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  • 特許-ヒンジ式密封容器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-14
(45)【発行日】2024-06-24
(54)【発明の名称】ヒンジ式密封容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 43/16 20060101AFI20240617BHJP
   A45D 33/00 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
B65D43/16 100
A45D33/00 630Z
A45D33/00 640
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021031006
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131840
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉村 和寿
(72)【発明者】
【氏名】宮入 圭介
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-080407(JP,U)
【文献】特開2007-083016(JP,A)
【文献】特表2014-500198(JP,A)
【文献】特開平11-079213(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0042309(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
A45D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸と軸受けとを介して容器本体に蓋を回動可能に連結するヒンジと、
前記蓋に設けられるとともに、前記蓋を閉じることで前記容器本体の口部に全周に亘って径方向に密着する環状密着部と、を有し、
前記ヒンジが、前記蓋を閉じた状態において、前記軸と前記軸受けとの間に前記軸に垂直且つ前記環状密着部の中心軸線に垂直な方向であるX方向のクリアランスを有し、
前記クリアランスが、前記蓋を閉じる時に前記口部に案内されることによる前記X方向の前記環状密着部の移動に伴い前記軸が前記軸受けに対して前記X方向に移動することにより生じるものであり、
前記容器本体又は前記蓋が、前記蓋を閉じる時に前記口部に案内されることによる前記X方向の前記環状密着部の移動に対する前記ヒンジの抵抗を抑制するように屈曲可能な前記中心軸線を周回する周方向に延びるベンド部を有することを特徴とするヒンジ式密封容器。
【請求項2】
前記蓋が閉じた状態において、前記軸に垂直且つ前記X方向に垂直な方向の前記軸の幅が、前記X方向の前記軸の幅よりも小さい、請求項1に記載のヒンジ式密封容器。
【請求項3】
前記ヒンジが、前記軸に前記軸受けが嵌合する簡易ヒンジで構成される、請求項1又は2に記載のヒンジ式密封容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒンジ式密封容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば化粧料コンパクト容器の中容器として、軸と軸受けとを介して容器本体に蓋を回動可能に連結するヒンジと、蓋に設けられるとともに、蓋を閉じることで容器本体の口部に全周に亘って密着する環状密着部と、を有するヒンジ式密封容器が知られている(例えば特許文献1~2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4198373号公報
