(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】気泡発生装置及びこれを備えた洗浄システム
(51)【国際特許分類】
B01F 23/20 20220101AFI20240531BHJP
E03D 5/00 20060101ALI20240531BHJP
B01F 21/00 20220101ALI20240531BHJP
B01F 25/312 20220101ALI20240531BHJP
B01F 25/25 20220101ALI20240531BHJP
B01F 25/42 20220101ALI20240531BHJP
【FI】
B01F23/20
E03D5/00
B01F21/00
B01F25/312
B01F25/25
B01F25/42
(21)【出願番号】P 2020105038
(22)【出願日】2020-06-18
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 真衣
(72)【発明者】
【氏名】前田 康成
(72)【発明者】
【氏名】柴田 尚紀
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-149052(JP,A)
【文献】特開2008-290051(JP,A)
【文献】特開2007-216149(JP,A)
【文献】国際公開第2005/115596(WO,A1)
【文献】特開2018-069213(JP,A)
【文献】中国実用新案第202015603(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00-25/90
E03D 1/00- 7/00
11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が溶解された気体溶解水を通過させて気泡を含む気泡含有水を生成する気泡発生装置であって、
ベンチュリ状流路が設けられた気泡発生部と、前記ベンチュリ状流路の軸心の下流側に少なくとも位置し該ベンチュリ状流路を通過した気泡含有水が衝突する壁部が流路内に設けられた気泡細分化部と、を備え
、前記ベンチュリ状流路と前記壁部との間には、前記ベンチュリ状流路の下流端の内径よりも大径状とされた大径部が設けられており、
前記壁部は、当該気泡細分化部の軸心を円心とする略円板状とされ、かつ軸方向に見て前記ベンチュリ状流路の軸心に重なり合う位置に設けられた中央側壁部と、前記大径部の内周面よりも軸心側に突出するように、かつ周方向に沿って設けられた環状壁部と、該環状壁部と前記中央側壁部とを接続し、かつ前記中央側壁部の外周側に複数の外周側流路が区画形成されるように周方向に間隔を空けて当該気泡細分化部の軸心側から放射状に設けられた複数の接続壁部と、を備えていることを特徴とする気泡発生装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記壁部における前記ベンチュリ状流路側に向く衝突面と該壁部における軸方向に沿う側面とのなす角度が90度以下であることを特徴とする気泡発生装置。
【請求項3】
請求項1
または2において、
前記ベンチュリ状流路の下流端から前記壁部までの前記大径部の軸方向に沿う寸法は、該大径部の内径の10倍以下であることを特徴とする気泡発生装置。
【請求項4】
請求項
1乃至3のいずれか1項において、
前記気泡発生部には、複数のベンチュリ状流路が設けられていることを特徴とする気泡発生装置。
【請求項5】
請求項
4において、
前記複数のベンチュリ状流路は、軸方向に見て、これらの上流側の流路の軸心を円心とする同一円周上に位置するように等間隔を空けて設けられていることを特徴とする気泡発生装置。
【請求項6】
請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の気泡発生装置と、この気泡発生装置の上流側において洗浄水に気体を溶解させる気体溶解部と、を備えていることを特徴とする洗浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡発生装置及びこれを備えた洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、気泡を含む気泡含有水を生成する気泡発生装置が知られている。
例えば、下記特許文献1には、便器の排水部に接続された排水路に、気泡を混入させた泡洗浄水を供給する気泡混入部を有した便器洗浄システムが開示されている。この便器洗浄システムの気泡混入部は、空気を洗浄水に溶解させる溶解タンクの下流側において圧力を開放させるベンチュリー管状の圧力開放部を設けた構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された気泡混入部においては、空気が溶解した洗浄水が圧力開放部を通過する際に気泡が生成されるが、更に微細で多数の気泡を発生させることが望まれる場合があった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、気泡含有水に含まれる気泡の微細化を図り、気泡数を増加させ得る気泡発生装置及びこれを備えた洗浄システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る気泡発生装置は、気体が溶解された気体溶解水を通過させて気泡を含む気泡含有水を生成する気泡発生装置であって、ベンチュリ状流路が設けられた気泡発生部と、前記ベンチュリ状流路の軸心の下流側に少なくとも位置し該ベンチュリ状流路を通過した気泡含有水が衝突する壁部が流路内に設けられた気泡細分化部と、を備え、前記ベンチュリ状流路と前記壁部との間には、前記ベンチュリ状流路の下流端の内径よりも大径状とされた大径部が設けられており、前記壁部は、当該気泡細分化部の軸心を円心とする略円板状とされ、かつ軸方向に見て前記ベンチュリ状流路の軸心に重なり合う位置に設けられた中央側壁部と、前記大径部の内周面よりも軸心側に突出するように、かつ周方向に沿って設けられた環状壁部と、該環状壁部と前記中央側壁部とを接続し、かつ前記中央側壁部の外周側に複数の外周側流路が区画形成されるように周方向に間隔を空けて当該気泡細分化部の軸心側から放射状に設けられた複数の接続壁部と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る洗浄システムは、本発明に係る気泡発生装置と、この気泡発生装置の上流側において洗浄水に気体を溶解させる気体溶解部と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る気泡発生装置及びこれを備えた洗浄システムは、上述のような構成としたことで、気泡含有水に含まれる気泡の微細化を図り、気泡数を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る気泡発生装置の一例を備えた本発明の一実施形態に係る洗浄システムの一例を模式的に示す概略システム構成図である。
