(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-10
(45)【発行日】2024-06-18
(54)【発明の名称】超音波診断装置、超音波診断装置の制御方法、及び、超音波診断装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2020202719
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 一也
(72)【発明者】
【氏名】武田 義浩
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-091299(JP,A)
【文献】特表2020-523409(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0214118(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブを用いた超音波の送受信により、被検者の羽状筋に係る超音波画像を撮影する超音波診断装置であって、
前記超音波画像の画像特徴に基づいて、前記羽状筋の羽状角を検出する羽状角検出部と、
前記被検者が検査で規定された所定の運動を行っている最中に前記羽状角検出部に検出される前記羽状角の時系列データを監視し、前記所定の運動の周期に沿った前記羽状角の周期的変動を検出したことを契機として、前記羽状角の計測結果を確定する終了判定部と、
前記羽状角の前記計測結果をユーザに通知する出力制御部と、
を備える超音波診断装置。
【請求項2】
前記出力制御部は、表示部における前記羽状角の前記時系列データのグラフィック表示として、前記羽状角の前記計測結果を前記ユーザに通知する、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記出力制御部は、前記所定の運動にあわせて前記羽状筋の動作方向が変化するタイミングを識別可能な態様で、前記羽状角の前記時系列データをグラフィック表示する、
請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記出力制御部は、前記所定の運動の周期に沿った前記羽状角の前記周期的変動が含まれる時間帯の前記羽状角の前記時系列データから求まる前記羽状角の平均値、中央値又は最頻値の少なくともいずれかとして、前記羽状角の前記計測結果を前記ユーザに通知する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記出力制御部は、前記終了判定部にて前記羽状角の前記計測結果が確定された場合、前記羽状角の計測が終了した旨を前記ユーザに通知する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記出力制御部は、前記終了判定部にて前記羽状角の前記計測結果が確定された場合、前記超音波診断装置における前記超音波画像の生成動作を停止し、表示部にその時点における前記超音波画像を表示させる、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記出力制御部は、前記表示部に対して、前記超音波画像に重畳するように、前記超音波画像に映る前記羽状筋の腱膜及び筋繊維それぞれの走行方向を示すガイド画像を表示させる、
請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記終了判定部は、前記羽状角の前記時系列データの自己相関演算又は周波数解析により、前記羽状角の前記周期的変動を検出する、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記終了判定部は、前記羽状角の前記時系列データのうち、前記羽状角検出部に検出された前記羽状角の値が所定の正常範囲から逸脱した前記羽状角のデータについてはノイズデータとして除去し、前記ノイズデータを除去した後の前記羽状角の前記時系列データに基づいて、前記所定の運動の周期に沿った前記羽状角の前記周期的変動が生じているか否かを判定する、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記羽状角検出部は、エッジ検出法を用いて前記羽状筋の腱膜の走行方向を検出し、周波数解析法を用いて前記羽状筋の筋繊維の走行方向を検出し、前記腱膜の走行方向と前記筋繊維の走行方向との間のなす角度から、前記羽状角を検出する、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
超音波プローブを用いた超音波の送受信により、被検者の羽状筋に係る超音波画像を撮影する超音波診断装置の制御方法であって、
前記超音波画像の画像特徴に基づいて、前記羽状筋の羽状角を検出する第1処理と、
前記被検者が検査で規定された所定の運動を行っている最中に前記第1処理に検出される前記羽状角の時系列データを監視し、前記所定の運動の周期に沿った前記羽状角の周期的変動を検出したことを契機として、前記羽状角の計測結果を確定する第2処理と、
前記羽状角の前記計測結果をユーザに通知する第3処理と、
を有する超音波診断装置の制御方法。
【請求項12】
超音波プローブを用いた超音波の送受信により、被検者の羽状筋に係る超音波画像を撮影する超音波診断装置の制御プログラムであって、
