人体の寝具および便座に対する荷重分布がモニタリングされる。これにより、寝具や便座の位置において、人がどのような行動を取ろうとしているかを推定し、転倒や転落を防止することができる。
【0020】
電子機器としては、たとえば、車載機器(カーナビゲーション・システム、音響機器など)、家電機器(電気ポット、IHクッキングヒーターなど)、スマートフォン、電子ペーパー、電子ブックリーダー、PCキーボード、ゲームコントローラー、スマートウォッチ、ワイヤレスイヤホン、タッチパネル、電子ペン、ペンライト、光る衣服、楽器などが挙げられる。電子機器では、ユーザーからの入力を受け付ける入力部に荷重センサが設けられる。
【0021】
以下の実施形態は、上記のような管理システムや電子機器の荷重センサにおいて典型的に設けられる荷重センサである。このような荷重センサは、「静電容量型感圧センサ素子」、「容量性圧力検出センサ素子」、「感圧スイッチ素子」などと称される場合もある。以下の実施形態は、本発明の一実施形態あって、本発明は、以下の実施形態に何ら制限されるものではない。
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。便宜上、各図には互いに直交するX、Y、Z軸が付記されている。Z軸方向は、荷重センサ1の高さ方向である。
【0023】
<実施形態1>
図1(a)~図2(b)を参照して、実施形態1の荷重センサ1の製造方法について説明する。図1(a)~図2(b)は、荷重センサ1の各部の構成を模式的に示す斜視図である。
【0024】
図1(a)に示すように、基材11は、弾性を有する絶縁性の部材である。基材11はX-Y平面に平行な平板形状を有する。
【0025】
基材11は、非導電性を有する樹脂材料または非導電性を有するゴム材料から構成される。基材11に用いられる樹脂材料は、たとえば、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(たとえば、ポリジメチルポリシロキサン(PDMS)など)、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂、およびウレタン系樹脂等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料である。基材11に用いられるゴム材料は、たとえば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、および天然ゴム等からなる群から選択される少なくとも1種のゴム材料である。
【0026】
続いて、図1(a)に示した基材11の上面(Z軸正側の面)に、図1(b)に示すように、電極12が形成される。ここでは、基材11の上面に、3つの電極12が形成される。各電極12は、弾性を有する導電性の部材である。各電極12は、基材11の上面においてY軸方向に長い帯状の形状を有しており、互いに離間して形成されている。電極12は、樹脂材料とその中に分散した導電性フィラー、またはゴム材料とその中に分散した導電性フィラーから構成される。
【0027】
電極12に用いられる樹脂材料は、上述した基材11に用いられる樹脂材料と同様、たとえば、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(ポリジメチルポリシロキサン(たとえば、PDMS)など)、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂、およびウレタン系樹脂等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料である。電極12に用いられるゴム材料は、上述した基材11に用いられるゴム材料と同様、たとえば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、および天然ゴム等からなる群から選択される少なくとも1種のゴム材料である。
【0028】
電極12に用いられる導電性フィラーは、たとえば、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、C(カーボン)、ZnO(酸化亜鉛)、In(酸化インジウム(III))、およびSnO(酸化スズ(IV))等の金属材料や、PEDOT:PSS(すなわち、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)からなる複合物)等の導電性高分子材料や、金属コート有機物繊維、金属線(繊維状態)等の導電性繊維からなる群から選択される少なくとも1種の材料である。
【0029】
各電極12は、基材11の上面に対して、所定の印刷工法によって形成される。電極12を形成する印刷工法については、追って図3(a)~図7を参照して説明する。
【0030】
続いて、図1(b)に示した3つの電極12の上面に、図1(c)に示すようにワイヤー13が重ねて配置される。ここでは、3つのワイヤー13が3つの電極12の上面に重ねて配置される。各ワイヤー13は、導電性の線材と、当該線材の表面を被覆する誘電体とからなる。3つのワイヤー13は、電極12の長手方向(Y軸方向)に沿って並んで配置されている。各ワイヤー13は、3つの電極12に跨がるよう、X軸方向に延びて配置される。ワイヤー13の構成については、追って図9(a)、(b)を参照して説明する。
【0031】
3つのワイヤー13が配置された後、各ワイヤー13は、ワイヤー13の長手方向(X軸方向)に移動可能に、接続部材14で基材11に接続される。図1(c)に示す例では、12個の接続部材14が、電極12とワイヤー13とが重なる位置以外の位置において、ワイヤー13を基材11に接続している。
【0032】
接続部材14は、たとえば糸により構成される。接続部材14に用いられる糸は、繊維を撚り合わせた撚糸でもよく、撚り合わせていない単繊維(すなわちモノフィラメント)でもよい。接続部材14に用いられる糸を構成する繊維は、化学繊維や天然繊維でもよく、化学繊維および天然繊維の混合繊維でもよい。
【0033】
