(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】透過型蛍光発光モジュール及び発光装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20240607BHJP
F21V 29/502 20150101ALI20240607BHJP
F21V 29/77 20150101ALI20240607BHJP
F21V 29/67 20150101ALI20240607BHJP
F21V 9/32 20180101ALI20240607BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240607BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240607BHJP
【FI】
F21S2/00 377
F21S2/00 375
F21V29/502 100
F21V29/77
F21V29/67 100
F21V9/32
F21Y115:30
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2020202014
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】本多 洋介
(72)【発明者】
【氏名】北岡 信一
(72)【発明者】
【氏名】中島 功康
(72)【発明者】
【氏名】高平 宜幸
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-170326(JP,A)
【文献】特開2018-055055(JP,A)
【文献】特開2017-151213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 29/502
F21V 29/77
F21V 29/67
F21V 9/32
F21Y 115/30
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体材料によって構成されている基板である蛍光体基板と、
前記蛍光体基板の主面に接合して設けられる金属部材と、
前記蛍光体基板の厚み方向に延びる軸を中心として前記蛍光体基板及び前記金属部材を回転させる回転部と、を備え、
前記蛍光体基板を平面視したときに、前記蛍光体基板は、前記金属部材と重ならない円環形状の領域を有
し、
前記蛍光体基板は、
前記主面と、前記主面と背向する他の主面とを有し、
前記蛍光体材料を励起する励起光が前記主面側から前記領域に入射すると、入射した前記励起光が波長変換された光を前記他の主面側から出射させ、
前記金属部材は、複数の放熱フィンを有し、
前記複数の放熱フィンのそれぞれは、前記軸から最も離れた位置に、前記主面から前記他の主面に向かって広がる斜面である側面部を有する
透過型蛍光発光モジュール。
【請求項2】
前記金属部材は、前記蛍光体基板と積層されるように設けられる平板形状の本体部を有する
請求項1に記載の透過型蛍光発光モジュール。
【請求項3】
前記蛍光体基板を平面視したときに、前記本体部の形状は、円形状であって、
前記本体部の第1主面は、前記蛍光体基板の前記主面と接合し、
前記本体部の第2主面は、前記第1主面に背向し、
前記第1主面の面積は、前記第2主面の面積よりも大きい
請求項2に記載の透過型蛍光発光モジュール。
【請求項4】
前記蛍光体基板を平面視したときに、前記本体部と前記領域とは、隣接する
請求項2又は3に記載の透過型蛍光発光モジュール。
【請求項5】
前記蛍光体基板を平面視したときに、前記複数の放熱フィンは、前記軸を基準として放射状に延びるように設けられる
請求項
1に記載の透過型蛍光発光モジュール。
【請求項6】
前記蛍光体基板には、前記厚み方向に前記蛍光体基板を貫通する第1貫通孔が設けられ、
前記本体部には、前記厚み方向に前記本体部を貫通する第2貫通孔が設けられ、
前記蛍光体基板を平面視したときに、前記第1貫通孔の一部及び前記第2貫通孔の一部は重なる
請求項2~
4のいずれか1項に記載の透過型蛍光発光モジュール。
【請求項7】
前記蛍光体基板及び前記金属部材を覆うカバー本体部と、前記カバー本体部と接続された流路部であって前記回転部によって前記蛍光体基板及び前記金属部材が回転したときに発生する気流が流れる流路部と、を有するカバーをさらに備え、
前記蛍光体基板を平面視したときに、前記流路部は、前記領域と重なる
請求項
6に記載の透過型蛍光発光モジュール。
【請求項8】
前記蛍光体材料を励起する励起光であって、前記領域に入射する励起光を出射する光出射部を、さらに備える
請求項1~
7のいずれか1項に記載の透過型蛍光発光モジュール。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の透過型蛍光発光モジュールを備える
発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過型蛍光発光モジュール及び発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、励起光により励起され蛍光を発生する透過型蛍光発光モジュールが知られている。透過型蛍光発光モジュールは、例えば、プロジェクタなどの発光装置に応用されている。
【0003】
透過型蛍光発光モジュールの一例として、特許文献1には、光源装置が開示されている。この光源装置(透過型蛍光発光モジュール)は、板状のガラス部材で構成される蛍光体用基板と、蛍光発生部と、蛍光体用基板及び蛍光発光部の間に位置するダイクロイック膜と、蛍光発生部を励起する励起光を射出する光射出部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、励起光の照射により蛍光発生部の温度が高くなると、発生する蛍光が減少する現象(所謂、温度消光現象)が起こることが知られている。例えば、特許文献1で開示される透過型蛍光発光モジュールにおいては、蛍光発生部の放熱性が十分でないため温度消光現象が起こりやすく、この結果、蛍光発光部から出射される蛍光が減少する。よって、このような透過型蛍光発光モジュールでは、光の利用効率が低くなってしまう場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、光の利用効率が高い透過型蛍光発光モジュール及び発光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る透過型蛍光発光モジュールは、蛍光体材料によって構成されている基板である蛍光体基板と、前記蛍光体基板の主面に接合して設けられる金属部材と、前記蛍光体基板の厚み方向に延びる軸を中心として前記蛍光体基板及び前記金属部材を回転させる回転部と、を備え、前記蛍光体基板を平面視したときに、前記蛍光体基板は、前記金属部材と重ならない円環形状の領域を有する。
【0008】
また、本発明の一態様に係る発光装置は、上記の透過型蛍光発光モジュールを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光の利用効率が高い透過型蛍光発光モジュール及び発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1Aは、実施の形態に係る透過型蛍光発光モジュールの斜視図である。
【
図1B】
図1Bは、実施の形態に係る透過型蛍光発光モジュールの分解斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る蛍光体基板、金属部材及び回転部の平面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る蛍光体基板及び金属部材の下面図である。
【
図4】
図4は、
図1AのIV-IV線における透過型蛍光発光モジュールの一部の切断面を示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係るプロジェクタの外観を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係るプロジェクタにおける透過型蛍光発光モジュールを示す模式図である。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る筐体を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、検討例に係る透過型蛍光発光モジュールが備える蛍光体基板、金属部材及び回転部の平面図である。
【
図9】
