(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 16/00 20060101AFI20240621BHJP
F25D 17/08 20060101ALI20240621BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
F25D16/00
F25D17/08 306
F25D11/00 101B
(21)【出願番号】P 2020087067
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】西村 晃一
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-172849(JP,A)
【文献】特開昭61-228276(JP,A)
【文献】特開昭58-138955(JP,A)
【文献】特開2015-098971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 16/00
F25D 17/08
F25D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却サイクルの一部である冷却器と
圧縮機と、前記冷却器の入口パイプと熱的に接触する蓄冷材と、前記冷却器及び前記蓄冷材を収納すると共に庫内と仕切られた冷却室と、前記冷却室内で前記冷却器と前記蓄冷材を断熱する断熱部材と、前記冷却器または前記蓄冷材の少なくとも一方により生成された冷気を庫内に循環させる冷却ファンと、前記冷却ファンによる風を前記冷却器と前記蓄冷材に選択的に流す風路切替手段と、
前記冷却サイクルと前記冷却ファンと前記風路切替手段とを制御する制御部と、
前記庫内の温度を検知する庫内センサと、を備え
、前記制御部は、前記庫内センサが所定温度以上になった場合に、前記圧縮機を運転して前記冷却器のみに風を流す第一の冷却モードで前記庫内を冷却し、次回、前記庫内センサが前回と同じ所定温度以上になった場合は、前記圧縮機を停止して前記蓄冷材のみに風を流す第二の冷却モードで前記庫内を冷却するように、前記風路切替手段の切り替え制御をする冷蔵庫。
【請求項2】
前記制御部は、
前記庫内センサが所定温度以上になった場合に、前記圧縮機を運転して前記冷却器のみに風を流す第一の冷却モードで前記庫内を冷却し、次回、前記庫内センサが前回よりも高い高負荷時の温度以上になった場合は、前記圧縮機を運転して前記冷却器と前記蓄冷材の両方に風を流す第三の冷却モードで前記庫内を冷却するように、前記風路切替手段の切り替え制御をする
請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記蓄冷材は、凝固点が、前記冷却器の温度より高く、前記冷蔵庫内の温度より低い潜熱蓄冷材であることを特徴とする請求項
1または2に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、扉開閉が少なく、外気温の低い夜間に蓄冷ユニットに蓄冷し、扉開閉が多くなり、負荷が大きくなる夕方に蓄冷ユニットを放冷することにより、冷凍室内を冷却することで、効率を向上させる冷蔵庫を開示する。この冷蔵庫は、冷凍室内に蓄冷ユニットと、蓄冷ファンを設け、蓄冷ファンの運転により、蓄冷、放冷を切り替える機能を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、蓄冷材を用いた冷蔵庫において、自由なタイミングで放冷を行うことにより、省エネ性能の高い冷蔵庫を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における冷蔵庫は、冷却サイクルの一部である冷却器と、冷却器の入口パイプと熱的に接触する蓄冷材と、冷却器及び蓄冷材を収納すると共に庫内と仕切られた冷却室と、冷却室内で冷却器と蓄冷材を断熱する断熱部材と、冷却器または/及び蓄冷材により生成された冷気を庫内に循環させる冷却ファンと、冷却ファンによる風を冷却器と蓄冷材に選択的に流す風路切替手段と、冷却サイクル、冷却ファン、風路切替手段とを制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示における冷蔵庫は、制御部で風路切替手段を制御し、冷却器と蓄冷材に冷却ファンによる風を選択的に流すことにより、周囲の温度上昇により放冷することを抑制できる。そのため、自由なタイミングで放冷を行うことにより、省エネ性能の高い冷蔵庫とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態1における冷蔵庫の蓄冷モード時の断面図
