(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-30
(45)【発行日】2024-06-07
(54)【発明の名称】移動体、搬送装置、及び部品実装システム
(51)【国際特許分類】
B62B 5/00 20060101AFI20240531BHJP
B62B 3/00 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
B62B5/00 G
B62B3/00 B
B62B3/00 D
(21)【出願番号】P 2020088402
(22)【出願日】2020-05-20
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】水野 修
(72)【発明者】
【氏名】西方 友美
(72)【発明者】
【氏名】中村 徹
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-042756(JP,A)
【文献】特開平05-170102(JP,A)
【文献】特開平07-232637(JP,A)
【文献】特開平07-257387(JP,A)
【文献】特開2008-184112(JP,A)
【文献】国際公開第2020/003581(WO,A1)
【文献】特開2001-230589(JP,A)
【文献】特開2020-015403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 5/00
B62B 3/00
B61B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に設けられた少なくとも1つの駆動輪と、
複数の補助輪と、
前記複数の補助輪が設けられる支持体と、
所定の移動方向に沿って移動可能な状態で前記支持体を前記本体に対して支持するガイド支持部と、を備え、
前記支持体は、前記移動方向に沿って移動可能な状態で前記本体に取り付けられて
おり、
前記少なくとも1つの駆動輪に対して、前記本体の進行方向の前後に前記補助輪が設けられており、
前記支持体の前端部分及び後端部分にはそれぞれ回転軸を中心として回転可能な状態でリンク板が取り付けられ、
前記リンク板の左右の端部は、前記リンク板が前記回転軸を中心に回転することによって上下方向において移動可能であり、
前記リンク板の左右の端部にそれぞれ前記補助輪が設けられている、
移動体。
【請求項2】
前記支持体を下方に押しつける弾性力を発生する弾性体を、更に備える、
請求項1に記載の移動体。
【請求項3】
前記支持体において前記補助輪が設けられた部位のばね定数よりも、前記弾性体のばね定数が小さい、
請求項2に記載の移動体。
【請求項4】
前記移動体が移動する移動面に、前記複数の補助輪と前記駆動輪とが全て接している状態で、前記弾性体が発生する弾性力によって前記複数の補助輪が前記移動面に押しつけられている、
請求項2又は3に記載の移動体。
【請求項5】
前記本体には2つの前記駆動輪が設けられている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の移動体。
【請求項6】
前記本体に対する前記支持体の動きを抑制するダンパを、更に備える、
請求項1~5のいずれか1項に記載の移動体。
【請求項7】
前記支持体が移動可能な前記移動方向が、前記移動体が移動する移動面の法線に沿っている、
請求項1~6のいずれか1項に記載の移動体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の移動体を用いた搬送装置であって、
前記本体が、被搬送物を保持する保持部を有する、
搬送装置。
【請求項9】
前記保持部は、前記被搬送物と連結することによって前記被搬送物を保持する連結部を含む、
請求項8に記載の搬送装置。
【請求項10】
部品を基板に実装する少なくとも1つの部品実装機を含み、
前記部品実装機は、
前記部品を供給するフィーダ台車と、
前記部品を前記基板に実装する実装ヘッドを含む実装本体と、を有し、
前記フィーダ台車が、請求項8又は9に記載の搬送装置によって前記実装本体まで搬送される前記被搬送物である、
部品実装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体、搬送装置、及び部品実装システムに関する。より詳細には、本開示は、移動面の上を走行する移動体、搬送装置、及び部品実装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、物流台車などの荷を支持しながら移動する搬送車を開示する。搬送車の基体には、所定間隔で並んだ2つの駆動輪と、駆動輪が並ぶ方向と平行に、駆動輪よりも狭い間隔で並んだ2つの従動輪とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の搬送車(移動体)は2つの駆動輪と2つの従動輪とで移動面に接地している。移動面の起伏に従動輪が乗ると、駆動輪が移動面から離れる可能性があり、駆動輪と接地面との接触状態が損なわれると、駆動輪による駆動力又は制動力が減少し、搬送車の運動安定性が低下する可能性がある。
【0005】
本開示の目的は、運動安定性の低下を抑制可能な移動体、搬送装置、及び部品実装システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の移動体は、本体と、少なくとも1つの駆動輪と、複数の補助輪と、支持体と、ガイド支持部と、を備える。前記少なくとも1つの駆動輪は前記本体に設けられている。前記支持体には前記複数の補助輪が設けられている。前記ガイド支持部は、所定の移動方向に沿って移動可能な状態で前記支持体を前記本体に対して支持する。前記支持体は、前記移動方向に沿って移動可能な状態で前記本体に取り付けられている。前記少なくとも1つの駆動輪に対して、前記本体の進行方向の前後に前記補助輪が設けられている。前記支持体の前端部分及び後端部分にはそれぞれ回転軸を中心として回転可能な状態でリンク板が取り付けられている。前記リンク板の左右の端部は、前記リンク板が前記回転軸を中心に回転することによって上下方向において移動可能である。前記リンク板の左右の端部にそれぞれ前記補助輪が設けられている。
【0007】
本開示の一態様の搬送装置は、前記移動体を用いた搬送装置であって、前記本体が、被搬送物を保持する保持部を有する。
