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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】緩衝部材および蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/289 20210101AFI20240614BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20240614BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20240614BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20240614BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240614BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20240614BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20240614BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240614BHJP
【FI】
H01M50/289
H01M50/209
H01M50/291
H01M50/293
H01M10/613
H01M10/6554
H01M10/647
H01M10/625
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021535318
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2020028643
(87)【国際公開番号】W WO2021020326
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2019140642
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悟朗
(72)【発明者】
【氏名】乗峯 笙汰
(72)【発明者】
【氏名】小村 哲司
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 光俊
(72)【発明者】
【氏名】粂 信吾
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-124033(JP,A)
【文献】特開2015-064971(JP,A)
【文献】特開2010-080450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
H01M 10/613
H01M 10/6554
H01M 10/647
H01M 10/625
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの蓄電装置と、
前記蓄電装置とともに第1方向に配列される緩衝部材と、を備え、
前記緩衝部材は、
前記蓄電装置から第1方向に荷重を受ける、所定の硬さを有する硬質部および前記硬質部よりも柔らかい軟質部を有し、
前記硬質部は、所定以上の前記荷重を受けて形状が変化し、
前記緩衝部材は、前記荷重を前記硬質部により受ける第1状態から、前記硬質部の形状が変化することで、前記荷重を前記軟質部により受ける第2状態に移行することを特徴とする、
蓄電モジュール。
【請求項2】
第1方向における前記硬質部および前記軟質部の寸法は、前記第1状態では前記硬質部の方が前記軟質部よりも大きく、前記第2状態では前記軟質部の方が前記硬質部よりも大きい、
請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記硬質部は、所定以上の前記荷重を受けて破断または塑性変形する脆弱部を有し、
前記脆弱部が破断または塑性変形することで、前記第2状態に移行する、
請求項1または2に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記蓄電モジュールは、隣接する第1蓄電装置および第2蓄電装置を備え、
前記破断または塑性変形する前の前記硬質部は、
前記第1蓄電装置および前記第2蓄電装置のうち前記第1蓄電装置側に位置して前記第2蓄電装置から離間する第1部分と、
前記第1部分よりも前記第2蓄電装置側に位置して前記第1蓄電装置から離間する第2部分と、を有し、
前記脆弱部は、前記第1部分および前記第2部分を連結するとともに前記第1部分および前記第2部分よりも強度の低い第1脆弱部を含み、
前記硬質部は、前記第1脆弱部が破断または塑性変形することで前記第1方向に縮む、
請求項3に記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
前記破断または塑性変形する前の前記硬質部は、前記第2部分よりも前記第2蓄電装置側に位置して前記第1蓄電装置から離間する第3部分を有し、
前記脆弱部は、前記第2部分および前記第3部分を連結するとともに前記第2部分および前記第3部分よりも強度の低い第2脆弱部を含み、
前記第1脆弱部および前記第2脆弱部は、一方が他方よりも強度が低く、
前記硬質部は、強度が低い脆弱部が破断または塑性変形した後に強度の高い脆弱部が破断または塑性変形することで二段階に縮む、
請求項4に記載の蓄電モジュール。
【請求項6】
前記硬質部は、中空の突起部を有し、前記突起部の頂部と基底部とが第1方向に並ぶように配置され、所定以上の前記荷重を受けると前記頂部が前記突起部の中空部に落ち込んで形状の一部が反転する、
請求項1または2に記載の蓄電モジュール。
【請求項7】
前記硬質部は、絶縁性を有し、蓄電装置と外部とを絶縁するセパレータに設けられて前記セパレータの一部を構成する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の蓄電モジュール。
【請求項8】
前記硬質部は、前記第1方向から見て前記蓄電装置が備える電極体と重なるように配置される、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の蓄電モジュール。
【請求項9】
前記軟質部は、シート体であって、前記第1方向に前記シート体を貫通する少なくとも1つの貫通孔を有し、
前記硬質部は、前記貫通孔に挿通されるとともに、前記第1方向において前記軟質部から突出する、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の蓄電モジュール。
【請求項10】
前記硬質部は、前記貫通孔の内周面の少なくとも一部から離間する、
請求項9に記載の蓄電モジュール。
【請求項11】
前記軟質部は、前記第1方向において前記硬質部と前記蓄電装置との間に介在しない、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の蓄電モジュール。
【請求項12】
前記第1方向と垂直な方向における寸法について、前記硬質部の第2蓄電装置側の部分
の寸法は第1蓄電装置側の部分の寸法より小さい、
請求項4または5に記載の蓄電モジュール。
【請求項13】
少なくとも1つの蓄電装置とともに第1方向に配列される緩衝部材であって、
前記蓄電装置から第1方向に荷重を受ける、所定の硬さを有する硬質部および前記硬質部よりも柔らかい軟質部を備え、
前記硬質部は、所定以上の前記荷重を受けて形状が変化し、
前記緩衝部材は、前記荷重を前記硬質部により受ける第1状態から、前記硬質部の形状が変化することで、前記荷重を前記軟質部により受ける第2状態に移行することを特徴とする、
緩衝部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、緩衝部材および蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両用等の、高い出力電圧が要求される電源として、複数個の蓄電装置(例えば電池)が直列接続された蓄電モジュールが知られている。一般に蓄電モジュールは、複数の蓄電装置と、隣接する蓄電装置間に配置される複数のセパレータと、蓄電装置の配列方向における両端に配置される一対のエンドプレートと、一対のエンドプレート間に掛け渡されて複数の蓄電装置を配列方向に拘束するバインドバーと、を備えていた。
