(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】戸開閉装置
(51)【国際特許分類】
E05B 65/08 20060101AFI20240607BHJP
E05B 47/00 20060101ALI20240607BHJP
E05F 15/643 20150101ALI20240607BHJP
【FI】
E05B65/08 X
E05B47/00 J
E05F15/643
(21)【出願番号】P 2022553888
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2021035000
(87)【国際公開番号】W WO2022071096
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2020167611
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】管藤 駆
(72)【発明者】
【氏名】奥村 勝之
(72)【発明者】
【氏名】今井 浩一
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-117214(JP,A)
【文献】特開2003-148042(JP,A)
【文献】特開2005-047672(JP,A)
【文献】実開昭49-084495(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第108412329(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 65/08
E05B 47/00
E05F 15/643
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸パネルの戸幅方向両側の上端部に連結される第1被ガイド部材及び第2被ガイド部材をガイドし、該引戸パネルを戸幅方向にスライド自在に吊下保持する上レールと、前記第1被ガイド部材に連結され、該第1被ガイド部材を戸幅方向にスライドさせる駆動機構と、
前記引戸パネルが閉鎖位置において前記第1被ガイド部材及び前記第2被ガイド部材のうちの少なくとも一方の被ガイド部材の開放方向への移動方向先側に位置するように設けられ閉鎖位置の前記引戸パネルの開放側への移動を解除可能に抑止する電気錠と、を備えており、
前記電気錠は、戸厚方向に沿う軸回りに回転自在に保持された基端部から概ね戸幅方向に延びるように長尺状とされ、
前記一方の被ガイド部材のロック受部に係合する先端部が上方側の解除位置と下方側のロック位置とに上下動されるロック部を備え
、該ロック部は、前記ロック位置において先端側に向かうに従い下るように傾斜する傾斜状に配される構成とされており、
前記一方の被ガイド部材の前記ロック受部は、前記ロック位置の前記ロック部の長手方向に直交する傾斜面状とされていることを特徴とする戸開閉装置。
【請求項2】
引戸パネルの戸幅方向両側の上端部に連結される第1被ガイド部材及び第2被ガイド部材をガイドし、該引戸パネルを戸幅方向にスライド自在に吊下保持する上レールと、前記第1被ガイド部材に連結され、該第1被ガイド部材を戸幅方向にスライドさせる駆動機構と、閉鎖位置の前記引戸パネルの開放側への移動を解除可能に抑止する電気錠と、を備えており、
前記電気錠は、戸厚方向に沿う軸回りに回転自在に保持された基端部から概ね戸幅方向に延びるように長尺状とされ、前記第1被ガイド部材及び前記第2被ガイド部材のうちの少なくとも一方の被ガイド部材のロック受部に係合する先端部が上方側の解除位置と下方側のロック位置とに上下動されるロック部を備え、該ロック部の先端部には、ロック駆動部によって上下動されて当該先端部を上下動させる連結部材が連結されていることを特徴とする戸開閉装置。
【請求項3】
請求項1
または2において、
前記電気錠は、前記引戸パネルが閉鎖位置において前記一方の被ガイド部材の戸幅方向中央側の上方側に位置するように前記上レールに固定されていることを特徴とする戸開閉装置。
【請求項4】
請求項1
乃至3のいずれか1項において、
前記駆動機構は、戸幅方向に離間して配される第1回転車及び第2回転車と、これら第1回転車及び第2回転車のそれぞれに巻き掛けられ、前記第1被ガイド部材に連結された紐状伝動体と、該紐状伝動体に駆動を伝達する駆動部と、を備えており、
前記電気錠は、前記第1回転車と前記第2回転車との間に位置するように設けられていることを特徴とする戸開閉装置。
【請求項5】
請求項1乃至
4のいずれか1項において、
前記電気錠は、前記一方の被ガイド部材としての戸先側の被ガイド部材の開放側への移動を抑止可能なように、前記引戸パネルが閉鎖位置において該戸先側の被ガイド部材の戸幅方向中央側の上方側に位置するように設けられていることを特徴とする戸開閉装置。
【請求項6】
請求項1乃至
5のいずれか1項において、
前記第1被ガイド部材及び前記第2被ガイド部材は、戸厚方向に沿う軸回りに回転自在とされ、戸厚方向に互いに離間して設けられた戸厚方向両側の転動体を備え、前記一方の被ガイド部材の前記ロック受部は、戸幅方向に見て、これら戸厚方向両側の転動体の間に位置するように設けられていることを特徴とする戸開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸パネルを開閉する戸開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、引戸パネルの上端部に連結される被ガイド部材を戸幅方向にスライドさせて引戸パネルを開閉する戸開閉装置が知られている。このような戸開閉装置には、引戸パネルを施錠(ロック)する電気錠が設けられる。