【文献】特許第4536372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなヒンジ式密封容器は、蓋の開閉に伴う容器本体の口部と環状密着部との変形の繰り返しによりその変形部が損傷し、密封性が損なわれることがないように、変形部の材質が制約されるなどの問題点があった。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、良好な密封性を実現し易いヒンジ式密封容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係るヒンジ式密封容器は、軸と軸受けとを介して容器本体に蓋を回動可能に連結するヒンジと、前記蓋に設けられるとともに、前記蓋を閉じることで前記容器本体の口部に全周に亘って径方向に密着する環状密着部と、を有し、前記ヒンジが、前記蓋を閉じた状態において、前記軸と前記軸受けとの間に前記軸に垂直且つ前記環状密着部の中心軸線に垂直な方向であるX方向のクリアランスを有し、前記クリアランスが、前記蓋を閉じる時に前記口部に案内されることによる前記X方向の前記環状密着部の移動に伴い前記軸が前記軸受けに対して前記X方向に移動することにより生じるものであり、前記容器本体又は前記蓋が、前記蓋を閉じる時に前記口部に案内されることによる前記X方向の前記環状密着部の移動に対する前記ヒンジの抵抗を抑制するように屈曲可能な前記中心軸線を周回する周方向に延びるベンド部を有することを特徴とするヒンジ式密封容器である。
【0007】
本発明のヒンジ式密封容器は、上記構成において、前記蓋が閉じた状態において、前記軸に垂直且つ前記X方向に垂直な方向の前記軸の幅が、前記X方向の前記軸の幅よりも小さい、ヒンジ式密封容器であるのが好ましい。
【0008】
本発明のヒンジ式密封容器は、上記構成において、前記ヒンジが、前記軸に前記軸受けが嵌合する簡易ヒンジで構成される、ヒンジ式密封容器であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、良好な密封性を実現し易いヒンジ式密封容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態であるヒンジ式密封容器を中容器とする化粧料コンパクト容器を示す縦断面図である。
図2】(a)は図1のA部拡大図であり、(b)は(a)に示す状態から蓋を開く方向に回動させた時の状態を示す縦断面図であり、(c)は(b)に示す状態から蓋を開く方向にさらに回動させた時の状態を示す縦断面図である。
図3】本発明の他の実施形態であるヒンジ式密封容器の容器本体を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を例示説明する。
【0013】
図1に示す本発明の一実施形態であるヒンジ式密封容器1は、化粧料コンパクト容器2の中容器として構成されている。また、ヒンジ式密封容器1は、レフィル用の付け替え容器として構成されている。化粧料コンパクト容器2は、コンパクト容器本体部3と、コンパクト容器本体部3に図示しないヒンジを介して回動可能に連結されるコンパクト容器蓋部4と、これらの内部に収納されるヒンジ式密封容器1と、を有している。なお、ヒンジ式密封容器1は、レフィル用の付け替え容器として構成されるものに限らない。また、ヒンジ式密封容器1は、化粧料コンパクト容器2の中容器として構成されるものに限らない。
【0014】
ヒンジ式密封容器1は、容器本体5と蓋6とを有している。蓋6は、軸7と軸受け8とを介して容器本体5に回動可能に連結している。つまり、ヒンジ式密封容器1は、軸7と軸受け8とを介して容器本体5に蓋6を回動可能に連結するヒンジ9を有している。また、ヒンジ9は、軸7に軸受け8が嵌合する簡易ヒンジとして構成されている。なお、本願における簡易ヒンジとは、後述のようなU字状の軸受け8の開放部から軸7が挿入され嵌合することで構成されるものを意味する。
【0015】
容器本体5は、中心軸線Oを中心とする筒状の周壁10と、周壁10に連なる底壁11と、周壁10の外周面に連なる2つの軸支持片12と、2つの軸支持片12の間を中心軸線Oに直交する方向に直線状に延びる軸7と、を有し、周壁10の内周面と底壁11の上面とで収納凹部13が形成されている。また、収納凹部13には、図示しない化粧料が収納されている。周壁10の上端で構成される環状の口部14には、中心軸線Oを中心とする密封筒15と、密封筒15よりも径方向外側で周方向に連続又は間欠状に延びる被嵌合壁16と、がそれぞれ上方に突出するように設けられている。
【0016】
なお、本明細書において、上下方向とは口部14の中心軸線Oに沿う方向を意味し、上方とは底壁11から口部14に向かう方向を意味し、下方とはその反対方向を意味し、径方向とは中心軸線Oに直交する方向を意味し、周方向とは中心軸線Oを周回する方向を意味し、縦断面とは中心軸線Oを含む断面を意味している。
