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特許7499439吸込具の移動を補助するローラ、ローラを備えた吸込具及びローラの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】吸込具の移動を補助するローラ、ローラを備えた吸込具及びローラの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/02 20060101AFI20240607BHJP
   A47L 9/04 20060101ALI20240607BHJP
   A47L 9/28 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
A47L9/02 B
A47L9/04 A
A47L9/28 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020104756
(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公開番号】P2021194376
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100157808
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 耕平
(72)【発明者】
【氏名】水野 陽章
(72)【発明者】
【氏名】貞広 政紀
【審査官】村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-252225(JP,A)
【文献】特開平11-128124(JP,A)
【文献】特開2018-140003(JP,A)
【文献】国際公開第2015/049808(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/02
A47L 9/04
A47L 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引式の清掃機に取り付けられる吸込具の下面に位置するローラであって、
ゴム製のローラ本体と、
前記ローラ本体の外周面上に押し潰された状態で点在する樹脂部と、
前記ローラ本体内に位置する繊維状の内側樹脂部と、を備え
前記樹脂部は、前記内側樹脂部に繋がっている、ローラ。
【請求項2】
吸引式の清掃機に取り付けられる吸込具であって、
吸込空間が開口する下面を有するハウジングと、
前記ハウジングの前記下面に位置する請求項1に記載のローラと、を備えている、吸込具。
【請求項3】
前記ハウジングの前記下面に位置する他のローラを備え、
前記ハウジングには、前記吸込空間に開口し且つ前記清掃機を接続するための接続口に連通する流路が形成され、
前記ローラは、前記他のローラよりも前記吸込空間における前記流路の開口に近い位置に配置されている、請求項2に記載の吸込具。
【請求項4】
前記他のローラは、前記吸込空間の左右両側において前記ハウジングの前記下面に配置された一対の左右ローラであり、
前記吸込空間に配置された掻取ローラと、
前記ローラを上下方向に可動に支持する可動支持部と、
前記ローラが上位置にある状態で前記掻取ローラを回転させる一方で、前記ローラが下方に移動することによって前記掻取ローラを停止させるように構成された回転制御部と、を備える、請求項3に記載の吸込具。
【請求項5】
前記ハウジングから後方に突出した後方ブラケットと、
前記後方ブラケットに取り付けられた後方ローラと、を更に備えている、請求項4に記載の吸込具。
【請求項6】
ゴム製のローラ本体と前記ローラ本体の外周面から突出した樹脂繊維とを有するローラ状の部材を、前記樹脂繊維の融点よりも高温の部材上で転動させ、
前記ローラ本体の外周面から突出した前記樹脂繊維を溶融させて潰れた状態の樹脂部とし、
前記溶融した樹脂部を固化させる、ローラの製造方法。
【請求項7】
前記部材に前記ローラ本体の外周面に沿う溝が形成されており、
前記ローラ本体の外周面が前記溝に接触した状態で前記ローラを前記部材上で転動させる、請求項に記載のローラの製造方法。
【請求項8】
前記溝は、前記ローラ本体の外周面および側面に沿う形状を有し、
前記ローラ本体の外周面および側面が前記溝に接触した状態で前記ローラを前記部材上で転動させる、請求項に記載のローラの製造方法。
【請求項9】
前記溝の角にはRが付けられ、
前記ローラ状の部材を前記溝に押し付けながら前記部材上で転動させる、請求項に記載のローラの製造方法。
【請求項10】
前記樹脂繊維とともに前記ローラ本体の表面を溶融させる、請求項の何れか1項に記載のローラの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引式の清掃機に取り付けられる吸込具の移動を補助するローラ、ローラを備えた吸込具及びローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸込具は、吸引式の清掃機に取り付けられ、清掃機は、吸込具を床面上で移動させながら使用される。吸込具の移動を補助するために、吸込具の下面には、ローラが取り付けられている。
【0003】
ローラの外周面が硬すぎると、床面がローラによって傷つけられるので、ゴム製のローラが用いられることが一般的である。ローラの外周面をゴムのみで構成した場合には、ローラの外周面の摩擦係数が大きくなりすぎることがある。摩擦係数が大きすぎる場合には、ローラは横滑りせず(すなわち、ローラの回転軸の延設方向におけるローラの摺動は許容されず)、吸込具を側方に移動させることが困難になる。
【0004】