例えば、下記特許文献1には、自動ドアの上面に取り付けられる吊り金具装置に固定された鍵受け装置の係止部に突出した状態で係止するロックシャフトを備え、ハンガーレールに取り付けられるオートロック装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたオートロック装置は、軸方向に沿って上下動されるロックシャフトが鍵受け装置の係止部に係止される構成とされている。そのため、自動ドアを開放側に手動で移動させようとした場合にロックシャフトに軸方向に直交する負荷が掛かることとなり、損傷等が生じ易くなる懸念がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、損傷等を抑制し得る戸開閉装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る戸開閉装置は、引戸パネルの戸幅方向両側の上端部に連結される第1被ガイド部材及び第2被ガイド部材をガイドし、該引戸パネルを戸幅方向にスライド自在に吊下保持する上レールと、前記第1被ガイド部材に連結され、該第1被ガイド部材を戸幅方向にスライドさせる駆動機構と、前記引戸パネルが閉鎖位置において前記第1被ガイド部材及び前記第2被ガイド部材のうちの少なくとも一方の被ガイド部材の開放方向への移動方向先側に位置するように設けられ閉鎖位置の前記引戸パネルの開放側への移動を解除可能に抑止する電気錠と、を備えており、前記電気錠は、戸厚方向に沿う軸回りに回転自在に保持された基端部から概ね戸幅方向に延びるように長尺状とされ、前記一方の被ガイド部材のロック受部に係合する先端部が上方側の解除位置と下方側のロック位置とに上下動されるロック部を備え、該ロック部は、前記ロック位置において先端側に向かうに従い下るように傾斜する傾斜状に配される構成とされており、前記一方の被ガイド部材の前記ロック受部は、前記ロック位置の前記ロック部の長手方向に直交する傾斜面状とされていることを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る戸開閉装置は、引戸パネルの戸幅方向両側の上端部に連結される第1被ガイド部材及び第2被ガイド部材をガイドし、該引戸パネルを戸幅方向にスライド自在に吊下保持する上レールと、前記第1被ガイド部材に連結され、該第1被ガイド部材を戸幅方向にスライドさせる駆動機構と、閉鎖位置の前記引戸パネルの開放側への移動を解除可能に抑止する電気錠と、を備えており、前記電気錠は、戸厚方向に沿う軸回りに回転自在に保持された基端部から概ね戸幅方向に延びるように長尺状とされ、前記第1被ガイド部材及び前記第2被ガイド部材のうちの少なくとも一方の被ガイド部材のロック受部に係合する先端部が上方側の解除位置と下方側のロック位置とに上下動されるロック部を備え、該ロック部の先端部には、ロック駆動部によって上下動されて当該先端部を上下動させる連結部材が連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る戸開閉装置は、上述のような構成としたことで、損傷等を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る戸開閉装置の一例を模式的に示す一部を省略した一部破断概略斜視図である。
【
図2】(a)、(b)は、同戸開閉装置の一部を省略した一部破断概略正面図である。
【
図3】同戸開閉装置の一部破断概略側断面図である。
【
図4】(a)、(b)は、同戸開閉装置の一部省略概略分解斜視図である。
【
図5】(a)、(b)は、同戸開閉装置の一部を省略した一部破断概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
また、以下の実施形態では、本実施形態に係る戸開閉装置を施工した状態を基準として上下方向等の方向を説明する。
【0010】
図1~
図5は、本実施形態に係る戸開閉装置の一例を模式的に示す図である。
本実施形態に係る戸開閉装置1は、
図1及び
図2(a)、(b)に示すように、引戸パネル9の戸幅方向両側の上端部9aに連結される被ガイド部材15,15をガイドし、この引戸パネル9を戸幅方向にスライド自在に吊下保持する上レール10を備えている。また、戸開閉装置1は、被ガイド部材15,15のうちの一方側の第1被ガイド部材15Aに連結され、第1被ガイド部材15Aを戸幅方向にスライドさせる駆動機構20を備えている。このような構成とすれば、駆動機構20を駆動すれば、第1被ガイド部材15Aが戸幅方向に移動され、引戸パネル9を開閉(開放及び閉鎖)することができる。つまり、引戸パネル9を自動ドアとして機能させることができる。また、戸開閉装置1は、閉鎖位置の引戸パネル9の開放側への移動を解除可能に抑止する電気錠30を備えている。このような構成とすれば、電気錠30を施錠状態とすれば、引戸パネル9の開放側への移動を抑止することができ、電気錠30を解錠状態とすれば、引戸パネル9の開放側への移動を許容することができる。
【0011】
また、戸開閉装置1は、
図2(a)に示すように、上レール10が固定される固定対象としての上枠3を備えている。この戸開閉装置1は、上枠3を含む戸枠2と引戸パネル9とによって引戸装置を構成するものであってもよい。また、戸開閉装置1の設置箇所としては、戸建住宅や集合住宅等の一般住宅であってもよく、宿泊施設や医療施設、福祉施設等の公共的な施設や、事務所等の商業施設、各種店舗等、種々の箇所に設置可能である。
本実施形態では、一枚の引戸パネル9を片引き状に建て付けた例を示している。図例では、引戸パネル9を袖壁納め状に建て付けた例を示しているが、戸袋納めやアウトセット納め等の適宜の納め態様で建て付け可能である。
【0012】
戸枠2は、建物の壁体に設けられた開口部に設置される。この戸枠2は、引戸パネル9によって開閉される出入口8の上側を区画する上枠3(上レール10)と、引戸パネル9の戸先側に配される戸先側縦枠5と、引戸パネル9の戸尻側に配される戸尻側縦枠6と、中方立(中間縦枠)7と、を備えている。中方立7は、図示省略の袖壁の出入口8側端部に沿うように配され、戸先側縦枠5とによって出入口8の開口幅方向両側を区画する。なお、上枠3は、天井に付設状や埋込状に設けられるものであってもよく、垂れ壁の下端部に沿うように設けられるものであってもよい。また、出入口8の下側は、床や適宜の下枠によって区画されるものでもよい。
【0013】
上枠3は、戸幅方向に長尺状とされている。この上枠3の長さ寸法は、引戸パネル9の戸幅の概ね2倍程度の寸法とされている。また、上枠3は、
図3に示すように、厚さ方向が上下方向となるように配される。また、この上枠3は、袖壁側に配される袖壁側部位の見込寸法(戸厚方向に沿う寸法)が出入口8側に配される出入口8側部位の見込寸法よりも小とされている。
