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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】電解コンデンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/00 20060101AFI20240531BHJP
   H01G 9/145 20060101ALI20240531BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20240531BHJP
   H01G 9/028 20060101ALI20240531BHJP
   H01G 9/035 20060101ALI20240531BHJP
   H01G 9/042 20060101ALI20240531BHJP
   H01G 9/055 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
H01G9/00 290H
H01G9/145
H01G9/15
H01G9/028 G
H01G9/035
H01G9/042 500
H01G9/055 100
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020569670
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2020003104
(87)【国際公開番号】W WO2020158780
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2019016514
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019016515
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 大輔
(72)【発明者】
【氏名】松下 瞬平
(72)【発明者】
【氏名】茶城 健太
(72)【発明者】
【氏名】有馬 博之
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/024532(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/103616(WO,A1)
【文献】特開昭64-082516(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146070(WO,A1)
【文献】特開平11-219861(JP,A)
【文献】国際公開第2016/174818(WO,A1)
【文献】特開2001-060536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/00
H01G 9/145
H01G 9/15
H01G 9/028
H01G 9/035
H01G 9/042
H01G 9/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方および他方の電極箔とセパレータとを準備する工程と、
第1導電性高分子成分と第1分散媒とを含む第1導電性高分子分散液を準備する工程と、 第2導電性高分子成分と第2分散媒とを含む第2導電性高分子分散液を準備する工程と、
コーティング法により、前記一方の電極箔の表面に前記第1導電性高分子分散液を塗布した後、前記第1分散媒の少なくとも一部を除去して、前記第1導電性高分子成分を含む第1導電性高分子層を形成する工程と、
前記第1導電性高分子層が形成された前記一方の電極箔と前記他方の電極箔との間に前記セパレータを介在させてコンデンサ素子を作製する工程と、
前記コンデンサ素子に第2導電性高分子分散液を含浸する工程と、を備える、電解コンデンサの製造方法。
【請求項2】
前記第1導電性高分子成分は、前記第1導電性高分子分散液中に1質量%以上、15質量%以下含まれており、
振動式粘度計を用いて室温で測定される前記第1導電性高分子分散液の粘度は、10mPa・s以上である、請求項1に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項3】
前記第1導電性高分子成分は第1ポリアニオンを含み、
前記第1ポリアニオンの重量平均分子量は、1000以上、70000以下である、請求項1または2に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項4】
前記コンデンサ素子に前記第2導電性高分子分散液を含侵する工程の後、前記コンデンサ素子に電解液を含浸する工程を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項5】
前記電解液は、溶媒および酸成分を含む、請求項4に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項6】
前記電解液は、ヒドロキシ基を2つ以上有する溶媒を含む、請求項4または5に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項7】
前記第2導電性高分子分散液中に含まれる前記第2導電性高分子成分の質量濃度は、前記第1導電性高分子分散液中に含まれる前記第1導電性高分子成分の質量濃度より低く
振動式粘度計を用いて室温で測定される前記第2導電性高分子分散液の粘度は、同条件で測定される前記第1導電性高分子分散液の粘度より低い、請求項1~6のいずれか一項に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項8】
前記第1導電性高分子層を形成する工程において、前記第1分散媒の一部を除去して、前記第1導電性高分子成分および前記第1分散媒を含む前記第1導電性高分子層形成する、請求項1~7のいずれか一項に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項9】
前記一方の電極箔は長尺体であり、
前記第1導電性高分子層を形成する工程の後、前記コンデンサ素子を作製する工程の前に、前記一方の電極箔を切断する工程を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項10】
前記一方の電極箔は、誘電体層を備える陽極箔である、請求項1~9のいずれか一項に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項11】
前記陽極箔は長尺体であり、
前記第1導電性高分子層を形成する工程の後、前記陽極箔を切断し、形成された切断面に誘電体層を形成する工程を備える、請求項10に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項12】
前記一方の電極箔は、陰極箔である、請求項1~9のいずれか一項に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項13】
前記陰極箔を準備する工程で準備される前記陰極箔は、弁作用金属を含む金属箔と、前記金属箔の表面に形成された導電性を有する被覆層を備え、
前記被覆層は、カーボンおよび弁作用金属よりイオン化傾向の低い金属よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項12に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項14】
一方および他方の電極箔と、前記一方および他方の電極箔の間に介在するセパレータとを備えるコンデンサ素子を備え、
