(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】基礎用型枠
(51)【国際特許分類】
E02D 27/01 20060101AFI20240528BHJP
E04G 9/05 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
E02D27/01 D
E04G9/05
(21)【出願番号】P 2020095385
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】松原 由幸
(72)【発明者】
【氏名】住友 義則
(72)【発明者】
【氏名】平野 成志
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-151788(JP,A)
【文献】特開2006-283365(JP,A)
【文献】実開昭52-016731(JP,U)
【文献】特開平10-140823(JP,A)
【文献】実開昭51-085060(JP,U)
【文献】国際公開第02/022991(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/058696(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/01
E04G 9/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形枠状の金属製フレームと、
上記金属製フレームに取り付けられており、当該金属製フレームの開口を閉塞する樹脂製面板と、を備え
ており、
上記金属製フレームは、互いに嵌合する一対の嵌合部の一方である第1嵌合部を有しており、上記樹脂製面板は、当該一対の嵌合部の他方である第2嵌合部を有しており、
上記金属製フレームは、
地面に載置された場合に水平方向において互いに対向する一対の左右枠体と、
地面に載置された場合に鉛直方向において互いに対向する一対の上下枠体と、
上記左右枠体に沿い、かつ一対の上記上下枠体間に架設された架設体であって、上記第1嵌合部である当該架設体と、を有しており、
上記樹脂製面板は、
板状の面板本体と、
上記面板本体の主面から突出する突出体と、を有しており、
上記第2嵌合部は、上記突出体の一端から他端に亘って設けられており、かつ上記架設体が当該一端側から嵌入可能なスリットである基礎用型枠。
【請求項2】
上記架設体は、
上記上下枠体が沿う方向である左右方向において上記のスリットの周面と当接する第1片と、
上記左右枠体が沿う方向である上下方向及び上記左右方向に直交する前後方向において上記スリットの周面と当接する第2片とを有する、請求項
1に記載の基礎用型枠。
【請求項3】
上記上下枠体の少なくとも一方は、上記突出体が嵌る凹部であって、上記上下枠体が沿う方向である左右方向において上記突出体と周面が当接する凹部を有する、請求項
1または
2に記載の基礎用型枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎の打設に用いられる基礎用型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、断面が略コ字状のFRP製の板体の内側に、複数の鉄筋を網目状に組んだ網状体を取り付けた基礎用型枠を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂製の基礎用型枠を用いると、基礎用型枠が軽くなり、基礎用型枠の取り扱いが容易になる。しかしながら、樹脂製の基礎用型枠は、夏場や冬場などの環境温度の相違により、膨張或いは収縮して、建築物の施工に影響を及ぼす程度、寸法が変化するおそれがある。そうすると、基礎用型枠の寸法の変化を考慮して基礎の打設を行う必要があり、基礎の打設に手間がかかることになる。一方、金属製の基礎用型枠は、環境温度による寸法の変化が樹脂製の型枠よりも小さい。しかしながら、金属製の基礎用型枠は、樹脂製の基礎用型枠よりも重く、取り扱いが容易ではない。
【0005】
本発明は、軽く、かつ環境温度による寸法の変化が少ない基礎用型枠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る基礎用型枠は、矩形枠状の金属製フレームと、上記金属製フレームに取り付けられており、当該金属製フレームの開口を閉塞する樹脂製面板と、を備える。
【0007】
