(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】流体機械
(51)【国際特許分類】
F04D 29/057 20060101AFI20240528BHJP
F04D 29/58 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
F04D29/057 Z
F04D29/58 Q
(21)【出願番号】P 2021031163
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】篠田 史也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 文博
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-016992(JP,A)
【文献】特開昭63-289282(JP,A)
【文献】特開平11-044297(JP,A)
【文献】特開2019-082195(JP,A)
【文献】特開2017-002750(JP,A)
【文献】特開2000-356223(JP,A)
【文献】特表2010-516930(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0051957(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16、
17/00-19/02、
21/00-25/16、
29/00-35/00
F04C 2/02、18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体と、
前記回転体と一体的に回転する作動体と、
前記作動体及び前記回転体を収容するハウジングと、
前記回転体を前記ハウジングに対して回転可能に支持する複数の動圧滑り軸受と、
前記ハウジング内に形成されるとともに前記動圧滑り軸受を直接冷却する流体が流れる冷却流路と、を備え、
前記動圧滑り軸受は、前記回転体と対向する部位に樹脂製のコーティング層を有する流体機械であって、
前記複数の動圧滑り軸受は、前記複数の動圧滑り軸受のうち、前記冷却流路を流れる前記流体の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受のコーティング層の硬度
と、前記上流側に配置された動圧滑り軸受のコーティング層から発生した摩耗粉の硬度とが、前記上流側に配置された動圧滑り軸受に対し、前記流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受のコーティング層の硬度よりも低くなる組み合わせを少なくとも1組含むことを特徴とする流体機械。
【請求項2】
前記冷却流路を流れる前記流体は、気体であり、
前記各動圧滑り軸受は、気体軸受であることを特徴とする請求項1に記載の流体機械。
【請求項3】
前記作動体は、
前記回転体の回転軸線方向の第1端部に設けられた第1羽根車と、
前記回転軸線方向の第2端部に設けられた第2羽根車と、を含み、
前記回転軸線方向において、前記第1羽根車と前記第2羽根車との間に配置されるとともに前記回転体を回転させる電動モータを備え、
前記複数の気体軸受は、
前記電動モータよりも前記回転体の第1端部寄りに位置する第1動圧ラジアル軸受と、
前記電動モータよりも前記回転体の第2端部寄りに位置する第2動圧ラジアル軸受と、
前記第1羽根車と前記第2羽根車との差圧を受ける動圧スラスト軸受と、を含み、
前記気体は、前記第1動圧ラジアル軸受、前記第2動圧ラジアル軸受、前記動圧スラスト軸受、及び前記電動モータを冷却することを特徴とする請求項2に記載の流体機械。
【請求項4】
前記回転体は、
軸部と、
前記軸部の外周面から環状に突出するとともに前記軸部と一体的に回転する拡径部と、を有し、
前記拡径部は、前記電動モータに対して前記回転軸線方向で離間した位置に配置され、
前記動圧スラスト軸受は、
前記拡径部における前記回転軸線方向で前記電動モータ寄りに位置する部位を回転可能に支持する第1動圧スラスト軸受と、
前記拡径部における前記回転軸線方向で前記電動モータとは反対側に位置する部位を回転可能に支持する第2動圧スラスト軸受と、を含み、
前記第1動圧スラスト軸受のコーティング層、及び前記第2動圧スラスト軸受のコーティング層のうち、前記回転体が回転する際に受けるスラスト荷重が大きい方の硬度が、前記回転体が回転する際に受けるスラスト荷重が小さい方の硬度よりも高いことを特徴とする請求項3に記載の流体機械。
【請求項5】
前記冷却流路には、車載用燃料電池に向かって流れる空気の一部が前記気体として流入されることを特徴とする請求項2~請求項4のいずれか一項に記載の流体機械。
【請求項6】
回転体と、
前記回転体と一体的に回転する作動体と、
前記作動体及び前記回転体を収容するハウジングと、
前記回転体を前記ハウジングに対して回転可能に支持する複数の動圧滑り軸受と、
前記ハウジング内に形成されるとともに前記動圧滑り軸受を直接冷却する流体が流れる冷却流路と、を備え、
前記動圧滑り軸受は、前記回転体と対向する部位に樹脂製のコーティング層を有する流体機械であって、
前記複数の動圧滑り軸受は、前記複数の動圧滑り軸受のうち、前記冷却流路を流れる前記流体の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受のコーティング層の硬度が、前記上流側に配置された動圧滑り軸受に対し、前記流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受のコーティング層の硬度よりも低くなる組み合わせを少なくとも1組含み、
前記冷却流路を流れる前記流体は、気体であり、
前記各動圧滑り軸受は、気体軸受であり、
前記作動体は、
前記回転体の回転軸線方向の第1端部に設けられた第1羽根車と、
前記回転軸線方向の第2端部に設けられた第2羽根車と、を含み、
前記回転軸線方向において、前記第1羽根車と前記第2羽根車との間に配置されるとともに前記回転体を回転させる電動モータを備え、
前記複数の気体軸受は、
前記電動モータよりも前記回転体の第1端部寄りに位置する第1動圧ラジアル軸受と、
前記電動モータよりも前記回転体の第2端部寄りに位置する第2動圧ラジアル軸受と、
前記第1羽根車と前記第2羽根車との差圧を受ける動圧スラスト軸受と、を含み、
前記気体は、前記第1動圧ラジアル軸受、前記第2動圧ラジアル軸受、前記動圧スラスト軸受、及び前記電動モータを冷却することを特徴とする流体機械。
【請求項7】
前記回転体は、
軸部と、
前記軸部の外周面から環状に突出するとともに前記軸部と一体的に回転する拡径部と、を有し、
前記拡径部は、前記電動モータに対して前記回転軸線方向で離間した位置に配置され、
前記動圧スラスト軸受は、
前記拡径部における前記回転軸線方向で前記電動モータ寄りに位置する部位を回転可能に支持する第1動圧スラスト軸受と、
前記拡径部における前記回転軸線方向で前記電動モータとは反対側に位置する部位を回転可能に支持する第2動圧スラスト軸受と、を含み、
前記第1動圧スラスト軸受のコーティング層、及び前記第2動圧スラスト軸受のコーティング層のうち、前記回転体が回転する際に受けるスラスト荷重が大きい方の硬度が、前記回転体が回転する際に受けるスラスト荷重が小さい方の硬度よりも高いことを特徴とする請求項6に記載の流体機械。