【0017】
蓋6は、天壁17、密封内筒18、密封外筒19、嵌合壁20、収納壁21及び軸受け8を有している。蓋6が閉じた状態において、天壁17は口部14に重なり、密封内筒18は中心軸線Oを中心とする筒状をなすとともに天壁17から下方に突出し、密封外筒19は密封内筒18よりも径方向外側で中心軸線Oを中心とする筒状をなすとともに天壁17から下方に突出し、嵌合壁20は密封外筒19よりも径方向外側で周方向に連続又は間欠状に延びるとともに天壁17から下方に突出し、収納壁21は周方向に連続又は間欠状に延びるとともに天壁17から上方に突出している。
【0018】
収納壁21の内周面と天壁17の上面とで塗布具22(パフ)を収納する上部収納部23が形成されている。なお、蓋6は、収納壁21を有さない構成としてもよい。
【0019】
嵌合壁20は、蓋6が閉じる時に被嵌合壁16に径方向外側から嵌合するように構成されている。なお、嵌合壁20は、蓋6が閉じる時に被嵌合壁16に径方向内側から嵌合するように構成してもよい。また、嵌合壁20を設けない構成としてもよい。
【0020】
密封内筒18は、蓋6が閉じる時に密封筒15に径方向内側から全周に亘って密着するように構成されている。したがって、密封内筒18は、蓋6を閉じることで口部14(の密封筒15)に全周に亘って径方向に密着する環状密着部24を有している。密封内筒18の外周面は、密封筒15の内周面に密着するための係合代を設けるために、密封筒15の内周面よりも若干大きい径寸法に設定されている。
【0021】
また、密封外筒19は、蓋6が閉じる時に密封筒15に径方向外側から当接することで密封筒15の径方向外側への変形を規制するように構成されている。なお、密封外筒19を設けない構成としてもよい。また、密封外筒19を密封筒15に全周に亘って径方向に密着させ、密封内筒18とともに二重筒状の環状密着部としてもよい。
【0022】
軸受け8は、蓋6が閉じた状態において、軸7に垂直な断面において径方向外側に開放するU字状をなすとともに軸7に沿って延びている。また、軸受け8は、蓋6が閉じた状態において、天壁17の外周縁に連なっている。軸受け8には、軸7を軸受け8に嵌合させる際に弾性変形によって軸7を乗り越えさせる狭窄部25が設けられている。
【0023】
容器本体5と蓋6はそれぞれ、合成樹脂製の一体成形物である。なお、容器本体5と蓋6はそれぞれ、合成樹脂製に限らず、また、複数の部品で構成してもよい。
【0024】
図2(a)に示すように、ヒンジ9は、蓋6を閉じた状態において、軸7と軸受け8との間に、軸7に垂直且つ環状密着部24の中心軸線Oに垂直な方向であるX方向(図2(a)~(c)に両方向矢印で示す方向)のクリアランスCを有している。また、クリアランスCは、軸7から見て環状密着部24が位置する側に形成されている。クリアランスCは、蓋6を閉じる時(図2(c)に示す状態から図2(b)に示す状態を経て図2)に示す状態になる時)に蓋6の回動に伴って口部14(の密封筒15)に案内されることによるX方向の環状密着部24の移動に対してヒンジ9が抵抗を生じない(ヒンジ9に負荷が生じない)程度の大きさに設定されている。
【0025】
したがって、蓋6を閉じる時に蓋6の回動に伴って環状密着部24がX方向に移動することができるので、蓋6の開閉に伴う容器本体5の口部14(の密封筒15)と環状密着部24との変形の繰り返しによりその変形部が損傷し、密封性が損なわれることを抑制することができ、もって、良好な密封性を実現することができる。
【0026】
なお、本実施形態ではクリアランスCが軸7から見て環状密着部24が位置する側のみに形成されているが、その反対側にも所定の大きさのクリアランスCを設ける構成(つまり図2(a)において軸7と狭窄部25との間に隙間がある構成)としてもよい。この場合、例えば成形ばらつきがあっても、蓋6を閉じた状態において軸7と軸受け8との抵抗が抑制され、環状密着部24による密封状態を良好に達成できる。
【0027】
