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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】隊列走行システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/693 20240101AFI20240607BHJP
   B60W 30/17 20200101ALI20240607BHJP
   G05D 1/229 20240101ALI20240607BHJP
   G05D 1/242 20240101ALI20240607BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240607BHJP
   G05D 1/633 20240101ALI20240607BHJP
   G05D 1/639 20240101ALI20240607BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240607BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240607BHJP
   G05D 105/22 20240101ALN20240607BHJP
   G05D 107/50 20240101ALN20240607BHJP
   G05D 111/10 20240101ALN20240607BHJP
   G05D 111/30 20240101ALN20240607BHJP
【FI】
G05D1/693
B60W30/17
G05D1/229
G05D1/242
G05D1/43
G05D1/633
G05D1/639
G08G1/00 X
G08G1/16 E
G05D105:22
G05D107:50
G05D111:10
G05D111:30
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020132621
(22)【出願日】2020-08-04
(65)【公開番号】P2022029329
(43)【公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】グエン ジュイヒン
(72)【発明者】
【氏名】笹井 裕之
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-330633(JP,A)
【文献】国際公開第2019/054208(WO,A1)
【文献】特開2020-32947(JP,A)
【文献】特開2009-3554(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0110720(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00
G08G 1/16
G08G 1/00
B60W 30/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動体を隊列走行させる隊列走行システムであって、
超信地旋回が可能な複数の移動体と、
複数の移動体の走行を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記複数の移動体の隊列を停止させるときに、前記複数の移動体それぞれが180度の超信地旋回を可能な所定の移動体間距離をあけた状態で、前記移動体それぞれを停止させ
停止場所が前記移動体のUターンが不可能な場所である場合に、前記制御装置は、前記停止場所に前記複数の移動体の隊列を停止させるときに、前記複数の移動体それぞれが前記所定の移動体間距離をあけた状態で、前記移動体それぞれを停止させ、
前記制御装置は、前記複数の移動体の隊列が前記停止場所に接近すると、前記複数の移動体の移動体間距離を前記所定の移動体間距離に比べて拡大する、隊列走行システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記複数の移動体それぞれに搭載され、
隊列先頭の移動体が前記停止場所に接近すると、前記隊列先頭の移動体の制御装置が移動体間距離変更信号を出力し、
前記移動体間距離変更信号に基づいて、前記隊列先頭の移動体以外の移動体は、前記移動体間距離を変更する、請求項に記載の隊列走行システム。
【請求項3】
