(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】日射熱取得率評価方法及び日射熱取得率評価装置
(51)【国際特許分類】
H02S 50/10 20140101AFI20240620BHJP
【FI】
H02S50/10
(21)【出願番号】P 2019239289
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-10-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年9月10日にフランス マルセイユ マルセイユ・シャノー・エキシビション&コンベンションセンターにおいて開催された第36回欧州太陽光発電会議及び展示会(EU PVSEC)で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年9月17日に開催された「経済産業省 建材一体型太陽光発電(BIPV)モジュール・およびシステムに関する国際標準化事業運営委員会、同委員会」で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年10月30日にカナダ オンタリオ州 ミシサガにおいて開催された「IEC TC82 WG2 トロント 2019」で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年11月12日に開催された「経済産業省 建材一体型太陽光発電(BIPV)モジュール・およびシステムに関する国際標準化事業委員会」で発表
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】石井 久史
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0036480(US,A1)
【文献】T. Baenas, M. Machado,On the analytical calculation of the solar heat gain coefficient of a BIPV module,Energy and Building,2017年,Vol.151,p.146-156
【文献】石井 久史,BIPVモジュールおよびシステムの国際標準化に向けた建築的技術的課題,GBRC,2019年04月,Vol.44, No.2,p.13-23
【文献】石井 久史,BIPV国際標準化事業関連で熱的性能と防耐火性能をEUPVSECにて報告,PVTECニュース,2018年,Vol.80, 11月号,p.9-12
【文献】Fangzhi Chen et al.,Solar heat gain coefficient measurement of semi-transparent photovoltaic modules with indoor calorimetric hot box and solar simulator,Energy and Buildings,2012年,Vol.53,p.74-84
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 10/00-99/00
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率を評価する方法であって、
評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュールに使用される建材の、太陽光発電設備が設置されていない状態における前記建材一体型太陽光発電設備モジュール1つ当たりの日射熱取得率を取得するステップと、
評価対象の前記建材一体型太陽光発電設備モジュールに使用される前記太陽光発電設備の、前記建材一体型太陽光発電設備モジュール1つ当たりの日射熱取得率を取得するステップと、
評価対象の前記建材一体型太陽光発電設備モジュールが備える前記建材の面積比Ag及び前記太陽光発電設備の面積比Acを取得するステップと、
取得された前記建材の前記建材一体型太陽光発電設備モジュール1つ当たりの日射熱取得率及びAgの値に基づいて、評価対象の前記建材一体型太陽光発電設備モジュールにおける前記建材の日射熱取得率を算出するステップと、
取得された前記太陽光発電設備の前記建材一体型太陽光発電設備モジュール1つ当たりの日射熱取得率及びAcの値に基づいて、評価対象の前記建材一体型太陽光発電設備モジュールにおける前記太陽光発電設備の日射熱取得率を算出するステップと、
算出された前記建材の日射熱取得率及び前記太陽光発電設備の日射熱取得率に基づいて、評価対象の前記建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率を算出するステップと、
を備える日射熱取得率評価方法。
【請求項2】
前記太陽光発電設備の前記建材一体型太陽光発電設備モジュール1つ当たりの日射熱取得率を取得するステップは、
評価対象の前記建材一体型太陽光発電設備モジュールに使用される前記建材と同等の建材に、評価対象の前記建材一体型太陽光発電設備モジュールに使用される前記太陽光発電設備が複数設置された試験体を対象として、標準規格に準拠して測定された日射熱取得率を取得するステップと、
前記太陽光発電設備が設置されていない前記試験体を対象として、標準規格に準拠して測定された日射熱取得率を取得するステップと、
前記太陽光発電設備が設置された前記試験体の日射熱取得率と前記太陽光発電設備が設置されていない前記試験体の日射熱取得率に基づいて、前記太陽光発電設備の前記建材一体型太陽光発電設備モジュール1つ当たりの日射熱取得率を算出するステップと、
