(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】パラメータ決定装置、画像形成装置、後処理装置、給紙装置、決定モデルの作成方法、および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G06N 20/20 20190101AFI20240618BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240618BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240618BHJP
G06N 3/045 20230101ALI20240618BHJP
【FI】
G06N20/20
B41J29/38 501
G03G21/00 502
G06N3/045
(21)【出願番号】P 2023005690
(22)【出願日】2023-01-18
(62)【分割の表示】P 2020201940の分割
【原出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】丸山 宏之
【審査官】渡辺 一帆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-121503(JP,A)
【文献】特開2014-105088(JP,A)
【文献】特開2019-195887(JP,A)
【文献】特開2020-013174(JP,A)
【文献】特開2020-071271(JP,A)
【文献】特開平04-366975(JP,A)
【文献】特開平05-083429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 20/00-20/20
B41J 29/38
G03G 21/00
G06N 3/02-3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサーによって検出された用紙坪量に関するデータを取得する取得部と、
機械学習による学習機能を用いたプログラムに基づいて、取得した用紙坪量に関するデータから用紙処理に関するパラメータを決定する決定部と、
を備え、
前記用紙坪量に関するデータは、用紙に光を照射した際の光の透過量に関するデータである、パラメータ決定装置。
【請求項2】
前記学習機能は、複数の学習器を融合させて1つの学習器を生成するアンサンブル学習により構成される請求項1に記載のパラメータ決定装置。
【請求項3】
前記学習機能は、ニューラルネットワークにより構成される請求項1または2に記載のパラメータ決定装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記用紙処理を行う用紙処理装置の装置状態に関する情報をさらに取得し、
前記決定部は、前記用紙坪量に関するデータと、前記装置状態に関する情報とから前記用紙処理に関するパラメータを決定する、請求項1~3のいずれかに記載のパラメータ決定装置。
【請求項5】
前記取得部は、所定のタイミングで前記用紙処理装置の装置状態に関する情報を取得し、
前記決定部は、複数の用紙に対して前記用紙処理に関するパラメータを決定する、請求項4に記載のパラメータ決定装置。
【請求項6】
前記取得部は、所定のタイミングで前記用紙処理装置の装置状態に関する情報を取得し、
前記決定部は、本印刷準備の初期設定時、本印刷中の通紙ごと、または所定通紙間隔ごとに、前記用紙処理に関するパラメータを決定する、請求項4または5に記載のパラメータ決定装置。
【請求項7】
前記決定部は、前記プログラムに基づいて、取得した用紙坪量に関するデータから用紙種別を特定する第1の処理と、取得した用紙坪量に関するデータから用紙種別を特定することなく前記用紙処理に関するパラメータを決定する第2の処理とを行う、請求項1~6のいずれかに記載のパラメータ決定装置。
【請求項8】
前記用紙処理に関するパラメータは、前記用紙処理を行う装置である画像形成装置における画像形成に関するパラメータを含む、請求項1~7のいずれかに記載のパラメータ決定装置。
【請求項9】
前記画像形成に関するパラメータは、少なくとも、定着プロセスに関するパラメータ、
除電プロセスに関するパラメータ、転写プロセスに関するパラメータ、および搬送プロセスに関するパラメータのうちのいずれかを含む、請求項8に記載のパラメータ決定装置。
【請求項10】
前記用紙処理に関するパラメータは、前記用紙処理を行う装置である後処理装置における後処理に関するパラメータ、または、前記用紙処理を行う装置である給紙装置における給紙処理に関するパラメータを含む、請求項1~9のいずれかに記載のパラメータ決定装置。
【請求項11】
前記後処理に関するパラメータは、少なくとも、パンチ処理に関するパラメータ、スタック処理に関するパラメータ、ステープル処理に関するパラメータ、断裁処理に関するパラメータ、クリース/折処理に関するパラメータ、ミシン目処理に関するパラメータ、および製本処理に関するパラメータのうちのいずれかを含む、請求項10に記載のパラメータ決定装置。
【請求項12】
前記給紙処理に関するパラメータは、少なくとも、吸着ベルトによる給紙の吸着風量およびアシスト風量に関するパラメータ、捌きローラー圧および捌きローラーの稼働速度に関するパラメータのいずれかを含む請求項10に記載のパラメータ決定装置。
【請求項13】
前記取得部は、パラメータ決定装置が備える前記センサーから前記用紙坪量に関するデータを取得する、請求項1~12のいずれかに記載のパラメータ決定装置。
【請求項14】
前記取得部は、パラメータ決定装置と接続された前記センサーから前記用紙坪量に関するデータを取得する、請求項1~12のいずれかに記載のパラメータ決定装置。
【請求項15】
前記用紙処理を行う用紙処理装置と接続されている、請求項1~14のいずれかに記載のパラメータ決定装置。
【請求項16】
請求項1~14のいずれかに記載のパラメータ決定装置と、用紙に画像を形成する画像形成部と、を有する画像形成装置。
【請求項17】
請求項1~14のいずれかに記載のパラメータ決定装置と、用紙に後処理を行う後処理部と、を有する後処理装置。
【請求項18】
請求項1~14のいずれかに記載のパラメータ決定装置と、用紙を給紙する給紙部と、
を有する給紙装置。
【請求項19】
用紙処理装置における用紙処理に関するパラメータの決定モデルの作成方法であって、
センサーに検出された用紙坪量に関するデータを取得する取得ステップと、
取得した用紙坪量に関するデータに、機械学習を適用して学習器により前記決定モデルを作成する作成ステップと、を有し、
前記用紙坪量に関するデータは、用紙に光を照射した際の光の透過量に関するデータである、決定モデルの作成方法。
【請求項20】
前記取得ステップは、前記用紙処理装置の装置状態に関する情報をさらに取得し、
前記作成ステップは、前記用紙坪量に関するデータと、前記装置状態に関する情報とに、機械学習を適用して前記学習器により前記決定モデルを作成する、請求項
19に記載の決定モデルの作成方法。
【請求項21】
センサーによって検出された用紙坪量に関するデータを取得する取得ステップと、
機械学習による学習機能を用いたプログラムに基づいて、取得した用紙坪量に関するデータから用紙処理に関するパラメータを決定する決定ステップと、
を含み、
前記用紙坪量に関するデータは、用紙に光を照射した際の光の透過量に関するデータである、処理をコンピューターに実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラメータ決定装置、画像形成装置、後処理装置、給紙装置、決定モデルの作成方法、および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー印刷業界においては、電子写真方式のプリンター等の画像形成装置が広く活用されてきている。カラー印刷業界に対応するPP(プロダクションプリント)の分野では、オフィスで用いられる場合に比べて多様な用紙への適応が求められる。そして、これらの多様な用紙に対して高品質な印刷を行うために、給紙トレイに収容している用紙特性を複数項目で設定し、設定した項目に応じた画像形成条件で印刷などの用紙処理を行う画像形成装置がある。
【0003】
このような多様な用紙の設定を行うために、印刷に使用される用紙の特性を、自動的に検知するセンサーを備える画像形成装置がある(例えば特許文献1、2)。さらに近年では、用紙に関する複数種類の物性値を取得して、取得した複数種類の物性値を予め用意した判定テーブルにあてはめて、画像形成条件を制御するための転写電圧などの制御パラメータを決定する技術も提案されている(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-138805号公報
【文献】特開2012-194445号公報
【文献】特開2008-242026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献のような従来技術は、用紙から検知した複数の用紙物性値(誘電率、抵抗値、紙厚等)から、演算によって制御パラメータに関係する一つの用紙物性値(誘電厚み)を算出し、さらに算出された値を予め用意したテーブルにあてはめて一つの制御パラメータを決定するものである。この技術は、制御パラメータを決定するための用紙物性値を、複数の検知データから2次的に求めるものであるため、値に誤差が乗りやすいという問題がある。さらに、上記の技術は、予め用意したテーブルを参照して制御パラメータを決定するため、所定の区間(範囲)ごとに段階的に値が変動する制御パラメータを決定することとなり、最適な制御パラメータの値を決定することができないという問題もある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、用紙ごとの最適な制御パラメータを導出するためのパラメータ決定装置、画像形成装置、後処理装置、給紙装置、および決定モデルの作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0008】
(1)センサーによって検出された用紙坪量に関するデータを取得する取得部と、
機械学習による学習機能を用いたプログラムに基づいて、取得した用紙坪量に関するデータから用紙処理に関するパラメータを決定する決定部と、
を備え、
前記用紙坪量に関するデータは、用紙に光を照射した際の光の透過量に関するデータである、パラメータ決定装置。
【0009】
(2)前記学習機能は、複数の学習器を融合させて1つの学習器を生成するアンサンブル学習により構成される上記(1)に記載のパラメータ決定装置。
【0010】
(3)前記学習機能は、ニューラルネットワークにより構成される上記(1)または(2)に記載のパラメータ決定装置。
【0011】
(4)前記取得部は、前記用紙処理を行う用紙処理装置の装置状態に関する情報をさらに取得し、前記決定部は、前記用紙坪量に関するデータと、前記装置状態に関する情報とから前記用紙処理に関するパラメータを決定する、上記(1)~(3)のいずれかに記載のパラメータ決定装置。
【0012】
(5)前記取得部は、所定のタイミングで前記用紙処理装置の装置状態に関する情報を取得し、前記決定部は、複数の用紙に対して前記用紙処理に関するパラメータを決定する、上記(4)に記載のパラメータ決定装置。
【0013】
(6)前記取得部は、所定のタイミングで前記用紙処理装置の装置状態に関する情報を取得し、前記決定部は、本印刷準備の初期設定時、本印刷中の通紙ごと、または所定通紙間隔ごとに、前記用紙処理に関するパラメータを決定する、上記(4)または(5)に記載のパラメータ決定装置。
【0014】
(7)前記決定部は、前記プログラムに基づいて、取得した用紙坪量に関するデータから用紙種別を特定する第1の処理と、取得した用紙坪量に関するデータから用紙種別を特定することなく前記用紙処理に関するパラメータを決定する第2の処理とを行う、上記(1)~(6)のいずれかに記載のパラメータ決定装置。
【0015】
(8)前記用紙処理に関するパラメータは、前記用紙処理を行う装置である画像形成装置における画像形成に関するパラメータを含む、上記(1)~(7)のいずれかに記載のパラメータ決定装置。
【0016】
(9)前記画像形成に関するパラメータは、少なくとも、定着プロセスに関するパラメータ、除電プロセスに関するパラメータ、転写プロセスに関するパラメータ、および搬送プロセスに関するパラメータのうちのいずれかを含む、上記(8)に記載のパラメータ決定装置。
【0017】
(10)前記用紙処理に関するパラメータは、前記用紙処理を行う装置である後処理装置における後処理に関するパラメータ、または、前記用紙処理を行う装置である給紙装置における給紙処理に関するパラメータを含む、上記(1)~(9)のいずれかに記載のパラメータ決定装置。
【0018】
(11)前記後処理に関するパラメータは、少なくとも、パンチ処理に関するパラメータ、スタック処理に関するパラメータ、ステープル処理に関するパラメータ、断裁処理に関するパラメータ、クリース/折処理に関するパラメータ、ミシン目処理に関するパラメータ、および製本処理に関するパラメータのうちのいずれかを含む、上記(10)に記載のパラメータ決定装置。
【0019】
(12)前記給紙処理に関するパラメータは、少なくとも、吸着ベルトによる給紙の吸着風量およびアシスト風量に関するパラメータ、捌きローラー圧および捌きローラーの稼働速度に関するパラメータのいずれかを含む上記(10)に記載のパラメータ決定装置。
【0020】
(13)前記取得部は、パラメータ決定装置が備える前記センサーから前記用紙坪量に関するデータを取得する、上記(1)~(12)のいずれかに記載のパラメータ決定装置。
【0021】