また、この上枠3には、後記する駆動機構20の上側部位を受け入れる受入溝4が設けられている。このような構成とすれば、駆動機構20を設けた上レール10の位置合わせを容易に行うことができる。受入溝4は、下方側に向けて開口し、上枠3の全長に亘って延びるように設けられている。なお、この上枠3は、まぐさ等の適宜の上枠下地にねじや釘等の固着具によって固定されるものであってもよい。
【0014】
戸先側縦枠5、戸尻側縦枠6及び中方立7は、戸高方向(上下方向)に長尺状とされている。これら戸先側縦枠5、戸尻側縦枠6及び中方立7の長さ寸法は、引戸パネル9の戸高寸法に、駆動機構20を含む上レール10や上枠3の上下方向に沿う寸法を足し合わせた寸法と概ね同寸法とされている。また、これら戸先側縦枠5、戸尻側縦枠6及び中方立7は、厚さ方向が戸幅方向となるように配される。戸尻側縦枠6及び中方立7の見込寸法は、戸先側縦枠5の見込寸法よりも小とされている。
戸先側縦枠5及び戸尻側縦枠6は、柱等の適宜の縦枠下地に固着具によって固定されるものであってもよい。また、これら戸先側縦枠5及び戸尻側縦枠6と上枠3とは、三方枠状に組付けられた状態で縦枠下地及び上枠下地に固定されるものであってもよい。図例では、これら戸先側縦枠5及び戸尻側縦枠6の上端部の互いに向き合う見込面を上枠3の長手方向の各端面に突き合わせ、これら戸先側縦枠5及び戸尻側縦枠6と上枠3とを縦勝状に組付けた例を示している。
【0015】
また、これら戸先側縦枠5及び戸尻側縦枠6の互いに向き合う見込面に、引戸パネル9の戸幅方向の端部(戸先側端部及び戸尻側端部)を受け入れる戸じゃくり溝を設けた構成としてもよい。
中方立7は、上端部が上枠3に固定され、下端部が床に固定されるものであってもよい。なお、この中方立7の引戸パネル9側の端部に、引戸パネル9の厚さ方向一方面に擦るように接するモヘア等の隙間遮蔽部材を設けた構成としてもよい。また、戸枠2としては、上記したような構成とされたものに限られず、その他、種々の構成とされたものであってもよい。
【0016】
引戸パネル9は、一方向(上下方向)に長尺な略矩形平板状とされている。この引戸パネル9の戸高寸法(長さ寸法)は、当該引戸パネル9によって開閉される出入口8の開口高に応じた寸法であればよく、標準的な戸高寸法、例えば、1800mm~2100mm程度でもよい。また、引戸パネル9は、戸高寸法が天井高と略同高さ、例えば、2300mm~3000mm程度とされたハイドアを構成するものでもよい。また、引戸パネル9の戸厚寸法は、20mm~40mm程度でもよい。また、この引戸パネル9の戸幅寸法は、例えば、500mm~1800mm程度であってもよい。この引戸パネル9は、室内に設置する場合には、一般的な室内引戸として適用される木質系材料や金属系材料等から形成された枠状芯材を含むパネル芯材に表面材を貼着した構成とされたいわゆるフラッシュパネル等の比較的に軽量なパネルであってもよい。この引戸パネル9としては、このようなフラッシュパネルに限られず、設置箇所等に応じて適宜の構成とされたものであってもよい。
【0017】
この引戸パネル9の戸幅方向一方側となる戸先側の上端部9aには、被ガイド部材15を構成する第1被ガイド部材15Aが連結され、戸幅方向他方側となる戸尻側の上端部9aには、被ガイド部材15を構成する第2被ガイド部材15Bが連結されている。これら第1被ガイド部材15A及び第2被ガイド部材15Bは、互いに概ね同様の構成とされている。これら第1被ガイド部材15A及び第2被ガイド部材15Bには、
図3に示すように、引戸パネル9の取付部に取り付けられる被取付部16が設けられている。引戸パネル9の取付部は、引戸パネル9の戸幅方向両側の上端部9aのそれぞれに戸幅方向外側及び上方側に向けて開口するように設けられ、被取付部16が嵌め込まれる凹所状のカップ部とされている。
【0018】
また、これら第1被ガイド部材15A及び第2被ガイド部材15Bは、被取付部16から上方側に向けて突出するように設けられた支持軸16aと、この支持軸16aの上端部に固定されたガイド本体17と、を備えている。ガイド本体17には、後記する上レール10のガイド片部13a上を走行する転動体18が設けられている。本実施形態では、転動体18は、戸厚方向に沿う軸回りに回転自在とされている。また、ガイド本体17に、戸厚方向に互いに離間させて戸厚方向両側のそれぞれに転動体18,18を設けた構成としている。また、戸厚方向両側の転動体18,18を、ガイド本体17の戸幅方向に間隔を空けて複数箇所(図例では、2箇所)に設けた構成としている(
図5参照)。
【0019】
また、戸幅方向両側のうちの一方側となる第1被ガイド部材15Aに、詳細については後述するが、駆動機構20が連結されている。つまり、この第1被ガイド部材15Aが駆動機構20によって戸幅方向にスライドされ、駆動機構20に連結されていない他方側の第2被ガイド部材15Bが言わば従動的に戸幅方向にスライドされる。
なお、これら第1被ガイド部材15A及び第2被ガイド部材15Bとしては、上記したような構成とされたものに限られず、後記する上レール10に応じて適宜の構成とされたものであってもよい。
また、引戸パネル9の下端部に、床側に設けられるガイドピン等の下端ガイド部材が差し込まれるガイド溝等が設けられていてもよい。
【0020】
上レール10は、
図2(b)に示すように、引戸パネル9の概ね2倍の長さとされている。この上レール10の長手方向一方側の第1半部に駆動機構20を固定した構成としてもよい。この上レール10の長さは、戸幅の2倍よりも小さい寸法とされている。上レール10の長さは、閉鎖状態の引戸パネル9の戸尻側端部と中方立7(袖壁)との重ね合わせ寸法や全開状態の引戸パネル9の引き残し寸法等に応じて適宜の寸法とすればよい。
また、この上レール10には、
図3に示すように、被ガイド部材15(第1被ガイド部材15A及び第2被ガイド部材15B)を受け入れるガイド溝11が下向きに開口するように設けられている。ガイド溝11は、上レール10の全長に亘って延びるように設けられている。このガイド溝11に、被ガイド部材15のガイド本体17が挿入され、ガイドされる。
【0021】
