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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】レーザ発振器
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/068 20060101AFI20240531BHJP
   H01S 5/14 20060101ALI20240531BHJP
   G02F 1/33 20060101ALI20240531BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
H01S5/068
H01S5/14
G02F1/33
G02B5/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020082632
(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公開番号】P2021177529
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 出
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-297081(JP,A)
【文献】特開2018-186154(JP,A)
【文献】特開2002-5614(JP,A)
【文献】特開2002-90259(JP,A)
【文献】特開2007-27306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-5/50
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-7/00
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザダイオードと、
外部共振ミラーと、
前記レーザダイオードと前記外部共振ミラーとの間に配置された音響光学素子と、
前記音響光学素子に疎密波を与える音波発生素子と、
前記レーザダイオードから出射されるレーザ光がウェーブロッキングされるように、前記疎密波の周波数を制御する制御素子と、
前記レーザダイオードの温度を計測する温度計測素子と、
を備え、
前記レーザダイオードの出射面から出射されるレーザ光は、前記音響光学素子によって回折させられて、前記外部共振ミラーに向かい、前記外部共振ミラーと前記レーザダイオードの反射面との間で外部共振
前記温度計測素子で計測される温度計測データに基づいて、前記制御素子が前記周波数を制御する、
レーザ発振器。
【請求項2】
レーザダイオードと、
外部共振ミラーと、
前記レーザダイオードと前記外部共振ミラーとの間に配置された音響光学素子と、
前記レーザダイオードと前記音響光学素子との間に配置される光学素子と、
を備え、
前記光学素子は、回折格子又はプリズムであり、
前記レーザダイオードの出射面から出射されるレーザ光は、前記音響光学素子によって回折させられて、前記外部共振ミラーに向かい、前記外部共振ミラーと前記レーザダイオードの反射面との間で外部共振する、
レーザ発振器。
【請求項3】
レーザダイオードと、
外部共振ミラーと、
前記レーザダイオードと前記外部共振ミラーとの間に配置された音響光学素子と、
を備え、
前記レーザダイオードの出射面から出射されるレーザ光は、前記音響光学素子によって回折させられて、前記外部共振ミラーに向かい、前記外部共振ミラーと前記レーザダイオードの反射面との間で外部共振する、
レーザ発振器であって、
波長の異なるレーザ光を出射する複数の前記レーザダイオードを備え、
波長ビーム結合方式のダイレクトダイオードレーザ発振器に適用された、
レーザ発振器
【請求項4】
前記制御素子は、前記疎密波を前記音響光学素子に与える制御のオン/オフを切り替えることで、前記レーザダイオードをパルス発振させる、
請求項に記載のレーザ発振器。
【請求項5】
前記複数のレーザダイオードの各々の温度を計測する複数の温度計測素子をさらに備える、
請求項に記載のレーザ発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ発振器の一例として、ダイレクトダイオードレーザ(DDL)発振器がある。例えば、特許文献1には、DDL発振器として、外部共振によって発振させている発振器が開示されている。図7に、特許文献1に記載された従来のDDL発振器を示す。
【0003】