前記一方の電極箔主面の面積の90%以上が、第1導電性高分子成分を含む第1導電性高分子層により被覆されており、
前記コンデンサ素子には、第2導電性高分子成分が含浸されており、前記第2導電性高分子成分を含む第2導電性高分子層が、前記第1導電性高分子層上に形成されている、電解コンデンサ。
【請求項15】
前記第1導電性高分子成分は第1ポリアニオンを含み、
前記第2導電性高分子成分は第2ポリアニオンを含み、
前記第2ポリアニオンの重量平均分子量は、前記第1ポリアニオンの重量平均分子量より大きい、請求項14に記載の電解コンデンサ。
【請求項16】
前記第1導電性高分子層の単位面積当たりの質量は、0.1mg/cm以上である、請求項14または15に記載の電解コンデンサ。
【請求項17】
前記第1導電性高分子層の電気伝導率は、170S/cm以下である、請求項14~16のいずれか一項に記載の電解コンデンサ。
【請求項18】
前記一方の電極箔の端面には、前記第1導電性高分子層が形成されていない、請求項14~17のいずれか一項に記載の電解コンデンサ。
【請求項19】
前記一方の電極箔は、誘電体層を備える陽極箔である、請求項14~18のいずれか一項に記載の電解コンデンサ。
【請求項20】
前記誘電体層は、さらに前記陽極箔の端面に形成されている、請求項19に記載の電解コンデンサ。
【請求項21】
前記一方の電極箔は、陰極箔である、請求項14~18のいずれか一項に記載の電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサおよびその製造方法に関し、詳細には、ESR特性の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に使用されるコンデンサは、大容量で、かつ、高周波領域における等価直列抵抗(ESR)が小さいことが求められる。大容量で低ESRのコンデンサとしては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン等の導電性高分子を固体電解質として用いる電解コンデンサが有望である。特許文献1は、陽極箔を導電性高分子の分散液に浸漬して、導電性高分子を付着させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-109024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ハイブリッドカーの形式の一つとして、電動機のみで自走可能なシステム(フルハイブリッドシステム)に加えて、マイルドハイブリッドと言われるシステムが注目されている。マイルドハイブリッドシステムでは、乗用車に通常搭載されているオルタネーターを、エンジンの補助モーターとして利用する。ヨーロッパでは、搭載されるオルタネーターの定格電圧を12Vから48VにするLV148という電源規格が策定され、マイルドハイブリッドシステムの実用化に向けて開発が進められている。
【0005】
オルタネーターが高電圧化されると、オルタネーターとともに用いられる電解コンデンサには、より大きなリプル電流が流れることになる。リプル電流の増大に伴う発熱を抑制するためには、電解コンデンサの等価直列抵抗(ESR)を低減する方法が有効である。ESRを低減するには、導電性高分子の量を多くすればよい。しかし、上記方法では、コンデンサ素子に十分な量の導電性高分子を付着させることはできない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の局面は、電極箔を準備する工程と、第1導電性高分子成分と、第1分散媒と、を含む第1導電性高分子分散液を準備する工程と、コーティング法により、前記電極箔の表面に前記第1導電性高分子分散液を塗布した後、前記第1分散媒の少なくとも一部を除去して、前記第1導電性高分子成分を含む第1導電性高分子層を形成する工程と、前記第1導電性高分子層が形成された前記電極箔を用いてコンデンサ素子を作製する工程と、を備える、電解コンデンサの製造方法に関する。
【0007】
本発明の第二の局面は、電極箔を備えるコンデンサ素子を備え、前記電極箔には、導電性高分子層が形成されており、前記電極箔の一方の主面の面積の90%以上が、前記導電性高分子層により被覆されており、前記導電性高分子層は、第1導電性高分子成分を含む第1導電性高分子層と、前記第1導電性高分子層の一部を覆い、かつ、第2導電性高分子成分を含む第2導電性高分子層と、を備える、電解コンデンサに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コンデンサ素子に多くの導電性高分子を保持させることができる。よって、ESRが低減された電解コンデンサが得られる。
本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成および内容の両方に関し、本発明の他の目的および特徴と併せ、図面を照合した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る製造方法の一例を示すフローチャートである。
図2】本発明の実施形態に係る電解コンデンサの一例を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るコンデンサ素子の一部を模式的に示す展開斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態では、多くの導電性高分子を付着させるために、コーティング法により、電極箔に導電性高分子を含む分散液を塗布する。これにより、電極箔の表面の少なくとも一部を覆うように、十分な量の導電性高分子成分が付着する。十分な量の導電性高分子成分が電極箔の表面に付着することにより、得られる電解コンデンサのESRが低減する。さらに、電解コンデンサの耐熱性も向上する。よって、本実施形態に係る電解コンデンサは、大きなリプル電流が流れる製品に好適に用いられる。
【0011】
さらに、電極箔の表面で重合反応を行う場合と比較して、形成される導電性高分子を含む層に含まれる不純物量を少なくすることができる。そのため、これを用いる電解コンデンサの耐電圧を高めることができる。
【0012】
電極箔は、陽極箔であってよく、陰極箔であってよく、陽極箔および陰極箔の双方であってよい。陽極箔はその表面に誘電体層を備える。導電性高分子成分が陽極箔の表面に配置される場合、導電性高分子と陽極箔の表面に形成されている誘電体層とが密着し易くなって、ESRはより低減される。導電性高分子成分が陰極箔の表面に配置される場合、陽極箔の自己修復性能が妨げられ難い。
【0013】
[電解コンデンサの製造方法]
本実施形態に係る電解コンデンサは、電極箔を準備する工程と、第1導電性高分子成分と、第1分散媒と、を含む第1導電性高分子分散液を準備する工程と、コーティング法により、電極箔の表面に第1導電性高分子分散液を塗布した後、第1分散媒の少なくとも一部を除去して、第1導電性高分子成分を含む第1導電性高分子層を形成する工程と、第1導電性高分子層が形成された電極箔を用いてコンデンサ素子を作製する工程と、を備える方法により製造することができる。
図1は、本実施形態に係る製造方法の一例を示すフローチャートである。
以下、本実施形態に係る電解コンデンサの製造方法の一例について、工程ごとに説明する。
【0014】
(1)電極箔を準備する工程(S1)
(1-1)陽極箔の準備
陽極箔に第1導電性高分子分散液をコーティングする場合、陽極箔を準備する。
陽極箔の原料として、例えば、弁作用金属を含む金属箔が用いられる。