本発明に係る基礎用型枠は、金属製フレームと、金属製フレームに取り付けられた樹脂製面板とで構成されている。したがって、全て金属からなる従来の基礎用型枠よりも軽い。従来の基礎用型枠よりも軽いので、取り扱いが容易である。すなわち、本発明に係る基礎用型枠は、基礎用型枠を設置する作業者の作業を容易にすることができる。また、本発明に係る基礎用型枠は、矩形枠状のフレーム部分が金属製であるので、環境温度による寸法変化が小さい。すなわち、本発明に係る基礎用型枠は、矩形枠状のフレーム部分を金属製にし、金属製のフレームの開口を閉塞する面板部分を樹脂製とすることにより、全て樹脂からなる従来の基礎用型枠よりも、環境温度による寸法変化が少ない。その結果、本発明に係る基礎用型枠は、全て樹脂からなる従来の基礎用型枠よりも、精度の良い基礎を打設することができる。
【0008】
(2) 上記金属製フレームは、互いに嵌合する一対の嵌合部の一方である第1嵌合部を有しており、上記樹脂製面板は、当該一対の嵌合部の他方である第2嵌合部を有していてもよい。
【0009】
樹脂製面板は、第1嵌合部と第2嵌合部とが嵌合することにより、金属製フレームに取り付けられる。すなわち、樹脂製面板は、金属製フレームに着脱自在に取り付けられる。したがって、樹脂製面板は、劣化したり破損したりした場合に、新しい樹脂製面板に容易に取り換えることができる。
【0010】
(3) 上記金属製フレームは、地面に載置された場合に水平方向において互いに対向する一対の左右枠体と、地面に載置された場合に鉛直方向において互いに対向する一対の上下枠体と、上記左右枠体に沿い、かつ一対の上記上下枠体間に架設された架設体であって、上記第1嵌合部である当該架設体と、を有していてもよい。上記樹脂製面板は、板状の面板本体と、上記面板本体の主面から突出する突出体と、を有する。上記第2嵌合部は、上記突出体の一端から他端に亘って設けられており、かつ上記架設体が当該一端側から嵌入可能なスリットである。
【0011】
樹脂製面板は、スリットに架設体が挿入されることにより、金属製フレームに取り付けられる。
【0012】
(4) 上記架設体は、上記上下枠体が沿う方向である左右方向において上記のスリットの周面と当接する第1片と、上記左右枠体が沿う方向である上下方向及び上記左右方向に直交する前後方向において上記スリットの周面と当接する第2片とを有していてもよい。
【0013】
樹脂製面板は、第1片が左右方向においてスリットの周面に当接することにより、左右方向において金属製フレームに固定され、第2片が前後方向においてスリットの周面に当接することにより、前後方向において金属製フレームに固定される。すなわち、樹脂製面板は、左右方向及び前後方向において金属製フレームに固定される。
【0014】
(5) 上記上下枠体の少なくとも一方は、上記突出体が嵌る凹部であって、上記上下枠体が沿う方向である左右方向において上記突出体と周面が当接する凹部を有していてもよい。
【0015】
樹脂製面板の突起が上下枠体の凹部に左右方向において当接することにより、環境温度による樹脂製面板の幅方向における膨張や収縮がさらに抑制される。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る基礎用型枠は、軽く、かつ環境温度による寸法の変化が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】
図2は、基礎用型枠10の分解斜視図である。
【
図3】
図3(A)は、金属製フレーム20における嵌合切欠33の他の形状を示す図であり、
図3(B)は、樹脂製面板40のスリット53及び金属製フレーム20の架設体34の他の形状を示す図である。
【
図4】
図4は、基礎用型枠10を用いた基礎の打設を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0019】
本実施形態では、基礎の打設に用いられる基礎用型枠10(
図1)が説明される。基礎用型枠10は、
図1及び
図2に示されるように、金属製フレーム20及び樹脂製面板40を備える。
【0020】
金属製フレーム20は、鋼材などの金属からなる。金属製フレーム20は、例えば、鋼板を折り曲げたり溶接したりして製造される。
【0021】
金属製フレーム20は、矩形の枠状であり、開口38を有している。
【0022】
金属製フレーム20は、互いに対向する天板21及び底板22と、互いに対向する一対の側板23、24と、を備える。基礎用型枠10は、