【請求項8】
回転体と、
前記回転体と一体的に回転する作動体と、
前記作動体及び前記回転体を収容するハウジングと、
前記回転体を前記ハウジングに対して回転可能に支持する複数の動圧滑り軸受と、
前記ハウジング内に形成されるとともに前記動圧滑り軸受を直接冷却する流体が流れる冷却流路と、を備え、
前記動圧滑り軸受は、前記回転体と対向する部位に樹脂製のコーティング層を有する流体機械であって、
前記複数の動圧滑り軸受は、前記複数の動圧滑り軸受のうち、前記冷却流路を流れる前記流体の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受のコーティング層の硬度が、前記上流側に配置された動圧滑り軸受に対し、前記流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受のコーティング層の硬度よりも低くなる組み合わせを少なくとも1組含み、
前記冷却流路を流れる前記流体は、気体であり、
前記各動圧滑り軸受は、気体軸受であり、
前記冷却流路には、車載用燃料電池に向かって流れる空気の一部が前記気体として流入されることを特徴とする流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
流体機械は、回転体と、回転体と一体的に回転する作動体と、を備えている。流体機械のハウジングは、回転体及び作動体を収容する。また、流体機械は、例えば、複数の動圧滑り軸受を備えている。各動圧滑り軸受は、回転体をハウジングに対して回転可能に支持する。
【0003】
動圧滑り軸受は、回転体の回転数が、動圧滑り軸受により回転体が浮上する浮上回転数に達するまでは、回転体と接触した状態で回転体を支持する。そして、回転体の回転数が浮上回転数に達すると、動圧滑り軸受と回転体との間に生じる動圧によって、回転体が動圧滑り軸受に対して浮上する。これにより、回転体が動圧滑り軸受に対して非接触の状態で回転可能に支持される。
【0004】
動圧滑り軸受は、回転体の回転数が浮上回転数を下回っている場合、回転体と接触した状態で回転体を支持するため、このときに、例えば、回転体から動圧滑り軸受に過大な荷重が加わると、動圧滑り軸受と回転体との間で焼き付きが生じる虞がある。そこで、動圧滑り軸受における回転体と対向する部位に樹脂製のコーティング層を有する動圧滑り軸受が、例えば特許文献1に開示されている。
【0005】
また、回転体が動圧滑り軸受と接触した状態で回転すると、動圧滑り軸受と回転体との間で生じる摩擦によって動圧滑り軸受が発熱する。そこで、流体機械においては、動圧滑り軸受を冷却するための流体が流れる冷却流路をハウジング内に形成することが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、動圧滑り軸受のコーティング層と回転体とが接触した状態で回転すると、コーティング層が回転体に削られて、コーティング層の摩耗粉が発生する。ここで、冷却流路を流れる流体の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受のコーティング層の摩耗粉が発生した場合、この摩耗粉が流体と共に、流体の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受と回転体との間まで流れ込む場合がある。すると、流体の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受と回転体との間に流れ込んだ摩耗粉によって、流体の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受のコーティング層の摩耗が促進される虞がある。その結果、流体の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受の寿命が短くなり、耐久性が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための流体機械は、回転体と、前記回転体と一体的に回転する作動体と、前記作動体及び前記回転体を収容するハウジングと、前記回転体を前記ハウジングに対して回転可能に支持する複数の動圧滑り軸受と、前記ハウジング内に形成されるとともに前記動圧滑り軸受を直接冷却する流体が流れる冷却流路と、を備え、前記動圧滑り軸受は、前記回転体と対向する部位に樹脂製のコーティング層を有する流体機械であって、前記複数の動圧滑り軸受は、前記複数の動圧滑り軸受のうち、前記冷却流路を流れる前記流体の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受のコーティング層の硬度が、前記上流側に配置された動圧滑り軸受に対し、前記流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受のコーティング層の硬度よりも低くなる組み合わせを少なくとも1組含む。
【0009】
例えば、流体の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受のコーティング層の摩耗粉が発生し、この摩耗粉が流体と共に、流体の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受に対し、流体の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受と回転体との間まで流れ込んだ場合を考える。このとき、流体の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受のコーティング層の硬度が、流体の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受に対し、流体の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受のコーティング層の硬度よりも低い。このため、流体の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受のコーティング層から発生した摩耗粉の硬度が、流体の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受に対し、流体の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受のコーティング層の硬度よりも低い。したがって、流体の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受のコーティング層の摩耗粉が流体と共に、流体の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受に対し、流体の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受と回転体との間まで流れ込んだとしても、流体の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受のコーティング層の摩耗の促進を抑制することができる。
【0010】