【0003】
一般に蓄電装置は、充放電にともなって膨張と収縮とを繰り返す。このため、従来の蓄電モジュールでは、エンドプレートおよびバインドバーでこの膨張を押さえ込んでいた。このような構造では、蓄電装置が大きく膨張するとバインドバーに荷重がかかり、破損を招くおそれがあった。これに対し、特許文献1には、電池を挟むように設けられた電池ホルダとエンドプレートとの間に弾性部材(緩衝部材)が設けられた蓄電モジュールが開示されている。この蓄電モジュールでは、電池が膨張すると弾性部材が弾性変形し、これにより電池の膨張による荷重を弾性部材で吸収していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-81056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、蓄電モジュールのさらなる高容量化が求められており、この要求を満たすために蓄電装置の高容量化が進んでいる。蓄電装置が高容量化すると、蓄電装置の膨張量が増大し得る。このため、緩衝部材に求められる膨張の吸収量も増大する。一方で、蓄電装置間の電気的接続の保持や、外部からの衝撃等による蓄電装置の飛び出しを防止するために、緩衝部材は、蓄電装置の膨張を吸収しつつ蓄電装置の位置を固定する必要がある。
【0006】
また、一般に蓄電装置は、使用期間の経過にともない膨張量が増大する。つまり、蓄電装置は、寿命初期と寿命末期とで膨張量が変化する。したがって、蓄電モジュールに用いられる緩衝部材には、寿命末期では蓄電装置の大きな膨張を吸収することができ、蓄電装置の膨張量が小さい寿命初期では蓄電装置を高精度に位置決めできることが求められる。
【0007】
弾性部材により蓄電装置の膨張を吸収する従来の蓄電モジュールでは、弾性部材の材質が単一であるため、蓄電装置の膨張吸収と位置決めとを両立することが困難であった。蓄電装置の膨張吸収と位置決めとの両立は、蓄電モジュールの信頼性の向上につながるため実現が望まれる。
【0008】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、蓄電モジュールの信頼性を高めるための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のある態様は、蓄電モジュールである。この蓄電モジュールは、少なくとも1つの蓄電装置と、蓄電装置とともに第1方向に配列される緩衝部材と、を備える。緩衝部材は、蓄電装置から第1方向に荷重を受ける、所定の硬さを有する硬質部および硬質部よりも柔らかい軟質部を有し、硬質部は、所定以上の荷重を受けて形状が変化し、緩衝部材は、荷重を硬質部により受ける第1状態から、硬質部の形状が変化することで、荷重を軟質部により受ける第2状態に移行する。
【0010】
本開示の他の態様は、少なくとも1つの蓄電装置とともに第1方向に配列される緩衝部材である。この緩衝部材は、蓄電装置から第1方向に荷重を受ける、所定の硬さを有する硬質部および硬質部よりも柔らかい軟質部を備え、硬質部は、所定以上の荷重を受けて形状が変化し、緩衝部材は、荷重を硬質部により受ける第1状態から、硬質部の形状が変化することで、荷重を軟質部により受ける第2状態に移行する。
【0011】
以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、蓄電モジュールの信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係る蓄電モジュールの斜視図である。
図2】蓄電モジュールの分解斜視図である。
図3】各蓄電装置が膨張する様子を模式的に示す断面図である。
図4図4(A)は、実施の形態1に係る緩衝部材が備える硬質部の正面図である。図4(B)は、図4(A)のA-A線に沿った断面図である。
図5図5(A)は、緩衝部材が備える軟質部の正面図である。図5(B)は、図5(A)のB-B線に沿った断面図である。
図6】隣接する2つの蓄電装置に挟まれた状態にある緩衝部材の断面図である。
図7図7(A)~図7(C)は、蓄電装置から荷重を受けて緩衝部材の形状が変化する様子を模式的に示す断面図である。
図8図8(A)は、硬質部が図7(A)に示す状態にあるときの緩衝部材における圧縮荷重と圧縮率との関係を示す図である。図8(B)は、硬質部が図7(B)に示す状態にあるときの緩衝部材における圧縮荷重と圧縮率との関係を示す図である。図8(C)は、硬質部が図7(C)に示す状態にあるときの緩衝部材における圧縮荷重と圧縮率との関係を示す図である。
図9】第1状態および第2状態を通した緩衝部材の圧縮荷重と圧縮率との関係を示す図である。
図10図10(A)は、実施の形態2に係る緩衝部材が備える硬質部の正面図である。図10(B)は、図10(A)のC-C線に沿った断面図である。図10(C)は、緩衝部材が備える軟質部の正面図である。図10(D)は、図10(C)のD-D線に沿った断面図である。
図11】隣接する2つの蓄電装置に挟まれた状態にある緩衝部材の断面図である。
図12図12(A)~図12(D)は、蓄電装置から荷重を受けて緩衝部材の形状が変化する様子を模式的に示す断面図である。
図13】隣接する2つの蓄電装置に挟まれた状態にある実施の形態3に係る緩衝部材の断面図である。
図14図14(A)~図14(C)は、蓄電装置から荷重を受けて緩衝部材の形状が変化する様子を模式的に示す断面図である。
図15】隣接する2つの蓄電装置に挟まれた状態にある実施の形態4に係る緩衝部材の断面図である。
図16図16(A)~図16(C)は、蓄電装置から荷重を受けて緩衝部材の形状が変化する様子を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、本開示を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態に係る蓄電モジュールの斜視図である。図2は、蓄電モジュールの分解斜視図である。図2では、緩衝部材40(図6参照)の図示を省略している。蓄電モジュール1は、一例として電池積層体2と、一対の拘束部材6と、冷却板8と、を備える。電池積層体2は、複数の蓄電装置10と、複数のセパレータ12と、一対のエンドプレート4と、を有する。
【0016】
各蓄電装置10は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池等の充電可能な二次電池や、電気二重層キャパシタなどのキャパシタである。蓄電装置10は、いわゆる角形電池であり、扁平な直方体形状の外装缶14を有する。外装缶14は一面に略長方形状の開口を有し、この開口を介して外装缶14に正極、負極および多孔質セパレータを含む電極体38(図3参照)や電解液等が収容される。外装缶14は、シュリンクチューブ等の図示しない絶縁フィルムで被覆される。外装缶14の表面を絶縁フィルムで被覆することで、隣り合う蓄電装置10間の短絡と、蓄電装置10とエンドプレート4、拘束部材6および冷却板8のそれぞれとの間の短絡とを抑制することができる。外装缶14の開口には、開口を塞いで外装缶14を封止する封口板16が設けられる。
【0017】
封口板16には、長手方向の一端寄りに電極体38の正極と電気的に接続される出力端子18が設けられ、他端寄りに電極体38の負極と電気的に接続される出力端子18が設けられる。以下では適宜、正極に接続される出力端子18を正極端子18aと称し、負極に接続される出力端子18を負極端子18bと称する。また、出力端子18の極性を区別する必要がない場合、正極端子18aと負極端子18bとをまとめて出力端子18と称する。外装缶14および封口板16は導電体であり、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス等の金属で構成される。封口板16と外装缶14とは、例えばレーザー、摩擦攪拌接合、ろう接等で接合される。
【0018】
外装缶14は、封口板16と対向する底面を有する。また、外装缶14は、開口および底面をつなぐ4つの側面を有する。4つの側面のうち2つは、開口の対向する2つの長辺に接続される一対の長側面である。各長側面は、外装缶14が有する面のうち面積の最も大きい面、すなわち主表面である。2つの長側面を除いた残り2つの側面は、外装缶14の開口および底面の短辺と接続される一対の短側面である。
【0019】
