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特許7501214クリーニング装置、画像形成装置およびクリーニング方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】クリーニング装置、画像形成装置およびクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240611BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B41J2/165 301
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020134797
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030656
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 麻紀子
(72)【発明者】
【氏名】平山 順哉
(72)【発明者】
【氏名】山田 千晶
(72)【発明者】
【氏名】出石 由美子
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-063160(JP,A)
【文献】特開2012-140018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して前記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材と、
前記被クリーニング部材の前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させる駆動部と、
前記被クリーニング面のうち前記被クリーニング部材と前記クリーニング部材とが接触している接触領域における、前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材が相対的に移動する方向の長さを検出する検出部とを備え、
前記被クリーニング面は、前記被クリーニング部材としてのインクジェットヘッドのノズル面を含む、クリーニング装置。
【請求項2】
被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して前記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材と、
前記被クリーニング部材の前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させる駆動部と、
前記被クリーニング面のうち前記被クリーニング部材と前記クリーニング部材とが接触している接触領域における、前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材が相対的に移動する方向の長さを検出する検出部とを備え、
前記クリーニング部材は、多孔質弾性体により構成される、クリーニング装置。
【請求項3】
前記被クリーニング面は、クリーニング液を吸収した状態の前記クリーニング部材により払拭される、請求項に記載のクリーニング装置。
【請求項4】
被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して前記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材と、
前記被クリーニング部材の前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させる駆動部と、
前記被クリーニング面のうち前記被クリーニング部材と前記クリーニング部材とが接触している接触領域における、前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材が相対的に移動する方向の長さを検出する検出部とを備え、
前記検出部は、前記クリーニング部材が前記被クリーニング面に接触している時間のうち少なくとも一部の時間、前記接触領域における前記長さを検出する、クリーニング装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記接触領域の前記方向に沿う複数の箇所における、前記被クリーニング面と前記クリーニング部材との接触の有無に基づいて前記接触領域における前記長さを検出する、請求項1~のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項6】
被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して前記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材と、
前記被クリーニング部材の前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させる駆動部と、
前記被クリーニング面のうち前記被クリーニング部材と前記クリーニング部材とが接触している接触領域における、前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材が相対的に移動する方向の長さを検出する検出部とを備え、
前記検出部は、前記クリーニング部材と前記被クリーニング面との接触の検出時間に基づいて、前記接触領域における前記長さを検出する、クリーニング装置。
【請求項7】
被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して前記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材と、
前記被クリーニング部材の前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させる駆動部と、
前記被クリーニング面のうち前記被クリーニング部材と前記クリーニング部材とが接触している接触領域における、前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材が相対的に移動する方向の長さを検出する検出部とを備え、
前記検出部が前記接触領域における前記長さを検出するための部材は、前記被クリーニング面と同一の平面に設けられる、クリーニング装置。
【請求項8】
前記検出部が前記接触領域における前記長さを検出するための前記部材は、前記被クリーニング部材に設けられる複数の電極を含み、
前記検出部は、前記複数の電極のうち第1の電極と第2の電極との間のインピーダンスの変化に基づいて、前記クリーニング部材が前記被クリーニング面に接触したことを判断する、請求項に記載のクリーニング装置。
【請求項9】
前記第1の電極および前記第2の電極は、互いに隣接しており、
前記第1の電極と前記第2の電極との間のインピーダンスの変化は、前記第1の電極と前記第2の電極との間の抵抗成分の変化を含む、請求項に記載のクリーニング装置。
【請求項10】
前記第1の電極および前記第2の電極は、互いに隣接しており、
前記第1の電極と前記第2の電極との間のインピーダンスの変化は、前記第1の電極と前記第2の電極との間の静電容量成分の変化を含む、請求項に記載のクリーニング装置。
【請求項11】
被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して前記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材と、
前記被クリーニング部材の前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させる駆動部と、
前記被クリーニング面のうち前記被クリーニング部材と前記クリーニング部材とが接触している接触領域における、前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材が相対的に移動する方向の長さを検出する検出部と、
前記接触領域における前記長さが予め定められた閾値範囲外であることに基づいて、前記被クリーニング面においてクリーニング不良が生じた区域を判別する判別部と、
前記判別部の判別結果を出力する出力部とを備える、クリーニング装置。
【請求項12】
前記判別結果に基づいて、前記クリーニング部材が前記被クリーニング面をクリーニングするときのクリーニング条件を補正する補正部をさらに備える、請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項13】
前記クリーニング条件は、前記駆動部が前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させるときの、前記被クリーニング面に対する、前記クリーニング部材の相対的な移動速度を含む、請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項14】
前記クリーニング部材は、回転可能に構成され、
前記クリーニング条件は、前記クリーニング部材の回転速度を含む、請求項1または1のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項15】
前記クリーニング条件は、前記クリーニング部材が前記被クリーニング面をクリーニングする回数を含む、請求項1~1のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項16】
前記クリーニング条件は、前記被クリーニング面に対する前記クリーニング部材の押し込み量を含む、請求項1~1のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項17】
前記クリーニング条件は、前記駆動部が前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材を相対的に移動させる方向を含む、請求項1~1のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項18】
記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
請求項1~1のいずれか1項に記載のクリーニング装置とを備える、画像形成装置。
【請求項19】
被クリーニング部材のクリーニング方法であって、
前記被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して前記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材を、前記被クリーニング面に対して相対的に移動させるステップと、
前記被クリーニング面のうち前記被クリーニング部材と前記クリーニング部材とが接触している接触領域における、前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材が相対的に移動する方向の長さを検出するステップとを含
前記被クリーニング面は、前記被クリーニング部材としてのインクジェットヘッドのノズル面を含む、クリーニング方法。
【請求項20】
被クリーニング部材のクリーニング方法であって、
前記被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して前記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材を、前記被クリーニング面に対して相対的に移動させるステップと、
前記被クリーニング面のうち前記被クリーニング部材と前記クリーニング部材とが接触している接触領域における、前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材が相対的に移動する方向の長さを検出するステップとを含み、
前記クリーニング部材は、多孔質弾性体により構成される、クリーニング方法。
【請求項21】
被クリーニング部材のクリーニング方法であって、
前記被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して前記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材を、前記被クリーニング面に対して相対的に移動させるステップと、
前記被クリーニング面のうち前記被クリーニング部材と前記クリーニング部材とが接触している接触領域における、前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材が相対的に移動する方向の長さを検出するステップとを含み、
前記検出するステップは、前記クリーニング部材が前記被クリーニング面に接触している時間のうち少なくとも一部の時間、前記接触領域における前記長さを検出するステップを含む、クリーニング方法。
【請求項22】
被クリーニング部材のクリーニング方法であって、
前記被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して前記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材を、前記被クリーニング面に対して相対的に移動させるステップと、
前記被クリーニング面のうち前記被クリーニング部材と前記クリーニング部材とが接触している接触領域における、前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材が相対的に移動する方向の長さを検出するステップとを含み、
前記検出するステップは、前記クリーニング部材と前記被クリーニング面との接触の検出時間に基づいて、前記接触領域における前記長さを検出するステップを含む、クリーニング方法。
【請求項23】
被クリーニング部材のクリーニング方法であって、
前記被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して前記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材を、前記被クリーニング面に対して相対的に移動させるステップと、
前記被クリーニング面のうち前記被クリーニング部材と前記クリーニング部材とが接触している接触領域における、前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材が相対的に移動する方向の長さを検出するステップとを含み、
前記検出するステップにおいて前記接触領域における前記長さを検出するための部材は、前記被クリーニング面と同一の平面に設けられる、クリーニング方法。
【請求項24】
被クリーニング部材のクリーニング方法であって、
前記被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して前記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材を、前記被クリーニング面に対して相対的に移動させるステップと、
前記被クリーニング面のうち前記被クリーニング部材と前記クリーニング部材とが接触している接触領域における、前記被クリーニング面に対して前記クリーニング部材が相対的に移動する方向の長さを検出するステップと、
前記接触領域における前記長さが予め定められた閾値範囲外であることに基づいて、前記被クリーニング面においてクリーニング不良が生じた区域を判別するステップと、
前記判別するステップにおける判別結果を出力するステップとを含む、クリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クリーニング装置、画像形成装置およびクリーニング方法に関し、より特定的には、画像形成装置における被クリーニング部材をクリーニングする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、記録媒体に画像を形成する画像形成装置は、画像形成部に付着した、トナーまたはインクなどの記録剤、ちり、埃および汚れなどをクリーニングするクリーニング装置を備えている。クリーニング装置において、画像形成部の被クリーニング部材の被クリーニング面にローラーまたはブレードなどのクリーニング部材を接触させて払拭する技術が知られている。
【0003】
クリーニング装置に関し、例えば、特開2013-173265号公報は、インクジェットヘッドのノズル面を払拭部材により清掃するノズル面清掃装置を開示している。このノズル面清掃装置は、前記ノズル面と前記払拭部材とを相対的に昇降させる昇降手段と、前記払拭部材の当接を検知する検知手段と、前記払拭部材と前記ノズル面とを前記ノズル面に沿って相対的に移動させる払拭手段と、前記検知手段の検知結果に基づいて前記昇降手段の昇降を停止させ、該昇降停止位置において前記払拭手段による払拭を行わせる制御手段とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-173265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クリーニング装置では、クリーニング部材と被クリーニング面との接触状態を適切に保つ必要がある。例えば、接触が不十分な場合にはクリーニング面に付着した汚れなどをクリーニング部材が十分にクリーニングできない。一方、接触が過剰な場合には、クリーニング部材および被クリーニング部材が摩耗または変質して消耗する結果、それらの部材の寿命が低下してしまう。したがって、クリーニング部材と被クリーニング面との接触状態をより精度よく検出する技術が必要とされる。
【0006】
本開示は、上記のような背景を鑑みてなされたものである。ある局面において、クリーニング部材と被クリーニング面との接触状態をより精度よく検出する技術が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある実施形態に従うクリーニング装置は、被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して上記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材と、上記被クリーニング部材の上記被クリーニング面に対して上記クリーニング部材を相対的に移動させる駆動部と、上記被クリーニング面のうち上記被クリーニング部材と上記クリーニング部材とが接触している接触領域における、上記被クリーニング面に対して上記クリーニング部材が相対的に移動する方向の長さを検出する検出部とを備える。