【0008】
本開示の一態様の部品実装システムは、部品を基板に実装する少なくとも1つの部品実装機を含む。前記部品実装機は、前記部品を供給するフィーダ台車と、前記部品を前記基板に実装する実装ヘッドを含む実装本体と、を有する。前記フィーダ台車が、前記搬送装置によって前記実装本体まで搬送される前記被搬送物である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、運動安定性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る移動体を用いた搬送装置の模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、同上の搬送装置が被搬送物を搬送している状態の模式的な側面図である。
【
図3】
図3は、同上の搬送装置が被搬送物を搬送している状態の模式的な正面図である。
【
図4】
図4は、同上の搬送装置の走行状態を説明する模式的な側面図である。
【
図5】
図5は、同上の搬送装置を含む全体システムの概略的なブロック図である。
【
図6】
図6は、本開示の一実施形態の変形例1に係る移動体を用いた搬送装置の模式的な側面図である。
【
図7】
図7は、本開示の一実施形態の変形例2に係る移動体を用いた搬送装置の模式的な側面図である。
【
図8】
図8は、本開示の一実施形態の変形例3に係る移動体を用いた搬送装置の模式的な斜視図である。
【
図9】
図9は、同上の搬送装置の走行状態の説明図である。
【
図10】
図10は、同上の搬送装置と部品実装システムとを模式的に示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
(1)概要
以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0012】
移動体1は、本体10と、少なくとも1つの駆動輪2と、複数の補助輪3と、支持体4と、ガイド支持部5と、を備える。少なくとも1つの駆動輪2は本体10に設けられている。支持体4には複数の補助輪3が設けられている。ガイド支持部5は、所定の移動方向DR1に沿って移動可能な状態で支持体4を本体10に対して支持する。支持体4は、移動方向DR1に沿って移動可能な状態で本体10に取り付けられている。
【0013】
本実施形態の移動体1は、少なくとも1つの駆動輪2と複数の補助輪3とで移動面B1に接触し、移動面B1の上を走行する。補助輪3が移動面B1の起伏に乗り上げた場合、補助輪3が設けられている支持体4が本体10に対して移動方向DR1に沿って移動することで、移動面B1の起伏を吸収して、駆動輪2を移動面B1に接触させることができる。したがって、移動面B1に起伏がある場合でも、駆動輪2と移動面B1との接触状態を保ちやすくなり、駆動輪2による駆動力又は制動力が減少しにくくなるので、移動体1の運動安定性の低下を抑制することができる。
【0014】
以下では、本実施形態に係る移動体1が、
図2及び
図3に示すように、被搬送物A1を搬送する搬送装置X1である場合を例に説明を行う。被搬送物A1は車輪A11を有しており、搬送装置X1と共に移動面B1の上を車輪A11で走行可能に構成されている。
【0015】
搬送装置X1は、例えば工場、物流センター(配送センターを含む)、オフィス、店舗、学校、及び病院等の施設に導入される。移動面B1は、その上を搬送装置X1が移動する面であり、搬送装置X1が施設内を移動する場合は施設の床面等が移動面B1となり、搬送装置X1が屋外を移動する場合は地面等が移動面B1となる。以下では、搬送装置X1が、部品実装システムW1(
図10)が設置された工場で使用される場合を例に説明を行う。部品実装システムW1については「(2.3)部品実装システム」において説明する。
【0016】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る移動体1を用いた搬送装置X1、この搬送装置X1を備える部品実装システムW1(
図10参照)について、図面を参照して詳しく説明する。
【0017】
(2.1)全体構成
本実施形態の搬送装置X1は、例えば、上位システム100(
図5参照)と互いに通信可能に構成されている。本開示における「通信可能」とは、有線通信又は無線通信の適宜wの通信方式により、直接的、又はネットワークNT1若しくは中継器R1等を介して間接的に、情報を授受できることを意味する。本実施形態では、上位システム100と搬送装置X1とは、互いに双方向に通信可能であって、上位システム100から搬送装置X1への情報の送信、及び搬送装置X1から上位システム100への情報の送信の両方が可能である。
【0018】
上位システム100は、1又は複数台の搬送装置X1を統括的に制御するためのシステムであって、例えばサーバ装置で実現されている。上位システム100は、複数台の搬送装置X1の各々に対して指示を出すことで、複数台の搬送装置X1を間接的に制御する。具体的には、上位システム100が搬送装置X1に対して被搬送物A1の搬送指示を出すと、搬送装置X1は、搬送指示を受けて被搬送物A1を目標位置まで移動させる作業を自律的に行う。
【0019】
本実施形態では、上位システム100は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを主構成とする。そのため、1以上のプロセッサがメモリに記録されているプログラムを実行することにより、上位システム100の機能が実現される。プログラムはメモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。なお、本実施形態において上位システム100は必須の構成ではなく、適宜省略が可能であり、搬送装置X1が、直接又は操作端末を介して入力された搬送指示に基づいて被搬送物A1の搬送作業を自律的に行うものでもよい。
【0020】
(2.2)移動体
次に、搬送装置X1として用いられる移動体1について説明する。
【0021】
移動体1は、
図2及び
図3に示すように、被搬送物A1を搬送するために無人で走行する。
【0022】
移動体1は、上述のように、本体10と、少なくとも1つの駆動輪2と、複数の補助輪3と、支持体4と、ガイド支持部5と、を備えている。なお、本実施形態の移動体1は、一対の駆動輪2と、2対の補助輪3とを備えている。また、本実施形態の移動体1は、