図9は、実施の形態に係る蛍光体基板、金属部材及び回転部の平面図である。
【
図10】
図10は、検討例に係る透過型蛍光発光モジュールが備える蛍光体基板、金属部材及び回転部の斜視図である。
【
図11】
図11は、実施の形態に係る蛍光体基板、金属部材及び回転部の斜視図である。
【
図12】
図12は、検討例及び実施の形態に係る蛍光体基板の温度プロファイルを示す図である。
【
図13A】
図13Aは、実施の形態の変形例1に係る透過型蛍光発光モジュールの斜視図である。
【
図13B】
図13Bは、実施の形態の変形例1に係る透過型蛍光発光モジュールの分解斜視図である。
【
図14】
図14は、実施の形態の変形例2に係る透過型蛍光発光モジュールの斜視図である。
【
図15】
図15は、実施の形態の変形例3に係る蛍光体基板及び金属部材の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本発明の実施の形態に係る透過型蛍光発光モジュールなどについて、図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。
【0013】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0014】
本明細書において、平行又は直交などの要素間の関係性を示す用語、及び、円形状などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0015】
また、本明細書及び図面において、x軸、y軸及びz軸は、三次元直交座標系の三軸を示している。実施の形態では、蛍光体基板が有する第3主面と平行な2軸をx軸及びy軸とし、x軸及びy軸と直交する軸をz軸としている。
【0016】
(実施の形態)
[構成]
はじめに、本実施の形態に係る透過型蛍光発光モジュール1の構成について図面を用いて説明する。
図1Aは、本実施の形態に係る透過型蛍光発光モジュール1の斜視図である。
図1Bは、本実施の形態に係る透過型蛍光発光モジュール1の分解斜視図である。
【0017】
図1A及び
図1Bが示すように、透過型蛍光発光モジュール1は、蛍光体材料によって構成されている蛍光体基板10と、金属部材20と、回転部30と、2つの光出射部200とを備えるモジュールである。なお、簡単のため、
図1A及び
図1Bにおいては、1つの光出射部200が記載されている。以下の図においても同様に記載される場合がある。また、透過型蛍光発光モジュール1は、1つの光出射部200を備えてもよい。透過型蛍光発光モジュール1は、一例として、プロジェクタ及び照明装置などに代表される発光装置に用いられる。本実施の形態においては、透過型蛍光発光モジュール1は、プロジェクタに用いられる。
【0018】
本実施の形態においては、回転部30が蛍光体基板10などを軸B1を中心として
図1Aが示す矢印Rの方向に回転させ、さらに、蛍光体基板10が励起光L1を受光して蛍光を含む透過光L2を放つ。透過型蛍光発光モジュール1は、透過光L2を当該プロジェクタが出力する投射光として利用する光透過型のモジュールである。つまりは、蛍光体基板10は、光透過型の蛍光体ホイールとして利用される。
【0019】
以下、透過型蛍光発光モジュール1が備える構成要素について説明する。
【0020】
まず、光出射部200について説明する。
【0021】
光出射部200は、励起光L1を出射する光源である。励起光L1は、蛍光体基板10を構成する蛍光体材料を励起する光である。光出射部200は、例えば半導体レーザ光源又はLED(Light Emitting Diode)光源であり、駆動電流によって駆動されて所定の色(波長)の励起光L1を出射する。
【0022】
本実施の形態においては、光出射部200は、半導体レーザ光源である。なお、光出射部200が備える半導体レーザ素子は、例えば窒化物半導体材料によって構成されたGaN系半導体レーザ素子(レーザチップ)である。本実施の形態において、半導体レーザ光源である光出射部200は、コリメートレンズ一体型TO-CANタイプの発光装置である。なお、光出射部200は、特開2016-219779に示されているような、マルチチップタイプレーザーでもよく、コリメートレンズとTO-CANとが別体になっていてもよい。
【0023】
一例として、光出射部200は、波長380nm以上490nm以下にピーク波長を有する近紫外から青色の範囲内のレーザ光を励起光L1として出射する。このとき、励起光L1のピーク波長は、例えば455nmであり、励起光L1は青色光である。
【0024】
次に、蛍光体基板10について説明する。
【0025】
蛍光体基板10は、互いに背向する2つの主面を有する平板形状の基板である。2つの主面は、第3主面11及び第4主面12である。第3主面11及び第4主面12は、ここでは、平面である。
【0026】
さらに、
図2及び
図3を用いて、蛍光体基板10の詳細について説明する。
【0027】
図2は、本実施の形態に係る蛍光体基板10、金属部材20及び回転部30の平面図である。
図2においては、光出射部200は、省略されている。
図3は、本実施の形態に係る蛍光体基板10及び金属部材20の下面図である。
図3においては、回転部30と、光出射部200とは、省略されている。なお、z軸負方向から透過型蛍光発光モジュール1を見た場合を平面図、z軸正方向から透過型蛍光発光モジュール1を見た場合を下面図、とする。また、平面図での視点を平面視、下面図での視点を下面視、とする。
【0028】
蛍光体基板10は、平面視で円形状を有する基板であり、つまりは、円板形状を有する。ここで、蛍光体基板10が有する円形状の中心を、中心点C1とする。さらに、蛍光体基板10には第1貫通孔H1が設けられているため、より具体的には、蛍光体基板10の形状は円環形状である。第1貫通孔H1は、蛍光体基板10の厚み方向(z軸方向)に蛍光体基板10を貫通する孔であり、平面視で円形状の孔である。第1貫通孔H1が有する円形状の中心は、中心点C1と重なる。つまりは、蛍光体基板10は、蛍光体基板10の中心点C1からの距離が等しい円周上に円形のリング形状に設けられており、平面視において周方向に沿う帯状に設けられている。
【0029】
円環形状である蛍光体基板10の外径(つまりは、
図3の下面視で外側の円の直径)は、一例として30mm以上90mm以下であるとよく、35mm以上70mm以下であるとよりよく、40mm以上50mm以下であるとさらによいが、これに限られない。透過型蛍光発光モジュール1がプロジェクタに適用される場合には、当該プロジェクタが備える筐体に収まるように、蛍光体基板10の外径が定められる。
【0030】
また、蛍光体基板10の内径(つまりは、
図3の下面視で内側の円の直径)は、蛍光体基板10の外径よりも小さく、一例として15mm以上45mm以下であるとよく、17.5mm以上35mm以下であるとよりよく、20mm以上25mm以下であるとさらによいが、これに限られない。また、蛍光体基板10の内径は、第1貫通孔H1の直径でもある。
【0031】
蛍光体基板10の厚み(つまりは、z軸方向の長さ)は、50μm以上700μm以下であるとよい。蛍光体基板10の厚みは、80μm以上500μm以下であるとよりよく、100μm以上300μm以下であるとさらによい。
【0032】
蛍光体基板10は、蛍光体材料によって構成されている。つまりは、蛍光体基板10は、主成分である蛍光体材料のみによって構成されている部材である。より具体的には、蛍光体基板10は、蛍光体材料のみによって構成されている焼結蛍光体によって構成されている基板である。
【0033】
なお、ここで本明細書における焼結蛍光体について説明する。
【0034】
焼結蛍光体とは、上記の主成分である蛍光体材料(一例として、蛍光体材料の原料粉が造粒された造粒体)の原料粉が、蛍光体材料の融点よりも低い温度で焼成された焼成体である。また、焼結蛍光体は、焼成の過程での原料粉同士が結合される。そのため、焼結蛍光体は、造粒体同士を結合させるための結合剤をほとんど必要としない。より具体的には、焼結蛍光体は、結合剤を一切必要としない。結合剤とは、一例として、上記の特許文献1では、透明樹脂である。また、結合剤とは、Al2O3材料、及び、ガラス材料(つまりはSiOd(0<d≦2))などが公知の材料として用いられている。なお、同様に、結合剤に限られず、焼結蛍光体は、焼結蛍光体が有する蛍光体材料以外の材料(以下その他材料)をほとんど必要とせず、より具体的には、その他材料を一切必要としない。
【0035】
例えば、焼結蛍光体の全体の体積を100vol%としたとき、焼結蛍光体の全体の体積における蛍光体材料の体積が70vol%以上であるとよい。また、焼結蛍光体の全体の体積における蛍光体材料の体積が、80vol%以上であるとよりよく、90vol%以上であるとさらによく、95vol%以上であるとさらによりよくなる。
