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特許7493178樹脂シートの製造方法、及び金属張積層板の製造方法
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  • 特許-樹脂シートの製造方法、及び金属張積層板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】樹脂シートの製造方法、及び金属張積層板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/00 20060101AFI20240524BHJP
   B32B 15/092 20060101ALI20240524BHJP
   B32B 15/098 20060101ALI20240524BHJP
   B32B 37/15 20060101ALI20240524BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240524BHJP
   B29C 65/18 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
H05K3/00 R
B32B15/092
B32B15/098
B32B37/15
H05K1/03 610L
H05K1/03 610K
H05K1/03 630H
B29C65/18
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020084814
(22)【出願日】2020-05-13
(65)【公開番号】P2021180257
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 一輝
(72)【発明者】
【氏名】岸野 光寿
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-057347(JP,A)
【文献】国際公開第2019/176074(WO,A1)
【文献】特開2004-130593(JP,A)
【文献】特開2001-260241(JP,A)
【文献】特開2012-119461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/00
B32B 15/092
B32B 15/098
B32B 37/15
H05K 1/03
B29C 65/18
C08J 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物と補強材とを有し、前記熱硬化性樹脂組成物が、エポキシ樹脂(A)及びフェノール系硬化剤(B)を含み、前記乾燥物又は半硬化物の割合が全体に対して70質量%以上90質量%以下であり、厚み40μm以上150μm以下であるシート材を準備する、準備工程と、
前記シート材を160℃以上190℃以下の雰囲気において、2分以上3分以下加熱する熱処理工程と、を含む、
樹脂シートの製造方法。
【請求項2】
前記熱処理工程を、遠赤外線炉で行う請求項1に記載の樹脂シートの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法で製造した樹脂シートに金属箔を重ねて積層物を形成する積層工程と、
前記積層物を熱プレスして前記樹脂シートを硬化させることで絶縁層を形成する硬化工程と、を含む、
金属張積層板の製造方法。
【請求項4】
前記絶縁層の厚みが80μm以上150μm以下である、
請求項3に記載の金属張積層板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に樹脂シートの製造方法、及び金属張積層板の製造方法に関する。より詳細には本開示は、熱硬化性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物と補強材とを有する樹脂シートの製造方法、及びこの樹脂シートを用いる金属張積層板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属箔と、加熱されたプリプレグとを、ロール間を通過させることにより接合し、巻き取り部で連続的に巻き取ることにより積層板を連続的に製造することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-347172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の金属張積層板の製造方法では、プリプレグの樹脂含有量が多い場合には、絶縁層にボイドの問題が顕著に表れやすい。金属張積層板を製造するにあたって、ボイドは絶縁層の曲げ応力・圧縮力・引張応力等に対する機械的強度の悪化、絶縁特性の悪化等を招くため、プリプレグの樹脂含有量が多くてもボイドを生じ難くすることが必要である。
【0005】