本実施の形態の説明では、便宜上、封口板16が設けられる側の面を蓄電装置10の上面とする。また、外装缶14の底面を蓄電装置10の底面とし、外装缶14の長側面を蓄電装置10の長側面とし、外装缶14の短側面を蓄電装置10の短側面とする。また、蓄電モジュール1において、蓄電装置10の上面側の面を蓄電モジュール1の上面とし、蓄電装置10の底面側の面を蓄電モジュール1の底面とし、蓄電装置10の短側面側の面を蓄電モジュール1の側面とする。また、蓄電モジュール1の上面側を鉛直方向上方とし、蓄電モジュール1の底面側を鉛直方向下方とする。これらの方向および位置は、便宜上規定したものである。したがって、例えば、本開示において上面と規定された部分は、底面と規定された部分よりも必ず上方に位置することを意味するものではない。よって、封口板16は、外装缶14の底面よりも上方に位置するとは限らない。
【0020】
封口板16には、一対の出力端子18の間に安全弁(図示せず)が設けられる。安全弁は、外装缶14の内圧が所定値以上に上昇した際に開弁して、外装缶14の内部のガスを放出できるように構成される。安全弁は、例えば、封口板16の一部に設けられる他部よりも厚さが薄い薄肉部と、この薄肉部の表面に形成される線状の溝とで構成される。この構成では、外装缶14の内圧が上昇すると、溝を起点に薄肉部が裂けることで安全弁が開弁する。
【0021】
複数の蓄電装置10は、隣り合う蓄電装置10の長側面どうしが対向するようにして所定の間隔で並設される。本実施の形態では、複数の蓄電装置10が並ぶ方向を第1方向Xとする。また、各蓄電装置10の出力端子18は、互いに同じ方向を向くように配置される。本実施の形態では、各蓄電装置10の出力端子18は、便宜上、鉛直方向上方を向くように配置されている。なお、各蓄電装置10の出力端子18は、異なる方向を向くように配置されてもよい。
【0022】
隣接する2つの蓄電装置10は、一方の蓄電装置10の正極端子18aと他方の蓄電装置10の負極端子18bとが隣り合うように配列(積層)される。正極端子18aと負極端子18bとは、バスバー(図示せず)を介して直列接続される。なお、隣接する複数個の蓄電装置10における同極性の出力端子18どうしをバスバーで並列接続して蓄電装置ブロックを形成し、蓄電装置ブロックどうしを直列接続してもよい。
【0023】
セパレータ12は、絶縁スペーサとも呼ばれ、隣接する2つの蓄電装置10の間に配置されて、当該2つの蓄電装置10間を電気的に絶縁する。セパレータ12は、例えば絶縁性を有する樹脂で構成される。セパレータ12を構成する樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ノリル(登録商標)樹脂(変性PPE)等の熱可塑性樹脂が例示される。複数の蓄電装置10と複数のセパレータ12とは、交互に積層される。また、セパレータ12は、蓄電装置10とエンドプレート4との間にも配置される。
【0024】
セパレータ12は、平面部20と、壁部22と、を有する。平面部20は、隣接する2つの蓄電装置10の対向する長側面間に介在する。これにより、隣り合う蓄電装置10の外装缶14どうしがより確実に絶縁される。
【0025】
壁部22は、平面部20の周縁部から蓄電装置10が並ぶ第1方向Xに延び、蓄電装置10の上面の一部、側面、および底面の一部を覆う。これにより、隣り合う蓄電装置10間、あるいは蓄電装置10とエンドプレート4との間の沿面距離を確保することができる。また、蓄電装置10の外装缶14と、拘束部材6とがより確実に絶縁される。また、出力端子18が並ぶ第2方向Yや、蓄電装置10の上面と底面とが並ぶ第3方向Zにおける蓄電装置10の位置を規制あるいは固定することができる。第1方向X、第2方向Yおよび第3方向Zは、互いに直交する方向である。
【0026】
壁部22は、蓄電装置10の底面が露出するよう切り欠き24を有する。切り欠き24を設けることで、蓄電装置10と冷却板8との間の熱的な接続がセパレータ12によって阻害されることを回避することができる。また、セパレータ12は、第2方向Yにおける両端部に、上方を向く付勢受け部26を有する。
【0027】
並設された複数の蓄電装置10および複数のセパレータ12は、一対のエンドプレート4で第1方向Xに挟まれる。一対のエンドプレート4と第1方向Xにおける両端に配置する蓄電装置10との間には、セパレータ12が配置される。これにより、蓄電装置10の外装缶14と、エンドプレート4とがより確実に絶縁される。エンドプレート4は、例えば金属板からなる。エンドプレート4には、エンドプレート4を第1方向Xに貫通し、締結ねじ28が螺合するねじ穴4aが設けられる。
【0028】
一対の拘束部材6は、バインドバーとも呼ばれ、第1方向Xを長手方向とする長尺状の部材である。一対の拘束部材6は、第2方向Yにおいて互いに向かい合うように配列される。一対の拘束部材6の間には、電池積層体2が介在する。各拘束部材6は、本体部30と、支持部32と、複数の付勢部34と、一対の固定部36とを備える。
【0029】
本体部30は、第1方向Xに延在する矩形状の部分である。本体部30は、各蓄電装置10の側面に対して平行に延在する。支持部32は、第1方向Xに延在するとともに、本体部30の下端から第2方向Yに突出する。支持部32は、第1方向Xに連続する板状体であり、電池積層体2を支持する。
【0030】
複数の付勢部34は、本体部30の上端に接続され、第2方向Yに突出する。支持部32と各付勢部34とは、第3方向Zにおいて対向する。また、複数の付勢部34は、所定の間隔をあけて第1方向Xに配列される。各付勢部34は、各蓄電装置10に対応して配置される。各付勢部34は板ばね状であり、各蓄電装置10を支持部32に向けて付勢する。
【0031】
一対の固定部36は、第1方向Xにおける本体部30の両端部から第2方向Yに突出する板状体である。一対の固定部36は、第1方向Xにおいて対向する。各固定部36には、締結ねじ28が挿通される貫通孔36aが設けられる。一対の固定部36により、拘束部材6は電池積層体2に固定される。
【0032】
冷却板8は、複数の蓄電装置10を冷却するための機構である。冷却板8は、金属等の熱伝導性を有する材料で構成される。電池積層体2は、一対の拘束部材6で拘束された状態で冷却板8の主表面上に載置され、支持部32の貫通孔32aと冷却板8の貫通孔8aとにねじ等の締結部材(図示せず)が挿通されることで、冷却板8に固定される。各蓄電装置10は、冷却板8との間で熱交換することで冷却される。冷却板8には、冷媒が内部を流通する冷媒管(図示せず)が設けられてもよい。
【0033】
蓄電モジュール1は、例えば以下のようにして組み立てられる。すなわち、複数の蓄電装置10と複数のセパレータ12とが交互に配列され、一対のエンドプレート4で第1方向Xに挟まれることで、電池積層体2が形成される。電池積層体2は、一対の拘束部材6で第2方向Yに挟まれる。各拘束部材6は、貫通孔36aがエンドプレート4のねじ穴4aと重なるように位置合わせされる。この状態で、締結ねじ28が貫通孔36aに挿通され、またねじ穴4aに螺合される。このように、一対の拘束部材6が一対のエンドプレート4に係合されることで、複数の蓄電装置10が拘束される。電池積層体2は、第1方向Xに所定の圧力がかけられた状態で拘束部材6により締結される。
【0034】
各蓄電装置10は、拘束部材6によって第1方向Xに締め付けられることで、第1方向Xの位置決めがなされる。また、各蓄電装置10は、底面が支持部32によって支持される。各蓄電装置10の底面と支持部32との間にはセパレータ12の壁部22が介在する。また、各蓄電装置10に対応する付勢受け部26には、付勢部34が当接する。各付勢部34は、付勢受け部26を介して各蓄電装置10を支持部32に向けて付勢する。すなわち、支持部32と複数の付勢部34とにより、各蓄電装置10が第3方向Zに挟み込まれる。この結果、各蓄電装置10の第3方向Zの位置決めがなされる。
【0035】
一例として、これらの位置決めが完了した後に、各蓄電装置10の出力端子18にバスバーが取り付けられて、複数の蓄電装置10の出力端子18どうしが電気的に接続される。例えばバスバーは、溶接により出力端子18に固定される。その後、電池積層体2の上面は、カバー部材(図示せず)で覆われる。カバー部材により、蓄電装置10の出力端子18、バスバー、安全弁等への結露水や塵埃等の接触が防止される。カバー部材は、例えば絶縁性を有する樹脂からなり、ネジや周知の係止機構を含む周知の固定構造(図示せず)により、電池積層体2の上面に固定することができる。
【0036】