この上レール10は、ガイド溝11の溝底を区画する溝底板状部12と、ガイド溝11の溝幅方向両側を区画する両側の側板状部13,13と、これら側板状部13,13の下端部から互いに向き合う方向に延出するガイド片部13a,13aと、を備えている。
両側のガイド片部13a,13aの延出方向先端部には、上方側に向けて突出する突条が上レール10の全長に亘って延びるように設けられている。これらガイド片部13a,13aの突条に、被ガイド部材15の転動体18,18の外周面に設けられた環状溝が係合し、これらガイド片部13a,13aの突条に沿って転動体18,18が走行する。
【0022】
また、この上レール10には、上枠3に対して上レール10を固定する固定部材14が設けられている。図例では、上レール10の溝底板状部12上に、長手方向に間隔を空けて複数の固定部材14を設けた構成としている。また、これら複数の固定部材14を、上レール10に設けられる駆動機構20の構成部材や電気錠30が設けられていない空きスペースに設けた構成としている。これら固定部材14は、上枠3に設けられた引掛部に引っ掛け保持されるものであってもよい。また、これら固定部材14は、ねじ等の固着具によって上枠3に対して固定されるものであってもよい。
【0023】
駆動機構20は、
図1に示すように、上記した上レール10に固定されている。このような構成とすれば、駆動機構20を上レール10に一体化した状態で、引戸パネル9が建て付けられる戸枠2の上枠3等の固定対象に対して上レール10を固定することができる。
この駆動機構20は、本実施形態では、戸幅方向に離間した位置に設けられる第1回転車を構成する第1従動回転車22及び第2回転車を構成する第2従動回転車24を備えている(
図2参照)。また、駆動機構20は、これら第1従動回転車22及び第2従動回転車24のそれぞれに巻き掛けられ、第1被ガイド部材15Aに連結された紐状伝動体28と、この紐状伝動体28に駆動を伝達する駆動部25と、を備えている。このような構成とすれば、駆動部25を駆動すれば、紐状伝動体28に連結された第1被ガイド部材15Aが戸幅方向に移動され、引戸パネル9を開閉することができる。
【0024】
駆動部25は、第1従動回転車22及び第2従動回転車24の間に位置するように、かつ上レール10のガイド溝11の上方側に位置するように設けられ、紐状伝動体28に駆動を伝達する駆動回転車26と、この駆動回転車26を回転させるモータ27と、を備えている。このような構成とすれば、モータ27によって駆動回転車26を回転させれば、紐状伝動体28に連結された第1被ガイド部材15Aが戸幅方向に移動され、引戸パネル9を開閉することができる。また、駆動回転車26及びモータ27を戸幅方向一方側端部に設けたものと比べて、戸幅方向に沿う寸法のコンパクト化を図ることができる。また、駆動回転車26を上レール10の戸厚方向一方側に設けたようなものと比べて、戸厚方向に沿う寸法のコンパクト化を図ることができる。これらにより、住居等の一般的な建物内に設置される引戸装置の戸枠と同程度の戸枠2に対して設置することも可能となる。また、例えば、既設の戸枠2に対して設置することも可能であり、新築時のみならず、改築や改装時にも適用可能である。これにより、既設の戸建住宅や集合住宅等の一般住宅や、宿泊施設や医療施設、福祉施設等の公共的な施設、事務所等の商業施設、各種店舗等の室内に設置される引戸パネル9を開閉する戸開閉装置1として好適に用いることができる。また、戸開閉装置1は、コンパクトであるため、引戸パネル9を自動ドアとして機能させることが可能でありながらも、室内引戸として設置しても外観上の違和感(ノイズ)を小さくすることができ、室内用として好適に用いることができる。
【0025】
第1従動回転車22及び第2従動回転車24は、それぞれの軸となる第1従動車軸及び第2従動車軸が互いに平行状とされている。また、これら第1従動車軸及び第2従動車軸は、軸方向が戸高方向となるように設けられた駆動回転車26の駆動車軸の軸方向に交差するように設けられている。
これら第1従動回転車22及び第2従動回転車24には、紐状伝動体28が平行掛状に巻き掛けられている。これら第1従動回転車22及び第2従動回転車24は、戸幅方向で逆側に変位する紐状伝動体28における下側変位部と上側変位部とが上レール10の戸厚方向で異なる位置となるように、第1従動車軸及び第2従動車軸が傾斜状に設けられている(
図3参照)。これら第1従動回転車22及び第2従動回転車24は、下側変位部が上レール10の戸厚方向で概ね中央部に位置し、上側変位部が上レール10の戸厚方向で一方側に片寄った位置となるように第1従動車軸及び第2従動車軸が傾斜状に設けられている。
【0026】
これら第1従動回転車22及び第2従動回転車24は、互いに同寸同形状とされている。また、これら第1従動回転車22及び第2従動回転車24は、第1従動車軸及び第2従動車軸の軸方向に沿う寸法が比較的に小とされた薄型円板状とされている。また、これら第1従動回転車22及び第2従動回転車24は、それぞれの外周面に、ロープ状部材とされた紐状伝動体28が係合する環状溝を設けたプーリとされている。また、これら第1従動回転車22及び第2従動回転車24は、戸幅方向に見て互いに一致した位置となるように設けられている。これら第1従動回転車22及び第2従動回転車24の第1従動車軸及び第2従動車軸は、上レール10の長手方向に対して直交するように設けられ、かつ水平面(溝底板状部12上面)に対して傾斜するように設けられている。
【0027】
また、これら第1従動回転車22及び第2従動回転車24は、固定部材21,23によって上レール10に対して固定されている。これら固定部材21,23のうちの一方または両方に、第1従動回転車22及び第2従動回転車24のうちの少なくとも一方を戸幅方向に位置調整可能に保持させた構成としてもよい。
なお、第1従動回転車22及び第2従動回転車24やこれらを上レール10に固定する固定部材21,23としては、上記したような構成とされたものに限られず、その他、種々の構成とされたものであってもよい。
また、第1被ガイド部材15A及び第2被ガイド部材15Bのガイド本体17,17には、
