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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】ブースタアンテナ、および通信装置
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20240531BHJP
   H01Q 7/00 20060101ALI20240531BHJP
   H01Q 19/02 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
G06K7/10 168
G06K7/10 232
G06K7/10 240
H01Q7/00
H01Q19/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022167742
(22)【出願日】2022-10-19
(65)【公開番号】P2024060400
(43)【公開日】2024-05-02
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】狩野 大輝
(72)【発明者】
【氏名】大谷 俊朗
(72)【発明者】
【氏名】高林 真一郎
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/129460(WO,A1)
【文献】特開2009-021970(JP,A)
【文献】特開2009-230707(JP,A)
【文献】特開2010-263690(JP,A)
【文献】特開2004-253858(JP,A)
【文献】特開2008-059524(JP,A)
【文献】国際公開第2011/135934(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0046145(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/10
H01Q 7/00
H01Q 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NFC(Near Field Communication)アンテナ及びセルラー方式によるセルラーアンテナを有した通信装置に用いるブースタアンテナであって、
コイルを構成するパターンと、
前記パターンに電気的に接続され、前記NFCアンテナの特性に応じた容量を有するコンデンサと、
から構成される組を有し、
前記パターンは、前記NFCアンテナ及び前記セルラーアンテナによる信号の有効範囲内に設置される、ブースタアンテナ。
【請求項2】
前記組を複数有し、
複数の前記組は、信号線を介して接続され、
複数の前記組における少なくとも1つのパターンが、前記NFCアンテナによる信号の有効範囲内に設置される、
請求項1に記載のブースタアンテナ。
【請求項3】
2つまたは3つの前記組にて構成される、請求項2に記載のブースタアンテナ。
【請求項4】
NFC(Near Field Communication)アンテナと、
セルラー方式によるセルラーアンテナと、
ブースタアンテナと、
を有し、
前記ブースタアンテナは、
コイルを構成するパターンと、
前記パターンに電気的に接続され、前記NFCアンテナの特性に応じた容量を有するコンデンサと、
から構成される組を有し、
前記ブースタアンテナのパターンは、前記NFCアンテナ及び前記セルラーアンテナによる信号の有効範囲内に設置される、通信装置。
【請求項5】
前記ブースタアンテナは、前記組を複数有し、
複数の前記組は、信号線を介して接続され、
複数の前記組における少なくとも1つのパターンが、前記NFCアンテナによる信号の有効範囲内に設置される、
請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
複数の前記組を有するブースタアンテナを複数有し、
複数の前記ブースタアンテナの間において、ブースタアンテナを構成する少なくとも1つのパターンが、他のブースタアンテナを構成する少なくとも1つのパターンからの信号の有効範囲内に配置される、請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記ブースタアンテナを複数有し、
複数の前記ブースタアンテナは、前記NFCアンテナに対する結合特性に応じて配置される、