図7において、キャビティ200aは波長の異なるレーザ入力モジュール252から出射される複数のレーザ光が回折格子214を通して同軸となるように配置された波長ビーム結合方式のダイレクトダイオードレーザ発振器である。レーザ入力モジュール252は、レーザエレメント250とFAC光学系206と変換光学系208とを有する。出力カプラ216は、回折格子214を通って入射するレーザ光の一部を反射光として各レーザ入力モジュール252に戻し、この光をレーザエレメント250のエミッタにて所定の波長のみが発振する「ウェーブロッキング」と呼ばれる状態にすることで、レーザ光を発振している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5981855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発振器では、発振器内の出力カプラ216、回折格子214、及びレーザエレメント250などの各パーツの位置を容易に変更することができず、ウェーブロッキングのために複数のレーザ入力モジュールごとに発振する波長を変更することが難しい。
【0006】
また、コールドスタート時やレーザエレメントに流す電流を変化させた際には、レーザエレメントの温度が変化して、レーザエレメントにおけるレーザ発振が可能な利得を持つ波長範囲が変化する。その結果、発振波長とレーザエレメントの利得波長幅との間にミスマッチが生じて効率が悪化してしまうという課題がある。この点、従来技術に係るレーザ発振器においては、レーザエレメントの利得波長幅の変化に合わせてウェーブロッキング波長を変化させて、レーザ発振器の発振効率を向上させることは容易ではない。
【0007】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたもので、レーザエレメントの温度変化等にも対応可能な優れた発振効率を有するレーザ発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決する主たる本開示は、
レーザダイオードと、
外部共振ミラーと、
前記レーザダイオードと前記外部共振ミラーとの間に配置された音響光学素子と、
を備え、
前記レーザダイオードの出射面から出射されるレーザ光は、前記音響光学素子によって回折させられて、前記外部共振ミラーに向かい、前記外部共振ミラーと前記レーザダイオードの反射面との間で外部共振する、
レーザ発振器である。
【発明の効果】
【0009】
本開示のレーザ発振器によれば、発振効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係るレーザ発振器の模式図
図2】本開示の一実施形態に係る音響光学素子の模式図
図3図3(a)は、レーザダイオードにおける小電流時の利得と光出力とを示すグラフ。図3(b)は、レーザダイオードにおける大電流時の利得と光出力とを示すグラフ。図3(c)は、レーザダイオードにおけるウェーブロッキング波長をシフトさせた場合の利得と光出力とを示すグラフ。
図4】本開示の一実施形態に係るレーザ発振器の模式図
図5】従来のレーザ発振器の模式図
図6】本開示の一実施形態に係るレーザ発振器の模式図
図7】従来のDDL発振器の模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
(実施形態1)
図1は、本開示の実施形態1におけるレーザ発振器Uの模式図である。レーザ発振器Uは、ダイレクトダイオードレーザ(DDL)発振器である。レーザ発振器Uは、波長λのレーザ光21を出射するレーザダイオード2と、レーザダイオード2から出射されるレーザ光21を回折する音響光学素子4と、音響光学素子4で回折された回折光25の一部を反射させてレーザダイオード2へと戻し、レーザ光21を外部共振させる外部共振ミラー1と、を有する。
【0013】
レーザダイオード(以下、LDともいう)2は、波長λのレーザ光21を生成し出射する。レーザダイオード2は、例えば、チップ形状のLDチップである。LDチップとしては、端面発光型(EEL:Edge Emitting Laser)のLDチップが好ましく用いられる。端面発光型のLDチップでは、例えば、長尺のバー形状の共振器が、チップ内において基板面と平行に形成されている。共振器の長手方向の一方の端面(以下、「反射面」とも称する)は光がほぼ全反射するように高反射率の膜で覆われている。一方、共振器の長手方向の他方の端面(以下、「出射面」とも称する)にも高反射率の膜で覆われているが、反射率は一方の端面に設けられた反射膜よりも小さい。よって、両端面からの反射により増幅され位相の揃ったレーザビームが出射面から出射される。
【0014】
