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特許7499438インサート成形用シート、成形品、及び成形品の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】インサート成形用シート、成形品、及び成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20240607BHJP
【FI】
B29C45/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020006864
(22)【出願日】2020-01-20
(65)【公開番号】P2021112881
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】越水 隆典
(72)【発明者】
【氏名】森本 隆志
(72)【発明者】
【氏名】杉山 知徳
(72)【発明者】
【氏名】金内 和彦
(72)【発明者】
【氏名】切通 毅
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-181905(JP,A)
【文献】特開昭63-249611(JP,A)
【文献】特開平02-092511(JP,A)
【文献】特開2014-035805(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181503(WO,A1)
【文献】LOCATOR TO POSITION AND RETAIN PART IN INJECTION MOLDING TOOL,Research Disclosure,英国,KENNETH MASON PUBLICATIONS,1993年12月01日,No.356,p.781
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサート成形に用いるインサート成形用シートであって、
互いに反対側である第1表面及び第2表面を有する支持層と、
木、石、コルク、布、革、金属からなる群から選択された少なくとも1つの素材からなる素材シートと、
薄膜保護層と、
前記薄膜保護層と前記素材シートとを接着する接着層と、
を備え、
前記インサート成形用シートはキャビティに面する金型の面に固定するための位置決めリブを有し、
前記位置決めリブは前記支持層の前記第2表面に取付けられ、
前記素材シートは前記支持層の前記第1表面側に位置し、且つ、前記接着層と前記支持層との間に介在する、インサート成形用シート。
【請求項2】
前記インサート成形用シートは、機能層を有し、前記機能層は、反射防止、高反射、光散乱、撥水、親水、殺菌、抗菌、高硬度機能、映像表示機能からなる群から選択された少なくとも1つの機能を有する、請求項に記載のインサート成形用シート。
【請求項3】
前記インサート成形用シートの一方の面にセンサー、電気回路、電子部品の群から選択された少なくとも一つが配置されている、請求項1または2に記載のインサート成形用シート。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載の前記インサート成形用シートの位置決めリブをキャビティに面する金型の面に配置するステップと、
前記インサート成形用シートを前記金型の面に配置した状態で射出成形することで前記インサート成形用シートと射出成形樹脂とを一体化したインサート成形品を得るステップと、
を含む、インサート成形品の製造方法。
【請求項5】
前記インサート成形用シートの位置決めリブを金型に配置した状態で、予め前記インサート成形用シートをプリフォームするステップをさらに含む、請求項に記載のインサート成形品の製造方法。
【請求項6】
インサート成形品の裏面側に対応する固定型と表面側に対応する可動型とを型締めされた状態で前記インサート成形品を射出成形するインサート成形品の製造方法であって、
前記固定型と前記可動型との間に少なくとも2つのインサート成形用シートを挟み込むステップであって、前記2つのインサート成形用シートは、前記可動型の側に配置される第1のインサート成形用シートと、前記固定型の側に配置される第2のインサート成形用シートであり、前記第1のインサート成形用シート及び前記第2のインサート成形用シートのうちの少なくとも一方は、請求項1から3のいずれか一項に記載のインサート成形用シートである少なくとも2つのインサート成形用シートを挟み込むステップと、
前記固定型と前記可動型とを型締めして、前記可動型の側に配置される前記第1のインサート成形用シートと前記固定型の側に配置される前記第2のインサート成形用シートとの間に射出成形樹脂を流し込むことで表面側に前記第1のインサート成形用シートを有し、裏面側に前記第2のインサート成形用シートを有するインサート成形品を得るステップと、を含み、
前記可動型の側に配置される前記第1のインサート成形用シートの射出成形樹脂層が形成される面に前記固定型に固定するための位置決めリブが設けられており、且つ、前記固定型の側に配置される前記第2のインサート成形用シートには、射出成形樹脂層が形成される面と反対側の面に前記固定型に固定するための位置決めリブが設けられていると共に、前記第1のインサート成形用シートの前記位置決めリブを通す穴が設けられており、
前記固定型の面に前記第1のインサート成形用シートの前記位置決めリブに対応する箇所に前記位置決めリブを配置するための穴と、前記第2のインサート成形用シートの前記位置決めリブに対応する箇所に前記位置決めリブを配置するための穴とが設けられており、
前記型締め前に、前記第1のインサート成形用シートの前記位置決めリブを前記固定型の対応する箇所に設けられた前記穴に固定し、前記第2のインサート成形用シートの前記位置決めリブを前記固定型の対応する箇所に設けられた前記穴に固定する、インサート成形品の製造方法。
