(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】情報処理方法、プログラム、および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20240531BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240531BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20240531BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G05B23/02 P
G06F30/20
(21)【出願番号】P 2020143447
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】原 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】潮田 幹生
(72)【発明者】
【氏名】中橋 昭久
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-185591(JP,A)
【文献】特開2008-241337(JP,A)
【文献】特開2010-144655(JP,A)
【文献】国際公開第2020/106784(WO,A1)
【文献】香江 裕介 他,大域的近似のための選択的3次多項式による応答曲面法,日本機械学会[No.5-27]第15回設計工学・システム部門講演会講演論文集,2005年08月03日,pp.31-34
【文献】Aldy Gunawan et al.,Second order-response surface model for the automated parameter tuning problem,2014 IEEE International Conference on Industrial Engineering and Engineering Management,2014年,DOI: 10.1109/IEEM.2014.7058719
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
G05B 23/02
G06F 30/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1制御因子を含む複数の制御因子のそれぞれについて設定された、第1水準値、前記第1水準値よりも大きい第2水準値および前記第2水準値よりも大きい第3水準値を含む複数の水準値に基づいて、目的変数を実験によって求めるための前記複数の制御因子のそれぞれの実験条件の組み合わせを示す第1テーブルを実験計画法によって作成し、
前記作成された第1テーブルに基づいて取得された目的変数を前記第1テーブルに記録し、
前記目的変数が記録された第1テーブルを用いて、前記複数の制御因子について、前記目的変数に係る第1応答曲面を算出し、
前記第1制御因子について、前記算出された第1応答曲面に目的変数に係る目標値が含まれていない場合に、前記第1制御因子について、前記設定された第1水準値、第2水準値および第3水準値とは異なる第4水準値を設定し、
前記目的変数が記録された第1テーブルに対して、(i)前記第1制御因子について前記設定された第1水準値、第2水準値および第3水準値のうちのいずれか一の水準値を含む実験条件の組み合わせを削除し、(ii)前記第1制御因子について前記設定された第4水準値を含み、かつ、前記削除された一の水準値を含まない複数の水準値に基づいて、前記複数の制御因子のそれぞれの実験条件の組み合わせを追加することにより、前記複数の制御因子のそれぞれの実験条件の組み合わせを示す第2テーブルを実験計画法によって作成し、
前記作成された第2テーブルに基づいて取得された目的変数を前記第2テーブルに記録し、
前記目的変数が記録された第2テーブルを用いて、前記複数の制御因子について、前記目的変数に係る第2応答曲面であって前記目標値を含む第2応答曲面を算出し、
前記算出された第2応答曲面を出力する、
ことを含む、情報処理方法。
【請求項2】
前記目標値に対応する水準値が、前記第1水準値よりも小さく、前記目標値に対応する水準値と前記第1水準値との距離が前記第2水準値と前記第1水準値との差以上である場合には、前記目的変数が記録された第1テーブルに対して、前記第1制御因子について前記一の水準値として前記第2水準値を含む実験条件の組み合わせを削除し、前記第4水準値として前記目標値に対応する水準値よりも小さい値を設定し、
前記目標値に対応する水準値が、前記第1水準値よりも小さく、前記目標値に対応する水準値と前記第1水準値との距離が前記第2水準値と前記第1水準値との差未満である場合には、前記目的変数が記録された第1テーブルに対して、前記第1制御因子について前記一の水準値として前記第3水準値を含む実験条件の組み合わせを削除し、前記第4水準値として前記目標値に対応する水準値よりも小さい値を設定し、
前記目標値に対応する水準値が、前記第3水準値よりも大きく、前記目標値に対応する水準値と前記第3水準値との距離が前記第3水準値と前記第2水準値との差以上である場合には、前記目的変数が記録された第1テーブルに対して、前記第1制御因子について前記一の水準値として前記第2水準値を含む実験条件の組み合わせを削除し、前記第4水準値として前記目標値に対応する水準値よりも大きい値を設定し、
前記目標値に対応する水準値が、前記第3水準値よりも大きく、前記目標値に対応する水準値と前記第3水準値との距離が前記第3水準値と前記第2水準値との差未満である場合には、前記目的変数が記録された第1テーブルに対して、前記第1制御因子について前記一の水準値として前記第1水準値を含む実験条件の組み合わせを削除し、前記第4水準値として前記目標値に対応する水準値よりも大きい値を設定する、
請求項1記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記第2テーブルを作成する際の実験条件の組み合わせの追加は、前記第2テーブルについて算出された平均予測分散の値が、前記第1テーブルについて算出された平均予測分散の値よりも小さくなるまで実行される、
請求項1または2記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記第1テーブルの作成は、中心複合計画法に基づいて行われる、
請求項1から3のいずれか1項記載の情報処理方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項6】
プロセッサと、
メモリと、を備え、
前記プロセッサは、前記メモリに記憶されたプログラムを実行することで、
第1制御因子を含む複数の制御因子のそれぞれについて設定された、第1水準値、前記第1水準値よりも大きい第2水準値および前記第2水準値よりも大きい第3水準値を含む複数の水準値に基づいて、目的変数を実験によって求めるための前記複数の制御因子のそれぞれの実験条件の組み合わせを示す第1テーブルを実験計画法によって作成し、
前記作成された第1テーブルに基づいて取得された目的変数を前記第1テーブルに記録し、
前記目的変数が記録された第1テーブルを用いて、前記複数の制御因子について、前記目的変数に係る第1応答曲面を算出し、
前記第1制御因子について、前記算出された第1応答曲面に目的変数に係る目標値が含まれていない場合に、前記第1制御因子について、前記設定された第1水準値、第2水準値および第3水準値とは異なる第4水準値を設定し、
前記目的変数が記録された第1テーブルに対して、前記第1制御因子について前記設定された第1水準値、第2水準値および第3水準値のうちのいずれか一の水準値を含む実験条件の組み合わせを削除し、前記第1制御因子について前記設定された第4水準値を含み、かつ、前記削除された一の水準値を含まない複数の水準値に基づいて、前記複数の制御因子のそれぞれの実験条件の組み合わせを追加することにより、前記複数の制御因子のそれぞれの実験条件の組み合わせを示す第2テーブルを実験計画法によって作成し、
前記作成された第2テーブルに基づいて取得された目的変数を前記第2テーブルに記録し、
