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  • 特許-非水電解質二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240607BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240607BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021502181
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2020007021
(87)【国際公開番号】W WO2020175360
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2019035633
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河本 康信
(72)【発明者】
【氏名】木下 昌洋
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-162825(JP,A)
【文献】特開2010-262826(JP,A)
【文献】特開2011-105594(JP,A)
【文献】国際公開第2014/133064(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/026650(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、非水電解質を含み、
前記正極は、正極集電体と、正極集電体上に配置される正極合材層と、を含み、
前記正極合材層は、一次粒子が凝集した二次粒子から構成されるリチウム複合酸化物を含み、
前記一次粒子の粒径の平均値をd、粒度分布の標準偏差をσとした時、前記二次粒子は、d+6σより大きい粒径を有する一次粒子が存在する二次粒子を含み、
前記リチウム複合酸化物は、Li Ni (1-y) (0.95≦x≦1.10、0.65≦y≦1.0、Mは、Co、Mn、Al、Mg、Ti、Sr、Zr、Y、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも1種の元素である)で示されるリチウムニッケル複合酸化物を含む、非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高出力、高エネルギー密度の二次電池として、正極と、負極と、非水電解質とを備え、正極と負極との間でリチウムイオン等を移動させて充放電を行う非水電解質二次電池が広く利用されている。
【0003】
従来、非水電解質二次電池の正極を構成する正極活物質としては、リチウム複合酸化物が用いられている。例えば、特許文献1~5には、一次粒子の粒径や一次粒子が凝集した二次粒子の粒径を規定したリチウム複合酸化物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-325791号公報
【文献】特開平7-6763号公報
【文献】特開平10-79250号公報
【文献】特開2002-211931号公報
【文献】特開2014-528891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、リチウム複合酸化物の一次粒子の粒径を大きくする(比表面積を小さくする)ことで、リチウム複合酸化物の熱安定性を改善できることが知られているが、単純にリチウム複合酸化物の一次粒子の粒径を大きくするだけでは、非水電解質二次電池の低温特性が低下してしまう。
【0006】
そこで、本開示は、リチウム複合酸化物の熱安定性の向上が図られ、且つ低温特性の低下が抑制される非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る非水電解質二次電池は、正極、負極、非水電解質を含み、前記正極は、正極集電体と、正極集電体上に配置される正極合材層と、を含み、前記正極合材層は、一次粒子が凝集した二次粒子から構成されるリチウム複合酸化物を含み、前記一次粒子の粒径の平均値をd、粒度分布の標準偏差をσとした時、前記二次粒子は、d+6σより大きい粒径を有する一次粒子が存在する二次粒子を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、リチウム複合酸化物の熱安定性の向上が図られ、且つ非水電解質二次電池の低温特性の低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態の一例である非水電解質二次電池の模式断面図である。