前記移動体それぞれが、前方の移動体を追従するように自律走行を行う、請求項1または2に記載の隊列走行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の移動体を隊列走行させる隊列走行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体の隊列走行の技術として、移動体の前側に設けられた測域センサに前方の移動体を検出し、その前方の移動体を追従しながら走行する技術が知られている。例えば、特許文献1には、例えば袋小路などのUターンができない場所に入った際に、それまでの経路に沿って隊列を後退させることにより、その隊列をその場所から移動させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-43498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術の場合、袋小路などのUターンができない場所から移動するために、隊列の関係を維持した状態で複数の移動体それぞれが後退する。そのとき、複数の移動体の後方を確認する必要がある。また、移動体に利用者が搭乗する場合、移動体の後退によって利用者が不安に感じる可能性がある。
【0005】
そこで、本開示は、袋小路などのUターンができない場所から、隊列の関係を維持した状態で複数の移動体それぞれを、後退させることなく移動させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
複数の移動体を隊列走行させる隊列走行システムであって、
超信地旋回が可能な複数の移動体と、
複数の移動体の走行を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記複数の移動体の隊列を停止させるときに、前記複数の移動体それぞれが180度の超信地旋回を可能な所定の移動体間距離をあけた状態で、前記移動体それぞれを停止させる、隊列走行システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、袋小路などのUターンができない場所から、隊列の関係を維持した状態で複数の移動体それぞれを、後退させることなく移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本開示の一実施の形態に係る隊列走行システムにおける移動体の前方斜視図
図1B】移動体の後方斜視図
図2】移動体の上方図
図3】移動体の制御系のブロック図
図4】隊列走行中の複数の移動体における移動体間距離を示す図
図5】移動体間距離と隊列先頭の移動体の走行速度との関係を示す図
図6A】エアーターミナルにおける複数の移動体の隊列走行の一例を説明するための図
図6B図6Aに続く、複数の移動体の隊列走行を説明するための図
図6C図6Bに続く、複数の移動体の隊列走行を説明するための図
図6D図6Cに続く、複数の移動体の隊列走行を説明するための図
図6E図6Dに続く、複数の移動体の隊列走行を説明するための図
図6F図6Eに続く、複数の移動体の隊列走行を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0010】
なお、発明者(ら)は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0011】
以下に、本開示の実施の形態に係る隊列走行システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1Aおよび図1Bは、本開示の一実施の形態に係る隊列走行システムにおける移動体を概略的に示す斜視図である。図1Aは移動体の前方斜視図であって、図1Bは移動体の後方斜視図である。また、図2は、移動体の概略的な上方図である。なお、図面において、X軸方向は移動体の前後方向を示し、Y軸方向は幅方向を示し、Z軸は高さ方向を示している。
【0013】
図1Aおよび図1Bに示すように、隊列走行システムに含まれる複数の移動体10それぞれは、本体12と、本体12の幅方向(Y軸方向)の両側に設けられた一対の駆動輪14と、駆動輪14の前方に設けられた準輪16と、本体12の前側に設けられた測域センサ18と、本体12の後側に設けられた反射部材20とを有する。また、本実施の形態の場合、移動体10は、利用者が搭乗可能であって、その利用者が移動体10を操作するためのジョイスティックなどの操作部22を有する。
【0014】
図2に示すように、一対の駆動輪14は、それぞれの回転中心線Crが同一直線上に位置するように、移動体10の本体12に設けられている。一対の駆動輪14それぞれが正転することにより、移動体10は前方向FRに移動する(前進する)。また、一対の駆動輪14それぞれが逆転することにより、移動体10は後方向BRに移動する(後退する)。そして、一方の駆動輪14が正転して他方の駆動輪14が逆転することにより、移動体10は超信地旋回する。その旋回中心線Cpは、駆動輪14の回転中心線Cr上に位置する。
