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特許7499464劣化度推定装置、劣化度推定方法、および劣化度推定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】劣化度推定装置、劣化度推定方法、および劣化度推定システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20240607BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20240607BHJP
【FI】
G06Q10/20
G06Q50/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020162198
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022054921
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(74)【代理人】
【識別番号】100141449
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆芳
(74)【代理人】
【識別番号】100142446
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 覚
(72)【発明者】
【氏名】小林 晋
【審査官】板垣 有紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-111679(JP,A)
【文献】特開2016-167197(JP,A)
【文献】特開2016-021880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 ー 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌材が用いられた什器に関与する利用者の情報であって、センサによって取得される利用者情報を、前記センサを備えた人検知装置から受け付ける利用者情報受付部と、
前記抗菌材の使用時間の経過に伴う前記抗菌材の劣化度合いを示す抗菌材情報と、前記什器に用いられる前記抗菌材の種類および使用時間を含む什器情報と、を記憶する記憶部と、
前記利用者情報と、前記抗菌材情報と、前記什器情報とに基づいて前記利用者が前記什器に関与した度合いを示す利用者関与度を算出する関与度算出部と、
前記利用者関与度と、前記抗菌材情報と、前記什器情報と、に基づいて、前記什器に用いられた前記抗菌材の劣化度合いを推定する劣化度推定部と、を備える劣化度推定装置。
【請求項2】
前記利用者情報は、前記利用者が前記什器に関与する時間に関する情報を含む、請求項1に記載の劣化度推定装置。
【請求項3】
前記利用者情報は、前記利用者の前記什器に対する使用態様に関する情報をさらに含む請求項2に記載の劣化度推定装置。
【請求項4】
機械学習部を備える学習部をさらに備え、
前記記憶部は、前記利用者情報に基づいて、前記抗菌材の劣化度合いに対する前記利用者の関与度を測定した実測関与度をさらに記憶し、
前記機械学習部は、前記利用者情報と、前記実測関与度とに基づいて、前記利用者情報と、前記実測関与度との関係性を学習し、前記関与度算出部を生成する、請求項1から3のいずれか一項に記載の劣化度推定装置。
【請求項5】
抗菌材が用いられた什器に関与する利用者の情報である利用者情報を取得するセンサを備えた人検知装置と、劣化度推定装置と、ユーザ端末とを含む劣化度推定システムであって、
前記劣化度推定装置は、
前記利用者情報を、前記人検知装置から取得する利用者情報受付部と、
前記抗菌材の使用時間の経過に伴う前記抗菌材の劣化度合いを示す抗菌材情報と、前記什器に用いられる前記抗菌材の種類および使用時間を含む什器情報と、を記憶する記憶部と、
前記利用者情報と、前記抗菌材情報と、前記什器情報とに基づいて前記利用者が前記什器に関与した度合いを示す利用者関与度を算出する関与度算出部と、
前記利用者関与度と、前記抗菌材情報と、前記什器情報と、に基づいて、前記什器に用いられた前記抗菌材の劣化度合いを推定する劣化度推定部と、
前記抗菌材の劣化度合いの推定結果を、前記ユーザ端末に送信する出力部と、を備える、劣化度推定システム。
【請求項6】
コンピュータによって実行される劣化度推定方法であって、
抗菌材が用いられた什器に関与する利用者の利用者情報を、センサから取得し、
前記利用者情報と、記憶部に記憶された、前記抗菌材の使用時間の経過に伴う前記抗菌材の劣化度合いを示す抗菌材情報と、前記記憶部に記憶された、前記什器に用いられる前記抗菌材の種類および使用時間を含む什器情報と、に基づいて、前記利用者が前記什器に関与した度合いを示す利用者関与度を算出し、
前記利用者関与度と、前記抗菌材情報と、前記什器情報と、に基づいて、前記什器に用いられた前記抗菌材の劣化度合いを推定する、劣化度推定方法。
【請求項7】
抗菌材が用いられた什器に関与する利用者の利用者情報を、センサから取得し、
前記利用者情報と、記憶部に記憶された、前記抗菌材の使用時間の経過に伴う前記抗菌材の劣化度合いを示す抗菌材情報と、前記記憶部に記憶された、前記什器に用いられる前記抗菌材の種類および使用時間を含む什器情報と、に基づいて、前記利用者が前記什器に関与した度合いを示す利用者関与度を算出し、
前記利用者関与度と、前記抗菌材情報と、前記什器情報と、に基づいて、前記什器に用いられた前記抗菌材の劣化度合いを推定する処理を、コンピュータに実行させるための劣化度推定プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムを記録した、コンピュータが読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、劣化度推定装置、劣化度推定方法、および劣化度推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウイルス等による感染症への恐れから衛生に対する要求が高まっており、什器等に抗菌剤や抗菌シートを用いて、什器等の衛生度を高める抗菌の方法が提案されている。例えば、特許文献1には、酸化チタンの薄膜からなる抗菌脱臭シートを家具等に張り付け、酸化チタンの光触媒反応を利用した酸化作用により、微生物の活動を抑える抗菌脱臭シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-38191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された抗菌(脱臭)シートは、その抗菌の効果が時間の経過とともに劣化する。