を備える請求項1に記載の日射熱取得率評価方法。
【請求項3】
前記太陽光発電設備の前記建材一体型太陽光発電設備モジュール1つ当たりの日射熱取得率を取得するステップは、前記太陽光発電設備が発電しているときの前記太陽光発電設備の前記建材一体型太陽光発電設備モジュール1つ当たりの日射熱取得率を取得するステップを含む請求項2に記載の日射熱取得率評価方法。
【請求項4】
前記太陽光発電設備の前記建材一体型太陽光発電設備モジュール1つ当たりの日射熱取得率を取得するステップは、
前記太陽光発電設備が発電していないときの前記太陽光発電設備の前記建材一体型太陽光発電設備モジュール1つ当たりの日射熱取得率を取得するステップと、
前記太陽光発電設備が発電しているときと発電していないときの前記
試験体の日射熱取得率の比を取得するステップと、
前記太陽光発電設備が発電していないときの前記太陽光発電設備の前記建材一体型太陽光発電設備モジュール1つ当たりの日射熱取得率と、取得された前記太陽光発電設備が発電しているときと発電していないときの前記
試験体の日射熱取得率の比の値とに基づいて、前記太陽光発電設備が発電しているときの前記太陽光発電設備の前記建材一体型太陽光発電設備モジュール1つ当たりの日射熱取得率を算出するステップと、
を備える請求項3に記載の日射熱取得率評価方法。
【請求項5】
前記太陽光発電設備が発電しているときと発電していないときの前記
試験体の日射熱取得率の比を取得するステップは、
前記試験体に設置された前記太陽光発電設備が発電しているときに標準規格に準拠して測定された前記試験体の日射熱取得率と、前記試験体に設置された前記太陽光発電設備が発電していないときに標準規格に準拠して測定された前記試験体の日射熱取得率を取得するステップと、
前記試験体に設置された前記太陽光発電設備が発電しているときの前記試験体の日射熱取得率と前記試験体に設置された前記太陽光発電設備が発電していないときの前記試験体の日射熱取得率に基づいて、前記太陽光発電設備が発電しているときと発電していないときの前記
試験体の日射熱取得率の比を算出するステップと、
備える請求項4に記載の日射熱取得率評価方法。
【請求項6】
評価対象の前記建材一体型太陽光発電設備モジュールが備える太陽光発電設備の数又は面積比に応じて、前記太陽光発電設備が発電しているときと発電していないときの前記
試験体の日射熱取得率の比として異なる値を使用する請求項4又は5に記載の日射熱取得率評価方法。
【請求項7】
評価対象の前記建材一体型太陽光発電設備モジュールが備える前記太陽光発電設備に接続される配線の、前記建材一体型太陽光発電設備モジュール1つ当たりの日射熱取得率ηlを取得するステップと、
評価対象の前記建材一体型太陽光発電設備モジュールが備える前記配線の面積比Alを取得するステップと、
取得されたηl及びAlの値に基づいて、評価対象の前記建材一体型太陽光発電設備モジュールにおける前記配線の日射熱取得率を算出するステップと、
算出された前記配線の日射熱取得率に更に基づいて、評価対象の前記建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率を算出するステップと、
を更に備える請求項1から6のいずれかに記載の日射熱取得率評価方法。
【請求項8】
前記配線は、バスバー及びフィンガー電極を含み、
前記配線の前記建材一体型太陽光発電設備モジュール1つ当たりの日射熱取得率ηlを取得するステップは、前記バスバーの前記建材一体型太陽光発電設備モジュール1つ当たりの日射熱取得率ηlを取得するステップと、前記フィンガー電極の前記建材一体型太陽光発電設備モジュール1つ当たりの日射熱取得率ηfを取得するステップとを含み、
前記配線の面積比Alを取得するステップは、前記バスバーの面積比Abを取得するステップと、前記フィンガー電極の面積比Afを取得するステップとを含み、
前記配線の日射熱取得率を算出するステップは、取得されたηb及びAbの値に基づいて、評価対象の前記建材一体型太陽光発電設備モジュールにおける前記バスバーの日射熱取得率を算出するステップと、取得されたηf及びAfの値に基づいて、評価対象の前記建材一体型太陽光発電設備モジュールにおける前記フィンガー電極の日射熱取得率を算出するステップとを含み、
算出された前記バスバーの日射熱取得率及び前記フィンガー電極の日射熱取得率に更に基づいて、評価対象の前記建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率を算出する請求項7に記載の日射熱取得率評価方法。
【請求項9】
建材一体型太陽光発電設備モジュールが備える建材及び太陽光発電設備を別々に測定して得られた日射熱取得率に基づいて算出された前記建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率と、前記建材一体型太陽光発電設備モジュールを直接測定して得られた前記建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率との差を補正するための補正係数を取得するステップと、
算出された評価対象の前記建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率を、前記補正係数を使用して補正するステップと、
を更に備える請求項1から8のいずれかに記載の日射熱取得率評価方法。
【請求項10】