ローラの摩擦係数を低減するために、特許文献1は、不織布にゴムを含浸することにより、ローラを形成することを提案している。この場合、ローラの外周面上には、不織布の樹脂繊維が露出し、露出した樹脂繊維によって摩擦係数が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-343903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のローラの外周面は、微視的には、樹脂繊維が毛羽立った状態になっている。この場合、床面上の塵埃が樹脂繊維に絡まりやすい。ローラに塵埃が絡みつくと、ローラの転動が塵埃によって阻害され、吸込具の移動を補助する機能が失われる。
【0007】
そこで、本発明は、上記の課題に基づいてなされたものであり、その目的は、ローラへの塵埃の絡みつきを抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るローラは、吸引式の清掃機に取り付けられる吸込具の下面に位置するロー
ラであり、ゴム製のローラ本体と、前記ローラ本体の外周面上に押し潰された状態で点在
する樹脂部と、前記ローラ本体内に位置する繊維状の内側樹脂部と、を備える。前記樹脂部は、前記内側樹脂部に繋がっている。
【0009】
本発明によれば、ローラは、ゴム製のローラ本体の外周面上に押し潰された状態で点在する樹脂部を備えるので、ゴムのみから構成されている場合と比べて低い摩擦係数を有する。この結果、ローラの横滑りが許容され、吸込具の操作が容易になる。しかも、ローラ本体の外周面上に押し潰された樹脂部が点在しているので、より摩擦係数が低減され、塵埃がローラの外周面に捕捉されにくくなる。すなわち、樹脂繊維がローラ本体の外周面から突出して毛羽立った状態では塵埃が捕捉されてしまうが、樹脂部は、ローラ本体の外周面上に押し潰された状態になっているため、塵埃が捕捉されにくい。したがって、塵埃がローラに巻き付くことに起因するローラの転動不良が抑制される。
【0010】
本発明に係る吸込具は、吸引式の清掃機に取り付けられる吸込具であって、吸込空間が開口する下面を有するハウジングと、前記ハウジングの前記下面に位置する前記ローラと、を備える。
【0011】
本発明によれば、ハウジングの下面に位置するローラのローラ本体の外周面上には、押し潰された状態の樹脂部が点在しているので、ローラは、ゴムのみから構成されている場合と比べて低い摩擦係数を有する。このため、ローラは、ローラの転動方向以外の方向への吸込具の移動に対して過度に大きな抵抗を与えない。
【0012】
上記構成において、前記ハウジングの前記下面に位置する他のローラを備えてもよい。前記ハウジングには、前記吸込空間に開口し且つ前記清掃機を接続するための接続口に連通する流路が形成されてもよい。前記ローラは、前記他のローラよりも前記吸込空間における前記流路の開口に近い位置に配置されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、ハウジングの下面と床面との間にある塵埃は、清掃機からの吸引力を受けて、吸込空間から流路の開口に向けて移動する。したがって、流路の開口に近いローラほど、塵埃に接触する頻度が高くなる。流路の開口に比較的近い位置に配置されたローラでは、ローラ本体の外周面上に押し潰された樹脂部が点在することによって外周面の摩擦係数が低減された状態になっているので、当該ローラと塵埃との接触頻度が高くとも、塵埃がローラに捕捉されてしまうことが抑制される。
【0014】
上記構成において、前記他のローラは、前記吸込空間の左右両側において前記ハウジングの前記下面に配置された一対の左右ローラであってもよい。前記吸込具は、前記吸込空間に配置された掻取ローラと、前記ローラを上下方向に可動に支持する可動支持部と、前記ローラが上位置にある状態で前記掻取ローラを回転させる一方で、前記ローラが下方に移動することによって前記掻取ローラを停止させるように構成された回転制御部と、を備えてもよい。
【0015】
この構成によれば、吸込空間の左右両側において前記ハウジングの前記下面に配置された一対の左右ローラによってハウジングが支えられるので、幅方向における吸込具の傾斜が抑制される。また、回転制御部は、ローラが下方に移動することによって掻取ローラを停止させるので、使用者がハウジングと床面との間の空間に指を差し込んだ場合に、回転した状態の掻取ローラが指に接触することが防止される。可動支持部に取り付けられたローラの外周面は、押し潰された状態の樹脂部が点在しているので、このローラには塵埃が付着しにくい。したがって、ローラに付着した塵埃が可動支持部の動作を阻害するような事態が生じにくくなる。
【0016】
上記構成において、前記吸込具は、前記ハウジングから後方に突出した後方ブラケットと、前記後方ブラケットに取り付けられた後方ローラと、を更に備えてもよい。
【0017】
この構成によれば、後方ローラは、ハウジングから後方に突出した後方ブラケットに取り付けられているので、吸込空間の左右のローラと後方ローラとの間の前後方向の距離を長くすることができる。このため、吸込具は、前後方向において離れた位置において床面に支持されることになるので、吸込具の姿勢の安定化が図られる。
【0019】
本発明に係るローラの製造方法は、ゴム製のローラ本体と前記ローラ本体の外周面から突出した樹脂繊維とを有するローラ状の部材を、前記樹脂繊維の融点よりも高温の部材上で転動させ、前記ローラ本体の外周面から突出した前記樹脂繊維を溶融させて潰れた状態の樹脂部とし、前記溶融した樹脂部を固化させる。
【0020】
本発明によれば、ゴム製のローラ本体と前記ローラ本体の外周面から突出した樹脂繊維とを有するローラ状の部材を、前記樹脂繊維の融点よりも高温の部材上で転動させるので、ローラ本体の外周面上に潰れた状態の樹脂部を容易に形成することができる。
【0021】
上記構成において、前記部材に前記ローラ本体の外周面に沿う溝が形成されてもよい。前記ローラの製造方法では、前記ローラ本体の外周面が前記溝に接触した状態で前記ローラを前記部材上で転動させてもよい。
