(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-29
(45)【発行日】2024-06-06
(54)【発明の名称】作業車用安全制御装置
(51)【国際特許分類】
A01B 33/08 20060101AFI20240530BHJP
B62D 51/06 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
A01B33/08 A
B62D51/06 111
(21)【出願番号】P 2021028461
(22)【出願日】2021-02-25
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】梅野 覚
(72)【発明者】
【氏名】冨田 宗樹
(72)【発明者】
【氏名】菊池 豊
(72)【発明者】
【氏名】田中 正浩
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-020207(JP,U)
【文献】特開2004-284413(JP,A)
【文献】特開2018-082683(JP,A)
【文献】特開2001-025304(JP,A)
【文献】特開2002-211450(JP,A)
【文献】米国特許第04249612(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 27/00-49/06
A01D 34/46
B62D 51/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の車輪と、前記車輪を駆動する駆動手段と、耕耘、培土、除草、整地、及び運搬などの作業に用いる作業手段と、作業者が歩きながら操舵するハンドルとを機体に備え、前記車輪よりも後方に前記ハンドルを配置した歩行用作業車に用いる作業車用安全制御装置であって、
前記機体の前方下部に取り付ける荷重検出手段と、
前記荷重検出手段からの信号を入力し、挟圧除去信号を出力する制御手段と
を有し、
前記制御手段が、
荷重閾値と時間閾値が予め記憶されている記憶部と、前記荷重検出手段で検出される検出荷重を前記記憶部から読み出された前記荷重閾値と比較する荷重比較部と、
前記荷重比較部によって前記検出荷重が前記荷重閾値以上であると判断すると、前記検出荷重が前記荷重閾値以上の継続時間を測定する検出時間測定部と、
前記検出時間測定部で測定される前記継続時間を前記記憶部から読み出された前記時間閾値と比較する時間比較部と、
前記時間比較部によって前記継続時間が前記時間閾値以上であると判断すると前記挟圧除去信号を出力する出力部と
を備え、
前記挟圧除去信号を出力することで、前記駆動手段による前記歩行用作業車の後進動作を停止する
ことを特徴とする作業車用安全制御装置。
【請求項2】
前記荷重検出手段を、前記車輪よりも前方で、前記ハンドルを上方に前記車輪の車軸に対して回動させることで接地面に当接する位置に配置した
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車用安全制御装置。
【請求項3】
前記荷重検出手段を複数備え、
前記制御手段では、
いずれかの前記荷重検出手段が前記荷重閾値以上の前記検出荷重を前記時間閾値以上の継続時間で検出すると前記出力部から前記挟圧除去信号を出力する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の作業車用安全制御装置。
【請求項4】
前記駆動手段による前記歩行用作業車の前記後進動作を検出する進行方向検出手段を有し、
前記制御手段では、
前記進行方向検出手段からの検出方向が前記後進動作であるときに前記出力部から前記挟圧除去信号を出力し、
前記進行方向検出手段からの前記検出方向が前記後進動作でないときには前記荷重閾値以上の前記検出荷重を前記時間閾値以上の継続時間で検出しても前記出力部から前記挟圧除去信号を出力しない
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の作業車用安全制御装置。
【請求項5】
前記挟圧除去信号を出力することで、前記歩行用作業車の前記後進動作を停止した後に前進動作に切り替える
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の作業車用安全制御装置。
【請求項6】
前記歩行用作業車が前記機体の前方にステーを設けており、
前記荷重検出手段を、前記ステーの下面に配置した
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の作業車用安全制御装置。
【請求項7】
前記歩行用作業車が前記機体の前方にパイプステーを設けており、