【0036】
なお、換言すると、焼結蛍光体の全体の体積を100vol%としたとき、焼結蛍光体の全体の体積におけるその他材料(例えば結合剤)の体積が30vol%未満であるとよい。また、焼結蛍光体の全体の体積におけるその他材料(例えば結合剤)の体積が、20vol%以下であるとよりよく、10vol%以下であるとさらによく、5vol%以下であるとさらによりよくなる。
【0037】
焼結蛍光体の全体の体積におけるその他材料のvol%が高い(つまり、その他材料の体積の割合が多い)と、蛍光体材料とその他材料との界面に存在する欠陥によりフォノン散乱が発生する。この結果、焼結蛍光体の熱伝導率が低下する。特に、その他材料の体積が30vol%以上で熱伝導率の低下が著しい。また、上記界面での非発光再結合も多くなり、発光効率が低下する。換言すると、焼結蛍光体の全体の体積におけるその他材料のvol%が低い(つまり、その他材料の体積の割合が少ない)ほど、熱伝導率、及び、発光効率が向上する。本発明の焼結蛍光体は、上記理由により、焼結蛍光体の全体の体積におけるその他材料の体積を30%未満としている。
【0038】
ここで、蛍光体材料について説明する。
【0039】
蛍光体材料は、例えば、ガーネット構造を有する結晶相によって構成されている材料である。ガーネット構造とは、A3B2C3O12の一般式で表される結晶構造である。元素Aには、Ca、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb及びLuなどの希土類元素が適用され、元素Bには、Mg、Al、Si、Ga及びScなどの元素が適用され、元素Cには、Al、Si及びGaなどの元素が適用される。このようなガーネット構造としては、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット(Yttrium Aluminum Garnet))、LuAG(ルテチウム・アルミニウム・ガーネット(Lutetium Aluminum Garnet))、Lu2CaMg2Si3O12(ルテチウム・カルシウム・マグネシウム・シリコン・ガーネット(Lutetium Calcium Magnesium Silicon Garnet))及びTAG(テルビウム・アルミニウム・ガーネット(Terbium Aluminum Garnet))などが挙げられる。本実施の形態においては、蛍光体材料は、(Y1-xCex)3Al2Al3O12(つまりは、(Y1-xCex)3Al5O12)(0.0001≦x<0.1)で表される結晶相、つまりはYAGによって構成されている。
【0040】
また、蛍光体材料がYAGによって構成されている場合、原料としてAl2O3が用いられる場合がある。この場合、焼結蛍光体において、未反応の原料としてAl2O3が残るときがある。しかし、未反応の原料であるAl2O3は、上記結合剤とは異なる。また、焼結蛍光体の全体の体積を100vol%としたとき、焼結蛍光体の全体の体積における未反応の原料であるAl2O3の体積は、5vol%以下である。
【0041】
なお、蛍光体材料を構成する結晶相は、化学組成の異なる複数のガーネット結晶相の固溶体であってもよい。このような固溶体としては、(Y1-xCex)3Al2Al3O12(0.001≦x<0.1)で表されるガーネット結晶相と(Lu1-yCey)3Al2Al3O12(0.001≦y<0.1)で表されるガーネット結晶相との固溶体((1-a)(Y1-xCex)3Al5O12・a(Lu1-yCey)3Al2Al3O12(0<a<1))が挙げられる。また、このような固溶体としては、(Y1-xCex)3Al2Al3O12(0.001≦x<0.1)で表されるガーネット結晶相と(Lu1-zCez)2CaMg2Si3O12(0.0015≦z<0.15)で表されるガーネット結晶相との固溶体((1-b)(Y1-xCex)3Al2Al3O12・b(Lu1-zCez)2CaMg2Si3O12(0<b<1))などが挙げられる。蛍光体材料が化学組成の異なる複数のガーネット結晶相の固溶体から構成されることで、蛍光体材料が放つ蛍光の蛍光スペクトルがより広帯域化し、緑色の光成分と赤色の光成分が増える。そのため、色域の広い投射光を放つプロジェクタを提供できる。
【0042】
また、蛍光体材料を構成する結晶相は、上記の一般式A3B2C3O12で表される結晶相に対して、化学組成がずれた結晶相が含まれていてもよい。このような結晶相としては、(Y1-xCex)3Al2Al3O12(0.001≦x<0.1)で表される結晶相に対してAlがリッチな(Y1-xCex)3Al2+δAl3O12(δは正の数)が挙げられる。また、このような結晶相としては、(Y1-xCex)3Al2Al3O12(0.001≦x<0.1)で表される結晶相に対してYがリッチな(Y1-xCex)3+ζAl2Al3O12(ζは正の数)などが挙げられる。これらの結晶相は、一般式A3B2C3O12で表される結晶相に対して、化学組成がずれているが、ガーネット構造は維持している。
【0043】
さらに、蛍光体材料を構成する結晶相には、ガーネット構造以外の構造を有する異相が含まれていてもよい。
【0044】
また、平面視したときに、蛍光体基板10は、金属部材20と重ならない円環形状の領域A1を有している。
図1B、
図2及び
図3のそれぞれにおいては、領域A1は、一点鎖線で示された2つの円の間の領域に該当する。領域A1の形状である円環形状の中心は、蛍光体基板10の中心点C1と重なる。また、領域A1には、励起光L1が入射する。より具体的には、光出射部200から出射された励起光L1は、第3主面11側(つまりはz軸負側)から領域A1に入射する。
【0045】
蛍光体基板10が有する領域A1において、YAGで構成される蛍光体材料は、励起光L1を受光して、蛍光を放つ。より具体的には、励起光L1が蛍光体材料に照射されることで、蛍光体材料から波長変換光として蛍光が放たれる。つまり、蛍光体材料から放たれる波長変換光は、励起光L1の波長よりも長い波長の光である。
【0046】
本実施の形態において、蛍光体材料から放たれる波長変換光には、黄色光である蛍光が含まれる。蛍光体材料は、例えば、波長が380nm以上490nm以下の光を吸収し、波長が490nm以上580nm以下の領域に蛍光ピーク波長を有する黄色光である蛍光を放つ。蛍光体材料がYAGで構成されることで、容易に波長が490nm以上580nm以下の領域に蛍光ピーク波長を有する蛍光を放つことができる。
【0047】
本実施の形態においては、
図1Aが示すように、入射した励起光L1の一部は、蛍光体材料によって波長変換されて、蛍光体基板10を透過して第4主面12側から出射される。また、入射した励起光L1の他部は、蛍光体材料によって波長変換されずに、蛍光体基板10を透過して第4主面12側から出射される。蛍光体基板10を透過した透過光L2は、波長変換された黄色光である蛍光と波長変換されていない青色光である励起光L1とを含む。つまり、透過光L2は、これらの光が複合された光であり、白色光である。
【0048】
また、蛍光体基板10は、他の構成要素によって支持されることを必要としない。つまり、蛍光体基板10は、リジッドな性質を有する。蛍光体基板10が焼結蛍光体であり、かつ、蛍光体基板10の厚みが上記範囲にあることで、蛍光体基板10はリジッドな性質を有する。また、特許文献1に開示されている蛍光体と透明樹脂とを含む塗料によって形成される蛍光発生部などと比較し、本実施の形態に係る蛍光体基板10は、はるかにリジッドな性質を有する。
【0049】
次に、金属部材20について説明する。
【0050】
金属部材20は、金属材料によって構成されている構成要素である。また、金属部材20は、蛍光体基板10の1つの主面に接合して設けられている部材である。本実施の形態においては、
図1A及び
図1Bが示すように、金属部材20は、蛍光体基板10よりもz軸負側に位置し、第3主面11に接合して設けられている。後に詳述するが、金属部材20の材質は、モータである回転部30への負荷と熱伝導性とを考慮し、軽量、かつ、高熱伝導であるAlが用いられている。
【0051】