【
図2】(a)は、同気泡発生装置の概略側面図、(b)は、(a)におけるX-X線矢視に対応させた概略縦断面図である。
【
図3】(a)は、
図2(b)におけるY1-Y1線矢視に対応させた概略横断面図、(b)は、
図2(b)におけるY2-Y2線矢視に対応させた概略横断面図、(c)は、
図2(b)におけるY3-Y3線矢視に対応させた概略横断面図である。
【
図4】(a)は、一実施例に係る気泡発生装置と比較例に係る気泡発生装置との比較試験データを模式的に示すグラフ、(b)、(c)は、一実施形態に係る気泡発生装置の変形例をそれぞれ模式的に示す
図3(c)に対応させた概略横断面図である。
【
図5】一実施形態に係る気泡発生装置の一例を備えた本発明の他の実施形態に係る洗浄システムの一例を模式的に示す概略システム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
また、以下の各実施形態では、各例に係る気泡発生装置を備えた各実施形態に係る洗浄システムを設置した状態を基準として上下方向等の方向を説明する。
図1~
図3は、第1実施形態に係る気泡発生装置の一例及びこれを備えた第1実施形態に係る洗浄システムの一例を模式的に示す図である。
【0011】
本実施形態に係る気泡発生装置20は、気体が溶解された気体溶解水を通過させて気泡を含む気泡含有水を生成する構成とされている。本実施形態では、この気泡発生装置20は、
図1に示すように、洗浄システム1に組み込まれている。本実施形態に係る洗浄システム1は、この気泡発生装置20の上流側において洗浄水に気体を溶解させる気体溶解部14を備えている。このような構成とすれば、詳細については後述するが、気泡発生装置20において生成された微細かつ多量の気泡を含んだ気泡含有水を、当該洗浄システム1の洗浄対象3に向けて供給することができ、洗浄対象3を効果的に洗浄することができる。なお、気泡発生装置20の具体的構成については後述する。
【0012】
洗浄対象3としては、後記する第2実施形態のような便器5やこの便器5の排水路9(
図5参照)に限られず、厨房装置や洗面台装置、浴室、洗濯機、食洗機等の給水対象及び排水路のうちの少なくとも一方であってもよい。また、当該洗浄システム1は、このように種々の水回りシステムや機器に組み込まれて用いられる態様に限られず、洗浄システム1単体で用いられるものでもよく、また、例えば、生鮮食品を洗浄対象3としてもよい。
また、気泡発生装置20の下流側に、生成された洗浄水を一時的に貯留する貯水部を設け、この貯水部から洗浄対象3に向けて適宜の弁を開放させて洗浄水を供給する態様としてもよい。
【0013】
洗浄システム1は、本実施形態では、気体溶解部14と気泡発生装置20との間に、除菌成分が溶解された洗浄水を供給する除菌水供給部17を設けた構成とされている。また、洗浄システム1は、気体溶解部14の上流側に、洗浄水を一時的に貯留する貯水部12と、この貯水部12に貯水された洗浄水を下流側に向けて送水するポンプ13と、を設けた構成とされている。
貯水部12は、給水元2に接続された給水路11を経て供給される洗浄水を貯留するタンク状とされている。図例では、この貯水部12に、給水路11の吐水口と水面(越流面)との間に吐水口空間が形成されるように越流路12aを設けた構成としている。この越流路12aとしては、図例のような貯水部12の側壁部に接続されたものに限られず、貯水部12の底側から貯水部12内において垂直状に立ち上がるように設けられたものであってもよい。なお、給水元2側と貯水部12とを縁切りする吐水口空間を設けた態様に代えて、適宜、バキュームブレーカーを設けた構成等としてもよい。
【0014】
この貯水部12に洗浄水を供給する給水路11には、給水路11を開閉し、洗浄水を供給及び遮断する給水弁10が設けられている。この給水弁10は、電磁弁であってもよく、定水位弁(いわゆるボールタップ)であってもよい。また、給水元2としては、水道や他の貯水タンクであってもよい。なお、図例では、給水路11を、貯水部12の上方側を区画する天壁部に接続した例を示しているが、貯水部12の上端部の側壁部に接続した構成等としてもよい。また、貯水部12の貯水レベルが所定の下限レベルとなれば、給水弁10が開放されるものでもよい。この場合は、適宜のレベル計や給水弁10を開閉させるフロート(浮き玉)等を貯水部12に設けた構成としてもよい。または、当該洗浄システム1の稼働中は、常時、給水弁10が開とされるものでもよい。
ポンプ13は、貯水部12と気体溶解部14との間に配されている。このポンプ13の吸込口が貯水部12の排水側に管路を介して接続され、ポンプ13の吐出口が気体溶解部14の流入口に管路を介して接続されている。
【0015】
気体溶解部14は、タンク状とされ、下端部(図例では、底壁部)にポンプ13に接続される流入口を設けた構成とされている。この気体溶解部14内には、公知であるため図示を省略しているが、流入口から流入した洗浄水と気体とを混合する気液混合室、中間室及び気液分離室が設けられている。気液混合室と中間室とは、これらを仕切る仕切壁に設けられた連通口を介して接続され、中間室と気液分離室とは、これらを仕切る仕切壁に設けられた連通口を介して接続されている。また、図例では、気液分離室の下流側となる気体溶解部14の側壁部の下端部に流出口を設けた例を示している。
