(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-13
(45)【発行日】2024-06-21
(54)【発明の名称】DC/DC変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
H02M3/155 G
(21)【出願番号】P 2020076958
(22)【出願日】2020-04-23
【審査請求日】2022-02-17
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】高田 悠生
(72)【発明者】
【氏名】後藤 周作
(72)【発明者】
【氏名】藤居 直章
【合議体】
【審判長】須田 勝巳
【審判官】山崎 慎一
【審判官】大塚 俊範
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-216790(JP,A)
【文献】特開2012-182977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧側直流電源に並列接続される低圧側コンデンサと、
高圧側直流電源に並列接続される高圧側コンデンサと、
直列接続された複数のスイッチング素子と、少なくとも一つのフライングキャパシタを含み、前記直列接続された複数のスイッチング素子の両端に前記高圧側直流電源が接続され、前記直列接続された複数のスイッチング素子を構成する一部の複数のスイッチング素子の両端に前記低圧側直流電源が接続される、フライングキャパシタ部と、
前記低圧側コンデンサの両端と、前記一部の複数のスイッチング素子の両端間の経路に挿入される少なくとも一つのリアクトルと、
前記高圧側コンデンサと前記高圧側直流電源間の経路に挿入されるスイッチ回路と、
前記直列接続された複数のスイッチング素子とそれぞれ並列接続された複数の抵抗と、
前記直列接続された複数のスイッチング素子と、前記スイッチ回路を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、本DC/DC変換装置の起動時において、
前記スイッチ回路をオフ状態に制御するとともに、前記低圧側直流電源から前記低圧側コンデンサ、前記高圧側コンデンサ、及び前記少なくとも一つのフライングキャパシタが充電されるように、前記直列接続された複数のスイッチング素子を制御し、
前記高圧側コンデンサの電圧が前記低圧側直流電源の電圧に対応する電圧まで上昇した後、前記高圧側コンデンサの電圧がさらに上昇されるように、前記直列接続された複数のスイッチング素子を制御し、
前記高圧側コンデンサの電圧が前記高圧側直流電源の電圧に対応する電圧まで上昇した後、前記スイッチ回路をオン状態に制御する、
DC/DC変換装置。
【請求項2】
低圧側直流電源に並列接続される低圧側コンデンサと、
高圧側直流電源に並列接続される高圧側コンデンサと、
直列接続された複数のスイッチング素子と、少なくとも一つのフライングキャパシタを含み、前記直列接続された複数のスイッチング素子の両端に前記高圧側直流電源が接続され、前記直列接続された複数のスイッチング素子を構成する一部の複数のスイッチング素子の両端に前記低圧側直流電源が接続される、フライングキャパシタ部と、
前記低圧側コンデンサの両端と、前記一部の複数のスイッチング素子の両端間の経路に挿入される少なくとも一つのリアクトルと、
前記高圧側コンデンサと前記高圧側直流電源間の経路に挿入されるスイッチ回路と、
を備え
たDC/DC変換装置であって、
前記フライングキャパシタ部は、
前記直列接続された複数のスイッチング素子である、第1スイッチング素子、第2スイッチング素子、第3スイッチング素子、第4スイッチング素子と、第5スイッチング素子、第6スイッチング素子、第7スイッチング素子及び第8スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子と第2スイッチング素子との接続点と、第3スイッチング素子と第4スイッチング素子との接続点との間に接続された、前記少なくとも一つのフライングキャパシタの一つである第1フライングキャパシタと、
前記第5スイッチング素子と第6スイッチング素子との接続点と、第7スイッチング素子と第8スイッチング素子との接続点との間に接続された、前記少なくとも一つのフライングキャパシタの一つである第2フライングキャパシタと、を含み、
前記DC/DC変換装置は、
前記第1スイッチング素子-前記第8スイッチング素子にそれぞれ並列接続された第1抵抗-第8抵抗と、
前記第1スイッチング素子-前記第8スイッチング素子と、前記スイッチ回路を制御する制御部をさらに備え、
前記低圧側直流電源の正側端子が、前記第2スイッチング素子と前記第3スイッチング素子との間の接続点に電気的に接続され、
前記低圧側直流電源の負側端子が、前記第6スイッチング素子と前記第7スイッチング素子との間の接続点に電気的に接続され
、
前記制御部は、本DC/DC変換装置の起動時において、
前記スイッチ回路と、前記第3スイッチング素子、前記第4スイッチング素子と、前記第5スイッチング素子及び前記第6スイッチング素子をオフ状態に制御し、
前記高圧側コンデンサの電圧が前記低圧側直流電源の電圧に対応する電圧まで上昇した後、前記高圧側コンデンサの電圧がさらに上昇されるように、前記第1スイッチング素子-前記第8スイッチング素子を制御し、
前記高圧側コンデンサの電圧が前記高圧側直流電源の電圧に対応する電圧まで上昇した後、前記スイッチ回路をオン状態に制御する、
DC/DC変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第2スイッチング素子、前記第4スイッチング素子、前記第5スイッチング素子及び前記第7スイッチング素子をオン状態、並びに前記第1スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、前記第6スイッチング素子及び前記第8スイッチング素子をオフ状態に制御する第1モード、
前記第1スイッチング素子、前記第3スイッチング素子、前記第6スイッチング素子及び前記第8スイッチング素子をオン状態、並びに前記第2スイッチング素子、前記第4スイッチング素子、前記第5スイッチング素子及び前記第7スイッチング素子をオフ状態に制御する第2モード、
前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第7スイッチング素子及び前記第8スイッチング素子をオン状態、並びに前記第3スイッチング素子、前記第4スイッチング素子、前記第5スイッチング素子及び前記第6スイッチング素子をオフ状態に制御する第3モード、
前記第3スイッチング素子、前記第4スイッチング素子、前記第5スイッチング素子及び前記第6スイッチング素子をオン状態、並びに前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第7スイッチング素子及び前記第8スイッチング素子をオフ状態に制御する第4モード、の4つのモードの内、
前記第1モードと、前記第2モードと、前記第3モード又は前記第4モードとの3つのモードを使用して、前記高圧側コンデンサの電圧をさらに上昇させる、
請求項2に記載のDC/DC変換装置。
【請求項4】
前記スイッチ回路は、
ソース端子が前記高圧側コンデンサ、ドレイン端子が前記高圧側直流電源に接続される、NチャンネルMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である、
請求項1から3のいずれか1項に記載のDC/DC変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直流電力を別の電圧の直流電力に変換するDC/DC変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池、太陽電池、燃料電池などに接続されるパワーコンディショナでは、DC/DCコンバータとインバータが使用される。DC/DCコンバータとインバータは、高効率な電力変換と小型設計が望まれる。それを実現するためのDC/DCコンバータとして、リアクトルの後段に、フライングキャパシタ回路(直列接続された複数のスイッチング素子と、少なくとも一つのフライングキャパシタを含む)を接続し、リアクトルとフライングキャパシタ回路の接続点の電圧をマルチレベル化したマルチレベル電力変換装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