接続部材14に用いられる化学繊維は、合成繊維、半合成繊維、再生繊維、無機繊維などである。合成繊維としては、ポリスチレン系繊維、脂肪族ポリアミド系繊維(たとえば、ナイロン6繊維、ナイロン66繊維)、芳香族ポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール系繊維(たとえば、ビニロン繊維)、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリエステル系繊維(たとえば、ポリエステル繊維、PET繊維、PBT繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリアリレート繊維)、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリウレタン系繊維、フェノール系繊維、およびポリフルオロエチレン系繊維などが挙げられる。半合成繊維としては、セルロース系繊維および蛋白質系繊維などが挙げられる。再生繊維としては、レーヨン繊維、キュプラ繊維、およびリヨセル繊維などが挙げられる。無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、および金属繊維などが挙げられる。
【0034】
接続部材14に用いられる天然繊維は、植物繊維や動物繊維などである。植物繊維としては、綿および麻(たとえば、アマ、ラミー)などが挙げられる。動物繊維としては、毛(たとえば、羊毛、アンゴラ、カシミヤ、モヘヤ)、絹、および羽毛(たとえば、ダウン、フェザー)などが挙げられる。
【0035】
接続部材14に用いられる糸は、ニット用の糸など伸縮性を有する糸が好ましい。伸縮性を有する糸は、たとえば、エッフェル(カナガワ株式会社)、ソロテックス(帝人フロンティア株式会社)等の市販品として入手可能である。
【0036】
続いて、図1(c)に示した3つの電極12のY軸負側の端部に、図2(a)に示すように、それぞれケーブル21aが引き出され、3つのケーブル21aがコネクタ21に接続される。また、図1(c)に示したワイヤー13のX軸負側の端部が、図2(a)に示すように、コネクタ22に接続される。このように、3つのケーブル21aがコネクタ21に接続され、3つのワイヤー13がコネクタ22に接続されることにより、3つの電極12と3つのワイヤー13内の線材との組み合わせに応じた静電容量を検出することが可能になる。
【0037】
続いて、図2(a)に示した3つのワイヤー13の上方から、図2(b)に示すように、基材15が設置される。基材15は、絶縁性の部材である。基材15は、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、およびポリイミド等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料である。基材15は、X-Y平面に平行な平板形状を有し、X-Y平面における基材15の大きさは、基材11と同様である。基材15の四隅の頂点が基材11の四隅の頂点に対して、シリコーンゴム系接着剤や糸などで接続されることにより、基材15が基材11に対して固定される。こうして、図2(b)に示すように、荷重センサ1が完成する。
【0038】
次に、電極12を基材11の上面に形成する際に用いられ得る5つの印刷工法について順に説明する。なお、電極12を基材11の上面に形成する印刷工法は、以下の5つの印刷工法に限らず、以下の5つの印刷工法と同様の厚みで、電極12を基材11の上面に形成できる印刷工法であってもよい。
【0039】
図3(a)~(c)は、スクリーン印刷を説明するための模式図である。スクリーン印刷は、孔からインキを通して印刷する孔板印刷の一種である。
【0040】
図3(a)に示すように、スクリーン印刷では、スクリーン版111とスキージ112が用いられる。スクリーン版111には、基材11の上面に形成する電極12の形状に合わせて、Y軸方向に延びた孔111aが形成されている。スクリーン印刷で塗布されるインキ100は、電極12と同じ材料からなるインキである。
【0041】
スクリーン印刷を行う際には、図3(a)に示すように、スクリーン版111の上面にインキ100が塗布された状態で、基材11の上面にスクリーン版111が近付けられる。図3(b)に示すように、基材11の上面にスクリーン版111が載置されると、スキージ112がX軸方向に移動される。これにより、孔111aにインキ100が入り込み、孔111aの部分に対応する基材11の上面にインキ100が転写される。基材11の上面に形成されるインキ100(電極12)の厚みは、孔111aの深さ(Z軸方向の幅)により決まる。その後、図3(c)に示すように、スクリーン版111が基材11から離される。こうして、基材11への電極12の形成が終了する。
【0042】
図4は、グラビア印刷を説明するための模式図である。グラビア印刷は、凹部に入ったインキを転移させる凹版印刷の一種である。
【0043】
図4に示すように、グラビア印刷では、容器121と、版胴122と、圧胴123とが用いられる。容器121は、インキ100を収容している。版胴122には、基材11のZ軸正側の面に形成する電極12の形状に合わせてY軸方向に延びた凹部122aが形成されている。
【0044】
グラビア印刷を行う際には、版胴122と圧胴123とが回転され、版胴122と圧胴123との間に基材11が通される。これにより、容器121内のインキ100が版胴122の凹部122aに入り込み、凹部122a内のインキ100は、圧胴123が基材11をZ軸正方向に押し付けることにより、基材11のZ軸正側の面に転移される。基材11のZ軸正側の面に形成されるインキ100(電極12)の厚みは、版胴122の凹部122aの深さにより決まる。こうして、基材11への電極12の形成が終了する。
【0045】
図5は、フレキソ印刷を説明するための模式図である。フレキソ印刷は、凸部に付着したインキを転移させる凸版印刷の一種である。
【0046】