【
図2】実施の形態1における冷蔵庫の放冷モード時の断面図
【
図3】実施の形態1における冷蔵庫の蓄冷時のフローチャート
【
図4】実施の形態1における冷蔵庫の放冷時のフローチャート
【
図5】実施の形態1における冷蔵庫の各部の温度を示すタイミングチャート
【
図7】実施の形態2における冷蔵庫の放冷時のフローチャート
【
図8】実施の形態2における冷蔵庫の各部の温度を示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
冷蔵庫業界では、冷却サイクルによって生成した冷熱を、そのまま冷蔵庫内を冷却するために利用するだけでなく、蓄冷材を用いて冷熱を蓄え、冷却サイクルが運転していない時に冷蔵庫内を冷却するために利用するものも提案されていた。
【0009】
例えば、庫内に樹脂容器に充填した潜熱蓄冷材を収納し、通常冷却時は、蓄冷材は冷熱を蓄えた状態(蓄冷)で、停電などにより庫内温度が上昇した時に、蓄えた冷熱により庫内の温度上昇を抑制する(放冷)冷蔵庫である。
【0010】
しかしながら、この技術では、庫内が温度上昇した時は常に蓄冷材が放冷し、放冷のタイミングを制御することは難しかった。
【0011】
また、特許文献1は、その課題を解決するために、蓄冷ファンにより蓄冷、放冷を制御する技術を提案したが、冷凍室内に設けた蓄冷ユニットは、冷凍室内に露出しており、蓄冷ファンが運転していない時にも、周囲の空気の急激な温度上昇や、庫内の空気の流れにより、意図しないタイミングで蓄冷、放冷してしまい、実際に放冷が必要な夕方に蓄冷ユニットに蓄冷できておらず、効率の高い運転状態とならない恐れがあった。
【0012】
発明者らは、蓄冷材が庫内空気に常に接触することで、蓄冷、放冷タイミングの制御が困難になると考え、この課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
【0013】
本開示は、従来技術の課題を解決するために、自由なタイミングで放冷を行うことができる冷蔵庫を提供する。
【0014】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0015】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0016】
(実施の形態1)
以下、
図1~
図5を用いて、実施の形態1を説明する。
【0017】
[1-1.構成]
図1及び
図2において、本実施の形態における冷蔵庫1は、仕切り2により上下に仕切られた断熱箱体3から構成されており、仕切り2より上方を、室内を約4℃(上限値Tr2、下限値Tr1)の冷蔵温度帯に維持した冷蔵室4、仕切り2より下方を、室内を約-18℃(上限値Tf2、下限値Tf1)の冷凍温度帯に維持した冷凍室5とし、前面が断熱扉6、7によって開閉自在に閉塞されている。
【0018】
冷凍室5背面には、冷凍ダクト8により冷凍室5内部と仕切られた冷却室9を備えている。冷却室9内には、圧縮機10、放熱器(図示せず)、膨張手段であるキャピラリ(図示せず)と接続されることで、冷却サイクル(図示せず)を構成する冷却器11を前面側に、例えば高吸水性樹脂などの潜熱蓄冷材(凝固点Tc<Tf1)をケース内に充填した蓄冷材として蓄冷放冷手段12を背面側に備えており、間に、両者を熱的に遮断する断熱部材として断熱仕切り13が配されている。
【0019】
そして、蓄冷放冷手段12は、図示しないキャピラリと冷却器11を繋ぐ入口パイプ14と熱的に接触している。
【0020】
冷却室9の冷却器11と蓄冷放冷手段12の上方には、冷却器11により生成した冷気を冷蔵室4、冷凍室5に循環させる冷却ファン15を備えている。
【0021】