本実施の形態においては、金属部材20は、蛍光体基板10の第3主面11に、接合層を介して接合している。この場合、接合層としては、回転部30と蛍光体基板10との熱膨張係数差を緩和するためシリコーン樹脂が使用されている。ただし、回転部30の材質は、Cu又はFeなど、他の材質でもよく、接着部材も、他のエポキシ樹脂、又は、ナノAg若しくはナノCuを含んだ高熱伝導性接着剤でもよい。また、接合層の厚みは、5μm以上40μm以下であればよく、10μm以上20μm以下であればよりよい。なお、金属部材20は、蛍光体基板10の第3主面11に、接着剤を使わず直接接する構造としてもよい。この場合、金属部材20ともう一つの部材(不図示)とで蛍光体基板10を挟み込み、金属部材と当該もう一つの部材とがボルト又はビスなどにより接合されるとよい。なお、接着剤を使用しない、挟み込み構造の場合、もう一つの部材は、放熱性の観点で金属で構成されているとよいが、樹脂材料で構成されていてもよい。
【0052】
さらに、本実施の形態に係る金属部材20は、本体部21と、複数の放熱フィン22とを有する。
【0053】
本体部21は、蛍光体基板10と積層されるように設けられる平板形状の部材である。また、本体部21は、互いに背向する2つの主面を有する。2つの主面は、第1主面211と第2主面212とである。第1主面211及び第2主面212は、ここでは、互いに平行な平面である。本実施の形態においては、本体部21は、蛍光体基板10の第3主面11に、接合層(不図示)を介して接合されている。より具体的には、本体部21が有する第1主面211が蛍光体基板10の第3主面11に接合層を介して接合されている。また、本体部21が平板形状であることで、蛍光体基板10と金属部材20(ここでは本体部21)とが接合する面積が、より広くなる。また、本体部21の形状である平板形状とは、直方体形状に限られず、円柱形状、円錐台形状なども意味する。
【0054】
図2及び
図3が示すように、平面視及び下面視で、本体部21の形状は、円形状である。また、本体部21が有する第1主面211の面積は、本体部21が有する第2主面212の面積よりも大きい。つまり、本体部21の形状は、円錐台形状である。また、円錐台形状である本体部21は第1側面部213を有する。第1側面部213は、第2主面212から第1主面211に向かって広がる斜面である。また、斜面である第1側面部213は、z軸とは平行ではない。
【0055】
また、本体部21には第2貫通孔H2が設けられているため、本体部21の形状は円錐台形状に第2貫通孔H2が設けられた形状である。また、平面視及び下面視で、本体部21の形状は、円環形状である。第2貫通孔H2は、蛍光体基板10の厚み方向(z軸方向)に本体部21を貫通する孔であり、平面視で円形状の孔である。本体部21の形状である円環形状の中心は、蛍光体基板10の中心点C1と重なる。
【0056】
本体部21の外径は、蛍光体基板10の外径よりも小さい。なお、ここでは、本体部21の外径とは、本体部21の第1主面211の直径を意味する。本体部21の外径は、一例として20mm以上70mm以下であるとよく、25mm以上55mm以下であるとよりよく、30mm以上40mm以下であるとさらによいが、これに限られない。なお、本実施の形態においては、本体部21の外径は34mmであり、つまり、本体部21の半径は17mmである。
【0057】
また、本体部21の内径は、本体部21の外径よりも小さければよく、ここでは、蛍光体基板10の内径と同じ大きさであるがこれに限られない。また、本体部21の内径は、第2貫通孔H2の直径でもある。
【0058】
本実施の形態においては、
図2及び
図3が示すように、平面視及び下面視で、第1貫通孔H1の一部及び第2貫通孔H2の一部が重なる。より具体的には、平面視したときに、第1貫通孔H1の全部及び第2貫通孔H2の全部が重なる。つまりは、第1貫通孔H1の直径(蛍光体基板10の内径)と第2貫通孔H2の直径(本体部21の内径)とは等しい。さらに、平面視及び下面視で、第1貫通孔H1が有する円形状の中心、及び、第2貫通孔H2が有する円形状の中心は、蛍光体基板10の中心点C1と重なる。
【0059】
本実施の形態に係る透過型蛍光発光モジュール1は、蛍光体基板10と、金属部材20とを備えている。この金属部材20は、蛍光体基板10の第3主面11に接合して設けられる。そのため、励起光L1の照射により蛍光体基板10において熱が発生した場合でも、当該熱が蛍光体基板10から金属部材20へ移動しやすくなる。また、一般に、金属部材20を構成する金属材料は、YAGなどの蛍光体材料に比べ、熱伝導率が高い。これにより、当該熱は、金属部材20中を移動しやすく、金属部材20が大気に露出されている面から放熱されやすくなる。つまりは、蛍光体基板10と金属部材20とを上記構成とすることで、蛍光体基板10から当該熱が放熱されやすくなる。つまりは、蛍光体基板10の放熱性を高めることができる。
【0060】
ここで、本実施の形態に係る透過型蛍光発光モジュール1の効果について説明する。
【0061】
上述の通り、特許文献1で開示される透過型蛍光発光モジュールにおいて、温度消光現象が起きると、光の利用効率が低くなってしまう。しかし、本実施の形態においては、蛍光体基板10から当該熱が放熱されやすいため、励起光L1の照射による蛍光体基板10の温度の上昇を抑制できる。これにより、温度消光現象が起きにくいため、蛍光の減少が抑制される。
【0062】
しかも、本実施の形態に係る透過型蛍光発光モジュール1は、蛍光体基板10を支持するための構成要素などを備えていない。当該構成要素は、例えば、特許文献1で開示されている蛍光体用基板である。この蛍光体用基板は、蛍光発生部などを支持する板状のガラス部材によって構成される基板である。
【0063】
ここで、特許文献1で開示される光の挙動について説明する。特許文献1では、励起光は、大気から蛍光体用基板へ入射することが開示されている。さらに、蛍光体用基板へ入射した励起光は、蛍光体用基板を透過して蛍光発生部へ入射し、蛍光発生部で蛍光が発生する。ところで、特許文献1では、この蛍光体用基板の屈折率と大気の屈折率との差により、大気から蛍光体用基板に入射する励起光の一部が大気側に向けて反射されてしまう。つまり、蛍光体用基板と大気との界面で、励起光の光ロスが発生する。この結果、励起光の一部が反射されない場合と比べて、蛍光発生部に入射する励起光が減少するため、蛍光発生部で発生する蛍光も減少してしまう。つまり、特許文献1に開示される透過型蛍光発光モジュールでは、光の利用効率が低いという課題がある。
【0064】
これに対し、本実施の形態においては、上述の通り、本実施の形態に係る透過型蛍光発光モジュール1は、蛍光体基板10を支持するための構成要素(例えば、上記の蛍光体用基板)を備えていない。そのため、上記のような、励起光L1の光ロスがないため、蛍光体基板10に入射する励起光L1が増加する。この結果、蛍光体基板10における蛍光体材料で発生する蛍光が増加する。
【0065】
以上まとめると、本実施の形態に係る透過型蛍光発光モジュール1においては、温度消光現象が起きにくく、かつ、励起光L1の光ロスがないため、光の利用効率を高めることができる。
【0066】
また、本実施の形態においては、金属部材20は、本体部21を有する。
【0067】
本体部21が上記構成を有することで、蛍光体基板10と金属部材20(ここでは本体部21)とが接合する面積がより広くなる。このため、励起光L1の照射により蛍光体基板10において熱が発生した場合でも、蛍光体基板10から当該熱がより放熱されやすくなる。
【0068】
ここで、本体部21の厚みD21について、
図4を用いて説明する。
【0069】
図4は、
図1AのIV-IV線における透過型蛍光発光モジュール1の一部の切断面を示す断面図である。なお、
図4においては、光出射部200の側面図が示されている。
【0070】
本体部21の厚みD21(z軸方向の長さ)は、蛍光体基板10の厚みよりも厚いとよい。これにより、熱伝導性がよくなるためである。一方で、蛍光体基板10の厚みが厚くなりすぎると、モータである回転部30への負荷が高くなり、寿命が短くなる。よって、本体部21の厚みD21は、一例として、0.2mm以上50mm以下であればよく、0.5mm以上10mm以下であればよりよく、1mm以上5mm以下であればさらによい。本体部21の厚みD21が厚いほど、蛍光体基板10から当該熱がより放熱されやすくなる。一方で、本体部21の厚みD21が薄いほど、本体部21の体積が少なく、つまりは、本体部21の重量が減少する。このため、回転部30は、より少ないエネルギーで、蛍光体基板10などを回転することができる。よって、本体部21の厚みD21は、上記範囲であるとよい。
【0071】
さらに、金属部材20が有する複数の放熱フィン22について説明する。
【0072】
複数の放熱フィン22は、本体部21から蛍光体基板10に向かう方向とは反対方向に立設する突起である。つまり、複数の放熱フィン22は、本体部21に接しており、z軸負方向に突出している領域である。また、
