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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】フィルム構造体の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/04 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
B29C59/04 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020121588
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2022018471
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】上木原 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄士
(72)【発明者】
【氏名】黒宮 未散
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-264184(JP,A)
【文献】特開2011-148180(JP,A)
【文献】特開2019-025718(JP,A)
【文献】特開2019-025753(JP,A)
【文献】特開2021-030570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/00
B29D 7/00
B29D 11/00
G02B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続走行するフィルムの両面に転写材料を転写して硬化させたフィルム構造体の製造方法であって、
フィルムの表面に紫外線硬化樹脂を含む転写材料を塗布する第1塗布工程と、
微細な第1凹凸パターン型と前記フィルムの送り方向と交差する幅方向に離間して前記送り方向に沿って設けられた2列の第1アライメントマーク型との第1転写パターンが形成された第1転写ロールを第1加圧ロールで加圧しながら前記フィルムの表面に塗布された前記転写材料に前記第1転写パターンを転写し、前記転写材料を紫外線により硬化させて第1硬化膜を形成する第1硬化工程と、
前記フィルムの裏面に紫外線硬化樹脂を含む転写材料を塗布する第2塗布工程と、
微細な第2凹凸パターン型と前記フィルムの送り方向と交差する前記幅方向に離間して前記送り方向に沿って設けられた2列の第2アライメントマーク型との第2転写パターンが形成された第2転写ロールを第2加圧ロールで加圧しながら前記フィルムの裏面に塗布された前記転写材料に前記第2転写パターンを転写し、前記転写材料を紫外線により硬化させて第2硬化膜を形成する第2硬化工程と、
前記第1アライメントマーク型に対応する、前記第1硬化膜に含まれる第1アライメントマークの幅方向のマーク間距離である第1幅方向ピッチを検出する第1検出工程と、
前記第1硬化工程と前記第2硬化工程との間における前記フィルムの中間張力を検出する中間張力検出工程と、
前記第2アライメントマーク型に対応する、前記第2硬化膜に含まれる第2アライメントマークの幅方向のマーク間距離である第2幅方向ピッチを検出する第2検出工程と、
前記第2幅方向ピッチが前記第1幅方向ピッチと一致するように前記第2加圧ロールを駆動するトルクを補正するトルク補正工程と、
を含む、フィルム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記第2検出工程で検出される前記第1アライメントマークと前記第2アライメントマークとの位置ずれ量が減少するように、前記第2転写ロールの位置又は回転速度を補正する位置又は回転速度補正工程をさらに含む、請求項1に記載のフィルム構造体の製造方法。
【請求項3】
連続走行するフィルムの両面に転写材料を転写して硬化させたフィルム構造体の製造装置であって、
フィルムの表面に紫外線硬化樹脂を含む転写材料を塗布する第1塗布部と、
微細な第1凹凸パターン型と前記フィルムの送り方向と交差する幅方向に離間して前記送り方向に沿って設けられた2列の第1アライメントマーク型との第1転写パターンが形成された第1転写ロールと、
前記フィルムの表面に前記第1転写ロールの前記第1転写パターンを加圧する第1加圧ロールと、
前記フィルムの表面に前記第1転写パターンが転写された前記転写材料を紫外線により硬化させて第1硬化膜を形成する第1硬化部と、