また、流体の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受は、流体の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受に対し、流体の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受よりも冷却流路を流れる流体によって冷却され易い。このため、流体の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受のコーティング層の硬度を、流体の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受に対し、流体の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受のコーティング層の硬度よりも低くしても、流体の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受のコーティング層の摩耗粉が発生し難い。したがって、流体機械の耐久性を向上させることができる。
【0011】
上記流体機械において、前記冷却流路を流れる前記流体は、気体であり、前記各動圧滑り軸受は、気体軸受であるとよい。
このような、冷却流路を流れる流体が、気体であり、各動圧滑り軸受が、気体軸受である構成は、動圧滑り軸受が回転体をハウジングに対して回転可能に支持する構成として好適である。
【0012】
上記流体機械において、前記作動体は、前記回転体の回転軸線方向の第1端部に設けられた第1羽根車と、前記回転軸線方向の第2端部に設けられた第2羽根車と、を含み、前記回転軸線方向において、前記第1羽根車と前記第2羽根車との間に配置されるとともに前記回転体を回転させる電動モータを備え、前記複数の気体軸受は、前記電動モータよりも前記回転体の第1端部寄りに位置する第1動圧ラジアル軸受と、前記電動モータよりも前記回転体の第2端部寄りに位置する第2動圧ラジアル軸受と、前記第1羽根車と前記第2羽根車との差圧を受ける動圧スラスト軸受と、を含み、前記気体は、前記第1動圧ラジアル軸受、前記第2動圧ラジアル軸受、前記動圧スラスト軸受、及び前記電動モータを冷却するとよい。
【0013】
これによれば、第1動圧ラジアル軸受、第2動圧ラジアル軸受、及び動圧スラスト軸受を冷却する空気によって、電動モータも冷却することができるため、電動モータを冷却するための流体が流れる冷却流路を別途用意する必要が無くなる。その結果、流体機械の構成を簡素化することができる。
【0014】
上記流体機械において、前記回転体は、軸部と、前記軸部の外周面から環状に突出するとともに前記軸部と一体的に回転する拡径部と、を有し、前記拡径部は、前記電動モータに対して前記回転軸線方向で離間した位置に配置され、前記動圧スラスト軸受は、前記拡径部における前記回転軸線方向で前記電動モータ寄りに位置する部位を回転可能に支持する第1動圧スラスト軸受と、前記拡径部における前記回転軸線方向で前記電動モータとは反対側に位置する部位を回転可能に支持する第2動圧スラスト軸受と、を含み、前記第1動圧スラスト軸受のコーティング層、及び前記第2動圧スラスト軸受のコーティング層のうち、前記回転体が回転する際に受けるスラスト荷重が大きい方の硬度が、前記回転体が回転する際に受けるスラスト荷重が小さい方の硬度よりも高いとよい。
【0015】
例えば、回転体が回転する際に受けるスラスト荷重が大きい動圧スラスト軸受のコーティング層の硬度が、回転体が回転する際に受けるスラスト荷重が小さい動圧スラスト軸受のコーティング層の硬度と同じである場合を考える。回転体が回転する際に受けるスラスト荷重が大きいほど、動圧スラスト軸受のコーティング層に負荷がかかる。このため、回転体が回転する際に受けるスラスト荷重が大きい動圧スラスト軸受は、回転体が回転する際に受けるスラスト荷重が小さい動圧スラスト軸受よりも耐久性が低下し易い。そこで、第1動圧スラスト軸受のコーティング層、及び第2動圧スラスト軸受のコーティング層のうち、回転体が回転する際に受けるスラスト荷重が大きい方の硬度を、回転体が回転する際に受けるスラスト荷重が小さい方の硬度よりも高くした。このため、第1動圧スラスト軸受のコーティング層、及び第2動圧スラスト軸受のコーティング層のうち、回転体が回転する際に受けるスラスト荷重が大きい方が削られ難くなる。したがって、流体機械の耐久性を向上させることができる。
【0016】
上記流体機械において、前記冷却流路には、車載用燃料電池に向かって流れる空気の一部が前記気体として流入されるとよい。
車載用燃料電池に供給するための空気を利用して、各動圧滑り軸受を冷却することができる。したがって、車載用燃料電池を搭載する車両の構成を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、流体機械の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態における電動圧縮機を示す側断面図。
【
図4】回転体及び動圧滑り軸受のコーティング層の一部を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、流体機械を電動圧縮機に具体化した一実施形態を
図1~
図4にしたがって説明する。本実施形態の電動圧縮機は、燃料電池車に搭載されている。燃料電池車には、酸素及び水素を車載用燃料電池に供給して発電させる燃料電池システムが搭載されている。そして、電動圧縮機は、車載用燃料電池に供給される酸素を含む空気を圧縮する。
【0020】
図1に示すように、流体機械としての電動圧縮機10は、ハウジング11を備えている。ハウジング11は、金属材料製であり、例えば、アルミニウム製である。ハウジング11は、モータハウジング12、コンプレッサハウジング13、タービンハウジング14、第1プレート15、第2プレート16、及び第3プレート17を有している。
【0021】
モータハウジング12は、板状の端壁12aと、周壁12bと、を有している。周壁12bは、端壁12aの外周部から筒状に延びている。第1プレート15は、モータハウジング12の周壁12bの開口側の端部に連結され、モータハウジング12の周壁12bの開口を閉塞している。
【0022】
そして、モータハウジング12の端壁12aの内面121a、周壁12bの内周面121b、及び第1プレート15におけるモータハウジング12側の端面15aによってモータ室S1が区画されている。モータ室S1内には、電動モータ18が収容されている。
【0023】
第1プレート15は、第1軸受保持部20を有している。第1軸受保持部20は、第1プレート15の端面15aの中央部から電動モータ18に向けて突出している。第1軸受保持部20は、円筒状である。
【0024】
第1プレート15におけるモータハウジング12とは反対側の端面15bには、凹部15cが形成されている。凹部15cは、円孔状である。第1軸受保持部20の内側は、第1プレート15を貫通して凹部15cの底面15dに開口している。凹部15cの軸心と第1軸受保持部20の軸心とは一致している。凹部15cの内周面15eは、端面15bと底面15dとを接続している。
【0025】
