(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】電解コンデンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/08 20060101AFI20240531BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20240531BHJP
H01G 9/012 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
H01G9/08 C
H01G9/00 290E
H01G9/012 303
H01G9/012 305
(21)【出願番号】P 2020557888
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2019046924
(87)【国際公開番号】W WO2020111278
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2018225594
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018225595
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 明成
(72)【発明者】
【氏名】大形 徳彦
【審査官】多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-131144(JP,U)
【文献】特開2006-344775(JP,A)
【文献】特開2001-291641(JP,A)
【文献】実開平03-061324(JP,U)
【文献】特開平07-022280(JP,A)
【文献】特開平09-092575(JP,A)
【文献】特開平10-149953(JP,A)
【文献】特開平11-288844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/08
H01G 9/00
H01G 9/012
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子と、
前記陽極部と電気的に接続される陽極リード端子と、
前記陰極部と電気的に接続される陰極リード端子と、
前記コンデンサ素子を覆う外装体と、を備え、
前記陽極部は、陽極体と、前記陽極体の植立面から前記陽極体の外部方向へ延出する陽極ワイヤと、を有し、
前記外装体は、前記植立面に対向する第1面と、前記第1面と一辺を共有し、かつ、互いに対向する第2面および第3面と、を有し、
前記陽極リード端子は、前記第1面から前記外装体の外部へと導出された露出部を備え、
前記第1面、前記第2面および前記第3面はそれぞれ平面部を有し、
前記第2面の面積は、前記第3面の面積より大きく、
前記第1面の平面部と前記第2面の平面部との成す角度θ1は90度未満であり、
前記第1面は、前記陽極ワイヤの延長上にあり、かつ、前記第1面の平面部から前記外装体の外側へと突出する突出部を備
え、
前記突出部は、前記第1面の平面部と、前記第1面の前記第2面側の第1辺を共有するとともに前記第2面の平面部との成す角度θ2が角度θ1より大きく90度以下である仮想の第1平面と、前記第3面の平面部と同一平面上にある仮想の第3平面と、により形成される空間内に形成されており、
前記第1面の平面部の法線方向から見て、前記突出部が前記露出部と重ならないように、前記露出部は前記突出部の周囲における前記第1面の平面部を覆っている、電解コンデンサ。
【請求項2】
前記突出部は、前記第1面の前記陽極ワイヤに対向する位置よりも前記第2面側から前記仮想の第3平面に向かって延在し、前記第1面の平面部から突出する突出面と、前記突出面と前記第1面の平面部とを繋ぐ複数の立上り面と、を備える、請求項
1に記載の電解コンデンサ。
【請求項3】
前記突出面は、前記仮想の第1平面と同一平面上にある、請求項
2に記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
前記露出部は、前記突出部の側部において前記第3面の側へ屈曲されており、
前記露出部の前記外装体の外側を向く面の一部は、前
記仮想の第1平面と同一平面上にある、請求項
1~3のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項5】
前記第1面は、前記平面部を複数有し、
前記第1面の複数の前記平面部のうち、少なくとも最も面積の大きな前記平面部と前記第2面の平面部との成す角度が90度未満である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の電解コンデンサ。
【請求項6】
前記陽極リード端子は、
前記第2面に沿う第1陽極リード部と、
前記第1陽極リード部から立ち上がり前記陽極ワイヤと接触する第2陽極リード部と、
前記第1陽極リード部から前記第1面に沿って延びてから、前記第3面に沿って延びて、少なくとも前記第3面において前記外装体から露出している第3陽極リード部と、を有し、
前記第1陽極リード部と前記第2陽極リード部との境界における第1屈曲部は、前記第1陽極リード部と前記第3陽極リード部との境界における第2屈曲部よりも、前記第2面の平面部に垂直な方向から見て前記コンデンサ素子側に位置する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の電解コンデンサ。
【請求項7】
前記第3陽極リード部は、前記第1陽極リード部から屈曲して前記第1面の平面部に沿って延びる第1領域と、前記第1領域から屈曲して前記第3面に沿って延びる第2領域と、を有し、
前記第3陽極リード部および前記外装体を第1面の平面部の法線方向から見たとき、前記第1領域が延在している部分と、前記第1領域が延在せず、前記外装体のみが存在する部分を有する、請求項
6に記載の電解コンデンサ。
【請求項8】
前記外装体のみが存在する部分は、前記突出部であり、
前記突出部の周囲に、前記第3陽極リード部が前記外装体から露出している、請求項
7に記載の電解コンデンサ。
【請求項9】
前記第3陽極リード部の前記第1領域および前記第2領域がともに前記外装体から露出している、請求項
7または
8に記載の電解コンデンサ。
【請求項10】
前記第3陽極リード部が、前記第2面に垂直な方向から見て、前記陰極部の前記第1面側の端部の位置を超えて前記第3面に沿って延在している、請求項
6~9のいずれか一項に記載の電解コンデンサ。
【請求項11】
陽極リード端子および陰極リード端子が接続されたコンデンサ素子を準備する準備工程と、
前記コンデンサ素子と、前記陽極リード端子の一部と、前記陰極リード端子の一部と、を封止する外装体を形成する封止工程と、
前記陽極リード端子の前記外装体から露出する露出部を屈曲させる屈曲工程と、を備え、
前記コンデンサ素子は陽極部および陰極部を備え、前記陽極部は、陽極体と、前記陽極体の植立面から前記陽極体の外部方向へ延出する陽極ワイヤと、を有し、
前記封止工程で形成される外装体は、前記陽極リード端子が露出する第1面と、前記第1面と一辺を共有し、かつ、互いに対向する第2面および第3面を有し、
前記第1面、前記第2面および前記第3面はそれぞれ平面部を有し、
前記第2面の面積は、前記第3面の面積より大きく、
前記第1面の平面部と前記第2面の平面部との成す角度θ1は90度未満であり、
前
記第1面は、
前記陽極ワイヤの延長上にあり、かつ、前記外装体の外側へと突出する突出部を備え、
前記突出部は、前記第1面の平面部と、前記第1面の前記第2面側の第1辺を共有するとともに前記第2面の平面部との成す角度θ2が角度θ1より大きく90度以下である仮想の第1平面と、前記第3面の平面部と同一平面上にある仮想の第3平面と、により形成される空間内に形成されており、
前記屈曲工程において、前記陽極リード端子の前記露出部は、前記突出部に沿って移動するローラによって屈曲される、電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサは、等価直列抵抗(ESR)が小さく、周波数特性が優れているため、様々な電子機器に搭載されている。電解コンデンサは、陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子と、陽極部と電気的に接続する陽極リード端子と、陰極部と電気的に接続する陰極リード端子とを備える。コンデンサ素子は、通常、外装体により封止されている。
