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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20240607BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240607BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20240607BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20240607BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/052
H01M10/0585
H01M10/0565
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021519266
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 JP2020006737
(87)【国際公開番号】W WO2020230396
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2019091907
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】伊東 裕介
(72)【発明者】
【氏名】岩本 和也
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-206942(JP,A)
【文献】国際公開第2011/010552(WO,A1)
【文献】特開2011-054457(JP,A)
【文献】特開2015-065046(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2019-0050226(KR,A)
【文献】特開2011-003500(JP,A)
【文献】Fudong Han,Electrochemical Stability of Li10GeP2S12 and Li7La3Zr2O12 Solid Electrolytes,ADVANCED ENERGY MATERIALS,2016年,VOl.6,1501590
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0562-10/0585
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間に位置し、リチウムと合金を形成しうる金属を含む第一固体電解質層と、
前記負極と前記第一固体電解質層との間に位置し、前記金属を含まない第二固体電解質層と、
を備え、
前記第一固体電解質層における前記金属の含有率は、20vol%以上80vol%以下である
電池。
【請求項2】
前記第一固体電解質層の厚さは、前記第二固体電解質層の厚さよりも小さい、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記正極と前記第一固体電解質層との間に位置し、前記金属を含まない第三固体電解質層をさらに備えた、請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
前記金属は、金、ケイ素、アルミニウム、亜鉛、カドミウム、インジウム、鉛、ガリウム、ビスマス、アンチモン、スズ、銀及びマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の電池。
【請求項5】
前記金属は、アルミニウムを含む、請求項4に記載の電池。
【請求項6】
前記第一固体電解質層は、前記金属でできた第一部分を有し、
前記第一部分が粒子の形状を有している、請求項1に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、リチウム(Li)を含む合金層を備える全固体リチウム二次電池が開示されている。この合金層は、Liを主成分とする金属電極と、ガーネット型類似の結晶構造を有し、アルミニウム(Al)を含有するセラミックス焼結体である固体電解質との間に形成されている。特許文献1には、合金層によって、固体電解質内にLiデンドライトが析出することに伴うショートが抑制されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-054457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術においては、電圧の異常が生じにくい電池が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、
正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間に位置し、リチウムと合金を形成しうる金属を含む第一固体電解質層と、
前記負極と前記第一固体電解質層との間に位置し、前記金属を含まない第二固体電解質層と、
