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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-24
(45)【発行日】2024-06-03
(54)【発明の名称】変位測定装置および変位測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/00 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
G01B7/00 101Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020209658
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096513
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 義孝
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第10527398(US,B1)
【文献】欧州特許出願公開第00959322(EP,A2)
【文献】特開2002-159473(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111336883(CN,A)
【文献】米国特許第05537719(US,A)
【文献】特開2012-093130(JP,A)
【文献】実開昭51-038915(JP,U)
【文献】特開昭58-048813(JP,A)
【文献】特開2000-321008(JP,A)
【文献】特開2001-108483(JP,A)
【文献】特開2014-133279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 3/10-3/1094
5/00-5/30
7/00-7/34
11/00-11/30
21/00-21/32
G01D 5/00-5/252
5/39-5/62
B65D 61/00-63/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端と基端とを有する長尺の部材であり、且つ長手方向に沿って複数個の係止歯が一定間隔で係止歯設置面に設けられた第1部材と、前記第1部材を挿通可能な挿通孔が形成されているとともに、前記複数個の係止歯のそれぞれに係合可能な係止爪を有する第2部材と、を備え、前記複数個の係止歯のそれぞれに係る少なくとも一部および前記係止爪の少なくとも一部は、導電性を有している、少なくとも1つの変位測定器具と、
前記変位測定器具と電気的に接続されており、前記変位測定器具の前記第1部材を挿通させた状態で当該第1部材の長手方向に沿って前記第2部材が変位することで前記係止爪と前記複数個の係止歯との間の導通が変化することによって生じる接点信号の回数を電気的に検出する信号検出装置と、
を備えている、変位測定装置。
【請求項2】
前記変位測定器具は、
前記複数個の係止歯のそれぞれが、前記第1部材における前記係止歯設置面の平面視において当該第1部材の幅方向に平行な稜線を先端に有する形状であり、
前記複数個の係止歯のそれぞれの前記稜線を形成する2つの面の内、前記第1部材の前記先端側の第1面に係る前記係止歯設置面に対する傾斜角は、前記第1部材の前記基端側の第2面に係る前記係止歯設置面に対する傾斜角よりも大きい、請求項に記載の変位測定装置。
【請求項3】
前記変位測定器具は、
前記第2部材が、前記係止爪を前記係止歯設置面から離れる方向に変位させて前記複数個の係止歯と前記係止爪との係合を解除するロック解除機構を備えている、請求項またはに記載の変位測定装置。
【請求項4】
前記変位測定器具は、
前記第1部材が屈曲性を有しており、
前記第2部材が、前記第1部材の前記基端に固定されている、請求項からのいずれか1項に記載の変位測定装置。
【請求項5】
前記変位測定器具は、
前記第2部材が、前記第1部材とは分離して設けられている、請求項からのいずれか1項に記載の変位測定装置。
【請求項6】
前記変位測定器具を複数個備えている、請求項からのいずれか1項に記載の変位測定装置。
【請求項7】
植物の変位を測定するために用いられる、請求項1から6のいずれか1項に記載の変位測定装置。
【請求項8】
請求項に記載の変位測定装置を使用して測定対象物の周囲長の増加量を変位として測定する方法であって、
前記変位測定器具の前記第1部材の前記先端を前記第2部材の前記挿通孔に挿通させた状態で、測定対象物の外周面に当該変位測定器具を巻きつける変位測定器具設置工程と、
前記変位測定器具の前記第1部材の長手方向に沿って前記第2部材が変位することで前記係止爪と前記複数個の係止歯との間の導通が変化することによって生じる接点信号の回数を、前記信号検出装置によって電気的に検出する信号検出工程と、を含む、変位測定方法。
【請求項9】
請求項に記載の変位測定装置を使用して測定対象物における第1地点に対する第2地点の相対的な変位を測定する方法であって、
前記変位測定器具の前記第1部材の前記先端を前記第2部材の前記挿通孔に挿通させた状態で、測定対象物に当該変位測定器具を固定する変位測定器具設置工程と、
前記変位測定器具の前記第1部材の長手方向に沿って前記第2部材が変位することで前記係止爪と前記複数個の係止歯との間の導通が変化することによって生じる接点信号の回数を、前記信号検出装置によって電気的に検出する信号検出工程と、を含み、
前記変位測定器具設置工程は、
前記変位測定器具の前記第2部材を、前記第1地点に固定する第2部材固定工程と、
前記変位測定器具の前記第1部材の前記基端を前記第2地点に固定する第1部材固定工程と、
前記第1部材の前記先端を前記第2部材の前記挿通孔に挿通させる挿通工程と、を含む、変位測定方法。
【請求項10】
少なくとも1つの変位測定器具と、
押下部材を有し、当該押下部材が押下されると接点信号を生成する信号生成装置と、
前記信号生成装置と電気的に接続されており、当該信号生成装置が生成した接点信号の回数を電気的に検出する信号検出装置と、を備え、
前記変位測定器具は、
先端と基端とを有する長尺の部材であり、且つ長手方向に沿って複数個の係止歯が一定間隔で係止歯設置面に設けられた第1部材と、
前記第1部材を挿通可能な挿通孔が形成されているとともに、前記複数個の係止歯のそれぞれに係合可能な係止爪を有する第2部材と、を備え、
前記第2部材が、前記第1部材を挿通させた状態で当該第1部材の長手方向に沿って前記第2部材が変位することにより生じる前記係止爪の変位と連動して前記信号生成装置の前記押下部材を押下可能な押圧機構を備えている、変位測定装置。
【請求項11】
請求項10に記載の変位測定装置を使用して測定対象物の周囲長の増加量を変位として測定する方法であって、
前記変位測定器具の前記第1部材の前記先端を前記第2部材の前記挿通孔に挿通させた状態で、測定対象物の外周面に当該変位測定器具を巻きつける変位測定器具設置工程と、
前記変位測定器具の前記第1部材の長手方向に沿って前記第2部材が変位することに連動して前記信号生成装置が生成した接点信号を、前記信号検出装置によって電気的に検出する信号検出工程と、を含む、変位測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変位測定器具、変位測定装置および変位測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
美味しいミカンを生産するには、樹体が受けている乾燥ストレスを把握し、適度な乾燥ストレスを維持する必要がある。しかし、乾燥ストレスの把握は生産者の経験と勘に頼っているのが現状である。また、生産規模の大きい経営体では乾燥ストレスの見える化が求められている。
【0003】
乾燥ストレスの指標として、一日当たりの果実肥大量は有用な情報であり、果実肥大量を用いたかん水指標は既に作成されている(非特許文献1)。果実肥大量の測定は、1つの園地につき数本の樹を選び、1樹当たり数個の果実に目印を付け、果径の測定が行われる。この測定を数日~1週間毎に行い、果実肥大量が算出される。果実肥大量は通常、ノギスで果径を定期的(例えば1週間毎)に測定し、肥大量を経過日数で除して一日当たりの肥大量として算出される。しかし、ノギスによる測定は、時間と労力を要する。このため、乾燥ストレスを見える化するためには、果実肥大量の計測の自動化が必要である。
