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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-03
(45)【発行日】2024-06-11
(54)【発明の名称】流体機械
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20240604BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20240604BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20240604BHJP
   H02K 5/22 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
F04B39/00 106B
F04C29/00 T
H02K11/33
H02K5/22
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021060893
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156947
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】篠原 光毅
(72)【発明者】
【氏名】矢野 順也
(72)【発明者】
【氏名】木下 雄介
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-098664(JP,A)
【文献】特開2013-179186(JP,A)
【文献】特開2019-075872(JP,A)
【文献】特開2011-077464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00-39/16
F04C 23/00-29/12
H02M 7/48
H02K 5/22、11/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が吸入されるハウジングと、
前記ハウジング内に収容される電動モータと、
前記電動モータを駆動するインバータと、
前記ハウジングに取り付けられる金属製のカバーと、
前記ハウジングと前記カバーとによって区画形成されるとともに前記インバータを収容するインバータ室と、
相手側コネクタに電気的に接続されるとともに前記インバータの回路基板に電力を供給するための配線と、を備え、
前記配線は、
前記回路基板に電気的に接続される基板接続部と、
前記相手側コネクタに電気的に接続されるコネクタ接続部と、
前記カバーの壁面に沿って延在し、前記基板接続部と前記コネクタ接続部とを接続する延在部と、を有し、
前記延在部が樹脂モールド部によって覆われている流体機械であって、
前記カバーは、貫通孔を有し、
前記樹脂モールド部には、前記貫通孔に係止されるアンカー部が一体形成され、
前記延在部は、前記アンカー部によって前記カバーの壁面に係止されており、
前記樹脂モールド部は、前記コネクタ接続部を囲繞した状態で前記カバーから筒状に突出するとともに前記相手側コネクタが接続されるコネクタ部を有し、
前記樹脂モールド部は、前記アンカー部を複数有し、
前記複数のアンカー部の少なくとも2つは、前記コネクタ部を前記回路基板の厚み方向に対して交差する方向で挟み込む両側の位置で前記インバータ室側から前記カバーにそれぞれ係止されていることを特徴とする流体機械。
【請求項2】
前記カバーは、前記配線が挿通される挿通孔を有し、
前記基板接続部は、前記回路基板から前記挿通孔を介して前記インバータ室外へ直線状に延びていることを特徴とする請求項1に記載の流体機械。
【請求項3】
流体が吸入されるハウジングと、
前記ハウジング内に収容される電動モータと、
前記電動モータを駆動するインバータと、
前記ハウジングに取り付けられる金属製のカバーと、
前記ハウジングと前記カバーとによって区画形成されるとともに前記インバータを収容するインバータ室と、
相手側コネクタに電気的に接続されるとともに前記インバータの回路基板に電力を供給するための配線と、を備え、
前記配線は、
前記回路基板に電気的に接続される基板接続部と、
前記相手側コネクタに電気的に接続されるコネクタ接続部と、
前記カバーの壁面に沿って延在し、前記基板接続部と前記コネクタ接続部とを接続する延在部と、を有し、
前記延在部が樹脂モールド部によって覆われている流体機械であって、
前記カバーは、貫通孔を有し、
前記樹脂モールド部には、前記貫通孔に係止されるアンカー部が一体形成され、
前記延在部は、前記アンカー部によって前記カバーの壁面に係止されており、
前記配線は、低電圧用配線と、前記低電圧用配線よりも高い電圧が印加される高電圧用配線と、を含み、
前記延在部は、
前記低電圧用配線が有する低電圧用延在部と、
前記高電圧用配線が有する高電圧用延在部と、を含み、
前記低電圧用延在部及び前記高電圧用延在部の一方は、前記インバータ室内に配置され、
前記低電圧用延在部及び前記高電圧用延在部の他方は、前記インバータ室外に配置されていることを特徴とする流体機械。
【請求項4】
前記高電圧用延在部は、前記インバータ室内に配置され、
前記低電圧用延在部は、前記インバータ室外に配置されていることを特徴とする請求項に記載の流体機械。
【請求項5】
前記アンカー部は、
前記貫通孔内に挿通されるとともに前記貫通孔の内周面に密着する挿通部と、
前記挿通部から外方へ突出するとともに前記カバーにおける前記貫通孔の周囲に係止されるフランジ部と、を有することを特徴とする請求項1~請求項のいずれか一項に記載の流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
流体機械は、流体が吸入されるハウジングと、ハウジング内に収容される電動モータと、電動モータを駆動するインバータと、を備えている。ハウジングには、金属製のカバーが取り付けられている。そして、ハウジングとカバーとによってインバータ室が区画形成されている。インバータ室は、インバータを収容する。さらに、流体機械は、インバータの回路基板に電力を供給するための配線を備えている。配線は、相手側コネクタに電気的に接続されている。配線は、回路基板に電気的に接続される基板接続部と、相手側コネクタに電気的に接続されるコネクタ接続部と、を有している。そして、基板接続部が回路基板に電気的に接続されるとともに、コネクタ接続部が相手側コネクタに電気的に接続されることにより、配線は、相手側コネクタからの電力を回路基板に供給する。