評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュールに使用される建材の、太陽光発電設備が設置されていない状態における前記建材一体型太陽光発電設備モジュール1つ当たりの日射熱取得率と、評価対象の前記建材一体型太陽光発電設備モジュールに使用される前記太陽光発電設備の、前記建材一体型太陽光発電設備モジュール1つ当たりの日射熱取得率とを保持する日射熱取得率保持部と、
評価対象の前記建材一体型太陽光発電設備モジュールが備える前記建材の面積比Ag及び前記太陽光発電設備の面積比Acを取得する評価対象情報取得部と、
取得された前記建材の前記建材一体型太陽光発電設備モジュール1つ当たりの日射熱取得率及びAgの値に基づいて、評価対象の前記建材一体型太陽光発電設備モジュールにおける前記建材の日射熱取得率を算出し、取得された前記太陽光発電設備の前記建材一体型太陽光発電設備モジュール1つ当たりの日射熱取得率及びAcの値に基づいて、評価対象の前記建材一体型太陽光発電設備モジュールにおける前記太陽光発電設備の日射熱取得率を算出し、算出された前記建材の日射熱取得率及び前記太陽光発電設備の日射熱取得率に基づいて、評価対象の前記建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率を算出する評価対象日射熱取得率算出部と、
を備える日射熱取得率評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、日射熱取得率評価方法及び日射熱取得率評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(Net Zero Energy Building:ZEB)や、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(Net Zero Energy House:ZEH)の普及に向けた取り組みが行われている。ZEBとは、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物を指す。ZEBを実現するためには、外皮の断熱性能等の向上、高効率な設備システムの導入、再生可能エネルギーの導入などが重要である。再生可能エネルギーとしては、例えば、太陽電池モジュールが利用される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽電池モジュールを一体的に備える建材一体型太陽光発電設備モジュールも開発されているが、現状では十分に普及していない。安全で高性能な建材一体型太陽光発電設備モジュールの普及を促進するためには、建材一体型太陽光発電設備モジュールの性能を精確に評価する技術が不可欠である。とくに、日射熱取得率は、建材一体型太陽光発電設備モジュールの外皮としての性能を評価する上で重要である。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みてなされ、その目的は、建材の日射熱取得率を精確に評価するための技術を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の日射熱取得率評価方法は、建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率を評価する方法であって、評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュールに使用される建材の、太陽光発電設備が設置されていない状態におけるモジュール単位の日射熱取得率ηgを取得するステップと、評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュールに使用される太陽光発電設備の、モジュール単位の日射熱取得率ηcを取得するステップと、評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュールが備える建材の面積比Ag及び太陽光発電設備の面積比Acを取得するステップと、取得されたηg及びAgの値に基づいて、評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュールにおける建材の日射熱取得率を算出するステップと、取得されたηc及びAcの値に基づいて、評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュールにおける太陽光発電設備の日射熱取得率を算出するステップと、算出された建材の日射熱取得率及び太陽光発電設備の日射熱取得率に基づいて、評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率を算出するステップと、を備える。
【0007】
本開示の別の態様は、日射熱取得率評価装置である。この装置は、評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュールに使用される建材の、太陽光発電設備が設置されていない状態におけるモジュール単位の日射熱取得率ηgと、評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュールに使用される太陽光発電設備の、モジュール単位の日射熱取得率ηcとを保持する日射熱取得率保持部と、評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュールが備える建材の面積比Ag及び太陽光発電設備の面積比Acを取得する評価対象情報取得部と、取得されたηg及びAgの値に基づいて、評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュールにおける建材の日射熱取得率を算出し、取得されたηc及びAcの値に基づいて、評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュールにおける太陽光発電設備の日射熱取得率を算出し、算出された建材の日射熱取得率及び太陽光発電設備の日射熱取得率に基づいて、評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率を算出する評価対象日射熱取得率算出部と、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】建材一体型太陽光発電設備モジュールを使用した建築物の例を示す図である。
