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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/54 20180101AFI20240621BHJP
   F24F 11/59 20180101ALI20240621BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20240621BHJP
   F24F 11/65 20180101ALI20240621BHJP
   F24F 1/0071 20190101ALN20240621BHJP
   F24F 1/008 20190101ALN20240621BHJP
   F24F 1/0087 20190101ALN20240621BHJP
【FI】
F24F11/54
F24F11/59
F24F11/64
F24F11/65
F24F1/0071
F24F1/008
F24F1/0087
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020159273
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022052813
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】末広 善文
(72)【発明者】
【氏名】岩川 幹生
(72)【発明者】
【氏名】小田 一平
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-128446(JP,A)
【文献】特開平05-080812(JP,A)
【文献】国際公開第2019/142599(WO,A1)
【文献】特開2018-056012(JP,A)
【文献】国際公開第2019/239507(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/0071、1/008、1/0087
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の空間に接続された空調装置と、
前記空調装置の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記空間の使用を予約する予約情報であって、温度、湿度、香りおよび除菌のうち少なくとも1つに関する空気質の指定を含む予約情報を受け付ける受付部と、
前記空間の空気質が前記予約情報で指定された空気質に整合するよう前記空調装置の動作を制御する制御部と、を含み、
前記空調装置は、空調部および除菌部を含み、
前記空調部は、前記空間の温度を調整し、
前記除菌部は、前記制御装置からの指示に応じて、前記空間へ給気される空気を除菌し、
前記予約情報は、前記空間の使用日時を含み、
第2閾値時間は、第1閾値時間より小さい値であるとすると、
前記制御部は、前記使用日時の前記第1閾値時間前に、前記空調部の動作を開始させ、
前記空調部の動作が開始した後、前記空間の温度が前記予約情報において指定された温度となった場合、前記制御部は、前記除菌部の動作を開始させ、
前記空調部の動作が開始した後、前記空間の温度が前記予約情報において指定された温度とならなかった場合、前記制御部は、前記使用日時の前記第2閾値時間前に、前記除菌部の動作を開始させることを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記予約情報は、前記空気質の指定として、前記空気質のパターンが指定され得るものであり、
前記制御装置は、前記空気質のパターンと、温度、湿度、香りおよび除菌に関する設定値とを対応付けて記憶する記憶部をさらに含み、
前記制御装置の制御部は、前記予約情報で空気質のパターンが指定された場合、そのパターンに対応付けられた温度、湿度、香りおよび除菌に関する設定値をもとに前記空調装置の動作を制御することを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
顧客の携帯機器から出力された、顧客の好みの温度傾向および湿度傾向を示す情報を含む嗜好情報をもとに、顧客が使用する部屋の温度および湿度を調整する室内環境調整システムが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/179049号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
利用者の快適性を一層向上させる空調技術が求められている。本開示の技術はこのような課題に鑑みてなされたものであり、1つの目的は、利用者の快適性を一層向上させる空調技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の空調システムは、所定の空間に設けられた空調装置と、空調装置の動作を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、空間の使用を予約する予約情報であって、温度、湿度、香りおよび除菌に関する空気質の指定を含む予約情報を受け付ける受付部と、空間の空気質が予約情報で指定された空気質に整合するよう空調装置の動作を制御する制御部と、を含む。