図5に示すように、駆動輪2を駆動する駆動輪ユニット20と、制御装置11と、電源12と、通信部13と、検知部14と、を更に備えている。
【0023】
移動体1は、移動体1の左右方向に並ぶ複数(本実施形態では一対)の駆動輪2を有している。本開示でいう「左右方向」は、移動体1の長手方向であり、
図3におけるX軸方向である。移動体1の前後方向は、左右方向及び上下方向(移動面B1の法線方向)の各々と直交する方向、つまり移動体1の短手方向であり、
図3におけるY軸方向である。
【0024】
本実施形態の移動体1は搬送装置X1として用いられる。移動体1を用いた搬送装置X1では、本体10が、被搬送物A1を保持する保持部18(
図2及び
図3参照)を備えている。本実施形態では、保持部18は、被搬送物A1と連結することによって被搬送物A1を保持する連結部181を含んでいる。
【0025】
移動体1が被搬送物A1を搬送する場合、移動体1の前後方向における一面に被搬送物A1を連結する連結部181が設けられている。移動体1は、当該移動体1に連結部181を用いて連結された被搬送物A1と共に移動する。連結部181は、例えば、引っ掛け又は嵌合等によって、移動面B1の上を走行する被搬送物A1の少なくとも一部を把持することで、被搬送物A1に脱着可能に連結されている。連結部181は、例えば上下方向において自由度を有した状態で、本体10と被搬送物A1との間を脱着可能に連結する。ここで、連結部181への被搬送物A1の連結は、移動体1又はその他の装置により自動で行われてもよいし、人により行われてもよい。また、連結部181の形状及び移動体1(搬送装置X1)が備える連結部181の数は、適宜変更可能である。なお、本実施形態では、移動体1が、被搬送物A1を保持する保持部18として連結部181を備えているが、保持部は連結部181に限定されない。移動体1は、保持部として、例えば電磁石を有し、電磁石が発生する磁力で被搬送物A1を吸着することによって、被搬送物A1を保持してもよい。
【0026】
ここで、移動体1が前後方向において移動する場合に、移動体1が進んでいく方向(進行方向)を前方、その反対方向を後方という。移動体1が被搬送物A1を搬送する場合、移動体1が先頭になって被搬送物A1をけん引する走行形態と、被搬送物A1を先頭にして移動体1が被搬送物A1を押していく走行形態とがある。一般的に、被搬送物A1を後側から押す走行形態に比べて、被搬送物A1をけん引する走行形態の方が、走行状態が安定するので、移動体1は通常は被搬送物A1をけん引して移動する。移動体1が被搬送物A1をけん引して移動する場合、Y軸方向の正の向きが前側となり、X軸方向の正の向きが右側となる。ただし、これらの方向は一例であり、移動体1の使用時の方向を限定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0027】
移動体1の本体10は、
図1に二点鎖線で図示するように、直方体状に形成されている。本体10の下部には複数の駆動輪2と複数の補助輪3とが配置されている。本実施形態では、本体10に対して、一対の駆動輪2が左右方向に並ぶように配置されている。本体10には、一対の駆動輪2に対して、前側及び後側に、それぞれ一対の補助輪3が左右方向に並ぶように配置されている。
【0028】
本実施形態では、一対の駆動輪2は、本体10の左側に位置する左駆動輪2Lと、本体10の右側に位置する右駆動輪2Rと、を含む。本実施形態では、本体10に2つの駆動輪2が設けられており、移動体1は、2つの駆動輪2と4つの補助輪3とで移動面B1の上を走行している。ところで、移動体1に2つの駆動輪2と1つの補助輪3のみが設けられ、2つの駆動輪2と1つの補助輪3との3輪のみで移動面B1に接地する場合、加減速による重心位置の変化によって、3輪の全てが移動面B1に接地する状態が保てなくなる可能性がある。そこで、移動体1に2つの駆動輪2と複数の補助輪3とを設け、少なくとも3輪の移動面B1に接地するように移動体1を構成した場合、移動面B1の起伏によって、2つの駆動輪2のうちの1方と、2輪の補助輪3とで移動面B1に接地する可能性がある。この場合、2つの駆動輪2のうちの一方が移動面B1から浮き上がるため、駆動輪2による駆動力又は制動力が低下する可能性がある。それに対して、本実施形態では複数(図示例では2対)の補助輪3が設けられた支持体4が、本体10に対して移動方向DR1に沿って移動可能な状態で本体10に設けられている。これにより、4つの補助輪3のうちのいずれかが移動面B1の起伏に乗り上げた場合、支持体4が上側に移動することによって、起伏に乗り上げた1つの補助輪3と2つの駆動輪2とが移動面B1に接している状態となる。したがって、2つの駆動輪2が移動面B1に接触している状態が保たれるので、2つの駆動輪2による駆動力又は制動力が減少するのを抑制でき、移動体1の運動安定性が低下するのを抑制できる。なお、駆動輪2の数は2つに限定されず、1つでもよいし、3つ以上でもよい。つまり、本体10には、少なくとも1つの駆動輪2が設けられていればよく、少なくとも1つの駆動輪2により移動面B1の上を移動するように構成されている。
【0029】
本実施形態では、左駆動輪2L及び右駆動輪2Rの各々が操向輪を兼ねている。左駆動輪2Lを駆動する駆動機構と、左駆動輪2Lの向きを変える操向機構とが、左駆動輪ユニット20Lとして一体化されている。また、右駆動輪2Rを駆動する駆動機構と、右駆動輪2Rの向きを変える操向機構とが、右駆動輪ユニット20Rとして一体化されている。つまり、上記の駆動輪ユニット20は、左駆動輪ユニット20Lと右駆動輪ユニット20Rとを含んでいる。
【0030】
左駆動輪ユニット20Lは、左駆動輪2Lの回転と舵角とを制御する。左駆動輪ユニット20Lは、
図1及び
図5に示すように、左駆動輪2Lを円周方向に回転させるドライブモータ21Lと、左駆動輪2Lの向き(転動方向)を変化させるステアリングモータ23Lと、を備えている。ステアリングモータ23Lは、本体10に対して本体10の下面に沿うように設けられている平板状の固定板24の左端部に取り付けられている。ステアリングモータ23Lは、ドライブモータ21Lが固定されたブラケット22Lを、移動面B1と平行な平面内で回転させることによって、左駆動輪2Lの向きを変化させる。つまり、左駆動輪ユニット20L及び左駆動輪ユニット20Lに支持された左駆動輪2Lは固定板24等を介して本体10に固定されている。ここで、左駆動輪ユニット20Lは、制御装置11からの制御命令を受けて、ステアリングモータ23Lが左駆動輪2Lを制御命令で指示された向きに変化させ、ドライブモータ21Lが左駆動輪2Lを制御命令で指示された回転トルク又は回転速度で回転させる。