図4に示されるように、底板22を下にし、天板21を上にして、地面や捨てコンクリートの上などに、設置器具を用いて設置されて使用される。以下では、基礎用型枠10が使用される状態における鉛直方向を上下方向11とし、天板21及び底板22が延びる方向を左右方向12とし、上下方向11及び左右方向12に直交する方向を前後方向13として説明がされる。左右一対の側板23、24は、左右枠体の一例である。天板21及び底板22は、上下枠体の一例である。
【0023】
図2に示されるように、左右一対の側板23、24は、上下方向11にそれぞれ延びており、かつ左右方向12を厚みとする矩形板状である。
【0024】
上下方向11における側板23の長さと、上下方向11における側板24の長さとは、略同一である。また、前後方向13における側板23の長さと、前後方向13における側板24の長さとは、略同一である。すなわち、左右一対の側板23、24は、略同形状である。
【0025】
左右一対の側板23、24は、厚み方向である左右方向12において側板23、24を貫通する連結用孔31をそれぞれ有する。連結用孔31は、2つの基礎用型枠10の連結に用いられる。詳しく説明すると、一方の基礎用型枠10の側板23の外側面と他方の基礎用型枠10の側板24の外側面とが、連結用孔31を重ねて当接される。ボルト(不図示)が、重ねられた連結用孔31に挿通される。ナットが、当該ボルトに締結される。2つの基礎用型枠10は、ボルト及びナットによって連結される。このようにして、複数の基礎用型枠10が、左右方向12において並んで互いに連結される(
図4)。
【0026】
天板21は、左右方向12に延びており、かつ上下方向11を厚みとする矩形板状である。底板22は、左右方向12に延びており、かつ上下方向11を厚みとする矩形板状である。すなわち、天板21と底板22とは、厚み方向である上下方向11において互いに対向している。
【0027】
左右方向12における天板21の長さと、左右方向12における底板22の長さとは、略同一である。天板21の左端は、上下方向11における側板23上端と連結しており、天板21の右端は、上下方向11における側板24の上端と連結している。底板22の両端の左端は、上下方向11における側板23の下端と連結しており、底板22の右端は、上下方向11における側板24の下端と連結している。
【0028】
前後方向13における底板22の最大長さL1は、前後方向13おける天板21の最大長さL2よりも長い。すなわち、上下方向11において、底板22の一部は、天板21と対向していない。以下では、底板22の当該一部を当接部32と記載して説明がされる。当接部32は、
図2においてハッチングで示されている。当接部32は、樹脂製面板40の下端と当接し、上下方向11において樹脂製面板40を位置決めする。詳しくは後述する。
【0029】
天板21は、樹脂製面板40が有する後述の突出体42と嵌合する複数の嵌合切欠33を有する。嵌合切欠33は、上方から見て、天板21の後端に向かうにしたがって広がる台形状である。嵌合切欠33の周面は、左右方向12において樹脂製面板40の突出体42と当接し、樹脂製面板40を左右方向12において位置決め及び固定する。また、左右方向12において樹脂製面板40の突出体42と嵌合する嵌合切欠33の周面は、環境温度の変化による樹脂製面板40の左右方向12における伸びや収縮を抑制する。すなわち、樹脂よりも環境温度の変化による伸び率や収縮率が小さい金属製フレーム20により、左右方向12における樹脂製面板40の長さの変化が抑制される。
【0030】
嵌合切欠33の個数は、基礎用型枠10の大きさに応じて決められている。具体的には、左右方向12における樹脂製面板40の長さの変化を、打設する基礎の精度が設計仕様上の誤差範囲内となるように、嵌合切欠33の個数が決められている。図示例では、天板21は、5つの嵌合切欠33を有している。嵌合切欠33は、凹部の一例である。
【0031】
なお、図示例では、嵌合切欠33は、上方から見て台形状であるが、嵌合切欠は、長方形状や、
図3(A)に示されるように、天板21の後端に向かうにしたがって狭くなる台形状であってもよい。
【0032】
天板21は、アンカー定規15(
図4)を基礎用型枠10に位置決めして取り付けるための複数の取付孔37を有する。取付孔37は、天板21を厚み方向である上下方向11において貫通する貫通孔である。
【0033】
アンカー定規15は、