前記目的変数が記録された第2テーブルを用いて、前記複数の制御因子について、前記目的変数に係る第2応答曲面であって前記目標値を含む第2応答曲面を算出し、
前記算出された第2応答曲面を出力する、
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プロセスパラメータを設計する情報処理方法、その情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、およびプロセスパラメータを設計する情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、制御プロセスの複雑化等により、種々の制御対象について多数のプロセスパラメータ(制御パラメータとも呼ぶ)の設定が必要となっている。例えば、自動車のエンジン制御、半導体デバイスの製造、または薬品の製造などでは、多数の制御パラメータを最適化して実用化する必要がある。そのような制御パラメータを設定するために、実験計画法を用いて各制御対象についての制御パラメータの最適条件を探索することが行われる。
【0003】
ここで、例えばエンジンの制御パラメータの実験計画設定方法においては、自動車エンジンの失火等によって正常なデータが得られない場合がある。このような自動車エンジンの失火等による欠測点が存在する場合であっても、すでに実験で得られた正常なデータを生かしつつ、少ない追加実験を行うことによって各特性のモデルの精度を効率的に確保する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
ここで、制御パラメータ数が増えると、実験候補点の数が飛躍的に増加する。例えば、制御パラメータ数が5パラメータの場合は、中心複合計画の実験点数は29個となり、1つのパラメータにつき5水準とした場合の全候補点は55-29=3096個となる。そして、中心複合計画の実験点29個のうち3点が欠測した場合に、その欠測点の代わりに6点の追加実験点が選ばれたとすると、3096個の候補点のうちから6個を選ぶ組み合わせ、すなわち、3096C6=1018通りの中から1つを選択しなければならない。制御パラメータ数が6パラメータになるとさらにこの組み合わせは増加する。
【0005】
このような問題に対して、効率的かつ高精度に追加実験点を設定することができる制御パラメータの実験計画設定方法が考案されている(例えば特許文献2参照)。特許文献2に記載された実験計画設定方法は、第1の所定数の実験点のうちに欠測点が存在するか否かを判断するステップと、第2の所定数の追加実験点を設定するステップとを含む。欠測点を基準として複数の制御パラメータをどのように変更するかについて、予め複数の探索方向が複数の優先順位に割り当てられており、追加実験点を設定するステップは、複数の探索方向のうち優先順位の高いものから順に適用して、欠測点の制御パラメータを変更して必要数となるまで追加実験点の候補点を設定するステップと、必要数の候補点のうちから追加実験点を選択するステップとを含む。これにより、効率的かつ高精度に追加実験点を設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-17698号公報
【文献】特開2008-241337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1または特許文献2に記載された従来の方法の場合、プロセスの理解がある程度進んでおり計測困難な実験点が少ないことが前提となっている。
【0008】
一方、複雑なプロセスを対象にする場合、実験範囲を十分に大きくしようとすると多くの実験点について計測困難となり、追加実験点が膨大となるおそれがある。また、実験範囲を狭く設定した場合は、作成した応答曲面内で最適条件が得られず、実験範囲外での検討をするために再度実験計画を作成し直さなければならないおそれがある。
【0009】
そこで、本開示は、複雑なプロセスを対象にするような実験計画を効率的に設定することを可能とする情報処理方法、プログラムおよび情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、第1制御因子を含む複数の制御因子のそれぞれについて設定された、第1水準値、前記第1水準値よりも大きい第2水準値および前記第2水準値よりも大きい第3水準値を含む複数の水準値に基づいて、目的変数を実験によって求めるための前記複数の制御因子のそれぞれの実験条件の組み合わせを示す第1テーブルを実験計画法によって作成し、前記作成された第1テーブルに基づいて取得された目的変数を前記第1テーブルに記録し、前記目的変数が記録された第1テーブルを用いて、前記複数の制御因子について、前記目的変数に係る第1応答曲面を算出し、前記第1制御因子について、前記算出された第1応答曲面に目的変数に係る目標値が含まれていない場合に、前記第1制御因子について、前記設定された第1水準値、第2水準値および第3水準値とは異なる第4水準値を設定し、前記目的変数が記録された第1テーブルに対して、(i)前記第1制御因子について前記設定された第1水準値、第2水準値および第3水準値のうちのいずれか一の水準値を含む実験条件の組み合わせを削除し、(ii)前記第1制御因子について前記設定された第4水準値を含み、かつ、前記削除された一の水準値を含まない複数の水準値に基づいて、前記複数の制御因子のそれぞれの実験条件の組み合わせを追加することにより、前記複数の制御因子のそれぞれの実験条件の組み合わせを示す第2テーブルを実験計画法によって作成し、前記作成された第2テーブルに基づいて取得された目的変数を前記第2テーブルに記録し、前記目的変数が記録された第2テーブルを用いて、前記複数の制御因子について、前記目的変数に係る第2応答曲面であって前記目標値を含む第2応答曲面を算出し、前記算出された第2応答曲面を出力する、ことを含む。
【0011】
本開示の一態様に係るプログラムは、上記の情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0012】
本開示の一態様に係る情報処理装置は、プロセッサと、メモリと、を備え、前記プロセッサは、前記メモリに記憶されたプログラムを実行することで、第1制御因子を含む複数の制御因子のそれぞれについて設定された、第1水準値、前記第1水準値よりも大きい第2水準値および前記第2水準値よりも大きい第3水準値を含む複数の水準値に基づいて、目的変数を実験によって求めるための前記複数の制御因子のそれぞれの実験条件の組み合わせを示す第1テーブルを実験計画法によって作成し、前記作成された第1テーブルに基づいて取得された目的変数を前記第1テーブルに記録し、前記目的変数が記録された第1テーブルを用いて、前記複数の制御因子について、前記目的変数に係る第1応答曲面を算出し、前記第1制御因子について、前記算出された第1応答曲面に目的変数に係る目標値が含まれていない場合に、前記第1制御因子について、前記設定された第1水準値、第2水準値および第3水準値とは異なる第4水準値を設定し、前記目的変数が記録された第1テーブルに対して、前記第1制御因子について前記設定された第1水準値、第2水準値および第3水準値のうちのいずれか一の水準値を含む実験条件の組み合わせを削除し、前記第1制御因子について前記設定された第4水準値を含み、かつ、前記削除された一の水準値を含まない複数の水準値に基づいて、前記複数の制御因子のそれぞれの実験条件の組み合わせを追加することにより、前記複数の制御因子のそれぞれの実験条件の組み合わせを示す第2テーブルを実験計画法によって作成し、前記作成された第2テーブルに基づいて取得された目的変数を前記第2テーブルに記録し、前記目的変数が記録された第2テーブルを用いて、前記複数の制御因子について、前記目的変数に係る第2応答曲面であって前記目標値を含む第2応答曲面を算出し、前記算出された第2応答曲面を出力する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、複雑なプロセスを対象にするような実験計画を効率的に設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態に係る情報処理装置の一例を示す構成図である。