【0008】
ある局面において、上記被クリーニング面は、上記被クリーニング部材としてのインクジェットヘッドのノズル面を含む。
【0009】
ある局面において、上記クリーニング部材は、多孔質弾性体により構成される。
ある局面において、上記被クリーニング面は、クリーニング液を吸収した状態の上記クリーニング部材により払拭される。
【0010】
ある局面において、上記検出部は、上記クリーニング部材が上記被クリーニング面に接触している時間のうち少なくとも一部の時間、上記接触領域における上記長さを検出する。
【0011】
ある局面において、上記検出部は、上記接触領域の上記方向に沿う複数の箇所における、上記被クリーニング面と上記クリーニング部材との接触の有無に基づいて上記接触領域における上記長さを検出する。
【0012】
ある局面において、上記検出部は、上記クリーニング部材と上記被クリーニング面との接触の検出時間に基づいて、上記接触領域における上記長さを検出する。
【0013】
ある局面において、上記検出部が上記接触領域における上記長さを検出するための部材は、上記被クリーニング面と同一の平面に設けられる。
【0014】
ある局面において、上記検出部が上記接触領域における上記長さを検出するための上記部材は、上記被クリーニング部材に設けられる複数の電極を含む。上記検出部は、上記複数の電極のうち第1の電極と第2の電極との間のインピーダンスの変化に基づいて、上記クリーニング部材が上記被クリーニング面に接触したことを判断する。
【0015】
ある局面において、上記第1の電極および上記第2の電極は、互いに隣接している。上記第1の電極と上記第2の電極との間のインピーダンスの変化は、上記第1の電極と上記第2の電極との間の抵抗成分の変化を含む。
【0016】
ある局面において、上記第1の電極および上記第2の電極は、互いに隣接している。上記第1の電極と上記第2の電極との間のインピーダンスの変化は、上記第1の電極と上記第2の電極との間の静電容量成分の変化を含む。
【0017】
ある局面において、上記画像形成装置は、上記接触領域における上記長さが予め定められた閾値範囲外であることに基づいて、上記被クリーニング面においてクリーニング不良が生じた区域を判別する判別部と、上記判別部の判別結果を出力する出力部とをさらに備える。
【0018】
ある局面において、上記画像形成装置は、上記判別結果に基づいて、上記クリーニング部材が上記被クリーニング面をクリーニングするときのクリーニング条件を補正する補正部をさらに備える。
【0019】
ある局面において、上記クリーニング条件は、上記駆動部が上記被クリーニング面に対して上記クリーニング部材を相対的に移動させるときの、上記被クリーニング面に対する、上記クリーニング部材の相対的な移動速度を含む。
【0020】
ある局面において、上記クリーニング部材は、回転可能に構成される。上記クリーニング条件は、上記クリーニング部材の回転速度を含む。
【0021】
ある局面において、上記クリーニング条件は、上記クリーニング部材が上記被クリーニング面をクリーニングする回数を含む。
【0022】
ある局面において、上記クリーニング条件は、上記被クリーニング面に対する上記クリーニング部材の押し込み量を含む。
【0023】
ある局面において、上記クリーニング条件は、上記駆動部が上記被クリーニング面に対して上記クリーニング部材を相対的に移動させる方向を含む。
【0024】
他の実施形態に従うと、画像形成装置が提供される。この画像形成装置は、記録媒体に画像を形成する画像形成部と、上記クリーニング装置とを備える。
【0025】
さらに他の実施形態に従うと、被クリーニング部材のクリーニング方法が提供される。このクリーニング方法は、被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して上記被クリーニング面をクリーニングするクリーニング部材を、上記被クリーニング面に対して相対的に移動させるステップと、上記被クリーニング面のうち上記被クリーニング部材と上記クリーニング部材とが接触している接触領域における、上記被クリーニング面に対して上記クリーニング部材が相対的に移動する方向の長さを検出するステップとを含む。
【発明の効果】
【0026】
本開示によれば、クリーニング部材と被クリーニング面との接触状態をより精度よく検出することができる。
【0027】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】画像形成装置100のハードウェア構成を示す図である。
図2】クリーニング装置135の外観を示す図である。
図3】ヘッドノズル面222を-z方向から見た図である。
図4】ヘッドユニット105の内部に設けられる基板400の表面402および裏面415をそれぞれ示す図である。
図5】クリーニング装置135に含まれる回路の構成を示す図である。
図6】クリーニング装置135のハードウェア構成を示す図である。
図7】クリーニング部材625としての払拭ローラー200の側面図および断面図をそれぞれ示す図である。
図8】クリーニング部材625と被クリーニング面800との接触領域の長さLtの検出原理を説明するための図である。
図9】コンパレーターCPの出力信号、およびラッチ回路515の出力信号の一例を示す図である。
図10】一部にへこみのある払拭ローラー200を示す図である。
図11】払拭ローラー200に凹みが無い場合、および凹みが有る場合において、センサー305Aにおける接触不良の有無を表示した結果を示す図である。
図12】画像形成装置100において、クリーニング装置135が実行する処理を説明するための機能を表すブロック図である。
図13】実施形態1の画像形成装置100において、クリーニング動作を実行するための手順の一例を示すフローチャートである。
図14】クリーニング部材625が払拭ローラー200のようなローラー形状の部材である場合における、一連のクリーニング動作を説明するためのタイミングチャートである。
図15】実施形態1の画像形成装置100において、クリーニング動作を実行するための手順の一例を示すフローチャートである。
図16】クリーニング不良が生じたことをユーザーに通知するために表示器635に表示される画面を示す図である。
図17】実施形態1の画像形成装置100において、クリーニング動作を実行するための手順の一例を示すフローチャートである。
図18】クリーニング不良が生じた区域をユーザーに通知するために表示器635に表示される画面を示す図である。
図19】自由長Lfが均一である場合、および自由長Lfが均一でない場合のブレード1900を示す図である。
図20】自由長Lfが均一である場合、および自由長Lfが均一でない場合において、センサー305Aおよびセンサー305Bにおける接触不良の有無を表示した結果を示す図である。
図21】接触領域の長さLtを検出するための回路の構成の一例を示す図である。
図22】接触領域の長さLtが目標範囲内である場合において、クリーニング部材625が接触している電極の数と、接触領域の長さLtとの関係を説明するための図である。
図23】接触領域の長さLtが目標長さ未満である場合において、クリーニング部材625が接触している電極の数と、接触領域の長さLtとの関係を説明するための図である。
図24】払拭ローラー200に凹みが無い場合、および凹みが有る場合において、センサー305Aにおける接触不良の有無を表示した結果を示す図である。
図25】クリーニング部材625がクリーニング面の絶縁層に接触したときに、隣接する電極420kおよび電極420kに電流が流れることを示す図である。
図26】クリーニング部材625が被クリーニング面800の絶縁層2600に接触したときに、隣接する電極420kおよび電極425kの間のインピーダンスが変化することを示す図である。
図27】接触領域の長さLtを検出するための回路構成を示す図である。
図28】CPU600が、クリーニング部材625と被クリーニング面800との接触の検出時間に基づいて、接触領域における長さLtを検出することを説明するための図である。
図29】CPU600が、クリーニング部材625が被クリーニング面800に設けられる部材1208としての電極420kに接触している時間に基づいて、接触領域における長さLtを検出することを説明するために図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ、本開示における実施形態を説明する。以下の説明では、同一の構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称も同じである。したがって、それらについての詳細な説明を繰り返さない。また、以下の説明では、複数の同一の構成要素に対して、構成123A,123B,123,123のように表現することがある。それらの構成要素を総称する場合、構成123と表現する。
【0030】
[インクジェットヘッドのクリーニングにおける特有の課題]
まず、本開示に係るクリーニング装置が提案された背景を説明する。被クリーニング面がインクジェットのヘッドノズル面である場合において、一部のノズル近傍のみに付着物がある場合であっても、当該ノズルから吐出されるインクの液面であるメニスカスが適切に形成されず、インク吐出において「曲がり」と呼ばれる不具合が生じることがある。その結果、記録媒体に形成される画像の質が低下するという課題があった。そこで、インクジェットのヘッドノズル面において、そのような付着物をクリーニングする必要がある。しかし、例えばヘッドノズル面に対してクリーニング部材が強く接触すると吐出面の撥液状態が劣化したり、ノズルの孔に傷が生じて被クリーニング部材の寿命が短くなったり、ノズル内部に汚れなどが押込まれたりする不都合が生じ得る。
【0031】
そのような不都合が生じることを回避するために、クリーニング液を吸収した状態の多孔質体により構成されるクリーニング部材が用いられる場合がある。この場合、被クリーニング面とクリーニング部材とが接触している領域において圧力が分散されて低下した状態で、クリーニング部材が上記付着物をクリーニングする。ここで、当該圧力が適切な値よりも強い場合、ヘッドノズル面に過剰にクリーニング液が吐き出されるため、当該吐き出された液がクリーニング部材により回収されずにヘッドノズル面に残ることがある。他方、当該圧力が適切な値よりも低い場合、上記領域において圧力が低いため、例えば圧力センサーなどを用いると、被クリーニング面とクリーニング部材とが接触していることを検知すること自体が困難な場合があった。また、多孔質体は、使用されるにつれてその形状が変化しやすく、クリーニング部材がクリーニング液を含んでいる量に応じて当該部材の形状が変化する結果、接触状態を検知して適切な接触状態を安定して保つことが難しいという課題があった。
【0032】
本開示におけるクリーニング装置は、上記の課題に対して特に有用である。以下、当該装置の構成などについて具体的に説明する。
【0033】
<実施形態1>
[画像形成装置およびクリーニング装置のハードウェア構成]
図1図6を参照して、画像形成装置100およびクリーニング装置135のハードウェア構成を説明する。図1は画像形成装置100のハードウェア構成を示す図である。
【0034】
画像形成装置100は、記録媒体に画像を形成する画像形成部としてのヘッドユニット105と、第1の駆動モーター107と、第2の駆動モータ(図示しない)と、繰り出しロール110と、巻き取りロール115と、バックロール120および125と、定着装置130と、クリーニング装置135とを備える。
【0035】
ヘッドユニット105は、記録媒体Pに向かってインクを射出することにより、記録媒体P上に画像を形成する。ヘッドユニット105は、上下または左右に往復移動する基板106に固定されている。第1の駆動モーター107および第2の駆動モーターは、互いに独立して動作し、ギアまたはカムなどの機構を介して、それぞれ、基板106を左右および上下方向に移動させる。
【0036】
繰り出しロール110は、記録媒体Pを矢印AR1に示す方向に繰り出す。記録媒体Pは、例えば、用紙または布である。巻き取りロール115は、繰り出しロール110から繰り出されてヘッドユニット105により画像が形成された記録媒体Pを巻き取る。バックロール120および125は、繰り出しロール110と巻き取りロール115との間に設けられる。定着装置130は、記録媒体P上に供給されたインクを記録媒体Pに定着させる。
【0037】
クリーニング装置135は、基板106に固定されて矢印AR2の方向に移動するヘッドユニット105の被クリーニング面をクリーニングする。
【0038】
上記の説明において、画像形成装置100が備える画像形成部は、インクジェット方式により記録媒体に画像を形成するものとして説明したが、他の局面において、電子写真方式により記録媒体Pに画像を形成してもよい。画像形成部が記録媒体Pに画像を形成する方式は、限定されない。さらに他の局面において、画像形成装置100は、カット紙などの、断裁された記録媒体に画像を形成してもよい。
【0039】
図2は、クリーニング装置135の外観を示す図である。クリーニング装置135は、クリーニング部材としての払拭ローラー200と、水槽205と、押圧部材210と、駆動モーター215とを含む。
【0040】
払拭ローラー200は、回転可能に構成され、払拭ローラー200の一部が水槽205内のクリーニング液207に浸るように設けられる。図2の例では、払拭ローラー200は、スポンジなどの多孔質弾性体により構成される。他の局面において、払拭ローラー200は、ゴムを含む素材により構成されていてもよい。払拭ローラー200は、クリーニング液207を吸収した状態で、ヘッドユニット105の被クリーニング面であるヘッドノズル面222を払拭する。
【0041】
押圧部材210は、払拭ローラー200に対向するように設けられ、払拭ローラー200の回転に従って回転する。ある局面において、押圧部材210は、ステンレスにより構成され、押圧部材210の直径は8mmである。押圧部材210の回転軸と払拭ローラー200の回転軸との軸間距離は4mmである。押圧部材210は、払拭ローラー200に食い込むように設けられ、クリーニング液207を吸収した状態の払拭ローラー200に含まれる水分量を調整するために用いられる。
【0042】
駆動モーター215は、カムなどの機構(図示しない)を介して払拭ローラー200を回転させる。より具体的には、駆動モーター215が回転することにより、当該機構を介して払拭ローラー200が回転する。
【0043】
第1の駆動モーター107は、ヘッドノズル面222に対して、払拭ローラー200を接触、払拭または離間させる。例えば、第2の駆動モーターは、ヘッドノズル面222を-z方向に移動(下降)させ、払拭ローラー200をヘッドノズル面222に接触させる。次いで、第1の駆動モーター107は、ヘッドノズル面222に沿って、払拭ローラー200を+x方向に移動(摺動)させる。これにより、払拭ローラー200がヘッドノズル面222を払拭する。ここで、例えば、第1の駆動モーター107が払拭ローラー200を+x方向に移動させている間、駆動モーター215は、払拭ローラー200を回転させる。その後、第2の駆動モーターは、ヘッドノズル面222を+z方向に移動させ、ヘッドノズル面222を払拭ローラー200から離間(上昇)させる。このように、第1の駆動モーター107および第2の駆動モーター(以下、「第1の駆動モーター107など」とも表す)が、ヘッドユニット105のヘッドノズル面222に対して、払拭ローラー200を接触、払拭および離間させることにより、一連のクリーニング動作が実行される。
【0044】
図2の例とは異なり、クリーニング装置135は、払拭ローラー200および水槽205を移動させる他の駆動機構をさらに備えていてもよい。より具体的には、図2のように第1の駆動モーター107などが被クリーニング部材を移動させることに代えて、当該他の駆動機構がヘッドノズル面222に対して払拭ローラー200を移動(接触、払拭または離間)させてもよい。また、クリーニング装置135は、払拭ローラー200を移動させることに代えて、被クリーニング部材としてのヘッドユニット105を移動させる他の駆動機構をさらに備えていてもよい。すなわち、クリーニング装置135は、ヘッドノズル面222などの被クリーニング面に対して、払拭ローラー200などのクリーニング部材を相対的に移動させる駆動機構を備え得る。また、画像形成装置100が当該機構を備えていてもよい。
【0045】
クリーニング装置135は、払拭ローラー200および水槽205に代えて、クリーニング部材としてのウェブ、ブラシまたはブレードなどを備えていてもよい。クリーニング装置135がクリーニング部材としてブレードを備える場合については、実施形態2において説明する。
【0046】
また、実施形態では、一例として、被クリーニング部材がインクジェットヘッド(ヘッドユニット)である場合を主に説明するが、画像形成部が電子写真方式により記録媒体に画像を形成する場合、被クリーニング部材は、感光体または中間転写ベルトなどであってもよい。
【0047】
図3は、ヘッドノズル面222を-z方向から見た図である。図3において、+z方向は、ヘッドノズル面222と垂直な方向であって、ヘッドノズル面222が払拭ローラー200から遠ざかる方向である。+x方向は、払拭ローラー200がヘッドノズル面222を払拭する方向である。+y方向は、ヘッドノズル面222においてx軸と垂直な方向である。
【0048】
ヘッドノズル面222には、ヘッド300A,300Bを含む複数のヘッドと、センサー305A~305Cとが設けられている。
【0049】