マルチレベル電力変換装置は、各スイッチング素子に印加される電圧を小さくでき、それによりスイッチング損失を少なくでき、高効率な電力変換を実現する。例えば、直列接続された4つのスイッチング素子と内側の2つのスイッチング素子にフライングキャパシタを接続したフライングキャパシタ回路を、直流バスに対して2つ直列に接続したマルチレベル電力変換装置では、各スイッチング素子に印加される電圧を、直流バス電圧の1/4倍まで小さくすることができる。耐圧の低いスイッチング素子は耐圧の高いスイッチング素子に対して安価であり、電力変換中の導通損失、及びスイッチング損失が少ない。
【0004】
上述した、直流バスに対して8つのスイッチング素子が直列に接続されるマルチレベル電力変換装置において、8つのスイッチング素子に対してそれぞれ並列に8つの抵抗を接続する構成が考えられる。この構成では、8つのスイッチング素子が全オフの状態でも、8つの抵抗を介して、2つのフライングキャパシタ及び出力コンデンサをプリチャージすることができる。
【0005】
プリチャージ前の状態では入力コンデンサが0Vであるため、8つのスイッチング素子の内、第3スイッチング素子-第6スイッチング素子間の電圧が0Vになる。また、2つのフライングキャパシタも0Vであるため、第2スイッチング素子-第3スイッチング素子間の電圧、及び第6スイッチング素子-第7スイッチング素子間の電圧も0Vになる。従って、プリチャージを開始すると直流バスの電圧のほとんどが、第1スイッチング素子と第8スイッチング素子の2つに印加されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、マルチレベル電力変換装置では、直流バスに対して直列に接続された複数のスイッチング素子の半数のスイッチング素子で、直流バスの電圧を分圧することを想定して各スイッチング素子の耐圧が設定されている。上述の例では、4つのスイッチング素子で、直流バスの電圧を分圧することを想定して各スイッチング素子の耐圧が設定されている。
【0008】
しかしながら、上述したプリチャージの場面では、第1スイッチング素子と第8スイッチング素子の2つのスイッチング素子で、直流バスの電圧を分圧する状態が発生する。この場合、第1スイッチング素子と第8スイッチング素子が耐圧超過になる可能性がある。
【0009】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、フライングキャパシタを安全にプリチャージすることができるDC/DC変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本開示のある態様のDC/DC変換装置は、低圧側直流電源に並列接続される低圧側コンデンサと、高圧側直流電源に並列接続される高圧側コンデンサと、直列接続された複数のスイッチング素子と、少なくとも一つのフライングキャパシタを含み、前記直列接続された複数のスイッチング素子の両端に前記高圧側直流電源が接続され、前記直列接続された複数のスイッチング素子を構成する一部の複数のスイッチング素子の両端に前記低圧側直流電源が接続される、フライングキャパシタ部と、前記低圧側コンデンサの両端と、前記一部の複数のスイッチング素子の両端間の経路に挿入される少なくとも一つのリアクトルと、前記高圧側コンデンサと前記高圧側直流電源間の経路に挿入されるスイッチ回路と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、フライングキャパシタを安全にプリチャージすることができるDC/DC変換装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態に係るDC/DC変換装置の基本構成を説明するための図である。
【
図2】
図1に示したDC/DC変換装置の第1スイッチング素子-第8スイッチング素子のスイッチングパターンをまとめた図である。
【
図3】
図3(a)-(d)は、昇圧動作時の各スイッチングパターンの電流経路を示す回路図である。
【
図4】
図4(a)-(d)は、降圧動作時の各スイッチングパターンの電流経路を示す回路図である。
【
図5】昇圧比が2倍以上の場合の第1スイッチング素子-第8スイッチング素子のスイッチングパターンの一例を示すタイミングチャートである。
【
図6】昇圧比が2倍未満の場合の第1スイッチング素子-第8スイッチング素子のスイッチングパターンの一例を示すタイミングチャートである。
【
図7】実施の形態に係る、ソフトプリチャージ機能付きのDC/DC変換装置の構成を説明するための図である。
【
図8】
図7に示したDC/DC変換装置の起動時の動作を説明するための図である。
【
図9】
図9(a)-(f)は、スイッチ回路の構成例を示す図である。
【
図10】実施の形態に係る、ソフトプリチャージ機能付きのDC/DC変換装置の別の構成を説明するための図である。
【
図11】変形例に係る、ソフトプリチャージ機能付きのDC/DC変換装置の構成を説明するための図である。
【
図12】
図12(a)-(c)は、フライングキャパシタ回路の構成例を示す図である。
【
図13】N(Nは自然数)段のフライングキャパシタ回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、実施の形態に係るDC/DC変換装置3の基本構成を説明するための図である。実施の形態に係るDC/DC変換装置3は、双方向の昇降圧DC/DCコンバータである。DC/DC変換装置3は、低圧側直流電源1から供給される直流電力を昇圧して高圧側直流電源2に供給することができる。またDC/DC変換装置3は、高圧側直流電源2から供給される直流電力を降圧して低圧側直流電源1に供給することができる。
【0014】
低圧側直流電源1は例えば、蓄電池、電気二重層コンデンサなどが該当する。高圧側直流電源2は例えば、双方向DC/ACインバータが接続された直流バスなどが該当する。当該双方向DC/ACインバータの交流側は、蓄電システムの用途では商用電力系統と交流負荷に接続される。電気自動車の用途ではモータ(回生機能あり)に接続される。蓄電システムの用途では当該直流バスに、太陽電池用のDC/DCコンバータや、他の蓄電池用のDC/DCコンバータがさらに接続されていてもよい。
【0015】
DC/DC変換装置3は、低圧側コンデンサC3、第1リアクトルL1、第2リアクトルL2、フライングキャパシタ部30、高圧側コンデンサC4、電圧センサ41、及び制御部40を含む。
【0016】
低圧側直流電源1と並列に入出力用の低圧側コンデンサC3が接続される。高圧側直流電源2と並列に入出力用の高圧側コンデンサC4が接続される。高圧側直流電源2の両端のそれぞれに接続された正側の直流バスと負側の直流バスの間に、フライングキャパシタ部30が接続される。
図1に示す回路構成では、フライングキャパシタ部30は、上側の第1フライングキャパシタ回路と下側の第2フライングキャパシタ回路が直列に接続されて構成される。第1リアクトルL1は、低圧側直流電源1の正側端子と第1フライングキャパシタ回路の中点間に接続される。第2リアクトルL2は、低圧側直流電源1の負側端子と第2フライングキャパシタ回路の中点間に接続される。
【0017】
第1リアクトルL1と第2リアクトルL2は、コアを共通にした磁気結合リアクトルで構成されてもよい。その場合、通電時に、第1リアクトルL1と第2リアクトルL2の磁束を相互に強め合うことができる。なお、第1リアクトルL1と第2リアクトルL2の一方のみが接続される構成でもよい。
【0018】
上側の第1フライングキャパシタ回路は、第1スイッチング素子S1、第2スイッチング素子S2、第3スイッチング素子S3、第4スイッチング素子S4及び第1フライングキャパシタC1を含む。下側の第2フライングキャパシタ回路は、第5スイッチング素子S5、第6スイッチング素子S6、第7スイッチング素子S7、第8スイッチング素子S8及び第2フライングキャパシタC2を含む。第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8は、正側の直流バスと負側の直流バスの間に直列に接続される。