【
図2】実施の形態に係る情報処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3A】算出された第1応答曲面に目的変数に係る目標値が含まれない場合の一例を説明するための図である。
【
図3B】算出された第1応答曲面に目的変数に係る目標値が含まれない場合の他の一例を説明するための図である。
【
図4】実験計画数の採用方法を説明するための図である。
【
図5A】実験計画法によって作成された第1テーブルの第1例を示す表である。
【
図5B】目的変数が記録された第1テーブルの第1例を示す表である。
【
図5C】
図5Bに示される第1テーブルから、第1制御因子について一の水準値を含む実験条件の組み合わせが削除されたテーブルの第1例を示す表である。
【
図5D】
図5Cに示されるテーブルに、第1制御因子について第4水準値を含み、かつ、一の水準値を含まない実験条件の組み合わせが追加されることで作成された第2テーブルの第1例を示す表である。
【
図5E】目的変数が記録された第2テーブルの第1例を示す表である。
【
図5F】比較例において、高精度な実験計画となるときの実験計画数を示す表である。
【
図5G】第1例において、高精度な実験計画となるまでの実験計画数を示す表である。
【
図6A】実験計画法によって作成された第1テーブルの第2例を示す表である。
【
図6B】目的変数が記録された第1テーブルの第2例を示す表である。
【
図6C】
図6Bに示される第1テーブルから、第1制御因子について一の水準値を含む実験条件の組み合わせが削除されたテーブルの第2例を示す表である。
【
図6D】
図6Cに示されるテーブルに、第1制御因子について第4水準値を含み、かつ、一の水準値を含まない実験条件の組み合わせが追加されることで作成された第2テーブルの第2例を示す表である。
【
図6E】目的変数が記録された第2テーブルの第2例を示す表である。
【
図6F】比較例において、高精度な実験計画となるときの実験計画数を示す表である。
【
図6G】第2例において、高精度な実験計画となるまでの実験計画数を示す表である。
【
図7A】実験計画法によって作成された第1テーブルの第3例を示す表である。
【
図7B】目的変数が記録された第1テーブルの第3例を示す表である。
【
図7C】
図7Bに示される第1テーブルから、第1制御因子について一の水準値を含む実験条件の組み合わせが削除されたテーブルの第3例を示す表である。
【
図7D】
図7Cに示されるテーブルに、第1制御因子について第4水準値を含み、かつ、一の水準値を含まない実験条件の組み合わせが追加されることで作成された第2テーブルの第3例を示す表である。
【
図7E】目的変数が記録された第2テーブルの第3例を示す表である。
【
図7F】比較例において、高精度な実験計画となるときの実験計画数を示す表である。
【
図7G】第3例において、高精度な実験計画となるまでの実験計画数を示す表である。
【
図8A】実験計画法によって作成された第1テーブルの第4例を示す表である。
【
図8B】目的変数が記録された第1テーブルの第4例を示す表である。
【
図8C】
図8Bに示される第1テーブルから、第1制御因子について一の水準値を含む実験条件の組み合わせが削除されたテーブルの第4例を示す表である。
【
図8D】
図8Cに示されるテーブルに、第1制御因子について第4水準値を含み、かつ、一の水準値を含まない実験条件の組み合わせが追加されることで作成された第2テーブルの第4例を示す表である。
【
図8E】目的変数が記録された第2テーブルの第4例を示す表である。
【
図8F】比較例において、高精度な実験計画となるときの実験計画数を示す表である。
【
図8G】第4例において、高精度な実験計画となるまでの実験計画数を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、第1制御因子を含む複数の制御因子のそれぞれについて設定された、第1水準値、前記第1水準値よりも大きい第2水準値および前記第2水準値よりも大きい第3水準値を含む複数の水準値に基づいて、目的変数を実験によって求めるための前記複数の制御因子のそれぞれの実験条件の組み合わせを示す第1テーブルを実験計画法によって作成し、前記作成された第1テーブルに基づいて取得された目的変数を前記第1テーブルに記録し、前記目的変数が記録された第1テーブルを用いて、前記複数の制御因子について、前記目的変数に係る第1応答曲面を算出し、前記第1制御因子について、前記算出された第1応答曲面に目的変数に係る目標値が含まれていない場合に、前記第1制御因子について、前記設定された第1水準値、第2水準値および第3水準値とは異なる第4水準値を設定し、前記目的変数が記録された第1テーブルに対して、(i)前記第1制御因子について前記設定された第1水準値、第2水準値および第3水準値のうちのいずれか一の水準値を含む実験条件の組み合わせを削除し、(ii)前記第1制御因子について前記設定された第4水準値を含み、かつ、前記削除された一の水準値を含まない複数の水準値に基づいて、前記複数の制御因子のそれぞれの実験条件の組み合わせを追加することにより、前記複数の制御因子のそれぞれの実験条件の組み合わせを示す第2テーブルを実験計画法によって作成し、前記作成された第2テーブルに基づいて取得された目的変数を前記第2テーブルに記録し、前記目的変数が記録された第2テーブルを用いて、前記複数の制御因子について、前記目的変数に係る第2応答曲面であって前記目標値を含む第2応答曲面を算出し、前記算出された第2応答曲面を出力する、ことを含む。
【0016】
例えば、第1水準値、第2水準値および第3水準値を含む複数の水準値に基づいて作成された第1テーブルによる初期の実験計画では、第1応答曲面に目的変数に係る目標値が含まれない(つまり目的とする実験結果が得られない)場合に、第1制御因子について第1水準値、第2水準値および第3水準値のうちのいずれか一の水準値に問題があり、第4水準値が必要であるとわかったとする。このとき、第1制御因子について上記一の水準値の代わりに第4水準値を加えて実験を一からやり直す場合、実験計画数が多くなり非効率となる。これに対して、第2テーブルによる実験計画では、第1テーブルから第1制御因子について一の水準値を含む実験条件の組み合わせを削除したときの残りの実験条件の組み合わせについては実験をやり直さず、第1制御因子について第4水準値を含みかつ上記一の水準値を含まない実験条件の組み合わせについて再計画を行う。これにより、少ない再計画数で目的とする実験結果が得られ得る。したがって、本開示によれば、複雑なプロセスを対象にするような実験計画を効率的に設定することが可能となる。
【0017】
例えば、前記目標値に対応する水準値が、前記第1水準値よりも小さく、前記目標値に対応する水準値と前記第1水準値との距離が前記第2水準値と前記第1水準値との差以上である場合には、前記目的変数が記録された第1テーブルに対して、前記第1制御因子について前記一の水準値として前記第2水準値を含む実験条件の組み合わせを削除し、前記第4水準値として前記目標値に対応する水準値よりも小さい値を設定し、前記目標値に対応する水準値が、前記第1水準値よりも小さく、前記目標値に対応する水準値と前記第1水準値との距離が前記第2水準値と前記第1水準値との差未満である場合には、前記目的変数が記録された第1テーブルに対して、前記第1制御因子について前記一の水準値として前記第3水準値を含む実験条件の組み合わせを削除し、前記第4水準値として前記目標値に対応する水準値よりも小さい値を設定し、前記目標値に対応する水準値が、前記第3水準値よりも大きく、前記目標値に対応する水準値と前記第3水準値との距離が前記第3水準値と前記第2水準値との差以上である場合には、前記目的変数が記録された第1テーブルに対して、前記第1制御因子について前記一の水準値として前記第2水準値を含む実験条件の組み合わせを削除し、前記第4水準値として前記目標値に対応する水準値よりも大きい値を設定し、前記目標値に対応する水準値が、前記第3水準値よりも大きく、前記目標値に対応する水準値と前記第3水準値との距離が前記第3水準値と前記第2水準値との差未満である場合には、前記目的変数が記録された第1テーブルに対して、前記第1制御因子について前記一の水準値として前記第1水準値を含む実験条件の組み合わせを削除し、前記第4水準値として前記目標値に対応する水準値よりも大きい値を設定してもよい。