図2図2は、本実施形態で用いられるリチウム複合酸化物の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づき本開示における実施形態の一例について説明する。
【0011】
図1は、実施形態の一例である非水電解質二次電池の断面図である。図1に示す非水電解質二次電池10は、正極11及び負極12がセパレータ13を介して巻回されてなる巻回型の電極体14と、非水電解質と、電極体14の上下にそれぞれ配置された絶縁板18,19と、上記部材を収容する電池ケース15と、を備える。なお、巻回型の電極体14の代わりに、正極及び負極がセパレータを介して交互に積層されてなる積層型の電極体など、他の形態の電極体が適用されてもよい。
【0012】
非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いてもよい。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。なお、非水電解質は液体電解質に限定されず、固体電解質であってもよい。電解質塩には、例えばLiPF等のリチウム塩が使用される。
【0013】
電池ケース15は、有底円筒形状のケース本体16と、ケース本体16の開口部を塞ぐ封口体17とにより構成される。また、電池ケース15としては、円筒形に限定されず、例えば、角形、コイン形、ボタン形等の金属製ケース、金属シートと樹脂シートをラミネートして形成されたラミネートシート製ケース(ラミネート型電池)等でもよい。
【0014】
ケース本体16は、例えば有底円筒形状の金属製容器である。ケース本体16と封口体17との間にはガスケット28が設けられ、電池内部の密閉性が確保される。ケース本体16は、例えば側面部の一部が内側に張出した、封口体17を支持する張り出し部22を有する。張り出し部22は、ケース本体16の周方向に沿って環状に形成されることが好ましく、その上面で封口体17を支持する。
【0015】
封口体17は、電極体14側から順に、フィルタ23、下弁体24、絶縁部材25、上弁体26、及びキャップ27が積層された構造を有する。封口体17を構成する各部材は、例えば円板形状又はリング形状を有し、絶縁部材25を除く各部材は互いに電気的に接続されている。下弁体24と上弁体26は各々の中央部で互いに接続され、各々の周縁部の間には絶縁部材25が介在している。内部短絡等による発熱で非水電解質二次電池10の内圧が上昇すると、例えば下弁体24が上弁体26をキャップ27側に押し上げるように変形して破断し、下弁体24と上弁体26の間の電流経路が遮断される。さらに内圧が上昇すると、上弁体26が破断し、キャップ27の開口部からガスが排出される。
【0016】
図1に示す非水電解質二次電池10では、正極11に取り付けられた正極リード20が絶縁板18の貫通孔を通って封口体17側に延び、負極12に取り付けられた負極リード21が絶縁板19の外側を通ってケース本体16の底部側に延びている。正極リード20は封口体17の底板であるフィルタ23の下面に溶接等で接続され、フィルタ23と電気的に接続された封口体17の天板であるキャップ27が正極端子となる。負極リード21はケース本体16の底部内面に溶接等で接続され、ケース本体16が負極端子となる。
【0017】
以下に、正極11、負極12、セパレータ13について詳述する。
【0018】
[正極]
正極11は、例えば、正極集電体と、正極集電体上に形成された正極合材層とで構成される。正極集電体には、アルミニウムなどの正極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。
【0019】
正極合材層は、リチウム複合酸化物を含む正極活物質、任意の結着材及び任意の導電材等を含む。
【0020】
図2は、本実施形態で用いられるリチウム複合酸化物の一例を示す模式断面図である。図2に示すように、リチウム複合酸化物30は、一次粒子32が凝集した二次粒子34から構成される。そして、二次粒子34を構成する一次粒子32の中には、一次粒子32の粒径の平均値(以下、一次粒子32の平均粒径と称する場合がある)より非常に大きな粒径を有する粗大一次粒子32aが存在する。ここで、粗大一次粒子32aとは、二次粒子34を構成する一次粒子32の粒径の平均値をd、一次粒子32の粒度分布の標準偏差をσとした時、d+6σより大きい粒径を有する一次粒子32を指す。
【0021】