本開示は、樹脂含有量が多くても絶縁層にボイドの発生の少ない金属張積層板を製造できる樹脂シートの製造方法と、前記樹脂シートを用いた金属張積層板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る樹脂シートの製造方法は、熱硬化性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物と補強材とを有し、前記乾燥物又は半硬化物の割合が全体に対して70質量%以上90質量%以下であるシート材を準備する準備工程を含む。前記樹脂シートの製造方法は、前記シート材を160℃以上190℃以下の雰囲気において、2分以上3分以下加熱する熱処理工程を含む。
【0007】
本開示の一態様に係る金属張積層板の製造方法は、前記樹脂シートに金属箔を重ねて積層物を形成する積層工程を含む。前記金属張積層板の製造方法は、前記積層物を熱プレスして前記樹脂シートを硬化させることで絶縁層を形成する硬化工程を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様に係る樹脂シートの製造方法によれば、樹脂含有量が多くても、金属張積層板の製造時に絶縁層へのボイド発生の少ない樹脂シートが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る樹脂シートの概略断面図である。
図2図2は、本開示の一実施形態に係る金属張積層板の概略断面図である。
図3図3は、本開示の一実施形態に係る金属張積層板の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)概要
本開示に係る一実施形態について説明する。
【0011】
本実施形態に係る樹脂シートの製造方法は、熱硬化性樹脂組成物(以下、組成物(X)ともいう)の乾燥物又は半硬化物と補強材とを有し、乾燥物又は半硬化物の割合が全体に対して70質量%以上90質量%以下であるシート材を準備する準備工程を含む。樹脂シートの製造方法は、シート材を160℃以上190℃以下の雰囲気において、2分以上3分以下加熱する熱処理工程を含む。
【0012】
シート材から金属張積層板2における絶縁層20を作製する際、上記のように、シート材全体における組成物(X)の割合が高いと、組成物(X)由来の揮発性成分の揮発により絶縁層20にボイドが発生しやすい。揮発性成分とは例えば、組成物(X)の分解物、シート材に残留する溶媒、及びシート材が吸収した水分からなる群から選択される少なくとも一種を含む。ボイドは絶縁層の曲げ応力・圧縮力・引張応力等に対する機械的強度の悪化、絶縁特性の悪化などを招くため、発生しないことが好ましい。
【0013】
本実施形態に係る樹脂シート1の製造方法は、シート材を加熱する熱処理工程を含むことで、シート材中の揮発性成分が除去され、金属張積層板2製造時に、絶縁層20へのボイドの発生を抑制しやすい。
【0014】
熱処理工程は、シート材を保管した際に、保管中にシート材が吸収した水分を除去するために行われてもよい。長期保管したシート材を使用して金属張積層板2を製造すると、保管中にシート材が吸収した水分が揮発して、絶縁層20にボイドが発生しやすいが、長期保管後であっても、熱処理工程を行うことでボイドの発生を抑制することができる。
【0015】
すなわち、本開示によれば熱硬化性樹脂組成物の割合が高くても、金属張積層板2の製造時に絶縁層20へのボイド発生の少ない樹脂シートが得られる。
【0016】
(2)詳細
(2.1)組成物(X)
本実施形態に係る組成物(X)は、樹脂シート1の材料、及び金属張積層板2の材料として使用可能である。
【0017】
組成物(X)は、熱硬化性樹脂を含有する。
【0018】
熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂、シアネート樹脂、メラミン樹脂、及びイミド樹脂等からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含有できる。エポキシ樹脂(A)としては、例えば、多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0019】
組成物(X)は、更に硬化剤を含有する。
【0020】
硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤(B)、及びジシアンジアミド硬化剤等が挙げられる。
【0021】
組成物(X)は、更に硬化促進剤(C)を含有してもよい。
【0022】
硬化促進剤(C)としては、例えば、イミダゾール類、フェノール化合物、アミン類、有機ホスフィン類等が挙げられる。
【0023】
組成物(X)は、更に無機充填剤(D)及び添加剤(E)を含有してもよい。
【0024】
無機充填剤(D)としては、溶融シリカ及び結晶シリカ等のシリカ、タルク、ベーマイト、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、クレー並びにマイカ等が挙げられる。無機充填剤(D)の平均粒子径は、例えば0.1μm以上10.0μm以下であるが、これに限定されない。