金属箔の表面に誘電体層を形成して、陽極箔を準備する。誘電体層の形成方法は特に限定されないが、金属箔を化成処理することにより形成することができる。化成処理では、例えば、金属箔をアジピン酸アンモニウム溶液などの化成液に浸漬し、熱処理する。また、金属箔を化成液に浸漬し、電圧を印加してもよい。
【0015】
誘電体層を形成する前に、必要に応じて、金属箔の表面を粗面化してもよい。粗面化により、金属箔の表面に、複数の凹凸が形成される。粗面化は、金属箔をエッチング処理することにより行うことが好ましい。エッチング処理は、例えば直流電解法や交流電解法により行えばよい。
【0016】
その他、コンデンサ素子の構成部材として、必要に応じて、陰極箔およびセパレータを準備する。陰極箔の原料は、例えば、弁作用金属を含む金属箔である。陰極箔として使用する金属箔の表面に、上記方法により誘電体層を形成してもよく、スパッタリングや蒸着により導電性の被覆層を形成してもよい。誘電体層および被覆層を形成する前に、必要に応じて、金属箔の表面を粗面化してもよい。セパレータの原料は、例えば、繊維構造体である。
【0017】
(1-2)陰極箔の準備
陰極箔に第1導電性高分子分散液をコーティングする場合、陰極箔を準備する。陰極箔は、上記の通りである。その他、コンデンサ素子の構成部材として、上記の陽極箔、および必要に応じて上記のセパレータを準備する。
【0018】
(2)第1導電性高分子分散液を準備する工程(S2)
第1導電性高分子成分(以下、第1高分子成分と称す。)と、第1分散媒と、を含む第1導電性高分子分散液(以下、第1分散液と称す。)を準備する。
【0019】
(第1分散液)
第1分散液は、第1高分子成分と、第1分散媒と、を含む。
第1高分子成分の含有量は特に限定されない。第1高分子成分は、第1分散液中に1質量%以上、15質量%以下含有されてよい。第1高分子成分の含有量がこの範囲であると、第1分散液の粘度がコーティング法に適した範囲になり易い。そのため、十分な量の第1高分子成分を電極箔の表面に均一に付着させ易くなる。第1高分子成分の含有量は、10質量%以下であってよく、5質量%以下であってよく、3質量%以下であってよい。
【0020】
第1分散液の粘度は特に限定されない。振動式粘度計(例えば、(株)セコニック製、VM-100A)を用いて室温(20℃)で測定される第1分散液の粘度は、10mPa・s以上であってよい。また、上記条件で測定される第1分散液の粘度は、100mPa・s以上であってよく、200mPa・s以下であってよい。このような範囲の粘度を有する第1分散液は、特にコーティング法に適している。
【0021】
第1高分子成分は、導電性高分子を含む。導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリチオフェンビニレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、2種以上のモノマーの共重合体でもよい。
【0022】
なお、本明細書では、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリンなどは、それぞれ、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリンなどを基本骨格とする高分子を意味する。したがって、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリンなどには、それぞれの誘導体も含まれ得る。例えば、ポリチオフェンには、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)などが含まれる。
【0023】
第1高分子成分は、さらにドーパントを含んでいてよい。ドーパントは、ポリアニオンであってよい。ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらは単独モノマーの重合体であってもよく、2種以上のモノマーの共重合体であってもよい。なかでも、ポリスチレンスルホン酸由来のポリアニオンが好ましい。
【0024】
第1高分子成分に含まれるポリアニオン(以下、第1ポリアニオンと称す。)の重量平均分子量は特に限定されない。第1ポリアニオンの重量平均分子量は、例えば、1000以上、200000以下であってよい。このような第1ポリアニオンを含む第1高分子成分は、第1分散媒中に均質に分散し易く、電極箔に付着し易い。また、第1ポリアニオンの重量平均分子量は、1000以上、70000以下であってよい。このような第1ポリアニオンを多く含む場合であっても、第1分散液の過度な粘度上昇が抑制されて、電極箔に付着する量が増加し易くなる。
【0025】
第1高分子成分は、例えば粒子の状態で、第1分散媒に分散している。第1高分子成分の粒子の平均粒径は、特に限定されず、重合条件や分散条件などにより、適宜調整することができる。例えば、第1高分子成分の粒子の平均粒径は、0.01μm以上、0.5μm以下であってよい。ここで、平均粒径は、動的光散乱法による粒径測定装置により測定される体積粒度分布におけるメディアン径である。
【0026】
第1分散媒は特に限定されず、水でもよく、非水溶媒でもよく、これらの混合物でもよい。非水溶媒とは、水を除く液体の総称であり、有機溶媒やイオン性液体が含まれる。なかでも、第1分散媒は、取扱い性、導電性高分子成分の分散性の観点から、水であってよい。水は、第1分散媒の50質量%以上を占めてよく、70質量%以上を占めてよく、90質量%以上を占めてよい。水とともに用いられる非水溶媒としては、極性溶媒(プロトン性溶媒および/または非プロトン性溶媒)が挙げられる。
【0027】
プロトン性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリン、1-プロパノール、ブタノール、ポリグリセリン、ソルビトール、マンニトール、ペンタエリスリトールなどのアルコール類、ホルムアルデヒドなどが挙げられる。非プロトン性溶媒としては、例えば、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド類や、酢酸メチル、γ-ブチロラクトン (γBL)などのエステル類、メチルエチルケトンなどのケトン類、1,4-ジオキサンなどのエーテル類、ジメチルスルホキシド、スルホラン(SL)などの硫黄含有化合物、炭酸プロピレンなどのカーボネート化合物などが挙げられる。
【0028】
第1分散液は、例えば、第1分散媒に第1高分子成分の粒子を分散させる方法や、第1分散媒中で第1高分子成分の前駆体モノマーを重合させて、第1分散媒中に第1高分子成分の粒子を生成させる方法などにより得ることができる。
【0029】
(3)第1導電性高分子層を形成する工程(S3)
コーティング法により、電極箔の表面に第1分散液を塗布した後、第1分散媒の少なくとも一部を除去して、第1高分子成分を含む第1導電性高分子層(以下、第1高分子層と称す。)を形成する。コンデンサ素子を作製する前に、電極箔に第1分散液を塗布することにより、電極箔に十分な量の第1高分子成分を付着させることができる。第1高分子成分の少なくとも一部は、電極箔の表面に付着する。第1分散液の一部は、電極箔のエッチングピットの内部にも浸透し得る。第1分散液の一部は、陽極箔の誘電体層の表面および孔にも浸透し得る。
【0030】
コーティング法は、コーター(coater)を用いて、対象物に液状の物質を塗布する技術である。コーターとしては、例えば、グラビアコーター、ナイフコーター、コンマコーター、ロールコーター、ダイコーター、リップコーターなどの公知の装置が挙げられる。本実施形態では、これらの公知の装置により第1分散液が電極箔の表面に塗布される。
【0031】
電極箔への第1分散液の塗布量は特に限定されない。例えば、電極箔に0.1mg/cm以上の第1高分子成分が付着するように、適宜設定すればよい。