【請求項7】
インサート成形品の裏面側に対応する固定型と表面側に対応する可動型とを型締めされた状態で前記インサート成形品を射出成形するインサート成形品の製造方法であって、
前記固定型と前記可動型との間に少なくとも2つのインサート成形用シートを挟み込むステップであって、前記2つのインサート成形用シートは、前記可動型の側に配置される第1のインサート成形用シートと、前記固定型の側に配置される第2のインサート成形用シートであり、前記第1のインサート成形用シートは、請求項1から3のいずれか一項に記載のインサート成形用シートである少なくとも2つのインサート成形用シートを挟み込むステップと、
前記固定型と前記可動型とを型締めして、前記可動型の側に配置される前記第1のインサート成形用シートと前記固定型の側に配置される前記第2のインサート成形用シートとの間に射出成形樹脂を流し込むことで表面側に前記第1のインサート成形用シートを有し、裏面側に前記第2のインサート成形用シートを有するインサート成形品を得るステップと、を含み、
前記可動型の側に配置される前記第1のインサート成形用シートの射出成形樹脂層が形成される面に前記固定型に固定するための位置決めリブが設けられており、且つ、前記固定型の側に配置される前記第2のインサート成形用シートには、射出成形樹脂層が形成される面と反対側の面に前記固定型に固定するための位置決めピンを通す穴が設けられていると共に、前記第1のインサート成形用シートの前記位置決めリブを通す穴が設けられており、
前記固定型の面に前記第1のインサート成形用シートの前記位置決めリブに対応する箇所に前記位置決めリブを配置するための穴と、前記第2のインサート成形用シートの前記穴に対応する箇所に前記穴に通す位置決めピンとが設けられており、
前記型締め前に、前記第1のインサート成形用シートの前記位置決めリブを前記固定型の対応する箇所に設けられた前記穴に固定し、前記第2のインサート成形用シートの前記穴に前記固定型の対応する箇所に設けられた前記位置決めピンを固定する、インサート成形品の製造方法。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載の前記インサート成形用シートを含む、インサート成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート成形に用いられるインサート成形用シート、それを用いた成形品およびその成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、加飾シートを用いてインサート成形する方法では、被覆される加飾シートを金型のキャビティ内に挿入し、キャビティの内面側より吸引することにより、キャビティの内面に沿って加飾シートを密着させ、加飾シートの位置を固定する。この際、加飾シートの挿入位置を固定する機構がないため、成形後に加飾シートの位置が完成品に対して不正確となる。そのため、従来のインサート成形では、金型のキャビティの外側に複数の位置決めピンを設け、加飾シートに複数の開口部を係合させることにより、加飾シートを金型に位置決めしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図16は、特許文献1に記載の加飾シート材を用いたインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略斜視図である。図16に示すように、金型101は、成形用のキャビティ105を有し、複数のピン104がキャビティの外周に設けられている。加飾シート102に予め設けられた複数の開口部103を係合することにより、加飾シート102を金型101に対し位置決めをし、金型101内のキャビティ105に挿入する。その後、金型を型締めし、インサート成形を実施することで成形品に対して加飾シートの位置決めを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-123208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、加飾シートに開口部を設けるため、成形品表面を被覆するのに必要な加飾シートの面積よりも大きな余白が必要であり、加飾シートに用いる素材の材料ロスが多い。
【0006】
本発明は、加飾シートに用いる素材の材料ロスを抑制したインサート成形用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るインサート成形用シートは、インサート成形に用いるインサート成形用シートであって、キャビティに面する金型の面に固定するための位置決めリブを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るインサート成形用シートは、キャビティに面する金型の面に固定するための位置決めリブ1を有するので、従来のような大きな余白を必要とせず、素材をトリミングする際にも必要な面積の素材のみを使用できる。そのため、素材において余白に起因する材料ロスの少ないインサート成形用シート、成形品および製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】実施の形態1に係るインサート成形用シートの厚さ方向に垂直な方向から見た断面図である。
図1B図1Aのインサート成形用シートの詳細な断面構造を示す断面図である。
図2A】実施の形態1の変形例1に係るインサート成形用シートの詳細な断面構造を示す断面図である。
図2B】実施の形態1の変形例2に係るインサート成形用シートの詳細な断面構造を示す断面図である。
図2C】実施の形態1の変形例3に係るインサート成形用シートの詳細な断面構造を示す断面図である。