(14)前記取得部は、パラメータ決定装置と接続された前記センサーから前記用紙坪量に関するデータを取得する、上記(1)~(12)のいずれかに記載のパラメータ決定装置。
【0022】
(15)前記用紙処理を行う用紙処理装置と接続されている、上記(1)~(14)のいずれかに記載のパラメータ決定装置。
【0023】
(16)上記(1)~(14)のいずれかに記載のパラメータ決定装置と、用紙に画像を形成する画像形成部と、を有する画像形成装置。
【0024】
(17)上記(1)~(14)のいずれかに記載のパラメータ決定装置と、用紙に後処理を行う後処理部と、を有する後処理装置。
【0025】
(18)上記(1)~(14)のいずれかに記載のパラメータ決定装置と、用紙を給紙する給紙部と、を有する給紙装置。
【0026】
(19)用紙処理装置における用紙処理に関するパラメータの決定モデルの作成方法であって、
センサーに検出された用紙坪量に関するデータを取得する取得ステップと、
取得した用紙坪量に関するデータに、機械学習を適用して学習器により前記決定モデルを作成する作成ステップと、を有し、
前記用紙坪量に関するデータは、用紙に光を照射した際の光の透過量に関するデータである、決定モデルの作成方法。
【0027】
(20)前記取得ステップは、前記用紙処理装置の装置状態に関する情報をさらに取得し、
前記作成ステップは、前記用紙坪量に関するデータと、前記装置状態に関する情報とに、機械学習を適用して前記学習器により前記決定モデルを作成する、上記(19)に記載の決定モデルの作成方法。
【0028】
(21)センサーによって検出された用紙坪量に関するデータを取得する取得ステップと、
機械学習による学習機能を用いたプログラムに基づいて、取得した用紙坪量に関するデータから用紙処理に関するパラメータを決定する決定ステップと、
を含み、
前記用紙坪量に関するデータは、用紙に光を照射した際の光の透過量に関するデータである、処理をコンピューターに実行させるための制御プログラム。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るパラメータ決定装置によれば、センサーによって検出された用紙坪量に関するデータを取得する取得部と、機械学習による学習機能を用いたプログラムに基づいて、取得した用紙坪量に関するデータから用紙処理に関するパラメータを決定する決定部と、を備え、前記用紙坪量に関するデータは、用紙に光を照射した際の光の透過量に関するデータである、これにより、検知データに演算を加えて2次的に用紙物性値を算出したり、予め用意したテーブルにあてはめたりすることなく、検知データから直接的に制御パラメータを決定することができため、用紙ごとの最適な制御パラメータを導出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本実施形態に係る画像形成システムの概略構成を示す図である。
【
図2】搬送路に配置したメディアセンサーの構成を示す側面図である。
【
図3】画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【
図4A】画像形成装置の制御部の機能構成を示すブロック図である。
【
図4B】画像形成装置の記憶部の構成を示すブロック図である。
【
図5】制御パラメータ決定方式を示す模式図である。
【
図6】制御パラメータ決定方式の処理フローを説明するための図である。
【
図7】画像形成処理における品質項目および各品質項目に関連する用紙物性について説明するための図である。
【
図8A】後処理における品質項目および各品質項目に関連する用紙物性について説明するための図である。
【
図8B】後処理に関するパラメータについて説明するための図である。
【
図9A】給紙処理における品質項目および各品質項目に関連する用紙物性について説明するための図である。
【
図9B】給紙処理に関するパラメータについて説明するための図である。
【
図10A】給紙処理の概略構成を説明するための図である。
【
図10B】給紙処理の概略構成を説明するための図である。
【
図10C】給紙処理の概略構成を説明するための図である。
【
図11】画像形成装置の印刷処理を示すフローチャートである。
【
図12】本印刷準備処理を示すフローチャートである。
【
図13A】制御パラメータ決定処理を示すフローチャートである。
【
図14】用紙物性検出処理を示すフローチャートである。
【
図15】印刷条件設定情報・装置状態情報取得処理を示すフローチャートである。
【
図16】用紙設定時の初期制御パラメータを決定する処理を説明するための図である。
【
図17】本印刷時に用紙毎に検知した用紙物性値を用いて制御パラメータを決定する処理を説明するための図である。
【
図18】後処理に関する制御パラメータを決定する処理を説明するための図である。
【
図19】教師データ用データベースの一例を示す図である。
【
図21】制御パラメータ決定モデルアルゴリズムの生成処理を説明するための図である。
【
図22】更新用決定モデルアルゴリズムの生成処理を説明するための図である。
【
図23】決定モデルアルゴリズムの更新の実行条件の設定を受け付ける画面の一例である。
【
図24】更新用決定モデルアルゴリズムの生成処理の他の例を説明するための図である。
【
図25】特定された用紙種別に関する情報を示す画面の例である。
【
図26】決定された制御パラメータを表示し、ユーザーから変更する旨の指示を受け付ける操作画面の例である。
【
図28A】制御パラメータ決定処理を示すフローチャートである。
【
図29A】本印刷処理の変形例1を示すフローチャートである。
【
図30A】本印刷処理の変形例2を示すフローチャートである。
【
図31A】変形例3に係る画像形成システムの概略構成を示す図である。
【
図31B】変形例4に係る画像形成システムの概略構成を示す図である。
【
図32】比較例1に係る画像形成装置の制御パラメータ決定方式Iを示す模式図である。
【
図33】比較例1に係る制御パラメータ決定方式Iを示す図である。
【
図34】比較例2に係る画像形成装置の制御パラメータ決定方式IIを示す模式図である。
【
図35】比較例2に係る制御パラメータ決定方式IIを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。図面においては、上下方向をZ方向、画像形成装置の正面、背面方向をX方向、これらのX、Z方向に直交する方向をY方向とする。X方向は、幅方向、または回転軸方向ともいう。また、メディアセンサー(後述のメディアセンサー80)周辺においては、水平面に対して傾斜する搬送路(後述の搬送路143)の面に平行で、X方向に直交する記録媒体の搬送方向をY’方向、これに直交する方向をZ’方向という(
図2等参照)。本実施形態においては、記録媒体には、印刷用紙(以下、単に用紙という)、各種フィルムが含まれる。特に用紙としては、植物由来の機械パルプ、および/または化学パルプを用いて製造されたものが含まれる。また記録媒体の種類としては、コート紙のグロス紙およびマット紙(グロスコート紙およびマットコート紙)、ならびに非コート紙の普通紙および上質紙、等が含まれる。
【0032】
(画像形成システム1)
図1は、本実施形態に係る画像形成装置10を備える画像形成システム1の概略構成を示す図である。
図1に示すように画像形成システム1には、互いに機械的、および電気的に接続された画像形成装置10、給紙装置20、後処理装置30、および中間搬送装置35が含まれる。画像形成装置10、給紙装置20、後処理装置30、および中間搬送装置35は、それぞれ用紙Sに対する用紙処理を行う用紙処理装置を構成し得る。
【0033】
(画像形成装置10)
画像形成装置10は、制御部11、記憶部12、画像形成部13、給紙搬送部14、メディアセンサー80、操作パネル15、通信部(図示せず)、等を備える。これらは信号をやり取りするためのバス等の信号線を介して相互に接続される。
図2は、搬送路143に配置したメディアセンサー80の構成を示す側面図である。メディアセンサー80は、紙厚検知部40(紙厚センサー40)、坪量検知部50(坪量センサー50)、表面性検知部60(表面性センサー60)、および用紙押圧機構70で構成され、用紙特性を測定する。表面性センサー60は光センサー装置として機能し、用紙特性、特に用紙の表面性を検知する。表面性センサー60を含むメディアセンサー80の詳細については後述する。本実施形態において、メディアセンサー80は、検知部として機能する。また、制御部11は、パラメータ決定装置として機能する。
【0034】
(制御部11)
制御部11は、CPU、ROM、RAM等により構成され、ROMや、後述の記憶部12に格納されているプログラムを実行することで、各種処理を実行し、プログラムにしたがって装置各部の制御や各種の演算処理を行う。
【0035】
(記憶部12)
記憶部12は、予め各種プログラムや各種データを格納しておくROM、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するRAM、各種プログラムや各種データを格納するハードディスク等の補助記憶部からなる。また、記憶部12は、各給紙トレイに収納されている用紙情報を記憶する。用紙情報としては、用紙の銘柄、サイズ(用紙幅、用紙長)、坪量(斤量)、用紙種類(グロスコート紙、マットコート紙、普通紙、上質紙、ラフ紙等)の情報が含まる。また、記憶部12は、用紙銘柄、制御パラメータの決定に用いる決定モデル(決定モデルアルゴリズム)、およびペーパープロファイルが記憶されていてもよい。
【0036】
(画像形成部13)
画像形成部13は、例えば電子写真方式により画像を形成する。画像形成部13は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の基本色のそれぞれに対応した書込部131、感光体ドラム132、および各色のトナー、キャリアからなる2成分現像剤を収容する現像器133、等を備える。また、画像形成部13は、さらに、中間転写ベルト134、2次転写部135、および定着部136を備える。各色の現像器133により、感光体ドラム132上に形成されたトナー画像は、中間転写ベルト134上で重ね合わせされ、2次転写部135において搬送された用紙Sに転写される。用紙S上のトナー画像は下流側の定着部136で加熱、加圧されることで用紙S上に定着される。
【0037】
(給紙搬送部14)
給紙搬送部14は、複数の給紙トレイ141、142、搬送路143、144、等を備える。搬送路143、144は、これらの搬送路に沿って設けられた複数の搬送ローラー対、およびこれらの搬送ローラー対を駆動する駆動モーター(図示せず)を含む。給紙トレイ141、142内に積載され載置した複数枚の用紙Sのうち最上位の用紙を送り出す送出しローラーを備え、給紙トレイ内の用紙Sを1枚ずつ下流側の搬送路に送り出す。搬送路143上のレジストローラーの上流側には、メディアセンサー80が配置される。
図2に示すようにメディアセンサー80付近においては、搬送路143は、板金で形成された上ガイド板182、および下ガイド板181を含み、所定間隔で対向するこれらのガイドの間を用紙Sが通る。
【0038】
給紙搬送部14は、給紙トレイ141等から給紙された用紙Sを搬送する。搬送路143を搬送された用紙Sは、画像形成部13で画像を形成された後、後続の後処理装置30を経由して排紙トレイ342上に排出される。用紙Sの裏面にも画像を形成する両面印刷を行う場合には、片面に画像形成された用紙Sを装置本体の下部にある両面画像形成用の搬送路144に搬送する。この搬送路144に搬送された用紙Sは、スイッチバック経路で表裏を反転された後、片面用の搬送路143に合流し、再び画像形成部13で用紙Sのもう一方の面に画像形成される。
【0039】
(操作パネル15)
操作パネル15はタッチパネル、テンキー、スタートボタン、ストップボタン等を備えており、画像形成装置10、または画像形成システム1の状態を表示し、ユーザーからの給紙トレイ141等に載置した用紙の種類等の設定、指示の入力に使用される。操作パネル15は、本実施形態において、表示部として機能する。
【0040】
(給紙装置20)
図1に示すように、給紙装置20は給紙搬送部24を備える。給紙搬送部24は、給紙部として機能する。また、給紙装置20は、給紙搬送部24の他に、制御部、記憶部、および通信部(何れも図示せず)を備え、これらは信号をやり取りするためのバス等の信号線を介して相互に接続される。給紙搬送部24は、複数の給紙トレイ241、242、243、および搬送路244を備える。各給紙トレイから搬送された用紙Sは、下流側の画像形成装置10に搬送され、メディアセンサー80で用紙特性の測定がなされたり、画像形成部13で画像形成されたりする。
【0041】
(後処理装置30)
図1に示すように、後処理装置30は後処理部31、搬送路341、および排紙トレイ342を備える。後処理部31は、ステープル処理、裁断処理、穿孔処理(パンチ穴)、クリース処理(筋入れ)、折処理、ミシン目処理、糊付けくるみ製本処理、等の処理を、画像形成装置10から搬送された用紙Sに施す。また、後処理装置30は、これらの構成要素の他に、制御部、記憶部、および通信部(何れも図示せず)を備え、これらは信号をやり取りするためのバス等の信号線を介して相互に接続される。
【0042】
図1に示すように、中間搬送装置35は、画像形成装置10および後処理装置30の間に接続されて、画像形成装置10から排出された用紙Sを後処理装置30に中継する。中間搬送装置35の搬送路上には、メディアセンサー80が設けられ、画像の定着処理が施された後の用紙Sの用紙物性を検出可能に構成される。また、中間搬送装置35は、これらの構成要素の他に、制御部、記憶部、および通信部(何れも図示せず)を備え、これらは信号をやり取りするためのバス等の信号線を介して相互に接続される。メディアセンサー80によって検出された用紙物性の検出データは、画像形成装置10の制御部11に送信される。