【0031】
右駆動輪ユニット20Rは、右駆動輪2Rの回転と舵角とを制御する。右駆動輪ユニット20Rは、
図1及び
図5に示すように、右駆動輪2Rを円周方向に回転させるドライブモータ21Rと、右駆動輪2Rの向き(転動方向)を変化させるステアリングモータ23Rと、を備えている。ステアリングモータ23Rは、固定板24の右端部に取り付けられている。ステアリングモータ23Rは、ドライブモータ21Rが固定されたブラケット22Rを、移動面B1と平行な平面内で回転させることによって、右駆動輪2Rの向きを変化させる。つまり、右駆動輪ユニット20R及び右駆動輪ユニット20Rに支持された右駆動輪2Rは固定板24等を介して本体10に固定されている。ここで、右駆動輪ユニット20Rは、制御装置11からの制御命令を受けて、ステアリングモータ23Rが右駆動輪2Rを制御命令で指示された向きに変化させ、ドライブモータ21Rが右駆動輪2Rを制御命令で指示された回転トルク又は回転速度で回転させる。
【0032】
右駆動輪ユニット20R及び左駆動輪ユニット20Lが取り付けられた固定板24の下面には、左右方向の中央部から下向きに突出する2本のシャフト25が設けられている。2本のシャフト25はそれぞれ丸棒状に形成されており、左右方向に並んで設けられている。また、固定板24の下面には、2本のシャフト25の間の部位から下向きに突出する突起26が設けられており、この突起26にはコイルばね6の一方の端部(上端部)が挿入される。
【0033】
移動体1の制御装置11は、右駆動輪ユニット20Rを制御して右駆動輪2Rを個別に駆動し、左駆動輪ユニット20Lを制御して左駆動輪2Lを個別に駆動する。すなわち、一対の駆動輪2(右駆動輪2R及び左駆動輪2L)の各々が個別に操舵可能であるので、一対の駆動輪2を個別に操舵することで、所望の方向に移動体1を移動させることができる。本実施形態では、一対の駆動輪2の各々が操向輪を兼ねており、駆動輪2とは別に操向輪を設ける場合に比べて、移動体1が備える車輪の数を減らすことができる。
【0034】
本実施形態では2対の補助輪3が支持体4に設けられている。2対の補助輪3は、移動体1の移動方向に追従して向きが変わる従動輪である。ここにおいて、2対の補助輪3は、車軸3A(
図1参照)の向きが可変の自在車輪を含む。つまり、2対の補助輪3の各々は、例えば車輪を回転可能に支持する車軸3Aが、移動面B1と平行な平面内で360度の全周方向に移動可能な自在車輪(いわゆる自在キャスタ)である。なお、補助輪3として用いられる自在車輪は、車軸3Aの向きが可変の自在車輪に限定されず、車輪となる球体が任意の方向に回転可能なボールキャスタでもよい。
【0035】
2対の補助輪3が設けられた支持体4は、本体10に対して移動可能な状態で本体10に取り付けられている。支持体4は、前後方向の寸法に比べて左右方向の寸法が長い矩形板状の中央片41と、中央片41の左右方向の両端部からそれぞれ前方に突出する一対の前脚片42と、中央片41の左右方向の両端部からそれぞれ後方に突出する一対の後脚片43と、を備える。支持体4は、中央片41と一対の前脚片42と一対の後脚片43とで、平面視の形状がH字状に形成されている。そして、一対の前脚片42の前側部分には一対の補助輪3が一つずつ取り付けられ、一対の後脚片43の後側部分には一対の補助輪3が一つずつ設けられている。ここにおいて、2対の補助輪3のうち、一対の前脚片42の前側部分に設けられた一対の補助輪3を前補助輪31といい、一対の後脚片43の後側部分に設けられた一対の補助輪3を後補助輪32という場合もある。前後方向において、一対の前補助輪31と一対の後補助輪32との間に一対の駆動輪2が配置されている。換言すれば、支持体4には、本体10の進行方向(前後方向)における駆動輪2の両側にそれぞれ1つ以上(
図1及び
図2の例で2つずつ)の補助輪3が配置されている。
【0036】
2対の補助輪3が固定された支持体4の中央片41には、2本のシャフト25がそれぞれ挿入される2つの筒状部44が左右方向に並んで設けられている。また、中央片41の上面には、2つの筒状部44の間の部位から上向きに突出する突起45が設けられており、この突起45にはコイルばね6の他方の端部(下端部)が挿入される。このように、支持体4の2つの筒状部44には、固定板24に設けられた2つのシャフト25が一つずつ挿入され、支持体4の中央片41と固定板24との間にはコイルばね6が取り付けられる。
【0037】
これにより、支持体4は、本体10に対して、シャフト25の長手方向に沿って移動可能な状態で取り付けられる。つまり、一対のシャフト25と、一対のシャフト25がそれぞれ挿入される一対の筒状部44とで、所定の移動方向DR1に沿って移動可能な状態で支持体4を支持(保持)するガイド支持部5が構成される。支持体4は、移動方向DR1に沿って移動可能な状態で本体10に取り付けられている。ここで、支持体4が移動可能な移動方向DR1は、移動体1が移動する移動面B1の法線VL1(
図2参照)に沿っている。付言すれば、支持体4が移動可能な移動方向DR1は移動面B1の法線VL1と平行であり、支持体4は移動面B1に対して直交する方向(上下方向)において移動可能である。なお、移動方向DR1が移動面B1の法線VL1と平行であるとは、移動方向DR1と平行な直線と移動面B1の法線VL1が完全に平行である状態に限定されず、移動方向DR1と平行な直線と移動面B1の法線VL1とのなす角度が所定の許容誤差範囲(数度程度)に収まっていればよい。また、移動面B1に対して直交する方向は、移動面B1と直角に交差する方向に限定されず、数度程度の誤差範囲内であれば直角からずれていてもよい。
【0038】
上述のように、本実施形態では、補助輪3が設けられた支持体4は本体10に対して所定の移動方向DR1に沿って移動可能に構成されている。したがって、移動面B1の起伏に補助輪3が乗り上げた場合には、支持体4が本体10に対して上側に移動することで、駆動輪2と移動面B1との接触状態を保ちやすくできる。これにより、駆動輪2による駆動力又は制動力が減少しにくくなり、移動体1の運動安定性の低下を抑制することができる。