を備えた、電池を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、電圧の異常が生じにくい電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態1にかかる電池の概略構成を示す断面図である。
図2図2は、実施形態2にかかる電池の概略構成を示す断面図である。
図3図3は、実施例1及び比較例1の電池の充電曲線を示すグラフである。
図4図4は、実施例1及び比較例2の電池の充電曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見)
まず、本開示者の着眼点が、以下に説明される。
【0009】
固体電解質を用いた全固体電池については、高入出力特性が期待されている。しかし、例えば、硫化物固体電解質を用いた全固体電池では、充電末期に電圧の異常が確認されることがある。電圧の異常は、全固体電池について急速充電を行ったときに特に顕著に確認される。電圧の異常は、次のように生じると推察される。まず、電池の充電時に、負極電位がリチウムの酸化還元電位に達する。これにより、負極において、リチウムが析出する。析出したリチウムは、固体電解質中で、デンドライトとして成長する。析出したリチウムの一部が正極に到達すると、局所的にショートが発生する。これにより、電圧の異常が生じると推察される。
【0010】
上述のとおり、特許文献1には、合金層によって、固体電解質内にリチウムデンドライトが析出することに伴うショートが抑制されることが開示されている。しかし、特許文献1の合金層は、十分なイオン伝導性を有していないことがある。そのため、特許文献1の電池では、合金層が抵抗として機能することによって、電池の特性が低下する恐れがある。
【0011】
(本開示に係る一態様の概要)
本開示の第1態様にかかる電池は、
正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間に位置し、リチウムと合金を形成しうる金属を含む第一固体電解質層と、
を備える。
【0012】
第1態様によれば、第一固体電解質層は、リチウムと合金を形成しうる金属を含む。電池の充電によって、負極からリチウムデンドライトが成長すると、このリチウムデンドライトは、上記の金属に接触する。リチウムデンドライトと接触した金属は、リチウムと合金を形成する。これにより、リチウムデンドライトの成長が抑制され、リチウムデンドライトが正極に到達することを防ぐことができる。リチウムデンドライトが正極に到達することを防ぐことによって、局所的にショートが発生することを抑制できる。さらに、第一固体電解質層は、固体電解質を含むため、十分なイオン伝導性を有している。そのため、第一固体電解質層を含む電池において、電圧の異常が生じにくい。
【0013】
第1態様にかかる電池は、前記負極と前記第一固体電解質層との間に位置し、前記金属を含まない第二固体電解質層をさらに備えている。これによれば、電池が第二固体電解質を備えているため、第一固体電解質層は、負極と直接接していない。すなわち、第二固体電解質によって、第一固体電解質層と負極との間の電子伝導が遮断されている。そのため、第一固体電解質層に含まれる金属がリチウムと合金を形成しても、第一固体電解質層は、負極電位にほとんど影響を与えない。すなわち、負極電位は、負極の材料のみによって定まる。第二固体電解質によれば、電池における電圧の異常の発生をより抑制できる。
【0014】
本開示の第2態様において、例えば、第1態様にかかる電池では、前記第一固体電解質層の厚さは、前記第二固体電解質層の厚さよりも小さくてもよい。第2態様によれば、電池内において、イオン伝導性が十分に確保されている。
【0015】
本開示の第3態様において、例えば、第1から第2態様のいずれか1つにかかる電池は、前記正極と前記第一固体電解質層との間に位置し、前記金属を含まない第三固体電解質層をさらに備えていてもよい。第3態様によれば、電池において、電圧の異常が生じにくい。
【0016】
本開示の第4態様において、例えば、第1から第3態様のいずれか1つにかかる電池では、前記金属は、金、ケイ素、アルミニウム、亜鉛、カドミウム、インジウム、鉛、ガリウム、ビスマス、アンチモン、スズ、銀及びマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。第4態様によれば、電池において、電圧の異常が生じにくい。
【0017】
本開示の第5態様において、例えば、第4態様にかかる電池では、前記金属は、アルミニウムを含んでいてもよい。第5態様によれば、リチウムとアルミニウムとが合金を形成する電位は、0.3Vvs.Liであり、リチウムの酸化還元電位に近い。そのため、金属がアルミニウムを含むとき、リチウムデンドライトと接触した金属は、リチウムと合金を容易に形成することができる。すなわち、この金属によれば、リチウムデンドライトの成長をより確実に抑制することができる。
【0018】
本開示の第6態様において、例えば、第1から第5態様のいずれか1つにかかる電池では、前記第一固体電解質層における前記金属の含有率は、20vol%以上80vol%以下であってもよい。第6態様によれば、リチウムデンドライトが正極に到達することによって発生する局所的なショートを十分に抑制できる。