【0003】
コンデンサ素子の封止は、例えば、コンデンサ素子および外装体の材料(未硬化の熱硬化性樹脂およびフィラー)を金型に収容し、トランスファー成型法、圧縮成型法等により行われる。このとき、金型の離型性を考慮して、外装体の側面はテーパ状に設計される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子機器の多機能化および小型化に伴い、電解コンデンサには、高容量かつ小型であることが求められる。しかし、例えば、直方体の外装体の側面をテーパ状にすると、直方体の外装体と比較してその体積が小さくなるため、封止できるコンデンサ素子も小さくなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の局面は、陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子と、前記陽極部と電気的に接続される陽極リード端子と、前記陰極部と電気的に接続される陰極リード端子と、前記コンデンサ素子を覆う外装体と、を備え、前記陽極部は、陽極体と、前記陽極体の植立面から前記陽極体の外部方向へ延出する陽極ワイヤと、を有し、前記外装体は、前記植立面に対向する第1面と、前記第1面と一辺を共有し、かつ、互いに対向する第2面および第3面と、を有し、前記第1面、前記第2面および前記第3面はそれぞれ平面部を有し、前記第2面の面積は、前記第3面の面積より大きく、前記第1面の平面部と前記第2面の平面部との成す角度θ1は90度未満であり、前記第1面は、前記陽極ワイヤの延長上にあり、かつ、前記第1面の平面部から前記外装体の外側へと突出する突出部を備える、電解コンデンサに関する。
【0007】
本発明の第二の局面は、陽極リード端子および陰極リード端子が接続されたコンデンサ素子を準備する準備工程と、前記コンデンサ素子と、前記陽極リード端子の一部と、前記陰極リード端子の一部と、を封止する外装体を形成する封止工程と、前記陽極リード端子の前記外装体から露出する露出部を屈曲させる屈曲工程と、を備え、前記封止工程で形成される外装体の第1面は、前記外装体の外側へと突出する突出部を備え、前記屈曲工程において、前記陽極リード端子の前記露出部は、前記突出部に沿って移動するローラによって屈曲される、電解コンデンサの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コンデンサ素子のサイズを大きくすることができる。
本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成および内容の両方に関し、本発明の他の目的および特徴と併せ、図面を照合した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る外装体を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る外装体の外観を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図2の外装体のA-A線における断面図である。
【
図4】
図2の外装体のA-A線における要部を拡大して示す断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサを模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図5の電解コンデンサのB-B線における断面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る電解コンデンサを模式的に示す斜視図である。
【
図8】
図7の電解コンデンサのC-C線における断面図である。
【
図9A】本発明の他の実施形態に係る電解コンデンサを模式的に示す斜視図である。
【
図9B】
図9Aの電解コンデンサのX
1-X
2線における断面図である。
【
図10A】
図9Aにおいて、外装体の記載を省略し、陽極リード端子および陰極リード端子のコンデンサ素子との接続の様子を示す斜視図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るコンデンサ素子を模式的に示す断面図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
【
図13A】本発明の一実施形態に係る製造方法の準備工程で準備された各リード端子が接合されたコンデンサ素子を模式的に示す断面図である。
【
図13B】本発明の一実施形態に係る製造方法の封止工程において、金型と金型に収容されたコンデンサ素子とを模式的に示す断面図である。
【
図13C】本発明の一実施形態に係る製造方法の封止工程において、第1金型が離型される様子を模式的に示す断面図である。
【
図13D】本発明の一実施形態に係る製造方法の屈曲工程において、陽極リード端子が屈曲される様子を模式的に示す断面図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの製造で用いる陽極リード端子(リードフレーム)の模式図である。
【
図15】従来の外装体を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
電解コンデンサの外寸法は、通常、厳密に定められている。そのため、高容量化するには、電解コンデンサの外寸法を変えることなく、封止されるコンデンサ素子を大きくすることが必要である。
【0011】
図15は、従来の外装体を模式的に示す断面図である。
コンデンサ素子210は、陽極体と電気的に接続し、かつ、陽極体の1つの面(植立面)から植立する陽極ワイヤ202を備える。陽極ワイヤ202を外装体211から露出させないために、陽極ワイヤ202と、陽極ワイヤ202の延長上にある外装体211の側面211Xとの間には、一定の長さL1が確保される。また、陽極ワイヤ202には、図示しない陽極リード端子が接合される。陽極リード端子の接合部分を確保するため、陽極ワイヤ202の植立している部分の長さL2も一定以上必要である。
【0012】
ところが、側面211Xがテーパ形状であると、陽極ワイヤ202が配置されている辺りの外装体211の、陽極ワイヤ202の長手方向Aにおける長さL211は、電解コンデンサの長手方向Aにおける設計値Lより少なくとも長さL3の分、短くなる。つまり、コンデンサ素子210のサイズは、上記長さL1および長さL2に加えて、短くなったL3も考慮して決定しなければならない。そのため、設計値Lに対して、コンデンサ素子210の長手方向Aにおける長さはさらに小さくなる。
【0013】
そこで、本実施形態では、外装体の陽極ワイヤの延長上にある一面(第1面)に突出部を設けて、テーパによって短くなったL3の少なくとも一部を補う。これにより、外装体の陽極ワイヤの長手方向Aにおける長さは、設計値Lに近づく。よって、上記長さL1および長さL2を確保しながら、コンデンサ素子の長手方向Aにおける長さを大きくすることができる。加えて、上記第1面には突出部が設けられるものの、第1面の他の部分はテーパ形状が維持されているため、金型の離型性も損なわれ難い。
【0014】
すなわち、本実施形態に係る電解コンデンサは、陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子と、陽極部と電気的に接続される陽極リード端子と、陰極部と電気的に接続される陰極リード端子と、コンデンサ素子を覆う外装体と、を備える。陽極部は、陽極体と、陽極体の植立面から陽極体の外部方向へ延出する陽極ワイヤと、を有する。外装体は、植立面に対向する第1面と、第1面と一辺を共有し、かつ、互いに対向する第2面および第3面と、を有する。第1面、第2面および第3面はそれぞれ平面部を有する。第2面の面積は、第3面の面積より大きい。第1面の平面部と第2面の平面部との成す角度θ1は90度未満である。第1面は、陽極ワイヤの延長上にあり、かつ、外装体の外側へと突出する突出部を備える。
【0015】
第2面の面積は、第3面の面積より大きく、例えば、第3の面積の102%以上であり、105%以上である。また、第2面の面積は、第3面の面積の120%以下であってよく、115%以下であってよい。なお、この場合の面積は、表面積ではなく、第2面または第3面の法線方向から見た場合の投影面積(通常、電解コンデンサの上面または下面から見た場合の投影面積)を指す。
【0016】