【0043】
(メディアセンサー80)
図2は、搬送路143に配置した内蔵型のメディアセンサー80の構成を示す側面図である。メディアセンサー80は、紙厚検知部40、坪量検知部50、表面性検知部60、および用紙押圧機構70を含む各種センサー(後述するセンサー1~10)によって構成され、複数の用紙物性を測定する。坪量検知部50は、透過型の第1の光学式センサーであり、表面性検知部60は、反射型の第2の光学式センサーである。用紙押圧機構70は、表面性検知部60により用紙物性を検知する際に、用紙を押さえる。なお、中間搬送装置35に設けられたメディアセンサー80も、上記と同様の構成を有する。
【0044】
図2に示すように、これらの構成要素のうち、搬送方向の上流側に紙厚検知部40が、下流側に坪量検知部50、表面性検知部60、および用紙押圧機構70が配置される。坪量検知部50、および表面性検知部60は、搬送方向の同じ位置に、幅方向(X方向)に並んで配置される。例えば坪量検知部50は、手前側に配置され、表面性検知部60は、奥側に配置される。上ガイド板182、および下ガイド板181の間に構成される搬送路143の上側には、表面性検知部60が配置され、下側には対向して用紙押圧機構70が配置される。搬送路143には、上流側から順に搬送ローラー対41、186、187が配置される。
【0045】
(紙厚検知部40)
紙厚検知部40は、搬送ローラー対41のニップに用紙Sが搬送されることで、用紙Sの厚みに応じて、従動ローラーの軸位置が変位する。この変位した軸の高さを測ることにより、用紙Sの厚みを測定する。搬送ローラー対41は、2つのローラーのうち下側のローラーが固定(軸中心が固定)の駆動ローラーで、上側がその駆動ローラーに向けて離接可能に付勢された従動ローラーである。上側のローラーの高さは、変位センサーにより検出される。変位センサーは、上側のローラー軸に接触するアクチュエータ(検出レバー)とこのアクチュエターの回転量を測定するエンコーダーとで構成される。紙厚検知部40からは、例えば、用紙厚み(ミクロン)が紙厚の測定結果として出力される。
【0046】
(坪量検知部50)
坪量検知部50は、用紙Sの坪量に応じた物性値を検出する透過型の光学式センサーであり、搬送路143の下方に配置した発光部と、上方に配置した受光部を備え、用紙Sを透過する光の減衰量(透過率)を測定する。坪量検知部50からは、例えば、透過率が坪量の測定結果として出力される。
【0047】
(表面性検知部60)
表面性検知部60は、筐体、発光部、コリメートレンズ、および複数の受光部を備え、以下に説明するように用紙表面からの正反射光、拡散反射光を光学的に検出する。上ガイド板182には開口部(測定領域)が設けられ、この開口部は、受光部の照射領域になる。開口部まで搬送された用紙Sは、一時停止する。その状態で下側から用紙押圧機構70により押さえられ用紙Sは、位置決めされる。開口部内の基準面は、上ガイド板182の下面を含む仮想面であり、測定時には、基準面に被測定物であるこの位置決めされた用紙Sの表面が配置される。発光部からはコリメートレンズにより略平行にされた照射光が、基準面に対して入射角75°で照射される。照射光の波長としては例えば465nmである。複数の受光部は、正反射光、および拡散反射光を受光する。例えば、反射角30度(拡散反射光用)、60度(拡散反射光用)、75度(正反射光用)の3箇所、または60度と75度の2箇所に配置される。表面性検知部60からは、この受光部の信号が平滑度(表面性1)の測定結果として出力される。この場合、表面性検知部60は、表面性センサー1として機能する。
【0048】
(用紙押圧機構70)
用紙押圧機構70は、下ガイド板181の下方に配置される。用紙押圧機構70は、押圧部、駆動モーター、カム機構、等を備える。押圧部の上面は、駆動モーターの駆動により上下動する、下ガイド板181と並行な平面であり、通常の通紙時は、下ガイド板181と略同面であるが、測定時には、上昇し、用紙Sを表面性検知部60側に押し付ける。押し付けた状態では、用紙Sの搬送は停止する。
【0049】
(画像形成装置10の詳細)
次に、
図3、
図4A、および
図4Bを参照し、画像形成装置10の構成および機能の詳細について説明する。
図3は、画像形成装置の構成を示すブロック図である。
図4Aは、画像形成装置の全体制御部の機能構成を示すブロック図である。
図4Bは、画像形成装置の記憶部の構成を示すブロック図である。
【0050】
図3に示すように、画像形成装置10は、ネットワークLを通じて、サーバー90、および他の画像形成装置10b、10cと接続している。同図においては、画像形成装置10の制御部11以外の構成については、
図1等で説明済みであることから、同一符号を付すことにより説明を省略する。
【0051】
制御部11は、全体制御部110、エンジン制御部120、メディアセンサー制御部130、後処理オプション制御部140、給紙オプション制御部150、搬送・画像形成制御部160として機能する。
【0052】
全体制御部110は、操作パネル15や、ユーザーが操作するネットワーク接続されたPC、プリンターコントローラー等の外部端末から送られた指示により印刷ジョブが入力されると、入力された印刷ジョブの印刷設定情報に基づいて、エンジン制御部120により印刷ジョブを実行させる。
【0053】
エンジン制御部120は、後処理オプション制御部140、給紙オプション制御部150、搬送・画像形成制御部160を制御することで、画像形成に関する処理を行う。後処理オプション制御部140は、後処理装置30を制御する。具体的には、後処理装置30に対して、用紙搬送タイミング、搬送する用紙の後処理の設定情報、等を送信する。給紙オプション制御部150は、給紙装置20を制御する。具体的には、給紙装置20と通信することで、用いる給紙トレイ、用紙搬送タイミング、等を送受信する。
【0054】
搬送・画像形成制御部160は、給紙搬送部14(搬送路143、144、定着部136、等の駆動モーターを含む)を制御することで、用紙Sの給紙搬送を制御する。また、画像形成部13を制御し、画像形成条件や、用紙位置に合わせた画像形成タイミングの制御を行う。
【0055】
メディアセンサー制御部130は、エンジン制御部120からの実行指示要求に応じて、紙厚センサー40、坪量センサー50、および表面性センサー60を含む各種センサーを制御し、用紙特性の測定を実行させる。また、メディアセンサー制御部130は、用紙押圧機構70の動作を制御する。
【0056】
図4Aに示すように、制御部11は、取得部111、決定部112、および設定部113として機能する。
【0057】
取得部111は、複数種類の用紙物性に関する値を取得する。
【0058】
決定部112は、取得部111によって取得された用紙物性に関する値に基づいて、用紙処理に関するパラメータを決定する。例えば、決定部112は、取得部111によって取得された用紙物性に関する値に基づいて、用紙種別および坪量の少なくともいずれかを特定する第1の処理を実行する。特定された用紙種別または坪量に基づいて、用紙処理に関するパラメータが決定される。このとき、決定部112は、第1特定部112aとして機能する。また、決定部112は、人工知能を含む学習機能および統計学的手法の少なくともいずれかを用いたプログラムに基づいて、取得部111によって取得された複数種類の用紙物性に関する値から、用紙種別および坪量の少なくともいずれかを特定することなく、用紙処理に関するパラメータを特定する第2の処理を実行する。このとき、決定部112は、第2特定部112bとして機能する。第1特定部112aおよび第2特定部112bは、制御部11からの指示に基づいて、互いに組み合わせられて機能してもよく、あるいは、それぞれ独立して機能してもよい。
【0059】
設定部113は、用紙処理に関するパラメータの決定を、第1特定部112aまたは第2特定部112bのいずれにより特定するかに関する設定を受け付ける。上記の設定は、例えば、操作パネル15を介したユーザーからの指示に基づいて受け付けられる。
【0060】
制御部11は、記憶部12に記憶されているパラメータ決定モデル(パラメータ決定モデルアルゴリズム)を用いて、パラメータ決定処理を実行する。パラメータ決定モデルは、人工知能を含む学習機能または統計学的手法を用いたプログラムによって構成され、複数種類の用紙物性に関する値から用紙処理に関するパラメータを決定する。上記のプログラムは、例えば、人工知能のように継続的に機械学習されて更新される学習済みモデルや、重回帰モデル等の統計学的手法を用いて構成されるモデルのような動的に変化するアルゴリズムに基づくプログラムである。
【0061】
パラメータ決定エンジンにおける学習機能は、例えば、複数の学習器を融合させて1つの学習器を生成するアンサンブル学習により構成される。学習方法としては、例えば、勾配ブースティング(Gradient Boosting)が採用され得る。機械学習においては、用紙Sのメディアセンサー80による検知出力を入力値、用紙処理に関するパラメータを正解ラベルとして、教師データを用いた学習が行われる。教師データは、ネットワークLに接続された他の画像形成装置10b、10c等のデータをサーバー90で集約するようにしてもよい。また、学習方法として、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン(SVM)、ベイジアン(Bsysian)ネットワーク線形判別法、非線形判別法、等が採用されてもよい。また、機械学習を実行する学習機として、CPUおよびGPU(Graphics Processing Unit)のプロセッサを用いたスタンドアロンの高性能のコンピューター、またはクラウドコンピューターを用いてもよい。パラメータ決定モデルの作成方法について、詳細は後述する。
【0062】
また、取得部111は、用紙処理を行う画像形成装置10、後処理装置30等の装置状態に関する情報をさらに取得する。この場合、決定部112は、複数種類の用紙物性に関する値と、装置状態に関する情報とから用紙処理に関するパラメータを決定する。なお、決定部112は、取得した装置状態に関する情報と、特定した用紙種別および坪量の少なくともいずれかに基づいて用紙処理に関するパラメータを決定してもよい。
【0063】
また、取得部111は、所定のタイミングで上記の装置状態に関する情報を取得する。決定部112は、複数の用紙に対して用紙処理に関するパラメータを決定することができる。さらに、決定部112は、本印刷準備の初期設定時、本印刷中の通紙ごと、所定の通紙間隔ごとに用紙処理に関するパラメータを決定することができる。
【0064】
また、決定部112によって使用される複数種類の用紙物性に関する値のそれぞれには、重み付け等によって優先度が付与され、決定部112は、付与された優先度に基づいて用紙処理に関するパラメータを決定することができる。また、付与される優先度は、上記の第1の処理と第2の処理とで異なっていてもよい。
【0065】
複数種類の用紙物性に関する値には、用紙表面状態に関する値、用紙坪量に関する値、用紙紙厚に関する値、用紙光沢に関する値、エンボス加工に関する値、用紙水分量に関する値、用紙体積抵抗に関する値、用紙折り曲げ強度に関する値、および用紙帯電量に関する値のうちの少なくとも2つが含まれる。
【0066】
用紙処理に関するパラメータには、画像形成装置10における画像形成に関するパラメータが含まれる。画像形成に関するパラメータには、定着プロセスに関するパラメータ、除電プロセスに関するパラメータ、転写プロセスに関するパラメータ、および搬送プロセスに関するパラメータの少なくともいずれかが含まれる。
【0067】
また、用紙処理に関するパラメータには、後処理装置30における後処理に関するパラメータ、または給紙装置20における給紙処理に関するパラメータが含まれる。後処理に関するパラメータには、パンチ処理に関するパラメータ、スタック処理に関するパラメータ、配布資料作成時のステープル処理に関するパラメータ、フチなしパンフレットやカード作成の断裁処理に関するパラメータ、見開きパンフレット作成時の折処理やクリース処理に関するパラメータ、チケットやクーポン等を作成するミシン目処理に関するパラメータ、および製本処理に関するパラメータの少なくともいずれかが含まれる。給紙処理に関するパラメータには、吸着ベルトによる給紙の吸着風量およびアシスト風量に関するパラメータ、捌きローラー圧および捌きローラーの稼働速度に関するパラメータの少なくともいずれかが含まれる。
【0068】
図4Bに示すように、記憶部12は、第1記憶領域121~第6記憶領域126を有する。第1記憶領域121は、本印刷前の用紙物性検知における制御パラメータ記憶領域である。第2記憶領域122は、本印刷前の補正有りの制御パラメータ記憶領域である。第3記憶領域123は、本印刷中の前回の用紙物性検知における制御パラメータ記憶領域である。第4記憶領域124は、本印刷中の現在の用紙物性検知における制御パラメータ記憶領域である。第5記憶領域125は、印刷条件設定情報・装置状態情報の記憶領域である。第6記憶領域126は、教師データベースの記憶領域である。各記憶領域には、後述するように、それぞれ対応する情報が記憶および更新され、必要に応じて制御部11によって読み出される。なお、記憶部12には、上述した情報以外の必要な情報も適宜記憶される。
【0069】
(制御パラメータ決定方式)
図5は、制御パラメータ決定方式を示す模式図である。従来の制御パラメータ決定方式は、検知データを一旦、紙種と坪量に換算して区分化してから、制御パラメータを決定するものであるが、本実施形態における制御パラメータ決定方式は、用紙物性の検知データから直接、各制御パラメータを決定するものである。例えば、画像形成装置10の制御部11は、用紙物性センサーi~iiiの検知データから定着制御パラメータを決定し、用紙物性センサーi、iii、nの検知データから転写制御パラメータを決定する。