【0025】
添加剤(E)としては、熱可塑性樹脂、衝撃強度改質剤、難燃剤、着色剤及びカップリング剤等が挙げられる。
【0026】
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂(A)を含有し、かつ硬化剤がフェノール系硬化剤(B)を含むことが好ましい。すなわち、組成物(X)がエポキシ樹脂(A)及びフェノール系硬化剤(B)を含有することが好ましい。組成物(X)がエポキシ樹脂(A)及びフェノール系硬化剤(B)を含有する場合、樹脂含有率が高いことによるボイド発生の問題が生じやすいが、本実施形態では組成物(X)がエポキシ樹脂(A)及びフェノール系硬化剤(B)を含有しても、絶縁層20におけるボイドの発生を効果的に抑制できる。
【0027】
組成物(X)は、例えば、上記の組成物(X)の成分を配合し、適当な溶媒で希釈し、これを撹拌及び混合して均一化することで、調製される。
【0028】
(2.2)樹脂シート1
図1に本実施形態に係る樹脂シート1を示す。樹脂シート1は、全体としてシート状又はフィルム状である。樹脂シート1は、金属張積層板2の材料、プリント配線板の材料、及びプリント配線板の多層化などに利用される。
【0029】
樹脂シート1は、基材11と、樹脂層10と、を備える。樹脂層10は、基材11に含浸させた組成物(X)の乾燥物又は半硬化物で形成されている。乾燥物は組成物(X)から揮発性成分を揮発させて得られたものであり、半硬化物は組成物(X)を加熱して半硬化状態(Bステージ状態)としたものである。
【0030】
樹脂シート1の製造方法は、基材11と組成物(X)の乾燥物又は半硬化物とを有するシート材を準備する準備工程と、シート材を加熱する熱処理工程と、を含む。
【0031】
シート材は、基材11と組成物(X)の乾燥物又は半硬化物とを有する。すなわち、シート材とは、基材11に組成物(X)を含浸させ、組成物(X)が乾燥物又は半硬化物となるまで加熱された後の状態のものを指す。シート材は、例えばプリプレグである。シート材として、市販のプリプレグを使用してもよい。
【0032】
シート材を加熱する熱処理工程により、シート材から組成物(X)由来の揮発性成分が除去される。揮発性成分とは例えば、組成物(X)の分解物、シート材に残留する溶媒、及びシート材が吸収した水分からなる群から選択される少なくとも一種を含む。このため、樹脂シート1を用いて金属張積層板2を製造する際の絶縁層20中でのボイド発生が抑制されやすい。また、熱処理工程を含むと、樹脂シート1を裁断した際に端に出た樹脂粉末が樹脂シート1に固着される効果がある。
【0033】
熱処理工程は、シート材の保管後に行われてもよい。長期保管したシート材を使用して金属張積層板2を製造すると、保管中にシート材が吸収した水分が揮発して、絶縁層20にボイドが発生しやすいが、長期保管後であっても、熱処理工程を行うことでボイドの発生を抑制することができる。
【0034】
熱処理工程は、空気雰囲気下で遠赤外線炉により行われることが好ましい。熱処理工程では、例えばシート材は遠赤外線炉の中へ連続的に供給され、遠赤外線炉内を搬送されながら加熱される。熱処理工程での加熱温度としては160℃以上190℃以下であることが好ましく、170℃以上180℃以下であればより好ましい。加熱温度が低いと、ボイド発生の抑制効果が不十分である。加熱温度が高すぎると、金属張積層板2を製造したときに、金属の剥離強度の低下につながる。これは、温度が高すぎるとシート材中の組成物(X)の硬化反応と樹脂成分の分解が進みすぎるためと考えられる。熱処理工程における加熱時間は、2分以上3分以下であることが好ましく、2.5分以上、3.0分以下であればより好ましい。加熱時間はシート材が遠赤外線炉内を搬送され通過するのに要する時間である。加熱時間が短いと、ボイド発生の抑制効果が不十分である。加熱時間が長いと、シート材中の組成物(X)の硬化反応が進みすぎるおそれと、製造効率が低下するおそれがある。
【0035】
樹脂シート1における組成物(X)の含有量は、例えば、樹脂シート1全体の質量に対し、70質量%以上90質量%以下である。通常、シート材全体における樹脂含有量が多いと、樹脂組成物由来の揮発性成分により、金属張積層板2を製造する際に絶縁層20にボイドが発生しやすい。しかし、本実施形態では、樹脂シート1は組成物(X)の含有量が70%以上であっても、シート材に熱処理工程が行われていることで、組成物(X)由来の揮発性成分が除去されているため、絶縁層20にボイドの少ない金属張積層板2が得られやすい。
【0036】
基材11の厚さは、特に限定されない。基材11の具体例として、例えば、ガラスクロス、ガラスペーパー、ガラスマット等の無機繊維、アラミドクロス等の有機繊維が挙げられる。基材11がガラスクロスである場合、基材11はガラス織布であってもよく、ガラス不織布であってもよい。
【0037】
