(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】荷重センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 1/14 20060101AFI20240524BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
G01L1/14 J
G01L5/00 101Z
(21)【出願番号】P 2021574523
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2020047064
(87)【国際公開番号】W WO2021153070
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-09-11
(31)【優先権主張番号】P 2020011204
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020020491
(32)【優先日】2020-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020099701
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】浦上 進
(72)【発明者】
【氏名】古屋 博之
(72)【発明者】
【氏名】森浦 祐太
(72)【発明者】
【氏名】松本 玄
(72)【発明者】
【氏名】浮津 博伸
(72)【発明者】
【氏名】松村 洋大
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/096901(WO,A1)
【文献】特開2010-256270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0020714(US,A1)
【文献】英国特許出願公開第2443208(GB,A)
【文献】特開2011-163889(JP,A)
【文献】特開昭63-136416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/14
G01L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに向かい合うように配置された第1基材および第2基材と、
前記第1基材の対向面に配置された導電弾性体と、
前記第2基材と前記導電弾性体との間に配置され、複数の素線が撚られることにより構成された導体線と、を備え、
前記素線は、線状の導電部材の表面が誘電体で被覆されることにより構成され、
前記複数の素線の撚りピッチは、以下の条件式を満たす、
ことを特徴とする荷重センサ。
p≦12nd
ここで、上記式に示されたパラメータは、それぞれ、以下のように定義される。
p:複数の素線の撚りピッチ
n:導体線に含まれる素線の数
d:素線の外径
【請求項2】
請求項1に記載の荷重センサにおいて、
前記導電弾性体は、前記第1基材の対向面に所定の間隔で複数配置されており、
前記導体線は、前記複数の導電弾性体に対して交差するように配置されている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の荷重センサにおいて、
前記導電弾性体は、前記導体線が延びる方向に垂直な方向に長い帯状の形状を有し、
前記導体線は、前記導電弾性体に対して交差するように複数配置されている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の荷重センサにおいて、
前記第2基材の対向面に前記導電弾性体に対向して配置された他の導電弾性体を備え、
前記導体線は、前記導電弾性体と前記他の導電弾性体との間に配置される、
ことを特徴とする荷重センサ。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の荷重センサにおいて、
前記導体線は、前記第1基材および前記第2基材に平行な平面内において波形状に配置されている、
ことを特徴とする荷重センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量の変化に基づいて外部から付与される荷重を検出する荷重センサに関する。
【背景技術】
【0002】
荷重センサは、産業機器、ロボットおよび車両などの分野において、幅広く利用されている。近年、コンピュータによる制御技術の発展および意匠性の向上とともに、人型のロボットおよび自動車の内装品等のような自由曲面を多彩に使用した電子機器の開発が進んでいる。それに合わせて、各自由曲面に高性能な荷重センサを装着することが求められている。
【0003】
以下の特許文献1には、押圧力が付与されるセンサ部と、押圧力を検出する検出器と、を備えた感圧素子が記載されている。この感圧素子において、センサ部は、第1の導電部材と、第1の導電部材および基材に挟まれた第2の導電部材と、誘電体と、を有する。第1の導電部材は、弾性を有する。第2の導電部材は、線状に構成され、一定の主方向に沿って波状に配置される。誘電体は、第1の導電部材と第2の導電部材との間に配置され、第1の導電部材または第2の導電部材の表面を少なくとも部分的に覆う。検出器は、第1の導電部材と第2の導電部材との間の静電容量の変化に基づいて、押圧力を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような構成において、第2の導電部材を、複数の線状部材が撚られた撚り線により構成すると、第2の導電部材の曲げ強度を高めることができる。しかしながら、この場合、センサ部に対して繰り返し荷重が付与されて、撚り状態が解けると、荷重と、第1の導電部材と第2の導電部材との間の静電容量との関係が変化してしまう。このため、適正に荷重を検出できなくなるという問題が生じる。
【0006】
かかる課題に鑑み、本発明は、撚り線を用いながら適正に荷重を検出することが可能な荷重センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、荷重センサに関する。本態様に係る荷重センサは、互いに向かい合うように配置された第1基材および第2基材と、前記第1基材の対向面に配置された導電弾性体と、前記第2基材と前記導電弾性体との間に配置され、複数の素線が撚られることにより構成された導体線と、を備える。前記素線は、線状の導電部材の表面が誘電体で被覆されることにより構成され、前記複数の素線の撚りピッチは、以下の条件式を満たす。
p≦12nd
ここで、上記式に示されたパラメータは、それぞれ、以下のように定義される。
p:複数の素線の撚りピッチ
n:導体線に含まれる素線の数
d:素線の外径
【0008】
本態様に係る荷重センサによれば、複数の素線の撚りピッチは、上記式を満たすように構成される。これにより、素線の撚り解けが抑制されるため、導電弾性体と導電部材との間の静電容量の特性変化が抑制される。よって、複数の素線が撚られることにより構成された導体線(撚り線)を用いながら適正に荷重を検出することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のとおり、本発明によれば、撚り線を用いながら適正に荷重を検出することが可能な荷重センサを提供できる。
【0010】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1(a)は、実施形態1に係る、下側の基材および下側の基材の対向面に設置された導電弾性体を模式的に示す斜視図である。
図1(b)は、実施形態1に係る、一対の導体線および糸を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、実施形態1に係る、上側の基材および上側の基材の対向面に設置された導電弾性体を模式的に示す斜視図である。
図2(b)は、実施形態1に係る、組み立てが完了した荷重センサを模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、実施形態1に係る、導体線の構成を模式的に示す斜視図である。
図3(b)は、実施形態1に係る、導体線を回転軸に垂直な平面で切断したときの断面を回転軸方向に見た模式図である。
【
図4】
図4(a)、(b)は、実施形態1に係る、X軸負方向に見た場合の導体線の周辺を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る、Z軸負方向に見た場合の荷重センサの内部を模式的に示す平面図である。
【
図6】
図6(a)は、比較例1に係る、X軸負方向に見た場合の導体線の周辺を模式的に示す断面図である。
図6(b)は、比較例1に係る、静電容量の変化を模式的に示す図である。
【
図7】
図7(a)は、実施形態1に係る、撚りピッチの検証結果を示す表である。
図7(b)は、実施形態1に係る、静電容量の変化を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態2に係る、導体線の間隔およびセンサ部の幅を説明するための図である。
【
図9】
図9は、実施形態2に係る、導体線の間隔の検証結果を示すグラフである。
【
図10】
図10(a)は、実施形態2に係る、Z軸負方向に見た場合の荷重センサの内部を模式的に示す平面図である。
図10(b)は、比較例2に係る、Z軸負方向に見た場合の荷重センサの内部を模式的に示す平面図である。
【
図11】
図11は、変更例に係る、荷重センサの製造方法の手順を示すフローチャートである。
【
図12】
図12(a)、(b)は、変更例に係る、荷重センサの製造過程を示す模式図である。
【
図13】
図13(a)、(b)は、変更例に係る、荷重センサの製造過程を示す模式図である。
【
図14】
図14は、比較例3に係る、荷重センサの製造方法を模式的に示す平面図である。
【
図15】
図15は、変更例に係る、一対の導体線を形成するためのジグの構成を示す平面図である。
【
図16】
図16(a)~(d)は、変更例に係る、ジグを用いて一対の導体線を形成する手順を説明するための平面図である。
【
図17】
図17は、変更例に係る、荷重センサが便座に配置される場合の荷重センサの内部構成を示す模式図である。
【
図18】
図18(a)は、参考例1に係る、下側の基材および導電弾性体を模式的に示す斜視図である。
図18(b)は、参考例1に係る、被覆付き銅線および糸を模式的に示す斜視図である。
【
図19】
図19(a)は、参考例1に係る、上側の基材および導電弾性体を模式的に示す斜視図である。
図19(b)は、参考例1に係る、組み立てが完了した荷重センサを模式的に示す斜視図である。
【
図20】
図20(a)、(b)は、参考例1に係る、X軸負方向に見た場合の被覆付き銅線の周辺を模式的に示す断面図である。
【
図21】
図21は、参考例1に係る、Z軸負方向に見た場合の荷重センサの内部を模式的に示す平面図である。
【
図22】
図22は、参考例1に係る、荷重センサの具体的構成を模式的に示す平面図である。
【
図23】
図23(a)、(b)は、比較例1に係る、被覆付き銅線の位置でX-Z平面に平行な平面で切断した断面をY軸正方向に見た断面図である。
【
図24】
図24(a)、(b)は、比較例2に係る、被覆付き銅線の位置でX-Z平面に平行な平面で切断した断面をY軸正方向に見た断面図である。
【
図25】
図25(a)、(b)は、参考例1に係る、被覆付き銅線の位置で、X-Z平面に平行な平面で切断した断面をY軸正方向に見た断面図である。
【
図26】
図26は、参考例2に係る、荷重センサの具体的構成を模式的に示す平面図である。
【
図27】
図27(a)は、参考例2に係る、Y軸負側に位置する縫い目を通るX-Z平面で荷重センサを切断したときのA-A’断面図である。
図27(b)は、参考例2に係る、発明者らが行った検証結果を示す表である。
【
図28】
図28は、参考例3に係る、荷重センサの具体的構成を模式的に示す平面図である。
【
図29】
図29(a)は、参考例3に係る、基材のY軸負側における外周近傍をZ軸負方向に見た場合の平面図である。
図29(b)は、参考例3に係る、針孔を通るX-Z平面で荷重センサを切断したときのB-B’断面図である。
【
図30】
図30(a)は、比較例3に係る、基材のY軸負側における外周近傍をZ軸負方向に見た場合の平面図である。
図30(b)は、比較例3に係る、針孔を通るX-Z平面で荷重センサを切断したときのC-C’断面図である。
【
図31】
図31(a)は、変更例1に係る、基材のY軸負側における外周近傍をZ軸負方向に見た場合の平面図である。
図31(b)は、変更例1に係る、針孔を通るX-Z平面で荷重センサを切断したときのD-D’断面図である。
【
図32】
図32(a)は、変更例2に係る、基材のY軸負側における外周近傍をZ軸負方向に見た場合の平面図である。
図32(b)は、変更例3に係る、基材のY軸負側における外周近傍をZ軸負方向に見た場合の平面図である。
【0012】
ただし、図面はもっぱら説明のためのものであって、この発明の範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る荷重センサは、付与された荷重に応じて処理を行う管理システムや電子機器の荷重センサに適用可能である。
【0014】
管理システムとしては、たとえば、在庫管理システム、ドライバーモニタリングシステム、コーチング管理システム、セキュリティー管理システム、介護・育児管理システムなどが挙げられる。
【0015】
在庫管理システムでは、たとえば、在庫棚に設けられた荷重センサにより、積載された在庫の荷重が検出され、在庫棚に存在する商品の種類と商品の数とが検出される。これにより、店舗、工場、倉庫などにおいて、効率よく在庫を管理できるとともに省人化を実現できる。また、冷蔵庫内に設けられた荷重センサにより、冷蔵庫内の食品の荷重が検出され、冷蔵庫内の食品の種類と食品の数や量とが検出される。これにより、冷蔵庫内の食品を用いた献立を自動的に提案できる。