本実施形態のように、d+6σより大きい粒径を有する粗大一次粒子32aが存在する二次粒子34を含むリチウム複合酸化物30を用いることにより、熱安定性の向上が図られ、且つ非水電解質二次電池10の低温特性の低下を抑制することができる。上記効果を奏するメカニズムは明らかでないが、粗大一次粒子32aの存在により、二次粒子34の耐熱性が向上するため、リチウム複合酸化物30の熱安定性が向上すると考えられる。また、低温時の充放電では、粗大一次粒子32a以外の粒径の小さい一次粒子32において優先的に反応が進むため、粗大一次粒子32aの影響は小さく、非水電解質二次電池10の低温特性の低下が抑制されると考えられる。一方、d+6σより大きい粒径を有する粗大一次粒子が存在しない二次粒子では、一次粒子の粒径の平均値を大きくすることで、熱安定性の向上を図ることは可能であるが、全体的に一次粒子の粒径が大きくなるので、低温時における粒子の反応性は低下し、低温特性は悪化してしまう。また、d+6σより大きい粒径を有する粗大一次粒子が存在しない二次粒子において、一次粒子の粒径の平均値を小さくすることで、低温時における粒子の反応性が向上するため、低温特性の低下は抑制されるが、全体的に一次粒子の粒径が小さくなるので、粒子の耐熱性が低下し、熱安定性の向上が図れない。
【0022】
一次粒子32の粒径の平均値(d)は、熱安定性の向上を図りながら、低温特性の低下を効果的に抑制することができる点で、例えば、0.3μm~2.0μmの範囲が好ましい。
【0023】
リチウム複合酸化物粉末を樹脂中に埋め込み、クロスセクションポリッシャ(CP)加工などによりリチウム複合酸化物粉末の粒子断面を作製し、この断面をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察し、そのときの一次粒子の長軸方向における長さを一次粒子の粒径として測定する。一次粒子の粒径(一次粒子の長軸方向における長さ)は、SEM画像を、(株)マウンテック製「画像解析式粒度分布測定ソフトウェア Mac-View」で画像処理することにより測定できる。測定する一次粒子の個数は、300個以上とする。但し、1つの二次粒子に含まれる一次粒子の個数が300個未満の場合には、複数の二次粒子を用いて、300個以上の一次粒子の粒子径を測定する。そして、測定した300個以上の一次粒子の粒子径から粒度分布及び一次粒子の粒径の平均値を算出する。また、粒度分布の標準偏差の計算方法は、一次粒子の粒径の平均値と各一次粒子の粒径の乖離(=偏差)を2乗し、それらを合計したもの(=分散)の平方根を取ることにより得られる。
【0024】
粗大一次粒子32aの粒径は、d+6σより大きければよいが、リチウム複合酸化物30の熱安定性の向上及び非水電解質二次電池10の低温特性の低下を抑制する等の点で、例えば、d+10σより大きいことが好ましく、d+14σより大きいことがより好ましい。
【0025】
粗大一次粒子32aは、二次粒子34中に少なくとも1個以上存在してればよいが、好ましくは、1~3個の範囲が好ましい。二次粒子34中の粗大一次粒子32aの数が3個を超えると、上記範囲を満たす場合と比較して、非水電解質二次電池10の低温特性が低下する場合がある。
【0026】
二次粒子34の平均粒径は、特に限定されるものではないが、熱安定性の向上及び低温特性の低下を抑制する等の点で、例えば、3μm~20μmの範囲であることが好ましい。二次粒子34の平均粒径は、上記のよう作製した粒子断面のSEM画像から、ランダムに20個の二次粒子を選択し、選択した20個の二次粒子の粒界を観察し、二次粒子の外形を特定した上で、20個の二次粒子それぞれの長径を求め、それらの平均値を二次粒子の平均粒径とする。
【0027】
二次粒子34は、例えば、二次粒子1個当たり300個以上の一次粒子で構成されることが好ましく、300個~1000個の一次粒子で構成されることがより好ましい。二次粒子1個当たりの一次粒子の数が少なすぎると二次粒子が微細化し、二次粒子1個当たりの一次粒子の数が多すぎると表面積が大きくなり過ぎるため、いずれの場合も、例えば、充放電サイクル特性の低下に繋がる場合がある。
【0028】
リチウム複合酸化物30は、特に限定されるものではないが、電池の高容量化等の点で、リチウムニッケル複合酸化物を含むことが好ましく、ニッケルの割合がリチウムを除く金属元素の総モル数に対して65モル%以上であるリチウムニッケル複合酸化物を含むことがより好ましい。例えば、リチウムニッケル複合酸化物は、LiNi(1-y)(0.95≦x≦1.10、0.65≦y≦1.0、Mは、Co、Mn、Al、Mg、Ti、Sr、Zr、Y、Mo及びWからなる群から選択される少なくとも1種の元素である)で示されるリチウムニッケル複合酸化物が好ましい。
【0029】
粗大一次粒子32aが存在する二次粒子34から構成されるリチウム複合酸化物30の含有量は、正極活物質の総量に対して、例えば、50質量%~100質量%の範囲であることが好ましく、80質量%~98質量%の範囲であることがより好ましい。なお、正極活物質は、本開示の効果を損なわない範囲において、粗大一次粒子が存在しない二次粒子から構成されるリチウム複合酸化物を含んでいてもよい。