樹脂シート1の厚さは、例えば、40μm以上150μm以下である。
【0038】
(2.3)金属張積層板2
図2に本実施形態に係る金属張積層板2を示す。金属張積層板2は、絶縁層20と、金属層21と、を備える。金属張積層板2は、プリント配線板の材料などに利用される。
【0039】
絶縁層20は、樹脂シート1の硬化物で形成されている。図2では、絶縁層20は、1枚の基材11を有しているが、2枚以上の基材11を有していてもよい。
【0040】
絶縁層20の厚さは、特に限定されない。絶縁層20の厚さは、例えば、80μm以上150μm以下である。本来は、厚みの大きい絶縁層20を形成する際にはボイドが発生しやすい。しかし、本実施形態によれば、樹脂シート1製造の際に熱処理工程を含み、組成物(X)由来の揮発性成分が除去される。このため、絶縁層20を形成する際のボイドの発生が抑制される。
【0041】
金属層21は、絶縁層20に重ねられている。金属層21としては、特に限定されないが、例えば金属箔が挙げられる。金属箔としては、特に限定されないが、例えば銅箔が挙げられる。図2では、金属張積層板2は、絶縁層20の厚み方向の一方の面に重ねられている金属層21(以下、第一金属層211ともいう)と、他方の面に重ねられている金属層21(以下、第二金属層212ともいう)とを備える。すなわち、第一金属層211、絶縁層20及び第二金属層212がこの順に積層している。なお、金属張積層板2は、金属層21として、絶縁層20の厚み方向の一方の面に重ねられている金属層21のみを備えてもよい。
【0042】
金属張積層板2の製造方法は、樹脂シート1に金属層21を重ねて積層物1Aを形成する積層工程と、積層物1Aを熱プレスして樹脂シート1を硬化させることで絶縁層20を形成する硬化工程とを含む。
【0043】
積層工程では、例えば、1枚の樹脂シート1又は2枚以上の樹脂シート1からなる積層体の、片面に金属層21を重ね、又は両面の各々に金属層21を重ねて、積層物1Aを形成する。
【0044】
硬化工程において積層物1Aを熱プレスするにあたっては、例えば、ロールプレス方式、バッチプレス方式又はダブルベルトプレス方式が採用できる。以下では、ダブルベルトプレス方式による金属張積層板2の製造方法を説明する。
【0045】
ダブルベルト方式は、図3のような製造装置で実行することができる。この製造装置は、ダブルベルトプレス装置7を備える。積層工程では、ダブルベルトプレス装置7直前で樹脂シート1の両面の各々に金属層21が重ねられ、積層物1Aが形成される。硬化工程では、形成された積層物1Aがダブルベルトプレス装置7へ供給されて、ダブルベルトプレス方式により熱プレスされ、樹脂シート1が硬化される。
【0046】
ダブルベルトプレス装置7は、一対のエンドレスベルト4と、ドラム9と、一対の熱圧装置100とを備える。一対のエンドレスベルト4は、その間に積層物1Aを挟むようにして上下に配置されている。一対のエンドレスベルト4のうち、一方のエンドレスベルト4は二つのドラム9の間に掛け回されており、他方のエンドレスベルト4は二つのドラム9の間に掛け回されている。一対の熱圧装置100は、エンドレスベルト4を介して積層物1Aを熱プレスする。熱圧装置100は、例えば液圧プレートを含む。液圧プレートは、加熱された液体の液圧によってエンドレスベルト4を介して積層物1Aを熱プレスするように構成されている。
【0047】
エンドレスベルト4は、限定されないが、例えば金属製である。
【0048】
また、上下に対向する一対のドラム9は、積層物1Aから作成された金属張積層板2を巻取機8に向かって送り出すように回転する。この回転に合わせて、一対のエンドレスベルト4は回転する。
【0049】
積層物1Aを熱プレスするにあたって、金属箔3(第一金属箔31)、樹脂シート1、及び金属箔3(第二金属箔32)をこの順で積層させた積層物1Aが、ダブルベルトプレス装置7内に供給される直前で形成され、この積層物1Aを、ダブルベルトプレス方式で熱プレスする。
【0050】
ダブルベルトプレス方式を採用することで、一対のエンドレスベルト4を介して、積層物1Aの加圧面全体に均一な圧力が加えられる。これにより、第一金属箔31と第二金属箔32との間にある樹脂シート1に加えられる圧力にバラツキが生じにくくなる。
【0051】
積層物1Aを熱プレスする際、例えば、ダブルベルトプレス装置7に近づくにつれて積層物1Aが加熱される。次に積層物1Aは、ドラム9を通過する際に更に加熱され、熱圧装置100を通過しながらエンドレスベルト4を介して熱プレスされる。そして熱プレスされた積層物1Aはドラム9を通過して熱圧装置100を離れるに従って、冷却される。これにより、第一金属箔31から作製された第一金属層211、樹脂シート1から作製された絶縁層20及び第二金属箔32から作製された第二金属層212を備える金属張積層板2が製造される。金属張積層板2は、巻取機8でロール状に巻き取られる。
【0052】