また、その抗菌シートの劣化の度合いは、抗菌シートの汚れ具合によっても異なる。特に、什器に抗菌シートが用いられている場合において、什器を利用する人の什器に関与する度合いによって、抗菌シートの汚れ具合は異なる。すなわち、人が什器等に関与した度合いによって抗菌シートの汚れ具合が異なり、これにより抗菌シートの劣化の度合いも異なる。そのため、ユーザ(例えば什器を管理する者)が、抗菌シートの劣化度合いや交換タイミングを把握することが難しくなる。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、什器に用いられた抗菌シートの劣化度を推定することができる劣化度推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る劣化度推定装置は、抗菌材が用いられた什器に関与する利用者の情報であって、センサによって取得される利用者情報を、センサを備えた人検知装置から受け付ける利用者情報受付部と、抗菌材の使用時間の経過に伴う抗菌材の劣化度合いを示す抗菌材情報と、什器に用いられる抗菌材の種類および使用時間を含む什器情報と、を記憶する記憶部と、利用者情報と、抗菌材情報と、什器情報とに基づいて利用者が什器に関与した度合いを示す利用者関与度を算出する関与度算出部と、利用者関与度と、抗菌材情報と、什器情報と、に基づいて、什器に用いられた抗菌材の劣化度合いを推定する劣化度推定部と、を備える。
【0007】
本発明の第2の態様に係る劣化度推定システムは、抗菌材が用いられた什器に関与する利用者の情報である利用者情報を取得するセンサを備えた人検知装置と、劣化度推定装置と、ユーザ端末とを含む劣化度推定システムであって、劣化度推定装置は、利用者情報を、人検知装置から取得する利用者情報受付部と、抗菌材の使用時間の経過に伴う抗菌材の劣化度合いを示す抗菌材情報と、什器に用いられる抗菌材の種類および使用時間を含む什器情報と、を記憶する記憶部と、利用者情報と、抗菌材情報と、什器情報と、に基づいて利用者が什器に関与した度合いを示す利用者関与度を算出する関与度算出部と、利用者関与度と、抗菌材情報と、什器情報と、に基づいて、什器に用いられた抗菌材の劣化度合いを推定する劣化度推定部と、抗菌材の劣化度合いの推定結果を、ユーザ端末に送信する出力部と、を備える。
【0008】
本発明の第3の態様に係る劣化度推定方法は、コンピュータによって実行される劣化度推定方法であって、抗菌材が用いられた什器に関与する利用者の利用者情報を、センサから取得し、利用者情報と、記憶部に記憶された、抗菌材の使用時間の経過に伴う抗菌材の劣化度合いを示す抗菌材情報と、記憶部に記憶された、什器に用いられる抗菌材の種類および使用時間を含む什器情報と、に基づいて、利用者が什器に関与した度合いを示す利用者関与度を算出し、利用者関与度と、抗菌材情報と、什器情報と、に基づいて、什器に用いられた抗菌材の劣化度合いを推定する。
【0009】
本発明の第4の態様に係る劣化度推定プログラムは、抗菌材が用いられた什器に関与する利用者の利用者情報を、センサから取得し、利用者情報と、記憶部に記憶された、抗菌材の使用時間の経過に伴う抗菌材の劣化度合いを示す抗菌材情報と、記憶部に記憶された、什器に用いられる抗菌材の種類および使用時間を含む什器情報と、に基づいて、利用者が什器に関与した度合いを示す利用者関与度を算出し、利用者関与度と、抗菌材情報と、什器情報と、に基づいて、什器に用いられた抗菌材の劣化度合いを推定する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、什器に用いられた抗菌シートの劣化度を推定することができる劣化度推定装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る劣化度推定システムの一例を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る劣化度推定装置の一例を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態に係る利用者情報の一例を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る抗菌材の使用時間と抗菌活性量との関係を説明するための図である。
図5】第1の実施形態に係る什器情報の一例を示す図である。
図6】第1の実施形態に係る劣化度推定結果の画面表示の一例を示す図である。
図7】第1の実施形態に係る人検知装置の一例を示すブロック図である。
図8】第1の実施形態に係る劣化度推定システムの処理を説明するためのフローチャート(シーケンス図)である。
図9】第2の実施形態に係る利用者情報の一例を示す図である。
図10】第3の実施形態に係る劣化度推定装置105の機能を説明するための機能ブロック図である。
図11】他の実施形態に係る他の検知情報を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本実施形態に係る劣化度推定システムについて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続状態、ならびにステップ、およびステップの順序などは、一例であり、本開示に限定する主旨ではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。さらに、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0013】
(劣化度推定システムの概要)
本実施形態に係る劣化度推定システム1は、什器に用いられた抗菌シートの劣化度合いを推定するシステムである。以下に、劣化度推定システム1について幾つかの具体的な実施形態を参照して説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、劣化度推定システム1の概略を示す構成図である。劣化度推定システム1は、サーバ10と、ユーザ端末30と、ネットワーク40と、人検知装置200と、を含んで構成される。サーバ10は、ネットワーク40を介して、人検知装置200からの情報を受け付ける。人検知装置200は、例えば事務所や会議室等(以下、部屋20とする)の特定のエリアの天井に設けられ、人の存在の有無を検知するセンサを備えた複数の装置である。また、部屋20には、什器21が設置され、什器21には、抗菌材として抗菌シート22が貼られている。抗菌シート22に用いられる抗菌材は、物質表面の微生物の増殖を抑制、あるいは生菌数を減少させる機能を有する材料である。例えば、抗菌材は、有機系や銅、銀などの金属系の抗菌物質を材料に混合、あるいはコーティングすることで抗菌性をもたせている。第1の実施形態において、抗菌シート22は、酸化チタン(TiO)をコーティングし、酸化チタンの光触媒による抗菌効果を利用するものである。なお、抗菌シート22に用いられる抗菌材は、酸化チタンに限定されず、酸化チタン以外の抗菌効果をもつ抗菌材を用いることも可能である。