冷凍ダクト8には、冷却ファン15により吐出される冷気を冷凍室5内へと吹き出す複数の冷凍吐出口16と、冷凍室5を冷却した空気を冷凍室5から冷却室9へと吸い込む冷凍吸込口17を備える。
【0022】
仕切り2には、冷却ファン15により吐出される冷気を冷蔵室4へと吹き出す冷蔵吐出風路18と、冷蔵室4を冷却した冷気を冷蔵室4から冷却室9へと吸い込む冷蔵吸込風路(図示せず)を備えると共に、開閉により冷蔵吐出風路18から冷蔵ダクト21(後述)への冷気を流通、遮断する冷蔵ダンパ19を備えている。
【0023】
冷蔵室4には、冷蔵吐出風路18から吹き出された冷気を冷蔵室4内へと吹き出す複数の冷蔵吐出口20を備えた冷蔵ダクト21を備えている。断熱仕切り13と冷却ファン15の間には、冷凍吸込口17から冷却室9へと吸い込んだ空気を冷却器11と蓄冷放冷手段12のどちらかに選択的に流す風路切替手段として蓄冷ダンパ22を備えている。
【0024】
また、それぞれの貯蔵室(冷蔵室4、冷凍室5)には、その内部温度を検知する冷蔵センサ23及び冷凍センサ24を備えていると共に、これらのセンサの検知温度などにより、各装置を制御する制御部25を、冷蔵庫1の天面に備えている。
【0025】
[1-2.動作]
以上のように構成された実施の形態1の冷蔵庫1について、以下その動作、作用の一例を説明する。
【0026】
図1から
図5に基づいて、冷蔵庫1の自由なタイミングで蓄冷、放冷を行う動作を説明する。本開示の冷蔵庫1は、制御部25により、蓄冷運転と放冷運転を切り替える。
【0027】
まず、
図1及び
図3に基づいて、蓄冷運転について説明する。蓄冷運転を開始すると、まずステップS1で、制御部25が、冷凍センサ24によって、冷凍室5の温度が上限値であるTf2より高いかどうかを比較し、低い場合はステップS1の処理を繰り返し、高い場合はステップS2へと移行する。
【0028】
ステップS2では、制御部25が、冷蔵センサ23によって、冷蔵室4の温度が下限値であるTr1より高いかどうかを比較し、低い場合はステップS5へ移行し、冷凍運転及び蓄冷運転を開始し、高い場合はステップS3に移行し、冷蔵運転及び蓄冷運転を開始する。冷蔵運転及び蓄冷運転では、圧縮機10、冷却ファン15を運転し、冷蔵ダンパ19を開状態とする。これと同時に、蓄冷ダンパ22を冷却器11側が開となる状態とし、ステップS4へと移行する。
【0029】
冷蔵運転及び蓄冷運転中、圧縮機10で圧縮された高温高圧のガス冷媒は、図示しない放熱器へと流れ冷却されることにより、放熱し、液化する。さらに、図示しないキャピラリで減圧され、低温低圧の気液二層流となり、入口パイプ14から冷却器11へと流れる。そして冷却器11内で外気と熱交換することにより蒸発し、蒸発気化熱により、冷気を生成する。
【0030】
そして生成した冷気は、冷却ファン15により、冷凍ダクト8を流れ、冷凍吐出口16から冷凍室5内へと吹き出され、冷凍室5内を冷却して冷凍吸込口17より冷却室9へと吸い込まれる。
【0031】
これと同時に、冷蔵吐出風路18を流れた冷気は、冷蔵ダンパ19から冷蔵ダクト21へと流れ、冷蔵吐出口20から冷蔵室4内へと吹き出され、冷蔵室4内を冷却して図示しない冷蔵吸込風路より冷却室9へと吸い込まれる。
【0032】
この時、入口パイプ14も冷却されているため蓄冷放冷手段12が冷却され、蓄冷されるが、蓄冷放冷手段12は、断熱箱体3と蓄冷ダンパ22と断熱仕切り13により囲まれ断熱されており、風が流れないため、放冷することはない。
【0033】
そしてステップS4で、制御部25が、冷蔵センサ23によって、冷蔵室4の温度が下限値であるTr1より低いかどうかを比較し、高い場合はステップS4の処理を繰り返し、低い場合はステップS5へと移行し、冷凍運転及び蓄冷運転を開始する。冷凍運転及び蓄冷運転では、圧縮機10、冷却ファン15を運転し、冷蔵ダンパ19を閉状態とする。これと同時に、蓄冷ダンパ22を冷却器11側が開となる状態とし、ステップS6へと移行する。
【0034】
冷凍運転及び蓄冷運転中、冷却器11により生成した冷気は、冷却ファン15により、冷凍ダクト8を流れ、冷凍吐出口16から冷凍室5内へと吹き出され、冷凍室5内を冷却して冷凍吸込口17より冷却室9へと吸い込まれる。
【0035】