【0006】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を、装置、方法、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る空調システムによれば、利用者の快適性を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態の空調システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、図1の空気質調整部の詳細な構成を示すブロック図である。
図3図3は、図1の制御装置の詳細な構成を示すブロック図である。
図4図4は、制御装置の動作を示すフローチャートである。
図5図5は、実施の形態の空調装置の第一の置き換え例の詳細な構成を示すブロック図である。
図6図6は、実施の形態の空調装置の第二の置き換え例の詳細な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示における装置または方法の主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがプログラムを実行することによって、本開示における装置または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、プログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(Integrated Circuit)(IC)、またはLSI(Large Scale Integration)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。ここではICあるいはLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)もしくはUSLI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるものであってもよい。LSIの製造後にプログラムされる、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array)(FPGA)、またはLSI内部の接合関係の再構成またはLSI内部の回路区画のセットアップができる再構成可能な論理デバイスも同じ目的で使うことができる。複数の電子回路は、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM(Read Only Memory)、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0010】
図1は、実施の形態の空調システム100の構成を示すブロック図である。実施の形態の空調システム100は、予約入力端末30から入力された温度、湿度、香りおよび除菌に関する空気質の指定を含む予約情報に基づき、第1空間10aと第2空間10bそれぞれの空気質を調整するコンピュータシステムである。空調システム100は、空調制御システムとも言え、空気質制御システムとも言える。空気質は、温度、湿度、香り、除菌の有無のうち少なくとも1つを含む。
【0011】
本開示のブロック図において示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)・メモリをはじめとする素子あるいは機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0012】
第1空間10aと第2空間10bは、空調(空気調和)の対象となる空間であり、また、予約対象となる空間でもあり、以下総称して「空間10」とも呼ぶ。空間10は、会議室であってもよく、宿泊施設の部屋であってもよい。また、空間10は、個室であってもよく、半個室であってもよく、パーティション等で区切られたエリアであってもよい。なお空間10の数に制限はない。
【0013】
第1空間10aには、空気質調整部22a、空調部24a、温度センサ26a、湿度センサ28aが設けられる。第2空間10bには、空気質調整部22b、空調部24b、温度センサ26b、湿度センサ28bが設けられる。
【0014】
温度センサ26aは、第1空間10aの空気の温度を検知する装置であり、温度センサ26bは、第2空間10bの空気の温度を検知する装置であり、これらを総称して「温度センサ26」と呼ぶ。湿度センサ28aは、第1空間10aの空気の湿度を検知する装置であり、湿度センサ28bは、第2空間10bの空気の湿度を検知する装置であり、これらを総称して「湿度センサ28」と呼ぶ。