【0018】
これによれば、目的変数に係る目標値に対応する水準値と第1水準値または第3水準値との大小関係、および、目的変数に係る目標値に対応する水準値と第1水準値または第3水準値との距離から一の水準値および第4水準値を決定することができる。
【0019】
例えば、前記第2テーブルを作成する際の実験条件の組み合わせの追加は、前記第2テーブルについて算出された平均予測分散の値が、前記第1テーブルについて算出された平均予測分散の値よりも小さくなるまで実行されてもよい。
【0020】
これによれば、第2テーブルについて算出された平均予測分散の値が、第1テーブルについて算出された平均予測分散の値よりも小さくなるため、第2テーブルによる実験計画では、実験計画を効率的に、かつ、高精度に設定することが可能となる。
【0021】
例えば、前記第1テーブルの作成は、中心複合計画法に基づいて行われてもよい。
【0022】
これによれば、実験計画法として中心複合計画法が用いられることで、より効率的に実験計画を設定することが可能となる。
【0023】
本開示の一態様に係るプログラムは、上記の情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【0024】
これによれば、複雑なプロセスを対象にするような実験計画を効率的に設定することを可能とするプログラムを提供できる。
【0025】
本開示の一態様に係る情報処理装置は、プロセッサと、メモリと、を備え、前記プロセッサは、前記メモリに記憶されたプログラムを実行することで、第1制御因子を含む複数の制御因子のそれぞれについて設定された、第1水準値、前記第1水準値よりも大きい第2水準値および前記第2水準値よりも大きい第3水準値を含む複数の水準値に基づいて、目的変数を実験によって求めるための前記複数の制御因子のそれぞれの実験条件の組み合わせを示す第1テーブルを実験計画法によって作成し、前記作成された第1テーブルに基づいて取得された目的変数を前記第1テーブルに記録し、前記目的変数が記録された第1テーブルを用いて、前記複数の制御因子について、前記目的変数に係る第1応答曲面を算出し、前記第1制御因子について、前記算出された第1応答曲面に目的変数に係る目標値が含まれていない場合に、前記第1制御因子について、前記設定された第1水準値、第2水準値および第3水準値とは異なる第4水準値を設定し、前記目的変数が記録された第1テーブルに対して、前記第1制御因子について前記設定された第1水準値、第2水準値および第3水準値のうちのいずれか一の水準値を含む実験条件の組み合わせを削除し、前記第1制御因子について前記設定された第4水準値を含み、かつ、前記削除された一の水準値を含まない複数の水準値に基づいて、前記複数の制御因子のそれぞれの実験条件の組み合わせを追加することにより、前記複数の制御因子のそれぞれの実験条件の組み合わせを示す第2テーブルを実験計画法によって作成し、前記作成された第2テーブルに基づいて取得された目的変数を前記第2テーブルに記録し、前記目的変数が記録された第2テーブルを用いて、前記複数の制御因子について、前記目的変数に係る第2応答曲面であって前記目標値を含む第2応答曲面を算出し、前記算出された第2応答曲面を出力する。
【0026】
これによれば、複雑なプロセスを対象にするような実験計画を効率的に設定することを可能とする情報処理装置を提供できる。
【0027】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0028】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0029】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。
【0030】
(実施の形態)
<装置>
図1は、実施の形態に係る情報処理装置1の一例を示す構成図である。なお、
図1には、情報処理装置1の他に、半導体メモリ160、DVDROM(Digital Versatile Disk Read-Only-Memory:ディジタル多用途ディスク読出専用メモリ)162およびネットワーク164も示している。
【0031】
実施の形態に係る情報処理装置1は、コンピュータシステムハードウェアおよびコンピュータシステム上で実行されるプログラムによって実現され得る。なお、ここで示す情報処理装置1は単なる例であって、他の構成によっても実現可能である。
【0032】
図1を参照して、情報処理装置1は、コンピュータ120と、全てコンピュータ120に接続された、モニタ122と、キーボード126と、マウス128と、プリンタ124と、を含む。なお、情報処理装置1は、モニタ122、プリンタ124、キーボード126およびマウス128を備えていなくてもよい。
【0033】
コンピュータ120は、DVDドライブ150と、半導体メモリポート152とを含む。
【0034】
図1に示す通り、コンピュータ120はさらに、DVDドライブ150と半導体メモリポート152とに接続されたバス142と、全てバス142に接続された、CPU140と、コンピュータ120のブートアッププログラムを記憶するROM144とを含む。
【0035】
また、コンピュータ120はさらに、CPU140によって使用される作業領域を提供するとともにCPU140によって実行されるプログラムのための記憶領域となるRAM146と、初期実験計画データ、実験データ、シミュレーションデータ、追加実験計画データ、設定最適点データ、および算出最適点等を記憶するためのハードディスクドライブ148と、ネットワーク164への接続を提供するネットワークインターフェイス154とを含む。
【0036】
実施の形態に係る情報処理装置1を実現するソフトウェアは、DVDROM162または半導体メモリ160等の媒体に記録されたオブジェクトコードまたはスクリプトの形で流通し、DVDドライブ150または半導体メモリポート152等の読出装置を介してコンピュータ120に提供され、ハードディスクドライブ148に記憶される。CPU140がプログラムを実行する際には、プログラムはハードディスクドライブ148から読出されてRAM146にロードされる。図示しないプログラムカウンタによって指定されたアドレスから命令がフェッチされ、その命令が実行される。CPU140はハードディスクドライブ148から処理すべきデータを読出し、処理の結果をハードディスクドライブ148に記憶する。最適化された実験条件の組み合わせが、プリンタ124により出力される。
【0037】
コンピュータ120の一般的動作は周知であるので、詳細な説明は省略する。
【0038】
ソフトウェアの流通の方法に関して、ソフトウェアは必ずしも記憶媒体上に固定されたものでなくてもよい。例えば、ソフトウェアはネットワーク164に接続された別のコンピュータから分配されてもよい。ソフトウェアの一部がハードディスクドライブ148に記憶され、ソフトウェアの残りの部分についてはネットワーク164を介してハードディスクドライブ148に取込み、実行の際に統合する様にしてもよい。
【0039】
また、ソフトウェアの流通形態はオブジェクトコードには限らない。前述したようにスクリプト形式でもよいし、ソースプログラムの形で供給され、コンピュータ120にインストールされた適切なコンパイラでオブジェクトコードに変換されるという流通形態もあり得る。
【0040】
典型的には、現代のコンピュータはコンピュータのオペレーティングシステム(OS)によって提供される一般的な機能を利用し、所望の目的にしたがって制御された態様で機能を達成する。したがって、OSまたはサードパーティから提供されうる一般的な機能を含まず、一般的な機能の実行順序の組み合わせのみを指定したプログラムであっても、そのプログラムが全体として所望の目的を達成する制御構造を有する限り、そのプログラムがこの開示の範囲に包含されることは明らかである。
【0041】
<フロー>