【
図2】建材一体型太陽光発電設備モジュールの試験体の例を示す図である。
【
図3】建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率と、建材一体型太陽光発電設備モジュールに備えられた太陽光発電セルのモジュール単位の枚数との関係を示す図である。
【
図4】実施の形態に係る日射熱取得率評価方法の手順を示すフローチャートである。
【
図5】評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュールの例を示す図である。
【
図6】実施の形態に係る日射熱取得率評価装置の構成を示す図である。
【
図7】第2の実施の形態に係る日射熱取得率評価方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
図1は、建材一体型太陽光発電設備モジュールを使用した建築物の例を示す。
図1に示した建築物1では、屋根2に建材一体型太陽光発電設備モジュール3が使用され、外壁4に建材一体型太陽光発電設備モジュール5が使用されている。建材一体型太陽光発電設備モジュール3は、太陽光発電設備を一体的に備える屋根材である。建材一体型太陽光発電設備モジュール5は、太陽光発電設備を一体的に備える外壁材である。建築物1において必要とされる電力の少なくとも一部は、建材一体型太陽光発電設備モジュール3、5の太陽光発電設備により発電された電力によって賄われる。これにより、建築物1における消費エネルギーを低減させることができる。
【0011】
建材一体型太陽光発電設備モジュール3、5は、屋根2や外壁4などの外皮を構成するので、発電性能だけでなく、外皮としての性能も求められる。とくに、屋内の熱を屋外に逃がさないようにするためには断熱性(U値)が高いことが求められ、不必要な日射熱を屋内に取り入れないようにするためには日射熱取得率(G値)が低いことが求められる。
【0012】
建築物の屋根などに建材一体型でない太陽光発電設備を設置する場合、一般に、第三者機関によって型式認証を受けた太陽光発電設備が使用される。これにより、建築物に設置される太陽光発電設備の安全性及び性能を担保することができる。また、仕様が画一化されることにより、太陽光発電設備や建築物のコストを低減させることができる。
【0013】
他方、建材一体型太陽光発電設備モジュールは、基準となる法規、規格、ガイドライン、標準仕様などが未整備である。したがって、安全で高性能な製品を市場に供給するために、これらの基準の整備が求められているが、そのためには、日射熱取得率などの性能を精確に評価するための統一的な方法が必要である。
【0014】
建材一体型太陽光発電設備モジュールは、建築物の外皮を構成する建材であるから、様々なサイズのものが流通することが想定される。そのため、一般的な試験装置によって全ての商品を実大サイズで試験することは難しい。また、外皮としてのデザイン性を向上させるために、多様なデザイン、形状、色の建材一体型太陽光発電設備モジュールが開発されつつある。したがって、多様なモジュールの性能を統一的に評価するためには、実製品と同等又はより厳しい条件となる仕様やサイズの代表サンプルを試験し、その試験結果に基づいて実際の製品の性能を評価する方法が望ましい。
【0015】
建材一体型太陽光発電設備モジュールは、不具合の発生で発電ができなかったり、何らかの要因で発電が停止されていたりしない限り、日射がある期間の多くは発電状態にあるので、実際の設置状況を精確に再現するためには、発電状態における日射熱取得率の方がより重要である。建材一体型太陽光発電設備モジュールの太陽光発電設備として、近赤外線に感度のある半導体セルを採用する場合、光電効果により近赤外線が電力に変換されるため、屋内に入射する近赤外線が減少するとともに、太陽光発電設備によって吸収された光が熱として屋内に再放射(二次放射)する量も減少する。これにより、非発電時よりも発電時の方が日射熱取得率が向上することが本発明者の実験により明らかになっている。したがって、建材一体型太陽光発電設備モジュールの発電時における日射熱取得率を精確に評価する方法が求められる。
【0016】
このような課題を解決するために、本実施の形態に係る建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率評価方法においては、建材一体型太陽光発電設備モジュールが備える建材(本開示では建材がガラスである場合を例にとり説明する)と、太陽光発電セルと、バスバーやタブ線及びフィンガー電極などの配線の日射熱取得率をそれぞれ個別に評価し、それらの値に基づいて、建材一体型太陽光発電設備モジュール全体の日射熱取得率を評価する。これにより、多様な建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率を統一的に評価することができる。また、建築物に使用される建材一体型太陽光発電設備モジュールの仕様が変更された場合であっても、再試験することなく変更後の建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率を評価することができるので、建築期間やコストの増大を抑えることができる。