また、気体溶解部14には、気液混合室内に気体を取り込む気体取込部14aが設けられている。この気体取込部14aからの気体の取込態様としては、ポンプ13の作動によって生じる負圧作用によって気液混合室に取り込む態様でもよい。またはポンプ13を作動中は気体を取込不能とされ、ポンプ13が停止された際に次回作動時に溶解される気体を取り込む構成とされたものでもよい。
【0016】
この気体溶解部14においては、詳細な説明は省略するが、ポンプ13を作動させれば、加圧された洗浄水が気液混合室に導入される。この気液混合室において内壁に衝突しながら洗浄水と気体とが混合・撹拌され、加圧下で気体が洗浄水に溶解され、中間室を経て気液分離室に至る。この気液分離室において溶解されていない気体が分離され、気体が溶解された気体溶解水が気体溶解部14の流出口から下流側に向けて供給される。なお、気体溶解部14としては、上記のような構成とされたものに限られない。例えば、気液分離室において分離された気体を排出する排出口を設けた態様等としてもよく、その他、種々の構成とされたものの採用が可能である。また、気体溶解部14において溶解される気体としては、外気(大気)に限られず、オゾンガスや、酸素富化ガス等の機能ガスであってもよい。
【0017】
除菌水供給部17は、気体溶解部14から供給される気体溶解水に除菌成分を含ませて下流側に供給する。本実施形態では、除菌水供給部17は、給水元2側からの洗浄水を電気分解して除菌成分を含む洗浄水を生成する電解槽17aを備えている。つまり、除菌水供給部17は、電解式とされている。また、この電解槽17aから下流側に向けて洗浄水を流出させる流出口17cを、電解槽17aに洗浄水を流入させる流入口17bよりも上方側に位置するように設けた構成としている。
この除菌水供給部17は、洗浄水を電気分解してオゾン水を生成する構成とされている。
この除菌水供給部17の電解槽17aは、上下方向に長尺状とされている。図例では、電解槽17aの下端部に流入口17bを設け、上端部に流出口17cを設けた例を示している。この電解槽17a内には、公知であるため図示を省略しているが、電源に接続され、陽極及び陰極を構成する一対の電極や、これら一対の電極間に配されたダイヤモンド電極やイオン交換膜等が設けられている。この除菌水供給部17が起動されて電極に通電されれば、電解槽17a内に導入された洗浄水が電気分解されてオゾンガスが生成され、このオゾンガスが溶解部において水に溶解されてオゾン水が生成される。
【0018】
なお、除菌水供給部17としては、給水元2側からの洗浄水を電気分解して除菌成分を含む洗浄水を生成するものに限られず、除菌成分を構成する薬剤を溶解させた洗浄水を生成または貯留するタンクであってもよい。また、除菌成分を含む洗浄水としては、オゾン水に限られず、次亜塩素酸水や強酸性水、次亜塩素酸ナトリウム溶液、過酸化水素水等でもよい。また、除菌成分を含む洗浄水としては、水道水よりも除菌性が高いものであればよく、上記のような電解水や残留性の低い洗浄水に限られず、エタノール等のアルコール系の洗浄水等、その他、種々の洗浄水であってもよい。
【0019】
また、本実施形態では、後記する気泡発生装置20の上流側に、気体を排出させる気体排出部18を設けた構成としている。この気体排出部18は、除菌水供給部17の下流側に設けられている。図例では、除菌水供給部17の電解槽17aの上方側に位置するように気体排出部18を設けた例を示している。この気体排出部18としては、フロート室内において上下動されるフロートやこのフロートに連結された弁体によって開閉される排出口を設けた構成とされたものでもよい。また、この気体排出部18は、排出側へのみ気体の通過を許容する構成とされたものでもよい。
【0020】
また、本実施形態では、洗浄システム1に、除菌水供給部17の上流側と除菌水供給部17の下流側であって気泡発生装置20の上流側とを接続するバイパス路15bを設けた構成としている。また、洗浄システム1に、給水元2側を除菌水供給部17側またはバイパス路15b側に選択的に連通させる切替弁16を設けた構成としている。図例では、気体溶解部14の下流側管路15を、除菌側給水路15aとバイパス路15bとに分岐させ、これらの分岐部に三方切替弁を切替弁16として設けた構成としている。なお、このような構成に代えて、除菌側給水路15a及びバイパス路15bのそれぞれに開閉弁を設けた構成等としてもよい。また、洗浄システム1に、このような切替弁16やバイパス路15bを設けていない構成としてもよく、また、除菌水供給部17や気体排出部18を設けていない構成としてもよい。
【0021】
また、洗浄システム1は、CPU(Central Processing Unit)等の制御回路や、種々のメモリー等から構成された記憶部、電源部等を有した制御部19を備えている。この制御部19には、上記した給水弁10やポンプ13、切替弁16、除菌水供給部17等が信号線等を介してそれぞれ接続されている。この制御部19によって当該洗浄システム1の各部が制御され、例えば、予め設定された所定時間を経過する毎に洗浄対象3に向けて洗浄水を供給する洗浄方法(洗浄モード)等が実行される。また、例えば、給水元2側をバイパス路15b側に連通させて除菌水供給部17を通過させることなく洗浄水を供給した後に、給水元2側を除菌水供給部17側に連通させて除菌水供給部17及び気泡発生装置20を通過させて洗浄水を供給する構成等としてもよい。
【0022】
気泡発生装置20は、その上流側の流入口が気体溶解部14の下流側の下流側管路15に接続され、下流側の流出口が洗浄対象3側に接続または開口される。
この気泡発生装置20は、
図2(b)に示すように、ベンチュリ状流路25が設けられた気泡発生部21を備えている。このような構成とすれば、ベンチュリ状流路25を気体溶解水が通過する際における急激な圧力低下によって気体溶解水に含まれる気体が気泡化(発泡)する。つまり、本実施形態では、気体溶解部14において洗浄水に気体が溶解された気体溶解水が気泡発生部21に供給され、気泡発生部21において気泡含有水が生成される。また、気泡発生装置20は、ベンチュリ状流路25の軸心(ベンチュリ軸心)A1の下流側に少なくとも位置しベンチュリ状流路25を通過した気泡含有水が衝突する壁部31が流路内に設けられた気泡細分化部30を備えている。このような構成とすれば、気泡発生部21を経て気泡が含まれた気泡含有水が壁部31に衝突することで、気泡がせん断されるようにして細分化される。これにより、気泡含有水に微細で多量の気泡を効果的に含ませることができる。