図2D】実施の形態1の変形例4に係るインサート成形用シートの詳細な断面構造を示す断面図である。
図3A】実施の形態1の変形例5に係るインサート成形用シートの詳細な断面構造を示す断面図である。
図3B】実施の形態1の変形例6に係るインサート成形用シートの詳細な断面構造を示す断面図である。
図4A】素材を示す概略斜視図である。
図4B】素材をトリミングして、木質材を得るプロセスの説明図である。
図5】木質材として必要なサイズの一例を示す平面図である。
図6A】従来の余白を設けた木質材のサイズの一例を示す平面図である。
図6B】素材から図6Aに示す従来の余白を設けた木質材を取得する一例を示す平面図である。
図7A】実施の形態1に係るインサート成形用シートに用いる木質材のサイズの一例を示す平面図である。
図7B】素材から図7Aに示す実施の形態1に係るインサート成形用シートに用いる木質材を取得する一例を示す平面図である。
図8A】実施の形態1に係るインサート成形用シートを用いたインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図8B】実施の形態1に係るインサート成形用シートを用いたインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図8C】実施の形態1に係るインサート成形用シートを用いたインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図8D】実施の形態1に係るインサート成形用シートを用いたインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図9A】実施の形態2に係るインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図9B】実施の形態2に係るインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図9C】実施の形態2に係るインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図9D】実施の形態2に係るインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図9E】実施の形態2に係るインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図9F】実施の形態2に係るインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図9G】実施の形態2に係るインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図10A】実施の形態3に係るインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図10B】実施の形態3に係るインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図10C】実施の形態3に係るインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図10D】実施の形態3に係るインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図10E】実施の形態3に係るインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図11A】実施の形態4に係る2枚のインサート成形用シートのうちの表面用の位置決めリブタイプのインサート成形用シートの厚さ方向に垂直な方向から見た断面図である。
図11B】実施の形態4に係る2枚のインサート成形用シートのうちの裏面用の位置決めリブタイプのインサート成形用シートの厚さ方向に垂直な方向から見た断面図である。
図11C図11Bの裏面用のインサート成形用シートの裏面側からみた底面図である。
図12A】実施の形態4に係るインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図12B】実施の形態4に係るインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図12C】実施の形態4に係るインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図12D】実施の形態4に係るインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図12E】実施の形態4に係るインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図13A】実施の形態5に係る2枚のインサート成形用シートのうちの表面用の位置決めリブタイプのインサート成形用シートの厚さ方向に垂直な方向から見た断面図である。
図13B】実施の形態5に係る2枚のインサート成形用シートのうちの裏面用の位置決めピンタイプのインサート成形用シートの厚さ方向に垂直な方向から見た断面図である。
図13C図13Bの裏面用のインサート成形用シートの裏面側からみた底面図である。
図14A】実施の形態5に係るインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図14B】実施の形態5に係るインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図14C】実施の形態5に係るインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図14D】実施の形態5に係るインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図14E】実施の形態5に係るインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略断面図である。