【0015】
人23は、什器21を利用する利用者である。なお、人検知装置200によって検知される人23(利用者)は、什器21を直接的に利用する人に限定されず、例えば、什器21の近くに一定の時間滞在した人23も含まれる。
【0016】
ユーザ端末30は、例えばパーソナルコンピュータで構成され、通常、什器21の管理者等によって操作される。什器21の管理者等は、ユーザ端末30を通じて、対象となる什器21に用いられた抗菌シート22の劣化度合いを確認することができる。なお、ユーザ端末30を、タブレットやスマートフォン等のモバイル機器で構成しても良い。また、ユーザ端末30は、ネットワーク40を介して、サーバ10と相互に通信可能である。すなわち、ネットワーク40は、サーバ10と、人検知装置200およびユーザ端末30とが、相互に通信可能な通信網であり、例えば、携帯電話網であるキャリア網、または、インターネットで構成される。
【0017】
サーバ10は、劣化度推定装置100を備える。劣化度推定装置100は、図1に示すように、制御部110と、記憶部120と、入出力IF130と、ネットワークIF140とを含んで構成される。なお、図1に示す劣化度推定装置100の構成例は、あくまでも一例にすぎず、本実施形態はこれに限定されない。例えば、サーバ10は、制御部110において実施される各機能を実施可能とする1台または複数台のコンピュータに置き換えることもできる。
【0018】
図2は、劣化度推定装置100の機能を説明するための機能ブロック図である。
【0019】
図2に示すように、制御部110は、利用者情報受付部111と、関与度算出部112と、劣化度推定部113とを機能として備える。制御部110は、例えば、オペレーションシステムを動作させて、サーバ10全体を制御する。さらに、制御部110は、記憶部120に格納されたプログラム(図示なし)に基づいて動作し、利用者情報受付部111と、関与度算出部112と、劣化度推定部113に備える各機能を実行する。なお、プログラムは、記憶部120に格納される形態に限定されず、例えば、劣化度推定装置100内の、ROM等(図示なし)に記憶された構成としてもよい。なお、利用者情報受付部111、関与度算出部112、および劣化度推定部113の詳細については、後述する。
【0020】
記憶部120は、図2に示すように、利用者情報121と、抗菌材情報122と、什器情報123と、利用者関与度124と、劣化度125とをデータとして格納する。なお、これらの各データを格納する記憶部120は、1つであっても複数であっても良い。例えば、1つの記憶部120に対し、領域を分けて記憶する構成としてもよい。あるいは、物理的に離れた場所に設置された複数の記憶装置に、データが分散して格納されていても良い。
【0021】
入出力IF130は、例えば、ユーザがサーバ10との間においてデータをやり取りするための構成要素(Interface、インタフェース)であり、例えば、図2に示すような、入力部131と、出力部132とを含んで構成される。
【0022】
入力部131は、ユーザによるさまざまな情報を入力するためのインタフェース機能を有し、サーバ10の外部より情報が入力される。入力部131には、サーバ10と接続された、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、トラックボール、および、音声認識デバイス等を通じてユーザによって情報が入力される。また、入力部131は、外部記憶装置(図示なし)等からデータを入力するためのデータ入力端子として、情報を入力することができる。本実施形態においては、図2に示すように、入力部131を介して、抗菌材情報122および什器情報123が入力される構成となる。ただし、抗菌材情報122および什器情報123の入力は、入力部131を介したユーザの操作により、ネットワークIF140から入力される構成としてもよい。
【0023】
出力部132は、サーバ10に接続された表示装置(図示なし)に、劣化度推定結果等を表示させる。表示装置は、例えば、ディスプレイ装置、プロジェクター装置などである。なお、劣化度推定結果等が表示される表示装置は、ユーザ端末30とすることも可能であり、その場合、ネットワークIF140を介して、劣化度推定結果等が、ユーザ端末30に送られる。
【0024】
ネットワークIF140は、有線および/または無線ネットワークを介して、人検知装置200およびユーザ端末30と、サーバ10との通信を行うためのインタフェースである。
【0025】
(劣化度推定装置100の機能的構成)
次に、図2に示す機能ブロック図を用いて、劣化度推定装置100の機能について説明する。
【0026】
利用者情報受付部111は、人検知装置200で検知した利用者に関する情報を、ネットワークIF140を介して受け付け、記憶部120の利用者情報121を記憶する領域に格納する。図3に、記憶部120に格納された利用者情報121の一例を示す。図3に示す利用者情報121は、例えば什器番号が001番の什器21に関して、利用者が利用した年月日、人数、および累計利用時間が格納されている。なお、本実施形態において累計利用時間は、各利用者の合計時間(のべ時間)である。
【0027】
関与度算出部112は、利用者情報121、抗菌材情報122、および什器情報123に基づいて、利用者が什器21に関与した度合いを示す利用者関与度124を算出する。
【0028】