【0019】
第1フライングキャパシタC1は、第1スイッチング素子S1と第2スイッチング素子S2との接続点と、第3スイッチング素子S3と第4スイッチング素子S4との接続点との間に接続され、第1スイッチング素子S1-第4スイッチング素子S4により充放電される。第2フライングキャパシタC2は、第5スイッチング素子S5と第6スイッチング素子S6との接続点と、第7スイッチング素子S7と第8スイッチング素子S8との接続点との間に接続され、第5スイッチング素子S5-第8スイッチング素子S8により充放電される。
【0020】
第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8とそれぞれ並列に、第1抵抗R1-第8抵抗R8が接続される。従って、第1フライングキャパシタ回路と第2フライングキャパシタ回路との間の電圧(第4スイッチング素子S4と第5スイッチング素子S5との間の電圧)は、第1抵抗R1-第8抵抗R8により高圧側直流電源2の電圧Eの1/2に分圧された電圧に維持される。
【0021】
第1フライングキャパシタ回路の中点には、第1スイッチング素子S1の上側端子に印加される高圧側直流電源2の電圧E[V]と、第4スイッチング素子S4の下側端子に印加される1/2E[V]の間の範囲の電位が生成される。第1フライングキャパシタC1は、第1抵抗R1-第8抵抗R8により1/4E[V]の電圧になるように初期充電(プリチャージ)され、1/4E[V]の電圧を中心として充放電が繰り返される。従って、第1フライングキャパシタ回路の中点には、概ね、E[V]、3/4E[V]、1/2E[V]の3レベルの電位が生成される。
【0022】
第2フライングキャパシタ回路の中点には、第5スイッチング素子S5の上側端子に印加される1/2E[V]と、第8スイッチング素子S8の下側端子に印加される0[V]の間の範囲の電位が生成される。第2フライングキャパシタC2は、第1抵抗R1-第8抵抗R8により1/4E[V]の電圧になるように初期充電(プリチャージ)され、1/4E[V]の電圧を中心として充放電が繰り返される。従って、第2フライングキャパシタ回路の中点には、概ね、1/2E[V]、1/4E[V]、0[V]の3レベルの電位が生成される。
【0023】
第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8にはそれぞれ、第1ダイオードD1-第8ダイオードD8が逆並列に形成/接続される。第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8には、低圧側直流電源1及び高圧側直流電源2の電圧より低い耐圧のスイッチング素子が使用される。以下、本実施の形態では第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8に、150V耐圧のNチャネルMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を使用する例を想定する。NチャネルMOSFETでは、ソースからドレイン方向に寄生ダイオードが形成される。
【0024】
なお、第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8にIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やバイポーラトランジスタを使用してもよい。その場合、第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8に寄生ダイオードは形成されず、第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8にそれぞれ外付けダイオードが逆並列に接続される。なお、一般的なシリコン(Si)半導体に限らず、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)、ダイヤモンド(C)等を使用したワイドバンドギャップ半導体を用いてもよい。
【0025】
電圧センサ41は、高圧側コンデンサC4の両端電圧を検出して、検出した電圧値を制御部40に出力する。なお、
図1には示していないが、低圧側コンデンサC3の両端電圧を検出する電圧センサ、第1フライングキャパシタC1の電圧を検出する電圧センサ、第2フライングキャパシタC2の電圧を検出する電圧センサ、及び第1リアクトルL1に流れる電流を検出する電流センサが設けられ、それぞれの計測値が制御部40に出力される。なお、第1リアクトルL1に流れる電流ではなく、第2リアクトルL2に流れる電流を検出してもよい。
【0026】
制御部40は、第1フライングキャパシタ回路及び第2フライングキャパシタ回路を制御して、低圧側直流電源1から高圧側直流電源2へ昇圧動作で直流電力を伝送することができる。また高圧側直流電源2から低圧側直流電源1へ降圧動作で直流電力を伝送することができる。より具体的には制御部40は、第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8のゲート端子に駆動信号(PWM(Pulse Width Modulation)信号)を供給することにより、第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8をオン/オフ制御して、昇圧動作または降圧動作で、双方向に電力を伝送することができる。
【0027】
制御部40の構成は、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、又はハードウェア資源のみにより実現できる。ハードウェア資源としてアナログ素子、マイクロコンピュータ、DSP、ROM、RAM、FPGA、ASIC、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてファームウェア等のプログラムを利用できる。
【0028】
図2は、
図1に示したDC/DC変換装置3の第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8のスイッチングパターンをまとめた図である。
図2に示すスイッチングパターンでは、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8の組と、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5の組とが相補関係となる。また第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7の組と、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6の組とが相補関係となる。
【0029】
制御部40は、4つのモードを使用して昇圧動作または降圧動作を実行する。
モードaでは制御部40は、第2スイッチング素子S2、第4スイッチング素子S4、第5スイッチング素子S5及び第7スイッチング素子S7をオン状態、並びに第1スイッチング素子S1、第3スイッチング素子S3、第6スイッチング素子S6及び第8スイッチング素子S8をオフ状態に制御する。モードaでは、第1フライングキャパシタ回路の中点と第2フライングキャパシタ回路の中点間の電圧(即ち、フライングキャパシタ部30の低圧側の入出力電圧VL)は1/2Eとなる。
【0030】
モードbでは制御部40は、第1スイッチング素子S1、第3スイッチング素子S3、第6スイッチング素子S6及び第8スイッチング素子S8をオン状態、並びに第2スイッチング素子S2、第4スイッチング素子S4、第5スイッチング素子S5及び第7スイッチング素子S7をオフ状態に制御する。モードbでは、フライングキャパシタ部30の低圧側の入出力電圧VLは1/2Eとなる。
【0031】