拘束部材6およびカバー部材が取り付けられた電池積層体2は、冷却板8に載置され、貫通孔8aおよび貫通孔32aに締結部材が挿通されることで冷却板8に固定される。以上の工程により、蓄電モジュール1が得られる。なお、電池積層体2を冷却板8に設置した上で、電池積層体2と冷却板8とをまとめて拘束部材6により固定して蓄電モジュール1を製造してもよい。この場合、冷却板8は一対の拘束部材6の内側に配置される。
【0037】
図3は、各蓄電装置10が膨張する様子を模式的に示す断面図である。図3では、蓄電装置10の個数を間引いて図示している。また、蓄電装置10の内部構造およびセパレータ12の図示を簡略化している。図3に示すように、各蓄電装置10の内部には電極体38が収容される。蓄電装置10は、充放電にともなって外装缶14が膨張と収縮とを繰り返す。外装缶14の膨張は、主に電極体38の膨張によって引き起こされる。各蓄電装置10の外装缶14が膨張すると、電池積層体2には第1方向Xの外側へ向かう荷重G1が発生する。一方、電池積層体2には、拘束部材6によって荷重G1に対応する荷重G2がかけられる。これにより、各蓄電装置10の膨張が押さえ込まれる。
【0038】
このような構造では、蓄電装置10が膨張すると拘束部材6に荷重がかかる。近年は蓄電装置10の高容量化にともなって蓄電装置10の膨張量が増大する傾向にあるため、拘束部材6にかかる荷重も増大してきている。拘束部材6にかかる荷重が過剰になれば、拘束部材6が破損するおそれがある。破損を防ぐために拘束部材6の強度を高めようとすると、拘束部材6ひいては蓄電モジュール1の大型化やコスト増につながり得る。また、拘束部材6で蓄電装置10の膨張を押さえ込むと、電極体38(特に多孔質セパレータ)が過度に押圧されて、蓄電装置10の性能の低下や短寿命化を招き得る。
【0039】
拘束部材6による蓄電装置10の拘束を緩めれば、拘束部材6にかかる荷重を低減することができる。しかしながら、蓄電モジュール1内での位置決めのためには、各蓄電装置10にある程度の荷重をかける必要がある。このため、蓄電装置10の拘束を単純に緩めることはできない。さらに、一般に蓄電装置10は、寿命初期から寿命末期にかけて膨張量が徐々に増大する。したがって、蓄電装置10の寿命初期と寿命末期とで、蓄電装置10にかけるべき荷重の大きさが変化する。
【0040】
これに対し、本実施の形態に係る蓄電モジュール1は、複数の蓄電装置10とともに第1方向Xに配列される緩衝部材40を備える。図4(A)は、実施の形態1に係る緩衝部材40が備える硬質部の正面図である。図4(B)は、図4(A)のA-A線に沿った断面図である。図5(A)は、緩衝部材40が備える軟質部の正面図である。図5(B)は、図5(A)のB-B線に沿った断面図である。図6は、隣接する2つの蓄電装置10に挟まれた状態にある緩衝部材40の断面図である。なお、図4(A)および図4(B)では、壁部22の図示を省略している。
【0041】
緩衝部材40は、蓄電装置10とともに配列されて、蓄電装置10から第1方向Xに荷重を受ける部材である。図6には、隣接する第1蓄電装置10aおよび第2蓄電装置10bの間に配置される緩衝部材40を図示している。緩衝部材40は、所定の硬さを有する硬質部42と、硬質部42よりも柔らかい軟質部44と、を備える。
【0042】
硬質部42は、所定以上の荷重を受けて形状が変化する。緩衝部材40は、硬質部42の形状が変化することで、荷重を硬質部42により受ける第1状態から、荷重を軟質部44により受ける第2状態に移行する。つまり、硬質部42および軟質部44は、それぞれ異なるタイミングで蓄電装置10から第1方向Xに荷重を受ける。本実施の形態の硬質部42は、自身の形状を変化させるための構造として、所定以上の荷重を受けて破断または塑性変形する脆弱部46を有する。したがって、緩衝部材40は、脆弱部46が破断または塑性変形することで、第1状態から第2状態に移行する。
【0043】
硬質部42は、例えば金属や、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ノリル(登録商標)樹脂(変性PPE)等の硬質の樹脂で構成することができる。本実施の形態の硬質部42は、絶縁性を有し、セパレータ12に設けられてセパレータ12の一部を構成する。したがって、硬質部42は、金属ではなく樹脂で構成される。この場合、硬質部42は、セパレータ12と一体成形することができる。
【0044】
硬質部42は、セパレータ12の平面部20に設けられる。本実施の形態のセパレータ12は、第1方向Xに平面部20を貫通する貫通孔20aを有する。硬質部42は、第1蓄電装置10a側の端部がこの貫通孔20a内に配置されて、脆弱部46の破断または塑性変形する前の状態において、平面部20から第2蓄電装置10bの外装缶14に向けて突出する。
【0045】
本実施の形態の硬質部42は、第1部分48、第2部分50および第3部分52を有する。また、脆弱部46には、第1脆弱部54および第2脆弱部56が含まれる。第1部分48~第3部分52、第1脆弱部54および第2脆弱部56は、一体成形されている。
【0046】
脆弱部46の破断または塑性変形が起こる前の状態で、第1部分48は、第2部分50および第3部分52よりも第1蓄電装置10a側に位置して、第2蓄電装置10bから離間する。第1部分48は円管状であり、第1蓄電装置10a側の端部が貫通孔20a内に配置される。本実施の形態では、第1部分48と平面部20とは一体成形されている。第2部分50は、第1部分48よりも第2蓄電装置10b側に位置して第1蓄電装置10aから離間する。第2部分50は、第1部分48よりも径の小さい円管状であり、第1方向Xから見て第1部分48の内側に配置される。例えば、第1部分48と第2部分50とは、第1方向Xから見て中心軸が重なるように配置される。
【0047】
第1部分48の第2蓄電装置10b側の端部と、第2部分50の第1蓄電装置10a側の端部とは、第1脆弱部54によって連結される。第1脆弱部54は、第1部分48および第2部分50よりも第1方向Xの強度が低い部分である。例えば、第1脆弱部54は、第1部分48および第2部分50よりも第1方向Xに薄く、第2部分50よりも径の大きい穴を有する円板状である。第1脆弱部54は、各蓄電装置10の外装缶14の長側面に対して平行に拡がり、第1方向Xから見て第1部分48と第2部分50との間に位置する。第2部分50は、第1方向Xから見て第1脆弱部54の穴の内側に配置される。
【0048】
第3部分52は、第2部分50よりも第2蓄電装置10b側に位置して、第1蓄電装置10aから離間する。第1方向Xにおいて第2部分50と第2蓄電装置10bとの間には第3部分52が介在する。このため、第2部分50は、第1蓄電装置10aからだけでなく、第2蓄電装置10bからも離間する。第3部分52は第2部分50よりも径の小さい円柱状であり、第1方向Xから見て第2部分50の内側に配置される。例えば、第2部分50と第3部分52とは、第1方向Xから見て中心軸が重なるように配置される。なお、第3部分52の形状は円柱状に限定されない。第3部分52は、第2脆弱部56より高い剛性を備えれば、第2蓄電装置10b側の端部が塞がれた筒体や、第1方向Xの両端が開放された筒体等であってもよい。
【0049】
第2部分50の第2蓄電装置10b側の端部と、第3部分52の第1蓄電装置10a側の端部とは、第2脆弱部56によって連結される。第2脆弱部56は、第2部分50および第3部分52よりも第1方向Xの強度が低い部分である。例えば、第2脆弱部56は、第2部分50および第3部分52よりも第1方向Xに薄く、第3部分52よりも径の大きい穴を中心に有する円板状である。第2脆弱部56は、各蓄電装置10の外装缶14の長側面に対して平行に拡がり、第1方向Xから見て第2部分50と第3部分52との間に位置する。第3部分52は、第1方向Xから見て第2脆弱部56の穴の内側に配置される。
【0050】
第3部分52、第2部分50および第1部分48は、この順に第1方向Xと垂直な方向、つまりYZ平面方向における寸法が小さくなっている。つまり、第1方向Xと垂直な方向における寸法について、硬質部42の第2蓄電装置10b側の部分の寸法は第1蓄電装置10a側の部分の寸法より小さい。この構成により、第3部分52を第2部分50および第1部分48よりも軟質部44から離間させることができる。また、第2部分50を第1部分48よりも軟質部44から離間させることができる。より具体的には、後述する貫通孔58の内周面から第3部分52までの距離を当該内周面から第2部分50までの距離および当該内周面から第1部分48までの距離よりも長くすることができる。また、当該内周面から第2部分50までの距離を当該内周面から第1部分48までの距離よりも長くすることができる。この構成により、硬質部42の形状が変化した際に、硬質部42が軟質部44を押圧する可能性を低減することができる。これにより、第2状態において軟質部44が圧縮変形する際、硬質部42によって軟質部44の変形が阻害されることを抑制することができる。よって、軟質部44の圧縮代が変化することを抑制することができる。