【0016】
ドライバーモニタリングシステムでは、たとえば、操舵装置に設けられた荷重センサにより、ドライバーの操舵装置に対する荷重分布(たとえば、把持力、把持位置、踏力)がモニタリングされる。また、車載シートに設けられた荷重センサにより、着座状態におけるドライバーの車載シートに対する荷重分布(たとえば、重心位置)がモニタリングされる。これにより、ドライバーの運転状態(眠気や心理状態など)をフィードバックすることができる。
【0017】
コーチング管理システムでは、たとえば、シューズの底に設けられた荷重センサにより、足裏の荷重分布がモニタリングされる。これにより、適正な歩行状態や走行状態へ矯正または誘導することができる。
【0018】
セキュリティー管理システムでは、たとえば、床に設けられた荷重センサにより、人が通過する際に、荷重分布が検出され、体重、歩幅、通過速度および靴底パターンなどが検出される。これにより、これらの検出情報をデータと照合することにより、通過した人物を特定することが可能となる。
【0019】
介護・育児管理システムでは、たとえば、寝具や便座に設けられた荷重センサにより、人体の寝具および便座に対する荷重分布がモニタリングされる。これにより、寝具や便座の位置において、人がどのような行動を取ろうとしているかを推定し、転倒や転落を防止することができる。
【0020】
電子機器としては、たとえば、車載機器(カーナビゲーション・システム、音響機器など)、家電機器(電気ポット、IHクッキングヒーターなど)、スマートフォン、電子ペーパー、電子ブックリーダー、PCキーボード、ゲームコントローラー、スマートウォッチ、ワイヤレスイヤホン、タッチパネル、電子ペン、ペンライト、光る衣服、楽器などが挙げられる。電子機器では、ユーザからの入力を受け付ける入力部に荷重センサが設けられる。
【0021】
以下の実施形態における荷重センサは、上記のような管理システムや電子機器の荷重センサにおいて典型的に設けられる静電容量型荷重センサである。このような荷重センサは、「静電容量型感圧センサ素子」、「容量性圧力検出センサ素子」、「感圧スイッチ素子」などと称される場合もある。また、以下の実施形態における荷重センサは、検出回路に接続され、荷重センサおよび検出回路により、荷重検出装置が構成される。以下の実施形態は、本発明の一実施形態あって、本発明は、以下の実施形態に何ら制限されるものではない。
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。便宜上、各図には互いに直交するX、Y、Z軸が付記されている。Z軸方向は、荷重センサ1の高さ方向である。
【0023】
<実施形態1>
図1(a)~
図5を参照して、荷重センサ1の構成について説明する。
【0024】
図1(a)は、基材11と、基材11の対向面11a(Z軸正側の面)に設置された3つの導電弾性体12とを模式的に示す斜視図である。
【0025】
基材11は、弾性を有する絶縁性の部材であり、X-Y平面に平行な平板形状を有する。基材11は、非導電性を有する樹脂材料または非導電性を有するゴム材料から構成される。基材11に用いられる樹脂材料は、たとえば、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(たとえば、ポリジメチルポリシロキサン(PDMS)など)、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂、およびウレタン系樹脂等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料である。基材11に用いられるゴム材料は、たとえば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、および天然ゴム等からなる群から選択される少なくとも1種のゴム材料である。
【0026】
導電弾性体12は、基材11の対向面11a(Z軸正側の面)に形成される。
図1(a)では、基材11の対向面11aに、3つの導電弾性体12が形成されている。導電弾性体12は、弾性を有する導電性の部材である。各導電弾性体12は、Y軸方向に長い帯状の形状を有しており、X軸方向に所定の間隔をあけて並んで形成されている。各導電弾性体12のY軸負側の端部に、導電弾性体12と電気的に接続されたケーブル12aが設置される。
【0027】
導電弾性体12は、基材11の対向面11aに対して、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、およびグラビアオフセット印刷などの印刷工法により形成される。これらの印刷工法によれば、基材11の対向面11aに0.001mm~0.5mm程度の厚みで導電弾性体12を形成することが可能となる。
【0028】
導電弾性体12は、樹脂材料とその中に分散した導電性フィラー、またはゴム材料とその中に分散した導電性フィラーから構成される。
【0029】
導電弾性体12に用いられる樹脂材料は、上述した基材11に用いられる樹脂材料と同様、たとえば、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(ポリジメチルポリシロキサン(たとえば、PDMS)など)、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂、およびウレタン系樹脂等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料である。導電弾性体12に用いられるゴム材料は、上述した基材11に用いられるゴム材料と同様、たとえば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、および天然ゴム等からなる群から選択される少なくとも1種のゴム材料である。
【0030】
導電弾性体12に用いられる導電性フィラーは、たとえば、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、C(カーボン)、ZnO(酸化亜鉛)、In2O3(酸化インジウム(III))、およびSnO2(酸化スズ(IV))等の金属材料や、PEDOT:PSS(すなわち、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)からなる複合物)等の導電性高分子材料や、金属コート有機物繊維、金属線(繊維状態)等の導電性繊維からなる群から選択される少なくとも1種の材料である。
【0031】
図1(b)は、
図1(a)の構造体に載置された、3組の一対の導体線13および12本の糸14を模式的に示す斜視図である。
【0032】
一対の導体線13は、所定の間隔をあけて並んで配置された2本の導体線13a、13bが、X軸正側の端部で繋がることにより構成される。一対の導体線13は、
図1(a)に示した3つの導電弾性体12の上面に重ねて配置される。ここでは、3組の一対の導体線13が3つの導電弾性体12の上面に重ねて配置されている。3組の一対の導体線13は、導電弾性体12に交差するように配置され、導電弾性体12の長手方向(Y軸方向)に沿って、所定の間隔をあけて並んで配置されている。一対の導体線13は、3つの導電弾性体12に跨がるよう、X軸方向に延びて配置される。導体線13a、13bは、線状の導電部材と、当該導電部材の表面を被覆する誘電体とからなる。導体線13a、13bの構成については、追って
図3(a)、(b)を参照して説明する。
【0033】
図1(b)のように3組の一対の導体線13が配置された後、各一対の導体線13は、一対の導体線13の延びる方向(X軸方向)に移動可能に、糸14で基材11に設置される。
図1(b)に示す例では、12個の糸14が、導電弾性体12と一対の導体線13とが重なる位置以外の位置において、一対の導体線13を基材11に接続している。糸14は、化学繊維、天然繊維、またはそれらの混合繊維などにより構成される。
【0034】
図2(a)は、基材11の上側に重ねて配置される基材21と、基材21の対向面21a(Z軸負側の面)に設置された3つの導電弾性体22とを模式的に示す斜視図である。
【0035】
基材21は、基材11と同じ大きさおよび形状を有し、基材11と同じ材料により構成される。導電弾性体22は、基材21の対向面21a(Z軸負側の面)において、導電弾性体12に対向する位置に形成され、X軸方向に所定の間隔をあけて並んで形成されている。導電弾性体22は、導電弾性体12と同じ大きさおよび形状を有し、導電弾性体12と同じ材料により構成される。導電弾性体22は、導電弾性体12と同様、所定の印刷工法により基材21のZ軸負側の面に形成される。各導電弾性体22のY軸負側の端部に、導電弾性体22と電気的に接続されたケーブル22aが設置される。
【0036】
図2(b)は、
図1(b)の構造体に
図2(a)の構造体が設置された状態を模式的に示す斜視図である。
【0037】
図1(b)に示した構造体の上方(Z軸正側)から、
図2(a)に示した構造体が配置される。このとき、基材11と基材21は、対向面11aと対向面21aとが互いに向かい合うように配置され、導電弾性体12と導電弾性体22とが重なるように配置される。そして、基材21の外周四辺が基材11の外周四辺に対して、シリコーンゴム系接着剤や糸などで接続されることにより、基材11と基材21とが固定される。これにより、3組の一対の導体線13は、3つの導電弾性体12と3つの導電弾性体22とによって挟まれる。こうして、
図2(b)に示すように、荷重センサ1が完成する。
【0038】
図3(a)は、導体線13a、13bの構成を模式的に示す斜視図である。導体線13aと導体線13bは、同様の構成を有する。
【0039】
導体線13a、13bは、複数の素線30が撚られることにより構成される。すなわち、導体線13a、13bは、導体線13a、13bが延びる方向を回転の中心軸30aとして、複数の素線30を中心軸30a周りに回転させることにより形成された撚り線である。
図3(a)では、7つの素線30が撚られている。このように複数の素線30が撚られると、複数の素線30が互いに結合する。破線で示すように、何れかの素線30が中心軸30aの周りを回転し、再び同じ回転位置に戻るまでの中心軸30a方向の距離が、撚りピッチpである。撚りピッチpの設定値については、追って
図7(a)を参照して説明する。
【0040】
図3(b)は、
図3(a)の導体線13a、13bを、中心軸30aに垂直な平面で切断したときの断面を中心軸30a方向に見た模式図である。
【0041】
複数の素線30が適正に撚られると、
図3(b)に示すように、複数の素線30が中心軸30aを中心としてほぼ対称に配置される。素線30は、線状の導電部材31と、導電部材31の表面を被覆する誘電体32と、により構成される。素線30の外径(直径)は、dである。外径dの設定値については、追って
図7(a)を参照して説明する。
【0042】
導電部材31は、たとえば、導電性の金属材料により構成される。この他、導電部材31が、ガラスからなる芯線およびその表面に形成された導電層から構成されてもよく、あるいは、樹脂からなる芯線およびその表面に形成された導電層などにより構成されてもよい。実施形態1では、導電部材31は、銅により構成される。
【0043】
誘電体32は、電気絶縁性を有し、たとえば、樹脂材料、セラミック材料、金属酸化物材料などにより構成される。誘電体32は、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂(たとえば、ポリエチレンテレフテレート樹脂)、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂などからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料でもよく、Al2O3およびTa2O5などからなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物材料でもよい。
【0044】
図4(a)、(b)は、X軸負方向に見た場合の導体線13a、13bの周辺を模式的に示す断面図である。
図4(a)は、荷重が加えられていない状態を示し、
図4(b)は、荷重が加えられている状態を示している。以下、便宜上、導体線13aに荷重が加えられる場合について説明する。
【0045】
図4(a)に示す領域に荷重が加えられていない場合、導電弾性体12と導体線13aとの間にかかる力、および、導電弾性体22と導体線13aとの間にかかる力は、ほぼゼロである。この状態から、
図4(b)に示すように、基材11の下面に対して上方向に荷重が加えられ、基材21の上面に対して下方向に荷重が加えられると、導体線13aによって導電弾性体12、22が変形する。なお、基材11の下面または基材21の上面が静止物体に載置されて、他方の基材に対してのみ荷重が加えられた場合も、反作用により静止物体側から同様に荷重を受けることになる。
【0046】
図4(b)に示すように、荷重が加えられると、導体線13aは、導電弾性体12、22に包まれるように導電弾性体12、22に近付けられ、導体線13aと導電弾性体12、22との間の接触面積が増加する。同様に、導体線13bは、導電弾性体12、22に包まれるように導電弾性体12、22に近付けられ、導体線13bと導電弾性体12、22との間の接触面積が増加する。これにより、導電部材31と導電弾性体12との間の静電容量および導電部材31と導電弾性体22との間の静電容量が変化する。そして、導体線13a、13bの領域の静電容量が検出されることにより、この領域にかかる荷重が算出される。
【0047】
図5は、Z軸負方向に見た場合の荷重センサ1の内部を模式的に示す平面図である。
図5では、便宜上、糸14の図示が省略されている。
【0048】