抗菌材情報122は、図4に示すように、抗菌シート22に使用された抗菌材の使用時間の経過に伴う抗菌活性量の低下具合を示す情報である。なお、抗菌活性量は、物質の表面における細菌の増殖を抑制する状態を数値で示したものであり、この数値が大きいほど細菌の増殖を抑制する力が強い状態であることを示す。図4において、抗菌活性量ASは、抗菌材の使用開始時の抗菌活性量を示す。また、抗菌活性量AEは、抗菌材の取り換えタイミングである抗菌活性量を示す。また、抗菌活性量は、時間の経過とともに、その値は低下し、細菌の増殖を抑制する力が低下する。すなわち、抗菌材情報122は、抗菌材の使用時間の経過にともなう抗菌材の劣化度合いを示している。図4において、線L1は、抗菌材の自然劣化の度合いを示している。図4の使用時間0において、抗菌活性量は、ASであり、時間TEにおいては、抗菌活性量がAE(取り換えタイミング)となる。また、線L2は、抗菌材に対し、人が使用し続けた場合の劣化度合いを示す線である。線L2は、ある一定時間において人が利用した場合の劣化度合いを検証し、それを線L2に補完したグラフである。例えば、図4に示す例においては、時間TUにおいて、抗菌材の取り換えタイミングである抗菌活性量(AE)に達していることが示されている。なお、図4に示す抗菌材の使用時間と抗菌活性量の関係を示すグラフは、抗菌材の劣化具合を説明するため線L1および線L2を直線で示したが、これに限定されず、線L1および線L2が曲線で示されるものであってもよい。
【0029】
什器情報123は、図5に示すように、什器21に用いられた抗菌材の種類、抗菌材の使用開始日、および抗菌材の使用時間を含んで格納されている。本実施形態において、関与度算出部112は、関与度の算出の対象となる什器21の抗菌材の使用時間を抽出し、図4に示すグラフにおける、この使用時間での線L1と、線L2との差分値を算出する。その後、関与度算出部112は、利用者情報121の累計利用時間を、抗菌材の使用時間で割り、割合を算出する。この割合と差分値を積算したものが利用者関与度124となる。すなわち、ある時間Tにおける利用者関与度124は、式(1)で示すことができる。式(1)において、利用者関与度124は、URで示す。なお、L1(T)およびL2(T)は、それぞれ時間TにおけるL1およびL2の抗菌活性量を示す。また、Cは、利用者情報121における累計利用時間を示す。
UR = (L1(T)-L2(T))×(C/T) ・・・(1)
【0030】
すなわち、什器21を利用者が全く利用していない場合、累計使用時間Cは0となり、利用者関与度124は0となる。一方で、什器21を一人の利用者が使用し続けたと仮定した場合、累計使用時間Cは、Tとなり、利用者関与度124は、差分(L1(T)-L2(T))となる。さらに、什器21を複数の利用者が使用し続けたと仮定した場合、累計使用時間Cは、Tより大きな値となり、利用者関与度124は、差分(L1(T)-L2(T))より大きな値となる。
【0031】
利用者関与度124は、記憶部120に格納される。なお、利用者関与度124は、対象となる什器の什器番号と対応付けて格納される。例えば、図5に示すように、什器情報123に対応付けて格納されてもよい。
【0032】
劣化度推定部113は、利用者関与度124、抗菌材情報122、および什器情報123に基づいて、什器21に用いられた抗菌材の劣化度125を推定する。
【0033】
具体的には、劣化度推定部113は、什器情報123に示す抗菌材の使用時間に対応する自然劣化を示す線L1の点を特定する。さらに劣化度推定部113は、その点から、利用者関与度124の分だけ、劣化させた(グラフにおいてしたマイナス方向に移動させた)点を算出する。この点が、抗菌材の劣化度125(劣化度合い)である。例えば、図4において、使用時間T1において、劣化度D1が算出されている。また、図4の使用時間T2においては、劣化度D2が算出されている。この劣化度125が、抗菌材の取り換えタイミングの抗菌活性量AEより上位側(プラス側)に位置するか、下位側(マイナス側)に位置するかを判定し、抗菌シート22の取り換えタイミングを判定する。
【0034】
劣化度125が抗菌活性量AEより上位側(プラス側)に位置する場合には、まだ抗菌活性量が存在するため、取り換えタイミングではないと判定する。一方で、劣化度125が抗菌活性量AEより下位側(マイナス側)に位置する場合には、抗菌活性量が取り換えタイミングである抗菌活性量AEより少ないため、取り換えタイミングであると判定する。例えば、図4に示す例では、使用時間T1における劣化度D1は、抗菌活性量AEより上位側に位置するため、抗菌材の取り換えタイミングではないと判定される。一方で、使用時間T2における劣化度D2は、抗菌活性量AEより下位側に位置するため、抗菌材の取り換えタイミングであると判定される。
【0035】
推定された劣化度125は、記憶部120に格納される。また、推定された劣化度125は、対象となる什器21の什器番号と対応付けて格納される。なお、推定された劣化度125は、符号化するようにし、例えば判定結果として複数の段階レベルで示されてもよい。図5に示すように、推定された劣化度125をAからFまでの6段階で判定し、交換の必要がある劣化度125をFとし、劣化がほとんど進んでいない場合の劣化度125をAとし、その間のレベルを段階的に、例えば、B~Eの判定結果を付与してもよい。このように、推定された劣化度125の判定結果を符号化して複数の段階レベルで示すことにより、抗菌シート22の劣化度合いを定量的に把握することが可能となる。
【0036】
また、劣化度推定部113によって推定された劣化度125は、什器情報123に関連付けられて、出力部132により出力される。例えば、図6に示す画面がサーバ10の接続されたディスプレイに表示される。ただし、劣化度125の出力は、サーバ10のディスプレイに表示される形態には限定されない。例えば、劣化度125が出力部132の代わりにネットワークIF140を通じてユーザ端末30に送信され、各ユーザ端末30から什器の推定された劣化度125を確認することも可能である。例えば、図6に示す例では、あるフロアマップにおいて、カーソル300を対象となる什器21に合わせてクリックすることで、什器情報が表示された例を示している。
【0037】
次に、人検知装置200について説明する。人検知装置200は、検知領域からの赤外線の受光強度の変化に基づいて、人の存在の有無を検知する。人検知装置200は、図7に示すように、焦電センサ210と、検知装置220と、を備えている。
【0038】
焦電センサ210は、受光素子211と、変換回路212と、増幅回路213と、A/D変換器214とを有している。受光素子211は、焦電素子であって、検知の対象となる領域からの赤外線の受光強度の変化に応じた信号(電気信号)を出力する。変換回路212は、受光素子211から出力される電気信号を、電流信号から電圧信号に変換する。増幅回路213は、変換回路212から出力される電圧信号を増幅する。A/D変換器214は、増幅回路213から出力されるアナログ信号(電圧信号)を、デジタル信号に変換する。
【0039】