前記フィルムの裏面に紫外線硬化樹脂を含む転写材料を塗布する第2塗布部と、
微細な第2凹凸パターン型と前記フィルムの送り方向と交差する幅方向に離間して前記送り方向に沿って設けられた2列の第2アライメントマーク型との第2転写パターンが形成された第2転写ロールと、
前記フィルムの裏面に前記第2転写ロールの前記第2転写パターンを加圧する第2加圧ロールと、
前記フィルムの裏面に前記第2転写パターンが転写された前記転写材料を紫外線により硬化させて第2硬化膜を形成する第2硬化部と、
前記第1アライメントマーク型に対応する、前記第1硬化膜に含まれる第1アライメントマークの幅方向のマーク間距離である第1幅方向ピッチを検出する第1検出部と、
前記第1硬化と前記第2硬化との間における前記フィルムの中間張力を検出する中間張力検出部と、
前記第2アライメントマーク型に対応する、前記第2硬化膜に含まれる第2アライメントマークの幅方向のマーク間距離である第2幅方向ピッチを検出する第2検出部と、
前記第2幅方向ピッチが前記第1幅方向ピッチと一致するように前記第2加圧ロールを駆動するトルクを補正するトルク補正部と、
を備える、フィルム構造体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント技術を用いたフィルム構造体の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント技術とは微細形状が予め表面に加工された型(モールド)を、基材表面に塗布された樹脂に押し付けることで微細形状が転写された硬化膜を形成する技術である。
インプリント方法としては、基材表面に塗布されたUV硬化樹脂に常温のモールドを押し当てた状態でUV光を照射することにより、微細形状が転写された硬化膜を形成するUVインプリント法がある。
【0003】
UVインプリント法において対象とする基材がPETなどのフィルムである場合には、連続的に走行するフィルムが表面にUV硬化樹脂が塗布された後、ロールの円筒面上に微細形状が加工された転写ロールと転写ロールに所定の加圧力で押し付けられる加圧ロールの間を通過し、転写ロールに貼り付きながらUV光に曝されることで微細形状が転写された硬化膜を形成し、転写ロールから離型する一般的な方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
さらに、同じ工程を2つ繋ぎ合わせ、第2工程で形成する微細形状パターンの位置を第1工程で形成された微細形状パターンの位置に精度良く一致させる方法もある(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許4976868号公報
【文献】特開2019-25718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示された方法及び装置において、第2工程の裏面ロールが位置補正動作を行う場合、対向して配置される裏面加圧ロールもフィルム送り方向(MD方向)に加減速を繰り返すことになる。すると、第1工程で離型してから第2工程に到達するまでのフィルムの伸縮が発生し、張力が変動するため、微細形状パターンの表裏の位置ずれ量が大きくなる。
【0007】
本開示は前記問題を鑑み、連続走行するフィルムの両面に微細形状パターンを形成するインプリント法において、微細形状パターンの表裏の位置ずれ量が小さくなるフィルム構造体の製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るフィルム構造体の製造装置は、連続走行するフィルムの両面に転写材料を転写して硬化させたフィルム構造体を製造する方法であって、
フィルムの表面に紫外線硬化樹脂を含む転写材料を塗布する第1塗布工程と、
微細な第1凹凸パターン型と前記フィルムの送り方向と交差する幅方向に離間して前記送り方向に沿って設けられた2列の第1アライメントマーク型との第1転写パターンが形成された第1転写ロールを第1加圧ロールで加圧しながら前記フィルムの表面に塗布された前記転写材料に前記第1転写パターンを転写し、前記転写材料を紫外線により硬化させて第1硬化膜を形成する第1硬化工程と、
前記フィルムの裏面に紫外線硬化樹脂を含む転写材料を塗布する第2塗布工程と、
微細な第2凹凸パターン型と前記フィルムの送り方向と交差する前記幅方向に離間して前記送り方向に沿って設けられた2列の第2アライメントマーク型との第2転写パターンが形成された第2転写ロールを第2加圧ロールで加圧しながら前記フィルムの裏面に塗布された前記転写材料に前記第2転写パターンを転写し、前記転写材料を紫外線により硬化させて第2硬化膜を形成する第2硬化工程と、