【0017】
また、本実施の形態に係る建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率評価方法においては、標準的なサイズの代表サンプルを試験体として試験を実施し、建材一体型太陽光発電設備モジュールが備える建材と、太陽光発電セルと、バスバーやフィンガー電極などの配線の日射熱取得率をそれぞれ個別に評価する。これにより、実製品を対象とした試験を実施しなくても、実製品の日射熱取得率を精確に評価することができる。
【0018】
さらに、本実施の形態に係る建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率評価方法においては、建材一体型太陽光発電設備モジュールの発電時における日射熱取得率を評価するために、建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率を算出する際の太陽光発電セルの日射熱取得率として、発電時における太陽光発電セルの日射熱取得率を使用する。これにより、実製品が施工されて使用される状態での日射熱取得率をより精確に評価することができる。
【0019】
図2は、建材一体型太陽光発電設備モジュールの試験体の例を示す。試験体10は、屋根材や外壁材などの建材を構成するガラス11と、複数の太陽光発電セル12と、それぞれの太陽光発電セル12に接続されたフィンガー電極14と、それぞれのフィンガー電極14に接続されたバスバー13とを備える。
図2の例では、試験体10に、太陽光発電セル12が5行5列に25個設置されている。試験体10に設置される太陽光発電セル12の数及びレイアウトは、建材一体型太陽光発電設備モジュールの種類、施工場所、試験装置の仕様などに応じて任意に変更されてもよい。ガラス11は、太陽光のうち太陽光発電セル12が発電に利用する波長の光を透過する材質で形成された板材である。試験体10のガラス11は、評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュールを構成するガラスと同様の材質及び厚さを有する。ガラス11は、合わせガラスであることが好ましい。建材一体型太陽光発電設備モジュールが、ガラス11に代えて、透明又は半透明な樹脂などで形成された板材を含む場合は、その板材を含む試験体10が使用される。この試験体10を使用して、標準規格に準拠した測定方法により、試験体10全体、ガラス11のみ、太陽光発電セル12のみ、バスバー13のみ、フィンガー電極14のみの日射熱取得率を測定する。ガラス11のみ、太陽光発電セル12のみ、バスバー13のみ、フィンガー電極14のみの日射熱取得率の総和は、試験体10全体の日射熱取得率に等しいと考えられるので、いずれか1つの測定を省略して他の測定結果から算出してもよい。
【0020】
図3は、建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率と、建材一体型太陽光発電設備モジュールに備えられた太陽光発電セルのモジュール単位の枚数との関係を示す。白丸は、非発電時の太陽光発電セル12の日射熱取得率(G値)を示し、黒丸は、発電時の太陽光発電セル12の日射熱取得率(G値)を示す。太陽光発電セル12の日射熱取得率(G値)は、太陽光発電セル12のモジュール単位の枚数(モジュール面積に対するセル面積比)に依存することが分かっている。さらに、発電時と非発電時とで、G値のセル面積比に対する変化は異なることが分かっている。前述したように、太陽光発電セルにおいて太陽光の一部が電力に変換されることにより、太陽光発電セルの光吸収による発熱が抑えられるので、太陽光発電セルから屋内への二次放射の量も抑えられる。そのため、太陽光発電セルのモジュール単位の枚数(面積比、密度、開口率)の増加による日射熱取得率の低減の勾配は、非発電時よりも発電時の方が大きくなる。太陽光発電セルの種類ごとに、G値のセル枚数又はセル面積比に対する依存性を予め実測により取得しておけば、その太陽光発電セルを備える建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率を評価する際に、建材一体型太陽光発電設備モジュールが備える太陽光発電セルのセル面積比に基づいて太陽光発電セルのG値を算出することができるので、より精確に建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率を評価することができる。
【0021】
図4は、実施の形態に係る日射熱取得率評価方法の手順を示すフローチャートである。まず、事前準備として、上述したように、非発電時の太陽光発電セル12のセル面積比に対するG値の傾きを算出する(S10)。具体的には、太陽光発電セル12のセル面積比の異なる少なくとも2種類(精度の観点から好ましくは3種類以上)の試験体10のG値を実測し、実測したG値をセル枚数又はセル面積比に対してグラフ化することにより、非発電時のG値の傾きを算出する。例えば、
図3に示したように、太陽光発電セル12を9個、16個、25個備える試験体10の日射熱取得率を、国際標準化機構(International Organization for Standardization:ISO)の国際規格ISO19467に準拠して測定し、それらのG値をセル枚数又はセル面積比に対してプロットしたときの近似直線を表す方程式を算出してもよい。つづいて、発電時の太陽光発電セル12のセル面積比に対するG値の傾きを同様に算出する(S11)。これらの傾きは、太陽光発電セルの種類によって異なりうるので、太陽光発電セルの種類ごとに算出しておくことが好ましい。これらの測定は、複数の試験機関などによるラウンドロビンテストによって実施されてもよい。