外装体の第1面~第3面は、通常、略直方体をなすように形成された外装体の外表面の6つの主面のうちの3つを意味する。外装体の外表面は、また、第2面および第3面のそれぞれと一辺を共有し且つ第1面と反対側に位置する第4面を有し得る。この場合、第1面~第4面は、通常、略直方体の互いに対向する2面を除く4つの主面を指す。これら第1面~第4面は平面部を有しており、平面部同士のなす角度により、外装体の2つの面同士がなす角度を定義できる。しかしながら、第1面~第4面は、平面部を有する限りにおいて、曲面形状の部分を有していたり、若干の凹凸を含んでいたり、および/または、複数の屈曲した平面により形成されていたりしてもよい。第1面~第4面は、複数の平面部を有していてもよい。その場合、面同士がなす角度は、複数の平面部のうち最も面積の大きな平面部を用いて定義される。例えば、
図2では、外装体の第1面は、複数の平面部11X、111xおよび112(および、11Xと112を連結する平面部)を有する。この場合、第1面の平面部と第2面の平面部との成す角度θ1は、第1面の最も面積の大きな平面部11Xと第2面の平面部11Yとのなす角により規定される。
【0017】
前述の通り、第1面と第2面とのなす角(第1面の平面部と第2面の平面部との成す角)は90度より小さい。
【0018】
第1面の平面部と第2面の平面部との成す角度θ1は、90度未満である限り特に限定されず、金型の離型性と封止されるコンデンサ素子のサイズとを考慮して適宜設定される。角度θ1は、例えば、89度以下であってよく、88度以下であってよい。角度θ1は、例えば、80度以上であってよく、83度以上であってよい。
【0019】
突出部は、例えば、第2面の平面部との成す角度θ2が角度θ1より大きく90度以下である仮想の第1平面と、第3面の平面部と同一平面上にある仮想の第3平面とを想定し、この仮想の第1平面と仮想の第3平面と実際の第1面の平面部との間の仮想の空間内に形成される。
【0020】
角度θ2は、角度θ1より大きく90度以下である限り特に限定されない。例えば、仮想の第1平面と仮想の第3平面との成す角度θ3が90度以上になるように、角度θ2を設定してよい。角度θ3が90度より小さくなると、金型の離型性が損なわれ易くなる。
【0021】
角度θ2は、具体的には、90度未満であってよく、89度以下であってよい。角度θ2は、80度より大きくてよく、83度より大きくてよい。
【0022】
本実施形態に係る電解コンデンサは、限定的でない別の実施形態において、陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子と、陽極部と電気的に接続する陽極リード端子と、陰極部と電気的に接続する陰極リード端子と、外装体と、を備える。外装体は、第1面と、第1面と一辺を共有し、かつ、互いに対向する第2面および第3面と、を有する。外装体は、陽極リード端子および陰極リード端子の一部を露出させた状態で、コンデンサ素子を覆っている。
【0023】
陽極リード端子は、第2面に沿う第1陽極リード部と、第1陽極リード部から立ち上がり陽極部と接触する第2陽極リード部と、第1陽極リード部から第1面に沿って延びてから、さらに第3面に沿って延びて、少なくとも第3面において外装体から露出する第3陽極リード部と、を有する。第1陽極リード部と第2陽極リード部との境界には第1屈曲部が、第1陽極リード部と第3陽極リード部との境界には第2屈曲部が、それぞれ形成され得る。第2面の平面部に垂直な方向から見て、第1屈曲部は、第2屈曲部よりもコンデンサ素子側に位置する。ここで、第1屈曲部が第2屈曲部よりもコンデンサ素子側に位置するとは、電解コンデンサを第2面の平面部に垂直な方向から見たとき、第1屈曲部からコンデンサ素子の陰極部までの距離が、第2屈曲部からコンデンサ素子の陰極部までの距離よりも短いことを意味する。
【0024】
陰極リード端子は、通常、第2面に沿って配置され、陰極部と電気的に接続する第1陰極リード部を有する。陰極リード端子は、さらに、第1陰極リード部から、第2面および第3面のそれぞれと一辺を共有し且つ第1面と反対側の外装体の外表面である第4面に沿って延びてから、第3面に沿って延びて、少なくとも第3面において外装体から露出する第2陰極リード部を、有していてもよい。
なお、陽極または陰極リード端子が第1~第4面またはこれらの平面部に沿って延びるとは、リード端子が各面に対して平行に、一定の離間距離を維持しながら延びる場合に限られず、例えば、各面に平行な方向から傾いた方向を延びる場合を含む。また、凹凸を有する面の場合、凹凸に沿ってリード端子が屈曲しながら延びることを意味するものではない。例えば、第3陽極リード部の第1面に沿って延びる部分は、仮想の第1平面に略平行な方向に延びていてもよい。
【0025】
陽極リード端子は、第1陽極リード部、第2陽極リード部、および、第3陽極リード部を一体にて有し得る。この場合、陽極リード端子は、折り曲げられて屈曲した状態となっており、また第2陽極リード部を介して陽極部との接続が行われる。また、第3陽極リード部の少なくとも一部は外装体から露出している。これにより、第3陽極リード部を介して外部基板との接続を行うことができる。
【0026】
第1陽極リード部は外装体の第2面に沿って配置され、第2陽極リード部は、第2面に沿う方向から陽極部に向かう方向に折り曲げられ、陽極部と接触する。これにより、陽極リード端子と陽極部との電気的接続が、第2陽極リード部によって行われ得る。なお、陽極部に向かう方向とは、通常、第1面に沿う方向、および/または、第2面に交差する方向であるが、第1面および第2面に対して斜めに傾いた方向であってもよい。
【0027】
陽極部と陽極リード端子との接続の方法として、陽極リードフレームに切れ目を入れ、陽極リードフレームの一部を立ち上げ、陽極部と接触させる方法が知られている(例えば、特開2001-126958号公報および特開2015-088718号公報を参照)。この場合、電解コンデンサの陽極と外部基板との電気的接続は、第2面側に設けられた第1陽極リード部を介して行われ、電解コンデンサの陰極と外部基板との電気的接続も、同じく第2面側に設けられた第1陰極リード部を介して行われている。この場合、陰極部と第1陰極リード部とを電気的に接続するため、陰極部の第2面側の外表面を第1陰極リード部と接続することが一般に行われる。
【0028】
この場合、陰極部の第1主面側を覆う外装体の厚みが薄いことから、第1陽極リード部と陰極部との絶縁を確保する必要上、第1陽極リード部を第1主面の陰極部に向かう側に延伸させ難く、第1陽極リード部の面積を広げ難い。この問題は、陽極リードフレームの一部を立ち上げて陽極部との接触に用いる構成を採用する場合に、立ち上げ部分の面積だけ、第1陽極リード部の面積が一層少なくなるため、顕著である。
【0029】
そこで、本実施形態に係る電解コンデンサでは、限定的でない一実施形態において、第2陽極リード部を立ち上げた後の陽極リード端子の残部を外装体の外表面に沿って折り曲げ、第2面の反対側の第3面に第3陽極リード部を配置する。これにより、電解コンデンサの陽極と外部基板との電気的接続を、第3陽極リード部を介して行うことができる。この場合、第3面に配置される第3陽極リード部の形状および面積は、陽極部と接触させる第2陽極リード部による制約を受けない。また、コンデンサ素子の陰極部の配置、形状および大きさにより制約を受けることもなく、任意に設定することができる。よって、外部基板との接続信頼性が向上する。第3陽極リード部を、第2面に垂直な方向から見て、陰極部の第1面側の端部の位置を超えて第3面に沿って延在させることも可能となる。
【0030】
より具体的には、例えば、第2陽極リード部は、陽極リード端子の第2陽極リード部の形成領域の輪郭線のうち、第1屈曲部を除く部分に切込みを入れ、第1屈曲部を軸として第2陽極リード部を折り曲げ、第1主面から直立するように立ち上げることで形成される。このとき、陽極リード端子は、第2陽極リード部を立ち上げたことに伴い、陽極リード端子が延在しない領域(開口)を第2面上に有し得る。さらに、第1屈曲部から離間した第2屈曲部を軸として、陽極リード端子を第2陽極リード部と同方向に、第1面に沿って折り曲げ、第3陽極リード部を形成する。第3陽極リード部は、さらに、所定の位置において、第1面から第3面に沿って折り曲げられる。
【0031】