図5に示すように、フレキソ印刷では、ドクターチャンバー131と、アニロックスロール132と、版133と、センタードラム134とが用いられる。ドクターチャンバー131は、インキ100を収容している。版133には、基材11のZ軸正側の面に形成する電極12の形状に合わせてY軸方向に延びた凸部133aが形成されている。
【0047】
フレキソ印刷を行う際には、アニロックスロール132と版133が回転され、ドクターチャンバー131内のインキ100が、版133の凸部133aに塗布される。センタードラム134には、基材11が配置されており、センタードラム134の回転により、版133とセンタードラム134との間に基材11が移送される。これにより、凸部133a上のインキ100が、基材11のZ軸正側の面に転移される。基材11のZ軸正側の面に形成されるインキ100(電極12)の厚みは、版133の凸部133aと基材11とが最も近づくときの距離により決まる。こうして、基材11への電極12の形成が終了する。
【0048】
図6は、オフセット印刷を説明するための模式図である。
【0049】
図6に示すように、オフセット印刷では、インキローラー141と、水ローラー142と、容器143と、版胴144と、ブランケット145と、圧胴146とが用いられる。容器143は、湿し水101を収容している。
【0050】
オフセット印刷を行う際には、インキローラー141が回転されることにより、インキ100が版胴144に塗布される。また、水ローラー142が回転されることにより、容器143内の湿し水101が版胴144に塗布される。このとき、版胴144上のインキ100が、基材11に形成される電極12の幅(X軸方向の長さ)に対応するように、インキ100が版胴144に塗布される。版胴144とブランケット145とが回転されることにより、版胴144上のインキ100および湿し水101のうち、インキ100がブランケット145に移動する。そして、ブランケット145と圧胴146とが回転され、ブランケット145と圧胴146との間に基材11が通される。これにより、ブランケット145上のインキ100が、基材11の上面に転移される。基材11の上面に形成されるインキ100(電極12)の厚みは、ブランケット145と圧胴146との距離により決まる。こうして、基材11への電極12の形成が終了する。
【0051】
図7は、グラビアオフセット印刷を説明するための模式図である。
【0052】
図7に示すように、グラビアオフセット印刷では、インキロール151と、インキ皿152と、ドクター153と、グラビア版胴154と、ブランケット胴155と、圧胴156とが用いられる。インキ皿152は、インキ100を収容している。グラビア版胴154には、基材11の上面に形成する電極12の形状に合わせてY方向に延びた凹部154aが形成されている。
【0053】
グラビアオフセット印刷を行う際には、インキロール151が回転されることにより、インキ皿152内のインキ100がグラビア版胴154に塗布される。グラビア版胴154に塗布されたインキ100は、ドクター153により、グラビア版胴154の凹部154a内に収容される。グラビア版胴154とブランケット胴155とが回転されることにより、凹部154a内のインキ100が、ブランケット胴155に移動する。そして、ブランケット胴155と圧胴156とが回転され、ブランケット胴155と圧胴156との間に基材11が通される。これにより、ブランケット胴155上のインキ100が、基材11の上面に転移される。基材11の上面に形成されるインキ100(電極12)の厚みは、凹部154aの深さ、および、ブランケット胴155と圧胴156との距離により決まる。こうして、基材11への電極12の形成が終了する。
【0054】
以上のように、各印刷工法によれば、基材11の上面に0.001mm~0.5mm程度の厚みで電極12を形成することが可能となる。
【0055】
図8は、Z軸負方向に見た場合の荷重センサ1を模式的に示す平面図である。図8では、便宜上、基材15の図示が省略されている。
【0056】
図8に示すように、3つの電極12と3つのワイヤー13とが交わる位置に、荷重を検出するための領域A11、A12、A13、A21、A22、A23、A31、A32、A33が設定される。各領域に対してZ軸方向に荷重が加わると、荷重により電極12がワイヤー13を包み込むように撓む。これにより、電極12とワイヤー13との間の接触面積が変化し、当該電極12と当該ワイヤー13との間の静電容量が変化する。
【0057】
図8に示すように、3つの電極12から引き出されたケーブル21aをラインL11、L12、L13と称し、3つのワイヤー13内の線材13aをラインL21、L22、L23と称する。ラインL21がラインL11、L12、L13と交わる位置を、それぞれ、領域A11、A12、A13とし、ラインL22がラインL11、L12、L13と交わる位置を、それぞれ、領域A21、A22、A23とし、ラインL23がラインL11、L12、L13と交わる位置を、それぞれ、領域A31、A32、A33とする。
【0058】
領域A11に対して荷重が加えられると、領域A11において電極12とワイヤー13との接触面積が増加する。したがって、ラインL11とラインL21との間の静電容量を検出することにより、領域A11において加えられた荷重を算出することができる。同様に、他の領域においても、当該他の領域において交わる2つのライン間の静電容量を検出することにより、当該他の領域において加えられた荷重を算出することができる。
【0059】
たとえば、3つのケーブル21aの何れか1つを選択的にグランドに接続し、このケーブル21aと、3つのワイヤー13の何れか1つとの間の電圧を検出することにより、当該ケーブル21aと当該ワイヤー13とが交差する領域の静電容量を検出できる。この静電容量に基づいて、当該領域に付与された荷重を算出できる。
【0060】
図9(a)、(b)は、X軸負方向に見た場合のワイヤー13周辺を模式的に示す断面図である。図9(a)は、荷重が加えられていない状態を示し、図9(b)は、荷重が加えられている状態を示している。
【0061】