【0022】
次に、非発電時における試験体10の日射熱取得率を測定する(S13)。日射熱取得率は、ISO19467に準拠して測定してもよいし、その他の標準規格に準拠して測定してもよい。つづいて、発電時における試験体10の日射熱取得率を同様に測定する(S14)。
【0023】
試験体10を構成するガラス11のみの日射熱取得率を測定する(S14)。ガラス11の日射熱取得率は、ISO19467に準拠して測定してもよいし、ISO9050に即した分光試験を実施してもよい。ガラス11の日射熱取得率の測定結果に基づいて、ガラス11のモジュール単位の日射熱取得率ηgを算出する(S16)。
【0024】
試験体10を構成するバスバー13のみの日射熱取得率を測定する(S18)。バスバー13の日射熱取得率は、ISO19467に準拠して測定してもよいし、ISO9050に即した分光試験を実施してもよい。バスバー13の日射熱取得率の測定結果に基づいて、バスバー13のモジュール単位の日射熱取得率ηbを算出する(S20)。
【0025】
試験体10を構成するフィンガー電極14のみの日射熱取得率を測定する(S22)。フィンガー電極14の日射熱取得率は、ISO19467に準拠して測定してもよいし、ISO9050に即した分光試験を実施してもよい。フィンガー電極14の日射熱取得率の測定結果に基づいて、フィンガー電極14のモジュール単位の日射熱取得率ηfを算出する(S24)。
【0026】
試験体10の日射熱取得率から、ガラス11のみの日射熱取得率、バスバー13のみの日射熱取得率、フィンガー電極14のみの日射熱取得率の寄与を差し引くことにより、太陽光発電セル12のみの日射熱取得率を算出する。算出された太陽光発電セル12のみの日射熱取得率を、試験体10に設置された太陽光発電セル12の数で除すことにより、太陽光発電セル12の1個あたりの日射熱取得率ηcを算出する(S26)。日射熱取得率ηcとして、太陽光発電セル12のモジュール単位の日射熱取得率を算出してもよい。
【0027】
試験体10の非発電時における日射熱取得率の測定値と、試験体10の発電時における日射熱取得率の測定値に基づいて、非発電時と発電時の日射熱取得率の比Peを算出する(S28)。Peは、例えば、試験体10全体の非発電時における日射熱取得率をΣη、試験体10全体の発電時における日射熱取得率をΣηmとすると、次式で表される。
Pe=1-(Ση-Σηm)/Ση (式1)
【0028】
評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュールのサイズ、太陽光発電セルの数、面積、バスバー及びフィンガー電極の面積などの情報を取得する(S30)。これらの情報に基づいて、評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュール全体の非発電時及び発電時における日射熱取得率Gを算出する(S32)。非発電時の日射熱取得率DCGOP及び発電時の日射熱取得率DCGMPPは、例えば、太陽光発電セルの面積比又は数をAc、ガラスの面積比をAg、バスバーの面積比をAb、フィンガー電極の面積比をAfとすると、次式で表される。ここで面積比とは、モジュールの表面積に対する各部材(本開示では、ガラス11、太陽光発電セル12、バスバー13、フィンガー電極14)の発電に寄与する面の表面積の割合を意味し、Ac+Ag+Ab+Af=1である。
DCGOP=ηc・Ac+ηg・Ag+ηb・Ab+ηf・Af (式2)
DCGMPP=ηc・Ac・Pe+ηg・Ag+ηb・Ab+ηf・Af (式3)
【0029】
上述したように、太陽光発電セルのG値はセル枚数又はセル面積比に依存するので、非発電時と発電時の日射熱取得率の比Peもセル枚数又はセル面積比に依存する。したがって、試験体10とは異なるセル枚数又はセル面積比の太陽光発電セルを備える建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率を評価する場合は、太陽光発電セルのセル枚数又はセル面積比に応じてPeを算出して式3に代入すればよい。例えば、モジュール単位の太陽光発電セルのセル枚数が12枚のときの発電時のG値を求めたい場合は、S10及びS11において算出された式を使用して、
図3に示すように、太陽光発電セルのセル枚数が12枚のときの非発電時のG値η
12と発電時のG値ηm
12を算出し、それらの値を式1に代入して、セル12枚のときの比Pe
12を求める。
Pe
12=1-(Ση
12-Σηm
12)/Ση
12 (式4)
式4で求めたPe
12を式3に代入して、発電時のG値を求めることができる。
DCG
MPP=ηc・Ac・Pe
12+ηg・Ag+ηb・Ab+ηf・Af (式5)
【0030】