次に、実施の形態に係る情報処理装置1の動作について、
図2に基づいて説明する。
【0042】
図2は、実施の形態に係る情報処理方法の一例を示すフローチャートである。なお、情報処理方法は、情報処理装置1(コンピュータ120、具体的にはプロセッサ(CPU140))により実行されるため、
図2は、情報処理装置1の動作の一例を示すフローチャートでもある。
【0043】
<S101>
まず、ステップS101において、情報処理装置1は、第1制御因子を含む複数の制御因子のそれぞれについて設定された、第1水準値、第1水準値よりも大きい第2水準値および第2水準値よりも大きい第3水準値を含む複数の水準値に基づいて、目的変数を実験によって求めるための複数の制御因子のそれぞれの実験条件の組み合わせを示す第1テーブルを実験計画法によって作成する。実験計画法には古典的な直交計画法、中心複合計画法およびSpaceFilling計画法と目的に応じて多種の計画がある。直交計画法は交互作用に弱く、SpaceFilling計画法は実験回数が多くなる傾向にある。複雑なプロセスにおいては、交互作用も強く働き、実験またはシミュレーションに時間を要することが想定されるため、本実施の形態においては、第1テーブルの作成は、中心複合計画法に基づいて行われる。
【0044】
制御因子とは、制御可能な工程パラメータまたは計画パラメータであり、例えば、温度、湿度、圧力、速度等のパラメータである。水準値とは、制御因子に設定される値であり、例えば制御因子が温度の場合、水準値には、0℃、100℃、200℃といったものがある。例えば、半導体成膜プロセスにおけるチャンバーの温度を制御因子とした場合、目的変数は、半導体の膜厚となる。ステップS101において作成された第1テーブルの具体例については後述する
図5A等で説明する。
【0045】
なお、第1制御因子は、複数の制御因子のうちから、水準値の追加の対象として決定される制御因子であり、予め決められたものではない。
【0046】
<S102>
次いで、ステップS102において、情報処理装置1は、作成された第1テーブルに基づいて取得された目的変数を第1テーブルに記録する。例えば、情報処理装置1は、第1テーブルをもとにした実験もしくはシミュレーションによって取得された目的変数をコンピュータ120内に構築されたデータベース(以下単に「DB」と呼ぶ)の第1テーブルに追加する。目的変数が記録された第1テーブルの具体例については、後述する
図5B等で説明するが、目的変数を実験によって求めるための複数の制御因子のそれぞれの実験条件の組み合わせと、その際の出力である目的変数とで構成される。
【0047】
<S103>
次いで、ステップS103において、情報処理装置1は、目的変数が記録された第1テーブルを用いて、複数の制御因子について、目的変数に係る第1応答曲面を算出する。
【0048】
<S104>
次いで、ステップS104において、情報処理装置1は、第1制御因子について、算出された第1応答曲面に目的変数に係る目標値(以下、目的変数に係る目標値を目標値と呼ぶ)が含まれているか否かを判定する。これについて、
図3Aおよび
図3Bを用いて説明する。
【0049】
図3Aは、算出された第1応答曲面に目標値が含まれない場合の一例を説明するための図である。
【0050】
図3Bは、算出された第1応答曲面に目標値が含まれない場合の他の一例を説明するための図である。
【0051】
図3Aおよび
図3Bには、第1応答曲面が実線および破線で示されている。実線は、目的変数が記録された第1テーブルを用いて算出された第1応答曲面であり、破線は、目的変数が記録された第1テーブルから推測される第1応答曲面、言い換えると、算出された第1応答曲面から推測される第1応答曲面である。
【0052】
例えば、情報処理装置1が有するメモリには、最適点の設定が記録されており、情報処理装置1は、ステップS103において算出した第1応答曲面をもとに最適点候補を算出し、記録された最適点の設定と算出した最適点候補とを比較して複数の制御因子のうちから、このような最適点を実現するのに最も適した制御因子として第1制御因子を決定する。情報処理装置1は、第1制御因子について、算出された第1応答曲面に目標値が含まれているか否かを判断する。例えば、目標値は、第1応答曲面のピークであってもよいし、所定値であってもよい。
図3Aには、目標値が第1応答曲面のピークである場合における、目標値に対応する最適な水準値が示されている。
図3Bには、目標値が所定値である場合における、目標値に対応する最適な水準値が示されている。
図3Aおよび
図3Bのいずれについても、目標値は、算出された第1応答曲面(実線)に含まれていないことがわかる。算出された第1応答曲面に目標値が含まれている場合(ステップS104でYes)、初期の実験計画で目的とする実験結果が得られるため、本フローは終了する。算出された第1応答曲面に目標値が含まれていない場合(ステップS104でNo)、ステップS105へ移行する。なお、目標値は、第1応答曲面のピークに限らずボトムの場合もあり、また、所定値は0の場合もある。
【0053】
<S105>
次いで、ステップS105において、情報処理装置1は、第1制御因子について、算出された第1応答曲面に目標値が含まれていない場合に、第1制御因子について、設定された第1水準値、第2水準値および第3水準値とは異なる第4水準値を設定する。例えば、第1水準値を-1、第1水準値よりも大きい第2水準値を0、第2水準値よりも大きい第3水準値を1とする。
【0054】
情報処理装置1は、例えば、目標値に対応する水準値(推測された第1応答曲面において目標値に対応する水準値)が、第1水準値(-1)よりも小さく、目標値に対応する水準値と第1水準値(-1)との距離(差の絶対値)が第2水準値(0)と第1水準値(-1)との差(1)以上である場合には、第4水準値として目標値に対応する水準値よりも小さい値を設定する。例えば、目標値に対応する水準値が-2.5である場合、第4水準値は-2.5よりも小さい値(例えば-3)に設定される。この具体例について、後述する
図8Dでも説明する。
【0055】
情報処理装置1は、例えば、目標値に対応する水準値が、第1水準値(-1)よりも小さく、目標値に対応する水準値と第1水準値(-1)との距離が第2水準値(0)と第1水準値(-1)との差(1)未満である場合には、第4水準値として目標値に対応する水準値よりも小さい値を設定する。例えば、目標値に対応する水準値が-1.5である場合、第4水準値は-1.5よりも小さい値(例えば-2)に設定される。この具体例について、後述する
図7Dでも説明する。
【0056】
情報処理装置1は、例えば、目標値に対応する水準値が、第3水準値(1)よりも大きく、目標値に対応する水準値と第3水準値(1)との距離が第3水準値(1)と第2水準値(0)との差(1)以上である場合には、第4水準値として目標値に対応する水準値よりも大きい値を設定する。例えば、目標値に対応する水準値が2.5である場合、第4水準値は2.5よりも大きい値(例えば3)に設定される。この具体例について、後述する
図6Dでも説明する。
【0057】
情報処理装置1は、例えば、目標値に対応する水準値が、第3水準値(1)よりも大きく、目標値に対応する水準値と第3水準値(1)との距離が第3水準値(1)と第2水準値(0)との差(1)未満である場合には、第4水準値として目標値に対応する水準値よりも大きい値を設定する。例えば、目標値に対応する水準値が1.5である場合、第4水準値は1.5よりも大きい値(例えば2)に設定される。この具体例について、後述する
図5Dでも説明する。
【0058】
ここで、算出された第1応答曲面において、外挿領域での最適点候補を算出する場合は、外挿問題となり精度が保証されないため、モデル化で第4水準値を-2または2にした場合に最適点候補が-2以下または2以上の外挿領域に存在することとなり、再度拡張を試みる必要性にせまられるおそれがある。そこで、上記差を1でなく0.5として運用してもよい。
【0059】
なお、ここでは1つの第1制御因子について第4水準値が設定される例について説明するが、2つ以上の制御因子について第4水準値が設定されてもよい。
【0060】