【0015】
空気質調整部22aは、第1空間10aの空気質を調整する装置であり、空気質調整部22bは、第2空間10bの空気質を調整する装置であり、これらを総称して「空気質調整部22」と呼ぶ。実施の形態では、空気質調整部22は、空気調和動作を実行し、複数種類の空気質のうち湿度、香りおよび除菌の有無を調整する。
【0016】
空調部24aは、第1空間10aの空気質を調整する装置であり、空調部24bは、第2空間10bの空気質を調整する装置であり、これらを総称して「空調部24」と呼ぶ。実施の形態では、空調部24は、空気調和動作を実行し、複数種類の空気質のうち温度を調整する。
【0017】
空気質調整部22aと空調部24aは、別筐体の装置として実装されてもよく、同一筐体の装置として実装されてもよく、総称して「空調装置20a」と呼ぶ。空気質調整部22bと空調部24bは、別筐体の装置として実装されてもよく、同一筐体の装置として実装されてもよく、総称して「空調装置20b」と呼ぶ。空調装置20aと空調装置20bは、総称して「空調装置20」と呼ぶ。
【0018】
予約入力端末30は、第1空間10aまたは第2空間10bの使用を予約する予約者により操作される情報処理端末であり、例えばPC、スマートフォン、タブレット端末であってもよい。予約入力端末30は、第1空間10aまたは第2空間10bの使用を予約する内容を含む予約情報を制御装置32へ送信する。
【0019】
予約情報は、(1)予約する対象の空間10(以下「予約空間」とも呼ぶ。)の識別情報(すなわち第1空間10aまたは第2空間10bの識別情報)、(2)予約空間の使用日時(予約日時とも言える)、(3)予約空間の空気質、の指定を含む。(3)予約空間の空気質は、予約者が希望する(3-1)温度、(3-2)湿度、(3-3)香り付けの要否、(3-4)除菌の要否を含む。(3-3)香り付けの要否ついて、香り付けが必要であれば、好みの香りが指定される。一方、香り付けが不要に指定された場合、脱臭または消臭が指定されたことになる。
【0020】
制御装置32は、予約入力端末30から送信された予約情報をもとに、予約空間の空気質が予約情報に整合するよう予約空間に設置された空調装置20の動作を制御する情報処理装置である。具体的には、予約空間が第1空間10aの場合、制御装置32は、第1空間10aに設置された空気質調整部22aと空調部24aの動作を制御する。一方、予約空間が第2空間10bの場合、制御装置32は、第2空間10bに設置された空気質調整部22bと空調部24bの動作を制御する。図1の各装置は、有線および/または無線の通信網を介して接続され、通信網を介して信号の送受信が可能なよう構成される。
【0021】
図2は、図1の空気質調整部22(空気質調整部22a、空気質調整部22b)の詳細な構成を示すブロック図である。図2において、実線の矢印は、空間10の外から内への給気風路を示しており、破線の矢印は、空間10の内から外への排気風路を示している。空気質調整部22は、熱交換部40、除湿部41、加湿部42、除菌部43、調香部44、送風部45を備える。除湿部41、加湿部42、除菌部43、調香部44は、給気風路に設けられる。
【0022】
熱交換部40は、空間10へ給気される空気と、空間10から排気される空気との熱交換を行う。熱交換部40は、公知の熱交換素子を含んでもよい。除湿部41は、制御装置32からの指示に応じて、空間10へ給気される空気を除湿する。加湿部42は、制御装置32からの指示に応じて、空間10へ給気される空気を加湿する。
【0023】
除菌部43は、制御装置32からの指示に応じて、空間10へ給気される空気を除菌し、言い換えれば浄化する。除菌部43は、空間10へ給気される空気に所定の空気浄化成分(例えば次亜塩素酸)を混入させてもよい。調香部44は、制御装置32からの指示に応じて、空間10へ給気される空気を香り付けする。例えば、調香部44は、空間10へ給気される空気に、制御装置32から指示された香り成分(例えば芳香化合物)を混入させてもよい。
【0024】
送風部45は、給気風路と排気風路それぞれの気流を生成する。送風部45は、給気風路と排気風路のそれぞれに気流を生成する送風機を個別に設けてもよい。送風機は、ひとつの両軸形のモーターを設け、両軸形モーターの一端側に給気風路へ気流を生成する給気用ファンを備え、他端側に排気風路へ気流を生成する排気用ファンを備えてもよい。送風機は、片側軸のモーターに周知技術のギアを組み合わせて給気用ファンと排気用ファンとを回動可能な構成としてもよい。送風部45は、除湿部41、加湿部42、除菌部43、調香部44により空気質が調整された後の空気を空間10に送風する。
【0025】