前記荷重検出手段を、前記パイプステーの下面に配置した
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の作業車用安全制御装置。
【請求項8】
前記歩行用作業車が前記機体の前方にフロントウェイトを設けており、
前記荷重検出手段を、前記フロントウェイトの下面に配置した
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の作業車用安全制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が歩きながら操舵するハンドルを備えた歩行用作業車に用いる作業車用安全制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行用作業車においては、後進時に作業者がハンドルと障害物との間に挟まれ、死亡に至る事故が年間約十数件発生している。また、挟まれ時機体の前部が接地して身体がハンドルと障害物との間で拘束された状態のまま、機体が後進することで身体が継続的に押圧され続ける。そこで、機体後進時に身体に継続的に作用する挟圧を除去することが求められている。
特許文献1は、機体の前部に設置された検出機構が地面に接触することにより作動する安全装置を提案し、特許文献2は、地面に接触し又は所定以上の機体傾斜角が検知されると作動する安全装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-133140号公報
【文献】特開2004-284413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1や特許文献2の安全装置は、機体の前部の地面への接触、又は所定以上の機体傾斜により作動するが、耕耘時や軽トラック等への積み下ろし時などの通常作業時では、機体の前部が短時間小さい力で接触する場合や機体が傾斜する場合があり、このような場合に誤作動が発生し、通常作業への支障が生じる可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、通常作業時における誤作動の発生が無く、作業者に継続的に加わる挟圧を除去することができる作業車用安全制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の作業車用安全制御装置は、一対の車輪1と、前記車輪1を駆動する駆動手段2と、耕耘、培土、除草、整地、及び運搬などの作業に用いる作業手段4と、作業者が歩きながら操舵するハンドル5とを機体6に備え、前記車輪1よりも後方に前記ハンドル5を配置した歩行用作業車に用いる作業車用安全制御装置であって、前記機体6の前方下部に取り付ける荷重検出手段10と、前記荷重検出手段10からの信号を入力し、挟圧除去信号を出力する制御手段20とを有し、前記制御手段20が、荷重閾値と時間閾値が予め記憶されている記憶部21と、前記荷重検出手段10で検出される検出荷重を前記記憶部21から読み出された前記荷重閾値と比較する荷重比較部22と、前記荷重比較部22によって前記検出荷重が前記荷重閾値以上であると判断すると、前記検出荷重が前記荷重閾値以上の継続時間を測定する検出時間測定部23と、前記検出時間測定部23で測定される前記継続時間を前記記憶部21から読み出された前記時間閾値と比較する時間比較部24と、前記時間比較部24によって前記継続時間が前記時間閾値以上であると判断すると前記挟圧除去信号を出力する出力部25とを備え、前記挟圧除去信号を出力することで、前記駆動手段2による前記歩行用作業車の後進動作を停止することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の作業車用安全制御装置において、前記荷重検出手段10を、前記車輪1よりも前方で、前記ハンドル5を上方に前記車輪1の車軸に対して回動させることで接地面Tに当接する位置に配置したことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の作業車用安全制御装置において、前記荷重検出手段10を複数備え、前記制御手段20では、いずれかの前記荷重検出手段10が前記荷重閾値以上の前記検出荷重を前記時間閾値以上の継続時間で検出すると前記出力部25から前記挟圧除去信号を出力することを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の作業車用安全制御装置において、前記駆動手段2による前記歩行用作業車の前記後進動作を検出する進行方向検出手段40を有し、前記制御手段20では、前記進行方向検出手段40からの検出方向が前記後進動作であるときに前記出力部25から前記挟圧除去信号を出力し、前記進行方向検出手段40からの