第3陽極リード部は、例えば、第1陽極リード部から屈曲して第1面の平面部に沿う方向に延びる第1領域と、第1領域から屈曲して第3面に沿って延びる第2領域と、を有する。第3陽極リード部は、第2陽極リード部を屈曲形成した後の陽極リード端子の残部により構成されており、上記開口に対応して、第1面には、第3陽極リード部および外装体を第1面の法線方向(具体的には、第1面の平面部の法線方向)から見たとき、第1領域が延在している部分と、第1領域が延在せず、外装体のみが存在する部分(以下において、「第3領域」という)が存在し得る。
【0032】
第3領域は、第1面の平面部から外側へと突出する突出部であってもよい。この場合、第3陽極リード部の第1領域は、突出部の周囲に、外装体から露出して設けられることができる。
【0033】
例えば、陽極体と、陽極体の植立面から延出する陽極ワイヤと、を有する陽極部を用いて、陽極部を第2陽極リード部と接続させる場合、外装体の1面が植立面に対向し、陽極ワイヤは外装体の内部において第1面に向かって延びる。このとき、陽極リード端子が延在していない第3領域に向かって延びるように、陽極ワイヤを配置することができる。
【0034】
これにより、陽極ワイヤを外装体の第1面の近傍にまで、突出部に向かって延在させることができる。陽極ワイヤの端部が突出部の内部にまで存在するようにしてもよい。陽極体から露出して延在する陽極ワイヤの長さを長くすることで、陽極部(陽極ワイヤ)と陽極リード端子(第2陽極リード部)との接続信頼性を高めることができる。また、陰極部を第1面側により近接して配置することで、コンデンサ素子の体積を外装体内で最大限に大きくすることができ、高容量の電解コンデンサを容易に得ることができる。
【0035】
第3陽極リード部は、少なくとも第3面に沿う第2領域において、外装体から露出していればよい。さらに、第2領域に加え、第1面に沿う第1領域も、外装体から露出していてもよい。第2領域と外部基板との電気的接続を半田付けで行う場合には、半田は第1領域にも付着することができ、接続信頼性を高められる。
【0036】
以下、本発明の実施形態に係る電解コンデンサの構成について、図面を参照しながら説明する。本実施形態では、陽極部が、陽極体と陽極体から延出する陽極ワイヤとを有し、陽極ワイヤが陽極リード端子に接合されている場合を例示するが、これに限定されるものではない。
【0037】
図1は、本実施形態に係る外装体を模式的に示す断面図である。ただし、便宜上、突出部を省略している。
図1には、外装体11の第2面の平面部11Yとの成す角度θ2が角度θ1より大きく90度以下である仮想の第1平面11Xvと、第3面の平面部11Zと同一平面上にある仮想の第3平面11Zvとが示されている。突出部は、例えば、この仮想の第1平面11Xvと、実際の第1面の平面部11Xと、仮想の第3平面11Zvと、の間の仮想空間R内に形成される。ただし、突出部は、少なくとも陽極部(陽極ワイヤ2)の延長上に設けられる。仮想空間R内には、上記突出部(以下、第1突出部と称す。)に加えて、陽極ワイヤ2に対向しない突出部(第2突出部)が配置されてもよい。
【0038】
第1突出部は、例えば、第1面の陽極ワイヤに対向する位置よりも第2面側から、少なくとも陽極ワイヤに対向する位置よりも第3面側まで形成される。特に、第1突出部は、第1面の第2面側の辺(第1辺)あるいは第1辺の近傍から、陽極ワイヤに対向する位置よりも第3面側まで形成されてよい。この場合、外装体を第2面側から見たとき、第1突出部を含む外装体の外形がシンプルになって、金型の離型性はさらに損なわれ難い。
【0039】
このような第1突出部は、例えば、第1辺あるいは第1辺の近傍から仮想の第3面に向かって延在する突出面と、突出面と第1面とを繋ぐ複数の立上り面と、を備える。この場合、突出面と第2面の平面部との成す角度θ4(
図4参照)は、角度θ1より大きく、角度θ2以下である。角度θ4は角度θ2と同じであってよい。この場合、突出面は、仮想の第1平面と同一平面上にある。
【0040】
角度θ2および角度θ4は、ともに89度~90度であってよい。これにより、外装体の第1突出部を含む上記長手方向Aの長さ(L11)を、金型の離型性を損なわない範囲で最大にできる。よって、コンデンサ素子の長手方向Aの長さを最大にすることができる。
【0041】
第1突出部は、上記仮想の第3平面に到達するまで延出してもよい。第1突出部の第2面の法線方向(以下、外装体の厚み方向と称す場合がある。)における長さT1(
図4参照)は、例えば、第2面と第3面との間の外装体の厚み方向における長さTの60%以上、100%以下であってよく、65%以上、80%以下であってよい。
【0042】
第1突出部の第1辺に沿う方向(以下、幅方向と称す場合がある。)における平均の長さW1(
図2参照)は、第1面の幅方向における長さWより短くてよい。長さW1の長さWに対する割合(W1/W)は、例えば、60%以下であってよく、40%以下であってよい。また、W1/Wは、10%以上であってよく、25%以上であってよい。第1突出部の長さW1は、第1突出部を第1面の法線方向から見て、任意の3箇所の幅方向における長さを平均化することにより算出される。第1面の幅方向の長さWも同様にして算出される。
【0043】
本発明の一実施形態に係る外装体について、図面を参照しながら説明するが、これに限定されるものではない。
図2は、一実施形態に係る外装体の外観を模式的に示す斜視図である。
図3は、
図2の外装体のA-A線における断面図である。
図4は、
図2の外装体のA-A線における要部を拡大して示す断面図である。
【0044】
本実施形態に係る電解コンデンサは、陽極部および陰極部を備えるコンデンサ素子10と、陽極部と電気的に接続される陽極リード端子(図示せず)と、陰極部と電気的に接続される陰極リード端子(図示せず)と、コンデンサ素子10を覆う外装体11と、を備える。陽極部は、陽極体と、陽極体の植立面1Xから延出する陽極ワイヤ2と、を有する。
【0045】
外装体11は、平面部11Xを有し、植立面1Xに対向する第1面と、第1面と一辺を共有し、かつ、互いに対向する第2面および第3面と、を有する。第2面および第3面は、それぞれ、平面部11Yおよび11Zを有する。第2面の平面部11Yの面積は、第3面の平面部11Zの面積の約108%であり、第1面の平面部11Xと第2面の平面部11Yとの成す角度θ1は約87度である。
【0046】
陽極ワイヤ2は、植立面1Xから陽極体の内部に埋設される第一部分(図示せず)と、植立面1Xから外装体11の第1面の平面部11Xに向かって延出する第二部分2bと、を有する。
【0047】
第1面には、陽極ワイヤの第二部分2bの延長上にあり、かつ、外装体11の外側へと突出する第1突出部111が形成されている。第1突出部111は、平面部11Xと、仮想の第1平面11Xvと、仮想の第3平面11Zvと、により形成される仮想空間内に形成されている。仮想の第1平面11Xvと第2面の平面部11Yとの成す角度θ2は約89度であり、仮想の第1平面11Xvと仮想の第3平面11Zvとの成す角度θ3は約91度である。
【0048】
第1突出部111は、突出面111xと、突出面111xと平面部11Xとを繋ぐ複数の立上り面(111yおよび111z)と、を備える。突出面111xは、第1面の平面部11Xの第2面(平面部11Y)側の第1辺11aの近傍であって、陽極ワイヤの第二部分2bに対向する位置よりも第2面側から、第1面(平面部11X)の陽極ワイヤの第二部分2bの延長線と交わる部分を覆う位置まで、仮想の第3面11Zvに向かって延在している。図示例では、2つの立上り面111yおよび111zが示されているが、第1突出部111は、立上り面111yに相対する立上り面をさらに備えている。
【0049】
突出面111xと第2面の平面部11Yとの成す角度θ4は約89度であり、角度θ1より大きく、上記角度θ2と同じである。つまり、突出面111xは、仮想の第1平面11Xvと同一平面上にある。
【0050】
第1突出部111の外装体11の厚み方向における長さT1は、第2面11Yと第3面11Zとの間の当該厚み方向における長さTの約71%である。第1面の平面部11Xの幅方向における長さWに対する第1突出部111の幅方向における平均の長さW1の割合(W1/W)は、約32%である。第1面の平面部11Xをその法線方向から見たとき、第1面全体の面積Sに対する第1突出部111の面積S1の割合(S1/S)は、約23%である。
【0051】
本実施形態では、外装体11の第二部分2bの延長上における長手方向Aの長さL11が、金型の離型性を損なわない範囲で最大値になっている。そのため、第二部分2bと外装体11の第1面との間に必要な長さL1と、第二部分2bと陽極リード端子との接合のために必要な第二部分2bの長さL2とを確保しながら、コンデンサ素子10の長手方向Aにおける長さを最大値にまで大きくすることができる。