積層物1Aを熱プレスするときの条件として、例えば200℃以上320℃以下の加熱温度、1MPa以上5MPa以下の圧力、2分以上5分以下の加熱時間が挙げられる。積層物1Aの加熱時間は、積層物1Aが熱圧装置100を通過するのに要する時間である。積層物1Aを熱プレスするときの条件は、上記に限定されない。
【実施例
【0053】
以下、本開示を実施例によって具体的に説明する。ただし、本開示は、実施例に限定されない。
【0054】
[組成物(X)原材料]
各実施例及び比較例の組成物(X)の原材料として以下のものを用いた。
【0055】
多官能エポキシ樹脂A:トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製、品名:EPPN-502H、エポキシ当量 158~178g/eq
多官能エポキシ樹脂B:ナフタレン型エポキシ樹脂、DIC会社製、品名:HP4710、エポキシ当量 160~180g/eq
フェノール系硬化剤A:リン含有フェノール樹脂、ダウケミカルカンパニー製、品名:XZ-92741
フェノール系硬化剤B:ナフタレン型フェノール樹脂、DIC株式会社製、品名:HPC-9500P
フェノール系硬化剤C:高官能性フェノール樹脂、明和化成株式会社製、品名:MEH-7600
フェノール系硬化剤D:ノボラック型フェノール樹脂、DIC株式会社製、品名:TD-2090
硬化促進剤:2-エチル-4-メチルイミダゾール
衝撃強度改質剤:シリコーン・アクリル複合ゴム、三菱ケミカル株式会社製、品名:SRK200A
球状シリカ1:株式会社アドマテックス製、品名:SC6500-SED、平均粒径2.0μm
球状シリカ2:株式会社アドマテックス製、品名:SC2500-GNO、平均粒径0.5μm
タルク:Huber EngineeredMaterials社製、品名:ケムガード911C
水酸化アルミニウム:河合石灰工業株式会社社製、品名:ALH-F
溶剤:メチルエチルケトン
[組成物(X)の調整]
上記の原材料を表1に示す組成で配合し、ディスパーで攪拌することによって、組成物(X)を調整した。
【0056】
[樹脂シートの製造]
基材11として、繊維基材(旭化成株式会社製、品名:1027クロス、厚み:28μm)を用い、この繊維基材に上記の組成物(X)を室温で含浸させ、その後、非接触タイプの加熱ユニットにより、約170℃で3分加熱することにより、組成物(X)中の溶媒を乾燥除去し、組成物(X)を半硬化させることによってシート材を製造した。その後、シート材に表2、3で示す条件で熱処理を行うことで、樹脂シート1を作製した。
【0057】
[金属張積層板の製造]
上記の樹脂シート1を2枚の銅箔(厚み18μm)の間に挟んで積層物1Aを作製し、この積層物1Aを320℃、4.5MPaで約3分間熱プレスすることで、金属張積層板2を得た。絶縁層20の厚み(μm)、樹脂含有量(%)は、表2、3に示す値となった。
【0058】
[評価]
(ボイド個数)
実施例1~6、比較例1~7の金属張積層板2から第一金属箔31を剥離して絶縁層20を露出させて、絶縁層20表面の50cm×50cmの領域内で観察されるボイドの個数を数えた。
【0059】
(銅箔剥離強度)
上記の銅張積層板の銅箔剥離強度(N/cm)をJIS C6515に準拠して測定した。
【0060】
以上の試験結果を表1-3に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
熱処理工程を含む方法で樹脂シートを作製した実施例1-4ではボイド発生個数は0~1個と良好であった。組成物(X)の組成を変えた実施例5、6でもボイド発生個数は0個であった。一方、熱処理工程を経ずに樹脂シートを作製した比較例1では100個以上のボイドが発生している。このことから、樹脂含有率の高い樹脂シートでは、組成物(X)の組成に関わらず、熱処理工程が絶縁層形成時のボイド発生の抑制に有効であるとわかる。
【0065】
熱処理工程における加熱温度が225℃である比較例2では、実施例1-4と比べて銅剥離強度の低下がみられる。また、加熱温度が220℃である比較例7でも、実施例5、6と比べて銅剥離強度の低下がみられる。これらの結果は、熱処理工程中に、組成物(X)の硬化反応と分解が進みすぎて、銅箔と樹脂シートの密着性が低下したためとみられる。
【0066】
熱処理工程における加熱時間が1分である比較例3では、ボイド発生個数が10個となった。加熱時間が短いとボイド発生の抑制効果が不十分であることがわかる。
【0067】
熱処理工程における加熱温度が130℃である比較例4では、ボイド発生個数が10個となった。また、加熱温度が120℃である比較例6では、ボイド発生個数が20個となった。この結果から、加熱温度が低いとボイド発生の抑制効果が不十分であることがわかる。
【0068】
比較例5ではシート材に熱処理を行っていないが、ボイドの発生は見られなかった。このことから、樹脂含有率が低いシート材には、熱処理工程が不要であるとわかる。
【符号の説明】
【0069】
1 樹脂シート
2 金属張積層板
20 絶縁層
3 金属箔
1A 積層物
図1
図2
図3