ここで、中心複合計画の場合、初期計画として、各制御因子の第1水準値は-1、第2水準値は0、第3水準値は1(以下、設定される水準値を(-1、0、1)といった形で表現する場合がある)で設定されることが多く、この初期計画の水準値を最大限に活用することを想定して、第4水準値は、-3、-2、2および3のいずれかとし、最適点候補よりも外側の水準値を採用することとする。
【0061】
<S106>
次いで、ステップS106において、情報処理装置1は、初期実験計画における実験計画の精度を評価する。実験計画の精度を評価する指標は各種あるが、平均予測分散を用いると比較的良好な結果を得ることができる。初期実験計画における第1テーブルの平均予測分散を以降Vall_0と呼ぶこととする。
【0062】
<S107>
次いで、ステップS107において、情報処理装置1は、目的変数が記録された第1テーブルから、第1制御因子について設定された第1水準値、第2水準値および第3水準値のうちのいずれか一の水準値を含む実験条件の組み合わせを削除する。例えば、ステップS105において第1制御因子および第4水準値が決定されたことをもとに、初期実験計画の一部条件が削除される。
【0063】
情報処理装置1は、例えば、目標値に対応する水準値が、第1水準値(-1)よりも小さく、目標値に対応する水準値と第1水準値(-1)との距離が第2水準値(0)と第1水準値(-1)との差(1)以上である場合には、目的変数が記録された第1テーブルから、第1制御因子について一の水準値として第2水準値(0)を含む実験条件の組み合わせを削除する。例えば、目標値に対応する水準値が-2.5である場合、一の水準値は第2水準値(0)となる。この場合、第1制御因子に設定される水準値は、第4水準値(-3)、第1水準値(-1)および第3水準値(1)となり、元々第1水準値(-1)、第2水準値(0)および第3水準値(1)と水準値間の距離が1だったのが、2となり水準値間の距離が大きくなる(言い換えると水準値の設定間隔が荒くなる)。この具体例について、後述する
図8Cでも説明する。
【0064】
情報処理装置1は、例えば、目標値に対応する水準値が、第1水準値(-1)よりも小さく、目標値に対応する水準値と第1水準値(-1)との距離が第2水準値(0)と第1水準値(-1)との差(1)未満である場合には、目的変数が記録された第1テーブルから、第1制御因子について一の水準値として第3水準値(1)を含む実験条件の組み合わせを削除する。例えば、目標値に対応する水準値が-1.5である場合、一の水準値は第3水準値(1)となる。この場合、第1制御因子に設定される水準値は、第4水準値(-2)、第1水準値(-1)および第2水準値(0)となり、元々の第1水準値(-1)、第2水準値(0)および第3水準値(1)から全体的に水準値が-1シフトする。この具体例について、後述する
図7Cでも説明する。
【0065】
情報処理装置1は、例えば、目標値に対応する水準値が、第3水準値(1)よりも大きく、目標値に対応する水準値と第3水準値(1)との距離が第3水準値(1)と第2水準値(0)との差(1)以上である場合には、目的変数が記録された第1テーブルから、第1制御因子について一の水準値として第2水準値(0)を含む実験条件の組み合わせを削除する。例えば、目標値に対応する水準値が2.5である場合、一の水準値は第2水準値(0)となる。この場合、第1制御因子に設定される水準値は、第1水準値(-1)、第3水準値(1)および第4水準値(3)となり、元々第1水準値(-1)、第2水準値(0)および第3水準値(1)と水準値間の距離が1だったのが、2となり水準値間の距離が大きくなる。この具体例について、後述する
図6Cでも説明する。
【0066】
情報処理装置1は、例えば、目標値に対応する水準値が、第3水準値(1)よりも大きく、目標値に対応する水準値と第3水準値(1)との距離が第3水準値(1)と第2水準値(0)との差(1)未満である場合には、目的変数が記録された第1テーブルから、第1制御因子について一の水準値として第1水準値(-1)を含む実験条件の組み合わせを削除する。例えば、目標値に対応する水準値が1.5である場合、一の水準値は第1水準値(-1)となる。この場合、第1制御因子に設定される水準値は、第2水準値(0)、第3水準値(1)および第4水準値(2)、となり、元々の第1水準値(-1)、第2水準値(0)および第3水準値(1)から全体的に水準値が+1シフトする。この具体例について、後述する
図5Cでも説明する。
【0067】
<S108>
次いで、ステップS108において、情報処理装置1は、追加する計画数を設定する。例えば、追加する計画数としてステップ107で除外された計画数を設定すると、良好な傾向になることが多い。
【0068】
<S109>
次いで、ステップS109において、情報処理装置1は、目的変数が記録された第1テーブルから第1制御因子について一の水準値を含む実験条件の組み合わせが削除されたテーブルに対して、第1制御因子について設定された第4水準値を含み、かつ、一の水準値を含まない複数の水準値を含む実験条件の組み合わせを追加する。なお、追加する実験条件の組み合わせの内容の決定方法としては、D最適計画またはI最適計画など目的によって各種手法がある。I最適計画がすべての計画領域における予測分散を最小化しようとするのに対して、D最適計画は各計画点での予測分散を小さくすることに重点を置く。例えば、D最適計画で計画を決定する方が良好な結果が得られることが多いため、ここではD最適計画を採用する。
【0069】
<S110>
次いで、ステップS110において、情報処理装置1は、実験条件の組み合わせが追加された追加実験計画の平均予測分散を算出し、初期実験計画と同様に平均予測分散で追加実験計画の精度を評価する。追加実験計画の平均予測分散を以降Vall_ADDと呼ぶこととする。
【0070】
<S111>
次いで、ステップS111において、情報処理装置1は、Vall_0がVall_ADDを上回っているか否かを判定することで、追加実験計画の精度を評価する。ステップS111について
図4を用いて説明する。
【0071】
図4は、実験計画数の採用方法を説明するための図であり、具体的には、追加実験計画の精度が高精度となるときの実験計画数の採用方法を説明するための図である。
【0072】
図4に示すように、追加実験計画について計画数を増やしていくとVall_ADDは減少していき例えば計画数が35回でVall_0を下回ることがわかる。情報処理装置1は、初期実験計画の精度を示すVall_0を追加実験計画の精度を示すVall_ADDが下回った場合、すなわちVall_0>Vall_ADDになったとき(ステップS111でYes)、実験条件の組み合わせの追加を停止して、ステップS113へ移行する。また、Vall_0>Vall_ADDでない場合(ステップS111でNo)、ステップS112へ移行する。
【0073】
<S112>
情報処理装置1は、現在の追加計画数が所定計画数以上になった場合(ステップS112でNo)、このフローを終了する。例えば、所定計画数は第1テーブルの計画数(すなわち初期計画数)とすることが多い。すなわち、追加計画数が初期計画数を上回る場合、効率的に実験計画を設定することができていないため、このフローを終了する。情報処理装置1は、現在の追加計画数が所定計画数未満の場合(ステップS112でYes)、再度ステップS109を行って実験条件の組み合わせを追加する。なお、実験条件の組み合わせの追加は、1個ずつでなくてもよく、複数個を追加してもよい。
【0074】
<S113>
次いで、ステップS113において、情報処理装置1は、追加する実験の内容を確定し、複数の制御因子のそれぞれの実験条件の組み合わせを示す第2テーブルを実験計画法によって作成する。
【0075】
<S114>
次いで、ステップS114において、情報処理装置1は、作成された第2テーブルに基づいて取得された目的変数を第2テーブルに記録する。目的変数が記録された第2テーブルの具体例については、後述する
図5E等で説明する。
【0076】
<S115>
次いで、ステップS115において、情報処理装置1は、目的変数が記録された第2テーブルを用いて、複数の制御因子について、目的変数に係る第2応答曲面であって、目標値を含む第2応答曲面を算出する。
【0077】