図4には、複数の放熱フィン22の厚みD22が示されている。なお、複数の放熱フィン22のそれぞれの厚みD22は同一であるが、これに限られない。厚みD22は、本体部21の厚みD21よりも厚いとよい。厚みD22は、一例として、1mm以上150mm以下であればよく、2mm以上30mm以下であればよりよく、3mm以上10mm以下であればさらによい。
【0073】
なお、厚みD22が厚いほど、放熱効果は高まる。一方で、厚みD22が厚くなると重量が増え、モータである回転部30への負荷が増える。また、回転に対する剛性を保つために、複数の放熱フィン22の円周方向の厚みを厚くする必要がある。複数の放熱フィン22の円周方向の厚みは、薄くなると、本体部21からの熱伝導性が低くなり、この結果、放熱性能が低下する。複数の放熱フィン22の円周方向の厚みは、厚みD22が5mmの場合、0.2mm以上3mm以下の範囲であるとよく、0.4mm以上2mm以下の範囲であるとよりよい。なお、円周方向の厚みは、ばらついていてもよく、上述の範囲は、ねじ止めなどの影響により厚みが厚くなっている部分を除いた平均値である。
【0074】
図1A、
図1B、
図2及び
図3が示すように、ここでは、12個の放熱フィン22が設けられている。平面視したときに、12個の放熱フィン22は、放射状に延びるように設けられている。より具体的には、12個の放熱フィン22は、軸B1を基準として放射状に延びるように配置されている。つまりは、12個の放熱フィン22は、蛍光体基板10の中心点C1を中心に放射状に延びるような形状を有している。12個の放熱フィン22は、中心点C1を中心に、等間隔に広がるように放射状に延びている。
【0075】
例えば、n個の放熱フィン22が設けられる場合、「等間隔に広がるように」とは、1個の放熱フィン22が延びる方向と当該1個の放熱フィン22に隣接する他の1個の放熱フィン22が延びる方向とがなす角度が360°÷nとなることを意味する。
図2には、1個の放熱フィン22が延びる方向D1と当該1個の放熱フィン22に隣接する他の1個の放熱フィン22が延びる方向D2とが、一点鎖線で示されている。本実施の形態においては、12個の放熱フィン22のうち、1個の放熱フィン22が延びる方向D1と当該他の1個の放熱フィン22が延びる方向D2とがなす角度は、30°である。
【0076】
なお、ここでは、12個の放熱フィン22が設けられているが、これに限られず、1以上の放熱フィン22が設けられていてもよい。また、複数の放熱フィン22は、上記に限られず、例えば行列形状又は中心点C1を中心とした円環形状となるように配置されてもよい。
【0077】
さらに、
図3が示すように、下面視で、複数の放熱フィン22のそれぞれは、中心点C1に向かって突出する領域を含む。複数の放熱フィン22のそれぞれが含む突出する領域は、本体部21の内側の円よりも内側に突出し、第2貫通孔H2と重なる位置に設けられている。本実施の形態においては、第1貫通孔H1の全部及び第2貫通孔H2の全部が重なるため、複数の放熱フィン22のそれぞれが含む突出する領域は、第1貫通孔H1及び第2貫通孔H2と重なる位置に設けられている。
【0078】
また、
図2及び
図4が示すように、複数の放熱フィン22のそれぞれは、軸B1から最も離れた位置に第2側面部221を有している。複数の放熱フィン22のそれぞれの第2側面部221は、z軸正方向に向かって広がる斜面である。また、斜面である第2側面部221は、z軸とは平行ではない。さらに、第2側面部221と本体部21の第1側面部213とは、面一に接続されている。また、第2側面部221と第1側面部213とは、接続箇所において、互いに平行である。
【0079】
金属部材20が複数の放熱フィン22を有することで、金属部材20の表面積が増加するため、金属部材20から熱がより放たれやすくなる。これにより、励起光L1の照射により蛍光体基板10に発生した熱は、蛍光体基板10から、より放熱されやすくなる。
【0080】
また、本実施の形態においては、金属部材20は、Alによって構成されている。Alは高い熱伝導率を示す金属材料であって、Alの熱伝導率は、237W/m・Kである。蛍光体材料を構成するYAGの熱伝導率は11.2W/m・Kである。そのため、金属部材20がAlによって構成されていることで、蛍光体基板10の放熱性をさらに高めることができる。
【0081】
なお、金属部材20はAl又はCu以外によって構成されていてもよく、例えば、Ni、Pd、Rh、Mo、W及びCuから選ばれる1以上の金属元素又は合金により構成されているとよい。それぞれの元素の熱伝導率は、Niが83W/m・K、Pdが73W/m・K、Rhが150W/m・K、Moが135W/m・K、Wが163W/m・K、Cuが395W/m・Kである。そのため、金属部材20がこれらの金属材料によって構成されることで、蛍光体基板10の放熱性をより高めることができる。
【0082】
続いて、回転部30について説明する。
【0083】
回転部30は、金属部材20よりもz軸負側に位置している。つまりは、回転部30と蛍光体基板10との間に、金属部材20が位置している。ここでは、回転部30は、金属部材20に接合されている。また、
図2が示すように、平面視で、回転部30は、蛍光体基板10と重なる位置に設けられている。
【0084】
回転部30は、蛍光体基板10の厚み方向(z軸方向)に延びる軸B1を中心として蛍光体基板10及び金属部材20を回転させる部材であり、一例として、モータである。より具体的には、本実施の形態においては、回転部30は、蛍光体基板10及び金属部材20を軸B1を中心として
図1Aが示す矢印Rの方向に回転させる。なお、回転部30は、蛍光体基板10及び金属部材20を
図1Aが示す矢印Rの方向とは反対方向に回転させてもよい。
図1Bが示すように、軸B1は蛍光体基板10の中心点C1を通る軸である。
【0085】
また、回転部30は、円板部31と、軸B1を軸芯とする回転軸とを有する。円板部31は、
図2が示すように、平面視で円形状を有し、平板形状の部材である。円板部31の直径は、金属部材20が有する本体部21の直径と同じである。
【0086】
上述の通り、回転部30は、金属部材20に接合されている。より具体的には、円板部31は、金属部材20が有する複数の放熱フィン22に接合されている。
図2が示すように、円板部31は金属部材20のz軸負側を覆うように配置されている。
【0087】
円板部31と複数の放熱フィン22とは、ボルト又はビスなどにより接合されてもよい。また、本実施の形態においては、円板部31は、複数の放熱フィン22に、接合層を介して接合している。この場合、接合層としては、一例として、金属部材20と蛍光体基板10とを接合する接合層と同じものが用いられる。
【0088】
このように、本実施の形態に係る透過型蛍光発光モジュール1は、回転部30を備えている。これにより、蛍光体基板10などが軸B1を中心として回転するため、気流が発生する。この発生した気流によって、蛍光体基板10が冷却される。これにより、励起光L1が照射されても蛍光体基板10の温度の上昇を抑制できるため、温度消光現象が起きにくく、蛍光の減少が抑制される。つまりは、透過型蛍光発光モジュール1の光の利用効率を高めることができる。
【0089】
また、上述の通り、本実施の形態においては、金属部材20が有する放熱フィン22が放射状に延びるように設けられている。よって、回転部30により蛍光体基板10などが回転されたときに、より流速の高い強い気流が発生する。
【0090】
さらに、本実施の形態においては、第1貫通孔H1及び第2貫通孔H2が重なるように設けられている。このため、回転部30により蛍光体基板10などが回転されたときに、さらに流速の高い強い気流が発生する。
【0091】
図1Aには、当該気流の一例が一点鎖線の矢印で記載されている。つまり、当該気流は、第1貫通孔H1、第2貫通孔H2、及び、複数の放熱フィン22の同士の間を順に通過して、蛍光体基板10が有する領域A1に向かう。これにより、励起光L1の照射により領域A1に発生した熱が当該気流によって冷却されるため、蛍光体基板10の温度の上昇が抑制される。つまり、金属部材20が有する放熱フィン22が放射状に延びるように設けられることで、透過型蛍光発光モジュール1の放熱性をより高めることができる。そしてさらに、第1貫通孔H1及び第2貫通孔H2が重なるように設けられていることで、さらに流速の高い強い気流が発生する。よって、蛍光体基板10の温度の上昇がさらに抑制される。
【0092】
また、上述の通り、複数の放熱フィン22のそれぞれは、中心点C1に向かって突出する領域を含んでいる。このため、当該気流が、第1貫通孔H1、第2貫通孔H2、及び、複数の放熱フィン22の同士の間を通過しやすくなる。よって、さらに流速の高い気流が発生し、蛍光体基板10の温度の上昇がさらに抑制される。