前記検出方向が前記後進動作でないときには前記荷重閾値以上の前記検出荷重を前記時間閾値以上の継続時間で検出しても前記出力部25から前記挟圧除去信号を出力しないことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の作業車用安全制御装置において、前記挟圧除去信号を出力することで、前記歩行用作業車の前記後進動作を停止した後に前進動作に切り替えることを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の作業車用安全制御装置において、前記歩行用作業車が前記機体6の前方にステー50を設けており、前記荷重検出手段10を、前記ステー50の下面に配置したことを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の作業車用安全制御装置において、前記歩行用作業車が前記機体6の前方にパイプステー60を設けており、前記荷重検出手段10を、前記パイプステー60の下面に配置したことを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の作業車用安全制御装置において、前記歩行用作業車が前記機体6の前方にフロントウェイト70を設けており、前記荷重検出手段10を、前記フロントウェイト70の下面に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の作業車用安全制御装置によれば、所定時間継続して所定値以上の荷重が検出された場合には、作業者がハンドルと障害物との間に挟まれていると判断して、歩行用作業車の後進動作を停止することができるため、通常作業時での誤検出を防止するとともに挟まれ時に確実に作動して作業者の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施例による作業車用安全制御装置を示す図
【
図2】同作業車用安全制御装置の制御処理を示すフロー図
【
図3】同作業車用安全制御装置に用いる荷重検出手段の原理の説明図
【
図5】本発明の第2実施例による作業車用安全制御装置を示す図
【
図6】本発明の第3実施例による作業車用安全制御装置を示す図
【
図7】本発明の第4実施例による作業車用安全制御装置を示す図
【
図8】第1実施例から第4実施例に示す歩行用作業車と異なる歩行用作業車に適用された第1実施例による作業車用安全制御装置を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による作業車用安全制御装置は、機体の前方下部に取り付ける荷重検出手段と、荷重検出手段からの信号を入力し、挟圧除去信号を出力する制御手段とを有し、制御手段が、荷重閾値と時間閾値が予め記憶されている記憶部と、荷重検出手段で検出される検出荷重を記憶部から読み出された荷重閾値と比較する荷重比較部と、荷重比較部によって検出荷重が荷重閾値以上であると判断すると、検出荷重が荷重閾値以上の継続時間を測定する検出時間測定部と、検出時間測定部で測定される継続時間を記憶部から読み出された時間閾値と比較する時間比較部と、時間比較部によって継続時間が時間閾値以上であると判断すると挟圧除去信号を出力する出力部とを備え、挟圧除去信号を出力することで、駆動手段による歩行用作業車の後進動作を停止するものである。本実施の形態によれば、所定時間継続して所定値以上の荷重が検出された場合には、作業者がハンドルと障害物との間に挟まれていると判断して、歩行用作業車の後進動作を停止することができるため、通常作業時での誤検出を防止するとともに挟まれ時に確実に作動して作業者の安全性を高めることができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による作業車用安全制御装置において、荷重検出手段を、車輪よりも前方で、ハンドルを上方に車輪の車軸に対して回動させることで接地面に当接する位置に配置したものである。本実施の形態によれば、機体の前部が接地して機体が後進することで身体が継続的に押圧され続ける挟圧を正確に検出できる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態による作業車用安全制御装置において、荷重検出手段を複数備え、制御手段では、いずれかの荷重検出手段が荷重閾値以上の検出荷重を時間閾値以上の継続時間で検出すると出力部から挟圧除去信号を出力するものである。