【0023】
また、本実施形態では、気泡発生装置20は、ベンチュリ状流路25と壁部31との間に、ベンチュリ状流路25の下流端の内径D1よりも大径状とされた大径部26を設けた構成としている。このような構成とすれば、ベンチュリ状流路25の下流端に位置するように壁部31を設けたものやベンチュリ状流路25の下流端の内径D1を気泡細分化部30の内径と同径としたようなものと比べて、より効果的に気泡を細分化することができる。つまり、ベンチュリ状流路25の流路径の小径化を図りつつもベンチュリ状流路25を経た気泡含有水を大径部26に満たしてその下流側の壁部31に比較的に安定的に衝突させることができる。ベンチュリ状流路25の下流端から壁部31までの大径部26の軸方向に沿う寸法Lは、大径部26の内径D2の20倍以下程度であってもよく、10倍以下であることが好ましい。このような構成とすれば、大径部26の軸方向に沿う寸法Lを大きくし過ぎたものと比べて、ベンチュリ状流路25を経た気泡含有水を概ね均等な流速で壁部31に衝突させることができ、より効果的に気泡を細分化することができる。この大径部26の軸方向に沿う寸法Lは、ベンチュリ状流路25や壁部31の構成にもよるが、大径部26の内径D2の1/20~5倍程度としてもよく、図例では、2/5程度とした例を示している。
【0024】
また、本実施形態では、気泡発生部21に、複数のベンチュリ状流路25を設けた構成としている。このような構成とすれば、一つのベンチュリ状流路25を設けたものと比べて、気泡発生部21においてより効果的に微細かつ多量の気泡を含ませることができる。
また、本実施形態では、
図3(a)、(b)に示すように、複数のベンチュリ状流路25を、軸方向に見て、これらの上流側の流路の軸心(上流側流路軸心)A2(
図2(b)参照)を円心とする同一円周上に位置するように等間隔を空けて設けた構成としている。このような構成とすれば、複数のベンチュリ状流路25のそれぞれに概ね均等に上流側の流路からの気体溶解水を通過させることができ、気泡発生部21においてより効果的に微細かつ多量の気泡を含ませることができる。
【0025】
具体的には、気泡発生装置20は、流路を構成する筒状部材27,29内に気泡発生部21及び気泡細分化部30を設けた構成とされている。本実施形態では、気泡発生装置20に、気泡発生部21を有した上流側筒状部材27と、この上流側筒状部27の下流側端部に接続され、気泡細分化部30を有した下流側筒状部材29と、を設けた構成としている。また、上流側筒状部材27に、別体とされた気泡発生部21を設け、下流側筒状部材29に、別体とされた気泡細分化部30を設けた構成としている。このような構成とすれば、比較的に複雑な構造となる気泡発生部21及び気泡細分化部30の成形性を向上させることができ、また、これらのメンテナンスや交換等を要する場合にも容易に行うことができる。
【0026】
上流側筒状部材27は、下流側管路15に接続される流入口が設けられ、上流側の流路を構成する上流側部位27aと、この上流側部位27aの下流側に設けられ、気泡発生部21を内嵌状に設けた下流側部位27bと、を備えている。上流側部位27aと下流側部位27bとは同軸状に設けられている。図例では、下流側部位27bの内径を、上流側部位27aの内径よりも大とした例を示している。なお、上流側部位27aの外周等に、下流側管路15や適宜の継手に接続するための接続部を設けた構成としてもよい。
気泡発生部21は、上流側筒状部材27と同軸状とされた円柱状(円筒状)とされている。本実施形態では、気泡発生部21は、下流側部位27bの内径側に嵌合される円筒状部22と、この円筒状部22の軸方向途中部位から内径側に延びるように一連状に設けられ、ベンチュリ状流路25が形成された円板状部23と、を備えている。
【0027】
円筒状部22は、上流側端部が上流側部位27aと下流側部位27bとの径差によって形成される下流側に向く段壁面に当接され、下流側端部が下流側部位27bの下流側端部と軸方向で略一致した位置となるように設けられている。また、図例では、この円筒状部22の円板状部23よりも上流側となる上流側部位22aの内径を、上流側筒状部材27の上流側部位27aの内径よりも大とした例を示しているが、これらを略同径状としてもよい。また、図例では、この円筒状部22の上流側部位22aの外周面に、上流側筒状部材27の下流側部位27bの内周面に弾性的に接触されるOリング等のシール部材を受け入れるシール溝を設けた例を示している。
また、図例では、この円筒状部22の円板状部23よりも下流側となる下流側部位22bが大径部26の一部を構成している。また、図例では、この円筒状部22の下流側部位22bの内径D2を、上流側部位22aの内径と略同径状とした例を示しているが、このような態様に限られない。
【0028】
ベンチュリ状流路25は、
図2(b)及び
図3(a)、(b)に示すように、円板状部23の中央側部位24を貫通するように設けられている。本実施形態では、複数のベンチュリ状流路25として3つ以上のベンチュリ状流路25を、軸方向に見て、上流側流路軸心A2を円心とする円に内接する正多角形の頂点にそれぞれのベンチュリ軸心A1が位置するように設けた構成としている。図例では、6つのベンチュリ状流路25を設けた例を示している。これらベンチュリ状流路25は、上流側の流路を構成する上流側筒状部材27の上流側部位27aからの気体溶解水がそれぞれ概ね均等に通過するように設けられていてもよい。図例では、これらベンチュリ状流路25は、上流側部位27aの内周面から各ベンチュリ軸心A1までの当該気泡発生装置20の径方向に沿う寸法と、各ベンチュリ軸心A1から上流側流路軸心A2までの同方向に沿う寸法と、が略同寸法となるように設けられている。また、これらベンチュリ状流路25は、周方向に隣り合うベンチュリ状流路25同士のベンチュリ軸心A1間の寸法が各ベンチュリ軸心A1から上流側流路軸心A2までの当該気泡発生装置20の径方向に沿う寸法と略同寸法となるように設けられている。