【0051】
緩衝部材40は、複数の硬質部42を有する。本実施の形態の各硬質部42は、第1方向Xから見て蓄電装置10が備える電極体38と重なるように配置される。また、複数の硬質部42は、平面部20上に所定の間隔をあけて均等に分散するように配置されている。
【0052】
軟質部44は、発泡ウレタン等の軟質の樹脂で構成することができる。軟質部44は、例えばシート体であり、セパレータ12の平面部20に対して平行に配置される。軟質部44は、平面部20よりも第2蓄電装置10b側に配置される。軟質部44において平面部20と第1方向Xに重なる部分は、この部分と第1蓄電装置10aとの間に平面部20が介在するため、第1蓄電装置10aから離間している。軟質部44は、第1方向Xから見て硬質部42と重なる位置に少なくとも1つの貫通孔58を有する。本実施の形態の軟質部44は、硬質部42と同じ数の貫通孔58を有する。各貫通孔58は、第1方向Xにシート体を貫通する。硬質部42は、貫通孔58に挿通されるとともに、第2蓄電装置10b側の先端が第1方向Xにおいて軟質部44から突出する。硬質部42の先端を除く部分は、貫通孔58内に配置される。
【0053】
本実施の形態の硬質部42は、その全体が貫通孔58の内周面から離間している。この構成により、形状の変化した硬質部42によって貫通孔58の内周面が押圧されることを抑制することができる。これにより、第2状態において軟質部44の変形が阻害されることを抑制することができる。なお、硬質部42が貫通孔58の内周面の少なくとも一部から離間していれば、硬質部42による軟質部44の変形阻害を多少なりとも抑制することができる。なお、軟質部44は、シート状でなくてもよく、例えば硬質部42の周囲に配置される複数のブロック体で構成されてもよい。
【0054】
軟質部44は、第1方向Xにおいて硬質部42と蓄電装置10との間に介在しない。本実施の形態では、硬質部42と第1蓄電装置10aとの間にも、硬質部42と第2蓄電装置10bとの間にも、軟質部44は介在しない。この構成により、第1状態において、硬質部42に加わる荷重が軟質部44に逃げることを抑制することができる。
【0055】
図7(A)~図7(C)は、蓄電装置10から荷重を受けて緩衝部材40の形状が変化する様子を模式的に示す断面図である。なお、一例として、図7(B)では第2脆弱部56が破断した様子を示し、図7(C)では第1脆弱部54が破断した様子を示している。また、図7(A)~図7(C)では、電極体38の図示を省略している。
【0056】
第1脆弱部54および第2脆弱部56は、一方が他方よりも強度が低くなるように設計される。本実施の形態では、第2脆弱部56は、第1脆弱部54よりも第1方向Xに薄く、第1脆弱部54よりも強度が低くなっている。したがって、硬質部42は、蓄電装置10の膨張によって第1方向Xの荷重を受けると、第2脆弱部56が先に破断または塑性変形し、第1脆弱部54が後に破断または塑性変形する。
【0057】
また、第1方向Xにおける寸法(厚さ)について、硬質部42の寸法は、脆弱部46が破断または塑性変形する前の状態で、軟質部44の寸法よりも大きい。したがって、図7(A)に示すように、第1脆弱部54および第2脆弱部56が破断または塑性変形する前の状態では、第3部分52が第2蓄電装置10bの外装缶14に当接し、硬質部42が蓄電装置10からの荷重を受ける。つまり、緩衝部材40は第1状態をとり、第1蓄電装置10aと第2蓄電装置10bとの接近は、硬質部42により規制される。
【0058】
図7(B)に示すように、第2脆弱部56が破断または塑性変形すると、第3部分52が第2部分50の内部に落ち込んで、硬質部42の寸法は小さくなる。つまり、硬質部42は、第2脆弱部56が破断または塑性変形することで第1方向Xに縮む。しかしながら、硬質部42の寸法は、第1脆弱部54が破断または塑性変形した状態においても、軟質部44の寸法よりも大きい。したがって、第2蓄電装置10bの外装缶14は第2部分50に当接し、硬質部42が蓄電装置10からの荷重を受ける。よって、緩衝部材40は引き続き第1状態をとり、第1蓄電装置10aと第2蓄電装置10bとの接近は、硬質部42により規制される。このとき、第1蓄電装置10aと第2蓄電装置10bとの距離Lは、第1脆弱部54および第2脆弱部56が破断または塑性変形する前よりも小さくなる。
【0059】
図7(C)に示すように、第2脆弱部56の破断または塑性変形に加えて第1脆弱部54も破断または塑性変形すると、第2部分50が第1部分48の内部に落ち込んで、硬質部42の寸法はさらに小さくなる。つまり、硬質部42は、第1脆弱部54が破断または塑性変形することで第1方向Xに縮む。したがって、本実施の形態の硬質部42は、強度が低い第2脆弱部56が破断または塑性変形した後に強度の高い第1脆弱部54が破断または塑性変形することで、二段階に縮む。この結果、硬質部42の寸法は軟質部44の寸法よりも小さくなり、第2蓄電装置10bの外装缶14は軟質部44に当接し、軟質部44が蓄電装置10からの荷重を受ける。つまり、緩衝部材40は第2状態をとり、第1蓄電装置10aと第2蓄電装置10bとの接近は、軟質部44により規制される。このとき、第1蓄電装置10aと第2蓄電装置10bとの距離Lは、第2脆弱部56が破断または塑性変形する前よりも小さくなる。
【0060】
上述のように、第1方向Xにおける硬質部42および軟質部44の寸法は、第1状態では硬質部42の方が軟質部44よりも大きく、第2状態では軟質部44の方が硬質部42よりも大きい。したがって、第1状態では、軟質部44は第2蓄電装置10bから離間し、第2状態では、硬質部42は第2蓄電装置10bから離間する。つまり、第1状態では、第1蓄電装置10aと第2蓄電装置10bとの間の距離Lは硬質部42の寸法で規定され、第2状態では、当該距離Lは軟質部44の寸法で規定される。これにより、緩衝部材40が第1状態にあるとき、蓄電装置10からの荷重をより確実に硬質部42で受けることができる。また、緩衝部材40が第2状態にあるとき、蓄電装置10からの荷重をより確実に軟質部44で受けることができる。
【0061】
また、第1部分48~第3部分52の各寸法は、軟質部44の寸法よりも小さい。この構成により、第2状態において軟質部44が第2蓄電装置10bに当接する際に、形状の変化した硬質部42が第2蓄電装置10bに当接することを抑制することができる。この結果、軟質部44にかかる荷重が偏ることを抑制することができる。
【0062】
図8(A)は、硬質部42が図7(A)に示す状態にあるときの緩衝部材40における圧縮荷重と圧縮率との関係を示す図である。図8(B)は、硬質部42が図7(B)に示す状態にあるときの緩衝部材40における圧縮荷重と圧縮率との関係を示す図である。図8(C)は、硬質部42が図7(C)に示す状態にあるときの緩衝部材40における圧縮荷重と圧縮率との関係を示す図である。
【0063】
図8(A)~図8(C)に示すように、各蓄電装置10の膨張量に応じて、緩衝部材40に求められる膨張の吸収量(いなし量)、つまり必要吸収量M1が定まる。また、緩衝部材40には、下限圧縮荷重N1と、上限圧縮荷重N2と、が定まる。下限圧縮荷重N1は、蓄電装置10の位置決めに必要な最小荷重、つまり下限拘束荷重が各蓄電装置10にかけられた際に緩衝部材40にかかる荷重である。また、上限圧縮荷重N2は、拘束部材6の破損や蓄電装置10の性能低下が生じない最大荷重、つまり上限拘束荷重が各蓄電装置10にかけられた際に緩衝部材40にかかる荷重である。したがって、緩衝部材40は、下限圧縮荷重N1から上限圧縮荷重N2の範囲で必要吸収量M1をカバーすることが求められる。
【0064】
緩衝部材40は、第3部分52が第2蓄電装置10bの外装缶14に当接する状態と、第2部分50が第2蓄電装置10bの外装缶14に当接する状態と、軟質部44が第2蓄電装置10bの外装缶14に当接する状態とのそれぞれにおいて、荷重の吸収特性が変化する。荷重の吸収特性は、荷重を受ける部材の材質に固有の応力-ひずみ曲線や、荷重を受ける部材の形状等に基づいて定まる。
【0065】