【0022】
この構成によれば、ローラ本体の外周面に沿う溝にローラ本体の外周面が接触した状態で樹脂繊維の融点よりも高温の部材上で、ゴム製のローラ本体と前記ローラ本体の外周面から突出した樹脂繊維とを有するローラ状の部材を転動させるので、例えば、ローラ本体の外周面が半径方向外側に膨らむような形状を有する場合であっても、ローラ本体の外周面の全体に押し潰された状態の樹脂部を形成しやすくなる。このため、ローラの外周面の摩擦係数をより確実に低減でき、ローラへの塵埃の絡みつきをより確実に抑制することができる。
【0023】
上記構成において、前記溝は、前記ローラ本体の外周面および側面に沿う形状を有してもよい。前記ローラの製造方法では、前記ローラ本体の外周面および側面が前記溝に接触した状態で前記ローラを前記部材上で転動させてもよい。
【0024】
この構成によれば、ローラ本体の外周面に露出した樹脂繊維だけでなくローラ本体の側面に露出した樹脂繊維も溶融させることができる。このため、ローラ本体の外周面だけでなく、ローラ本体の側面にも押し潰された状態の樹脂部を形成することができるので、ローラの外周面の摩擦係数だけでなく、ローラの側面の摩擦係数も低減でき、ローラへの塵埃の絡みつきをより抑制することができる。
【0025】
上記構成において、前記溝の角にはRが付けられてもよい。前記ローラ状の部材を前記溝に押し付けながら前記部材上で転動させてもよい。
【0026】
この構成によれば、角にRが付けられた溝にローラ状の部材を押し付けながら高温の部材上で転動させる。このため、ローラ本体の角が溝の角に強く押し付けられるので、ローラ本体の角に露出した樹脂繊維にも高温の部材の熱が伝わりやすくなる。この結果、ローラ本体の角に露出した樹脂繊維が溶融しやすくなり、ローラ本体の角にも押し潰された状態の樹脂部を容易に形成することができる。
【0027】
上記構成において、前記樹脂繊維とともに前記ローラ本体の表面を溶融させてもよい。
【0028】
この構成によれば、樹脂繊維だけでなくローラ本体の表面も溶融されるので、ローラ本体の表面に現れるゴムの表面の粗さが低減される。この場合、ローラ本体を形成するゴムは、樹脂繊維の融点よりも融点が低いものが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ローラへの塵埃の絡みつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本実施形態に係るローラを備える吸込具が取り付けられた吸引式の清掃機の側面図である。
図2】本実施形態に係る吸込具の平面図である。
図3図2のIII-III線で切断した断面図である。
図4】本実施形態に係る吸込具の底面図である。
図5】本実施形態に係るローラの斜視図である。
図6】本実施形態に係るローラのローラ本体の外周面に押し潰された状態の樹脂部がローラ本体内の内側樹脂部に繋がっている状態を示す図である。
図7】本実施形態に係る吸込具の可動支持部の正面図である。
図8】本実施形態に係る吸込具の可動支持部の構造を示す図であり、(a)は本実施形態に係る吸込具の可動支持部を上から見た図であり、(b)は(a)のB-B線で切断した断面図であり、(c)は(a)のC-C線で切断した断面図であり、(d)は(a)の可動支持部の付勢部材の端部の部分拡大図である。
図9】本実施形態に係るローラの製造方法を示す図であり、(a)は高温に加熱した鉄板に形成された溝にローラ本体の外周面および側面が接触している状態を示す図であり、(b)は高温に加熱した鉄板の溝に接触しているローラ状の部材を転動させることによってローラを製造する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態に係るローラおよびローラを備える吸込具について図面を参照しながら説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態に係るローラ、および、ローラを備えた吸込具を説明するために必要となる主要な構成要素を簡略化して示したものである。したがって、本発明の実施形態に係るローラおよび吸込具は、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成要素を備え得る。
【0032】
図1は、吸込具100が取り付けられた吸引式の清掃機101を示している。清掃機101は、吸引ファン(図示せず)や吸引ファンを駆動するモータ(図示せず)を内蔵する本体部102と、本体部102から延設されたホース103とを備えている。清掃機101は、ホース103の中間位置に設けられた操作部104を更に備えている。吸込具100は、ホース103の先端に接続されている。操作部104は、ホース103に沿って設けられた配線を通じて本体部102と吸込具100とに電気的に接続されている。操作部104は、使用者の操作を受けて、本体部102及び吸込具100の駆動部位を作動させたり停止させたりするための指令信号を生成するように構成されている。
【0033】
吸込具100は、図2~4に示すように、左右方向に長い中空の箱構造からなるハウジング120と、ハウジング120をホース103の先端に接続するように構成された接続口130と、塵埃を掻き取るように構成された2つの掻取ローラ141、142と、ハウジング120の下面に位置する複数のローラ151~153と、を備える。
【0034】
ハウジング120は、前壁121、後壁122、側壁123、124、上壁125、下壁126、前カバー129、仕切壁127を含んでいる。
【0035】
前壁121は、ハウジング120の前側で立設された部位である。後壁122は、前壁121の後方で立設された左右方向に長い部位である。後壁122は、左右方向における中央位置が前方に向かって凹む凹部122aを有するように形成されている(図2参照)。