モードcでは制御部40は、第1スイッチング素子S1、第2スイッチング素子S2、第7スイッチング素子S7及び第8スイッチング素子S8をオン状態、並びに第3スイッチング素子S3、第4スイッチング素子S4、第5スイッチング素子S5及び第6スイッチング素子S6をオフ状態に制御する。モードcでは、フライングキャパシタ部30の低圧側の入出力電圧VLはEとなる。
【0032】
モードdでは制御部40は、第3スイッチング素子S3、第4スイッチング素子S4、第5スイッチング素子S5及び第6スイッチング素子S6をオン状態、並びに第1スイッチング素子S1、第2スイッチング素子S2、第7スイッチング素子S7及び第8スイッチング素子S8をオフ状態に制御する。モードdでは、フライングキャパシタ部30の低圧側の入出力電圧VLは0となる。
【0033】
図3(a)-(d)は、昇圧動作時の各スイッチングパターンの電流経路を示す回路図である。
図4(a)-(d)は、降圧動作時の各スイッチングパターンの電流経路を示す回路図である。なお、図面の簡略化のためMOSFETを単純なスイッチ記号で描いている。
【0034】
図3(a)は昇圧動作時のモードaの電流経路を示し、
図3(b)は昇圧動作時のモードbの電流経路を示し、
図3(c)は昇圧動作時のモードcの電流経路を示し、
図3(d)は昇圧動作時のモードdの電流経路を示している。同様に、
図4(a)は降圧動作時のモードaの電流経路を示し、
図4(b)は降圧動作時のモードbの電流経路を示し、
図4(c)は降圧動作時のモードcの電流経路を示し、
図4(d)は降圧動作時のモードdの電流経路を示している。
【0035】
昇圧動作時と降圧動作時とで電流の向きが反対になる。モードaにおいて、
図3(a)に示すように昇圧動作時は第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2が充電動作となるが、
図4(a)に示すように降圧動作時は第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2が放電動作となる。モードbにおいて、
図3(b)に示すように昇圧動作時は第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2が放電動作となるが、
図4(b)に示すように降圧動作時は第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2が充電動作となる。
【0036】
制御部40は低圧側直流電源1から高圧側直流電源2へ昇圧動作で電力を伝送する場合、正方向の電流指令値を設定し、第1リアクトルL1又は第2リアクトルL2に流れる電流の計測値が、当該正方向の電流指令値を維持するように第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8のデューティ比(オン時間)を制御する。反対に、制御部40は高圧側直流電源2から低圧側直流電源1へ降圧動作で電力を伝送する場合、負方向の電流指令値を設定し、第1リアクトルL1又は第2リアクトルL2に流れる電流の計測値が、当該負方向の電流指令値を維持するように第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8のデューティ比(オン時間)を制御する。
【0037】
また制御部40は、低圧側直流電源1の電圧と高圧側直流電源2の電圧との比率が設定値より小さい場合、モードa、モードb及びモードcを使用して電力を伝送する。また制御部40は、当該比率が当該設定値より大きい場合、モードa、モードb及びモードdを使用して電力を伝送する。また制御部40は、当該比率が当該設定値と一致する場合、モードa及びモードbを使用して電力を伝送する。
【0038】
上記設定値は、第1フライングキャパシタC1の電圧と第2フライングキャパシタC2の電圧の合計電圧1/2Eと、高圧側直流電源2の電圧Eとの比率に応じて設定される。本実施の形態では上記設定値は2に設定される。
【0039】
制御部40は、電流指令値と、第1リアクトルL1又は第2リアクトルL2に流れる電流の計測値とが一致し、かつ第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2の電圧がそれぞれ1/4Eになるようにデューティ比を生成する。具体的には制御部40は、第1リアクトルL1又は第2リアクトルL2に流れる電流の計測値が電流指令値に対して小さいほどデューティ比を上昇させ、大きいほどデューティ比を低下させる。
【0040】
図5は、昇圧比が2倍以上の場合の第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8のスイッチングパターンの一例を示すタイミングチャートである。
図6は、昇圧比が2倍未満の場合の第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8のスイッチングパターンの一例を示すタイミングチャートである。
図5及び
図6に示す制御例は、ダブルキャリア駆動方式を使用した制御例を示している。ダブルキャリア駆動方式では、180°位相がずれた2つのキャリア信号(
図5及び
図6では三角波)を使用する。デューティ比dutyは2つのキャリア信号と比較される閾値となる。昇圧比が2倍以上の場合、デューティ比dutyは0.5~1.0の範囲の値をとり、昇圧比が2倍未満の場合、デューティ比dutyは0.0~0.5の範囲の値をとる。
【0041】
太線のキャリア信号とデューティ比dutyの比較結果により、第1スイッチング素子S1及び第8スイッチング素子S8に供給する第1ゲート信号と、第4スイッチング素子S4及び第5スイッチング素子S5に供給する第4ゲート信号を生成する。具体的には太線のキャリア信号がデューティ比dutyより高い領域では、第1ゲート信号がオン及び第4ゲート信号がオフになる。太線のキャリア信号がデューティ比dutyより低い領域では、第1ゲート信号がオフ及び第4ゲート信号がオンになる。第1ゲート信号と第4ゲート信号は相補関係にある。なお、第1ゲート信号と第4ゲート信号のオン/オフが切り替わる際に、第1ゲート信号と第4ゲート信号が同時にオフになるデッドタイム期間が設定されている。
【0042】
細線のキャリア信号とデューティ比dutyの比較結果により、第2スイッチング素子S2及び第7スイッチング素子S7に供給する第2ゲート信号と、第3スイッチング素子S3及び第6スイッチング素子S6に供給する第3ゲート信号を生成する。具体的には細線のキャリア信号がデューティ比dutyより高い領域では、第2ゲート信号がオン及び第3ゲート信号がオフになる。細線のキャリア信号がデューティ比dutyより低い領域では、第2ゲート信号がオフ及び第3ゲート信号がオンになる。第2ゲート信号と第3ゲート信号は相補関係にある。なお、第2ゲート信号と第3ゲート信号のオン/オフが切り替わる際に、第2ゲート信号と第3ゲート信号が同時にオフになるデッドタイム期間が設定されている。
【0043】
昇圧比が2倍以上の場合、制御部40はモードaとモードbを交互に切り替え、両者を切り替える間にモードdを挿入する。即ち制御部40は、モードa→モードd→モードb→モードd→モードa→モードd→モードb→モードd・・・の順にモードを切り替える。デューティ比dutyが変化しない間は、モードaとモードbの期間が等しくなり、第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2の電圧がそれぞれ1/4Eに保たれる。昇圧比が2倍以上の場合、デューティ比dutyが上昇するほど、モードa及びモードbの期間に対するモードdの期間が長くなり、伝達されるエネルギー量が増大する。
【0044】
昇圧比が2倍未満の場合、制御部40はモードaとモードbを交互に切り替え、両者を切り替える間にモードcを挿入する。即ち制御部40は、モードa→モードc→モードb→モードc→モードa→モードc→モードb→モードc・・・の順にモードを切り替える。デューティ比dutyが変化しない間は、モードaとモードbの期間が等しくなり、第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2の電圧がそれぞれ1/4Eに保たれる。昇圧比が2倍未満の場合、デューティ比dutyが上昇するほど、モードa及びモードbの期間に対するモードcの期間が短くなり、伝達されるエネルギー量が増大する。