【0019】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本開示は、以下の実施形態に限定されない。
【0020】
(実施形態1)
図1は、実施形態1の電池100の概略構成を示す断面図である。図1に示すように、電池100は、正極10、第一固体電解質層30及び負極50を備える。電池100は、第二固体電解質層40をさらに備える。第一固体電解質層30は、正極10と負極50との間に位置する。第一固体電解質層30は、例えば、正極10と直接接している。第二固体電解質層40は、負極50と第一固体電解質層30との間に位置する。第二固体電解質層40は、例えば、負極50及び第一固体電解質層30のそれぞれと直接接している。
【0021】
第一固体電解質層30は、固体電解質を含むとともに、リチウムと合金を形成しうる金属Aを含む。第一固体電解質層30は、例えば、固体電解質と金属Aとの複合体である。第一固体電解質層30は、例えば、金属Aでできた第一部分と、固体電解質でできた第二部分とを有する。第一部分及び第二部分の組成は、例えば、エネルギー分散型X線分析(EDS)によって特定することができる。第一固体電解質層30は、例えば、複数の第一部分を有する。第一固体電解質層30において、複数の第一部分が第二部分に埋め込まれている。複数の第一部分が第二部分に分散されている。第一部分は、例えば、粒子の形状を有している。本明細書では、「粒子の形状」は、球状、楕円体状、鱗片状及び繊維状を含む。
【0022】
金属Aは、例えば、金(Au)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、スズ(Sn)、銀(Ag)及びマグネシウム(Mg)からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。後述のとおり、金属Aは、電池100内において、リチウムデンドライトの成長を抑制する。リチウムデンドライトの成長をより確実に抑制する観点から、金属Aは、アルミニウムを含んでいてもよい。第一固体電解質層30は、例えば、金属Aの単体を含む。第一固体電解質層30は、アルミニウムの単体を含んでいてもよい。第一固体電解質層30に含まれる金属Aの一部は、リチウムと合金を形成していてもよい。
【0023】
第一固体電解質層30における金属Aの含有率は、特に限定されず、20vol%以上80vol%以下であってもよく、40vol%以上60vol%以下であってもよい。
【0024】
固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、ハロゲン化物固体電解質、高分子固体電解質、錯体水素化物固体電解質などが用いられうる。固体電解質は、リチウムと合金を形成しうる金属Aを含まない。すなわち、固体電解質は、金属Aの単体を含まない。
【0025】
硫化物固体電解質としては、例えば、Li2S-P25、Li2S-SiS2、Li2S-B23、Li2S-GeS2、Li3.25Ge0.250.754、Li10GeP212などが用いられうる。硫化物固体電解質には、LiX、Li2O、MOp、LiqMOrなどが添加されていてもよい。LiXのXは、F、Cl、Br又はIである。MOp及びLiqMOrのMは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、In、Fe及びZnのうちのいずれか1つである。MOpのpは、自然数である。LiqMOrのq及びrは、自然数である。
【0026】
酸化物固体電解質としては、例えば、LiTi2(PO43及びその元素置換体に代表されるNASICON型固体電解質、(LaLi)TiO3系のペロブスカイト型固体電解質、Li14ZnGe416、Li4SiO4、LiGeO4及びその元素置換体に代表されるLISICON型固体電解質、Li7La3Zr212及びその元素置換体に代表されるガーネット型固体電解質、Li3N及びそのH置換体、Li3PO4及びそのN置換体、LiBO2、Li3BO3などのLi-B-O化合物をベースとして、Li2SO4、Li2CO3などが添加されたガラス、ガラスセラミックスなどが用いられうる。
【0027】
ハロゲン化物固体電解質としては、例えば、組成式Liαβγにより表される材料が用いられうる。上記の組成式において、α、β及びγは、0より大きい値である。Mは、Li以外の金属元素を含む。Xは、Cl、Br、I、Fからなる群より選ばれる1種又は2種以上の元素である。金属元素は、半金属元素を含む。半金属元素としては、例えば、B、Si、Ge、As、Sb及びTeが挙げられる。金属元素とは、水素を除く周期表1族から12族に含まれる全ての元素、半金属元素、並びに、半金属元素、C、N、P、O、S及びSeを除く周期表13族から16族に含まれる全ての元素である。金属元素は、例えば、ハロゲンと無機化合物を形成したときに、カチオンに変化しうる元素である。ハロゲン化物固体電解質としては、例えば、Li3YX6、Li2MgX4、Li2FeX4、Li(Al,Ga,In)X4、Li3(Al,Ga,In)X6などが用いられうる。これらの組成式において、複数のXは、互いに独立して、F、Cl、Br又はIである。