【0029】
また、これらベンチュリ状流路25は、互いに同様の構成とされている。これらベンチュリ状流路25には、下流側に向かうに従い縮径状に形成され、ベンチュリ状流路25を通過する洗浄水を減圧(圧力開放)する縮径部が設けられている。図例では、ベンチュリ状流路25の縮径部を、ベンチュリ状流路25の上流側端部に設け、縮径部の最小径部(絞り部)の下流側に、下流側に向かうに従い徐々に拡径状に形成された拡径部を設けた例を示している。ベンチュリ状流路25の縮径部や拡径部の傾斜角は、気泡発生部21を経た洗浄水に含まれる気泡の気泡径が所望する程度の径となるように、また、下流側の圧力損失を軽減する観点等から適宜の角度としてもよい。例えば、縮径部の傾斜角(断面視した状態における内壁同士のなす角)は、20度~120度程度としてもよく、拡径部の傾斜角(断面視した状態における内壁同士のなす角)は、2度~20度程度としてもよい。
【0030】
これらベンチュリ状流路25は、これらを通過した洗浄水に、例えば、ミリメートルオーダー、マイクロメートルオーダー及びナノメートルオーダーの気泡やこれらが混在した気泡が含まれるように構成されていてもよい。また、これらベンチュリ状流路25を通過した洗浄水に含まれる気泡としては、気泡径が1mm以下の微細気泡であってもよく、好ましくは、気泡径が500μm以下のものでもよく、より好ましくは、気泡径が100μm以下のものでもよい。
また、図例では、円板状部23の中央側部位24に、外径側部位よりも軸方向に沿う寸法を大きくするように上流側に向けて突出する突出部を設け、この突出部を貫通するようにベンチュリ状流路25を設けた例を示している。つまり、図例では、円筒状部22の上流側部位22aの内径側に、中央側部位24の突出部を囲むように上流側に向けて開口するリング状の溝部が設けられた例を示しているが、このような態様に限られない。
【0031】
また、図例では、ベンチュリ状流路25の上流端を円筒状部22の上流側部位22aの上流端よりも下流側に位置させた例を示しているが、このような態様に限られない。また、図例では、中央側部位24の突出部の中央部に、上流側に向けて開口する凹部を設けた例を示しているが、このような態様に限られない。また、気泡発生部21に設けられるベンチュリ状流路25の個数は、6つに限られず、他の個数であってもよい。また、上流側流路軸心A2を円心とし、互いに異なる径とされた複数の円周上のそれぞれに複数のベンチュリ状流路25を設けたような構成等としてもよい。さらには、複数のベンチュリ状流路25を設けた態様に代えて、一つのベンチュリ状流路25のみを設けた構成としてもよい。気泡発生部21に設けられるベンチュリ状流路25としては、上記したような構成とされたものに限られず、その他、種々の構成とされたものであってもよい。
【0032】
下流側筒状部材29は、上流側筒状部材27の下流側部位27bと接続される上流側部位29aと、当該気泡発生装置20の流出口を構成する下流側部位29cと、を備えている。また、下流側筒状部材29は、これら上流側部位29aと下流側部位29cとの間に設けられ、気泡細分化部30を内嵌状に設けた中間部位29bを備えている。これら上流側部位29a、中間部位29b及び下流側部位29cは、互いに同軸状に設けられている。図例では、この下流側筒状部材29の上流側部位29aに、上流側筒状部材27の下流側部位27bを内嵌状に接続した例を示している。また、下流側筒状部材29の上流側部位29aの内径を、中間部位29bの内径よりも大とし、これらの径差によって形成される上流側に向く段壁面に上流側筒状部材27の下流側部位27bの下流側端部が当接される構成とした例を示している。また、上流側筒状部材27の軸方向途中部位に、下流側筒状部材29の上流側部位29aの上流側端部が当接される鍔状部28を外径側に向けて突出させるように設けた例を示している。また、上流側筒状部材27の下流側部位27bの外周面に、下流側筒状部材29の上流側部位29aの内周面に弾性的に接触されるOリング等のシール部材を受け入れるシール溝を設けた例を示している。
【0033】
また、中間部位29bの内径を、上記段壁面に円筒状部22の下流側端部が当接されるように、その上流側部位29aの内径よりも小とした例を示している。また、図例では、この中間部位29bの上流側部位と円筒状部22の下流側部位22bとによって上記した大径部26の外周側を区画した例を示している。図例では、中間部位29bの内径を、円筒状部22の下流側部位22bの内径D2よりも僅かに大とした例を示しているが、略同径状としてもよい。また、このような態様に代えて、円筒状部22の下流側部位22bのみによって大径部26の外周側を区画するように、中間部位29bの軸方向に沿う寸法を、気泡細分化部30の軸方向に沿う寸法と略同寸法としてもよい。または、中間部位29bの上流側部位のみによって大径部26の外周側を区画するように、円筒状部22の下流側部位22bを設けていない構成としてもよい。つまり、ベンチュリ状流路25の下流端を、上記段壁面に軸方向で略一致した位置となるように設けた構成としてもよい。
【0034】
下流側筒状部材29の下流側部位29cの内径は、中間部位29bの内径よりも小とされ、かつ上流側筒状部材27の上流側部位27aの内径と略同径状とされている。この下流側部位29cと中間部位29bとの径差によって形成される上流側に向く段壁面に、気泡細分化部30の下流側に向く面が当接される。なお、下流側筒状部材29の下流側部位29c及び上流側筒状部材27の上流側部位27aの内径は、気泡発生装置20の組込対象や気泡含有水の供給先等に応じて適宜の径としてもよく、例えば、10mm~50mm程度としてもよい。また、下流側部位29cの外周等に、洗浄対象3側の管路や適宜の継手に接続するための接続部を設けた構成としてもよい。また、下流側筒状部材29と上流側筒状部材27とは、下流側部位27bと上流側部位29aとが互いに設けられた適宜のねじ部等の接続部によって接合されるものでもよく、外周側に設けられた適宜の接続部材によって接合されるものでもよい。また、気泡発生部21及び後記する気泡細分化部30が設けられる上流側筒状部材27及び下流側筒状部材29としては、上記したような構成とされたものに限られず、その他、種々の構成とされたものであってもよい。