<S116>
そして、ステップS116において、情報処理装置1は、第2応答曲面を出力する。
【0078】
<具体例>
次に、本開示について具体例を挙げて説明する。例えば、半導体成膜プロセスにおいて複数のチャンバーのそれぞれの温度を最適化する場合について説明する。以下で説明するX1、X2、X3、X4およびX5は、それぞれ制御因子であり、具体的にはチャンバーの温度である。例えば、水準値として、-3は60℃、-2は70℃、-1は80℃、0は90℃、1は100℃、2は110℃、3は120℃を示している。X5は、複数の制御因子のうちの第1制御因子に対応する。また、目的変数は、半導体の膜厚である。
【0079】
図5Aから
図5Gは、初期計画におけるX5の水準値(-1、0、1)を(0、1、2)に拡張するときの一例(第1例)説明するための図である。
【0080】
図5Aは、実験計画法によって作成された第1テーブルの第1例を示す表である。
【0081】
図5Bは、目的変数が記録された第1テーブルの第1例を示す表である。
【0082】
図5Cは、
図5Bに示される第1テーブルから、第1制御因子について一の水準値を含む実験条件の組み合わせが削除されたテーブルの第1例を示す表である。
【0083】
図5Dは、
図5Cに示されるテーブルに、第1制御因子について第4水準値を含み、かつ、一の水準値を含まない実験条件の組み合わせが追加されることで作成された第2テーブルの第1例を示す表である。
【0084】
図5Eは、目的変数が記録された第2テーブルの第1例を示す表である。
【0085】
図5Fは、比較例において、高精度な実験計画となるときの実験計画数を示す表である。
【0086】
図5Gは、第1例において、高精度な実験計画となるまでの実験計画数を示す表である。
【0087】
図5Aは、実験計画法(具体的には中心複合計画法)によって作成された第1テーブルを示し、この第1テーブルに目的変数が記録されることで、第1テーブルは
図5Bに示すテーブルとなる。第1テーブルの平均予測分散Vall_0は0.391である。例えば、第1テーブルでの応答曲面をもとにした最適値を、1から2の間のX5についての水準値で実現できそうな場合、X5について第1水準値-1を含む実験条件の組み合わせ、今回の場合No.2、3、5、13、17、19、20、22、24の9つの実験条件の組み合わせが
図5Bに示す第1テーブルから削除されて
図5Cに示すテーブルが作成される。
図5Cに示すテーブルに、X5について第4水準値2を含み、かつ、第1水準値-1を含まない実験条件の組み合わせの追加を行っていくことにより、
図5Dに示す第2テーブルが作成される。なお、
図5Dでは、X5について第4水準値2以外に第2水準値0を含む実験条件の組み合わせが追加されているが、水準値が大きな値2に偏らないようにするためである。そして、第2テーブルに目的変数が記録されて最終的には
図5Eのような第2テーブルが得られる。
【0088】
なお、
図5Fの比較例に示すように従来手法の場合は水準値を再設定し、一から実験計画を作成し直すため、従来手法の場合だと例えば合計54回の計画数となる。一方で
図5Gに示すように、本開示の手法の場合は、第1テーブルの計画数(初期計画数)である27回に、再計画として追加で9回の実験条件の組み合わせの追加(拡張)を行って合計36回の計画数で最適値が得られ(つまり、目標値を含む第2応答曲面を算出でき)、17回の実験条件の組み合わせの追加(拡張)を行うことでVall_ADDがVall_0(0.391)を下回り十分な実験計画精度が得られると確認できた。すなわち、本開示の手法の場合、合計44回の計画数となり、従来手法より10回少ない計画数で同様の結果を得ることができる(言い換えると、従来手法より10回少ない計画数で実験計画を高効率かつ高精度に設定することができる)。
【0089】
また、
図6Aから
図6Gは、初期計画における初期計画におけるX5の水準値(-1、0、1)を(-1、1、3)に拡張するときの一例(第2例)を説明するための図である。
【0090】
図6Aは、実験計画法によって作成された第1テーブルの第2例を示す表である。
【0091】
図6Bは、目的変数が記録された第1テーブルの第2例を示す表である。
【0092】
図6Cは、
図6Bに示される第1テーブルから、第1制御因子について一の水準値を含む実験条件の組み合わせが削除されたテーブルの第2例を示す表である。
【0093】
図6Dは、
図6Cに示されるテーブルに、第1制御因子について第4水準値を含み、かつ、一の水準値を含まない実験条件の組み合わせが追加されることで作成された第2テーブルの第2例を示す表である。
【0094】
図6Eは、目的変数が記録された第2テーブルの第2例を示す表である。
【0095】
図6Fは、比較例において、高精度な実験計画となるときの実験計画数を示す表である。
【0096】
図6Gは、第2例において、高精度な実験計画となるまでの実験計画数を示す表である。
【0097】
図6Aは、実験計画法(具体的には中心複合計画法)によって作成された第1テーブルを示し、この第1テーブルに目的変数が記録されることで、第1テーブルは
図6Bに示すテーブルとなる。第1テーブルの平均予測分散Vall_0は0.391である。例えば第1テーブルでの応答曲面をもとにした最適値を、2から3の間のX5についての水準値で実現できそうな場合、X5について第2水準値0を含む実験条件の組み合わせ、今回の場合、No.9、10、12、14、16、18、21、27の8つの実験条件の組み合わせが
図6Bに示す第1テーブルから削除されて
図6Cに示すテーブルが作成される。
図6Cに示すテーブルに、X5について第4水準値3を含み、かつ、第2水準値0を含まない実験条件の組み合わせの追加を行っていくことにより、
図6Dに示す第2テーブルが作成される。なお、
図6Dでは、X5について第4水準値3以外に第1水準値-1を含む実験条件の組み合わせが追加されているが、水準値が大きな値3に偏らないようにするためである。そして、第2テーブルに目的変数が記録されて最終的には
図6Eのような第2テーブルが得られる。
【0098】
なお、
図6Fの比較例に示すように従来手法の場合は水準値を再設定し、一から実験計画を作成し直すため、従来手法の場合だと例えば合計54回の計画数となる。一方で
図6Gに示すように、本開示の手法の場合は、第1テーブルの計画数(初期計画数)である27回に、再計画として追加で8回の実験条件の組み合わせの追加(拡張)を行って合計35回の計画数で最適値が得られ(つまり、目標値を含む第2応答曲面を算出でき)、16回の実験条件の組み合わせの追加(拡張)を行うことでVall_ADDがVall_0(0.391)を下回り十分な実験計画精度が得られると確認できた。すなわち、本開示の手法の場合、合計43回の計画数となり、従来手法より11回少ない計画数で同様の結果を得ることができる(言い換えると、従来手法より11回少ない計画数で実験計画を高効率かつ高精度に設定することができる)。
【0099】
また、
図7Aから
図7Gは、初期計画における初期計画におけるX5の水準値(-1、0、1)を(-2、-1、0)に拡張するときの一例(第3例)を説明するための図である。
【0100】
図7Aは、実験計画法によって作成された第1テーブルの第3例を示す表である。
【0101】
図7Bは、目的変数が記録された第1テーブルの第3例を示す表である。
【0102】
図7Cは、
図7Bに示される第1テーブルから、第1制御因子について一の水準値を含む実験条件の組み合わせが削除されたテーブルの第3例を示す表である。
【0103】
図7Dは、
図7Cに示されるテーブルに、第1制御因子について第4水準値を含み、かつ、一の水準値を含まない実験条件の組み合わせが追加されることで作成された第2テーブルの第3例を示す表である。
【0104】
図7Eは、目的変数が記録された第2テーブルの第3例を示す表である。
【0105】
図7Fは、比較例において、高精度な実験計画となるときの実験計画数を示す表である。
【0106】
図7Gは、第3例において、高精度な実験計画となるまでの実験計画数を示す表である。
【0107】
図7Aは、実験計画法(具体的には中心複合計画法)によって作成された第1テーブルを示し、この第1テーブルに目的変数が記録されることで、第1テーブルは