本実施の形態によれば、荷重の検出個所が増えるため、接地面に凹凸がある場合でも検出漏れを低減することができて、更に安全性を高めることができる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3のいずれかの実施の形態による作業車用安全制御装置において、駆動手段による歩行用作業車の後進動作を検出する進行方向検出手段を有し、制御手段では、進行方向検出手段からの検出方向が後進動作であるときに出力部から挟圧除去信号を出力し、進行方向検出手段からの検出方向が後進動作でないときには荷重閾値以上の検出荷重を時間閾値以上の継続時間で検出しても出力部から挟圧除去信号を出力しないものである。本実施の形態によれば、通常作業時での誤検出防止効果を更に高めることができる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4のいずれかの実施の形態による作業車用安全制御装置において、挟圧除去信号を出力することで、歩行用作業車の後進動作を停止した後に前進動作に切り替えるものである。本実施の形態によれば、前進動作に切り替えることで、挟まれている状態の作業者を解放することができる。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第1から第5のいずれかの実施の形態による作業車用安全制御装置において、歩行用作業車が機体の前方にステーを設けており、荷重検出手段を、ステーの下面に配置したものである。本実施の形態によれば、機体の前方に設けられたステーの下面に荷重検出手段を設けることで、前方に延長された位置で荷重を検出するため検出感度を上げることができて、作業者に対する挟圧をより正確に検出できる。
【0015】
本発明の第7の実施の形態は、第1から第5のいずれかの実施の形態による作業車用安全制御装置において、歩行用作業車が機体の前方にパイプステーを設けており、荷重検出手段を、パイプステーの下面に配置したものである。本実施の形態によれば、機体の前方に設けられたパイプステーの下面に荷重検出手段を設けることで、前方に延長された位置で荷重を検出するため検出感度を上げることができて、作業者に対する挟圧をより正確に検出できる。
【0016】
本発明の第8の実施の形態は、第1から第5のいずれかの実施の形態による作業車用安全制御装置において、歩行用作業車が前記機体の前方にフロントウェイトを設けており、前記荷重検出手段を、前記フロントウェイトの下面に配置したものである。本実施の形態によれば、機体の前方に設けられたフロントウェイトの下面に荷重検出手段を設けることで、前方に延長された位置で荷重を検出するため検出感度を上げることができて、作業者に対する挟圧をより正確に検出できる。
【実施例】
【0017】
以下本発明の実施例による作業車用安全制御装置について説明する。
図1は本発明の第1実施例による作業車用安全制御装置を示す図であり、
図1(a)は同作業車用安全制御装置及び同作業車用安全制御装置を用いる歩行用作業車の概略構成図、
図1(b)は同歩行用作業車の機体の前方を示す要部右側面図、
図1(c)は同歩行用作業車の機体の前方を示す要部底面図である。
本実施例による作業車用安全制御装置は、一対の車輪1と、車輪1を駆動する駆動手段2と、駆動手段2からの駆動力を車輪1に伝達し又は遮断する変速機構3と、耕耘、培土、除草、整地、及び運搬などの作業に用いる作業手段4と、作業者が歩きながら操舵するハンドル5とを機体6に備え、車輪1よりも後方にハンドル5を配置した歩行用作業車に用いる。本実施例では、駆動手段2はエンジンである。
変速機構3は、変速レバー3aによって前進、後進、速度の高低、ニュートラルの切替できるとともに、クラッチレバー5aによってクラッチの入/切ができる。クラッチレバー5aは、操作者が握る操作、すなわちハンドル5側に引き寄せる操作によってクラッチ入り状態となり、握る操作をしない場合にクラッチ切り状態となる。
【0018】
作業車用安全制御装置は、機体6の前方下部に取り付ける荷重検出手段10と、荷重検出手段10からの信号を入力し、挟圧除去信号を出力する制御手段20とを有している。
荷重検出手段10は、車輪1よりも前方で、ハンドル5を上方に車輪1の車軸に対して回動させることで接地面Tに当接する位置に配置する。ハンドル5を上方に車輪1の車軸に対して回動させることで接地面Tに当接する位置に荷重検出手段10を配置しているので、機体6の前部が接地して機体6が後進することで身体が継続的に押圧され続ける挟圧を正確に検出できる。
荷重検出手段10は、機体6の前後方向及び左右方向に複数備えていることが好ましい。
このように、荷重検出手段10を複数備えている場合には、制御手段20では、いずれかの荷重検出手段10が荷重閾値以上の検出荷重を時間閾値以上の継続時間で検出すると、出力部25から挟圧除去信号を出力する。更に、荷重検出手段10を複数備えている場合には、荷重の検出個所が増えるため、接地面Tに凹凸がある場合でも検出漏れを低減することができて、更に安全性を高めることができる。
【0019】