【0035】
気泡細分化部30は、軸方向に見て、ベンチュリ軸心A1に少なくとも重なり合う位置に壁部31を設けた構成とされている(
図3(c)参照)。なお、
図3(c)及び
図4(b)、(c)では、壁部31の上流側に設けられたベンチュリ状流路25の絞り部を軸方向に投影して二点鎖線にて示している。
本実施形態では、
図2(b)に示すように、この壁部31におけるベンチュリ状流路25側(上流側)に向く衝突面32と壁部31における軸方向(流路)に沿う側面33とのなす角度(壁縁角度)θを90度以下としている。このような構成とすれば、壁縁角度θを90度超としたものや、壁部31の縁部に面取部を設けたものと比べて、壁部31に衝突した気泡が壁部31の縁部(エッジ)によってより効果的に細分化され、より微細で多量の気泡を含む気泡含有水を生成することができる。この壁縁角度θは、気泡細分化部30の軸方向に沿う寸法や、壁部31の周囲に形成される流路(外周側流路37及び中央側流路38)における圧力損失を軽減する観点等から適宜の角度としてもよく、例えば、60度~90度程度としてもよい。図例では、この壁縁角度θを90度とした例を示している。
【0036】
また、本実施形態では、壁部31は、ベンチュリ軸心A1の下流側に位置する中央側壁部36を備えている。また、壁部31は、大径部26の内周面よりも軸心(当該気泡細分化部30の軸心)側に突出するように、かつ周方向に沿って設けられた環状壁部34と、環状壁部34と中央側壁部36とを接続する接続壁部35と、を備えている。このような構成とすれば、これら中央側壁部36、環状壁部34及び接続壁部35によって気泡を細分化する壁部31の縁部を効果的に増大させることができ、より効果的に気泡を細分化することができる。
この気泡細分化部30は、下流側筒状部材29と同軸状とされた円柱状(円筒状)とされ、外周部を構成する円筒部が環状壁部34を構成している。図例では、この気泡細分化部30の円筒部の外周面に、下流側筒状部材29の中間部位29bの内周面に弾性的に接触されるOリング等のシール部材を受け入れるシール溝を設けた例を示している。
【0037】
環状壁部34、接続壁部35及び中央側壁部36の上流側を向く面は、同一平面状とされ、壁部31の衝突面32を構成する。
環状壁部34は、大径部26を構成する円筒状部22の下流側部位22b(及び図例では中間部位29bの上流側端部)の内周面からの軸心側への突出寸法が全周に亘って略一様な寸法となるように設けられている。この環状壁部34は、図例では、その内径が下流側筒状部材29の下流側部位29cの内径よりも大径状となるように設けられている。この環状壁部34の内周面は、壁部31の側面33を構成する。
接続壁部35は、環状壁部34の内周面から軸心側に向けて延びるように設けられている。図例では、厚さ方向を概ね周方向に沿わせた板状の複数(図例では、6つ)の接続壁部35を、周方向に等間隔を空けて設けた例を示している。換言すれば、複数の接続壁部35を当該気泡細分化部30の軸心側から放射状に設けた例を示している。これら接続壁部35の周方向両側面は、壁部31の側面33を構成する。また、これら接続壁部35によって中央側壁部36の外周側に、複数(図例では、6つ)の外周側流路37が区画形成されている。
【0038】
中央側壁部36は、当該気泡細分化部30の軸心を円心とする略円板状とされている。この中央側壁部36は、上記のように設けられた複数のベンチュリ状流路25のベンチュリ軸心A1を頂点とする正多角形が内接する円よりも大径状に形成されている。この中央側壁部36の外径は、気泡を細分化する観点や外周側に設けられる外周側流路37を気泡含有水が円滑に流れるように適宜の径としてもよく、図例では、下流側筒状部材29の下流側部位29cの内径よりも小径状とした例を示している。
この中央側壁部36の外周面から外径側に向けて延びるように、上記した複数の接続壁部35が設けられている。また、この中央側壁部36の外周面は、壁部31の側面33を構成する。また、この中央側壁部36の外周面、接続壁部35の周方向両側面及び環状壁部34の内周面によって各外周側流路37が区画されている。
【0039】
また、本実施形態では、この中央側壁部36を軸方向に貫通するように、中央側流路38を設けた構成としている。このような構成とすれば、壁部31の縁部をより効果的に増大させることができる。図例では、中央側壁部36を二等分に分割するようにスリット状の中央側流路38を設けた例を示している。つまり、図例では、軸方向に見て、略半円形状とされた2つの中央側壁部36を設けた例を示している。これら中央側壁部36の対向面も壁部31の側面33を構成する。また、これら中央側壁部36のそれぞれに、軸方向に見て、3つのベンチュリ状流路25のベンチュリ軸心A1が位置するように設けた例を示している。また、これら中央側壁部36のそれぞれの外周面に間隔を空けて3つの接続壁部35を設けた例を示している。
なお、この気泡細分化部30の軸方向に沿う寸法は、外周側流路37及び中央側流路38を通過後における乱流を抑制する観点や、下流側における整流化を図る観点等から適宜の寸法としてもよい。また、この気泡細分化部30は、下流側筒状部材29の中間部位29bに対して締り嵌め状に嵌め込まれて固定されるものでもよく、その他、種々の態様で固定されるものであってもよい。
また、気泡発生装置20を構成する上流側筒状部材27や下流側筒状部材29、気泡発生部21、気泡細分化部30は、金属製であってもよく、樹脂成形品であってもよい。
【0040】
上記のような構成とされた気泡発生装置20においては、上記した気体溶解部14において気体が溶解された気体溶解水が流入口を介して流入し、気泡発生部21の上流側に満たされ、各ベンチュリ状流路25を通過する。各ベンチュリ状流路25を通過する際における急激な圧力低下によって気体溶解水に溶解した気体が気泡化し、この気泡が含まれた気泡含有水が気泡細分化部30の壁部31に衝突し、上流側の大径部26に満たされ、外周側流路37及び中央側流路38を通過する。この際、気泡含有水に含まれる気泡が壁部31の衝突面32に衝突して細分化され、また、衝突面32と側面33との壁縁部によって細分化され、微細化された気泡含有水が流出口から下流側に向けて流出する。