A/D変換器214からの信号は、焦電用バッファ221を介して焦電用フィルタ部222に入力される。焦電用フィルタ部222は、特定の周波数成分を減衰または増幅させる。
【0040】
第1の実施形態において、検知装置220は、例えばプロセッサおよびメモリを有するマイクロコンピュータで構成されている。そして、プロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、マイクロコンピュータが制御部として機能する。プロセッサが実行するプログラムは、ここではマイクロコンピュータのメモリに予め記録されているが、メモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて提供されてもよい。
【0041】
受光素子211から出力された信号は、上述の通り、変換回路212、増幅回路213、A/D変換器214、焦電用バッファ221および焦電用フィルタ部222を介して、検知制御部223へ入力される。焦電用フィルタ部222は、焦電センサ210の出力から交流成分を抽出する。焦電用フィルタ部222が通過させる周波数帯域は、例えば、0.3Hz~1Hzに設定されている。焦電用フィルタ部222の出力信号は、低周波成分(直流成分を含む)が除去された交流信号になる。
【0042】
記憶部224は、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等から選択されるデバイスを有している。記憶部224は、領域(部屋20)への進入検知の際に用いる閾値(進入検知用閾値)および滞在検知の際に用いる閾値(滞在検知用閾値)を記憶する。さらに記憶部224は、滞在検知として設定される最小の値(最小閾値)を記憶する。すなわち、人検知装置200は、設置される場所において、進入検知用閾値または滞在検知用閾値の一方を用いて、人の進入または人の滞在を検知する。
【0043】
人の滞在を検知する人検知装置200において検知制御部223は、焦電センサ210の出力信号の出力値に基づいて、検知対象となる領域内での人の在否を検知する。すなわち、焦電用フィルタ部222の出力信号が滞在検知用閾値を超えたか否かを判定する。焦電用フィルタ部222の出力信号が滞在検知用閾値を超えている場合、人が滞在していると判定する。一方で、焦電用フィルタ部222の出力信号が滞在検知用閾値を超えていない場合、人は滞在していないと判定する。
【0044】
また、什器21のない場所には、進入検知用の人検知装置200が設けられ、検知制御部223は、進入検知用閾値に基づいて人の出入りを検出する。人検知装置200は、人の通過に対し、進入検知用閾値を超えたか否かを判定し、進入検知用閾値を超えた場合には、人が通過したと検知する。すなわち、複数の人検知装置200の検知状態により、人の出入りを検出し、什器21に向かう人、および什器21から離れる人を検出することで、什器21に関与する人数をカウントすることが可能となる。
【0045】
人検知装置200によって検知された人の人数、および人の滞在時間は、記憶部224に記憶され、所定のタイミングでネットワークIF225を介して、サーバ10に送られる。
【0046】
(劣化度推定システム1の処理フローの概略)
次に、劣化度推定システム1の動作の一例のフローチャートについて、図8に基づいて説明する。
【0047】
ステップS801において、人検知装置200は、什器21に関与する人23(利用者)を検知する。具体的には、人検知装置200は、什器21に関与した人23の人数、および関与した累計時間を検知する。
【0048】
ステップS802において、劣化度推定装置100の利用者情報受付部111は、人検知装置200で検知した人23(利用者)に関する情報を人検知装置200から受け付け、記憶部120の利用者情報121の領域に記憶する。次に、ステップS803に進む。
【0049】
ステップS803において、劣化度推定装置100の関与度算出部112は、利用者情報121と、抗菌材情報122と、什器情報123とに基づいて利用者が什器21に関与した度合いを示す利用者関与度124を算出し、利用者関与度124の領域に記憶する。なお、利用者関与度124の算出の詳細については、上述の通りであるため、ここでは説明を省略する。次に、ステップS804に進む。
【0050】
ステップS804において、劣化度推定装置100の劣化度推定部113は、利用者関与度124と、抗菌材情報122と、什器情報123と、に基づいて、什器21に用いられた抗菌材の劣化度125を推定する。さらに劣化度推定部113は、推定された劣化度125を複数の段階レベルで符号化し、記憶部120の劣化度125の領域に記憶する。なお、劣化度125の推定の詳細については、上述の通りであるため、ここでは説明を省略する。次に、ステップS805に進む。
【0051】
ステップS805において、劣化度推定装置100の出力部132は、什器21に用いられた抗菌シート22の劣化度125を出力する。ステップS805の出力は、例えば、ユーザが表示装置の画面を介して指定した什器21に対する抗菌シート22の劣化度125を、ユーザが指定した画面上に表示させる。なお、劣化度125が表示される画面は、サーバ10に接続された表示装置、またはユーザ端末30の表示装置に表示される。ここでは、ユーザ端末30の表示装置において劣化度125が表示されるものとして説明を行う。
【0052】
ステップS806において、ユーザ端末30(表示装置)に劣化度125の推定結果が表示される。ユーザは、表示装置に表示された劣化度125の推定結果を確認する。
【0053】
ステップS807において、ユーザは、表示装置に表示された劣化度125の推定結果に基づいて、対応が必要か否か、を判定する。什器21の抗菌シート22の劣化が進んでおり、什器21に対して対応が必要な場合(ステップS807:YES)には、S808に進む。一方で、ユーザが什器21の抗菌シート22の劣化は進んでおらず、什器21に対して交換等の対応が必要ないと判定した場合には(ステップS807:NO)、劣化度推定システム1に関する処理を終了する。
【0054】
ステップS808において、ユーザは、ユーザ端末30の画面から指示を与え、エリア設備の制御を行う。本実施形態においては、例えば、什器21が配置されたエリア(部屋20)のブラインド(図示なし)を開ける制御を行い、什器21の抗菌シート22に対し、紫外線が多く当たるようにする。例えば、本実施形態で用いられる抗菌シート22は、酸化チタンが用いられており、この抗菌シート22に紫外線を照射させることで、抗菌効果を向上させることができる。また、ステップS808において、什器21が配置されたエリア(部屋20)の空気清浄器(図示なし)の制御を行い、什器21付近の空間の空気を洗浄させることで、什器21に用いられる抗菌シート22の劣化度合いを遅らせることも可能となる。