【0052】
加えて、第1突出部111は第1面の一部に配置されており、第1面の他の部分はテーパを維持しているため、外装体11を形成する際に使用される金型の離型性も損なわれ難い。
【0053】
図2から
図4に示す外装体11は、第1突出部111に加えて、第1突出部以外の突出部(第2突出部112)を備えている。図示例における第2突出部112は、上記第1辺11aに沿って帯状に形成されている。このような第2突出部112は、金型の離型性の向上に貢献する。
【0054】
陽極ワイヤに接合された陽極リード端子は、外装体の第1面から導出されてもよい。導出された陽極リード端子は屈曲されて、例えば、外装体の第3面の一部を覆う。このとき、電解コンデンサは、外装体の第3面を電解コンデンサが搭載される電子機器に対向させて、当該電子機器に搭載される。
【0055】
陽極リード端子の外装体から導出された露出部は、上記仮想の第1平面に沿って屈曲されてよい。さらに、露出部は、第1突出部と重複しないように屈曲されてよい。この場合、電解コンデンサの外寸法が、外装体より大きくなることが抑制され易くなる。その結果、外装体を大きくすることができて、コンデンサ素子のサイズを大きくすることができる。
【0056】
図5は、本実施形態に係る電解コンデンサの一例を模式的に示す斜視図である。
図6は、
図6の電解コンデンサのB-B線における断面図である。
図5および
図6に示す電解コンデンサは、
図2から
図4に示した外装体を備えている。
【0057】
陽極リード端子13は、第1面の平面部11Xから、外装体11の外部へと導出されている。平面部11Xから導出された陽極リード端子13は、その外側を向く面(外面)13Xが仮想の第1平面11Xv(
図4参照)に沿うように屈曲された後、外装体11の第3面の平面部11Zに沿って屈曲されている。
【0058】
このとき、陽極リード端子13の外装体11から導出された部分(露出部)は、第1突出部111と重複していない。さらに、突出面と陽極リード端子の外面13Xとは、いずれも仮想の第1平面と同一平面上にある。そのため、電解コンデンサ20の外寸法は外装体11より大きくなり難い。言い換えれば、外装体11に第1突出部111が形成されていて、かつ、陽極リード端子13が外装体11の周囲に配置される場合であっても、電解コンデンサ20の外寸法が大きくなるのを抑制できる。よって、コンデンサ素子10のサイズを大きくすることができる。
【0059】
陰極リード端子14も同様に、外装体11の第1面の平面部11Xに対向する面から、外装体11の外部に導出された後、屈曲されて、第3面上に配置される。陰極リード端子14は、コンデンサ素子10の陰極部と、例えば図示しない導電性接着材により接合されている。
【0060】
図示例において、第1突出部111は、陽極ワイヤ2の第二部分2bに対応するように、外装体11の第1面の平面部11Xの幅方向における略中央に配置されている。陽極リード端子13は、この第1突出部111を回避するように、第1面11Xの2箇所から外部に導出されている。その後、2本の帯状の陽極リード端子13は、仮想の第1面11Xv上の第3面11Z側の領域において連結している。
【0061】
このように、陽極リード端子13の露出部に、第1突出部111の立上り面の周囲を取り囲むような開口を形成してもよい。第1突出部111がこの開口に収容されることにより、電解コンデンサ20の外寸法の拡大が抑制される。さらに、第3面上に配置されている陽極リード端子13の幅方向の長さが、外装体11から導出された地点より大きくなることにより、電気抵抗が小さくなるとともに、陽極リード端子13と図示しない電子機器との接合面積が広がる。よって、接続信頼性が向上する。
【0062】
第1突出部の形状、陽極リード端子の形状および配置はこれに限定されない。
図7は、他の実施形態に係る電解コンデンサを模式的に示す斜視図である。
図8は、
図7の電解コンデンサのC-C線における断面図である。
【0063】
第1突出部111は、突出面111xと、突出面111xと第1面の平面部11Xとを繋ぐ複数の立上り面(111yおよび111z)と、を備える。突出面111xは、第1辺11aの一部であって、その中央近傍から延出した後、幅方向の長さを一定に維持しながら、第1面(平面部11X)の陽極ワイヤの第二部分2bの延長線と交わる部分を覆う位置まで、仮想の第3平面11Zvに向かって延在している。外装体11は、第2突出部を備えない。これら以外、
図7および
図8に示す外装体は、
図2から
図4に示された外装体と同様の構成を有する。
【0064】
陽極リード端子13は、第2面から、外装体11の外部へと導出されている。第2面から導出された陽極リード端子13は、そのまま第2面上に配置される。この場合も、陽極リード端子13は第1突出部111と重複しないため、電解コンデンサ20の外寸法は外装体11より大きくなり難い。よって、コンデンサ素子10のサイズを大きくすることができる。
【0065】
陰極リード端子14も同様に、第2面から外装体11の外部に導出されて、そのまま第2面上に配置されてよい。陰極リード端子14は、コンデンサ素子10の陰極部と、例えば導電性接着材8により接合されている。導電性接着材8は、例えば後述する熱硬化性樹脂と炭素粒子や金属粒子との混合物である。
【0066】
本発明の一実施形態に係る電解コンデンサについて、特に陽極リード端子および陰極リード端子の形態について図面を参照して詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。
図9Aは、本発明の一実施形態に係る電解コンデンサ100を模式的に示す斜視図である。
図9Bは、
図9Aにおける電解コンデンサ100のX
1-X
2線における断面図である。
図10Aおよび
図10Bは、それぞれ、
図9Aおよび
図9Bにおいて、外装体70を省略し、陽極リード端子50および陰極リード端子60のコンデンサ素子10との接続の様子を示す図である。
図10Bは、
図10Aにおける電解コンデンサのY
1-Y
2線における断面図である。
【0067】
電解コンデンサ100は、陽極部6および陰極部7を有するコンデンサ素子10と、陽極部6と電気的に接続する陽極リード端子(陽極リードフレーム)50と、陰極部7と電気的に接続する陰極リード端子(陰極リードフレーム)60と、外装体70と、を備える。外装体70は、陽極リード端子50および陰極リード端子60の一部を露出させた状態で、コンデンサ素子10を覆っている。陽極部6は、陽極体1と陽極体1から延出する陽極ワイヤ2とを有し、陽極ワイヤ2は陽極リード端子50に接合されている。
【0068】
外装体70の外表面は、第1面A1と、第1面A1と一辺を共有する第2面A2と、第1面A1と一辺を共有する面であって且つ第2面A2の反対側に位置する第3面A3と、第2面A1および第3面A3のそれぞれと一辺を共有する第4面A4を有する。第4面A4は、第1面A1の反対側に位置する(
図9B参照)。
【0069】
陽極リード端子50は、第1陽極リード部51、第2陽極リード部52、および、第3陽極リード部53を有する。第3陽極リード部53は、さらに、第1面A1に沿う方向(より具体的に、仮想の第1平面に沿う方向)に延びる第1領域53aと、第1領域53aから屈曲して第3面A3に沿って延びる第2領域53bと、を有している(
図10A、
図10B参照)。
【0070】
図10Aに示すように、陽極リード端子50は、第1屈曲部B1および第2屈曲部B2において、第1主面A1から折り曲げられている。陽極リードフレーム50の一部は、第1屈曲部B1において陽極ワイヤ2に向かう方向に折り曲げられ第2陽極リード部52を構成する。また、陽極リード端子50の別の一部は、第2屈曲部B2において第1面A1に沿って折り曲げられ第3陽極リード部53を構成する。第2面A2に沿う陽極リードフレーム50の残部は、第1陽極リード部51を構成する。第2陽極リード部52は、陽極ワイヤ2と接続される。
【0071】
本実施形態では、
図9Bに示すように、第3陽極リード部53の全部が外装体70から露出しており、第3陽極リード部53は、第1領域53aにおいて、第1面A1を覆うように第2屈曲部B2から第1面A1に沿って延伸した後、第1面A3と第3面A3の境界の近傍で第3面A3に沿う方向に折り曲げられ、第2領域53bにおいて、第3面A3を覆うように第3面A3に沿って延伸している。