【0004】
果実肥大量の計測を自動化する手段として、例えば、デンドロメーターがある。デンドロメーターは、データロガーと組み合わせることで、経時的(例えば1時間毎)に果径をミクロン単位で測定することが可能である。また、巻尺のように一定の間隔で印刷された黒線がセンサ上を通過した回数をエンコーダで読み取って果実の円周を光学的に測定することで果実の肥大量を測定する装置(非特許文献2)、および果実を画像として記録して果実肥大量を測定する手法(特許文献1)が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-236866号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】「極早生ウンシュウ「岩崎早生」の高品質果実生産のための水分ストレス誘導指標」、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センタ 平成19年度研究成果情報[online]、インターネット<URL:http://www.naro.affrc.go.jp/org/karc/seika/kyusyu_seika/2007/2007157.html>
【文献】Thalheimer M., Computers and Electronics in Agriculture, 123 (2016) 149-153
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
デンドロメーターは微細な果径の変化を測定できるが、非常に高額なセンサである。このため、複数の果実で果径を測定するには多額の経費が必要となる。また、非特許文献2に記載のような光学的手法を用いて果実の円周を測定する装置も、センサが高額であるため、多額の経費が必要となる。また、果実以外の測定対象物(例えば、動物、非生物の物体(移動体または静物)等)にも広く適用できるセンサがあれば、種々の分野において有用である。
【0008】
本発明の一態様は、既存のセンサよりも低コストであり、且つ簡単に測定対象物における任意の部位の長さの増加を測定することができる測定手法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る変位測定器具は、先端と基端とを有する長尺の部材であり、且つ長手方向に沿って複数個の係止歯が一定間隔で設けられた第1部材と、前記第1部材を挿通可能な挿通孔が形成されているとともに、前記複数個の係止歯のそれぞれに係合可能な係止爪を有する第2部材と、を備え、前記複数個の係止歯のそれぞれに係る少なくとも一部、前記第1部材において前記複数個の係止歯が設けられた係止歯設置面、および前記係止爪の少なくとも一部は、導電性を有している構成である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係る変位測定器具によれば、既存のセンサよりも低コストであり、且つ簡単に測定対象物における第1地点および第2地点の間の長さの増加を変位として測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態1に係る変位測定器具の概略の構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態1に係る変位測定器具の使用の一例を説明する図である。
図3】本発明の実施形態1に係る変位測定器具において、第1部材を挿通させた第2部材の拡大断面図である。
図4】本発明の実施形態1に係る変位測定器具において、係止歯の一部を拡大して示す図である。
図5】本発明の実施形態2に係る変位測定装置の使用の一例を説明する図である。
図6】本発明の実施形態3に係る変位測定装置の使用の一例を説明する図である。
図7】本発明の実施形態4に係る変位測定装置の概略の構成を示す図である。
図8】本発明の実施形態2に係る変位測定装置の使用の他の一例を説明する図である。
図9】本発明の実施形態3に係る変位測定装置の使用の他の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、先に説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない場合がある。
【0013】
〔実施形態1〕
<変位測定器具1の構成>
実施形態1に係る変位測定器具1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、実施形態1に係る変位測定器具1の概略の構成を示す図である。図1の1001は変位測定器具1をz軸負方向から見た図であり、1002は1001のA-A矢視断面図である。変位測定器具1は、図1に示される3次元座標空間に配置される。第1部材10における係止歯設置面14をxy平面に配置し、xy平面に直交する法線方向のうち、天頂へ向かう方向をz軸方向と定める。なお、本明細書において「変位」とは、測定対象物における第1地点に対する第2地点の相対的な位置の変化だけでなく、変化量の意味も含む。また、第1地点と第2地点とを結ぶ直線を仮定した場合、第1地点に対して第2地点が相対的に変位することで前記直線の長さが変化することから、本明細書において前記「変位」は、第1地点および第2地点の間の長さの変化および長さの変化量の意味も含む。また、本明細書において「第1地点および第2地点の間の長さ」は「第1地点および第2地点の間の距離」である。
【0014】
図1に示すように、変位測定器具1は、第1部材10と、第2部材20とを備えている。第1部材10は、先端11と基端12とを有する長尺の部材であり、且つ長手方向に沿って複数個の係止歯13が一定間隔で設けられている。第1部材10を形成する一対の主面の内、第1部材10の係止歯13が設けられている面を係止歯設置面14と称する。
【0015】
図1の1002に示すように、第2部材20は、第1部材10を挿通可能な挿通孔21が形成されているとともに、複数個の係止歯13のそれぞれに係合可能な係止爪22を有している。また、第2部材20は、複数個の係止歯13と係止爪22との係合を解除するロック解除機構23を備えている。
【0016】
変位測定器具1において、第2部材20は、第1部材10の基端12に固定されている。これにより、第1部材10の先端11を第2部材20の挿通孔21に挿通させることで、図2に示すように、第1部材10を輪にして、例えば測定対象物S1としてのみかんの果実の外周面に変位測定器具1を巻きつけて装着することができる。従って、変位測定器具1は、果実等の周囲長の増加量を測定するためのセンサとしての利用に適している。
【0017】
変位測定器具1において、複数個の係止歯13のそれぞれに係る少なくとも一部および係止爪22の少なくとも一部は、導電性を有している。2本の端子付の導線30は、第2部材20の係止爪22および第1部材10の基端12にそれぞれ接続されている。
【0018】
図3は、図1の1001に示す変位測定器具1において、第1部材10を挿通させた第2部材20のA-A矢視拡大断面図である。第1部材10を挿通孔21に挿通させた状態では、係止爪22は複数個の係止歯13のいずれかと接しており導通可能な状態となっている。但し、第2部材20が第1部材10の長手方向に沿って先端11側に変位すると、これに伴って係止爪22は、係止歯13の突起を越えて1つ隣の係止歯13と接するようになる。係止爪22が係止歯13の突起を越えるときに、係止爪22と第1部材10とは一時的に非接触の状態となり、係止爪22と第1部材10との間の導通が切断されるため、接点信号(パルス)が生じる。接点信号の回数は、係止爪22が係止歯13の突起を越えた回数と等しくなるため、接点信号の回数を検出することで、第2部材20の第1部材10長手方向の変位量を間接的に測定することが可能となる。
【0019】
以下に、変位測定器具1の各部材について説明する。
【0020】
(第1部材10)