【0055】
ステップS809において、什器21が配置されたエリア(部屋20)の設備は、上述のステップS808で制御された内容に従って、エリア設備の制御を行う。また、劣化度125の推定結果により、什器21に用いられる抗菌シート22の劣化が進み、取り換えが必要であると判断した場合には、ユーザによって直接、抗菌シート22が取り換えられる。
【0056】
上述の通り、第1の実施形態に係る劣化度推定システム1は、抗菌材が用いられた什器21に関与する利用者に関する情報である利用者情報121に基づいて、什器21に用いられた抗菌シート22の劣化度を推定することができる。これにより、什器21を管理する者は、抗菌シート22のより正確な劣化度を認識することが可能となり、抗菌シート22の交換タイミング等を把握することが可能となる。また、劣化度推定装置100の関与度算出部112は、利用者が什器21に関与する時間に関する情報を利用者情報121として用いて、利用者関与度124を算出する。これにより、関与度算出部112は、利用者の関与度がより正確に反映された利用者関与度124を算出することが可能となる。
【0057】
(第2の実施形態)
以上のとおり、具体的な実施形態を一つ説明したが、上述した実施形態は例示であって実施形態を限定するものではない。例えば、上述の実施形態では、人検知装置200が焦電センサ210により利用者の利用時間を検知する形態を例示した。ここではさらに、人検知装置200において、カメラ等の撮像装置や音声を収音するマイクによって利用者の使用態様を検知する第2の実施形態に係る劣化度推定システム1について、第1の実施形態と異なる構成について説明する。
【0058】
図9は、第2の実施形態に係る人検知装置200において取得された利用者情報121の一例を示す図である。図9に示す利用者情報121は、第1の実施形態における利用者情報121に加え、「什器との距離」、「発声時間」、および「防塵対応」が追加されている。なお、「什器との距離」、「発声時間」、および「防塵対応」は、利用者の什器21に対する使用態様に相当する。
【0059】
「什器との距離」は、利用者と対象となる什器21との物理的な距離を示す。第2の実施形態においては、「什器との距離」は、5段階で数値化され、例えば、什器21との距離が近い場合を1とし、什器21との距離が遠い場合を5とする。例えば、利用者が実際に什器21に触れた場合には1とし、利用者が什器21と所定の距離離れている場合には5とする。第2の実施形態において「什器との距離」が5となる所定の距離は、例えば1mとし、利用者が什器21に近づくにつれ、値が減るものとする。この「什器との距離」は、値の割合だけ利用者関与度124から減らすものとする。より具体的には、「什器との距離」の値が5から1になるのにしたがい、それぞれ対応する値(0)、(0.25)、(0.5)、(0.75)、および(1)を累計利用時間に積算するものとする。すなわち、「什器との距離」が5の場合には、その時間における利用者関与度124の算出において、累計利用時間として0が用いられる。一方で、「什器との距離」が1の場合には、利用者関与度124の算出には、累計利用時間そのままの値が用いられる。
【0060】
「発声時間」は、例えば撮像装置等に備えられたマイクにより利用者による発声を収音し、利用者の会話や、電話での発話等の時間を集計したものである。この「発声時間」は、例えば累計利用時間に加算する形で関与度算出に用いられる。すなわち、利用者の「発声時間が」が長いほど、利用者関与度124が増えることになる。
【0061】
「防塵対応」は、例えば利用者が、手袋、マスク、帽子等の防塵対応をしているか否かを、カメラ等の撮像装置で認識し、利用者が防塵対応しているか否かを示すものである。この「防塵対応」がなされている場合には、関与度算出において、利用者関与度124の値が、減算されるものとする。例えば、「防塵対応」がなされている時間においては、累計利用時間に値(0.5)を積算するなど「防塵対応」の効果を累計利用時間に反映させる。なお、「防塵対応」は、上述の手袋、マスク、帽子等の使用に限定されるものではなく、利用者の衣服の種類や、メガネの着用の有無等を考慮に入れる形態としてもよい。
【0062】
上述の通り、第2の実施形態に係る劣化度推定システム1は、利用者の什器の使用態様をさらに詳しく取得し、それを利用者関与度124に反映させる。什器21の利用者の具体的な使用態様によって、利用者関与度124は大きく異なり、つまりは実際の劣化度125の推定精度も大きく異なってくる。第2の実施形態に係る劣化度推定システム1により、より正確な利用者関与度124が算出でき、抗菌材の劣化度125の推定精度を向上させることができる。
【0063】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、第1および/または第2の実施形態と同じ符号を用いる場合、第1および/または第2の実施形態と同一の構成を示し、特に説明がない限り先行する説明を参照する。以下、あらかじめ機械学習させた学習済モデルを用いて利用者関与度124を算出する、第3の実施形態に係る劣化度推定システム1について、第1および/または第2の実施形態と異なる構成について説明する。
【0064】
図10に第3の実施形態に係る劣化度推定装置105の機能を説明するための機能ブロックを示す。図10に示すように、劣化度推定装置105は、学習部150を備える点で、第1および第2の実施形態に係る劣化度推定装置100と異なる。
【0065】
学習部150は、機械学習部151を備える。また、記憶部120は、記憶部120に記憶された情報として利用者情報152と、関与度153とを備える。なお、学習部150の利用者情報152と、利用者情報121は同じものであってもよい。
【0066】
関与度153は、利用者情報152に基づいて、実際の抗菌シート22の劣化度合いをあらかじめ実験等により測定し算出したものである。具体的には、ユーザは、様々な利用者情報152における什器21の利用状態において、細菌の増殖の抑制具合を検証し、どの程度抗菌活性量が低下したかを測定し、抗菌活性量の低下具合を関与度153として定める。この利用者情報152と、実測により定められた関与度153と、のセットを学習用データとする。なお、関与度153は、実測関与度に相当する。
【0067】