【0028】
高分子固体電解質としては、例えば、高分子化合物とリチウム塩とを含む化合物が用いられうる。高分子化合物は、エチレンオキシド構造を有していてもよい。高分子化合物は、エチレンオキシド構造を有することによって、リチウム塩を多く含有することができる。このとき、高分子固体電解質のイオン伝導率をより向上できる。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiSO3CF3、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiN(SO2CF3)(SO249)、LiC(SO2CF33などが使用されうる。高分子固体電解質は、例えば、これらから選択される1種のリチウム塩又は2種以上のリチウム塩の混合物を含む。
【0029】
錯体水素化物固体電解質としては、例えば、LiBH4-LiI、LiBH4-P25などが用いられうる。
【0030】
第一固体電解質層30は、結着剤をさらに含んでもよい。結着剤は、例えば、第一固体電解質層30に含まれる第一部分と第二部分との密着性を向上させる。結着剤は、例えば、樹脂材料である。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。結着剤は、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸及びヘキサジエンからなる群より選ばれる2種以上の共重合体であってもよい。第一固体電解質層30は、例えば、これらから選択される1種の結着剤又は2種以上の結着剤の混合物を含む。
【0031】
第一固体電解質層30において、第一部分の体積と第二部分の体積との合計値に対する第一部分の体積の比率vは、例えば、20vol%≦v≦80vol%を満たしている。このとき、複数の第一部分が第二部分に分散しやすく、電池100のショートを十分に抑制できる。比率vは、40vol%≦v≦60vol%を満たしていてもよい。
【0032】
第一部分が粒子の形状を有しているとき、第一部分の平均粒径は、リチウムと第一部分に含まれる金属Aとが合金を形成する速度の観点から、例えば、10μm以下である。第一部分の平均粒径の下限値は、特に限定されず、例えば、1μmである。第一部分の平均粒径は、例えば、次の方法によって特定することができる。まず、第一固体電解質層30の断面を走査電子顕微鏡で観察する。得られた電子顕微鏡像において、特定の第一部分の面積を画像処理によって算出する。算出された面積と同じ面積を有する円の直径をその特定の第一部分の粒径(粒子の直径)とみなす。任意の個数(例えば50個)の第一部分の粒径をそれぞれ算出し、算出値の平均値を第一部分の平均粒径とみなす。
【0033】
第一固体電解質層30の厚さは、例えば、1μm以上200μm以下である。第一固体電解質層30の厚さが1μm以上であることによって、正極10と負極50とが短絡する可能性が低下する。第一固体電解質層30の厚さが200μm以下であることによって、電池100は、高入出力で動作できる。イオン伝導性を十分に確保する観点から、第一固体電解質層30の厚さは、第二固体電解質層40の厚さより小さくてもよい。
【0034】
第二固体電解質層40は、固体電解質を含む一方、リチウムと合金を形成しうる金属Aを含まない。第二固体電解質層40に含まれる固体電解質としては、第一固体電解質層30について上述した固体電解質が挙げられる。第二固体電解質層40に含まれる固体電解質は、第一固体電解質層30と同じであってもよく、異なっていてもよい。第二固体電解質層40は、例えば、固体電解質を主成分として含む。「主成分」とは、第二固体電解質層40に重量比で最も多く含まれた成分を意味する。第二固体電解質層40は、実質的に固体電解質からなっていてもよい。「実質的に~からなる」は、言及された材料の本質的特徴を変更する他の成分を排除することを意味する。ただし、第二固体電解質層40は、固体電解質の他に不純物を含んでいてもよい。第二固体電解質層40は、固体電解質同士の密着性を向上させる観点から、結着剤をさらに含んでいてもよい。第二固体電解質層40に含まれる結着剤としては、第一固体電解質層30について上述した結着剤が挙げられる。
【0035】
第二固体電解質層40の厚さは、例えば、1μm以上200μm以下である。第二固体電解質層40の厚さが1μm以上であることによって、正極10と負極50とが短絡する可能性が低下する。第二固体電解質層40の厚さが200μm以下であることによって、電池100は、高入出力で動作できる。
【0036】
正極10は、例えば、正極集電体と正極活物質を含む層とを有する。正極10は、正極活物質と固体電解質とを含む正極合剤層を有していてもよい。正極活物質としては、例えば、リチウム含有遷移金属酸化物、遷移金属フッ化物、ポリアニオン材料、フッ素化ポリアニオン材料、遷移金属硫化物、遷移金属オキシフッ化物、遷移金属オキシ硫化物、遷移金属オキシ窒化物などが用いられうる。特に、正極活物質としてリチウム含有遷移金属酸化物を用いた場合、製造コストを抑えつつ、電池100の平均放電電圧を増加できる。正極10に含まれる固体電解質としては、第一固体電解質層30について上述した固体電解質が挙げられる。