制御手段20は、荷重閾値及び時間閾値を記憶している記憶部21と、荷重検出手段10で検出される検出荷重を記憶部21から読み出された荷重閾値と比較する荷重比較部22と、荷重比較部22によって検出荷重が荷重閾値以上であると判断すると検出荷重が荷重閾値以上の継続時間を測定する検出時間測定部23と、検出時間測定部23で測定される継続時間を記憶部21から読み出された時間閾値と比較する時間比較部24と、時間比較部24によって継続時間が時間閾値以上であると判断すると挟圧除去信号を出力する出力部25とを備えている。
【0020】
切替手段30は、出力部25から出力される挟圧除去信号によって、駆動手段2を停止し、又はクラッチレバー5a及び変速機構3によって駆動手段2の伝達を遮断し、又は変速機構3によって車輪1を後進動作から前進動作に切り替える。
このように、出力部25から挟圧除去信号を出力することで、駆動手段2による歩行用作業車の後進動作を停止する。
従って、所定時間継続して所定値以上の荷重が検出された場合には、作業者がハンドル5と障害物との間に挟まれていると判断して、歩行用作業車の後進動作を停止することができるため、通常作業時での誤検出を防止するとともに挟まれ時に確実に作動して作業者の安全性を高めることができる。
特に、歩行用作業車の後進動作を停止した後に前進動作に切り替えることで、挟まれている状態の作業者を解放することができる。
歩行用作業車が備えている機構や制御装置を切替手段30として用いることができるが、切替手段30は、作業車用安全制御装置として備えてもよい。
【0021】
作業車用安全制御装置は、更に変速機構3による歩行用作業車の後進動作を検出する進行方向検出手段40を有している。
そして、制御手段20では、進行方向検出手段40からの検出方向が後進動作であるときに、出力部25から挟圧除去信号を出力し、進行方向検出手段40からの検出方向が後進動作でないときには、荷重閾値以上の検出荷重を時間閾値以上の継続時間で検出しても、出力部25から挟圧除去信号を出力しない。
このように、進行方向検出手段40によって後進動作であるときに、出力部25から挟圧除去信号を出力することで、通常作業時での誤検出防止効果を更に高めることができる。
【0022】
図2は本実施例による作業車用安全制御装置の制御処理を示すフロー図である。
安全制御処理の動作を開始すると、荷重検出手段10によって荷重が検出され(S1)、検出荷重は荷重比較部22において、記憶部21から読み出された荷重閾値と比較され(S2)、検出荷重が荷重閾値以上であれば(S2においてYes)、検出時間測定部23により検出荷重が荷重閾値を連続して超えている継続時間を測定する(S3)。
S3で測定される継続時間は時間比較部24において、記憶部21から読み出された時間閾値と比較され(S4)、継続時間が時間閾値以上であり(S4においてYes)、進行方向検出手段40において後進動作を検出していれば(S5においてYes)、出力部25から挟圧除去信号を出力する(S6)。
荷重比較部22において、検出荷重が荷重閾値未満と判定された場合には(S2においてNo)、出力部25から挟圧除去信号を出力することなく、荷重検出手段10による荷重検出を継続する(S1)。
また、時間比較部24において、継続時間が時間閾値未満と判定された場合には(S4においてNo)、出力部25から挟圧除去信号を出力することなく、荷重検出手段10による荷重検出を継続する(S1)。
また、進行方向検出手段40において後進動作を検出していなければ(S5においてNo)、出力部25から挟圧除去信号を出力することなく、荷重検出手段10による荷重検出を継続する(S1)。
【0023】
図3は本実施例による作業車用安全制御装置に用いる荷重検出手段10の原理の説明図であり、
図3(a)は同荷重検出手段10の概略斜視図、
図3(b)は同荷重検出手段10の概略正面図、
図3(c)は同荷重検出手段10の動作状態での概略正面図である。
荷重検出手段10は、荷重Pを受ける起歪体11と、起歪体11によって変形を生じる板材12と、板材12の変形を検出する歪ゲージ13とから構成される。
荷重Pが起歪体11に加わることで、起歪体11が一方向Wに移動し、起歪体11の変位によって板材12が変形し、板材12の変形を歪ゲージ13で検出する。
このように、起歪体11は一方向Wにだけ変位するため、一方向Wに加わる荷重Pだけを検出することができる。
なお、実用的な荷重検出手段10は、起歪体11の直径が5mm程度、板材12の長さ又は直径が10mm~16mm程度の小型センサである。
【0024】
図4は挟まれ試験結果を示す図であり、
図4(a)は挟まれ時のハンドル5に加わる荷重を示すグラフ、
図4(b)は
図4(a)の測定における状態説明図である。
図4(b)に示すように、歩行用作業車には、車体重量Mgと、接地部荷重Fとが作用する。挟まれ時は、車輪1は空転状態となる。