荷重センサ1の計測領域Rには、X軸方向およびY軸方向に並ぶ9個のセンサ部が設定されている。具体的には、計測領域RをX軸方向に3分割しY軸方向に3分割した9個の領域が、9個のセンサ部に割り当てられる。各センサ部の境界は、当該センサ部と隣り合うセンサ部の境界と接している。9個のセンサ部は、導電弾性体12、22と一対の導体線13とが交わる9個の位置に対応しており、9個の位置に、荷重に応じて静電容量が変化する9個のセンサ部A11、A12、A13、A21、A22、A23、A31、A32、A33が形成されている。
【0049】
各センサ部は、導電弾性体12、22と一対の導体線13を含み、一対の導体線13は、静電容量の一方の極(たとえば陽極)を構成し、導電弾性体12、22は、静電容量の他方の極(たとえば陰極)を構成する。すなわち、一対の導体線13内の導電部材31は、荷重センサ1(静電容量型荷重センサ)の一方の電極を構成し、導電弾性体12、22は、荷重センサ1(静電容量型荷重センサ)の他方の電極を構成し、一対の導体線13内の誘電体32は、荷重センサ1(静電容量型荷重センサ)において静電容量を規定する誘電体に対応する。
【0050】
各センサ部に対してZ軸方向に荷重が加わると、荷重により一対の導体線13が導電弾性体12、22に包み込まれる。これにより、一対の導体線13と導電弾性体12、22との間の接触面積が変化し、当該一対の導体線13と当該導電弾性体12、22との間の静電容量が変化する。
【0051】
一対の導体線13のX軸負側の端部、ケーブル12aのY軸負側の端部、およびケーブル22aのY軸負側の端部は、荷重センサ1に対して設置される検出回路に接続される。
【0052】
図5に示すように、3組の導電弾性体12、22から引き出されたケーブル12a、22aをラインL11、L12、L13と称し、3組の一対の導体線13内の導電部材31をラインL21、L22、L23と称する。ラインL11に接続された導電弾性体12、22が、ラインL21、L22、L23と交わる位置が、それぞれ、センサ部A11、A12、A13であり、ラインL12に接続された導電弾性体12、22が、ラインL21、L22、L23と交わる位置が、それぞれ、センサ部A21、A22、A23であり、ラインL13に接続された導電弾性体12、22が、ラインL21、L22、L23と交わる位置が、それぞれ、センサ部A31、A32、A33である。
【0053】
センサ部A11に対して荷重が加えられると、センサ部A11において一対の導体線13と導電弾性体12、22との接触面積が増加する。したがって、ラインL11とラインL21との間の静電容量を検出することにより、センサ部A11において加えられた荷重を算出することができる。同様に、他のセンサ部においても、当該他のセンサ部において交わる2つのライン間の静電容量を検出することにより、当該他のセンサ部において加えられた荷重を算出することができる。
【0054】
ここで、上記のようにセンサ部を構成する電極として、撚り線からなる導体線13a、13bが用いられる場合、以下の比較例1のように導体線13a、13bにおいて撚り解けが生じていると、荷重と静電容量との関係が意図せず変化してしまう。
【0055】
図6(a)は、比較例1における、X軸負方向に見た場合の導体線13a、13bの周辺を模式的に示す断面図である。
【0056】
比較例1では、導体線13a、13bにおいて撚り解けが生じ、
図3(a)、(b)に示したような複数の素線30が結合する状態が解除されている。このような撚り解けは、たとえば、導体線13a、13bに多数回の荷重が付与された場合に起こり得る。このような撚り解けが生じると、
図6(a)に示すように、荷重の付与時に、複数の
素線30がほどけてY軸方向に広がってしまう。この場合、導体線13a、13bの撚り状態が適正な場合と比較して、同じ荷重が付与されているにもかかわらず、導体線13aと導電弾性体12、22との接触面積が増加し、静電容量が大きくなってしまう。
【0057】
図6(b)は、比較例1における静電容量の変化を模式的に示す図である。
【0058】
図6(b)の左側のグラフは、一対の導体線13の導体線13a、13bにおいて撚り解けが生じていない場合の、1つのセンサ部に対する荷重と、このセンサ部の静電容量との関係を示すグラフである。導体線13a、13bにおいて撚り解けが生じていない場合、
図6(b)の左側のグラフに示す例では、荷重の値が0において静電容量の値もほぼ0となっている。
【0059】
図6(b)の右側のグラフは、一対の導体線13の導体線13a、13bにおいて撚り解けが生じている場合の、1つのセンサ部に対する荷重と、このセンサ部の静電容量との関係を示すグラフである。
図6(b)の右側のグラフにおいて破線で示す曲線は、
図6(b)の左側のグラフの曲線と同様である。
【0060】
この場合、
図6(a)に示したように導体線13a、13bにおいて撚り解けが生じているために、導体線13a、13bと導電弾性体12、22との接触面積が、撚り解けが生じていない場合と比較して増加する。このため、
図6(b)の右側のグラフでは、
図6(b)の左側のグラフに比べて、静電容量が上方向にシフトしている。この場合、検出された静電容量に基づいて荷重を検出すると、付与された荷重を真値より大きく検出してしまうことになる。
【0061】
そこで、発明者らは、導体線13a、13bにおいて撚り解けが生じにくくなるための、導体線13a、13bの撚りピッチpを検証した。
【0062】
検証の条件は、以下の通りである。一対の導体線13内の素線30の外径d(
図3(b)参照)を、0.055mm、0.073mm、0.105mmの何れかに設定した。1つの導体線13a、13bに含まれる素線30の数nを、7本、11本、15本の何れかに設定した。導体線13a、13bの撚りピッチp(
図3(a)参照)を、3mm、5mm、10mm、15mm、20mmの何れかに設定した。外径dおよび数nと、撚りピッチpとの組み合わせにより、15種類の一対の導体線13を作成した。
【0063】
作成した一対の導体線13をそれぞれ荷重センサ1に設置し、前測定として、0.3MPaの荷重を付与したときの静電容量を測定した。そして、荷重センサ1に対して0.5MPaの荷重を1万回付与した。その後、後測定として、再び0.3MPaの荷重を付与したときの静電容量を計測した。
【0064】
図7(a)は、発明者らが行った撚りピッチpの検証結果を示す表である。
【0065】
「○」は、前測定と後測定において上昇率が10%未満であったことを示している。「×」は、前測定と後測定において静電容量の上昇率が10%以上であったことを示している。上昇率が10%以上であると、導体線13a、13bに撚り解けが生じていると判断できる。「-」は、最小撚りピッチ未満であるため検証不可能であったことを示している。
【0066】
本検証の結果、d=0.055、n=7の場合、撚りピッチpが5mm以上であると、静電容量の上昇率が10%以上となった。d=0.073、n=11の場合、撚りピッチpが10mm以上であると、静電容量の上昇率が10%以上となった。d=0.105、n=15の場合、撚りピッチpが20mmでは、静電容量の上昇率が10%以上となった。
【0067】
ここで、発明者らは、素線30の外径dと、素線30の数nと、12とを掛け合わせた12ndの値に注目した。外径dおよび数nの3つの場合において、それぞれ12ndを算出すると、
図7(a)の表に示すように、4.6、9.6、18.9となった。発明者らは、これら12ndの値を撚りピッチpと比較したところ、撚りピッチpが12ndの値以下である場合に、静電容量の上昇率が10%未満に抑えられていることを見いだした。
【0068】
すなわち、d=0.055、n=7の場合、12ndの値は4.6であるから、撚りピッチpが4.6以下の場合に、静電容量の上昇率が10%未満に抑えられると推定される。この推定は、上記検証結果に合致する。同様に、d=0.073、n=11の場合、12ndの値は9.6であるから、撚りピッチpが9.6以下の場合に、静電容量の上昇率が10%未満に抑えられると推定される。この推定も、上記検証結果に合致する。同様に、d=0.105、n=15の場合、12ndの値は18.9であるから、撚りピッチpが18.9以下の場合に、静電容量の上昇率が10%未満に抑えられると推定される。この推定も、上記検証結果に合致する。
【0069】
したがって、複数の素線30の撚りピッチpが、以下の条件式(1)を満たす場合に、静電容量の上昇率を10%未満に抑え得ることが分かった。実施形態1の導体線13a、13bは、以下の条件式(1)を満たすように構成される。
【0070】
p≦12nd …(1)
p:複数の素線の撚りピッチ
n:導体線に含まれる素線の数
d:素線の外径
【0071】
図7(b)は、実施形態1における静電容量の変化を模式的に示す図である。
【0072】
図7(b)の左側のグラフは、
図6(b)の左側のグラフと同様である。
図7(b)の右側のグラフは、実施形態1の荷重センサ1に対して多数回(たとえば、1万回)の荷重を付与した後の、荷重と静電容量との関係を示すグラフである。
図7(b)の右側のグラフにおいて破線で示す曲線は、
図7(b)の左側のグラフの曲線と同様である。
【0073】
実施形態1の荷重センサ1によれば、上記式(1)を満たすように撚りピッチpが設定されるため、多数回の荷重を付与した後も、導体線13a、13bにおいて撚り解けがほぼ生じない。したがって、導体線13a、13bと導電弾性体12、22との接触面積が、撚り解けが生じていない場合(
図7(b)の左側のグラフ)と比較して、ほぼ増加することがない。このため、
図7(b)の右側のグラフでは、撚り解けが生じていない場合の曲線(破線で示す曲線)と、実施形態1において多数回の荷重を付与した後の曲線(実線で示す曲線)との間のギャップが顕著に抑制される。
【0074】
<実施形態1の効果>
以上、実施形態1によれば、以下の効果が奏される。
【0075】
一対の導体線13の導体線13a、13bは、基材21と導電弾性体12との間に配置され、複数の素線30が撚られることにより構成される。導体線13a、13bは、線状の導電部材31の表面が誘電体32で被覆されることにより構成される。そして、複数の素線30の撚りピッチpは、上記式(1)を満たすように構成される。これにより、素線30の撚り解けが抑制されるため、
図7(b)の右側のグラフに示したように、導電弾性体12、22と導電部材31との間の静電容量の特性変化が抑制される。よって、複数の素線30が撚られることにより構成された導体線13a、13b(撚り線)を用いながら適正に荷重を検出することができる。
【0076】
複数の導電弾性体12、22は、それぞれ、導体線13a、13bが延びる方向(X軸方向)に垂直なY軸方向に長い帯状の形状を有し、一対の導体線13は、Y軸方向に複数組配置されている。これにより、荷重を検出するための領域(センサ部)をマトリクス状に配置することができる。
【0077】
基材11の対向面11aに導電弾性体12が形成され、基材21の対向面21aに導電弾性体12に対向して導電弾性体22が配置されている。また、一対の導体線13(導体線13a、13b)は、導電弾性体12と導電弾性体22との間に配置されている。これにより、導電弾性体12、22と一対の導体線13(導体線13a、13b)との間の静電容量を大きく設定できるため、荷重センサ1の感度を高めることができる。
【0078】
一対の導体線13(導体線13a、13b)は、基材11、21に平行な平面内(X-Y平面内)において波形状に配置されている。これにより、基材11、21に平行な平面内において基材11、21が伸縮した場合でも、一対の導体線13(導体線13a、13b)の曲げ状態が変化することにより、一対の導体線13(導体線13a、13b)の破損を回避できる。また、一対の導体線13(導体線13a、13b)が直線的に配置される場合に比べて、単位面積当たりの導体線の密度が高くなるため、荷重センサ1による検出感度を高めることができる。
【0079】
<実施形態2>
発明者らは、上記実施形態1の荷重センサ1において、さらに感度を高めるとともにダイナミックレンジを広くすることを検討した。その結果、発明者らは、一対の導体線13の波形状の傾斜角が大きくなるよう、導体線13aと導体線13bとの間隔をセンサ部の幅に対して狭くした場合に、荷重センサ1において感度が高められダイナミックレンジが広くなることを見いだした。実施形態2では、以下に示すように、感度とダイナミックレンジが良好になるときの導体線13a、13bの幅を検討し、検討結果に基づいて導体線13a、13bの幅を設定した荷重センサ1が用いられる。なお、実施形態2のその他の構成は、実施形態1と同様である。
【0080】
図8は、実施形態2において導体線13a、13bの間隔およびセンサ部の幅を説明するための図である。
図8は、Z軸負方向に見た場合の荷重センサ1の内部を模式的に示す平面図である。
図8では、
図5と同様、9つのセンサ部Aがマトリクス状に並んでいる。
【0081】
図8において、センサ部Aの並ぶ方向(X軸方向およびY軸方向)における1つのセンサ部Aの幅はd1であり、導電弾性体12、22の延びる方向(Y軸方向)における一対の導体線13の間隔(導体線13aと導体線13bとの間隔)はd2である。一対の導体線13(導体線13a、13b)の波形状が、一対の導体線13の延びる方向(X軸方向)となす傾斜角はθである。傾斜角θは、波形状とX軸方向との角度が最も大きくなるときの角度である。
【0082】
発明者らは、
図8に示すような荷重センサ1において、センサ部Aの幅d1を12mmに固定し、導体線13a、13bの間隔d2を3mm、4mm、5mm、6mm、7mmの何れかに設定して、間隔d2の5種類の値に応じて5種類の荷重センサ1を作成した。このとき、一対の導体線13がX軸方向に並ぶセンサ部Aの幅d1の範囲に収まり、かつ、一対の導体線13の波形状がY軸方向に最も振幅するよう、各荷重センサ1を作成した。そして、荷重を変化させながら静電容量の値を計測した。
【0083】
図9は、発明者らが行った導体線13a、13bの間隔d2の検証結果を示すグラフである。
【0084】