図15A】実施の形態4に係るインサート成形品の表面側から見た平面図である。
図15B図15AのA-A方向にみた断面構造を示す断面図である。
図16】特許文献1に記載の加飾シート材を用いたインサート成形品の製造方法の一工程を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の態様に係るインサート成形用シートは、インサート成形に用いるインサート成形用シートであって、キャビティに面する金型の面に固定するための位置決めリブを有する。
【0011】
第2の態様に係るインサート成形用シートは、上記第1の態様において、前記インサート成形用シートは、素材シートを含んでもよい。
【0012】
第3の態様に係るインサート成形用シートは、上記第2の態様において、前記素材シートは、印刷フィルム、木、石、コルク、布、革、金属からなる群から選択された少なくとも1つの素材からなってもよい。
【0013】
第4の態様に係るインサート成形用シートは、上記第1から第3のいずれかの態様において、前記インサート成形用シートは、機能層を有し、前記機能層は、反射防止、高反射、光散乱、撥水、親水、殺菌、抗菌、高硬度機能、映像表示機能からなる群から選択された少なくとも1つの機能を有してもよい。
【0014】
第5の態様に係るインサート成形用シートは、上記第1から第4のいずれかの態様において、前記インサート成形用シートの一方の面にセンサー、電気回路、電子部品の群から選択された少なくとも一つが配置されていてもよい。
【0015】
第6の態様に係るインサート成形品の製造方法は、上記第1から第5のいずれかの態様に係る前記インサート成形用シートの位置決めリブをキャビティに面する金型の面に配置するステップと、
前記インサート成形用シートを前記金型の面に配置した状態で射出成形することで前記インサート成形用シートと射出成形樹脂とを一体化したインサート成形品を得るステップと、
を含む。
【0016】
第7の態様に係るインサート成形品の製造方法は、上記第6の態様において、前記インサート成形用シートの位置決めリブを金型に配置した状態で、予め前記インサート成形用シートをプリフォームするステップをさらに含んでもよい。
【0017】
第8の態様に係るインサート成形品の製造方法は、インサート成形品の裏面側に対応する固定型と表面側に対応する可動型とを型締めされた状態で前記インサート成形品を射出成形するインサート成形品の製造方法であって、
前記固定型と前記可動型との間に少なくとも2つのインサート成形用シートを挟み込むステップであって、前記2つのインサート成形用シートは、前記可動型の側に配置される第1のインサート成形用シートと、前記固定型の側に配置される第2のインサート成形用シートである、少なくとも2つのインサート成形用シートを挟み込むステップと、
前記固定型と前記可動型とを型締めして、前記可動型の側に配置される前記第1のインサート成形用シートと前記固定型の側に配置される前記第2のインサート成形用シートとの間に射出成形樹脂を流し込むことで表面側に前記第1のインサート成形用シートを有し、裏面側に前記第2のインサート成形用シートを有するインサート成形品を得るステップと、
を含み、
前記可動型の側に配置される前記第1のインサート成形用シートの射出成形樹脂層が形成される面に前記固定型に固定するための位置決めリブが設けられており、且つ、前記固定型の側に配置される前記第2のインサート成形用シートには、射出成形樹脂層が形成される面と反対側の面に前記固定型に固定するための位置決めリブが設けられていると共に、前記第1のインサート成形用シートの前記位置決めリブを通す穴が設けられており、
前記固定型の面に前記第1のインサート成形用シートの前記位置決めリブに対応する箇所に前記位置決めリブを配置するための穴と、前記第2のインサート成形用シートの前記位置決めリブに対応する箇所に前記位置決めリブを配置するための穴とが設けられており、
前記型締め前に、前記第1のインサート成形用シートの前記位置決めリブを前記固定型の対応する箇所に設けられた前記穴に固定し、前記第2のインサート成形用シートの前記位置決めリブを前記固定型の対応する箇所に設けられた前記穴に固定する。
【0018】
第9の態様に係るインサート成形品の製造方法は、インサート成形品の裏面側に対応する固定型と表面側に対応する可動型とを型締めされた状態で前記インサート成形品を射出成形するインサート成形品の製造方法であって、
前記固定型と前記可動型との間に少なくとも2つのインサート成形用シートを挟み込むステップであって、前記2つのインサート成形用シートは、前記可動型の側に配置される第1のインサート成形用シートと、前記固定型の側に配置される第2のインサート成形用シートである、少なくとも2つのインサート成形用シートを挟み込むステップと、
前記固定型と前記可動型とを型締めして、前記可動型の側に配置される前記第1のインサート成形用シートと前記固定型の側に配置される前記第2のインサート成形用シートとの間に射出成形樹脂を流し込むことで表面側に前記第1のインサート成形用シートを有し、裏面側に前記第2のインサート成形用シートを有するインサート成形品を得るステップと、
を含み、
前記可動型の側に配置される前記第1のインサート成形用シートの射出成形樹脂層が形成される面に前記固定型に固定するための位置決めリブが設けられており、且つ、前記固定型の側に配置される前記第2のインサート成形用シートには、射出成形樹脂層が形成される面と反対側の面に前記固定型に固定するための位置決めピンを通す穴が設けられていると共に、前記第1のインサート成形用シートの前記位置決めリブを通す穴が設けられており、