第1部材10に設けられた複数個の係止歯13について、図4を参照して説明する。図4は、変位測定器具1において、第1部材10に設けられた複数個の係止歯13の一部を拡大して示す図である。図4の4001は変位測定器具1をz軸負方向から見た拡大図であり、4002は4001のA-A矢視断面図である。図4の4001に示すように、複数個の係止歯13のそれぞれは、第1部材10における係止歯設置面14のz軸負方向からの平面視において第1部材10の幅方向に平行な稜線131を先端に有する形状である。また、複数個の係止歯13のそれぞれは、第1部材10の先端11を第2部材20の挿通孔21に挿通させた状態で、第2部材20が第1部材10の長手方向に沿って先端11側に変位可能なように弾性を有している。
【0021】
図4の4002に示すように、複数個の係止歯13のそれぞれの稜線131を形成する2つの面の内、第1部材10の先端11側の第1面132に係る係止歯設置面14に対する傾斜角を傾斜角αとし、第1部材10の基端12側の第2面133に係る係止歯設置面14に対する傾斜角を傾斜角βとすると、傾斜角αは傾斜角βよりも大きい。複数個の係止歯13のそれぞれが傾斜角α>傾斜角βを満たす形状であることにより、第1部材10を挿通孔21に挿通させた状態で、第2部材20が第1部材10の長手方向に沿って先端11側に変位し易くすることができる。その結果、成長による果実の周囲長の増加に伴って果実の外周面に巻きつけた第1部材10の輪が広がることが可能となる。
【0022】
変位測定器具1では、傾斜角αは90°である。傾斜角αが90°であれば、第1部材10を挿通孔21に挿通させた状態で、第2部材20が第1部材10の長手方向に沿って基端12側に変位することを防ぐことができる。その結果、果実の外周面に巻きつけた第1部材10の輪の大きさが装着時よりも小さくなることを防ぐことができる。
【0023】
複数個の係止歯13間の間隔Dは隣り合う係止歯13間の距離であり、係止歯13が稜線131を先端に有する形状である場合は、各係止歯13の稜線131間の距離である。
【0024】
複数個の係止歯13間の間隔Dは、変位測定器具1の用途に応じて適宜設定すればよい。例えば、変位測定器具1を用いて、みかんの樹体の乾燥ストレスを把握するための果実肥大量を測定する場合、変位測定器具1には、果実の周囲長で一日あたり約1mmの果実肥大量(果径で一日あたり0.3mmの果実肥大量に相当)を測定可能な分解能を有していればよい。従って、複数個の係止歯13間の間隔Dは、第2部材20が第1部材10長手方向に約1mm変位することに伴って、少なくとも1回の接点信号を生じ得る長さであればよい。このため、変位測定器具1が測定に十分な分解能を有する観点から、複数個の係止歯13間の間隔Dは1mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましい。また、複数個の係止歯13間の間隔Dの下限は限定されないが、係止歯13を形成可能である観点から、通常、0.5mm程度である。
【0025】
複数個の係止歯13は、複数個の係止歯13のそれぞれに係る少なくとも一部が導電性を有していればよい。係止爪22との接触によって導通可能とする観点から、少なくとも複数個の係止歯13のそれぞれに係る第2面133および係止歯設置面14が導電性を有していることが好ましい。
【0026】
第1部材10の長さおよび幅は特に限定されず、変位測定器具1の用途に応じて適宜設定することができる。一例として、変位測定器具1を用いて果実の周囲長の増加量を測定する場合、第1部材10の長さは、測定対象物の果実の周囲に巻きつけ可能であり、且つ成長による果実の周囲長の増加に伴い第1部材10の輪が広がることが可能な長さであることが好ましい。
【0027】
(第2部材20)
第2部材20に設けられた挿通孔21、係止爪22およびロック解除機構23について、図3を参照して説明する。挿通孔21は、第1部材10を挿通可能な大きさであればよい。変位測定器具1では、挿通孔21の上下の内壁が第2部材20が固定されている第1部材10の主面と平行に形成されている。これにより、第1部材10の先端11側の主面を、第2部材20が固定されている第1部材10の基端12側の主面に対して平行に挿通孔21に挿通させることができる。その結果、第1部材10の先端11側の主面を基端12側の主面に対して垂直に挿通孔21に挿通させる場合と比較して、変位測定器具1を測定対象物S1の外周面に巻きつけた際に第1部材10と測定対象物S1の外周面との間に生じる隙間を少なくすることができる。
【0028】
ロック解除機構23は、第1部材10を挿通孔21に挿通させた状態で、係止爪22を第1部材10の係止歯設置面14から離れる方向に変位させて複数個の係止歯13と係止爪22との係合を解除するための機構である。変位測定器具1において、ロック解除機構23は係止爪設置部231とレバー232とを備えおり、第2部材20の上部に設けられている。係止爪設置部231の下面は挿通孔21の上側内壁の一部を形成しており、係止爪22が設けられている。レバー232は、係止爪設置部231の上面にZ軸方向に設けられている。ロック解除機構23のレバー232をX軸正方向に押すと、係止爪設置部231がZ軸正方向に弾性変形して、係止爪22が第1部材10の係止歯設置面14から離れる方向(Z軸正方向)に変位し、係止歯13と係止爪22との係合が解除される。
【0029】
前述のとおり、変位測定器具1は、係止歯13の形状に起因して、係止歯13と係止爪22とが係合した状態では、第2部材20を第1部材10の長手方向に沿って基端12側に移動させることができず、第1部材10の輪の大きさを縮めることができない。そこで、ロック解除機構23のレバー232をX軸正方向に押して係止歯13と係止爪22との係合を解除することで、第1部材10の輪の大きさを縮められる状態にしてから変位測定器具1を果実に装着することが可能となる。ロック解除機構23は、係止歯13と係止爪22との係合を解除することができればこれに限定されず、公知の結束バンドでロック解除機構として採用されている構成を変位測定器具1においても適用することが可能である。
【0030】
変位測定器具1において、係止爪22は、先端に稜線221を有する形状である。稜線221は、第1部材10を挿通孔21に挿通させた状態で、第1部材10の各係止歯13の各稜線131に平行になるように形成されている。係止爪22の稜線221を形成する2つの面の内、第1部材10を挿通孔21に挿通させた状態で第1部材10の先端11側を向く面を第1面222、基端12側を向く面を第2面223と称する。第2面223の係止爪設置面に対する傾斜角は90°であり、第1面222の係止爪設置面に対する傾斜角は90°よりも小さい。係止爪22の形状は、第1部材10の各係止歯13と係合可能であればこれに限定されない。
【0031】
<変位測定器具1の製造方法>
変位測定器具1は、公知の結束バンドにおけるバンド部およびバックル部を、それぞれ、第1部材10および第2部材20として利用して製造することができる。変位測定器具1の製造に用いる結束バンドの種類は特に限定されず、公知のあらゆる結束バンドを利用することができる。
【0032】
第1部材10として公知の結束バンドのバンド部を利用する場合、通常の結束バンドとは係止歯の向きを逆にして利用すればよい。第2部材20としてのバックル部は、第1部材10としてのバンド部の先端側(バンド部の2つの端部の内、バックル部が通常固定されている端部とは反対の端部側)に固定すればよい。導線30は、銅線等の電気を通すことが可能な導線を利用することができる。このため、変位測定器具1を、デンドロメーター等の既存のセンサよりも低コスト且つ簡単に製造することができる。
【0033】
第1部材10および第2部材20は、射出成形、押出成形等の公知の結束バンドの製造方法と同じ任意の方法によって成形することも可能である。変位測定器具1の第1部材10は、屈曲性を有している。このため、変位測定器具1の第1部材10は、屈曲性を有する、例えば、合成樹脂、金属等から成形することができる。屈曲性を有する合成樹脂の例には、ナイロン樹脂、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリエチレン等が含まれる。屈曲性を有する金属の例には、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、鉄等が含まれる。第2部材20は、第1部材10と同じ材料から成形されていてもよく、異なる材料から成形されていてもよい。