前記超音波画像の画像特徴に基づいて、前記羽状筋の羽状角を検出する第1処理と、
前記被検者が検査で規定された所定の運動を行っている最中に前記第1処理に検出される前記羽状角の時系列データを監視し、前記所定の運動の周期に沿った前記羽状角の周期的変動を検出したことを契機として、前記羽状角の計測結果を確定する第2処理と、
前記羽状角の前記計測結果をユーザに通知する第3処理と、
を有する超音波診断装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波診断装置、超音波診断装置の制御方法、及び、超音波診断装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を被検者内部に送信し、その超音波エコーを受信して解析することにより、被検者内の超音波画像(即ち、断層像)を生成する超音波診断装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。超音波診断装置は、特定方向に収束させた超音波を方位方向に対してスキャンすることにより、2次元又は3次元の超音波画像をリアルタイムで取得することができる。そして、超音波診断装置にて超音波画像を時間的に連続して生成することで、被検者の生体部分を動画像観察することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、超音波診断装置の進歩により、人体の形態的特徴(例えば、筋の発達や萎縮の状態)を観察することが可能になり、かかる超音波診断装置を、羽状筋の検査に適用することが検討されている。
【0005】
図1は、羽状筋の構造の一例を模式的に示す図である。
図2は、羽状筋(ここでは、腓腹筋)の一例を示す図である。
図3は、羽状筋(ここでは、腓腹筋)の超音波画像の一例を示す図である。
【0006】
羽状筋は、
図1に示すように、腱膜に向かって、筋繊維が斜めに集まる鳥の羽のような形態を取る筋であり、代表的には、腓腹筋(
図2を参照)や、大腿直筋等が挙げられる。羽状筋は、筋繊維が斜めに並んだ形態を有することで、人体の限られたスペースの中に大きな筋断面積を持ち、大きな筋力を発揮することが可能となっている。羽状筋は、腱膜に沿って伸縮するように動き、羽状筋が短縮方向に動く際には、腱膜に対する筋繊維の傾斜角(以下、「羽状角」と称する)が増加し、筋繊維の横断面積が増加する。羽状筋の羽状角の大きさや、又は、羽状筋伸縮時の羽状角の角度変動を観察することで、リハビリの効果判定やトレーニングの効果判定を行うことが可能である。
【0007】
羽状筋の発揮筋力は、一般に、以下の式(1)で表される。以下の式(1)から分かるように、羽状角は、羽状筋の発揮筋力に大きな影響を与えるため、羽状筋の状態の評価を行う上では、重要な評価項目となっている。
羽状筋の発揮筋力(N)=
{筋横断面積(m2)×cosθ}×単位面積当りの筋繊維張力(N/m2) …式(1)
(但し、cosθ:羽状角(腱膜の走行方向に対する筋繊維の走行方向のなす角度)を表す)
【0008】
超音波診断装置を用いた羽状筋の検査においては、超音波画像の画像特徴から羽状角を把握することができる。
図3中では、腱膜は、超音波画像中に横方向に延在する線状に撮影され(R2の領域)、筋繊維は、腱膜から斜め上方向に延在する繊維束(R1の領域)として撮影されている。
図3中では、腱膜R2の走行方向と、筋繊維R1の走行方向とのなす角度が、羽状角に相当する。
【0009】
超音波診断装置を用いた羽状筋(ここでは、腓腹筋)の検査は、典型的には、以下のフローで実施される。
ステップS1:検査者は、被検者の脹脛(
図2のM1)に超音波プローブを押し当てる。
ステップS2:検査者は、超音波診断装置本体に操作入力を行い、超音波画像の動画取得を開始する。
ステップS3:被検者に、底背屈運動(踵の上げ下ろしをする運動)を数回繰り返してもらう。検査者は、その間、被検者の脹脛に超音波プローブを押し当てた状態を維持し、底背屈運動中の羽状筋(ここでは、腓腹筋)の動きを、超音波画像を見て観察する。
ステップS4:検査者は、超音波診断装置本体に操作入力を行い、超音波画像の動画取得を終了する。
【0010】
検査者(以下、「ユーザ」と称する)は、通常、このようなフローで取得された超音波画像の動画の中で、適当な一枚の超音波画像を選択して、当該超音波画像に映る腱膜と筋繊維とのなす角度から羽状角を特定する。
【0011】
ところで、この種の超音波診断装置においては、熟練したユーザでなくとも超音波検査を実施し得るようにするため、可能な限り、ユーザの操作負荷を軽減する要請がある。この点、上記した羽状筋の検査では、熟練したユーザでなければ、超音波プローブを安定位置に保持するので精一杯となり、現在撮影されている超音波画像をまともに観察できない状態となる傾向がある。そのため、ユーザは、羽状筋検査中に、適切な態様で超音波画像が撮影されているか否かを確認したり、超音波画像の動画取得を終了するタイミングを判断したりするのが困難な状況となっている。その結果、ユーザは、羽状筋の超音波画像を撮影した後、羽状角を特定するにあたって、どの時点で撮影された超音波画像を用いればよいのかも判断しづらい状況となっている。
【0012】