【0041】
次に、一実施例に係る気泡発生装置と比較例に係る気泡発生装置とを比較した評価試験について説明する。
実施例に係る気泡発生装置は、
図2及び
図3において示した気泡発生装置20の一例を採用した。比較例に係る気泡発生装置は、上記実施例に係る気泡発生装置から気泡細分化部30を取り外したものとした。
これら実施例に係る気泡発生装置及び比較例に係る気泡発生装置のそれぞれの上流側を、オゾン濃度1.5ppm、溶存酸素濃度13ppm、流量2L/minの気体溶解水を供給する洗浄システムに接続した。また、実施例に係る気泡発生装置及び比較例に係る気泡発生装置のそれぞれの下流側を、容量1Lで排出流路に開閉弁を設けたタンクに接続した。また、開閉弁の下流側の排出流路を気泡測定点とし、各例の気泡発生装置を通過させた気泡含有水をタンクに貯留した後に、開閉弁を開として高速度カメラで撮影し、気泡径及び気泡数を測定した。
【0042】
高速度カメラの撮影条件は、各例それぞれ画素数1024×1024ピクセル(1ピクセル=2.26μm)、フレームレート1000fps(フレーム毎秒)、撮影時間3.2秒とした。高速度カメラで各例を撮影したそれぞれの全3200フレームの画像から200フレーム間隔で算出対象フレームを抽出し、つまり、各例それぞれ16フレームを抽出し、真円度85%以上の円を気泡とみなして算出対象フレーム内に存在する気泡数及び気泡径を算出した。
結果は、
図4(a)のグラフに示す通りである。
図4(a)では、横軸を気泡径、縦軸を気泡数としている。実施例及び比較例ともに、100μm以下の微細気泡が含まれているが、実施例では、特に気泡径60μm以下の微細気泡が比較例に比べて多量に含まれる結果となった。つまり、実施例では、比較例に比べて、気泡が微細化されて気泡数が増加することが示された。
【0043】
次に、気泡発生装置の変形例及び洗浄システムの他の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、以下の気泡発生装置の各例及び洗浄システムの他の実施形態では、上記した例との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略に説明する。また、上記した例と同様に奏する作用効果についても説明を省略または簡略に説明する。
【0044】
図4(b)は、第1変形例に係る気泡発生装置20Aを示している。
この気泡発生装置20Aは、気泡細分化部30Aの壁部31Aの構成が上記した例とは異なる。本変形例では、接続壁部35の数を上記した例よりも少なくし、外周側流路37Aの周方向に沿う寸法を上記した例よりも大としている。図例では、3つの外周側流路37Aを区画するように3つの接続壁部35を周方向に等間隔を空けて設けた構成としている。また、中央側流路38Aを、中央側壁部36Aを三等分に分割するように設けた例を示している。また、図例では、軸方向に見て、略扇形状とされた3つの中央側壁部36Aを設け、それぞれの外周面の周方向中央部から外径側に向けて延びるように接続壁部35を設けた例を示している。また、これら中央側壁部36Aのそれぞれに、軸方向に見て、2つのベンチュリ状流路25のベンチュリ軸心A1が位置するように設けた例を示している。なお、このような態様に代えて、各中央側壁部36Aの外周面に複数の接続壁部35を接続した態様としてもよい。また、中央側流路38,38Aとしては、中央側壁部36,36Aを分割するように設けられたものに限られない。
【0045】
図4(c)は、第2変形例に係る気泡発生装置20Bを示している。
この気泡発生装置20Bは、気泡細分化部30Bの壁部31Bの構成が上記した例とは異なる。本変形例においても、第1変形例と概ね同様、3つの外周側流路37Bを区画するように3つの接続壁部35を周方向に等間隔を空けて設けた構成としている。また、本変形例では、中央側壁部36Bに、中央側流路を設けていない構成としている。
なお、上記した各例に係る気泡発生装置20,20A,20Bにおける互いに異なる構成の一部を組み替えたり、組み合わせたりして適用するようにしてもよい。
【0046】
図5は、上記した気泡発生装置20が組み込まれた第2実施形態に係る洗浄システム1Aを示している。なお、この洗浄システム1Aに、第1変形例の気泡発生装置20Aや第2変形例の気泡発生装置20Bを組み込むようにしてもよい。
本実施形態に係る洗浄システム1Aは、気泡発生装置20の下流側が、便器5に洗浄水を供給する給水路4及び便器5の排水部5dに接続された排水路9のうちの少なくとも一方に接続されている。つまり、本実施形態では、洗浄対象3Aを、便器5及び排水路9のうちの少なくとも一方としている。
本実施形態では、気泡発生装置20の下流側を給水路4及び排水路9の両方に接続した構成としている。図例では、気泡発生装置20の下流側の給水路4から分岐させたバイパス給水路6を排水路9に接続した構成としている。
【0047】
また、本実施形態では、便器5を、立位状態で使用する小便器とした例を示している。この便器5は、ボウル部(鉢部)5cと、給水路4に接続された給水部5bと、尿や洗浄水を排出する排水部5dと、を備えている。給水部5bには、ボウル部5c内面に沿わせるように洗浄水を吐出するスプレッダー等の吐出部が設けられている。排水部5dは、椀トラップ状やPトラップ状のトラップ部を構成し、排水路9に接続される。なお、この便器5は、床に載置されるように設置されるいわゆる床置型の縦長の小便器でもよく、壁面に引っ掛けられるように設置される壁掛型の小便器でもよい。
また、本実施形態では、給水路4を複数(図例では、3つ)に分岐させて複数の便器5,5,5に洗浄水を供給する構成とされている。給水路4の分岐管路4A,4A,4Aのそれぞれが各便器5,5,5の給水部5b,5b,5bに接続されている。また、これら分岐管路4A,4A,4Aのそれぞれには、これらを開閉し、洗浄水を供給及び遮断する給水弁5a,5a,5aが設けられている。また、各便器5,5,5の排水部5d,5d,5dには、横引配管状の排水路9に接続される排水管路9A,9A,9Aがそれぞれに接続されている。