【0034】
第1部材10および第2部材20が合成樹脂製である場合は、表面に金属膜層を形成することによって導電性が付与される。金属膜層は、例えば、スパッタリング、蒸着、イオンプレーティング等の任意の真空めっき法によって形成することができる。膜質、膜厚を緻密に制御でき、得られた金属膜の基材への密着力が高いことから、スパッタリングによって金属膜層を形成することが好ましい。金属膜層を形成する金属の例には、例えば、銅、クロム、アルミニウム、金、銀等の金属が含まれる。
【0035】
第1部材10において、係止爪22との接触によって導通可能とする観点から、金属膜層は、少なくとも複数個の係止歯13のそれぞれに係る第2面133および係止歯設置面14に形成されていればよいが、金属膜層が第1部材10の表面全体にわたって形成されていてもよい。また、係止爪22が係止歯13の突起を越えるときにより強い接点信号を生じさせる観点から、複数個の係止歯13のそれぞれに係る第1面132には金属膜層が形成されていないことがより好ましい。一方、第1部材10が屈曲性を有する金属製である場合は、第1部材10の製造工程において、表面に金属膜層を形成する工程を省略することができる。
【0036】
また、第2部材20において、係止爪22と複数個の係止歯13のそれぞれとの接触によって導通可能とする観点から、係止爪22における金属膜層は、少なくとも係止爪22の第1面222に形成されていればよい。導線30は、係止爪22の金属膜層が形成された面(例えば、第1面222)と導通するように設ければよい。また、係止爪22が係止歯13の突起を越えるときにより強い接点信号を生じさせる観点から、係止爪22の第2面223に金属膜層が形成されていないことがより好ましい。また、挿通孔21の内面には金属膜層が形成されていないことが好ましい。このように、金属膜層を形成することで第2部材20における所望の部位に選択的に導電性を付与することができるため、第2部材20は合成樹脂製であることが好ましい。
【0037】
<変位測定器具1の効果>
前述のとおり、変位測定器具1は、デンドロメーター等の既存のセンサよりも低コスト且つ簡単に製造することができる。従って、変位測定器具1によれば、既存のセンサよりも低コストで、且つ簡単に測定対象物における第1地点および第2地点の間の長さの増加を変位として測定することができる測定手法を実現することができる。変位測定器具1を利用した変位測定装置および変位測定方法については、実施形態2で説明する。
【0038】
<変位測定器具1の変形例>
(変形例1)
本実施の形態において、複数個の係止歯13のそれぞれが、稜線131を先端に有する形状である例を示した。しかし、複数個の係止歯13のそれぞれは、係止爪22と係合可能なように係止歯設置面14からz軸正方向に突出する突起であればよく、係止歯13の形状は特に限定されない。
【0039】
また、図4には、複数個の係止歯13の先端の稜線131を形成する2つの面(第1面132および第2面133)と、係止歯設置面14とがそれぞれ成す傾斜角α、傾斜角βが、傾斜角α>傾斜角βを満たし、且つ傾斜角αが90°である形状を有する係止歯13の例を説明した。しかし、複数個の係止歯13のそれぞれにおいて傾斜角α>傾斜角βを満たす限りにおいて、傾斜角αの角度は90°に限定されない。係止爪22が係止歯13の突起を越えるときにより強い接点信号を生じさせる観点から、複数個の係止歯13のそれぞれにおいて、傾斜角αが90°よりも大きいことがより好ましい。また、傾斜角α>傾斜角βを満たす限りにおいて、傾斜角αが90°よりも小さくてもよい。
【0040】
(変形例2)
本実施の形態において、変位測定器具1として、係止歯13と係止爪22とが係合した状態で通常は導通状態であり、係止爪22が係止歯13の突起を越えるときに、係止爪22と第1部材10との間の導通が一時的に切断されて接点信号を生じる構成である例を示した。
【0041】
〔実施形態2〕
<変位測定装置100の構成>
実施形態2に係る変位測定装置100の構成について、図5を参照して説明する。図5は、実施形態2に係る変位測定装置100の使用の一例を説明する図である。図5に示すように、変位測定装置100は、複数個の変位測定器具1と、データロガー(信号検出装置)40とを備えている。図5では、変位測定装置100の適用例として、変位測定装置100を用いてみかん(測定対象物)S1a~S1eの周囲長の増加量をそれぞれ測定することによりみかんS1a~S1eが成長している樹体における果実肥大量を測定する例を示している。以下に、変位測定装置100の各部材について説明する。
【0042】
(変位測定器具1)
変位測定装置100では、5個の変位測定器具1が、導線30によって互いに直列に連結されている。5個の変位測定器具1は、導線30によってデータロガー40と電気的に接続されている。変位測定装置100が複数個の変位測定器具1を備えていることで、複数の果実の平均値として変位を測定することが可能となり、その結果、変位測定器具1のみかけの測定分解能を向上させることができる。なお、変位測定器具1の構成については実施形態1で説明したとおりであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0043】
変位測定装置100が備えている変位測定器具1の数は適宜変更することができる。例えば、みかんの果実肥大量を測定する場合は、一樹あたり5~6個の果実肥大量を測定することが好ましいことから、変位測定装置100は、5~6個の変位測定器具1を備えていることが好ましい。変位測定装置100は、目的に応じて1個の変位測定器具1を備える構成としてもよい。
【0044】
(データロガー40)
データロガー40は、複数個の変位測定器具1と電気的に接続されており、変位測定器具1の第1部材10を挿通させた状態で第1部材10の長手方向に沿って第2部材20が変位することで係止爪(図示せず)と複数個の係止歯(図示せず)との間の導通が変化することによって生じる接点信号の回数を電気的に検出する。前記「導通が変化する」とは、導通状態から一時的な非導通状態を経て導通状態が回復する一連の変化をいう。この一連の変化においては、一時的な非導通状態になったときに接点信号が生じる。また、変位測定器具1が実施形態1の変形例2に示した構成である場合には、前記「導通が変化する」とは、非導通状態から一時的な導通状態を経て非導通状態が回復する一連の変化をいう。この一連の変化においては、一時的な導通状態になったときに接点信号が生じる。
【0045】
データロガー40としては、公知のデータロガーを用いることができ、例えば、CR1000(Campbell Scientific製)、パルスロガーLR5061(日置電機株式会社製)、おんどとりRTR-505-P(株式会社ティアンドデイ製)等を挙げることができる。
【0046】
<変位測定装置100の効果>
測定対象物の成長による果実の周囲長の増加に伴い変位測定器具1の第1部材10の輪が広がることで第1部材10の長手方向に沿って第2部材20が変位して、係止爪(図示せず)と複数個の係止歯(図示せず)との間の導通が変化することによって接点信号が生じる。変位測定装置100は、変位測定器具1とデータロガー40とを備えることで、この接点信号の回数を検出することができる。
【0047】
デンドロメーター等の既存のセンサは、1つのセンサが1台のデータロガー(または1チャンネル)を専有するため、計測できる果実の数が制限される。一方、変位測定装置100では、1台のデータロガーに対して、複数個の変位測定器具1を互いに直列に連結して接続することができるため、1台のデータロガー40で複数個の果実における変位を測定することが可能である。
【0048】
また、変位測定装置100は、変位測定器具1における第2部材20の第1部材10長手方向の変位を電気的に検出することで測定対象物における変位を測定するので、公知の光学的手法を用いて果実の肥大量を測定する装置(非特許文献2)および画像から果実肥大量を測定する手法(特許文献1)のように測定結果が周囲環境の明るさの影響を受け難い。このため、変位測定装置100は、風雨にさらされる露地の果実に対しても好適に適用することができる。