前記固定型の面に前記第1のインサート成形用シートの前記位置決めリブに対応する箇所に前記位置決めリブを配置するための穴と、前記第2のインサート成形用シートの前記穴に対応する箇所に前記穴に通す位置決めピンとが設けられており、
前記型締め前に、前記第1のインサート成形用シートの前記位置決めリブを前記固定型の対応する箇所に設けられた前記穴に固定し、前記第2のインサート成形用シートの前記穴に前記固定型の対応する箇所に設けられた前記位置決めピンを固定する。
【0019】
第10の態様に係るインサート成形品は、上記第1から第5のいずれかの態様に係る前記インサート成形用シートを含む。
【0020】
以下、実施の形態に係るインサート成形用シートについて、添付図面を参照しながら説明する。なお、図面において実質的に同一の部材については同一の符号を付している。
【0021】
(実施の形態1)
<インサート成形用シート>
図1Aは、実施の形態1に係るインサート成形用シート41の厚さ方向に垂直な方向から見た断面図である。図1Bは、図1Aのインサート成形用シート41のより詳細な断面構造を示す断面図である。
実施の形態1に係るインサート成形に用いるインサート成形用シート41は、少なくとも一方の面に位置決めリブ1を有する。位置決めリブ1は、キャビティに面する金型の面に固定するためのものである。インサート成形用シート41は、木質材2を用いた木質材シート32と、その一方の面に設けられた位置決めリブ1と、を有する。木質材シート32は、支持層5、木質材2、接着層4、薄膜保護層3の順に積層されている。位置決めリブ1は、支持層5の側に設けられている。
なお、後述するように、インサート成形用シートは、図1Bの断面構造に限られず、図2A図2B図2C図2D図3A図3Bに示す断面構造であってもよい。
【0022】
このインサート成形用シート41は、キャビティに面する金型の面に固定するための位置決めリブ1を有するので、余白を必要とせず、素材をトリミングする際にも必要な面積の素材のみを使用できる。そのため、素材において余白に起因する材料ロスを生じない。
また、このインサート成形用シート41を用いたインサート成形品として、位置決めリブ1の周囲に射出成形樹脂が充填されるので、位置決めリブ1が抜けにくくなると共に、位置決めリブ1によって射出成形樹脂を補強する効果が得られる。これによって、表面からみた奥行き方向である厚さ方向に押さえとして働き、浮きの発生を抑制できる。
【0023】
<インサート成形用シートの製造方法>
次に、インサート成形用シートの製造方法について説明する。
図4Aは、素材31を示す概略斜視図である。図4Bは、素材31をトリミングして、木質材2を得るプロセスの説明図である。図5は、木質材2として必要なサイズの一例を示す平面図である。図6Aは、従来の余白を設けた木質材22のサイズの一例を示す平面図である。図6Bは、素材31から図6Aに示す従来の余白を設けた木質材22を取得する一例を示す平面図である。図7Aは、実施の形態1に係るインサート成形用シート41に用いる木質材2のサイズの一例を示す平面図である。図7Bは、素材31から図7Aに示す実施の形態1に係るインサート成形用シートに用いる木質材2を取得する一例を示す平面図である。
【0024】
ここでは図1Bに示すインサート成形用シート41に素材からなる木質材2を用いる場合について説明する。図4Bに示すように、素材31から最終の成形品表面の被覆に必要な形状にトリミング加工して木質材2を得る。
ここで、図6A乃至図7Bを用いて、従来のインサート成形用シートに用いる余白を設けた木質材のトリミングと実施の形態1に係るインサート成形用シートに用いる木質材のトリミングとの差異を説明する。その前提条件として、図5に示すように、素材31のサイズを300mm×1000mm、成形品における木質材2のサイズは45mm×350mmとする。従来方式では、図6Aに示すように、木質材22の外周部に金型位置決め用の穴を開けるため、1辺当たりの余白を25mm必要と仮定すると、図6Bに示すように、素材31から6枚の木質材22が取得できる。一方、実施の形態1に係るインサート成形用シートに用いる木質材では、図7Aに示すように、木質材2の外周部に金型位置決め用の穴を形成する必要がなく、不要な余白を設ける必要がない。このため、素材31から12枚の木質材2を取得することができ、従来方式と比較して素材31の材料ロスを削減することが可能である。
【0025】
次に、図1A及び図1Bに示すように、木質材2を含む木質材シート32の裏面に位置決めリブ1を形成する。その際、位置決めリブ1は、木質材シート32に直接射出成形で形成する、あるいは予め作製した位置決めリブを木質材シート32に取り付けてもよい。予め位置決めリブ1を作製する方法としては、射出成形、3Dプリンター、切削、型抜き、研磨などが挙げられるが、位置決めを行うことができれば特に限定する必要はない。また、位置決めリブ1を取り付ける方法として、超音波溶着、接着剤、熱融着、熱溶解、半田溶着、テープによる固定などが挙げられるが、同様の効果が得られればこれらに限定される必要はない。
【0026】
形成する位置決めリブ1の材質は、例えば、PMMA樹脂、ABS樹脂、PS樹脂、PC樹脂などの市販されている汎用樹脂が挙げられる。その他、光学用途の樹脂やスーパーエンジニアリング樹脂など、高温での成形が必要な樹脂にも対応可能である。
位置決めリブ1の形成個数は、上述で説明した成形品サイズ(45mm×350mm)より小さなサイズであれば1~2個が好ましく、上述で説明した成形品サイズ(45mm×350mm)程度であれば2~4個が好ましいが、製品面積の大きさによって適宜設定を行う。
位置決めリブ1の形状は、一般的にはT字型、I字型、十字型、×型などを用いるが、丸型、三角型、四角型、その他、多角形型、星型など、位置を固定する機能を有していれば、特に限定される必要はない。