モータハウジング12は、第2軸受保持部22を有している。第2軸受保持部22は、モータハウジング12の端壁12aの内面121aの中央部から電動モータ18に向けて突出している。第2軸受保持部22は、円筒状である。第2軸受保持部22の内側は、モータハウジング12の端壁12aを貫通して端壁12aの外面122aに開口している。第1軸受保持部20の軸心と第2軸受保持部22の軸心とは一致している。
【0026】
図2に示すように、第2プレート16は、第1プレート15の端面15bに連結されている。第2プレート16の中央部にはシャフト挿通孔16aが形成されている。シャフト挿通孔16aは、凹部15cの内側に連通している。シャフト挿通孔16aの軸心は、凹部15cの軸心及び第1軸受保持部20の軸心と一致している。そして、第2プレート16における第1プレート15寄りの端面16cと、第1プレート15の凹部15cと、によって、スラスト軸受収容室S2が区画されている。
【0027】
コンプレッサハウジング13は、空気が吸入される円孔状の吸入口13aを有する筒状である。コンプレッサハウジング13は、吸入口13aの軸心が、第2プレート16のシャフト挿通孔16aの軸心、及び第1軸受保持部20の軸心と一致した状態で第2プレート16における第1プレート15とは反対側の端面16bに連結されている。吸入口13aは、コンプレッサハウジング13における第2プレート16とは反対側の端面に開口している。コンプレッサハウジング13と第2プレート16の端面16bとの間には、第1羽根車室13bと、吐出室13cと、第1ディフューザ流路13dと、が形成されている。第1羽根車室13bは、吸入口13aに連通している。吐出室13cは、第1羽根車室13bの周囲で吸入口13aの軸心周りに延びている。第1ディフューザ流路13dは、第1羽根車室13bと吐出室13cとを連通している。第1羽根車室13bは、第2プレート16のシャフト挿通孔16aに連通している。
【0028】
図3に示すように、第3プレート17は、モータハウジング12の端壁12aの外面122aに連結されている。第3プレート17の中央部にはシャフト挿通孔17aが形成されている。シャフト挿通孔17aは、第2軸受保持部22の内側に連通している。シャフト挿通孔17aの軸心は、第2軸受保持部22の軸心と一致している。
【0029】
タービンハウジング14は、空気が吸入される円孔状の吐出口14aを有する筒状である。タービンハウジング14は、吐出口14aの軸心が、第3プレート17のシャフト挿通孔17aの軸心、及び第2軸受保持部22の軸心と一致した状態で第3プレート17におけるモータハウジング12とは反対側の端面17bに連結されている。吐出口14aは、タービンハウジング14における第3プレート17とは反対側の端面に開口している。タービンハウジング14と第3プレート17の端面17bとの間には、第2羽根車室14bと、吸入室14cと、第2ディフューザ流路14dと、が形成されている。第2羽根車室14bは、吐出口14aに連通している。吸入室14cは、第2羽根車室14bの周囲で吐出口14aの軸心周りに延びている。第2ディフューザ流路14dは、第2羽根車室14bと吸入室14cとを連通している。第2羽根車室14bは、シャフト挿通孔17aに連通している。
【0030】
図1に示すように、ハウジング11内には、回転体24が収容されている。回転体24は、軸部としての回転軸24aと、第1支持部24bと、第2支持部24cと、拡径部としての第3支持部24dと、を有している。第1支持部24bは、回転軸24aの外周面240aにおける第1端部24e寄りの部位に設けられるとともに第1軸受保持部20の内側に配置されている。第1支持部24bは、回転軸24aに一体的に形成されるとともに回転軸24aの外周面240aから突出している。
【0031】
第2支持部24cは、回転軸24aの外周面240aにおける第2端部24f寄りの部位に設けられるとともに第2軸受保持部22の内側に配置されている。第2支持部24cは、回転軸24aの外周面240aから環状に突出した状態で、回転軸24aの外周面240aに固定されている。第2支持部24cは、回転軸24aと一体的に回転可能である。
【0032】
第3支持部24dは、スラスト軸受収容室S2に配置されている。第3支持部24dは、回転軸24aの外周面240aから環状に突出した状態で、回転軸24aの外周面240aに固定されている。したがって、第3支持部24dは、回転軸24aとは別体である。第3支持部24dは、回転軸24aと一体的に回転可能である。第3支持部24dは、電動モータ18に対して回転体24の回転軸線方向で離間した位置に配置されている。
【0033】
回転体24の回転軸線方向の第1端部24eには、作動体としての第1羽根車25が連結されている。第1羽根車25は、回転軸24aにおける第3支持部24dよりも第1端部24e寄りに配置されている。第1羽根車25は、第1羽根車室13bに収容されている。回転体24の回転軸線方向の第2端部24fには、作動体としての第2羽根車26が連結されている。第2羽根車26は、回転軸24aにおける第2支持部24cよりも第2端部24f寄りに配置されている。第2羽根車26は、第2羽根車室14bに収容されている。したがって、ハウジング11は、第1羽根車25、第2羽根車26、及び回転体24を収容する。また、電動モータ18は、回転体24の回転軸線方向において、第1羽根車25と第2羽根車26との間に配置されている。
【0034】
第2プレート16のシャフト挿通孔16aと回転体24との間には、第1シール部材27が設けられている。第1シール部材27は、第1羽根車室13bからモータ室S1に向かう空気の洩れを抑制する。また、第3プレート17のシャフト挿通孔17aと回転体24との間には、第2シール部材28が設けられている。第2シール部材28は、第2羽根車室14bからモータ室S1に向かう空気の洩れを抑制する。第1シール部材27及び第2シール部材28は、例えば、シールリングである。
【0035】
電動モータ18は、筒状のロータ31及び筒状のステータ32を備えている。ロータ31は、回転軸24aに固定されている。ステータ32は、ハウジング11に固定されている。ロータ31は、ステータ32の径方向内側に配置されるとともに回転体24と一体的に回転する。ロータ31は、回転軸24aに止着された円筒状のロータコア31aと、ロータコア31aに設けられた図示しない複数の永久磁石と、を有している。ステータ32は、ロータ31を取り囲んでいる。ステータ32は、モータハウジング12の周壁12bの内周面121bに固定された円筒状のステータコア33と、ステータコア33に巻回されたコイル34と、を有している。回転体24は、図示しないバッテリからコイル34に電流が流れることによって、ロータ31と一体的に回転する。したがって、電動モータ18は、回転体24を回転させる。よって、電動モータ18は、回転体24を回転させるための駆動源である。
【0036】
本実施形態の燃料電池システム1は、車載用燃料電池としての燃料電池スタック100と、電動圧縮機10と、供給流路L1と、吐出流路L2と、分岐流路L3と、を備えている。燃料電池スタック100は、複数の燃料電池から構成されている。供給流路L1は、吐出室13cと、燃料電池スタック100と、を接続する。吐出流路L2は、燃料電池スタック100と、吸入室14cと、を接続する。
【0037】