【0036】
側壁123、124は、ハウジング120の右側および左側で立設された部位であり、前壁121と後壁122とを繋いでいる。上壁125は、後壁122の上部と側壁123、124の上部とに繋がっている。
【0037】
下壁126は、ハウジング120の下面を形成している。具体的には、下壁126は、図4に示すように、後壁122及び側壁123、124の下端から内側に向かって延び、全体で底面視略コ字状に形成されている。具体的には、下壁126は、側壁123、124から内側に延びる左右下壁126a、126aと、後壁122から内側に延びる後下壁126bと、を有する。左右下壁126a、126aは、側壁123、124の前後幅の全長に亘って形成されている。後下壁126bは、左側の下壁126aから右側の下壁126aに繋がっている。後下壁126bの下面には、布面に毛羽が立てられた起毛布によって形成された集塵部128が設けられている。
【0038】
前カバー129は、前壁121の上部と上壁125の上部と側壁123、124とに繋がり、前壁121の上部および上壁125の上部に着脱可能に構成されている。
【0039】
仕切壁127は、前後方向に延びる前後方向仕切壁部127aと、左右方向に延びる左右方向仕切壁部127bと、を含む。前後方向仕切壁部127aは、左右下壁126a、126aの内側の端から上壁125に繋がるように形成されている。左右方向仕切壁部127bは、後下壁126bの内側の端から上壁125に繋がるように形成されている。左右方向仕切壁部127bは、後下壁126bの左右方向の全長に亘って連続している。前後方向仕切壁部127aは、左右方向仕切壁部127bの左右の端から左右下壁126a、126aの前端まで至っている。
【0040】
仕切壁127は、塵埃が吸い込まれる吸込空間111を区画する。吸込空間111は、前カバー129によって上から覆われる。吸込空間111の開口は、略矩形状に形成され、ハウジング120の下面に開口している。吸込空間111は、ハウジング120の下面の開口から空気及び塵埃が流れることを許容するとともに、掻取ローラ141、142などを収容するための空間として用いられる。
【0041】
仕切壁127と後壁122と側壁123と側壁124と上壁125と下壁126とにより、掻取ローラ141、142を駆動するモータ165、167などを収容する収容空間112が形成される(図2~4参照)。
【0042】
ハウジング120には、仕切壁127及び後壁122の凹部122aを貫通する流路116が形成されている(図2~4参照)。流路116の前側の開口115は、仕切壁127の左右方向の中央位置における吸込空間111側に現れ、吸込空間111に開口している(図4参照)。流路116は、後壁122の凹部122aから後方に延び接続口130に連通している。流路116は、空気及び塵埃が吸込空間111から清掃機101へ流れる流動経路として用いられる。
【0043】
後下壁126bの左右方向の中央位置には、図2、4に示すように、後方に突出する後方ブラケット158が設けられている。後方ブラケット158は後下壁126bと一体に形成されている。後方ブラケット158は、後下壁126bから略U字状に後方に突出し、後下壁126bと隣接する基端部158aと、基端部158aの後方端における左右の両端部から後方に突出する左右突出部158b、158bと、を有する。左右突出部158b、158bには、それぞれ、下面から上方に凹み、後述の後方ローラ153、153が収容される後方ローラ収容穴159、159が形成されている。
【0044】
尚、後方ローラ収容穴159、159は、左右突出部158b、158bを上下に貫通してもよい。また、後方ブラケット158は、ハウジング120の下面から後方に突出していれば、後下壁126bと一体に形成されていなくてもよく、その形状も限定されることはない。また、後方ローラ153の数も2つに限定されることはない。また、後方ブラケット158は、省略されてもよい。
【0045】
掻取ローラ141は、吸込空間111に配置されている(図4参照)。掻取ローラ141は、側壁123の近傍の収容空間112内から仕切壁127の前後方向仕切壁部127aを貫通して側方(図4では右側)に延設されたテーパ筒部161と、テーパ筒部161の外周面に設けられた複数の掻取部162と、を有している。
【0046】
テーパ筒部161は、左右方向における吸込空間111の長さの半分よりも若干短い。テーパ筒部161の基端側の部位は、側壁123の近傍の収容空間112に配置された軸受(図示せず)によって回転自在に支持されている。
【0047】
テーパ筒部161は、基端から先端に向けて細くなる細長い円錐台形状を有している。テーパ筒部161は、先端が基端よりも前方に位置するように傾斜している。加えて、テーパ筒部161は、先端が基端よりも下方に位置するように傾斜している。
【0048】
テーパ筒部161の基端には、テーパ筒部161と一体に回転するプーリ(図示せず)が取り付けられている。プーリには、収容空間112内に配置されたモータ165のモータ軸165bに掛け渡されたベルト166(図3参照)が掛け渡されている。これにより、モータ165の駆動によって掻取ローラ141が回転する。
【0049】
複数の掻取部162は、床面上の塵埃を掻き取るためのものである。複数の掻取部162それぞれは、テーパ筒部161の基端から先端までの区間に亘って延設された帯状の部位である。掻取部162は、弾性変形可能な材料から形成されている。たとえば、掻取部162は、多数のブラシ毛を用いて形成されていてもよいし、帯状のエラストマや帯状の弾性樹脂を用いて形成されていてもよいし、帯状の布材を用いて形成されていてもよい。
【0050】
掻取部162は、テーパ筒部161の基端から先端までの区間に亘って略一様な突出量でテーパ筒部161の外周面から突出している。掻取部162の突出量は、掻取部162が吸込空間111を通じてハウジング120の下面よりも下方に突出し、床面に接触する値に設定されている。