機械学習部151は、上述の学習用データを教師データとして機械学習部151に入力し、機械学習部151に、利用者情報152と関与度153との関係性を学習させることにより、学習済モデルとして、関与度算出部115を生成する。具体的には、利用者情報152とそれに対応する関与度153を教師付きデータとして機械学習部151の入力データとして用いる。例えば、機械学習部151にはニューラルネットワークのモデルが用いられる。機械学習部151に用いられるニューラルネットワークモデルは、DNN(ディープニューラルネットワーク)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)または、再帰型ニューラルネットワーク(RNN、LSTM)等のモデルが適用できる。ただし、ニューラルネットワークモデルの種類は本実施形態を限定するものではない。
【0068】
また、学習部150は、劣化度推定装置105内に設けられる構成に限定されない。例えば、抽出した利用者情報152に基づいて関与度153を生成し、これらの学習セットをサーバ10以外のシステムで学習させて、学習済モデルとして関与度算出部115を生成する構成としてもよい。この場合、関与度算出部115は、サーバ10の外部より入力部131あるいは、ネットワークIF140を介して、劣化度推定装置105の制御部110に取り込まれるものとする。
【0069】
上述の通り、第3の実施形態に係る劣化度推定装置105では、実際に学習させた学習済モデルである関与度算出部115を用いることにより、利用者関与度124が算出される。これにより、より正確な利用者関与度124を取得することが可能となり、劣化度の推定においてより正確な推定が可能となる。
【0070】
(他の実施形態)
以上、本実施形態を説明したが、実施形態はこれらに限定されるものではなく、実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。また、さまざまな実施形態の一部または全部を組み合わせて新たな実施形態とすることも可能である。
【0071】
上述の実施形態において、劣化度推定システム1は、什器21に関与する利用者の情報を取得し、この利用者の関与度に基づいて、什器21に用いられた抗菌シート22の劣化度を推定し、推定結果を出力する形態である。しかし、抗菌シート22の劣化度を推定するのに用いられる情報は利用者の関与度に限定されず、例えば、エリアの混雑度や温度を用いてもよい。ユーザは、例えば、図11(a)に示すエリアの混雑度に関する情報と、什器21に用いられた抗菌シート22の劣化度の推定結果を確認し、什器21の抗菌シート22の劣化度に対する混雑度の影響度を認識することができる。また、同様にユーザは、図11(b)に示すエリアの温度に関する情報と、什器21に用いられた抗菌シート22の劣化度の推定結果を確認し、什器21の抗菌シート22の劣化度に対する温度の影響度を認識することができる。
【0072】
また、上述の混雑度や温度に関する情報を図10に示す機械学習部151の入力パラメータとして用いることで、関与度算出部115の正確性を向上させることができる。また、混雑度や温度以外にも、エリアの照度も同様に機械学習部151の入力パラメータとして用いることが可能である。エリアの照度を機械学習部151の入力パラメータとして用いることで、とくに酸化チタン等の抗菌材を抗菌シート22として用いる場合に、光触媒による抗菌作用の影響を学習に反映することが可能となり、関与度算出部115の正確性を向上させることができる。
【0073】
上述の実施形態において、劣化度推定システム1は、人検知装置200からネットワーク40を介して利用者情報等を集約し、什器21に用いられた抗菌シート22の劣化度を推定する、いわゆるクラウドコンピューティングとしての構成例を示した。しかし、劣化度推定システム1の構成は、これに限定されない。例えば、劣化度推定装置100を、部屋20ごとに設け、人検知装置200からネットワーク40を介して利用者情報を受け付け、抗菌シート22の劣化度を推定する、いわゆるエッジコンピューティングとして構成してもよい。その場合、ネットワーク40は、有線または近距離通信用の無線で構成することもできる。さらに、劣化度推定システム1をエッジコンピューティングとして構成した場合、ユーザ端末30を什器21ごとに対応させ、抗菌シート22の劣化度を表示させる簡易な表示部を什器21ごとに設ける構成とすることもできる。これにより、什器21の利用者は、什器21を利用するに際し、表示された劣化度に応じて利用する什器21を選択することが可能となる。
【0074】
また、上述の各実施形態において、什器21に抗菌シート22が用いられる例を示したが什器21に用いられる抗菌材は抗菌シート22に限定されない。例えば、抗菌シート22の代わりに抗菌剤をコーティングした構成とすることも可能である。さらに、什器21の代わりとして、例えば、家庭用の家具や店舗のショーケース等にも上述の実施形態を適用させることができる。
【0075】
以下に、本実施形態に係る劣化度推定装置100、劣化度推定方法、および、劣化度推定システム1の特徴について記載する。
【0076】
(1) 劣化度推定装置100は、以下の構成を有する。
(i)抗菌材が用いられた什器21に関与する利用者の情報であって、センサによって取得される利用者情報121を、センサを備えた人検知装置200から受け付ける利用者情報受付部111を含む。
(ii)抗菌材の使用時間の経過に伴う抗菌材の劣化度合いを示す抗菌材情報122と、什器21に用いられる抗菌材の種類および使用時間を含む什器情報123と、を記憶する記憶部120を含む。
(iii)利用者情報121と、抗菌材情報122と、什器情報123とに基づいて利用者が什器に関与した度合いを示す利用者関与度124を算出する関与度算出部112を含む。
(iv)利用者関与度124と、抗菌材情報122と、什器情報123と、に基づいて、什器21に用いられた抗菌材の劣化度合いを推定する劣化度推定部113を含む。
【0077】
本開示によれば、劣化度推定装置100は、抗菌材が用いられた什器21に関与する利用者に関する情報である利用者情報121に基づいて、什器21に用いられた抗菌シート22の劣化度を推定することができる。これにより、什器21を管理する者は、抗菌シート22のより正確な劣化度を認識することが可能となり、抗菌シート22の交換タイミング等を把握することが可能となる。
【0078】
(2)利用者情報121は、利用者が什器21に関与する時間に関する情報を含むことが好ましい。
【0079】
本開示によれば、劣化度推定装置100の関与度算出部112は、利用者が什器21に関与する時間に関する情報を利用者情報121として用いて、利用者関与度124を算出する。これにより、関与度算出部112は、利用者の関与度がより正確に反映された利用者関与度124を算出することが可能となる。