図5は、評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュールの例を示す。評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュール20のガラス21の面積、太陽光発電セル22の数、バスバー23及びフィンガー電極24の面積は、試験体10とは異なるが、試験体10を使用した試験によって、それぞれのモジュール単位の日射熱取得率が評価されているので、それらの日射熱取得率の値を用いて、建材一体型太陽光発電設備モジュール20全体の日射熱取得率を算出することができる。このように、本実施の形態の日射熱取得率評価方法によれば、建材一体型太陽光発電設備モジュール20を構成するガラス21、太陽光発電セル22、バスバー23、フィンガー電極24などの要素の日射熱取得率を個別に評価し、それらの値に基づいて建材一体型太陽光発電設備モジュール20全体の日射熱取得率を算出するので、多様なサイズやデザインの建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率を統一的かつ精確に評価することができる。これにより、建材一体型太陽光発電設備モジュールの安全性や性能を客観的に担保することができるので、建材一体型太陽光発電設備モジュールの普及を促進することができ、ひいては、ZEBやZEHの実現に貢献することができる。
【0031】
図6は、実施の形態に係る日射熱取得率評価装置50の構成を示す。日射熱取得率評価装置50は、通信装置51、表示装置52、入力装置53、記憶装置70、及び処理装置60を備える。日射熱取得率評価装置50は、サーバ装置であってもよいし、パーソナルコンピュータなどの装置であってもよいし、携帯電話端末、スマートフォン、タブレット端末などの携帯端末であってもよい。
【0032】
通信装置51は、通信網を介した他の装置との間の通信を制御する。通信装置51は、有線又は無線の任意の通信方式により通信を行ってもよい。表示装置52は、処理装置60により生成される画面を表示する。表示装置52は、液晶表示装置、有機EL表示装置などであってもよい。入力装置53は、担当者による指示入力を処理装置60に伝達する。入力装置53は、マウス、キーボード、タッチパッドなどであってもよい。表示装置52及び入力装置53は、タッチパネルとして実装されてもよい。
【0033】
記憶装置70は、処理装置60により使用されるプログラム、データなどを記憶する。記憶装置70は、半導体メモリ、ハードディスクなどであってもよい。記憶装置70は、試験体日射熱取得率保持部71及び発電効果保持部72を備える。
【0034】
処理装置60は、試験結果取得部61、試験体日射熱取得率算出部62、発電効果算出部63、評価対象情報取得部64、及び評価対象日射熱取得率算出部65を備える。これらの構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIなどにより実現され、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、またはハードウエアとソフトウエアの組合せなど、いろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0035】
試験結果取得部61は、通信装置51又は入力装置53を介して、試験体10の試験結果を取得する。試験結果取得部61は、非発電時における試験体10全体の日射熱取得率、発電時における試験体10全体の日射熱取得率、試験体10のガラス11のみの日射熱取得率、試験体10のバスバー13のみの日射熱取得率、試験体10のフィンガー電極14のみの日射熱取得率を取得する。
【0036】
試験体日射熱取得率算出部62は、試験結果取得部61により取得された試験結果に基づいて、試験体10を構成するガラス11、太陽光発電セル12、バスバー13、及びフィンガー電極14のそれぞれのモジュール単位の日射熱取得率を算出し、試験体日射熱取得率保持部71に格納する。
【0037】
発電効果算出部63は、試験結果取得部61により取得された試験結果に基づいて、試験体10の非発電時と発電時の日射熱取得率の比Peを算出し、発電効果保持部72に格納する。発電効果算出部63は、上述したように、非発電時及び発電時の太陽光発電セルの日射熱取得率のセル枚数又はセル面積比に対する依存性を表す式を使用して、評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュールの非発電時と発電時の日射熱取得率の比Penを算出する。
【0038】
評価対象情報取得部64は、評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュールのサイズ、太陽光発電セルの数、面積、バスバー及びフィンガー電極の面積などの情報を取得する。
【0039】
評価対象日射熱取得率算出部65は、評価対象情報取得部64により取得された情報と、試験体日射熱取得率保持部71に格納されたモジュール単位の日射熱取得率と、発電効果保持部72に格納された非発電時と発電時の日射熱取得率の比に基づいて、評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュール全体の発電時における日射熱取得率Gを算出する。
【0040】
試験体10の試験結果に基づいて算出されたモジュール単位の日射熱取得率と、非発電時と発電時の日射熱取得率の比を外部から取得して試験体日射熱取得率保持部71及び発電効果保持部72に格納する場合は、試験結果取得部61、試験体日射熱取得率算出部62、及び発電効果算出部63は設けられなくてもよい。
【0041】
[第2の実施の形態]
試験体10を構成する太陽光発電セル12のみの日射熱取得率、ガラス11のみの日射熱取得率、バスバー13のみの日射熱取得率、フィンガー電極14のみの日射熱取得率を、ISO9050などの標準規格に準拠して試験した測定値に、それぞれの面積比を乗じて加重平均化することにより算出した試験体10の日射熱取得率CGOPは、ISO19467などの標準規格に準拠して直接測定した試験体10の日射熱取得率TGOPと合致するはずであるが、試験方法、二次放射の寄与などの差異に起因して、両者が合致しない場合があることが本発明者による実験で明らかになっている。したがって、第2の実施の形態では、この差異を補正する方法を提案する。