【0049】
<変位測定装置100の変形例>
変位測定装置100においても実施形態1に記載した「変位測定器具1の変形例」の記載に準じる。また、変位測定装置100は、データロガー40が検出した導通の変化によって生じる接点信号の回数に基づき第2部材20の変位量を算出する変位量算出装置をさらに備えていてもよい。または、変位測定装置100は、イーサネット(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)等の通信インタフェース(図示しない)をさらに備えていてもよく、この場合は、前記変位量算出装置は、ネットワークを介して変位測定装置100と有線接続または無線接続された他のコンピュータ(例えば、クラウドサーバを構成するコンピュータ)に備えられていてもよい。また、変位測定装置100は、変位量算出装置が算出した第2部材20の変位量に基づき、樹体が乾燥ストレスを受けているか否かを判定し、判定結果を表示装置に出力する判定装置をさらに備えていてもよい。
【0050】
<変位測定装置100を使用した変位測定方法M1>
変位測定装置100を使用して測定対象物における第1地点に対する第2地点の相対的な変位を測定することで、測定対象物の周囲長の増加量を変位として測定することができる。すなわち、本発明の一態様に係る変位測定方法M1は、前述の変位測定装置100を使用して測定対象物S1の周囲長の増加量を変位として測定する方法であって、変位測定器具1の第1部材10の先端11を第2部材20の挿通孔(図示せず)に挿通させた状態で、測定対象物S1の外周面に変位測定器具1を巻きつける変位測定器具設置工程と、変位測定器具1の第1部材10の長手方向に沿って第2部材20が変位することで係止爪(図示せず)と複数個の係止歯(図示せず)との間の導通が変化することによって生じる接点信号の回数を、データロガー(信号検出装置)40によって電気的に検出する信号検出工程と、を含む。なお、変位測定方法M1において、前記「第1地点」は変位測定器具1を設置した時点での第2部材20の位置(初期位置)であり、前記「第2地点」は測定時点での第2部材20の位置である。測定対象物の周囲長の増加に伴って、第2部材20の位置は、前記第1地点(初期位置)から、第1部材10の長手方向に沿って変位する。このため、前記第1地点に対する前記第2地点の相対的な変位を測定することで、測定対象物S1における前記第1地点および前記第2地点の間の長さ、すなわち第2部材20測定対象物S1の周囲長が増加したことおよびその増加量を変位として測定することができる。
【0051】
以下に、本発明の一態様に係る変位測定方法M1の各工程について説明する。
【0052】
(変位測定器具設置工程)
変位測定器具設置工程では、測定対象物S1の外周面に変位測定器具1を巻きつけて装着する。図5は、測定対象物S1としてのみかんS1a~S1eの外周面にそれぞれ変位測定器具1を巻きつけた様子を示している。測定対象物S1がみかんの果実である場合、ノギスまたはメジャーを使用する公知の果径の測定方法と同様に、みかんの果実赤道部に変位測定器具1を装着することが好ましい。
【0053】
また、測定対象物S1がみかんの果実である場合、一樹あたり5~6個の果実に対して変位測定器具1を装着することが好ましい。
【0054】
(信号検出工程)
測定対象物S1の成長による果実の周囲長の増加に伴い変位測定器具1の第1部材10の輪が広がることで、変位測定器具1の第1部材10の長手方向に沿って第2部材20が第1地点(初期位置)から変位し、係止爪(図示せず)と複数個の係止歯(図示せず)との間の導通が変化することによって接点信号が生じる。信号検出工程では、この接点信号の回数を、データロガー40によって電気的に検出する。信号検出工程では、データロガー40に接続された複数個の変位測定器具1のそれぞれにおいて生じた接点信号の回数の合計を積算値として記録する。
【0055】
(その他工程)
本発明の一態様に係る変位測定方法M1は、前記「信号検出工程」の後に、さらに以下の工程を含んでいていてもよい。
【0056】
(a)変位量算出工程
変位量算出工程では、信号検出工程で検出した接点信号の回数に基づき、一日あたりの第2部材20の変位量を算出する。例えば、まず、対象日前日から対象日までの一日間で検出された接点信号の回数(積算値)を、変位測定装置100が備えている変位測定器具1の個数で除して、接点信号の回数の平均値を算出する。次いで、変位測定器具1の係止歯13間の間隔D(mm)(図4)に接点信号の回数の平均値を乗じて、対象日前日から対象日までの一日間での第2部材20の変位量(移動量)を算出する。得られた第2部材20の変位量(移動量)は、対象日前日から対象日までの一日間での測定対象物S1の周囲長の増加量に相当する。変位量算出工程は、信号検出工程の結果に基づきユーザが行ってもよいし、前述の「変位測定装置100の変形例」に記載の変位量算出装置が行ってもよい。
【0057】
(b)乾燥ストレス判定工程
乾燥ストレス判定工程では、変位量算出工程で算出した一日あたりのみかんS1a~S1eの周囲長の増加量に基づき、測定対象物S1の樹体が乾燥ストレスを受けているか否かを判定する。具体的には、一日あたりの測定対象物S1の周囲長の増加量が約1mm以上であった場合に、測定対象物S1の樹体は乾燥ストレスを受けていないと判定する。一方で、一日あたりの測定対象物S1の周囲長の増加量が約1mmを下回った場合に、測定対象物S1の樹体は乾燥ストレスを受けていると判定する。乾燥ストレス判定工程は、変位量算出工程の結果に基づきユーザが行ってもよいし、前述の「変位測定装置100の変形例」に記載の判定装置が行ってもよい。
【0058】
乾燥ストレス判定工程は、信号検出工程で検出した一日あたりの接点信号の回数(積算値)に基づき、測定対象物S1の樹体が乾燥ストレスを受けているか否かを判定する工程とすることもできる。具体的には、一日あたりの接点信号の回数(積算値)が閾値以上であった場合に、測定対象物S1の樹体は乾燥ストレスを受けていないと判定する。一方で、一日あたりの接点信号の回数(積算値)が閾値を下回った場合に、測定対象物S1の樹体は乾燥ストレスを受けていると判定する。前記「閾値」は、測定に使用する変位測定器具1の個数および変位測定器具1の係止歯13間の間隔D(mm)(図4)に基づいて設定することができる。例えば、係止歯13間の間隔Dが1mmである変位測定器具1を5個使用して測定する場合は、前記「閾値」を5と設定する。
【0059】
<変位測定方法M1の効果>
本発明の一態様に係る変位測定方法M1によれば、既存のセンサよりも低コストであり、且つ簡単に測定対象物S1の周囲長の増加および増加量を変位として測定することができる。
【0060】
<適用対象>
本実施形態においては、測定対象物S1の一例として、みかんの果実に本発明の一態様に係る変位測定装置100および変位測定方法M1を適用し、みかんの果実の周囲長の増加量を測定することでみかんの果実の成長量(肥大量)を測定する例を示した。しかし、本発明の一態様に係る変位測定装置100および変位測定方法M1の適用対象はみかんの果実に限定されない。本発明の一態様に係る変位測定装置100および変位測定方法M1は、周囲長の増加量を変位として測定することが望まれるあらゆる測定対象物に対して適用することができる。
【0061】
かかる測定対象物S1の例には、植物、動物、非生物である物体(移動体または静物)が含まれる。植物の例には、メロン、リンゴ、スイカ等の既定のサイズに達したら収穫される果実;ダイコン、ニンジン等の根菜;キャベツ、レタス等の葉菜;樹木の幹等が含まれる。動物の例には、ヒト、家畜、愛玩動物等が含まれる。非生物である物体の例には、ガス等のタンク;ガス、水道等の管;ボール、風船等の球体等が含まれる。
【0062】
従って、本発明の一態様に係る変位測定装置100および変位測定方法M1は、測定対象物S1の成長量を測定する目的以外にも使用することができる。一例として、図8に、変位測定装置100aを非生物である風船S1fに適用した例を示す。変位測定装置100aは、1個の変位測定器具1と、データロガー(信号検出装置)40とを備えている。1個の変位測定器具1は、導線30によってデータロガー40と電気的に接続されている。変位測定装置100aを風船S1fに適用することにより、内圧の変化による風船S1fの周囲長の増加量(膨張量)を変位として測定することで、風船S1fが破裂する危険性を検知することが可能となる。