加えて、羽状筋の羽状角は、被検者の運動(ここでは、底背屈運動)に伴って変化するため、一枚の超音波画像の静止画のみから、羽状筋の羽状角を特定する手法では、どのタイミングで撮影された超音波画像を用いるか(即ち、羽状筋が短縮状態にあるときのものか、又は伸張状態にあるときのものか)によって、計測結果に誤差が生じる。特に、羽状角は、角度そのものではなく、同一位における前回の検査結果と今回の検査結果の差や、底背屈運動の際の最大角度と最小角度の差に臨床的意義(例えば、筋肉の伸張性及び/又は筋出力の評価が可能となる)があるところ、適当に選ばれた一枚の超音波画像の静止画から特定された羽状角では、かかる評価を正確に行うことは、困難である。
例えば、
【0013】
尚、底背屈運動の際に観察される腓腹筋の羽状角の変動は、底背屈運動の際の腱停止部の踵骨のポジションを表す。つまり、底背屈運動の際に観察される腓腹筋の羽状角の最大角度と最小角度は、底屈時及び背屈時それぞれの足関節の可動した位置を表す。そのため、臨床的には、例えば、筋肉の柔軟性の治療を行った前後で、最大背屈位での羽状角の角度を比較し、その角度が鋭角になれば、底背屈運動時の足関節の背屈可動域が大きくなったと評価することが可能である。又、筋肉トレーニングの前後で、底背屈運動の際の最大角度と最小角度の差を比較し、トレーニング後の方が大きな結果となったとすると、踵骨のポジションが大きく振れることになるので、底背屈の可動域が大きくなったと評価することが可能である。
【0014】
このように、現在の超音波検査では、羽状角の特定がユーザの直感に頼ったものとなっており、計測結果の精度や信頼性の点で、改善の余地がある。
【0015】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたもので、羽状筋検査において、計測結果の精度や信頼性を確保しながら、羽状角の自動計測を可能とする超音波診断装置、超音波診断装置の制御方法、及び、超音波診断装置の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述した課題を解決する主たる本開示は、
超音波プローブを用いた超音波の送受信により、被検者の羽状筋に係る超音波画像を撮影する超音波診断装置であって、
前記超音波画像の画像特徴に基づいて、前記羽状筋の羽状角を検出する羽状角検出部と、
前記被検者が検査で規定された所定の運動を行っている最中に前記羽状角検出部に検出される前記羽状角の時系列データを監視し、前記所定の運動の周期に沿った前記羽状角の周期的変動を検出したことを契機として、前記羽状角の計測結果を確定する終了判定部と、
前記羽状角の前記計測結果をユーザに通知する出力制御部と、
を備える超音波診断装置である。
【0017】
又、他の局面では、
超音波プローブを用いた超音波の送受信により、被検者の羽状筋に係る超音波画像を撮影する超音波診断装置の制御方法であって、
前記超音波画像の画像特徴に基づいて、前記羽状筋の羽状角を検出する第1処理と、
前記被検者が検査で規定された所定の運動を行っている最中に前記第1処理に検出される前記羽状角の時系列データを監視し、前記所定の運動の周期に沿った前記羽状角の周期的変動を検出したことを契機として、前記羽状角の計測結果を確定する第2処理と、
前記羽状角の前記計測結果をユーザに通知する第3処理と、
を有する超音波診断装置の制御方法である。
【0018】
又、他の局面では、
超音波プローブを用いた超音波の送受信により、被検者の羽状筋に係る超音波画像を撮影する超音波診断装置の制御プログラムであって、
前記超音波画像の画像特徴に基づいて、前記羽状筋の羽状角を検出する第1処理と、
前記被検者が検査で規定された所定の運動を行っている最中に前記第1処理に検出される前記羽状角の時系列データを監視し、前記所定の運動の周期に沿った前記羽状角の周期的変動を検出したことを契機として、前記羽状角の計測結果を確定する第2処理と、
前記羽状角の前記計測結果をユーザに通知する第3処理と、
を有する超音波診断装置の制御プログラムである。
【発明の効果】
【0019】
本開示に係る超音波診断装置によれば、羽状筋検査において、計測結果の精度や信頼性を確保しながら、羽状角の自動計測を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図4】本発明の一実施形態に係る超音波診断装置の外観の一例を示す図
【
図5】本発明の一実施形態に係る超音波診断装置の制御系の主要部の構成例を示すブロック図
【
図6】本発明の一実施形態に係る制御部の詳細構成の一例を示す図
【
図7】本発明の一実施形態に係る羽状角検出部の動作フローの一例を示す図
【
図8】本発明の一実施形態に係る羽状角検出部に検出された羽状角の時系列データの一例を示す図
【
図9】
図7のステップS14で、羽状筋の筋繊維が存在する関心領域に対して、2次元フーリエ変換を施すことによって得られるパワースペクトル画像の一例を示す図
【
図10】本発明の一実施形態に係る終了判定部の動作フローの一例を示す図
【
図11】本発明の一実施形態に係る出力制御部による羽状角の計測結果の通知態様の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
[超音波診断装置1の全体構成]
以下、
図4~
図5を参照して、本発明の一実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。
【0023】
図4は、超音波診断装置1の外観の一例を示す図である。
図5は、超音波診断装置1の制御系の主要部の構成例を示すブロック図である。