【0048】
バイパス給水路6の下流側端部は、排水路9の排水方向で最上流側の便器5に接続された排水管路9Aと排水路9との接続部に接続されている。つまり、バイパス給水路6の下流側端部は、排水路9の略水平方向に延びるように設けられた部位の上流側端部に接続されている。
また、バイパス給水路6には、バイパス給水路6を開閉し、洗浄水を供給及び遮断するバイパス弁7が設けられている。また、バイパス給水路6には、上流側への逆流を防止する逆流防止弁(逆止弁、チェックバルブ)等の逆流防止部8が設けられている。この逆流防止部8は、バイパス弁7よりも下流側(排水路9側)に設けられている。
【0049】
洗浄システム1Aは、給水元2A側からの洗浄水を一時的に貯留する上記と概ね同様な貯水部12Aを備えている。図例では、給水元2Aを構成する給水路に上記のような給水弁を設けていない構成とした例を示しているが、このような態様に限られない。また、貯水部12Aを、天壁部を有してない上方開口の水槽状とした例を示しているが、このような態様に限られない。なお、図示していないが、上記同様な越流路等を設けた構成としてもよい。また、この貯水部12Aには、所定レベルの洗浄水が貯水されるように適宜のレベル計が設けられている。
【0050】
この貯水部12Aの下流側のポンプ13Aとの間の給水路11Aには、気体取込部18Aを介して気体を取り込むエゼクター部16Aが設けられている。気体取込部18Aとしては、管路の先端が大気開放されたものでもよく、管路途中に開閉弁が設けられたものでもよい。この気体取込部18Aは、エゼクター部16Aのノズル部に接続されている。なお、気体取込部18Aの管路途中等に、エゼクター部16Aに向けて供給される気体の流量調整が可能とされた流量調整部を設けた構成としてもよい。
エゼクター部16Aは、ノズル部を通過する洗浄水の負圧作用によるエゼクター効果によって気体取込部18Aを介して気体を取り込む構成とされている。このエゼクター部16Aにおいて取り込まれた気体がポンプ13Aによって気体溶解部14Aに導入され、上記と概ね同様にして洗浄水に気体が溶解される。
【0051】
また、本実施形態においても、この気体溶解部14Aの下流側に、除菌水供給部17と気泡発生装置20とを設けた構成としている。図例では、除菌水供給部17を、横長状とした例を示しているが、上記同様、縦長状とされたものでもよい。
また、本実施形態では、気体溶解部14Aと除菌水供給部17との間の下流側管路15Aと、エゼクター部16Aの上流側の給水路11Aと、を接続する還流路15Aaを設けた構成としている。なお、このような還流路15Aaを設けていない構成としてもよい。
また、図示を省略しているが、本実施形態においても、当該洗浄システム1Aの各部に接続され、各部を制御する制御部19(
図1参照)が設けられている。
【0052】
上記構成とされた洗浄システム1Aにおいては、バイパス弁7を閉鎖させた状態で、ポンプ13Aを作動させ、洗浄操作がなされた便器5の給水弁5aを開放させれば、除菌成分及び気泡を含む洗浄水が、洗浄操作がなされた便器5のボウル部5cに供給される。また、ポンプ13Aを作動させ、バイパス弁7を開放させれば、除菌成分及び気泡を含む洗浄水がバイパス給水路6を介して排水路9に直接的に供給される。また、全ての給水弁5a,5a,5aを閉鎖させた状態で、ポンプ13Aを作動させ、バイパス弁7を開放させれば、除菌成分及び気泡を含む洗浄水をバイパス給水路6側のみに供給させることもできる。なお、本実施形態においても、上記第1実施形態と同様なバイパス路15bや切替弁16、気体排出部18等を設けた構成としてもよい。その他、上記各実施形態において説明した互いに異なる構成の一部を組み替えたり、組み合わせたりして適用するようにしてもよい。
【0053】
なお、洗浄対象3Aを複数の便器5,5,5とした例を示しているが、一つの便器5としてもよく、また、小便器に限られず、しゃがみこみ式や腰掛式の大便器としてもよい。
また、各便器5,5,5の給水部5b,5b,5bに接続された分岐管路4A,4A,4Aのそれぞれに給水弁5aを設けた態様に代えて、給水路4の上流側部位に一つの給水弁5aを設けた構成としてもよい。
また、バイパス給水路6を、横引配管状の排水路9の上流側端部に接続した態様に代えて、各便器5,5,5の排水部5d,5d,5dや排水管路9A,9A,9Aに接続した構成等としてもよい。この場合は、例えば、バイパス給水路6を複数に分岐させて排水部5d,5d,5dや排水管路9A,9A,9Aのそれぞれに接続した構成としてもよい。
また、洗浄システム1Aの洗浄対象3Aを、便器5及び排水路9の両方とした態様に代えて、いずれか一方としてもよい。例えば、気泡発生装置20の下流側管路を、各便器5の給水側には接続せずに、各便器5の排水部5dや排水管路9A、排水路9等に接続した構成等としてもよい。
【0054】
また、上記各実施形態では、貯水部12,12A及びポンプ13,13Aを設けた例を示しているが、これらを設けずに、気体溶解部14,14Aに給水路としての水道管が直接的に接続される態様等としてもよい。
また、上記した各例に係る気泡発生装置20,20A,20Bが組み込まれる洗浄システム1,1Aとしては、上記したような構成とされたものに限られず、その他、種々の洗浄システムに組込可能である。また、各例に係る気泡発生装置20,20A,20Bにおける上記した各部材及び各部の構成は、一例に過ぎず、その他、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1,1A 洗浄システム
14,14A 気体溶解部
20,20A,20B 気泡発生装置
21 気泡発生部
25 ベンチュリ状流路
26 大径部
30,30A,30B 気泡細分化部
31,31A,31B 壁部
32 衝突面
33 側面
34 環状壁部
35 接続壁部
36,36A,36B 中央側壁部
A1 ベンチュリ軸心(ベンチュリ状流路の軸心)
A2 上流側流路軸心(ベンチュリ状流路の上流側の流路の軸心)
D1 ベンチュリ状流路の下流端の内径
D2 大径部の内径
L 大径部の軸方向に沿う寸法
θ 壁縁角度(衝突面と側面とのなす角度)