【0093】
ここで、本実施の形態においては、円板部31が金属部材20を覆うように配置されている。このため、回転部30により蛍光体基板10などが回転されたときに発生した気流が領域A1に向かいやすくなり、蛍光体基板10の温度の上昇がさらに抑制される。
【0094】
また、本実施の形態においては、本体部21と円板部31との間に、複数の放熱フィン22が設けられている。この場合、1個の放熱フィン22と当該1個の放熱フィン22とに隣接する他の1個の放熱フィン22との間には、空隙が設けられている。つまりは、この空隙が設けられることで、金属部材20が軽量化されている。このため、回転部30は、より少ないエネルギーで、蛍光体基板10及び金属部材20を回転することができる。
【0095】
[プロジェクタの構成]
以上のように構成されている透過型蛍光発光モジュール1は、
図5が示すプロジェクタ500に用いられる。
図5は、本実施の形態に係るプロジェクタ500の外観を示す斜視図である。
図6は、本実施の形態に係るプロジェクタ500における透過型蛍光発光モジュール1を示す模式図である。以下では、本実施の形態に係るプロジェクタ500の構成について、
図6を用いて説明する。
【0096】
図6が示すように、本実施の形態に係るプロジェクタ500は、透過型蛍光発光モジュール1を備える。また、プロジェクタ500は、筐体300と、第1光学素子301と、第2光学素子302と、第3光学素子303と、第4光学素子304と、表示素子(不図示)とを備える。
【0097】
筐体300は、蛍光体基板10と、金属部材20と、回転部30と、第1光学素子301と、第2光学素子302と、第4光学素子304とを収納する金属製のケースである。なお、筐体300は、2つの光出射部200のそれぞれの一部と、第3光学素子303の一部とを収納する。筐体300の内部空間は、閉塞空間である。このため、蛍光体基板10と、金属部材20と、回転部30と、第1光学素子301と、第2光学素子302と、第4光学素子304とは、筐体300によって保護されており、塵及び埃などによって汚染されにくい。
【0098】
第1光学素子301、第2光学素子302及び第3光学素子303は、透過型蛍光発光モジュール1から出力された透過光L2の光路を制御するための光学部材である。一例として、第1光学素子301、第2光学素子302及び第3光学素子303のそれぞれは、透過光L2を集光するためのレンズである。
図6が示すように、第1光学素子301、第2光学素子302及び第3光学素子303は、蛍光体基板10の第4主面12側に配置されている。また、プロジェクタ500の小型化が必要な場合には、透過型蛍光発光モジュール1と第1光学素子301、第2光学素子302及び第3光学素子303との距離を小さくすることが求められる。
【0099】
第4光学素子304は、2つの光出射部200から出力された励起光L1の光路を制御するための光学部材である。一例として、第4光学素子304は、透過光L2を集光するためのレンズである。
図6が示すように、第4光学素子304は、蛍光体基板10の第3主面11側に配置されている。また、
図6が示すように、励起光L1が第4光学素子304によって集光されることで、励起光L1が蛍光体基板10に斜め方向(つまりは第3主面11に対して垂直とは異なる方向)からも入射する。
【0100】
表示素子は、透過光L2を制御して映像として出力する略平面状の素子である。換言すると、表示素子は、映像用の光を生成する。表示素子は、具体的には、透過型液晶パネルでである。また、例えば、表示素子は、反射型液晶パネルであってもよく、DMDを有するDLP(Digital Light Processing)であってもよい。
【0101】
【0102】
光出射部200によって出射された励起光L1は、透過型蛍光発光モジュール1における蛍光体基板10が有する領域A1に入射する。入射した励起光L1の一部は、領域A1が含む蛍光体材料によって波長変換されて蛍光として、蛍光体基板10を透過する。また、入射した励起光L1の他部は、領域A1が含む蛍光体材料によって波長変換されずに、蛍光体基板10を透過する。蛍光体基板10を透過した透過光L2は、黄色光である蛍光と波長変換されていない青色光である励起光L1とを含む複合された光であり、白色光である。さらに、透過光L2は、蛍光体基板10から出射される。つまりは、上述の通り、本実施の形態においては、蛍光体基板10は、光透過型の蛍光体ホイールとして利用される。
【0103】
また、上記の通り、領域A1の形状が円環形状であるため、回転部30により蛍光体基板10などが回転されるときに、励起光L1が領域A1に入射しやすくなる。このため、蛍光体基板10を蛍光体ホイールとして利用することがより容易になる。
【0104】
蛍光体基板10から出射された透過光L2は、第1光学素子301、第2光学素子302及び第3光学素子303によって集光されて出射される。なお、第1光学素子301、第2光学素子302及び第3光学素子303は、蛍光体基板10から出射された透過光L2を集光しなくてもよい。例えば、第1光学素子301、第2光学素子302及び第3光学素子303は、出射された透過光L2を略コリメート又は弱拡大放射してもよい。第1光学素子301、第2光学素子302及び第3光学素子303から出射された透過光L2の放射角が、透過型蛍光発光モジュール1が用いられるプロジェクタ500及び照明装置において、効率よく光伝達できる放射角であればよい。
【0105】
第1光学素子301、第2光学素子302及び第3光学素子303から出射された透過光L2は、図示されない表示素子へと向かう。表示素子によって生成された映像用の光は、スクリーンに拡大投射される投射光となる。つまり、透過光L2は、プロジェクタ500が出力する投射光として利用される光である。なお、第3光学素子303と表示素子との間には、図示されない光学素子などが設けられ、当該光学素子によって透過光L2の光路が制御されてもよい。
【0106】
本実施の形態においては、透過型蛍光発光モジュール1は、領域A1に入射する励起光L1を出射する光出射部200を有する。領域A1は、蛍光体基板10における金属部材20とは重ならない領域である。よって、励起光L1が金属部材20によって反射されるなどの光ロスが起こりにくい。このため、励起光L1が容易に蛍光体基板10に入射し、波長変換された光である蛍光を発生させることができる。
【0107】
また、本実施の形態においては、平面視で、本体部21の形状は、円形状である。互いに背向する第1主面211及び第2主面212において、第1主面211の面積は、第2主面212の面積よりも大きい。つまり、本体部21の形状は、円錐台形状である。また、上記の通り、励起光L1は、蛍光体基板10の領域A1に斜め方向から入射する。よって、本体部21が上記構成となることで、励起光L1が金属部材20によって遮蔽され難くなる。つまりは、金属部材20の遮蔽による励起光L1の光ロスを抑制することができる。従って、励起光L1は、蛍光体基板10の領域A1に到達しやすくなる。以上より、光の利用効率がより高い透過型蛍光発光モジュール1が実現される。
【0108】
また、本実施の形態においては、プロジェクタ500は、光の利用効率の高い透過型蛍光発光モジュール1を備えている。よって、光の利用効率の高いプロジェクタ500が実現される。
【0109】
筐体300の内部空間は、塵及び埃などの汚染を抑制するために閉塞空間であるため、熱がこもりやすい。本実施の形態においては、第1貫通孔H1及び第2貫通孔H2が設けられている。よって、回転部30により蛍光体基板10などが回転されたときに発生した気流は、蛍光体基板10の第3主面11側から第4主面12側へ向かう。このため、筐体300の内部空間の全体で気流が循環するため、励起光L1の照射により蛍光体基板10に発生した熱は、筐体300から外部に向けて移動しやすくなる。よって、蛍光体基板10から、当該熱がより放熱されやすくなる。
【0110】
さらに、筐体300についてより詳細に説明する。
【0111】
図7は、本実施の形態に係る筐体300を示す斜視図である。
図7が示すように、筐体300は、9つの構成要素を有している。9つの構成要素とは、前面部材311、第1左側面部材312、第2左側面部材313、第1右側面部材314、第2右側面部材315、第1底面部材316、第2底面部材317、天面部材318及び背面部材319である。また、筐体300は、9つの構成要素を互いに接続するための接続部材(ネジなど)を有している。
【0112】