前記第1アライメントマーク型に対応する、前記第1硬化膜に含まれる第1アライメントマークの幅方向のマーク間距離である第1幅方向ピッチを検出する第1検出工程と、
前記第1硬化工程と前記第2硬化工程の間における前記フィルムの張力を検出する中間張力検出工程と、
前記第2アライメントマーク型に対応する、前記第2硬化膜に含まれる第2アライメントマークの幅方向のマーク間距離である第2幅方向ピッチを検出する第2検出工程と、
前記第2幅方向ピッチが前記第1幅方向ピッチと一致するように前記第2加圧ロールを駆動するトルクを補正するトルク補正工程と、
を含む。
【0009】
また、本開示に係るフィルム構造体の製造装置は、
連続走行するフィルムの両面に転写材料を転写して硬化させたフィルム構造体を製造する装置であって、
フィルムの表面に紫外線硬化樹脂を含む転写材料を塗布する第1塗布部と、
微細な第1凹凸パターン型と前記フィルムの送り方向と交差する幅方向に離間して前記送り方向に沿って設けられた2列の第1アライメントマーク型との第1転写パターンが形成された第1転写ロールと、
前記フィルムの表面に前記第1転写ロールの前記第1転写パターンを加圧する第1加圧ロールと、
前記フィルムの表面に前記第1転写パターンが転写された前記転写材料を紫外線により硬化させて第1硬化膜を形成する第1硬化部と、
前記フィルムの裏面に紫外線硬化樹脂を含む転写材料を塗布する第2塗布部と、
微細な第2凹凸パターン型と前記フィルムの送り方向と交差する幅方向に離間して前記送り方向に沿って設けられた2列の第2アライメントマーク型との第2転写パターンが形成された第2転写ロールと、
前記フィルムの裏面に前記第2転写ロールの前記第2転写パターンを加圧する第2加圧ロールと、
前記フィルムの裏面に前記第2転写パターンが転写された前記転写材料を紫外線により硬化させて第2硬化膜を形成する第2硬化部と、
前記第1アライメントマーク型に対応する、前記第1硬化膜に含まれる第1アライメントマークの幅方向のマーク間距離である第1幅方向ピッチを検出する第1検出部と、
前記第1硬化工程と前記第2硬化工程との間における前記フィルムの中間張力を検出する中間張力検出部と、
前記第2アライメントマーク型に対応する、前記第2硬化膜に含まれる第2アライメントマークの幅方向のマーク間距離である第2幅方向ピッチを検出する第2検出部と、
前記第2幅方向ピッチが前記第1幅方向ピッチと一致するように前記第2加圧ロールを駆動するトルクを補正するトルク補正部と、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係るフィルム構造体の製造装置及び製造方法によれば、以上のような構成を有することにより、弾性率が低く、かつ薄いフィルムでもフィルム基材の両面に形成する微細形状パターンの位置合わせ精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係るフィルム構造体の製造装置の構成を示す概略図である。
図2】実施の形態1に係るフィルム構造体の製造方法における第1硬化工程の概略模式図である。
図3】実施の形態1に係るフィルム構造体の製造方法における第2硬化工程の概略模式図である。
図4】実施の形態1に係るフィルム構造体の製造方法における中間張力制御のフローチャート図である。
図5】実施の形態1に係るフィルム構造体の製造装置の構成を示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の態様に係るフィルム構造体の製造方法は、連続走行するフィルムの両面に転写材料を転写して硬化させたフィルム構造体の製造方法であって、
フィルムの表面に紫外線硬化樹脂を含む転写材料を塗布する第1塗布工程と、
微細な第1凹凸パターン型と前記フィルムの送り方向と交差する幅方向に離間して前記送り方向に沿って設けられた2列の第1アライメントマーク型との第1転写パターンが形成された第1転写ロールを第1加圧ロールで加圧しながら前記フィルムの表面に塗布された前記転写材料に前記第1転写パターンを転写し、前記転写材料を紫外線により硬化させて第1硬化膜を形成する第1硬化工程と、
前記フィルムの裏面に紫外線硬化樹脂を含む転写材料を塗布する第2塗布工程と、
微細な第2凹凸パターン型と前記フィルムの送り方向と交差する前記幅方向に離間して前記送り方向に沿って設けられた2列の第2アライメントマーク型との第2転写パターンが形成された第2転写ロールを第2加圧ロールで加圧しながら前記フィルムの裏面に塗布された前記転写材料に前記第2転写パターンを転写し、前記転写材料を紫外線により硬化させて第2硬化膜を形成する第2硬化工程と、