【0070】
図6は、制御パラメータ決定方式の処理フローを説明するための図である。画像形成装置10の制御部11は、
図6のような処理フローにしたがい、ユーザーへの情報提供用として、エンボス、紙種、坪量区分の判定を行い、判定結果を操作パネル等に表示する。すなわち、制御部11は、取得した用紙物性に関する値から用紙種別を特定する第1の処理を実行する。このエンボス、紙種、坪量区分の判定結果は、基本的に画像形成等の制御には用いないが、従来の制御パラメータ決定方式との対応をとるためにユーザーに提供する。また、制御部11は、用紙物性の検知データから直接、各制御パラメータを決定する。すなわち、制御部11は、取得した用紙物性に関する値から用紙種別を特定することなく前記用紙処理に関するパラメータを決定する第2の処理を実行する。制御部11は、上記の第1の処理および第2の処理を、組み合わせて実行してもよく、適宜切り替えて別々に実行してもよい。
【0071】
図7は、画像形成処理の各プロセスにおける品質項目および各品質項目に関連する用紙物性について説明するための図である。
【0072】
図7においては、画像形成処理に含まれる定着プロセス、転写プロセス、搬送プロセス、除電プロセス等の各プロセスにおいて存在する、定着品質、2次転写品質、搬送品質、排紙品質等の品質項目と、各品質項目に関係する用紙物性との関係が示されている。各用紙物性センサーによって検出される用紙物性としては、例えば、平滑度、坪量、厚さ、光沢度、凹深さ、含水率1、含水率2、体積抵抗値、曲げ強度、帯電量等がある。
【0073】
「平滑度」は、表面性センサー1(センサー1)によって、用紙の表面性の平滑度に応じた物性を検出することによって取得される。「平滑度」は、後述する表面性検知部60によって取得され、例えば、入射角度75度で光を用紙の表面に照射し、その用紙表面からの正反射光、拡散反射光を2つのセンサーによって光学的に検出することによって取得される。「平滑度」は、用紙表面状態に関する値を構成する。
【0074】
「坪量」は、坪量センサー(センサー2)によって、用紙の坪量に応じた物性を検出することによって取得される。「坪量」は、後述する坪量検知部50によって取得され、例えば、透過型、および反射型の光学式センサーによって、用紙を透過する光の減衰量(透過率)を測定することによって取得される。
【0075】
「紙厚」は、紙厚センサー(センサー3)によって、用紙の厚みに応じた物性を検出することによって取得される。「紙厚」は、後述する紙厚検知部40によって取得され、例えば、2つの部材により用紙を挟み込み、その2つの部材間の距離を測定することによって取得される。
【0076】
「光沢度」は、表面性センサー2(センサー4)によって、用紙の表面性の光沢度に応じた物性を検出することによって取得される。「光沢度」は、所定の入射角度で光を用紙の表面に照射し、その用紙表面からの正反射光を光学的に検出することによって取得される。
【0077】
「凹深さ」は、表面性センサー3(センサー5)によって、用紙の表面性の凹凸度合いを検出することによって取得される。「凹深さ」は、例えば、大きな入射角度(80度以上90度未満)で、用紙の表面に光を照射し、この状態を撮影し、得られた画像データを画像処理することによって、表面の凹凸状態に応じた深さ量に関する指標を測定することによって取得される。「凹深さ」は、エンボス加工に関する値を構成する。
【0078】
「含水率1」は、含水率センサー(センサー6)によって、用紙の含水率に応じた物性を検出することによって取得される。「含水率1」は、例えば、用紙の透過光により、近赤外線方式のOH基の光吸収量を光学的に検出する含水率センサーによって取得される。「含水率1」は、用紙水分量に関する値を構成する。
【0079】
「含水率2」は、含水率センサー(センサー7)によって、用紙の含水率に応じた物性を検出することによって取得される。センサー7は、含水率1を取得するためのセンサー6と同じ種類のセンサーであり、センサー6とは配置される位置が異なる。「含水率1」は、画像形成装置10の定着装置(用紙の加熱、加圧処理する装置)を通過する前の用紙を測定することによって取得され、「含水率2」は、定着装置を通過した後の用紙を測定することで取得される。「含水率2」は、用紙水分量に関する値を構成する。
【0080】
「紙抵抗」は、センサー8によって、用紙の内部、または表面の電気抵抗に応じた物性を検出することによって取得される。「紙抵抗」は、例えば、用紙に高圧電圧を印加したときの、電圧および流れる電流を測定することによって取得される。「紙抵抗」は、用紙体積抵抗に関する値を構成する。
【0081】
「剛度」は、センサー9によって、用紙の剛性に応じた物性を検出することによって取得される。「剛度」は、例えば、湾曲した搬送路に用紙を搬送させたときに、曲がった搬送路で、搬送路を構成する一方の外側ガイド板を、用紙が押す力、または変位量を機械的に測定することによって取得される。「剛度」は、用紙折り曲げ強度に関する値を構成する。
【0082】
「帯電量」は、センサー10によって、用紙表面の帯電特性に応じた物性を検出することによって取得される。「帯電量」は、例えば、センサー10として非接触の電位センサーを用いることによって取得される。
【0083】
各品質項目に関係する用紙物性は、
図7において丸印で示されている。したがって、例えば、定着プロセスにおける各種制御パラメータは、用紙Sの平滑度、坪量、厚さ、光沢度、凹深さ、含水率1、含水率2、曲げ強度、帯電量の検知データから直接的に決定される。他のプロセスにおける各種制御パラメータについても同様に、関係する用紙物性の検知データから直接的に決定される。
【0084】
図8Aは、後処理における品質項目および各品質項目に関連する用紙物性について説明するための図である。
図8Bは、後処理に関するパラメータについて説明するための図である。
【0085】
図8Aにおいては、後処理プロセスにおいて存在する、パンチ不良、ステープル不良、スタック不良、断裁不良、折不良、ミシン目不良、糊付けくるみ製本の塗布不良等の品質項目と、各品質項目に関係する用紙物性との関係が示されている。各品質項目に関係する用紙物性は、
図8Aにおいて丸印で示されている。
図8Bにおいては、各品質項目と、後処理に関する各種制御パラメータとの関係が示されている。例えば、パンチ不良の品質項目に関係する用紙物性は、
図8Aに示すように、用紙Sの坪量、厚さ、曲げ強度である。また、パンチ不良の品質項目に関係する制御パラメータは、
図8Bに示すように、パンチ処理枚数、パンチ押圧量である。したがって、後処理プロセスにおけるパンチ処理枚数、パンチ押圧量の制御パラメータは、用紙Sの坪量、厚さ、曲げ強度の検知データから直接的に決定される。他の制御パラメータについても同様に、関係する品質項目に対応する用紙物性の検知データから直接的に決定される。
【0086】
図9Aは、給紙処理における品質項目および各品質項目に関連する用紙物性について説明するための図である。
図9Bは、エアー給紙タイプの給紙処理に関するパラメータについて説明するための図である。
図10A~
図10Cは、給紙装置の概略構成を説明するための図である。
【0087】
図9Aにおいては、給紙プロセスにおける給紙品質と、給紙品質に関係する用紙物性との関係が示されている。給紙品質に関係する用紙物性は、
図9Aにおいて丸印で示されている。
図9Bにおいては、給紙品質の品質項目である給紙不良、ベルト吸着不良と、エアー給紙機構による給紙処理に関する各種制御パラメータとの関係が示されている。
【0088】
図10A~
図10Cに示すように、給紙装置20は、用紙Sを所定の位置に積載して収容するための先端規制部材211、側端規制部材212、および後端規制部材213と、用紙Sを吸着して搬送方向に送り出すためのエアーサクションベルト(吸着ベルト)214とを有する。先端規制部材211は、最上位に積載された用紙Sの搬送方向(Y方向)における先端部分に向けて、フロントエアーを送出する。側端規制部材212は、最上位に積載された用紙Sの搬送方向(Y方向)における両側端部分に向けて、サイドエアーを送出する。エアーサクションベルト(吸着ベルト)214は、最上位に積載された用紙Sを積載方向(Z方向)に向けて吸引するように、吸着エアーを送出する。以下では、フロントエアーの風量、サイドエアーの風量、吸着エアーの風量を、それぞれ捌き風量、サイド風量、吸着風量と称する。捌き風量およびサイド風量は、アシスト風量とも称される。
【0089】
例えば、給紙品質に関係する用紙物性は、
図9Aに示すように、用紙Sの平滑度、坪量、厚さ、光沢度、曲げ強度である。また、給紙不良の品質項目に関係する制御パラメータは、
図9Bに示すように、捌き風量、サイド風量である。したがって、給紙プロセスにおける捌き風量、サイド風量の制御パラメータは、用紙Sの平滑度、坪量、厚さ、光沢度、曲げ強度の検知データから直接的に決定される。他の制御パラメータについても同様に、関係する品質項目に対応する用紙物性の検知データから直接的に決定される。なお、給紙に関するパラメータとして、最上位に積載された用紙Sに当接して当該用紙Sを搬送するローラーである捌きローラーの圧力(捌きローラー圧)、および当該捌きローラーの稼働速度に関するパラメータも使用され得る。
【0090】
<画像形成装置における処理の概要>
図11は、画像形成装置の印刷処理を示すフローチャートである。
図11のフローチャートに示される画像形成装置10の処理は、記憶部12にプログラムとして記憶されており、制御部11が各部を制御することにより実行される。以下の各フローチャートに示される各処理も同様である。
【0091】
(ステップS50)
制御部11は、ユーザーからの指示等に応じて、本印刷準備処理を実行する。本印刷準備処理は、印刷を行うために必要となる各種制御パラメータを設定し、試し刷り(テスト印刷)を行い、印刷の品質確認を行う処理である。本印刷準備処理について、詳細は後述する。
【0092】
(ステップS60)
制御部11は、本印刷準備処理において設定された制御パラメータを用いて、例えば、大量の印刷物を印刷する処理である本印刷処理を実行して処理を終了する。本印刷処理について、詳細は後述する。
【0093】
<本印刷準備処理>
図12は、本印刷準備処理を示すフローチャートである。
【0094】
(ステップS201)
制御部11は、給紙プロセスに関する暫定的な制御パラメータを記憶部12から取得する。
【0095】
(ステップS202)
制御部11は、給紙搬送部14や給紙装置20を制御して、トレイから用紙Sを給紙するための給紙プロセスを実行する。
【0096】
(ステップS203)
制御部11は、給紙プロセスを実行することによって、用紙Sをメディアセンサー80まで搬送する。
【0097】
(ステップS204)
制御部11は、メディアセンサー80による制御パラメータ決定処理1を実行する。制御パラメータ決定処理1は、本印刷前の準備段階の用紙設定のオペレーションにおいて、使用する用紙Sに対する初期制御パラメータを決定する処理である。制御パラメータ決定処理1について、詳細は後述する。
【0098】
(ステップS205)
制御部11は、ステップS204において決定された制御パラメータを用いて各部を制御し、用紙Sに対してテスト印刷を実行する。テスト印刷は、決定された作像条件の制御パラメータに加えて、用紙Sの表裏位置、用紙に対する画像位置等を含めた、本印刷に入る前の最終印刷物の品質確認を行うオペレーションである。
【0099】
(ステップS206)
制御部11は、ユーザーの思惑通りの印刷品質が実現されたか否かに関する入力をユーザーから受け付ける。思惑通りである場合(ステップS206:YES)、制御部11は、本印刷準備処理を終了する。思惑通りでない場合(ステップS206:NO)、制御部11は、ステップS207の処理に進む。すなわち、ステップS206の処理は、テスト印刷の結果が満足できないものである場合に、制御パラメータの値の補正を実行するための処理である。
【0100】
(ステップS207)
制御部11は、各制御パラメータの微調整(補正)の指示を受け付ける。
【0101】
(ステップS208)
制御部11は、ステップS207において補正された制御パラメータを用いて各部を制御し、再度、用紙Sに対してテスト印刷を実行する。
【0102】
(ステップS209)
制御部11は、再度、ユーザーの思惑通りの印刷品質が実現されたか否かに関する入力をユーザーから受け付ける。思惑通りでない場合(ステップS209:NO)、制御部11は、ステップS207の処理に戻る。思惑通りである場合(ステップS209:YES)、制御部11は、ステップS210の処理に進む。
【0103】
(ステップS210)
制御部11は、ステップS207において補正された制御パラメータを含む全ての制御パラメータを、記憶部12の第2記憶領域122に記憶する。
【0104】
(ステップS211)
制御部11は、各制御パラメータ、検知データ、印刷条件情報を、相互に関連付けて記憶部12の第6記憶領域126の更新用教師データベースに登録し、本印刷準備処理を終了する。
【0105】
<制御パラメータ決定処理1>
図13Aおよび
図13Bは、制御パラメータ決定処理1を示すフローチャートである。
【0106】
(ステップS301)
印刷に使用される給紙トレイが選択されると、給紙トレイに装填された用紙Sが搬送される。制御部11は、用紙物性の検知処理を開始するための用紙センサーがOFFの場合(ステップS301:NO)、用紙センサーがONになるまで待機し、用紙センサーがONになった場合(ステップS301:YES)、ステップS302の処理に進む。
【0107】