【0039】
なお、本実施形態では支持体4に4つの補助輪3が設けられているが、支持体4には複数の補助輪3が設けられていればよく、2つ又は3つの補助輪3が支持体4に設けられていてもよいし、5つ以上の補助輪3が支持体4に設けられていてもよい。
【0040】
また、本実施形態では、支持体4には、本体10の進行方向における駆動輪2の両側にそれぞれ1つ以上(
図1及び
図2では2つずつ)の補助輪3が配置されている。このため、移動体1の加速時に本体10が後側に倒れそうになった場合は、後ろ側の補助輪3で本体10を支えることができ、また移動体1の減速時に本体10が前側に倒れそうになった場合は前側の補助輪3で本体10を支えることができるので、本体10の姿勢の変化を抑制できる。
【0041】
また、支持体4と固定板24との間には、圧縮された状態でコイルばね6が取り付けられている。したがって、コイルばね6の弾性力によって、支持体4に取り付けられた各一対の前補助輪31と後補助輪32とが移動面B1に押しつけられている。つまり、本実施形態の移動体1は、支持体4を下方(移動面B1)に押しつける弾性力を発生する弾性体を更に備えており、ここにおいて、「下方に」とは、重力方向、移動面B1が水平である場合は移動面B1の法線方向であることが好ましいが、重力方向に対して所定の許容角度以内のずれがあってもよい。本実施形態ではこの弾性体がコイルばね6で構成されている。
【0042】
本実施形態では弾性体が例えばコイルばね6であり、コイルばね6が本体10に対して支持体4を下方に押しつけることで、支持体4に設けられた補助輪3を移動面B1に押しつけることができる。したがって、移動体1が加速又は減速した場合に、慣性によって本体10が後側又は前側に倒れようとするが、コイルばね6の弾性力によって本体10が上向きに押されているので、本体10が後側又は前側に倒れにくくなるという利点がある。例えば、移動体1の加速時に本体10が後側に倒れようとすると、本体10に発生する慣性力G1に応じた荷重が後補助輪32に加わる。このとき、本体10を後側に倒そうとする力が発生すると、コイルばね6が撓められるので、後補助輪32は、コイルばね6の弾性力F1に等しい反力F2を移動面B1から受けることになる。ここで、本体10の重心P1の移動面B1からの高さをH1とすると、慣性力G1によって本体10を後側に倒そうとするモーメントは(G1×H1)となる。したがって、重心P1と後補助輪32との間の距離をd1とすると、G1×H1=F2×d1の関係が成立すれば、慣性力G1によって本体10を後側に倒そうとするモーメントが、コイルばね6の弾性力に応じた反力で相殺されるので、本体10の姿勢変化が抑制される。よって、G1×H1=F2×d1の関係が成立するように、コイルばね6のばね定数等を設定すればよく、コイルばね6の弾性力によって移動体1の加減速による本体10の姿勢変化を抑制できる。なお、本体10に対して支持体4を下方に押しつける弾性体はコイルばね6に限定されず、板ばね等でもよい。
【0043】
上述のように、移動体1が移動する移動面B1に、複数の補助輪3と駆動輪2とが全て接している状態で、弾性体(コイルばね6)が発生する弾性力によって、複数の補助輪3が移動面B1に押しつけられている。移動体1が加速又は減速すると、本体10の慣性によって本体10が後方又は前方に倒れようとするが、コイルばね6の弾性力で複数の補助輪3が移動面B1に押しつけられているので、本体10が後方又は前方に倒れるのを抑制できる。したがって、移動体1の加減速時に本体10の姿勢が変化するのを抑制することができ、移動体1の姿勢が変化することで移動体1に連結された被搬送物A1に加わる振動の振幅を抑制できるから、被搬送物A1又は被搬送物A1に搭載された物品に加わる振動の影響を抑制できる。
【0044】
また、本実施形態では、一対の前補助輪31及び一対の後補助輪32が設けられた支持体4を本体10に対して下方に押す1つのばね系が、1つの弾性体(コイルばね6)で構成されている。ここで、前補助輪31を移動面B1に押しつける弾性体(ばね系)と、後補助輪32を移動面B1に押しつける弾性体(ばね系)とが別々に設けられている場合、2つの弾性体(ばね系)の弾性力が移動面B1に加わることになる。換言すると、2つのばね系によって本体10が移動面B1から持ち上げられることになるため、本体10に設けられた駆動輪2が移動面B1をグリップする力が弱まる可能性がある。それに対して、本実施形態では、前補助輪31を移動面B1に押しつけるための弾性体と、後補助輪32を移動面B1に押しつけるための弾性体とが1つの弾性体(ばね系)で構成されているので、本体10を移動面B1から持ち上げようとする力は1つの弾性体(ばね系)のみで発生することになる。よって、駆動輪2が移動面B1をグリップする力が低下するのを抑制でき、駆動輪2の駆動力又は制動力が低下するのを抑制できるので、運動安定性の低下を抑制できる。なお、本実施形態では、本体10に対して複数の補助輪3が設けられた支持体4を下方に押しつける1つのばね系が、1つのコイルばね6で構成されているが、この1つのばね系は、直列又は並列に設けられた複数の弾性体で構成されてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、支持体4において補助輪3が設けられた部位(前脚片42又は後脚片43)のばね定数よりも、弾性体(コイルばね6)のばね定数が小さくなるように、支持体4及び弾性体が構成されている。支持体4において補助輪3が設けられた部位とは、中央片41から前側及び後側にそれぞれ突出する前脚片42及び後脚片43であり、前脚片42及び後脚片43のばね定数はコイルばね6のばね定数よりも大きい。前脚片42及び後脚片43はコイルばね6に比べて撓みにくいので、移動面B1の起伏B2に補助輪3が乗り上げた場合にはコイルばね6が圧縮されることで、移動面B1の起伏B2を吸収することができる。
【0046】
次に、検知部14について説明する。検知部14は、本体10の挙動、及び本体10の周辺状況等を検知する。本開示でいう「挙動」は、動作及び様子等を意味する。つまり、本体10の挙動は、本体10が走行中/停止中を表す本体10の動作状態、本体10の移動距離及び走行時間、本体10の速度(及び速度変化)、本体10に作用する加速度、及び本体10の姿勢等を含む。
【0047】