請求項4に記載の通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブースタアンテナ、および通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アンテナ装置を備えた通信装置として、タブレット端末やPOS端末などが普及している。このような装置では、近距離無線通信によるアンテナ装置を用いて、カードなどの情報媒体と通信を行って情報の送受信が行われている。一方、アンテナ装置においては、そのアンテナ出力の確保やセキュリティ保護の観点などから、通信装置内の設置等に制約が生じる。例えば、特許文献1では、情報端末のループアンテナの配置に制約されることなく、媒体を読み取る際の操作性を向上させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-120936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、上述した従来の事情を鑑みて案出され、アンテナ装置を有する通信装置と、周辺機器との通信を行う際の利便性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、NFC(Near Field Communication)アンテナ及びセルラー方式によるセルラーアンテナを有した通信装置に用いるブースタアンテナであって、コイルを構成するパターンと、前記パターンに電気的に接続され、前記NFCアンテナの特性に応じた容量を有するコンデンサと、から構成される組を有し、前記パターンは、前記NFCアンテナ及び前記セルラーアンテナによる信号の有効範囲内に設置される、ブースタアンテナを提供する。
【0006】
また、本開示は、NFC(Near Field Communication)アンテナと、セルラー方式によるセルラーアンテナと、ブースタアンテナと、を有し、前記ブースタアンテナは、コイルを構成するパターンと、前記パターンに電気的に接続され、前記NFCアンテナの特性に応じた容量を有するコンデンサと、から構成される組を有し、前記ブースタアンテナのパターンは、前記NFCアンテナ及び前記セルラーアンテナによる信号の有効範囲内に設置される、通信装置を提供する。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本開示の表現を装置やシステムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、アンテナ装置を有する通信装置と、周辺機器との通信を行う際の利便性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明にて考慮する課題を説明するための説明図
図2】本発明にて考慮する課題を説明するための説明図
図3】本発明のアンテナ装置の構成例を概念的に示すための概略図
図4】本発明の一実施の形態に係るアンテナ装置の構成例を示す概略図
図5】本発明の一実施の形態に係るブースタアンテナの構成例を示す概略図
図6】本発明の一実施の形態に係るブースタアンテナの構成例を示す概略図
図7】本発明の一実施の形態に係るブースタアンテナの構成例を示す概略図
図8】本発明の一実施の形態に係るアンテナ装置の変形例1を示す概略図
図9】本発明の変形例1に係るブースタアンテナの構成例を示す概略図
図10】本発明の一実施の形態に係るアンテナ装置の変形例3を示す概略図
図11】本発明の一実施の形態に係るアンテナ装置の変形例4を示す概略図
図12】本発明の一実施の形態に係るアンテナ装置の磁界強度を説明するための説明図
図13】本発明の一実施の形態に係るアンテナ装置の磁界強度を説明するための説明図
図14】本発明の変形例1に係るアンテナ装置の磁界強度を説明するための説明図
図15】本発明の一実施の形態に係る通信装置の配置例を示す概略図
図16】本発明の変形例3に係る通信装置の配置例を示す概略図
図17】本発明の変形例3に係る通信装置の配置例を示す概略図
図18】本発明の変形例1に係る通信装置の配置例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示に至る経緯)
従来、様々な無線通信規格に対応したアンテナ装置を有する通信装置が普及している。このような通信装置を用いる際のユーザの利便性向上が求められている。例えば、無線通信規格の1つであるNFC(Near Field Communication)は、コンテンツのアクセスキーとしての利用、キャッシュレス決済、アクセス制御などにて利用されている。そのような中で例えば、以下のような課題がある。
【0011】
図1は、1つの通信装置100に、近距離無線通信規格の1つであるNFC通信を行うためのNFCアンテナ110と、より広範囲の無線通信を行うためのセルラー方式によるセルラーアンテナ160とが設けられた構成の概略図である。NFCアンテナ110は、13.56MHzを中心とする周波数を利用し、その有効範囲は約10cm程度である。また、セルラーアンテナ160は、移動体通信ネットワークにおける無線通信方式の1つであるセルラー方式に対応したアンテナであり、その有効範囲は、最大で1km以上である。
【0012】
1つ目の課題としては、例えば、通信装置100に対して、カード200などの情報を保持する媒体を近づけた場合が想定される。上述したように、NFCアンテナ110は、有効範囲が約10cm程度であるため、カード200と通信を行う際にはその範囲内にカード200が配置される。このとき、NFCアンテナ110からの信号Sは、セルラーアンテナ160の信号への干渉がほぼ無いため、影響は生じない。また、セルラーアンテナ160からの信号Sは、NFCアンテナ110の信号への干渉は無く、影響は生じない。