回転体24がロータ31と一体的に回転すると、第1羽根車25及び第2羽根車26が回転体24と一体的に回転する。すると、吸入口13aから吸入された空気が第1羽根車室13b内で第1羽根車25によって圧縮されるとともに第1ディフューザ流路13dを通過して吐出室13cから吐出される。そして、吐出室13cから吐出された空気は、供給流路L1を介して燃料電池スタック100に供給される。燃料電池スタック100に供給された空気は、燃料電池スタック100を発電するために使用される。その後、燃料電池スタック100の排気として吐出流路L2へ吐出される。燃料電池スタック100の排気は、吐出流路L2を介して吸入室14cに吸入される。吸入室14cに吸入される燃料電池スタック100の排気は、第2ディフューザ流路14dを通じて第2羽根車室14bに吐出される。第2羽根車室14bに吐出される燃料電池スタック100の排気により第2羽根車26が回転する。回転体24は、電動モータ18の駆動による回転に加え、燃料電池スタック100の排気により回転する第2羽根車26の回転によっても回転する。したがって、第1羽根車25及び第2羽根車26は、回転体24と一体的に回転する作動体である。よって、作動体は、第1羽根車25と、第2羽根車26と、を含む。そして、燃料電池スタック100の排気による第2羽根車26の回転により回転体24の回転が補助される。吸入室14cに吐出された燃料電池スタック100の排気は、吐出口14aから外部へ吐出される。
【0038】
電動圧縮機10は、複数の動圧滑り軸受B1を備えている。複数の動圧滑り軸受B1は、回転体24をハウジング11に対して回転可能に支持する。複数の動圧滑り軸受B1は、第1動圧ラジアル軸受21と、第2動圧ラジアル軸受23と、動圧スラスト軸受40と、を含む。第1動圧ラジアル軸受21及び第2動圧ラジアル軸受23は、回転体24をラジアル方向で回転可能に支持する。なお、「ラジアル方向」とは、回転体24の回転軸線方向に対して直交する方向である。
【0039】
図2に示すように、第1動圧ラジアル軸受21は円筒状である。第1動圧ラジアル軸受21は、第1軸受保持部20に保持されている。したがって、第1動圧ラジアル軸受21は、電動モータ18よりも回転体24の第1端部24e寄りに位置する。第1動圧ラジアル軸受21は、回転体24の第1支持部24bを支持する。
【0040】
第1動圧ラジアル軸受21は、回転体24の回転数が、第1動圧ラジアル軸受21により回転体24が浮上する浮上回転数に達するまでは、第1支持部24bと接触した状態で回転体24を支持する。そして、回転体24の回転数が浮上回転数に達すると、第1支持部24bと第1動圧ラジアル軸受21との間に生じる空気膜の動圧によって、第1支持部24bが第1動圧ラジアル軸受21に対して浮上する。これにより、第1動圧ラジアル軸受21は、第1支持部24bと非接触の状態で回転体24を支持する。したがって、第1動圧ラジアル軸受21は、気体軸受である。
【0041】
図3に示すように、第2動圧ラジアル軸受23は円筒状である。第2動圧ラジアル軸受23は、第2軸受保持部22に保持されている。したがって、第2動圧ラジアル軸受23は、電動モータ18よりも回転体24の第2端部24f寄りに位置する。第2動圧ラジアル軸受23は、回転体24の第2支持部24cを支持する。
【0042】
第2動圧ラジアル軸受23は、回転体24の回転数が、第2動圧ラジアル軸受23により回転体24が浮上する浮上回転数に達するまでは、第2支持部24cと接触した状態で回転体24を支持する。そして、回転体24の回転数が浮上回転数に達すると、第2支持部24cと第2動圧ラジアル軸受23との間に生じる空気膜の動圧によって、第2支持部24cが第2動圧ラジアル軸受23に対して浮上する。これにより、第2動圧ラジアル軸受23は、第2支持部24cと非接触の状態で回転体24を支持する。したがって、第2動圧ラジアル軸受23は、気体軸受である。
【0043】
図2に示すように、動圧スラスト軸受40は、回転体24をスラスト方向で回転可能に支持する。なお、「スラスト方向」とは、回転体24の回転軸線方向である。
動圧スラスト軸受40は、第1動圧スラスト軸受41と、第2動圧スラスト軸受42と、を含む。第1動圧スラスト軸受41及び第2動圧スラスト軸受42は、スラスト軸受収容室S2に配置されている。第1動圧スラスト軸受41及び第2動圧スラスト軸受42は、第3支持部24dを挟み込むように配置されている。第1動圧スラスト軸受41及び第2動圧スラスト軸受42は、第3支持部24dに対して、回転体24の回転軸線方向で対向している。
【0044】
第1動圧スラスト軸受41は、回転体24の回転数が、第1動圧スラスト軸受41により回転体24が浮上する浮上回転数に達するまでは、第3支持部24dと接触した状態で回転体24を支持する。そして、回転体24の回転数が浮上回転数に達すると、第3支持部24dと第1動圧スラスト軸受41との間に生じる空気膜の動圧によって、第3支持部24dが第1動圧スラスト軸受41に対して浮上する。これにより、第1動圧スラスト軸受41は、第3支持部24dと非接触の状態で回転体24を支持する。したがって、第1動圧スラスト軸受41は、気体軸受である。そして、第1動圧スラスト軸受41は、第3支持部24dにおける回転体24の回転軸線方向で電動モータ18寄りに位置する部位を回転可能に支持する。
【0045】
第2動圧スラスト軸受42は、回転体24の回転数が、第2動圧スラスト軸受42により回転体24が浮上する浮上回転数に達するまでは、第3支持部24dと接触した状態で回転体24を支持する。そして、回転体24の回転数が浮上回転数に達すると、第3支持部24dと第2動圧スラスト軸受42との間に生じる空気膜の動圧によって、第3支持部24dが第2動圧スラスト軸受42に対して浮上する。これにより、第2動圧スラスト軸受42は、第3支持部24dと非接触の状態で回転体24を支持する。したがって、第2動圧スラスト軸受42は、気体軸受である。第2動圧スラスト軸受42は、第3支持部24dにおける回転体24の回転軸線方向で電動モータ18とは反対側に位置する部位を回転可能に支持する。
【0046】
よって、第1動圧スラスト軸受41は、回転体24をスラスト方向で回転可能に支持する。第2動圧スラスト軸受42は、回転体24をスラスト方向で回転可能に支持する。したがって、動圧スラスト軸受40は、第1羽根車25及び第2羽根車26との間の差圧を受ける。
【0047】
動圧滑り軸受B1は、回転体24と対向する部位に樹脂製のコーティング層C1を有する。コーティング層C1は、図示しない母材と粉末状の固体潤滑剤とから形成されている。母材は、バインダ樹脂と強化材とから構成されている。バインダ樹脂としては、例えば、ポリアミドイミド樹脂が用いられる。強化材としては、例えば、二酸化チタンが用いられる。固体潤滑剤としては、例えば、二硫化モリブデンが用いられる。
【0048】
コーティング層C1は、第1動圧ラジアル軸受21における第1支持部24bと対向する部位に形成される第1ラジアルコーティング層21bと、第2動圧ラジアル軸受23における第2支持部24cと対向する部位に形成される第2ラジアルコーティング層23bと、を含む。さらに、コーティング層C1は、第1動圧スラスト軸受41における第3支持部24dと対向する部位に形成される第1スラストコーティング層41bと、第2動圧スラスト軸受42における第3支持部24dと対向する部位に形成される第2スラストコーティング層42bと、を含む。
【0049】
図1、
図2、及び