【0032】
第1分散液によるコーティング処理は、電極箔の片面あるいは両面に対して行われてよい。第1分散液によるコーティング処理は、電極箔の同じ面に対して複数回行われてもよい。これにより、形成される高分子層の厚みを大きくすることができる。この場合、複数回のコーティング処理を連続して行った後、乾燥処理してもよいし、コーティング処理を1回行う度に乾燥処理を行ってもよい。
【0033】
量産性の観点から、第1高分子層を形成する工程は、長尺の電極箔に対して行われてよい。長尺体である電極箔の両面にコーティング処理を行う場合、まず片面にコーティング処理を行い、乾燥処理を行った後、電極箔をロールに巻き取る。その後、電極箔を反転するようにロールから巻出しながら、再び同じあるいは別のコーターで、もう一方の面にコーティング処理を行えばよい。
【0034】
第1高分子層が形成された後、後述する切断工程が行われる場合、電極箔の切断予定ライン上に第1高分子層が形成されないように、コーティング処理を行うことが望ましい。これにより、切断によって、第1高分子層が損傷したり剥離したりすることが抑制されるとともに、切断面に第1高分子成分が付着することを回避できる。陽極箔の場合、切断後に再度、化成処理が施される場合にも、切断面に誘電体層が一様に形成され易くなる。
【0035】
導電性高分子成分の量が多くなる点で、コンデンサ素子の電極箔以外の構成部材に第1高分子成分を付着させてもよい。他の構成部材に第1高分子成分を付着させる方法は特に限定されず、上記のようにコーティング法を用いてもよいし、含浸であってもよい。コンデンサ素子の電極箔以外の構成部材としては、セパレータが挙げられる。
【0036】
第1分散媒の除去は、例えば、加熱乾燥や減圧乾燥などの乾燥処理により行われる。乾燥条件は特に限定されず、第1分散媒の種類、塗布量等に応じて適宜設定すればよい。このとき、第1分散媒を完全に除去しない程度に乾燥処理が行われてもよい。例えば、コーティング処理直後の第1分散液に含まれる第1分散媒が0質量%より多く、10質量%以下になるように、乾燥処理を行ってもよい。
【0037】
後の工程で、コンデンサ素子に第2導電性高分子分散液(以下、第2分散液と称す。)および/または電解液が含浸される場合、第1高分子層が第1分散媒を含んでいると、第2分散液および/または電解液はこの第1分散媒に誘導されて、電極箔のエッチングピットの内部、さらには陽極箔の誘電体層の孔の内部にまで含浸され易くなる。これにより、静電容量の増大が期待できる。さらに、陽極箔の自己修復性能の向上が期待できる。加えて、第1高分子層が形成された長尺の電極箔をロール状に巻き取った場合にも、第1高分子層に亀裂が生じ難い。
【0038】
(4)電極箔の切断工程(S4)
第1高分子層が形成された長尺の電極箔は、第1高分子層を形成する工程の後、切断される。この場合、電極箔に形成された切断面、つまり、電極箔の端面には、第1高分子層は配置されていない。他の長尺の構成部材も、例えばこの工程で切断されてよい。切断工程は、コンデンサ素子を作製する工程の前に行われてもよいし、コンデンサ素子を作製した後に行われてもよい。
【0039】
(5)コンデンサ素子の作製(S5)
陽極箔と陰極箔との間に第1高分子層(さらには、セパレータ)が介在するように、陽極箔と陰極箔とを積層する。陽極箔と陰極箔との積層体は、巻回されてもよい。この場合、最外層に位置する陰極箔の端部は、巻止めテープで固定される。切断工程を行った場合、陽極箔の切断面に誘電体層を形成するために、コンデンサ素子に対し、さらに化成処理(再化成処理)を行ってもよい。
【0040】
(6)コンデンサ素子に第2導電性高分子分散液を含浸する工程(S6)
必要に応じて、コンデンサ素子に第2導電性高分子成分(以下、第2高分子成分と称す。)と第2分散媒とを含む第2分散液を含浸させてもよい。含浸の方法は特に限定されない。その後、乾燥処理を行って、第2分散媒の少なくとも一部を除去してもよい。
【0041】
第2分散液をコンデンサ素子に含浸させた後、乾燥することにより、第2高分子成分をコンデンサ素子の内部に付着させることができる。第2高分子成分により、さらに静電容量が大きくなり、ESRが低減することが期待できる。第2高分子成分は、主に、コンデンサ素子の構成部材の孔やピットの内部に付着している。
【0042】
(第2分散液)
第2分散液は、例えば、第2高分子成分と、第2分散媒と、を含む。
第2分散媒としては、第1分散媒と同様の化合物が挙げられる。
第2高分子成分は特に限定されず、第1高分子成分と同様の導電性高分子およびドーパントを含んでいてよい。第2高分子成分は、ドーパントとしてポリアニオン(以下、第2ポリアニオンと称す。)を含んでいてよい。この場合、第2ポリアニオンの重量平均分子量は、第1高分子成分に含まれる第1ポリアニオンの重量平均分子量より大きいことが好ましい。これにより、第2高分子成分の電気伝導率が高くなるため、少ない量で、ESRを効果的に低減することができる。さらに、第2分散液の粘度も低減されるため、コンデンサ素子内部への含浸性が高まる。
【0043】
第2ポリアニオンの重量平均分子量は、例えば、1000以上、200000以下であってよく、75000以上、150000以下であってよい。
【0044】
第2分散液において、第2高分子成分の含有量は、第1分散液における第1高分子成分の含有量より少なくてよい。具体的には、第2分散液における第2高分子成分の含有量は、0.5質量%以上、3質量%未満であってよい。振動式粘度計を用いて室温(20℃)で測定される第2分散液の粘度は、同条件で測定される第1分散液の粘度より低いことが好ましい。振動式粘度計を用いて室温(20℃)で測定される第2分散液の粘度は、100mPa・s未満が好ましい。
【0045】
(7)コンデンサ素子に電解液を含浸する工程(S7)
必要に応じて、コンデンサ素子に、電解液を含浸させてもよい。第2分散液の含浸工程を行わずに、電解液を含浸させてもよいし、コンデンサ素子に第2分散液を含浸させた後、さらに電解液を含浸させてもよい。電解液によって、誘電体層の自己修復性能が向上し易くなる。また、電解液は、実質的な陰極材料として機能するため、静電容量を大きくする効果が期待できる。含浸の方法は特に限定されない。
【0046】
(電解液)
電解液は、溶媒を含む。
溶媒としては、スルホン化合物、ラクトン化合物、カーボネート化合物、多価アルコールなどが挙げられる。スルホン化合物としては、スルホラン、ジメチルスルホキシドおよびジエチルスルホキシド等が挙げられる。ラクトン化合物としては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等が挙げられる。カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)およびフルオロエチレンカーボネート(FEC)等が挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール(PEG)などのグリコール化合物;グリセリン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
なかでも、溶媒は、ヒドロキシ基を2つ以上有する化合物を含んでよい。このような化合物としては、例えば、多価アルコールが挙げられる。ヒドロキシ基を2つ以上有する化合物の含有量は、全溶媒の50質量%以上であってよく、60質量%以上であってよく、70質量%以上であってよい。
【0048】
電解液は、さらに、酸成分を含んでよい。第1高分子成分あるいは第2高分子成分がドーパントを含む場合、電解液中の酸成分は、ドーパントの脱ドープ現象を抑制し、各高分子成分の導電性を安定化させる。また、高分子成分からドーパントが脱ドープした場合でも、脱ドープ跡のサイトに電解液の酸成分が再ドープされるため、ESRが低く維持され易くなる。