図4(b)において、F
hanはハンドル5に加わる荷重、X方向の荷重としてF
xhan、Z方向の荷重としてF
zhanを示している。
車輪1が空転していることから、機体6に加わる荷重は接地部荷重F、ハンドル5に加わる荷重F
han、車体重量Mgのみであること、接地部荷重Fとハンドル5に加わる荷重F
han及び車体重量Mgが釣り合うこと、機体6の質量が約50kg~100kgであること、
図4(a)より挟まれ時にはハンドル5に継続して荷重F
hanが作用していることから、挟まれ時には接地部に過大な接地部荷重Fが発生している。
が作用している。
【0025】
図5は本発明の第2実施例による作業車用安全制御装置を示す図であり、
図5(a)は同作業車用安全制御装置及び同作業車用安全制御装置を用いる歩行用作業車の概略構成図、
図5(b)は同歩行用作業車の機体の前方を示す要部右側面図、
図5(c)は同歩行用作業車の機体の前方に設けるステーの斜視図、
図5(d)は同ステーの底面図である。
図5に示す歩行用作業車は、
図5(a)及び
図5(b)に示すように機体6の前方にステー50を設けている。なお、第1実施例と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
図5(c)に示すように、ステー50は、機体取付部51と、延長部52と、先端取付部53とより構成されている。機体取付部51は延長部52の一端に配置され、先端取付部53は延長部52の他端に配置されている。延長部52は機体取付部51に対して所定角度上向きに配置され、先端取付部53は延長部52に対して所定角度上向きに配置されている。
延長部52は、延長部上面板52uと一対の延長部側面板52sとで、断面がコの字状に構成されている。先端取付部53は、延長部上面板52uから更に先方に突出させた先端取付部上面板53uと、先端取付部上面板53uと平行に配置された先端取付部下面板53dとで構成されている。機体取付部51には、機体取付用ボルト孔51aが形成され、先端取付部上面板53uには接続用ボルト孔53aが形成されている。
図5(d)に示すように、荷重検出手段10は、ステー50の下面に配置している。
荷重検出手段10は、先端取付部下面板53dの下面の前後方向及び左右方向に複数備えていることが好ましく、更には一対の延長部側面板52sの下面にも備えていることが好ましい。
このように、延長部側面板52sに荷重検出手段10を設けたことで、接地面Tに大きな凹凸があり延長部側面板52sが最初に接地する場合でも検出でき、更に機体6の前方に設けられたステー50の下面に荷重検出手段10を設けることで、前方に延長された位置で荷重を検出するため検出感度を上げることができて、作業者に対する挟圧をより正確に検出できる。
また、荷重検出手段10を複数備えている場合には、制御手段20では、いずれかの荷重検出手段10が荷重閾値以上の検出荷重を時間閾値以上の継続時間で検出すると出力部25から挟圧除去信号を出力する。
【0026】
図6は本発明の第3実施例による作業車用安全制御装置を示す図であり、
図6(a)は同作業車用安全制御装置及び同作業車用安全制御装置を用いる歩行用作業車の概略構成図、
図6(b)は同歩行用作業車の機体の前方を示す要部右側面図、
図6(c)は同歩行用作業車の機体の前方に設けるパイプステーの斜視図、
図6(d)は同パイプステーの要部底面図である。
図6に示す歩行用作業車は、
図6(a)及び
図6(b)に示すように機体6の前方にパイプステー60を設けている。なお、第1実施例と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
図6(c)に示すように、パイプステー60は、機体6に一端を取り付ける延長部62と、先端部63とで構成されている。先端部63は延長部62の他端に配置されている。先端部63は延長部62に対して所定角度上向きに配置されている。
延長部62は、平行に配置した一対のパイプで構成されている。先端部63は、延長部62のパイプを更に延長させた第1先端部63aと、第1先端部63aの更に先端に接続するC字状のパイプからなる第2先端部63bとで構成されている。
図6(d)に示すように、荷重検出手段10は、パイプステー60の下面に配置している。
荷重検出手段10は、第2先端部63bの下面の左右方向に複数備えていることが好ましく、更に第1先端部63aの下面の前後方向に複数備えていることが好ましく、一対の延長部62の下面にも備えていることが好ましい。
このように、一対の延長部62の下面に荷重検出手段10を設けたことで、接地面Tに大きな凹凸があり延長部62の下面が最初に接地する場合でも検出でき、更に機体6の前方に設けられたパイプステー60の下面に荷重検出手段10を設けることで、前方に延長された位置で荷重を検出するため検出感度を上げることができて、作業者に対する挟圧をより正確に検出できる。