図3に示すように、戸幅方向に見て第1従動回転車22及び第2従動回転車24の下端側部位を受け入れるように、上方側及び戸幅方向両側に開口する凹所が設けられている。また、第1被ガイド部材15Aのガイド本体17には、紐状伝動体28の下側変位部が連結された連結部17aが設けられている。この連結部17aは、ガイド本体17の凹所内に位置するように設けられている。
【0028】
紐状伝動体28は、第1従動回転車22及び第2従動回転車24の環状溝の溝底周面の上面側において変位する上側変位部がガイド溝11の上方側空間において戸厚方向一方側に片寄った位置となるように配されている。また、紐状伝動体28は、第1従動回転車22及び第2従動回転車24の環状溝の溝底周面の下面側において変位する下側変位部がガイド溝11内の下方側空間の溝幅方向中央部に位置するように配されている。この紐状伝動体28は、環状に形成された一部に第1被ガイド部材15Aの連結部17aが固定されたものでもよく、または、長手方向両側端部が連結部17aの戸幅方向両側に連結されて略環状に形成されたものであってもよい。また、この紐状伝動体28は、伸長し難い構成とされたものであればよく、例えば、金属製ワイヤや、適宜の繊維を撚り合わせた撚紐や繊維を組み合わせた組紐等であってもよい。
【0029】
駆動回転車26は、駆動車軸の軸方向に沿う寸法が比較的に小とされた薄型円板状とされている。また、駆動回転車26は、外周面に紐状伝動体28が係合する環状溝を設けたプーリとされている。この駆動回転車26には、紐状伝動体28の上側変位部が略一周巻き掛けられている。
この駆動回転車26には、この駆動回転車26を回転させるモータ27に設けられた歯車(モータ側歯車)に回転を伝達する歯車(回転車側歯車)が設けられている。また、モータ27を、出力軸の軸方向が戸幅方向となるように駆動回転車26の戸幅方向一方側に配置し、駆動回転車26の駆動車軸とモータ27の出力軸とを互いに交差するように設けた構成としている。なお、回転車側歯車及びモータ側歯車としては、駆動回転車26及びモータ27の配置態様に応じて適宜の構成とされたものでもよい。また、これら回転車側歯車及びモータ側歯車としては、直接的に噛み合う構成とされたものに限られず、適宜の中間歯車等を介して回転を伝達する構成とされたものであってもよい。
【0030】
また、これら駆動回転車26及びモータ27は、適宜の固定部材によって上レール10に固定されていてもよい。
また、モータ27としては、正逆回転可能で回転数の制御可能なサーボモータ等であってもよい。
また、上記した例では、駆動回転車26の駆動車軸を戸高方向となるように設けた例を示しているが、戸厚方向となるように設けた構成としてもよい。
また、本実施形態では、
図1に示すように、モータ27の回転を制御する制御ブロック29をモータ27の戸幅方向一方側に設けた構成としている。この制御ブロック29には、モータ27に駆動電源を供給する電源部や、モータ27に適宜の信号線等を介して接続された制御回路等が設けられている。この制御ブロック29によってモータ27が制御されて正回転または逆回転され、引戸パネル9が全開位置または閉鎖位置に移動される。図例では、制御ブロック29を、戸幅方向に長尺な略四角柱状とした例を示している。
【0031】
電気錠30は、
図5に示すように、戸厚方向に沿う軸(ロック軸)42回りに回転自在に保持された基端部41から概ね戸幅方向に延びるように長尺状とされたロック部40を備えている。このロック部40は、第1被ガイド部材15A及び第2被ガイド部材15Bのうちの少なくとも一方の被ガイド部材としての第1被ガイド部材15Aのロック受部19に係合する先端部43が上方側の解除位置と下方側のロック位置とに上下動される構成とされている。このような構成とすれば、例えば、駆動機構20を構成するプーリー等の回転を抑止してロックするものと比べて、駆動機構20の損傷等を抑制することができる。また、例えば、軸方向に上下動されるロックシャフトを設けたようなものと比べて、ロック部40の損傷等を抑制することができる。つまり、引戸パネル9を開放側に手動で移動させようとした場合にロック位置のロック部40に掛かる負荷をロック部40の概ね長手方向に受けることができる。
【0032】
本実施形態では、電気錠30は、引戸パネル9が閉鎖位置において一方の被ガイド部材としての第1被ガイド部材15Aの戸幅方向中央側の上方側に位置するように上レール10に固定されている。このような構成とすれば、閉鎖位置の引戸パネル9の一方の被ガイド部材としての第1被ガイド部材15Aの戸幅方向外側の上方側に配置スペースが必要となるものと比べて、戸幅方向に沿う寸法のコンパクト化を図ることができる。また、電気錠30を上レール10に固定一体化しているので、上レール10とは別途に電気錠を設置する必要があるものと比べて、施工性を向上させることができる。また、電気錠30が出入口8の上方側に位置することとなり、袖壁側や戸袋側に設けられるものと比べて、メンテナンス性や手動解錠の際の操作性を向上させることができる。
【0033】
また、電気錠30は、第1従動回転車22と第2従動回転車24との間に位置するように設けられている。このような構成とすれば、駆動機構20を構成する第1従動回転車22と第2従動回転車24との間の空きスペースを利用して電気錠30を設けることができ、上レール10の上下方向に沿う寸法のコンパクト化を図ることができる。
また、電気錠30は、一方の被ガイド部材としての戸先側の第1被ガイド部材15Aの開放側への移動を抑止可能なように、引戸パネル9が閉鎖位置において第1被ガイド部材15Aの戸幅方向中央側の上方側に位置するように設けられている。例えば、閉鎖位置の引戸パネル9の第2被ガイド部材15Bに隣接させて電気錠30を設ける場合において、引戸パネル9の戸幅寸法が異なる場合には、電気錠30の設置位置を変更等する必要があるが、このような必要がない。つまり、引戸パネル9の戸幅寸法が異なる場合にも、上レール10に対する電気錠30の設置位置を変更することなく対応することができる。
【0034】
また、電気錠30は、引戸パネル9が閉鎖位置において一方の被ガイド部材としての第1被ガイド部材15Aの開放方向への移動方向先側に位置するように設けられている。このような構成とすれば、電気錠30を、閉鎖位置の引戸パネル9の一方の被ガイド部材としての第1被ガイド部材15Aの閉鎖方向への移動方向先側に設けたものと比べて、ロック部40やロック受部19の構造の簡素化を図ることができる。つまり、ロック受部19に被引掛部を設け、ロック部40に被引掛部に引っ掛けられるフック状の引掛部を設けたりする必要がなく、ロック受部19をロック部40の先端部43が当接される当接部とすることができる。