【0037】
正極活物質は、例えば、粒子の形状を有する。正極活物質のメジアン径は、0.1μm以上100μm以下であってもよい。正極活物質のメジアン径が0.1μm以上であることによって、正極活物質及び固体電解質は、正極合剤層中で良好な分散状態を形成する。このとき、電池100は、優れた充放電特性を有する。正極活物質のメジアン径が100μm以下であることによって、正極活物質におけるリチウムの拡散が十分速い。そのため、この正極活物質を含む電池100は、高出力で動作できる。正極10において、固体電解質は、粒子の形状を有していてもよい。正極活物質のメジアン径は、固体電解質のメジアン径より大きくてもよい。このとき、正極活物質及び固体電解質は、正極合剤層中で良好な分散状態を形成する。メジアン径は、レーザー回折式粒度計などによって測定される粒度分布において、体積累積50%に相当する粒径(d50)を意味する。
【0038】
正極活物質を含む層は、当該層の材料同士の結着性を向上させる観点から、結着剤をさらに含んでいてもよい。この層に含まれる結着剤としては、第一固体電解質層30について上述した結着剤が挙げられる。さらに、正極活物質を含む層は、電子導電性を向上させる観点から、導電助剤をさらに含んでいてもよい。導電助剤としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウムなどの金属粉末類、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子化合物などが用いられうる。炭素を含む導電助剤を用いる場合、電池100の低コスト化を図ることができる。
【0039】
正極集電体は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン及びこれらの金属を含む合金などの金属材料でできている。アルミニウム、及び、アルミニウムを含む合金は、安価であり、かつ薄膜化しやすい。正極集電体は、多孔質であってもよく、無孔であってもよい。正極集電体は、例えば、シート又はフィルムの形状を有する。正極集電体は、金属箔、メッシュなどであってもよい。正極集電体の厚さは、1μm以上30μm以下であってもよい。正極集電体の厚さが1μm以上であることによって、正極集電体は、十分な機械的強度を有し、割れ及び破れが生じにくい。正極集電体の厚さが30μm以下であることによって、電池100は、高いエネルギー密度を有する。
【0040】
正極10の厚さは、10μm以上500μm以下であってもよい。正極10の厚さが10μm以上であることによって、電池100において、十分なエネルギー密度を確保できる。正極10の厚さが500μm以下であることによって、電池100は、高出力で動作できる。
【0041】
負極50は、例えば、負極集電体と負極活物質を含む層とを有する。負極50は、負極活物質と固体電解質とを含む負極合剤層を有していてもよい。負極活物質の材料は、金属イオンを吸蔵及び放出する材料であってもよく、リチウムイオンを吸蔵及び放出する材料であってもよい。負極活物質としては、リチウム金属、リチウムと合金を形成する金属、合金又は化合物、炭素材料、遷移金属酸化物、遷移金属硫化物などが用いられうる。炭素材料としては、例えば、黒鉛、及び、ハードカーボン、コークスなどの非黒鉛炭素が用いられうる。遷移金属酸化物としては、例えば、CuO、NiOなどが用いられうる。遷移金属硫化物としては、例えば、組成式CuSで表される硫化銅などが用いられうる。リチウムと合金を形成する金属、合金又は化合物としては、ケイ素化合物、錫化合物、アルミニウム化合物などが用いられうる。負極活物質として炭素材料を用いた場合、製造コストを抑えつつ、電池100の平均放電電圧を増加できる。電池100の容量密度の観点から、負極活物質は、珪素(Si)、錫(Sn)、珪素化合物、錫化合物などを含んでいてもよい。負極50に含まれる固体電解質としては、第一固体電解質層30について上述した固体電解質が挙げられる。
【0042】
負極活物質は、例えば、粒子の形状を有する。負極活物質のメジアン径は、0.1μm以上100μm以下であってもよい。負極活物質のメジアン径が0.1μm以上であることによって、負極活物質及び固体電解質は、負極合剤層中で良好な分散状態を形成する。このとき、電池100は、優れた充放電特性を有する。負極活物質のメジアン径が100μm以下であることによって、負極活物質におけるリチウムの拡散が十分速い。そのため、この負極活物質を含む電池100は、高出力で動作できる。負極50において、固体電解質は、粒子の形状を有していてもよい。負極活物質のメジアン径は、固体電解質のメジアン径より大きくてもよい。このとき、負極活物質及び固体電解質は、負極合剤層中で良好な分散状態を形成する。
【0043】