【0042】
本実施の形態の日射熱取得率評価方法においては、建材一体型太陽光発電設備モジュールが備えるガラス11、太陽光発電セル12、バスバー13、及びフィンガー電極14を別々に測定して得られた日射熱取得率に基づいて算出された建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率CGOPと、建材一体型太陽光発電設備モジュールを直接測定して得られた建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率TGOPとの差を補正するための補正係数を取得するステップと、第1の実施の形態の日射熱取得率評価方法によって算出された評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率DCGOPを、補正係数を使用して補正するステップとを更に備える。
【0043】
より具体的には、CGOPとTGOPが比例すると仮定し、それらの比である補正係数cf=TGOP/CGOPを試験体10による試験によって決定しておく。
【0044】
試験によって予め決定されたcfの値を使用して、評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュールの非発電時の日射熱取得率DCGOP及び発電時の日射熱取得率DCGMPPは、次式によって算出される。
DCGOP=(ηc・Ac+ηg・Ag+ηb・Ab+ηf・Af)cf (式2’)
DCGMPP=(ηc・Ac・Pe+ηg・Ag+ηb・Ab+ηf・Af)cf (式3’)
式2’及び式3’において、Ac+Ag+Ab+Af=1である。補正係数cfとして、太陽光発電セル12の発電時と非発電時とで同じ値を使用してもよいし、別々の値を使用してもよい。前者の場合、cfは、太陽光発電セル12の非発電時の試験によって決定してもよいし、発電時の試験によって決定してもよいし、いずれの試験によって決定するのかが規格によって定められてもよい。
【0045】
この日射熱取得率評価方法によれば、評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュールが備えるガラス11、太陽光発電セル12、バスバー13、及びフィンガー電極14が任意の面積比で構成されていても、全体の日射熱取得率を精確に評価することができる。また、簡易な方法によって建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率の評価精度を向上させることができる。
【0046】
図7は、第2の実施の形態に係る日射熱取得率評価方法の手順を示すフローチャートである。
図4と同じ番号を付したステップは、第1の実施の形態に係る日射熱取得率評価方法と同様である。第1の実施の形態に係る日射熱取得率評価方法と異なる点について説明する。
【0047】
第2の実施の形態に係る日射熱取得率評価方法においては、試験体10を構成する太陽光発電セル12のみの日射熱取得率を測定する(S40)。太陽光発電セル12の日射熱取得率は、ISO19467に準拠して測定してもよいし、ISO9050に即した分光試験を実施してもよい。太陽光発電セル12の日射熱取得率の測定結果に基づいて、太陽光発電セル12のモジュール単位の日射熱取得率ηcを算出する(S42)。
【0048】
試験体10におけるガラス11、太陽光発電セル12、バスバー13、及びフィンガー電極14の面積比と、S16、S42、S20、及びS24において算出されたそれぞれの日射熱取得率ηg、ηc、ηb、及びηfとに基づいて算出された試験体10の日射熱取得率CGOPと、S12又はS13において測定された試験体10の日射熱取得率TGOPとから、補正係数cfを算出する(S44)。
【0049】
評価対象の建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率を評価する際には、S32において算出された日射熱取得率を、補正係数cfを使用して補正する(S46)。
【0050】
この日射熱取得率評価方法によれば、建材一体型太陽光発電設備モジュールの日射熱取得率を更に精確に評価することができる。
【0051】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示すにすぎない。また、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【0052】
実施の形態では、建材一体型太陽光発電設備(BIPV)モジュールの日射熱取得率を評価する方法について説明したが、この方法は、建物据付型太陽光発電設備(BAPV)モジュールの日射熱取得率を評価するためにも使用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 建築物、2 屋根、3 建材一体型太陽光発電設備モジュール、4 外壁、5 建材一体型太陽光発電設備モジュール、10 試験体、11 ガラス、12 太陽光発電セル、13 バスバー、14 フィンガー電極、20 建材一体型太陽光発電設備モジュール、21 ガラス、22 太陽光発電セル、23 バスバー、24 フィンガー電極、50 日射熱取得率評価装置、61 試験結果取得部、62 試験体日射熱取得率算出部、63 発電効果算出部、64 評価対象情報取得部、65 評価対象日射熱取得率算出部、71 試験体日射熱取得率保持部、72 発電効果保持部。