【0024】
超音波診断装置1は、被検者内の形状、性状又は動態を超音波画像として可視化する。本実施形態に係る超音波診断装置1は、例えば、羽状筋の超音波画像(即ち、断層画像)を撮影し、羽状筋検査を実施する用途に用いられる。
【0025】
超音波診断装置1は、
図4に示すように、超音波診断装置本体10及び超音波プローブ20を備える。超音波診断装置本体10と超音波プローブ20とは、ケーブル30を介して接続される。
【0026】
超音波プローブ20は、超音波ビーム(例えば、1~30MHz程度)を被検者(例えば、人体)内に対して送信するとともに、送信した超音波ビームのうち被検者内で反射された超音波エコーを受信して電気信号に変換する音響センサーとして機能する。
【0027】
ユーザは、超音波プローブ20の超音波ビームの送受信面を被検者の羽状筋存在部位の体表(例えば、脹脛)に接触させて超音波診断装置1を動作させ、羽状筋検査を行う。尚、超音波プローブ20には、コンベックスプローブ、リニアプローブ、セクタプローブ、又は三次元プローブ等の任意のものを適用することができる。
【0028】
超音波プローブ20は、例えば、マトリクス状に配設された複数の振動子(例えば、圧電素子)と、当該複数の振動子の駆動状態のオンオフを個別に又はブロック単位(以下、「チャンネル」と称する)で切替制御するためのチャンネル切替部(例えば、マルチプレクサ)を含んで構成される。
【0029】
超音波プローブ20の各振動子は、超音波診断装置本体10(送信部12)で発生された電圧パルスを超音波ビームに変換して被検者内へ送信し、被検者内で反射した超音波エコーを受信して電気信号(以下、「受信信号」と称する)に変換し、超音波診断装置本体10(受信部13)へ出力する。
【0030】
超音波診断装置本体10は、
図5に示すように、操作入力部11、送信部12、受信部13、超音波画像生成部14、表示画像生成部15、表示部16、及び、制御部17を備える。
【0031】
送信部12、受信部13、超音波画像生成部14及び表示画像生成部15は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)等の、各処理に応じた専用もしくは汎用のハードウェア(電子回路)で構成され、制御部17と協働して各機能を実現する。
【0032】
操作入力部11は、例えば、診断開始等を指示するコマンド又は被検者に関する情報の入力を受け付ける。操作入力部11は、例えば、複数の入力スイッチを有する操作パネル、キーボード、及びマウス等を有する。尚、操作入力部11は、表示部16と一体的に設けられるタッチパネルで構成されてもよい。
【0033】
送信部12は、制御部17の指示に従って、超音波プローブ20に対して駆動信号たる電圧パルスを送出する送信器である。送信部12は、例えば、高周波パルス発振器、及びパルス設定部等を含んで構成される。送信部12は、高周波パルス発振器で生成した電圧パルスを、パルス設定部で設定した電圧振幅、パルス幅及び送出タイミングに調整して、超音波プローブ20のチャンネルごとに送出する。
【0034】
送信部12は、超音波プローブ20の複数のチャンネルそれぞれにパルス設定部を有しており、複数のチャンネルごとに電圧パルスの電圧振幅、パルス幅及び送出タイミングを設定可能になっている。例えば、送信部12は、複数のチャンネルに対して適切な遅延時間を設定することによって目標とする深度を変更したり、異なるパルス波形を発生させる。
【0035】
受信部13は、制御部17の指示に従って、超音波プローブ20で生成された超音波エコーに係る受信信号を受信処理する受信器である。受信部13は、プリアンプ、AD変換部、及び受信ビームフォーマーを含んで構成される。
【0036】
受信部13は、プリアンプにて、チャンネルごとに微弱な超音波エコーに係る受信信号を増幅し、AD変換部にて、受信信号を、デジタル信号に変換する。そして、受信部13は、受信ビームフォーマーにて、各チャンネルの受信信号を整相加算することで複数チャンネルの受信信号を1つにまとめて、音響線データとする。
【0037】
超音波画像生成部14は、受信部13から受信信号(音響線データ)を取得して、被検者の内部の超音波画像(即ち、断層画像)を生成する。
【0038】
超音波画像生成部14は、例えば、超音波プローブ20が深度方向に向けてパルス状の超音波ビームを送信した際に、その後に検出される超音波エコーの信号強度(Intensity)を時間的に連続してラインメモリに蓄積する。そして、超音波画像生成部14は、超音波プローブ20からの超音波ビームが被検者内を走査するに応じて、各走査位置での超音波エコーの信号強度をラインメモリに順次蓄積し、フレーム単位となる二次元データを生成する。そして、超音波画像生成部14は、当該二次元データの信号強度を輝度値に変換することによって、超音波の送信方向と超音波の走査方向とを含む断面内の二次元構造を表す超音波画像を生成する。
【0039】
尚、超音波画像生成部14は、例えば、受信部13から取得する受信信号を包絡線検波する包絡線検波回路、包絡線検波回路で検出された受信信号の信号強度に対して対数圧縮を行う対数圧縮回路、及び、深度に応じて周波数特性を変化させたバンドパスフィルターで、受信信号に含まれるノイズ成分を除去するダイナミックフィルター等を有していてもよい。
【0040】