図3に示すように、ハウジング11には、冷却流路50が形成されている。冷却流路50には、流体としての空気が流れる。したがって、冷却流路50を流れる流体は、気体である。冷却流路50は、第2プレート16、第1プレート15、モータハウジング12、及び第3プレート17に亘って形成されている。冷却流路50は、第1流路51及び第2流路52を有している。
【0050】
第1流路51は、第2プレート16に設けられている。第1流路51は、第2プレート16の側壁面に設けられた流入口51aを有している。第1流路51は、スラスト軸受収容室S2に連通している。
【0051】
第2流路52は、第3プレート17に設けられている。第2流路52は、第3プレート17の側端面に設けられた排出口52aを有している。第2流路52は、第2動圧ラジアル軸受23と第2支持部24cとの間を介してモータ室S1に連通している。
【0052】
ここで、分岐流路L3は、供給流路L1から分岐している。分岐流路L3は、供給流路L1と、第1流路51の流入口51aと、を接続する。分岐流路L3の途中には、インタークーラR1が設けられている。インタークーラR1は、分岐流路L3を流れる空気を冷却する。
【0053】
第1流路51には、燃料電池スタック100に向かって供給流路L1を流れる空気の一部が分岐流路L3を介して流入される。なお、第1流路51に流入される空気は、分岐流路L3を流れる途中でインタークーラR1によって冷却されている。第1流路51に流入した空気は、第2動圧スラスト軸受42と回転軸24aとの間、第2動圧スラスト軸受42と第3支持部24dとの間、凹部15cの内周面15eと第3支持部24dとの間、第1動圧スラスト軸受41と第3支持部24dとの間、及び第1動圧スラスト軸受41と回転軸24aとの間の順に通過する。そして、第1動圧ラジアル軸受21と第1支持部24bとの間を通過してモータ室S1内に流れ込む。モータ室S1内に流れ込んだ空気は、例えば、ロータ31とステータ32との間を通過して第2動圧ラジアル軸受23と第2支持部24cとの間に流れ込む。続いて、第2動圧ラジアル軸受23と第2支持部24cとの間に流れ込んだ空気は、第2流路52に流れ込み、排出口52aから排出される。したがって、第1流路51、第2動圧スラスト軸受42と回転軸24aとの間、第2動圧スラスト軸受42と第3支持部24dとの間、凹部15cの内周面15eと第3支持部24dとの間、第1動圧スラスト軸受41と第3支持部24dとの間、第1動圧スラスト軸受41と回転軸24aとの間、第1動圧ラジアル軸受21と第1支持部24bとの間、モータ室S1、第2動圧ラジアル軸受23と第2支持部24cとの間、及び第2流路52は、冷却流路50を構成している。
【0054】
このように、空気が冷却流路50を流れることにより、電動モータ18、第1動圧ラジアル軸受21、第2動圧ラジアル軸受23、第1動圧スラスト軸受41、及び第2動圧スラスト軸受42それぞれが空気によって直接冷却される。よって、冷却流路50には、燃料電池スタック100に向かって流れる空気の一部が、冷却流路50を流れる気体として流入される。冷却流路50は、冷却流路50を流れる空気が、第2動圧スラスト軸受42、第1動圧スラスト軸受41、第1動圧ラジアル軸受21、及び第2動圧ラジアル軸受23の順に直列に流れるようにハウジング11に形成されている。
【0055】
本実施形態では、第2スラストコーティング層42bの硬度は、第1スラストコーティング層41bの硬度よりも低い。第1スラストコーティング層41bの硬度は、第1ラジアルコーティング層21bの硬度よりも低い。第1ラジアルコーティング層21bの硬度は、第2ラジアルコーティング層23bの硬度よりも低い。
【0056】
よって、第2スラストコーティング層42bの硬度は、第1スラストコーティング層41bの硬度、第1ラジアルコーティング層21bの硬度、及び第2ラジアルコーティング層23bの硬度よりも低い。第1スラストコーティング層41bの硬度は、第1ラジアルコーティング層21bの硬度、及び第2ラジアルコーティング層23bの硬度よりも低い。第1ラジアルコーティング層21bの硬度は、第2ラジアルコーティング層23bの硬度よりも低い。このように、本実施形態では、複数の動圧滑り軸受B1は、複数の動圧滑り軸受B1のうち、冷却流路50を流れる空気の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1の硬度が、空気の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受B1に対し、空気の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1の硬度よりも低くなる組み合わせを6組含んでいる。したがって、複数の動圧滑り軸受B1は、複数の動圧滑り軸受B1のうち、冷却流路50を流れる空気の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1の硬度が、空気の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受B1に対し、空気の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1の硬度よりも低くなる組み合わせを少なくとも1組含んでいる。なお、コーティング層C1の硬度は、例えば、母材の硬度、固体潤滑剤の含有率、及び固体潤滑剤の粒径などによって調整される。
【0057】
図4に示すように、回転体24が、第1ラジアルコーティング層21bと接触した状態で回転した際に、第1支持部24bが第1ラジアルコーティング層21bに対して摺動する。このとき、第1ラジアルコーティング層21bの一部が第1支持部24bに削られ、削られた第1ラジアルコーティング層21bの一部が第1支持部24bにおける第1動圧ラジアル軸受21と対向する部位に付着して、第1支持部24bに移着層C2が形成される場合がある。このように形成された移着層C2の硬度は、第1ラジアルコーティング層21bの硬度と同等であるため、移着層C2が形成されていない第1支持部24bが第1ラジアルコーティング層21bに直接接触した状態で回転する場合に比べると、第1ラジアルコーティング層21bが摩耗し難くなる。
【0058】
なお、第2支持部24cにおける第2動圧ラジアル軸受23と対向する部位、第3支持部24dにおける第1動圧スラスト軸受41と対向する部位、及び第3支持部24dにおける第2動圧スラスト軸受42と対向する部位にも同様に移着層C2が形成される場合があるがその詳細な説明は省略する。
【0059】
<作用>
次に、本実施形態の作用について説明する。
ところで、動圧滑り軸受B1のコーティング層C1と回転体24とが接触した状態で回転すると、コーティング層C1が回転体24に削られて、コーティング層C1の摩耗粉が発生する。ここで、空気の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1の摩耗粉が発生した場合、この摩耗粉が空気と共に、空気の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受B1と回転体24との間まで流れ込む場合がある。
【0060】