【0049】
電解液中の酸成分は、電解液の粘度を過度に大きくすることがなく、電解液中で解離し易く、溶媒中を移動しやすいアニオンを生成することが望ましい。このような酸成分としては、例えば、炭素数1~30の脂肪族スルホン酸、炭素数6~30の芳香族スルホン酸が挙げられる。脂肪族スルホン酸の中では、1価飽和脂肪族スルホン酸(例えばヘキサンスルホン酸)が好ましい。芳香族スルホン酸の中では、スルホ基に加え、ヒドロキシ基またはカルボキシ基を有する芳香族スルホン酸が好ましく、具体的には、オキシ芳香族スルホン酸(例えばフェノール-2-スルホン酸)、スルホ芳香族カルボン酸(例えばp-スルホ安息香酸、3-スルホフタル酸、5-スルホサリチル酸)が好ましい。
【0050】
他の酸成分としては、カルボン酸が挙げられる。カルボン酸は、カルボキシル基を2個以上有する芳香族カルボン酸(芳香族ジカルボン酸)を含むことが好ましい。芳香族カルボン酸としては、例えば、フタル酸(オルト体)、イソフタル酸(メタ体)、テレフタル酸(パラ体)、マレイン酸、安息香酸、サリチル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸が挙げられる。なかでも、フタル酸(オルト体)、マレイン酸などの芳香族ジカルボン酸がより好ましい。芳香族ジカルボン酸のカルボキシル基は、安定であり、副反応を進行させにくい。よって、長期間にわたって、導電性高分子を安定化させる効果を発現し、電解コンデンサの長寿命化に有利である。また、カルボン酸は、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸でもよい。
【0051】
酸成分は、熱安定性の点で、有機酸および無機酸の複合化合物を含んでよい。有機酸および無機酸の複合化合物としては、耐熱性の高い、ボロジサリチル酸、ボロジ蓚酸、ボロジグリコール酸等が挙げられる。
【0052】
酸成分は、ホウ酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸およびホスホン酸などの無機酸を含んでもよい。
【0053】
脱ドープ現象を抑制する効果が高まる点で、酸成分の濃度は、5質量%以上、50質量%以下であってよく、15質量%以上、35質量%以下の濃度であってよい。
【0054】
電解液は、酸成分とともに塩基成分を含んでもよい。塩基成分により、酸成分の少なくとも一部が中和される。よって、酸成分の濃度を高めつつ、酸成分による電極の腐食を抑制することができる。脱ドープを効果的に抑制する観点から、酸成分は、塩基成分より当量比で過剰であることが好ましい。例えば、塩基成分に対する酸成分の当量比は、1以上、30以下であってよい。電解液中に含まれる塩基成分の濃度は、0.1質量%以上、20質量%以下であってよく、3質量%以上、10質量%以下であってよい。
【0055】
塩基成分は特に限定されない。塩基成分としては、例えば、アンモニア、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム化合物およびアミジニウム化合物等が挙げられる。各アミンとしては、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミンなどが挙げられる。
【0056】
電解液のpHは4以下が好ましく、3.8以下がより好ましく、3.6以下が更に好ましい。電解液のpHを4以下とすることで、高分子成分の劣化が更に抑制される。pHは2.0以上が好ましい。
【0057】
(8)コンデンサ素子を封止する工程(S8)
作製されたコンデンサ素子を有底ケースに収納する。有底ケースの材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、鉄、真鍮などの金属あるいはこれらの合金を用いることができる。その後、有底ケースの開口端近傍に横絞り加工を施し、開口端を封止部材にかしめてカール加工することにより、コンデンサ素子が封止される。最後に、カール部分に座板が配置されて、電解コンデンサが完成する。その後、定格電圧を印加しながら、エージング処理を行ってもよい。
【0058】
以上、陽極箔および陰極箔が積層さらには巻回されたコンデンサ素子を備える電解コンデンサを例に挙げて説明したが、電解コンデンサの構成はこれに限定されない。第1導電性高分子分散液のコーティング対象が陽極箔である場合、本実施形態は、例えば、誘電体層を備える陽極箔と、陽極箔を覆う陰極引出層と、を含むコンデンサ素子を備える積層型の電解コンデンサに適用可能である。
【0059】
積層型の電解コンデンサは、例えば、以下のようにして製造される。
上記と同様にして、陽極箔の両面に第1高分子層を形成した後(S3)、陽極箔を所定の形状に切断する(S4)。コンデンサ素子を作製する工程(S5)において、陽極箔の表面に形成された第1高分子層の少なくとも一部を覆うように、陰極引出層を形成する。
【0060】
陰極引出層は、高分子層を覆うようにカーボン層の材料および金属ペーストを順次塗布し、乾燥処理を行うことにより形成される。その後、必要に応じて、コンデンサ素子に第2分散液を含浸する工程(S6)および/またはコンデンサ素子に電解液を含浸する工程(S7)を行う。最後に、射出成形、インサート成形、圧縮成形などの成形技術を用いて、コンデンサ素子を樹脂封止材で封止することにより、電解コンデンサが得られる。
【0061】
[電解コンデンサ]
本実施形態に係る電解コンデンサは、電極箔を備えるコンデンサ素子を備える。電極箔には、導電性高分子層が形成されている。導電性高分子層が形成される電極箔(以下、コート電極箔と称す場合がある。)は、陽極箔であってよく、陰極箔であってよく、陽極箔および陰極箔の双方であってよい。陽極箔はその表面に誘電体層を備える。コート電極箔の一方の主面の面積の90%以上は、導電性高分子層により被覆されている。導電性高分子層は、第1導電性高分子成分を含む第1導電性高分子層と、第1導電性高分子層の一部を覆い、かつ、第2導電性高分子成分を含む第2導電性高分子層と、を備える。これにより、ESRは低減する。
【0062】
本実施形態に係る他の電解コンデンサは、誘電体層を備える陽極箔と陽極箔を覆う陰極引出層とを備えるコンデンサ素子を備える。陽極箔には、導電性高分子層が形成されている。陰極引出層は、導電性高分子層の少なくとも一部を覆うように形成されている。陽極箔の一方の主面の面積の90%以上は、導電性高分子層により被覆されている。導電性高分子層は、第1導電性高分子成分を含む第1導電性高分子層と、第1導電性高分子層の一部を覆い、かつ、第2導電性高分子成分を含む第2導電性高分子層と、を備える。
【0063】
コート電極箔をその主面の法線方向からみたとき、当該主面の面積の90%以上が導電性高分子層により被覆されている。導電性高分子層には、上記第1高分子層および上記第2導電性高分子層(以下、第2高分子層と称す。)が含まれる。導電性高分子層による面積被覆率は、95%以上が好ましい。導電性高分子層は、コート電極箔の表面上で連続していてもよいし、不連続であってもよい。面積被覆率は、電解コンデンサに用いられる所定の大きさに切断されたコート電極箔を用いて算出される。面積被覆率は、コート電極箔の主面を撮影した画像を二値化処理することにより算出されてもよい。
【0064】
なお、導電性高分子層による面積被覆率は、第1高分子層による面積被覆率とみなすことができる。第2高分子層によるコート電極箔の表面に対する面積被覆率は、第1高分子層による面積被覆率より小さいためである。第2高分子層による上記面積被覆率は、例えば、90%以下であり、60%以下でもよい。