図4に示されるように、取付孔37と略同径の複数の第1挿通孔17と、アンカーボルト16を吊り下げるための複数の第2挿通孔(不図示)とを有する板状である。アンカー定規15は、前後方向13において対向して配置された一対の基礎用型枠10の天板21間に架設される。その際、アンカー定規15は、アンカー定規15の第1挿通孔17と基礎用型枠10の天板21の取付孔37とが上下に重なるようにして配置される。上下に重なる第1挿通孔17及び取付孔37に、不図示の固定ピンが挿通される。固定ピンにより、アンカー定規が基礎用型枠10に位置決めされて固定される。一対の基礎用型枠10間に架設されたアンカー定規15の第2挿通孔に、アンカーボルト16が下方から挿通される。挿通されたアンカーボルト16に不図示のナットが締結されることにより、アンカーボルト16がアンカー定規15に吊り下げられる。すなわち、アンカーボルト16は、アンカー定規15を通じて、基礎用型枠10の天板21の取付孔37によって位置決めされる。金属製フレーム20は、鋼材などの金属からなるので、樹脂よりも伸び率や収縮率が小さい。したがって、基礎用型枠10は、全て樹脂からなる従来の基礎用型枠よりも、アンカーボルト16の設置の位置精度を良くすることができる。
【0034】
金属製フレーム20は、
図1及び
図2に示されるように、複数の架設体34をさらに備える。架設体34は、天板21と底板22とに架設されている。具体的には、架設体34の上端は、天板21の下面と、溶接などによって連結されている。架設体34の下端は、底板22の上面と、溶接などによって連結されている。天板21と底板22とに架設された架設体34は、金属製フレーム20の強度を高める。
【0035】
嵌合切欠33の個数と同数の架設体34が金属製フレーム20に設けられている。そして、各架設体34は、後端部が嵌合切欠33の下方に位置するようにそれぞれ設けられている。以下では、嵌合切欠33の下方に位置する架設体34の後端部を、嵌入端部35と記載して説明する。嵌入端部35は、
図2においてハッチングで示されている。嵌入端部35は、嵌合切欠33通じて上方から進入された樹脂製面板40の突出体42のスリット53に嵌入される。スリット53に嵌入された嵌入端部35は、左右方向12においてスリット53の周面と当接し、左右方向12において、樹脂製面板40を位置決めするとともに固定する。詳しくは後述される。嵌入端部35は、第1片の一例である。
【0036】
前後方向13における嵌入端部35の後端からは、左右方向12に沿って嵌入片36が延びている。嵌入端部35及び嵌入片36は、上方から見てL字状である。嵌入片36は、嵌入端部35とともに樹脂製面板40の突出体42のL字状のスリット53に嵌入される。スリット53に嵌入された嵌入片36は、前後方向13においてスリット53の周面と当接し、前後方向13において、樹脂製面板40を位置決めするとともに固定する。すなわち、金属製フレーム20は、底板22の当接部32と、天板21の嵌合切欠33と、架設体34の嵌入端部35及び嵌入片36とにより、上下方向11、左右方向12、及び前後方向13において、樹脂製面板40を位置決めするとともに固定する。架設体34は、第1嵌合部の一例である。嵌入片36は、第2片の一例である。
【0037】
樹脂製面板40は、矩形板状の面板本体41と、面板本体41から突出する複数の突出体42と、を備える。樹脂製面板40は、例えば、金型に溶融した樹脂材料を流し込んで成形される。すなわち、面板本体41と、突出体42とは、一体に成形される。
【0038】
前後方向13における面板本体41の長さ、すなわち面板本体41の厚みは、前後方向13における底板22の当接部32の長さと略同一である。この面板本体41の下端が、当接部32と当接している(
図1)。
【0039】
上下方向11における面板本体41の長さ、すなわち面板本体41の高さは、金属製フレーム20の底板22の上面から天板21の上面までの高さと略同一である。すなわち、下端を底板22の当接部32に当接させて配置された樹脂製面板40の面板本体41の上端面は、天板21の上面と同じ高さ位置となっている(
図1)。したがって、基礎用型枠10の上面には、段差が形成されていない。段差が形成されないので、基礎用型枠10の運搬時に基礎用型枠10が他の資材に引っ掛かることが防止され、基礎用型枠10の耐久性が向上する。
【0040】
左右方向12における面板本体41の長さは、金属製フレーム20の左右一対の側板23、24の両内側面間の距離と略同一である。面板本体41の左端は、側板23の内側と当接し、面板本体41の右端面は、側板24の内側面と当接している。面板本体41の左右の端面が側板23、24の内側面と当接することにより、左右方向12における樹脂製面板40の伸びや収縮が抑制される。