【0013】
一方、カード200からの信号Sが問題となり得る。信号Sには、NFC通信とセルラー通信による混変調した信号成分が含まれる。このとき、NFCアンテナ110側における読み取りへの干渉は少なく、影響は生じない。一方、セルラーアンテナ160側においては、カード200の位置によっては、セルラー通信への影響が生じ得る。
【0014】
例えば、セルラーアンテナ160を用いて所定の決済センター(不図示)と通信を行いながら、NFCアンテナ110とカード200間のNFC処理を行う場合、これらが同時に動作することによって、通信の切断や決済処理の失敗などの影響が生じ得る。
【0015】
2つ目の課題としては、例えば、通信装置100が決済端末として機能し、PCI(Payment Card Industry)-PTS(PIN Transaction Security)などのセキュリティ要件のための規制が考慮される場合が想定される。図2は、上記のようなセキュリティ要件を説明するための概略図である。PCI-PTSのセキュリティ要件においては、NFC通信を制御するためのNFC IC130および所定の処理(例えば、決済処理)を行うためのCPU(Central Processing Unit)140は、セキュリティの保護のために、保護エリア150内に配置する必要がある。また、NFC IC130とNFCアンテナ110とは、マッチング回路120を介して接続される。マッチング回路120は、NFC IC130とNFCアンテナ110との間のインピーダンスの調整を行う。
【0016】
ここで、アンテナ装置の特性(Q値)を確保するために、NFC IC130とNFCアンテナ110の間の配線の長さである配線長Dには制約が生じる。NFC IC130とNFCアンテナ110の間の配線長Dが長い場合には、Q値が下がり、特性の劣化が発生してしまう。つまり、セキュリティ要件を考慮した場合、保護エリア150の大きさやNFCアンテナ110の配置に制約が生じる。
【0017】
つまり、複数の無線通信間の干渉に関する問題と、アンテナ装置の配置上の制約に係る問題とがあり、これらの両方を考慮する必要がある。例えば、特許文献1では、上記のような複数の異なる無線通信規格を同時並行的に利用する場合の問題や、セキュリティ要件における機器の配置の制約については、十分に検討されてはいない。
【0018】
以下、添付図面を適宜参照しながら、本開示に係るブースタアンテナ、アンテナ装置、および通信装置を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、あるいは、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されない。
【0019】
上記のような課題を考慮し、NFC通信を利用する際のユーザの利便性を向上させるために、上記の課題の少なくとも一方を解決可能な本開示に特有の構成について説明する。
【0020】
<実施の形態1>
本発明の一実施形態である実施の形態1では、図3に示すように、NFCアンテナ110のNFC信号の有効範囲を拡張しつつ、セキュリティ要件における配線の制約を満たすため、近距離無線通信(すなわち、NFC通信)の信号に対する信号増幅器としてのブースタアンテナ400を用いる。つまり、ブースタアンテナ400によりNFC通信の有効範囲を拡張することで、カード200とセルラーアンテナ160との間の距離を広げ、信号Sによるセルラー通信への影響を低減させる。また、ブースタアンテナ400によりNFC通信の有効範囲を拡張しつつも、配線長Dは維持させることで、セキュリティ要件も満たす。以下、本実施の形態に係るブースタアンテナ400の構成例について説明する。
【0021】
[装置構成]
図4は、本実施の形態に係る通信装置に含まれるアンテナ装置周りの構成例を示す概略図である。図2を用いて説明したように、例えば、PCI-PTSのセキュリティ保護の観点に基づき、保護エリア150内にCPU140およびNFC IC130が配置される。CPU140は、例えば、NFC IC130を介して所定の機能(例えば、決済処理)を提供するための処理部である。CPU140は、NFC IC130に対して、外部との通信を行う際の制御を行う。NFC IC130は、CPU140からの指示に基づき、マッチング回路120を介してNFCアンテナ110と制御信号を送受信することにより、外部との通信を行う際の通信制御を行う。
【0022】