負極活物質を含む層は、当該層の材料同士の結着性を向上させる観点から、結着剤をさらに含んでいてもよい。この層に含まれる結着剤としては、第一固体電解質層30について上述した結着剤が挙げられる。さらに、負極活物質を含む層は、電子導電性を向上させる観点から、導電助剤をさらに含んでいてもよい。負極活物質を含む層に含まれる導電助剤としては、正極活物質を含む層について上述した導電助剤を用いることができる。
【0044】
負極集電体は、例えば、ステンレス鋼、ニッケル、銅及びこれらの金属を含む合金などの金属材料でできている。銅、及び、銅を含む合金は、安価であり、かつ薄膜化しやすい。負極集電体は、多孔質であってもよく、無孔であってもよい。負極集電体は、例えば、シート又はフィルムの形状を有する。負極集電体は、金属箔、メッシュなどであってもよい。負極集電体の厚さは、1μm以上30μm以下であってもよい。負極集電体の厚さが1μm以上であることによって、負極集電体は、十分な機械的強度を有し、割れ及び破れが生じにくい。負極集電体の厚さが30μm以下であることによって、電池100は、高いエネルギー密度を有する。
【0045】
負極50は、固体電解質界面相(SEI:Solid Electrolyte Interphase)をさらに含んでいてもよい。従来、SEIは、リチウムイオン二次電池又はリチウムイオンキャパシタの初期充電時に、非水電解液に含まれる溶媒と負極活物質とが反応することによって形成されることが知られている。SEIは、上記の反応による生成物を含む不動態膜であり、負極活物質の表面に位置する。SEIによれば、非水電解液が負極活物質の表面で分解する反応を抑制できることが知られている。本実施形態の電池100でも、初期充電時にSEIが形成される可能性がある。SEIは、ナノメートルオーダーの厚さを有していてもよい。
【0046】
負極50の厚さは、10μm以上500μm以下であってもよい。負極50の厚さが10μm以上であることによって、電池100において、十分なエネルギー密度を確保できる。負極50の厚さが500μm以下であることによって、電池100は、高出力で動作できる。
【0047】
電池100の主面の面積は、1cm2以上100cm2以下であってもよく、100cm2以上1000cm2以下であってもよい。「主面」とは、電池100の最も広い面積を有する面を意味する。電池100の主面の面積が1cm2以上100cm2以下であるとき、電池100は、スマートフォン、デジタルカメラなどの携帯電子機器用の電池に適している。電池100の主面の面積が100cm2以上1000cm2以下であるとき、電池100は、電気自動車などの大型移動機器の電源用の電池に適している。
【0048】
実施形態1における電池100は、コイン型、円筒型、角型、シート型、ボタン型、扁平型、積層型などの種々の形状の電池として構成されうる。実施形態1における電池100は、例えば、全固体電池である。
【0049】
次に、電池100の製造方法を説明する。
【0050】
まず、第一固体電解質層30の材料、第二固体電解質層40の材料、正極合剤層の材料、及び、負極合剤層の材料を準備する。本明細書では、正極合剤層の材料を「正極合剤」と呼ぶことがある。負極合剤層の材料を「負極合剤」と呼ぶことがある。第一固体電解質層30の材料は、例えば、乳鉢などを用いて、固体電解質と、金属Aでできた金属粉末とを一定の配合比で混合することによって作製できる。第二固体電解質層40の材料は、例えば、固体電解質である。正極合剤は、例えば、乳鉢などを用いて、固体電解質及び正極活物質を混合することによって作製できる。負極合剤は、例えば、乳鉢などを用いて、固体電解質及び負極活物質を混合することによって作製できる。
【0051】
次に、絶縁性外筒を準備する。外筒の内部に、第二固体電解質層40の材料、第一固体電解質層30の材料、及び、正極合剤をこの順番で充填する。次に、第二固体電解質層40の材料の上に負極合剤を充填する。負極合剤は、第二固体電解質層40の材料に対して、第一固体電解質層30の材料とは反対側に位置する。次に、これらの材料を加圧成形することによって、正極合剤層、第一固体電解質層30、第二固体電解質層40及び負極合剤層の積層体を作製する。次に、正極合剤層の上に正極集電体を配置することによって正極10を作製する。負極合剤層の上に負極集電体を配置することによって負極50を作製する。正極集電体及び負極集電体のそれぞれに集電リードを接続する。絶縁性フェルールなどを用いて絶縁性外筒を密閉し、絶縁性外筒の内部を外部雰囲気から遮断することによって電池100が得られる。
【0052】
電池100を充電するとき、負極50からリチウムデンドライトが成長することがある。リチウムデンドライトは、電池100を急速充電するときに顕著に成長する。リチウムデンドライトは、第一固体電解質層30まで延びると、第一固体電解質層30に含まれる金属Aに接触する。リチウムデンドライトと接触した金属Aは、リチウムと合金を形成する。これにより、リチウムデンドライトの成長が抑制され、リチウムデンドライトが正極10に到達することを防ぐことができる。リチウムデンドライトが正極10に到達することを防ぐことによって、局所的にショートが発生することを抑制できる。第一固体電解質層30によれば、例えば、0.7Cレート以上で電池100を充電した場合であっても、局所的にショートが発生することを抑制できる。さらに、第一固体電解質層30は、固体電解質を含むため、十分なイオン伝導性を有している。そのため、第一固体電解質層30を含む電池100において、電圧の異常が生じにくい。