図9には、導電弾性体12と導電弾性体22とが接触を開始することにより静電容量の変化が飽和するまでの範囲の荷重と静電容量との関係が示されている。すなわち、静電容量の変化に直線性が確保される範囲において、円滑かつ適正に荷重を測定できる。この範囲が、荷重計測のダイナミックレンジとなる。
図9には、静電容量の変化に直線性が確保される範囲が示されている。したがって、この範囲の最大荷重が、適正に荷重を検出できる最大の荷重(ダイナミックレンジの最大荷重)となる。
【0085】
図9に示すように、間隔d2が小さくなるにつれて、荷重に応じて増加する静電容量の値が大きくなり、荷重センサ1の感度が上昇することが分かった。また、間隔d2が小さくなるにつれて、適正に荷重を検出できる最大の荷重が大きくなり、荷重センサ1のダイナミックレンジが上昇することが分かった。また、間隔d2が3mm~5mmの場合、間隔d2が6mm~7mmの場合に比べて、荷重に応じて増加する静電容量が比較的大きく、かつ、検出可能な最大荷重が比較的大きくなった。
【0086】
以上の結果から、発明者らは、センサ部Aの幅d1が12mmの場合、導体線13a、13bの間隔d2は、3mm~5mmであることが好ましいと判断した。そして、この結果に基づいて、発明者らは、幅d1および間隔d2の条件式として、以下の式(2)を導き出した。
【0087】
d2≦d1/2 …(2)
【0088】
すなわち、上記式(2)が満たされるよう幅d1および間隔d2が設定されると、荷重センサ1の感度が高められ、荷重センサ1のダイナミックレンジが広げられる。
【0089】
図10(a)、(b)は、それぞれ、Z軸負方向に見た場合の実施形態2および比較例2の荷重センサ1の内部を模式的に示す平面図である。
図10(a)、(b)では、便宜上、一部のセンサ部Aのみが図示されている。
【0090】
図10(a)に示すように、実施形態2では、上記式(2)を満たすように(d2≦d1/2となるように)センサ部Aの幅d1および導体線13a、13bの間隔d2が設定される。他方、
図10(b)に示すように、比較例2では、上記式(2)を満たさないように(d2
>d1/2となるように)幅d1および間隔d2が設定されている。
図10(a)の実施形態2に示すように、幅d1および間隔d2が設定されると、
図10(b)の比較例2と比較して、傾斜角θを大きくすることができる。これにより、センサ部Aの静電容量の変化を大きくすることができる。また、導体線13a、13bは大きな接触面積で荷重を受けるため、導体線13a、13bが導電弾性体12、22にめり込み、導電弾性体12と導電弾性体22とが接触し導電弾性体12と導電弾性体22との間でも荷重が支え始められるときの荷重(ダイナミックレンジの最大荷重)を大きくすることができる。
【0091】
<実施形態2の効果>
以上、実施形態2によれば、以下の効果が奏される。
【0092】
上記のように導電弾性体12、22と一対の導体線13とを交差させてセンサ部Aを構成する場合に、荷重センサ1の感度を高め、荷重センサ1のダイナミックレンジを広くすることが望まれていた。
【0093】
そこで、実施形態2の荷重センサ1は、以下のように構成された。
【0094】
計測領域に少なくとも第1の方向(X軸方向)に並ぶ複数のセンサ部Aが設定された荷重センサ1において、
互いに向かい合うように配置された第1基材11および第2基材21と、
前記第1基材11の対向面の前記複数のセンサ部Aにそれぞれ対応する位置に配置された複数の導電弾性体12と、
前記第2基材21と前記導電弾性体12との間に前記複数のセンサ部Aに沿って延びるように配置され、周囲に誘電体32を有する一対の導体線13と、を備え、
前記一対の導体線13は、前記第1基材11および前記第2基材21に平行な平面内において前記第1の方向(X軸方向)に垂直な第2の方向(Y軸方向)に振幅する波形状に配置され、前記複数のセンサ部Aの位置において前記複数の導電弾性体12と交差し、
前記一対の導体線13を構成する2つの導体線13a、13bの間の間隔は、前記センサ部Aの前記第2の方向の幅の1/2以下である。
【0095】
図8に示すように、荷重センサ1において、計測領域RにおいてX軸方向(第1の方向)に複数のセンサ部Aが設定されている。導電弾性体12は、基材11の対向面11a(
図1(a)、(b)参照)において、X軸方向に並ぶ複数のセンサ部Aにそれぞれ対応する位置に配置されている。一対の導体線13は、基材21と導電弾性体12との間に、X軸方向に並ぶ複数のセンサ部Aに沿って延びるように配置されている。一対の導体線13は、基材11、21に平行な平面内において、X軸方向(第1の方向)に垂直なY軸方向(第2の方向)に振幅する波形状に配置され、X軸方向に並ぶ複数のセンサ部Aの位置において複数の導電弾性体12と交差する。そして、2つの導体線13a、13bの間の間隔d2が、センサ部Aの幅d1の1/2以下に設定される。
【0096】
このように、一対の導体線13を構成する2つの導体線13a、13bの間の間隔d2を設定すると、センサ部Aの幅d1の範囲内に一対の導体線13を収めながら、一対の導体線13の波形状の傾斜角θを大きくすることができる。波形状の傾斜角θが大きくなると、
図10(a)に示したように、センサ部Aの位置において、一対の導体線13が導電弾性体12、22に対して斜め方向に交差することになり、一対の導体線13と導電弾性体12、22との接触長が伸びることになる。
【0097】
これにより、荷重が付与された場合の静電容量の変化を大きくできるため、荷重センサ1の感度を高めることができる。また、導体線13a、13bと導電弾性体12、22との接触面積が大きくなるため、荷重により、導体線13a、13bと接触する導電弾性体12、22にかかる圧力が抑制される。すなわち、導体線13a、13bが、
図4(b)に示したように導電弾性体12、22に埋まりにくくなるので、一方の導電弾性体が他方の導電弾性体に接触して特性が飽和するまでの荷重の範囲が広がる。これにより、検出可能な荷重のダイナミックレンジを広くすることができる。
【0098】
複数の導電弾性体12、22は、それぞれ、Y軸方向(第2の方向)に長い帯状の形状を有し、一対の導体線13は、Y軸方向に複数組配置されている。これにより、荷重を検出するための領域(センサ部A)をマトリクス状に配置することができる。
【0099】
また、荷重センサ1は、前記第2基材21の対向面に前記導電弾性体12に対向して配置された他の導電弾性体22を備え、前記一対の導体線13は、前記導電弾性体12と前記他の導電弾性体22との間に配置される。
【0100】
すなわち、導電弾性体12は、基材11の対向面11aに配置され、他の導電弾性体22は、導電弾性体12に対向するよう、基材21の対向面21aに配置されている。そして、一対の導体線13は、導電弾性体12と他の導電弾性体22との間に配置されている。これにより、導電弾性体12、22の何れか一方のみが配置される場合と比較して、導電弾性体12、22と一対の導体線13との間の静電容量を大きく設定でき、荷重センサ1の感度を高めることができる。
【0101】
導体線13a、13bは、
図3(a)を参照して説明したように、複数の素線30が撚られることにより構成され、素線30は、線状の導電部材31の表面が誘電体32で被覆されることにより構成される。このように、導体線13a、13bが複数の素線30が撚られることにより構成された撚り線であると、導体線13a、13bの屈曲耐性を高めることができる。これにより、
図10(a)に示したように、一対の導体線13が波形状に配置されたとしても、一対の導体線13が破損することを防止できる。
【0102】
<変更例>
荷重センサ1の構成は、上記実施形態に示した構成以外に、種々の変更が可能である。
【0103】
たとえば、上記実施形態1、2において、導体線13aまたは導体線13bに含まれる素線30の数nとして、
図7(a)の表に示したように、7、11、15本が挙げられたが、素線30の数nは、これに限らない。
【0104】
また、上記実施形態1において、荷重センサ1は、3組の一対の導体線13を備えたが、少なくとも1組の一対の導体線13を備えればよい。たとえば、荷重センサ1が備える一対の導体線13は、1組でもよい。
【0105】
また、上記実施形態1、2において、荷重センサ1は、上下に対向する3組の導電弾性体12、22を備えたが、少なくとも1組の導電弾性体12、22の組を備えればよい。たとえば、荷重センサ1に備える導電弾性体12、22の組は、1組でもよい。
【0106】
また、上記実施形態1、2において、基材21側の導電弾性体22は省略されてもよい。この場合、一対の導体線13は、基材11側の導電弾性体12と基材21の対向面21aとによって挟まれ、荷重に応じて一対の導体線13が導電弾性体12にめり込むことにより、各センサ部における静電容量が変化する。
【0107】
また、上記実施形態1において、一対の導体線13は、Y軸方向に並ぶ導体線13a、13bがX軸方向の端部で繋がった形状とされたが、一対の導体線13に代えて、1本の導体線が配置されてもよく、3本以上の導体線が配置されてもよい。また、上記実施形態1において、一対の導体線13の形状は、波形状でなくてもよく、直線形状であってもよい。一対の導体線13に代えて1本の導体線が配置される場合も、この導体線の形状は直線形状であってもよい。
【0108】
また、上記実施形態2において、一対の導体線13の導体線13a、13bは、撚り線により構成されなくてもよく、1本の素線30によって構成されてもよい。
【0109】
また、上記実施形態1、2において、導電弾性体12、22は、それぞれ、対向面11a、21aに対して、所定の印刷工法により形成された。しかしながら、これに限らず、導電弾性体12、22は、それぞれ、対向面11a、21aに対して、接着剤等により設置されてもよい。
【0110】
また、上記実施形態1、2では、導電部材31と誘電体32とからなる素線30が撚られることにより、導体線13a、13bが構成されたが、これに限らず、導電部材31が撚られた撚り線の表面が、誘電体により被覆されることにより、導体線13a、13bが構成されてもよい。
【0111】
また、上記実施形態1、2では、荷重センサ1の形状は矩形であったが、これに限らず、他の形状であってもよい。たとえば、荷重センサ1の形状は、円、楕円、扇形であってもよく、あるいは、扇形の中心が円形に切り取られた形状であってもよい。荷重センサ1の形状は、自由に設定され得る。
【0112】
以下、
図11~
図13(b)を参照して、荷重センサ1が扇形の中心が円形に切り取られた形状である場合の荷重センサ1の製造手順について説明する。
【0113】
図11は、荷重センサ1の製造方法の手順を示すフローチャートである。
図12(a)~
図13(b)は、荷重センサ1の製造過程を示す模式図である。
図12(a)~
図13(b)に示す基材11、21、導電弾性体12、22、および一対の導体線13は、上記実施形態と同様である。
【0114】
以下の製造工程では、
図12(a)に示すように、複数の導電弾性体12が並んで配置されたマザー基材10が、予め準備される。このマザー基材10から、荷重センサ1の形状に適合する形状の領域が切り出され、切り出された領域が、荷重センサ1の基材として用いられる。上側および下側の基材11、21が荷重センサ1に用いられる場合、両基材11、21は、上下に重ねられたときの平面視の形状が荷重センサ1の形状となるように、それぞれ、マザー基材10から切り出される。さらに、
図13(b)に示すように、切り出された基材11、21の形状に適合するように、複数の一対の導体線13が形成される。そして、形成された複数の一対の導体線13が上下の基材11、21の間に配置されて、荷重センサ1が構成される。
【0115】
より詳細には、
図11のステップS11において、下面側の基材11および導電弾性体12が、計測領域R(荷重センサ1の最終形状の領域)に適合するように、マザー基材10から切り出され、上面側の基材21および導電弾性体22が、計測領域Rに適合するように、マザー基材10から切り出される。
【0116】
具体的には、
図12(a)に示すように、マザー基材10は、正方形形状を有し、マザー基材10のZ軸正側の面には、Y軸方向に延びた複数の導電弾性体12がX軸方向に並んで形成されている。
図12(a)に示すマザー基材10から、計測領域Rに対応する領域が切り出される。これにより、
図12(b)に示すように、計測領域Rの形状に対応する基材11および導電弾性体12が形成される。便宜上、
図12(b)では、導電弾性体12が、平面視において長方形に示されているが、実際は、各導電弾性体12のY軸正負側の端部は、基材11の境界までY軸方向に延びている。
【0117】
なお、上記工程では、予め、マザー基材10に複数の導電弾性体12が配置されたが、マザー基材10に導電弾性体12が配置されていなくてもよい。この場合、マザー基材10から、計測領域Rに対応する領域が切り出されて基材11が形成された後に、
図12(b)のように、長方形の複数の導電弾性体12が、基材11の上面に配置されてもよい。
【0118】
こうして、
図12(b)に示すように、基材11および導電弾性体12が、計測領域Rに対応するように形成される。同様に、基材21および導電弾性体22も、計測領域Rに対応するように形成される。
【0119】
次に、ステップS12において、
図13(a)に示すように、一対の導体線13が、計測領域Rに合わせて形成される。具体的には、X軸方向に延びた複数の一対の導体線13が、X軸正側の折り返し部分が計測領域R内に位置するように配置される。
図13(a)では、Y軸負側の3組の一対の導体線13の折り返し部分が、計測領域Rの内側の円孔に適合するように、その他の一対の導体線13よりもX軸負側に位置するよう設定されている。
【0120】
次に、ステップS13において、
図13(b)に示すように、導電弾性体12が配置された基材11と、導電弾性体22が配置された基材21と、一対の導体線13とが組み立てられる。