空気の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1の硬度は空気の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受B1に対し、空気の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1の硬度よりも低い。このため、空気の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1から発生した摩耗粉の硬度が、空気の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1よりも低くなる。したがって、空気の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1の摩耗粉が空気と共に、空気の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受B1と回転体24との間まで流れ込んだとしても、空気の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1の摩耗の促進が抑制される。
【0061】
<効果>
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)複数の動圧滑り軸受B1は、複数の動圧滑り軸受B1のうち、冷却流路50を流れる空気の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1の硬度が、空気の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受B1に対し、空気の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1の硬度よりも低くなる組み合わせを少なくとも1組含む。このため、空気の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1から発生した摩耗粉の硬度が、空気の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1の硬度よりも低くなる。したがって、空気の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1の摩耗粉が空気と共に、空気の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受B1と回転体24との間まで流れ込んだとしても、空気の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1の摩耗の促進を抑制することができる。
【0062】
また、空気の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受B1は、空気の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受B1よりも冷却流路50を流れる空気によって冷却され易い。このため、空気の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1の硬度を、空気の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1の硬度よりも低くしても、空気の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1の摩耗粉が発生し難い。したがって、電動圧縮機10の耐久性を向上させることができる。
【0063】
(2)第1動圧ラジアル軸受21、第2動圧ラジアル軸受23、第1動圧スラスト軸受41、及び第2動圧スラスト軸受42を冷却する空気によって電動モータ18を冷却する。このため、電動モータ18を冷却するための空気が流れる冷却流路を別途用意する必要が無くなる。その結果、電動圧縮機10の構成を簡素化することができる。
【0064】
(3)空気の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1の硬度を、空気の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受B1に対し、空気の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1の硬度よりも低くすることにより、空気の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1の摩耗の促進を抑制している。これによれば、例えば、空気の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1から発生した摩耗粉を、空気の流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受B1と回転体24との間に流れ込む前に捕捉するフィルターを設置する必要がなくなる。このため、部品点数の増加を抑制することができる。
【0065】
(4)冷却流路50は、冷却流路50を流れる空気が、第2動圧スラスト軸受42、第1動圧スラスト軸受41、第1動圧ラジアル軸受21、及び第2動圧ラジアル軸受23の順に直列に流れるようにハウジング11に形成されている。例えば、冷却流路50を流れる空気が、第2動圧スラスト軸受42、第1動圧スラスト軸受41、第1動圧ラジアル軸受21、及び第2動圧ラジアル軸受23それぞれに対して並列に流れるようにハウジング11に形成される場合に比べると、冷却流路50の経路を簡素化することができる。
【0066】
(5)第2動圧スラスト軸受42、第1動圧スラスト軸受41、第1動圧ラジアル軸受21、及び第2動圧ラジアル軸受23の順に直列に流れる空気が、電動モータ18を冷却するように冷却流路50が構成されている。これによれば、第1動圧ラジアル軸受21、第2動圧ラジアル軸受23、第1動圧スラスト軸受41、及び第2動圧スラスト軸受42を冷却する空気によって電動モータ18も冷却する冷却流路50の構成を簡素化することができる。
【0067】
(6)冷却流路50には、燃料電池スタック100に向かって流れる空気の一部が、冷却流路50を流れる気体として流入される。これによれば、燃料電池スタック100に供給するための空気を利用して、第1動圧ラジアル軸受21、第2動圧ラジアル軸受23、第1動圧スラスト軸受41、及び第2動圧スラスト軸受42を冷却することができる。したがって、燃料電池スタック100を搭載する車両の構成を簡素化することができる。
【0068】
<変更例>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0069】
○ 実施形態において、流体として空気を使用したが、これに限られない。例えば、流体としてオイルを使用してもよい。この場合、回転体24の回転数が浮上回転数に達すると、例えば、第1支持部24bと第1動圧ラジアル軸受21との間に生じる油膜の動圧によって、第1支持部24bが第1動圧ラジアル軸受21に対して浮上する。
【0070】
○ 実施形態において、流体機械は、電動モータ18を備えていなくてもよい。この場合、回転体24を回転させるための駆動源として、例えば、エンジンを用いてもよい。