【0053】
リチウムとアルミニウムとが合金を形成する電位は、0.3Vvs.Liであり、リチウムの酸化還元電位に近い。そのため、金属Aがアルミニウムを含むとき、リチウムデンドライトと接触した金属Aは、リチウムと合金を容易に形成することができる。すなわち、この金属Aによれば、リチウムデンドライトの成長をより確実に抑制することができる。
【0054】
電池100が第二固体電解質層40を備えているため、第一固体電解質層30は、負極50と直接接していない。すなわち、第二固体電解質層40によって、第一固体電解質層30と負極50との間の電子伝導が遮断されている。そのため、第一固体電解質層30に含まれる金属Aがリチウムと合金を形成しても、第一固体電解質層30は、負極電位にほとんど影響を与えない。すなわち、負極電位は、負極50の材料のみによって定まる。第二固体電解質層40によれば、電池100における電圧の異常の発生をより抑制できる。
【0055】
特許文献1において、リチウムを含む合金層は、リチウムを主成分とする負極と直接接している。合金層がリチウムよりも高い電極電位を有する場合、特許文献1の電池の負極電位は、負極だけでなく、合金層の影響も受ける。そのため、特許文献1の電池では、負極電位が安定せず、電圧の異常が生じることがある。
【0056】
(実施形態2)
図2は、本実施形態2の電池110の概略構成を示す断面図である。図2に示すように、電池110は、第三固体電解質層20を備えている。以上を除き、電池110の構造は、実施形態1の電池100の構造と同じである。したがって、実施形態1の電池100と本実施形態の電池110とで共通する要素には同じ参照符号を付し、それらの説明を省略することがある。すなわち、以下の実施形態2に関する説明は、技術的に矛盾しない限り、相互に適用されうる。さらに、技術的に矛盾しない限り、各実施形態は、相互に組み合わされてもよい。
【0057】
第三固体電解質層20は、正極10と第一固体電解質層30との間に位置する。第三固体電解質層20は、例えば、正極10及び第一固体電解質層30のそれぞれと直接接している。
【0058】
第三固体電解質層20は、固体電解質を含む一方、リチウムと合金を形成しうる金属Aを含まない。第三固体電解質層20に含まれる固体電解質としては、第一固体電解質層30について上述した固体電解質が挙げられる。第三固体電解質層20に含まれる固体電解質は、第一固体電解質層30又は第二固体電解質層40と同じであってもよく、異なっていてもよい。第三固体電解質層20は、例えば、固体電解質を主成分として含む。第三固体電解質層20は、実質的に固体電解質からなっていてもよい。ただし、第三固体電解質層20は、固体電解質の他に不純物を含んでいてもよい。第三固体電解質層20は、固体電解質以外に結着剤をさらに含んでいてもよい。第三固体電解質層20に含まれる結着剤としては、第一固体電解質層30について上述した結着剤が挙げられる。
【0059】
第三固体電解質層20の厚さは、特に限定されず、例えば1μm以上200μm以下である。第三固体電解質層20の厚さが1μm以上であることによって、正極10と負極50とが短絡する可能性が低下する。第三固体電解質層20の厚さが200μm以下であることによって、電池100は、高入出力で動作できる。本実施形態では、イオン伝導性を十分に確保する観点から、第一固体電解質層30の厚さは、第三固体電解質層20の厚さより小さくてもよい。
【0060】
(実施例)
以下、本開示の実施形態を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。ただし、本開示は、以下の実施例に限定されない。
【0061】
<実施例1>
[硫化物固体電解質の作製]
まず、露点-60℃以下のアルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、Li2SとP25とを秤量した。秤量したLi2S及びP25のモル比は、Li2S:P25=75:25であった。次に、乳鉢を用いて、Li2S及びP25を粉砕して混合した。次に、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、10時間、510rpmでミリング処理を行うことによって、ガラス状の固体電解質を得た。ガラス状の固体電解質について、不活性雰囲気下、270度で2時間熱処理を行った。これにより、ガラスセラミックス状の固体電解質であるLi2S-P25を得た。
【0062】
[第一固体電解質層の材料の作製]
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、上記の硫化物固体電解質とアルミニウムでできた金属粉末とを秤量した。金属粉末の平均粒径は3μmであった。秤量した硫化物固体電解質及び金属粉末の体積比率は、50:50であった。硫化物固体電解質及び金属粉末をメノウ乳鉢で混合することによって、第一固体電解質層の材料を作製した。
【0063】
[正極合剤の作製]