つまり、本実施形態では、電気錠30は、引戸パネル9が閉鎖位置において戸先側となる第1被ガイド部材15Aの戸幅方向中央側となる開放方向への移動方向先側に位置するように設けられている。
【0035】
具体的には、この電気錠30は、ロック部40をロック軸42回りに回転自在に保持し、上レール10に固定される錠ケースを構成する戸厚方向に分割された第1ケース部31及び第2ケース部32を備えている。また、電気錠30は、ロック部40の先端部43を上下動させるロック駆動部を構成するモータ33と、当該電気錠30の施錠状態及び解錠状態を検知する施解錠検知部36,37と、を備えている。
第1ケース部31及び第2ケース部32は、組み付けられた状態で、下方側に向けて開口する構成とされている。図例では、戸厚方向一方側の第1ケース部31を、戸厚方向他方側及び下方側に向けて開口する形状とし、戸厚方向他方側の第2ケース部32を、この第1ケース部31の戸厚方向他方側の開口を覆うように配される板状とした例を示している。
【0036】
これら第1ケース部31及び第2ケース部32は、ねじ等の固着具によって上レール10に固定される。図例では、上レール10の溝底板状部12及び戸厚方向一方側の側板状部13に、電気錠30を受け入れる開口を切欠状に設け、戸厚方向一方側の側板状部13に第1ケース部31に設けられた被固定部を固定した例を示している(
図1も参照)。
ロック部40は、長手方向一方側となる基端部41が長手方向他方側となる先端部43よりも閉鎖位置の引戸パネル9の戸幅方向中央側(戸尻側)に位置するように配される。本実施形態では、このロック部40は、
図5(a)に示すように、ロック位置において先端側に向かうに従い下るように傾斜する傾斜状に配される構成とされている。また、ロック部40は、
図5(b)に示すように、解除位置において基端部41と先端部43とが略同高さ、つまり、長手方向が略戸幅方向となるように配される構成とされている。
【0037】
このロック部40の基端部41のロック軸42は、軸方向が戸厚方向となるように配される。このロック軸42は、ロック部40に固定的に設けられ、第1ケース部31及び第2ケース部32に設けられた軸受部に対して回転自在に保持されていてもよい。または、ロック部40側に、第1ケース部31及び第2ケース部32側に固定的に設けられたロック軸42を回転自在に保持する軸受部を設けた構成としてもよい。
このロック部40の先端部43には、モータ33によって回転される回転体35に連結され、回転体35の回転を伴って先端部43を上下動させる連結部材38が連結されている。回転体35は、ロック部40の先端側の上方側に位置するように配されている。この回転体35は、軸方向が戸厚方向となるように配された回転軸35a回りに回転自在に第1ケース部31及び第2ケース部32に保持されている。図例では、回転体35は、モータ33の出力軸に設けられたウォーム34に噛み合うウォームホイールとされている。なお、モータ33によって回転体35を回転させる態様としては、このようなウォーム対による態様に限られず、他の歯車を設けたり、モータ33の出力軸に直接的に回転体35を設けたりした態様等としてもよい。
【0038】
連結部材38は、上下方向に長尺状とされている。この連結部材38は、長手方向一端部としての上端部が回転体35の回転軸35aに対して偏心した位置となる回転軸35aの径方向一方側に回転自在に連結され、長手方向他端部としての下端部がロック部40の先端部43に回転自在に連結されている。この連結部材38には、回転体35に設けられた軸挿通孔に回転自在に挿通保持された上端連結軸35bが挿通された挿通孔38aが戸厚方向に沿って設けられている。また、連結部材38の下端部には、ロック部40の先端部43に設けられた戸厚方向に沿う挿通孔に回転自在に挿通保持された下端連結軸38bが設けられている(
図4(b)も参照)。
【0039】
モータ33を駆動すれば、ウォーム34によって回転体35が回転軸35a回りに回転され、上端連結軸35bが回転軸35aの周囲を回転し、これに伴って上端側が概ね戸幅方向に揺動しながら連結部材38が上下動する。これにより、ロック部40の先端部43が上下動される。つまり、
図5(a)に示すように、回転体35の回転軸35aの下方側に上端連結軸35bを位置させれば、連結部材38及びロック部40の先端部43が下限位置となり、ロック部40がロック位置となる。この状態ではロック部40の先端部43が閉鎖位置の引戸パネル9の第1被ガイド部材15Aのロック受部19に対向するように配置され、第1被ガイド部材15Aの開放側への移動が抑止される。また、
図5(b)に示すように、回転体35の回転軸35aの上方側に上端連結軸35bを位置させれば、連結部材38及びロック部40の先端部43が上限位置となり、ロック部40が解除位置となる。この状態ではロック部40が閉鎖位置の引戸パネル9の第1被ガイド部材15Aに干渉しない位置となり、第1被ガイド部材15Aの開放側への移動が可能となる。なお、ロック部40の先端部43を上下動させる機構としては、図例のような構成とされたものに限られず、その他、種々の構成とされたものであってもよい。
【0040】
このロック部40の先端部43が係合するロック受部19は、
図3に示すように、戸幅方向に見て、戸厚方向両側の転動体18,18の間に位置するように設けられている。このような構成とすれば、転動体18をロック受部19としたものと比べて、転動体18の損傷等を抑制することができる。また、戸厚方向一方側のみに転動体18を設けた第1被ガイド部材15Aの戸厚方向他方側にロック受部19を設けたようなものと比べて、ロック部40の先端部43を安定的に係合させることができる。
また、本実施形態では、
図5(a)に示すように、ロック受部19は、ロック位置のロック部40の長手方向に直交する傾斜面状とされている。このような構成とすれば、引戸パネル9を開放側に手動で移動させようとした場合にロック位置のロック部40に掛かる負荷をロック部40の長手方向に沿ってより効果的に受けることができる。また、ロック部40を解除位置に変位させる際におけるロック部40の先端部43とロック受部19との干渉を抑制することができる。