○ 実施形態において、例えば、第1スラストコーティング層41b、第1ラジアルコーティング層21b、及び第2ラジアルコーティング層23bそれぞれの硬度が等しい構成であってもよい。また、第1スラストコーティング層41bの硬度と第2スラストコーティング層42bの硬度とが等しく、第1ラジアルコーティング層21bの硬度と第2ラジアルコーティング層23bの硬度とが等しくてもよい。この場合、第1スラストコーティング層41bの硬度及び第2スラストコーティング層42bの硬度が、第1ラジアルコーティング層21bの硬度及び第2ラジアルコーティング層23bの硬度よりも低い構成であればよい。要は、複数の動圧滑り軸受B1が、複数の動圧滑り軸受B1のうち、冷却流路50を流れる空気の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1の硬度が、空気の流れ方向の上流側に配置された動圧滑り軸受B1に対し、流れ方向の下流側に配置された動圧滑り軸受B1のコーティング層C1の硬度よりも低くなる組み合わせを少なくとも1組含んでいればよい。
【0071】
○ 実施形態において、冷却流路50は、冷却流路50を流れる空気が、第2動圧スラスト軸受42、第1動圧スラスト軸受41、第1動圧ラジアル軸受21、及び第2動圧ラジアル軸受23の順に直列に流れるようにハウジング11に形成されていたが、これに限らない。例えば、冷却流路50は、冷却流路50を流れる空気が、第2動圧スラスト軸受42及び第1動圧スラスト軸受41の順に直列に流れる流路と、冷却流路50を流れる空気が、第1動圧ラジアル軸受21及び第2動圧ラジアル軸受23の順に直列に流れる流路と、を有するようにハウジング11に形成されていてもよい。
【0072】
○ 実施形態において、例えば、回転体24をスラスト方向に支持するために、静圧スラスト軸受を用いてもよい。
○ 実施形態において、例えば、回転体24をラジアル方向に支持するために、静圧ラジアル軸受を用いてもよい。
【0073】
○ 実施形態において、例えば、第1動圧ラジアル軸受21及び第2動圧ラジアル軸受23が、第1動圧スラスト軸受41及び第2動圧スラスト軸受42よりも空気の流れ方向の上流側に配置されていてもよい。また、第1動圧ラジアル軸受21及び第2動圧ラジアル軸受23が、空気の流れ方向において、第1動圧スラスト軸受41と第2動圧スラスト軸受42との間に配置されていてもよい。要は、電動圧縮機10の耐久性が向上すればよく、第1動圧ラジアル軸受21、第2動圧ラジアル軸受23、第1動圧スラスト軸受41、及び第2動圧スラスト軸受42の配置位置は、特に限定されない。
【0074】
○ 実施形態において、第1スラストコーティング層41b、及び第2スラストコーティング層42bのうち、回転体24が回転する際に受けるスラスト荷重が大きい方の硬度が、回転体24が回転する際に受けるスラスト荷重が小さい方の硬度よりも高くなるようにしてもよい。
【0075】
例えば、回転体24が回転する際に受けるスラスト荷重が大きい動圧スラスト軸受40のコーティング層C1の硬度が、回転体24が回転する際に受けるスラスト荷重が小さい動圧スラスト軸受40のコーティング層C1の硬度と同じである場合を考える。回転体24が回転する際に受けるスラスト荷重が大きいほど、動圧スラスト軸受40のコーティング層C1に負荷がかかる。このため、回転体24が回転する際に受けるスラスト荷重が大きい動圧スラスト軸受40は、回転体24が回転する際に受けるスラスト荷重が小さい動圧スラスト軸受40よりも耐久性が低下し易い。そこで、第1スラストコーティング層41b、及び第2スラストコーティング層42bのうち、回転体24が回転する際に受けるスラスト荷重が大きい方の硬度を、回転体24が回転する際に受けるスラスト荷重が小さい方の硬度よりも高くした。このため、第1スラストコーティング層41b、及び第2スラストコーティング層42bのうち、回転体24が回転する際に受けるスラスト荷重が大きい方が削られ難くなる。したがって、電動圧縮機10の耐久性を向上させることができる。
【0076】
この場合、第1動圧スラスト軸受41、及び第2動圧スラスト軸受42のうち、回転体24が回転する際に受けるスラスト荷重が大きい方が、回転体24が回転する際に受けるスラスト荷重が小さい方よりも空気の流れ方向の上流側に配置されていてもよい。
【0077】
○ 実施形態において、コーティング層C1を構成する材料は、適宜変更してもよい。例えば、固体潤滑剤としては、二硫化タングステンを用いてもよい。要は、コーティング層C1の硬度を異ならせることにより、電動圧縮機10の耐久性が向上すればよい。
【0078】
○ 実施形態において、第1支持部24bは、回転軸24aに一体的に形成されていたが、これに限らない。例えば、第1支持部24bが、回転軸24aと別体であってもよい。
【0079】
○ 実施形態において、第3支持部24dは、回転軸24aと別体であったが、第3支持部24dは、回転軸24aに一体的に形成されていてもよい。
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、第1羽根車25及び第2羽根車26を備える構成であったが、第2羽根車26を備えていなくてもよい。
【0080】
○ 実施形態において、冷却流路50を流れる気体は空気に限らず、例えば、冷媒ガスを用いてもよい。
○ 実施形態において、冷却流路50には、燃料電池スタック100に向かって流れる空気の一部が、冷却流路50を流れる気体として流入されたが、これに限らず、燃料電池スタック100に向かって流れる空気とは別の空気であってもよい。
【0081】
○ 実施形態において、第1シール部材27及び第2シール部材28は、シールリングであったが、これに限らない。第1シール部材27及び第2シール部材28は、例えば、ラビリンスシールであってもよい。
【0082】
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、第1羽根車25によって圧縮された流体が、第2羽根車26によって再び圧縮されるような構成であってもよい。
○ 実施形態において、第1羽根車25及び第2羽根車26が圧縮する流体としては、空気に限らない。したがって、電動圧縮機10の適用対象及び圧縮対象の流体は任意である。例えば、電動圧縮機10は空調装置に用いられていてもよく、圧縮対象の流体は冷媒であってもよい。また、電動圧縮機10の搭載対象は、車両に限られず任意である。
【0083】
○ 実施形態において、回転体24の回転によって作動する作動体としてスクロール機構を備えたスクロール型圧縮機を流体機械として採用してもよい。また、作動体として2つのロータを備えたルーツポンプを流体機械として採用してもよい。
【符号の説明】
【0084】
10…流体機械としての電動圧縮機、11…ハウジング、18…電動モータ、21…第1動圧ラジアル軸受、21b…第1ラジアルコーティング層、23…第2動圧ラジアル軸受、23b…第2ラジアルコーティング層、24…回転体、24a…軸部としての回転軸、24d…拡径部としての第3支持部、25…作動体としての第1羽根車、26…作動体としての第2羽根車、40…動圧スラスト軸受、41…動圧滑り軸受としての第1動圧スラスト軸受、41b…第1スラストコーティング層、42…動圧滑り軸受としての第2動圧スラスト軸受、42b…第2スラストコーティング層、50…冷却流路、100…車載用燃料電池としての燃料電池スタック、B1…動圧滑り軸受、C1…コーティング層。