保護エリア150内に配置されるNFC IC130と、保護エリア150外に配置されるNFCアンテナ110とは、銅線などの信号線により通信可能に接続される。この場合の配線長には、特性確保のために一定の制約が生じるため、その制約内に収まるようにNFC IC130とNFCアンテナ110とが配置される。更に、NFCアンテナ110とNFC IC130との間にはマッチング回路120が配置される。マッチング回路120は、NFC IC130とNFCアンテナ110との間のインピーダンスの調整を行うことにより、適切な信号の送受信を実現する。
【0023】
NFCアンテナ110は、NFC規格に基づいて、外部の媒体と電磁誘導方式により結合し、情報の送受信を行う。更に、NFCアンテナ110からの電磁波信号の有効距離の範囲内に、ブースタアンテナ400が配置される。ブースタアンテナ400は、NFCアンテナ110から発信される電磁波信号を増強し、電磁波信号の有効範囲を拡張する機能を有する。
【0024】
なお、図中には示していないが、NFCアンテナ110と通信可能な情報媒体(例えば、カード200)は、NFC通信を行うためのICチップやアンテナ(カードアンテナなど)、記憶部等を含んで構成される。ICチップは、例えば、電磁誘導方式で信号伝達可能な集積回路として構成されてよい。
【0025】
[ブースタアンテナ]
図5は、本実施の形態に係るブースタアンテナ400の構成例を示す図である。なお、以下の説明にて用いる各図において、X軸、Y軸、Z軸にて示す3次元座標系およびその向きは対応しているものとする。しかし、この対応関係は一例であり、適宜調整されてよい。
【0026】
図5(a)は、ブースタアンテナ400の構成例を示す概略図である。ブースタアンテナ400は、コイルとしてのパターン401、および共振用のキャパシタとして機能するコンデンサ402から構成される共振回路を含んで構成される。コンデンサ402の容量は、NFCアンテナ110の特性に合わせて調整され、共振周波数が約13.5MHzとなるように構成される。また、パターン401の巻き数や形状は一例であり、これに限定するものではない。
【0027】
図5(b)~図5(e)は、ブースタアンテナ400のより詳細な構成例を示す図である。図5(b)は、ブースタアンテナ400をZ軸に沿って上側から見た図である。図5(c)は、ブースタアンテナ400をZ軸に沿って下側から見た図である。図5(d)は、ブースタアンテナ400をY軸に沿って側面側から見た図である。図5(e)は、図5(b)に示す領域Sの部分の拡大図である。領域Sは、図5(a)に示すコンデンサ402に相当する位置の構成例を示し、メッキリードPLが構成される。
【0028】
図5(d)に示すように、ブースタアンテナ400は、層構造にて構成される。ここでの層の一例として、ブースタアンテナ400は、フェライト部501、基板502、パターン背面部503、パターン部504、補強部505、および接着部506を含んで構成される。ここでの層構造に対し、更に追加の層が設けられてよい。
【0029】
ブースタアンテナ400の寸法の例としては、図5(b)に示すX軸方向に沿った長手方向を50.2±0.15mm、Y軸方向に沿った短手方向を27.3±0.15mmにて設計してよい。なお、上記の寸法は一例であり、ブースタアンテナ400の外形形状、外形の寸法、部分の寸法、層の厚みなどは、要求される特性に応じて調整されてよい。
【0030】
図6および図7は、ブースタアンテナ400のパターン周り(図5のパターン部504や基板502の部位に相当)の構成例を示す図である。図6(a)は、巻線コイル型(ケーブル型)の一例として、パターン601のみから構成されるアンテナ部600の例を示している。図6(b)は、基板型の一例として、アンテナパターン611とフィルム612から構成されるフレキシブル基板610を示す。図6(c)は、基板型の一例として、アンテナパターン621とガラスエポキシ基板622から構成されるリジッド基板620を示す。
【0031】
図7(a)は、図6(b)や図6(b)示した基板型のアンテナ部に磁性体シートを重ねた構成の例を示す図である。図7(b)は、図7(a)に示した構成のA-A位置における断面図を示す。図7(b)に示すように、パターン701、基板702、およびシート703が層構造を構成する。図7(c)は、図6(b)や図6(b)示した基板型のアンテナ部に磁性体シートが無い場合の構成の例を示す図である。図7(d)は、図7(c)に示した構成のA’-A’位置における断面図を示す。磁性体シートを設けることで、例えば、通信距離の増大や混変調歪の減少を図ることが可能となる。
【0032】
なお、ブースタアンテナの構成(層構造など)は上記に限定するものではない。例えば、フェライト部(フェライトシートなど)について、ブースタアンテナが要求される特性を確保できれば、適宜省略されてもよい。また、図5に示すようなブースタアンテナは、ブースタアンテナを取り付ける位置によって層構造が異なっていてもよい。
【0033】
(変形例1)
図8は、本実施の形態に係るブースタアンテナの変形例1を示す概略図である。ブースタアンテナの構成が図4の構成例とは異なり、それ以外の構成は同様である。図8において、ブースタアンテナ800は、パターンとコンデンサを組とし、それらが複数(ここでは2組)設けられた構成を有する。図9に示すように、パターン801、802、およびコンデンサ803、804が設けられ、これらが配線805にて接続される。