【0051】
掻取部162は、テーパ筒部161の中心軸に対して非平行である。詳細には、掻取部162は、テーパ筒部161の中心軸に対してねじれる方向に延設されている。すなわち、掻取部162の基端及び先端のテーパ筒部161の周方向における位置は、互いに相違している。
【0052】
掻取ローラ142は、掻取ローラ141と左右対称である。すなわち、掻取ローラ142の先端は、掻取ローラ141の先端に対向している。掻取ローラ142は、掻取ローラ142の先端から側壁124に向けて側方に延設されている。掻取ローラ142のテーパ筒部161の基端側の部位は、側壁124の近傍の収容空間112に配置された軸受(図示せず)によって回転自在に支持されている。掻取ローラ142のテーパ筒部161の基端には、テーパ筒部161と一体に回転するプーリ(図示せず)が取り付けられている。プーリには、モータ167のモータ軸167bに掛け渡されたベルト168が掛け渡されている。これにより、モータ167の駆動によって掻取ローラ142が回転する。
【0053】
掻取ローラ141、142は、左右方向における吸込空間111の長さの半分よりも若干短いので、掻取ローラ141、142の先端の間には、空隙118が形成されている(図4参照)。すなわち、空隙118は、掻取ローラ141、142の延設方向において掻取ローラ141、142の先端に隣接して形成されている。掻取ローラ141、142は、空隙118について左右対称な形状を有している。空隙118は、掻取ローラ141、142に巻き付いた長い塵埃(たとえば、毛髪)を除去するために利用される。
【0054】
空隙118は、流路116の開口115の前方に位置している(図2、4参照)。詳細には、空隙118は、開口115の開口方向において開口115と並んでいる。空隙118は、左右方向において吸込空間111の略中央に形成されている。
【0055】
モータ165は、モータ軸165bが掻取ローラ141のテーパ筒部161の中心軸と平行になるように、下壁126の上面に設けられたモータ支持部176に支持されている(図3参照)。モータ167は、モータ軸167bが掻取ローラ142のテーパ筒部161の回転軸と平行になるように、下壁126の上面に設けられたモータ支持部176に支持されている(図3参照)。
【0056】
複数のローラ151~153は、図4に示すように、左右下壁126a、126aに配置された一対の左右ローラ151、151と、後下壁126bに配置された摩擦低減ローラ152と、後方ブラケット158に配置された一対の後方ローラ153、153と、を有する。尚、後方ブラケット158が省略される場合は、一対の後方ローラ153、153は省略される。
【0057】
一対の左右ローラ151、151は、内部に樹脂繊維がちりばめられて一部が外面に毛羽立っており、不織布にゴムを含浸することによって形成されている。尚、一対の左右ローラ151、151の材質は限定されることはない。例えば、一対の左右ローラ151、151は、樹脂によって形成されてもよい。一対の左右ローラ151、151の外周面は、回転軸に平行な平面で切断した断面において直線状に形成されている。すなわち、一対の左右ローラ151、151は、外周面が前記断面において平坦な形状を有している。尚、一対の左右ローラ151、151は、外周面が前記断面において平坦な形状を有するものに限定されることはない。例えば、一対の左右ローラ151、151は、外周面が半径方向外側に膨らむ形状を有するものでもよい。
【0058】
一対の左右ローラ151、151は、左右下壁126a、126aに形成された左右ローラ配置孔156、156に位置した状態で左右下壁126a、126aに回転自在に取り付けられている。この状態で、一対の左右ローラ151、151は、左右下壁126a、126aの下面から下方に突出している。一対の左右ローラ151、151は、他のローラの1例である。
【0059】
一対の後方ローラ153、153は、内部に樹脂繊維がちりばめられて一部が外面に毛羽立っており、不織布にゴムを含浸することによって形成されている。尚、一対の後方ローラ153、153の材質は限定されない。例えば、一対の後方ローラ153、153は、樹脂によって形成されてもよい。一対の後方ローラ153、153の外周面は、回転軸に平行な平面で切断した断面において直線状に形成されている。すなわち、一対の後方ローラ153、153は、外周面が前記断面において平坦な形状を有している。尚、一対の後方ローラ153、153は、外周面が前記断面において平坦な形状を有するものに限定されることはない。例えば、一対の後方ローラ153、153は、外周面が半径方向外側に膨らむ形状を有するものでもよい。
【0060】
一対の後方ローラ153、153は、左右突出部158b、158bの後方ローラ収容穴159、159に位置した状態で左右突出部158b、158bに回転自在に取り付けられている。この状態で、一対の後方ローラ153、153は、左右突出部158b、158bの下面から下方に突出している。
【0061】
摩擦低減ローラ152は、図5、6に示すように、ゴム製のローラ本体152aと、ローラ本体152aの外面上に押し潰された状態で点在する樹脂部152bと、樹脂部152bに繋がり、ローラ本体152a内に位置する繊維状の内側樹脂部152cと、を備える。摩擦低減ローラ152は、ローラ本体152aに樹脂繊維がちりばめられて一部が外面に毛羽立ったローラ状の部材を用いて作製したものである。このローラ状の部材は、不織布にゴムを含浸することによって形成される。そして、ローラ本体152aの外面から突出した樹脂繊維は押し潰されている。このため、樹脂部152bは、ローラ本体152aの表面に一様に点在している。
【0062】
