(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】自動制御コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20240604BHJP
A01D 69/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
A01B69/00 303F
A01D69/00 302Z
(21)【出願番号】P 2020180595
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】三宅 浩喜
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-314822(JP,A)
【文献】実開昭54-126339(JP,U)
【文献】特開昭62-258823(JP,A)
【文献】実開平03-022622(JP,U)
【文献】特開2018-078839(JP,A)
【文献】特開2009-106199(JP,A)
【文献】特開2019-205413(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0133023(US,A1)
【文献】実開昭54-126341(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
A01D 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(6)に設ける左右クローラ走行装置(7),(7)で走行するコンバインにおいて、クローラ走行装置(7),(7)の直前に、歩み板の踏み面を検出する踏み面センサ(21)を設け、歩み板上の走行時に踏み面センサ(21)が歩み板を検出し続けて直進するように操向制御装置(75)を自動制御
し、
左右の接地面センサ(21)が歩み板の始端部を検出すると走行制御装置(76)を低速走行に切り換えるよう制御したことを特徴とする自動制御コンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動で走行する自動制御コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインは圃場で米や麦等の穀粒を収穫する農業機械であるが、倉庫から圃場へ移動する際には、トラックの荷台にコンバインを積載して移動している。
【0003】
この荷台への積載作業は、特開2004-314822号公報に記載の如く、地面から荷台に掛け渡した、いわゆる歩み板上を走行させて荷台へ搭乗している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
歩み板上を走行させて荷台へコンバインを搭載する作業は、クローラ走行装置が歩み板を踏み外すと転落するために非常に危険な作業となる。
【0006】
このために、前記公報に記載のコンバインでは、歩み板上を走行する際にクローラの左右側部に下方へ倒して、歩み板の側面に接触する左右倣いセンサを設け、この倣いセンサが歩み板の位置を検出して操向制御装置を自動的に直進走行制御する構成であるが、倣いセンサを倒す準備作業はクローラが機体の車体の底部にあるために面倒である。
【0007】
本発明は、コンバインをトラックに積み込む際に自動的に安全な積み込み動作をする自動制御コンバインとすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0009】
本発明は、走行車体(6)に設ける左右クローラ走行装置(7),(7)で走行するコンバインにおいて、クローラ走行装置(7),(7)の直前に、歩み板の踏み面を検出する踏み面センサ(21)を設け、歩み板上の走行時に踏み面センサ(21)が歩み板を検出し続けて直進するように操向制御装置(75)を自動制御し、
左右の接地面センサ(21)が歩み板の始端部を検出すると走行制御装置(76)を低速走行に切り換えるよう制御したことを特徴とする自動制御コンバインである。
本発明に関連する第1の発明は、走行車体6に設ける左右クローラ走行装置7,7で走行するコンバインにおいて、クローラ走行装置7,7の直前に、歩み板の踏み面を検出する踏み面センサ21を設け、歩み板上の走行時に踏み面センサ21が歩み板を検出し続けて直進するように操向制御装置75を自動制御してなる自動制御コンバインとする。
【0010】
本発明に関連する第2の発明は、左右に設ける踏み面センサ21が略同時に歩み板の検出を終えると所定距離走行して停止するように走行制御装置76を自動制御したことを特徴とする本発明に関連する第1の発明の自動制御コンバインとする。
【0011】
本発明に関連する第3の発明は、左右の接地面センサ21が歩み板の始端部を検出すると走行制御装置76を低速走行に切り換えるよう制御したことを特徴とする本発明に関連する第1の発明の自動制御コンバインとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明で、コンバインをトラクックに積み下ろす際に、作業者がコンバインの機体に搭乗することなく安全に搭載作業を行える。さらに、コンバインのクローラ走行装置7,7が歩み板に載り上がる直前に走行制御装置76が低速走行になって歩み板上から踏み外すことなくトラック荷台上へ安全に積み込める。
本発明に関連する第1の発明で、踏み面センサ21で左右クローラ走行装置7,7が踏み出す前の歩み板を検出して一旦歩み板に乗り上げると踏み外さないように操向制御装置75を操向制御するので、コンバインをトラクックに積み下ろす際に、作業者がコンバインの機体に搭乗することなく安全に搭載作業を行える。
【0013】
本発明に関連する第2の発明で、コンバインが歩み板を登ってトラックの荷台に搭乗してクローラ走行装置7,7が歩み板から外れて所定距離移動して停止することでコンバインがそのままで荷台枠に当たることなく搭載できる。
【0014】
本発明に関連する第3の発明で、コンバインのクローラ走行装置7,7が歩み板に載り上がる直前に走行制御装置76が低速走行になって歩み板上から踏み外すことなくトラック荷台上へ安全に積み込める。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態にかかるコンバインの機体の自動操縦用コントローラを示すブロック図である。