ヘッド300Aは、インクの吐出口であるノズル310A,310Bおよび310Cを含む。ヘッド300Aは、ノズル310A,310Bおよび310Cに加えて他のノズル(図示しない)を含み得る。同様に、ヘッド300Bは、ノズル310D,310Eおよび310Fと、他のノズル(図示しない)とを含み得る。ヘッド300A,310B以外の各ヘッドも、ヘッド300A,300Bと同様に、複数のノズル(図示しない)を含む。これらのノズルは、予め定められた間隔に沿って設けられる。
【0050】
センサー305A~305Cは、クリーニング部材がヘッドノズル面222に接触したことを検知する。センサー305A~305Cは、ヘッドノズル面222と同一の平面内で、ヘッドユニット105の長手方向(x方向)に沿って互いに平行に設けられる。センサー305A~305Cは、ヘッドノズル面222と払拭ローラー200とが接触するタイミングにおいて、ヘッドノズル面222と払拭ローラー200とが接触していることを検知できる位置に設けられている。センサー305A~305Cの各々は、ヘッドノズル面222に対する払拭ローラー200の相対的な移動方向(+x方向)に配置される複数の電極を含む。例えば、センサー305Aは、電極315と電極315k+1とを含む。センサー305Bは、電極355と電極355k+1とを含む。
【0051】
当該複数の電極の各々の位置(例えば、図3のx座標およびy座標)を示す情報は、不揮発性メモリー(後述する)に格納されている。例えば、払拭ローラー200が電極315と電極315k+1との両方に接触したとき、それらの電極の位置(x座標およびy座標)に対応するノズル310Aにもクリーニング部材が接触したと考えられる。同様に、払拭ローラー200が電極355と電極355k+1との両方に接触したとき、それらの電極の位置(x座標およびy座標)に対応するノズル310Dにもクリーニング部材が接触したと考えられる。このように、ヘッドノズル面222におけるノズルの各々は、センサー305A~305C内の隣接する電極の組に対応し得る。
【0052】
他の局面において、xy平面において、ダミーヘッド(図示しない)が、ヘッドノズル面222とは異なる位置に設けられてもよい。ダミーヘッドとは、インクを吐出しないヘッドであって、ヘッドユニット105に着脱可能な部材をいう。例えば、当該ダミーヘッドが、ヘッドノズル面222よりも-y方向に設けられてもよく、センサー305Aがヘッドノズル面222に代えて当該ダミーヘッドに設けられてもよい。当該ダミーヘッドに設けられるセンサー305Aに含まれる電極315と電極315k+1とに払拭ローラー200が接触したとき、それらの電極の位置(x座標およびy座標)に対応するノズル310Aにも、払拭ローラー200が接触していると考えられる。センサー305A~305Cがクリーニング部材による接触を検知する原理については、後述する。
【0053】
図4(A)および図4(B)は、ヘッドユニット105の内部に設けられる基板400の表面402および裏面415をそれぞれ示す図である。表面402は、基板400においてヘッドノズル面222側の面である。
【0054】
図4の例では、基板400は、表面402において、電極420および電極425を含む27本の電極群(図示しない)を備える。電極420および電極425は、x方向に対して交互に設けられている。各電極は、基板400上に形成された銅箔がエッチングされることにより形成される。他の局面において、各電極は、導電性のインクを用いてパターニングにより形成されたり、フォトリソグラフィーなどの一般的な方法により形成されたりしてもよい。各電極と、隣接する電極との間のx方向の距離Lは2mmである。各電極のx方向の幅Wは0.2mmである。各電極のy方向の長さLは10mmである。ヘッドの長さは、57mmである。ある局面において、電極420,425を含む上記の電極群は、センサー305A,305Bおよび305Cのいずれかに対応し得る。
【0055】
基板400は、裏面415において、電極420および電極425にそれぞれ対応するスルーホール410Aおよび410Cと、電極410Bおよび410Dとを含む。スルーホール410A~410Dは、表面402に設けられる電極420および電極425と検出回路500(図5)との間に電流が流れるようにするために設けられる。これにより、電極420および電極425とクリーニング部材とが接触したときに、それらが接触したことを示す信号は、図5の検出回路500に伝わる。
【0056】
図5は、クリーニング装置135に含まれる回路の構成を示す図である。図6は、クリーニング装置135のハードウェア構成を示す図である。検出回路500は、クリーニング装置135内に設けられ、抵抗素子Rk-1,RおよびRk+1と、コンパレーターCPk-1,CPおよびCPk+1と、ラッチ回路515k-1,515および515k+1とを含む。電極420k-1,420k-1,420k+1,425k-1,425および電極425k+1は、ヘッドノズル面222において、この順番で設けられる。
【0057】
払拭ローラー200などのクリーニング部材が、ヘッドノズル面222などの被クリーニング面内の隣接した電極、例えば420k-1および電極425k-1に接触するとき、信号源DC1からのDC信号は、抵抗素子R1と、当該部材と、当該部材が接触した電極420k-1および電極425k-1とを介して検出回路500に伝わる。
【0058】
これにより、電極425k-1に接続されているコンパレーターCPk-1の一方の入力端子に電流が流れる。このとき、コンパレーターCPk-1の他方の入力端子は、グラウンドに接続されているため、コンパレーターCPk-1は、コンパレーターCPに接続されているラッチ回路515k-1にHigh信号を出力する。当該ラッチ回路515k-1は、出力されるHigh信号を一時的に保存する。コンパレーターCPk-1は、当該一方の入力端子に電流が流れないとき、High信号を出力しない(Low信号を出力する)。ラッチ回路515k-1は、出力されるHigh信号を一時的に保存する。
【0059】
同様に、クリーニング部材が電極420および電極425k-1に接触する場合、コンパレーターCPk-1の一方の入力端子に電流が流れる。コンパレーターCPk-1は、ラッチ回路515k-1にHigh信号を出力する。このように、コンパレーターCPk-1に接続された電極425k-1から-x方向に間隔I離れた位置から、電極425k-1から+x方向に間隔I離れた位置までの範囲内(電極425k-1を中心としてx方向に幅2I+dの範囲内)でクリーニング部材625が被クリーニング面800に接触している場合において、接触領域の長さLtが目標長さ以上であるとき、コンパレーターCPk-1は、ラッチ回路515k-1にHigh信号を出力する。
【0060】
クリーニング部材が電極420および電極425に接触する場合、コンパレーターCPの一方の入力端子に電流が流れる。このとき、コンパレーターCPの一方の入力端子に電流が流れる。コンパレーターCPは、ラッチ回路515にHigh信号を出力する。ラッチ回路515は、出力されるHigh信号を一時的に保存する。
【0061】
このように、クリーニング部材は、被クリーニング面に接触した状態で当該面に対してx方向に相対的に移動している間、当該部材の移動方向に設けられる電極420k-1,425k-1,420,425,420k+1,425k+1…に、この順番で接触する。この間、それらの電極に接続されるコンパレーターCPk-1,CP,CPk+1…は、順番にHigh信号を出力する。ラッチ回路515k-1,515,515k+1…は、当該信号を順番に保存する。
【0062】
図6を参照して、クリーニング装置135は、CPU(Central Processing Unit)600と、不揮発性メモリー605と、揮発性メモリー607と、タイマー610と、PIO(Programmed Input and Output)615と、ディスプレイドライバー617と、モータドライバー620と、クリーニング部材625とを含む。
【0063】
CPU600は、不揮発性メモリー605に格納されているプログラム、例えば、クリーニング動作を行うためのプログラムを実行する。また、CPU600は、検出回路500とCPU600とを接続するPIO615を介して、検出回路500に含まれるラッチ回路515により保存されている信号を取り込み、揮発性メモリー607に格納する。CPU600は、当該信号に基づいて、クリーニング部材が被クリーニング面に接触したか否かを判断する。当該判断処理については、後述する。ある局面において、CPU600に代えて、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)もしくはFPGA(Field-Programmable Gate Array)、またはこれらの回路素子の組み合わせが用いられてもよい。
【0064】
不揮発性メモリー605は、クリーニング動作におけるクリーニング条件などの、クリーニング装置135で使用される様々なプログラムおよびデータを格納する。不揮発性メモリー605は、例えば、被クリーニング面において設けられる各電極の位置(例えば、図3のx座標およびy座標)を示す情報を格納する。ある局面において、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置が不揮発性メモリー605として使用される。
【0065】
揮発性メモリー607は、RAM(Random Access Memory)を含む。RAMは、CPU600によって実行されるプログラムおよび参照されるデータを一時的に格納する。ある局面において、SRAM(Static Random Access Memory)またはDRAM(Dynamic Random Access Memory)が揮発性メモリー607として使用される。
【0066】
モータドライバー620は、クリーニング部材625と被クリーニング部材802とを移動させるための信号を出力する回路である。モータドライバー620は、例えば、前述した他の駆動機構および第1の駆動モーター107などの少なくとも1つを駆動させるための信号を出力する。また、クリーニング部材625が回転可能に構成されている場合、モータドライバー620は、駆動モーター215を駆動することによりクリーニング部材625を回転させるための信号を出力する。ディスプレイドライバー617は、文字または画像などを含む画面を表示器635に表示させる。表示器635は、タッチセンサーが組み込まれた、複数のボタンを備えるタッチスクリーンであり得る。当該画面については、後述する。
【0067】
クリーニング部材625は、被クリーニング部材の被クリーニング面に接触して当該面をクリーニングする。クリーニング部材625は、払拭ローラー200、ブレード、ブラシおよびウェブなどのいずれであってもよい。
【0068】
[接触領域の長さLtを検出するための原理]
前述したように、クリーニング部材625と被クリーニング面との接触状態を精度よく検出することが必要とされる。
【0069】
実施形態におけるクリーニング装置135は、クリーニング部材625と被クリーニング面との接触状態が適切であるか否かを、クリーニング部材625と被クリーニング面との接触領域の長さLtに基づいて判断する。接触領域の長さLtは、クリーニング部材625と被クリーニング面との接触状態と関連性が高いため、クリーニングの良否とも関連性が高い。したがって、接触領域の長さLtに基づいて、クリーニングの良否を判断できる。
【0070】
図7図10を参照して、クリーニング部材625が払拭ローラー200である例において、クリーニング部材625と被クリーニング面との接触領域の長さLtを検出するための原理を説明する。
【0071】
図7(A)および図7(B)は、クリーニング部材625としての払拭ローラー200の側面図および断面図をそれぞれ示す図である。図8は、クリーニング部材625と被クリーニング面800との接触領域の長さLtの検出原理を説明するための図である。図9は、コンパレーターCPの出力信号、およびラッチ回路515の出力信号の一例を示す図である。
【0072】
ここで、「接触領域の長さ」は、クリーニング部材625と被クリーニング部材802とが接触している接触領域(ニップ領域)における、被クリーニング面800に対してクリーニング部材625が相対的に移動する方向の長さをいう。図8の例では、当該方向は、矢印830により示される方向に対応する。被クリーニング面800に対してクリーニング部材625が相対的に移動することは、被クリーニング面800に対してクリーニング部材625が移動することと、被クリーニング面800がクリーニング部材625に対して移動することとのいずれであってもよい。
【0073】
実施形態では、接触領域の長さLtが目標長さから閾値範囲(以下、「目標範囲」とも表す)以内である場合に、CPU600は、接触状態が適切であると判断する。目標長さおよび目標範囲は、クリーニング部材625と被クリーニング部材802との種類に基づいて、実験などにより予め定められ得る。以下、一例として、目標範囲は、目標長さ以上かつ目標長さよりも2I+2d大きい上限長さ未満の範囲であるとする。他の局面において、目標範囲としてその他の範囲が設定されてもよい。
【0074】
これに対して、接触領域の長さLtが目標範囲外である場合、クリーニング不良が生じていると判断する。例えば、接触領域の長さLtが目標長さ未満である場合、CPU600は、接触不足であると判断する。接触領域の長さLtが目標範囲を超えるほど大きい場合、CPU600は、過剰接触であると判断する。
【0075】
図8において、電極420,425,420k+1,425k+1…は、これらの電極間の間隔Iが目標長さになるように、被クリーニング面800としてのヘッドノズル面222に設けられる。また、被クリーニング面800に設けられる他の電極(図示しない)においても、同様に、隣接する電極間の間隔Iが目標長さになるように並んでいる。
【0076】
図8(A)および図8(B)は、クリーニング部材625が被クリーニング面800に接触している場合において、接触領域の長さLtが目標長さである様子、および接触領域の長さLtが目標長さ未満である様子をそれぞれ示す。
【0077】
図8(A)のように、接触領域の長さLtが電極間の間隔I以上である場合、クリーニング部材625を介して、隣接する電極420と電極425との間で電流が流れる。隣接する電極420と電極425の間の間隔Iが目標長さになるように設定されているため、当該電流が流れる場合、接触領域の長さLtは目標長さ以上である。図8(A)の例では、CPU600が検出する、接触領域の長さLtは、目標長さである。
【0078】
これに対して、図8(B)のように、接触領域の長さLtが電極間の間隔I未満である場合、隣接する電極420と電極425との間で電流が流れない。したがって、当該電流が流れない場合、接触領域の長さLtが目標長さ未満である。
【0079】
図9(A)および図9(B)は、図8においてクリーニング部材625が矢印830により示される方向に移動しているときの、コンパレーターCPの出力信号、およびラッチ回路515の出力信号の一例を示す。電極420と電極425との間で電流が流れる場合、図5のコンパレーターCPは、High信号を出力し、ラッチ回路515は、当該信号を一時的に保存する(図9(A)の時間t11)。
【0080】
クリーニング部材625は、被クリーニング面800に対して平行な矢印830の方向に移動速度vで相対的に移動する。クリーニング部材625が電極420と電極425と両方に接触している間(それらが接触し始めた時間t11から(Lt-(I+d))/vの時間が経過するまで)、それらの電極の間で電流が流れるため、コンパレーターCPは、High信号を出力する(図9(A)の時間t11~時間t12)。
【0081】
クリーニング部材625は、被クリーニング面800に対して矢印830の方向に相対的にさらに移動すると、電極420から離れ、電極425のみに接触する。クリーニング部材625が電極425のみに接触している間、いずれのコンパレーターCPも、High信号を出力しない(図9(A)の時間t12~時間t13)。
【0082】
クリーニング部材625は、被クリーニング面800に対して矢印830の方向に相対的にさらに移動すると、電極425と電極420k+1との両方に接触する。クリーニング部材625が電極425と電極420k+1との両方に接触している間、コンパレーターCPは、再びHigh信号を出力する(図9(A)の時間t13~時間t14)。
【0083】
クリーニング部材625は、被クリーニング面800に対して矢印830の方向に相対的にさらに移動すると、電極420k+1にのみ接触する。クリーニング部材625が電極420k+1にのみ接触している間、いずれのコンパレーターCPもHigh信号を出力しない(図9(A)の時間t14~時間t15)。
【0084】
クリーニング部材625は、被クリーニング面800に対して矢印830の方向に相対的にさらに移動すると、電極420k+1と電極425k+1との両方に接触する。クリーニング部材625が電極420k+1と電極425k+1との両方に接触すると、それらの電極の間で電流が流れるため、コンパレーターCPk+1は、High信号を出力する(図9(A)の時間t15)。ラッチ回路515k+1は、当該信号を一時的に保存する。
【0085】
以上のように、クリーニング部材625が被クリーニング面800を通過している場合において、図8(A)のように、接触領域の長さLtが目標長さ以上であるとき、隣接する電極(例えば、電極420と電極425)の間に電流が流れる。それらの電極に接続されるコンパレーターCPは、High信号を出力する。当該コンパレーターCPに接続されているラッチ回路515は、当該信号を保存する。一連のクリーニング動作が終了した後、CPU600は、ラッチ回路515に保存された信号をバイナリコードとして揮発性メモリー607に格納する。CPU600は、不揮発性メモリー605に格納されているプログラムを実行して当該コードを解析することにより、接触領域の長さLtを検出する。
【0086】