【0015】
超信地旋回に関して、その旋回中心線Cpは、移動体10の幅方向(Y軸方向)の中心に位置するとともに、移動体10の前端から距離L1離れた位置に位置する。この距離L1は、移動体10の全長Lt(前端から後端までの距離)の半分に比べて大きい。そのため、移動体10は、超信地旋回を実行するとき、旋回中心線Cpを中心とする円形状の旋回スペースSpを必要とする。すなわち、旋回スペースSp内に障害物が存在する場合、移動体10は超信地旋回を実行することができない。なお、その旋回スペースPsの半径(最小旋回半径)Rpは、移動体10の形状によって決まる。
【0016】
図1Aに示すように、準輪16は、高さ方向(Z軸方向)に延在する揺動中心線Csを中心として揺動可能に、且つ、自由回転可能に、移動体10の本体12に設けられている。
【0017】
図1Aに示すように、測域センサ18は、レーザ測域センサであって、移動体10の本体12の前側に設けられている。測域センサ18は、移動体10の周囲環境の情報を取得するためのものであって、本実施の形態においては特に他の移動体との距離の情報を取得するために使用される。
【0018】
図1Bに示すように、反射部材20は、測域センサ18によって検出される対象であって、測域センサ18から出力されたレーザ光を反射する。反射部材20は、移動体10の本体12の後側に設けられている。
【0019】
図1Aに示すように、操作部22は、移動体10の本体12に設けられ、移動体10に搭乗する利用者の移動体10の動作に関する指示を受け取るためのデバイスである。
【0020】
図3は、移動体の制御系のブロック図である。
【0021】
図3に示すように、移動体10は、制御装置30を有する。制御装置30は、判別部32と、経路生成部34と、知能部36と、駆動輪制御部38と、通信部40とを含んでいる。
【0022】
移動体10の制御装置30は、例えば、CPUと、CPUを動作させるプログラムを記憶する記憶デバイスとから構成されている。プログラムにしたがってCPUが動作することにより、CPUは、判別部32、経路生成部34、知能部36、駆動輪制御部38、および通信部40として機能する。なお、判別部32、経路生成部34、知能部36、駆動輪制御部38、および通信部40それぞれに対して1つずつCPUなどのプロセッサが用意されてもよい。この場合、移動体10の外部のサーバーにより、移動体10それぞれの経路情報を集約管理してもよい。
【0023】
制御装置30の判別部32は、測域センサ18の検出結果に基づいて、当該測域センサ18が搭載されている移動体10とは別の移動体10における反射部材20を判別する。具体的には、判別部32は、測域センサ18の検出結果に基づいて、移動体10の周囲の反射部材20の存在を判別し、存在する場合にはその反射部材20までの距離とその反射部材20が存在する方向についての情報を取得する。これにより、移動体10の周囲に別の移動体10が存在するか否かを判別することができるとともに、存在する場合には他の移動体10までの距離(移動体間距離)とその他の移動体10が存在する方向についての情報を取得することができる。
【0024】
制御装置30の経路生成部34は、移動体10が移動するべき経路を生成する。例えば、操作部22を介して利用者によって入力された目的の停止場所の情報と移動体10の現在地との情報とに基づいて、経路生成部34は、現在地から目的の停止場所までの経路を生成する。
【0025】
制御装置30の知能部36は、測域センサ18の検出結果に基づいて、経路生成部34によって生成された経路を補正する。また、知能部36は、判別部32によって判別された移動体10までの距離(移動体間距離)を、測域センサ18の検出結果に基づいて算出する。
【0026】
具体的には、知能部36は、測域センサ18の検出結果に基づいて経路生成部34によって生成された経路上の障害物の存在を判断する。障害物が存在する場合には、その障害物を回避できるようにその経路を補正する。また、知能部36は、複数の移動体10の隊列走行中、測域センサ18の検出結果に基づいて、追従対象であって前方を移動する他の移動体10までの距離(移動体間距離)を算出する。なお、隊列走行についての詳細については後述する。
【0027】
制御装置30の駆動輪制御部38は、一対の駆動輪14に連結されたモータ42を制御することにより、一対の駆動輪14の回転を制御する。例えば、駆動輪制御部38は、操作部22に対する利用者(搭乗者)の操作入力に基づいて、駆動輪14の回転を制御する。また、移動体10の走行速度を調節するために、駆動輪制御部38は駆動輪14の回転を制御する。さらに、隊列走行中、移動体間距離を制御するために、駆動輪制御部38は駆動輪14の回転を制御する。なお、隊列走行についての詳細については後述する。