ローラ本体152aを形成するゴムは、樹脂部152bの融点よりも低い融点を有する。例えば、ローラ本体152aを形成するゴムとしては、NBR(合成ゴム)を用いることができる。ローラ本体152aの外周面は、回転軸に平行な平面で切断した断面において直線状に形成されている。すなわち、ローラ本体152aの外周面は前記断面において平坦な形状を有している(図4参照)。また、ローラ本体152aの角(ローラ本体152aの外周面の両側縁)は、直角をなしている。尚、ローラ本体152aは、外周面が前記断面において平坦な形状を有するものや、角が直角をなしているものに限定されることはない。例えば、ローラ本体152aは、外周面が半径方向外側に膨らむ形状を有するものでもよく、また、床面の傷つきを抑制するため、ローラ本体152aの角が丸みを帯びているものであってもよい。図4では、樹脂部152bの図示は省略されている。
【0063】
樹脂部152bは、ポリエステルによって形成されている。尚、樹脂部152bの材質は、ローラ本体152aを形成するゴムよりも摩擦係数の低いものであればよく、例えば、ポリエチレンであってもよい。
【0064】
摩擦低減ローラ152は、後下壁126bに形成された摩擦低減ローラ配置孔157に配置されている。摩擦低減ローラ配置孔157は、左右ローラ配置孔156、156よりも流路116の開口115に近い位置に配置されている(図3、4参照)。摩擦低減ローラ152は、ゴム製のローラ本体152aと、ローラ本体の外周面上に押し潰された状態で点在する樹脂部と、を備えるローラの1例である。
【0065】
摩擦低減ローラ152は、図4、7に示すように、摩擦低減ローラ配置孔157に配置された可動支持部169に取り付けられている。可動支持部169は、摩擦低減ローラ152を摩擦低減ローラ配置孔157内において上下に可動させるように構成されている。具体的には、可動支持部169は、図7、8(a)(b)に示すように、軸部169aと、軸部169aに一体に形成された保持部169bと、軸部169aを一方向に回転させる付勢力を軸部169aに付与する付勢部材169cと、を有する。
【0066】
軸部169aは、後下壁126bの上面側に配置されている。軸部169aは、左右方向に延び、その左右方向の両端部が後下壁126bの上面に設けられた軸受170、170によって回転可能に支持されている。
【0067】
保持部169bは、軸部169aの摩擦低減ローラ配置孔157と対向する側に一体に形成された左右に延びる基部169baと、基部169baの左右方向の両側から軸部169aに直交する方向に延びる一対のアーム部169bb、169bbと、を有し、全体で略凹部状に形成されている。
【0068】
一対のアーム部169bb、169bbの内側には、摩擦低減ローラ152が一対のアーム部169bb、169bbの凹部内から僅かに突出した状態で配置されている(図7図8(c)参照)。この状態で、一対のアーム部169bb、169bbには摩擦低減ローラ152が回転自在に取り付けられている。この摩擦低減ローラ152が摩擦低減ローラ配置孔157内に位置した状態であって、左右ローラ151、151におけるハウジング120の下面から下方に突出する突出量と同じ突出量となる上位置にある状態において(図8(b)参照)、保持部169bがハウジング120に当接することにより、摩擦低減ローラ152の突出量が左右ローラ151、151の突出量よりも小さくならないように軸部169aの回転が規制されている。
【0069】
付勢部材169cは、ねじりばねによって形成されている。付勢部材169cは、軸部169aの一端部に配置されている。付勢部材169cの両端部は、図8(a)(d)に示すように、後下壁126bの上面に形成されたばね支持部171、171に係合している。付勢部材169cは、摩擦低減ローラ152が上位置にいる状態から摩擦低減ローラ152を下方に回動させる向きに軸部169aを回転させるように付勢している。これにより、可動支持部169は、付勢部材169cの付勢力に抗する力が解除されると、摩擦低減ローラ152が上位置にいる状態(図8(b)参照)から付勢部材169cの付勢力によってハウジング120の下面から大きく下方に突出する下位置(図8(c)参照)まで摩擦低減ローラ152を回動させるようにしている。付勢部材169cの付勢力に抗する力の解除は、例えば、摩擦低減ローラ152が床面から離れたときになされる。
【0070】
尚、付勢部材169cは、摩擦低減ローラ152が上位置にいる状態から摩擦低減ローラ152を下方に回動させる向きに軸部169aを回転させるように付勢することができれば、ねじりばねに限定されることはない。
【0071】
可動支持部169には、摩擦低減ローラ152が上位置にいる状態で掻取ローラ141、142を回転させる一方で、摩擦低減ローラ152が上位置から下位置に向かって移動することによって掻取ローラ141、142を停止させるように構成された回転制御部172が電気的に接続されている。
【0072】
回転制御部172は、図3に示すように、一方のモータ165の下方で下壁126の上面で支持された制御基板を有する。回転制御部172は、一方のモータ165と接続されるとともに、他方のモータ167と接続部173、173を介して接続されている。回転制御部172は、摩擦低減ローラ152の状態を検知する検知部(図示せず)と、検知部によって検知された検知信号に基づいてモータの回転を制御する指令部(図示せず)と、を有する。
【0073】
検知部は、摩擦低減ローラ152が上位置にいる状態と、摩擦低減ローラ152が下位置にいる状態と、を検知できるように構成されている。検知部は、摩擦低減ローラ152が上位置にいることを検知すると、上位置信号を指令部に送信する。検知部は、摩擦低減ローラ152が下位置にいることを検知すると、下位置信号を指令部に送信する。
【0074】