より具体的には、CPU600は、不揮発性メモリー605に格納されている、被クリーニング面800における各電極の位置(例えば、図3のx座標およびy座標)を示す情報に基づいて、接触領域の長さLtを算出する。CPU600は、例えば、ラッチ回路515に保存された信号に基づいて、クリーニング部材625が電極420と電極425との両方に同時に接触したと判断し、接触領域の長さLtを、電極420のx座標と電極425のx座標として検出し得る。CPU600は、接触領域における一方端の電極から他方端の電極までの距離を接触領域の長さLtとして、例えば(n-1)×I+(n-2)×dの式から算出することにより検出し得る。ここで、nは、接触領域における電極の数であり、dは、クリーニング部材625の移動方向における電極の幅である。
【0087】
CPU600は、接触領域の長さLtが目標長さ未満である場合、High信号を出力しなかったコンパレーターCPに接続されている電極の位置を示す情報を不揮発性メモリー605から取得する。これにより、被クリーニング面800において接触領域の長さLtが目標長さ未満である位置を特定できる。例えば、被クリーニング面がヘッドノズル面222である場合、CPU600は、それらの電極の位置(例えば、図3のx座標およびy座標)に対応するノズルにおいてクリーニング不足が生じていると判断できる。
【0088】
また、例えば、接触領域の長さLtが目標範囲を超えるほど大きい場合、例えば、クリーニング部材625が電極420と、電極425と、電極420k+1と、電極425k+1とに同時に接触している場合、それらの電極の間で電流が流れる。この場合、コンパレーターCPおよびコンパレーターCPk+1は、High信号を出力する。ラッチ回路515およびラッチ回路515k+1は、出力された信号をそれぞれ保存する。
【0089】
CPU600は、ラッチ回路515に保存された信号をバイナリコードとして揮発性メモリー607に格納し、当該コードを解析する。CPU600は、当該解析結果に基づいて、接触領域の長さLtを、接触領域における一方端の電極420から他方端の電極425までの距離である3I+2dとして検出する。CPU600は、接触領域の長さLtが、前述した上限長さ(上述したように電極間の間隔Iが目標長さである場合、上限長さは、目標長さよりも(2I+2d)大きい値、すなわちI+(2I+2d)=3I+2d)以上であるため、目標範囲を超えるほど大きい、すなわち被クリーニング面800に対するクリーニング部材625の接触が過剰であると判断する。CPU600は、被クリーニング面800において、それらの電極が設けられる領域においてクリーニング過剰が生じていると判断する。
【0090】
コンパレーターCPは、クリーニング部材625が、電極420と電極425との両方に接触するときと、電極420k+1と電極425との両方に接触するときとの両方においてHigh信号を出力するため、High信号を合計で2回出力する。上記の説明において、コンパレーターCPがHigh信号を少なくとも1回出力した場合、CPU600は、接触領域の長さLtが目標長さ以上であると判断する。他の局面において、コンパレーターCPがHigh信号を2回出力してはじめて、CPU600は、電極425k-1を中心としてx方向に幅2I+dの範囲内で、接触領域の長さLtが目標長さ以上であると判断してもよい。これにより、接触領域の長さLtが目標長さ以上であることをより確実に判断できる。
【0091】
また、CPU600は、ラッチ回路515に保存された信号を解析した結果、同じタイミングで複数のコンパレーターCPがHigh信号を出力したと判断する場合がある。この場合、当該複数のコンパレーターCPのうちHigh信号を出力した回数が1回であったコンパレーターCPに接続された電極付近において、接触過剰によるクリーニング過剰が生じている可能性がある。例えば、クリーニング部材625が電極425kに接触して移動しており、かつ、電極425kに接続されているコンパレーターCPkを含む複数のコンパレーターCPが同じタイミングでHigh信号を出力するときがある。このとき、クリーニング部材625は、電極425kに接触し始めてから接触し終わるまでの間、電極425kに加えて、電極420kまたは電極420k+1の少なくともいずれかに接触している。そして、この間、電極425kに接続されているコンパレーターCPkがHigh信号を出力し、当該信号が出力される回数は1回である。また、クリーニング部材625は、その間、電極420k-1または電極420k+2(図示しない)のいずれかにも同時に接触し得る(すなわち、接触領域の長さLtが、上述した上限長さ3I+2d以上になり得る)。このように、複数のコンパレーターCPが同じタイミングでHigh信号を出力し、High信号を出力した回数が1回であったコンパレーターCPが存在する場合、当該コンパレーターCPに接続された電極付近において、接触領域の長さLtが目標範囲を超えるほど大きい可能性がある。したがって、この場合、CPU600は、当該電極付近において接触過剰によるクリーニング過剰が生じていると判断し得る。
【0092】
[検証結果]
図10および図11を参照して、接触領域の長さLtに基づいて、クリーニング不良の有無を検証した結果を説明する。図10は、一部にへこみのある払拭ローラー200を示す図である。図11(A)は、払拭ローラー200に凹みが無い場合において、センサー305Aにおける接触不良の有無を表示した結果を示す図である。当該結果は、表示器635の画面1100に表示される。図11(B)は、払拭ローラーに凹みがある場合において、センサー305Aにおける接触不良の有無を表示した結果を示す図である。当該結果は、表示器635の画面1105に表示される。
【0093】
発明者らは、クリーニング部材625として、周方向に凹みが無い払拭ローラー200(図7)と、周方向に凹みが有る払拭ローラー200(図10)とを用いて、接触領域の長さLtに基づいてクリーニング不良の有無を判断できるか否かを検証するために実験を行った。
【0094】
実験において、払拭ローラー200は、多孔質部材であるスポンジが回転軸上に形成されたものを用いた。払拭ローラー200の芯金の直径は16mmであった。払拭ローラー200の直径は30mmであった。凹みが有る払拭ローラー200(図10)において、凹み幅は8mmであった。払拭ローラー200の下半分は、クリーニング液207としての純水が入った水槽205に浸されていた。払拭ローラー200は表面速度94.2mm/sであった。払拭ローラー200の被クリーニング面に対する移動速度は10mm/sであり、払拭ローラー200の回転速度は、1s-1であった。被クリーニング面800において隣接する電極の間の距離は2mmであった。
【0095】
また、被クリーニング面800としてのヘッドノズル面222に対する払拭ローラー200の押し込み量は、1.5mmであった。ここで、被クリーニング面800に対するクリーニング部材625の「押し込み量」とは、クリーニング部材625が図2の-z方向から+z方向(被クリーニング面800に対して近づく方向)に移動して被クリーニング面800に接触し始めた状態から、さらに+z方向に押し込まれた状態に至るまでに、クリーニング部材625が移動した距離をいう。
【0096】
図11(A)において、ハッチングが付されていない部分は、当該部分に対応するx座標の区域(隣接する電極間の区域)において、接触領域の長さLtが目標範囲以内であることを示す。すなわち、画面1100は、センサー305Aの全ての位置(センサー305Aに対応する全てのノズル)において、クリーニング不良が発生していないことを示す。
【0097】
図11(B)において、ハッチングが付されている部分は、当該部分に対応する区域において、接触領域の長さLtが目標長さ未満であることを示す。より具体的には、当該部分は、ヘッドノズル面222のセンサー305Aにおける隣接する電極のうち電流が流れなかった電極が存在する区域、すなわちヘッドノズル面222において接触不足によるクリーニング不足が生じている区域に対応する。例えば、ヘッドノズル面222においてクリーニング不足が生じた位置は、x座標の原点からの距離が、8~12mm、16~20mm、28~32mm、36~40mmおよび48~52mmである区域内にあることが示されている。
【0098】
上述したように、実験において、払拭ローラー200の被クリーニング面に対する移動速度は10mm/sであり、払拭ローラー200の回転速度は、1s-1であった。そのため、払拭ローラー200における凹み部分は、ヘッドノズル面222に10mm間隔で1秒ごとに接触する。したがって、当該凹み部分に起因して、接触領域において接触不足が生ずる場合、接触不足は、10mm間隔で生ずる。これは、図11(B)に示されるように、クリーニング不足が生じた位置が、上述した区域内にあったという実験結果に整合している。すなわち、発明者らは、CPU600が接触領域の長さLtに基づいて被クリーニング面800とクリーニング部材625との接触状態が適切であるか否か(多孔質体により構成される払拭ローラー200が変形しているか否か)を判断できることを確認できた。
【0099】
以上のように、CPU600は、接触領域の長さLtを検出し、接触領域の長さLtが目標範囲内であるか否かを判断することにより、被クリーニング面800とクリーニング部材625との接触状態が適切であるか否かを判断する。また、接触領域の長さLtが目標範囲内でない場合、CPU600は、被クリーニング面800において局所的なクリーニング不良(接触不足または過剰接触)が生じた位置を判別できる。
【0100】
[クリーニング条件の補正]
CPU600は、接触領域の長さLtが目標範囲外であると判断した場合、クリーニング動作におけるクリーニング条件を補正し得る。クリーニング条件として、被クリーニング面800に対するクリーニング部材625の相対的な移動速度、相対的な移動方向、押し込み量およびクリーニング回数、ならびにクリーニング部材625の回転速度などを例示できる。
【0101】
不揮発性メモリー605は、検出された接触領域の長さLtと目標範囲の上限値または下限値との差に応じて、当該差に対応する、クリーニング条件の補正量を規定するデータを格納している。他の局面において、当該データは、CPU600の記憶領域に格納されていてもよい。
【0102】
例えば、CPU600は、検出された接触領域の長さLtが目標範囲外であるほど小さい場合(接触不足によりクリーニング不足が生じている場合)、被クリーニング面800としてのヘッドノズル面222に対する払拭ローラー200の相対的な移動速度を、現在設定されている値よりも小さくし得る。接触領域の長さLtが目標範囲の下限値よりも小さくなるにつれて、CPU600は、上記速度をより小さくし得る。これにより、ヘッドノズル面222における各ノズルにクリーニング部材625が接触している時間を長くすることができ、クリーニング不足を解消し得る。
【0103】
他方、CPU600は、検出された接触領域の長さLtが目標範囲外であるほど大きい場合(過剰接触によりクリーニング過剰が生じている場合)、ヘッドノズル面222に対する払拭ローラー200の相対的な移動速度を、現在設定されている値よりも大きくし得る。接触領域の長さLtが目標範囲の上限値よりも大きくなるにつれて、CPU600は、上記速度をより大きくし得る。これにより、ヘッドノズル面222における各ノズルにクリーニング部材625が接触している時間を短くすることができ、クリーニング過剰を解消し得る。
【0104】
また、CPU600は、検出された接触領域の長さLtが目標範囲外である場合、クリーニング不良を解消するために、払拭ローラー200の移動(摺動)方向または当該方向に移動する速度、時間もしくは距離の少なくとも1つを補正してもよい。当該方向は、CPU600が、モータドライバー620を介して、ヘッドノズル面222に対して払拭ローラー200を相対的に移動させる方向である。
【0105】
例えば、ヘッドノズル面222が、クリーニング部材625の相対的な昇降方向(図3の例ではz方向)に対して傾いている場合など、検出された接触領域の長さLtは、払拭ローラー200の払拭方向(図3の例では+x方向)において一定であっても、当該方向に対して垂直な副走査方向(図3の例では+y方向)において、一定でないことがある。このような場合、副走査方向において、ヘッドノズル面222に対して払拭ローラー200が平行になるまで(ヘッドノズル面222と払拭ローラー200とのz方向の相対的な距離が一定になるまで)クリーニング動作を複数回実行することにより、払拭ローラー200の3次元における移動(摺動)方向または距離を段階的に補正してもよい。これにより、ある方向(上記の例では+y方向)のみにおいて生じた局所的な接触不良によるクリーニング不良を解消し得る。
【0106】
また、CPU600は、クリーニング不足が生じている場合、ヘッドノズル面222に対する払拭ローラー200の押し込み量を、現在設定されている値よりも大きくし得る。接触領域の長さLtが目標範囲の下限値よりも小さくなるにつれて、CPU600は、上記押し込み量をより大きくし得る。これにより、ヘッドノズル面222における各ノズルにかかる圧力を大きくすることができ、クリーニング不足を解消し得る。
【0107】
他方、CPU600は、クリーニング過剰が生じている場合、ヘッドノズル面222に対する払拭ローラー200の押し込み量を、現在設定されている値よりも小さく得る。接触領域の長さLtが目標範囲の上限値よりも大きくなるにつれて、CPU600は、上記押し込み量をより小さくし得る。これにより、ヘッドノズル面222における各ノズルにかかる圧力を小さくすることができ、クリーニング過剰を解消し得る。
【0108】
押し込み量は、CPU600からの制御指令に従うモータドライバー620が、ヘッドユニット105を移動させる第1の駆動モーター107などまたは、払拭ローラー200および水槽205を移動させる駆動機構を制御することにより補正される。補正量および補正の頻度は、検出された接触長さLtと目標長さとの差、およびクリーニング部材の使用履歴(例えば、当該部品が交換されてから通算のクリーニング回数および日数など)を示す情報に基づいて予め定められる。当該情報は、不揮発性メモリー605に格納されている。他の局面において、CPU600は、検出された接触長さLtが目標範囲以内になるまで、押し込み量を段階的に補正してもよい。
【0109】
また、CPU600は、クリーニング不足が生じている場合、クリーニング不足を解消するために、ヘッドノズル面222に対する払拭ローラー200のクリーニング回数を、現在設定されている値よりも多くし得る。接触領域の長さLtが目標範囲の下限値よりも小さくなるにつれて、CPU600は、上記回数をより多くし得る。
【0110】
他方、CPU600は、クリーニング過剰が生じている場合、クリーニング過剰を解消するために、ヘッドノズル面222に対する払拭ローラー200のクリーニング回数を、現在設定されている値よりも少なくし得る。接触領域の長さLtが目標範囲の上限値よりも大きくなるにつれて、CPU600は、上記回数をより少なくし得る。
【0111】
ある局面において、CPU600は、ヘッドノズル面222内の特定のノズルのクリーニング回数を、他のノズルのクリーニング回数と異ならせ得る。例えば、特定のヘッド300に異物が付着することにより、払拭ローラー200と当該特定のヘッド300との接触状態と、払拭ローラー200とその他のヘッドとの接触状態とが異なる結果、クリーニング不良が生じる場合がある。この場合、CPU600は、ヘッドノズル面222全体に対して再びクリーニング動作を行ってもよいし、局所的なクリーニング不良を解消するために、ヘッドノズル面222において当該クリーニング不良が生じた位置にある当該特定のヘッドに対してのみ、再びクリーニング動作を行ってもよい。
【0112】
また、CPU600は、検出された接触領域の長さLtが目標範囲外であるほど小さい場合、クリーニング不足を解消するために、払拭ローラー200の回転速度を、現在設定されている値よりも大きくし得る。接触領域の長さLtが目標範囲の下限値よりも小さくなるにつれて、CPU600は、当該速度をより大きくし得る。これにより、ヘッドノズル面222に付着した異物を除去しやすくできる。クリーニング部材625として、払拭ローラー200に代えてウェブが用いられる場合、当該回転速度は、ウェブの巻き取り速度に対応する。
【0113】
他方、CPU600は、検出された接触領域の長さLtが目標範囲外であるほど大きい場合、クリーニング過剰を解消するために、払拭ローラー200の回転速度を、現在設定されている値よりも小さくし得る。接触領域の長さLtが目標範囲の上限値よりも大きくなるにつれて、CPU600は、上記速度をより小さくし得る。
【0114】
CPU600は、上記のクリーニング条件の1つまたは複数を補正し得る。CPU600は、例えば、ヘッドノズル面222全体で接触領域の長さLtが同程度に目標範囲と異なっている場合、押し込み量のみを補正してもよい。また、CPU600は、押し込み量を補正する場合、ヘッドノズル面222において、全ての領域で接触領域の長さLtが目標範囲内になることが望ましいが、接触領域の長さLtが目標範囲外になるほど押込み量が過多または不足になる区域がある場合がある。この場合、CPU600は、クリーニング部材625に当該区域をクリーニングさせるとき、他のクリーニング条件(例えば、クリーニング回数、および払拭ローラー200の回転速度数など)をさらに補正してもよい。これにより、ヘッドノズル面222と払拭ローラー200との接触状態をより適切に保つことができ、被クリーニング面800が十分にクリーニングされない状態で、画像形成装置100が記録媒体Pに画像を形成し続けることを抑制できる。
【0115】
図11の例では、CPU600は、接触領域の長さLtが閾値範囲外であることに基づいて、クリーニング条件を補正した。より具体的には、CPU600は、押し込み量を1.5mmから2.0mmに増やし、相対的な移動速度を10mm/sから8mm/sに下げ、払拭ローラー200の回転数を94mm/sから100mm/sに上げてクリーニング動作を再び行った。クリーニング動作の後、CPU600は、被クリーニング面800において電極420,425により区分される区域ごとに、接触領域の長さLtを再び検出した。その結果、接触領域の長さLtは、被クリーニング面800全体で目標範囲内であった。すなわち、発明者らは、CPU600がクリーニング条件を補正することにより、クリーニング不良が解消されたことを確認できた。
【0116】