【0028】
制御装置30の通信部40は、通信デバイス44を介して、他の移動体10と通信を行う。また、利用者が携帯する通信端末(図示せず)と、通信部40は通信する。
【0029】
これまでは、移動体10の構成を説明してきた。ここからは、複数の移動体10の隊列走行について説明する。隊列走行中、隊列先頭の移動体10とその他の移動体10とで、その走行動作が異なる。
【0030】
まず、隊列の先頭である移動体10は、マニュアル走行または自律走行を実行する。
【0031】
マニュアル走行の場合、隊列先頭の移動体10は、利用者(搭乗者)の操作部22に対する操作入力基づいて走行する。代わりとして、先頭の移動体10は、その移動体10に搭乗していない利用者の通信端末に対する操作入力に基づいて走行してもよい。
【0032】
自律走行の場合、隊列先頭の移動体10は、自律走行に必要な情報として、目的の停止場所、その停止場所の到着時間などの情報を利用者から取得する。これら情報は、例えば操作部22に操作パネル(図示せず)が含まれる場合には、その操作パネルを介して取得される。代わりとして、これらの情報を利用者の通信端末を介して取得してもよい。隊列先頭の移動体10は、すなわちその制御装置30の経路生成部34は、これらの情報に基づいて経路を生成する。そして、その生成された経路にしたがって先頭の移動体10は自律走行を実行する。
【0033】
隊列において、先頭の移動体10以外の移動体10は、自律走行を実行する。具体的には、前方を走行する移動体10を追従する追従走行が実行される。追従走行を実行する移動体10において、その判別部32が、前方の移動体10を測域センサ18の検出結果に基づいて判別し、その前方の移動体10までの距離および方向の情報を取得する。その取得した距離および方向に基づいて、経路生成部34が、前方を走行する移動体10の経路に沿って走行するような経路を生成する。これにより、追従走行を実行する移動体10は、前方を走行する移動体10を追従することができ、その結果、複数の移動体10が隊列走行を実行することができる。
【0034】
ここからは、複数の移動体の隊列における移動体間距離の制御について説明する。
【0035】
図4は、隊列走行中の複数の移動体における移動体間距離を示す図である。
【0036】
図4に示すように、隊列において先頭側に位置する移動体10(図中左側の移動体)を追従する移動体10(図中右側の移動体)は、移動体間距離Dfをあけて追従走行する。移動体間距離Dfは、先頭側の移動体10(左側)の後端からそれに追従する移動体10(右側)の先端までの距離である。先頭の移動体10を除く他の移動体10それぞれは、前方の移動体10に対して移動体間距離Dfをあけて走行する。そのために、測域センサ18は、移動体間距離Df離れた移動体10の反射部材20を検出可能な検出範囲を備える。
【0037】
この移動体間距離Dfは、隊列先頭の移動体の走行速度によって調整される。
【0038】
図5は、移動体間距離と隊列先頭の移動体の走行速度との関係を示している。
【0039】
図5に示すように、隊列先頭の移動体10の走行速度Vが増加すると、その隊列先頭の移動体10を除く他の移動体10の移動体間距離Dfが増加する。これにより、先頭の移動体10を除く他の移動体10は、前方の移動体10に対して制動距離以上の移動体間距離Dfを確保した状態で追従走行を実行する。すなわち、隊列先頭の移動体10が走行を開始すると、その隊列先頭の移動体10を除く他の移動体10は、前方の移動体10に対する移動体間距離DfがDf1になると走行を開始する。
【0040】
また、隊列先頭の移動体10の走行速度Vが減少すると、その隊列先頭の移動体10を除く他の移動体10の移動体間距離Dfが減少する。最終的に隊列先頭の移動体10の走行速度Vがゼロになると(すなわち停止すると)、隊列先頭の移動体10を除く他の移動体10は、前方の移動体10に対して移動体間距離Df1をあけた状態で停止する。停止中であるときの隊列長さは短い方が好ましいため、移動体間距離Df1は小さい方が好ましい。
【0041】
また、本実施の形態の場合、移動体間距離は、隊列の停止場所に基づいても制御される。このことを、複数の移動体がエアーターミナルを隊列走行する例を挙げて説明する。
【0042】
図6A~6Fは、エアーターミナルにおける複数の移動体の隊列走行の一例を説明するための図である。なお、図6A図6Fそれぞれには、4台の移動体が示されている。その4台の移動体を区別するために、4台の移動体には符号10A~10Dが付されている。
【0043】