【0065】
以下、コンデンサ素子の構成部材およびその他の構成材料について説明する。
(第1高分子層)
第1高分子成分は、コート電極箔のエッチングピットの内壁に付着するとともに、エッチングピットの外部にも付着し得る。つまり、第1高分子層は、コート電極箔の表面の少なくとも一部を覆うように形成されている。第1高分子層は、第1分散液をコーティング法により塗布する場合に形成され易い。第1高分子層の少なくとも一部は、コート電極箔とセパレータとの間、あるいは、コート電極箔と他の電極箔との間に介在している。第1高分子層は、コート電極箔の端面に形成されてなくてよい。
【0066】
コート電極箔の単位面積当たりの第1高分子層の質量は特に限定されず、必要に応じて適宜設定される。本実施形態によれば、コート電極箔に、単位面積当たり0.1mg/cm以上の第1高分子層を付着させることができる。第1高分子層の上記質量は、1mg/cm以下であってよい。これにより、得られる電解コンデンサの耐電圧が低下することが抑制され易くなる。
【0067】
第1高分子層の上記質量は、第1分散液の塗布前後における電極箔の質量の差から算出できる。また、第1高分子層の上記質量は、コート電極箔を熱重量分析法(TGA法)により分析することによって算出される。TGA法では、例えば、試料を一定の速度で温度を上昇させた際の熱変化および試料の減少量等が測定される。この測定値に基づいて、コート電極箔に付着していた第1高分子層の質量を算出することができる。
【0068】
第1高分子層の電気伝導率は、高いほどESRの低減効果が得られる。第1高分子層の電気伝導率は、例えば、30S/cm以上であってよく、300S/cm以上であってよい。第1高分子層の電気伝導率は、含有される導電性高分子の分子量が大きいほど、高くなり易い。導電性高分子の分子量が大きくなると、第1分散液の粘度は上昇し易い。そのため、第1分散液の粘度が過度に大きくならないように、導電性高分子の分子量を設定すればよい。
【0069】
第1高分子成分の濃度が3質量%以上の第1分散液を用いる場合、第1高分子層の電気伝導率は、例えば、170S/cm以下にすることが好ましい。これにより、第1分散液の過度な粘度上昇は抑制される。上記の場合、第1高分子層の電気伝導率は、150S/cm以下であってよく、120S/cm以下であってよい。第1高分子層の電気伝導率は、第1分散液を基材に塗布した後、第1分散媒を除去して得られたフィルムの電気伝導率である。フィルムの電気伝導率は、JIS K 7194:1994に準じた4探針法により測定される。
【0070】
(第2高分子層)
コンデンサ素子には、上記した第2高分子層が配置される。第2高分子層により、静電容量がさらに大きくなり、ESRがより低減されることが期待できる。第2高分子層は、例えば、上記第2分散液をコンデンサ素子に含浸することにより配置される。
【0071】
第2高分子成分は、コンデンサ素子の構成部材の孔やピットの内部に付着し得る。第2高分子成分は、また、コート電極箔の表面に形成される第1高分子層の一部を覆うように、コート電極箔の表面に付着する。
【0072】
第2高分子層は、コンデンサ素子中に、例えば、0.01mg/cm以上、1mg/cm未満付着している。第2高分子層の付着量は、第1高分子層と同様の方法により算出される。TGA法を用いてコート電極箔を分析する場合、算出された付着量から、第1高分子層の付着量を引くことにより、コート電極箔に付着していた第2高分子層の量が得られる。TGA法を用いて他の構成部材(例えば、他の電極箔および/またはセパレータ)に付着していた第2高分子層の量を算出した後、これとコート電極箔に付着していた第2高分子層の量との合計が、コンデンサ素子に対する第2高分子層の付着量である。この第2高分子層の付着量の合計を、各構成部材の一方の主面の面積の合計値で除することにより、コンデンサ素子の単位面積当たりに付着する第2高分子層の質量が求められる。
【0073】
コート電極箔の単位面積当たりに付着する第1高分子層の質量(密度)は、当該コート電極箔の単位面積当たりに付着する第2高分子層の質量(密度)より多いことが好ましい。第2高分子層の上記密度に対する第1高分子層の上記密度の比は、コート電極箔の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)等で観察して求められる。第2高分子層の上記密度に対する第1高分子層の上記密度の比は、当該電極箔に接触している第1高分子層の面積を、第1高分子層以外の高分子層の面積で除することにより算出される。両層の密度は、同じコート電極箔を、同じ観察視野で観察することにより算出される。通常、第1高分子層と第2高分子層との間には界面が確認できるため、両層を区別することは可能である。第1高分子層の付着量、面積被覆率および密度等は、コート電極箔のうち、意図的に第1高分子層が形成されなかった領域を除いて算出される。100μm以上の面積を有する観察視野を設定することが望ましい。
【0074】
(陽極箔)
陽極箔は、チタン、タンタル、アルミニウムおよびニオブ等の弁作用金属を少なくとも1種含む金属箔である。陽極箔は、弁作用金属を、弁作用金属を含む合金または弁作用金属を含む化合物等の形態で含んでいてもよい。陽極箔の厚みは特に限定されず、例えば、15μm以上、300μm以下である。厚みは、任意の5点における平均値である(以下、同じ)。陽極箔の表面は、エッチング等により粗面化されていてもよい。
【0075】
陽極箔の表面には、誘電体層が形成されている。誘電体層は、例えば、陽極箔を化成処理することにより形成される。この場合、誘電体層は、弁作用金属の酸化物を含み得る。なお、誘電体層はこれに限らず、誘電体として機能するものであればよい。誘電体層は、陽極箔の端面にも形成されていることが望ましい。
【0076】
(陰極箔)
陰極箔は、陰極としての機能を有していればよく、特に限定されない。陰極箔は、金属箔であってよい。金属の種類は特に限定されず、陽極箔と同様に、弁作用金属または弁作用金属を含む合金であってよい。陰極箔の厚みは特に限定されず、例えば、15μm以上、300μm以下である。陰極箔の表面は、必要に応じて、粗面化されてもよいし、化成処理されてもよい。
【0077】
金属箔が弁作用金属を含む場合、金属箔は、カーボンおよび弁作用金属よりイオン化傾向の低い金属よりなる群から選択される少なくとも1種を含む導電性の被覆層を備えてよい。これにより、耐酸性が向上し易くなる。金属箔がアルミニウムを含む場合、被覆層は、カーボン、ニッケル、チタン、タンタルおよびジルコニウムよりなる群から選択される少なくとも1種を含んでよい。なかでも、コストおよび抵抗の点で、被覆層は、ニッケルおよび/またはチタンを含んでいてよい。
【0078】
被覆層の厚みは特に限定されない。被覆層の厚みは、例えば、5nm以上、200nm以下であってよく、10nm以上、200nm以下であってよい。被覆層の厚みは、例えばX線光電子分光法(XPS法)により測定することができる。被覆層は、例えば、金属箔に、上記金属を蒸着、スパッタリング等することにより形成することができる。あるいは、被覆層は、金属箔に、導電性炭素材料を蒸着したり、導電性炭素材料を含むカーボンペーストを塗布したりすることにより形成することができる。導電性炭素材料としては、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラックなどが挙げられる。
【0079】
(セパレータ)
複数の電極箔が積層される場合、電極間に第1高分子層とともにセパレータを介在させてもよい。電極間に十分な厚みの第1高分子層が配置される場合、セパレータは省略されてもよい。
【0080】