【0045】
昇圧比が理想的に2倍を維持し、第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2の電圧がそれぞれ理想的に1/4Eを維持すれば、デューティ比dutyは0.5を維持する。
【0046】
制御部40は、第1フライングキャパシタC1の電圧と第2フライングキャパシタC2の電圧の合計電圧が1/2Eを下回ると、モードa及びモードbの内、充電する方のモードの時間を増やして当該合計電圧を1/2Eに近づける。反対に制御部40は、第1フライングキャパシタC1の電圧と第2フライングキャパシタC2の電圧の合計電圧が1/2Eを上回ると、モードa及びモードbの内、放電する方のモードの時間を増やして当該合計電圧を1/2Eに近づける。
【0047】
なお制御部40は、第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2を使用せずに、モードcとモードdを交互に切り替えることにより、DC/DC変換装置3を通常の昇圧チョッパの動作をさせることも可能である。この場合、昇圧比による動作モードの切り替えは発生しない。
【0048】
図1に示した回路構成において、高圧側直流電源2から第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2をプリチャージすると、高圧側直流電源2の電圧Eが第1スイッチング素子S1と第8スイッチング素子S8の2つに印加され、第1スイッチング素子S1と第8スイッチング素子S8が耐圧超過に陥る可能性がある。低圧側コンデンサC3に電荷がチャージされていない状態(低圧側コンデンサC3の両端電圧が0Vの状態)では、低圧側コンデンサC3に対して並列接続されている、直列接続された第3スイッチング素子S3-第6スイッチング素子S6の両端電圧も0Vになる。
【0049】
第1フライングキャパシタC1に電荷がチャージされていない状態(第1フライングキャパシタC1の両端電圧が0Vの状態)では、第1フライングキャパシタC1に対して並列接続されている、直列接続された第2スイッチング素子S2-第3スイッチング素子S3の両端電圧も0Vになる。同様に、第2フライングキャパシタC2に電荷がチャージされていない状態(第2フライングキャパシタC2の両端電圧が0Vの状態)では、第2フライングキャパシタC2に対して並列接続されている、直列接続された第6スイッチング素子S6-第7スイッチング素子S7の両端電圧も0Vになる。
【0050】
従って、直列接続された第2スイッチング素子S2-第7スイッチング素子S7の両端電圧が0Vになり、高圧側直流電源2の電圧Eが第1スイッチング素子S1と第8スイッチング素子S8の2つに印加される状態が発生する。上述したように本実施の形態では、第1スイッチング素子S1と第8スイッチング素子S8に150V耐圧のMOSFEを使用している。従って、高圧側直流電源2の電圧Eが300Vを超えると、第1スイッチング素子S1と第8スイッチング素子S8に耐圧超過が発生する。
【0051】
以下、第1スイッチング素子S1と第8スイッチング素子S8に耐圧超過が発生することを防止しつつ、第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2を安全にプリチャージする機能を有するDC/DC変換装置3を説明する。
【0052】
図7は、実施の形態に係る、ソフトプリチャージ機能付きのDC/DC変換装置3の構成を説明するための図である。
図7に示すDC/DC変換装置3は、
図1に示したDC/DC変換装置3に対して、スイッチ回路50が追加された構成である。スイッチ回路50は、高圧側コンデンサC4と高圧側直流電源2との間の経路に挿入され、高圧側コンデンサC4と高圧側直流電源2との間を電気的に遮断することができる。
【0053】
図7に示す例では、スイッチ回路50が正側の直流バスに挿入されているが、負側の直流バスに挿入されてもよいし、その両方に挿入されてもよい。
図7に示す例では、スイッチ回路50として第9スイッチング素子S9が使用されている。より具体的には、第9スイッチング素子S9として、ソース端子が高圧側コンデンサC4、ドレイン端子が高圧側直流電源2に接続されたNチャンネルMOSFETが使用されている。
【0054】
図8は、
図7に示したDC/DC変換装置3の起動時の動作を説明するための図である。DC/DC変換装置3の起動時において、制御部40は3つのフェーズで、第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2をプリチャージする。
【0055】
(1)第1フェーズでは、制御部40はスイッチ回路50をオフ状態に制御するとともに、低圧側直流電源1から低圧側コンデンサC3、高圧側コンデンサC4、第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2が充電されるように、第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8を制御する。
【0056】
具体的には、制御部40は少なくとも第3スイッチング素子S3-第6スイッチング素子S6をオフ状態に制御する。制御部40は第1スイッチング素子S1、第2スイッチング素子S2、第7スイッチング素子S7及び第8スイッチング素子S8をオン状態に制御してもよいし、オフ状態に制御してもよい。オン状態に制御する場合は、第1スイッチング素子S1、第2スイッチング素子S2、第7スイッチング素子S7及び第8スイッチング素子S8を経由して低圧側直流電源1から高圧側コンデンサC4が充電される。オフ状態に制御する場合は、第1ダイオードD1、第2ダイオードD2、第3ダイオードD3及び第4ダイオードD4を経由して低圧側直流電源1から高圧側コンデンサC4が充電される。
【0057】
低圧側コンデンサC3と高圧側コンデンサC4の電圧は、低圧側直流電源1の電圧まで上昇する。高圧側コンデンサC4と並列に、第1抵抗R1-第8抵抗R8が直列に接続されているため、第1フライングキャパシタC1と第2フライングキャパシタC2の電圧はそれぞれ、高圧側コンデンサC4の電圧(=低圧側直流電源1の電圧)の1/4の電圧まで上昇する。
【0058】
高圧側コンデンサC4の電圧が低圧側直流電源1の電圧に対応する電圧まで上昇すると、第2フェーズに移行することができる。なお、起動時から設定時間後に第2フェーズに移行するシーケンスでもよい。
【0059】
(2)第2フェーズでは、制御部40は高圧側コンデンサC4の電圧が昇圧されるように、第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8を制御する。例えば、制御部40は、
図6に示した昇圧比が2倍未満の場合の第1スイッチング素子S1-第8スイッチング素子S8のスイッチングパターンに従い、高圧側コンデンサC4の電圧を徐々に昇圧させる。
【0060】
高圧側コンデンサC4の電圧が高圧側直流電源2の電圧Eに対応する電圧まで上昇すると、第3フェーズに移行することができる。第3フェーズに移行する条件として、必ずしも高圧側コンデンサC4の電圧と高圧側直流電源2の電圧Eが一致している必要はなく、高圧側コンデンサC4の電圧と高圧側直流電源2の電圧Eが近似的に所定の範囲内に収まっていればよい。なお、
図7に示した回路構成では、スイッチ回路50を構成する第9スイッチング素子S9の第9ダイオードD9により、高圧側コンデンサC4の電圧が高圧側直流電源2の電圧Eより高くなると、高圧側コンデンサC4側から高圧側直流電源2側に電流が流れ、高圧側コンデンサC4の電圧が高圧側直流電源2の電圧Eにクランプされる。
【0061】
高圧側コンデンサC4の電圧が高圧側直流電源2の電圧Eまで上昇した状態では、第1フライングキャパシタC1と第2フライングキャパシタC2の電圧はそれぞれ、高圧側直流電源2の電圧Eの1/4の電圧まで上昇した状態になる。
【0062】