図6Aに示すように、エアーターミナルには、複数の移動体10A~10Dが収納される収納場所T0と、複数の搭乗口T1~T3が設けられている。ここでは、複数の移動体10A~10Dの隊列が、収納場所T0から搭乗口T1(停止場所)に向かって移動し、その搭乗口T1で停止し、そして搭乗口T1から再び収納場所T0に戻る例を説明する。
【0044】
図6Aに示すように、収納場所T0には、複数の移動体10A~10Dが一列に並んだ状態で停止している。具体的には、移動体10Aの後方に移動体10Bが停止し、移動体10Bの後方に移動体10Cが停止し、移動体10Cの後方に移動体10Dが停止している。
【0045】
まず、利用者(例えば空港スタッフ)が、複数の移動体10A~10Dの隊列を編成する。例えば、複数の移動体10A~10Dのいずれか1台の操作部22を介して、空港スタッフが、複数の移動体10A~10Dを1つの隊列としてグルーピングする。代わりとして、空港スタッフが携帯する通信端末を介して、複数の移動体10A~10Dがグルーピングされてもよい。このとき、空港スタッフによって隊列の先頭である移動体(ここでは移動体10A)が決定される。例えば、空港スタッフがグルーピング時に操作した操作部22を備える移動体が隊列の先頭として決定される。なお、グルーピング時に、先頭の移動体を決定するだけでなく、複数の移動体の隊列順も決定されてもよい。例えば、先頭の移動体を決定した後に残りの移動体をその先頭の移動体に対応付けする場合、その対応付けの順番を隊列順としてもよい。
【0046】
複数の移動体10A~10Dの隊列編成が完了した後、図6Bに示すように、複数の移動体10A~10Dは、目的の停止場所である搭乗口T1に向かって走行する。
【0047】
隊列先頭の移動体10Aがマニュアル走行で走行する場合、空港スタッフが先頭の移動体10Aに搭乗し、操作部22を介して移動体10Aを操作する。このとき、収納場所T0から搭乗口T1に利用者(旅客者)を搬送する場合、残りの移動体10B~10Dそれぞれに旅客者が搭乗する。搭乗口T1にいる旅客者を迎えに行く場合には、残りの移動体10B~10Dは空の状態であってもよい。
【0048】
代わりとして、空港スタッフは、先頭の移動体10Aに搭乗せずに、携帯する通信端末を介して先頭の移動体10Aを操作してもよい。この場合、空港スタッフは移動体の隊列とともに徒歩で移動する。そのとき、先頭の移動体10Aに旅客者が搭乗してもよい。
【0049】
先頭の移動体10Aが自律走行する場合、空港スタッフは、先頭の移動体10Aの操作部22または通信端末を介して、自律走行に必要な情報を入力する。ここでは、目的の停止場所の情報として搭乗口T1の情報が入力される。入力情報に基づいて、先頭の移動体10Aの制御装置30の経路生成部34が、目的の停止場所に向かう経路を生成する。自律走行の場合、空港スタッフは隊列に帯同しなくてもよい。
【0050】
先頭の移動体10Aがマニュアル走行または自律走行による目的の停止場所に向かう走行を開始すると、その後方の移動体10Bが移動体10Aの追従を開始し、その後方の移動体10Cが移動体10Bの追従を開始し、そして、その後方の移動体10Dが移動体10Cの追従を開始する。これにより、複数の移動体10A~10Dは、搭乗口T1に向かって隊列走行を行う。
【0051】
図6Cに示すように、複数の移動体10A~10Dの隊列が搭乗口T1に接近すると、移動体10B~10Dそれぞれの移動体間距離Dfが拡大する。
【0052】
具体的には、複数の移動体10A~10Dの隊列が搭乗口T1に接近すると、図5に示すように、隊列の走行モードが、第1の走行モード(実線)から第2の走行モード(一点鎖線)に切り替わる。
【0053】
第2の走行モードは、停止場所に隊列が到着したときに、複数の移動体10A~10Dそれぞれが180度の超信地旋回を可能な所定の移動体間距離Df2をあけた状態で停止できるように走行するモードである。そのため、図5に示すように、第2の走行モード時の走行中の移動体間距離Dfは、制動距離を考慮してDf2に比べて大きく、第1の走行モード時の走行中の移動体間距離Dfに比べて大きい。
【0054】
また、第2の走行モードにおいて走行速度Vがゼロのとき(すなわち停止時)の移動体間距離Df2は、第1の走行モードにおいて走行速度Vがゼロのときの移動体間距離Df1に比べて大きい。これは、目的の停止場所である搭乗口T1が袋小路であって、複数の移動体のUターンが不可能であり、そのために再移動するときに180度の超信地旋回が必要な場所だからである。すなわち、第2の走行モードは、停止場所で180度の超信地旋回する可能性がある場合の走行モードであって、第1の走行モードは、停止場所で180度の超信地旋回を実行する可能性がない場合の走行モードである。
【0055】