検知部は、モータ165、167の回転が停止した状態において操作部104によってモータ165、167を作動させる指令信号が生成されたときに、上位置信号を受信すると、モータ165、167の回転を許容する。検知部は、モータ165、167の回転が停止した状態において操作部104によってモータ165、167を作動させる指令信号が生成されたときに、下位置信号を受信すると、モータ165、167の回転を許容しない。
【0075】
検知部は、モータ165、167が回転した状態において上位置信号を受信すると、モータ165、167の回転を維持する。検知部は、モータ165、167が回転した状態において下位置信号を受信すると、モータ165、167の回転を停止する。
【0076】
指令部は、上位置信号を検知部から受信すると、両モータ165、167を回転させる制御を行い、掻取ローラ141、142を回転させる。指令部は、下位置信号を検知部から受信すると、両モータ165、167の回転を停止させる制御を行い、掻取ローラ141、142を停止させる。
【0077】
次に、上記のように構成された吸込具100の摩擦低減ローラ152の製造方法について図9を参照しながら説明する。尚、図9では、樹脂部152bの図示は省略している。
【0078】
まず、ゴム製のローラ本体152aとローラ本体152aの外周面、側面および角から突出した樹脂繊維とを有するローラ状の部材10を作製する。このローラ状の部材10は、例えば、環状に形成されたポリエステル等の樹脂製の不織布に、NBR(合成ゴム)等の樹脂を含浸させることによって作製することができ、不織布の樹脂繊維がローラ本体152aの外面に毛羽立ったものである。
【0079】
次いで、樹脂繊維の融点よりも高温に加熱した鉄板174などの高温の部材を準備する。鉄板174には、図9(a)に示すように、ローラ本体152aの外周面および側面に沿う溝175が形成されている。この溝175の角175aにはRが付けられている。尚、溝175の角175aにはRが付けられていなくてもよい。この溝175にローラ本体152aの外周面および側面を接触させた状態で、ローラ状の部材10に上から荷重をかけることにより、ローラ状の部材10を溝175に押し付けながら鉄板174上で転動させる(図9a、図9b参照)。これにより、ローラ本体152aの外周面に露出した樹脂繊維だけでなくローラ本体152aの側面に露出した樹脂繊維が鉄板174の熱によって溶融する。同時に、ローラ本体152aの角が溝175の角175aに押し付けられることにより、ローラ本体152aの角に露出した樹脂繊維も鉄板174の熱が加わることによって溶融する。さらに、樹脂繊維の融点よりも融点が低いローラ本体152aの表面も溶融する。その後、樹脂繊維が溶融した樹脂部152bを固化させる。これにより、ローラ本体152aの外周面の全体、側面の全体およびローラ本体152aの角の全体に押し潰された状態の樹脂部152bが形成された摩擦低減ローラ152が得られる。
【0080】
上記摩擦低減ローラ152は、ゴム製のローラ本体152aの外周面上に押し潰された状態で点在する樹脂部152bを備えるので、ゴムのみから構成されている場合と比べて低い摩擦係数を有する。この結果、摩擦低減ローラ152の横滑りが許容され、吸込具100の操作が容易である。しかも、ローラ本体152aの外周面上に押し潰された樹脂部152bが点在しているので、より摩擦係数が低減され、塵埃が摩擦低減ローラ152の外周面に捕捉されにくい。すなわち、樹脂繊維がローラ本体152aの外周面から突出して毛羽立った状態では塵埃が捕捉されてしまうが、樹脂部152bは、ローラ本体152aの外周面上に押し潰された状態になっているため、塵埃が捕捉されにくい。したがって、塵埃が摩擦低減ローラ152に巻き付くことに起因する摩擦低減ローラ152の転動不良が抑制される。
【0081】
上記吸込具100では、ハウジング120の下面に位置する摩擦低減ローラ152のローラ本体152aの外周面上には、押し潰された状態の樹脂部152bが点在しているので、摩擦低減ローラ152は、ゴムのみから構成されている場合と比べて低い摩擦係数を有する。このため、摩擦低減ローラ152は、摩擦低減ローラ152の転動方向以外の方向への吸込具100の移動に対して過度に大きな抵抗を与えない。
【0082】
上記吸込具100では、ハウジング120の下面と床面との間にある塵埃は、清掃機101からの吸引力を受けて、吸込空間111から流路116の開口115に向けて移動する。したがって、流路116の開口115に近い摩擦低減ローラ152ほど、塵埃に接触する頻度が高くなる。流路116の開口115に比較的近い位置に配置された摩擦低減ローラ152では、ローラ本体152aの外周面上に押し潰された樹脂部152bが点在することによって外周面の摩擦係数が低減された状態になっているので、当該摩擦低減ローラ152と塵埃との接触頻度が高くとも、塵埃が摩擦低減ローラ152に捕捉されてしまうことが抑制される。
【0083】
上記吸込具100では、吸込空間111の左右両側においてハウジング120の下面に配置された一対の左右ローラ151、151によってハウジング120が支えられるので、幅方向における吸込具100の傾斜が抑制される。また、回転制御部172は、摩擦低減ローラ152が下方に移動することによって掻取ローラ141、142を停止させるので、使用者がハウジング120と床面との間の空間に指を差し込んだ場合に、回転した状態の掻取ローラ141、142が指に接触することが防止される。可動支持部169に取り付けられた摩擦低減ローラ152の外周面は、押し潰された状態の樹脂部152bが点在しているので、この摩擦低減ローラ152には塵埃が付着しにくい。したがって、摩擦低減ローラ152に付着した塵埃が可動支持部169の動作を阻害するような事態が生じにくい。
【0084】
上記吸込具100では、後方ローラ153、153は、ハウジング120から後方に突出した後方ブラケット158に取り付けられているので、左右ローラ151、151と後方ローラ153、153との間の前後方向の距離が長い。このため、吸込具100は、前後方向において離れた位置で床面に支持されるので、吸込具100の姿勢の安定化が図られる。