図13(b)は、Z軸負方向に見た場合の荷重センサ1の内部を模式的に示す平面図である。2つの基材11、21が互いに重ね合わされることにより、2つの導電弾性体12、22が互いに対向した状態で重ね合わされ、2つの導電弾性体12、22の間に一対の導体線13が挟まれる。こうして、荷重センサ1の組み立てが完了する。
【0121】
上記の製造工程では、計測領域R(荷重センサ1の最終形状の領域)に適合する領域がマザー基材10から切り出されて、基材11、21および導電弾性体12、22が一度に形成されるため、荷重センサ1の組み立て工数を削減でき、荷重センサ1を簡易に製造できる。この効果について、
図14に示す比較例3を参照して説明する。
【0122】
図14は、比較例3に係る、荷重センサ100の製造方法を模式的に示す平面図である。
【0123】
比較例3では、荷重センサ100の外形を形成する基材130に、矩形のセンサユニット110、120が配置される。センサユニット110は、基材111と、Y軸方向に延びた3つの導電弾性体112と、X軸方向に延びた2組の一対の導体線113と、を備える。センサユニット120は、基材121と、導電弾性体122と、X軸方向に延びた一対の導体線123と、を備える。
【0124】
基材130は、
図12(b)の基材11と同様、扇形の中心が円形に切り取られた形状である。基材130に、3つのセンサユニット110および1つのセンサユニット120が設置される。基材130の上面に、基材111、121および導電弾性体112、122に対向する基材および導電弾性体を有する他方の基材が重ねられる。こうして、比較例3の荷重センサ100が完成する。
【0125】
比較例3の場合、基材130に対して効率的にレイアウトされるように、複数のセンサユニット110、120を個別に製造した上で、これらセンサユニット110、120を基材130に配置する必要があるため、組み立て工数が多くなる。また、
図14の荷重センサ100では、矩形のセンサユニット110、120を基材130に配置する構成であるため、基材130の領域(計測領域)のうち、センサユニット110、120が配置されない領域(不感帯)が大きくなってしまう。
【0126】
これに対し、
図12(a)~
図13(b)に示した荷重センサ1によれば、荷重センサ1の製造時に、計測領域R(荷重センサ1の最終形状の領域)に適合する領域がマザー基材10から切り出されて、基材11、21および導電弾性体12、22が一度に形成されるため、比較例3に比べて、組み立て工数を顕著に削減できる。また、比較例3のように、センサユニット110、120を所定のレイアウトで基材130に配置する必要がないため、荷重センサ1の製造工程を容易に自動化することができる。
【0127】
なお、一対の導体線13の長さおよび折り返し位置は、以下に示すジグ200を用いることにより、基材11、21の形状に応じて自由に設定できる。
【0128】
図15は、一対の導体線13を形成するためのジグ200の構成を示す平面図である。
図15には、便宜上、
図13(a)、(b)と同様、一対の導体線13の延びる方向をX軸方向として、X、Y、Z軸が付されている。
【0129】
ジグ200には、Y軸方向に蛇行しながらX軸方向に延びる複数の一対の溝210が、Y軸方向に並んで形成されている。
図15では、16組の一対の溝210が、Y軸方向に並んでいる。一対の溝210は、同じ蛇行の周期でX軸方向に延びる2つの溝211からなる。ペアとなる2つの溝211は、X軸正側の端部において、折り返し溝220によって繋がっている。また、ペアとなる2つの溝211は、X軸負側の端部からX軸正側の端部に至るまでの間、所定の間隔で複数の折り返し溝220によって繋がっている。溝211および折り返し溝220は、ジグ200の上面201(Z軸正側の面)よりも一段低い凹部である。また、ジグ200には、一対の溝210のX軸負側に、2つの溝211にそれぞれ対応して、ピン231、232が形成されている。ピン231、232は、一対の導体線13を形成する際に用いられる。
【0130】
図16(a)~(d)は、ジグ200を用いて一対の導体線13を形成する手順を説明するための平面図である。
【0131】
ジグ200を用いて一対の導体線13を形成する際には、リールから引き出された導体線13cが、ノズルに通される。そして、
図16(a)に示すように、ノズルの先端から引き出された導体線13cの端部が、溝211の外側に配置されたピン231に引っ掛けられて固定される。この状態で、
図16(b)に示すように、ノズルの先端が、溝211の位置に押し当てられながら、溝211のX軸負側の端部から溝211に沿ってX軸正方向に移動される。これにより、ノズルから導体線13cが導出されつつ、溝211の内部に導体線13cが配置される。
【0132】
こうして、ノズルが、導体線13cの折り返し位置となる折り返し溝220まで移動されると、
図16(c)に示すように、ノズルの先端が、この折り返し溝220を通って、隣の溝211に移動される。これにより、一対の導体線13の折り返し部分が形成される。折り返す位置は、荷重センサ1の形状や計測領域Rに応じて決められる。
【0133】
続いて、
図16(d)に示すように、ノズルの先端が、隣の溝211に沿ってX軸負方向に移動されて、隣の溝211に沿って導体線13cが配置される。ノズルの移動は、隣の溝211のX軸負側の端部から、さらにX軸負方向の所定の距離の位置まで行われ、ノズルの先端付近の導体線13cが、溝211の外側に配置されたピン232に引っ掛けられて固定される。そして、折り返された導体線13cのX軸負側の端部がX軸方向の同じ位置で切断され、一組の一対の導体線13が完成する。
【0134】
このような作業を、それぞれの一対の溝210に対して順次繰り返すことにより、1つの荷重センサ1における複数の一対の導体線13の形成が完了する。このとき、導体線13cの折り返し位置は、各導体線13cの長さに対応する位置に設定される。こうして、
図13(a)、(b)に示すような、長さおよび折り返し位置の異なる複数の一対の導体線13が形成される。
【0135】
このように、ジグ200を用いることにより、ジグ200の一対の溝210および折り返し溝220に沿ってノズルの先端を移動させることで、種々の長さの一対の導体線13を簡易に形成できる。したがって、ノズルの移動機構を、一対の導体線13の長さに応じた移動パターンで制御されることにより、種々の長さの一対の導体線13を自動で形成できる。
【0136】
なお、上記製造工程で使用され
る導体線13
cは、上記実施形態1のような撚り線構造の導体線であってもよく、あるいは、単線からなる導体線であってもよい。また、ジグ200に配置される一対の溝210の数は、
図15に示したものに限定されず、他の数であってもよい。さらに、基材11、21の形状は、
図12(a)、(b)に示した形状に限られるものではなく、荷重センサ1が設置される機器の形状に応じて、自由に変更可能である。
【0137】
図17は、荷重センサ1が便座に配置される場合の荷重センサ1の内部構成を示す模式図である。なお、
図17には、便座の開口H10に沿うように矩形の荷重センサ1の内側部分が切り欠かれた状態が示されており、荷重センサ1の外形は、便宜上、矩形形状のまま残されている。しかし、実際には、便座の座面の外形に沿って、荷重センサ1の外側部分が略楕円形状(切欠き311、321による形状を略相似に拡大した形状)に切り欠かれる。
【0138】
図17に示す荷重センサ1は、2つのセンサユニット310と、2つのセンサユニット320と、を備える。2つのセンサユニット310は、Y軸負側においてX軸方向に並んでおり、2つのセンサユニット320は、Y軸正側においてX軸方向に並んでいる。2つのセンサユニット310は、同じ形状および構造を有し、互いに表裏逆向きに配置されている。また、2つのセンサユニット320は、同じ形状および構造を有し、互いに表裏逆向きに配置されている。
【0139】
4つ並んだセンサユニット310、320の中心は、便座の開口H10に位置付けられる。センサユニット310の中心側には、便座の開口H10に対応する位置に切欠き311が形成されており、センサユニット320の中心側には、便座の開口H10に対応する位置に切欠き321が形成されている。
【0140】
センサユニット310の基材11、21には、それぞれ、Y軸方向に延びる複数の導電弾性体12、22が配置されており、切欠き311の形成により、中心側の基材11、21および導電弾性体12、22がカットされている。センサユニット310の複数の一対の導体線13は、切欠き311の外側に折り返し部分が位置付けられるように配置される。
【0141】
同様に、センサユニット320の基材11、21には、それぞれ、Y軸方向に延びる複数の導電弾性体12、22が配置されており、切欠き321の形成により、中心側の基材11、21および導電弾性体12、22がカットされている。センサユニット320の複数の一対の導体線13は、切欠き321の外側に折り返し部分が位置付けられるように配置される。
【0142】
図17の構成によれば、導電弾性体12、22が配置された正方形形状の基材11、21に対して切欠き311、321を形成し、切欠き311、321の形状に応じて、上記ジグ200を用いて一対の導体線13が形成される。これにより、基材11、21、導電弾性体12、22、および一対の導体線13を組み立てるだけで、荷重センサ1(センサユニット310、320)を構成できる。よって、荷重センサ1の組み立て工数を削減でき、荷重センサ1の組み立てを容易に自動化できる。また、便座の開口H10の形状に応じて切欠き311、321を形成し、一対の導体線13ごとに折り返し位置を調整できるため、センサ部が配置されていない領域(不感帯)を小さくできる。よって、便座に座る人の荷重の分布を精緻に測定できる。
【0143】
上記のように、本変更例に係る荷重センサの製造方法は、基材の表面に導電弾性体が形成されたマザー基材から、荷重センサの形状に対応する領域を切り出して、荷重センサに用いる基材および導電弾性体を形成する工程と、切り出した基材の導電弾性体上に、誘電体で被覆された導体線を配置する工程と、を含んでいる。この製造方法によれば、上記のように、自由な形状の荷重センサに対し、組み立て工数を削減でき、荷重センサを簡易に製造できる。また、この製造方法によれば、導電弾性体および導体線が配置されない領域(不感帯)を抑制でき、荷重センサの検知精度を高めることができる。
【0144】
また、本変更例に係る荷重センサの製造方法は、上記のように、上側の基材および導電弾性体と、下側の基材および導電弾性体とを、それぞれ、マザー基材から切り出し、切り出した各導電弾性体との間に、誘電体で被覆された導体線を配置するように調整されてもよい。これにより、荷重センサの検出感度を高めることができる。
【0145】
<参考例1>
上記実施形態1の構成では、
図2(b)に示すように、導電弾性体12、22が互いに向き合うように配置される。しかしながら、このような構成では、導電弾性体12を基材11に形成する際の位置や、導電弾性体12を導電弾性体22に対して配置する際の位置に、ずれを生じる場合がある。このため、導電弾性体12に位置ずれが生じても、隣り合う導電弾性体12が互いに導通しないよう、隣り合う導電弾性体12が間隔を開けて配置される。
【0146】
しかしながら、導電弾性体12の間隔が開けられると、感圧素子が荷重を検出できない領域、すなわち不感帯が大きくなるという問題が生じる。
【0147】
そこで、参考例1では、意図しない導通を回避しつつ不感帯を抑制することが可能なように、荷重センサ1が構成される。
【0148】
図18(a)~
図21を参照して、参考例1に係る、荷重センサ1の概要構成について説明する。
【0149】
図18(a)は、基材11と、基材11の対向面11a(Z軸正側の面)に設置された3つの導電弾性体12とを模式的に示す斜視図である。
【0150】
基材11は、弾性を有する絶縁性の部材であり、X-Y平面に平行な平板形状を有する。基材11は、非導電性を有する樹脂材料または非導電性を有するゴム材料から構成される。基材11に用いられる樹脂材料は、たとえば、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(たとえば、ポリジメチルポリシロキサン(PDMS)など)、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂、およびウレタン系樹脂等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料である。基材11に用いられるゴム材料は、たとえば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、および天然ゴム等からなる群から選択される少なくとも1種のゴム材料である。
【0151】
導電弾性体12は、基材11の対向面11a(Z軸正側の面)に形成される。
図18(a)では、基材11の対向面11aに、3つの導電弾性体12が形成されている。導電弾性体12は、弾性を有する導電性の部材である。各導電弾性体12は、Y軸方向に長い帯状の形状を有しており、X軸方向に所定の間隔をあけて並んで形成されている。各導電弾性体12のY軸負側の端部に、導電弾性体12と電気的に接続されたケーブル12aが設置される。
【0152】
導電弾性体12は、基材11の対向面11aに対して、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、およびグラビアオフセット印刷などの印刷工法により形成される。これらの印刷工法によれば、基材11の対向面11aに0.001mm~0.5mm程度の厚みで導電弾性体12を形成することが可能となる。
【0153】
導電弾性体12は、樹脂材料とその中に分散した導電性フィラー、またはゴム材料とその中に分散した導電性フィラーから構成される。
【0154】