【0080】
(3)利用者情報121は、利用者の什器21に対する使用態様に関する情報をさらに含むことが好ましい。
【0081】
本開示によれば、利用者の什器21の使用態様をさらに詳しく取得し、それを利用者関与度124に反映させる。これにより、関与度算出部112は、より正確な利用者関与度124を算出することができるため、抗菌材の劣化度125の推定精度を向上させることができる。
【0082】
(4)劣化度推定装置105は、以下の構成をさらに有することが好ましい。
(v)機械学習部151を備える学習部150をさらに含むことが好ましい。
記憶部120は、利用者情報に基づいて、抗菌材の劣化度合いに対する利用者の関与度を測定した実測関与度をさらに記憶することが好ましい。さらに、機械学習部151は、利用者情報152と、実測関与度とに基づいて、利用者情報152と、実測関与度との関係性を学習し、関与度算出部115を生成することが好ましい。
【0083】
本開示によれば、劣化度推定装置105では、実際に学習させた学習済モデルである関与度算出部115を用いることにより、利用者関与度124が算出される。これにより、より正確な利用者関与度124を取得することが可能となり、劣化度の推定においてより正確な推定が可能となる。
【0084】
(5)劣化度推定システム1は、以下の構成を有する。
(i)抗菌材が用いられた什器に関与する利用者の情報である利用者情報121を取得するセンサを備えた人検知装置200と、劣化度推定装置100と、ユーザ端末30とを含む。
さらに、劣化度推定装置100は、以下の構成を有する。
(ii)利用者情報121を、人検知装置200から取得する利用者情報受付部111を含む。
(iii)抗菌材の使用時間の経過に伴う抗菌材の劣化度合いを示す抗菌材情報122と、什器に用いられる抗菌材の種類および使用時間を含む什器情報123と、を記憶する記憶部120を含む。
(iv)利用者情報121と、抗菌材情報122と、什器情報123とに基づいて利用者が什器21に関与した度合いを示す利用者関与度124を算出する関与度算出部112を含む。
(v)利用者関与度124と、抗菌材情報122と、什器情報123と、に基づいて、什器21に用いられた抗菌材の劣化度合いを推定する劣化度推定部113を含む。
(vi)抗菌材の劣化度合いの推定結果を、ユーザ端末30に送信する出力部132を含む。
【0085】
本開示によれば、劣化度推定システム1の劣化度推定装置100は、抗菌材が用いられた什器21に関与する利用者に関する情報である利用者情報121に基づいて、什器21に用いられた抗菌シート22の劣化度を推定することができる。これにより、什器21を管理する者は、抗菌シート22のより正確な劣化度を認識することが可能となり、抗菌シート22の交換タイミング等を把握することが可能となる。
【0086】
(6)コンピュータによって実行される劣化度推定方法は、以下の処理を有することが好ましい。
(i)抗菌材が用いられた什器21に関与する利用者の利用者情報121を、センサから取得する処理を含む。
(ii)利用者情報121と、抗菌材情報122と、什器情報123とに基づいて、利用者関与度124を算出する処理を含む。抗菌材情報122は、記憶部120に記憶され、抗菌材の使用時間の経過に伴う抗菌材の劣化度合いを示す。什器情報123は、記憶部120に記憶され、什器21に用いられる抗菌材の種類および使用時間を含む。利用者関与度124は、利用者が什器に関与した度合いを示す。
(iii)利用者関与度124と、抗菌材情報122と、什器情報123と、に基づいて、什器に用いられた抗菌材の劣化度合いを推定する、処理を含む。
【0087】
本開示によれば、劣化度推定方法によって、抗菌材が用いられた什器21に関与する利用者に関する情報である利用者情報121に基づいて、什器21に用いられた抗菌シート22の劣化度を推定することができる。これにより、什器21を管理する者は、抗菌シート22のより正確な劣化度を認識することが可能となり、抗菌シート22の交換タイミング等を把握することが可能となる。
【0088】
(7)コンピュータに実行させるための劣化度推定プログラムは、以下の処理を有する。
(i)抗菌材が用いられた什器21に関与する利用者の利用者情報121を、センサから取得する処理を含む。
(ii)利用者情報121と、抗菌材情報122と、什器情報123とに基づいて、利用者関与度124を算出する処理を含む。抗菌材情報122は、記憶部120に記憶され、抗菌材の使用時間の経過に伴う抗菌材の劣化度合いを示す。什器情報123は、記憶部120に記憶され、什器21に用いられる抗菌材の種類および使用時間を含む。利用者関与度124は、利用者が什器に関与した度合いを示す。
(iii)利用者関与度124と、抗菌材情報122と、什器情報123と、に基づいて、什器21に用いられた抗菌材の劣化度合いを推定する、処理を含む。
【0089】
本開示によれば、劣化度推定プログラムによって、抗菌材が用いられた什器21に関与する利用者に関する情報である利用者情報121に基づいて、什器21に用いられた抗菌シート22の劣化度を推定することができる。これにより、什器21を管理する者は、抗菌シート22のより正確な劣化度を認識することが可能となり、抗菌シート22の交換タイミング等を把握することが可能となる。
【0090】
(8)劣化度推定プログラム、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録した態様とすることができる。
【0091】
本開示によれば、劣化度推定プログラムを記録した記録媒体によって、抗菌材が用いられた什器21に関与する利用者に関する情報である利用者情報121に基づいて、什器21に用いられた抗菌シート22の劣化度を推定することができる。これにより、什器21を管理する者は、抗菌シート22のより正確な劣化度を認識することが可能となり、抗菌シート22の交換タイミング等を把握することが可能となる。
【符号の説明】
【0092】
1 劣化度推定システム
10 サーバ
20 部屋
30 ユーザ端末
40 ネットワーク
100、105 劣化度推定装置
110 制御部
111 利用者情報受付部
112、115 関与度算出部
113 劣化度推定部
120 記憶部
130 入出力IF
131 入力部
132 出力部
140 ネットワークIF
150 学習部
151 機械学習部
200 人検知装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11