検知部14は、例えば、本体10の周囲に存在する物体を検知するためのLiDAR(Light Detection and Ranging )141、移動面B1に設けられた誘導ラインを検知するための磁気センサ142等のセンサを含む。
【0048】
LiDAR141は本体10の周辺における物体の有無、物体が存在する場合はその位置を検知しており、検知結果を制御装置11に出力する。制御装置11は、LiDAR141が検知した物体の情報に基づいて、物体との衝突を回避することができる。
【0049】
ここで、本体10の周囲に存在する物体を検知するための検知部14(本実施形態では例えばLiDAR141)は、本体10に支持されているのが好ましい。つまり、LiDAR141は本体10に固定的に設けられているのが好ましい。移動面B1に起伏がある場合でも、補助輪3が取り付けられた支持体4が本体10に対して移動方向DR1に移動することで、本体10の姿勢変化を抑制できるので、本体10に設けられたLiDAR141の姿勢が移動面B1に対して変化するのを抑制できる。したがって、LiDAR141が移動面B1を、本体10の周囲に存在する物体と誤検知する可能性を低減できる。なお、本体10の周囲に存在する物体を検知するための検知部14は、LiDAR141に限定されない。この種のセンサとしては、音波、光、及び電波のうちの少なくとも一つを利用して物体を検知するセンサでもよい。
【0050】
移動面B1に設けられた誘導ラインは、例えば永久磁石材料等の硬磁性材料を含むゴム等で形成されており、移動面B1の表面に移動体1の走行経路にしたがってライン状に形成されている。
【0051】
磁気センサ142は、移動面B1に設けられた誘導ラインを、磁気によって検出する。制御装置11は、磁気センサ142の検知結果に基づいて、誘導ラインの上を通るように、右駆動輪ユニット20R及び左駆動輪ユニット20Lを制御して、移動体1を移動させる。
【0052】
上述のように、本実施形態では、本体10の前部において2つの前補助輪31が左右両側に配置され、本体10の後部において2つの後補助輪32が左右両側に配置され、本体10の中央部において2つの駆動輪2が左右両側に配置されている。つまり、本体10の前部及び後部において左右方向の中央位置には車輪(前補助輪31及び後補助輪32)が配置されていないので、各中央位置に磁気センサ142を一つずつ配置することができる。したがって、磁気センサ142の検知結果に基づいて、本体10の左右方向における中央位置が誘導ラインの上を通るように移動体1が前進又は後進する場合、駆動輪2及び補助輪3が誘導ラインの上を通らないようにできるので、誘導ラインの損耗を抑制できる。
【0053】
なお、移動面B1において、移動体1の走行経路の全体に誘導ラインが設けられていることは必須ではなく、走行経路の要所に、磁性材料で形成された誘導マーカが設けられていてもよく、移動体1は誘導マーカを辿りながら移動することができる。また、移動面B1に設けられた誘導ライン又は誘導マーカは磁気を利用して移動体1を誘導するものに限定されず、移動体1に設けられた画像センサで検出される誘導ライン又は誘導マーカ(例えば二次元バーコード等)を移動面B1に設けてもよい。また、誘導ライン又は誘導マーカは、移動体1に設けられた接触式のセンサで検出されるものでもよい。
【0054】
また、検知部14は、LiDAR141が検出した周辺の物体の位置情報と、所定エリアの電子的な地図情報とに基づいて、所定エリア内での搬送装置X1の存在位置を検出し、存在位置の検出結果を制御装置11に出力してもよい。また、検知部14が、複数の発信器から電波で送信されるビーコン信号を受信する受信機を含み、複数の発信器から送信されるビーコン信号に基づいて現在位置を検知し、現在位置の検知結果を制御装置11に出力してもよい。ここにおいて、複数の発信器は、搬送装置X1が移動する所定エリア内の複数箇所に配置されている。検知部14は、複数の発信器の位置と、受信機でのビーコン信号の受信電波強度とに基づいて、移動体1の現在位置を測定する。また、検知部14は、GPS(Global Positioning System)等の全地球測位システムを用いて移動体1の現在位置を検知するものでもよい。
【0055】
制御装置11は、例えば1以上のプロセッサ及びメモリを有するマイクロコンピュータを有している。言い換えれば、制御装置11は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムにて実現されている。制御装置11は、例えば上位システム100からの搬送指示と検知部14の検知結果とに基づいて、各駆動輪ユニット20に制御命令を出力し、各駆動輪2の向き及び回転を制御することで、移動体1を所望の方向へ所望の速度で移動させる。
【0056】
電源12は、例えば、二次電池である。電源12は、左駆動輪ユニット20L及び右駆動輪ユニット20R、制御装置11、通信部13、及び検知部14等に直接又は間接的に電力を供給する。なお、搬送装置X1は、外部から電力が供給されてもよく、この場合、搬送装置X1は電源12を備えなくてもよい。
【0057】
通信部13は、上位システム100と通信可能に構成されている。本実施形態では、通信部13は、搬送装置X1が移動する所定エリア内に設置された複数の中継器R1のいずれかと、電波を媒体とする無線通信によって通信を行う。そのため、通信部13と上位システム100とは、少なくともネットワークNT1及び中継器R1を介して、間接的に通信を行うことになる。
【0058】
各中継器R1は、通信部13と上位システム100との間の通信を中継する機器(アクセスポイント)である。中継器R1は、ネットワークNT1を介して、上位システム100と通信する。本実施形態では一例として、中継器R1と通信部13との間の通信には、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)又は免許を必要としない小電力無線(特定小電力無線)等の規格に準拠した、無線通信を採用する。また、ネットワークNT1は、インターネットに限らず、例えば、搬送装置X1が移動する所定エリア内又はこの所定エリアの運営会社内のローカルな通信ネットワークが適用されてもよい。
【0059】
(2.3)部品実装システム
本実施形態の搬送装置X1は、
図10に示すように、部品を基板に実装する少なくとも1つの部品実装機80を含む部品実装システムW1に用いられる。