図3は、図1の制御装置32の詳細な構成を示すブロック図である。制御装置32は、予約情報取得部50、温度情報取得部52、湿度情報取得部54、記憶部56、計時部58、第1動作制御部60、第2動作制御部62、第3動作制御部64、第4動作制御部66、処理部68を備える。これら複数の機能ブロックのうち少なくとも一部の機能ブロックの機能を実装したコンピュータプログラムが所定の記録媒体に格納され、その記録媒体を介して、制御装置32のストレージにインストールされてもよい。または、上記コンピュータプログラムがネットワークを介してダウンロードされ、制御装置32のストレージにインストールされてもよい。制御装置32のCPUは、上記コンピュータプログラムをメインメモリに読み出して実行することにより、複数の機能ブロックのうち少なくとも一部の機能ブロックの機能を発揮してもよい。
【0026】
予約情報取得部50は、予約入力端末30から送信された予約情報を受け付ける。変形例として、予約入力端末30は、予約情報を不図示の予約管理システムへ送信してもよい。予約情報取得部50は、予約入力端末30から送信され、予約管理システムにより転送された予約情報を受け付けてもよい。
【0027】
温度情報取得部52は、温度センサ26aから出力された第1空間10aの現在の温度を示す温度情報を取得し、また、温度センサ26bから出力された第2空間10bの現在の温度を示す温度情報を取得する。湿度情報取得部54は、湿度センサ28aから出力された第1空間10aの現在の湿度を示す湿度情報を取得し、また、湿度センサ28bから出力された第2空間10bの現在の湿度を示す温度情報を取得する。
【0028】
記憶部56は、処理部68により参照または更新されるデータを記憶する。例えば、記憶部56は、予約情報で指定された予約空間について、予約情報で指定された温度と現在の温度との差をもとに、空調部24の運転態様を決定するアルゴリズムを記憶してもよい。また、記憶部56は、予約情報で指定された予約空間について、予約情報で指定された湿度と現在の湿度との差をもとに、空気質調整部22の運転態様を決定するアルゴリズムを記憶してもよい。
【0029】
計時部58は、現在日時を示すデータを処理部68に提供する。
【0030】
第1動作制御部60は、処理部68の指示にしたがって第1空間10aの空気質調整部22aの動作を制御する。言い換えれば、第1動作制御部60は、処理部68から指示された態様にて空気質調整部22aを動作させる。第2動作制御部62は、処理部68の指示にしたがって第1空間10aの空調部24aの動作を制御する。言い換えれば、第2動作制御部62は、処理部68から指示された態様にて空調部24aを動作させる。
【0031】
第3動作制御部64は、処理部68の指示にしたがって第2空間10bの空気質調整部22bの動作を制御する。言い換えれば、第3動作制御部64は、処理部68から指示された態様にて空気質調整部22bを動作させる。第4動作制御部66は、処理部68の指示にしたがって第2空間10bの空調部24bの動作を制御する。言い換えれば、第4動作制御部66は、処理部68から指示された態様にて空調部24bを動作させる。
【0032】
処理部68は、温度情報取得部52により取得された温度情報と、湿度情報取得部54により取得された湿度情報と、記憶部56に記憶されたデータとをもとに、空調装置20(空気質調整部22a、空調部24a、空気質調整部22b、空調部24b)の動作態様を決定する。処理部68は、第1動作制御部60および第2動作制御部62と連携して、第1空間10aの空調装置20a(空気質調整部22a、空調部24a)の動作を制御する。また、処理部68は、第3動作制御部64および第4動作制御部66と連携して、第2空間10bの空調装置20b(空気質調整部22b、空調部24b)の動作を制御する。
【0033】
処理部68は、予約空間の空気質(実施の形態では温度、湿度、香り、除菌の有無を含む)が、予約情報で指定された空気質に整合するよう予約空間の空調装置20の動作を制御する。また、処理部68は、予約情報に含まれる予約空間の使用日時より前に、予約空間の空調装置20の動作を開始させる。
【0034】
図4は、制御装置32の動作のうち、予約空間の空気質を予約情報で指定された空気質に整合するように空調装置20を制御する動作を示すフローチャートの一例である。以下、図4を参照しつつ、空調システム100の動作を説明する。
【0035】
予約入力端末30は、予約者の操作にしたがって、第1空間10aまたは第2空間10bの使用を予約する予約情報(以下「対象予約情報」と呼ぶ。)を制御装置32へ送信する。制御装置32の予約情報取得部50は、予約入力端末30から送信された予約情報を取得すると(ステップS10のY)、その予約情報を記憶部56に格納する(ステップS12)。予約情報を取得しなければ(ステップS10のN)、ステップS12をスキップする。
【0036】
制御装置32の処理部68は、記憶部56に格納された各予約情報が示す使用日時と、計時部58から出力された現在日時とをもとに、各予約情報が示す使用日時までの時間を導出する。処理部68は、或る予約情報が示す使用日時までの時間が第1閾値以下になった場合、そのことを検出する(ステップS14)。第1閾値は、開発者の知見や空調システム100を用いた実験により適切な値が決定されればよい。例えば、第1閾値は10分であってもよい。この場合、処理部68は、予約情報が示す使用日時の10分前から予約空間の空調制御を開始する。