(3)第3フェーズでは、制御部40はスイッチ回路50をターンオンする。これにより、フライングキャパシタ部30と高圧側直流電源2間が導通する。導通した段階で、第1フライングキャパシタC1と第2フライングキャパシタC2は既に1/4Eにプリチャージされているため、第1スイッチング素子S1と第8スイッチング素子S8に耐圧超過は発生しない。
【0063】
図9(a)-(f)は、スイッチ回路50の構成例を示す図である。
図7に示した回路構成ではスイッチ回路50として、ソース端子が高圧側コンデンサC4、ドレイン端子が高圧側直流電源2に接続されるNチャンネルMOSFET(第9スイッチング素子S9)を使用した。上述したように、この構成例では、高圧側コンデンサC4の電圧が高圧側直流電源2の電圧Eより高くならないように、高圧側コンデンサC4の電圧をクランプすることができる。
【0064】
図9(a)は、スイッチ回路50を双方向スイッチで構成する例である。双方向スイッチは、2つのNチャンネルMOSFET(スイッチング素子S9a、S9b)が逆向きに直列接続されて構成される。一方のNチャンネルMOSFET(スイッチング素子S9a)のソース端子が高圧側コンデンサC4に接続され、他方のNチャンネルMOSFET(スイッチング素子S9b)のソース端子が高圧側直流電源2に接続される。
【0065】
2つのNチャンネルMOSFET(スイッチング素子S9a、S9b)のドレイン端子同士が接続される。この構成例では、一方のNチャンネルMOSFET(スイッチング素子S9a)の寄生ダイオードD9aのカソードと、他方のNチャンネルMOSFET(スイッチング素子S9b)の寄生ダイオードD9bのカソードが向き合う構成になる。従って、双方向スイッチがオフ状態において、寄生ダイオードを経由して、高圧側コンデンサC4から高圧側直流電源2へ電流が流れること、及び高圧側直流電源2から高圧側コンデンサC4へ電流が流れることを阻止することができる。
【0066】
図9(b)は、スイッチ回路50をリレーRY1で構成する例である。リレーRY1を使用する場合、寄生ダイオードが形成されない。したがって、リレーRY1がオフ状態では、いずれの方向からの電流も阻止することができる。
【0067】
高圧側直流電源2がインバータ(不図示)を介して系統電源に接続されている場合、高圧側直流電源2はリップルノイズの影響を受ける。このリップルノイズの影響により、高圧側直流電源2の電圧Eが変動すると、高圧側コンデンサC4の電圧と高圧側直流電源2の電圧との大小関係が変動し、高圧側コンデンサC4と高圧側直流電源2間で電流の入出力が発生する可能性がある。
図9(a)に示した双方向スイッチや
図9(b)に示したリレーRY1を使用すれば、この電流の入出力を阻止することができる。
【0068】
図9(c)は、スイッチ回路50を、双方向スイッチ、第10スイッチング素子S10及び制限抵抗R9で構成する例である。第10スイッチング素子S10と制限抵抗R9は直列に接続される。直列接続された第10スイッチング素子S10と制限抵抗R9は、
図9(a)に説明した双方向スイッチと並列に接続される。第10スイッチング素子S10は、ソース端子が高圧側コンデンサC4、ドレイン端子が制限抵抗R9を介して高圧側直流電源2に接続されるNチャンネルMOSFETである。
【0069】
図9(c)に示すスイッチ回路50は突入電流防止機能を備える。即ち、双方向スイッチがオフ状態では、制限抵抗R9を介して電流が流れる。制御部40は、高圧側コンデンサC4と高圧側直流電源2を導通させる際、先に第10スイッチング素子S10をターンオンし、所定時間経過後に第10スイッチング素子S10をターンオフし、双方向スイッチをターンオンする。これにより、高圧側コンデンサC4と高圧側直流電源2間を導通させる際、仮に、両者の電圧に大きな差が発生している場合でも、突入電流が発生することを防止することができる。
【0070】
また仮に、高圧側直流電源2側から高圧側コンデンサC4、第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2を充電する必要が発生した場合でも、スイッチ回路50が突入電流防止機能を有していれば、高圧側直流電源2から高圧側コンデンサC4、第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2に突入電流が流れることを防止することができる。
【0071】
また
図9(c)に示す構成例では、
図7に示したスイッチ回路50と同様に、双方向スイッチがオフ状態では、高圧側コンデンサC4の電圧が高圧側直流電源2の電圧Eより高くならないように、高圧側コンデンサC4の電圧がクランプされる。
【0072】
図9(d)に示す構成は、
図9(c)に示した構成に含まれる双方向スイッチをリレーRY1に置き換えた構成である。
図9(d)に示す構成は、
図9(c)に示した構成と同様の作用効果を有する。
【0073】
図9(e)は、スイッチ回路50を、双方向スイッチ、第10スイッチング素子S10、制限抵抗R9及び第11ダイオードD11で構成する例である。第10スイッチング素子S10、制限抵抗R9及び第11ダイオードD11は直列に接続される。直列接続された第10スイッチング素子S10、制限抵抗R9及び第11ダイオードD11は、
図9(a)に説明した双方向スイッチと並列に接続される。第10スイッチング素子S10は、ソース端子が制限抵抗R9、第11ダイオードD11を介して高圧側直流電源2に接続され、ドレイン端子が低圧側コンデンサC3に接続されるNチャンネルMOSFETである。第11ダイオードD11はアノード端子が制限抵抗R9に接続され、カソード端子が高圧側直流電源2に接続される。
【0074】
図9(e)に示すスイッチ回路50は突入電流防止機能を備え、高圧側コンデンサC4と高圧側直流電源2間を導通させる際、突入電流が発生することを防止することができる。また、双方向スイッチがオフ状態において、高圧側直流電源2の電圧Eが変動することによる、高圧側コンデンサC4と高圧側直流電源2間の電流の入出力を阻止することができる。
【0075】
図9(f)に示す構成は、
図9(e)に示した構成に含まれる双方向スイッチをリレーRY1に置き換えた構成である。
図9(f)に示す構成は、
図9(e)に示した構成と同様の作用効果を有する。
【0076】
図10は、実施の形態に係る、ソフトプリチャージ機能付きのDC/DC変換装置3の別の構成を説明するための図である。
図10に示すDC/DC変換装置3は、
図7に示したDC/DC変換装置3に対して、突入電流防止機能を有する別のスイッチ回路50aが追加された構成である。スイッチ回路50aは、低圧側直流電源1と低圧側コンデンサC3との間の経路に挿入され、低圧側直流電源1と低圧側コンデンサC3との間を電気的に遮断することができる。
【0077】
図10に示す例では、スイッチ回路50aとして
図9(f)に示したスイッチ回路50が使用されている。なお、
図9(e)に示したスイッチ回路50が使用されてもよい。制御部40は、DC/DC変換装置3の起動時において、先に第10スイッチング素子S10をターンオンし、所定時間経過後に第10スイッチング素子S10をターンオフし、リレーRY1をターンオンする。これにより、低圧側直流電源1から、低圧側コンデンサC3、高圧側コンデンサC4、第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2に突入電流が流れることを防止することができる。
【0078】
以上説明したように本実施の形態によれば、DC/DC変換装置3を高圧側直流電源2から遮断し、低圧側直流電源1から低圧側コンデンサC3、高圧側コンデンサC4、第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2を充電する。その後、高圧側コンデンサC4、第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2の電圧を徐々に上昇させていくことにより、高圧側コンデンサC4、第1フライングキャパシタC1及び第2フライングキャパシタC2を安全にプリチャージすることができる。即ち、高圧側直流電源2の電圧により、第1スイッチング素子S1と第8スイッチング素子S8が耐圧超過に陥ることを防止することができる。また、プリチャージの際、突入電流が流れることを抑制することができる。