図7Bに示すテーブルとなる。第1テーブルの平均予測分散Vall_0は0.391である。例えば第1テーブルでの応答曲面をもとにした最適値を、-2から-1の間のX5についての水準値で実現できそうな場合、X5について第3水準値1を含む実験条件の組み合わせ、今回の場合、No.1、4、6、7、8、11、15、23、25、26の10個の実験条件の組み合わせが
図7Bに示す第1テーブルから削除されて
図7Cに示すテーブルが作成される。
図7Cに示すテーブルに、X5について第4水準値-2を含み、かつ、第3水準値1を含まない実験条件の組み合わせの追加を行っていくことにより、
図7Dに示す第2テーブルが作成される。なお、
図7Dでは、X5について第4水準値-2以外に第2水準値0を含む実験条件の組み合わせが追加されているが、水準値が小さな値-2に偏らないようにするためである。そして、第2テーブルに目的変数が記録されて最終的には
図7Eのような第2テーブルが得られる。
【0108】
なお、
図7Fの比較例に示すように従来手法の場合は水準値を再設定し、一から実験計画を作成し直すため、従来手法の場合だと例えば合計54回の計画数となる。一方で
図7Gに示すように、本開示の手法の場合は、第1テーブルの計画数(初期計画数)である27回に、再計画として追加で10回の実験条件の組み合わせの追加(拡張)を行って合計37回の計画数で最適値が得られ(つまり、目標値を含む第2応答曲面を算出でき)、20回の実験条件の組み合わせの追加(拡張)を行うことでVall_ADDがVall_0(0.391)を下回り十分な実験計画精度が得られると確認できた。本開示の手法の場合、合計47回の計画数となり、従来手法より7回少ない計画数で同様の結果を得ることができる(言い換えると、従来手法より7回少ない計画数で実験計画を高効率かつ高精度に設定することができる)。
【0109】
最後に、
図8Aから
図8Gは、初期計画における初期計画におけるX5の水準値(-1、0、1)の水準値を(-3、-1、1)に拡張するときの一例(第4例)を説明するための図である。
【0110】
図8Aは、実験計画法によって作成された第1テーブルの第4例を示す表である。
【0111】
図8Bは、目的変数が記録された第1テーブルの第4例を示す表である。
【0112】
図8Cは、
図8Bに示される第1テーブルから、第1制御因子について一の水準値を含む実験条件の組み合わせが削除されたテーブルの第4例を示す表である。
【0113】
図8Dは、
図8Cに示されるテーブルに、第1制御因子について第4水準値を含み、かつ、一の水準値を含まない実験条件の組み合わせが追加されることで作成された第2テーブルの第4例を示す表である。
【0114】
図8Eは、目的変数が記録された第2テーブルの第4例を示す表である。
【0115】
図8Fは、比較例において、高精度な実験計画となるときの実験計画数を示す表である。
【0116】
図8Gは、第4例において、高精度な実験計画となるまでの実験計画数を示す表である。
【0117】
図8Aは、実験計画法(具体的には中心複合計画法)によって作成された第1テーブルを示し、この第1テーブルに目的変数が記録されることで、第1テーブルは
図8Bに示すテーブルとなる。第1テーブルの平均予測分散Vall_0は0.391である。例えば第1テーブルでの応答曲面をもとにした最適値を、-3から-2の間のX5についての水準値で実現できそうな場合、X5について第2水準値0を含む実験条件の組み合わせ、今回の場合、No.9、10、12、14、16、18、21、27の8つの実験条件の組み合わせが
図8Bに示す第1テーブルから削除されて
図8Cに示すテーブルが作成される。
図8Cに示すテーブルに、X5について第4水準値-3を含み、かつ、第2水準値0を含まない実験条件の組み合わせの追加を行っていくことにより、
図8Dに示す第2テーブルが作成される。なお、
図8Dでは、X5について第4水準値-3以外に第3水準値1を含む実験条件の組み合わせが追加されているが、水準値が小さな値-3に偏らないようにするためである。そして、第2テーブルに目的変数が記録されて最終的には
図8Eのような第2テーブルが得られる。
【0118】
なお、
図8Fの比較例に示すように従来手法の場合は水準値を再設定し、一から実験計画を作成し直すため、従来手法の場合だと合計54回の計画数となる。一方で
図8Gに示すように、本開示の手法の場合は、第1テーブルの計画数(初期計画数)である27回に、再計画として追加で8回の実験条件の組み合わせの追加(拡張)を行って合計35回の計画数で最適値が得られ(つまり、目標値を含む第2応答曲面を算出でき)、20回の実験条件の追加(拡張)を行うことでVall_ADDがVall_0(0.391)を下回り十分な実験計画精度が得られると確認できた。すなわち、本開示の手法の場合、合計47回の計画数となり、従来手法より7回少ない計画で同様数の結果を得ることができる(言い換えると、従来手法より7回少ない計画数で実験計画を高効率かつ高精度に設定することができる)。
【0119】
このようなフローを経る過程で、効率的かつ高精度に追加実験点を設定することができる。
【0120】
なお、
図2で示すフローにおける全てのステップが必須というわけではなく、事前に計画および実験がなされている場合には、例えばステップS104から実行されてもよい。
【0121】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態に係る情報処理方法および情報処理装置1について説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0122】
例えば、情報処理方法におけるステップは、コンピュータ(コンピュータシステム)によって実行されてもよい。そして、本開示は、それらの方法に含まれるステップを、コンピュータに実行させるためのプログラムとして実現できる。さらに、本開示は、そのプログラムを記録したCD-ROM等である非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実現できる。
【0123】
例えば、本開示が、プログラム(ソフトウェア)で実現される場合には、コンピュータのCPU、メモリおよび入出力回路等のハードウェア資源を利用してプログラムが実行されることによって、各ステップが実行される。つまり、CPUがデータをメモリまたは入出力回路等から取得して演算したり、演算結果をメモリまたは入出力回路等に出力したりすることによって、各ステップが実行される。
【0124】
また、上記実施の形態に係る情報処理装置1に含まれる処理部の一部または全ては典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。
【0125】
また、集積回路化はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0126】
また、上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0127】
また、フローチャートにおける各ステップが実行される順序は、本開示を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよい。
【0128】
以上、一つまたは複数の態様に係る情報処理方法および情報処理装置1について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本開示は、一般電子部品からコンデンサをはじめ車載電池まで、あるいは、機械加工系プロセスから化学系プロセスまでものづくりのプロセス全般および制御プロセスに幅広く活用できる。
【符号の説明】
【0130】
1 情報処理装置
120 コンピュータ
122 モニタ
124 プリンタ
126 キーボード
128 マウス
140 CPU
142 バス
144 ROM
146 RAM
148 ハードディスクドライブ
150 DVDドライブ
152 半導体メモリポート
154 ネットワークインターフェイス
160 半導体メモリ
162 DVDROM
164 ネットワーク