【0041】
このロック受部19は、第1被ガイド部材15Aのガイド本体17の戸尻側端部に設けられている。このロック受部19は、ガイド本体17に一体的に設けられたものでもよく、別部材が固定されて設けられたものであってもよい。また、このロック受部19は、第1被ガイド部材15Aに連結された紐状伝動体28に干渉しないように設けられている。
このロック受部19は、ロック部40の先端部43が当接または近接して対向される戸尻側に向く面が下方側に向かうに従い下るように傾斜する斜め上方側に向く傾斜面状とされている。ロック部40の先端部43の先端面は、ロック位置においてロック受部19に対向配置されるように、ロック受部19と概ね平行状の斜め下方側に向く傾斜面状とされている。図例では、先端部43の先端面を、戸厚方向に見て円弧状とした例を示している。このロック部40の先端部43は、ロック位置において第1被ガイド部材15Aのロック受部19に対向配置されて第1被ガイド部材15Aの開放側への移動を抑止可能なように適宜の形状とすればよい。
【0042】
また、ロック受部19の傾斜角度は、ロック位置のロック部40の長手方向に直交するように、ロック部40の傾斜角度に応じて適宜の角度とされている。
ロック位置のロック部40の傾斜角度は、解除位置においてロック受部19との干渉を抑制する観点やロック位置におけるロック部40に掛かる負荷を小さくする観点等から適宜の角度としてもよい。このロック位置のロック部40の水平面に対する傾斜角度は、5度~30度程度であってもよく、図例では、20度程度とした例を示している。つまり、概ね戸幅方向に延びるロック部40としては、水平面に対して30度程度傾斜したものも含む。また、図例では、ロック受部19の水平面に対する傾斜角度を、ロック位置のロック部40の傾斜角度に対応させて70度程度とした例を示している。なお、ロック位置のロック部40の長手方向とロック受部19とが直交するとは、戸厚方向に見てロック位置のロック部40の長手方向とロック受部19とのなす角度が90度となるものに加えて、85度~95度程度のものも含んでもよい。
【0043】
また、本実施形態では、ロック位置とされたロック部40を解除側に手動操作可能な構成としている。このような構成とすれば、停電や故障等によってモータ33が作動しないような場合にもロック位置のロック部40を手動操作によって解除位置に変位させることができる。また、例えば、開放側に位置する引戸パネル9を閉鎖させる際に、ロック部40がロック位置である場合にも、第1被ガイド部材15Aのガイド本体17によってロック部40を押し上げるように解除側に移動させて引戸パネル9を閉鎖させることができる。
図例では、連結部材38の挿通孔38aを、連結部材38の長手方向(上下方向)に長尺な長孔状とし、ロック位置とされたロック部40の先端部43の上方側への移動を許容する構成とした例を示している。つまり、ロック位置とされた回転体35の上端連結軸35bに対して挿通孔38aに沿って連結部材38及びロック部40の先端部43を上方側に移動可能な構成としている。
【0044】
また、ロック部40の先端部43に、手動操作部となる操作凹部44を設けた例を示している。この操作凹部44は、ロック部40の先端部43を戸厚方向に貫通して設けられていてもよい。また、この操作凹部44は、ドライバー等の治具が差し込まれて操作されるものであってもよい。また、上レール10の側板状部13には、
図1に示すように、操作凹部44の操作が可能なように、ロック部40の先端部43を露出させる切欠部が形成されている。なお、戸厚方向両側からロック部40の手動解除操作が可能なように、上レール10の戸厚方向両側の側板状部13,13にロック部40の先端部43を露出させる切欠部を設けた構成としてもよい。なお、手動操作部としては、図例のような操作凹部44に限られず、その他、種々の構成とされたものであってもよい。また、手動操作によって解除位置とされたロック部40を保持する適宜の保持機構を設けた構成としてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、ロック部40をロック位置側に向けて付勢する付勢部材39を設けた構成としている。このような構成とすれば、手動操作によって解除位置とされたロック部40を、ロック位置に復帰させることができる。図例では、付勢部材39は、コイル部にロック軸42が挿通されたねじりコイルばね(トーションばね)とされている。この付勢部材39の一方のアーム端部39aが第1ケース部31に設けられた規制壁部31aに当接され、付勢部材39の他方のアーム端部39bがロック部40の上側面に当接されている。このような構成により、付勢部材39は、ロック部40の先端部43を下方側に向けて押し下げるように付勢する構成とされている。なお、付勢部材39としては、ねじりコイルばねに限られず、板ばねや、圧縮コイルばね、引張コイルばね等の他のばね部材であってもよく、また、ばね部材に限られず、ゴム材等であってもよい。また、ロック部40の解除側への手動操作を可能とする態様としては、上記したような態様に限られず、その他、種々の構成とされたものであってもよい。
【0046】
施解錠検知部36,37は、本実施形態では、施錠状態を検知する施錠検知部36と解錠状態を検知する解錠検知部37とを個別に設けた構成とされている(
図4(b)参照)。また、これら施錠検知部36及び解錠検知部37を、回転体35に設けられた押下部35c,35dによって押し下げられる押釦(アクチュエータ部)36a,37aを有したマイクロスイッチとした例を示している。図例では、これら施錠検知部36及び解錠検知部37に押釦36a,37aを押し下げるレバー36b,37bを設けた例を示している。
これら施錠検知部36及び解錠検知部37は、戸厚方向に見て互いに一致した位置となるように戸厚方向に間隔を空けて設けられている。図例では、これら施錠検知部36及び解錠検知部37を、回転体35の戸幅方向一方側で、モータ33とロック部40との間に位置するように設けた例を示している。なお、これら施錠検知部36及び解錠検知部37は、適宜の固定部材を介して戸厚方向両側の第1ケース部31及び第2ケース部32に挟まれるように保持されていてもよい。