セパレータは、多孔質である限り特に限定されない。セパレータとしては、繊維を含む織物、編物および不織布等の繊維構造体が挙げられる。セパレータの厚みは特に限定されず、例えば10~300μmである。
【0081】
セパレータの材質は特に限定されない。セパレータの材質としては、ナイロン繊維、アラミド繊維、アクリル繊維およびポリエステル繊維等の合成繊維、セルロース等が挙げられる。なかでも、セルロース製の繊維構造体は、低コストであり、かつ、第1分散液と馴染みがよい点で、セパレータとして適している。
【0082】
一方、セルロースは水酸基を有するため、水に対して膨潤し易い。そのため、第1分散液がセルロース製のセパレータに接触すると、シワが発生し易い。シワを防止する観点から、セパレータは、合成繊維を含んでいてよく、セルロース繊維とともに紙力増強剤を含んでいてよい。セパレータのシワが抑制されることにより、セパレータの厚みが均一になる。そのため、電解コンデンサにおいて、耐電圧および極間抵抗が場所によってバラツキつくことが抑制される。
【0083】
合成繊維を含む繊維構造体(以下、第1繊維構造体と称す。)において、合成繊維の含有量は、繊維構造体の50質量%以上であってよく、70質量%以上であってよい。合成繊維の種類は特に限定されない。
【0084】
第1繊維構造体は、第1分散液、さらに必要に応じて添加される第2分散液および電解液と馴染みがよい点で、さらにセルロースを含んでいてよい。セルロースの含有量は、電解液の保持性を考慮すると、繊維構造体の10質量%以上であってよい。セルロースの含有量は、50質量%未満であってよく、30質量%以下であってよく、20質量%以下であってよい。
【0085】
セルロース繊維とともに紙力増強剤を含む繊維構造体(以下、第2繊維構造体と称す。)において、紙力増強剤の種類は特に限定されず、湿潤紙力増強剤および/または乾燥紙力増強剤であってよい。これらは、それぞれ単独で用いられてもよく、組み合わせて用いられてもよい。湿潤紙力増強剤としては、例えば、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリンおよびポリビニルアミンよりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。乾燥紙力増強剤としては、例えば、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、デンプンおよびカルボキシメチルセルロースよりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0086】
紙力増強剤は、第2繊維構造体の原料(例えば、セルロース繊維を含むスラリー)に添加されてもよいし、第2繊維構造体にスプレー等により塗布されてもよい。
【0087】
紙力増強剤が添加される場合、第2繊維構造体は、セルロースを40質量%以上含んでいてよく、70質量%以上含んでいてよい。第2繊維構造体は、さらに合成繊維を含んでよい。合成繊維の含有量は、例えば、第2繊維構造体の10質量%以上、60質量%以下であってよい。
【0088】
各繊維構造体の密度は特に限定されない。密度の小さい繊維構造体であっても、合成繊維を50質量%以上含むか、あるいは、セルロース繊維とともに紙力増強剤を含むことにより、第1分散液による繊維構造体の膨潤は抑制される。繊維構造体の密度は、例えば、0.2g/cm以上、0.45g/cm未満であってよく、0.25g/cm以上、0.40g/cm以下であってよい。
【0089】
各繊維構造体の厚みは特に限定されない。各繊維構造体の厚みは、例えば、20μm以上、100μm以下であってよく、30μm以上、60μm以下が好ましい。これにより、得られる電解コンデンサの短絡が抑制され易くなるとともに、ESRの低減効果はより向上し易くなる。
【0090】
(陰極引出層)
陰極引出層は、例えば、高分子層を覆うように形成されたカーボン層と、カーボン層の表面に形成された金属ペースト層と、を有している。カーボン層は、黒鉛等の導電性炭素材料と樹脂を含む。金属ペースト層は、例えば、金属粒子(例えば、銀)と樹脂とを含む。なお、陰極引出層の構成は、この構成に限定されない。陰極引出層の構成は、集電機能を有する構成であればよい。
【0091】
(樹脂封止材)
樹脂封止材は、例えば、熱硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、不飽和ポリエステル等が挙げられる。外装体材料は、フィラー、硬化剤、重合開始剤、および/または触媒などを含んでもよい。
【0092】
図2は、本実施形態に係る電解コンデンサの一例(巻回型の電解コンデンサ)を模式的に示す断面図であり、図3は、同電解コンデンサに係るコンデンサ素子の一部を展開した斜視図である。
【0093】
電解コンデンサは、例えば、コンデンサ素子10と、コンデンサ素子10を収容する有底ケース101と、有底ケース101の開口を塞ぐ封止部材102と、封止部材102を覆う座板103と、封止部材102から導出され、座板103を貫通するリード線104A、104Bと、リード線とコンデンサ素子10の電極とを接続するリードタブ105A、105Bとを備える。有底ケース101の開口端近傍は、内側に絞り加工されており、開口端は封止部材102にかしめるようにカール加工されている。
【0094】
コンデンサ素子10は、例えば、図3に示すような巻回体である。巻回体は、リードタブ105Aと接続された陽極箔11と、リードタブ105Bと接続された陰極箔12と、セパレータ13とを備える。陽極箔11および陰極箔12の少なくとも一方には、図示しない第1高分子層、さらには第2高分子層が形成されている。
【0095】
陽極箔11および陰極箔12は、セパレータ13を介して巻回されている。巻回体の最外周は、巻止めテープ14により固定される。なお、図3は、巻回体の最外周を止める前の、一部が展開された状態を示している。
【0096】
電解コンデンサは、少なくとも1つのコンデンサ素子を有していればよく、複数のコンデンサ素子を有していてもよい。電解コンデンサに含まれるコンデンサ素子の数は、用途に応じて決定すればよい。
【0097】
[実施例]
以下、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0098】
《実施例1》
定格電圧35Vの電解コンデンサを以下の要領で作製した。
(a)構成部材の準備
厚さ100μmのアルミニウム箔にエッチング処理を行い、アルミニウム箔の表面を粗面化した。粗面化されたアルミニウム箔の表面を化成処理して誘電体層を形成し、陽極箔を得た。
厚さ50μmのアルミニウム箔にエッチング処理を行い、アルミニウム箔の表面を粗面化し、陰極箔を得た。
厚さ50μmの不織布をセパレータの原料として準備した。不織布は、合成繊維50質量%(ポリエステル繊維25質量%、アラミド繊維25質量%)とセルロース50質量%とから構成されており、紙力増強剤としてポリアクリルアミドを含む。不織布の密度は0.35g/cmであった。
【0099】
(b)第1分散液の準備
3,4-エチレンジオキシチオフェンと、ポリスチレンスルホン酸(PSS、重量平均分子量10万)とを、イオン交換水に溶かし、混合溶液を調製した。混合溶液を撹拌しながら硫酸鉄(III)(酸化剤)を添加し、重合反応を行った。その後、反応液を透析し、未反応モノマーおよび酸化剤を除去し、約5質量%のPSS(ドーパント)がドープされたポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT/PSS、第1高分子成分)を含む第1分散液を得た。
第1分散液における第1高分子成分の濃度は、2質量%であった。振動式粘度計((株)セコニック製、VM-100A)を用いて、室温(20℃)の条件で測定される第1分散液の粘度は、40mPa・sであった。