図9(a)に示すように、ワイヤー13は、導電性の線材13aと、線材13aを被覆する誘電体13bと、により構成される。線材13aは、たとえば、金属体、ガラス体およびその表面に形成された導電層、樹脂体およびその表面に形成された導電層などにより構成される。ガラス体が用いられる場合、ガラス体の中に導電性フィラーが分散されてもよく、樹脂体が用いられる場合、樹脂体の中に導電性フィラーが分散されてもよい。
【0062】
線材13aに用いられる金属体は、たとえば、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、Ni-Cr合金(ニクロム)、C(カーボン)、ZnO(酸化亜鉛)、In(酸化インジウム(III))、およびSnO(酸化スズ(IV))等からなる群から選択される少なくとも1種の金属である。線材13aに用いられるガラス体は、酸化ケイ素の網目状構造を有するものであれば特に限定されず、たとえば、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス等からなる群から選択される少なくとも1種のガラス材料である。線材13aに用いられる樹脂体は、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(たとえば、PDMSなど)、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂、およびウレタン系樹脂等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料である。
【0063】
ガラス体および樹脂体の導電層は、たとえば、金属体を構成し得る金属と同様の金属の群から選択される少なくとも1種の金属の蒸着により形成されてもよく、導電性インクの塗布などにより形成されてもよい。ガラス体および樹脂体の導電性フィラーは、金属体を構成し得る金属と同様の金属の群から選択される少なくとも1種の金属である。
【0064】
誘電体13bは、電気絶縁性を有し、たとえば、樹脂材料、セラミック材料、金属酸化物材料などにより構成される。誘電体13bは、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂(たとえば、ポリエチレンテレフレート樹脂)、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂などからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料でもよく、AlおよびTaなどからなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物材料でもよい。
【0065】
図9(a)に示す領域に荷重が加えられていない場合、電極12とワイヤー13との間にかかる力、および、ワイヤー13と基材15との間にかかる力は、ほぼゼロである。この状態から、図9(b)に示すように、基材11の下面に対して上方向に荷重が加えられ、基材15の上面に対して下方向に荷重が加えられると、図9(b)に示すように、ワイヤー13によって、弾力を有する電極12および基材11が変形する。なお、基材11の下面または基材15の上面が静止物体に載置されて、他方の基材に対してのみ荷重が加えられた場合も、反作用により静止物体側から同様に荷重を受けることになる。
【0066】
図9(b)に示すように、荷重が加えられると、ワイヤー13は、電極12および基材11に包まれるように、電極12と基材11に近付けられ、ワイヤー13と電極12との間の接触面積が増加する。これにより、ワイヤー13内の線材13aと電極12との間の静電容量が変化し、図8を参照して説明したように、この領域に対応する2つのライン間の静電容量が検出され、この領域にかかる荷重が算出される。
【0067】
ここで、弾性を有する材料の中に導電性フィラー分散された電極の場合、導電性フィラーが電極の弾性復帰に対して阻害要因となって弾性復帰のレスポンスが低下することが知られている。このような電極を用いて荷重の付与と除去を行うと、静電容量の変化に特性ずれ(ヒステリシス)が発生し、荷重付与時および除荷時における静電容量の変化が互いにずれてしまう。
【0068】
そこで、発明者らは、検討を重ねた結果、基材11の上面に形成する電極12の厚みを、図3(a)~図7を参照して説明したような印刷工法を用いて薄くすることにより、電極12の特性ずれを抑制できることを見いだした。上述したように、基材11の上面に所定の印刷工法で電極12を薄く形成すると、図9(b)に示すように、荷重に応じて電極12と線材13aとの間の静電容量を変化させながら、電極12と基材11とによる構造体が十分な弾性力を持つことにより、除荷時に、図9(b)の状態から図9(a)の状態に迅速に復帰するようになる。すなわち、電極12および基材11の弾性変形は、基材11の弾性変形の影響が支配的になり、電極12に含まれるフィラーの影響が顕著に抑制される。これにより、除荷時における静電容量の変化を、荷重付与時の静電容量の変化に近付けることができる。
【0069】
図10(a)は、ワイヤー13の位置でX-Z平面に平行な平面で切断した状態の荷重センサ1をY軸正方向に見た場合の模式図である。
【0070】
図1(c)を参照して説明したように、接続部材14は、電極12のX軸正側およびX軸負側において、ワイヤー13を基材11に接続している。ここで、上述したように、基材11の上面の電極12は、印刷工法によって、厚みが10μm~150μmと非常に薄くなるよう形成されている。これにより、図10(a)に示すように、ワイヤー13と基材11との間隔D1も、同様に非常に短くなる。したがって、接続部材14の締め付けによって、ワイヤー13と基材11とが近付いたとしても、ワイヤー13と基材11のZ軸方向の撓みは距離D1以下に抑制される。
【0071】