別の観点から言えば、本実施の形態の場合、停止場所で180度の超信地旋回を実行する必要がない場合や停止場所に到着する前に一時停止する可能性を考慮し、第1の走行モードが存在する。第1の走行モードにおいて走行速度Vがゼロのとき(すなわち停止時)の移動体間距離Df1は、180度の超信地旋回に必要な移動体間距離Df2に比べて小さい。これにより、停止中の隊列長さが不必要に長くなることを抑制し、停止中の隊列の占有スペースを小さくしている。
【0056】
隊列先頭の移動体10Aがマニュアル走行で走行している場合、搭乗口T1への接近は、空港スタッフから移動体10Aに通知される。すなわち、第2の走行モードへの切り替えは、空港スタッフによって実行される。この第2の走行モードへの切り替えは、隊列先頭の移動体10Aの操作部22を介して、または携帯する通信端末を介して実行される。
【0057】
隊列先頭の移動体10Aが自律走行で走行している場合、停止場所の情報として、当該停止場所が移動体のUターンが不可能な場所である旨の情報が空港スタッフから移動体10Aの制御装置30に予め与えられている。その情報に基づいて、隊列先頭の移動体10Aは、停止場所に接近すると(停止場所で移動体間距離Df2をあけた状態で停止するために必要な距離まで接近すると)、第2の走行モードに切り替わる。
【0058】
隊列先頭の移動体10Aにおいて第2の走行モードへの切り替えが実行されると、先頭の移動体10Aの制御装置30が、通信デバイス44を介して、他の移動体10B~10Dに対して移動体間距離変更信号を出力する。この移動体間距離変更信号を受信した他の移動体10B~10Dは、図5に示すように、第2の走行モードに切り替わり、移動体間距離Dfを拡大する。その結果、搭乗口T1に到達したとき、図6Dに示すように、複数の移動体10A~10Dは、超信地旋回を可能な移動体間距離Df2をあけた状態、すなわち旋回スペースSpを確保した状態で停止することができる。
【0059】
なお、超信地旋回に必要な移動体間距離Df2は、図2を用いて説明すると、下記の数式1で表すことができる。
【数1】
【0060】
搭乗口T1で複数の移動体10A~10Dが停止すると、旅客者が搭乗して場合には、その旅客者が移動体から降りる。
【0061】
搭乗口T1で空の状態で停止中の複数の移動体10A~10Dそれぞれは、図6Eに示すように、180度の超信地旋回を実行する。これにより、隊列が転回する。
【0062】
例えば、空港スタッフが、隊列先頭の移動体10Aに対して、隊列を転回させる指示入力を実行する。転回指示入力は、移動体10Aの操作部22を介して、または空港スタッフが携帯する通信端末を介して行われる。
【0063】
転回指示入力を受けた隊列先頭の移動体10Aの制御装置30は、移動体10Aに180度の超信地旋回を実行させるとともに、通信デバイス44を介して旋回信号を他の移動体10B~10Dに送信する。旋回信号を受信した他の移動体10B~10Dそれぞれは、180度の超信地旋回を実行する。この代わりとして、停止場所(搭乗口T1)で停止して所定の時間の経過後に、複数の移動体10A~10Dそれぞれは自動的に180度の超信地旋回を実行してもよい。
【0064】
なお、移動体10A~10Dがそれぞれ180度の超信地旋回を実行する前に、移動体10A~10Dそれぞれの制御装置30が、測域センサ18の検出結果に基づいて、超信地旋回が可能か否かを判断してもよい。すなわち、測域センサ18によって周囲環境の情報を取得し、超信地旋回を妨害する障害物の存在を確認する。例えば、180度の聴診地旋回を実行するときの旋回方向が予め決められている場合(例えば、上方視で時計回りに旋回すると予め決められている場合)、測域センサ18の検出結果に基づいて、その旋回方向の超信地旋回が可能であるか否かを、移動体10A~10Dそれぞれの制御装置30が判断する。その旋回方向の超信地旋回が不可能である場合、反対方向の超信地旋回が可能であるか否かが判断される。いずれの方向にも超信地旋回ができない移動体の制御装置は、空港スタッフに対して、超信地旋回ができない旨を操作部22を介して通知する。その通知を受けた空港スタッフは、超信地旋回が可能になるように、その移動体の周囲の環境を整備する(例えば、障害物を取り除く)。
【0065】
180度の超信地旋回を実行した複数の移動体10A~10Dそれぞれは、測域センサ18の検出結果に基づいて、前方の移動体(すなわち反射部材20)の存在を確認する。180度の超信地旋回によって新たに隊列の先頭となった移動体10Dは、前方に移動体の存在を確認することができないため、自身が新たな隊列の先頭と認識する。
【0066】