図12を参照して、接触領域の長さLtを検出するための画像形成装置100の機能的な構成を説明する。図12は、画像形成装置100において、クリーニング装置135が実行する処理を説明するための機能を表すブロック図である。
【0117】
クリーニング装置135は、クリーニング部材625と、検出部1205と、駆動部1210と、制御部1215とを備える。
【0118】
クリーニング部材625は、前述したように、被クリーニング部材802の被クリーニング面800に接触して被クリーニング面800をクリーニングする。
【0119】
検出部1205は、被クリーニング面800のうち被クリーニング部材802とクリーニング部材625とが接触している接触領域1207における、被クリーニング面800に対してクリーニング部材625が相対的に移動する方向の長さ(すなわち、接触領域の長さLt)を検出する。当該方向は、矢印830により表される。検出部1205は、例えば、検出回路500におけるラッチ回路515に保存された信号をCPU600が解析することにより実現される。クリーニング部材625が当該方向に相対的に移動している間、CPU600は、接触領域の長さLtを検出する。
【0120】
検出部1205が接触領域の長さLtを検出するための部材1208A,1208Bは、ある局面において、被クリーニング面800と同一の平面に設けられる。これにより、検出部1205は、部材1208A,1208Bとクリーニング部材625とが接触したタイミングで、被クリーニング面800とクリーニング部材625とが接触したと判断できる。図3の例では、部材1208A,1208Bは、ヘッドユニット105のヘッドノズル面222に設けられるセンサー305に含まれる電極であり得る。他の局面において、電極などの部材1208A,1208Bは、被クリーニング面800と同一の平面内にあるダミーヘッドに設けられていてもよい。このように、部材1208として電極が用いられることにより、部材1208を単純化および小型化できる。その結果、部材1208および検出回路500を用いて接触領域の長さLtを検出する、本実施形態のクリーニング装置135の構成は、様々な種類のクリーニング装置に適用でき、汎用性が高い。なお、部材1208A,1208Bとして、電極に代えて、圧力センサーなど、接触の有無を検知するためのその他の部品が用いられてもよい。
【0121】
駆動部1210は、被クリーニング部材802の被クリーニング面800に対してクリーニング部材625を相対的に移動させる。ある局面において、駆動部1210は、モータドライバー620などの駆動回路により実現される。他の局面において、駆動部1210は、CPU600が不揮発性メモリー605に格納されたプログラムに従って動作することにより実現されてもよい。
【0122】
制御部1215は、クリーニング装置135全体の動作を制御する。より具体的には、制御部1215は、判別部1240と、出力部1245と、補正部1250とを含む。ある局面において、制御部1215の機能、より具体的には、判別部1240、出力部1245および補正部1250の機能は、CPU600が不揮発性メモリー605に格納されたプログラムに従って動作することにより実現され得る。他の局面において、上記の機能は、少なくとも1つのサーバーがそのプログラムの処理の全部または一部を実行する所謂クラウドサービスにより実現されてもよい。
【0123】
判別部1240は、検出部1205により検出された、接触領域の長さLtが予め定められた範囲(目標範囲)外であることに基づいて、被クリーニング面800においてクリーニング不良が生じた部分を判別する。図11の例では、当該部分は、ハッチングが付されている区域に対応する。
【0124】
出力部1245は、判別部1240による判別結果を出力する。図11の例では、出力部1245は、画面1100または画面1105を表示器635に表示させる。他の局面において、出力部1245は、被クリーニング面800においてクリーニング不良が生じた位置を、マイク(図示しない)を介して音声により出力してもよい。
【0125】
補正部1250は、判別部1240による判別結果に基づいて、クリーニング部材625が被クリーニング面800をクリーニングするときのクリーニング条件を補正する。補正部1250は、クリーニング条件の一例として前述した、被クリーニング面800に対するクリーニング部材625の相対的な移動速度、相対的な移動方向、押し込み量およびクリーニング回数、ならびにクリーニング部材625の回転速度などを補正する。
【0126】
他の局面において、検出部1205、駆動部1210および制御部1215の少なくとも1つは、画像形成装置100における、クリーニング装置135とは異なる構成要素の機能として実現されてもよい。
【0127】
図13および図14を参照して、実施形態1における画像形成装置100のCPU600が実行する処理を説明する。
【0128】
図13は、実施形態1の画像形成装置100において、クリーニング動作を実行するための手順の一例を示すフローチャートである。図14は、クリーニング部材625が払拭ローラー200のようなローラー形状の部材である場合における、一連のクリーニング動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0129】
ある局面において、図13に示される処理は、CPU600が不揮発性メモリー605に格納されたプログラムを実行することにより実現される。上記の処理において、他の局面において、CPU600に代えて、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、当該処理を実行するように構成されたその他の回路素子、またはこれらの組み合わせが用いられてもよい。
【0130】
ステップS1305において、CPU600は、ヘッドユニット105に固定された基板106と払拭ローラー200とに対して、移動処理を開始する。より具体的には、以下のように移動処理が実行される。まず、CPU600は、移動処理を実行する前(図14の時間t~時間tまでの期間T1)に、ヘッドノズル面222に設けられる各ノズルにインクを吐出させる。CPU600は、図14の時間tから期間T2が経過した時間tにおいて、駆動部1210を介して、払拭ローラー200を回転させ、ヘッドユニット105を払拭ローラー200に対して移動させる移動処理を開始する。時間t~時間tまでの間、CPU600は、駆動部1210を介して、ヘッドユニット105を払拭ローラー200に対して下降(図2の例では、-z方向に移動)させる。当該下降距離は、ヘッドノズル面222に設けられた、払拭ローラー200の位置を検知するためのマイクロスイッチ(図示しない)により規制され、予め定められた押し込み量に設定される。当該押し込み量を示すデータは、不揮発性メモリー605に格納されている。
【0131】
ステップS1310において、CPU600は、不揮発性メモリー605に格納されるデータに基づいて、クリーニング条件(図13中の「CL」条件に対応)を設定する。当該クリーニング条件は、払拭ローラー200の主走査方向(図2の例では+x方向)の移動速度と、払拭ローラー200の回転速度などを含む。他の局面において、クリーニング部材625が主走査方向と垂直な副走査方向(図2の例ではy方向)に摺動するようにクリーニング条件が予め登録されている場合、当該クリーニング条件は、被クリーニング面800に対して当該方向にクリーニング部材625が摺動する速度、距離、時間および回数などを含む。
【0132】
さら他の局面において、当該クリーニング条件は、画像形成装置100が記録媒体に画像を形成するときの各種条件、およびクリーニング部材625の使用履歴などの条件に応じて、予め登録されていてもよい。当該各種条件は、一例として、画像形成装置100が電子写真方式である場合、帯電、露光、現像、転写および定着などの工程における各種条件(例えば、帯電電位、露光電位、現像電圧、転写電圧、定着温度など)を含む。不揮発性メモリー605は、当該各種条件を規定するデータを保持し得る。
【0133】
ステップS1315において、CPU600は、クリーニング処理を開始する。より具体的には、CPU600は、タイマー610を参照することにより、図14の時間tから期間T3が経過した時間tにおいて、ヘッドノズル面222を払拭ローラー200に払拭させる動作(ヘッドユニット105の走査)を開始する。CPU600は、ヘッドユニット105が固定された基板106を走査方向(図2の例では+x方向)に移動させることによりヘッドノズル面222に対して払拭ローラー200を相対的に移動させるために、モータドライバー620に制御指令としての信号を出力する。モータドライバー620は、ヘッドノズル面222に対して払拭ローラー200を相対的に移動させる。基板106が当該方向に移動することにより、払拭ローラー200は、ヘッドノズル面222におけるノズル310に付着しているインクを払拭する。基板106が当該方向に移動する距離は、ヘッドノズル面222の一方端(ヘッドユニット105の-x方向における端部)から他方端(ヘッドユニット105の+x方向における端部)までが払拭ローラー200により払拭されるように、基板106に設けられた上記のマイクロスイッチにより規制される。
【0134】
図14の時間tにおいて、払拭ローラー200がヘッドノズル面222の+x方向における端部まで払拭し終わることを当該マイクロスイッチが検知する。CPU600は、タイマー610を参照することにより、時間tから期間T4が経過した時間tにおいて、ヘッドユニット105が固定された基板106を+z方向に上昇させ始める。これにより、払拭ローラー200とヘッドノズル面222とが離間する。CPU600は、時間が時間tになるまでヘッドユニット105が固定された基板106を上昇させる。また、CPU600は、時間tにおいて払拭ローラー200の回転を停止する。
【0135】
図14の時間tから期間T5が経過した時間tにおいて、CPU600は、ヘッドユニット105が固定された基板106を、主走査方向とは反対の方向(図2の例では、-x方向)に移動させて初期位置まで移動(復帰)させる。時間t10において、CPU600は、ヘッドユニット105の移動を停止し、図示しない駆動機構を介して、水槽205に入っているクリーニング液207を廃棄して新しいクリーニング液と入れ替える。
【0136】
再び図13を参照して、ステップS1320において、CPU600は、検出回路500から信号を取得する。より具体的には、CPU600は、ラッチ回路515に保存されている信号を取得する。
【0137】
ステップS1325において、CPU600は、取得した信号をメモリーに保存する。より具体的には、CPU600は、当該信号をバイナリコードとして揮発性メモリー607に格納する。
【0138】
ステップS1330において、CPU600は、演算処理により、接触領域の長さLtを検出する。例えば、CPU600は、不揮発性メモリー605に格納されているプログラムを実行して上記コードを解析することにより、払拭ローラー200がヘッドノズル面222をクリーニングしていたときの、隣接する電極(例えば、電極420,425)により区分される区域ごとの接触領域の長さLtを検出する。
【0139】
ステップS1335において、CPU600は、接触領域の長さLtが閾値範囲外であるか否かを判断する。図3の例では、CPU600は、ヘッド300におけるノズル310の位置ごと(ヘッドノズル面222において隣接する電極により区分された区域ごと)に、接触領域の長さLtが目標範囲外にあるか否かを判断する。接触領域の長さLtが閾値範囲外である区域がある場合(ステップS1335においてYES)、CPU600は、制御をステップS1337に切り替える。そうでない場合(ステップS1335においてNO)、CPU600は、制御をステップS1350に切り替える。
【0140】
ステップS1337において、CPU600は、判別部1240として、被クリーニング面800においてクリーニング不良が生じた部分を判別する。
【0141】
ステップS1340において、CPU600は、補正部1250として、不揮発性メモリー605に格納されているデータに予め登録された条件に基づいて、クリーニング条件を補正する。
【0142】
ステップS1345において、CPU600は、不揮発性メモリー605に格納されている、クリーニング条件としてのクリーニング回数を示すデータに基づいて、クリーニング処理を終了するか否かを判断する。CPU600は、クリーニング処理を終了する場合(ステップS1345においてYES)、制御をステップS1350に切り替える。そうでない場合(ステップS1345においてNO)、CPU600は、制御をステップS1305に戻す。この場合、その後に実行されるクリーニング動作において、ステップS1340において上述した補正後のクリーニング条件が適用され得る。また、クリーニング装置135は、上述した、図14の時間tから時間t10までの間の一連のクリーニング動作を1サイクルとして、複数回繰り返し実行してもよい。
【0143】
ステップS1350において、CPU600は、クリーニング処理を終了する。
ステップS1355において、CPU600は、クリーニング処理の結果(例えば、クリーニング不良の有無、被クリーニング面800において当該不良が生じた位置、クリーニング不良がクリーニン不足または過剰のいずれであったかなど)を履歴として、記憶部としての不揮発性メモリー605に格納した後、一連の制御を終了する。
【0144】
[実施形態1の効果]
実施形態に従うクリーニング装置135は、クリーニング部材625と被クリーニング面800との接触領域の長さLtを検出する。これにより、クリーニング部材625と被クリーニング面800との接触不足または過剰接触を検知することができる。さらに、クリーニング装置135が電極を用いて接触の有無を検知することにより、クリーニング液を吸収した、多孔質体などの低い硬度のクリーニング部材625が、ヘッドノズル面222などの被クリーニング面800に対して低い圧力で接触する場合であっても、クリーニング装置135は、接触不足または過剰接触を確実に検知できる。したがって、クリーニング装置135は、前述した、インクジェットヘッドのクリーニングにおける特有の課題(例えば、クリーニング部材と被クリーニング面とが接触していることを検知すること自体が困難であったという課題)も解決できる。
【0145】
また、クリーニング装置135は、当該状態が適切でない場合にクリーニング条件を補正する。これにより、クリーニング部材625と被クリーニング面800との接触状態を適切に保つことができる。特に、クリーニング部材が、クリーニング液を吸収した状態の多孔質体により構成され、当該部材の形状が変化する場合であっても、クリーニング部材625と被クリーニング面800との適切な接触状態を安定して保つことができる。
【0146】
また、クリーニング装置135は、被クリーニング面800全体に対するクリーニング部材625の平均的な接触状態を検出するのではなく、被クリーニング面800において電極420などの部材1208により区分される区域(例えば、図3のx座標およびy座標により表される)ごとに、接触領域の長さLtを検出する。これにより、被クリーニング面800の一部の区域に対応するノズルにのみ起こった接触状態の不良(局所的なクリーニング不良)を検知できる。その結果、当該位置に対して補正後のクリーニング条件で再びクリーニング動作を実行することにより、当該局所的なクリーニング不良を解消できる。
【0147】
[変形例1]
図15および図16を参照して、クリーニング装置135が実行するクリーニング動作における他の局面を説明する。図15は、実施形態1の画像形成装置100において、クリーニング動作を実行するための手順の一例を示すフローチャートである。図16は、クリーニング不良が生じたことをユーザーに通知するために表示器635に表示される画面を示す図である。
【0148】
ある局面において、図15に示される処理は、CPU600が不揮発性メモリー605に格納されたプログラムを実行することにより実現される。他の局面において、上記の処理において、CPU600に代えて、少なくとも1つのASIC、少なくとも1つのFPGA、当該処理を実行するように構成されたその他の回路素子、またはこれらの組み合わせが用いられてもよい。なお、図15において、図13のフローチャートに示す処理と同じ処理には同一のステップ番号を付すことにより、その処理についての説明を繰り返さない。
【0149】
図13の場合、ステップS1335において、接触領域の長さLtが閾値範囲外である場合(ステップS1335においてYES)に、CPU600が、予め登録された条件に基づいてクリーニング条件を補正する(ステップS1340)場合を説明した。
【0150】
変形例1では、CPU600が、ステップS1340の処理を実行することに代えて、出力部1245として、クリーニング不良が生じたことをユーザーに通知するための警報信号を出力する(図15のステップS1540)場合を説明する。より具体的には、S1540において、CPU600は、ディスプレイドライバー617を介して、クリーニング不良が生じたことをユーザーに通知するための画面1600を表示器635に表示させる。
【0151】
画面1600は、メッセージ1605と、ボタン1610とを含む。メッセージ1605は、「クリーニング(CL)異常:動作を停止しました」と表示している。メッセージ1605は、クリーニング不良が生じ、クリーニング動作を停止したことをユーザーに通知している。
【0152】
ボタン1610は、表示器635に表示される画面を切替えるためにユーザーにより操作されるボタンである。画面1600がボタン1610の操作を受け付けると、画面1600は、例えばユーザーから次に実行される動作の選択を受け付ける画面に切り替わる。
【0153】
このように、CPU600がステップS1540において画面1600を表示器635に表示させることにより、クリーニング不良が生じた場合に、クリーニング部材625もしくは被クリーニング部材802をメンテナンスさせるかまたは交換させる動機付けをユーザーに与えることができる。その結果、クリーニング不良による被クリーニング部材の故障、例えばノズルの目詰まりなどを未然に回避できる。
【0154】
[変形例2]