【0037】
各予約情報が示す使用日時までの時間が第1閾値より大きければ、すなわち、使用日時までの時間が第1閾値以下となった対象予約情報を未検出であれば(ステップS14のN)、以降の処理をスキップする。或る予約情報が示す使用日時までの時間が第1閾値以下になった場合であり、すなわち、使用日時までの時間が第1閾値以下となった対象予約情報を検出した場合(ステップS14のY)、処理部68は、温度情報取得部52を介して、対象予約情報が示す予約空間の現在の温度を取得する(ステップS16)。それとともに、処理部68は、湿度情報取得部54を介して、対象予約情報が示す予約空間の現在の湿度を取得する(ステップS18)。以下、対象予約情報が示す予約空間は第1空間10aであることとする。
【0038】
処理部68は、ステップS16で取得した第1空間10aの現在の温度と、対象予約情報で指定された温度とをもとに、第1空間10aに設置された空調部24aの動作態様(例えば温度や風量に関する各種設定値)を決定する。第2動作制御部62は、処理部68により決定された態様にて空調部24aの動作を開始させる(ステップS20)。
【0039】
また、処理部68は、ステップS18で取得した第1空間10aの現在の湿度と、対象予約情報で指定された湿度とをもとに、第1空間10aに設置された空気質調整部22aの動作態様(例えば除湿や、加湿、風量に関する各種設定値)を決定する。第1動作制御部60は、処理部68により決定された態様にて空気質調整部22aの動作を開始させる(ステップS22)。ステップS22では、処理部68は、空気質調整部22aの除湿部41または加湿部42のみを作動させ、すなわち空気質調整部22aに除湿運転または加湿運転を実行させる。
【0040】
第1空間10aの温度と湿度が、対象予約情報で指定された温度と湿度になった場合(ステップS24のY)、処理部68は、対象予約情報に基づいて空気質調整部22aの調香運転および除菌運転をさらに開始させる(ステップS26)。具体的には、対象予約情報が特定の香り付けを指定するものである場合、処理部68は、第1空間10aへ給気される空気にその特定の香りを付加するよう空気質調整部22aの調香部44を制御する。一方、対象予約情報が香り付け不要を指定するものである場合、処理部68は、第1空間10aへ給気される空気を脱臭するよう空気質調整部22aの調香部44を制御する。
【0041】
また、対象予約情報が除菌運転(除菌有り)を指定するものである場合、処理部68は、第1空間10aへ給気される空気を除菌するよう空気質調整部22aの除菌部43を制御する。一方、対象予約情報が除菌不要を指定するものである場合、処理部68は、空気質調整部22aの除菌部43の作動を抑制する。
【0042】
第1空間10aの温度と湿度が、対象予約情報で指定された温度と湿度になっておらず(ステップS24のN)、かつ、対象予約情報で指定された使用日時までの時間が第2閾値より大きい場合(ステップS28のN)、ステップS24に戻る。第1空間10aの温度と湿度が、対象予約情報で指定された温度と湿度になっていなくても、使用日時までの時間が第2閾値以下であれば(ステップS28のY)、ステップS26に進み、処理部68は、対象予約情報に基づいて空気質調整部22aの調香運転および除菌運転を開始させる。
【0043】
第2閾値は、第1閾値より小さい値であり、開発者の知見や空調システム100を用いた実験により適切な値が決定されればよい。例えば、第1閾値は5分であってもよい。この場合、処理部68は、予約情報が示す使用日時の少なくとも5分前から、空気質調整部22aの調香運転および除菌運転を開始させる。制御装置32は、図4に示す処理を繰り返し実行する。
【0044】
実施の形態の空調システム100によると、空間の使用を予約する予約情報において、予約空間の空気質として温度、湿度、香り、除菌の有無を指定することができる。空調システム100の制御装置32は、予約空間の空調装置20を制御して、予約情報で指定された予約空間の空気質を実現する。これにより、予約者が予約空間を利用する際の快適性を一層向上させることができる。また、制御装置32は、予約空間の使用日時より前に、予約空間の空調装置20の動作を開始させることにより、使用日時において予約者の望む空気質の空間を予約者に提供することができる。
【0045】
また、一般的に、空気の香り付けと除菌は、温度と湿度の調整より短時間で行うことができる。制御装置32は、予約空間の温度と湿度の調整を開始後、予約空間の使用日時の直前に調香運転と除菌運転を開始させることで、消費電力を抑制することができる。なお、温度と湿度の調整が未完了であっても、使用日時まで第2閾値以下になった場合、調香運転と除菌運転を開始させることで、使用日時には予約空間の空気質を予約者の望む状態に調整することができる。
【0046】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0047】