【0063】
〔実施形態3〕
<変位測定装置200の構成>
実施形態3に係る変位測定装置200の構成について、図6を参照して説明する。図6は、実施形態3に係る変位測定装置200の使用の一例を説明する図である。図6に示すように、変位測定装置200は、1個の変位測定器具1aと、データロガー(信号検出装置)40とを備えている。図6では、変位測定装置200の適用例として、変位測定装置200を用いて樹木の枝(測定対象物)S2における第1地点P1に対する第2地点P2の相対的な変位を測定することで、樹木の枝S2の伸長量を変位として測定する例を示している。以下に、変位測定装置200の各部材について説明する。
【0064】
(変位測定器具1a)
変位測定装置200では、1個の変位測定器具1aが、導線30によってデータロガー40と電気的に接続されている。変位測定器具1aは、第2部材20が、第1部材10の基端12に固定されておらず、第1部材10とは分離して(別体として)設けられている点が、実施形態1および実施形態2に示した変位測定器具1と異なる。変位測定器具1aは、第1部材10の基端12を樹木の枝S2における第2地点P2に固定し、第2部材20を樹木の枝S2における第1地点P1に固定し、第1部材10の先端11を第2部材20の挿通孔に挿通させて使用される。変位測定器具1aをかかる構成とすることで、任意の2点間の距離の増加量を測定することができる。なお、変位測定器具1aの第1部材10、第2部材20の構成については実施形態1で説明したとおりであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0065】
(データロガー40)
データロガー40は、変位測定器具1aと電気的に接続されている。なお、データロガー40については実施形態2で説明したとおりであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0066】
<変位測定装置200の効果>
変位測定装置200は、変位測定装置100と同様の効果を奏する。また、測定対象物の生長に伴い第1部材10の基端12を固定した樹木の枝S2における第2地点P2と、第2部材20を固定した樹木の枝S2における第1地点P1との間の距離が広がることで、第1部材10の長手方向に沿って第2部材20が変位して、係止爪(図示せず)と複数個の係止歯(図示せず)との間の導通が変化することによって接点信号が生じる。変位測定装置200は、変位測定器具1aとデータロガー40とを備えることで、この接点信号の回数を検出することができる。
【0067】
<変位測定装置200の変形例>
変位測定装置200においても、実施形態1に記載した「変位測定器具1の変形例」および実施形態2に記載した「変位測定装置100の変形例」の記載に準じる。
【0068】
(変形例1)
本実施の形態において、変位測定装置200が1個の変位測定器具1aを備えている例を示した。しかし、変位測定装置200は、複数個の変位測定器具1aを備えている構成としてもよい。かかる構成とすることで、複数の枝の平均値として樹体の生長量を測定することが可能となり、その結果、変位測定器具1aのみかけの測定分解能を向上させることができる。
【0069】
(変形例2)
本実施の形態において、本実施の形態において、変位測定器具1aの第1部材10が屈曲性を有する長尺のバンド状部材である例を示した。しかし、変位測定装置200においては、変位測定器具1aの第1部材10は、屈曲性を有していなくてもよい。また、変位測定器具1aの第1部材10は、バンド状部材に限定されず、棒状等であってもよい。
【0070】
<変位測定装置200を使用した変位測定方法M2>
変位測定装置200を使用して測定対象物における第1地点に対する第2地点の相対的な変位を測定することで、測定対象物S2の第1地点および第2地点の間の距離の増加量を変位として測定することができる。すなわち、本発明の一態様に係る変位測定方法M2は、前述の変位測定装置200を使用して測定対象物S2における第1地点P1に対する第2地点P2の相対的な変位を測定する方法であって、変位測定器具1aの第1部材10の先端11を第2部材20の挿通孔(図示せず)に挿通させた状態で、測定対象物S2に変位測定器具1aを固定する変位測定器具設置工程と、変位測定器具1aの第1部材10の長手方向に沿って第2部材20が変位することで係止爪(図示せず)と複数個の係止歯(図示せず)との間の導通が変化することによって生じる接点信号の回数を、データロガー(信号検出装置)40によって電気的に検出する信号検出工程と、を含む。
【0071】
以下に、本発明の一態様に係る変位測定方法M2の各工程について説明する。
【0072】
(変位測定器具設置工程)
変位測定器具設置工程では、測定対象物S2に変位測定器具1aを固定して装着する。図6は、測定対象物S2としての樹木の枝に変位測定器具1aを固定具50によって固定した様子を示している。固定具50は、例えば、針金である。変位測定器具設置工程は、以下の3つのサブ工程を含む。これら3つのサブ工程を行う順序は特に限定されない。
【0073】
(A)第2部材固定工程
第2部材固定工程では、変位測定器具1aの第2部材20を、樹木の枝S2の第1地点P1に固定する。第1地点P1は、生長量を測定する基点であることが好ましく、本実施形態において、第1地点P1は、樹木の枝S2の枝元である。なお、第2部材固定工程の変形例として、変位測定器具1aの第2部材20を、樹木の枝S2の第2地点P2に固定してもよい。
【0074】
(B)第1部材固定工程
第1部材固定工程では、変位測定器具1aの第1部材10の基端12を樹木の枝S2の第2地点P2に固定する。本実施形態において、第2地点P2は、樹木の枝S2の生長点(図6では枝S2の先端側)である。なお、第1部材固定工程の変形例として、変位測定器具1aの第1部材10を、樹木の枝S2の第1地点P1に固定してもよい。
【0075】
(C)挿通工程
挿通工程では、第1部材10の先端11を第2部材20の挿通孔(図示せず)に挿通させる。
【0076】
(信号検出工程)
測定対象物S2の生長による第1地点P1と第2地点P2との間の距離が広がることで、第1部材10の長手方向に沿って第2部材20が変位して、係止爪(図示せず)と複数個の係止歯(図示せず)との間の導通が変化することによって接点信号が生じる。信号検出工程では、この接点信号の回数を、データロガー40によって電気的に検出する。信号検出工程では、データロガー40に接続された変位測定器具1aにおいて生じた接点信号の回数の合計を記録する。データロガー40は、検出した接点信号の回数を表示する。
【0077】
(その他工程)
本発明の一態様に係る変位測定方法M2は、前記「信号検出工程」の後に、実施形態2の「その他工程」に記載した工程を含んでいていてもよい。
【0078】
<変位測定方法M2の効果>
本発明の一態様に係る変位測定方法M2によれば、既存のセンサよりも低コストであり、且つ簡単に測定対象物S2における第1地点P1および第2地点P2の間の長さの増加を変位として測定することができる。従って、本発明の一態様に係る変位測定方法M2によれば、既存のセンサよりも低コストであり、且つ簡単に測定対象物S2の任意の2点間の距離の増加および増加量を測定することができる。
【0079】
<適用対象>
本実施形態においては、測定対象物S2の一例として、樹木の枝に本発明の一態様に係る変位測定装置200および変位測定方法M2を適用し、樹木の枝の第1地点P1および第2地点P2間の距離の増加量を測定することで樹木の枝の成長量(伸長量)を測定する例を示した。しかし、本発明の一態様に係る変位測定装置200および変位測定方法M2の適用対象は樹木の枝に限定されない。本発明の一態様に係る変位測定装置200および変位測定方法M2は、任意の2点間の距離の増加量を測定することが望まれるあらゆる測定対象物に対して適用することができる。
【0080】