この時、入口パイプ14も冷却されているため蓄冷放冷手段12が冷却され、蓄冷されるが、蓄冷放冷手段12は、断熱箱体3と蓄冷ダンパ22と断熱仕切り13により囲まれ断熱されており、風が流れないため、放冷することはない。
【0036】
そしてステップS6では、制御部25が、冷蔵センサ23によって、冷蔵室4の温度が上限値であるTr2より低いかどうかを比較し、高い場合はステップS3へと移行し、冷蔵運転及び蓄冷運転を開始し、低い場合はステップS7へと移行する。
【0037】
ステップS7では、制御部25が、冷凍センサ24によって、冷凍室5の温度が下限値であるTf1より低いかどうかを比較し、高い場合はステップS6、ステップS7の処理を繰り返し、低い場合はステップS8へと移行し、圧縮機10、冷却ファン15を停止し、冷蔵ダンパ19を閉、蓄冷ダンパ22を冷却器11側が開となる状態とし、蓄冷運転を終了する。
【0038】
次に、
図2及び
図4に基づいて、放冷運転について説明する。放冷運転を開始すると、まずステップS9で、制御部25が、冷凍センサ24によって、冷凍室5の温度が上限値であるTf2より高いかどうかを比較し、低い場合はステップS9の処理を繰り返し、高い場合は、ステップS10へと移行する。ステップS10では、制御部25が、冷蔵センサ23によって、冷蔵室4の温度が下限値であるTr1より高いかどうかを比較し、低い場合はステップS13へ移行し、冷凍運転及び放冷運転を開始し、高い場合は、ステップS11に移行し、冷蔵運転及び放冷運転を開始する。
【0039】
冷蔵運転及び放冷運転では、圧縮機10を停止し、冷却ファン15を運転し、冷蔵ダンパ19を開状態とする。これと同時に、蓄冷ダンパ22を蓄冷放冷手段12側が開となる状態とし、ステップS12へと移行する。
【0040】
ここで、蓄冷放冷手段12は、蓄冷され冷凍室5より低い温度Tcで凝固した状態となっており、冷却ファン15による空気と熱交換し、冷気を生成する。
【0041】
そして生成された冷気は、冷却ファン15により、冷凍ダクト8を流れ、冷凍吐出口16から冷凍室5内へと吹き出され、冷凍室5内を冷却して冷凍吸込口17より冷却室9へと吸い込まれる。
【0042】
これと同時に、冷蔵吐出風路18を流れた冷気は、冷蔵ダンパ19から冷蔵ダクト21へと流れ、冷蔵吐出口20から冷蔵室4内へと吹き出され、冷蔵室4内を冷却して図示しない冷蔵吸込風路より冷却室9へと吸い込まれる。
【0043】
そしてステップS12で、制御部25が、冷蔵センサ23によって、冷蔵室4の温度が下限値であるTr1より低いかどうかを比較し、高い場合はステップS12の処理を繰り返し、低い場合はステップS13へと移行し、冷凍運転及び放冷運転を開始する。冷凍運転及び放冷運転では、圧縮機10を停止し、冷却ファン15を運転し、冷蔵ダンパ19を閉状態とする。これと同時に蓄冷ダンパ22を蓄冷放冷手段12側が開となる状態とし、ステップS14へと移行する。
【0044】
冷凍運転及び放冷運転中、蓄冷放冷手段12により生成した冷気は、冷却ファン15により、冷凍ダクト8を流れ、冷凍吐出口16から冷凍室5内へと吹き出され、冷凍室5内を冷却して冷凍吸込口17より冷却室9へと吸い込まれる。
【0045】
そしてステップS14では、制御部25が、冷蔵センサ23によって、冷蔵室4の温度が上限値であるTr2より低いかどうかを比較し、高い場合はステップ11へと移行し、冷蔵運転及び放冷運転を開始し、低い場合はステップS15へと移行する。
【0046】
ステップS15では、制御部25が、冷凍センサ24によって、冷凍室5の温度が下限値であるTf1より低いかどうかを比較し、高い場合は、ステップS14、ステップS15の処理を繰り返し、低い場合は、ステップS16へと移行し、圧縮機10、冷却ファン15を停止し、冷蔵ダンパ19を閉、蓄冷ダンパ22を冷却器11側が開となる状態とし、放冷運転を終了する。
【0047】
以上の説明における、蓄冷運転、放冷運転をした時の、圧縮機10、冷却ファン15、冷蔵ダンパ19、蓄冷ダンパ22の動作と、冷蔵センサ23、冷凍センサ24及び蓄冷放冷手段12の温度変化の一例を、
図5に基づいて説明する。
【0048】
ここで、冷蔵センサ23及び冷凍センサ24の温度は、冷蔵室4及び冷凍室5の温度とほぼ同等と考えてよい。
【0049】
まず、蓄冷運転について、時刻t1からt3の温度変化に基づいて説明する。