【0003】
ところで、流体機械では、例えば、回路基板と基板接続部との接続位置の制約や相手側コネクタとコネクタ接続部との接続位置の制約などによって、基板接続部とコネクタ接続部との相対位置が、カバーの壁面に沿って互いに離れる場合がある。基板接続部とコネクタ接続部とが、カバーの壁面に沿って離れるほど、配線において、カバーの壁面に沿って延在し、基板接続部とコネクタ接続部とを接続する延在部の長さが長くなる。延在部の長さが長くなるほど、配線が振動し易くなる。そこで、例えば、少なくとも延在部を樹脂モールド部によって覆い、樹脂モールド部をカバーに固定することによって、配線の振動を抑制することが考えられている。例えば特許文献1では、樹脂モールド部がボルトによってカバーに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-98664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、ボルトを用いて、樹脂モールド部をカバーに固定する構成では、ボルトの分だけ部品点数が増加する。したがって、このような流体機械においては、部品点数を削減しつつも、配線の振動を抑制することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための流体機械は、流体が吸入されるハウジングと、前記ハウジング内に収容される電動モータと、前記電動モータを駆動するインバータと、前記ハウジングに取り付けられる金属製のカバーと、前記ハウジングと前記カバーとによって区画形成されるとともに前記インバータを収容するインバータ室と、相手側コネクタに電気的に接続されるとともに前記インバータの回路基板に電力を供給するための配線と、を備え、前記配線は、前記回路基板に電気的に接続される基板接続部と、前記相手側コネクタに電気的に接続されるコネクタ接続部と、前記カバーの壁面に沿って延在し、前記基板接続部と前記コネクタ接続部とを接続する延在部と、を有し、前記延在部が樹脂モールド部によって覆われている流体機械であって、前記カバーは、貫通孔を有し、前記樹脂モールド部には、前記貫通孔に係止されるアンカー部が一体形成され、前記延在部は、前記アンカー部によって前記カバーの壁面に係止されている。
【0007】
これによれば、樹脂モールド部に一体形成されたアンカー部が貫通孔に係止されることにより、延在部は、アンカー部によってカバーの壁面に係止されている。このため、従来技術のように、ボルトを用いて、樹脂モールド部をカバーに固定する必要が無い。したがって、部品点数を削減しつつも、配線の振動を抑制することができる。
【0008】
上記流体機械において、前記樹脂モールド部は、前記コネクタ接続部を囲繞した状態で前記カバーから筒状に突出するとともに前記相手側コネクタが接続されるコネクタ部を有し、前記樹脂モールド部は、前記アンカー部を複数有し、前記複数のアンカー部の少なくとも2つは、前記コネクタ部を前記回路基板の厚み方向に対して交差する方向で挟み込む両側の位置で前記インバータ室側から前記カバーにそれぞれ係止されているとよい。
【0009】
これによれば、例えば、複数のアンカー部の少なくとも2つが、コネクタ部を回路基板の厚み方向に対して交差する方向で挟み込む両側の位置でインバータ室側からカバーにそれぞれ係止されているため、コネクタ部をより強固にカバーに固定することができる。
【0010】
上記流体機械において、前記カバーは、前記配線が挿通される挿通孔を有し、前記基板接続部は、前記回路基板から前記挿通孔を介して前記インバータ室外へ直線状に延びているとよい。
【0011】
これによれば、インバータ室内で延びる基板接続部の長さを短くすることができる。したがって、インバータ室内の省スペース化を図ることができ、流体機械の小型化を図ることができる。
【0012】
上記流体機械において、前記配線は、低電圧用配線と、高電圧用配線と、を含み、前記延在部は、前記低電圧用配線が有する低電圧用延在部と、前記高電圧用配線が有する高電圧用延在部と、を含み、前記低電圧用延在部及び前記高電圧用延在部の一方は、前記インバータ室内に配置され、前記低電圧用延在部及び前記高電圧用延在部の他方は、前記インバータ室外に配置されているとよい。
【0013】
これによれば、低電圧用延在部及び高電圧用延在部の一方がインバータ室内に配置され、低電圧用延在部及び高電圧用延在部の他方がインバータ室外に配置されているため、低電圧用延在部と高電圧用延在部との間での電磁ノイズをカバーによって遮蔽することができる。
【0014】
上記流体機械において、前記高電圧用延在部は、前記インバータ室内に配置され、前記低電圧用延在部は、前記インバータ室外に配置されているとよい。
これによれば、高電圧用配線の大部分をインバータ室内に収容することができ、高電圧用配線をカバーによって保護することができる。
【0015】
上記流体機械において、前記アンカー部は、前記貫通孔内に挿通されるとともに前記貫通孔の内周面に密着する挿通部と、前記挿通部から外方へ突出するとともに前記カバーにおける前記貫通孔の周囲に係止されるフランジ部と、を有するとよい。
【0016】
これによれば、挿通部が貫通孔の内周面に密着し、フランジ部がカバーにおける貫通孔の周囲に係止されることにより、アンカー部が貫通孔に係止されている。よって、例えば、挿通部のみが貫通孔の内周面に密着することで、アンカー部が貫通孔に係止されている場合に比べて、アンカー部における貫通孔に対する係止をより強固なものとすることができる。したがって、アンカー部によって、樹脂モールド部におけるカバーからの離間移動をさらに規制し易くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、部品点数を削減しつつも、配線の振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態における流体機械の一部を破断して示す断面図。
図2】インバータ室周辺を拡大して示す断面図。