【0030】
正極活物質の含有量は、正極合材層の総量に対して、例えば、70質量%以上99質量%以下であることが好ましく、80質量%以上98質量%以下であることがより好ましい。
【0031】
本実施形態に用いられるリチウム複合酸化物30の製造方法の一例を説明する。
【0032】
リチウム複合酸化物は、例えば、遷移金属原料とリチウム原料とを混合し、得られた混合物を、酸素や空気等の酸化性雰囲気で、所定時間焼成し、得られた焼成物を必要に応じて粉砕することにより得られる。
【0033】
ここで、遷移金属原料の粒子の形状や焼成条件等を調整することにより、得られるリチウム複合酸化物の二次粒子中に粗大一次粒子を存在させることができる。焼成条件は、例えば、200℃~400℃の低温領域で1~3時間、低温焼成した後、600℃~800℃で所定時間、高温焼成する多段階焼成とすることが好ましい。また、遷移金属原料の粒子の形状は、例えば、針状結晶の凝集体とすることが好ましい。なお、上記条件は、二次粒子中に粗大一次粒子を存在させる一例であって、これに限定されるものではない。
【0034】
正極合材層に含まれる導電材としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素粉末等が挙げられる。これらは、1種単独でもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
正極合材層に含まれる結着材としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂、PAN、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩、ポリビニルアルコール(PVA)等を用いることができる。これらは、1種単独でもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
本実施形態の正極11は、例えば、正極集電体上に、正極活物質、導電材、結着材等を含む正極合材スラリーを塗布・乾燥することによって正極合材層を形成し、当該正極合材層を圧延することにより得られる。
【0037】
[負極]
負極12は、例えば、負極集電体と、負極集電体上に形成された負極合材層とを備える。負極集電体には、銅などの負極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合材層は、例えば、負極活物質、任意要素の結着材等を含む。
【0038】
負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な材料であれば特に制限されるものではなく、例えば、金属リチウム、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-鉛合金、リチウム-シリコン合金、リチウム-スズ合金等のリチウム合金、黒鉛、フッ化黒鉛、コークス、有機物焼成体等の炭素材料、SnO、SnO、TiO等の金属酸化物等が挙げられる。これらは、1種単独でもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
結着材としては、例えば、正極の場合と同様に、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂、PAN、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩、ポリビニルアルコール(PVA)等を用いることができる。これらは、1種単独でもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
本実施形態の負極12は、例えば、負極集電体上に、負極活物質、結着材等を含む負極合材スラリーを塗布・乾燥することによって負極合材層を形成し、当該負極合材層を圧延することにより得られる。
【0041】
[セパレータ]
セパレータ13は、例えば、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シート等が用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータ13の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、セルロースなどが好適である。セパレータ13は、セルロース繊維層及びオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂繊維層を有する積層体であってもよい。また、ポリエチレン層及びポリプロピレン層を含む多層セパレータであってもよく、セパレータの表面にアラミド系樹脂、セラミック等の材料が塗布されたものを用いてもよい。