一方、あらかじめ作成した電極12を接着剤等で基材11の上面に設置すると、図10(b)に示すように、基材11の上面における電極12の厚みは、0.5mm~1mm程度に大きくなる。このように、電極12の厚みが大きい場合、ワイヤー13と基材11との間隔D2は、図10(a)の間隔D1よりも大きくなる。この場合、接続部材14の締め付けによって、ワイヤー13と基材11とが近付くと、ワイヤー13と基材11のZ軸方向の撓みが、距離D2程度まで大きくなってしまう。これにより、荷重の検出精度が低下する畏れがある。これに対し、実施形態1では、上記のように、ワイヤー13と基材11との間隔が小さいため、意図しない基材11およびワイヤー13の変形が抑制される。よって、荷重の検出精度を高く確保できる。
【0072】
次に、図11を参照して、荷重センサ1の各部の好ましいサイズについて説明する。
【0073】
図11に示すように、電極12の厚み(Z軸方向の高さ)をd1、基材11の厚み(Z軸方向の高さ)をd2、電極12の幅(X軸方向の長さ)をd21、電極12の間隔(2つの電極12の間のX軸方向の距離)をd22、電極12の弾性率をE1、電極12の導電率をσ、基材11の弾性率をE2とする。
【0074】
発明者らの検討によれば、電極12の弾性率E1を0.1MPa~10MPa、電極12の導電率σを100Ω・cm以下、基材11の弾性率E2を0.01MPa~10MPa、電極12の厚みd1を0.001mm~0.5mm、基材11の厚みd2を0.01mm~2mm、電極12の幅d21を2mm~50mm、電極12の間隔d22を1mm~5mmに設定することにより、図9(a)、(b)を参照して説明したように、除荷時における静電容量の変化を、荷重付与時の静電容量の変化に近付けることができ、また、図10(a)、(b)を参照して説明したように、接続部材14の締め付け時におけるワイヤー13および基材11の撓みを抑制できることが想定され得る。
【0075】
<実施形態1の効果>
以上、実施形態1によれば、以下の効果が奏される。
【0076】
上記のように基材11の厚みと電極の厚みを設定することにより、基材11の厚みに比べて電極12の厚みを十分に小さくできる。これにより、荷重付与時および除荷時における電極12および基材11の変形において、電極12の変形による影響が抑制され、基材11による変形の影響が支配的となる。このため、電極12の弾性復帰におけるレスポンス低下の影響を抑制でき、その結果、荷重付与時および除荷時における静電容量の変化を、ほぼ一致させることができる。よって、荷重付与時と除荷時における荷重センサ1の検出値のずれを抑制することが可能となる。
【0077】
図10(a)を参照して説明したように、ワイヤー13と基材11との間隔D1は、電極12の厚みに応じて非常に小さい値となる。したがって、接続部材14の締め付けによるワイヤー13と基材11の変形を抑制することができる。よって、荷重の検出精度を高めることができる。
【0078】
電極12は、基材11の上面に、図3(a)~図7に示したような所定の印刷工法、すなわち、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、またはグラビアオフセット印刷によって形成されている。このように、印刷工法を用いることにより、基材11の厚みに比べて十分小さい厚みの電極12を、基材11の上面に円滑かつ精度よく形成できる。
【0079】
電極12は、基材11の上面に互いに離間して複数形成されている。これにより、荷重センサ1の荷重の検出範囲を複数に分割できる。
【0080】
また、各電極12は、一方向(Y軸方向)に長い帯状の形状を有し、ワイヤー13(線材13a)は、複数の電極12に跨がるように配置されている。これにより、線材13aが複数の電極12に跨がる交差位置(図8では、領域A11、A12、A13、A21、A22、A23、A31、A32、A33)において、荷重を検出できる。
【0081】
また、ワイヤー13(線材13a)は、電極12の長手方向(Y軸方向)に沿って複数配置されている。これにより、図8に示したように、複数の電極12と複数の線材13aとが交わる交差位置をマトリクス状に配置できるため、検出位置を細かく設定できる。
【0082】
ワイヤー13(線材13a)は、長手方向(X軸方向)に移動可能に、接続部材14で基材11に接続されている。ワイヤー13が基材11に接着剤等で固定される場合、基材11および電極12が伸縮すると、接着剤により線材13aを被覆している誘電体13bが剥がれるといった事態が生じ得る。これに対し、実施形態1では、糸等からなる接続部材14により、ワイヤー13(線材13a)が、長手方向(X軸方向)に移動可能に基材11に接続されているため、基材11および電極12が伸縮したとしても、ワイヤー13(線材13a)と接続部材14との位置関係が変化することにより、誘電体13bの破損を抑制できる。よって、誘電体13bの破損に基づく荷重の検出精度の低下を抑制できる。
【0083】
<実施形態2>
実施形態1では、図2(a)に示した構造体に対して、上側から基材15が重ねられることにより荷重センサ1が構成されたが、実施形態2では、図2(a)に示した構造体に対して、図1(b)に示した構造体が重ねられることにより荷重センサ1が構成される。
【0084】
図12、13を参照して、実施形態の荷重センサ1の製造方法について説明する。図12、13は、荷重センサ1の各部の構成を模式的に示す斜視図である。
【0085】
図12に示すように、実施形態2では、実施形態1と同様の手順により、図2(a)と同様の構造体1aが生成される。そして、構造体1aとは別に、実施形態1と同様の手順により、図1(b)と同様の構造体が生成され、この構造体が上下方向に反転された状態で、3つの電極12に3つのケーブル21aおよびコネクタ21が接続されて、構造体1bが生成される。
【0086】
続いて、構造体1aの上側から構造体1bが設置され、下側の基材11の上面の四隅と、上側の基材11の下面の四隅とが接着剤や糸などにより固定される。こうして、図13に示すように、実施形態2の荷重センサ1が完成する。実施形態2においても、図8と同様に、荷重を検出するための9つの領域が設定される。
【0087】
図14(a)、(b)は、X軸負方向に見た場合のワイヤー13周辺を模式的に示す断面図である。図14(a)は、荷重が加えられていない状態を示し、図14(b)は、荷重が加えられている状態を示している。