硬質部42は、軟質部44に比べて硬く、変形量が少ない。このため、図8(A)に示すように、第3部分52が第2蓄電装置10bに当接する状態では、小さい圧縮率で下限圧縮荷重N1に到達できる一方で、上限圧縮荷重N2に達するまでの圧縮率も小さい。よって、必要吸収量M1のうち、吸収量M2だけしかカバーすることができない。同様に、図8(B)に示すように、第2部分50が第2蓄電装置10bに当接する状態でも、小さい圧縮率で下限圧縮荷重N1に到達できる一方で、上限圧縮荷重N2に達するまでの圧縮率も小さい。よって、必要吸収量M1のうち、吸収量M3だけしかカバーすることができない。
【0066】
一方、軟質部44は、硬質部42に比べて柔らかく、変形量が多い。このため、軟質部44が第2蓄電装置10bに当接する状態では、下限圧縮荷重N1に達するまでに硬質部42に比べてより大きな圧縮率が必要であるが、上限圧縮荷重N2に達するまでの圧縮率も大きい。よって、必要吸収量M1のうち、吸収量M2および吸収量M3よりも多い吸収量M4をカバーすることができる。
【0067】
図9は、第1状態および第2状態を通した緩衝部材40の圧縮荷重と圧縮率との関係を示す図である。例えば、緩衝部材40は、圧縮率m1に達したときに第2脆弱部56が破断し、圧縮率m2に達したときに第1脆弱部54が破断するように設計される。各蓄電装置10の膨張量が比較的小さく、緩衝部材40が圧縮率m1までの範囲で圧縮と圧縮の開放とを繰り返す間は、緩衝部材40は、第3部分52で第2蓄電装置10bからの荷重を受ける第1状態をとる。このような状況は、例えば蓄電装置10の寿命初期に見られる。このとき、緩衝部材40にかかる圧縮荷重と圧縮率との関係は、図8(A)に示す関係に準ずる。
【0068】
緩衝部材40にかる荷重が増大して、緩衝部材40の圧縮率が圧縮率m1に達すると、第2脆弱部56が破断する。これにより、緩衝部材40は、第2部分50で第2蓄電装置10bからの荷重を受ける第1状態に移行する。その後、各蓄電装置10の膨張量が中程度であり、緩衝部材40が圧縮率m2までの範囲で圧縮と圧縮の開放とを繰り返す間は、緩衝部材40は、当該第1状態を維持する。このような状況は、例えば蓄電装置10の寿命中期に見られる。このとき、緩衝部材40にかかる圧縮荷重と圧縮率との関係は、図8(B)に示す関係に準ずる。
【0069】
緩衝部材40にかる荷重が増大して、緩衝部材40の圧縮率が圧縮率m2に達すると、第1脆弱部54が破断する。これにより、緩衝部材40は、軟質部44で第2蓄電装置10bからの荷重を受ける第2状態に移行する。その後、各蓄電装置10の膨張量が大きく、緩衝部材40が圧縮率m2以上の範囲で圧縮と圧縮の開放とを繰り返す間は、緩衝部材40は、第2状態を維持する。このような状況は、例えば蓄電装置10の寿命末期に見られる。このとき、緩衝部材40にかかる圧縮荷重と圧縮率との関係は、図8(C)に示す関係に準ずる。
【0070】
このように、本実施の形態の緩衝部材40は、蓄電装置10からの荷重に応じて形状が変化する構造を有し、相対的に小さい荷重を硬質部42で受け、相対的に大きい荷重を軟質部44で受ける。つまり、緩衝部材40は、荷重を受ける部分の柔軟性とストロークが荷重の大きさに応じて段階的に切り替わる。これにより、図9に示すように、下限圧縮荷重N1から上限圧縮荷重N2の範囲を維持しながら、緩衝部材40に求められる必要吸収量M1を確保することができる。
【0071】
以上説明したように、本実施の形態に係る蓄電モジュール1は、少なくとも1つの蓄電装置10と、蓄電装置10とともに第1方向Xに配列される緩衝部材40と、を備える。緩衝部材40は、蓄電装置10から第1方向Xに荷重を受ける硬質部42および軟質部44を有する。硬質部42は、所定以上の荷重を受けて形状が変化する。緩衝部材40は、荷重を硬質部42により受ける第1状態から、硬質部42の形状が変化することで、荷重を軟質部44により受ける第2状態に移行する。これにより、寿命初期で蓄電装置10が薄いときは、変形量の少ない硬質部42により荷重を受けることで、蓄電装置10の位置決めに必要な拘束力を保持することができる。一方、寿命末期で蓄電装置10が厚いときは、変形量が多い軟質部44により荷重を受けることで、拘束部材6が破損しない範囲の低い拘束力で蓄電装置10を保持することができる。
【0072】
したがって、本実施の形態によれば、蓄電装置10の高容量化にともなって蓄電装置10の膨張量が増大したとしても、蓄電装置10の膨張吸収と位置決めとを高い次元で両立することができる。また、寿命初期と寿命末期とで蓄電装置10の膨張量が変化しても、各段階の膨張量に応じた適切な拘束力で蓄電装置10を保持することができる。よって、蓄電モジュール1の信頼性を高めることができる。
【0073】
また、拘束部材6の高強度化を避けることができるため、拘束部材6ひいては蓄電モジュール1の大型化、重量化、コスト増等を抑制することができる。また、蓄電装置10にかかる荷重が増大して、蓄電装置10の性能が低下したり寿命が縮むことも抑制できる。さらに、例えば軟質部44のみで必要吸収量M1を確保しようとした場合は、緩衝部材40の第1方向Xの厚みを大きくする必要があり、蓄電モジュール1全体の大型化につながってしまう。これに対し、本実施の形態の緩衝部材40によれば、緩衝部材40を厚くすることなく必要吸収量M1を確保することができる。したがって、緩衝部材40の薄型化、ひいては蓄電モジュール1の小型化を図ることができる。
【0074】
また、第1方向Xにおける硬質部42および軟質部44の厚みは、第1状態では硬質部42の方が軟質部44よりも厚く、第2状態では軟質部44の方が硬質部42よりも厚い。これにより、緩衝部材40が第1状態にあるときは硬質部42でより確実に荷重を受け、緩衝部材40が第2状態にあるときは軟質部44でより確実に荷重を受けることができる。よって、蓄電装置10の膨張吸収と位置決めとの両立をより確実に実現することができる。
【0075】
また、硬質部42は、所定以上の荷重を受けて破断または塑性変形する脆弱部46を有する。緩衝部材40は、脆弱部46が破断または塑性変形することで、第1状態から第2状態に移行する。これにより、簡単な構成で蓄電装置10の膨張吸収と位置決めとの両立を図ることができる。
【0076】
また、蓄電モジュール1は、隣接する第1蓄電装置10aおよび第2蓄電装置10bを備え、破断または塑性変形する前の硬質部42は、第1蓄電装置10aおよび第2蓄電装置10bのうち第1蓄電装置10a側に位置して第2蓄電装置10bから離間する第1部分48と、第1部分48よりも第2蓄電装置10b側に位置して第1蓄電装置10aから離間する第2部分50と、を有する。脆弱部46は、第1部分48および第2部分50を連結するとともに第1部分48および第2部分50よりも強度の低い第1脆弱部54を含む。硬質部42は、第1脆弱部54が破断または塑性変形することで第1方向Xに縮む。これにより、簡単な構成で蓄電装置10の膨張吸収と位置決めとの両立を図ることができる。
【0077】
また、本実施の形態では、破断または塑性変形する前の硬質部42は、第2部分50よりも第2蓄電装置10b側に位置して第1蓄電装置10aから離間する第3部分52を有する。脆弱部46は、第2部分50および第3部分52を連結するとともに第2部分50および第3部分52よりも強度の低い第2脆弱部56を含む。第1脆弱部54および第2脆弱部56は、一方が他方よりも強度が低い。硬質部42は、強度が低い脆弱部46が破断または塑性変形した後に、強度の高い脆弱部46が破断または塑性変形することで二段階に縮む。これにより、蓄電装置10の膨張吸収と位置決めとをより高い次元で両立することができる。
【0078】
また、第2脆弱部56が破断したとき、第3部分52は第2部分50から分離し、第2部分50または第1部分48の内部に収まる。また、第1脆弱部54が破断したとき、第2部分50は第1部分48から分離し、第3部分52および第2部分50は第1部分48の内部に収まる。これにより、緩衝部材40が第1状態から第2状態に移行する際に、硬質部42の寸法をより確実に軟質部44の寸法よりも小さくすることができる。なお、第2脆弱部56が塑性変形する場合は、第3部分52は第2部分50に接続された状態で第2部分50または第1部分48の内部に収まる。第1脆弱部54が塑性変形する場合は、第2部分50が第1部分48に接続された状態で第3部分52および第2部分50は第1部分48の内部に収まる。
【0079】