前記第1アライメントマーク型に対応する、前記第1硬化膜に含まれる第1アライメントマークの幅方向のマーク間距離である第1幅方向ピッチを検出する第1検出工程と、
前記第1硬化工程と前記第2硬化工程との間における前記フィルムの中間張力を検出する中間張力検出工程と、
前記第2アライメントマーク型に対応する、前記第2硬化膜に含まれる第2アライメントマークの幅方向のマーク間距離である第2幅方向ピッチを検出する第2検出工程と、
前記第2幅方向ピッチが前記第1幅方向ピッチと一致するように前記第2加圧ロールを駆動するトルクを補正するトルク補正工程と、
を含む。
【0013】
第2の態様に係るフィルム構造体の製造方法は、上記第1の態様において、前記第2検出工程で検出される前記第1アライメントマークと前記第2アライメントマークとの位置ずれ量が減少するように、前記第2転写ロールの位置又は回転速度を補正する位置又は回転速度補正工程をさらに含んでもよい。
【0014】
第3の態様に係るフィルム構造体の製造装置は、連続走行するフィルムの両面に転写材料を転写して硬化させたフィルム構造体の製造装置であって、
フィルムの表面に紫外線硬化樹脂を含む転写材料を塗布する第1塗布部と、
微細な第1凹凸パターン型と前記フィルムの送り方向と交差する幅方向に離間して前記送り方向に沿って設けられた2列の第1アライメントマーク型との第1転写パターンが形成された第1転写ロールと、
前記フィルムの表面に前記第1転写ロールの前記第1転写パターンを加圧する第1加圧ロールと、
前記フィルムの表面に前記第1転写パターンが転写された前記転写材料を紫外線により硬化させて第1硬化膜を形成する第1硬化部と、
前記フィルムの裏面に紫外線硬化樹脂を含む転写材料を塗布する第2塗布部と、
微細な第2凹凸パターン型と前記フィルムの送り方向と交差する幅方向に離間して前記送り方向に沿って設けられた2列の第2アライメントマーク型との第2転写パターンが形成された第2転写ロールと、
前記フィルムの裏面に前記第2転写ロールの前記第2転写パターンを加圧する第2加圧ロールと、
前記フィルムの裏面に前記第2転写パターンが転写された前記転写材料を紫外線により硬化させて第2硬化膜を形成する第2硬化部と、
前記第1アライメントマーク型に対応する、前記第1硬化膜に含まれる第1アライメントマークの幅方向のマーク間距離である第1幅方向ピッチを検出する第1検出部と、
前記第1硬化工程と前記第2硬化工程との間における前記フィルムの中間張力を検出する中間張力検出部と、
前記第2アライメントマーク型に対応する、前記第2硬化膜に含まれる第2アライメントマークの幅方向のマーク間距離である第2幅方向ピッチを検出する第2検出部と、
前記第2幅方向ピッチが前記第1幅方向ピッチと一致するように前記第2加圧ロールを駆動するトルクを補正するトルク補正部と、
を備える。
【0015】
以下、実施の形態に係るフィルム構造体の製造装置及び製造方法について、添付図面を参照しながら説明する。
【0016】
(実施の形態1)
<フィルム構造体の製造装置>
まず、図1および図5を用いて本実施の形態1に係るフィルム構造体の製造装置110の構成をその動作とともに説明する。図1は、実施の形態におけるフィルム構造体の製造装置110の構成を示す概略図である。図5は、実施の形態1に係るフィルム構造体の製造装置110の構成を示すシステム構成図である。
【0017】
図1に示すように、実施の形態1に係るフィルム構造体の製造装置110は、連続走行するフィルム1の両面に転写材料2を塗布し、微細な凹凸パターンを有する型形状を転写した後、硬化させた膜を形成するロールトゥロール方式のフィルム構造体の製造装置である。フィルム1は、厚み100um以下の透明な材料で、例えばPETフィルムが使われる。転写材料2は、紫外線硬化樹脂を含む材料で、硬化前は流動するが硬化後はフィルム1に固着する。
【0018】
本実施の形態1に係るフィルム構造体の製造装置110は、巻出しロール11と、フリーロール12、13、14と、巻出しテンションロール91と、第1塗布ノズル15aと、第1転写ロール4aと、第1加圧ロール3aと、第1UV光源16aと、第1離型ロール17aと、フリーロール18、19、20、21と、中間テンションロール92と、第1検出カメラ101と、第2塗布ノズル15bと、第2転写ロール4bと、第2加圧ロール3bと、第2UV光源16bと、第2離型ロール17bと、フリーロール22、23、24、25、26、27と、第2検出カメラ102と、巻取りロール27と、巻取りテンションロール93と、を含む。
【0019】