【0088】
図14(a)に示す領域に荷重が加えられていない場合、上側の電極12とワイヤー13との間にかかる力、および、下側の電極12とワイヤー13との間にかかる力は、ほぼゼロである。この状態から、図14(b)に示すように、上側の基材11の上面に対して下方向に荷重が加えられ、下側の基材11の下面に対して上方向に荷重が加えられると、図14(b)に示すように、ワイヤー13によって、弾力を有する電極12および基材11が変形する。
【0089】
図14(b)に示すように、荷重が加えられると、ワイヤー13は、上側の電極12および上側の基材11に包まれるように、上側の電極12と上側の基材11に近付けられる。同様に、ワイヤー13は、下側の電極12および下側の基材11に包まれるように、下側の電極12と下側の基材11に近付けられる。これにより、線材13aと上側の電極12との間の静電容量と、線材13aと下側の電極12との間の静電容量とが変化する。そして、2つの静電容量の和に基づいて、図8に示した9個の領域のうち、対応する領域にかかる荷重が算出される。
【0090】
<検証実験1>
発明者らは、実施形態2の荷重センサ1および比較例の荷重センサ200について、実際に静電容量と荷重の関係を検証実験により確認した。
【0091】
図15(a)、(b)を参照して、検証実験で用いた荷重センサ1の各部のサイズについて説明する。図15(a)、(b)は、X軸負方向に見た場合のワイヤー13周辺を模式的に示す断面図である。図15(a)は、比較例の荷重センサ200を示しており、図15(b)は、実施形態2とほぼ同様の荷重センサ1を示している。図15(a)、(b)のいずれの構成においても、X軸方向に延びた2本のワイヤー13を挟んで、上下にそれぞれ、基材11と電極12が位置付けられている。
【0092】
図15(a)に示すように、比較例の荷重センサ200の場合、下側の電極12の厚みd11を1mmとし、上側の電極12の厚みd12を0.5mmとした。ここでは、これら2つの電極12を、あらかじめ作成しておき、接着剤等で基材11に対して設置した。また、上下の基材11の厚みd2を、いずれも0.5mmとした。図15(b)に示すように、実施形態2の荷重センサ1の場合、下側の電極12の厚みd11と上側の電極12の厚みd12を、上述したような印刷工法により、いずれも10μm~150μmに設定した。また、上下の基材11の厚みd2を、比較例の場合と同様、いずれも0.5mmとした。すなわち、基材11の厚みに対する電極12の厚みの比率を、0.02以上0.3以下とした。
【0093】
図15(a)、(b)のいずれの場合も、上下の電極12をグランド(GND)に接続し、2つのワイヤー13の線材13aを互いに接続した。図15(a)、(b)のように設定した2種類の荷重センサを固定台に設置し、上側の基材11の上面において1cm内に荷重を付与し、電極12と線材13aとの間の静電容量を測定した。
【0094】
図16(a)は、比較例の場合の荷重と静電容量との関係を示すグラフである。図16(a)に示すように、比較例では、荷重付与時と除荷時において、互いに異なる曲線が生成された。このため、比較例では、同じ荷重がかかっている場合でも、荷重付与時と除荷時とで異なる静電容量となるため、静電容量に基づいて算出される荷重の値が互いに異なってしまう。
【0095】
一方、図16(b)は、実施形態2の場合の荷重と静電容量との関係を示すグラフである。図16(b)に示すように、実施形態2では、荷重付与時と除荷時において、ほぼ同じ曲線が生成された。このため、実施形態2では、同じ荷重がかかっている場合に、荷重付与時と除荷時とでほぼ同じ静電容量となるため、静電容量に基づいて算出される荷重の値もほぼ同じものとなる。
【0096】
以上、上述した印刷工法に基づいて電極12の厚みが10μm以上150μm以下に設定され、基材11の厚みが0.5mmに設定されることにより、言い換えれば、基材11の厚みに対する電極12の厚みの比率が0.02以上0.3以下に設定されることにより、静電容量の変化に生じる特性ずれ(ヒステリシス)が抑制され、荷重付与時および除荷時における静電容量の変化が互いに一致することが分かった。
【0097】
なお、基材11の厚みが0.5mm以上であれば、荷重付与時および除荷時における電極12および基材11の変形において、より一層、電極12の変形による影響が抑制され、基材11による変形の影響が支配的となる。よって、基材11の厚みが0.5mm以上に設定されることにより、言い換えれば、基材11の厚みに対する電極12の厚みの比率が0.02~0.3の範囲よりも小さく設定されることにより、静電容量の変化に生じる特性ずれがより一層抑制されることが想定される。
【0098】
<検証実験2>
さらに、発明者らは、図15(b)に示した実施形態2の構成において、電極12の厚みを変化させた場合の荷重センサ1のヒステリシス特性を、実験により検証した。この実験では、電極12の厚みを変化させることを除いて、上記検証実験1の実施形態2に適用された条件と同様の条件を設定した。図15(b)の構成において、下側の電極12の厚みd11と上側の電極12の厚みd12を互いに等しく維持した状態で、厚みd11、d12を変化させた。基材11の厚みd2は、0.5mmに固定した。この条件のもと、発明者らは、荷重を適正に検出可能な電極12の厚み、および、基材11の厚みに対する電極12の厚みの比率を確認した。
【0099】
実験では、図17(a)に示す算出方法によりヒステリシスを求めた。
【0100】
図17(a)において、C1は、荷重付与時において所定の荷重Fに対応する静電容量であり、C2は、除荷時において所定の荷重Fに対応する静電容量である。ΔCは、C1とC2との差分である。ヒステリシス(%)は、荷重Fの変動に応じてΔC/C2の値が最も大きくなるときのΔC/C2の値として算出される。
【0101】
なお、上記検証実験1において、図16(a)の比較例におけるヒステリシスは12%となり、図16(b)の実施形態2におけるヒステリシスは0.2%未満となる。このように、実施形態2の構成によれば、比較例に比べて、ヒステリシスを数段小さくできる。