【0085】
上記摩擦低減ローラ152の製造方法では、ゴム製のローラ本体152aとローラ本体152aの外周面から突出した樹脂繊維とを有するローラ状の部材10を、樹脂繊維の融点よりも高温の部材上で転動させるので、ローラ本体152aの外周面上に潰れた状態の樹脂部152bを容易に形成することができる。
【0086】
上記摩擦低減ローラ152の製造方法では、ローラ本体152aの外周面に沿う溝175にローラ本体152aの外周面が接触した状態で樹脂繊維の融点よりも高温の部材上でローラ状の部材10を転動させるので、例えば、ローラ本体152aの外周面が半径方向外側に膨らむような形状を有する場合であっても、ローラ本体152aの外周面の全体に押し潰された状態の樹脂部152bを形成することができる。このため、摩擦低減ローラ152の外周面の摩擦係数をより確実に低減でき、摩擦低減ローラ152への塵埃の絡みつきをより確実に抑制することができる。
【0087】
上記摩擦低減ローラ152の製造方法では、ローラ本体152aの外周面に露出した樹脂繊維だけでなくローラ本体152aの側面に露出した樹脂繊維も溶融させることができる。このため、ローラ本体152aの外周面だけでなく、ローラ本体152aの側面にも押し潰された状態の樹脂部152bを形成することができるので、摩擦低減ローラ152の外周面の摩擦係数だけでなく、摩擦低減ローラ152の側面の摩擦係数も低減でき、摩擦低減ローラ152への塵埃の絡みつきをより抑制することができる。
【0088】
上記摩擦低減ローラ152の製造方法では、角にRが付けられた溝175にローラ状の部材10を押し付けながら高温の鉄板174上で転動させる。このため、ローラ状の部材10を高温の鉄板174上で転動させる際に、ローラ本体152aの角が溝175の角175aに強く押し付けられるので、ローラ本体152aの角に露出した樹脂繊維にも高温の鉄板174の熱が伝わりやすい。この結果、ローラ本体152aの角に露出した樹脂繊維が溶融しやすくなり、ローラ本体152aの角にも押し潰された状態の樹脂部152bを容易に形成することができる。
【0089】
上記摩擦低減ローラ152の製造方法では、樹脂繊維だけでなくローラ本体152aの表面も溶融されるので、ローラ本体152aの表面に現れるゴムの表面の粗さが低減される。
【0090】
以上に説明した摩擦低減ローラ152、吸込具100、摩擦低減ローラ152の製造方法は、本発明の一実施形態であり、その具体的構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、上記実施形態の変形例について説明する。
【0091】
上記実施形態の吸込具100では、左右ローラ151と後方ローラ153は、ゴムによって形成されたが、左右ローラ151及び後方ローラ153に代えて、摩擦低減ローラ152が使用されてもよい。要は、複数のローラ151~153のうち少なくともいずれかにおいて摩擦低減ローラ152が使用されればよい。
【0092】
上記実施形態の吸込具100では、可動支持部169は、付勢部材169cの付勢力によって摩擦低減ローラ152を上位置から下位置まで移動させたが、摩擦低減ローラ152が床面から離れたときに電動によって摩擦低減ローラ152を上位置から下位置まで移動させるように構成されてもよい。また、可動支持部169は省略されてもよい。この場合は、摩擦低減ローラ152は、摩擦低減ローラ152に配置された状態で後下壁126bに回転自在に取り付けられる。
【0093】
上記実施形態の摩擦低減ローラ152の製造方法では、ローラ本体152aの外周面および側面に沿う溝175が形成された鉄板174を用いて摩擦低減ローラ152を製造したが、ローラ本体152aの外周面にのみ沿う溝175が形成された鉄板174を用いて摩擦低減ローラ152を製造してもよい。この場合は、ローラ本体152aの外周面にのみ押し潰された状態の樹脂部152bが形成される。
【0094】
また、溝175は鉄板174に形成されなくてもよい。この場合は、高温に加熱した鉄板174上にゴム製のローラ本体152aとローラ本体152aの外周面から突出した樹脂繊維とを有するローラ状の部材10を転動させる。この場合であっても、ローラ本体152aの外周面が回転軸に平行な断面において平坦な形状を有するので、ローラ本体152aの外周面の全体に押し潰された状態の樹脂部152bを形成することができる。
【0095】
上記摩擦低減ローラ152の製造方法では、ローラ本体152aを形成するゴムとしては、樹脂部152bの融点よりも低い融点を有するものが用いられたが、樹脂部152bの融点よりも高い融点を有するものが用いられてもよい。この場合は、ローラ本体152aの表面は、ローラ本体152aの外周面から突出した樹脂繊維とともに溶融されなくてもよい。
【0096】
上記摩擦低減ローラ152の製造方法では、ゴム製のローラ本体152aとローラ本体152aの外周面から突出した樹脂繊維とを有するローラ状の部材10を作製し、このローラ状の部材10を高温の部材上に転動させることにより、ローラ本体152aの外面に樹脂部152bを形成したが、ゴム製のローラ本体152aの外面に溶融した樹脂を添加し、固化させることによってローラ本体152aの外面に樹脂部152bを形成してもよい。
【符号の説明】
【0097】
100 吸込具
101 清掃機
115 開口
116 流路
120 ハウジング
130 接続口
141 掻取ローラ
142 掻取ローラ
151 他のローラ
152 ローラ
152a ローラ本体
152b 樹脂部
153 後方ローラ
158 後方ブラケット
169 可動支持部
172 回転制御部
174 部材
175 溝
175a 角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9