【
図4】同コンバインのフィードチェンの穀稈挟持量検出センサを示す側面図である。
【
図5】同コンバインの走行車台前部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本発明のコンバインを説明する。
図2及び
図3はコンバインの全体構成を示すもので、走行車体6の下部側に土壌面を走行する左右一対のクローラ走行装置7,7を配設すると共に、該走行車体6上に、フィードチェン9に挟持して供給される穀稈を脱穀し、この脱穀された穀粒を選別回収して一時貯留するグレンタンク5と、このタンク5に貯留された穀粒を機外へ排出する排穀オーガ10を備えた脱穀装置11を載置し、この脱穀装置11の後端部に排藁処理装置12を装架構成している。
【0017】
脱穀装置11の前方側に、前端位置から未刈穀稈を分草する分草体13と、分草された穀稈を引き起こす引起部14と、引き起こされた穀稈を刈り取る刈刃部15と、この刈り取られた穀稈を後方へ搬送して該フィードチェン9へ受け渡しする穀稈搬送部16等を有する刈取装置17を、油圧駆動による刈取昇降シリンダ17aにより土壌面に対して昇降自在なるよう走行車体6の前端部へ懸架構成している。
【0018】
該刈取装置17の一側にコンバインの操作制御を行う操作装置18と、この操作のための操作席19とを設け、この操作席19の後方側に該グレンタンク5を配置し下方側にエンジン20を搭載すると共に、これら走行装置8,脱穀装置11,刈取装置17,操作装置18,エンジン20等によってコンバインの機体1を構成している。
【0019】
図4は、フィードチェン9の穀稈挟持量を検出する構成で、フィードチェン9と挟持杆26で穀稈を挟持する位置の上側に、脱穀装置11に設けるセンサ取付アーム22に挟持杆26に沿わせたセンサアーム24とポテンショメータ23を設け、スプリング25でセンサアーム24をフィードチェン9に向けて付勢している。従って、フィードチェン9と挟持杆26が挟持する穀稈の厚み変化をポテンショメータ23で検出することが出来る。
【0020】
フィードチェン9が挟持する穀稈の量が多くなると脱穀装置11の負荷が過大になるので、走行制御装置76の走行速度を遅くして刈取穀稈量を少なくして脱穀装置11の負荷を最適状態にする。フィードチェン9の搬送速度を変化させて穀稈量を変更することも出来る。
【0021】
また、穀稈量が多すぎる場合は、走行制御装置76で走行を一時停止させてフィードチェン9の穀稈送りのみ駆動し、穀稈量が適量となると走行速度を元に戻すことも良い。
【0022】
また、収穫作業中の穀稈量変動を記憶し、急激な穀稈量変動があると機械的故障の可能性を作業者が持っている遠隔操縦装置3に表示するようにしても良い。なお、刈始めと刈終わりでの穀稈量変動は機体的故障の判定に使用しない。
【0023】
図1に示す如く、CPUを主体的に配し自動操縦による走行操作及び作業操作等の演算制御を行わせるコントローラ65を設け、このコントローラ65の入力側に、走行制御スイッチ55,主変速スイッチ56,増速スイッチ57,副変速スイッチ58,エンジン回転センサ59,車速センサ60,刈取昇降スイッチ61,方向センサ62,刈高さセンサ63,刈脱スイッチ64,満杯センサ4等と、電子カメラ2の撮像による画像処理を行う画像処理装置66と、外部装置との通信処理を行う通信処理装置67等を各々接続して構成させる。
【0024】
コントローラ65の出力側には、操向クラッチを切り替える操向切替弁68と旋回クラッチ48を作用させる旋回比例減圧弁69からなる操向制御装置75と、走行ブレーキを制動させる走行比例減圧弁70と主変速用の変速モータの制御を行う主変速リレー71と普通速及び増速を切り替える増速切替弁72と副変速を切り替える副変速切替弁73からなる走行制御装置76と、刈取昇降シリンダ17aを作動させる刈取昇降切替弁74等を各々接続して構成させる。
【0025】
なお、作業者が携帯して無線等により機体1の遠隔操縦を行う遠隔操縦装置3は、機体1の走行状態や作業状態を監視するモニタ装置75と、機体1のコントローラ65との信号通信によって機体1の自動操縦の入り・切りを行わせると共に、自動操縦より優先して手動による遠隔操縦を可能とするコントローラ76とを設けて構成させる。
【0026】
コンバインの機体1には、
図3の如く、作業者の手動操作により操縦するために必要とする操作具として、主変速の制御を行う主変速レバー77と、副変速を切り替える副変速レバー78と、機体1の操向旋回と刈取装置17の昇降を行うパワステレバー79とを配置して構成させる。
【0027】
左右クローラ走行装置7,7及び操作装置18等による走行駆動作用は、前後進の切り替えや車速を無段に変速する
車台6の底面で引起部14の後部には、クローラ走行装置7,7の前端下方に向けて踏み面センサ21を設けている。踏み面センサ21は、金属製の歩み板を検出する防水の近接センサで、
図5の如く、左右クローラ走行装置7,7の幅内にそれぞれS1~S3とS4~S6の三個づつ設けていて、金属製の歩み板を検出するようにしている。
【0028】
左右の踏み面センサ21(S1~S3、S4~S6)は、左右クローラ走行装置7,7が直進すれば踏みつける位置の歩み板を検出することになり、歩み板を検出してオンとなればそのまま進行することで歩み板上を走行することになり、例えば、右端の踏み面センサS1がオフであれば操向制御装置75を右旋回制御して修正し、左端の踏み面センサS6がオフであれば操向制御装置75を左旋回制御して修正することで歩み板上を走行できるようになる。
【0029】
また、S1~S6が同時にオンとなれば、左右クローラ走行装置7,7が歩み板上に踏み上げたとして走行制御装置76を低速走行として慎重に走行し、S1~S6が同時にオフとなれば(検出を終えると)、左右クローラ走行装置7,7が歩み板から外れ始めたので走行制御装置76を所定距離走行して停止するよう制御することで分草体13を荷台枠に当てずに停止できる。
【0030】
図6は、踏み面センサ21(S1~S6)の検出信号で操向制御装置75と走行制御装置76を制御する様子を示す制御表図である。
【0031】
なお、引起部14から前方に向けて超音波センサ等の障害物検出センサを設けて、引起部14が障害物に当たる前に走行制御装置76を停止制御させる構成でも良い。
【符号の説明】
【0032】
7 ローラ走行装置
21 踏み面センサ
75 操向制御装置
76 走行制御装置