9つの構成要素のそれぞれは、例えば、鋼鈑などの金属板が板金加工されて形成されている。つまり、9つの構成要素のそれぞれは、金属板が切断加工又は曲げ加工されることで形成されている。筐体300は、このような9つの構成要素が組み合わされたケースである。筐体300が有する9つの構成要素のそれぞれが板金構造であるので、例えば、ダイキャスト構造にである筐体に比べ、軽量にする事が、可能となる。
【0113】
[製造方法]
ここで、蛍光体基板10の製造方法について簡単に説明する。
【0114】
蛍光体基板10が有する蛍光体材料は、(Y0.999Ce0.001)3Al5O12で表される結晶相によって構成されている材料である。また、蛍光体材料は、いずれも、Ce3+賦活蛍光体で構成される。
【0115】
蛍光体基板10を製造するために、化合物粉末として以下の3種類が原料として使用された。具体的には、Y2O3(純度3N、日本イットリウム株式会社)、Al2O3(純度3N、住友化学株式会社)及びCeO2(純度3N、日本イットリウム株式会社)が使用された。
【0116】
まず、化学量論的組成の化合物(Y0.999Ce0.001)3Al5O12となるように、上記原料が秤量された。次に、秤量された原料とアルミナ製ボール(直径10mm)とが、プラスチック製ポットに投入された。アルミナ製ボールの量は、プラスチック製ポットの容積の1/3程度を充填する程度の量であった。その後、純水がプラスチック製ポットに投入され、ポット回転装置(日東化学株式会社製、BALL MILL ANZ-51S)を利用して、原料と純水とが混合された。この混合は、12時間実施された。このようにして、スラリー状の混合原料を得た。
【0117】
スラリー状の混合原料が、乾燥機を用いて乾燥された。具体的には、金属製バットの内壁を覆うようにナフロンシートが敷かれ、ナフロンシートの上方に混合原料が流し込まれた。金属製バットとナフロンシートと混合原料とは、150℃に設定した乾燥機で8時間処理され、乾燥された。その後、乾燥後の混合原料が回収され、スプレードライヤ装置を利用して混合原料が造粒された。なお、造粒時には、粘着剤(バインダ)として、アクリル系バインダーが使用された。
【0118】
造粒された混合原料は、電動油圧プレス機(理研精機株式会社製、EMP-5)と円柱形状の金型とを利用して、円柱形状に仮成型された。成型時の圧力は、5MPaとした。次に、冷間等方圧加圧装置を利用して、仮成型後の成型体が本成型された。本成型時の圧力は、300MPaとした。なお、本成型後の成型体は、造粒時に使用された粘着剤(バインダ)を除去する目的で、加熱処理(脱バインダー処理)が行われた。加熱処理の温度は、500℃とした。また、加熱処理の時間は、10時間とした。
【0119】
加熱処理後の成型体は、管状雰囲気炉を用いて、焼成された。焼成温度は、1675℃とした。また、焼成時間は、4時間とした。焼成雰囲気は、窒素と水素との混合ガス雰囲気とした。
【0120】
焼成後の円柱形状の焼成物は、マルチワイヤーソーを用いて、スライスされた。スライスされた円柱形状の焼成物の厚みは、約700μmとした。
【0121】
研磨装置を用いて、スライス後の焼成物が研磨され、焼成物の厚みの調整が行われた。この調整が行われることで、焼成物が蛍光体基板10となる。
【0122】
[蛍光体基板の温度]
ここで、検討例に係る透過型蛍光発光モジュールを用いて、本実施の形態に係る透過型蛍光発光モジュール1における蛍光体基板10の温度について、説明する。まずは、検討利絵に係る透過型蛍光発光モジュールについて説明する。
【0123】
図8は、検討例に係る透過型蛍光発光モジュールが備える蛍光体基板10、金属部材20x及び回転部30の平面図である。
図9は、本実施の形態に係る蛍光体基板10、金属部材20及び回転部30の平面図である。
図10は、検討例に係る透過型蛍光発光モジュールが備える蛍光体基板10、金属部材20x及び回転部30の斜視図である。
図11は、本実施の形態に係る蛍光体基板10、金属部材20及び回転部30の斜視図である。
【0124】
図8及び
図10が示すように、検討例に係る透過型蛍光発光モジュールは、蛍光体基板10と、金属部材20xと、回転部30とを備えるモジュールである。また、検討例に係る透過型蛍光発光モジュールは、2つの光出射部200(不図示)を備える。検討例に係る透過型蛍光発光モジュールにおいては、金属部材20xの形状のみが、本実施の形態に係る透過型蛍光発光モジュール1と異なる。
【0125】
ここで金属部材20xについて説明する。
【0126】
金属部材20xは、形状を除いて、金属部材20と同様の構成を有する。金属部材20xの形状は、蛍光体基板10と積層されるように設けられる平板形状の部材である。より具体的には、
図8及び
図10が示すように、金属部材20xの形状は、円柱形状である。
【0127】
また、
図8、
図9、
図10及び
図11が示すように、金属部材20の外径(ここでは、本体部21の外径)は、金属部材20xの外径よりも大きい。金属部材20xの外径とは、金属部材20xの直径を意味する。
【0128】
金属部材20xの外径(直径)は、28mmである。また、
図8には、金属部材20xの半径D31xが示されており、金属部材20xの半径D31xは14mmである。
【0129】
なお、同様に、
図9には、本体部21の半径D31が示されている。上述の通り、本体部21の半径D31は、17mmである。
【0130】
また、平面視したときに、検討例に係る蛍光体基板10は、金属部材20xと重ならない円環形状の領域A1xを有している。なお、
図8及び
図9のそれぞれにおいては、領域A1x及び領域A1は、一点鎖線で示された2つの円の間の領域に該当する。
【0131】
また、本実施の形態においては、蛍光体基板10を平面視したときに、本体部21と領域A1とは、隣接している。ここでは、円環形状である領域A1の内側の円と、本体部21(より具体的には、第1主面211)とが接する。
【0132】
同様に、検討例においては、蛍光体基板10を平面視したときに、金属部材20xと領域A1とは、隣接している。円環形状である領域A1xの内側の円と、金属部材20xとが接する。
【0133】
さらに、蛍光体基板10の温度について説明する。ここでは、回転部30により蛍光体基板10と金属部材20x及び金属部材20とが回転され、かつ、領域A1x及び領域A1に励起光L1が照射されたときの蛍光体基板10の温度について説明する。より具体的には、励起光L1は、領域A1x及び領域A1のうち、照射中心位置に照射される。また、
図8及び
図9には、中心点C1と励起光L1の照射中心位置との距離である照射中心位置距離D32が示されており、照射中心位置距離D32は18mmである。
【0134】
図12は、検討例及び本実施の形態に係る蛍光体基板10の温度プロファイルを示す図である。より具体的には、検討例に係る蛍光体基板10の温度プロファイルは、
図8が示す測定線M1に沿って測定された温度を示す。同様に、本実施の形態に係る蛍光体基板10の温度プロファイルは、
図9が示す測定線M2に沿って測定された温度を示す。また、測定線M1及び測定線M2はいずれも、x軸に平行な直線の仮想線である。また、
図12において、距離0mmの位置とは、
図8及び
図9における中心点C1に相当する。
【0135】
図12が示すように、検討例においては、励起光L1の照射中心位置である距離18mm(つまりは、距離0mmから照射中心位置距離D32離れた位置)での温度が、他の位置と比べて、最も高い温度である。また、本実施の形態においても、同様の傾向が示されている。
【0136】
しかし、検討例及び本実施の形態とを比較すると、励起光L1の照射中心位置においては、本実施の形態での温度は、検討例での温度よりも低い。
【0137】
上述の通り、本体部21の半径D31は、金属部材20xの半径D31xよりも大きい。つまりは、金属部材20xと比べ、本体部21の方が励起光L1の照射中心位置により近い位置に設けられている。このため、励起光L1の照射により蛍光体基板10において熱が発生した場合でも、当該熱が蛍光体基板10から本体部21(つまりは金属部材20)へ移動しやすくなる。よって、本実施の形態においては、蛍光体基板10の放熱性をより高めることができる。
【0138】
以上まとめると、本実施の形態においては、蛍光体基板10を平面視したときに、本体部21と領域A1とは、隣接している。さらに、本体部21の半径D31が照射中心位置距離D32よりも小さく、本体部21が励起光L1の照射中心位置により近い位置に設けられているとよい。例えば、本体部21の半径D31と、照射中心位置距離D32との差が、例えば、3mm以下であればよく、2mm以下であればよりよく、1mm以下であるとさらによい。
【0139】