図3】インバータ室周辺を拡大して示す断面図。
図4】第1アンカー部周辺を拡大して示す断面図。
図5】第2コネクタ部と2つの第2アンカー部との関係を拡大して示す断面図。
図6】第1構成体と第2構成体とを一体化させる前の状態を模式的に示す断面図。
図7】別の実施形態における第1アンカー部周辺を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、流体機械を具体化した一実施形態を図1図6にしたがって説明する。本実施形態の流体機械は、例えば、車両空調装置に用いられる。
図1に示すように、流体機械10は、ハウジング11を備えている。ハウジング11は、円筒状である。ハウジング11は、モータハウジング12と、吐出ハウジング13と、を有している。モータハウジング12及び吐出ハウジング13は、金属製であり、例えば、アルミニウム製である。
【0020】
モータハウジング12は、端壁12aと、周壁12bと、を有している。端壁12aは、平板状である。周壁12bは、端壁12aの外周縁から筒状に延びている。吐出ハウジング13は、モータハウジング12の周壁12bにおける端壁12aとは反対側の端部に連結されている。そして、吐出ハウジング13は、モータハウジング12における端壁12aとは反対側の開口を閉塞している。
【0021】
モータハウジング12内には、回転軸15と、圧縮部16と、電動モータ17と、が収容されている。したがって、電動モータ17は、ハウジング11内に収容されている。回転軸15は、モータハウジング12に回転可能に支持されている。圧縮部16は、回転軸15の回転によって流体である冷媒を圧縮する。圧縮部16は、例えば、モータハウジング12内に固定された図示しない固定スクロールと、固定スクロールに対向配置される図示しない可動スクロールと、から構成されるスクロール式である。
【0022】
電動モータ17は、ロータ17aと、ステータ17bと、から構成されている。ロータ17aは、回転軸15に固定されて回転軸15と一体的に回転する。ステータ17bは、モータハウジング12の周壁12bの内周面に固定されるとともにロータ17aを取り囲んでいる。ステータ17bのティースには、コイル18が巻回されている。そして、コイル18に電力が供給されることにより、ロータ17a及び回転軸15が回転する。したがって、電動モータ17は、回転軸15を回転させて圧縮部16を駆動する。
【0023】
モータハウジング12の周壁12bには、吸入口12hが形成されている。また、吐出ハウジング13には、吐出口13hが形成されている。吸入口12hには外部冷媒回路19の一端が接続されている。吐出口13hには外部冷媒回路19の他端が接続されている。そして、外部冷媒回路19から吸入口12hを介してモータハウジング12内に冷媒が吸入される。したがって、流体機械10は、流体が吸入されるハウジング11を備えている。そして、モータハウジング12内に吸入された冷媒は、圧縮部16によって圧縮される。圧縮部16によって圧縮された冷媒は、吐出ハウジング13内に吐出されるとともに吐出口13hを介して外部冷媒回路19に吐出される。外部冷媒回路19に吐出された冷媒は、外部冷媒回路19の図示しない熱交換器や膨張弁を経て、吸入口12hを介してモータハウジング12内に還流される。流体機械10及び外部冷媒回路19は、車両空調装置20を構成している。
【0024】
流体機械10は、カバー14を備えている。カバー14は、金属製であり、例えば、アルミニウム製である。カバー14は、端壁14aと、周壁14bと、を有している。端壁14aは、平板状である。周壁14bは、端壁14aの外周縁から筒状に延びている。カバー14は、周壁14bにおける端壁14aとは反対側の開口がモータハウジング12の端壁12aにより閉塞された状態で、モータハウジング12の端壁12aに取り付けられている。そして、モータハウジング12の端壁12aとカバー14とによってインバータ室S1が区画形成されている。端壁14aは、回転軸15の軸線方向に対して直交する方向に延びている。
【0025】
流体機械10は、インバータ21を備えている。インバータ21は、回路基板22を有している。インバータ21は、インバータ室S1内に収容されている。したがって、インバータ室S1は、インバータ21を収容する。圧縮部16、電動モータ17、及びインバータ21は、この順で、回転軸15の軸線方向に並んで配置されている。回路基板22は、回路基板22の厚み方向が回転軸15の軸線方向に一致した状態で、インバータ室S1内に収容されている。したがって、回路基板22の厚み方向に対して直交する方向は、回転軸15の軸線方向に対して直交する方向に一致している。よって、端壁14aが延びる方向は、回路基板22の厚み方向に対して直交する方向に一致している。
【0026】
図2に示すように、カバー14の端壁14aは、第1面140aと、第2面141aと、を有している。カバー14の端壁14aの第1面140aは、カバー14の端壁14aにおけるモータハウジング12の端壁12aとは反対側に位置する面である。カバー14の端壁14aの第2面141aは、カバー14の端壁14aにおけるモータハウジング12の端壁12a寄りに位置する面である。
【0027】
カバー14の端壁14aには、低電圧用挿通孔14c及び高電圧用挿通孔14dが形成されている。低電圧用挿通孔14c及び高電圧用挿通孔14dは、カバー14の端壁14aを厚み方向に貫通している。
【0028】
図2及び図3に示すように、カバー14の端壁14aには、貫通孔としての第1貫通孔14e、第2貫通孔14f、及び第3貫通孔14gがそれぞれ複数形成されている。各第1貫通孔14e、各第2貫通孔14f、及び各第3貫通孔14gそれぞれは、カバー14の端壁14aを厚み方向に貫通している。各第1貫通孔14e、各第2貫通孔14f、及び各第3貫通孔14gそれぞれは、円孔状である。各第1貫通孔14e、各第2貫通孔14f、及び各第3貫通孔14gそれぞれの内径は同じである。各第2貫通孔14fは、カバー14の端壁14aにおける高電圧用挿通孔14dの周囲に形成されている。
【0029】
図2に示すように、流体機械10は、低電圧用配線30と、高電圧用配線31と、樹脂モールド部M1と、を備えている。