表示画像生成部15は、超音波画像生成部14から超音波画像のデータを取得すると共に、超音波画像の表示領域を含む表示画像を生成する。そして、表示画像生成部15は、生成した表示画像のデータを表示部16に送出する。表示画像生成部15は、超音波画像生成部14から新たな超音波画像を取得する毎に表示画像を順次更新し、動画形式で、表示画像を表示部16に表示させる。
【0041】
又、表示画像生成部15は、羽状筋検査の際には、制御部17の指示に従って、超音波画像と共に、羽状筋の羽状角の時系列データをグラフィック表示した画像を、表示領域内に埋め込んだ表示画像を生成する(
図11を参照して後述)。
【0042】
尚、表示画像生成部15は、超音波画像生成部14から出力される超音波画像に対して、座標変換処理やデータ補間処理等の所定の画像処理を施した上で、表示画像を生成してもよい。
【0043】
表示部16は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、又は、CRTディスプレイ等で構成される。表示部16は、制御部17の指示に従って、表示画像生成部15から表示画像のデータを取得し、当該表示画像を表示する。
【0044】
制御部17は、操作入力部11、送信部12、受信部13、超音波画像生成部14、表示画像生成部15及び表示部16を、それぞれの機能に応じて制御することによって、超音波診断装置1の全体制御を行う。
【0045】
制御部17は、演算/制御装置としてのCPU(Central Processing Unit)171、主記憶装置としてのROM(Read Only Memory)172及びRAM(Random Access Memory)173等を有する。ROM172には、基本プログラムや基本的な設定データが記憶される。CPU171は、ROM172から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM173に展開し、展開したプログラムを実行することにより、超音波診断装置本体10の各機能ブロック(送信部12、受信部13、超音波画像生成部14、表示画像生成部15、及び表示部16)の動作を集中制御する。
【0046】
[制御部17の詳細構成]
次に、
図6~
図11を参照して、制御部17の詳細構成について、説明する。尚、ここでは、羽状筋検査の際に機能する制御部17の構成についてのみ説明する。
【0047】
図6は、制御部17の詳細構成の一例を示す図である。制御部17は、羽状角検出部17a、終了判定部17b、及び、出力制御部17cを備えている。
【0048】
<羽状角検出部17a>
羽状角検出部17aは、超音波画像の画像特徴に基づいて、超音波画像に映る羽状筋の羽状角を検出する。
【0049】
図7は、羽状角検出部17aの動作フローの一例を示す図である。
【0050】
図8は、羽状角検出部17aに検出された筋繊維の走行方向の時系列データ(
図8A)及び腱膜の走行方向の時系列データ(
図8B)の一例を示す図である。尚、
図8A及び
図8Bでは、腱膜の走行方向及び筋繊維の走行方向は、超音波画像の横方向(即ち、走査方向)に対する角度[deg]で表されている。羽状角は、例えば、
図8Aの腱膜の走行方向を示す角度[deg]から、
図8Bの筋繊維の走行方向を示す角度[deg]を減算することで算出される。
【0051】
図9は、筋繊維の走行方向を検出する際に、超音波画像の2次元フーリエ変換で得られるパワースペクトル画像の一例を示す図である。
【0052】
ステップS11において、羽状角検出部17aは、超音波画像の画像特徴に基づいて、超音波画像内に映る羽状筋の腱膜を検出する。羽状筋の腱膜は、典型的には、
図3に示すように、超音波画像内においては、比較的太く、被検者の体表に沿って直線状に延在する1本の白線部として映る。羽状筋の腱膜のかかる画像特徴を考慮して、羽状角検出部17aは、例えば、エッジ検出法によって、超音波画像中から腱膜を検出することができる。
【0053】
ステップS12において、羽状角検出部17aは、例えば、エッジ検出法によって検出された腱膜画像に対して、Hough変換を施すことで、腱膜の走行方向を特定する(
図8Aを参照)。
【0054】
ステップS13において、羽状角検出部17aは、ステップS11で検出された腱膜の上部領域に関心領域を設定する。羽状筋の筋繊維は、典型的には、
図3に示すように、超音波画像内においては、腱膜の上部領域(即ち、体表側の領域)に、腱膜の走行方向から斜め上方向に延在する多数本の平行な白線部として映る。このステップS13において、羽状角検出部17aは、羽状筋の筋繊維のかかる配置特徴を考慮して、羽状筋の筋繊維の存在領域として、腱膜の上部領域に関心領域を設定する。
【0055】
ステップS14において、羽状角検出部17aは、超音波画像の画像特徴に基づいて、関心領域内の筋繊維の走行方向を特定する(
図8Bを参照)。このステップS14において、羽状角検出部17aは、上記した羽状筋の筋繊維の画像特徴を考慮して、例えば、関心領域に対して、2次元フーリエ変換を施すことによって、羽状筋の筋繊維の走行方向を特定する。関心領域に対して2次元フーリエ変換を施すことは、関心領域に存在する筋繊維の繊維パターンを抽出することと等価であり、羽状角検出部17aは、2次元フーリエ変換により算出されるパワー成分が示す特定周波数の方向シグナルとして、筋繊維の繊維パターンの延在方向(即ち、筋繊維の走行方向)を特定する(
図9を参照)。
【0056】