【実施例
【0042】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
[リチウムニッケル複合酸化物A1~A5の作製]
リチウムニッケル複合酸化物A1~A5は、表1に示す密度のニッケル化合物と、リチウム化合物とを混合した後、この混合物を、酸素雰囲気で、200℃~400℃で1~3時間低温焼成した後、表1に示す温度で、高温焼成を行うことにより製造した。低温焼成時間及び高温焼成時間を含む合計焼成時間は表1に示す時間とした。
【0044】
[リチウムニッケル複合酸化物B1~B6の作製]
リチウムニッケル複合酸化物B1~B6は、表1に示す密度のニッケル化合物と、リチウム化合物とを混合した後、この混合物に対して低温焼成を行わずに、酸素雰囲気で、表1に示す温度で、高温焼成を行うことにより製造した。
【0045】
【表1】
【0046】
リチウムニッケル複合酸化物A1~A5及びB1~B6の一次粒子の平均粒径、粒度分布の標準偏差を求めた。算出方法は上記の通りである。また、一次粒子の中で最も大きい粗大一次粒子の粒径を算出し、以下の式(1)により、係数αを求めた。
α=(dmax-d)/σ (1)
max:粗大一次粒子の粒径
d:一次粒子の平均粒径
σ:一次粒子の粒度分布の標準偏差
【0047】
各リチウムニッケル複合酸化物の一次粒子の平均粒径及び係数αの結果を表2に示す。係数αが6を超えるということは、一次粒子の平均粒径(d)+6σより大きい粒径を有する粗大一次粒子が存在していることを示している。
【0048】
【表2】
【0049】
表2から分かるように、リチウムニッケル複合酸化物A1~A5はいずれも、式(1)から求めた係数αが6を超えているので、d+6σより大きい粒径(dmax)を有する粗大一次粒子が存在する二次粒子を含んでいる。一方、リチウムニッケル複合酸化物B1~B6はいずれも、式(1)から求めた係数αが6以下であるので、d+6σより大きい粒径を有する粗大一次粒子が存在する二次粒子を含んでいない。以下、これらのリチウムニッケル複合酸化物を用いて、電池を作製し、熱安定性及び低温特性を評価した。
【0050】
<実施例1>
[正極の作製]
正極活物質としてリチウムニッケル複合酸化物A1を用いた。リチウムニッケル複合酸化物A1と、導電材としてのカーボンブラックと、結着材としてのポリテトラフルオロエチレン水性ディスパージョンとを、固形分の質量比で100:3:10の割合で混合した後、この混合物をカルボキシメチルセルロースの水溶液に懸濁させて、正極合材スラリーを調製した。この正極合材スラリーを、厚さ30μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に、全体の厚さが230μmとなるように塗布し、これを乾燥させた。乾燥後、全体の厚さが180μmとなるように圧延ローラを用いて圧延した後、所定寸法に切断することにより、正極を得た。そして、正極集電体にアルミニウム製の正極リードを溶接した。
【0051】
[負極の作製]
負極活物質である天然黒鉛と、結着材としてのスチレンブタジエンゴム系結着材とを、質量比で100:5の割合で混合し、負極合材スラリーを調製した。この負極合材スラリーを、厚さ20μmの銅箔からなる負極集電体の両面に、全体の厚さが約230μmとなるように塗布し、これを乾燥させた。乾燥後、密度が1.4g/cc~1.7g/ccになるように圧延した後、所定寸法に切断することにより、負極を得た。そして、負極集電体に、ニッケル製の負極リ-ドを溶接した。
【0052】
[非水電解質の調製]
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)を、1:3のモル比で混合した混合溶媒に、LiPFを1モル/Lの濃度となるように溶解させることにより、非水電解質を調製した。
【0053】
[非水電解質二次電池の作製]
正極と負極とを、厚さ25μmのポリエチレン製の微多孔フィルムからなるセパレータを介して渦巻き状に巻回して、電極体を作製した。当該電極体を非水電解質と共に、ケース本体に収容し、ケース本体の開口部を、ガスケットを介して封口体にかしめることにより、非水電解質二次電池を作製した。かしめは、ガスケットの圧縮率が30%となるように行った。得られた非水電解質二次電池は、直径18.0mm、総高65.0mmであり、電池容量が3000mAhであった。
【0054】
<実施例2>
正極活物質として、リチウムニッケル複合酸化物A2を用いたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0055】
<実施例3>
正極活物質として、リチウムニッケル複合酸化物A3を用いたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0056】