かかる測定対象物S2の例には、植物、動物、非生物である物体(移動体または静物)が含まれる。植物の例には、樹木の枝;チューリップ等の花の茎;アスパラガス等の野菜の茎等が含まれる。動物の例には、ヒト、家畜、愛玩動物等が含まれる。非生物である物体の例には、線路のレール;橋桁、道路等の構造物のジョイント部分等が含まれる。
【0081】
従って、本発明の一態様に係る変位測定装置200および変位測定方法M2は、測定対象物S2の成長量を測定する目的以外にも使用することができる。測定対象物S2が非生物である物体である場合は、物理的な変化による測定対象物S2の変形量を測定することで、測定対象物S2の状態をモニタすることも可能である。
【0082】
<変位測定方法M2の変形例>
本発明の一態様に係る変位測定装置200および変位測定方法M2は、液体のような特定の形状を有さない物体の変位を測定することも可能である。一例として、図9に、タンクT内の液体S2aの液面の高さの変位の測定に変位測定装置200aを適用した例を示す。変位測定装置200aは、1個の変位測定器具1cと、データロガー(信号検出装置)40とを備えている。1個の変位測定器具1cは、導線30によってデータロガー40と電気的に接続されている。変位測定器具1cは、第2部材20bがフロート25を備えている点が、変位測定器具1aと異なる。
【0083】
測定対象物としての液体S2aは、特定の形状を有さないため、変位測定器具1cを測定対象物に直接固定して装着することができない。そこで、変位測定方法M2の変形例である変位測定方法M2aでは、変位測定器具設置工程の第1部材固定工程において、変位測定器具1cの第1部材10の基端12をタンクTの底面(第2地点)に固定すればよい。また、第1部材10の先端11に向かう長手方向(図1に示される3次元座標空間におけるX軸正方向)が鉛直方向上向きになるように、第1部材10を設置すればよい。第2部材固定工程では、液体S2aの液面の高さ(第1地点)に、第2部材20bの第1部材10長手方向の位置を合わせればよい。
【0084】
第2部材20bはフロート25を備えているため、液体S2aの液面が上昇すると、フロート25がそれに合わせて上昇する。その結果、第1部材10の長手方向に沿って第2部材20bがX軸正方向に変位して、係止爪(図示せず)と複数個の係止歯(図示せず)との間の導通が変化することによって接点信号が生じる。信号検出工程では、この接点信号の回数を、データロガー40によって電気的に検出する。従って、本発明の一態様に係る変位測定方法M2aによれば、既存のセンサよりも低コストであり、且つ簡単に液体S2aの液面の上昇および上昇量を測定することができる。
【0085】
〔実施形態4〕
<変位測定装置300の構成>
実施形態4に係る変位測定装置300の構成について、図7を参照して説明する。図7は、実施形態4に係る変位測定装置300の概略の構成を示す図である。変位測定装置300は、少なくとも1つの変位測定器具1bと、基本スイッチ(信号生成装置)60と、データロガー(信号検出装置)(図示しない)を備えている。図7では、変位測定装置300が備えている変位測定器具1bの内の1つのみを示している。以下に、変位測定装置300の各部材について説明する。
【0086】
(変位測定器具1bおよび基本スイッチ60)
変位測定器具1bは、第2部材20aが基本スイッチ60を固定するための板状の固定部24をさらに備えている点および導電性を有していない点が、変位測定器具1の第2部材20と異なる。また、変位測定器具1bは、第1部材10aが導電性を有していない点が、変位測定器具1の第1部材10と異なる。
【0087】
第2部材20aの固定部24の2つの主面の内、ロック解除機構23と対向する面を第1面241、反対側の面を第2面242とすると、第2面242側に、基本スイッチ60が固定されている。固定部24は中央に貫通孔を有しており、基本スイッチ60のスイッチ(押下部材)61が、当該貫通孔から第1面241側に突出している。スイッチ61は、第2部材20aのロック解除機構23のレバー232の先端と接している。ロック解除機構23のレバー232は、第1部材10を挿通させた状態で第1部材10の長手方向に沿って第2部材20aが変位することにより生じる係止爪22の変位と連動して基本スイッチ60側(図中のx軸正方向)に動く。ロック解除機構23のレバー232のこの動きによってスイッチ61が押下されて接点信号が生じる。従って、第2部材20aにおいて、ロック解除機構23は、押圧機構としての役割も兼ねている。なお、変位測定器具1bの第1部材10a、第2部材20aの前述の相違点以外の構成については実施形態1で説明したとおりであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0088】
基本スイッチ60は、導線30によってデータロガー40と電気的に接続されている。基本スイッチ60としては、スイッチ61が押下されたときに接点信号を生じるものであれば特に限定されない。例えば、公知のシール形極超小形基本スイッチ(D2JW-011-MD、オムロン株式会社製)等を利用することができる。
【0089】
(データロガー40)
データロガー40は、基本スイッチ60と電気的に接続されている。なお、データロガー40については実施形態2で説明したとおりであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0090】
<変位測定装置300の効果>
変位測定装置300は、変位測定装置100と同様の効果を奏する。また、変位測定装置300は、基本スイッチ60のスイッチ61が押下されたときに接点信号を生じる構成であるため、変位測定器具1bの第1部材10aおよび第2部材20aが導電性を有していなくてもよい。従って、変位測定器具1bの製造においては、第1部材10aおよび第2部材20aに導電性を付与する工程を省略することができるため、変位測定装置300は、変位測定装置100と比較して、より安価に製造することができる。
【0091】
<変位測定装置300を使用した変位測定方法M3>
変位測定装置300を使用して測定対象物における第1地点に対する第2地点の相対的な変位を測定することで、測定対象物の周囲長の増加量を変位として測定することができる。すなわち、本発明の一態様に係る変位測定方法M3は、前述の変位測定装置300を使用して測定対象物(図示せず)の周囲長の増加量を変位として測定する方法であって、変位測定器具1bの第1部材10aの先端11を第2部材20aの挿通孔21に挿通させた状態で、測定対象物(図示せず)の外周面に変位測定器具1bを巻きつける変位測定器具設置工程と、変位測定器具1bの第1部材10aの長手方向に沿って第2部材20aが変位することに連動して基本スイッチ60が生成した接点信号の回数を、データロガー(信号検出装置)(図示せず)によって電気的に検出する信号検出工程と、を含む。
【0092】
以下に、本発明の一態様に係る変位測定方法M1の各工程について説明する。
【0093】
(変位測定器具設置工程)
変位測定器具設置工程は、実施形態2の「変位測定器具設置工程」に記載したとおりである。
【0094】
(信号検出工程)
測定対象物の成長による果実の周囲長の増加に伴い変位測定器具1の第1部材10の輪が広がることで、変位測定器具1の第1部材10の長手方向に沿って第2部材20が変位する。第2部材20の変位に連動して、ロック解除機構23のレバー232が基本スイッチ60のスイッチ61を押圧することで基本スイッチ60が接点信号を生成する。信号検出工程では、この接点信号の回数を、データロガー40によって電気的に検出する。信号検出工程では、データロガー40に接続された複数個の変位測定器具1bのそれぞれにおいて生じた接点信号の回数の合計を積算値として記録する。
【0095】
(その他工程)
本発明の一態様に係る変位測定方法M3は、前記「信号検出工程」の後に、実施形態2の「その他工程」に記載した工程を含んでいていてもよい。
【0096】
<変位測定方法M3の効果>
本発明の一態様に係る変位測定方法M3によれば、既存のセンサよりも低コストであり、且つ簡単に測定対象物の周囲長の増加および増加量を変位として測定することができる。また、実施形態2に記載の変位測定方法M1と比較しても低コストである。
【0097】
<適用対象>