(ステップS302)
制御部11は、給紙・搬送経路上において、各用紙物性センサーにより、用紙Sの用紙物性値を検出する。ステップS302の処理について、詳細は後述する。
【0108】
(ステップS303)
制御部11は、印刷条件設定情報(両面・片面印刷、カラー印刷・単色印刷、用紙幅等)と、装置状態情報(温度、湿度、待機時間等を含む機械環境情報)を取得する。ステップS303の処理について、詳細は後述する。
【0109】
(ステップS304)
制御部11は、ステップS302の処理において取得された用紙物性の検知データ、およびステップS303の処理において取得された各種情報を記憶部12に記憶する。
【0110】
(ステップS305)
制御部11は、用紙Sの給紙・搬送、転写、および定着の各プロセスにおける各種制御パラメータを決定する。ステップS305の処理について、詳細は後述する。
【0111】
(ステップS306)
制御部11は、ステップS305の処理において決定された各種制御パラメータを、記憶部12の第1記憶領域121に記憶する。
【0112】
(ステップS307)
制御部11は、画像形成装置10に後処理装置30が接続されているか否かを判断する。接続されている場合(ステップS307:YES)、制御部11は、ステップS308の処理に進み、接続されていない場合(ステップS307:NO)、制御部11は、ステップS204の処理を終了し、
図12のステップS205の処理に進む。
【0113】
(ステップS308)
制御部11は、接続されている後処理装置30の種類を確認する。
【0114】
(ステップS309)
制御部11は、接続されている後処理装置30の種類(機能)に応じて、関連する用紙物性の検知データを記憶部12から読み出して取得する。
【0115】
(ステップS310)
制御部11は、接続されている後処理装置30の機能に応じた制御パラメータ決定処理を実行する。ステップS310の処理について、詳細は後述する。
【0116】
(ステップS311)
制御部11は、ステップS310の処理において決定された後処理装置の制御パラメータを、記憶部12の第1記憶領域121に記憶し、制御パラメータ決定処理1を終了する。
【0117】
<用紙物性検出処理>
図14は、用紙物性検出処理を示すフローチャートである。
【0118】
(ステップS401)
制御部11は、メディアセンサー80を制御して用紙Sの紙厚を測定し、測定結果を検知データとして取得する。
【0119】
(ステップS402)
制御部11は、メディアセンサー80を制御して用紙Sの坪量を測定し、測定結果を検知データとして取得する。
【0120】
(ステップS403)
制御部11は、メディアセンサー80を制御して用紙Sの表面性1(平滑度)を測定し、測定結果を検知データとして取得する。
【0121】
(ステップS404)
制御部11は、メディアセンサー80を制御して用紙Sの表面性2(光沢度)を測定し、測定結果を検知データとして取得する。
【0122】
(ステップS405)
制御部11は、メディアセンサー80を制御して用紙Sの表面性3(凹深さ)を測定し、測定結果を検知データとして取得する。
【0123】
(ステップS406)
制御部11は、メディアセンサー80を制御して用紙Sの含水率1を測定し、測定結果を検知データとして取得する。
【0124】
(ステップS407)
制御部11は、メディアセンサー80を制御して用紙Sの抵抗値を測定し、測定結果を検知データとして取得する。
【0125】
(ステップS408)
制御部11は、メディアセンサー80を制御して用紙Sの剛度を測定し、測定結果を検知データとして取得する。
【0126】
(ステップS409)
制御部11は、メディアセンサー80を制御して用紙Sの帯電量を測定し、測定結果を検知データとして取得する。
【0127】
<印刷条件設定情報・装置状態情報取得処理>
図15は、印刷条件設定情報・装置状態情報取得処理を示すフローチャートである。
【0128】
(ステップS411)
制御部11は、印刷モードや用紙幅等の印刷条件設定情報を、記憶部12の第5記憶領域125から読み出して取得する。
【0129】
(ステップS412)
制御部11は、機内温度、機内湿度、印刷トータル枚数(耐久情報)、待機時間等の装置状態情報を温度センサー、湿度センサー、タイマー等から取得する。
【0130】
<制御パラメータ決定処理の詳細>
図16は、用紙設定時の初期制御パラメータを決定する処理(パラメータ決定処理1)を説明するための図である。
【0131】
図16に示すように、制御部11は、選択部として、用紙物性の検知データ、印刷条件設定情報、および装置状態情報から各プロセスに関連する情報を選択する。各情報は、本処理を実行する際に新たに検知または更新された情報である。
【0132】
制御部11は、給紙・搬送プロセス制御パラメータ決定処理部として、選択された情報と、決定モデル1、2等を用いて、捌き風量値、給紙レジストループ量等の給紙・搬送プロセスに関する各種パラメータを決定する。
【0133】
制御部11は、転写プロセス制御パラメータ決定処理部として、選択された情報と、決定モデル10、11等を用いて、2次転写電流値、先端微電圧開始タイミング値等の転写プロセスに関する各種パラメータを決定する。
【0134】
制御部11は、定着プロセス制御パラメータ決定処理部として、選択された情報と、決定モデル20、21等を用いて、定着上温度値、定着上速度値等の定着プロセスに関する各種パラメータを決定する。
【0135】
制御部11は、除電プロセス制御パラメータ決定処理部として、選択された情報と、決定モデル30、31等を用いて、除電出力電流値、除電出力周波数等の除電プロセスに関する各種パラメータを決定する。
【0136】
続いて、説明の便宜のため、後述する本印刷時の制御パラメータ決定処理(パラメータ決定処理2、3)について説明する。
【0137】
図17は、本印刷時に用紙毎に検知した用紙物性値を用いて制御パラメータを決定する処理を説明するための図である。
【0138】
図17に示すように、制御部11は、選択部として、用紙物性の検知データ、印刷条件設定情報、および装置状態情報から各プロセスに関連する情報を選択する。ここで、各情報のうち、破線で囲まれている情報は、本処理を実行する際に新たに検知または更新された情報とし、その他の情報は、既に取得されて記憶部12に記憶されている情報としてもよい。定着処理の実施前後や機内温度によって変化する情報は、新たに検知または更新され、変化しない情報については、用紙設定時の情報がそのまま使用されてもよい。
【0139】
制御部11は、
図16における処理と同様に、選択された情報と、対応する決定モデルを用いて、給紙・搬送プロセス、転写プロセス、定着プロセス、除電プロセス等の各プロセスにおける制御パラメータを決定する。
【0140】
続いて、後処理装置の制御パラメータ決定処理について説明する。
【0141】
図18は、後処理に関する制御パラメータを決定する処理を説明するための図である。
【0142】
図18に示すように、制御部11は、選択部として、用紙物性の検知データ、印刷条件設定情報、および装置状態情報から各プロセスに関連する情報を選択する。ここで、各情報のうち、破線で囲まれている情報は、本処理を実行する際に新たに検知または更新された情報とし、その他の情報は、既に取得されて記憶部12に記憶されている情報としてもよい。
【0143】
制御部11は、後処理1制御パラメータ決定処理部として、選択された情報と、決定モデル40、41等を用いて、パンチ制限枚数、ステープル制限枚数等の後処理1に関する各種パラメータを決定する。
【0144】
制御部11は、後処理2制御パラメータ決定処理部として、選択された情報と、決定モデル50、51等を用いて、パンチ制限枚数、用紙排出速度微調整値等の後処理2に関する各種パラメータを決定する。
【0145】
制御部11は、後処理3制御パラメータ決定処理部として、選択された情報と、決定モデル60、61等を用いて、除電高圧出力電流値、除電高圧出力周波数等の後処理3に関する各種パラメータを決定する。
【0146】
<決定モデルの作成>
上述した決定モデルの作成方法について、以下詳細に説明する。以下では、決定モデルとして機械学習によって求められたアルゴリズムを使用する場合を例に挙げて説明する。
【0147】
本実施形態においては、制御パラメータを決定するために、教師データを用いて制御パラメータを決定(予測)するモデルを機械学習によって作成する。本実施形態では、機械学習の手法の一つである勾配ブースティングモデリング(GBM:Gradient Boosting Modelling)を用いて、決定モデル(予測モデル)のアルゴリズムを作成する。
【0148】
上記のGBMは、モデル作成の結果として出力される誤差分についてさらに弱学習を行い、予測の精度を上げていくモデル作成手法である。したがって、モデルによって予測として求められる制御パラメータの値の精度をさらに向上させることができる。
【0149】
具体的には、教師データとして使用するデータベース(DB)を用意して、予めGBMによる決定モデルアルゴリズムファイルが作成される(デフォルト決定モデルアルゴリズム)。ファイル形式は、バイナリー形式として作成される。なお、ファイル形式は、他の形式として作成されてもよく、例えば、決定モデルから決定モデルアルゴリズムに変換するために一般的に用いられるPMML形式として作成されてもよい。
【0150】
図19は、教師データ用データベースの一例を示す図である。
図20は、係数テーブルの一例を示す図である。
【0151】
図19に示すように、それぞれの制御パラメータごとに、教師データ用のデータベースが作成される。したがって、決定したい制御パラメータの分だけ、データベースが設けられる。各データベースには、用紙名、各用紙に対して各用紙物性を読み取ったセンサーの検出値(検知データ)、または、検出値から演算された物性値と、実験等によって求められた適正な制御パラメータ値が記録される。
【0152】
ここで、決定モデルを作成する際に、入力する因子(各センサーの検出値、または、演算値)の寄与度を求め、予測精度に与える影響が少ない入力因子を削除することによって、決定モデルアルゴリズムのファイル容量を抑えたり、処理時間を最小限に抑えたりすることができる。また、入力因子の値に適切な重み付けを行うことによって、予測される値を適切に補正することができる。
【0153】
このため、例えば、
図20に示すような係数テーブルを設けて、各入力因子に0~2等の重み付け係数を乗算する。例えば、「0」は、当該入力因子を削除することを示す。「1」は、当該入力因子の値をそのまま使用することを示す。「2」等の1より大きい値は、当該入力因子の値の影響が大きくなるように重み付けを行うことを示す。「0.5」等の1より小さい値は、当該入力因子の値の影響が小さくなるように重み付けを行うことを示す。このように重み付けを行うことによって、複数種類の用紙物性に関する値のそれぞれに優先度を付与することができ、制御部11は、優先度に基づいて各種制御パラメータを決定することができる。なお、この重み付けは、各種パラメータを決定する処理(第2の処理)と、用紙種別を特定する処理(第1の処理)それぞれについて、それぞれ異なる値を設定して使用することができる。
【0154】
図21は、制御パラメータ決定モデルアルゴリズムの作成処理を説明するための図である。
【0155】
図21に示す処理は、上記のデフォルト決定モデルアルゴリズムを作成するため処理であり、例えば、Linux(登録商標)OSがインストールされたCPUを用いて、Linux(登録商標)上でR(アール)を稼働させることによって実行され得る。なお、Rの代わりにPythonを用いて各種処理が実行されてもよい。
【0156】
図21に示すように、教師データがデータベースに登録され、データ欠損処理、データ分析処理が行われた後、各データに対して重み付け係数の乗算処理が実行される。その後、Rによるランダムフォレスト判別モデルの生成処理が実行され、決定モデルアルゴリズムが作成される。なお、制御パラメータの種類によって、重回帰式等の統計学的手法によって演算され得る場合は、重回帰式等の統計学的手法によって制御パラメータが決定されてもよい。このように、機械学習による決定方法と、統計学的手法による決定方法は、組み合わせられて使用されてもよい。
【0157】
図22は、更新用決定モデルアルゴリズムの作成処理を説明するための図である。
【0158】
図22に示す処理は、画像形成装置10内に教師データベースを設け、ユーザー(オペレーター)が制御パラメータを補正した際に、補正された情報を教師データベースに追加し、継続的に決定モデルアルゴリズムファイルを更新するための処理である。これにより、ユーザーの好みの出力品質により適合した制御パラメータを決定することができる。なお、更新された決定モデルアルゴリズムファイルを前のバージョンに戻したり、デフォルト状態に戻したりすることも可能である。
【0159】
図22に示すように、ユーザーからの操作パネル15への入力等によって補正された制御パラメータに関する情報である制御パラメータ補正情報が取得される。制御パラメータ補正情報は、更新用教師データベースに登録され、データ欠損処理、データ分析処理が行われた後、各データに対して重み付け係数の乗算処理が実行される。その後、GBMによる決定モデルの生成処理が実行され、更新用決定モデルアルゴリズムが作成される。
【0160】
図23は、決定モデルアルゴリズムの更新の実行条件の設定を受け付ける画面の一例である。
【0161】
画像形成装置10は、例えば
図23に示すような画面を操作パネル15に表示して、ユーザーから決定モデルアルゴリズムの更新の実行条件の設定を受け付ける。
【0162】