これにより、励起光L1の照射により発生した熱が蛍光体基板10から本体部21(つまりは金属部材20)へ移動しやすくなるため、蛍光体基板10の放熱性をより高めることができる。
【0140】
(実施の形態の変形例1)
次に、実施の形態の変形例1に係る透過型蛍光発光モジュール1aについて、
図13A及び
図13Bを用いて説明する。
図13Aは、本変形例に係る透過型蛍光発光モジュール1aの斜視図である。
図13Bは、本変形例に係る透過型蛍光発光モジュール1aの分解斜視図である。
【0141】
本変形例に係る透過型蛍光発光モジュール1aは、蛍光体基板10と、金属部材20aと、回転部30と、2つの光出射部200とを備えるモジュールである。なお、簡単のため、
図13A及び
図13Bにおいては、1つの光出射部200が記載されている。
【0142】
つまり、本変形例に係る透過型蛍光発光モジュール1aが、金属部材20ではなく、金属部材20aを備える点が、実施の形態に係る透過型蛍光発光モジュール1とは異なる。
【0143】
ここで、金属部材20aについて説明する。金属部材20aは、形状を除いて、金属部材20と同様の構成を有する。金属部材20aは、本体部21aと、複数の放熱フィン22aとを有する。
【0144】
本体部21aは、蛍光体基板10と積層されるように設けられる平板形状の部材である。
【0145】
また、平面視で、本体部21aの形状は、円形状である。さらに、本体部21aには第2貫通孔H2が設けられているため、本体部21aの形状は、円環形状である。
【0146】
また、本体部21は第1側面部213aを有する。第1側面部213aは、
図13Aが示すように、蛍光体基板10から垂直方向に立設し、つまりは、z軸と平行な方向に延びている。
【0147】
さらに、金属部材20aが有する複数の放熱フィン22aについて説明する。複数の放熱フィン22は、本体部21から蛍光体基板10に向かう方向とは反対方向に立設する突起である。
【0148】
また、
図13A及び
図13Bが示すように、ここでは、12個の放熱フィン22aが設けられている。平面視したときに、12個の放熱フィン22aは、放射状に延びるように設けられている。
【0149】
また、複数の放熱フィン22aのそれぞれは、軸B1から最も離れた位置に第2側面部221aを有している。複数の放熱フィン22aのそれぞれの第2側面部221aは、第1側面部213aと同じく、z軸と平行な方向に延びている。さらに、第2側面部221aと本体部21aの第1側面部213aとは、面一に接続されている。また、第2側面部221aと第1側面部213aとは、接続箇所において、互いに平行である。
【0150】
また、平面視したときに、変形例1に係る蛍光体基板10は、金属部材20aと重ならない円環形状の領域A2を有している。なお、
図13Bにおいては、領域A2は、一点鎖線で示された2つの円の間の領域に該当する。
【0151】
このように、透過型蛍光発光モジュール1aは、蛍光体基板10と、金属部材20aと、回転部30と、2つの光出射部200とを備える。これにより、実施の形態1に係る透過型蛍光発光モジュール1と同様に、光の利用効率を高めることができる透過型蛍光発光モジュール1aが実現される。
【0152】
(実施の形態の変形例2)
次に、実施の形態の変形例2に係る透過型蛍光発光モジュールについて、
図14を用いて説明する。
【0153】
図14は、本実施の形態の変形例2に係る透過型蛍光発光モジュールの斜視図である。なお、
図14では光出射部200は省略されている。
【0154】
本変形例に係る透過型蛍光発光モジュールは、変形例1に係る透過型蛍光発光モジュール1aが備える構成要素に加えて、カバー40を備える点が、透過型蛍光発光モジュール1aとは異なる。
【0155】
カバー40は、カバー本体部41と、流路部42とを有する樹脂製又は金属製の部材である。また、カバー40は、回転部30によって回転されない。
【0156】
カバー本体部41は、蛍光体基板10及び金属部材20aを覆う部材である。また、本変形例においては、カバー本体部41のz軸負側に設けられた円形の孔から回転部30の一部が露出している。つまり、カバー本体部41は、回転部30の他部と、蛍光体基板10と、金属部材20aとを覆っている。このようなカバー本体部41が設けられることで、回転部30によって蛍光体基板10及び金属部材20aが回転したときに発生する気流を制御することができる。
【0157】
流路部42は、カバー本体部41と接続された部材である。平面視で、流路部42は、励起光L1が入射する領域A2と重なる位置に設けられている。さらに、流路部42には、制御された上記の気流が流れる。
【0158】
カバー40が上記構成を有することで、回転部30によって蛍光体基板10などが回転したときに発生する気流は、領域A2に向かう。より具体的には、当該気流は、領域A2のz軸負側を通過する。なお、
図14には、当該気流の一例が一点鎖線の矢印で記載されている。この発生した気流によって、蛍光体基板10が冷却される。つまりは、温度消光現象が起きにくく、蛍光の減少が抑制されるため、本変形例に係る透過型蛍光発光モジュールの光の利用効率をより高めることができる。
【0159】
(実施の形態の変形例3)
次に、実施の形態の変形例3に係る透過型蛍光発光モジュールについて、
図15を用いて説明する。
【0160】
図15は、本実施の形態の変形例3に係る蛍光体基板10及び金属部材20bの下面図である。
図15においては、回転部30と、光出射部200とは、省略されている。また、
図13Bにおいては、変形例2に係る蛍光体基板10が有する領域A3は、一点鎖線で示された2つの円の間の領域に該当する。
【0161】
本変形例においては、複数の放熱フィン22bの形状が上記の実施の形態で示された複数の放熱フィン22の形状とは異なる。複数の放熱フィン22bは、下面視で、湾曲する円弧状の形状を有している。換言すると、複数の放熱フィン22bは、渦巻き状の形状を有している。複数の放熱フィン22bがこのような形状であることで、回転部30により蛍光体基板10などが回転されたときに、より流速の高い強い気流が発生する。
【0162】
(その他の実施の形態)
以上、本発明に係る透過型蛍光発光モジュール1等について、実施の形態及び変形例に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態及び変形例に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態及び変形例に施したものや、実施の形態及び変形例における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本発明の範囲に含まれる。
【0163】
なお、本実施の形態に係る透過型蛍光発光モジュール1は、蛍光体基板10と、金属部材20と、回転部30とを備えていればよい。また、蛍光体基板10を平面視したときに、蛍光体基板10は、金属部材20と重ならない円環形状の領域A1を有すればよい。
【0164】
金属部材20が設けられることで、蛍光体基板10から熱が放熱されやすくなる。これにより、温度消光現象が起きにくいため、蛍光の減少が抑制される。
【0165】
しかも、透過型蛍光発光モジュール1は、蛍光体基板10を支持するための構成要素などを備えていない。よって上記のような、励起光L1の光ロスがないため、蛍光体基板10に入射する励起光L1が増加する。この結果、蛍光体基板10における蛍光体材料で発生する蛍光が増加する。
【0166】
そのうえ、回転部30が設けられることで、蛍光体基板10などが軸B1を中心として回転するため、気流が発生する。この発生した気流によって、蛍光体基板10が冷却される。これにより、励起光L1が照射されても蛍光体基板10の温度の上昇を抑制できるため、温度消光現象が起きにくく、蛍光の減少が抑制される。
【0167】
以上まとめると、透過型蛍光発光モジュール1においては、温度消光現象が起きにくく、かつ、励起光L1の光ロスがないため、光の利用効率を高めることができる。
【0168】
また、上記の実施の形態及び変形例は、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【符号の説明】
【0169】
1、1a 透過型蛍光発光モジュール
10 蛍光体基板
20 金属部材
21、21a 本体部
22 放熱フィン
30 回転部
40 カバー
41 カバー本体部
42 流路部
200 光出射部
211 第1主面
212 第2主面
213、213a 第1側面部
221、221a 第2側面部
500 プロジェクタ
A1、A1x、A2、A3 領域
B1 軸
H1 第1貫通孔
H2 第2貫通孔
L1 励起光
M1、M2 測定線