実施形態2に記載の変位測定装置100および変位測定方法M1と同じである。
【0098】
<変位測定装置300の変形例>
(変形例1)
変位測定器具1bの代わりに、実施形態1および2に示した変位測定器具1を使用してもよい。しかし、前述のとおり、変位測定装置300は、基本スイッチ60のスイッチ61が押下されたときに接点信号を生じる構成であるため、導電性を有する変位測定器具1よりも変位測定器具1bを利用した方が、安価に変位測定装置300を製造することができる。
【0099】
(変形例2)
本実施の形態では、変位測定器具1bにおいて、第2部材20aが第1部材10aの基端12に固定されている構成を示した。しかし、実施形態3に示した変位測定器具1aと同様に、第2部材20aが、第1部材10aの基端12に固定されておらず、第1部材10aとは分離して(別体として)設けられている構成とすることも可能である。
【0100】
(変形例3)
基本スイッチ60およびデータロガー40の代わりに、音または振動を判定するセンサを備えている構成であってもよい。変位測定器具1bにおいて、係止爪22が係止歯13の突起を越えるときに音が生じる。この音(または振動)を前記センサによって判定し、音(または振動)が生じた回数を計測する。音(または振動)が生じた回数は、係止爪22が係止歯13の突起を越えた回数と等しくなるため、音(または振動)の回数を測定することで、第2部材20の第1部材10長手方向の変位量を間接的に測定することが可能となる。音または振動を判定するセンサとしては、公知のセンサを利用することができる。
【0101】
なお、変位測定装置300においても、実施形態1に記載した「変位測定器具1の変形例」、実施形態2に記載した「変位測定装置100の変形例」および実施形態3に記載した「変位測定装置200の変形例」の記載に準じる。
【0102】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0103】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る変位測定器具は、先端と基端とを有する長尺の部材であり、且つ長手方向に沿って複数個の係止歯が一定間隔で係止歯設置面に設けられた第1部材と、前記第1部材を挿通可能な挿通孔が形成されているとともに、前記複数個の係止歯のそれぞれに係合可能な係止爪を有する第2部材と、を備え、前記複数個の係止歯のそれぞれに係る少なくとも一部および前記係止爪の少なくとも一部は、導電性を有している構成である。
【0104】
本発明の態様2に係る変位測定器具は、前記の態様1において、植物の変位を測定するために用いられる構成としてもよい。
【0105】
本発明の態様3に係る変位測定装置は、少なくとも1つの、前記の態様1または2に記載の変位測定器具と、前記変位測定器具と電気的に接続されており、前記変位測定器具の前記第1部材を挿通させた状態で当該第1部材の長手方向に沿って前記第2部材が変位することで前記係止爪と前記複数個の係止歯との間の導通が変化することによって生じる接点信号の回数を電気的に検出する信号検出装置と、を備えている構成である。
【0106】
本発明の態様4に係る変位測定装置は、前記の態様3において、前記変位測定器具は、前記複数個の係止歯のそれぞれが、前記第1部材における前記係止歯設置面の平面視において当該第1部材の幅方向に平行な稜線を先端に有する形状であり、前記複数個の係止歯のそれぞれの前記稜線を形成する2つの面の内、前記第1部材の前記先端側の第1面に係る前記係止歯設置面に対する傾斜角は、前記第1部材の前記基端側の第2面に係る前記係止歯設置面に対する傾斜角よりも大きい構成としてもよい。
【0107】
本発明の態様5に係る変位測定装置は、前記の態様3または4において、前記変位測定器具は、前記第2部材が、前記係止爪を前記係止歯設置面から離れる方向に変位させて前記複数個の係止歯と前記係止爪との係合を解除するロック解除機構を備えている構成としてもよい。
【0108】
本発明の態様6に係る変位測定装置は、前記の態様3から5のいずれかにおいて、前記変位測定器具は、前記第1部材が屈曲性を有しており、前記第2部材が、前記第1部材の前記基端に固定されている構成としてもよい。
【0109】
本発明の態様7に係る変位測定装置は、前記の態様3から5のいずれかにおいて、前記変位測定器具は、前記第2部材が、前記第1部材とは分離して設けられている構成としてもよい。
【0110】
本発明の態様8に係る変位測定装置は、前記の態様3から7のいずれかにおいて、前記変位測定器具を複数個備えている構成としてもよい。
【0111】
本発明の態様9に係る変位測定方法は、前記の態様6に記載の変位測定装置を使用して測定対象物の周囲長の増加量を変位として測定する方法であって、前記変位測定器具の前記第1部材の前記先端を前記第2部材の前記挿通孔に挿通させた状態で、測定対象物の外周面に当該変位測定器具を巻きつける変位測定器具設置工程と、前記変位測定器具の前記第1部材の長手方向に沿って前記第2部材が変位することで前記係止爪と前記複数個の係止歯との間の導通が変化することによって生じる接点信号の回数を、前記信号検出装置によって電気的に検出する信号検出工程と、を含む構成である。
【0112】
本発明の態様10に係る変位測定方法は、前記の態様7に記載の変位測定装置を使用して測定対象物における第1地点に対する第2地点の相対的な変位を測定する方法であって、前記変位測定器具の前記第1部材の前記先端を前記第2部材の前記挿通孔に挿通させた状態で、測定対象物に当該変位測定器具を固定する変位測定器具設置工程と、前記変位測定器具の前記第1部材の長手方向に沿って前記第2部材が変位することで前記係止爪と前記複数個の係止歯との間の導通が変化することによって生じる接点信号の回数を、前記信号検出装置によって電気的に検出する信号検出工程と、を含み、前記変位測定器具設置工程は、前記変位測定器具の前記第2部材を、前記第1地点に固定する第2部材固定工程と、前記変位測定器具の前記第1部材の前記基端を前記第2地点に固定する第1部材固定工程と、前記第1部材の前記先端を前記第2部材の前記挿通孔に挿通させる挿通工程と、を含む構成である。
【0113】
本発明の態様11に係る変位測定装置は、少なくとも1つの変位測定器具と、押下部材を有し、当該押下部材が押下されると接点信号を生成する信号生成装置と、前記信号生成装置と電気的に接続されており、当該信号生成装置が生成した接点信号の回数を電気的に検出する信号検出装置と、を備え、前記変位測定器具は、先端と基端とを有する長尺の部材であり、且つ長手方向に沿って複数個の係止歯が一定間隔で係止歯設置面に設けられた第1部材と、前記第1部材を挿通可能な挿通孔が形成されているとともに、前記複数個の係止歯のそれぞれに係合可能な係止爪を有する第2部材と、を備え、前記第2部材が、前記第1部材を挿通させた状態で当該第1部材の長手方向に沿って前記第2部材が変位することにより生じる前記係止爪の変位と連動して前記信号生成装置の前記押下部材を押下可能な押圧機構を備えている構成である。
【0114】
本発明の態様12に係る変位測定方法は、前記の態様11に記載の変位測定装置を使用して測定対象物の周囲長の増加量を変位として測定する方法であって、前記変位測定器具の前記第1部材の前記先端を前記第2部材の前記挿通孔に挿通させた状態で、測定対象物の外周面に当該変位測定器具を巻きつける変位測定器具設置工程と、前記変位測定器具の前記第1部材の長手方向に沿って前記第2部材が変位することに連動して前記信号生成装置が生成した接点信号を、前記信号検出装置によって電気的に検出する信号検出工程と、を含む構成である。
【符号の説明】
【0115】
1、1a、1b、1c 変位測定器具
10、10a 第1部材
11 先端
12 基端
13 係止歯
14 係止歯設置面
20、20a、20b 第2部材
21 挿通孔
22 係止爪
23 ロック解除機構
24 固定部
25 フロート
30 導線
40 データロガー(信号検出装置)
50 固定具
60 基本スイッチ(信号生成装置)
61 スイッチ(押下部材)
100、100a、200、200a、300 変位測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9