また、図2(a)に示すように、蓋6が閉じた状態において、軸7に垂直且つX方向に垂直な方向の軸7の幅である第1幅W1は、X方向の軸7の幅である第2幅W2よりも小さく設定されている。第1幅W1を第2幅W2よりも小さく設定することで、蓋6の回動に伴って蓋6がX方向に移動する際に軸7と軸受け8との間に生じる摺動抵抗を抑制し、それにより、環状密着部24のX方向への移動をスムーズにすることができる。第1幅W1は、軸受け8の内面における狭窄部25よりも内側の部分の軸7に垂直且つX方向に垂直な方向(図2での上下方向)の幅である第3幅W3よりも小さく設定されており、これにより、上記摺動抵抗が効果的に抑制されている。なお、第1幅W1を第3幅W3以上の大きさに設定してもよい。また、第1幅W1を第2幅W2以上の大きさに設定してもよい。軸7は第1幅W1を第2幅W2よりも小さくするために断面形状がトラック形状(つまり、円の一部を互いに平行な直線で切り欠いた形状)をなしているが、これに限らず例えば楕円形状や、扁平な多角形状等をなしていてもよい。
【0028】
また、第2幅W2は、第3幅W3よりも大きく設定されており、これにより、蓋6が開いた状態において軸7と軸受け8との間の回転方向の摺動抵抗により蓋6を自由な回動位置で停止(保持)させることができるフリーストップ機能を発揮することができる。なお、フリーストップ機能を有さない構成としてもよい。つまり、第2幅W2を第3幅W3以下の大きさに設定してもよい。
【0029】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0030】
したがって、前記実施形態のヒンジ式密封容器1は、例えば以下に述べるような種々の変更が可能である。
【0031】
前述した実施形態のヒンジ式密封容器1は、軸7と軸受け8とを介して容器本体5に蓋6を回動可能に連結するヒンジ9と、蓋6に設けられるとともに、蓋6を閉じることで容器本体5の口部14に全周に亘って径方向に密着する環状密着部24と、を有し、ヒンジ9が、蓋6を閉じた状態において、軸7と軸受け8との間に軸7に垂直且つ環状密着部24の中心軸線Oに垂直な方向であるX方向のクリアランスCを有し、クリアランスCが、蓋6を閉じる時に口部14に案内されることによるX方向の環状密着部24の移動に対してヒンジ9が抵抗を生じない程度の大きさであることを特徴とするヒンジ式密封容器1である限り、種々変更可能である。
【0032】
例えば、前述した実施形態では容器本体5に軸7を設け、蓋6に軸受け8を設けているが、これに限らず、容器本体5に軸受け8を設け、蓋6に軸7を設けてもよい。
【0033】
なお、前述した実施形態のヒンジ式密封容器1は、蓋6が閉じた状態において、軸7に垂直且つX方向に垂直な方向の軸7の幅が、X方向の軸7の幅よりも小さい、ヒンジ式密封容器1であるのが好ましい。
【0034】
また、前述した実施形態のヒンジ式密封容器1は、ヒンジ9が、軸7に軸受け8が嵌合する簡易ヒンジで構成される、ヒンジ式密封容器1であるのが好ましい。
【0035】
また、前述した実施形態ではヒンジ9にクリアランスCを設けることで良好な密封性を実現しているが、これに代えて、例えば図3に示すように、容器本体5又は蓋6が、蓋6を閉じる時に口部14に案内されることによるX方向の環状密着部24の移動に対するヒンジ9の抵抗を抑制するように屈曲可能な1つ以上のベンド部26を設ける構成としてもよい。図3に示す例では、2つのベンド部26がそれぞれ、容器本体5の周壁10の外周面と軸支持片12とを連ねている。このような構成によっても、蓋6の開閉に伴う容器本体5の口部14(の密封筒15)と環状密着部24との変形の繰り返しによりその変形部が損傷し、密封性が損なわれることを抑制することができ、もって、良好な密封性を実現することができる。なお、クリアランスCを設ける前述した実施形態においても、1つ以上のベンド部26を設ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 ヒンジ式密封容器
2 化粧料コンパクト容器
3 コンパクト容器本体部
4 コンパクト容器蓋部
5 容器本体
6 蓋
7 軸
8 軸受け
9 ヒンジ
10 周壁
11 底壁
12 軸支持片
13 収納凹部
14 口部
15 密封筒
16 被嵌合壁
17 天壁
18 密封内筒
19 密封外筒
20 嵌合壁
21 収納壁
22 塗布具
23 上部収納部
24 環状密着部
25 狭窄部
26 ベンド部
C クリアランス
O 中心軸線
W1 第1幅
W2 第2幅
W3 第3幅
図1
図2
図3