図23の画面において、ユーザーは、実行条件である更新タイミング(更新時期)について、「待機状態」または「指定時間」をタッチパネルボタンの操作によって選択できる。更新タイミングとして「指定時間」が選択された場合、ユーザーは、更新時間(更新が行われる時刻)を、タッチパネルボタンの「△」「▽」のアップ、ダウンボタンを押すことで、または、図示していないテンキーまたはソフトキー等を用いて指定する。更新時間としては、時刻以外に、曜日や日付等が設定されてもよい。あるいは、更新時間として、前回の更新からの経過時間が設定されてもよい。また、ユーザーは、実行条件である教師データの更新回数N1に関する処理の回数を更新時間の設定と同じ設定方法で設定できる。
図23の例では、所定の回数は10に設定されており、新たな教師データが10セット追加された場合に、教師データの更新回数に関する実行条件が満たされる。また、ユーザーは、
図23の画面の決定モデル欄のボタンを選択することにより、決定モデルアルゴリズムを更新するかしないか、あるいはデフォルト決定モデルアルゴリズム等の前のバージョンを選択するかを指定することができる。
【0163】
なお、上記の決定モデルアルゴリズムの作成処理は、ディープラーニング(深層学習)等のニューラルネットワークを用いた機械学習によって実行されてもよい。
【0164】
図24は、更新用決定モデルアルゴリズムの作成処理の他の例を説明するための図である。
【0165】
図24に示すように、ユーザーからの操作パネル15への入力等によって補正された制御パラメータに関する情報である制御パラメータ補正情報が取得される。制御パラメータ補正情報は、更新用教師データベースに登録され、データ欠損処理、データ分析処理が行われた後、各データに対して重み付け係数の乗算処理が実行される。その後、ディープラーニングによる決定モデルの生成処理が実行され、更新用決定モデルアルゴリズムが作成される。
【0166】
<ユーザーに対する表示>
上記のような制御パラメータ決定処理によって決定された情報は、例えば、画面に表示されてユーザーに提供される。
【0167】
図25は、特定された用紙種別に関する情報を示す画面の例である。
【0168】
図25に示すように、特定された用紙種別に関する情報は、例えば、自動用紙設定画面として操作パネル15に表示される。
図25の画面には、従来の表示方法に合わせて、特定された紙種、坪量値、紙厚に関する表示と、予測の適合率が表示される。これにより、ユーザーは、制御パラメータの決定処理の結果を、馴染みのある用紙の種類と適合率として確認することができ、自動での決定処理に対する安心感を得ることができる。
【0169】
図26は、決定された制御パラメータを表示し、ユーザーから変更する旨の指示を受け付ける操作画面の例である。
【0170】
図26に示すように、制御パラメータ決定処理によって自動的に決定された制御パラメータの値は、例えば、用紙設定のエキスパート調整画面において操作パネル15に表示される。
図26の画面には、制御パラメータ決定処理によって自動的に決定された各種制御パラメータの値が表示され、ユーザーは、決定された制御パラメータを確認したり、必要に応じて変更したりすることができる。
図26の例では、転写プロセスの制御パラメータと補正前の値が表示されている。ユーザーは、例えば、「+2」等の所定のステップの補正値を入力することによって、制御パラメータを変更することができる。また、例えば、アップ/ダウンキー等の押下によって、転写プロセス以外の給紙プロセス等の他のプロセスの制御パラメータが表示され、ユーザーによる変更を受け付けることができる。
【0171】
<本印刷処理>
図27は、本印刷処理を示すフローチャートである。
【0172】
(ステップS501)
制御部11は、給紙プロセスに関する制御パラメータを記憶部12から取得する。給紙プロセスに関する制御パラメータ以外は、印刷処理の都度決定される制御パラメータの値が用いられる。給紙プロセスに関する制御パラメータは、一つ前の印刷処理において決定された値が用いられる。同じ種類の用紙をトレイから給紙する場合、制御パラメータの値は大きく変化しないため、給紙品質には問題が生じない。
【0173】
(ステップS502)
制御部11は、給紙搬送部14や給紙装置20を制御して、トレイから用紙Sを給紙するための給紙プロセスを実行する。
【0174】
(ステップS503)
制御部11は、給紙プロセスを実行することによって、用紙Sをメディアセンサー80まで搬送する。
【0175】
(ステップS504)
制御部11は、メディアセンサー80による制御パラメータ決定処理2を実行する。制御パラメータ決定処理2について、詳細は後述する。
【0176】
(ステップS505)
制御部11は、用紙Sの搬送を一時停止させて、レジスト給紙位置において待機させる。
【0177】
(ステップS506)
制御部11は、画像形成部13を制御して画像作成(トナー像作成)を開始させる。
【0178】
(ステップS507)
制御部11は、用紙Sの搬送を再開し、レジスト給紙を開始させる。
【0179】
(ステップS508)
制御部11は、画像形成部13を制御して用紙Sにトナー像を転写させる。
【0180】
(ステップS509)
制御部11は、画像形成部13を制御して用紙Sにトナー像を加熱定着させる。
【0181】
(ステップS510)
制御部11は、メディアセンサー80による制御パラメータ決定処理3を実行する。制御パラメータ決定処理3について、詳細は後述する。
【0182】
(ステップS511)
制御部11は、両面モードの印刷であるか否かを判断する。両面モードでない場合(ステップS511:NO)、制御部11は、ステップS514の処理に進む。両面モードである場合(ステップS511:YES)、制御部11は、ステップS512の処理に進む。
【0183】
(ステップS512)
制御部11は、第1面(表面)の印刷完了であるか否かを判断する。第1面の印刷完了でない、すなわち第2面まで印刷完了している場合(ステップS512:NO)、制御部11は、ステップS514の処理に進む。第1面の印刷完了である場合(ステップS512:YES)、制御部11は、ステップS513の処理に進む。
【0184】
(ステップS513)
制御部11は、給紙搬送部14の用紙反転機構を制御して、用紙Sを両面画像形成用の搬送路144に搬送し、スイッチバック経路によって用紙Sを反転させて、ステップS505の処理に戻る。
【0185】
(ステップS514)
制御部11は、画像形成が完了した用紙Sを排紙し、後処理装置30に搬送する。
【0186】
(ステップS515)
制御部11は、所定の枚数の印刷が完了したか否かを判断し、完了していなければ(ステップS515:NO)、ステップS501の処理に戻り、完了していれば(ステップS515:YES)、本印刷処理を終了する。
【0187】
なお、上記の処理では、本印刷前の本印刷準備処理において制御パラメータが補正された場合、印刷中に求めた制御パラメータの値を用いずに、補正された制御パラメータの値を使用して印刷処理が実行されてもよい。これにより、よりユーザーの好みに適合した印刷品質を得ることができる。また、処理時間を削減するために、印刷中の制御パラメータ自動決定動作を停止して予め決定された制御パラメータを固定値として使用してもよい。また、印刷中、補正した制御パラメータの値以外は、印刷中に自動決定された制御パラメータ値を使用して印刷処理を実行してもよい。これにより、用紙に対する適切な制御パラメータの値を用いながら、ユーザーの好みに適合した印刷品質を得ることができる。これらの処理の詳細は、本印刷処理の変形例1、2として後述する。
【0188】
<制御パラメータ決定処理2、3>
図28Aおよび
図28Bは、制御パラメータ決定処理2、3を示すフローチャートである。
【0189】
(ステップS601)
制御部11は、用紙物性の検知処理を開始するための用紙センサーがOFFの場合(ステップS601:NO)、用紙センサーがONになるまで待機し、用紙センサーがONになった場合(ステップS601:YES)、ステップS602の処理に進む。
【0190】
(ステップS602)
制御部11は、給紙・搬送経路上において、各用紙物性センサーにより、用紙Sの用紙物性値を検出する。ステップS602の処理は、
図13Aに示すステップS302の処理と同様である。
【0191】
(ステップS603)
制御部11は、印刷条件設定情報(両面・片面印刷、カラー印刷・単色印刷、用紙幅等)と、装置状態情報(温度、湿度、待機時間等を含む機械環境情報)を取得する。ステップS603の処理は、
図13Aに示すステップS303の処理と同様である。
【0192】
(ステップS604)
制御部11は、ステップS602の処理において取得された用紙物性の検知データ、およびステップS603の処理において取得された各種情報を記憶部12に記憶する。
【0193】
(ステップS605)
制御部11は、用紙Sの給紙・搬送、転写、および定着の各プロセスにおける各種制御パラメータを決定する。ステップS605の処理は、
図17を用いて上述した処理である。
【0194】
(ステップS606)
制御部11は、記憶部12の第4記憶領域124に、本印刷中の現在の用紙物性検知における制御パラメータとして記憶されている給紙・搬送、転写、定着プロセスにおける各種制御パラメータを、記憶部12の第3記憶領域123に移動させて、本印刷中の前回の用紙物性検知における制御パラメータとして記憶する。
【0195】
(ステップS607)
制御部11は、ステップS605において決定された給紙・搬送、転写、定着プロセスにおける各種制御パラメータを、記憶部12の第4記憶領域124に、本印刷中の現在の用紙物性検知における制御パラメータとして記憶する。
【0196】
(ステップS608)
制御部11は、画像形成装置10に後処理装置30が接続されているか否かを判断する。接続されている場合(ステップS608:YES)、制御部11は、ステップS609の処理に進み、接続されていない場合(ステップS608:NO)、制御部11は、
図27のフローに戻る。
【0197】
(ステップS609)
制御部11は、接続されている後処理装置30の種類を確認する。
【0198】
(ステップS610)
制御部11は、接続されている後処理装置30の種類(機能)に応じて、関連する用紙物性の検知データを記憶部12から読み出して取得する。
【0199】
(ステップS611)
制御部11は、接続されている後処理装置30の機能に応じた制御パラメータ決定処理を実行する。ステップS611の処理は、
図18を用いて上述した処理である。
【0200】
(ステップS612)
制御部11は、記憶部12の第4記憶領域124に、本印刷中の現在の用紙物性検知における制御パラメータとして記憶されている後処理装置30の各種制御パラメータを、記憶部12の第3記憶領域123に移動させて、本印刷中の前回の用紙物性検知における制御パラメータとして記憶する。
【0201】
(ステップS613)
制御部11は、ステップS611において決定された後処理装置30の各種制御パラメータを、記憶部12の第4記憶領域124に、本印刷中の現在の用紙物性検知における制御パラメータとして記憶する。
【0202】
<本印刷処理の変形例1>
本印刷処理の変形例1として、本印刷前の本印刷準備処理において制御パラメータが補正された場合、印刷中に求めた制御パラメータの値を用いずに、補正された制御パラメータの値を使用して印刷処理が実行される例について説明する。
【0203】
【0204】
(ステップS701)
制御部11は、決定モデルによって決定された制御パラメータが補正されたか否かを判断する。補正されていない場合(ステップS701:NO)、制御部11は、ステップS702の処理に進み、補正されている場合(ステップS701:YES)、制御部11は、ステップS703の処理に進む。
【0205】
(ステップS702)
制御部11は、記憶部12の第4記憶領域124から、給紙処理に関する本印刷中の現在の制御パラメータを取得する。
【0206】
(ステップS703)
制御部11は、記憶部12の第2記憶領域122から、給紙処理に関する本印刷前の補正有りの制御パラメータを取得する。
【0207】
(ステップS704)
制御部11は、給紙搬送部14や給紙装置20を制御して、トレイから用紙Sを給紙するための給紙プロセスを実行する。
【0208】
(ステップS705)
制御部11は、用紙物性の検知処理を開始するための用紙センサーがOFFの場合(ステップS705:NO)、用紙センサーがONになるまで待機し、用紙センサーがONになった場合(ステップS705:YES)、ステップS706の処理に進む。
【0209】
(ステップS706)
制御部11は、給紙・搬送経路上において、各用紙物性センサーにより、用紙Sの用紙物性値を検出する。ステップS706の処理は、
図13Aに示すステップS302の処理と同様である。
【0210】
(ステップS707)
制御部11は、印刷条件設定情報(両面・片面印刷、カラー印刷・単色印刷、用紙幅等)と、装置状態情報(温度、湿度、待機時間等を含む機械環境情報)を取得する。ステップS707の処理は、
図13Aに示すステップS303の処理と同様である。
【0211】
(ステップS708)
制御部11は、ステップS706の処理において取得された用紙物性の検知データ、およびステップS707の処理において取得された各種情報を記憶部12に記憶する。
【0212】
(ステップS709)
制御部11は、用紙Sの給紙・搬送、転写、および定着の各プロセスにおける各種制御パラメータを決定する。ステップS709の処理は、
図17を用いて上述した処理である。
【0213】
(ステップS710)
制御部11は、記憶部12の第4記憶領域124に、本印刷中の現在の用紙物性検知における制御パラメータとして記憶されている給紙・搬送、転写、定着プロセスにおける各種制御パラメータを、記憶部12の第3記憶領域123に移動させて、本印刷中の前回の用紙物性検知における制御パラメータとして記憶する。