【0034】
図8に示すように、パターン801がNFCアンテナ110のNFC信号の有効範囲内に設置され、パターン801は、ブースタアンテナ400と同様に信号の有効範囲を拡張することができる。更にはパターン801に接続されたパターン802も信号の有効範囲を拡張することができる。このとき、パターン801とパターン802の間の配線805の長さを調整することで、更なる信号の有効範囲の拡張が可能である。例えば、ユーザは、パターン801、または、パターン802のいずれかの周辺にカード200をかざすことで、NFC通信を行うことができる。
【0035】
また、パターン801とパターン802との間の配線805は、信号が低損失である特性を有するため、その長さを長配線とすることが可能である。よって、上述したような、NFCアンテナ110とNFC IC130との間の配線長Dのような制約は生じないため、図8に示すような構成のブースタアンテナ800を用いることで、ユーザの利便性を向上させるような配置、構成が可能となる。
【0036】
(変形例2)
図8図9の構成では、2つのパターン801、802を配線805にて有線接続する構成を示したが、これに限定するものではない。例えば、図4に示すブースタアンテナ400を複数、層方向(ブースタアンテナの厚さ方向)に並べるように配置してもよい。このとき、アンテナ間で、結合特性が確保できれば、その配置は特に限定するものではない。また、複数のブースタアンテナ400を配置する場合、それぞれのサイズは同一である必要は無く、結合特性を確保することを目的として異なっていてもよい。
【0037】
(変形例3)
図10は、本実施の形態に係るブースタアンテナの変形例3を示す概略図である。ブースタアンテナの構成が図4の構成例とは異なり、それ以外の構成は同様である。図10において、ブースタアンテナ1000は、パターンとコンデンサの3つの組を含んで構成される。パターン1001がNFCアンテナ110のNFC信号の有効範囲内に設置され、パターン1001は、ブースタアンテナ400と同様に信号の有効範囲を拡張することができる。更にはパターン1001に接続された残りの2つのパターン1002、1003も信号の有効範囲を拡張することができる。このとき、各パターンの間の配線の長さを調整することで、更なる信号の有効範囲の拡張が可能となる。例えば、ユーザは、パターン1001、パターン1002、または、パターン1003のいずれかの周辺にカード200をかざすことで、NFC通信を行うことができる。
【0038】
(変形例4)
図11は、本実施の形態に係るブースタアンテナの変形例4を示す概略図である。ブースタアンテナの構成が図4の構成例とは異なる。図11においては、図8に示したブースタアンテナ800を2つ設ける構成例を示す。2つのブースタアンテナ1100、1110は、図8のブースタアンテナ800と同様、それぞれ、パターンとコンデンサが組になった構成を有する。ブースタアンテナ1100のパターン1101がNFCアンテナ110のNFC信号の有効範囲内に設置され、ブースタアンテナ1100は、ブースタアンテナ800と同様に信号の有効範囲を拡張することができる。さらに、ブースタアンテナ1100のパターン1102からの信号の有効範囲内にブースタアンテナ1110のパターン1112が設置される。
【0039】
これにより、ブースタアンテナ1110は、ブースタアンテナ1100からの信号の有効範囲を更に拡張することができる。このとき、ブースタアンテナ1100、1110それぞれの各パターンの間の配線の長さを調整することで、更なる信号の有効範囲の拡張や、各パターンの配置を調整することが可能となる。ブースタアンテナ1100、1110の寸法等は同一である必要はなく、結合特性を確保することを目的として異なっていてもよい。例えば、ユーザは、パターン1101、パターン1102、パターン1111、パターン1112のいずれかの周辺にカード200をかざすことで、NFC通信を行うことができる。
【0040】
[信号の拡張]
図12図14を用いて、本実施の形態に係るブースタアンテナによるNFC信号の拡張について説明する。
【0041】
図12(a)は、NFCアンテナ110に対し、図4に示したブースタアンテナ400を、Z軸方向(ここでは、アンテナの厚さ方向とする)に配置した例を示す。図12(b)は、図12(a)に示す配置において、NFC信号の磁界強度の例を示す。ここでは、破線1200の範囲内がNFC信号の有効範囲、すなわち、例えば、カード200などの媒体との通信が可能な範囲となる。図12(b)では、NFCアンテナ110およびブースタアンテナ400による磁界強度が大きいほど濃い色で示している。
【0042】