巻出しロール11は、フィルム1がロール状に巻かれた原反からフィルム1を送り出す。
フリーロール12、13、14は、後述する第1加圧ロール3aまでのフィルム1の走行を案内する。
巻出しテンションロール91は、フリーロール12と13の間に配置されフィルム1の巻出し張力を検出する。
第1塗布ノズル15aは、フリーロール14の直上で転写材料2を塗布する。
第1転写ロール4aは、円筒面に微細な凹凸パターンを有する。凹凸パターンには、例えば、後述する第1凹凸パターン型および第1アライメントマーク型を有する。また、第1転写ロール4aは、モータとエンコーダとを有する。
第1加圧ロール3aは、フィルム1を介して第1転写ロール4aに転写材料2を押し付ける。第1加圧ロール3aは、円筒面がゴム等の弾性体で覆われていることが望ましい。
【0020】
第1UV光源16aは、第1転写ロール4aに押し付けられた転写材料2を硬化させる。
第1離型ロール17aは、フィルム1の表面に固着した第1硬化膜5aを第1転写ロール4aから離反させる。第1硬化膜5aには、例えば、後述する第1凹凸パターンと第1アライメントマークとを有する。
フリーロール18、19、20、21は、後述する第2加圧ロール3bまでのフィルム1の走行を案内する。
【0021】
中間テンションロール92は、フリーロール19と20の間に配置され、フィルム1の中間張力を検出する。
第1検出カメラ101は、フリーロール21の上流側側面に配置され第1硬化工程で形成された第1アライメントマークを検出する。このため、フリーロール21は、第1検出カメラ用フリーロールともいわれる。
第2塗布ノズル15bは、フリーロール21の直上で転写材料2を塗布する。
第2転写ロール4bは、円筒面に微細な凹凸パターンを有する。凹凸パターンには、例えば、後述する第2凹凸パターン型および第2アライメントマーク型を有する。また、第2転写ロール4bは、モータとエンコーダと位置補正機構と速度補正機構とを有する。
第2加圧ロール3bは、フィルム1を介して第2転写ロール4bに転写材料2を押し付ける。第2加圧ロール3bは、円筒面がゴム等の弾性体で覆われていることが望ましい。また、第2加圧ロール3bは、駆動するためのモータと駆動するトルクを補正するトルク補正機構とを有する。
【0022】
第2UV光源16bは、第2転写ロール4bに押し付けられた転写材料2を硬化させる。
第2離型ロール17bは、フィルム1の裏面に固着した第2硬化膜5bを第2転写ロール4bから離反させる。第2硬化膜5bには、例えば、後述する第2凹凸パターンと第2アライメントマークとを有する。
フリーロール22、23、24、25、26、27は、後述する巻取りロール28までのフィルム1の走行を案内する。
第2検出カメラ102は、フリーロール22の直下に配置され、第2硬化工程で形成された第2アライメントマークを検出する。このため、フリーロール22は、第2検出カメラ用フリーロールともいわれる。
【0023】
制御部29は、第1検出カメラ101の情報に基づき、フィルム1の表面の第1アライメントマークの幅方向ピッチを算出する。また、制御部29は、第2検出カメラ102の情報に基づき、フィルム1の裏面の第2アライメントマークの幅方向ピッチを算出する。そして、制御部29は、フィルム1の表裏面のそれぞれの第1アライメントマークの幅ピッチ及び第2アライメントマークの幅方向ピッチに基づいて、第1硬化工程で形成された第1アライメントマークと、第2硬化工程で形成された第2アライメントマークとの位置ずれ量を算出する。
【0024】
巻取りロール27は、両面に硬化膜が形成されたフィルム1を巻取る。
巻取りテンションロール93は、フリーロール26と27の間に配置され、フィルム1の巻取り張力を検出する。
【0025】
<フィルム構造体の製造方法>
次に、図2図3を用いて本実施の形態1に係るフィルム構造体の製造方法について説明する。図2は、実施の形態1に係るフィルム構造体の製造方法における第1硬化工程の概略模式図である。図3は、実施の形態1に係るフィルム構造体の製造方法における第2硬化工程の概略模式図である。
【0026】
<第1硬化工程>
最初に、第1硬化工程について説明する。
(1)まず、連続走行するフィルム1の表面に、第1塗布ノズル15aから転写材料2が吐出される。
(2)次に、フィルム1の表面に吐出された転写材料2が、第1加圧ロール3aによって第1転写ロール4aに押し付けられる。第1転写ロール4aは、円筒面の中央に配置された第1凹凸パターン型41aと、第1凹凸パターン型41aの両端に配置された第1アライメントマーク型42aと、を有する。したがって、転写材料2が、第1凹凸パターン型41aおよび第1アライメントマーク型42aの凹みに隙間なく充填される。