図17および図18を参照して、クリーニング動作におけるさらに他の局面を説明する。図17は、実施形態1の画像形成装置100において、クリーニング動作を実行するための手順の一例を示すフローチャートである。図18は、クリーニング不良が生じた区域をユーザーに通知するために表示器635に表示される画面を示す図である。
【0155】
ある局面において、図17に示される処理は、CPU600が不揮発性メモリー605に格納されたプログラムを実行することにより実現される。他の局面において、上記の処理において、CPU600に代えて、少なくとも1つのASIC、少なくとも1つのFPGA、当該処理を実行するように構成されたその他の回路素子、またはこれらの組み合わせが用いられてもよい。なお、図17において、図13のフローチャートに示す処理と同じ処理には同一のステップ番号を付すことにより、その処理についての説明を繰り返さない。
【0156】
変形例2では、CPU600が、ステップS1340の処理を実行することに代えて、クリーニング異常が生じた位置および状況(例えば、クリーニング不足またはクリーニング過剰のいずれであるか)を、記憶部としての不揮発性メモリー605に格納する(図17のステップS1740)。CPU600は、その後、出力部1245として、クリーニング異常が生じた位置および状況をユーザーに通知するための画面1800を表示器635に表示させる(図17のステップS1742)。
【0157】
画面1800は、「メンテナンスを実施して下さい」と表示している。画面1800において、ハッチングが付された○は、クリーニング過剰が生じた位置がある区域を示し、ハッチングが付されていない○は、クリーニング不足が生じた位置がある区域を示す。また、ある局面において、M1~M3ヘッドの各々は、ヘッド300を含む複数のヘッドのうちいずれかに対応し得る。
【0158】
画面1800は、ヘッドユニット105に設けられるヘッドのうちM1ヘッドにおいてx座標の原点から10mm離れた位置に、クリーニング過剰が生じたことを示す。画面1800は、M2ヘッド全体において、クリーニング異常が生じていないことを示す。画面1800は、M3ヘッド全体において、クリーニング不足が生じたことを示す。
【0159】
このように、CPU600が画面1800を表示器635に表示させることにより、局所的なクリーニング不良をユーザーに通知でき、クリーニング部材625もしくは被クリーニング面800をメンテナンスまたは交換させる動機付けがユーザーに与えられ得る。
【0160】
<実施形態2>
実施形態1では、クリーニング部材625が払拭ローラー200である場合のクリーニング装置135を主に説明した。実施形態2では、クリーニング部材625がブレードである場合のクリーニング装置135を説明する。
【0161】
図1図6図8図9および図12図18のその他の点について、実施形態2のクリーニング装置135の構成および動作は、特に断らない限り、実施形態1のクリーニング装置の構成および動作と基本的にはそれぞれ同じであるので説明を繰り返さない。
【0162】
図19(A)および図19(B)を参照して、クリーニング部材625として用いられるブレード1900を説明する。図19(A)は、自由長Lfが均一である場合のブレード1900を示す図である。図19(A)において、ブレード1900の上面は、xy平面に平行なヘッドノズル面222に対して平行である。図19(B)は、自由長Lfが均一でない場合のブレード1900を示す図である。図19(B)において、ブレード1900の上面は、ヘッドノズル面222に対して平行ではない。図19(A)および図19(B)の各々において、支持部材1905A,1905Bは、板状のブレード1900を支持している。図19の例では、ブレード1900は、多孔質部材であるスポンジにより構成され得る。他の局面において、ブレード1900は、多孔質部材と、当該部材とは異なる材質のソリッドゴムなどの部材とが貼り合わせられることにより構成されてもよい。
【0163】
図3を再び参照して、実施形態2では、ヘッドノズル面222において、2つのセンサー305A,305Bは、ヘッド300A,300Bを含む複数のヘッドを挟んで設けられた。センサー305A,305Bがこのように設けられることにより、ヘッドノズル面222に対するブレード1900の相対的な進行方向(図3および図19におけるx方向)に対して垂直な副走査方向(y方向)における、接触領域の長さLtの差を検知できる。例えば、ノズル310Aに対応する、電極315および電極315k+1により区分される区域における接触領域の長さLtと、ノズル310Dに対応する、電極355および電極355k+1により区分される区域における接触領域の長さLtとが異なっている場合、CPU600は、それらの長さの差を検知できる。
【0164】
CPU600は、接触領域の長さLtが目標範囲でない判断した場合、以下のようにクリーニング条件を補正する。CPU600は、ブレード1900の副走査方向(y方向)において、ノズルごとの接触領域の長さLtの差(例えば、ノズル310Aに対応する上記の区域における接触領域の長さLtと、ノズル310Dに対応する上記の区域における接触領域の長さLtとの差)に起因して生じたノズルのクリーニング不良を解消するために、クリーニング動作を実行した後にブレード1900とヘッドノズル面222の相対的な位置を補正する。例えば、CPU600は、次回のクリーニング動作において、上記クリーニング不良が生じたクリーニング動作におけるブレード1900の位置から、ブレード1900をy方向に予め定められた距離移動(シフト)させた状態で、ブレード1900にヘッドノズル面222をクリーニングさせるように、クリーニング条件を補正する。その後、CPU600は、補正後のクリーニング条件で再びクリーニング動作を行う。これにより、CPU600は、自由長Lfが一定でないことに起因して生じた、y方向におけるノズルのクリーニング不良を解消できる。他の局面において、CPU600は、接触領域の長さLtが目標範外であると判断した場合、クリーニング部材625がメンテナンスまたは交換される必要があることをユーザーに通知するための画面を表示器635に表示してもよい。
【0165】
[検証結果]
図19および図20を参照して、接触領域の長さLtに基づいて、クリーニング不良の有無を検証した結果を説明する。発明者らは、自由長Lfが均一であるブレード1900(図19(A))と、自由長Lfが均一でないブレード1900(図19(B))とを用いて、接触領域の長さLtに基づいてクリーニング不良の有無を判断できるか否かを検証するために実験を行った。
【0166】
図19(A)および図19(B)の各々の場合において、ブレード1900は、その先端にクリーニング液207としての純水を含んだ状態で用いられた。ブレード1900のx方向の厚さは5mmであった。ブレード1900のy方向の長さは50mmであった。ブレード1900がx方向に移動(摺動)する速度は10mmであった。ヘッドノズル面222に対するブレード1900の押し込み量は1.5mmであった。当該押し込み量の基準は、図19(A)の場合、ブレード1900上面であり、図19(B)の場合、ブレード1900上面のうち左端である。図19(A)において、ブレード1900の自由長Lfは15mmであった。
【0167】
図20(A)は、自由長Lfが均一である場合において、センサー305Aおよびセンサー305Bにおける接触不良の有無を表示した結果を示す図である。当該結果は、表示器635の画面2000に表示される。図20(B)は、自由長Lfが均一でない場合において、センサー305Aおよびセンサー305Bにおける接触不良の有無を表示した結果を示す図である。当該結果は、表示器635の画面2005に表示される。
【0168】
図20(A)および図20(B)の各々において、line1およびline2は、それぞれ、センサー305A,305Bに含まれる電極によりx座標に応じて区分された区域に対応するノズルにおけるクリーニング不良の有無を示す。
【0169】
図20(A)において、ハッチングが付されていない部分は、当該部分に対応するx座標の区域において、接触領域の長さLtが目標範囲以内であることを示す。図20(A)の例では、ヘッドノズル面222全体においてクリーニング不良が生じていない。
【0170】
図20(B)において、ハッチングが付されている部分は、当該部分に対応するx座標の区域において、接触領域の長さLtが目標範囲外であることを示す。より具体的には、図20(B)におけるline2は、ヘッドノズル面222のセンサー305B全体において、隣接する電極の間に電流が流れず、センサー305Bに対応するノズルにクリーニング不良が生じたという実験結果を示す。
【0171】
この結果は、ブレード1900の自由長Lfが一定でないこと、図19(B)の例では+y方向において自由長Lfが短くなることに起因して、+y方向において一律に接触不足(クリーニング不足)が生じることに整合している。すなわち、発明者らは、CPU600が接触領域の長さLtに基づいて被クリーニング面800とクリーニング部材625との接触状態が適切であるか否か(ブレード1900の自由長Lfが一定であるか否か)を判断できることを確認できた。
【0172】
CPU600は、1回目のクリーニング動作において+y方向に一律に接触不足が生じていることに基づいて、ブレード1900を副走査方向(+y方向)にさらに5mm移動(シフト)させてブレード1900に被クリーニング面800をクリーニングさせるように、クリーニング条件を補正した。その後、CPU600は、補正後の条件で、ブレード1900に被クリーニング面800をクリーニングさせた。当該クリーニング動作において、補正された条件以外のクリーニング条件は、1回目のクリーニング動作と同一であった。
【0173】
2回目のクリーニング動作が終了した後、CPU600は、接触領域の長さLtを再び検出した。その結果、センサー305Bに含まれる電極によりx座標に応じて区分される区域において、接触領域の長さLtが全て目標範囲以内であった。すなわち、発明者らは、CPU600がクリーニング条件を補正することにより、ブレード1900がヘッドノズル面222全体におけるノズル310を適切にクリーニングできたことを確認した。
【0174】
なお、図19(B)の自由長Lfが一定でないブレード1900がクリーニング部材625として用いられた場合、上記の例とは異なり、1回目のクリーニング動作において-y方向に一律に接触過剰が生じている場合も考えられる。この場合、CPU600は、ヘッドノズル面222に対するブレード1900の押し込み量を、現在設定されている値より小さくすることにより、当該方向における過剰接触によるクリーニング過剰を解消してもよい。
【0175】
[実施形態2の効果]
上記の通り、クリーニング部材625がブレード1900である場合においても、クリーニング装置135は、接触領域の長さLtを検出することにより、ブレード1900と被クリーニング面800との接触不足または過剰接触を検知することができる。特に、クリーニング装置135は、図19(B)のようにブレード1900の自由長Lfが一定でないことに起因してクリーニング不良が生じている場合であっても、クリーニング条件を補正することにより、適切なクリーニングを実施できる。
【0176】
<実施形態3>
実施形態1,2では、検出部1205が、クリーニング部材625が接触している部材1208A,1208B(例えば、電極)の間の距離に基づいて、接触領域の長さLtを検出する場合を主に説明した。実施形態3では、検出部1205が、接触領域1207の複数の箇所における、被クリーニング面800とクリーニング部材625との接触の有無に基づいて、接触領域の長さLtを検出する場合を説明する。
【0177】
図1図4図7図10図12図18のその他の点について、実施形態3のクリーニング装置135の構成および動作は、特に断らない限り、実施形態1のクリーニング装置の構成および動作と基本的にはそれぞれ同じであるので説明を繰り返さない。
【0178】
図21を参照して、実施形態3において、接触領域の長さLtを検出するための回路の構成を説明する。図21は、接触領域の長さLtを検出するための回路の構成の一例を示す図である。図21において、検出回路2105は、コンデンサCおよびTTL(Transistor-Transistor-Logic)素子TTと、コンデンサCk+1およびTTL素子TTK+1とを含む。
【0179】
被クリーニング面800において隣接する電極(例えば、電極420k-1および電極425k-1の両方)にクリーニング部材625が接触したときに、信号源DC1からの信号は、それらの電極とクリーニング部材625とを介して、検出回路2105に入力される。検出回路2105は、入力された信号に対してローパスフィルタとして動作して当該信号の高周波数成分を除去した後、当該成分が除去された信号をTTL信号に変換する。これにより、クリーニング部材625が電極420k-1および電極425k-1などの複数の部材1208に接触した場合にのみ、検出回路2105は、High信号を出力する。また、例えば、クリーニング部材625が3つの電極425k-1,電極420k-1および電極425に接触している場合、2つのTTL素子TT,TTK+1がHigh信号を出力する。
【0180】
したがって、CPU600は、接触領域1207の、クリーニング部材625の進行方向に沿う複数の箇所(上記の例では、部材1208としての電極425k-1,電極420k-1および電極425が設けられる箇所)における、被クリーニング面800とクリーニング部材625との接触の有無に基づいて、接触領域の長さLtを検出する。図21の例では、CPU600は、上記の接触の有無に基づいてHigh信号を出力するTTL素子の数から、クリーニング部材625が接触している電極の数を判断する。CPU600は、当該判断結果に基づいて、接触領域の長さLtを検出し、接触領域の長さLtが目標範囲以内であるか否かを判断する。
【0181】
[接触領域の長さLtを検出するための原理]
図22図24を参照して、実施形態3における、クリーニング部材625と被クリーニング面800との接触領域の長さLtを検出するための原理を説明する。図22(A)および図22(B)は、接触領域の長さLtが目標範囲内である場合において、クリーニング部材625が接触している電極の数と、接触領域の長さLtとの関係を説明するための図である。図23(A)および図23(B)は、接触領域の長さLtが目標長さ未満である場合において、クリーニング部材625が接触している電極の数と、接触領域の長さLtとの関係を説明するための図である。
【0182】
図22および図23の例では、電極425k-1,420,425,420k+1,425k+1…は、クリーニング部材625が移動する方向(矢印830により表される方向)に沿って設けられる。これらの電極間の間隔Iは、目標長さの1/2以下の長さであって、接触領域1207内に複数の電極が設けられるように設定される。以下の説明の例では、電極間の間隔Iは、隣接する3つの電極の全てにクリーニング部材625が同時に接触したときの接触領域の長さLtが目標長さ(この場合、2I+d)以上になるように設定される。また、被クリーニング面800に設けられる他の電極(図示しない)に関して、同様に、電極間の間隔Iは、当該設定された間隔になるように並んでいる。他の局面において、電極間の間隔Iは、隣接するn個の電極(nは3以上の整数)の全てにクリーニング部材625が同時に接触したときの接触領域の長さLtが目標長さ以上になるように設定されてもよい。
【0183】
具体的には、電極間の間隔Iは0.5mmであった。各電極の幅dは0.2mmであった。各ヘッド300の長さは57mmであった。基板400において、電極420および電極425を含む106本の電極群が設けられていた。各電極群の長さは10mmであった。スルーホール410A~410Dを含む複数のスルーホールは、当該電極群における電極と検出回路2105との間に電流が流れるようにするために設けられた。
【0184】
図22(A)のように、クリーニング部材625が3つの電極425k-1,420および425に接触する場合、クリーニング部材625を介してそれらの電極の間で電流が流れる結果、2つのTTL素子TT,TTk+1はHigh信号を出力する。
【0185】
クリーニング部材625は、被クリーニング面800に対して矢印830の方向に移動速度vで相対的に移動する。図22(B)のように、クリーニング部材625が電極425k-1から離れて、電極420および425のみに接触している間、それらの電極の間で電流が流れる。この間、TTL素子TTK+1のみがHigh信号を出力する。
【0186】
クリーニング部材625は、被クリーニング面800に対して矢印830の方向に移動速度vでさらに移動する。クリーニング部材625が3つの電極425,420k+1および425k+1に接触する間、それらの電極の間で電流が流れる。この間、2つのTTL素子TTK+1,TTK+2(図示しない)がHigh信号を出力する。
【0187】
このように、接触領域の長さLtが目標長さ(2I+d)である場合、上記の例では、検出回路2105においてHigh信号を出力するTTL素子の数は、2→1→2→1…という周期的なパターンで変化する。当該変化の周期は、電極間の間隔I、電極の幅dおよび移動速度vなどに基づき定められる。上記の変化パターンを目標パターンとも表す。このように、接触領域の長さLtが目標長さである場合、High信号を出力するTTL素子の数は、予め定められた数(以下、目標数とも表す)を取る。
【0188】
上記の目標パターンの例では、目標数は、2または1であり、クリーニング部材625が、どの電極が設けられている位置を通過しているかによって異なり得る。例えば、クリーニング部材625が、電極420k-1、425k-1および電極420が設けられる位置に接触して通過するとき、目標数は1であり得る。クリーニング部材625が、電極425k-1、電極420および電極425が設けられる位置に接触して通過するとき、目標数は2であり得る。
【0189】