【0079】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0080】
上述した実施の形態では、フライングキャパシタ部30として、3レベル出力のフライングキャパシタ回路を直列に2つ接続した構成を説明した。この点、フライングキャパシタ部30は、直列接続された複数のスイッチング素子と、少なくとも一つのフライングキャパシタを含み、当該複数のスイッチング素子の両端に高圧側直流電源2が接続され、当該複数のスイッチング素子を構成する一部の複数のスイッチング素子の両端に低圧側直流電源1が接続される構成であれば、上述した実施の形態の構成に限定されない。
【0081】
図11は、変形例に係る、ソフトプリチャージ機能付きのDC/DC変換装置3の構成を説明するための図である。変形例ではフライングキャパシタ部30は、3レベル出力のフライングキャパシタ回路を一つ有する。直列接続された第1スイッチング素子S1-第4スイッチング素子S4の両端に高圧側直流電源2が接続される。
【0082】
低圧側直流電源1の正側端子は、第1リアクトルL1を介して、第2スイッチング素子S2と第3スイッチング素子S3との間の接続点に接続される。低圧側直流電源1の負側端子は、第2リアクトルL2を介して、第4スイッチング素子S4の下側の端子に接続される。
【0083】
図11に示した回路構成において、高圧側直流電源2から第1フライングキャパシタC1をプリチャージすると、高圧側直流電源2の電圧Eが第1スイッチング素子S1に印加され、第1スイッチング素子S1が耐圧超過に陥る可能性がある。低圧側コンデンサC3に電荷がチャージされていない状態(低圧側コンデンサC3の両端電圧が0Vの状態)では、低圧側コンデンサC3に対して並列接続されている、直列接続された第3スイッチング素子S3-第4スイッチング素子S4の両端電圧も0Vになる。第1フライングキャパシタC1に電荷がチャージされていない状態(第1フライングキャパシタC1の両端電圧が0Vの状態)では、第1フライングキャパシタC1に対して並列接続されている、直列接続された第2スイッチング素子S2-第3スイッチング素子S3の両端電圧も0Vになる。
【0084】
従って、直列接続された第2スイッチング素子S2-第4スイッチング素子S4の両端電圧が0Vになり、高圧側直流電源2の電圧Eが第1スイッチング素子S1の一つに印加される状態が発生する。これに対して、上述したソフトプリチャージ機能で第1フライングキャパシタC1をプリチャージすれば、第1スイッチング素子S1が耐圧超過に陥ることを防止することができる。
【0085】
上記実施の形態では、フライングキャパシタ部30を構成する各フライングキャパシタ回路の構成例として、直列接続された4つのスイッチング素子と、1つのフライングキャパシタを使用する1段のフライングキャパシタ回路を例に挙げた。この点、さらに段数を増やしたフライングキャパシタ回路を使用することもできる。
【0086】
図12(a)-(c)は、フライングキャパシタ回路の構成例を示す図である。
図12(a)は1段のフライングキャパシタ回路を示す。
図12(a)に示すフライングキャパシタ回路は、上記実施の形態で説明した回路構成と同様である。
【0087】
図12(b)は2段のフライングキャパシタ回路を示す。2段のフライングキャパシタ回路では、直列接続された6つのスイッチング素子S12、S1、S2、S3、S4、S42と、2つのフライングキャパシタC11、C12を備える。1番内側のフライングキャパシタC11は、2つのスイッチング素子S2、S3に対して並列に接続され、1/6Eの電圧を維持するように制御される。内側から2番目のフライングキャパシタC12は、4つのスイッチング素子S1、S2、S3、S4に対して並列に接続され、1/6Eの電圧を維持するように制御される。
【0088】
図12(c)は3段のフライングキャパシタ回路を示す。3段のフライングキャパシタ回路では、直列接続された6つのスイッチング素子S13、S12、S1、S2、S3、S4、S42、S43と、3つのフライングキャパシタC11、C12、C13を備える。1番内側のフライングキャパシタC11は、2つのスイッチング素子S2、S3に対して並列に接続され、1/8Eの電圧を維持するように制御される。内側から2番目のフライングキャパシタC12は、4つのスイッチング素子S1、S2、S3、S4に対して並列に接続され、2/8Eの電圧を維持するように制御される。内側から3番目のフライングキャパシタC13は、6つのスイッチング素子S12、S1、S2、S3、S4、S42に対して並列に接続され、3/8Eの電圧を維持するように制御される。
【0089】
図13は、N(Nは自然数)段のフライングキャパシタ回路を示す。N段のフライングキャパシタ回路では、直列接続された(2N+2)個のスイッチング素子S1n、・・・、S13、S12、S1、S2、S3、S4、S42、S43、・・・、S4nと、N個のフライングキャパシタC11、C12、C13、・・・、C1nを備える。1番内側のフライングキャパシタC11は、2つのスイッチング素子S2、S3に対して並列に接続され、1/(2N+2)Eの電圧を維持するように制御される。内側から2番目のフライングキャパシタC12は、4つのスイッチング素子S1、S2、S3、S4に対して並列に接続され、2/(2N+2)Eの電圧を維持するように制御される。内側から3番目のフライングキャパシタC13は、6つのスイッチング素子S12、S1、S2、S3、S4、S42に対して並列に接続され、3/(2N+2)Eの電圧を維持するように制御される。最も外側のフライングキャパシタC1nは、2N個のS1(n-1)、・・・、S13、S12、S1、S2、S3、S4、S42、S43、・・・、S4(n-1)に対して並列に接続され、N/(2N+2)Eの電圧を維持するように制御される。
【0090】
図7、
図10に示した第1フライングキャパシタ回路及び第2フライングキャパシタ回路では、
図12(a)に示した1段のフライングキャパシタ回路を使用している。1段のフライングキャパシタ回路を使用すると、第1フライングキャパシタ回路の中点と第2フライングキャパシタ回路の中点との間に3レベル(E、1/2E、0)の電圧を発生させることが可能となる。
図12(b)に示した2段のフライングキャパシタ回路を使用すると、第1フライングキャパシタ回路の中点と第2フライングキャパシタ回路の中点との間に5レベル(E、2/3E、1/2E、1/3E、0)の電圧を発生させることが可能となる。
図12(c)に示した3段のフライングキャパシタ回路を使用すると、第1フライングキャパシタ回路の中点と第2フライングキャパシタ回路の中点との間に7レベル(E、3/4E、5/8E、1/2E、3/8E、1/4E、0)の電圧を発生させることが可能となる。
図13に示したN段のフライングキャパシタ回路を使用すると、第1フライングキャパシタ回路の中点と第2フライングキャパシタ回路の中点との間に(2N+1)レベルの電圧を発生させることが可能となる。
【0091】
フライングキャパシタ回路の段数を増やすほど、安価で耐圧が低いスイッチング素子を使用することができる一方、使用するスイッチング素子の数が増大する。従って設計者は、トータルのコストとトータルの変換効率を考慮して、フライングキャパシタ回路の最適な段数を決定すればよい。また、高圧側直流部の電圧が1000Vを超えるアプリケーションや、10000Vを超えるアプリケーションでは、各スイッチング素子の耐圧を下げるために、フライングキャパシタ回路の段数を増やすことが有効である。
【0092】
フライングキャパシタ回路の段数がいずれの場合であっても、上述したソフトプリチャージ機能でフライングキャパシタをプリチャージすることにより、フライングキャパシタ部30の両端のスイッチング素子が耐圧超過に陥ることを防止することができる。
【0093】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0094】
[項目1]
低圧側直流電源(1)に並列接続される低圧側コンデンサ(C3)と、
高圧側直流電源(2)に並列接続される高圧側コンデンサ(C4)と、