新たな隊列の先頭と認識した移動体10Dの制御装置30は、これまで隊列の先頭であった移動体10Aに対して先頭宣言信号を送信する。このとき、移動体10Aは、複数の移動体から先頭宣言信号を受信した場合、また、180度の超信地旋回を実行して所定の時間(例えば60秒)経過しても先頭宣言信号を受信できない場合、空港スタッフに先頭認識エラーの発生を通知する。通知を受けた空港スタッフは、新たな隊列の先頭である移動体10Dの操作部22を介して、または携帯する通信端末を介して、移動体10Dを新たな隊列の先頭としてマニュアル設定する。
【0067】
先頭宣言信号を移動体10Dから受信した移動体10Aは、隊列を構成する他の移動体10B~10Dの情報を、その移動体10Dに送信する。それとともに、移動体10Aは、移動体10B~10Cに対して、移動体10Dが新たな隊列の先頭であることを通知する。その後、移動体10B~10Dは一時的に移動体10Aとの通信を遮断する。その後しばらくして、移動体10A~10Cが、新たな隊列の先頭である移動体10Dに対して通信を接続する。これにより、新たな隊列の先頭である移動体10Dは、その隊列に移動体10A~10Cが存在することを認識する。
【0068】
新たな隊列が編成されると、図6Fに示すように、複数の移動体10A~10Dが、搭乗口T1から収納場所T0に向かって、第1の走行モードで移動する。すなわち、移動体10Dがマニュアル走行または自律走行によって収納場所T0に向かって走行し、その移動体10Dに対して他の移動体10A~10Cが追従走行を行う。
【0069】
以上のような本実施の形態によれば、袋小路などのUターンができない場所から、隊列の関係を維持した状態で複数の移動体それぞれを、後退させることなく移動させることができる。
【0070】
以上、上述の実施の形態を挙げて本開示を説明したが、本開示の実施の形態はこれに限定されない。
【0071】
例えば、上述の実施の形態の場合、停止場所で180度の超信地旋回が可能な所定の移動体間距離をあけた状態で複数の移動体を停止させる手段は、制御装置として移動体それぞれに搭載されている。しかしながら、本開示の実施の形態はこれに限らない。例えば、移動体の外部に位置する制御装置(例えば利用者が携帯する通信端末)が、複数の移動体の走行を制御してもよい。この場合、制御装置から送信される信号に基づいて、それぞれの移動体の走行(走行速度および走行方向)や移動体間距離の変更が実行される。この場合、移動体それぞれは、前方の移動体を追従する自律走行を行うことなく、隊列走行を実行する。
【0072】
また、上述の実施の形態の場合、移動体は利用者が搭乗可能な移動体である。しかしながら、本開示の実施の形態はこれに限らない。例えば、移動体は物品を搬送する無人搬送ロボットであってもよい。移動体が無人搬送ロボットである場合、Uターンできない停止場所から移動するときに後退しないので、その無人搬送ロボットに後方を確認するセンサやカメラを搭載する必要がなくなる。
【0073】
さらに、上述の実施の形態の場合、Uターンができない停止場所に複数の移動体の隊列が停止するときに、複数の移動体10A~10Dそれぞれが180度の超信地旋回を可能な所定の移動体間距離Df2をあけた状態で停止する。しかしながら、本開示の実施の形態はこれに限らない。例えば、Uターンができる停止場所で隊列が停止するときに、複数の移動体が180度の超信地旋回可能に停止してもよい。この場合、利用者が隊列の停止場所を設定するときに、その停止場所で180度の超信地旋回を実行することも設定する。
【0074】
すなわち、本開示の実施の形態は、広義には、複数の移動体を隊列走行させる隊列走行システムであって、超信地旋回が可能な複数の移動体と、複数の移動体の走行を制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記複数の移動体の隊列を停止させるときに、前記複数の移動体それぞれが180度の超信地旋回を可能な所定の移動体間距離をあけた状態で、前記移動体それぞれを停止させるものである。
【0075】
以上のように、本開示における技術の例示として、複数の実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0076】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0077】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本開示は、複数の移動体が隊列走行を行う隊列走行システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
10A~10D 移動体
30 制御装置
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F