<実施例4>
正極活物質として、リチウムニッケル複合酸化物A4を用いたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0057】
<実施例5>
正極活物質として、リチウムニッケル複合酸化物A5を用いたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0058】
<比較例1>
正極活物質として、リチウムニッケル複合酸化物B1を用いたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0059】
<比較例2>
正極活物質として、リチウムニッケル複合酸化物B2を用いたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0060】
<比較例3>
正極活物質として、リチウムニッケル複合酸化物B3を用いたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0061】
<比較例4>
正極活物質として、リチウムニッケル複合酸化物B4を用いたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0062】
<比較例5>
正極活物質として、リチウムニッケル複合酸化物B5を用いたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0063】
<比較例6>
正極活物質として、リチウムニッケル複合酸化物B6を用いたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0064】
[低温特性の評価]
各実施例及び比較例の電池を、電池電圧が4.2Vに達するまで、0.5mA/cmの定電流で充電した。その後、測定環境として25℃及び0℃の環境下で、電池電圧が2.5Vに達するまで、0.5mA/cmの定電流で放電した。25℃の環境下での放電容量をA、0℃の環境下での放電容量をBとして、以下の式により、低温特性(%)を算出した。その結果を表3に示す。
低温特性(%)=B/A×100
【0065】
[リチウムニッケル複合酸化物の熱安定性の評価]
各実施例及び比較例の電池について、25℃の環境下で、電池電圧が4.2Vに達するまで、0.5mA/cmの定電流で充電した。その後、電池を解体して正極を取り出した後、正極合材層1mgをかき採り、非水電解質1μLと共に耐圧密閉容器に封入して測定試料とした。この測定試料について、示差走査熱量計(DSC:Differential Scannig Calorimetry)を用いて10℃/minの昇温速度で25℃から550℃まで昇温させ、発熱開始温度を測定した。その結果を表3に示す。なお、発熱開始温度が高いほど、熱安定性が高いことを意味する。
【0066】
【表3】
【0067】
一次粒子の平均粒径が1μm未満である実施例1~3及び比較例1、3~4を比較すると、d+6σより大きい粒径を有する(すなわちαが6より大きい)粗大一次粒子が存在する二次粒子を含むリチウムニッケル複合酸化物を用いた実施例1~3の方が、当該二次粒子を含まないリチウムニッケル複合酸化物を用いた比較例1、3~4より、低温特性の低下が抑制され、熱安定性が向上した。また、一次粒子の平均粒径が1μm以上である実施例4~5及び比較例2、5~6を比較すると、d+6σより大きい粒径を有する(すなわちαが6より大きい)粗大一次粒子が存在する二次粒子を含むリチウムニッケル複合酸化物を用いた実施例4~5の方が、当該二次粒子を含まないリチウムニッケル複合酸化物を用いた比較例2、5~6より、低温特性の低下が抑制され、熱安定性が向上した。なお、実施例及び比較例のいずれも、一次粒子の平均粒径を大きくすると(例えば、1μm未満から1μm以上とすると)、熱安定は向上する一方、低温特性は低下する傾向にある。但し、d+6σより大きい粒径を有する粗大一次粒子が存在する二次粒子を含むリチウムニッケル複合酸化物を用いた実施例の方が、当該二次粒子を含まないリチウムニッケル複合酸化物を用いた比較例と比べて、一次粒子の平均粒径を高くした場合における低温特性の低下量は抑えられた。
【符号の説明】
【0068】
10 非水電解質二次電池、11 正極、12 負極、13 セパレータ、14 電極体、15 電池ケース、16 ケース本体、17 封口体、18,19 絶縁板、20 正極リード、21 負極リード、22 張り出し部、23 フィルタ、24 下弁体、25 絶縁部材、26 上弁体、27 キャップ、28 ガスケット、30 リチウム複合酸化物、32 一次粒子、32a 粗大一次粒子、34 二次粒子。
図1
図2