【0214】
(ステップS711)
制御部11は、ステップS709において決定された給紙・搬送、転写、定着プロセスにおける各種制御パラメータを、記憶部12の第4記憶領域124に、本印刷中の現在の用紙物性検知における制御パラメータとして記憶する。
【0215】
(ステップS712)
制御部11は、決定モデルによって決定された制御パラメータが補正されたか否かを判断する。補正されていない場合(ステップS712:NO)、制御部11は、ステップS713の処理に進み、補正されている場合(ステップS712:YES)、制御部11は、ステップS714の処理に進む。
【0216】
(ステップS713)
制御部11は、記憶部12の第4記憶領域124から、搬送、転写、定着処理に関する本印刷中の現在の制御パラメータを取得する。
【0217】
(ステップS714)
制御部11は、記憶部12の第2記憶領域122から、搬送、転写、定着処理に関する本印刷前の補正有りの制御パラメータを取得する。
【0218】
(ステップS715)
制御部11は、用紙Sを搬送する搬送プロセスを実行する。
【0219】
(ステップS716)
制御部11は、用紙Sにトナー像を転写する転写プロセスを実行する。
【0220】
(ステップS717)
制御部11は、用紙Sにトナー像を定着させる定着プロセスを実行する。
【0221】
(ステップS718)
制御部11は、両面印刷であるか否かを判断する。両面印刷である場合(ステップS718:YES)、制御部11は、ステップS719に進み、両面印刷でない場合(ステップS718:NO)、制御部11は、ステップS720に進む。
【0222】
(ステップS719)
制御部11は、第1面(表面)の印刷完了であるか否かを判断する。第1面の印刷完了でない、すなわち第2面まで印刷完了している場合(ステップS719:NO)、制御部11は、ステップS720の処理に進む。第1面の印刷完了である場合(ステップS719:YES)、制御部11は、ステップS721の処理に進む。
【0223】
(ステップS720)
制御部11は、画像形成が完了した用紙Sを画像形成装置10本体から排紙する本体排紙プロセスを実行する。
【0224】
(ステップS721)
制御部11は、給紙搬送部14の用紙反転機構を制御して、用紙Sを両面画像形成用の搬送路144に搬送し、スイッチバック経路によって用紙Sを反転させて、ステップS705の処理に戻る。
【0225】
(ステップS722)
制御部11は、画像形成装置10に後処理装置30が接続されているか否かを判断する。接続されている場合(ステップS722:YES)、制御部11は、ステップS723の処理に進み、接続されていない場合(ステップS722:NO)、制御部11は、本印刷処理を終了する。
【0226】
(ステップS723)
制御部11は、接続されている後処理装置30の種類を確認する。
【0227】
(ステップS724)
制御部11は、用紙物性を検知するための装置が設けられているか否かを判断する。設けられている場合(ステップS724:YES)、制御部11は、ステップS725の処理に進み、設けられていない場合(ステップS724:NO)、制御部11は、ステップS728の処理に進む。
【0228】
(ステップS725)
制御部11は、接続されている後処理装置30の機能に応じた制御パラメータ決定処理を実行する。ステップS725の処理は、
図28A、BのステップS601~S604、およびステップS610~S611に示す処理と同様である。
【0229】
(ステップS726)
制御部11は、記憶部12の第4記憶領域124に、本印刷中の現在の用紙物性検知における制御パラメータとして記憶されている後処理装置30の各種制御パラメータを、記憶部12の第3記憶領域123に移動させて、本印刷中の前回の用紙物性検知における制御パラメータとして記憶する。
【0230】
(ステップS727)
制御部11は、ステップS725において決定された後処理装置30の各種制御パラメータを、記憶部12の第4記憶領域124に、本印刷中の現在の用紙物性検知における制御パラメータとして記憶する。
【0231】
(ステップS728)
制御部11は、決定モデルによって決定された制御パラメータが補正されたか否かを判断する。補正されていない場合(ステップS728:NO)、制御部11は、ステップS729の処理に進み、補正されている場合(ステップS728:YES)、制御部11は、ステップS730の処理に進む。
【0232】
(ステップS729)
制御部11は、記憶部12の第4記憶領域124から、後処理に関する本印刷中の現在の制御パラメータを取得する。
【0233】
(ステップS730)
制御部11は、記憶部12の第2記憶領域122から、後処理に関する本印刷前の補正有りの制御パラメータを取得する。
【0234】
(ステップS731)
制御部11は、用紙Sに後処理を施す後処理プロセスを実行する。
【0235】
(ステップS732)
制御部11は、後処理が施された用紙Sを排紙する後処理排紙プロセスを実行し、本印刷処理を終了する。
【0236】
上記の処理により、よりユーザーの好みに適合した印刷品質を得ることができる。なお、処理時間を削減するために、印刷中の制御パラメータ自動決定動作を停止して予め決定された制御パラメータを固定値として使用してもよい。
【0237】
<本印刷処理の変形例2>
本印刷処理の変形例2として、印刷中、補正された制御パラメータの値以外は、印刷中に自動決定された制御パラメータ値を使用して印刷処理が実行される例について説明する。
【0238】
【0239】
(ステップS801~ステップS811)
ステップS801~ステップS811の処理は、
図29AのステップS701~ステップS711の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0240】
(ステップS812)
制御部11は、決定モデルによって決定された搬送処理に関する制御パラメータが補正されたか否かを判断する。補正されていない場合(ステップS812:NO)、制御部11は、ステップS813の処理に進み、補正されている場合(ステップS812:YES)、制御部11は、ステップS814の処理に進む。
【0241】
(ステップS813)
制御部11は、記憶部12の第4記憶領域124から、搬送処理に関する本印刷中の現在の制御パラメータを取得する。
【0242】
(ステップS814)
制御部11は、記憶部12の第2記憶領域122から、搬送処理に関する本印刷前の補正有りの制御パラメータを取得する。
【0243】
(ステップS815)
制御部11は、用紙Sを搬送する搬送プロセスを実行する。
【0244】
(ステップS816)
制御部11は、決定モデルによって決定された転写処理に関する制御パラメータが補正されたか否かを判断する。補正されていない場合(ステップS816:NO)、制御部11は、ステップS817の処理に進み、補正されている場合(ステップS816:YES)、制御部11は、ステップS818の処理に進む。
【0245】
(ステップS817)
制御部11は、記憶部12の第4記憶領域124から、転写処理に関する本印刷中の現在の制御パラメータを取得する。
【0246】
(ステップS818)
制御部11は、記憶部12の第2記憶領域122から、転写処理に関する本印刷前の補正有りの制御パラメータを取得する。
【0247】
(ステップS819)
制御部11は、用紙Sにトナー像を転写する転写プロセスを実行する。
【0248】
(ステップS820)
制御部11は、決定モデルによって決定された定着処理に関する制御パラメータが補正されたか否かを判断する。補正されていない場合(ステップS820:NO)、制御部11は、ステップS821の処理に進み、補正されている場合(ステップS820:YES)、制御部11は、ステップS822の処理に進む。
【0249】
(ステップS821)
制御部11は、記憶部12の第4記憶領域124から、定着処理に関する本印刷中の現在の制御パラメータを取得する。
【0250】
(ステップS822)
制御部11は、記憶部12の第2記憶領域122から、定着処理に関する本印刷前の補正有りの制御パラメータを取得する。
【0251】
(ステップS823)
制御部11は、用紙Sにトナー像を定着させる定着プロセスを実行する。
【0252】
(ステップS824)
制御部11は、両面印刷であるか否かを判断する。両面印刷である場合(ステップS824:YES)、制御部11は、ステップS825に進み、両面印刷でない場合(ステップS824:NO)、制御部11は、ステップS826に進む。
【0253】
(ステップS825)
制御部11は、第1面(表面)の印刷完了であるか否かを判断する。第1面の印刷完了でない、すなわち第2面まで印刷完了している場合(ステップS825:NO)、制御部11は、ステップS826の処理に進む。第1面の印刷完了である場合(ステップS825:YES)、制御部11は、ステップS830の処理に進む。
【0254】
(ステップS826)
制御部11は、決定モデルによって決定された排紙処理(画像形成装置10本体からの排紙処理)に関する制御パラメータが補正されたか否かを判断する。補正されていない場合(ステップS826:NO)、制御部11は、ステップS827の処理に進み、補正されている場合(ステップS826:YES)、制御部11は、ステップS828の処理に進む。
【0255】
(ステップS827)
制御部11は、記憶部12の第4記憶領域124から、排紙処理に関する本印刷中の現在の制御パラメータを取得する。
【0256】
(ステップS828)
制御部11は、記憶部12の第2記憶領域122から、排紙処理に関する本印刷前の補正有りの制御パラメータを取得する。
【0257】
(ステップS829)
制御部11は、画像形成が完了した用紙Sを画像形成装置10本体から排紙する本体排紙プロセスを実行し、ステップS834の処理に進む。
【0258】
(ステップS830)
制御部11は、決定モデルによって決定された両面搬送処理(画像形成装置10の反転搬送機構を用いた用紙Sの反転搬送処理)に関する制御パラメータが補正されたか否かを判断する。補正されていない場合(ステップS830:NO)、制御部11は、ステップS831の処理に進み、補正されている場合(ステップS830:YES)、制御部11は、ステップS832の処理に進む。
【0259】
(ステップS831)
制御部11は、記憶部12の第4記憶領域124から、両面搬送処理に関する本印刷中の現在の制御パラメータを取得する。
【0260】
(ステップS832)
制御部11は、記憶部12の第2記憶領域122から、両面搬送処理に関する本印刷前の補正有りの制御パラメータを取得する。
【0261】
(ステップS833)
制御部11は、給紙搬送部14の用紙反転機構を制御して、用紙Sを両面画像形成用の搬送路144に搬送し、スイッチバック経路によって用紙Sを反転させて、ステップS805の処理に戻る。
【0262】
(ステップS834~ステップS844)
ステップS834~ステップS844の処理は、
図29CのステップS722~ステップS732の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0263】
上記の処理により、用紙に対する適切な制御パラメータの値を用いながら、ユーザーの好みに適合した印刷品質を得ることができる。
【0264】
<画像形成システムの変形例>
上記の実施形態においては、画像形成装置10の内部にメディアセンサー80が設けられている場合を例に挙げて説明したが、本実施形態の画像形成システム1のシステム構成はこれに限定されない。以下、画像形成システム1の変形例を例示して説明する。
【0265】
図31Aは、変形例3に係る画像形成システムの概略構成を示す図である。
【0266】
図31Aに示すように、変形例3に係る画像形成システム1においては、画像形成装置10と給紙装置20との間に、中間搬送装置25が接続され、当該中間搬送装置25にメディアセンサー80が設けられる。
【0267】
これにより、画像形成装置10本体の内部にメディアセンサー80を追加することなく、本実施形態の処理を実現することができる。
【0268】
図31Bは、変形例4に係る画像形成システムの概略構成を示す図である。
【0269】
図31Bに示すように、変形例4に係る画像形成システム1においては、画像形成装置10の両面画像形成用の搬送路144にメディアセンサー80が設けられる。
【0270】
これにより、両面印刷を行う際に、用紙Sの片面に画像が定着された後の用紙Sの用紙物性を検出して制御パラメータを決定することができる。
【0271】
なお、画像形成システム1において、設けられるメディアセンサー80の個数やメディアセンサー80が設けられる位置は、上記の例に限定されず、任意の個数のメディアセンサー80が任意の位置に設けられ得る。例えば、メディアセンサー80は、給紙装置20、または後処理装置30に設けられてもよい。あるいは、メディアセンサー80は、画像形成システム1の外部にスタンドアロンで設けられてもよい。この場合、メディアセンサー80による検出データは、ネットワークや記憶媒体、またはユーザーによる入力等の任意の方法によって、画像形成装置10の決定モデルアルゴリズムに入力される。
【0272】
また、
図1等では、画像形成システム1は、画像形成装置10に、給紙装置20、後処理装置30、および中間搬送装置35等のオプション装置が接続される構成を示したが、これらのオプションがない単体の画像形成装置10によって構成されてもよい。また、上記の各実施形態において、画像形成装置10の制御部11によって実行されるものとして説明した各処理は、画像形成装置10に接続された、給紙装置20、後処理装置30、中間搬送装置35、サーバー90、プリンターコントローラー、PC等の画像形成装置10以外の他の構成の制御部によって実行されてもよい。