図13は、図12(b)に示すブースタアンテナ400を用いた場合と、用いていない場合の比較例を示す図である。図13の右側において、ブースタアンテナ400を用いておらず、NFCアンテナ110のみの場合のNFC信号の有効範囲を破線1300に示す。図13に示すように、ブースタアンテナ400を配置することにより、最大通信距離を延ばし、NFC信号の有効範囲を拡張することが可能となる。
【0043】
図14(a)は、NFCアンテナ110に対し、図8に示したブースタアンテナ800を、Z軸方向に配置した例を示す。ここでは、NFCアンテナ110によるNFC信号の有効範囲内にブースタアンテナ800のパターン801を、NFCアンテナ110に対向するように配置し、さらに、X軸方向側にパターン802を配置している。図14(b)は、図14(a)に示す配置において、NFC信号の磁界強度の例を示す。ここでは、破線1400の範囲内がNFC信号の有効範囲となる。パターン801とパターン802の間の配線長には、図2を用いて示したような制約は生じない。すなわち、ブースタアンテナ800は、配線長を延ばしたとしても低損失特性を有する。そのため、配線長を調整することでパターン802を任意の位置に配置することができる。その結果、NFCアンテナ110との距離に関わらず、パターン802を配置することができ、任意の位置にNFC通信における有効範囲(すなわち、NFC通信が可能な範囲)を設けることが可能となる。
【0044】
[ブースタアンテナの設置例]
図15図18を用いて、本実施の形態に係るブースタアンテナの通信装置への設置例について説明する。
【0045】
図15は、通信装置100として、タブレット端末1500の例を示す概略図である。タブレット端末1500の前面側にはタッチパネル1502が配置され、背面側にはハンドストラップ1503が配置されている。また、タブレット端末1500内には、バッテリ1501、NFCアンテナ110、およびセルラーアンテナ160が含まれる。そして、図15(b)に示すように、タブレット端末1500の背面側において、NFCアンテナ110に対向する位置であって、ハンドストラップ1503内に、ブースタアンテナ400が設けられる。そして、タブレット端末1500のユーザは、ブースタアンテナ400の周辺にカード200を配置することで、カード200からの読み取りが可能となる。
【0046】
このような構成により、NFC信号の有効範囲を拡張しつつ、セルラー通信への影響を抑制することが可能となる。具体的には、従来の構成であれば、NFC通信を行う際に、NFCアンテナ110とカード200との距離を約10cm以内とする必要があった。しかし、ブースタアンテナ400を配置することで、例えば、NFCアンテナ110とカード200との距離を20cm程度まで離すことが可能となる。その結果、セルラーアンテナ160とカード200との間の距離も離すことが可能となり、NFC通信による信号の干渉を抑制することが可能となる。なお、図15では、タブレット端末1500に含まれる構成を一部省略しているが、例えば、図4に示す各部位が含まれてよい。
【0047】
図16および図17は、図10に示したブースタアンテナ1000を、タブレット端末1600を設置可能なマウンタ1610内に設置する構成例を示す。このようなマウンタの例としては、車内に設置されるカーマウンタなどが挙げられる。タブレット端末1600内には、NFCアンテナ1601が設けられる。
【0048】
マウンタ1610は、タブレット端末1600を横向きまたは縦向きのいずれでも設置可能であるように構成される。図16は、タブレット端末1600を横向きでマウンタ1610に設置した例を示し、図17は、タブレット端末1600を縦向きでマウンタ1610に設置した例を示す。
【0049】
図16(a)に示すように、マウンタ1610においてタブレット端末1600を設置する位置には、パターン1611、1612が配置される。更には、タブレット端末1600が設置されない位置にパターン1613が配置される。図16(b)に示すように、タブレット端末1600が横向きでマウンタ1610に設置された場合、タブレット端末1600のNFCアンテナ1601の有効範囲内に、パターン1611が位置する。この場合に、ユーザはパターン1613の位置にカード200をかざすことで、カード200の情報の読み取りが可能となる。つまり、タブレット端末1600を固定した状態であっても、タブレット端末1600の背面部に設置されたNFCアンテナ1601とのNFC通信が可能となる。
【0050】
同様に、図17(b)に示すように、タブレット端末1600が縦向きでマウンタ1610に設置された場合、タブレット端末1600のNFCアンテナ1601の有効範囲内に、パターン1612が位置する。この場合に、ユーザはパターン1613の位置にカード200をかざすことで、カード200の情報の読み取りが可能となる。
【0051】