低電圧用配線30は、低電圧用基板接続部30aと、低電圧用コネクタ接続部30bと、低電圧用延在部30cと、を有している。低電圧用基板接続部30a、低電圧用コネクタ接続部30b、及び低電圧用延在部30cは、それぞれ細長平板状である。低電圧用基板接続部30aは、低電圧用延在部30cの第1端から低電圧用延在部30cの延びる方向に対して直交する方向に延びている。低電圧用コネクタ接続部30bは、低電圧用延在部30cの第2端から低電圧用延在部30cの延びる方向に対して直交する方向に延びている。したがって、低電圧用延在部30cは、低電圧用基板接続部30aと低電圧用コネクタ接続部30bとを接続している。低電圧用コネクタ接続部30bにおける低電圧用延在部30cからの延在方向は、低電圧用基板接続部30aにおける低電圧用延在部30cからの延在方向とは反対方向である。
【0030】
図2及び図3に示すように、高電圧用配線31は、高電圧用基板接続部31aと、高電圧用コネクタ接続部31bと、高電圧用延在部31cと、を有している。高電圧用基板接続部31a、高電圧用コネクタ接続部31b、及び高電圧用延在部31cは、それぞれ細長平板状である。高電圧用基板接続部31aは、高電圧用延在部31cの第1端から高電圧用延在部31cの延びる方向に対して直交する方向に延びている。高電圧用コネクタ接続部31bは、高電圧用延在部31cの第2端から高電圧用延在部31cの延びる方向に対して直交する方向に延びている。したがって、高電圧用延在部31cは、高電圧用基板接続部31aと高電圧用コネクタ接続部31bとを接続している。高電圧用コネクタ接続部31bにおける高電圧用延在部31cからの延在方向は、高電圧用基板接続部31aにおける高電圧用延在部31cからの延在方向とは反対方向である。
【0031】
樹脂モールド部M1は、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂のような電気絶縁性を有する樹脂製である。樹脂モールド部M1は、第1樹脂部40と、第2樹脂部50と、第3樹脂部60と、を有している。
【0032】
図2に示すように、第1樹脂部40は、低電圧用配線30を保持している。第1樹脂部40は、第1保持部41と、第1コネクタ部42と、第2保持部43と、を有している。第1保持部41は、板状である。第1保持部41には、複数の第1連通孔41aが形成されている。各第1連通孔41aは、円孔状である。各第1連通孔41aは、第1保持部41を第1保持部41の厚み方向に貫通している。各第1連通孔41aの内径は、カバー14の端壁14aの各第1貫通孔14eの内径と等しい。第1コネクタ部42は、第1保持部41における厚み方向の一方の端面410から筒状に延びている。第2保持部43は、円柱状である。第2保持部43は、第1保持部41における厚み方向の他方の端面411から突出している。第1保持部41は、複数の突出部41bを有している。各突出部41bは、円柱状である。各突出部41bは、第1保持部41の端面411から突出している。各突出部41bの先端面は平坦面状である。
【0033】
第1保持部41の内部には、低電圧用延在部30cが埋設されている。低電圧用延在部30cは、低電圧用延在部30cの延びる方向が第1保持部41の厚み方向に対して直交する方向に一致した状態で、第1保持部41の内部に埋設されている。第1保持部41の端面410からは、低電圧用コネクタ接続部30bにおける低電圧用延在部30cとは反対側の端部が突出している。低電圧用コネクタ接続部30bにおける低電圧用延在部30cとは反対側の端部は、第1コネクタ部42の内側に位置している。したがって、第1コネクタ部42は、低電圧用コネクタ接続部30bを囲繞している。第2保持部43における第1保持部41とは反対側の端面からは、低電圧用基板接続部30aにおける低電圧用延在部30cとは反対側の端部が突出している。
【0034】
低電圧用配線30を保持した第1樹脂部40は、各突出部41bの先端面がカバー14の端壁14aの第1面140aに密着した状態で、カバー14に対して配置されている。このとき、各第1連通孔41aは、各第1貫通孔14eと重なり合っている。また、第2保持部43は、低電圧用挿通孔14cを介してインバータ室S1内に突出している。そして、低電圧用基板接続部30aにおける低電圧用延在部30cとは反対側の端部が、例えば、回路基板22に半田付けされることによって、低電圧用基板接続部30aが回路基板22に電気的に接続されている。したがって、低電圧用基板接続部30aは、回路基板22に電気的に接続される基板接続部である。低電圧用基板接続部30aは、回路基板22から回路基板22の厚み方向に延びている。
【0035】
低電圧用基板接続部30aにおける低電圧用延在部30c側の端部は、低電圧用挿通孔14cを介してインバータ室S1外へ延びている。したがって、低電圧用挿通孔14cは、低電圧用配線30が挿通される挿通孔である。低電圧用延在部30cは、インバータ室S1外で、カバー14の端壁14aに沿って延びている。したがって、低電圧用延在部30cは、インバータ室S1外に配置されている。低電圧用延在部30cは、回路基板22の厚み方向に対して直交する方向に延びている。したがって、低電圧用延在部30cは、カバー14の壁面を形成する端壁14aに沿って延在し、低電圧用基板接続部30aと低電圧用コネクタ接続部30bとを接続する延在部である。
【0036】
第1コネクタ部42には、相手側コネクタである低電圧用コネクタC1が接続される。これにより、低電圧用コネクタ接続部30bが低電圧用コネクタC1に電気的に接続される。したがって、低電圧用コネクタ接続部30bは、低電圧用コネクタC1に電気的に接続されるコネクタ接続部である。そして、低電圧用配線30は、低電圧用コネクタC1からの電力をインバータ21の回路基板22に供給する。したがって、低電圧用配線30は、低電圧用コネクタC1に電気的に接続されるとともにインバータ21の回路基板22に電力を供給するための配線である。
【0037】
図2及び図3に示すように、第2樹脂部50は、高電圧用配線31を保持している。第2樹脂部50は、第3保持部51と、第4保持部52と、を有している。第3保持部51は、板状である。第3保持部51には、複数の第2連通孔51a及び複数の第3連通孔51bが形成されている。各第2連通孔51a及び各第3連通孔51bそれぞれは、円孔状である。各第2連通孔51a及び各第3連通孔51bそれぞれは、第3保持部51を第3保持部51の厚み方向に貫通している。各第2連通孔51a及び各第3連通孔51bそれぞれの内径は、カバー14の端壁14aの各第2貫通孔14f及び各第3貫通孔14gそれぞれの内径と等しい。第3保持部51における厚み方向の一方の端面511には、溝部51cが形成されている。各第2連通孔51aは、溝部51cの周囲に形成されている。