導電弾性体12に用いられる樹脂材料は、上述した基材11に用いられる樹脂材料と同様、たとえば、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂(ポリジメチルポリシロキサン(たとえば、PDMS)など)、アクリル系樹脂、ロタキサン系樹脂、およびウレタン系樹脂等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料である。導電弾性体12に用いられるゴム材料は、上述した基材11に用いられるゴム材料と同様、たとえば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレン、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、および天然ゴム等からなる群から選択される少なくとも1種のゴム材料である。
【0155】
導電弾性体12に用いられる導電性フィラーは、たとえば、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、C(カーボン)、ZnO(酸化亜鉛)、In2O3(酸化インジウム(III))、およびSnO2(酸化スズ(IV))等の金属材料や、PEDOT:PSS(すなわち、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)からなる複合物)等の導電性高分子材料や、金属コート有機物繊維、金属線(繊維状態)等の導電性繊維からなる群から選択される少なくとも1種の材料である。
【0156】
図18(b)は、
図18(a)の構造体に載置された、3つの被覆付き銅線15および12個の糸14を模式的に示す斜視図である。
【0157】
1つの被覆付き銅線15は、X軸正側の端部において折れ曲がっている。すなわち、被覆付き銅線15は、一対の被覆付き銅線がX軸正側の端部で繋がった形状を有している。被覆付き銅線15は、
図18(a)に示した3つの導電弾性体12の上面に重ねて配置される。ここでは、3つの被覆付き銅線15が3つの導電弾性体12の上面に重ねて配置されている。
【0158】
各被覆付き銅線15は、導電性の線材と、当該線材の表面を被覆する誘電体とからなる。3つの被覆付き銅線15は、導電弾性体12に交差するように配置され、導電弾性体12の長手方向(Y軸方向)に沿って、所定の間隔をあけて並んで配置されている。各被覆付き銅線15は、3つの導電弾性体12に跨がるよう、X軸方向に延びて配置される。被覆付き銅線15の構成については、追って
図20(a)、(b)を参照して説明する。
【0159】
図18(b)のように3つの被覆付き銅線15が配置された後、各被覆付き銅線15は、被覆付き銅線15の長手方向(X軸方向)に移動可能に、糸14で基材11に設置される。
図18(b)に示す例では、12個の糸14が、導電弾性体12と被覆付き銅線15とが重なる位置以外の位置において、被覆付き銅線15を基材11に接続している。糸14は、化学繊維、天然繊維、またはそれらの混合繊維などにより構成される。
【0160】
図19(a)は、基材11の上側に重ねて配置される基材21と、基材21の対向面21a(Z軸負側の面)に設置された3つの導電弾性体22とを模式的に示す斜視図である。
【0161】
基材21は、基材11と同じ大きさおよび形状を有し、基材11と同じ材料により構成される。導電弾性体22は、基材21の対向面21a(Z軸負側の面)において、導電弾性体12に対向する位置に形成され、導電弾性体12と同じ材料により構成される。導電弾性体22は、導電弾性体12と同様、Y軸方向に長い帯状の形状を有しており、X軸方向に所定の間隔をあけて並んで形成されている。導電弾性体22は、導電弾性体12と同様、所定の印刷工法により基材21のZ軸負側の面に形成される。各導電弾性体22のY軸負側の端部に、導電弾性体22と電気的に接続されたケーブル22aが設置される。
【0162】
導電弾性体22のY軸方向の長さ(長手方向の幅)は、導電弾性体12のY軸方向の長さ(長手方向の幅)と同じである。一方、導電弾性体22のX軸方向の長さ(短手方向の幅)は、導電弾性体12のX軸方向の
長さ(短手方向の幅)よりも小さい。導電弾性体22の短手方向の幅と導電弾性体12の短手方向の幅とが異なることにより生じる効果については、追って
図23(a)~
図25(b)を参照して説明する。
【0163】
図19(b)は、
図18(b)の構造体に
図19(a)の構造体が設置された状態を模式的に示す斜視図である。
【0164】
図18(b)に示した構造体の上方(Z軸正側)から、
図19(a)に示した構造体が配置される。このとき、基材11と基材21は、対向面11aと対向面21aとが互いに向かい合うように配置され、導電弾性体12のX軸方向の中心位置と導電弾性体22のX軸方向の中心位置とが重なり、導電弾性体12のY軸方向の端部と導電弾性体22のY軸方向の端部とが重なるように配置される。そして、基材21の外周四辺が基材11の外周四辺に対して、シリコーンゴム系接着剤で接続されることにより、基材11と基材21とが固定される。これにより、3つの被覆付き銅線15は、3つの導電弾性体12と3つの導電弾性体22とによって挟まれる。
【0165】
図19(b)には、基材11、21に挟まれて配置された荷重検出部1aが、便宜上、破線で示されている。荷重検出部1aは、複数の導電弾性体12と、複数の導電弾性体22と、複数の被覆付き銅線15と、を備える。こうして、
図19(b)に示すように、荷重センサ1が完成する。
【0166】
図20(a)、(b)は、X軸負方向に見た場合の被覆付き銅線15の周辺を模式的に示す断面図である。
図20(a)は、荷重が加えられていない状態を示し、
図20(b)は、荷重が加えられている状態を示している。
【0167】
図20(a)に示すように、被覆付き銅線15は、銅線15aと、銅線15aを被覆する誘電体15bと、により構成される。銅線15aは、銅により構成されており、銅線15aの直径は、たとえば、約60μmである。誘電体15bは、導電弾性体12と銅線15aとの間、および、導電弾性体22と銅線15aとの間に配置されている。
【0168】
誘電体15bは、電気絶縁性を有し、たとえば、樹脂材料、セラミック材料、金属酸化物材料などにより構成される。誘電体15bは、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂(たとえば、ポリエチレンテレフテレート樹脂)、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂などからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料でもよく、Al2O3およびTa2O5などからなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物材料でもよい。
【0169】
図20(a)に示す領域に荷重が加えられていない場合、導電弾性体12と被覆付き銅線15との間にかかる力、および、導電弾性体22と被覆付き銅線15との間にかかる力は、ほぼゼロである。この状態から、
図20(b)に示すように、基材11の下面に対して上方向に荷重が加えられ、基材21の上面に対して下方向に荷重が加えられると、被覆付き銅線15によって導電弾性体12、22が変形する。なお、基材11の下面または基材21の上面が静止物体に載置されて、他方の基材に対してのみ荷重が加えられた場合も、反作用により静止物体側から同様に荷重を受けることになる。
【0170】
図20(b)に示すように、荷重が加えられると、被覆付き銅線15は、導電弾性体12、22に包まれるように導電弾性体12
、22に近付けられ、被覆付き銅線15と導電弾性体12、22との間の接触面積が増加する。これにより、銅線15aと導電弾性体12との間の静電容量および銅線15aと導電弾性体22との間の静電容量が変化し、この領域の静電容量が検出され、この領域にかかる荷重が算出される。
【0171】
図21は、Z軸負方向に見た場合の荷重センサ1の内部を模式的に示す平面図である。
図21では、便宜上、糸14の図示が省略されている。
【0172】
図21に示すように、導電弾性体12、22と被覆付き銅線15とが交わる位置に、荷重に応じて静電容量が変化するセンサ部A11、A12、A13、A21、A22、A23、A31、A32、A33が形成される。各センサ部は、導電弾性体12、22と被覆付き銅線15を含み、被覆付き銅線15は、静電容量の一方の極(たとえば陽極)を構成し、導電弾性体12、22は、静電容量の他方の極(たとえば陰極)を構成する。
【0173】
すなわち、被覆付き銅線15の銅線15aは、荷重センサ1(静電容量型荷重センサ)の一方の電極を構成し、導電弾性体12、22は、荷重センサ1(静電容量型荷重センサ)の他方の電極を構成し、被覆付き銅線15の誘電体15bは、荷重センサ1(静電容量型荷重センサ)において静電容量を規定する誘電体に対応する。
【0174】
各センサ部に対してZ軸方向に荷重が加わると、荷重により被覆付き銅線15が導電弾性体12、22に包み込まれる。これにより、被覆付き銅線15と導電弾性体12、22との間の接触面積が変化し、当該被覆付き銅線15と当該導電弾性体12、22との間の静電容量が変化する。
【0175】
被覆付き銅線15のX軸負側の端部、ケーブル12aのY軸負側の端部、およびケーブル22aのY軸負側の端部は、荷重センサ1に対して設置される検出回路に接続される。
【0176】
図21に示すように、3組の導電弾性体12、22から引き出されたケーブル12a、22aをラインL11、L12、L13と称し、3つの被覆付き銅線15内の銅線15aをラインL21、L22、L23と称する。ラインL11に接続された導電弾性体12、22が、ラインL21、L22、L23と交わる位置が、それぞれ、センサ部A11、A12、A13であり、ラインL12に接続された導電弾性体12、22が、ラインL21、L22、L23と交わる位置が、それぞれ、センサ部A21、A22、A23であり、ラインL13に接続された導電弾性体12、22が、ラインL21、L22、L23と交わる位置が、それぞれ、センサ部A31、A32、A33である。
【0177】
センサ部A11に対して荷重が加えられると、センサ部A11において被覆付き銅線15と導電弾性体12、22との接触面積が増加する。したがって、ラインL11とラインL21との間の静電容量を検出することにより、センサ部A11において加えられた荷重を算出することができる。同様に、他のセンサ部においても、当該他のセンサ部において交わる2つのライン間の静電容量を検出することにより、当該他のセンサ部において加えられた荷重を算出することができる。
【0178】
図22は、荷重センサ1の具体的構成を模式的に示す平面図である。
図22では、荷重センサ1の内部に位置する荷重検出部1aも、便宜上、実線で示されている。
【0179】
図22に示す荷重センサ1は、
図18(a)~
図21に示した荷重センサ1と比較して、16個の導電弾性体12と、16個の導電弾性体22と、16個の被覆付き銅線15と、を備える。この場合も、16個の導電弾性体12が基材11に並んで形成され、16個の導電弾性体22が基材21に並んで形成される。そして、導電弾性体12、22が互いに向かい合うように、基材11と基材21が接続される。
【0180】
なお、
図22に示す荷重センサ1では、被覆付き銅線15が周期的に折り曲げられている。
図22では、このように周期的に折り曲げられた被覆付き銅線15が、導電弾性体12の上側に配置され、
図18(b)の場合と同様、糸14で基材11に接続される。このように、被覆付き銅線15が周期的に折り曲げられて配置されると、基材11、21が伸縮した場合でも、被覆付き銅線15の折り曲げ状態が変化することにより、被覆付き銅線15の破損を回避できる。また、被覆付き銅線15が直線的に配置される場合に比べて、単位面積当たりの銅線15aの密度が高くなるため、荷重センサ1による検出感度を高めることができる。
【0181】
次に、導電弾性体12の短手方向(X軸方向)の幅と導電弾性体22の短手方向(X軸方向)の幅とが異なることにより生じる効果について説明する。
【0182】
図23(a)、(b)は、導電弾性体12の短手方向の幅と導電弾性体22の短手方向の幅とが等しい比較例1の構成を示す模式図である。
図23(a)、(b)は、被覆付き銅線15の位置で、X-Z平面に平行な平面で切断した断面をY軸正方向に見た断面図である。なお、
図23(a)、(b)では、被覆付き銅線15は、便宜上、X軸方向に直線状に延びた状態で図示されている。
【0183】
図23(a)に示すように、比較例1では、基材11に形成される導電弾性体12の短手方向(X軸方向)の幅と、基材21に形成される導電弾性体22の短手方向(X軸方向)の幅とが、何れもd1に設定されている。また、2つの導電弾性体12の間隔および2つの導電弾性体22の間隔は、何れもdg1に設定されている。
【0184】
比較例1において、たとえば、
図23(b)に示すように、基材21がX軸正方向に距離dg1だけずれて設置されると、基材21に形成された導電弾性体22もX軸正方向に距離dg1だけ移動する。これにより、
図23(b)の破線に示すように、導電弾性体22のX軸正側の端部と、導電弾性体12のX軸負側の端部とが重なる。
【0185】
このように、比較例1では、基材11、21の設置時にX軸方向に距離dg1の位置ずれが生じると、隣り合うセンサ部の導電弾性体12、22が導通するといった事態が生じる。また、導電弾性体12、22の形成時にX軸方向に距離dg1の位置ずれが生じた場合も、同様に、隣り合うセンサ部の導電弾性体12、22が導通するといった事態が生じる。この場合、隣り合う2つのセンサ部に基づく静電容量を、それぞれ個別かつ適正に検出することができなくなる。
【0186】
図24(a)、(b)は、比較例1に対して導電弾性体12、22の短手方向の幅を短くした比較例2の構成を示す模式図である。
【0187】
図24(a)に示すように、比較例2では、導電弾性体12、22の短手方向(X軸方向)の幅が、何れもd1よりも短いd2に設定されている。また、隣り合う2つの導電弾性体12の間隔および隣り合う2つの導電弾性体22の間隔は、何れもdg1よりも長いdg2に設定されている。