直列接続された複数のスイッチング素子(S1-S8)と、少なくとも一つのフライングキャパシタ(C1-C2)を含み、前記直列接続された複数のスイッチング素子(S1-S8)の両端に前記高圧側直流電源(2)が接続され、前記直列接続された複数のスイッチング素子(S1-S8)を構成する一部の複数のスイッチング素子(S3-S6)の両端に前記低圧側直流電源(1)が接続される、フライングキャパシタ部(30)と、
前記低圧側コンデンサ(C3)の両端と、前記一部の複数のスイッチング素子(S3-S6)の両端間の経路に挿入される少なくとも一つのリアクトル(L1-L2)と、
前記高圧側コンデンサ(C4)と前記高圧側直流電源(2)間の経路に挿入されるスイッチ回路(50)と、
を備える、
DC/DC変換装置(3)。
これによれば、高圧側直流電源(2)からではなく、低圧側直流電源(1)からフライングキャパシタ(C1-C2)を安全にプリチャージすることができる。
[項目2]
前記直列接続された複数のスイッチング素子(S1-S8)とそれぞれ並列接続された複数の抵抗(R1-R8)と、
前記直列接続された複数のスイッチング素子(S1-S8)と、前記スイッチ回路(50)を制御する制御部(40)と、
をさらに備え、
前記制御部(40)は、前記DC/DC変換装置(3)の起動時において、
前記スイッチ回路(50)をオフ状態に制御するとともに、前記低圧側直流電源(1)から前記低圧側コンデンサ(C3)、前記高圧側コンデンサ(C4)、及び前記少なくとも一つのフライングキャパシタ(C1-C2)が充電されるように、前記直列接続された複数のスイッチング素子(S1-S8)を制御し、
前記高圧側コンデンサ(C4)の電圧が前記低圧側直流電源(1)の電圧に対応する電圧まで上昇した後、前記高圧側コンデンサ(C4)の電圧が昇圧されるように、前記直列接続された複数のスイッチング素子(S1-S8)を制御し、
前記高圧側コンデンサ(C4)の電圧が前記高圧側直流電源(2)の電圧に対応する電圧まで上昇した後、前記スイッチ回路(50)をオン状態に制御する、
項目1に記載のDC/DC変換装置(3)。
これによれば、フライングキャパシタ(C1-C2)の電圧を、高圧側コンデンサ(C4)の電圧上昇に応じて徐々に上昇させることができ、フライングキャパシタ(C1-C2)を安全にプリチャージすることができる。
[項目3]
前記フライングキャパシタ部(30)は、
直列接続された第1スイッチング素子(S1)、第2スイッチング素子(S2)、第3スイッチング素子(S3)、第4スイッチング素子(S4)と、第5スイッチング素子(S5)、第6スイッチング素子(S6)、第7スイッチング素子(S7)及び第8スイッチング素子(S8)と、
前記第1スイッチング素子(S1)と第2スイッチング素子(S2)との接続点と、第3スイッチング素子(S3)と第4スイッチング素子(S4)との接続点との間に接続された第1フライングキャパシタ(C1)と、
前記第5スイッチング素子(S5)と第6スイッチング素子(S6)との接続点と、第7スイッチング素子(S7)と第8スイッチング素子(S8)との接続点との間に接続された第2フライングキャパシタ(C2)と、を含み、
前記低圧側直流電源(1)の正側端子が、前記第2スイッチング素子(S2)と前記第3スイッチング素子(S3)との間の接続点に電気的に接続され、
前記低圧側直流電源(1)の負側端子が、前記第6スイッチング素子(S6)と前記第7スイッチング素子(S7)との間の接続点に電気的に接続される、
項目1に記載のDC/DC変換装置(3)。
これによれば、3レベルのマルチレベルDC/DC変換装置(3)を実現することができる。高圧側直流電源(2)と並列に、8個のスイッチング素子(S1-S8)を直列接続することにより、従来より低耐圧のスイッチング素子を使用することが可能となる。
[項目4]
前記第1スイッチング素子(S1)-前記第8スイッチング素子(S8)にそれぞれ並列接続された第1抵抗(R1)-第8抵抗(R8)と、
前記第1スイッチング素子(S1)-前記第8スイッチング素子(S8)と、前記スイッチ回路(50)を制御する制御部(40)をさらに備え、
前記制御部(40)は、前記DC/DC変換装置(3)の起動時において、
前記スイッチ回路(50)と、前記第3スイッチング素子(S3)、前記第4スイッチング素子(S4)と、前記第5スイッチング素子(S5)及び前記第6スイッチング素子(S6)をオフ状態に制御し、
前記高圧側コンデンサ(C4)の電圧が前記低圧側直流電源(1)の電圧に対応する電圧まで上昇した後、前記高圧側コンデンサ(C4)の電圧が昇圧されるように、前記第1スイッチング素子(S1)-前記第8スイッチング素子(S8)を制御し、
前記高圧側コンデンサ(C4)の電圧が前記高圧側直流電源(2)の電圧に対応する電圧まで上昇した後、前記スイッチ回路(50)をオン状態に制御する、
項目3に記載のDC/DC変換装置(3)。
これによれば、第1フライングキャパシタ(C1)と第2フライングキャパシタ(C2)の電圧を、高圧側コンデンサ(C4)の電圧上昇に応じて徐々に上昇させることができ、第1フライングキャパシタ(C1)と第2フライングキャパシタ(C2)を安全にプリチャージすることができる。
[項目5]
前記制御部(40)は、
前記第2スイッチング素子(S2)、前記第4スイッチング素子(S4)、前記第5スイッチング素子(S5)及び前記第7スイッチング素子(S7)をオン状態、並びに前記第1スイッチング素子(S1)、前記第3スイッチング素子(S3)、前記第6スイッチング素子(S6)及び前記第8スイッチング素子(S8)をオフ状態に制御する第1モード、
前記第1スイッチング素子(S1)、前記第3スイッチング素子(S3)、前記第6スイッチング素子(S6)及び前記第8スイッチング素子(S8)をオン状態 並びに前記第2スイッチング素子(S2)、前記第4スイッチング素子(S4)、前記第5スイッチング素子(S5)及び前記第7スイッチング素子(S7)をオフ状態に制御する第2モード、
前記第1スイッチング素子(S1)、前記第2スイッチング素子(S2)、前記第7スイッチング素子(S7)及び前記第8スイッチング素子(S8)をオン状態 並びに前記第3スイッチング素子(S3)、前記第4スイッチング素子(S4)、前記第5スイッチング素子(S5)及び前記第6スイッチング素子(S6)をオフ状態に制御する第3モード、
前記第3スイッチング素子(S3)、前記第4スイッチング素子(S4)、前記第5スイッチング素子(S5)及び前記第6スイッチング素子(S6)をオン状態 並びに前記第1スイッチング素子(S1)、前記第2スイッチング素子(S2)、前記第7スイッチング素子(S7)及び前記第8スイッチング素子(S8)をオフ状態に制御する第4モード、の4つのモードの内、
前記第1モードと、前記第2モードと、前記第3モード又は前記第4モードとの3つのモードを使用して、前記高圧側コンデンサ(C4)の電圧を昇圧させる、
項目4に記載のDC/DC変換装置(3)。
これによれば、3つのモードを組み合わせて、高効率な昇圧動作が可能となる。
[項目6]
前記スイッチ回路(50)は、
ソース端子が前記高圧側コンデンサ(C4)、ドレイン端子が前記高圧側直流電源(2)に接続される、NチャンネルMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)(S9)である、
項目1から5のいずれか1項に記載のDC/DC変換装置(3)。
これによれば、高圧側コンデンサ(C4)の電圧が高圧側直流電源(2)の電圧より高くならないように、高圧側コンデンサ(C4)の電圧がクランプさせることができる。また、スイッチ回路(50)を低コストで構成することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 低圧側直流電源、 2 高圧側直流電源、 3 DC/DC変換装置、 30 フライングキャパシタ部、 40 制御部、 41 電圧センサ、 50 スイッチ回路、 S1-S10 スイッチング素子、 D1-D11 ダイオード、 C1 第1フライングキャパシタ、 C2 第2フライングキャパシタ、 C3 低圧側コンデンサ、 C4 高圧側コンデンサ、 L1 第1リアクトル、 L2 第2リアクトル、 R1-R8 抵抗、 R9 制限抵抗、 RY1 リレー。