また、荷重検出手段10を複数備えている場合には、制御手段20では、いずれかの荷重検出手段10が荷重閾値以上の検出荷重を時間閾値以上の継続時間で検出すると、出力部25から挟圧除去信号を出力する。
【0027】
図7は本発明の第4実施例による作業車用安全制御装置を示す図であり、
図7(a)は同作業車用安全制御装置及び同作業車用安全制御装置を用いる歩行用作業車の概略構成図、
図7(b)は同歩行用作業車の機体の前方を示す要部右側面図、
図7(c)は同歩行用作業車の機体の前方に設けるフロントウェイトの斜視図、
図7(d)は同フロントウェイトの底面図である。
図7に示す歩行用作業車は、
図7(a)及び
図7(b)に示すように機体6の前方にフロントウェイト70を設けている。なお、第1実施例と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
図7(c)に示すように、フロントウェイト70は、機体6に取り付ける取付部71と、ウェイト部73とより構成されている。ウェイト部73は取付部71の前方に配置されている。ウェイト部73のウェイト下面73dは取付部71の取付部下面71dに対して所定角度上向きに配置されている。
図7(d)に示すように、荷重検出手段10は、フロントウェイト70の下面に配置している。
荷重検出手段10は、ウェイト下面73dの左右方向及び前後方向に複数備えていることが好ましく、更に取付部下面71dの左右方向に複数備えていることが好ましい。
このように、取付部下面71dの左右方向に荷重検出部10を複数備えることで、接地面Tに大きな凹凸があり取付部下面71dが最初に接地する場合でも検出でき、更に機体6の前方に設けられたフロントウェイト70のウェイト下面73dに荷重検出手段10を設けることで、前方に延長された位置で荷重を検出するため検出感度を上げることができて、作業者に対する挟圧をより正確に検出できる。
また、荷重検出手段10を複数備えている場合には、制御手段20では、いずれかの荷重検出手段10が荷重閾値以上の検出荷重を時間閾値以上の継続時間で検出すると出力部25から挟圧除去信号を出力する。
【0028】
図8は第1実施例から第4実施例に示す歩行用作業車と異なる歩行用作業車に適用された第1実施例による作業車用安全制御装置を示す概略構成図である。
図8に示す歩行用作業車は、ハンドル5が2ハンドルである場合を示している。なお、第1実施例と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
本発明の第1実施例から第4実施例による作業車用安全制御装置は、このような2ハンドルである歩行用作業車にも同様に適用できる。
【0029】
なお、本実施例で説明に用いた歩行用作業車は、エンジンを駆動手段2としているが、電動モータを駆動手段2とした歩行用作業車にも適用でき、出力部25からの挟圧除去信号によって電動モータの回転方向を切り替え、歩行用作業車を、後進動作から前進動作とすることができる。
この場合は、進行方向検出手段40は駆動手段2から歩行用作業車の後進動作を検出する。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明による作業車用安全制御装置は、農業作業、土木作業、及び除雪作業に用いられる歩行用作業車に利用でき、特に一対の車輪だけを備えた歩行用作業車に適しているが、4輪車両の歩行用作業車にも適用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 車輪
2 駆動手段
3 変速機構
3a 変速レバー
4 作業手段
5 ハンドル
5a クラッチレバー
6 機体
10 荷重検出手段
11 起歪体
12 板材
13 歪ゲージ
20 制御手段
21 記憶部
22 荷重比較部
23 検出時間測定部
24 時間比較部
25 出力部
30 切替手段
40 進行方向検出手段
50 ステー
51 機体取付部
51a 機体取付用ボルト孔
52 延長部
52s 延長部側面板
52u 延長部上面板
53a 接続用ボルト孔
53d 先端取付部下面板
53u 先端取付部上面板
60 パイプステー
62 延長部
63 先端部
63a 第1先端部
63b 第2先端部
70 フロントウェイト
71 取付部
71d 取付部下面
73 ウェイト部
73d ウェイト下面
F 接地部荷重
Fhan ハンドル5に加わる荷重
Fxhan ハンドル5に加わるX方向の荷重
Fzhan ハンドル5に加わるZ方向の荷重
g 重力加速度
M 車体質量
Mg 車体重量
P 荷重
T 接地面
W 一方向
X 歩行用作業車前進方向
Z X方向に対して鉛直上方向