【0188】
比較例2では、たとえば、
図24(b)に示すように、基材21がX軸正方向に距離dg1だけずれて設置され、導電弾性体22がX軸正方向に距離dg1だけずれたとしても、
図23(b)の場合とは異なり、導電弾性体22のX軸正側の端部と、導電弾性体12のX軸負側の端部とは重ならない。このように、比較例2では、基材11、21の設置時にX軸方向に距離dg1の位置ずれが生じても、隣り合うセンサ部の導電弾性体12、22が導通することがない。また、導電弾性体12、22の形成時にX軸方向に距離dg1の位置ずれが生じた場合も、同様に、隣り合うセンサ部の導電弾性体12、22が導通することがない。
【0189】
しかしながら、比較例2の場合、隣り合う導電弾性体12、22の間隔がdg1よりも長いdg2に設定されたため、比較例1よりも、荷重センサ1が荷重を検出できない領域、すなわち不感帯が大きくなっている。
【0190】
そこで、発明者らは、意図しない導通を回避しつつ不感帯を抑制するために、参考例1のように、基材11に形成された導電弾性体12の短手方向の幅と、基材21に形成された導電弾性体22の短手方向の幅とを、互いに異ならせた。
【0191】
図25(a)、(b)は、導電弾性体12の短手方向の幅と導電弾性体22の短手方向の幅とが異なる参考例1の構成を示す模式図である。
【0192】
図25(a)に示すように、参考例1では、導電弾性体12の短手方向(X軸方向)の幅はd1に設定され、基材21に形成される導電弾性体22の短手方向(X軸方向)の幅はd1よりも短いd2に設定されている。また、2つの導電弾性体12の間隔はdg1に設定され、2つの導電弾性体22の間隔はdg1よりも長いdg2に設定されている。d1は、たとえば、10mm程度であり、dg1は、たとえば、2mm程度である。
【0193】
参考例1では、たとえば、
図25(b)に示すように、基材21がX軸正方向に距離dg1だけずれて設置され、導電弾性体22がX軸正方向に距離dg1だけずれたとしても、導電弾性体22のX軸正側の端部と、導電弾性体12のX軸負側の端部とは重ならない。すなわち、一のセンサ部を構成する導電弾性体22と、一のセンサ部に隣り合う他のセンサ部を構成する導電弾性体12とが導通することが回避される。
【0194】
このように、参考例1では、基材11、21の設置時にX軸方向に距離dg1の位置ずれが生じても、隣り合うセンサ部の導電弾性体12、22が導通することがない。また、導電弾性体12、22の形成時にX軸方向に距離dg1の位置ずれが生じた場合も、同様に、隣り合うセンサ部の導電弾性体12、22が導通することがない。したがって、隣り合うセンサ部に基づく静電容量を、それぞれ個別かつ適正に検出することができる。
【0195】
さらに、参考例1では、
図25(a)に示すように、隣り合う導電弾性体22の間隔はdg2であるものの、隣り合う導電弾性体12の間隔はdg2よりも短いdg1に設定されている。これにより、荷重センサ1が荷重を検出できない領域、すなわち不感帯を抑制することができる。
【0196】
なお、
図25(a)、(b)において、導電弾性体12、22の一方のみが被覆付き銅線15に接触する範囲は、導電弾性体12、22の両方が接触する範囲に比べて、荷重に応じた静電容量の変化が低下する。しかしながら、導電弾性体12、22の一方のみが被覆付き銅線15に接触する範囲においても、荷重に応じた静電容量の変化が生じるため、この範囲は、不感帯とはならず、荷重の検出範囲として機能する。
【0197】
<参考例1の効果>
以上、参考例1によれば、以下の効果が奏される。
【0198】
参考例1に係る荷重センサ1は、
互いに向かい合うように配置された第1基材11および第2基材21と、
前記第1基材11の対向面11aに所定の間隔で形成された帯状の複数の第1導電弾性体12と、
前記第2基材21の対向面21aに前記複数の第1導電弾性体12とそれぞれ対向して形成された帯状の複数の第2導電弾性体22と、
前記複数の第1導電弾性体12と前記複数の第2導電弾性体22とによって挟まれ、前記第1および第2導電弾性体に対して交差する方向に延びた導電部材(銅線15a)と、
前記第1導電弾性体12および前記第2導電弾性体22と前記導電部材(銅線15a)との間に配置された誘電体15bと、を備え、
前記複数の第1導電弾性体12の短手方向の幅と、前記複数の第2導電弾性体22の短手方向の幅とが、互いに異なっている。
【0199】
荷重センサ1において、導電弾性体12、22と被覆付き銅線15との交差する位置がセンサ部となり、センサ部における静電容量の変化に基づいて荷重を検出することが可能となる。この場合に、導電弾性体12の幅と導電弾性体22の幅とが異なっているため、たとえば、荷重センサ1の組み立て時に、基材11、21との間において導電弾性体12の並び方向の位置ずれが生じたとしても、隣り合うセンサ部を構成する導電弾性体12、22が、導通してしまうことを回避できる。また、幅が広い方の導電弾性体12の間隔dg1を狭くしても、位置ずれによる導電弾性体12、22間の導通を抑制できるため、幅が広い方の導電弾性体12の間隔dg1を狭くできる。このため、荷重センサ1に設けられたセンサ部の不感帯を小さくすることができる。よって、参考例1の荷重センサ1によれば、意図しない導通を回避しつつ不感帯を抑制することができる。
【0200】
被覆付き銅線15の銅線15a(導電部材)は、線状の導体線であり、誘電体15bは、銅線15aの周囲に被覆されている。このように、銅線15aが線状の導体線により構成されると、上下に配置された導電弾性体12と導電弾性体22との間で銅線15aがない部分では、隣り合う列の斜め方向に対向する導電弾性体12と導電弾性体22とが位置ずれにより接触する事態が生じやすくなる。しかしながら、参考例1では、
図25(a)、(b)に示したように、導電弾性体12の短手方向の幅と導電弾性体22の短手方向の幅とが異なるため、意図しない導通を回避することができる。
【0201】
<参考例2>
上記参考例1では、基材11の四隅の頂点と基材21の四隅の頂点とが、シリコーンゴム系接着剤で接続されることにより、基材11と基材21とが結合された。これに対し、参考例2では、基材11と基材21の周辺部分が糸部材により縫合されることにより、基材11と基材21とが結合される。
【0202】
図26は、参考例2の荷重センサ1の具体的構成を模式的に示す平面図である。
図26では、荷重センサ1の内部に位置する荷重検出部1aも、便宜上、実線で示されている。
【0203】
図26に示す荷重センサ1では、
図22に示す荷重センサ1と比較して、破線で示すように、基材11、21は、外周付近が糸部材300により縫合されることにより互いに結合されている。糸部材300の縫い目は、基材11、21の外形に沿って直線状に形成されている。糸部材300は、下糸301と上糸302により構成されている。糸部材(下糸301と上糸302)は、化学繊維、天然繊維、またはそれらの混合繊維などにより構成される。参考例2のその他の構成は、参考例1と同様である。
【0204】
図27(a)は、
図26においてY軸負側に位置する縫い目を通るX-Z平面で荷重センサ1を切断したときのA-A’断面図である。
【0205】
基材11、21の縫合により、基材11、21を上下(Z軸方向)に貫通する針孔41が、基材11、21の外形に平行となるよう一方向(
図27(a)の場合はX軸方向)に並んで形成される。針孔41にZ軸正側から上糸302が通され、針孔41のZ軸負側付近で、上糸302と下糸301とが係合される。一方向に並んで形成される針孔41のピッチはpに設定されている。基材11の厚みはt1に設定され、基材21の厚みはt2に設定されている。糸部材300の縫合により、下糸301が基材11をZ軸正方向に押さえ付け、上糸302が基材21をZ軸負方向に押さえ付ける。これにより、基材11と基材21とが結合される。
【0206】
ここで、針孔41のピッチpが短いと、基材11と基材21との密着性が高められるものの、X-Y平面内において基材11、21を広げる方向(たとえば、
図27(a)においてA-A’断面に垂直なY軸方向)に、基材11、21に対して引っ張り力が加えられると、糸部材300の縫い目に沿って基材11、21が裂けやすくなるという問題が生じる。そこで、発明者らは、異なるピッチpで縫合された複数の荷重センサ1を実際に作成し、所定の引っ張り力を付与して基材11、21が縫い目に沿って裂けないための条件を検証した。
【0207】
検証の条件は、以下の通りである。糸部材300(下糸301と上糸302)を、株式会社フジックス製のキングポリエステル#60により構成した。基材11、21を、ミラブル型シリコーンゴムにより構成した。基材11の厚みt1と基材21の厚みt2とを等しい厚みとし、厚みt1、t2を、0.5mm、1.0mm、1.5mmの何れかに設定した。針孔41のピッチpを、0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、3.0mmの何れかに設定した。厚みt1、t2とピッチpの組み合わせにより、18種類の荷重センサ1を作成した。基材11、21のX軸正側の辺の中央付近およびX軸負側の辺の中央付近を、それぞれX軸正方向およびX軸負方向に引っ張ることにより、これら18種類の荷重センサ1に対して引っ張り力を付与し、基材11、21が縫い目に沿って裂けるか否かを検証した。検証においては、引っ張り力を徐々に高めた。
【0208】
図27(b)は、発明者らが行った検証結果を示す表である。「○」は縫い目に沿って基材11、21が裂けなかったことを示し、「×」は縫い目に沿って基材11、21が裂けたことを示している。「○」の場合は、縫い目に沿って基材11、21は裂けなかったものの、所定の引っ張り力で、引っ張り力を付与した付近が局所的に裂けてちぎれた。
【0209】
本検証の結果、基材11、21が縫い目に沿って裂ける場合と、基材11、21が縫い目に沿って裂けない場合とで、裂け始めにおける引っ張り力はほぼ同じであったが、その後にさらに裂け目を生じさせるために必要となる引っ張り力が異なることが分かった。すなわち、基材11、21が縫い目に沿って裂ける場合、縫い目の位置で裂け始めた後、弱い引っ張り力で継続的に縫い目に沿って裂け目が生じた。他方、基材11、21が縫い目に沿って裂けない場合、縫い目の位置で裂け始めた後、かなり強い引っ張り力を付与することにより、引っ張り力を付与した付近のみに局所的な裂け目が生じた。したがって、基材11、21が縫い目に沿って裂ける場合、基材11、21の強度が低く、基材11、21が縫い目に沿って裂けない場合、基材11、21の強度が高いと言える。
【0210】
さらに、基材11、21が縫い目に沿って裂ける場合は、縫い目に沿って裂け目が広がることで、引っ張り力を付与した辺の中央付近だけでなく、辺の両端付近にも裂け目が広がった。他方、基材11、21が縫い目に沿って裂けない場合、裂け目は引っ張り力を付与した辺の中央付近にとどまった。
【0211】
したがって、基材11、21の強度の観点および基材11、21の裂け目の広がる範囲の観点から、基材11、21は縫い目に沿って裂けないことが好ましいと言える。
【0212】
図27(b)の表に示すように、基材11、21の厚みt1、t2が0.5mmの場合、ピッチpが2.5mm以下であると、基材11、21が縫い目に沿って裂けた。基材11、21の厚みt1、t2が1.0mmの場合、ピッチpが1.0mm以下であると、基材11、21が縫い目に沿って裂けた。基材11、21の厚みt1、t2が1.5mmの場合、ピッチpが0.5mmであると、基材11、21が縫い目に沿って裂けた。
【0213】
以上の結果から、発明者らは、基材11、21が縫い目に沿って裂けないために、以下の式(1)、(2)の両方が満たされる必要があると考えた。
【0214】
p≧1.5/t1 … (1)
p≧1.5/t2 … (2)
【0215】
すなわち、発明者らは、上記式(1)、(2)の両方が満たされる場合、言い換えれば、基材11、21のうち厚みが小さい方の基材の式が満たされる場合に、基材11、21が縫い目に沿って裂けないことを見いだした。したがって、参考例2の荷重センサ1においては、上記式(1)、(2)の両方が満たされるように、ピッチpが設定される。
【0216】
<参考例2の効果>
以上、参考例2によれば、以下の効果が奏される。
【0217】
参考例2に係る荷重センサ1は、互いに向かい合うように配置された2枚の基材11、12と、
前記2枚の基材11、12に挟まれて配置された荷重検出部1aと、を備え、
前記2枚の基材11、12は、外周付近が糸部材300により縫合されることにより互いに結合され、
縫合により一方向に並んで形成される針孔41のピッチpが、前記基材11の厚みの逆数の1.5倍以上である。
【0218】
ここで、前記荷重検出部1aは、
図18(a)~
図22に示した参考例1と同様、
一の前記基材11の対向面11aに所定の間隔で形成された帯状の複数の第1導電弾性体12と、
他の前記基材21の対向面21aに前記複数の第1導電弾性体12とそれぞれ対向して形成された帯状の複数の第2導電弾性体22と、
前記複数の第1導電弾性体12と前記複数の第2導電弾性体22とによって挟まれ、前記第1導電弾性体12および前記第2導電弾性体22に対して交差する方向に延びた導電部材(銅線15a)と、
前記第1導電弾性体12および前記第2導電弾性体
22と前記導電部材(銅線15a)との間に配置された誘電体15bと、を備える。
【0219】
針孔41が一方向に並ぶ場合、針孔41間の間隔によっては、基材11、21を広げる方向の引っ張り力により針孔41間に亀裂が入り、基材11、21が縫い目の部分で裂けることが起こり得る。これに対し、参考例2では、上記式(1)、(2)に示したように、縫合により一方向に並んで形成される針孔41のピッチpが、基材11、21の厚みの逆数の1.5倍以上に設定されるため、上記検証のとおり、基材11、21を広げる方向に引っ張り力が加えられたとしても、基材11、21が縫い目の部分で裂けにくくなる。このため、基材11、21の強度を高めることができる。