【0102】
図17(b)は、ヒステリシス特性の実験結果を示すグラフである。横軸は、電極12の厚みを示している。横軸には、基材11の厚み(0.5mm)に対する電極12の厚みの比率が、矢印により電極12の厚みに対応付けて示されている。縦軸は、ヒステリシス(%)を示している。
【0103】
発明者らの検討によると、荷重付与時と除荷時の両方において、荷重を適正に検出可能なヒステリシスの許容範囲は、好ましくは5%以下であり、より好ましくは2%以下である。したがって、図17(b)の実験結果から、電極12の厚みは、250μm以下が好ましく、150μm以下がさらに好ましい。同様に、この実験結果から、基材11の厚みに対する電極12の厚みの比率は、0.5以下が好ましく、0.3以下がさらに好ましい。
【0104】
さらに、発明者らは、同様の条件で、電極1の厚みと電極12の体積抵抗率との関係を検証した。
【0105】
電極12は、樹脂材料またはゴム材料と、その中に分散した数μm程度の大きさの導電性フィラーとにより構成される。したがって、電極12の厚みがフィラーの大きさ程度に小さくなると、電極12内に導電性フィラーが3次元状に分配されにくくなり、結果、電極12における導電性フィラーの、平面視における密度が急激に低くなる。このため、電極12の厚みがフィラーの大きさ程度に小さくなると、電極12の導電率が顕著に低下して、電極12の体積抵抗率が急激に上昇し、電極12の抵抗値が大きく上昇する。また、電極12の厚みの低下に伴い導電フィラーが3次元状に分布しにくくなると、導電フィラーが3次元状に適正に分布する場合に比べて、電極12ごとの体積抵抗率のバラつきが大きくなる。このため、電極12の厚みがフィラーの大きさ程度に小さくなると、電極12ごとの体積抵抗率のバラつきが大きくなる。
【0106】
以上のように、電極12の厚みがフィラーの大きさ程度に小さい場合、電極12の抵抗値が顕著に大きくなり、且つ、電極12ごとの抵抗値のバラつきが大きくなるため、後段の測定回路による電極12とワイヤー13との間の静電容量の測定精度が低下し、静電容量に応じた荷重を適正に算出できなくなる。発明者らは、この点について、以下に示す検証実験により明らかにした。
【0107】
図17(c)は、電極12の厚みと電極12の体積抵抗率との関係の検証結果を示すグラフである。横軸は、図17(b)と同様、電極12の厚みを示している。図17(b)と同様、横軸には、基材11の厚みに対する電極12の厚みの比率が、矢印により電極12の厚みに対応付けて示されている。縦軸は、電極12の体積抵抗率を示している。
【0108】
図17(c)に示すように、電極12の厚みが小さくなると、導電性フィラー同士が互いに電気を通しにくくなることにより、体積抵抗率が上昇することが分かる。特に、電極12の厚みが、フィラーの大きさに近づく10μmよりやや小さくなる辺りから、体積抵抗率が急激に上昇し、さらに、電極12の厚みが10μmより小さくなるにつれて、体積抵抗率の上昇度合いが大きくなっていく。このため、電極12の厚みが10μmより小さい範囲では、上述の要因により、荷重を適正に検出できなくなる。したがって、図17(c)の検証結果から、電極12の厚みは、10μm以上が好ましく、基材11の厚みに対する電極12の厚みの比率は、0.02以上が好ましい。
【0109】
さらに、発明者らは、電極12の弾性係数が異なる場合についても、図17(b)、(c)と同様の実験を行って、荷重を適正に検出するための電極12の厚みおよび比率の条件を検証した。
【0110】
図18は、この実験における電極12の厚みとヒステリシスとの関係を示すグラフである。図18のグラフは、図17(b)と同様のグラフである。黒のプロットは、弾性係数が10Pa以上10Pa以下(設定1)である電極12を用いた場合を示しており、白のプロットは、弾性係数が10未満(設定2)である電極12を用いた場合を示している。なお、設定1に基づく電極12は、図17(b)、(c)の実験で用いた電極12と同様である。したがって、黒のプロットは、図17(b)、(c)のプロットと同様である。
【0111】
設定1の場合、ヒステリシスが許容範囲(5%以下または2%以下)に収まり、電極12の体積抵抗率が許容範囲(75Ω・cm以下)に収まるための条件は、図17(b)、(c)を参照して説明した条件と同様である。したがって、設定1の場合の基材11の厚みに対する電極12の厚みのより好ましい比率は、0.02以上0.3以下である。
【0112】
一方、設定2の場合も、荷重を適正に検出可能なヒステリシスの許容範囲は、好ましくは5%以下であり、より好ましくは2%以下である。したがって、図18のグラフに基づいて、電極12の厚みは、100μm以下が好ましく、50μm以下がさらに好ましい。よって、基材11の厚みに対する電極12の厚みの比率は、0.2以下が好ましく、0.1以下がさらに好ましい。また、設定2の場合、電極12の厚みと体積抵抗率との関係は、図17(c)と略同様になる。したがって、設定2の場合、図17(c)の場合と同様、電極12の厚みは、10μm以上が好ましく、電極12の厚みの比率は、0.02以上が好ましい。よって、設定2の場合の基材11の厚みに対する電極12の厚みのより好ましい比率は、0.02以上0.1以下である。
【0113】
荷重センサ1に用いられる電極12の弾性係数は、通常、10Pa以上10Pa以下(設定1)の範囲に含まれる。よって、基材11の厚みに対する電極12の厚みの比率は、上記のように、0.02以上0.3以下に設定されることが好ましい。他方、荷重センサ1に用いられる電極12の弾性係数が10未満(設定2)の範囲に含まれる場合は、上記のように、基材11の厚みに対する電極12の厚みの比率が0.02以上0.1以下に設定されるとよい。
【0114】
<実施形態2の効果>
以上、実施形態2によれば、実施形態1と同様の効果に加えて、以下の効果が奏される。
【0115】