【0027】
第1転写ロール4aは、駆動側(図2に向かって右側)に連結されたモータ(図示せず)によって一定速度で回転している。
第1加圧ロール3aは、駆動源を持たないフリーロールであり、第1転写ロール4aをエアシリンダー等で加圧しながら、同速度で回転する。
【0028】
(3)次に、充填された転写材料2は、第1UV光源16aから照射される紫外線によって硬化される。このことで、転写材料2が硬化した第1硬化膜5aは、フィルム1の表面に固着する。
(4)最後に、固着した転写材料2は、第1離型ロール17aを支点にして第1転写ロール4aから引き離される。
【0029】
フィルム1の表面に形成される第1硬化膜5aは、第1凹凸パターン型41aに対応する微細な凹凸形状の第1凹凸パターン51aと、第1アライメントマーク型42aに対応する第1アライメントマーク52aとを含む。本実施の形態では、第1アライメントマーク52aのマーク中心点間の距離を、第1幅方向ピッチ53aとする。
また、第1硬化膜5aを形成する際のフィルム1にかかる張力は、前述した巻出しテンションロール91で検出され、巻出しロール11を制動するトルクで制御される。
上述した第1硬化工程によって、フィルム1の表面へ第1硬化膜5aが形成される。
【0030】
<第2硬化工程>
次に、第2硬化工程について説明する。
(5)まず、第1検出カメラ101は、フィルム1の表面に形成された第1アライメントマーク52aのうち、操作側(図3に向かって右側)と駆動側(図3に向かって左側)の2つの第1アライメントマークを認識する。制御部29は、画像処理により2つの第1アライメントマークの中心位置を求めることで、第1幅方向ピッチ53aを算出する。
(6)次に、連続走行するフィルム1の裏面に、第2塗布ノズル15bから転写材料2が吐出される。
【0031】
(7)次に、フィルム1の裏面に吐出された転写材料2が、第2加圧ロール3bによって第2転写ロール4bに押し付けられる。第2転写ロール4bは、円筒面の中央に配置された第2凹凸パターン型41bと、第2凹凸パターン型41bの両端に配置された第2アライメントマーク型42bと、を有する。したがって、転写材料2が、第2凹凸パターン型41bおよび第2アライメントマーク型42bの凹みに隙間なく充填される。
【0032】
第2転写ロール4bは、駆動側(図3に向かって左側)に連結されたモータ(図示せず)によって回転している。第2転写ロール4bは、エンコーダが取り付けられ、回転中の角度信号を出力しながら、第1転写ロール4aの角度信号と同期して加減速しながら回転する。
第2加圧ロール3bは、駆動側に連結されたモータによって、トルクを制御される。第2加圧ロール3bは、通常、制御部29による中間張力を一定値に保つ指令によって回転する。従って、第2加圧ロール3bは第2転写ロール4bに加圧されながら回転しているが、第2転写ロール4bに追従して加減速することはなく、第2転写ロール4bとは独立して、フィルム1を一定の張力と速度で走行させるように加減速しながら回転する。
【0033】
(8)次に、充填された転写材料2は、第2UV光源16bから照射される紫外線によって硬化される。このことで、転写材料2が硬化した第2硬化膜5bは、フィルム1の裏面に固着する。
(9)次に、固着した転写材料2は、第2離型ロール17bを支点にして第2転写ロール4bから引き離される。
【0034】
フィルム1の裏面に形成される第2硬化膜5bは、第2凹凸パターン型41bに対応する微細な凹凸形状の第2凹凸パターン51bと、第2アライメントマーク型42bに対応する第2アライメントマーク52bとを含む。本実施の形態では、第2アライメントマーク52bのマーク中心点間の距離を、第2幅方向ピッチ53bとする。
【0035】
(10)次に、第2検出カメラ102は、フィルム1の裏面に形成された第2アライメントマーク52bのうち、操作側(図3に向かって右側)と駆動側(図3に向かって左側)の2つのアライメントマークを認識する。
【0036】
制御部29は、画像処理により2つのアライメントマークの中心位置を求めることで、第2幅方向ピッチ53bを算出する。さらに、制御部29は、フィルム1の表裏面のそれぞれのアライメントマークの幅方向ピッチ53aおよび53bに基づいて、第1硬化工程で形成されたアライメントマーク52aと、第2硬化工程で形成されたアライメントマーク52bとの位置ずれ量を算出する。
【0037】
第2転写ロール4bは、回転軸を幅方向及び、高さ方向に移動させる位置補正機構が取り付けられ、回転中に幅方向と高さ方向の位置を変更しながら動作する。