【0041】
下端が金属製フレーム20の底板22に当接し、上端が金属製フレーム20の天板21の上面と面一であり、左右両端が金属製フレーム20の左右の側板23、24と当接する樹脂製面板40は、金属製フレーム20の開口38を閉塞する。すなわち、金属製フレーム20の開口38が閉塞された基礎用型枠10は、基礎を打設可能である。
【0042】
板状の面板本体41の一対の主面51、52の一方である主面52は、突出体42を設けられておらず、面一の平面である。一対の基礎用型枠10は、
図4に示されるように、主面52を互いに対向させて設置される。そして、一対の基礎用型枠10の2つの主面52の間に、コンクリートが流し込まれ、基礎が打設される。すなわち、面板本体41の主面52は、コンクリートを受ける面である。
【0043】
なお、面板本体41の主面52は、基礎の側面に凸又は凹からなる図形を形成するための凹或いは凸を形成されていてもよい。すなわち、基礎用型枠10は、打設される基礎の側面に意匠を施す機能を有していてもよい。この場合、基礎用型枠10は、いわゆる化粧型枠である。面板本体41は、樹脂製であるので、上述の金型の表面に凸や凹を設けることにより、凹や凸を主面52に容易に設けることができる。
【0044】
打設される基礎の外面に段差が形成されないように、面板本体41の主面52と、前後方向13における金属製フレーム20の側板23、24の端面とは、面一となっている。
【0045】
突出体42は、
図1及び
図2に示されるように、面板本体41の一対の主面51、52の他方である主面51から前向きに突出している。また、突出体42は、面板本体41の上端から下端に亘って伸びている。そして、突出体42は、金属製フレーム20の天板21に設けられた嵌合切欠33と嵌合可能な形状を有している。具体的には、突出体42は、上方から見て、前端に向かうにしたがって細くなる台形状である。
【0046】
天板21の嵌合切欠33と嵌合する突出体42は、左右方向12において、天板21の嵌合切欠33の周面と当接している。したがって、樹脂製面板40は、左右方向12において、金属製フレーム20に位置決めされるとともに固定され、さらに、左右方向12における延びや収縮を抑制される。すなわち、樹脂製面板40は、金属製フレーム20の天板21及び側板23、24によって、左右方向12において位置決めされ、かつ固定され、さらに伸びや収縮を抑制される。
【0047】
突出体42は、金属製フレーム20の架設体34の嵌入端部35及び嵌入片36が嵌入されるL字状のスリット53を有する。スリット53は、突出体42の上端から下端に亘って設けられている。すなわち、スリット53は、突出体42の突出面54と、上端面及び下端面とに開口している。スリット53は、突出体42の突出面54の開口及び下端面の開口を通じて、架設体34の嵌入端部35及び嵌入片36を嵌入される。なお、スリット53は、突出体42の上端面に開口を有していなくてもよい。しかしながら、樹脂製面板40の成形を考慮すると、スリット53は、突出体42の上端面に開口を有することが好ましい。スリット53は、第2嵌合部の一例である。
【0048】
左右方向12において、突出体42のスリット53の周面は、嵌入された架設体34の嵌入端部35と当接する。すなわち、突出体42が、左右方向12において架設体34及び天板21と当接することにより、樹脂製面板40は、左右方向12において位置決めされるとともに固定され、さらに左右方向12における伸びや収縮を抑制される。
【0049】
前後方向13において、突出体42のスリット53の周面は、嵌入された架設体34の嵌入片36と当接する。すなわち、突出体42が、前後方向13において架設体34の嵌入片36と当接することにより、樹脂製面板40は、前後方向13において位置決めされるとともに固定される。
【0050】
次に、樹脂製面板40を金属製フレーム20に取り付けて基礎用型枠10を組み上げる作業について説明する。作業者は、金属製フレーム20の上方から樹脂製面板40を下す。下ろされた樹脂製面板40の突出体42は、天板21の嵌合切欠33から下方に進入する。その際、金属製フレーム20の架設体34の嵌入端部35及び嵌入片36が、樹脂製面板40の突出体42のスリット53に嵌入する。樹脂製面板40は、面板本体41の下端が金属製フレーム20の底板22の当接部32に当接し、かつ面板本体41の上端が金属製フレーム20の天板21の上面と面一となる位置まで下ろされる。なお、樹脂製面板40を金属製フレーム20に組み付けることができるように、組付け作業は、20℃などの一定の温度に保たれた室内において行われる。或いは、樹脂製面板40は、20℃などの一定の温度に保たれた恒温槽や室内に所定の期間だけ放置された後、金属製フレーム20に組み付けられる。