ここで、前述したように、目標範囲の上限値は、目標長さよりも2I+2d大きい上限長さ(4I+3d)である。ここで、例えば、クリーニング部材625が、電極420k-1,425k-1,420,425,420k+1および425k+1(図示しない)の全てに接触して通過しているとき、3つのTTL素子TTk-1,TT,およびTTk+1がHigh信号を出力する。このとき、接触領域の長さLtは、5I+4dという値を取る。この値は、上記の上限長さよりも大きいため、目標範囲外である。クリーニング部材625がこれらの電極が設けられる位置を通過しているとき、CPU600は、High信号を出力するTTL素子の数が3であることに基づいて、接触領域の長さLtが目標範囲外であると判断し得る。
【0190】
上記の例では、High信号を出力するTTL素子の数が2である場合、接触領域の長さLtが目標範囲内であり得る一方で、High信号を出力するTTL素子の数が3である場合、接触領域の長さLtが目標範囲外である。CPU600は、high信号を出力するTTL素子の数が目標数(この場合、1または2)よりも大きいことに基づいて、接触領域の長さLtが目標範囲を超えるほど大きいと判断し得る。他の局面において、CPU600は、当該素子の数が予め定められた範囲内にあるか否かを判断することにより、接触領域の長さLtが目標範囲以内であるか否かを判断してもよい。すなわち、当該素子の数が目標数と異なっていても、目標数から許容範囲内であれば、接触領域の長さLtが目標範囲以内であると判断してもよい。
【0191】
目標数は、被クリーニング面800において(例えば、電極425k-1のx座標および電極425のx座標により)予め区分された区域ごとに対応し得る。クリーニング部材625が当該区域を通過しているときに、High信号を出力するTTL素子が目標数を超える場合、CPU600は、当該区域において接触領域の長さLtが目標範囲外を超えるほど大きいと判断し得る。
【0192】
CPU600は、一連のクリーニング動作が終了した後に、上述の変化パターンにおいて、High信号を出力するTTL素子の数が、目標数の周期的な変化パターンにおける数と異なっている区域がある場合、当該区域において、接触領域の長さLtが目標範囲外であると判断してもよい。例えば、上記の変化パターンにおいて、High信号を出力するTTL素子の数が、2→1→3→1→2→1…というパターンで変化していた場合を想定する。この場合、High信号を出力するTTL素子の数が3であったときに当該信号を出力していた当該素子に接続されていた電極により区分される区域(位置)において、過剰接触によるクリーニング過剰が生じていたと判断できる。
【0193】
このように、CPU600は、クリーニング部材625が当該区域に接触したときに上記信号を出力するTTL素子の数に基づいて、当該区域において接触領域の長さLtが目標範囲内であったか否かを判断する。
【0194】
他の局面において、クリーニング部材625の移動方向に沿って被クリーニング面800に設けられる複数の部材1208に接続される複数の素子の各々と、複数の部材1208の各々とが1対1に対応している場合も考えられる。この場合、複数の素子の各々は、部材1208とクリーニング部材625とが接触したことを示す信号を出力する。CPU600は、接触領域1207の、複数の部材1208が設けられる箇所の各々における、被クリーニング面800とクリーニング部材625との接触の有無に基づいて、接触領域の長さLtを検出する。当該信号を出力する当該素子の数をnとすると、CPU600は、接触領域の長さLtを、例えば(n-1)×I+(n-2)×dの式から算出することにより検出し得る。CPU600は、検出された、接触領域の長さLtに基づいて、接触領域の長さLtが閾値範囲内であるか否かを判断する。上記の式において、電極の間隔Iが現在の値よりも小さく設定されることにより、接触領域の長さLtが検出されるときの感度がより高くなり得る。なお、上記の式は、被クリーニング面800に電極420,425が設けられる場合に適用されてもよい。
【0195】
図23(A)を参照して、クリーニング部材625が電極420のみに接触している場合、図21の信号源DC1からの信号は、検出回路2105に入力されない。したがって、検出回路2105においてHigh信号を出力するTTL素子の数は0である。
【0196】
クリーニング部材625が矢印830の方向にさらに移動した場合であっても、図23(B)のように、クリーニング部材625が接触する電極の数は0である。したがって、検出回路2105においてHigh信号を出力するTTL素子の数は0である。
【0197】
このように、接触領域の長さLtが目標長さ未満である場合においてHigh信号を出力するTTL素子の数(上記の例では0)は、目標数(前述の例では1または2)よりも小さい。したがって、CPU600は、当該信号を出力するTTL素子の数が目標数よりも小さいことに基づいて、接触領域の長さLtが目標範囲の下限値(この場合、目標長さ)未満であると判断できる。例えば、上記の変化パターンにおいて、High信号を出力するTTL素子の数が、2→1→2→0→2→1…というパターンで変化していた場合を想定する。この場合、一連のクリーニング動作が終了した後、CPU600はHigh信号を出力するTTL素子の数が0であったときに、接触不足によるクリーニング不足が生じていたと判断できる。CPU600は、High信号を出力するTTL素子の数が目標数から異なる値になる直前のタイミング(上記の例では、2→0に変化する直前のタイミング)に当該素子に接続されていた電極により区分される区域と、当該素子の数が目標数に戻った直後のタイミング(上記の例では、0→2に変化した直後のタイミング)に当該素子に接続されていた電極により区分される区域との間の区域(位置)において、接触不足によるクリーニング不足が生じていると判断できる。
【0198】
以上から、CPU600は、接触領域の、クリーニング部材625が移動する方向に沿う複数の箇所(電極420,425が設けられている箇所)における、被クリーニング面800とクリーニング部材625との接触の有無に基づいて、接触領域の長さLtを検出する。例えば、CPU600は、当該接触の有無に基づいてHigh信号を出力する素子(例えばTTL素子TT)の数を判断する。CPU600は、検出部1205として、当該信号を出力する素子の数に基づいて接触領域の長さLtを検出し、接触領域の長さLtが目標範囲以内であるか否かを判断する。検出部1205としての機能は、例えば、検出回路2105から出力される信号をCPU600が解析することにより実現される。なお、クリーニング部材625は、被クリーニング面800に設ける電極425,420k+1および425k+1などに対して移動している。そのため、CPU600は、不揮発性メモリー605に格納されたプログラムに基づいて、適度なタイミングで当該判断処理を随時実行する。
【0199】
また、接触領域の長さLtが目標範囲外である場合、被クリーニング面800においてクリーニング不良が生じた位置を判別できる。例えば、一連のクリーニング動作が終了した後、CPU600は、TTL素子TTからのHigh信号を検出できない区域があった場合、TTL素子TTに接続されている電極425から-x方向に間隔I離れた位置から、電極425から+x方向に間隔I離れた位置までのx座標の範囲内において、接触不足が生じていると判断できる。したがって、CPU600は、当該x座標の範囲内においてクリーニング不良が生じていると判断できる。CPU600は、当該判断結果に基づいて、クリーニング条件を補正してもよいし、当該判断結果をユーザーに通知するために表示器635に表示してもよい。
【0200】
[検証結果]
図24を参照して、接触領域の長さLtに基づいて、クリーニング不良の有無を検証した結果を説明する。発明者らは、クリーニング部材625として、周方向に凹みが無い払拭ローラー200(図7)と、周方向に凹みが有る払拭ローラー200(図10)とを用いて、High信号を出力するTTL素子TTの数に基づいてクリーニング不良の有無を判断できるか否かを検証するために実験を行った。当該実験において用いた払拭ローラー200の直径、移動速度および回転速度などは、実施形態1の場合と同じであった。
【0201】
図24(A)は、払拭ローラー200に凹みが無い場合において、センサー305Aにおける接触不良の有無を表示した結果を示す図である。当該結果は、表示器635の画面2400に表示される。図24(B)は、払拭ローラーに凹みがある場合において、センサー305Aにおける接触不良の有無を表示した結果を示す図である。当該結果は、表示器635の画面2405に表示される。
【0202】
図24(A)において、ハッチングが付されていない部分は、当該部分に対応するx座標の区域において、接触領域の長さLtが目標範囲以内であることを示す。すなわち、画面1100は、センサー305Aの全ての位置(センサー305Aのx座標に対応する全てのノズル)において、クリーニング不良が発生していないことを示す。
【0203】
図24(B)において、ハッチングが付されている部分は、当該部分に対応する区域において、接触領域の長さLtが目標長さ未満であることを示す。より具体的には、当該部分は、High信号を出力するTTL素子TTの数が目標数と異なっていたタイミングにおいて、被クリーニング面800のうちクリーニング部材625が接触していた区域(センサー305に含まれる電極のx座標により区分される区域)に対応する。より具体的には、当該部分は、ヘッドノズル面222においてクリーニング不足が生じている位置がある区域に対応する。例えば、クリーニング不足が生じた位置は、x座標の原点からの距離が、9~10mm、19~20mm、29~30mm、39~40mmおよび49~50mmである区域内にあることが示されている。
【0204】
実験において、前述したように、払拭ローラー200の払拭ローラー200における凹み部分は、ヘッドノズル面222に10mm間隔で1秒ごとに接触する。したがって、当該凹み部分に起因して、接触領域において接触不足が生ずる場合、接触不足は、10mm間隔で生ずる。これは、図24(B)に示されるように、クリーニング不足が生じた位置が、上述した区域内にあったという実験結果に整合している。すなわち、発明者らは、CPU600が、クリーニング部材625が移動する方向に沿う複数の箇所における接触の有無に基づく接触領域の長さLtを検出することにより、被クリーニング面800とクリーニング部材625との接触状態が適切であるか否か(多孔質体により構成される払拭ローラー200が変形しているか否か)を判断できることを確認できた。
【0205】
CPU600は、接触領域の長さLtが閾値範囲外であることに基づいて、クリーニング条件を補正した。より具体的には、CPU600は、押し込み量を1.5mmから2.0mmに増やし、相対的な移動速度を10mm/sから8mm/sに下げ、払拭ローラー200の回転数を94mm/sから100mm/sに上げた後に、クリーニング動作を再び行った。クリーニング動作の後、CPU600は、接触領域の長さLtを再び検出した。その結果、接触領域の長さLtは、被クリーニング面800全体で目標範囲内であった。すなわち、発明者らは、CPU600がクリーニング条件を補正することにより、クリーニング不良が解消されたことを確認できた。
【0206】
[実施形態3の効果]
クリーニング装置135は、クリーニング部材625が移動する方向に沿う複数の箇所における接触の有無に基づく接触領域の長さから、クリーニング部材625と被クリーニング面800との接触不足または過剰接触を検知する。クリーニング装置135は、クリーニング不良が生じている場合にクリーニング条件を補正することにより、適切なクリーニングを実施できる。また、クリーニング装置135は、クリーニング不良が生じていることをユーザーに通知することにより、クリーニング部材625のメンテナンスまたは交換などをさせる動機付けを与え得る。
【0207】
<実施形態4>
実施形態4では、検出部1205が、クリーニング部材625が接触している部材1208としての電極の間のインピーダンスの変化に基づいて、クリーニング部材625が被クリーニング面800に接触したと判断し、接触領域の長さLtを検出する場合を説明する。
【0208】
図1図4図7および図8図12図18のその他の点について、実施形態4のクリーニング装置135の構成および動作は、特に断らない限り、実施形態1のクリーニング装置の構成および動作と基本的にはそれぞれ同じであるので説明を繰り返さない。
【0209】
図25図27を参照して、クリーニング部材625と被クリーニング面との接触領域の長さLtを検出するための原理を説明する。図25は、クリーニング部材625がクリーニング面の絶縁層に接触したときに、隣接する電極420kおよび電極420kに電流が流れることを示す図である。
【0210】
図25において、隣接する電極420、電極425およびその他の電極(図示しない)の上に絶縁層2600が形成されている。隣接する電極間の間隔Iは目標長さである2mmに設定されている。絶縁層2600は、ポリイミド、エポキシ樹脂または二酸化ケイ素など一般的な材料により構成される。図25の例では、ポリイミドからなるテープが電極420、電極425…の上に貼り付けられている。
【0211】
図26は、クリーニング部材625が被クリーニング面800の絶縁層2600に接触したときに、隣接する電極420および電極425の間のインピーダンスが変化することを示す図である。
【0212】
隣接する電極、例えば420および電極420の間において、絶縁層2600の誘電成分C,Cと空気などの誘電成分C(浮遊容量)とが直列回路を構成する(状態1)。ここで、クリーニング部材625は、静電容量成分および抵抗成分を有する。クリーニング部材625の静電容量成分は、空気層の静電容量成分Cに比べて高い。また、クリーニング部材625の抵抗成分は、空気層の抵抗成分に比べて低い。そのため、クリーニング部材625が電極420、電極425の両方に接触するとき、それらの電極の間のインピーダンスの静電容量成分および抵抗成分は、クリーニング部材625がそれらの電極の両方に接触していないときの静電容量および抵抗成分に比べて、それぞれ大きくおよび小さくなる。また、このとき、絶縁層2600の誘電成分C,Cとクリーニング部材625の抵抗成分Rとが直列回路を形成する(状態2)。このように被クリーニング面800に対してクリーニング部材625が接触すると、電極420と電極425との間のインピーダンスZがインピーダンスZ1に変化する。図27の検出回路2500は、当該変化を検出して信号を出力する。CPU600は、当該信号に基づいて、クリーニング部材625が被クリーニング面800に接触していることを判断する。
【0213】
図27は、接触領域の長さLtを検出するための回路構成を示す図である。図26において、検出回路2500は、増幅および絶対値回路2510と、抵抗素子Rk-1と、コンデンサCk-1と、コンパレーターCPk-1と、抵抗素子Rと、コンデンサCと、コンパレーターCPとを含む。増幅および絶対値回路2510は、素子Dk-1と素子Dとを含む。電極420k-1、電極425k-1…において、隣接する電極間の間隔Iは、目標長さに設定されている。
【0214】
隣接する電極420および電極425の両方にクリーニング部材が接触しているとき、発振器2505に接続された電極420にAC信号が伝わると、図26(B)の誘電成分C,Cおよび抵抗成分Rからなる直列回路は、ハイパスフィルターとして動作する。そのため、電極420と電極425との間に微少な電流が流れる。
【0215】
素子Dは、当該電流を増幅、整流化および平滑化して信号を出力する。コンパレーターCPは、出力された信号の値が、予め定められた電圧値V以上であるか否かを判断する。コンパレーターCPは、出力された信号の電圧値が電圧値V以上である場合、High信号を出力する。他方、コンパレーターCPは、出力された信号の電圧値が電圧値V未満である場合、Low信号を出力する。コンパレーターCPは、クリーニング部材625が被クリーニング面800に接触したときのみHigh信号を出力する。
【0216】
CPU600は、PIO615を介して、コンパレーターCPから出力された信号を取得する。CPU600は、当該信号を解析することにより、検出部1205として、接触領域の長さLtを検出できる。検出部1205としての機能は、例えば、検出回路2500から出力される信号をCPU600が解析することにより実現される。
【0217】
より具体的には、CPU600は、High信号を取得したとき、コンパレーターCPに接続されている電極425k-1と、電極425k-1に隣接している電極420k-1もしくは電極420のいずれかまたは両方とにクリーニング部材625が接触していると判断できる。上述したように、隣接する電極間の間隔Iは目標長さに設定されているため、CPU600は、High信号を取得したとき、クリーニング部材625が電極425k-1に接触しているときの接触領域の長さLtが目標長さ以上であると判断できる。このとき、CPU600は、被クリーニング面800において電極425k-1が存在する区域(図3のx,y座標により表され得る)に対応するノズルおいてクリーニング不良が生じていないと判断できる。CPU600は、接触領域の長さLtが目標長さであると検出し得る。
【0218】
また、CPU600は、複数の素子Dk-1,D,Dk+1(図示しない)からHigh信号を取得したとき、例えば、クリーニング部材625が電極425k-1,電極420,電極425,電極420k+1および電極425k+1(図示しない)に接触していると判断できる。隣接する電極間の間隔Iは目標長さに設定されているため、CPU600は、接触領域の長さLtを4I+3dの値であるとして検出する。この値は、目標範囲の上限値(この場合、3I+2d)以上であるため、CPU600は、電極425k-1,電極420,電極425,電極420k+1および電極425k+1において区分される区域に対応するノズルにおいて過剰接触(クリーニング過剰)が生じていると判断できる。
【0219】
CPU600は、Low信号を取得したとき、クリーニング部材625が電極425k-1に接触しているときの接触領域の長さLtが目標長さ未満であると判断できる。このとき、CPU600は、被クリーニング面800において電極425k-1が存在する区域(電極425k-1を中心としてx方向に幅2I+dの範囲内の区域)に対応するノズルにおいてクリーニング不足が生じていると判断できる。