【0027】
なお、素材31として、例えば、木、絵柄が印刷された加飾フィルムや石、コルク、布、天然革、人工皮革等の素材を用いることが可能であるが、製品の特性やニーズに合わせた意匠が表現できる素材であればこれらに限定される必要は無い。
【0028】
図2A乃至図2Dは、実施の形態1の変形例1乃至4に係るインサート成形用シートの詳細な断面構造を示す断面図である。図3A及び図3Bは、実施の形態1の変形例5及び6に係るインサート成形用シートの詳細な断面構造を示す断面図である。
代表例として、素材31が木の場合のインサート成形用シート41の層構成を図1Bで説明する。このインサート成形用シートでは、木質材シート32について、天然木由来の木質材2の表面に薄膜保護層3、接着層4が順に形成され、木質材2の裏面側に支持層5が形成され、支持層5に位置決めリブ1が取り付けられている。
また、変形例1に係るインサート成形用シート41Aでは、図2Aに示すように、薄膜保護層3の代わりに、反射防止、高反射、光散乱、撥水、親水、抗菌、高硬度機能、映像表示機能の少なくとも1つの機能層6を有する。変形例2に係るインサート成形用シート41Bでは、図2Bに示すように、薄膜保護層3の上層に上記機能層6を有する。変形例3に係るインサート成形用シート41Cでは、図2Cに示すように、薄膜保護層3と木質材2との間に上記機能層6を有する。変形例4に係るインサート成形用シート41Dでは、図2Dに示すように、木質材2と支持層5との間に、上記機能層6を有する。
また、変形例5に係るインサート成形用シート41Eでは、図3Aに示すように、支持層5の表面に機能層6を形成した層構成を有する。変形例6に係るインサート成形用シート41Fでは、図3Bに示すように、支持層5の表面に部品層7を形成した層構成を有する。部品層7の種類としては、センサー、電気部品、電子部品が挙げられる。
【0029】
<インサート成形品の製造方法>
次に、インサート成形用シートを用いたインサート成形品の製造方法について説明する。図8A乃至図8Dは、実施の形態1に係るインサート成形用シートを用いたインサート成形品の製造方法の各工程を示す概略断面図である。
(1)図8Aに示すように、位置決めリブ1を取り付けたインサート成形用シート41を、固定型1Bと可動型2Bとの間のキャビティ12に配置し、固定する。具体的には、キャビティ12に面するインサート成形用の固定型1Bの面に位置決めリブ1と対応する箇所に形成された穴にインサート成形用シート41の裏面の位置決めリブ1をセットして、インサート成形用シート41を固定する。
(2)図8Bに示すように、可動型2Bを可動させて、型締めを行う。
(3)図8Cに示すように、固定型1Bに開いているゲート111から射出成形樹脂8を金型内のキャビティ12に流し込む。射出成形樹脂8には、例えば透明のABSやPMMA、PC等の樹脂材料があるが、同様の効果が得られればこれらに特に限定される必要は無く、他の樹脂材料でも問題無い。
(4)図8Dに示すように、型開きを行い、図示されていない突き出しピンにて金型内からインサート成形用シート41と一体成形されたインサート成形品51を取り出す。
このインサート成形品の製造方法では、位置決めリブ1は、インサート成形で使用する樹脂と同じ材料を用いることで、インサート成形後にインサート成形で用いる射出成形樹脂と相溶されやすく、位置決めリブ1を成形品の一部とすることができる。そこで、位置決めリブ1とインサート成形で形成された射出成形樹脂との界面での隙間がなく、強固なインサート成形品を得ることができる。この工程を繰り返すことでインサート成形品を量産することができる。
【0030】
(実施の形態2)
図9A乃至図9Gは、実施の形態2に係るインサート成形品の製造方法の各工程を示す概略断面図である。
実施の形態2に係るインサート成形品の製造方法は、実施の形態1に係るインサート成形品の製造方法と対比すると、予めインサート成形用シートのプリフォームを行い、プリフォームしたインサート成形用シートを用いてインサート成形を行う点で相違する。
(1)図9Aに示すように、位置決めリブ1を取り付けたインサート成形用シート41を、プリフォーム用の固定型1Aに位置決めリブ1と対応する箇所に形成された穴にインサート成形用シート41の裏面の位置決めリブ1をセットする。
(2)図9Bに示すように、可動型2Aを可動させて、型締めを行い、インサート成形用シート41のプリフォーム(賦形)を行う。
(3)図9Cに示すように、型開きを行い、型内からプリフォーム(賦形)されたインサート成形用シート42を取り出す。
【0031】
(4)次に、図9Dに示すように、プリフォーム(賦形)されたインサート成形用シート42を、インサート成形用の固定型1Bに位置決めリブ1と対応する箇所に形成された穴にインサート成形用シート42の裏面の位置決めリブ1をセットする。
(5)図9Eに示すように、可動型2Bを可動させて、型締めを行う。
(6)図9Fに示すように、固定型1Bに開いているゲート111から射出成形樹脂8を金型内のキャビティ12に流し込む。
(7)図9Gに示すように、型開きを行い、インサート成形品52を取り出す。
【0032】
(実施の形態3)
図10A乃至図10Eは、実施の形態3に係るインサート成形品の製造方法の各工程を示す概略断面図である。
実施の形態3に係るインサート成形品の製造方法は、実施の形態1に係るインサート成形品の製造方法と対比すると、インサート成形用の金型でインサート成形用シートのプリフォームを行うと共に、インサート成形を行う点で相違する。また、実施の形態2に係るインサート成形品の製造方法と対比すると、プリフォーム用の金型を用いず、インサート成形用の金型でインサート成形用シートのプリフォームを行う点で相違する。