【0051】
基礎の打設や経年劣化によって樹脂製面板40が劣化すると、樹脂製面板40は、作業者によって、金属製フレーム20から取り外される。作業者は、樹脂製面板40を金属製フレーム20から上方に引き抜くことにより、樹脂製面板40を金属製フレーム20から取り外す。作業者は、劣化した樹脂製面板40を金属製フレーム20から取り外した後、新しい樹脂製面板40を金属製フレーム20に取り付ける。なお、鋼材からなり、その大部分がコンクリートと直接接触しない金属製フレーム20は、樹脂からなる樹脂製面板40よりも、劣化するまでの期間が長い。
【0052】
次に、基礎用型枠10を用いた基礎の打設について、
図4を参照して説明する。作業者は、複数の基礎用型枠10を、左右方向12において連結しつつ、地面や捨てコンクリートの上などに設置した不図示の設置器具に設置する。設置器具に設置され、かつ連結された複数の基礎用型枠10と、同じく設置器具に設置され、かつ連結された複数の基礎用型枠10とは、前後方向13において互いに対向する。その際、基礎用型枠10は、樹脂製面板40の面板本体41の面一の主面52が互いに対向する向きで設置される。
【0053】
作業者は、対向する一対の基礎用型枠10の天板21間にアンカー定規15を架設する。作業者は、架設したアンカー定規15の第1挿通孔17と基礎用型枠10の天板21の取付孔37とに固定ピンを挿通し、アンカー定規15を位置決めするとともに固定する。
【0054】
作業者は、一対の基礎用型枠10間に架設されたアンカー定規15の第2挿通孔にアンカーボルト16を下方から挿通した後、アンカーボルト16に不図示のナットを締結し、アンカーボルト16をアンカー定規15に吊り下げる。その後、作業者は、対向する基礎用型枠10の間にコンクリートを流し込み、基礎を打設する。
【0055】
作業者は、基礎を打設した後、金属製フレーム20と樹脂製面案40とを一体として基礎用型枠10を基礎から取り外す。すなわち、金属製フレーム20と樹脂製面案40とが一体で組まれているので、金属製フレーム20と樹脂製面板40とを別々に基礎から取り外す必要がない。よって、基礎用型枠10は、基礎から取り外す際に、全て金属製の従来の基礎用型枠と同様に取り扱うことができ、取り扱いが容易である。
【0056】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態では、基礎用型枠10は、金属製フレーム20と、金属製フレーム20に取り付けられた樹脂製面板40とで構成されている。したがって、本実施形態の基礎用型枠10は、全て金属からなる従来の基礎用型枠よりも軽い。従来の基礎用型枠よりも軽いので、本実施形態の基礎用型枠10は、取り扱いが容易である。すなわち、本実施形態の基礎用型枠10は、基礎用型枠10を設置する作業者の作業を容易にすることができる。また、本実施形態の基礎用型枠10は、矩形枠状のフレーム部分が金属製であるので、環境温度による寸法変化が小さい。すなわち、基礎用型枠10は、矩形枠状のフレーム部分を金属製にし、金属製のフレームの開口を閉塞する面板部分を樹脂製とすることにより、全て樹脂からなる従来の基礎用型枠よりも、環境温度による寸法変化が少ない。その結果、本実施形態の基礎用型枠10は、全て樹脂からなる従来の基礎用型枠よりも、精度の良い基礎を打設することができる。精度の良い基礎とは、例えば、左右方向におけるアンカーボルト16の設置位置の誤差が小さい基礎を意味する。
【0057】
基礎用型枠10の樹脂製面板40は、樹脂製面板40の突出体42が金属製フレーム20の天板21の嵌合切欠33と嵌合し、かつ突出体42のスリット53に金属製フレーム20の架設体34の嵌入端部35及び嵌入片36が嵌入することにより、金属製フレーム20に取り付けられる。すなわち、樹脂製面板40は、金属製フレーム20に着脱自在に取り付けられる。したがって、樹脂製面板40は、劣化したり破損したりした場合に、新しい樹脂製面板40に容易に取り換えることができる。
【0058】
本実施形態では、上下方向11に延びる突出体42を樹脂製面板40に設け、また、上下方向11に延びるスリット53を突出体42に設け、樹脂製面板40を上方から下方に下して樹脂製面板40を金属製フレーム20に取り付ける。したがって、左右方向12において樹脂製面板40と金属製フレーム20とを当接させることができる。その結果、左右方向12における樹脂製面板40の延びや収縮を金属製フレーム20によって抑制することができる。