音響光学素子4はレーザ発振器Uのキャビティ内において、レーザダイオード2と外部共振ミラー1との間に配置される。音響光学素子4は、回折格子としての役割を有しており、レーザダイオード2から出射される波長λのレーザ光21の一部を回折する。なお、波長λのレーザ光21のうちの0次光27は、音響光学素子4によって回折されない。
【0015】
外部共振ミラー1は、音響光学素子4によって回折された回折光25の一部を反射することでレーザダイオード2に戻し、レーザ光21を外部共振させる。外部共振により出力が高められたレーザ光の一部が、外部共振ミラー1を透過し、外部に出射される。
【0016】
なお、レーザ発振器Uは、レーザダイオード2と音響光学素子4との間に配置される光学素子をさらに備えていてもよい。かかる光学素子としては、例えば、回折格子又はプリズム等が用いられる。
【0017】
ここで、音響光学素子4は、自身に与えられる疎密波の周波数によって、回折角を変化させる機能を有する。これは、例えば、周辺温度等の影響によって、レーザ光21の波長λにシフトが生じた場合であっても、音響光学素子4に与える疎密波の周波数をシフトすることにより、外部共振ミラー1とレーザダイオード2と音響光学素子4との位置を変更することなく、シフトした波長λにウェーブロッキングできることを意味する。このため、レーザ発振器Uは優れた発振効率を有することができる。
【0018】
レーザ発振器Uは、音響光学素子4に疎密波を与える音波発生素子41と、レーザダイオード2から出射される波長λのレーザ光21がウェーブロッキングされるように音響光学素子4に与える疎密波の周波数を制御する制御素子と、を有することが好ましい。
【0019】
制御素子は、例えば、制御装置43と音響光学素子用ドライバ42とを含みうる。制御装置43が、所望の外部共振波長(レーザダイオード2から出射される波長λのレーザ光21がウェーブロッキングする波長を意味する。図4を参照して後述する)に合わせて周波数指令値44を音響光学素子用ドライバ42へと出力し、音響光学素子用ドライバ42は、周波数指令値44に基づいて音波発生素子41に加える変調信号45(以下、「周波数指令値45」とも称する)を設定する。これにより、音波発生素子41の発生する疎密波の周波数が、所望の外部共振波長に対応したものに設定され、波長λのレーザ光21を容易にウェーブロッキングすることができる。
【0020】
レーザ発振器Uは、レーザダイオード2の温度を計測する温度計測素子3をさらに有することが好ましい。つまり、温度計測素子3で計測される温度測定データ31が制御装置43に送られて周波数指令値44へと変換され、周波数指令値44に基づいて音響光学素子ドライバ42が変調信号45によって音波発生素子41を駆動する構成とする。これにより、温度の影響によって、レーザ光21の波長λにシフトが生じた場合であっても、外部共振ミラー1とレーザダイオード2と音響光学素子4との位置を変更することなく、シフトした波長λのレーザ光21をウェーブロッキングできる。このため、レーザ発振器Uは優れた発振効率を有することができる。
【0021】
図2は、音響光学素子4の模式図であり、音響光学素子4における回折角を示す。図2に示すように、音響光学素子4に入射した波長λのレーザ光21は、そのまま音響光学素子4を透過してしまう0次光27と、回折によって曲げられる回折光25と、に分かれる。このときの回折角26は下記式(1)で表される。
【0022】
【数1】
【0023】
本実施形態においては、図1に示すように外部共振ミラー1、レーザダイオード2、及び音響光学素子4の配置は変化しないため、図2における回折角θも変化しない。このとき式(1)は、下記式(2)に置き換えることが可能となる。
【0024】
【数2】
【0025】
レーザ波長λが変化した際には、音波の中心周波数fcをレーザ波長λの変化に応じて変えることによって回折角θを一定に保つことが可能となる。本開示のレーザ発振器Uでは、音波の中心周波数fcを一定の値に固定するのではなく、レーザ波長λの変化に応じて中心周波数fcを変化させることで、回折角θを一定に保つことで、波長λにシフトが生じた場合であっても、外部共振ミラー1とレーザダイオード2と音響光学素子4との位置を変更することなく、シフトした波長λにウェーブロッキングできる。
【0026】
図3に、レーザダイオード2における利得シフトと光出力を示す。図3(a)はレーザダイオード2を流れる電流が小電流時の利得と光出力との関係を概念的に示したグラフである。レーザダイオード2は、ある特定の波長幅に利得カーブを持っており、小電流時は利得カーブ52のようになる。そして、外部共振を行うシステムでは、レーザダイオード2の光出力が最大となるように(図3(a)の光出力51を参照)、外部共振のウェーブロッキング波長53を設定する。
【0027】