位置補正機構は、例えばロードセルである。位置補正機構は、第1アライメントマーク52aと第2アライメントマーク52bとの位置ずれ量に基づいて、第2転写ロール4bの位置を変更する。また、速度補正機構によって、第2転写ロール4bの回転速度を補正する。
【0038】
上述した第2硬化工程によって、フィルム1の裏面へ第2硬化膜5bが形成される。
このようにして、本実施の形態に係るフィルム構造体の製造方法によってフィルム構造体が製造される。
【0039】
<中間張力の制御方法>
次に、図4を用いて本実施の形態に係るフィルム構造体の製造方法における中間張力の制御方法について詳細に説明する。図4は、実施の形態1に係るフィルム構造体の製造方法における中間張力制御のフローチャートである。本実施の形態では、中間テンションロール92によって検出された中間張力を、巻出しテンションロール91によって検出された巻出張力と同じ値になるように、制御部から出力された指令を第2加圧ロール3bのトルク補正機構にフィードバックする。
【0040】
第1硬化膜5aを形成後に検出される中間張力は、以下の流れで制御される。
(a)まず、制御部29は、巻出し張力と中間張力とが同じ値であるかどうかを判断する(S401)。このために、中間テンションロール92によって検出された中間張力と、巻出しテンションロール91によって検出された巻出張力とを利用する。
巻出し張力と中間張力とが同じ値である場合、制御部29は、中間張力制御を行わず、処理を終了する。
なお、製造工程においてリアルタイムに中間張力制御を行うことを想定する場合、一定時間後に、再びS401から開始することが望ましい。
(b)巻出し張力と中間張力とが同じ値でない場合、制御部29は、第1幅方向ピッチ53aを検出する(S402)。具体的には、第2硬化膜5bを形成する前に、第1検出カメラ101を用いて第1アライメントマーク52aを検出し、制御部29が第1幅方向ピッチ53aを算出する。
【0041】
(c)さらに、制御部29は、第2幅方向ピッチ53bを検出する(S403)。具体的には、第2硬化膜5bを形成後、第2検出カメラ102を用いて第2アライメントマーク52bを検出し、制御部29が第2幅方向ピッチ53bを算出する。
(d)次に、制御部29は、第1幅方向ピッチ53aと第2幅方向ピッチ53bとの大小を比較する(S404)。
第1幅方向ピッチ53aと第2幅方向ピッチ53bとが同じ値である場合、すなわちフィルム構造体の表裏における位置ずれ量がない場合は、制御部29は、中間張力制御を終了する。
【0042】
(e)第1幅方向ピッチ53aが第2幅方向ピッチ53bより小さい値である場合(53a<53b)、制御部29は、第1幅方向ピッチ53aと第2幅方向ピッチ53bとの差分の絶対値であるピッチ差分Saを求め、ピッチ差分と所定の目標値Tとの大小を比較する(S405)。このことで、許容ずれ量に相当する目標値Tに対する現在のずれ量を評価することができる。目標値Tは、例えばユーザが任意に設定しても良い。
ピッチ差分Saが目標値T以下である場合(Sa≦T)、制御部29は、中間張力制御を行わず、再度S402から処理を行う。
【0043】
(f)ピッチ差分Saが目標値Tより大きい場合(Sa>T)、制御部29は、中間張力について、ピッチ差分Saに相当する張力を減算する(S406)。
(g)第2加圧ロール3bは、連結されたモータにより、制御部29によって求めた張力に相当するトルクで駆動される。つまり、巻出し張力より中間張力を低い状態にする(S407)。このことで、第2幅方向ピッチ53bを第1幅方向ピッチ53aに近づけることが可能となる。そして、制御部29は、再度S402から処理を行う。
【0044】
(h)第1幅方向ピッチ53aが第2幅方向ピッチ53bより大きい値である場合(53a>53b)、制御部29は、第1幅方向ピッチ53aと第2幅方向ピッチ53bとの差分の絶対値であるピッチ差分Saを求め、ピッチ差分Saと所定の目標値Tとの大小を比較する(S408)。
ピッチ差分Saが目標値T以下である場合(Sa≦T)、制御部29は、中間張力制御を行わず、再度S402から処理を行う。
【0045】
(i)ピッチ差分Saが目標値Tより大きい場合(Sa>T)、制御部29は、中間張力について、ピッチ差分Saに相当する張力を加算する(S409)。
(j)第2加圧ロール3bは、連結されたモータにより、制御部29によって求めた張力に相当するトルクで駆動される。つまり、巻出し張力より中間張力を高い状態にする(S410)。このことで、第2幅方向ピッチ53bを第1幅方向ピッチ53aに近づけることが可能となる。そして、制御部29は、再度S402から処理を行う。