【0060】
部品実装機80は、部品を供給するフィーダ台車81(
図10参照)と、部品を基板に実装する実装ヘッドを含む実装本体82と、を有する。
【0061】
フィーダ台車81は、工場内に設置された部品実装機80の実装本体82に対して部品を供給するために用いられる。ここでいう「部品実装機」は、例えば基板等の対象物に部品を実装する機械である。実装本体82は、部品を基板に実装する実装ヘッドを含んでいる。本実施形態では、搬送装置X1は、被搬送物A1としてのフィーダ台車81を、部品実装機80の実装本体82の設置場所まで搬送する。これにより、部品実装システムW1を構築することが可能である。言い換えれば、部品実装システムW1は、部品を基板に実装する少なくとも1つの部品実装機80を含むシステムである。そして、フィーダ台車81は、搬送装置X1によって実装本体82まで搬送される。本実施形態では、搬送装置X1は、例えば上位システム100からの指示を受けて、所定エリア内のある場所に置かれているフィーダ台車81を、実装本体82に接続される位置まで移動させる。搬送装置X1が、実装本体82の側面に設けられた凹所821内にフィーダ台車81を移動させると、実装本体82に設けられた第1コネクタに、フィーダ台車81の第2コネクタが接続されることによって、実装本体82とフィーダ台車81とが互いに接続された状態となる。そして、実装本体82とフィーダ台車81とが互いに接続された状態で、フィーダ台車81から実装本体82に対して部品を供給することが可能になる。
【0062】
ここで、搬送装置X1は、フィーダ台車81のうち部品を実装本体82に排出する部位と反対側の部位と連結可能であるのが好ましい。この場合、フィーダ台車81を部品実装機80の実装本体82の設置場所まで搬送した際に、フィーダ台車81における部品を排出する部位が実装本体82の方を向くことになる。したがって、フィーダ台車81を部品実装機80の実装本体82の設置場所まで搬送した際に、上記の排出する部位が実装本体82に向くようにフィーダ台車81の向きを変える作業をしなくて済む。
【0063】
(3)動作
以下、本実施形態の移動体1を用いた搬送装置X1の動作の一例について図面を参照して説明する。
【0064】
本実施形態の搬送装置X1は、連結部181によって連結された被搬送物A1と共に移動することによって、被搬送物A1を搬送する作業を行う。ここで、連結部181は、上下方向において自由度を有した状態で被搬送物A1を連結している。
【0065】
本実施形態の搬送装置X1が、
図4に示すように、移動面B1の起伏B2に補助輪3(前補助輪31及び後補助輪32)が乗り上げた場合、本体10がその自重によって沈み込むことによって、駆動輪2を移動面B1に接触させることができる。これにより、駆動輪2と補助輪3とが移動面B1に接触した状態を保つことができ、駆動輪2の駆動力又は制動力が減少するのを抑制できるので、移動体1の運動安定性が低下するのを抑制できる。
【0066】
(4)変形例
以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0067】
本開示における移動体1(搬送装置X1)は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における移動体1(搬送装置X1)としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0068】
(3.1)変形例1
変形例1の移動体1は、
図6に示すように、移動体1の前後方向において重心P1から外れた位置で、本体10に対して支持体4が取り付けられている点で上記の実施形態と相違する。なお、変形例1の移動体1において、上記実施形態の移動体1と共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0069】
上記実施形態の移動体1では、
図2に示すように、移動体1の前後方向において重心P1付近で、本体10に対して支持体4が取り付けられている。したがって、コイルばね6の弾性力による荷重を、前補助輪31と後補助輪32とに均等にかけることができる。
【0070】
それに対して、本実施形態では、
図6に示すように、移動体1の前後方向において重心P1から外れた位置で、本体10に対して支持体4が取り付けられている。これにより、支持体4がコイルばね6を介して本体10に支持された位置から前補助輪31までの距離L1と後補助輪32までの距離L2とに応じて、コイルばね6による弾性力を前補助輪31と後補助輪32とに配分することができる。
【0071】
なお、本体10に対して支持体4が取り付けられている位置は、移動体1の形状及び重量、移動体1の動き方などに応じて適宜変更が可能である。
【0072】
(3.2)変形例2
変形例2の移動体1は、
図7に示すように、本体10に対する支持体4の動きを抑制するダンパ7を、更に備える点で上記の実施形態と相違する。なお、ダンパ7以外は上記の実施形態と共通であるので、上記実施形態の移動体1と共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0073】
ダンパ7は、例えばピストンの内部にオイルが充填されたオイルダンパであり、本体10と支持体4との間に取り付けられている。支持体4が本体10に対して移動方向DR1に沿って移動すると、ダンパ7が支持体4の移動に応じた減衰力を支持体4に加えることで、支持体4の移動を経時的に減衰させることができる。したがって、移動体1が搬送する被搬送物A1又は被搬送物A1に搭載された物品に加わる振動の影響を抑制できる。
【0074】
なお、ダンパ7はオイルダンパに限定されず、粘性ダンパ又は粘弾性ダンパ等で構成されてもよい。
【0075】
(3.3)変形例3
変形例3の移動体1は、
図8及び
図9に示すように、一対の前補助輪31がリンク機構70を介して支持体4Aに取り付けられ、一対の後補助輪32がリンク機構70を介して支持体4Aに取り付けられている点で上記の実施形態と相違する。なお、リンク機構70及び支持体4A以外は上記の実施形態と共通であるので、上記実施形態の移動体1と共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0076】