光出力を増加させるためにレーザダイオード2に流れる電流を大きくした場合は、その電流増加に応じて発熱量も増加する。その結果、レーザダイオード2の温度が上昇して、レーザダイオード2の利得カーブは、図3(b)の利得カーブ55のようになる。このとき、外部共振のウェーブロッキング波長が、図3(a)のウェーブロッキング波長53のままであれば、実際に得られる大電流時の光出力は小電流時の光出力51よりも小さくなってしまう(図3(b)の光出力54を参照)。
【0028】
そのような場合に、図3(c)に示すように、外部共振のウェーブロッキング波長を、レーザダイオード2の利得カーブの変化に対応させて、波長56に調整することができれば、レーザダイオード2の光出力を最大化することができる(図3(c)の光出力57を参照)。音響光学素子4は、かかる外部共振のウェーブロッキング波長の調整を可能とする。
【0029】
図4は、本実施形態において、レーザダイオード2を流れる電流の電流値を変化させた際の動作を示す模式図である。図1図3と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0030】
図4において、小電流時のウェーブロッキング波長53をλ=0.975μm、音波発生素子41に入力する小電流時の周波数指令値45の中心周波数をfc=80MHz、結晶内における音波の進行速度をV=5.7mm/sとすると、式(1)から小電流時の回折角θは、0.975μm・80MHz/(2・5.7mm/s)=6.8421mradとなる。
【0031】
ここで、式(2)から、λ・fc=2・V・θ=Const.=78となるので、大電流をレーザダイオード2に流し、レーザダイオード2の利得カーブの波長がΔλだけ変化した場合であっても、大電流時の回折角26と小電流時の回折角26との値が同じであれば、外部共振ミラー1とレーザダイオード2と音響光学素子4との配置を変えることなく外部共振型キャビティの発振条件が整う。
【0032】
例えば、大電流時のレーザダイオード2の利得カーブの最大値の波長変化Δλが0.02μmであれば、大電流時のウェーブロッキング波長は(λ+Δλ)=0.995μmとなる。このとき、外部共振ミラー1とレーザダイオード2と音響光学素子4との配置を変更することなく、レーザダイオード2から出射されるレーザ光21(図4では、点線が小電流時のレーザ光21、実線が大電流時のレーザ光21)を外部共振させるためには、大電流時の回折角26と小電流時の回折角26とが同一の角度6.8421mradになれば良い。その場合の大電流時の周波数指令値45は、(fc+Δfc)=78/0.995μm=78.392MHzとなり、Δfcは-1.608MHzとなる。即ち、大電流時の周波数指令値45を78.932MHzに変更することで、回折角を保持したまま、最も発振効率が良いウェーブロッキング波長にすることが可能である。
【0033】
以上のように、本実施形態に係るレーザ発振器Uは、周辺温度等の影響によって、レーザ光21の波長λにシフトが生じた場合であっても、音響光学素子4に与える疎密波の周波数をシフトすることにより、外部共振ミラー1とレーザダイオード2と音響光学素子4との位置を変更することなく、シフトした波長λにウェーブロッキングすることが可能である。これによって、レーザエレメントの温度変化等にも対応可能な優れた発振効率を有するレーザ発振器Uを実現することができる。
【0034】
なお、上記の例では、大電流時の利得カーブの最大値の波長変化Δλを0.02μmとしたが、電流値と波長変化との関係はレーザダイオード2の冷却状態などにも影響されるため、レーザダイオード2の温度を温度計測素子3にて測定した温度測定データ31と周波数指令値44とが回折角を一定に保てるようになる関係をテーブル化したものを制御装置43内に有していることが好ましい。
【0035】
また、上記実施形態においては、ウェーブロッキングの波長を変更したい際に、温度計測素子3と制御装置43と音響光学素子ドライバ42とを用いてフィードバックを行っているが、温度以外の波長や雰囲気ガス圧力などの周辺情報をフィードバックの情報として用いても良い。
【0036】
また、上記実施形態においては、レーザ発振器Uを連続発振させる態様について説明したが、本開示のレーザ発振器Uは、疎密波を音響光学素子に与えるタイミングのONとOFFと周期的に切り替えることによって、連続発振だけでなく、パルス発振も可能である。この場合、音波発生素子41に与える変調信号45をON/OFFすることによって音響光学素子4による回折効果をON/OFFすればよい。なお、変調信号45をOFFすると外部共振型の発振器として機能しなくなるため、そのタイミングにおいては、レーザ出力は停止することになる。