【0038】
第2樹脂部50には、金属製のシールド部62aが一体的に設けられている。シールド部62aは、筒部62bと、固定部62cと、を有している。固定部62cは、筒部62bの第1端部から筒部62bの外方へ突出するフランジ状である。シールド部62aは、固定部62cが溝部51cに嵌め込まれるとともに筒部62bが第3保持部51の溝部51cから突出した状態で、第3保持部51に設けられている。
【0039】
第4保持部52は、円柱状である。第4保持部52は、溝部51cの底面から突出している。第4保持部52は、溝部51cの底面からシールド部62aの筒部62bの内側に突出している。第4保持部52は、シールド部62aの筒部62bの内周面に密着している。
【0040】
第3保持部51の内部には、高電圧用延在部31cが埋設されている。高電圧用延在部31cは、高電圧用延在部31cの延びる方向が第3保持部51の厚み方向に対して直交する方向に一致した状態で、第3保持部51の内部に埋設されている。第4保持部52における第3保持部51とは反対側の端面からは、高電圧用コネクタ接続部31bにおける高電圧用延在部31cとは反対側の端部が突出している。高電圧用コネクタ接続部31bにおける高電圧用延在部31cとは反対側の端部は、シールド部62aの筒部62bの内側に位置している。第3保持部51における厚み方向の他方の端面510からは、高電圧用基板接続部31aにおける高電圧用延在部31cとは反対側の端部が突出している。
【0041】
高電圧用配線31を保持した第2樹脂部50は、第3保持部51の端面511がカバー14の端壁14aの第2面141aに密着した状態で、カバー14に対して配置されている。このとき、各第2連通孔51aは、各第2貫通孔14fと重なり合っている。各第3連通孔51bは、各第3貫通孔14gと重なり合っている。また、高電圧用基板接続部31aにおける高電圧用延在部31cとは反対側の端部が、例えば、回路基板22に半田付けされることによって、高電圧用基板接続部31aが回路基板22に電気的に接続されている。したがって、高電圧用基板接続部31aは、回路基板22に電気的に接続される基板接続部である。高電圧用基板接続部31aは、回路基板22から回路基板22の厚み方向に延びている。
【0042】
シールド部62aは、高電圧用挿通孔14dを介してインバータ室S1外へ突出している。固定部62cは、カバー14の端壁14aの第2面141aにおける高電圧用挿通孔14dの周囲に係止されるように配置されている。第4保持部52は、高電圧用挿通孔14dを介してインバータ室S1外に突出している。よって、高電圧用コネクタ接続部31bにおける高電圧用延在部31cとは反対側の端部は、高電圧用挿通孔14dを介してインバータ室S1外へ突出している。したがって、高電圧用挿通孔14dは、高電圧用配線31が挿通される挿通孔である。
【0043】
高電圧用延在部31cは、インバータ室S1内で、カバー14の端壁14aに沿って延びている。したがって、高電圧用延在部31cは、インバータ室S1内に配置されている。高電圧用延在部31cは、回路基板22の厚み方向に対して直交する方向に延びている。したがって、高電圧用延在部31cは、カバー14の端壁14aに沿って延在し、高電圧用基板接続部31aと高電圧用コネクタ接続部31bとを接続する延在部である。よって、本実施形態の延在部は、低電圧用配線30が有する低電圧用延在部30cと、高電圧用配線31が有する高電圧用延在部31cと、を含む。
【0044】
第3樹脂部60は、接続部61と、第2コネクタ部62と、を有している。第2コネクタ部62は、カバー14の端壁14aの第1面140aから筒状に延びている。第2コネクタ部62は、シールド部62aの筒部62bを囲繞した状態で形成されている。よって、第2コネクタ部62は、高電圧用コネクタ接続部31bを囲繞している。したがって、第2コネクタ部62は、高電圧用コネクタ接続部31bを囲繞した状態でカバー14から筒状に突出している。
【0045】
第2コネクタ部62には、相手側コネクタである高電圧用コネクタC2が接続される。これにより、高電圧用コネクタ接続部31bが高電圧用コネクタC2に電気的に接続される。したがって、第2コネクタ部62は、高電圧用コネクタ接続部31bを囲繞した状態でカバー14から筒状に突出するとともに高電圧用コネクタC2が接続されるコネクタ部である。また、高電圧用コネクタ接続部31bは、高電圧用コネクタC2に電気的に接続されるコネクタ接続部である。そして、高電圧用配線31は、高電圧用コネクタC2からの電力をインバータ21の回路基板22に供給する。したがって、高電圧用配線31は、高電圧用コネクタC2に電気的に接続されるとともにインバータ21の回路基板22に電力を供給するための配線である。よって、本実施形態の配線は、低電圧用配線30と、高電圧用配線31と、を含む。
【0046】
接続部61は、第1接続部61aと、第2接続部61bと、第3接続部61cと、を有している。接続部61は、薄板状である。接続部61は、カバー14の端壁14aの第1面140aの一部、及び第1樹脂部40の大部分を被覆している。接続部61は、第1コネクタ部42と第2コネクタ部62とを接続している。したがって、第3樹脂部60は、第1樹脂部40と第2樹脂部50とを接続している。
【0047】
第1接続部61aは、薄板状である。第1接続部61aは、第1保持部41の端面410の大部分を被覆している。第2接続部61bは、第1保持部41の端面411の大部分を被覆している。第2接続部61bは、第1保持部41の端面411及びカバー14の端壁14aの第1面140aに密着している。第3接続部61cは、第1連通孔41a内に配置されている。第3接続部61cは、第1接続部61aと第2接続部61bとを接続している。
【0048】
第3樹脂部60は、アンカー部としての第1アンカー部64、第2アンカー部65、及び第3アンカー部66を有している。したがって、樹脂モールド部M1は、アンカー部を複数有している。
【0049】