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、上記の硫化物固体電解質と正極活物質とを秤量した。正極活物質としては、Li(NiCoMn)O2(以下、NCMと表記する)を用いた。秤量した硫化物固体電解質及び正極活物質の体積比率は、30:70であった。硫化物固体電解質及び正極活物質をメノウ乳鉢で混合することによって、正極合剤を作製した。
【0064】
[負極合剤の作製]
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、上記の硫化物固体電解質材料と負極活物質とを秤量した。負極活物質としては、黒鉛を用いた。秤量した硫化物固体電解質及び負極活物質の体積比率は、40:60であった。硫化物固体電解質及び負極活物質をメノウ乳鉢で混合することによって、負極合剤を作製した。
【0065】
[二次電池の作製]
上述の第一固体電解質層の材料、正極合剤、負極合剤、及び、ガラスセラミックス状の硫化物固体電解質Li2S-P25を用いて、下記の工程を実施した。
【0066】
まず、絶縁性外筒の内部に、硫化物固体電解質、第一固体電解質層の材料、硫化物固体電解質及び正極合剤をこの順番で充填した。次に、最も外側の硫化物固体電解質の上に負極合剤を充填した。次に、これらの材料を360MPaの圧力で加圧成形することによって、正極合剤層、第三固体電解質層、第一固体電解質層、第二固体電解質層及び負極合剤層の積層体を作製した。次に、得られた積層体の両端のそれぞれにステンレス鋼でできた集電体を配置した。集電体には、集電リードを付設した。絶縁性フェルールを用いて、絶縁性外筒を密閉し、絶縁性外筒の内部を外部雰囲気から遮断することによって、実施例1の電池を作製した。
【0067】
<比較例1>
絶縁性外筒の内部に、第一固体電解質層の材料、硫化物固体電解質及び正極合剤をこの順番で充填した。次に、最も外側の第一固体電解質層の材料の上に負極合剤を充填することで、第一固体電解質層が負極と直接接する構造を有する電池を作製した。
<比較例2>
絶縁性外筒の内部に第一固体電解質層の材料を充填しなかったことを除き、実施例1と同じ方法で比較例2の電池を作製した。
【0068】
[充電試験]
実施例1及び比較例1の電池を用いて、以下の条件で充電試験を実施した。まず、電池を25℃の恒温槽に配置した。電池の理論容量に対して、0.05Cレートに相当する電流値0.17mAで電圧4.2Vに達するまで定電流充電を行った。これにより、実施例1及び比較例1の電池について、0.05C充電における充電曲線を得た。図3は、実施例1及び比較例1の電池の充電曲線を示すグラフである。
【0069】
実施例1及び比較例2のそれぞれの電池を用いて、以下の条件で充電試験を実施した。まず、電池を25℃の恒温槽に配置した。電池の理論容量に対して、1Cレート(1時間率)に相当する電流値3.4mAで電圧4.2Vに達するまで定電流充電を行った。これにより、実施例1及び比較例2の電池について、1C充電における充電曲線を得た。図4は、実施例1及び比較例2の電池の充電曲線を示すグラフである。
【0070】
上述のとおり、実施例1の電池は、アルミニウムでできた金属粉末及び硫化物固体電解質から形成された第一固体電解質層と、硫化物固体電解質から形成された第二固体電解質層及び第三固体電解質層とを備えていた。実施例1の電池において、第一固体電解質層は、第二固体電解質層及び第三固体電解質層の間に配置されていた。図3からわかるとおり、第一固体電解質層、第二固体電解質層及び第三固体電解質層の3層構造を有する実施例1の電池では、0.05C及び1C充電時に電圧の異常が確認されなかった。
【0071】
これに対して、第一固体電解質層が負極合剤と直接接している比較例1では、0.05C充電初期の段階で電圧異常が確認された。第二固体電解質を備えていないため、第一固体電解質層と負極との電子伝導が遮断されず、第一固体電解質層に含まれる金属がリチウムと合金を形成し、負極電位に影響を与えたためだと推察される。
【0072】
さらに、第一固体電解質層を備えていない比較例2では、1C充電の充電末期に電圧の異常が確認された。電圧の異常は、次のようにして発生したと考えられる。まず、負極電位がリチウムの酸化還元電位に達する。これにより、負極において、リチウムが析出する。析出したリチウムは、固体電解質中で、デンドライトとして成長する。析出したリチウムの一部が正極に到達すると、局所的にショートが発生する。これにより、電圧の異常が生じたと推察される。
【0073】
以上のとおり、リチウムと合金を形成しうる金属Aを含む第一固体電解質層を備え、かつ、第一固体電解質層が負極と直接接していない電池は、電圧の異常を抑制できることがわかった。このことから、第一固体電解質層によれば、電池の充放電特性を向上できることが推察される。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本開示の電池は、例えば、全固体電池などとして利用されうる。
【符号の説明】
【0075】
10 正極
20 第三固体電解質層
30 第一固体電解質層
40 第二固体電解質層
50 負極
100,110 電池
図1
図2
図3
図4