また、本実施の形態の硬質部42は、絶縁性を有し、蓄電装置10と外部(例えば、隣接する蓄電装置10、エンドプレート4、拘束部材6等)とを絶縁するセパレータ12に設けられ、セパレータ12の一部を構成する。これにより、硬質部42を簡単に設置することができる。また、緩衝部材40を設けることによる蓄電モジュール1の部品点数の増大を抑制することができる。また、硬質部42は、第1方向Xから見て電極体38と重なるように配置される。これにより、蓄電装置10の膨張をより確実に緩衝部材40によって吸収することができる。よって、拘束部材6にかかる負荷をより確実に軽減することができる。
【0080】
(変形例1)
実施の形態1では、硬質部42は第1脆弱部54と第2脆弱部56とを有して2段階に縮むがその限りでない。硬質部42は、第1部分48と、第2部分50と、第1脆弱部54と、を有し、第1部分48が第1蓄電装置10aに、第2部分50が第2蓄電装置10bにそれぞれ当接してもよい。この場合、第1脆弱部54の破断または塑性変形によって硬質部42は一段階に縮む。
【0081】
(変形例2)
実施の形態1では、第2脆弱部56のみが破断または塑性変形した状態において、硬質部42の寸法は軟質部44の寸法よりも大きいがその限りでない。第2脆弱部56のみが破断または塑性変形した状態で、軟質部44の寸法が硬質部42の寸法を上回ってもよい。
【0082】
(変形例3)
実施の形態1では、第2脆弱部56の方が第1脆弱部54よりも強度が低く、第2脆弱部56が破断等して第3部分52が変位した後に、第1脆弱部54が破断等して第2部分50が変位するがこの限りでない。第1脆弱部54の方が第2脆弱部56よりも強度が低く、第1脆弱部54が破断等して第2部分50および第3部分52が変位した後に、第2脆弱部56が破断等して第3部分52が変位してもよい。
【0083】
(実施の形態2)
実施の形態2は、硬質部42の形状を除き、実施の形態1と共通の構成を有する。以下、本実施の形態について実施の形態1と異なる構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。
【0084】
図10(A)は、実施の形態2に係る緩衝部材40が備える硬質部42の正面図である。図10(B)は、図10(A)のC-C線に沿った断面図である。図10(C)は、緩衝部材40が備える軟質部44の正面図である。図10(D)は、図10(C)のD-D線に沿った断面図である。図11は、隣接する2つの蓄電装置10に挟まれた状態にある緩衝部材40の断面図である。なお、図10(A)および図10(B)では、壁部22の図示を省略している。
【0085】
緩衝部材40は、硬質部42と、軟質部44と、を備える。緩衝部材40は、硬質部42の形状が変化することで、荷重を硬質部42により受ける第1状態から、荷重を軟質部44により受ける第2状態に移行する。本実施の形態の硬質部42は、自身の形状を変化させるための構造として脆弱部46を有する。
【0086】
硬質部42は、第1部分48および第2部分50を有する。また、脆弱部46には、第1脆弱部54が含まれる。第1部分48、第1脆弱部54および第2部分50は、一体成形されている。セパレータ12は、第1方向Xに平面部20を貫通する、略正方形状の貫通孔20aを有し、貫通孔20aの周縁部が第1部分48を構成する。したがって、第1部分48は、第2部分50よりも第1蓄電装置10a側に位置して、第2蓄電装置10bから離間する。本実施の形態では、第1部分48は、第1蓄電装置10aの外装缶14に当接する。
【0087】
第2部分50は、第1部分48よりも第2蓄電装置10b側に位置して第1蓄電装置10aから離間する。本実施の形態では、第2部分50は、第2蓄電装置10bの外装缶14に当接する。第2部分50は、貫通孔20aと相似形状で且つ小さい略正方形状の平板であり、自身の各辺が貫通孔20aの各辺と平行になるよう姿勢が定められて、第1方向Xから見て貫通孔20aの内側に配置される。
【0088】
第1部分48と第2部分50とは、第1脆弱部54によって連結される。第1脆弱部54は、第1部分48および第2部分50よりも第1方向Xの強度が低い部分である。本実施の形態の硬質部42は、4つの第1脆弱部54を有する。各第1脆弱部54は、第1部分48および第2部分50よりも薄い平板であり、一辺が貫通孔20aの周縁部の各縁部(辺)に接続され、他辺が自身の接続された貫通孔20aの縁部と対向する第2部分50の縁部に接続される。各第1脆弱部54は、第1部分48から第2蓄電装置10b側に延びるとともに、第2蓄電装置10bに近づくにつれて貫通孔20aの中心側に向かうように延びる。そして、各第1脆弱部54の先端に第2部分50の各縁部が接続される。
【0089】
軟質部44は、実施の形態1の軟質部44と同様の材料で構成することができる。軟質部44の形状は、実施の形態1の軟質部44と同様である。
【0090】
図12(A)~図12(D)は、蓄電装置10から荷重を受けて緩衝部材40の形状が変化する様子を模式的に示す断面図である。なお、一例として、図12(C)では第1脆弱部54が破断した様子を示している。また、図12(A)~図12(D)では、電極体38の図示を省略している。
【0091】
第1方向Xにおける寸法について、硬質部42の寸法は、脆弱部46が破断または塑性変形する前の状態で、軟質部44の寸法よりも大きい。したがって、図12(A)に示すように、第1脆弱部54が破断または塑性変形する前の状態では、第2部分50が第2蓄電装置10bの外装缶14に当接し、硬質部42が蓄電装置10からの荷重を受ける。つまり、緩衝部材40は第1状態をとる。
【0092】
図12(B)に示すように、蓄電装置10からの荷重が増大すると、第1脆弱部54が湾曲し、第1部分48と第2部分50とが第1方向Xにおいて互いに近づく方向に変位し始める。つまり、緩衝部材40は、第1状態から第2状態に移行し始める。このとき、第2蓄電装置10bの外装缶14は軟質部44にも当接し、軟質部44にも荷重がかかり得る。ただし、軟質部44が受ける荷重は、硬質部42が受ける荷重よりも小さい。
【0093】
第1脆弱部54の湾曲が進むと、図12(C)に示すように第1脆弱部54が破断または塑性変形する。これにより、硬質部42は第1方向Xに縮んで、硬質部42の寸法が軟質部44の寸法よりも小さくなる。この結果、図12(D)に示すように、緩衝部材40は、軟質部44が蓄電装置10の荷重を受ける第2状態となる。
【0094】
本実施の形態の緩衝部材40によっても、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。なお、本実施の形態の緩衝部材40についても、実施の形態1と同様に二段階で縮む構造としてもよい。
【0095】
(変形例4)
実施の形態2では、略正方形状の第2部分50の4辺に第1脆弱部54が接続されているがその限りでない。例えば、第2部分50の対向する2辺のみに第1脆弱部54が接続されてもよい。
【0096】
(実施の形態3)
実施の形態3は、硬質部42の形状を除き、実施の形態1と共通の構成を有する。以下、本実施の形態について実施の形態1と異なる構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。
【0097】
図13は、隣接する2つの蓄電装置10に挟まれた状態にある実施の形態3に係る緩衝部材40の断面図である。緩衝部材40は、硬質部42と、軟質部44と、を備える。緩衝部材40は、硬質部42の形状が変化することで、荷重を硬質部42により受ける第1状態から、荷重を軟質部44により受ける第2状態に移行する。本実施の形態の硬質部42は、自身の形状を変化させるための構造として、中空の突起部60を有する。
【0098】
突起部60は、ゴム等の弾性材料で構成することができる。本実施の形態の突起部60は、中空の円錐台状であり、頂部62と、基底部64と、側壁部66と、中空部68と、を有する。突起部60は、頂部62と基底部64とが第1方向Xに並ぶようにして、セパレータ12の平面部20に配置される。平面部20は貫通孔20aを有し、突起部60は、基底部64が貫通孔20a内に配置されて、平面部20から第2蓄電装置10bの外装缶14に向けて突出する。本実施の形態では、基底部64が第1蓄電装置10aの外装缶14に当接し、頂部62が第2蓄電装置10bの外装缶14に当接する。
【0099】