(1)図10Aに示すように、位置決めリブ1を取り付けたインサート成形用シート41を、インサート成形用の固定型1Bに位置決めリブ1と対応する箇所に形成された穴にインサート成形用シート41の裏面の位置決めリブ1をセットする。
(2)図10Bに示すように、可動型2Bを可動させて、型締めを行い、インサート成形用シート41のプリフォーム(賦形)を行う。
(3)図10Cに示すように、固定型1Bを入れ子構造としておき、その入れ子を矢印の方向に引いて可動型2Bとの間にキャビティ12を設ける。
(4)図10Dに示すように、固定型1Bに開いているゲート111から射出成形樹脂8を金型内のキャビティ12に流し込む。
(5)図10Eに示すように、型開きを行い、インサート成形品52を取り出す。
【0033】
このインサート成形品の製造方法では、インサート成形用シート41の位置決めリブ1が形成された面を配置する固定型1B側の入れ子を可動式にしている点を特徴としている。これによって、プリフォーム加工時は、型締めした際にインサート成形用シート42をプレス加工してプリフォーム加工できる。成形用シートのプリフォーム加工、具体的には、予め加熱された金型で成形用シートをプレス加工して金型形状に成形用シートを変形させる。その後、そのまま金型で挟み込み、特定の温度まで金型及び成形用シートを冷却させて成形用シートをプレス加工した際の形状を転写させることができる(図10B)。
プリフォーム後は、固定型の射出成形樹脂を入れる部位の入れ子(コア型)を可動させて、射出成形樹脂を充填可能な領域であるキャビティ12を設けることができる(図10C)。その後に、必要に応じて金型を特定の温度まで昇温して加熱した後に、固定側1B型に予め形成されているゲート111より射出成形樹脂8を流し込み、インサート成形加工できる構成にしてもよい。こうすることで、プリフォーム加工時とインサート成形加工時との金型をそれぞれ作る必要が無く、金型費が削減できることと、プリフォーム加工からインサート成形まで1組の金型で完了できるため生産性も高くなる。
【0034】
(実施の形態4)
<インサート成形用シート>
図11Aは、実施の形態4に係る2枚のインサート成形用シートのうちの表面用の位置決めリブタイプのインサート成形用シート42の厚さ方向に垂直な方向から見た断面図である。図11Bは、実施の形態4に係る2枚のインサート成形用シートのうちの裏面用の位置決めリブタイプのインサート成形用シート43の厚さ方向に垂直な方向から見た断面図である。図11Cは、図11Bの裏面用のインサート成形用シート43の裏面側からみた底面図である。
この2枚のインサート成形用シート42,43は、それぞれ表面用と裏面用とであり、インサート成形用シート42をインサート成形品の表面に被覆させ、インサート成形用シート43をインサート成形品の裏面に配置する。
インサート成形品の表面に配置する表面用のインサート成形用シート42は、図11Aに示すようにインサート成形用の固定型1Bに固定するための位置決めリブ10を裏面側に設けている。また、インサート成形品の裏面に配置する裏面用のインサート成形用シート43は、図11Bに示すように、インサート成形用の固定型1Bに固定するための位置決めリブ10を裏面側に設けている。さらに、図11Bに示すように、裏面用のインサート成形用シート43は、表面用のインサート成形用シート42に取り付けられた位置決めリブ1を通す穴9と、位置決めリブ10と、射出成形樹脂8を通すための穴13と、を設けている。
【0035】
なお、図11Aでは表面用のインサート成形用シート42を予めプリフォーム(賦形)を行ったインサート成形用シート42を用いて図示したが、プリフォーム(賦形)を行っていないインサート成形用シート41を使用しても問題なく、以下の図12A乃至図12E図13A乃至図13C図14A乃至図14Eにおいても同様にプリフォームを行ったインサート成形用シート42を用いた例で説明する。
【0036】
<インサート成形品の製造方法>
図12A乃至図12Eは、実施の形態4に係るインサート成形品の製造方法の各工程を示す概略断面図である。
(1)図12Aに示すように、位置決めリブ10を取り付けた裏面用のインサート成形用シート43を、インサート成形用の固定型1Bに位置決めリブ10と対応する箇所に形成された穴にインサート成形用シート43の裏面の位置決めリブ10をセットする。
(2)さらに、図12Bに示すように、表面用のインサート成形用シート42の裏面の位置決めリブ1を、裏面用のインサート成形用シート43の対応する箇所に設けられた穴9に通す。さらに、位置決めリブ1をインサート成形用の固定型1Bの位置決めリブ1と対応する箇所に形成された穴にセットする。
(3)図12Cに示すように、可動型2Bを可動させ、型締めを行う。
(4)図12Dに示すように、固定型1Bに開いているゲート111から射出成形樹脂8を裏面用のインサート成形用シート43の穴13を介して金型内のキャビティ12に流し込む。なお、穴13は、図11Cに示すように円形の穴として示しているがこれに限定されない。
(5)図12Eに示すように、型開きを行い、インサート成形品53を取り出す。
【0037】
<インサート成形品>
図15Aは、実施の形態4に係るインサート成形品53の表面側から見た平面図である。図15Bは、図15AのA-A方向にみた断面構造を示す断面図である。
図15Aに示すように、このインサート成形品53は、表面用のインサート成形用シート42と裏面用のインサート成形用シート43との間に射出成形樹脂8が充填されて構成されている。このインサート成形品53によれば、表面用のインサート成形用シートにおける加飾フィルムと裏面用のインサート成形用シートにおける回路フィルムとの位置合わせを高精度に行うことができる。例えば、表面側の加飾フィルムのシンボルマーク61の位置と裏面側の回路フィルムのLED62の位置とを高精度に合わせることで、表面の加飾フィルムのシンボルマーク61の中心部より均一に発光させることが可能となる。