図16および図17では不図示であるが、マウンタ1610は、タブレット端末1600を縦向きまたは横向きで配置する場合の設置位置がユーザに分かるように示してもよい。縦向きまたは横向きで配置する場合のタブレット端末1600の位置が固定できるような構成であれば、タブレット端末1600のNFCアンテナ1601の位置が特定できる。そのため、NFCアンテナ1601の位置に対応して設置されるマウンタ1610のパターン1611、1612の寸法を必要以上に大きく設計する必要がなくなる。
【0052】
また、図16および図17の例では、タブレット端末1600の配置方法として横向きと縦向きそれぞれに対応して2つのパターン1611、1612を設置位置に設けた例を示したが、これに限定するものではない。タブレット端末1600の配置が想定される位置に対応して更に多くのパターンが設けられてもよい。
【0053】
図18は、図8に示したブースタアンテナ800を、タブレット端末1800に設置可能なマウンタ1810内に設置する構成例を示す。マウンタ1810は、例えば、店舗のカウンタにて、タブレット端末1800を設置する側に店員が位置し、その反対側に顧客が位置するような場合の利用が想定される。タブレット端末1800内には、NFCアンテナ1801が設けられる。
【0054】
図18(a)は、マウンタ1810の前面側の例を示し、破線1813にて示す位置にタブレット端末1800を配置可能である。また、マウンタ1810にタブレット端末1800が設置された際に、NFCアンテナ1801の有効範囲にパターン1811が位置するように構成される。図18(b)は、マウンタ1810の背面側の例を示し、破線1814にて示す位置にカード200をかざすことが可能である。破線1814の位置には、パターン1812が位置するように構成される。
【0055】
図18に示すようマウンタ1810を挟んで、複数のユーザが決済動作を行う場合に、顧客はカード200がかざしやすいように構成され、店員はタブレット端末1800を把持して顧客に提示する必要が無くなる。そのため、ユーザの利便性を向上させることが可能となる。
【0056】
以上、本実施の形態により、ブースタアンテナ(例えば、ブースタアンテナ400)は、コイルを構成するパターン(例えば、パターン401)と、パターンに電気的に接続され、NFC(Near Field Communication)アンテナ(例えば、NFCアンテナ110)の特性に応じた容量を有するコンデンサ(例えば、コンデンサ402)と、から構成される組(例えば、図4(a))を有し、パターンは、NFCアンテナによる信号の有効範囲内に設置される。
【0057】
これにより、NFCアンテナからの信号の有効範囲を拡張しつつ、NFCアンテナと通信を行う情報媒体からの信号の影響が他の通信規格への干渉となる影響を抑制することが可能なブースタアンテナを提供することができる。また、NFCアンテナによる有効範囲の設置に係る拡張性を向上させることが可能となる。その結果、アンテナ装置を有する通信装置と、周辺機器との通信を行う際の利便性を向上させることが可能となる。
【0058】
また、ブースタアンテナは、組を複数有し(例えば、ブースタアンテナ800、1000)、複数の組は、信号線(例えば、805)を介して接続され、複数の組における少なくとも1つのパターン(例えば、パターン801、1001)が、NFCアンテナによる信号の有効範囲内に設置される。
【0059】
これにより、NFCアンテナ回りの配線の制約に影響を受けることなく、NFC通信の有効範囲の拡張性を向上させることが可能となる。
【0060】
また、ブースタアンテナは、2つまたは3つの組にて構成される(例えば、ブースタアンテナ800、1000)。
【0061】
これにより、NFCアンテナ回りの配線の制約に影響を受けることなく、2つまたは3つの位置にてNFC通信の有効範囲を拡張させることが可能となる。
【0062】
また、複数のブースタアンテナ(例えば、ブースタアンテナ400)は、NFCアンテナに対する結合特性に応じて配置される。
【0063】
これにより、パターンとコンデンサとからなる組を配線で接続しなくても、NFCアンテナに対する結合特性に応じて任意の位置に複数のブースタアンテナを配置することが可能となり、NFC通信の有効範囲を拡張することが可能となる。
【0064】
<その他の実施形態>
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に相当し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本開示は、ブースタアンテナ、およびアンテナ装置を有する通信装置として有用である。
【符号の説明】
【0066】
100 通信装置
110 NFCアンテナ
120 マッチング回路
130 NFC IC
140 CPU
150 保護エリア
160 セルラーアンテナ
200 カード
400、800、1000、1100、1110 ブースタアンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図16
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図18