図2及び図4に示すように、第3樹脂部60は、第1アンカー部64を複数有している。各第1アンカー部64は、挿通部としての第1挿通部64aと、フランジ部としての第1フランジ部64bと、をそれぞれ有している。各第1挿通部64aは、円柱状である。各第1挿通部64aは、第2接続部61bから突出するとともに各第1貫通孔14eを通過して、インバータ室S1内に突出している。したがって、各第1挿通部64aは、カバー14の端壁14aの各第1貫通孔14e内に挿通されている。各第1挿通部64aは、各第1貫通孔14eの内周面に密着している。したがって、各第1アンカー部64は、各第1貫通孔14eに係止されている。
【0050】
各第1フランジ部64bは、各第1挿通部64aにおける接続部61とは反対側の端部から外方へ突出する環状である。具体的には、各第1フランジ部64bは、各第1挿通部64aにおける各第1貫通孔14eからインバータ室S1内に突出した部位から第1挿通部64aの径方向外側へ突出している。各第1フランジ部64bにおけるカバー14の端壁14a寄りの端面640bは、カバー14の端壁14aの第2面141aにおける各第1貫通孔14eの周囲に係止されている。したがって、各第1アンカー部64は、カバー14の端壁14aに係止されている。
【0051】
図2及び図5に示すように、第3樹脂部60は、第2アンカー部65を2つ有している。2つの第2アンカー部65は、挿通部としての第2挿通部65aと、フランジ部としての第2フランジ部65bと、をそれぞれ有している。各第2挿通部65aは、円柱状である。各第2挿通部65aは、接続部61における第2コネクタ部62の周囲から突出するとともに各第2貫通孔14f及び各第2連通孔51aを通過して、インバータ室S1内に突出している。したがって、各第2挿通部65aは、カバー14の端壁14aの各第2貫通孔14f内に挿通されている。各第2挿通部65aは、各第2貫通孔14fの内周面及び各第2連通孔51aの内周面に密着している。したがって、各第2アンカー部65は、各第2貫通孔14fに係止されている。
【0052】
各第2フランジ部65bは、各第2挿通部65aにおける接続部61とは反対側の端部から外方へ突出する環状である。具体的には、各第2フランジ部65bは、各第2挿通部65aにおける各第2連通孔51aからインバータ室S1内に突出した部位から第2挿通部65aの径方向外側へ突出している。各第2フランジ部65bにおけるカバー14の端壁14a寄りの端面650bは、第3保持部51における各第2連通孔51aの周囲に係止されている。よって、各第2アンカー部65は、第3保持部51を介してカバー14の端壁14aの第2面141aにおける各第2貫通孔14fの周囲に係止されている。
【0053】
2つの第2アンカー部65は、第2コネクタ部62の付近に配置されている。2つの第2アンカー部65の一方は、第2コネクタ部62よりも第1コネクタ部42寄りに配置されている。2つの第2アンカー部65の他方は、第1コネクタ部42とは反対側に配置されている。よって、2つの第2アンカー部65は、第2コネクタ部62を回路基板22の延びる方向で挟み込んでいる。2つの第2アンカー部65を回路基板22の厚み方向から見たとき、2つの第2アンカー部65は、第2コネクタ部62を回路基板22の厚み方向に対して交差する方向で挟み込む両側の位置にそれぞれ配置されている。したがって、複数のアンカー部の少なくとも2つのアンカー部である第2アンカー部65は、第2コネクタ部62を回路基板22の厚み方向に対して交差する方向で挟み込む両側の位置でインバータ室S1側からカバー14の端壁14aにそれぞれ係止されている。
【0054】
図3に示すように、第3樹脂部60は、第3アンカー部66を有している。第3アンカー部66は、挿通部としての第3挿通部66aと、フランジ部としての第3フランジ部66bと、を有している。第3アンカー部66は、第3挿通部66aを複数有している。各第3挿通部66aは、円柱状である。各第3アンカー部66は、接続部61から突出するとともに各第3貫通孔14g及び各第3連通孔51bを通過して、インバータ室S1内に突出している。したがって、各第3挿通部66aは、カバー14の端壁14aの各第3貫通孔14g内に挿通されている。各第3挿通部66aは、各第3貫通孔14gの内周面及び各第3連通孔51bの内周面に密着している。したがって、第3アンカー部66は、各第3貫通孔14gに係止されている。
【0055】
第3フランジ部66bは、板状である。第3フランジ部66bは、第3保持部51におけるカバー14の端壁14aとは反対側の面に密着している。第3フランジ部66bの厚み方向は、第3保持部51の厚み方向に一致している。第3フランジ部66bは、各第3挿通部66aにおける接続部61とは反対側の端部同士を接続している。そして、第3フランジ部66bは、第3保持部51における各第3連通孔51bの周囲に係止されている。よって、第3アンカー部66は、第3保持部51を介してカバー14の端壁14aの第2面141aにおける各第3貫通孔14gの周囲に係止されている。
【0056】
<樹脂モールド部M1の製造方法>
図6に示すように、樹脂モールド部M1を製造する際には、まず、第1構成体A1と、第2構成体A2と、を用意する。第1構成体A1は、低電圧用配線30及び第1樹脂部40によって構成されている。第2構成体A2は、高電圧用配線31、第2樹脂部50、及びシールド部62aによって構成されている。そして、各突出部41bの先端面がカバー14の端壁14aの第1面140aに密着するように、カバー14の端壁14aの第1面140aに対して第1構成体A1を設置する。このとき、第1保持部41の端面411とカバー14の端壁14aの第1面140aとの間には隙間が形成されている。また、このとき、第2保持部43が低電圧用挿通孔14cに挿通され、各第1貫通孔14eと各第1連通孔41aとが回路基板22の厚み方向で重なり合うように、第1構成体A1をカバー14に対して設置する。
【0057】
続いて、カバー14の端壁14aの第2面141aに対して第2構成体A2を設置する。このとき、第4保持部52及びシールド部62aの筒部62bが高電圧用挿通孔14dに挿通され、各第2貫通孔14fと各第2連通孔51aとが回路基板22の厚み方向で重なり合うように、第2構成体A2をカバー14に対して設置する。さらには、各第3貫通孔14gと各第3連通孔51bとが回路基板22の厚み方向で重なり合うように、第2構成体A2をカバー14に対して設置する。