【0050】
時刻t1において、冷凍センサ24の温度が、上限値であるTf2に到達したことを検知し(S1がYES)、冷蔵センサ23の温度が、下限値であるTr1よりも高いことを検知すると(S2がYES)、制御部25により、圧縮機10及び冷却ファン15を運転し、冷蔵ダンパ19を開、蓄冷ダンパ22を冷却器11側が開となる状態とする(S3)。
【0051】
これにより、冷蔵室4及び冷凍室5へと冷気が供給され、冷蔵室4の温度が低下する。この時、冷蔵室4を冷却した比較的高い温度の空気が図示しない冷蔵吸込風路から戻ってくるため、冷却器11の温度もそれに伴って高くなるため、冷凍室5の温度上昇が抑制されるが、低下するには至らない。
【0052】
次に時刻t2において、冷蔵センサ23の温度が、下限値であるTr1に到達したことを検知し(S4がYES)、制御部25により、冷蔵ダンパ19を閉状態とする(S5)。これにより、冷凍室5へと冷気が供給され、冷凍室5の温度が低下する。
【0053】
そして時刻t3において、冷蔵センサ23の温度が、上限値であるTr2より低く(S6がYES)、冷凍センサ24の温度が、下限値であるTf1に到達したことを検知し(S7がYES)、制御部25により、圧縮機10及び冷却ファン15の運転を停止する(S8)。
【0054】
以上のt1からt3までが蓄冷運転であるが、蓄冷運転中、蓄冷放冷手段12は、冷却器11の温度とほぼ同じ温度の入口パイプ14と熱交換し、温度が時間と共に低下し、一時的に凝固点Tcよりも低くなる過冷却域を通過し、過冷却が解除すると温度上昇し、液体から固体への相変化に伴い凝固点Tcでほぼ一定温度で推移する。そして完全に凝固し相変化が終了すると、入口パイプ14の温度へと到達する。
【0055】
次に、放冷運転について、時刻t4からt6の温度変化に基づいて説明する。
【0056】
時刻t4において、冷凍センサ24の温度が、上限値であるTf2に到達したことを検知し(S9がYES)、冷蔵センサ23の温度が、下限値であるTr1よりも高いことを検知すると(S10がYES)、制御部25により、圧縮機10を停止、冷却ファン15を運転し、冷蔵ダンパ19を開、蓄冷ダンパ22を蓄冷放冷手段12側が開となる状態とする(S11)。
【0057】
これにより、冷蔵室4及び冷凍室5へと冷気が供給され、冷蔵室4の温度が低下する。この時、蓄冷放冷手段12の温度は一旦上昇するが、凝固点Tcで一定となるため、蓄冷運転での冷蔵冷却時とは異なり、冷凍室5の温度も低下する。
【0058】
次に時刻t5において、冷蔵センサ23の温度が、下限値であるTr1に到達したことを検知し(S12がYES)、制御部25により、冷蔵ダンパ19を閉状態とする(S13)。これにより、冷凍室5へと冷気が供給され、冷凍室5の温度が低下する。
【0059】
そして時刻t6において、冷蔵センサ23の温度が、上限値であるTr2より低く(S14がYES)、冷凍センサ24の温度が、下限値であるTf1に到達したことを検知し(S15がYES)、制御部25により、冷却ファン15を停止し、蓄冷ダンパ22を冷却器11側が開となる状態とする(S16)。
【0060】
以上のt4からt6までが放冷運転であるが、放冷運転中、蓄冷放冷手段12は、冷蔵室4及び冷凍室5から吸い込まれた空気と熱交換し、冷気を生成すると共に温度上昇し、固体から液体への相変化に伴い凝固点(融解点)Tcでほぼ一定温度で推移する。そして完全に融解し相変化が終了すると、入口パイプ14の温度へと到達する。
【0061】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、冷蔵庫1は、冷却器11と、蓄冷放冷手段12(蓄冷材)と、冷却室9と、断熱仕切り13(断熱部材)と、冷却ファン15と、蓄冷ダンパ22(風路切換え手段)と、制御部25とを備える。
【0062】
冷却器11は、冷却サイクルの一部である。蓄冷放冷手段12は、冷却器11の入口パイプ14と熱的に接触する。冷却室9は、冷却器11及び蓄冷放冷手段12を収納して冷凍ダクト8(断熱部材)により庫内と仕切られる。断熱仕切り13は、冷却室9内で冷却器11と蓄冷放冷手段12を断熱する。冷却ファン15は、冷却器11または蓄冷放冷手段12により生成された冷気を庫内に循環させる。蓄冷ダンパ22は、冷却ファン15による風を、冷却器11と蓄冷放冷手段12に選択的に流す。制御部25は、冷却サイクルと、冷却ファン15と、蓄冷ダンパ22とを制御する。