このようにして、本実施の形態に係るフィルム構造体の製造方法における中間張力制御が行われる。
【0046】
本実施の形態に係るフィルム構造体の製造方法における第1の特徴は、第1アライメントマークの幅方向のピッチ差で中間張力を制御することである。
通常は、第1硬化膜を形成する前の巻出し張力と第2硬化膜を形成する前の中間張力を一致させるように、巻出しロールを制動するトルクと第2加圧ロールを駆動するトルクとを制御している。しかし、この場合には、弾性率が低いフィルムは非常に伸縮し易いため、第2硬化膜を形成する前に、第1硬化膜が固着したフィルムが伸縮し、第1幅方向ピッチが大きく変動してしまう。フィルムの伸縮を避けるために、全体の張力を低下させる方法も考えられるが、幅が広く薄いフィルムをたわみなく安定して巻出すには最低限必要な張力がある。
【0047】
そこで、本開示では、巻出し張力を固定した状態で、第1アライメントマークと第2アライメントマークとの幅方向のピッチ差に基づいて中間張力を可変する。具体的には、上記ピッチ差に対応するトルクを加算または減算して、第2加圧ロールを駆動するトルクを補正する。このことで、伸びやすいフィルムでも両面に形成された硬化膜の微細形状パターンの位置ずれが少ないフィルム構造体を得ることができる。
なお、第1アライメントマークと第2アライメントマークとの幅方向のピッチ差から換算して得られる中間張力の差分は、フィルムの伸縮で第1アライメントマークの幅方向ピッチが変化する性質を利用して、あらかじめ測定しておいた幅方向ピッチと張力との相関から算出される。具体的には、第2加圧ロールを駆動するトルクを制御して、フィルム1の中間張力を制御する。
【0048】
本実施の形態に係るフィルム構造体の製造方法における第2の特徴は、第2加圧ロールに駆動を持たせたことである。
ロールトゥロール方式の両面インプリント装置において、裏面の加圧ロールも駆動を持たないフリーロールにすることが一般的である。しかし、表裏のパターンの高い位置合わせ精度が必要な場合、この方式で実現するためには転写ロールの加工精度や取付精度を高めて、裏面の転写ロールの回転速度変化やロール移動動作を無くすことが不可欠である。つまり、裏面の加圧ロールをフリーロールとすることは、高い位置合わせ精度を実現するためには現実的ではない。実際にはある程度の回転速度変化やロール移動動作が必要になるが、それと連動して動作するフリーロールでは第1工程と第2工程との間のフィルムの距離の変動を抑えることは困難である。
【0049】
そこで、本開示では、第2加圧ロールにモータを直結し、トルク制御する。このことで第、2加圧ロール表面の摩擦力でフィルムを引っ張ることになり、第1工程と第2工程との間のフィルムの距離を一定にすることが容易になる。
つまり、第2加圧ロールに駆動を持たせることで転写ロールの回転速度変化や移動動作に左右されない安定したフィルム走行が実現できる。
【0050】
かかる構成によれば弾性率が低く、薄いフィルムでも両面の微細形状が転写された硬化膜パターン位置合わせ精度の良い高品質な硬化膜を有したフィルム構造体を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係るフィルム構造体の製造方法によれば、フィルム基材の両面の微細形状パターンが高精度に形成可能なため、例えば光学部品や半導体部品等の分野で有用である。
【符号の説明】
【0052】
1 フィルム
2 転写材料
3a 第1加圧ロール
4a 第1転写ロール
5a 第1硬化膜
11 巻出しロール
12、13、14 フリーロール
15a 第1塗布ノズル
16a 第1UV光源
17a 第1離型ロール
3b 第2加圧ロール
4b 第2転写ロール
5b 第2硬化膜
15b 第2塗布ノズル
16b 第2UV光源
17b 第2離型ロール
18、19、20 フリーロール
21、22 検出カメラ用フリーロール
23、24、25、26、27 フリーロール
28 巻取りロール
29 制御部
41a 第1凹凸パターン型
42a 第1アライメントマーク型
51a 第1凹凸パターン
52a 第1アライメントマーク
53a 第1幅方向ピッチ
41b 第2凹凸パターン型
42b 第2アライメントマーク型
51b 第2凹凸パターン
52b 第2アライメントマーク
53b 第2幅方向ピッチ
91 巻出しテンションロール
92 中間テンションロール
93 巻取りテンションロール
101 第1検出カメラ
102 第2検出カメラ
110 フィルム構造体の製造方法
図1
図2
図3
図4
図5