【0072】
第1屈曲部B1は、第2屈曲部B2よりもコンデンサ素子10側に位置する。すなわち、第2陽極リード部52は、第3陽極リード部53よりもコンデンサ素子の陰極部に近い位置で折り曲げられている。これに起因して、
図10Aに示すように、陽極リード端子50は、第1面側に開口が形成されている。また、外装体70から露出する第1領域53aは、第1面の全面を覆っておらず、陽極リード端子50(第3陽極リード部53)が露出していない領域が、上記開口に対応する第1面上の領域(第3領域)に存在する。
【0073】
図9Aに示すように、上記開口に対応する第1面上の領域には、突出部(第1突出部)71が設けられ、突出部71を囲むように第1領域53aが延在している。陽極ワイヤ2が、突出部71に向かって延在している(
図10A参照。但し、突出部71は
図10Aにおいて図示せず)。
【0074】
陰極リード端子は、第1陰極リード部61、および、第2陰極リード部62を有する。陰極リード端子60の一部が第2面A2から第4面A4に沿って折り曲げられ、折り曲げられた部分が第1陰極リード部61を構成し、残部が第2陰極リード部62を構成する。第1陰極リード部61は、第2面A2側において、図示しない導電性接着剤(例えば、銀ペースト)を介して、コンデンサ素子10の陰極部と電気的に接続されている。第2陰極リード部62は、さらに、第4面A4に沿う方向に延びる第1領域62aと、第1領域62aから屈曲して第3面A3に沿って延びる第2領域62bと、を有する。
図10Bに示すように、第1領域62aおよび第2領域62bを含む第2陰極リード部62の全部が外装体70から露出している。
【0075】
図10Aの例では、陽極リード端子50と同様、陰極リード端子60においても第4面A4側に開口を形成している。外装体70から露出する陰極リード端子60の第1領域62aは、第4面A4の全面を覆っておらず、陰極リード端子60(第2陰極リード部62)が露出していない領域が、第4面の上記開口に対応する領域に存在する。上記開口に対応する第4面上の領域には、突出部72が設けられ、突出部72を囲むように第1領域62aが形成されている。
【0076】
陰極リード端子60と陰極部との電気的接続が行われる第2面A2からコンデンサ素子10までの距離(すなわち、陰極部の第2面A2側を覆う外装体の厚み)は、通常、外装体の第3面A3からコンデンサ素子10までの距離(すなわち、陰極部の第3主面A3側を覆う外装体の厚み)よりも小さい。このため、陰極部と陽極リード端子50との絶縁を確保する観点から、
図10Bに示す第1陽極リード部51の端部位置L
1と、コンデンサ素子の陰極部の第1面側の端部位置L
2との間に一定の離間距離を設ける必要が生じる。加えて、本実施形態では、第2陽極リード部52を設けたことにより第1陽極リード部51の面積が減少している。このため、第1陽極リード部51の面積が第2陽極リード部および陰極部の配置により制限され、外部基板との接続のためのランド面積を拡大するのに工夫を要した。
【0077】
陰極部と陽極リード端子50との絶縁を確保する方法として、第1陰極リード部61を外装体70内で屈曲させることで、陰極部の第1面A1側を覆う外装体の厚みを厚くすることも考えられるが、外装体の厚みを厚くする分、コンデンサ素子が占める体積が減少し、容量が低下してしまう。
【0078】
しかしながら、本実施形態に係る電解コンデンサ100では、電解コンデンサと外部基板との電気的接続は、陰極リード端子60と陰極部との電気的接続が行われる第2面A1とは反対側の第3面A3で行われる。このため、第3陽極リード部53の形状および面積は、陰極部の配置に依存せず、任意に設定できる。
図10Bに示すように、第3陽極リード部53の端部位置L
3を、L
2を超えて陰極部と重なる位置とすることも可能である。これにより、容量の低下を伴うことなく、第3陽極リード部53の面積を拡大することができ、且つ、外部基板との接続信頼性を高めることができる。
【0079】
<コンデンサ素子>
本実施形態に係るコンデンサ素子について、電解質として固体電解質層を備える場合を例に挙げて、詳細に説明する。
図11は、本実施形態に係るコンデンサ素子の一例を模式的に示す断面図である。
【0080】
コンデンサ素子10は、陽極部6および陰極部7を備えている。陽極部6は、誘電体層3を備える陽極体1と陽極ワイヤ2とを有する。陰極部7は、誘電体層3上に形成された固体電解質層4と、固体電解質層4の表面を覆う陰極層5(カーボン層5aおよび金属ペースト層5b)とを有する。陽極ワイヤ2は、陽極体1の一面(植立面)から陽極体1の内部へ埋設された第一部分2aと、陽極体1の上記一面から延出した第二部分2bと、を有する。
【0081】
(陽極部)
陽極部は、例えば、陽極体と、陽極体の一面から延出して陽極リード端子と電気的に接続される陽極ワイヤと、を有する。
陽極体は、例えば、金属粒子を焼結して得られる直方体の多孔質焼結体である。上記金属粒子として、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)などの弁作用金属の粒子が用いられる。陽極体には、1種または2種以上の金属粒子が用いられる。金属粒子は、2種以上の金属からなる合金であってもよい。例えば、弁作用金属と、ケイ素、バナジウム、ホウ素等とを含む合金を用いることができる。また、弁作用金属と窒素等の典型元素とを含む化合物を用いてもよい。弁作用金属の合金は、弁作用金属を主成分とし、例えば、弁作用金属を50原子%以上含む。
【0082】
陽極ワイヤは、導電性材料から構成されている。陽極ワイヤの材料は特に限定されず、例えば、上記弁作用金属の他、銅、アルミニウム、アルミニウム合金等が挙げられる。陽極体および陽極ワイヤを構成する材料は、同種であってもよいし、異種であってもよい。陽極ワイヤの断面形状は特に限定されず、円形、トラック形(互いに平行な直線とこれら直線の端部同士を繋ぐ2本の曲線とからなる形状)、楕円形、矩形、多角形等が挙げられる。
【0083】
陽極部は、例えば、第一部分を上記金属粒子の粉体中に埋め込んだ状態で直方体状に加圧成形し、焼結することにより作製される。これにより、陽極体の一面から、陽極ワイヤの第二部分が植立するように引き出される。第二部分は、溶接等により、陽極リード端子と接合されて、陽極ワイヤと陽極リード端子とが電気的に接続する。溶接の方法は特に限定されず、抵抗溶接、レーザ溶接等が挙げられる。
【0084】
陽極体の表面には、誘電体層が形成されている。誘電体層は、例えば、金属酸化物から構成されている。陽極体の表面に金属酸化物を含む層を形成する方法として、例えば、化成液中に陽極体を浸漬して陽極体の表面を陽極酸化する方法や、陽極体を、酸素を含む雰囲気下で加熱する方法が挙げられる。誘電体層は、上記金属酸化物を含む層に限定されず、絶縁性を有していればよい。
【0085】
(陰極部)
陰極部は、誘電体層上に形成された固体電解質層と、固体電解質層を覆う陰極層とを有している。
固体電解質層は、誘電体層の少なくとも一部を覆うように形成されていればよい。固体電解質層には、例えば、マンガン化合物や導電性高分子が用いられる。導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリチオフェンビニレン、ポリフルオレン、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルフェノール、ポリピリジン、あるいは、これらの高分子の誘導体などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。また、導電性高分子は、2種以上のモノマーの共重合体でもよい。導電性に優れる点で、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールであってもよい。特に、撥水性に優れる点で、ポリピロールであってもよい。
【0086】
上記導電性高分子を含む固体電解質層は、例えば、原料モノマーを誘電体層上で重合することにより、形成される。あるいは、上記導電性高分子を含んだ液を誘電体層に塗布することにより形成される。固体電解質層は、1層または2層以上の固体電解質層から構成されている。固体電解質層が2層以上から構成されている場合、各層に用いられる導電性高分子の組成や形成方法(重合方法)等は異なっていてもよい。
【0087】