【0273】
<比較例>
以下、比較例として、従来の画像形成装置における制御パラメータ決定方式について説明する。
【0274】
(従来の制御パラメータ決定方式I)
図32は、比較例1に係る画像形成装置の制御パラメータ決定方式Iを示す模式図である。
図33は、比較例1に係る制御パラメータ決定方式Iを示す図である。
【0275】
従来の決定方式Iでは、ユーザーが、画像形成装置10mの操作パネル等から、使用する用紙の紙種、坪量(斤量)を入力する。画像形成装置10mの制御部は、用紙の紙種、坪量の組み合わせにより、記憶部にあらかじめ記憶されている、それぞれの制御パラメータテーブルを参照することで、定着プロセス、転写プロセス、搬送・給紙プロセスの制御パラメータを決定する。ここで搬送・給紙プロセスの制御パラメータとは、用紙の紙種/坪量に応じて、給紙トレイからの用紙の送り出しタイミング、搬送時のローラーの回転速度、または転写位置の直前に配置されたレジストローラーでの再稼働タイミングである。転写プロセスの制御パラメータとは、電子写真方式において二次転写ベルト上のトナーを用紙に転写する際の電圧・電流の出力である。定着プロセスでの制御パラメータとは、定着装置の加熱、加圧によりトナーを用紙に定着する際の、定着部材の制御温度、圧力、または用紙の搬送速度の設定である。
【0276】
図33の例では、紙種、坪量とは別に、エンボス紙情報が入力されている。画像形成装置10mの制御部は、ユーザーにより入力されたエンボス紙情報、紙種情報、および坪量情報に基づいて、決定した制御パラメータ値で、画像形成装置10m内の機能部材、すなわち定着装置、転写部、給紙搬送部を制御する。
【0277】
(従来の制御パラメータ決定方式II)
図34は、比較例2に係る画像形成装置の制御パラメータ決定方式IIを示す模式図である。
図35は、比較例2に係る制御パラメータ決定方式IIを示す図である。
【0278】
従来の決定方式IIでは、メディアセンサー80の各内部センサーから得られた検知データ(第1検知データ、または第2検知データ)に基づいて、画像形成装置10nの制御部は、紙種と坪量の判別処理を行う。制御部は、判別処理により区分化した紙種、坪量に基づいて、制御パラメータ決定処理を行い、各制御パラメータを決定する。制御パラメータ決定処理は、紙種、坪量の区分数が異なる以外は、基本的には決定方式Iと同様である。
【0279】
図35の例では、検知データに基づいて判別される紙種と坪量とは別に、エンボス紙情報が入力されている。画像形成装置10nの制御部は、ユーザーにより入力されたエンボス紙情報、紙種情報、および坪量情報に基づいて、決定した制御パラメータ値で、画像形成装置10n内の機能部材、すなわち定着装置、転写部、給紙搬送部を制御する。
【0280】
<本実施形態の画像形成システムによって実現される効果>
上記の比較例に示されるように、従来のシステムでは、検知した用紙物性値から演算によって制御パラメータを決定するための値を2次的に算出したり、算出された値を予め用意したテーブルにあてはめたりして、制御パラメータが決定される。このようなシステムにおいては、例えば、演算によって2次的な値を算出するために値に誤差が乗りやすいという問題や、予め用意したテーブルを参照して値を決定するために所定の区間(範囲)ごとに離散的に変動する値として制御パラメータを決定せざるを得ないという問題があり、最適な制御パラメータの値を決定することができない。
【0281】
これに対して、本実施形態の画像形成システム1によれば、複数種類の用紙物性に関する値を取得し、人工知能を含む学習機能および統計学的手法の少なくともいずれかを用いたプログラムに基づいて、取得した複数種類の用紙物性に関する値から、用紙処理に関するパラメータを決定する。これにより、検知データに演算を加えて2次的に用紙物性値を算出したり、予め用意したテーブルにあてはめたりすることなく、検知データから直接的に制御パラメータを自動的に決定することができる。したがって、ユーザーの知識やスキルのレベルに関わらず、用紙ごとの最適な制御パラメータを導出することができる。
【0282】
さらに、用紙種別および坪量の少なくともいずれかも特定して提示できるため、ユーザーは、従来から見慣れている方式で、容易かつ確実に自動判定の結果を把握することができ、用紙の装填違いかどうかを認識したり、設定の修正等の必要な対応を適切に行ったりすることができる。
【0283】
また、用紙処理に関するパラメータの特定を、第1特定部または第2特定部のいずれにより特定するかを設定することができるため、例えば、自らの専門知識に基づいて制御パラメータを設定および調整したいユーザーや、専門知識に乏しく自動設定を使用したいユーザー等の様々な要望に対応することができる。
【0284】
また、上記のプログラムは、動的に変化するアルゴリズムに基づくプログラムによって構成される。これにより、状況に応じてより適切な制御パラメータを導出することができる。
【0285】
また、上記の学習機能は、複数の学習器を融合させて1つの学習器を生成するアンサンブル学習により構成される。これにより、より精度良く適切な制御パラメータを導出することができる。
【0286】
また、上記の学習機能は、ニューラルネットワークにより構成される。これにより、より容易に適切な制御パラメータを導出することができる。
【0287】
また、画像形成システム1は、用紙処理を行う用紙処理装置の装置状態に関する情報をさらに取得し、複数種類の用紙物性に関する値と、装置状態に関する情報とから用紙処理に関するパラメータを決定する。これにより、複数種類の用紙物性だけでなく、装置状態も考慮して制御パラメータを決定できるため、より適切な制御パラメータを導出することができる。
【0288】
また、画像形成システム1は、所定のタイミングで用紙処理装置の装置状態に関する情報を取得し、複数の用紙に対して用紙処理に関するパラメータを決定する。これにより、長時間にわたる印刷処理や大量の枚数の印刷処理においても、持続的に適切な制御パラメータを導出して、印刷品質を確保することができる。
【0289】
また、画像形成システム1は、所定のタイミングで用紙処理装置の装置状態に関する情報を取得し、本印刷準備の初期設定時、本印刷中の通紙ごと、または所定通紙間隔ごとに、用紙処理に関するパラメータを決定する。これにより、ユーザーまたは印刷処理の都合や、求められる印刷品質等に応じて、適切なタイミングで制御パラメータを決定することができる。
【0290】
また、画像形成システム1は、上記のプログラムに基づいて、取得した用紙物性に関する値から用紙種別を特定する第1の処理と、取得した用紙物性に関する値から用紙種別を特定することなく用紙処理に関するパラメータを決定する第2の処理とを行う。これにより、第2の処理によって用紙物性に関する値から直接的に制御パラメータを決定するともに、第1の処理によって用紙種別を特定してユーザーに提示することができる。したがって、適切な制御パラメータを自動的に決定しつつ、ユーザーに対して用紙種別というわかりやすい形態で自動処理の結果を提示することができ、ユーザーに安心感や納得感を与えることができる。
【0291】
また、複数種類の用紙物性に関する値のそれぞれには優先度が付与され、画像形成システム1は、付与された優先度に基づいて用紙処理に関するパラメータを決定する。これにより、印刷品質に与える影響の寄与度が高い用紙物性の値を優先的に考慮することができ、より適切に制御パラメータを導出することができる。
【0292】
また、付与される優先度は、上記の第1の処理と第2の処理とで異なるように設定される。これにより、それぞれの処理において各用紙物性の値に適切な優先度を付与して、適切な制御パラメータおよび適切な用紙物性を導出することができる。
【0293】
また、複数種類の用紙物性に関する値は、用紙表面状態に関する値、用紙坪量に関する値、用紙紙厚に関する値、用紙光沢に関する値、エンボス加工に関する値、用紙水分量に関する値、用紙体積抵抗に関する値、用紙折り曲げ強度に関する値、および用紙帯電量に関する値のうちの少なくともいずれかを含む。これにより、各プロセスの実行品質に影響を与え得る複数種類の用紙物性を考慮して、適切な制御パラメータを導出することができる。
【0294】
また、用紙処理に関するパラメータは、画像形成装置10における画像形成に関するパラメータを含む。これにより、画像形成に関する適切な制御パラメータを設定することができ、高品質に画像形成処理を実行することができる。
【0295】
また、画像形成に関するパラメータは、少なくとも、定着プロセスに関するパラメータ、除電プロセスに関するパラメータ、転写プロセスに関するパラメータ、および搬送プロセスに関するパラメータのいずれかを含む。これにより、画像形成に必要となる各プロセスにおいて、プロセスごとに適切な制御パラメータを設定することができ、高品質に各プロセスを実行することができる。
【0296】
また、用紙処理に関するパラメータは、後処理装置30における後処理に関するパラメータ、または、給紙装置20における給紙処理に関するパラメータを含む。これにより、後処理、給紙処理に関する適切な制御パラメータを設定することができ、高品質に後処理、給紙処理を実行することができる。
【0297】
また、後処理に関するパラメータは、少なくとも、パンチ処理に関するパラメータ、スタック処理に関するパラメータ、および製本処理に関するパラメータのいずれかを含む。これにより、後処理の機能に応じて、機能ごとに適切な制御パラメータを設定することができ、高品質にそれぞれの後処理を実行することができる。
【0298】
また、給紙処理に関するパラメータは、少なくとも、吸着ベルトによる給紙の吸着風量およびアシスト風量に関するパラメータ、捌きローラー圧および捌きローラーの稼働速度に関するパラメータのいずれかを含む。これにより、給紙に必要となる各処理において適切な制御パラメータを設定することができ、高品質に給紙処理を実行することができる。
【0299】
また、画像形成システム1において、パラメータ決定装置は、自機に備えられたセンサーから複数種類の用紙物性に関する値を取得してもよい。これにより、1つの装置のみの簡単な構成によって、複数種類の用紙物性に関する値から適切な制御パラメータを導出することができる。
【0300】
また、画像形成システム1において、パラメータ決定装置は、自機と接続されたセンサーから複数種類の用紙物性に関する値を取得してもよい。これにより、パラメータ決定装置に外部機器としてセンサーを接続して、複数種類の用紙物性に関する値から適切な制御パラメータを導出することができる。
【0301】
また、画像形成システム1において、パラメータ決定装置は、用紙処理を行う用紙処理装置と接続されていてもよい。これにより、制御パラメータを決定する装置と、制御パラメータを使用する装置を別々の構成とすることができ、画像形成システム1における装置構成設計の自由度を高めることができる。
【0302】
また、画像形成システム1において、パラメータ決定装置は、画像形成装置10、給紙装置20、後処理装置30、中間搬送装置35、およびサーバー90等の他の構成のいずれにも設けられ得る。これにより、画像形成システム1における装置構成設計の自由度を高めることができる。
【0303】
以上に説明した画像形成システム1の構成は、上記の実施形態の特徴を説明するにあたって主要構成を説明したのであって、上記の構成に限られず、特許請求の範囲内において、種々改変することができる。また、一般的な画像形成システムが備える構成を排除するものではない。
【0304】
たとえば、画像形成システム1は、画像形成装置10、給紙装置20、後処理装置30、および中間搬送装置35以外の構成を含んでいてもよく、あるいは、一部の構成が含まれていなくてよい。また、画像形成装置10、給紙装置20、後処理装置30、および中間搬送装置35のそれぞれは、上記の構成要素以外の構成要素を含んでいてもよく、あるいは、上記の構成要素のうちの一部が含まれていなくてもよい。
【0305】
また、画像形成装置10、給紙装置20、後処理装置30、および中間搬送装置35は、それぞれ複数の装置によって構成されてもよく、あるいは単一の装置によって構成されてもよい。また、各構成が有する機能は、他の構成によって実現されてもよい。
【0306】
また、上記の実施形態におけるフローチャートの処理単位は、各処理の理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。処理ステップの分類の仕方によって、本願発明が制限されることはない。各処理は、さらに多くの処理ステップに分割することもできる。また、1つの処理ステップが、さらに多くの処理を実行してもよい。
【0307】
上述した実施形態に係るシステムにおける各種処理を行う手段および方法は、専用のハードウェア回路、またはプログラムされたコンピューターのいずれによっても実現することが可能である。上記プログラムは、たとえば、フレキシブルディスクおよびCD-ROM等のコンピューター読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、ハードディスク等の記憶部に転送され記憶される。また、上記プログラムは、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、システムの一機能としてその装置のソフトウエアに組み込まれてもよい。
【符号の説明】
【0308】
1 画像形成システム
10 画像形成装置
11 制御部
110 全体制御部
14 搬送部
141、142 給紙トレイ
143、144 搬送路
15 操作パネル
40 紙厚センサー
50 坪量センサー
60 表面性センサー
70 用紙押圧部
80 メディアセンサー
20 給紙装置
30 後処理装置
35 中間搬送装置
90 サーバー