ステップS15において、羽状角検出部17aは、ステップS12で特定された腱膜の走行方向と、ステップS14で特定された筋繊維の走行方向と、に基づいて羽状角を算出する。このステップS15において、羽状角検出部17aは、例えば、ステップS12において特定された腱膜の走行方向(ここでは、走査方向に対する角度の値)から、ステップS14において特定された筋繊維の走行方向(ここでは、走査方向に対する角度の値)を減算することで、羽状角を算出する。
【0057】
羽状角検出部17aは、例えば、上記のステップS11~ステップS15の処理を、超音波画像生成部14にて超音波画像が生成される度に実行する。これによって、羽状角検出部17aは、羽状筋の羽状角の時系列データを得る。
【0058】
尚、羽状角の検出方法は、上記態様に限定されず、種々に変形可能である。例えば、羽状角検出部17aは、超音波画像に映る羽状筋の画像特徴から、直接的に、羽状角を検出してもよい。その場合、例えば、予めそれぞれ羽状角が異なる羽状筋のテンプレート画像を複数用意しておき、羽状角検出部17aは、当該複数のテンプレート画像を用いて、テンプレートマッチングにより、超音波画像内に映る羽状筋の羽状角を検出してもよい。又、羽状角検出部17aは、機械学習にて学習済みの学習器(例えば、CNN(Convolution Neural Network))を用いて、超音波画像内に映る羽状筋の羽状角を検出してもよい。
【0059】
但し、表示画像内には、筋繊維の走行方向及び腱膜の走行方向が識別可能に表示されるのが好ましい(
図11のガイド画像Ra1、Ra2を参照)。かかる観点から、羽状角検出部17aは、超音波画像内から、筋繊維の走行方向及び腱膜の走行方向を別個に検出するのが好ましい。
【0060】
<終了判定部17b>
終了判定部17bは、羽状角検出部17aから、羽状筋検査で被検者が所定の運動(羽状筋検査で予め定められた運動を表す。以下、「検査規定運動」と称する)を行っている最中に検出される羽状角のデータを順次取得し、羽状角の時系列データとして記憶部D1に格納する。そして、終了判定部17bは、羽状角の時系列データを監視し、検査規定運動の周期に沿った羽状角の周期的変動を検出したことを契機として、羽状角の計測結果を確定する。
【0061】
上記したように、従来技術に係る羽状筋検査では、熟練したユーザでなければ、超音波プローブを安定位置に保持するので精一杯となり、現在撮影されている超音波画像をまともに観察できない状態となる傾向がある。そのため、ユーザは、羽状筋検査中に、適切な態様で超音波画像が撮影されているか否かを確認したり、超音波画像の動画取得を終了するタイミングを判断したりするのが困難な状況となっている。その結果、ユーザは、羽状筋の超音波画像を撮影した後、羽状角を特定するにあたって、どの時点で撮影された超音波画像を用いればよいのかも判断しづらい状況となっている。
【0062】
加えて、羽状筋の羽状角は、被検者の運動(ここでは、底背屈運動)に伴って変化するため、従来技術に係る羽状筋検査のように、一枚の超音波画像の静止画のみから、羽状筋の羽状角を特定する手法では、どのタイミングで撮影された超音波画像を用いるか(即ち、羽状筋が短縮状態にあるときのものか、又は伸張状態にあるときのものか)によって、計測結果に誤差が生じる。
【0063】
特に、羽状角は、角度そのものではなく、同一位における前回の検査結果と今回の検査結果の差や、底背屈運動の際の最大角度と最小角度の差に臨床的意義(例えば、筋肉の伸張性及び/又は筋出力の評価)があるところ、適当に選ばれた一枚の超音波画像の静止画から特定された羽状角では、かかる評価を正確に行うことは、困難である。
【0064】
そこで、終了判定部17bは、超音波画像の動画像から、羽状筋検査で被検者が行う検査規定運動の周期に沿った羽状角の周期的変動を検出できたか否かを、羽状角を正確に捉えられたか否かの判断基準として用いている。そして、終了判定部17bは、羽状筋検査で被検者が行う検査規定運動の周期に沿った羽状角の周期的変動を検出できた場合、例えば、その際に得られた検査規定運動の周期に沿った羽状角の周期的変動が含まれる時間帯の時系列データを、羽状角の計測結果として確定する。一方、終了判定部17bは、羽状筋検査で被検者が行う検査規定運動の周期に沿った羽状角の周期的変動を検出できない場合、羽状角の計測を継続する。
【0065】
これによって、終了判定部17bは、正確な羽状角が特定しがいタイミングで得られた羽状角データやノイズデータを使用することなく、信頼性の高い羽状角データが得られた時点で、検査を終了することが可能となる。又、かかる羽状角データは、検査規定運動に伴って変化する羽状角の最大値から最小値までを含むデータとなるため、一枚の超音波画像の静止画のみから特定された羽状角の値と比較して、高い信頼性を有するものとなる。換言すると、これにより、高精度な計測結果を得ることが可能である。
【0066】
尚、羽状筋検査の一例として、腓腹筋の検査を挙げると、腓腹筋の検査では、被検者は、底背屈運動における踵の上げ下げを略2秒~4秒の周期で行う。そのため、終了判定部17bは、羽状角の時系列データから羽状角の周期変動を検出し、その周期変動が、例えば、略1秒~3秒の周期である場合には、超音波画像において羽状角を正確に捉えられていると判断する。一方、羽状角の時系列データから、略2秒~4秒の周期の羽状角の周期変動を検出できない場合には、超音波画像において羽状角を正確に捉えられていないと判断する。