【0038】
この様に表面の加飾フィルムと、裏面のセンサーフィルム、回路フィルム、またはセンサーと回路が一体となったフィルムとの高精度の位置合わせが必要な用途でも高品位な意匠付きセンサー、回路機能付きの成形部品の提供が可能となる。
【0039】
(実施の形態5)
<インサート成形用シート>
図13Aは、実施の形態5に係る2枚のインサート成形用シートのうちの表面用の位置決めリブタイプのインサート成形用シート42の厚さ方向に垂直な方向から見た断面図である。図13Bは、実施の形態5に係る2枚のインサート成形用シートのうちの裏面用の位置決めピンタイプのインサート成形用シート44の厚さ方向に垂直な方向から見た断面図である。図13Cは、図13Bの裏面用のインサート成形用シート44の裏面側からみた底面図である。
【0040】
この2枚のインサート成形用シート42,44は、それぞれ表面用と裏面用とであり、インサート成形用シート42をインサート成形品の表面に被覆させ、インサート成形用シート44をインサート成形品の裏面に配置する。
この実施の形態5に係る2枚のインサート成形用シート42,44は、実施の形態4に係る2枚のインサート成形用シートと対比すると、裏面用のインサート成形用シート44が位置決めリブタイプではなく、位置決めピンタイプである点で相違する。なお、同様の効果が得られればこれに限定される必要はない。
裏面用のインサート成形用シート44には、表面用のインサート成形用シートの一決めリブ1を通すための穴9と、金型に設けた位置決めピン3Aを通すための穴11と、射出成形樹脂8を通すための穴13と、を設けている。
【0041】
<インサート成形品の製造方法>
図14A乃至図14Eは、実施の形態5に係るインサート成形品の製造方法の各工程を示す概略断面図である。
(1)図14Aに示すように、インサート成形用の固定型1Bには位置決めピン3Aを設けている。一方、成形品の裏面に配置する裏面用のインサート成形用シート44には位置決めピン3Aを通す穴11を形成している。この裏面用のインサート成形用シート44の穴11に位置決めピン3Aを通してインサート成形用シート44を固定型1Bにセットする。
(2)図14Bに示すように、表面用のインサート成形用シート42の裏面の位置決めリブ1を、裏面用のインサート成形用シート44の対応する箇所に設けられた穴9に通す。さらに、位置決めリブ1をインサート成形用の固定型1Bの位置決めリブ1と対応する箇所に形成された穴にセットする。
(3)図14Cに示すように、可動型2Bを可動させて、型締めを行う。
(4)図14Dに示すように、固定型1Bに開いているゲート111から射出成形樹脂8を裏面用のインサート成形用シート44の穴13を介して金型内のキャビティ12に流し込む。なお、穴13は、図11Cに示すように円形の穴として示しているがこれに限定されない。
(5)図14Eに示すように、型開きを行い、インサート成形品54を取り出す。
【0042】
上記のインサート成形品の製造方法を用いることで、表面側の加飾フィルムと裏面側の加飾フィルムまたは裏面側のセンサーフィルム、回路フィルム等の位置を位置決めリブにより、従来工法よりも高精度に位置合わせすることが可能となる。用途として、表面側の加飾フィルムと裏面側の加飾フィルムに予めそれぞれ別の絵柄を設けておき、表面側の加飾フィルムと裏面側の加飾フィルムとを透明の成形樹脂で挟み込むことで表面側の加飾フィルムと裏面側の加飾フィルムとの絵柄を組み合わせることで奥行き感のある意匠演出をする用途に用いることができる。または、通常時は表面に形成した加飾フィルム面の意匠のみが視認でき、必要に応じて適宜、裏面側の加飾フィルム側より照明を照らす事で裏面側の加飾フィルムの意匠が浮き出る様な演出において、表面側の加飾フィルムと裏面側の加飾フィルムの模様、絵柄が高精度な位置合わせが要求される用途において高品位な意匠付き加飾成形部品の提供が可能となる。
他用途として、表面側が加飾フィルムで裏面側がセンサーまたは回路フィルムまたはセンサーと回路フィルムが一体となった用途においても、表面の加飾フィルムに形成した静電センサー用のスイッチマーク、シンボルと裏面のセンサーフィルムのセンサー部との高精度の位置合わせが可能となる。
【0043】
なお、本開示においては、前述した様々な実施の形態及び/又は実施例のうちの任意の実施の形態及び/又は実施例を適宜組み合わせることを含むものであり、それぞれの実施の形態及び/又は実施例が有する効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係るインサート成形用シートは、各種の家庭電化製品などの外装や、車載内装等の加飾を要する分野において、高意匠化に寄与する。
【符号の説明】
【0045】
1 位置決めリブ
2 木質材
3 薄膜保護層
4 接着層
5 支持層
6 機能層
7 部品層
8 射出成形樹脂
9 穴
10 位置決めリブ
11 穴
12 キャビティ
13 穴
22 木質材
31 素材
32 木質材シート
41、41A、41B、41C、41D、41E、41F インサート成形用シート
42 プリフォームされたインサート成形用シート
43 裏面用のインサート成形用シート
44 裏面用のインサート成形用シート
51 インサート成形品
52、53、54 インサート成形品
61 シンボルマーク
62 LED
1A プリフォーム用固定型
2A プリフォーム用可動型
1B インサート用固定型
2B インサート用可動型
3A 位置決めピン
101 金型
102 加飾シート
103 開口部
104 ピン
105 キャビティ
111 ゲート
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図15A
図15B
図16