【0047】
施錠検知部36は、回転体35の戸厚方向一方側に位置するように設けられている。回転体35の戸厚方向一方側には、
図4(a)に示すように、施錠検知部36のレバー36bを介して押釦36aを押下げる押下部35cが戸厚方向一方側に向けて突出するように設けられている。この押下部35cは、
図5(a)に示すように、ロック部40がロック位置の際に施錠検知部36の押釦36aを押し下げるように設けられている。つまり、押下部35cは、回転体35の上端連結軸35bが回転軸35aよりも下方側に位置する際に施錠検知部36の押釦36aを押し下げる位置に設けられている。
解錠検知部37は、回転体35の戸厚方向他方側に位置するように設けられている。回転体35の戸厚方向他方側には、解錠検知部37のレバー37bを介して押釦37aを押下げる押下部35dが戸厚方向他方側に向けて突出するように設けられている。この押下部35dは、
図5(b)に示すように、ロック部40が解除位置の際に解錠検知部37の押釦37aを押し下げるように設けられている。つまり、押下部35dは、回転体35の上端連結軸35bが回転軸35aよりも上方側に位置する際に解錠検知部37の押釦37aを押し下げる位置に設けられている。
【0048】
これら解錠検知部37の押釦37aを押し下げる押下部35dと施錠検知部36の押釦36aを押し下げる押下部35cとは、戸厚方向に見て、回転体35の回転軸35aを挟んで対向する位置となるように設けられている。また、これら押下部35c,35dは、互いに周方向に間隔を空けて、周方向に延びるように設けられている。これら押下部35c,35dの周方向に沿う寸法は、施錠状態及び解錠状態の検知が可能なように適宜の寸法とすればよい。図例では、解錠検知部37の押釦37aを押し下げる押下部35dの周方向に沿う寸法を、施錠検知部36の押釦36aを押し下げる押下部35cの周方向に沿う寸法よりも大とした例を示している。
また、これら施錠検知部36及び解錠検知部37並びにモータ33は、信号線等を介して上記した制御ブロック29に接続されていてもよい。また、当該電気錠30は、制御ブロック29からの制御信号(施錠信号及び解錠信号)や遠隔からの無線信号(施錠信号及び解錠信号)等によって施錠及び解錠がなされるものであってもよい。なお、施解錠検知部36,37としては、上記したようなマイクロスイッチに限られず、回転体35の回転角度を検知して施錠及び解錠を検知する構成とされたものや、その他、種々の構成とされたものであってもよい。
【0049】
また、戸開閉装置1は、
図3に示すように、上枠3と上レール10との間を覆うように、上レール10の戸厚方向両側に配されるカバー45,45を備えていてもよい。これらカバー45,45は、適宜の接着剤や固着具等によって上レール10に固定されるものであってもよく、または、上レール10に設けられた被係止部に係止する係止部を設けた構成とされたものでもよい。また、上記のように袖壁納めとした場合には、袖壁側のカバー45は、戸先側縦枠5から中方立7までを覆うように設けられたものであってもよい。
また、当該戸開閉装置1の適所に、引戸パネル9の位置を検知する位置検知部や、人体等の検知対象を検知する検知部等を設けた構成としてもよい。
【0050】
また、上記した例では、戸先側の第1被ガイド部材15Aの開放側への移動を抑止する電気錠30を設けた例を示しているが、これに代えて、または加えて、戸尻側の第2被ガイド部材15Bの開放側への移動を抑止する電気錠30を設けた構成としてもよい。
また、上記した例では、電気錠30を、閉鎖位置の引戸パネル9の被ガイド部材15(第1被ガイド部材15A)の開放方向への移動方向先側に位置するように設けた例を示しているが、このような態様に限られない。
また、上記した例では、被ガイド部材15(第1被ガイド部材15A)のロック受部19を、戸幅方向に見て戸厚方向両側の転動体18,18の間に位置するように設けた例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、ロック受部19を、一方の転動体18としたり、戸厚方向一方側のみに転動体18が設けられた被ガイド部材15(第1被ガイド部材15A)のガイド本体17に設けられたものとしてもよい。
【0051】
また、上記した例では、駆動機構20の駆動回転車26、第1従動回転車22及び第2従動回転車24を、プーリ(滑車)とした例を示しているが、歯車(スプロケット)等としてもよい。また、紐状伝動体28も、駆動回転車26、第1従動回転車22及び第2従動回転車24に合わせてロープ状部材とされたものに限られず、ベルトやボールチェーン、チェーン等であってもよい。また、上記した例では、第1従動回転車22と第2従動回転車24との間に駆動回転車26及びモータ27を設けた例を示しているが、このような態様に限られない。第1従動回転車22及び第2従動回転車24のうちの一方を、紐状伝動体28が巻き掛けられる第1回転車を構成する駆動回転車とし、他方を、第2回転車を構成する従動回転車としてもよい。この場合は、この駆動回転車に回転の伝達が可能となるように適宜のモータを設けた構成としてもよい。また、駆動機構20としては、このような駆動回転車によって変位される紐状伝動体28を備えた構成に限られない。例えば、モータによって回転されるスクリューによって戸幅方向に変位される連結部を第1被ガイド部材15Aに連結したような構成等でもよく、駆動機構20としては、その他、種々の構成とされたものであってもよい。本実施形態に係る戸開閉装置1の上記した各機器、各部材及び各部の構成は、一例に過ぎず、その他、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 戸開閉装置
10 上レール
15A 第1被ガイド部材(一方の被ガイド部材、戸先側の被ガイド部材)
15B 第2被ガイド部材
18 転動体
19 ロック受部
20 駆動機構
22 第1従動回転車(第1回転車)
24 第2従動回転車(第2回転車)
25 駆動部
28 紐状伝動体
30 電気錠
40 ロック部
41 基端部
42 ロック軸
43 先端部
9 引戸パネル
9a 上端部