図16(b)および図17(b)、(c)の検証実験に示すように、基材11の厚みに対する電極12の厚みの比率を、0.02以上0.3以下に設定することにより、基材11の厚みに比べて電極12の厚みを十分に小さくできる。これにより、荷重付与時および除荷時における電極12および基材11の変形において、電極12の変形による影響が抑制され、基材11による変形の影響が支配的となる。このため、電極12の弾性復帰におけるレスポンス低下の影響を抑制でき、その結果、上記検証実験1、2に示したように、荷重付与時および除荷時における静電容量の変化を、ほぼ一致させることができ、ヒステリシスを抑制できる。よって、荷重付与時と除荷時における荷重センサ1の検出値のずれを抑制することが可能となる。
【0116】
図12に示したように、構造体1bは、構造体1aと同様の構成を有しており、構造体1bの電極12がワイヤー13(線材13a)に重なるように構造体1bが構造体1aの上側に配置される。そして、線材13aと下側の電極12との間の静電容量と、線材13aの上側の電極12との間の静電容量との和に基づいて荷重が算出される。これにより、実施形態1と比較して静電容量が高められるため、荷重センサ1の感度を高めることができる。したがって、荷重センサ1による荷重の検出精度を高めることができる。また、線材13aの上下が、それぞれ電極12によりシールドされるため、線材13aに生じるノイズを抑制することができる。
【0117】
なお、2つの構造体1a、1bにおいて、それぞれ電極12が上述したような印刷工法により形成されていればよく、電極12の厚み、幅、長さ、弾性係数や、基材11の厚み、弾性係数等が、2つの構造体間で相違していてもよい。
【0118】
<実施形態3>
実施形態2では、ワイヤー13は、X軸方向に直線的に延びて配置されたが、実施形態3では、X-Y平面内において周期的に折り曲げられた形状を有する。
【0119】
図19は、実施形態3に係る荷重センサ1の各部の構成を模式的に示す斜視図である。
【0120】
実施形態3のワイヤー13は、実施形態2と比較して、あらかじめ周期的折り曲げられている。このように周期的に折り曲げられたワイヤー13が、電極12の上側に配置され、実施形態1、2と同様、接続部材14で基材11に接続され、構造体1aが完成する。そして、構造体1aの上側から、実施形態2と同様の構造体1bが設置され、荷重センサ1が完成する。
【0121】
なお、実施形態3のワイヤー13は、上記実施形態1、2と同様に構成されるほか、複数の絶縁コート導体線を撚ってなる撚り線により構成されてもよい。また、上記実施形態1、2のワイヤー13も、複数の絶縁コート導体線を撚ってなる撚り線により構成されてもよい。
【0122】
図20(a)、(b)は、基材11および電極12の伸縮に合わせてワイヤー13の形状が変化することを説明する模式図である。図20(a)、(b)は、Z軸負方向に見た場合の荷重センサ1の構成を模式的に示す平面図であり、便宜上、荷重センサ1のうち構造体1bの図示が省略されている。
【0123】
図20(a)に示すように、通常状態においては、ワイヤー13は、図19と同様、周期的に折れ曲がっている。この状態から、基材11および電極12が伸縮すると、たとえば、図20(b)に示すように、ワイヤー13は直線状に延びた状態となる。このとき、接続部材14は糸で構成されているため、接続部材14がワイヤー13を留める位置は、基材11および電極12の伸縮に合わせて変動する。
【0124】
<実施形態3の効果>
以上、実施形態3によれば、実施形態1、2と同様の効果に加えて、以下の効果が奏される。
【0125】
図19および図20(a)に示したように、ワイヤー13(線材13a)は、周期的に折り曲げられている。このため、基材11および電極12が伸縮した場合でも、線材13aの折り曲げ状態が変化するため、線材13aの破損を回避できる。また、線材13aが直線的に配置される場合に比べて、単位面積当たりの線材13aの密度が高くなるため、荷重センサ1による検出感度を高め、荷重センサ1による検出範囲を広げることができる。
【0126】
また、ワイヤー13(線材13a)は、長手方向(X軸方向)に移動可能に、接続部材14で基材11に接続されている。これにより、図20(a)、(b)に示したように、基材11および電極12が伸縮したとしても、ワイヤー13(線材13a)と接続部材14との位置関係が変化することにより、誘電体13bの破損を抑制できる。
【0127】
<変更例>
荷重センサ1の構成は、上記実施形態1~3に示した構成以外に、種々の変更が可能である。
【0128】
たとえば、上記実施形態1~3では、基材11の表面に3つの電極12が形成されたが、基材11の全面に1つの電極12が形成されてもよい。また、3つの電極12に対して3つのワイヤー13(線材13a)が配置されたが、配置される電極12およびワイヤー13の数は、これに限らない。たとえば、Y軸方向に延びた1つの電極12に対して、X軸方向に延びたワイヤー13(線材13a)がY軸方向に並ぶように複数配置されてもよい。あるいは、荷重センサ1が、1つの電極12と1つのワイヤー13のみを備えていてもよい。
【0129】
また、上記実施形態1では、図2(a)に示した構造体の上から基材15が設置されたが、基材15は必ずしも必要ではなく、図2(a)に示した構造体の状態で荷重センサ1として使用してもよい。
【0130】
また、上記実施形態1~3では、所定の印刷工法を用いて電極12が形成されたが、電極12の形成方法はこれに限られるものではない。基材11に対して十分に小さい厚みで電極12を形成できる限りにおいて、電極12の形成に他の工法が用いられてもよい。たとえば、射出成形により、上記印刷工法を用いた場合と同程度の厚みの電極12が、基材11に対して形成されてもよい。また、基材11の厚みが大きい場合には、別途形成されたシート状の電極12が、基材11に対して貼り合わされてもよい。
【0131】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0132】
1 荷重センサ
1a 構造体
1b 構造体(他の構造体)
11 基材
12 電極
13a 線材
13b 誘電体
14 接続部材
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