頂部62と基底部64とは、側壁部66によって連結される。側壁部66は、頂部62および基底部64よりも第1方向Xの強度が低い部分である。したがって、側壁部66は、脆弱部46に相当する。中空部68は、頂部62、基底部64および側壁部66で区画される空間である。中空部68は、貫通孔20aを介して開口している。つまり、突起部60は、第2蓄電装置10b側に突出する部分の第1蓄電装置10a側の面が第2蓄電装置10b側に向けて窪んでいる。この窪みが中空部68を構成する。
【0100】
軟質部44は、実施の形態1の軟質部44と同様の材料で構成することができる。軟質部44の形状は、実施の形態1の軟質部44と同様である。
【0101】
図14(A)~図14(C)は、蓄電装置10から荷重を受けて緩衝部材40の形状が変化する様子を模式的に示す断面図である。なお、図14(A)~図14(C)では、電極体38の図示を省略している。
【0102】
第1方向Xにおける寸法について、突起部60の寸法は、変形する前の状態で軟質部44の寸法よりも大きい。したがって、図14(A)に示すように、突起部60が変形する前の状態では、頂部62が第2蓄電装置10bの外装缶14に当接し、突起部60が蓄電装置10からの荷重を受ける。つまり、緩衝部材40は第1状態をとる。
【0103】
図14(B)に示すように、蓄電装置10からの荷重が増大すると、側壁部66が湾曲し、頂部62と基底部64とが第1方向Xにおいて互いに近づく方向に変位し始める。つまり、緩衝部材40は、第1状態から第2状態に移行し始める。このとき、第2蓄電装置10bの外装缶14は軟質部44にも当接し、軟質部44にも荷重がかかり得る。ただし、軟質部44が受ける荷重は、硬質部42が受ける荷重よりも小さい。
【0104】
そして、突起部60が蓄電装置10から所定以上の荷重を受けると、図14(C)に示すように、側壁部66が内側に折り曲がるように湾曲して、頂部62が中空部68に落ち込む。つまり、突起部60は、頂部62が中空部68に進入して形状の一部が反転し、第1方向Xに縮む。これにより、硬質部42の寸法が軟質部44の寸法よりも小さくなり、緩衝部材40は、軟質部44が蓄電装置10の荷重を受ける第2状態となる。
【0105】
本実施の形態の緩衝部材40によっても、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。なお、本実施の形態の緩衝部材40についても、実施の形態1と同様に二段階で縮む構造としてもよい。
【0106】
(実施の形態4)
実施の形態4は、硬質部42の形状を除き、実施の形態1と共通の構成を有する。以下、本実施の形態について実施の形態1と異なる構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。
【0107】
図15は、隣接する2つの蓄電装置10に挟まれた状態にある実施の形態4に係る緩衝部材40の断面図である。緩衝部材40は、硬質部42と、軟質部44と、を備える。緩衝部材40は、硬質部42の形状が変化することで、荷重を硬質部42により受ける第1状態から、荷重を軟質部44により受ける第2状態に移行する。本実施の形態の硬質部42は、自身の形状を変化させるための構造として、中空の突起部60を有する。
【0108】
突起部60は、金属等で構成することができる。本実施の形態の突起部60は、中空のドーム状であり、頂部62と、基底部64と、側壁部66と、中空部68と、を有する。突起部60は、頂部62と基底部64とが第1方向Xに並ぶようにして、セパレータ12の平面部20に配置される。平面部20は貫通孔20aを有し、突起部60は、基底部64が貫通孔20a内に配置されて、平面部20から第2蓄電装置10bの外装缶14に向けて突出する。本実施の形態では、基底部64が第1蓄電装置10aの外装缶14に当接し、頂部62が第2蓄電装置10bの外装缶14に当接する。
【0109】
頂部62と基底部64とは、側壁部66によって連結される。側壁部66は、頂部62および基底部64よりも第1方向Xの強度が低い部分である。したがって、側壁部66は、脆弱部46に相当する。基底部64は第1方向Xに対し平行に延び、側壁部66は基底部64の端部から第1方向Xに対し斜めに延びる。中空部68は、頂部62、基底部64および側壁部66で区画される空間である。中空部68は、貫通孔20aを介して開口している。
【0110】
軟質部44は、実施の形態1の軟質部44と同様の材料で構成することができる。軟質部44の形状は、実施の形態1の軟質部44と同様である。
【0111】
図16(A)~図16(C)は、蓄電装置10から荷重を受けて緩衝部材40の形状が変化する様子を模式的に示す断面図である。なお、図16(A)~図16(C)では、電極体38の図示を省略している。
【0112】
第1方向Xにおける寸法について、突起部60の寸法は、変形する前の状態で軟質部44の寸法よりも大きい。したがって、図16(A)に示すように、突起部60が変形する前の状態では、頂部62が第2蓄電装置10bの外装缶14に当接し、突起部60が蓄電装置10からの荷重を受ける。つまり、緩衝部材40は第1状態をとる。
【0113】
図16(B)に示すように、蓄電装置10からの荷重が増大すると、基底部64および側壁部66が内側に倒れ込み、頂部62が第1方向Xにおいて第1蓄電装置10aに近づく方向に変位し始める。つまり、緩衝部材40は、第1状態から第2状態に移行し始める。このとき、第2蓄電装置10bの外装缶14は軟質部44にも当接し、軟質部44にも荷重がかかり得る。ただし、軟質部44が受ける荷重は、硬質部42が受ける荷重よりも小さい。
【0114】
突起部60は、蓄電装置10から所定以上の荷重を受けると、図16(C)に示すように、頂部62が中空部68に進入して形状の一部が反転する。これにより、突起部60が第1方向Xに縮んで、硬質部42の寸法が軟質部44の寸法よりも小さくなる。この結果、緩衝部材40は、軟質部44が蓄電装置10の荷重を受ける第2状態となる。
【0115】
本実施の形態の緩衝部材40によっても、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。なお、本実施の形態の緩衝部材40についても、実施の形態1と同様に二段階で縮む構造としてもよい。また、突起部60と第1蓄電装置10aとの間、および突起部60と第2蓄電装置10bとの間には、絶縁シート(図示せず)が設けられてもよい。
【0116】
以上、本開示の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本開示を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本開示の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。また、各実施の形態に含まれる構成要素の任意の組み合わせも、本開示の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0117】
(変形例5)
緩衝部材40は、隣り合う2つの蓄電装置10の組み合わせの全てに対して設けられてもよいし、一部の組み合わせに対して設けられてもよい。また、緩衝部材40は、2つの蓄電装置10の間に設けられることに加えて、蓄電装置10とエンドプレート4との間にも設けられてもよい。さらに、緩衝部材40は、蓄電装置10とエンドプレート4との間のみに設けられてもよい。
【0118】
(変形例6)
硬質部42は、セパレータ12と別体であってもよい。このような構造の一例として、硬質部42は、図示しない支持基板に一体成形される。そして、この支持基板がセパレータ12に接合される。セパレータ12に支持基板を接合する方法としては、支持基板およびセパレータ12をインサート成形する方法や、個別に成形したセパレータ12と支持基板とを超音波溶着する方法などが例示される。
【0119】
(その他の変形例)
蓄電モジュール1が備える蓄電装置10の数は特に限定されず、蓄電モジュール1は蓄電装置10を少なくとも1つ有していればよい。エンドプレート4や拘束部材6の構造を含む蓄電モジュール1の各部の構造は、特に限定されない。
【符号の説明】
【0120】
1 蓄電モジュール、 10 蓄電装置、 10a 第1蓄電装置、 10b 第2蓄電装置、 12 セパレータ、 38 電極体、 40 緩衝部材、 42 硬質部、 44 軟質部、 46 脆弱部、 48 第1部分、 50 第2部分、 52 第3部分、 54 第1脆弱部、 56 第2脆弱部、 60 突起部、 62 頂部、 64 基底部、 68 中空部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16