【0059】
なお、上下方向11における樹脂製面板40の伸びや収縮は、打設される基礎の設計上の精度に影響を及ぼさない。すなわち、上下方向11における樹脂製面板40の伸びや収縮は、許容される。
【0060】
樹脂製面板40は、架設体34の嵌入端部35が左右方向12においてスリット53の周面に当接することにより、左右方向12において金属製フレーム20に固定され、架設体34の嵌入片36が前後方向13においてスリット53の周面に当接することにより、前後方向13において金属製フレーム20に固定される。すなわち、樹脂製面板40にL字状のスリット53が設けられ、金属製フレーム20にL字状の架設体34が設けられることにより、左右方向12及び前後方向13において樹脂製面板40を金属製フレーム20に固定することができる。
【0061】
本実施形態では、金属製フレーム20の天板21に嵌合切欠33が設けられ、嵌合切欠33と嵌合する突出体42が樹脂製面板40に設けられている。そして、嵌合切欠33の周面と、突出体42とは、左右方向12において当接している。したがって、環境温度による樹脂製面板40の左右方向12における伸びや収縮が、嵌合切欠33及び突出体42によって、さらに抑制される。
【0062】
[変形例]
上述の実施形態では、金属製フレーム20の架設体34及び樹脂製面板40のスリット53が、上方から見てL字状である例が説明された。しかしながら、架設体34をスリット53に嵌入可能であって、かつ、左右方向12及び前後方向13において樹脂製面板40を金属製フレーム20に固定可能であれば、架設体34及びスリット53は、L字状以外の形状であってもよい。例えば、
図3(B)が示すように、架設体34及びスリット53は、上方から見てT字状であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0063】
上述の実施形態では、天板21にのみ嵌合切欠33が設けられた例が説明された。しかしながら、嵌合切欠33は、天板21に加え、或いは天板21に代えて、底板22に設けられていてもよい。その場合、樹脂製面板40の突出体42の下端は、面板本体41の下端よりも、金属製フレーム20の底板22の厚み分だけ下方に延設される。すなわち、突出体42は、金属製フレーム20の底板22に設けられた嵌合切欠33の周面と左右方向12において当接する。突出体42が、底板22に設けられた嵌合切欠33の周面と左右方向12において当接することにより、左右方向12における樹脂製面板40の伸びや収縮がさらに抑制される。
【0064】
上述の実施形態では、樹脂製面板40の面板本体41の左右両端が金属製フレーム20の左右の側板23、24の内側面に当接する例が説明された。しかしながら、基礎の側面に凸が形成されることが許容される場合、樹脂製面板40の面板本体41の左右両端は、金属製フレーム20の左右の側板23、24の内側面から離間していてもよい。その場合であって、嵌合切欠33と突出体42との嵌合により、左右方向12における樹脂製面板40の伸びや収縮は抑えられる。すなわち、建物の施工に必要な基礎の精度は担保される。
【0065】
上述の実施形態では、樹脂製面板40が、1つの部材からなる例が説明された。しかしながら、樹脂製面板40は、成形のための金型を小さくすることや、より小型の成型機の使用可能とするために、2以上の部材からなっていてもよい。例えば、樹脂製面板40は、上下2つに分割された上分割体と下分割体とで構成されていてもよい。その場合、下分割体が金属製フレーム20に組み付けられた後、上分割体が金属製フレーム20に組付けられる。上分割体と下分割本体とは、連結器具を用いて連結されてもよいし、連結されなくてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10・・・基礎用型枠
15・・・アンカー定規
16・・・アンカーボルト
20・・・金属製フレーム
21・・・天板(上下枠体)
22・・・底板(上下枠体)
23、24・・・側板(左右枠体)
31・・・連結用孔
32・・・当接部
33・・・嵌合切欠(凹部)
34・・・架設体(第1嵌合部)
35・・・嵌入端部(第1片)
36・・・嵌入片(第2片)
40・・・樹脂製面板
41・・・面板本体
42・・・突出体
51、52・・・主面
53・・・スリット(第2嵌合部)