【0063】
これにより、蓄冷ダンパ22で蓄冷放冷手段12側を閉じておくことで、周囲の急激な温度上昇により蓄冷放冷手段12が放冷することを抑制できる。そのため、自由なタイミングで放冷を行うことにより、省エネ性能の高い冷蔵庫を提供することができる。
【0064】
本実施の形態のように、冷蔵庫1は、凝固点が、冷却器11の温度より高く、冷蔵室4内の温度より低い、できれば冷凍室5内の温度より低い潜熱蓄冷材を備えるようにしてもよい。
【0065】
これにより、蓄冷放冷手段12は、入口パイプ14により確実に蓄冷でき、放冷時の融解潜熱により冷凍室5内を確実に冷却することができる。そのため、蓄冷放冷手段12の蓄冷、放冷の効率を高めることができる。
【0066】
また、本実施の形態において、蓄冷運転の直後に放冷運転とする例を説明したが、本実施の形態の構成では、蓄冷も放冷もしない時に、蓄冷ダンパ22を常に冷却器11側が開となる状態とすることで、蓄冷放冷手段12を放冷させずに維持することができ、放冷を行いたいタイミングに自由に放冷運転をさせることができる。
【0067】
(実施の形態2)
以下、
図6~
図8を用いて実施の形態2を説明する。
【0068】
[2-1.構成]
図6に示すように、実施の形態2にかかる冷蔵庫1は、実施の形態1の冷蔵庫1において、制御部25によって、蓄冷ダンパ22を、冷却ファン15による風が、冷却器11のみを流れる冷却器11側開の状態、蓄冷放冷手段12のみを流れる蓄冷放冷手段12側開の状態、冷却器11と蓄冷放冷手段12の両方に風を流す両方開の状態に切り替える構成としている。
【0069】
すなわち、本実施の形態における冷蔵庫1は、冷却器11のみに風を流す第一の冷却モードと、蓄冷放冷手段12のみに風を流す第二の冷却モードと、冷却器11と蓄冷放冷手段12の両方に風を流す第三の冷却モードを備えている。
【0070】
[2-2.動作]
以上のように構成された本実施の形態における冷蔵庫1について、以下その動作、作用の一例を説明する。
【0071】
図6から
図8に基づいて、高負荷運転の動作を説明する。蓄冷運転と放冷運転については、実施の形態1と同じ動作のため、詳細な説明を省く。
【0072】
まずステップS17で、制御部25が、冷凍センサ24によって、冷凍室5の温度が上限値であるTf2より高いかどうかを比較し、低い場合はステップS17の処理を繰り返し、高い場合はステップS18へと移行する。
【0073】
ステップS18で、制御部25が、冷凍センサ24によって、冷凍室5の温度が高負荷時の温度であるTf3より低いかどうかを比較し、高い場合は冷凍室5の負荷が高いと判断し、ステップS22へと移行し、低い場合はステップS19に移行する。
【0074】
ステップS19では、制御部25が、冷蔵センサ23によって、冷蔵室4の温度が高負荷時の温度であるTr3より高いかどうかを比較し、低い場合は負荷が高くないと判断し、高負荷運転を終了し、高い場合は冷蔵室4の負荷が高いと判断し、ステップS20に移行し冷蔵運転及び高負荷運転を開始する。
【0075】
冷蔵運転及び高負荷運転では、圧縮機10、冷却ファン15を運転し、冷蔵ダンパ19を開状態とする。これと同時に、蓄冷ダンパ22を両方開の状態とし、ステップS21へと移行する。
【0076】
冷蔵運転及び高負荷運転中、蓄冷ダンパ22は、冷却器11、蓄冷放冷手段12の両方に冷却ファン15による風が流れるように制御される。これにより、冷却器11と蓄冷放冷手段12の両方が冷気を生成する。
【0077】
そして生成された冷気は、冷却ファン15により、冷凍ダクト8を流れ、冷凍吐出口16から冷凍室5内へと吹き出され、冷凍室5内を冷却して冷凍吸込口17より冷却室9へと吸い込まれる。
【0078】
これと同時に、冷蔵吐出風路18を流れた冷気は、冷蔵ダンパ19から冷蔵ダクト21へと流れ、冷蔵吐出口20から冷蔵室4内へと吹き出され、冷蔵室4内を冷却して図示しない冷蔵吸込風路より冷却室9へと吸い込まれる。
【0079】