次に、予約情報に係る変形例について説明する。
予約情報は、予約空間の空気質の指定として、空気質のパターンが指定され得るものであってもよい。言い換えれば、予約情報には、温度、湿度、香りおよび除菌の有無それぞれの設定値が個別に設定されることに代えて、これらの要素の設定値を一括して指定するパターン(以下「空気質パターン」とも呼ぶ。)が設定されてもよい。制御装置32の記憶部56は、複数の空気質パターンと、各空気質パターンにおける温度、湿度、香りおよび除菌に関する設定値とを対応付けて記憶してもよい。制御装置32の処理部68は、予約情報で空気質パターンが指定された場合、記憶部56においてその空気質パターンに対応付けられた温度、湿度、香りおよび除菌に関する設定値をもとに予約空間の空調装置20の動作を制御してもよい。これにより、予約情報を入力する予約者の負担を低減することができる。
【0048】
予約情報で指定可能な空気質パターンは以下の3つのパターンを含んでもよい。第1のパターンは、いわゆるすっきり空間を実現するパターンであり、例えば、温度26℃、湿度40%、香りなし(脱臭)、除菌有りを一括指定するパターンであってもよい。第2のパターンは、いわゆる潤い空間(しっとり空間)を実現するパターンであり、例えば、温度26℃、湿度60%、植物由来の香り(アロマ)、除菌有りを一括指定するパターンであってもよい。第3のパターンは、作業のパフォーマンスを高めるパターンであり、例えば、温度24℃、湿度50%、香りなし(脱臭)、除菌有りを一括指定するパターンであってもよい。
【0049】
また、予約情報は、予約者の識別情報が含まれてよく、制御装置32の処理部68は、或る予約情報で指定された温度、湿度、香りおよび除菌の有無それぞれの設定値の組を、その予約情報が示す予約者の過去パターンとして、その予約情報が示す予約者の識別情報と対応付けて記憶部56に格納してもよい。また、処理部68は、過去パターンの内容と名称を予約入力端末30へ通知してもよい。
【0050】
予約者は、予約情報において、温度、湿度、香りおよび除菌の有無それぞれの設定値を指定することに代えて、過去パターンの名称を指定してもよい。処理部68は、予約情報で過去パターンが指定された場合、その過去パターンに対応付けられた温度、湿度、香りおよび除菌に関する設定値をもとに予約空間の空調装置20の動作を制御してもよい。これにより、予約情報を入力する予約者の負担を低減することができる。
【0051】
また、予約情報は、予約空間を使用する人数(使用者数)を含んでもよい。制御装置32の処理部68は、予約情報が示す使用者数が所定の閾値以上(例えば6人以上)であれば、使用者数が上記閾値未満の場合より予約空間における換気量を増加させてもよい。換気量を増加させるために、処理部68は、予約空間における排気量および給気量を標準値より大きくするよう予約空間に設置された空気質調整部22および空調部24を制御してもよい。
以上が、予約情報に係る変形例である。
【0052】
次に、空間10から取得する空気質に係る情報の変形例を説明する。
第1空間10aと第2空間10bには、空間内の二酸化炭素量を検知するCO2センサがさらに設けられてもよい。制御装置32の処理部68は、CO2センサにより検知された、予約空間における二酸化炭素量が所定の閾値以上になった場合、予約空間における二酸化炭素量が上記閾値未満の場合より予約空間における換気量を増加させてもよい。
【0053】
また、第1空間10aと第2空間10bには、空間内のPM2.5(微小粒子状物質)の量を検知するPM2.5センサがさらに設けられてもよい。制御装置32の処理部68は、PM2.5センサにより検知された、予約空間におけるPM2.5の量が所定の閾値以上になった場合、予約空間におけるPM2.5の量が上記閾値未満の場合より予約空間における換気量を増加させてもよい。
以上が、空間10から取得する空気質に係る情報の変形例である。
【0054】
次に、空調装置20の運転開始の判断に係る変形例を説明する。
予約対象となる空間10が宿泊施設の部屋である場合、宿泊施設の管理装置(不図示)は、予約者が宿泊施設にチェックインした場合に、そのことを制御装置32へ通知してもよい。制御装置32は、宿泊施設の管理装置から予約者のチェックインが通知された場合、予約空間(予約者が宿泊する部屋)に設けられた空調装置20の動作(予約情報に基づく態様の動作)を開始させてもよい。
以上が、空調装置20の運転開始の判断に係る変形例である。
【0055】
次に、実施の形態の空調装置20に係る置き換え例を図5および図6を用いて説明する。
図5は、空調装置20の第一の置き換え例である空調装置70の詳細な構成を示すブロック図である。空調装置70は、置き換え前の空調装置20の構成と下記の点で異なる。すなわち、
・空気質調整部22は、空間10の空気を循環するための二重線で示す循環風路を備える点。
・空気質調整部22は、空調部24を備える点。
・熱交換部40は、空気質調整部22と別筐体の装置として実装される点。