【0058】
続いて、第1構成体A1、第2構成体A2、及びカバー14を、図示しない金型で拘束する。このとき、第3樹脂部60によって覆われずに露出する部位を押さえた状態で、金型で拘束する。そして、金型内に樹脂を流し込む。流れ込んだ樹脂が硬化すると、第2コネクタ部62、第1アンカー部64、第2アンカー部65、及び第3アンカー部66を有する第3樹脂部60が形成され、第1構成体A1と第2構成体A2とが第3樹脂部60を介して一体化される。このようにして、樹脂モールド部M1が製造される。第1構成体A1及び第2構成体A2は、第3樹脂部60を介してカバー14に取り付けられている。したがって、第1樹脂部40及び第2樹脂部50は、第3樹脂部60を介してカバー14に取り付けられている。そして、各第1アンカー部64、各第2アンカー部65、及び第3アンカー部66それぞれがカバー14に係止されることにより、樹脂モールド部M1がカバー14に取り付けられている。したがって、樹脂モールド部M1には、カバー14に係止される各第1アンカー部64、各第2アンカー部65、及び第3アンカー部66が一体形成されている。そして、低電圧用延在部30c及び高電圧用延在部31cは、各第1アンカー部64、各第2アンカー部65、及び第3アンカー部66によってカバー14の端壁14aに係止されている。
【0059】
<作用>
次に、本実施形態の作用について説明する。
樹脂モールド部M1に一体形成された各第1アンカー部64、各第2アンカー部65、及び第3アンカー部66がカバー14に係止されている。各第1アンカー部64、各第2アンカー部65、及び第3アンカー部66は、樹脂モールド部M1のカバー14からの離間移動を規制する。その結果、低電圧用配線30及び高電圧用配線31の振動が抑制されている。
【0060】
<効果>
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)樹脂モールド部M1には、各第1貫通孔14e、各第2貫通孔14f、及び各第3貫通孔14gそれぞれに係止される各第1アンカー部64、各第2アンカー部65、及び第3アンカー部66が一体形成されている。これによれば、樹脂モールド部M1に一体形成された各第1アンカー部64、各第2アンカー部65、及び第3アンカー部66が各第1貫通孔14e、各第2貫通孔14f、及び各第3貫通孔14gそれぞれに係止される。これにより、低電圧用延在部30c及び高電圧用延在部31cは、各第1アンカー部64、各第2アンカー部65、及び第3アンカー部66によってカバー14の端壁14aに係止されている。そのため、従来技術のように、ボルトを用いて、樹脂モールド部M1をカバー14に固定する必要が無い。したがって、部品点数を削減しつつも、低電圧用配線30及び高電圧用配線31の振動を抑制することができる。
【0061】
(2)2つの第2アンカー部65が、第2コネクタ部62を回路基板22の厚み方向に対して直交する方向で挟み込む両側の位置でインバータ室S1側からカバー14の端壁14aにそれぞれ係止されている。そのため、第2コネクタ部62のカバー14からの離間移動が規制され易い。したがって、第2コネクタ部62をより強固にカバー14に固定することができる。
【0062】
(3)低電圧用基板接続部30aは、回路基板22から低電圧用挿通孔14cを介してインバータ室S1外へ直線状に延びている。これによれば、インバータ室S1内で延びる低電圧用基板接続部30aの長さを短くすることができる。したがって、インバータ室S1内の省スペース化を図ることができるため、流体機械10の小型化を図ることができる。
【0063】
(4)高電圧用延在部31cがインバータ室S1内に配置され、低電圧用延在部30cがインバータ室S1外に配置されている。そのため、低電圧用延在部30cと高電圧用延在部31cとの間での電磁ノイズをカバー14によって遮蔽することができる。
【0064】
(5)高電圧用延在部31cは、インバータ室S1内に配置されている。これによれば、高電圧用配線31の大部分をインバータ室S1内に収容することができるため、高電圧用配線31をカバー14によって保護することができる。
【0065】
(6)各第1挿通部64aが各第1貫通孔14eの内周面に密着し、各第1フランジ部64bがカバー14の端壁14aにおける各第1貫通孔14eの周囲に係止されることにより、各第1アンカー部64が第1貫通孔14eに係止されている。また、各第2挿通部65aが各第2貫通孔14fの内周面に密着し、各第2フランジ部65bがカバー14の端壁14aにおける各第2貫通孔14fの周囲に係止されることにより、各第2アンカー部65が第2貫通孔14fに係止されている。さらに、各第3挿通部66aが各第3貫通孔14gの内周面に密着し、第3フランジ部66bがカバー14の端壁14aにおける各第3貫通孔14gの周囲に係止されることにより、第3アンカー部66が第3貫通孔14gに係止されている。よって、例えば、各第1挿通部64aのみが各第1貫通孔14eの内周面に密着することで、各第1アンカー部64が第1貫通孔14eに係止されている場合に比べて、各第1アンカー部64における第1貫通孔14eに対する係止をより強固にできる。また、各第2挿通部65aのみが各第2貫通孔14fの内周面に密着することで、各第2アンカー部65が第2貫通孔14fに係止されている場合に比べて、各第2アンカー部65における第2貫通孔14fに対する係止をより強固なものとすることができる。さらに、各第3挿通部66aのみが各第3貫通孔14gの内周面に密着することで、第3アンカー部66が第3貫通孔14gに係止されている場合に比べて、第3アンカー部66における第3貫通孔14gに対する係止をより強固なものとすることができる。したがって、各第1アンカー部64、各第2アンカー部65、及び第3アンカー部66によって、樹脂モールド部M1のカバー14からの離間移動をさらに規制し易くすることができる。
【0066】
(7)第1樹脂部40及び第2樹脂部50は、第3樹脂部60を介してカバー14に取り付けられている。したがって、第1樹脂部40及び第2樹脂部50におけるカバー14に対する位置決めが強固なものとなる。その結果、第1樹脂部40とカバー14との間、及び第2樹脂部50とカバー14との間それぞれの気密性を向上させることができる。
【0067】