【0067】
終了判定部17bが羽状角の周期的変動を算出する手法としては、自己相関演算又は周波数解析(例えば、FFT解析)等、任意であるが、終了判定部17bは、より好ましくは、自己相関演算を用いて、羽状角の周期的変動を算出する。これによって、検査規定運動の周期に沿った羽状角の周期的変動が、3回程度行われた時点で、終了判定部17bは、羽状角の計測結果を確定することができる。
【0068】
終了判定部17bが計測を終了(即ち、計測結果を確定)するか否かの判断基準とする周期は、ユーザ設定によって変更可能としたり、検査対象の羽状筋の種類に応じて変更可能としてもよい。又、当該周期は、ある程度の幅(例えば、2秒~4秒のいずれかの周期)を有していてよい。他方、より高精度な終了判定を行う観点から、終了判定部17bは、検査室内に設けられたカメラからカメラ画像を取得すると共に、当該カメラ画像に基づいて羽状筋検査で被検者が行う検査規定運動を検出し、カメラ画像で検出された運動と連動するように、羽状角が変動しているか否かを、計測を終了するか否かの判断基準としてもよい。
【0069】
尚、終了判定部17bは、羽状角検出部17aに検出される羽状角の時系列データのうち、羽状角の値が所定の正常範囲(例えば、5度~25度)から逸脱したデータについてはノイズデータとして除去したうえで、当該ノイズデータ除去後の羽状角の時系列データを用いて、羽状角の変動の周期を算出するのが好ましい。これによって、超音波プローブ20を保持するユーザの手ブレ等に起因して瞬時的に発生したノイズデータを除去することが可能であり、これにより、羽状角の計測結果を確定するまでの時間を短縮することが可能である。
【0070】
図10は、終了判定部17bの動作フローの一例を示す図である。
【0071】
ステップS21において、終了判定部17bは、羽状角の時系列データから羽状角の変動の周期を算出する。このステップS21では、終了判定部17bは、例えば、自己相関演算を用いて、羽状角の時系列データから羽状角の変動の周期を算出する。尚、自己相関演算において、羽状角の変動の周期が複数算出された場合、終了判定部17bは、例えば、その中から信頼度(即ち、信号ピーク)が最大値を取る周期を、羽状角の変動の周期として決定する。
【0072】
ステップS22において、終了判定部17bは、ステップS21で算出された羽状角の変動の周期が、羽状筋検査で被検者が行う検査規定運動の周期に沿った周期であるか否かを判定する。このステップS21では、終了判定部17bは、例えば、ステップS21で算出された羽状角の変動の周期が、2秒~4秒のいずれかの周期である場合には、ステップS21で算出された羽状角の変動の周期が、羽状筋検査で被検者が行う検査規定運動の周期に沿っていると判断して(ステップS22:YES)、ステップS23に処理を進める。一方、ステップS21で算出された羽状角の変動の周期が、2秒~4秒のいずれの周期にも該当しない場合には、ステップS21で算出された羽状角の変動の周期が、羽状筋検査で被検者が行う検査規定運動の周期に沿ったものではないと判断して(ステップS22:NO)、ステップS24に処理を進める。
【0073】
ステップS23において、終了判定部17bは、計測を継続する。この場合、信頼性の高い計測結果を得られていないため、終了判定部17bは、再度、
図10の動作フローを実行する。
【0074】
ステップS24において、終了判定部17bは、計測を終了する。この場合、信頼性の高い計測結果を得られているため、終了判定部17bは、計測結果確定フラグを設定して、
図10の動作フローのループ処理を終了する。尚、この際、終了判定部17bは、被検者が検査規定運動を行っている最中に羽状角検出部17aに検出される羽状角の時系列データのうち、検査規定運動の周期に沿った羽状角の周期的変動が含まれる時間帯の時系列データ、又は、この時間帯の時系列データから得られる羽状角の平均値、中央値若しくは最頻値を、羽状角の計測結果として確定する。
【0075】
<出力制御部17c>
出力制御部17cは、HMI(Human Machine Interface)デバイス(例えば、表示部17)を用いて、終了判定部17bにて確定された羽状角の計測結果をユーザに通知する。
【0076】
図11は、出力制御部17cによる羽状角の計測結果の通知態様の一例を示す図である。尚、
図11は、表示画像生成部15が生成する表示画像Rall中に、羽状角の計測結果を通知する態様を示している。
図11の表示画像Rall中には、断層画像表示領域Raと共に、羽状角の計測結果として、羽状角の時系列データがグラフィック表示された領域Rbが表示された態様を示している。領域Rbのグラフィック表示では、時間軸を横軸に取って、各タイミングで検出された羽状角の値[deg]を棒グラフの高さで表現している。
【0077】
出力制御部17cによる羽状角の計測結果の通知態様は、種々に変更可能であるが、例えば、出力制御部17cは、
図11に示すように、表示画像生成部15に対して表示指令を行うことで、表示画像内に羽状角の計測結果を表示させ、これにより、ユーザに対して、羽状角の計測結果を通知する。
【0078】
出力制御部17cは、例えば、羽状角の時系列データのグラフィック表示として、羽状角の計測結果を、ユーザに通知するのが好ましい(