なお、本明細書では、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリンなどは、それぞれ、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリンなどを基本骨格とする高分子を意味する。したがって、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリンなどには、それぞれの誘導体も含まれ得る。例えば、ポリチオフェンには、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)などが含まれる。
【0088】
導電性高分子を形成するための重合液、導電性高分子の溶液または分散液には、導電性高分子の導電性を向上させるために、様々なドーパントを添加してもよい。ドーパントは、特に限定されないが、1,5-ナフタレンジスルホン酸、1,6-ナフタレンジスルホン酸、1-オクタンスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、2,6-ナフタレンジスルホン酸、2,7-ナフタレンジスルホン酸、2-メチル-5-イソプロピルベンゼンスルホン酸、4-オクチルベンゼンスルホン酸、4-ニトロトルエン-2-スルホン酸、m-ニトロベンゼンスルホン酸、n-オクチルスルホン酸、n-ブタンスルホン酸、n-ヘキサンスルホン酸、o-ニトロベンゼンスルホン酸、p-エチルベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ハイドロオキシベンゼンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、メタンスルホン酸、および、これらの誘導体などが挙げられる。誘導体としては、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩などの金属塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩などのアンモニウム塩、ピペリジウム塩、ピロリジウム塩、ピロリニウム塩などが挙げられる。
【0089】
導電性高分子が、粒子の状態で分散媒に分散している場合、その粒子の平均粒径D50は、例えば0.01μm以上、0.5μm以下である。粒子の平均粒径D50がこの範囲であれば、陽極体の内部にまで粒子が侵入し易くなる。
【0090】
陰極層は、例えば、固体電解質層を覆うように形成されたカーボン層と、カーボン層の表面に形成された金属ペースト層と、を有している。カーボン層は、黒鉛等の導電性炭素材料と樹脂を含む。金属ペースト層は、例えば、金属粒子(例えば、銀)と樹脂とを含む。なお、陰極層の構成は、この構成に限定されない。陰極層の構成は、集電機能を有する構成であればよい。
【0091】
<陽極リード端子>
陽極リード端子の一端は、導電性接着材やはんだ、あるいは抵抗溶接やレーザ溶接により、陽極ワイヤに接合される。陽極リード端子の他方の端部は、外装体から外部へと導出されている。陽極リード端子の露出した部分の一部は、陰極リード端子とともに外装体のいずれかの面に配置されている。
【0092】
陽極リード端子の材質は、電気化学的および化学的に安定であり、導電性を有するものであれば特に限定されない。陽極リード端子は、例えば銅等の金属であってもよいし、非金属であってもよい。その形状は平板状であれば、特に限定されない。陽極リード端子の厚み(陽極リード端子の主面間の長さ)は、低背化の観点から、25μm以上、200μm以下であってよく、25μm以上、100μm以下であってよい。
【0093】
陽極リード端子は、導電性接着材やはんだにより、陽極ワイヤに接合されてもよいし、抵抗溶接やレーザ溶接により、陽極ワイヤに接合されてもよい。導電性接着材は、例えば後述する熱硬化性樹脂と炭素粒子や金属粒子との混合物である。
【0094】
<陰極リード端子>
陰極リード端子は、例えば、導電性接着材を介して陰極層に接合される。陰極リード端子の一方の端部は、外装体の内部に配置される。陰極リード端子の他方の端部は、外装体から外部へと導出されている。陰極リード端子の露出した部分の一部は、陽極リード端子とともに外装体のいずれかの面に配置されている。
【0095】
陰極リード端子の材質は、電気化学的および化学的に安定であり、導電性を有するものであれば、特に限定されない。陰極リード端子は、例えば銅等の金属であってもよいし、非金属であってもよい。その形状も特に限定されず、例えば、長尺かつ平板状である。陰極リード端子の厚みは、低背化の観点から、25μm以上、200μm以下であってよく、25μm以上、100μm以下であってよい。
【0096】
<外装体>
外装体は、陽極リード端子と陰極リード端子とを電気的に絶縁するために設けられており、絶縁性の材料(外装体材料)から構成されている。外装体材料は、例えば、熱硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、不飽和ポリエステル等が挙げられる。
【0097】
<電解コンデンサの製造方法>
電解コンデンサは、例えば、陽極リード端子および陰極リード端子が接続されたコンデンサ素子を準備する準備工程(S1)と、コンデンサ素子と、陽極リード端子の一部と、陰極リード端子の一部と、を封止する外装体を形成する封止工程(S2)と、陽極リード端子の外装体から露出する露出部を屈曲させる屈曲工程(S3)と、を備える方法により製造される。
図12は、本実施形態に係る電解コンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
【0098】
本実施形態に係る電解コンデンサの製造方法について、
図5および
図6に示す電解コンデンサを製造する場合を例に挙げて、詳細に説明する。
【0099】
具体的には、外装体は、第1面と一辺を共有し、かつ、互いに対向する第2面および第3面を有し、第2面の面積が、第3面の面積より大きく、第1面、第2面および第3面はそれぞれ平面部を有し、第1面の平面部と第2面の平面部との成す角度θ1が90度未満である。第1突出部が、上記第1面の平面部と、第1面の第2面側の第1辺を共有するとともに第2面の平面部との成す角度θ2が角度θ1より大きく90度以下である仮想の第1平面と、第3面の平面部と同一平面上にある仮想の第3平面と、により形成される仮想空間R内に形成されている。第1突出部は、突出面と、突出面と第1面とを繋ぐ複数の立上り面と、を備え、突出面は、仮想の第1面と同一平面上にある。
本実施形態に係る製造方法は、上記のように、外装体の外形がテーパ形状であり、外装体が第1突出部を有する場合に有用である。
【0100】
(1)準備工程
第1に、コンデンサ素子を準備する。
弁作用金属粒子と陽極ワイヤとを、第一部分が弁作用金属粒子に埋め込まれるように型に入れ、加圧成形した後、真空中で焼結することにより、第一部分が多孔質焼結体の一面からその内部に埋設される陽極部を作製する。加圧成形の際の圧力は特に限定されず、例えば、10N以上、100N以下程度である。弁作用金属粒子には、必要に応じて、ポリアクリルカーボネート等のバインダを混合してもよい。
【0101】
次に、陽極体上に誘電体層を形成する。具体的には、電解水溶液(例えば、リン酸水溶液)が満たされた化成槽に、陽極体を浸漬し、陽極ワイヤの第二部分を化成槽の陽極体に接続して、陽極酸化を行うことにより、陽極体の表面に弁作用金属の酸化被膜からなる誘電体層を形成することができる。電解水溶液としては、リン酸水溶液に限らず、硝酸、酢酸、硫酸などを用いることができる。
【0102】
続いて、固体電解質層を形成する。本実施形態では、導電性高分子を含む固体電解質層の形成工程を説明する。
導電性高分子を含む固体電解質層は、例えば、誘電体層が形成された陽極体に、モノマーやオリゴマーを含浸させ、その後、化学重合や電解重合によりモノマーやオリゴマーを重合させる方法、あるいは、誘電体層が形成された陽極体に、導電性高分子の溶液または分散液を含浸し、乾燥させることにより、誘電体層上の少なくとも一部に形成される。
【0103】
固体電解質層の表面に、カーボンペーストおよび金属ペーストを順次、塗布することにより、カーボン層と金属ペースト層とで構成される陰極層を形成する。陰極層の構成は、これに限られず、集電機能を有する構成であればよい。
以上の方法により、コンデンサ素子が製造される。
【0104】
第2に、陽極リード端子および陰極リード端子を準備し、コンデンサ素子に接合する。