【0100】
(c)第1高分子層の形成
グラビアコーターを用いて、陽極箔の両面に第1分散液を塗布した。その後、乾燥処理を行って、陽極箔の両面に第1高分子層を形成した。陽極箔に形成された第1高分子層の単位面積当たりの質量は、0.3mg/cmであった。陽極箔の一方の主面の第1高分子層による面積被覆率は99%であった。第1高分子層の電気伝導率は400S/cmであった。
【0101】
(d)コンデンサ素子の作製
陽極箔、陰極箔およびセパレータをそれぞれ所定の大きさに切断した。
陽極箔および陰極箔に陽極リードタブおよび陰極リードタブを接続し、リードタブを巻き込みながら陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回した。巻回体から突出する各リードタブの端部に陽極リード線および陰極リード線をそれぞれ接続した。得られた巻回体に再度化成を行い、陽極箔の端面に誘電体層を形成した。巻回体の外側表面の端部を巻止めテープで固定して、コンデンサ素子を得た。
【0102】
(e)第2分散液の準備および第2高分子層の形成
3,4-エチレンジオキシチオフェンと、ポリスチレンスルホン酸(PSS、重量平均分子量10万)とを、イオン交換水に溶かし、混合溶液を調製した。混合溶液を撹拌しながら硫酸鉄(III)(酸化剤)を添加し、重合反応を行った。その後、反応液を透析し、未反応モノマーおよび酸化剤を除去し、約5質量%のPSS(ドーパント)がドープされたポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT/PSS、第2高分子成分)を含む第2分散液を得た。
第2分散液における第2高分子成分の濃度は、1.5質量%であった。振動式粘度計((株)セコニック製、VM-100A)を用いて、室温(20℃)の条件で測定される第2分散液の粘度は、30mPa・sであった。
減圧雰囲気(40kPa)中で、第2分散液にコンデンサ素子を5分間浸漬した後、乾燥処理を行って、第2高分子層を形成した。
【0103】
(f)電解液の含浸
溶媒としてエチレングリコール(EG)を準備した。EGに、第2スルホン酸として5-スルホサリチル酸(2価の酸成分)、塩基成分としてトリエチルアミンを合計で25質量%の濃度で溶解させて電解液を調製した。トリエチルアミンに対する5-スルホサリチル酸の当量比は2.0とした。
第2分散液の含浸(e)の後、減圧雰囲気(40kPa)中で、電解液にコンデンサ素子を5分間浸漬した。
【0104】
(g)コンデンサ素子の封止
電解液を含浸させたコンデンサ素子を封止して、図2に示すような電解コンデンサ(A1)を完成させた。その後、定格電圧を印加しながら、95℃で90分のエージングを行った。
【0105】
<評価>
電解コンデンサA1について、エージング後の静電容量、ESRを測定(測定温度20℃)した。評価結果は、比較例1で作製された電解コンデンサB1の静電容量およびESRに対する相対値として示した。
【0106】
静電容量およびESRを測定した後、電解コンデンサA1を分解して各構成部材を取り出した。コンデンサ素子全体における第2高分子層の単位面積当たりの質量は0.07mg/cmであった。陽極箔の一方の主面の第2高分子層による面積被覆率は83%であった。
【0107】
《実施例2》
第1高分子層の形成(c)において、グラビアコーターを用いて陽極箔および陰極箔の両面にそれぞれ第1分散液を塗布したこと以外、実施例1と同様にして、電解コンデンサA2を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。陽極箔および陰極箔に形成された第1高分子層の単位面積当たりの質量は、それぞれ0.3mg/cmであった。陽極箔および陰極箔の一方の主面の第1高分子成分による面積被覆率は、それぞれ99%であった。
【0108】
《実施例3》
第1高分子層の形成(c)において、グラビアコーターを用いて陽極箔およびセパレータの両面にそれぞれ第1分散液を塗布したこと以外、実施例1と同様にして、電解コンデンサA3を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。陽極箔に形成された第1高分子層の単位面積当たりの質量は、0.3mg/cmであり、セパレータに形成された第1高分子層の単位面積当たりの質量は、0.02mg/cmであった。陽極箔の一方の主面の第1高分子層による面積被覆率は、99%であり、セパレータの一方の主面の第1高分子層による面積被覆率は98%であった。
【0109】
《実施例4》
重量平均分子量5万のPSSを用いたこと以外、実施例1と同様にして第1分散液を準備した。第1分散液における第1高分子成分の濃度は、4質量%であった。振動式粘度計((株)セコニック製、VM-100A)を用いて、室温(20℃)の条件で測定される第1分散液の粘度は、105mPa・sであった。
【0110】
上記第1分散液を用いたこと以外、実施例1と同様にして、電解コンデンサA4を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。陽極箔に形成された第1高分子層の単位面積当たりの質量は、0.4mg/cmであった。陽極箔の一方の主面の第1高分子層による面積被覆率は99%であった。第1高分子層の電気伝導率は150S/cmであった。
【0111】
《比較例1》
第1高分子層の形成(c)を行わなかったこと以外、実施例1と同様にして、電解コンデンサB1を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
《実施例5》
第1高分子層の形成(c)において、陽極箔に替えて、グラビアコーターを用いて陰極箔の両面にそれぞれ第1分散液を塗布したこと以外、実施例1と同様にして、電解コンデンサA5を作製し、同様に評価した。結果を表2に示す。陰極箔に付着した第1高分子層の単位面積当たりの質量は、0.3mg/cmであった。陰極箔の一方の主面の高分子層による面積被覆率は99%であった。
【0114】
《実施例6》
第1高分子層の形成(c)において、陽極箔に替えて、グラビアコーターを用いて陰極箔およびセパレータの両面にそれぞれ第1分散液を塗布したこと以外、実施例1と同様にして、電解コンデンサA6を作製し、同様に評価した。結果を表2に示す。陰極箔に形成された第1高分子層の単位面積当たりの質量は、0.3mg/cmであり、セパレータに形成された第1高分子層の単位面積当たりの質量は、0.02mg/cmであった。陰極箔の一方の主面の第1高分子層による面積被覆率は、99%であり、セパレータの一方の主面の第1高分子層による面積被覆率は98%であった。
【0115】
《実施例7》
実施例4で調製された第1分散液を用いたこと以外、実施例5と同様にして、電解コンデンサA7を作製し、同様に評価した。結果を表2に示す。陰極箔に形成された第1高分子層の単位面積当たりの質量は、0.4mg/cmであった。陰極箔の一方の主面の第1高分子層による面積被覆率は99%であった。
【0116】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、特に高リプル電流が流れる電解コンデンサに好適である。
【0118】
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。
【符号の説明】
【0119】
100:電解コンデンサ
101:有底ケース
102:封止部材
103:座板
104A、104B:リード線
105A、105B:リードタブ
10:コンデンサ素子
11:陽極箔
12:陰極箔
13:セパレータ
14:巻止めテープ
図1
図2
図3