そしてステップS21で、制御部25が、冷蔵センサ23によって、冷蔵室4の温度が下限値であるTr1より低いかどうかを比較し、高い場合はステップS21の処理を繰り返し、低い場合はステップS22へと移行し、冷凍運転及び高負荷運転を開始する。
【0080】
冷凍運転及び高負荷運転では、圧縮機10、冷却ファン15を運転し、冷蔵ダンパ19を閉状態とする。これと同時に、蓄冷ダンパ22を両方開の状態とし、ステップS23へと移行する。
【0081】
冷凍運転及び高負荷運転中、冷却器11及び蓄冷放冷手段12により生成された冷気は、冷却ファン15により、冷凍ダクト8を流れ、冷凍吐出口16から冷凍室5内へと吹き出され、冷凍室5内を冷却して冷凍吸込口17より冷却室9へと吸い込まれる。
【0082】
そしてステップS23では、制御部25が、冷蔵センサ23によって、冷蔵室4の温度が上限値であるTr2より低いかどうかを比較し、高い場合はステップS20へと移行し、冷蔵運転及び高負荷運転を開始し、低い場合はステップS24へと移行する。
【0083】
ステップS24では、制御部25が、冷凍センサ24によって、冷凍室5の温度が下限値であるTf1より低いかどうかを比較し、高い場合はステップS23、ステップS24の処理を繰り返し、低い場合は、ステップS25へと移行し、圧縮機10、冷却ファン15を停止し、冷蔵ダンパ19を閉、蓄冷ダンパ22を冷却器11側が開となる状態とし、高負荷運転を終了する。
【0084】
以上の説明における、高負荷運転時の圧縮機10、冷却ファン15、冷蔵ダンパ19、蓄冷ダンパ22の動作と冷蔵センサ23、冷凍センサ24及び蓄冷放冷手段12の温度変化の一例を、
図8に基づいて説明する。
【0085】
ここで、冷蔵センサ23及び冷凍センサ24の温度は、冷蔵室4及び冷凍室5の温度とほぼ同等と考えてよい。
【0086】
まず時刻t3にて冷蔵庫1の冷却を停止している時に、買い物などにより、冷蔵室4へ食品などが投入されると、冷蔵室4の温度が上昇する。そして、時刻t7において、冷凍センサ24の温度が、上限値であるTf2に到達するとともに(S17がYES)、高負荷時の温度であるTf3よりも低いことを検知し(S18がYES)、冷蔵センサ23の温度が、高負荷時の温度であるTr3よりも高いことを検知すると(S19がYES)、制御部25により、圧縮機10及び冷却ファン15を運転し、冷蔵ダンパ19を開、蓄冷ダンパ22を両方開の状態とする(S20)。
【0087】
この時、冷却ファン15による風は、冷却器11と蓄冷放冷手段12の両方を流れるため、冷却器11と蓄冷放冷手段12が同時に冷気を生成する。これにより、冷蔵室4及び冷凍室5へと冷気が供給され、冷蔵室4及び冷凍室5の温度が低下する。
【0088】
次に時刻t8において、冷蔵センサ23の温度が、下限値であるTr1に到達したことを検知し(S21がYES)、制御部25により、冷蔵ダンパ19を閉状態とする(S22)。これにより、冷凍室5へと冷気が供給され、冷凍室5の温度が低下する。
【0089】
そして時刻t9において、冷蔵センサ23の温度が、上限値であるTr2より低く(S23がYES)、冷凍センサ24の温度が、下限値であるTf1に到達したことを検知し(S24がYES)、制御部25により、圧縮機10及び冷却ファン15を停止する(S25)。
【0090】
以上のt7からt9までが高負荷運転であるが、高負荷運転中、蓄冷放冷手段12は、冷蔵室4及び冷凍室5から吸い込まれた空気と熱交換し、冷気を生成すると共に温度上昇し、固体から液体への相変化に伴い凝固点(融解点)Tcでほぼ一定温度で推移する。これと同時に入口パイプ14により冷却されるため、空気と熱交換する部分は液化し、入口パイプ14近傍は凝固した状態となる。
【0091】
[2-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、冷蔵庫1の制御部25は、蓄冷ダンパ22を、冷却器11のみに風を流す第一の冷却モードと、蓄冷放冷手段12のみに風を流す第二の冷却モードと、冷却器11と蓄冷放冷手段12の両方に風を流す第三の冷却モードを切り替えるように制御する。
【0092】
これにより、高負荷運転では、冷却器11と蓄冷放冷手段12の両方が生成した冷気を利用できる。そのため、冷却器11のみ(蓄冷運転)、または蓄冷放冷手段12のみ(放冷運転)で冷却するよりも冷却能力を高めることができ、冷蔵室4内の温度を素早く低下させることができる。