以上の3点で、空調装置70は、置き換え前の空調装置20の構成と異なる。
循環風路は、給気風路および排気風路と独立して備わる。熱交換部40は、給気風路および排気風路に気流を発生させる不図示の送風機を備える。給気風路および排気風路は、熱交換部40に備わる。空調装置70は、空調装置20と同様の効果を奏する。
【0056】
図6は、空調装置20の第二の置き換え例である空調装置80の詳細な構成を示すブロック図である。空調装置80は、置き換え前の空調装置20の構成と下記の点で異なる。すなわち、
・空気質調整部22は、空間10の空気を循環するための二重線で示す循環風路を備える点。
・空気質調整部22は、空調部24を備える点。
・熱交換部40は、空気質調整部22と別筐体の装置として実装される点。
以上の3点で空調装置80は、置き換え前の空調装置20の構成と異なる。
循環風路は、給気風路および排気風路と独立して備わる。熱交換部40は、給気風路および排気風路に気流を発生させる不図示の送風機を備える。給気風路および排気風路は、熱交換部40に備わる。空調装置80は、空調装置20と同様の効果を奏する。
以上が、空調装置20の置き換え例である。
【0057】
なお、空調装置20の置き換え例では、空気質調整部22に空調部24を組み込んだ構成としたが、さらに熱交換部40を組み込んだ構成としてもよい。言い換えれば、空調装置70と空調装置80は、一つの筐体装置として構成してもよい。
なお、実施の形態および変形例を含めて、各風路には断熱性を高めるため断熱材を設けてもよい。
なお、実施の形態および変形例を含めて、空調部24は、除湿部41および加湿部42の上流側に配置されてもよい。所定の湿度を得やすい飽和水蒸気量となるように、空気の温度をはじめに調整しておくことで、所定の温度および湿度を得るのに要する時間を短縮できる効果が期待できる。
【0058】
上述した実施の形態および変形例の任意の組み合わせもまた本開示の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施の形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。例えば、請求項に記載の制御部は、実施の形態の制御装置32が備える複数の要素(例えば、処理部68、第1動作制御部60、第2動作制御部62、第3動作制御部64、第4動作制御部66)のいずれか1つで実現されてもよく、これら複数の要素の任意の組み合わせ、または連携により実現されてもよい。
【0059】
実施の形態および変形例に記載の技術は、以下の項目によって特定されてもよい。
[項目1]
所定の空間(10)に設けられた空調装置(20)と、
前記空調装置(20)の動作を制御する制御装置(32)と、
を備え、
前記制御装置(32)は、
前記空間(10)の使用を予約する予約情報であって、温度、湿度、香りおよび除菌に関する空気質の指定を含む予約情報を受け付ける受付部(50)と、
前記空間(10)の空気質が前記予約情報で指定された空気質に整合するよう前記空調装置(20)の動作を制御する制御部(68)と、を含むことを特徴とする
空調システム(100)。
この空調システムによると、予約者が温度、湿度、香りおよび除菌に関する空気質を指定できることにより、予約者が予約空間を利用する際の快適性を一層向上させることができる。
[項目2]
前記予約情報は、前記空間(10)の使用日時をさらに含み、
前記制御装置(32)の制御部(68)は、前記予約情報に含まれる使用日時より前に、前記空調装置(20)の動作を開始させることを特徴とする
項目1に記載の空調システム(100)。
この空調システムによると、使用日時において予約者の望む空気質の空間を予約者に提供することができる。
[項目3]
前記予約情報は、前記空気質の指定として、前記空気質のパターンが指定され得るものであり、
前記制御装置(32)は、前記空気質のパターンと、温度、湿度、香りおよび除菌に関する設定値とを対応付けて記憶する記憶部(56)をさらに含み、
前記制御装置(32)の制御部(68)は、前記予約情報で空気質のパターンが指定された場合、そのパターンに対応付けられた温度、湿度、香りおよび除菌に関する設定値をもとに前記空調装置(20)の動作を制御することを特徴とする
項目1または2に記載の空調システム(100)。
この空調システムによると、予約情報を入力する予約者の負担を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示の技術は、空調装置を制御する装置、または、空調装置を含むシステムに適用できる。
【符号の説明】
【0061】
20 空調装置、 30 予約入力端末、 32 制御装置、 50 予約情報取得部、 56 記憶部、 60 第1動作制御部、 62 第2動作制御部、 64 第3動作制御部、 66 第4動作制御部、 68 処理部、 100 空調システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6