図11のRb領域を参照)。これによって、ユーザは、羽状筋検査で被検者が検査規定運動を行っている際の羽状角の挙動を、その可動範囲も含めて把握することが可能となる。又、これにより、ユーザは、被検者の運動にあわせた羽状筋の動き(羽状角の挙動)を把握することが可能となるため、その変化の円滑性等から、リハビリ効果やトレーニング効果についての示唆を得ることも可能である。
【0079】
尚、出力制御部17cは、羽状角の時系列データのグラフィック表示を行う際には、超音波画像の取得を開始した時点(即ち、終了判定部17bにて羽状角の計測結果が確定される前の時点)から、超音波画像が取得される毎に、逐次データを更新するように、グラフィック表示を行ってもよい。これにより、ユーザは、リアルタイムで羽状角の変化の挙動を把握することができる。かかる構成とする際には、出力制御部17cは、例えば、終了判定部17bにて羽状角の計測結果が確定された場合、羽状角の周期変動が検出された時間帯の羽状角の時系列データについては、羽状角の周期変動が検出されていない時間帯の羽状角の時系列データとは、色を異ならせて表示させるのが好ましい。
【0080】
又、出力制御部17cは、羽状角の時系列データのグラフィック表示を行う際には、被検者が検査規定運動を行っている最中に、検査規定運動にあわせて羽状筋の動作方向が変化するタイミング(即ち、羽状角の増加方向と減少方向が変化するタイミング)を識別可能な態様で、グラフィック表示を行ってもよい(
図11のRb領域中のガイド画像Rb1を参照)。これによって、ユーザは、被検者が行っている検査規定運動の周期や、羽状角の周期を、より容易に把握することが可能となる。
【0081】
又、出力制御部17cは、終了判定部17bにて羽状角の計測結果が確定された場合、検査規定運動の周期に沿った羽状角の周期的変動が含まれる時間帯の時系列データから求まる羽状角の平均値、中央値、又は最頻値を、ユーザに通知するのが好ましい(
図11の計測結果表示画像Rb2を参照)。これによって、ユーザは、客観的な数値として、羽状角の計測結果を得ることが可能である。
【0082】
又、出力制御部17cは、終了判定部17bにて羽状角の計測結果が確定された場合、超音波診断装置1における超音波画像の生成動作を停止し、表示部17にその時点における超音波画像を表示させるのが好ましい。これによって、ユーザは、羽状角の計測が実行された時点における超音波画像を、すぐに閲覧することが可能である。つまり、これにより、ユーザは、羽状角の計測終了後、羽状角の計測結果と対応させながら、超音波画像にて羽状筋の動きを確認することが可能である。
【0083】
又、出力制御部17cは、断層画像表示領域Raに表示する超音波画像には、腱膜の走行方向を示すガイド画像Ra1、及び、筋繊維の走行方向を示すガイド画像Ra2を重畳して表示させるのが好ましい(
図11の断層画像表示領域Ra中のガイド画像Ra1、Ra2を参照)。これによって、ユーザは、ある時点の羽状角の数値のみならず、当該数値の羽状角を取るときの腱膜の走行方向及び筋繊維の走行方向を容易に把握することが可能となる。
【0084】
又、出力制御部17cは、終了判定部17bにて羽状角の計測結果が確定された場合、羽状角の計測が終了した旨をユーザに通知するのが好ましい。これによって、ユーザは、羽状角の計測結果が完了したことを早期に把握し、当該計測結果をもとにした羽状筋の状態評価(例えば、リハビリの効果判定やトレーニングの効果判定)に移ることが可能となる。
【0085】
尚、出力制御部17cが、ユーザに対して、羽状角の計測結果を通知する際、及び、羽状角の計測が終了した旨を通知する際に用いるHMIデバイスとしては、表示部17以外のデバイスであってもよい。かかるHMIデバイスとしては、例えば、スピーカー装置、点灯装置、又はユーザが保有する端末装置等であってもよい。
【0086】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る超音波診断装置1によれば、羽状筋検査において、計測結果の精度や信頼性を確保しながら、羽状角の自動計測を行うことが可能である。
【0087】
特に、本実施形態に係る超音波診断装置1は、羽状筋検査で被検者が検査規定運動を行っている最中に羽状角検出部17aに検出される羽状角の時系列データを監視し、検査規定運動の周期に沿った羽状角の周期的変動を検出したことを契機として、羽状角の計測結果を確定し、当該計測結果をユーザに通知する構成となっている。
【0088】
従って、本実施形態に係る超音波診断装置1によれば、ユーザに対して、高い信頼性を有し、且つ、高精度な計測結果を提供することが可能である。又、これによって、ユーザは、羽状角の周期的な変動の態様から、羽状筋の可動域や動きの円滑さ等を把握することも可能であり、リハビリ効果やトレーニング効果についての示唆を得ることも可能である。
【0089】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本開示に係る超音波診断装置によれば、羽状筋検査において、計測結果の精度や信頼性を確保しながら、羽状角の自動計測を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 超音波診断装置
10 超音波診断装置本体
11 操作入力部
12 送信部
13 受信部
14 超音波画像生成部
15 表示画像生成部
16 表示部
17 制御部
17a 羽状角検出部
17b 終了判定部
17c 出力制御部
20 超音波プローブ
30 ケーブル