(8)従来技術のように、ボルトを用いて、樹脂モールド部M1をカバー14に固定する必要が無いため、カバー14にボルトを締結するためのボルト穴を設ける必要が無い。よって、カバー14の端壁14aは、ボルト穴を設けるための厚みを必要としないため、カバー14の端壁14aの厚みを極力薄くすることができる。したがって、カバー14の重量を低減することができる。その結果、流体機械10を軽量化することができる。
【0068】
(9)本実施形態によれば、第1構成体A1と第2構成体A2とを一体化させる工程と、第1アンカー部64、第2アンカー部65、及び第3アンカー部66をカバー14に係止させて樹脂モールド部M1をカバー14に取り付ける工程と、を同時に行うことができる。そのため、製造工程を簡素化することができる。
【0069】
<変更例>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0070】
図7に示すように、例えば、第1アンカー部64は、第1貫通孔14e内に配置される第1挿通部64aだけで構成されていてもよい。要は、第1アンカー部64の第1挿通部64aの外周面が、第1貫通孔14eの内周面に密着することにより、第1アンカー部64が第1貫通孔14eに係止される構成であってもよい。また、第1貫通孔14eの形状は、特に限定されない。例えば、図7に示すように、カバー14の端壁14aの第1面140aから第2面141aに向かうにつれて拡径する形状であってもよい。
【0071】
○ 実施形態において、例えば、低電圧用延在部30cがインバータ室S1内に配置され、高電圧用延在部31cがインバータ室S1外に配置されていてもよい。要は、低電圧用延在部30c及び高電圧用延在部31cの一方がインバータ室S1内に配置され、低電圧用延在部30c及び高電圧用延在部31cの他方がインバータ室S1外に配置されていればよい。
【0072】
○ 実施形態において、低電圧用延在部30c及び高電圧用延在部31cがインバータ室S1内に配置されていてもよい。
○ 実施形態において、低電圧用延在部30c及び高電圧用延在部31cがインバータ室S1外に配置されていてもよい。
【0073】
○ 実施形態において、低電圧用基板接続部30aは、回路基板22から低電圧用挿通孔14cを介してインバータ室S1外へ直線状に延びていなくてもよい。例えば、低電圧用基板接続部30aが、回路基板22から延び、インバータ室S1内で屈曲するように延びた後、低電圧用挿通孔14cを介してインバータ室S1外へ延びていてもよい。
【0074】
○ 実施形態において、2つの第2アンカー部65が第2コネクタ部62の付近に配置されていたが、これに限らない。例えば、3つの第2アンカー部65が第2コネクタ部62の付近に配置されていてもよい。ここで、回路基板22の厚み方向に直交する方向で挟み込む両側の位置でインバータ室S1側からカバー14にそれぞれ係止される2つの第2アンカー部65を1つの組とする。このとき、第2コネクタ部62の付近に配置される3つの第2アンカー部65によって、回路基板22の厚み方向に直交する方向で挟み込む両側の位置でインバータ室S1側からカバー14にそれぞれ係止される2つの第2アンカー部65の組を2組構成してもよい。要は、アンカー部の少なくとも2つは、第2コネクタ部62を回路基板22の厚み方向に対して交差する方向で挟み込む両側の位置でインバータ室S1側からカバー14にそれぞれ係止されていればよい。
【0075】
○ 実施形態において、低電圧用挿通孔14c及び高電圧用挿通孔14dにアンカー部が形成されていてもよい。
○ 実施形態において、カバー14の端壁14aは、平板状であったが、これに限らない。例えば、カバー14の端壁14aが、湾曲板状であってもよい。要は、カバー14は、ハウジング11とインバータ室S1を区画形成できるような形状であればよい。
【0076】
○ 実施形態において、低電圧用配線30及び高電圧用配線31は、バスバーであったが、これに限られない。例えば、断面が円状である導線であってもよい。
○ 実施形態において、樹脂モールド部M1は、ポリフェニレンサルファイド樹脂製であったが、これに限らない。樹脂モールド部M1は、例えば、ポリイミド樹脂製であってもよい。
【0077】
○ 実施形態において、圧縮部16は、スクロール式に限らず、例えば、ピストン式やベーン式等であってもよい。
○ 実施形態において、圧縮部16、電動モータ17、及びインバータ21は、この順で、回転軸15の軸線方向に並んで配置されていたが、これに限らない。
【0078】
○ 実施形態において、流体機械10は、圧縮部16に代えて、例えば、流体を圧送するポンプ部を備えている構成であってもよい。
○ 実施形態において、流体機械10は、車両空調装置20を構成していたが、これに限らず、例えば、流体機械10は、燃料電池車に搭載されており、燃料電池に供給される流体としての空気を圧縮部16により圧縮するものであってもよい。
【符号の説明】
【0079】
10…流体機械、11…ハウジング、14…カバー、14a…壁面を形成する端壁、14c…挿通孔である低電圧用挿通孔、14d…挿通孔である高電圧用挿通孔、14e…貫通孔としての第1貫通孔、14f…貫通孔としての第2貫通孔、14g…貫通孔としての第3貫通孔、17…電動モータ、21…インバータ、22…回路基板、30…配線である低電圧用配線、30a…基板接続部である低電圧用基板接続部、30b…コネクタ接続部である低電圧用コネクタ接続部、30c…延在部である低電圧用延在部、31…配線である高電圧用配線、31a…基板接続部である高電圧用基板接続部、31b…コネクタ接続部である高電圧用コネクタ接続部、31c…延在部である高電圧用延在部、62…コネクタ部である第2コネクタ部、64…アンカー部としての第1アンカー部、64a…挿通部である第1挿通部、64b…フランジ部である第1フランジ部、65…アンカー部としての第2アンカー部、65a…挿通部である第2挿通部、65b…フランジ部である第2フランジ部、66…アンカー部としての第3アンカー部、66a…挿通部である第3挿通部、66b…フランジ部としての第3フランジ部、C1…相手側コネクタである低電圧用コネクタ、C2…相手側コネクタである高電圧用コネクタ、M1…樹脂モールド部、S1…インバータ室。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7