【0220】
<参考例3>
上記参考例2では、糸部材300の縫い目は、基材11、21の外形に沿って直線状に形成された。これに対し、参考例3では、
図28に示すように、糸部材300の縫い目は、外形に沿いながら蛇行状に形成される。参考例3においても、基材11、21は、外周付近が糸部材300により縫合されることにより互いに結合される。参考例3のその他の構成は、参考例2と同様である。
【0221】
図29(a)は、
図28において基材11、21のY軸負側における外周近傍をZ軸負方向に見た場合の平面図である。
【0222】
基材11、21の縫合により、基材11、21を上下(Z軸方向)に貫通する針孔41、42が形成されている。基材11、21の外周付近には、外形に沿って直線状に並ぶ針孔41の針孔列C1と、外形に沿って直線状に並ぶ針孔42の針孔列C2とが形成されている。
図29(a)では、基材11、21の外形がX軸方向に延びているため、針孔列C1、C2は、X軸方向に延びている。針孔列C1は針孔列C2の外側に形成されており、針孔列C1と針孔列C2との間隔はw1である。
【0223】
針孔41は、直線状の針孔列C1に沿って一定のピッチpで並んでおり、針孔42は、直線状の針孔列C2に沿って一定のピッチpで並んでいる。隣り合う針孔41と針孔42との外形に沿った方向(
図29(a)ではX軸方向)の間隔は、p/2である。
【0224】
図29(b)は、
図29(a)において針孔41を通るX-Z平面で荷重センサ1を切断したときのB-B’断面図である。
図29(b)では、切断面よりも奥側(Y軸正側)に位置する針孔42を通る上糸302が、破線により示されている。
【0225】
図29(b)に示すように、針孔列C1、C2に垂直な方向(Y軸正方向)に見た場合、針孔41と針孔42とが交互に並んでいる。そして、参考例3においても、隣り合う2つの針孔41のピッチpおよび隣り合う2つの針孔42のピッチpは、いずれも、上記参考例2で示した式(1)、(2)を満たすように設定される。
【0226】
<参考例3の効果>
以上、参考例3によれば、以下の効果が奏される。
【0227】
参考例3に係る荷重センサ1は、互いに向かい合うように配置された2枚の基材11、21と、
前記2枚の基材11、21に挟まれて配置された荷重検出部1aと、を備え、
前記2枚の基材11、21は、外周付近が糸部材300により縫合されることにより互いに結合され、
縫合により形成される針孔41、42が、少なくとも2列に並び、
前記一の列の前記針孔41が、前記他の列の前記針孔42に対して、前記列の延びる方向にシフトしている。
【0228】
ここで、前記荷重検出部1aは、
図18(a)~
図22に示した参考例1と同様、
一の前記基材11の対向面11aに所定の間隔で形成された帯状の複数の第1導電弾性体12と、
他の前記基材21の対向面21aに前記複数の第1導電弾性体12とそれぞれ対向して形成された帯状の複数の第2導電弾性体22と、
前記複数の第1導電弾性体12と前記複数の第2導電弾性体22とによって挟まれ、前記第1導電弾性体12および前記第2導電弾性体22に対して交差する方向に延びた導電部材(銅線15a)と、
前記第1導電弾性体12および前記第2導電弾性体
22と前記導電部材(銅線15a)との間に配置された誘電体15bと、を備える。
【0229】
針孔列C1のみが設けられ、針孔41のピッチpが大きく設定された場合、以下の比較例3に示すように、隣り合う針孔41の間の範囲において、2枚の基材11、21の密着性が弱くなり、防水性能および防塵性能が低下してしまう。
【0230】
図30(a)は、比較例3の場合の、基材11、21のY軸負側における外周近傍をZ軸負方向に見た場合の平面図である。比較例3では、参考例3と比較して、針孔42は省略されており、針孔41だけが形成されている。
図30(b)は、
図30(a)において針孔41を通るX-Z平面で荷重センサ1を切断したときのC-C’断面図である。
図30(b)に示すように、比較例3では、隣り合う針孔41の中間付近において、基材11と基材21との間に隙間が生じている。このような隙間が生じると、荷重センサ1の内部へと水や埃が侵入するおそれがある。
【0231】
これに対し、参考例3では、
図29(a)、(b)に示したように、縫合により形成される針孔41、42が2列に並べられ、針孔列C2の針孔42が、針孔列C1の針孔41に対して、針孔列C1、C2の延びる方向にシフトするよう形成される。これにより、針孔列C1において隣り合う針孔41の間の範囲の側方が針孔列C2の針孔42によって縫合されるため、針孔列C1の針孔41の縫合により密着性が弱くなる範囲の側方が、針孔列C2の針孔42の縫合により密着性が高められる。このため、全ての針孔41、42について縫合したときに、全範囲において2枚の基材11、21の密着性を高めることができる。よって、荷重センサ1の防水性能および防塵性能を高めることができる。
【0232】
針孔列C1における針孔41のピッチpと、針孔列C2の針孔42のピッチpが、いずれも、基材11、21の厚みの逆数の1.5倍以上に設定される。これにより、上記参考例2で示したように、基材11、21を広げる方向に引っ張り力が加えられたとしても、基材11、21が縫い目の部分で裂けにくくなるため、基材11、21の強度を高めることができる。このように、参考例3では、針孔列C1、C2を設けて防水性能および防塵性能を高めながら、ピッチpを大きく設定して基材11、21が裂けることを回避することができる。
【0233】
図29(a)の例では、前記縫合により形成される前記針孔41、42は、2列に並んでいる。
【0234】
また、
図29(a)の例では、糸部材300は、一方の前記列(針孔列C1)の針孔41と他方の前記列(針孔列C2)の針孔42とに交互に通される。これにより、2枚の基材11、21を糸部材300の縫合により確実に結合できる。
【0235】
一方の前記列(針孔列C1)において隣り合う針孔41の中間位置の側方(Y軸正側)に、他方の前記列(針孔列C2)の針孔42が配置されている。これにより、針孔列C1の針孔41の縫合により最も密着性が弱い位置の側方において、針孔列C2の針孔42の縫合により密着性が高められる。よって、2枚の基材11、21の密着性を、より効果的に高めることができる。
【0236】
<参考例の変更例>
荷重センサ1の構成は、上記参考例に示した構成以外に、種々の変更が可能である。
【0237】
たとえば、上記参考例3において、糸部材300は、針孔41と針孔42とを交互に通るように基材11、21に対して縫い付けられたが、針孔41、42への糸部材の縫い付けは、これに限らず、たとえば、以下の変更例1、2のように行われてもよい。
【0238】
図31(a)は、変更例1に係る、基材11、21のY軸負側における外周近傍をZ軸負方向に見た場合の平面図である。
【0239】
変更例1においても、参考例3と同様、針孔41、42が基材11、21に形成され、針孔列C1、C2が形成されている。ただし、変更例1では、基材11、21の縫合に、糸部材300だけでなく、糸部材300と同様の糸部材500が用いられる。すなわち、前記糸部材は、一方の前記列(針孔列C1)の前記針孔41に通される第1糸部材300と、他方の前記列(針孔列C2)の前記針孔42に通される第2糸部材500とを備える。糸部材500は、下糸501と上糸502からなる。変更例1では、糸部材300は針孔41のみに縫い付けられ、糸部材500は針孔42のみに縫い付けられている。
【0240】
変更例1においても、
図31(a)のように、一方の前記列(針孔列C1)において隣り合う針孔41の中間位置の側方(Y軸正側)に、他方の前記列(針孔列C2)の針孔42が配置されている。
【0241】
図31(b)は、
図31(a)において針孔41を通るX-Z平面で荷重センサ1を切断したときのD-D’断面図である。
【0242】
変更例1においても、針孔41は、針孔列C1に沿ってピッチpで並んでおり、針孔42は、針孔列C2に沿ってピッチpで並んでいる。そして、ピッチpは、上記参考例2で示した式(1)、(2)を満たすように設定される。これにより、基材11、21が針孔列C1、C2に沿って裂けることを回避できる。また、変更例1においても、上記参考例3と同様、針孔列C1において隣り合う針孔41の間の範囲の側方が針孔列C2の針孔42によって縫合されるため、2枚の基材11、21の密着性を高めることができる。これにより、荷重センサ1の防水性能および防塵性能を高めることができる。
【0243】
また、変更例1では、針孔列C1の針孔41に通される糸部材300と、針孔列C2の針孔42に通される糸部材500とが用いられるため、2枚の基材11、21を糸部材300、500の縫合により確実に結合できる。
【0244】
図32(a)は、変更例2に係る、基材11、21のY軸負側における外周近傍をZ軸負方向に見た場合の平面図である。
【0245】
変更例2においても、参考例3と同様、針孔41、42が基材11、21に形成され、針孔列C1、C2が形成されている。ただし、変更例2では、糸部材300が針孔41、42に縫い付けられる順序が、上記参考例3とは異なっている。変更例2では、針孔41と針孔42とが交互に縫い付けられるのではなく、針孔41が連続して2回縫い付けられた後、針孔42が連続して2回縫い付けられる。これにより、
図32(a)に示すように、糸部材300が蛇行するように基材11、21を縫合することになる。変更例2においても、参考例3と同様の効果が奏される。
【0246】
また、上記参考例3では、縫合により形成される針孔は、2列に並んでいたが、これに限らず、3列以上に並んでいてもよい。
【0247】
図32(b)は、変更例3に係る、基材11、21のY軸負側における外周近傍をZ軸負方向に見た場合の平面図である。
【0248】
変更例3では、上記変更例2と比較して、針孔列C1、C2に加えて、針孔43が並ぶ針孔列C3が設けられている。針孔列C3は、針孔列C1と基材11、21の外縁との間に設けられており、針孔列C1、C2と平行である。針孔41、42、43のX軸方向における位置は互いに異なっており、X軸方向において針孔41、42の間隔と、針孔42、43の間隔と、針孔43、41との間隔は、いずれもp/3である。変更例3では、基材11、21の縫合に、糸部材300、500だけでなく、糸部材300、500と同様の糸部材600が用いられる。糸部材600は、下糸601と上糸602からなり、針孔43のみに縫い付けられている。
【0249】
変更例3では、針孔列C1において隣り合う針孔41の間の範囲のY軸正側およびY軸負側が、それぞれ、針孔列C2の針孔42および針孔列C3の針孔43によって縫合される。これにより、針孔41の縫合により密着性が弱くなる範囲の両方の側方が、針孔42、43の縫合により密着性が高められる。よって、荷重センサ1の防水性能および防塵性能をさらに高めることができる。
【0250】
X軸方向において針孔41、42の間隔と、針孔42、43の間隔と、針孔43、41との間隔は、p/3でなくてもよい。針孔41間の領域の側方に、針孔42、43がX軸方向に互いにシフトして位置付けられればよい。
【0251】
また、上記参考例において、導電弾性体12、22は、それぞれ、対向面11a、21aに対して、所定の印刷工法により形成された。しかしながら、これに限らず、導電弾性体12、22は、それぞれ、対向面11a、21aに対して、接着剤等により設置されてもよい。
【0252】
また、上記参考例において、基材21側の導電弾性体22の幅が、基材11側の導電弾性体12の幅よりも短く設定されたが、これに限らず、基材11側の導電弾性体12の幅が、基材21側の導電弾性体22の幅よりも短く設定されてもよい。
【0253】
また、上記参考例1において、荷重センサ1は、複数の被覆付き銅線15を備えたが、少なくとも1つ以上の被覆付き銅線15を備えればよい。たとえば、荷重センサ1に備えられる被覆付き銅線15は、1つでもよい。上記参考例2、3においては、荷重センサ1は、少なくとも1つ以上の導電弾性体12と、少なくとも1つ以上の被覆付き銅線15とを備えればよい。
【0254】
また、上記参考例において、被覆付き銅線15に代えて、銅以外の物質からなる線状の導電部材と、当該導電部材を被覆する誘電体と、により構成された電極が用いられてもよい。この場合の電極の導電部材は、たとえば、金属体、ガラス体およびその表面に形成された導電層、樹脂体およびその表面に形成された導電層などにより構成される。
【0255】
また、上記参考例において、荷重センサ1の構成は、必ずしも、被覆付き銅線15と導電弾性体12とを組み合わせた構成でなくてもよく、たとえば、上下の電極の間に伸縮性の誘電体が挟まれた構成であってもよい。
【0256】
また、上記参考例において、
図19(b)に示す基材11、21に挟まれて配置される荷重検出部1aは、上記の構成に限らない。
【0257】
なお、参考例2、3の構成において、荷重検出部1aの構成は、必ずしも、参考例1と同様でなくてもよい。たとえば、参考例2、3では、荷重検出部1aにおける導電弾性体12、22の短手方向の幅が同じであってもよい。この場合も、参考例2による基材11、21の裂け防止効果、および、参考例3による基材11、21の密着性向上効果が奏され得る。
【0258】
また、参考例1~3およびその変更例においても、被覆付き銅線15に代えて、撚り線からなる導体線13が用いられてもよい。
【0259】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0260】
1 荷重センサ
11、21 基材(第1基材、第2基材)
11a、21a 対向面
12、22 導電弾性体(他の導電弾性体)
13 一対の導体線(導体線)
13a、13b 導体線
30 素線
31 銅線(導電部材)
32 誘電体
A、A11~A13、A21~A23、A31~A33 センサ部
R 計測領域