【0037】
(実施形態2)
図5は従来の波長ビーム結合型のレーザ発振器Uの模式図である。図5に示すレーザ発振器Uは、互いに異なる波長のレーザ光21,22を出射する複数のレーザダイオード2を有する。波長λのレーザ光21と波長λのレーザ光22とは回折格子6に対して異なる角度28,29で入射する。レーザ光21,22が回折格子6を通過すると、異なる波長のレーザ光21,22が重畳された重畳レーザ光24となって外部共振ミラー1から出射される。このとき、レーザダイオード2の電流値などが変化して温度状態が変わるとそれぞれの利得カーブが波長シフトを起こすため、レーザ発振器Uの発振効率が低下してしまう。
【0038】
図6は、本開示の実施形態2のレーザ発振器Uの模式図である。図6において、図1図4と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0039】
本実施形態のレーザ発振器Uは、それぞれ異なる波長λのレーザ光21、波長λのレーザ光22、及び波長λのレーザ光23を出射する複数のレーザダイオード2と、回折格子6と、音響光学素子4と、外部共振ミラー1と、を有する。
【0040】
本実施形態では、回折格子6と音響光学素子4とが回折部を構成する。回折部と外部共振ミラー1との間では一本の異なる波長が重畳した重畳レーザ光24となり、重畳レーザ光24の一部が外部共振ミラー1で反射される。外部共振ミラー1とレーザダイオード2との間では、各々の波長に合わせた外部共振が生じている。本実施形態では、複数のレーザダイオード2の各々に温度計測素子3が設けられ、制御装置43が、各温度測定データ31を収集し、演算の結果導出された周波数指令値44を音響光学素子用ドライバ42に出力する。そして、音響光学素子用ドライバ42は、周波数指令値44に基づいて音響光学素子用ドライバ42が変調信号45を音波発生素子41へと出力する。
【0041】
図6のレーザ発振器Uにおいて、各レーザダイオード2における利得カーブのシフトは、一様ではないと考えられるため、実施形態1にて説明したように、収集した温度測定データ31から一意に周波数指令値44を得ることは難しく、制御装置43において温度測定データ31と、重畳レーザ24の出力が最大になるような周波数指令値44との関係を事前にテーブル化しておくことが特に好ましい。
【0042】
本実施形態では、テーブル化の方法として、ある電流値設定を行い、その際にレーザ光出力が最大になる様に周波数指令値44を変化させ、各々のレーザダイオード2の温度測定データ31も収集しておき、様々な電流値設定について同様の作業を繰返して温度測定データ31から周波数指令値44へ変換するためのテーブルを作成する。なお、これらのテーブル化の作業及び周波数指令値41の導出の作業には、機械学習などの方法を適用しても良い。
【0043】
なお、本実施形態において、複数のレーザダイオードは少なくとも2個以上であれば良い。
【0044】
また、本実施形態においても、本実施形態1と同様、変調信号45のON/OFFによってパルス発振が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本開示のレーザ発振器は、キャビティ内に配置した音響光学素子によってウェーブロッキング波長をシフトさせることができるため、設定パラメータや使用環境などの影響がある場合でも、優れた発振効率を実現できることから、種々のレーザ加工装置に有用である。
【符号の説明】
【0046】
U レーザ発振器
1 外部共振ミラー
2 レーザダイオード
21 波長λのレーザ光
22 波長λのレーザ光
23 波長λのレーザ光
24 重畳レーザ光
25 回折光
26 回折角
27 0次光
28 波長λのレーザ光の回折角
29 波長λのレーザ光の回折角
3 温度計測素子
31 温度測定データ
4 音響光学素子
41 音波発生素子
42 音響光学素子用ドライバ
43 制御装置
44 周波数指令値
45 変調信号
46 小電流時の変調信号
47 大電流時の変調信号
51 小電流時の最大光出力
52 小電流時の利得カーブ
53 小電流時の外部共振のウェーブロッキング波長
54 大電流時の光出力
55 大電流時の利得カーブ
56 大電流時の外部共振の最適ウェーブロッキング波長
57 ウェーブロッキング波長調整後の大電流時の最大光出力
58 小電流時の回折角
59 大電流時の回折角
6 回折格子
200a キャビティ
206 FAC光学系
208 変換光学系
214 回折格子
216 出力カプラ
250 レーザエレメント
252 レーザ入力モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7