陽極リード端子に、外装体の内部に配置される屈曲部(内部屈曲部)を形成する。内部屈曲部は、例えば、プレス加工等により形成される。陽極リード端子の内部屈曲部の位置は、陽極ワイヤの長さや直径等に応じて、適宜設定される。陰極リード端子にも内部屈曲部を形成してよい。
【0105】
陽極リード端子と陰極リード端子とを、所定の位置に配置する。このとき、陰極層の所定の位置に導電性接着材を塗布しておく。
【0106】
各リード端子を配置した状態で、コンデンサ素子を載置する。次いで、陽極ワイヤの第二部分と陽極リード端子の一方の端部の近傍とを、レーザ溶接や抵抗溶接などにより接合する。このとき、陰極リード端子の一方の端部近傍を、導電性接着材を介して陰極層に接合させる。
【0107】
図13Aは、本実施形態に係る製造方法の準備工程で準備された各リード端子が接合されたコンデンサ素子を模式的に示す断面図である。コンデンサ素子10は、植立面1Xから植立する陽極ワイヤ2を備えている。陽極ワイヤ2(第二部分2b)には、陽極リード端子13が接合されている。コンデンサ素子10の陰極部には、陰極リード端子14が接合されている。陽極リード端子13には内部屈曲部に相当する屈曲部が形成されている。
【0108】
(2)封止工程
コンデンサ素子および外装体の材料(例えば、未硬化の熱硬化性樹脂およびフィラー)を金型に収容し、トランスファー成型法、圧縮成型法等により、コンデンサ素子を封止する。このとき、陽極リード端子および陰極リード端子の一部を金型から導出させる。成型の条件は特に限定されず、使用される熱硬化性樹脂の硬化温度等を考慮して、適宜、時間および温度条件を設定すればよい。
【0109】
図13Bは、本実施形態に係る製造方法の封止工程において、金型と金型に収容されたコンデンサ素子とを模式的に示す断面図である。コンデンサ素子10は、外装体の材料11Pとともに金型30に収容されている。陽極リード端子13および陰極リード端子14の一部は金型30から導出されている。
【0110】
金型30は、コンデンサ素子10を収容できる深型の第1金型31と、浅い段部を備える第2金型32と、を備える。第1金型31には、第1突出部を形成するための凹み31aが形成されている。また、第1金型31の底面はその開口の面積よりも狭く、第1金型31はテーパ形状を備えている。第1金型31と第2金型32とを嵌合させて、容器状の金型30が形成される。陽極リード端子13および陰極リード端子14は、第1金型31と第2金型32とを嵌合させたときに生じる隙間から、外部に導出される。
【0111】
金型を加熱して外装体の材料を硬化させた後、外装体により被覆されたコンデンサ素子を、金型から取り出す。これにより、コンデンサ素子と、陽極リード端子と、陰極リード端子と、コンデンサ素子および各リード端子の一部を覆う外装体と、を備える電解コンデンサが得られる。
【0112】
図13Cは、本実施形態に係る製造方法の封止工程において、第1金型が離型される様子を模式的に示す断面図である。コンデンサ素子10を取り出す際、例えば、第2金型32は固定され、第1金型31は、コンデンサ素子10から離間させる方向に移動される。
【0113】
(3)屈曲工程
陽極リード端子および陰極リード端子の金型から露出していた部分を折り曲げて、それぞれの外部屈曲部を形成する。これにより、陽極リード端子および陰極リード端子の一部が外装体の第3面に配置される。
以上の方法により、
図5および
図6に示す電解コンデンサが製造される。
【0114】
陽極リード端子は、仮想の第1平面(
図4参照)に沿って屈曲される。このとき、外装体の側面に形成されている第1突出部をガイドとして利用してよい。例えば、屈曲ローラを第1突出部に押し当てながら外装体の第2面から第3面に向かって移動させて、陽極リード端子を屈曲させる。この場合、屈曲ローラが安定して移動されるため、屈曲の精度が向上する。
【0115】
図13Dは、本実施形態に係る製造方法の屈曲工程において、陽極リード端子が屈曲される様子を模式的に示す断面図である。屈曲ローラ40は、外装体11の第2面(平面部11Y)から第3面(平面部11Z)に向かって、第1突出部111にガイドされながら移動する。陽極リード端子13は屈曲ローラ40に押圧され、仮想の第1平面に沿った形状で屈曲される。これにより、第1突出部111の突出面と陽極リード端子13の外面13Xとは、いずれも仮想の第1平面11Xvと同一平面上になる。
【0116】
陽極リード端子13は、その後さらに第3面に沿って屈曲される。陰極リード端子14も同様に、屈曲ローラを用いて屈曲されてよい。
【0117】
準備工程において、
図14に示す陽極リード端子(陽極リードフレーム)50を用いてもよい。これにより、
図9Aに示す電解コンデンサ100が製造され得る。陽極リード端子50には、第2陽極リード部52の形成領域(例えば、長方形の領域)の輪郭線のうち直線状の一辺を除いて、輪郭線に沿ってU字形状の切込みC(
図14の破線部分)が形成されている。陽極リード端子50の打ち抜きと切込みの形成とは同時に行ってもよい。第2陽極リード部52の形成領域の輪郭線のうち、切込みを形成しない部分が、第1屈曲部B1となる。なお、
図14において一点鎖線は折り曲げ加工の軸となる箇所である。
【0118】
切込みの長さUは、陽極ワイヤ2の第2面A2からの高さよりも長ければよい。封止工程および屈曲工程において、外装体の第1突出部の周囲に陽極リード端子(第3陽極リード部)が配され、かつ陽極リード端子が第1突出部を覆わないように、陽極リード端子50は、切込みに隣接して貫通孔54を形成してもよい。
【0119】
次に、第2陽極リード部52の形成領域を第1屈曲部B1を軸として折り曲げ、第2陽極リード部52を陽極リードフレームから直立させる。屈曲部は、例えば、曲げ加工等により形成される。第1屈曲部B1の位置は、コンデンサ素子の大きさ等(特に、コンデンサ素子における陽極ワイヤ2の延出部分の位置)に応じて、適宜設定すればよい。
【0120】
屈曲工程において、陽極リード端子50は、第2面A2に沿う方向から第1面A1に沿う方向に屈曲され、さらに第1面A1に沿う方向から第2面A2と対向する第3面A3に沿う方向に屈曲される。同様に、陰極リード端子は、第2面A2に沿う方向から第4面A4に沿う方向に屈曲され、さらに第4面A4に沿う方向から第2面A2と対向する第3面A3に沿う方向に屈曲される。
【0121】
陽極リードフレーム50において、第1主面A1に沿う部分と第2主面A2に沿う部分との境界が第2屈曲部B2である。第2屈曲部B2を基準として、外装体70から遠ざかる方向に延在する陽極リード端子50の一部が第3陽極リード部53を構成する。第2屈曲部B2よりも外装体70側に位置する陽極リード端子50のうち、第2陽極リード部52を除いた部分が第1陽極リード部51を構成する。同様に、陰極リード端子60において、第1主面A1に沿う部分と第4主面A4に沿う部分との境界を基準として、外装体70から遠ざかる方向に延在する陰極リード端子60の一部が第2陰極リード部62を構成し、それ以外の残部が第1陰極リード部61を構成する。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明に係る電解コンデンサは、コンデンサ素子のサイズを大きくすることができるため、様々な用途に利用できる。
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。
【符号の説明】
【0123】
20、100:電解コンデンサ
10:コンデンサ素子
1:陽極体
1X:植立面
2:陽極ワイヤ
2a:第一部分
2b:第二部分
3:誘電体層
4:固体電解質層
5:陰極層
5a:カーボン層
5b:金属ペースト層
6:陽極部
7:陰極部
8:導電性接着材
11、70:外装体
A1:第1面
A2:第2面
A3:第3面
A4:第4面
11X:第1面(平面部)
11Y:第2面(平面部)
11Z:第3面(平面部)
11Xv:仮想の第1平面
11Zv:仮想の第3平面
11a:第1辺
111:第1突出部
111x:突出面
111y、111z:立上り面
112:第2突出部
11P:外装体の材料
71、72:突出部
13、50:陽極リード端子
13X:外面
51:第1陽極リード部
52:第2陽極リード部
53:第3陽極リード部
53a:第1領域
53b:第2領域
B1:第1屈曲部
B2:第2屈曲部
14、60:陰極リード端子
61:第1陰極リード部
62:第2陰極リード部
62a:第1領域
62b:第2領域
30:金型
31:第1金型
31a:突起
32:第2金型
40:屈曲ローラ
210:コンデンサ素子
202:陽極ワイヤ
211:外装体
211X:側面