支持体4Aは、左右方向の寸法に比べて前後方向の寸法が長い平板状に形成されている。支持体4Aの前端部分及び後端部分にはそれぞれ上向きに突出する支持片47が設けられている。
【0077】
リンク機構70は、前後方向の寸法に比べて左右方向の寸法が長い板状のリンク板71を有している。リンク板71の下面の左右両端部は支持体4Aの外側に張り出しており、リンク板71の下面の左右両端部にはそれぞれ補助輪3(前補助輪31又は後補助輪32)が取り付けられている。リンク板71の下面の左右方向における中央部には支持片72が設けられている。そして、支持片72の孔と支持片47の孔とに回転軸73を通すことによって、リンク板71が回転軸73を中心として回転可能な状態で支持体4Aに取り付けられる。
【0078】
これにより、リンク板71に取り付けられた一対の前補助輪31は、回転軸73を中心として回転可能な状態で支持体4Aに設けられている。また、リンク板71に取り付けられた一対の後補助輪32は、回転軸73を中心として回転可能な状態で支持体4Aに設けられている。例えば、
図8及び
図9に示すように、一対の前補助輪31のうち、右側の前補助輪31のみが移動面B1の起伏B2に乗り上げた場合、リンク板71が回転軸73を中心に回転することで、リンク板71に支持された2つの前補助輪31を両方ともに移動面B1に接触させることができる。したがって、補助輪3(前補助輪31及び後補助輪32)と駆動輪2とが移動面B1に接地している状態を保つことができ、駆動輪2の駆動力又は制動力が減少するのを抑制できるので、移動体1の運動安定性が低下するのを抑制できる。
【0079】
(3.4)その他の変形例
上記の実施形態では、複数の補助輪3が支持体4に固定されているが、複数の補助輪3と支持体4との間にそれぞれ弾性部材が設けられてもよい。つまり、複数の補助輪3の各々が弾性部材(コイルばね又は板ばね等)を介して支持体4に取り付けられてもよく、複数の補助輪3の各々に加わる振動を弾性部材で吸収することができる。
【0080】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様の移動体(1)は、本体(10)と、少なくとも1つの駆動輪(2)と、複数の補助輪(3)と、支持体(4)と、ガイド支持部(5)と、を備える。少なくとも1つの駆動輪(2)は本体(10)に設けられている。支持体(4)には複数の補助輪(3)が設けられている。ガイド支持部(5)は、本体(10)に対して支持体(4)が移動可能な方向を所定の移動方向(DR1)に規制する。支持体(4)は、移動方向(DR1)に沿って移動可能な状態で本体(10)に取り付けられている。
【0081】
この態様によれば、運動安定性の低下を抑制可能である。
【0082】
第2の態様の移動体(1)は、第1の態様において、弾性体(6)を更に備える。弾性体(6)は、支持体(4)を下方に押しつける弾性力を発生する。
【0083】
この態様によれば、運動安定性の低下を抑制可能である。
【0084】
第3の態様の移動体(1)では、第2の態様において、支持体(4)において補助輪(3)が設けられた部位のばね定数よりも、弾性体(6)のばね定数が小さい。
【0085】
この態様によれば、運動安定性の低下を抑制可能である。
【0086】
第4の態様の移動体(1)では、第2又は3の態様において、移動体(1)が移動する移動面(B1)に、複数の補助輪(3)と駆動輪(2)とが全て接している状態で、弾性体(6)が発生する弾性力によって複数の補助輪(3)が移動面(B1)に押しつけられている。
【0087】
この態様によれば、運動安定性の低下を抑制可能である。
【0088】
第5の態様の移動体(1)では、第1~4のいずれかの態様において、本体(10)には2つの駆動輪(2)が設けられている。
【0089】
この態様によれば、運動安定性の低下を抑制可能である。
【0090】
第6の態様の移動体(1)は、第1~5のいずれかの態様において、本体(10)に対する支持体(4)の動きを抑制するダンパ(7)を、更に備える。
【0091】
この態様によれば、運動安定性の低下を抑制可能である。
【0092】
第7の態様の移動体(1)では、第1~6のいずれかの態様において、支持体(4)には、本体(10)の進行方向における駆動輪(2)の両側にそれぞれ1つ以上の補助輪(3)が配置されている。
【0093】
この態様によれば、運動安定性の低下を抑制可能である。
【0094】
第8の態様の移動体(1)では、第1~7のいずれかの態様において、支持体(4)が移動可能な移動方向(DR1)が、移動体(1)が移動する移動面(B1)の法線(VL1)に沿っている。
【0095】
この態様によれば、運動安定性の低下を抑制可能である。
【0096】
第9の態様の搬送装置(X1)は、第1~8のいずれかの態様の移動体(1)を用いた搬送装置(X1)であって、本体(10)が、被搬送物(A1)を保持する保持部(18)を有する。
【0097】
この態様によれば、運動安定性の低下を抑制可能である。
【0098】
第10の態様の搬送装置(X1)は、第9の態様において、保持部(18)は、被搬送物(A1)と連結することによって被搬送物(A1)を保持する連結部(181)を含む。
【0099】
この態様によれば、運動安定性の低下を抑制可能である。
【0100】
第11の態様の部品実装システム(W1)は、部品を基板に実装する少なくとも1つの部品実装機(80)を含む。部品実装機(80)は、部品を供給するフィーダ台車(81)と、部品を基板に実装する実装ヘッドを含む実装本体(82)と、を有する。フィーダ台車(81)が、第9又は10の搬送装置(X1)によって実装本体(82)まで搬送される被搬送物(A1)である。
【0101】
この態様によれば、運動安定性の低下を抑制可能である。
【0102】
第2~第8の態様に係る構成については、移動体(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。第10の態様に係る構成については、搬送装置(X1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 移動体
2 駆動輪
3 補助輪
4 支持体
5 ガイド支持部
6 弾性体
7 ダンパ
10 本体
18 保持部
80 部品実装機
81 フィーダ台車
82 実装本体
181 連結部
A1 被搬送物
B1 移動面
DR1 移動方向
VL1 法線
W1 部品実装システム
X1 搬送装置