【0220】
CPU600は、クリーニング不良が生じているとの判断結果に基づいて、クリーニング条件を補正して、再びクリーニング動作を実行し得る。また、CPU600は、当該判断結果をユーザーに通知するために表示器635に表示してもよい。
【0221】
発明者らは、クリーニング部材625として、周方向に凹みが無い払拭ローラー200(図7)と、周方向に凹みが有る払拭ローラー200(図10)とを用いて、電極間のインピーダンスZの変化に基づいてクリーニング不良の有無を判断できるか否かを検証するために実験を行った。当該実験において用いた払拭ローラー200の直径、移動速度および回転速度などは、実施形態1の場合と同じであった。
【0222】
クリーニング部材625として、周方向に凹みが無い払拭ローラー200を用いた場合、被クリーニング面800全体において、クリーニング不良は発生しなかった。
【0223】
他方、クリーニング部材625として、周方向に凹みが有る払拭ローラー200を用いた場合、被クリーニング面800の一部において、接触不足によるクリーニング不良が発生していた。CPU600は、接触領域の長さLtが閾値範囲外であることに基づいて、クリーニング条件を補正した。より具体的には、CPU600は、押し込み量を1.5mmから2.0mmに増やし、相対的な移動速度を10mm/sから8mm/sに下げ、払拭ローラー200の回転数を94mm/sから100mm/sに上げてクリーニング動作を再び行った。クリーニング動作の後、CPU600は、接触領域の長さLtを再び検出した。その結果、接触領域の長さLtは、被クリーニング面800全体で目標範囲内であった。すなわち、発明者らは、CPU600がクリーニング条件を補正することにより、クリーニング不良が解消されたことを確認できた。
【0224】
前述の説明において、CPU600は、検出回路2500からの出力信号に基づいて、互いに隣接する電極420と電極425との間のインピーダンスZがインピーダンスZ1に変化することを検出した。インピーダンスZの変化は、インピーダンスZの抵抗成分の変化であってもよいし、インピーダンスZの静電容量成分の変化であってもよい。
【0225】
例えば、発振器2505からのAC信号の周波数が十分に高い場合、CPU600は、クリーニング部材625の静電容量成分によるインピーダンスZの変化を検出しにくい一方で、RによるインピーダンスZの変化を検出しやすい。上述したように、クリーニング部材625が電極420、電極425の両方に接触するとき、それらの電極の間の抵抗成分は、クリーニング部材625がそれらの電極の両方に接触していないときの抵抗成分に比べて小さくなる。したがってそれらの電極の間に電流が流れやすくなる。CPU600は、当該電流が流れることに起因してコンパレーターCPから出力される信号に基づいて、RによるインピーダンスZの変化を検出する。これにより、CPU600は、クリーニング部材625が被クリーニング面800に接触したことを判断する。
【0226】
これに対して、発振器2505からのAC信号の周波数が十分に低い場合、CPU600は、RによるインピーダンスZの変化を検出しにくい一方で、クリーニング部材625の静電容量成分によるインピーダンスZの変化を検出しやすい。上述したように、クリーニング部材625が電極420、電極425の両方に接触するとき、それらの電極の間の静電容量成分は、クリーニング部材625がそれらの電極の両方に接触していないときの静電容量成分に比べて大きくなる。したがってそれらの電極の間に変位電流が流れやすくなる。CPU600は、当該電流が流れることに起因してコンパレーターCPから出力される信号に基づいて、クリーニング部材625の静電容量成分によるインピーダンスZの変化を検出する。これにより、CPU600は、クリーニング部材625が被クリーニング面800に接触したことを判断できる。
【0227】
[実施形態4の効果]
クリーニング装置135は、被クリーニング面800に設けられる電極の間のインピーダンスZの変化に基づいて、接触領域の長さLtを検出することにより、ブレード1900と被クリーニング面800との接触不足または過剰接触を検知する。CPU600は、隣接する電極の間の静電容量成分の変化を検出することにより、クリーニング部材625または絶縁層2600の抵抗値が高い場合であっても、クリーニング部材625が被クリーニング面800に接触したことを判断できる。
【0228】
<実施形態5>
実施形態1~4では、検出部1205が、被クリーニング面800において隣接する電極の間の間隔Iに基づいて接触領域の長さLtを検出する場合を説明した。実施形態5では、検出部1205が、クリーニング部材625と被クリーニング面800との接触の検出時間に基づいて、接触領域の長さLtを検出する場合を説明する。
【0229】
図1図4図7図8および図12図18のその他の点について、実施形態5のクリーニング装置135の構成および動作は、特に断らない限り、実施形態1のクリーニング装置の構成および動作と基本的にはそれぞれ同じであるので説明を繰り返さない。
【0230】
図28は、CPU600が、クリーニング部材62と被クリーニング面800との接触の検出時間に基づいて、接触領域における長さLtを検出することを説明するための図である。図29は、CPU600が、クリーニング部材625が被クリーニング面800に設けられる部材1208としての電極420に接触している時間に基づいて、接触領域における長さLtを検出することを説明するために図である。
【0231】
図28において、被クリーニング面800に対するクリーニング部材625の相対的な移動方向(+x方向)に沿って、部材1208としての、点電極2800,2800k+1…および線電極2810が設けられている。それらの点電極の数は13個であった。各点電極と線電極2810とのy方向の距離は2mmであった。各点電極の直径Dは1mmであった。各点電極と検出回路2815との間に電流が流れるようにするためにスルーホール(図示しない)が設けられた。また、クリーニング部材625が、点電極2800,2800k+1…の2つ以上に同時に接触しないように、それらの点電極において隣接する電極の間の間隔は、目標長さの1.2倍以上であることが望ましい。そこで、図28の例では、当該間隔は、目標長さの2倍である4mmに設定されている。また、x方向における線電極2810の長さは55mmであった。y方向における線電極2810の幅は0.2mmであった。
【0232】
検出回路2815は、TTL素子TT,TTk+1を含む。検出回路2815は、各点電極から入力された信号をTTL信号に変換する。クリーニング部材625が点電極2800および線電極2810の両方に接触している間(電極2800を中心にx方向に幅2Lt+Dの範囲内をクリーニング部材625が移動している間)、信号源DC2からの信号がTTL素子TTに伝わる。TTL素子TTは、High信号を出力する(図28(B)の時間t21)。バイナリ―カウンター(図示しない)は、TTL素子TT,TTk+1を含む検出回路2815から出力されるHigh信号を、基準パルスを用いてカウントする。2進数により表される当該カウント値は、クリーニング部材625と被クリーニング面800との接触の検出時間、より具体的には、クリーニング部材625が点電極2800に接触していた時間に比例する。
【0233】
クリーニング部材625が点電極2800から離れて、点電極2800および線電極2810の両方に接触しなくなると(図28(B)時間t22)、信号源DC2からの信号がTTL素子TTに伝わらない。TTL素子TTは、High信号を出力しない。CPU600は、タイマー610を参照することにより、当該信号が出力されていた時間、すなわち、クリーニング部材625と被クリーニング面800との接触の検出時間Tに基づいて、接触領域の長さLtを算出する。より具体的には、図29に示されるように、被クリーニング面800に対するクリーニング部材625の相対的な移動速度v、電極の直径D、接触領域の長さLtおよび検出時間Tの間の関係は、T=(Lt+D)/vの式により表される。したがって、CPU600は、検出部1205として、クリーニング部材625が各電極に接触していたときの接触領域の長さLtを検出時間T(より具体的には、上記のカウント値)から検出できる。検出部1205としての機能は、例えば、検出回路2815から出力される信号をCPU600が解析することにより実現される。
【0234】
その結果、CPU600は、被クリーニング面800のうち接触不良または過剰接触によるクリーニング不良が発生した位置を判別できる。例えば、CPU600は、クリーニング部材625が電極2800に接触していたときの接触領域の長さLtが閾値範囲以内であるか否かを判断する。クリーニング部材625が電極2800に接触していたときの接触領域の長さLtが目標範囲以内である場合、CPU600は、被クリーニング面800において電極2800のx座標と電極2800k+1のx座標と中間のx座標により区分される区域(x方向に幅Iの区域)ごとに、クリーニング不良が生じていないと判断できる。他方、クリーニング部材625が電極2800に接触していたときの接触領域の長さLtが目標範囲外である場合、CPU600は、被クリーニング面800において当該区域で接触不足または過剰接触によるクリーニング不良が生じていたと判断できる。CPU600は、当該判断結果に基づいて、クリーニング条件を補正してもよいし、判断結果をユーザーに通知するために表示器635に表示してもよい。
【0235】
なお、検出部1205は、クリーニング部材625と被クリーニング面800とが接触し始めてから離間するまでの全ての時間において、接触領域の長さLtを検出しなくてもよい。検出部1205は、クリーニング部材625が被クリーニング面800に接触している時間のうち少なくとも一部の時間、接触領域の長さLtを検出してもよい。例えば、図28の例では、検出部1205は、時間t21~時間t22および時間t23~時間t24の間(期間Tおよび期間Tk+1)、接触領域の長さLtを検出する一方で、時間t22~時間t23の間、接触領域の長さLtを検出しない。
【0236】
発明者らは、クリーニング部材625として、周方向に凹みが無い払拭ローラー200(図7)と、周方向に凹みが有る払拭ローラー200(図10)とを用いて、検出時間Tに基づく接触領域の長さLtによりクリーニング不良の有無を判断できるか否かを検証するために実験を行った。当該実験において用いた払拭ローラー200の直径、移動速度および回転速度などは、実施形態1の場合と同じであった。
【0237】
クリーニング部材625として、周方向に凹みが無い払拭ローラー200を用いた場合、被クリーニング面800全体において、クリーニング不良が発生していなかった。
【0238】
他方、クリーニング部材625として、周方向に凹みが有る払拭ローラー200を用いた場合、被クリーニング面800の一部において、接触不足によるクリーニング不良が発生していた。CPU600は、接触領域の長さLtが閾値範囲外であることに基づいて、クリーニング条件を補正した。より具体的には、CPU600は、押し込み量を1.5mmから2.0mmに増やし、相対的な移動速度を10mm/sから8mm/sに下げ、払拭ローラー200の回転数を94mm/sから100mm/sに上げた後、クリーニング動作を再び行った。クリーニング動作の後、CPU600は、接触領域の長さLtを再び検出した。その結果、接触領域の長さLtは、被クリーニング面800全体で目標範囲内であった。すなわち、発明者らは、CPU600がクリーニング条件を補正することにより、クリーニング不良が解消されたことを確認できた。
【0239】
[実施形態5の効果]
クリーニング装置135は、クリーニング部材625と被クリーニング面800との接触の検出時間に基づいて、接触領域の長さLtを検出する。これにより、クリーニング部材625と被クリーニング面800との接触不足または過剰接触によるクリーニング不良を検知する。クリーニング装置135は、クリーニング不良が生じている場合にクリーニング条件を補正することにより、適切なクリーニングを実施できる。また、クリーニング装置135は、クリーニング不良が生じていることをユーザーに通知することにより、クリーニング部材625のメンテナンスまたは交換などをさせる動機付けを与え得る。
【0240】
<その他の変形例>
実施形態1~5では、検出部1205が接触領域の長さLtを検出する際に、部材1208としての電極が用いられた。他の局面において、検出部1205としての機能を実現するための構成は、被クリーニング面800と同じ平面に設けられる電極が用いられる構成に限定されない。
【0241】
例えば、被クリーニング面800内の電極群が設けられる位置において、当該電極群に代えて、アクリル板などの透明部材が部材1208として設けられてもよい。クリーニング部材625が透明部材に接触する面を表面とすると、透明部材の裏面側において、+z方向から-z方向へレーザー光などを照射するフォトダイオードなどの発光素子と、当該照射光の表面からの反射光を受光する受光素子とが設けられる。当該受光素子は、クリーニング部材625と透明部材との接触領域1207およびその近傍部分における当該反射光を受光する。当該受光素子は、受光量から反射光量を測定し、当該測定結果を示す信号を出力する。CPU600は、当該信号に基づいて、クリーニング部材625と被クリーニング面800との距離を算出する。これにより、CPU600は、被クリーニング面800においてx,y座標により予め区分される区域ごとに接触の有無を判断する。CPU600は、例えば、当該反射光量が閾値以上変化したx,y座標に対応する位置を、接触領域1207と当該近傍部分との境界と判断する。CPU600は、当該判断結果に基づいて、クリーニング部材625の進行方向側の境界のx座標と、当該方向と反対側の境界のx座標との差を、クリーニング部材625と被クリーニング面800との接触領域の長さLtとして、上記区域ごとに検出し得る。このように、検出部1205としての機能は、例えば、上記受光素子から出力される信号をCPU600が解析することにより実現されてもよい。
【0242】
他の局面において、上記受光素子は、上記反射光から光電変換により画像データを生成してもよい。当該発光素子および当該受光素子は、画像生成部として機能する。当該画像データは、当該受光素子から上記透明部材を介してクリーニング部材625側の-z方向に見た接触領域1207の画像を含む。CPU600は、画像処理部としての画像処理回路(図示しない)を用いて当該画像に画像処理を施すことにより、接触領域の長さLtを検出する。例えば、CPU600は、クリーニング部材625の移動方向(x方向)における、接触領域1207の2つのエッジ(より特定的にはエッジのx座標)を当該画像から認識する。CPU600は、例えばx座標が最小であるエッジから、x座標が最大であるエッジまでのx座標の差を算出することにより、接触領域の長さLtを上記区域ごとに検出してもよい。このように、検出部1205としての機能は、例えば、CPU600が、上記画像生成部により生成される画像データを解析することにより実現されてもよい。
【0243】
[実施形態における多孔質弾性体およびインクの組成について]
本実施形態における多孔質弾性材は、ウレタンおよびオレフィンなどに発泡剤が加えられることにより形成された発泡構造を含み得る。多孔質弾性材は、特に、微小なセルが連続した連泡構造を有することが望ましい。多孔質弾性材は、例えば抽出法により形成され得る。主材料中に気孔形成材が混練り分散されて型に流し込まれることにより溶剤が飛ばされて成形した後に、気孔形成材が抽出される結果、連続多孔体が形成される。払拭ローラー200は、これらの多孔質弾性体を回転軸上に形成している。
【0244】
また、本実施形態では、水系顔料のマゼンタインクが用いられた。水系のインクは、どんなインクでも本実施形態の効果を奏すると考えるが、顔料系のインクは、多孔質部材の内部に残留しやすく、当該効果を奏しやすい。実施形態において用いられたインクは、市販の水系マゼンタ顔料インクであり、当該インクの組成は、一般的なものである。当該インクにおいて、着色剤としてのキナクリドン系の顔料と、溶媒としての水とが多く使用されている。当該インクにおいて、当該着色剤の分散剤、メディアにインクを浸透させる浸透剤、目詰まりを防止するための乾燥防止剤としての2価または3価のアルコール、PH(Power of Hydrogen)調整剤、および防腐剤などがさらに含まれている。
【0245】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内で全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0246】
100 画像形成装置、105 ヘッドユニット、130 定着装置、135 クリーニング装置、200 払拭ローラー、205 水槽、207 クリーニング液、222 ヘッドノズル面、300 ヘッド、310 ノズル、500,2105,2500,2815 検出回路、600 CPU、605 不揮発性メモリー、607 揮発性メモリー、610 タイマー、617 ディスプレイドライバー、620 モータドライバー、625 クリーニング部材、802 被クリーニング部材、635 表示器、800 被クリーニング面、1205 検出部、1207 接触領域、1208 部材、1210 駆動部、1215 制御部、1240 判別部、1245 出力部、1250 補正部、1900 ブレード、Lt 接触領域の長さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
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図21
図22
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図24
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図26
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図28
図29