【0093】
また、本実施の形態において、冷蔵庫1は、制御部25により、時間や負荷変動により自動的に冷却モードを切り替える構成にしてもよい。
【0094】
これにより、冷蔵庫1の負荷が高くなった時に、自動的に高負荷運転とすることができる。そのため、負荷変動に即座に対応できる冷蔵庫1とすることができる。
【0095】
また、本実施の形態において、冷蔵庫1は、制御部25により、外部からの指令に応じて、上記冷却モードを切り替える構成にしてもよい。
【0096】
これにより、使用者の判断により、消費電力を低く抑えたい時に放冷運転にしたり、負荷が高くなることがあらかじめ予測される時などに高負荷運転とすることができる。そのため、自由なタイミングで消費電力を低下させたり、より素早く高負荷時に庫内温度を低下させることができる。
【0097】
また、本実施の形態では、説明を簡単にするために、冷蔵室4の負荷が高いと判断した後の冷凍運転は、高負荷運転とし、蓄冷ダンパ22を両方開の状態としたが、冷凍室5の負荷が高くない場合は、通常の冷凍運転及び蓄冷運転(S5)または冷凍運転及び放冷運転(S13)とすることで、無駄な冷熱を使わずに冷凍室5の冷却を行える。
【0098】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の事例として、実施の形態1及び2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。
【0099】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0100】
実施の形態1及び2では、蓄冷放冷手段12の温度を検知する手段が無いため、蓄冷放冷手段12が蓄冷運転で完全に凝固したかどうか、放冷運転で完全に放冷したかどうは不明である。
【0101】
これに対し、例えば蓄冷放冷手段12の最も温度変化の遅い部位の温度を検知することにより、蓄冷放冷手段12の状態を把握でき、蓄冷運転で完全に蓄冷してから放冷運転を行うことにより、より放冷運転の冷却効率を高めることができると共に、放冷運転で、蓄冷放冷手段12が完全に放冷した際に、さらに冷却が必要な時は、圧縮機10を運転し、冷却サイクルで冷却することで、ロスなく冷却することができる。
【0102】
また、上記実施の形態1及び2では、冷蔵センサ23、冷凍センサ24が高負荷時の温度以上になったかどうかで高負荷状態となっているかどうかを判断したが、冷却中の各センサの温度低下速度、冷却停止中の温度上昇速度などにより判断することで、よりきめ細かな制御とすることができる。
【0103】
また、実施の形態1及び2では、高負荷運転時に蓄冷ダンパ22を両方開とするのみで冷却能力を向上させたが、冷却ファン15を能力可変とし、高負荷運転時に蓄冷ダンパ22を両方開とすると同時に、冷却ファン15の能力を増加させることにより、より素早く貯蔵室の温度を低下させることができる。
【0104】
また、上記実施の形態1及び2では、蓄冷放冷手段12の形状については言及していないが、フィン状の突起(図示せず)を設けたり、表面を凹凸形状としたりして、空気との接触面積を大きくすることで、より効率よく冷熱を利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本開示は、入口パイプと熱交換する蓄冷放冷手段により冷熱を蓄えて自由なタイミングで利用することができるので、家庭用および業務用など様々な種類および大きさの冷蔵庫や、冷蔵・冷凍機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0106】
1 冷蔵庫
2 仕切り
3 断熱箱体
4 冷蔵室
5 冷凍室
6 断熱扉
7 断熱扉
8 冷凍ダクト
9 冷却室
10 圧縮機
11 冷却器
12 蓄冷放冷手段(蓄冷材)
13 断熱仕切り(断熱部材)
14 入口パイプ
15 冷却ファン
16 冷凍吐出口
17 冷凍吸込口
18 冷蔵吐出風路
19 冷蔵ダンパ
20 冷蔵吐出口
21 冷蔵ダクト
22 蓄冷ダンパ(風路切替手段)
23 冷蔵センサ
24 冷凍センサ
25 制御部