(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/022 20210101AFI20240621BHJP
H01S 5/02253 20210101ALI20240621BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20240621BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240621BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20240621BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240621BHJP
【FI】
H01S5/022
H01S5/02253
G03B21/14 A
F21S2/00 330
F21V5/04 250
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2021563743
(86)(22)【出願日】2020-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2020028215
(87)【国際公開番号】W WO2021117286
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2019221829
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】杉田 知也
(72)【発明者】
【氏名】長谷山 亮
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-219779(JP,A)
【文献】特開2013-073079(JP,A)
【文献】特開2019-204878(JP,A)
【文献】特開2019-148692(JP,A)
【文献】特開2016-225448(JP,A)
【文献】特開2008-078043(JP,A)
【文献】特開2017-111428(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0061839(US,A1)
【文献】特開2017-138471(JP,A)
【文献】国際公開第2011/161931(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/016939(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/225438(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00- 5/50
G03B 21/14
F21S 2/00
F21V 5/00
F21V 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射する光源と、
前記レーザ光の出射方向に配置された光学素子と、を備え
た光源装置であって、
前記光源は、前記レーザ光を出射する複数の半導体レーザ素子を有し、
前記光学素子は、第1面と、第2面と、を有し、
前記第1面には、前記レーザ光が入射する光強度変換部
、
前記第1面と前記第2面との間には、前記レーザ光を透過する透光部
、
前記第2面には、前記光強度変換部を透過した前記レーザ光が出射するコリメータ部
、を有し
ており、更に、
前記光強度変換部は、複数のレンズアレイを有し、
且つ前記複数のレンズアレイの各々が複数のレンズセルを有しており、
前記コリメータ部は、複数のコリメータレンズを有しており、
前記複数の半導体レーザ素子のうち所定の1つ
のレーザ素子から出射し
たレーザ光は、前記
光強度変換部が有する複数のレンズアレイのうち所定の1つ
のレンズアレイに入射
し、前記コリメータ部が有する複数のコリメータレンズのうち所定の1つ
のコリメータレンズを透過して出射
するものであり、
前記所定の一つのレンズアレイに入射したレーザ光は、
この所定の一つのレンズアレイが備える複数のレンズセルのうち少なくとも2つ
のレンズセルを透過し、このレーザ光の光強度分布
は均一となり、
更に、前記所定の1つ
のコリメータレンズ
を透過したレーザ光は平行な光束を有する、
ことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記所定の
一つのレーザ素子と、前記所定の
一つのレンズアレイと、前記所定の
一つのコリメータレンズは、
この一つのレーザ素子から発せられるレーザ光の光軸上に配置されてい
る、請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記光学素子を上面からみたとき、前記レンズアレイの外形は、前記コリメータレンズの外形より内側に位置してい
る、請求項1に記載の光源装置。
【請求項4】
前記レンズセルのサグ量が15μm以下であ
る、請求項1に記載の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の半導体レーザ素子から出射されたビームをコリメートするレンズアレイを備えた光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタ(映像投影装置)用の光源として、高圧水銀ランプ等が使用されている。近年、プロジェクタの高輝度化や省エネルギー対応のため、これまで主流であった高圧水銀ランプ等から半導体レーザ(レーザダイオード(Laser Diode)、以降LDと称する)への切り替えが進んでいる。
【0003】
半導体レーザを光源として用いるプロジェクタは、大別して、赤色(R)・緑色(G)・青色(B)の三原色に対応する複数の波長のレーザ光を使用するタイプのものと、青色レーザ光を励起光(ポンプ光)として蛍光体に入射し黄色波長帯の蛍光に変換して白色光を得るタイプのものがある。いずれの場合においても、光強度の大きなレーザ光や蛍光光で画像表示部を照明し、画像表示部で形成された画像情報を投影光学系等でスクリーンに拡大投影することで、明るく大画面の映像表示装置として使用される。
【0004】
光源部の小型化・高輝度化・低価格化を目指した技術革新により、複数のLDチップを並列配置したマルチチップパッケージ(フラットパッケージ)が例えば特許文献1で提案され実用化されてきた。またこのような製品の登場に伴い、マルチチップパッケージに配置されたそれぞれのLDチップから出射されるレーザ光をコリメート光にするため、複数のLDチップのそれぞれに対応して複数のレンズが配置された製品が実用化されてきた。特に複数のレンズを一体的に形成した、いわゆるレンズアレイと呼ばれる構成が提案されており、将来的にプロジェクタ製品の多くがこのタイプのレーザ光源を採用すると見られている。
【0005】
このような複数ビームの青色レーザ光を励起光として蛍光体に入射し蛍光光に変換して白色光を得る場合、レンズ等を用いてできるだけ小さい領域にレーザ光を集光して照射させることが好ましい。しかし、蛍光体の輝度飽和(励起光の強度を高くすると蛍光体の温度上昇等による発光効率の低下)が発生するといった課題や、蛍光体の寿命が低下するといった不具合が生じる場合がある。そのため、過度に光強度を高めることはできない。特に一般的にLDから出射されるレーザ光の強度分布は中心部が高く周辺部が弱い、いわゆるガウシアンビームプロファイルとなっている。そのため、蛍光体の入射面近傍の光強度分布が強弱の分布を持つことになる。光強度の大きい部分では励起光(入射光)から蛍光への変換効率が飽和したり蛍光体が焼けたりする。一方で、光強度の小さい部分では十分な蛍光光(変換光)が得られずに照度ムラの要因となる不都合が生じていた。
【0006】
一方で、光学系やプロジェクタをできるだけ小さくするためには、レーザ光照射領域(蛍光発光領域)をできるだけ小さくしながら高輝度化を図る必要がある。従って、励起光であるレーザ光の強度分布をできるだけ均一化し、蛍光発光領域に照射されるピーク光強度を輝度飽和が発生しない強度で均一に励起することができれば、励起光照射領域全体が高輝度な蛍光発光領域とすることができる。
【0007】
そして、複数ビームのレーザ光をプロジェクタの照明光や蛍光体への励起光として利用する構成として、フライアイレンズと呼ばれるレンズセルが2次元アレイ状に並んだ光学素子を2枚組で使用して光強度分布の均一化を図る構成が、例えば特許文献2で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-168547号公報
【文献】特開2009-63619号公報
【発明の概要】
【0009】
しかしながら、2枚のフライアイレンズ間距離や、フライアイレンズを構成する複数のレンズセルの位置を精度よくアライメントする必要があるため均一な光強度分布のコリメート光を得るための光学系のサイズが大きくなってしまうという問題があった。
【0010】
上記に述べた問題を解決するため、本開示は、複数のLDチップを並列配置したマルチチップパッケージ光源から出射された複数のレーザ光を、均一な光強度分布(いわゆるトップフラット光強度分布)を有する複数のコリメート光にする光源装置において、光学系のサイズを小さくすることを目的とする。なお、光学系とは、光源から出射されたレーザ光が対象物を照射するまでに透過する光学素子の集合体をいう。
【0011】
上記目的を達成するため、本開示に係る光源装置は、以下の構成を有する。
【0012】
すなわち、本開示に係る光源装置は、光源と、光学素子と、を備える。光源は、レーザ光を出射する。光学素子は、レーザ光の出射方向に配置されている。また光源は、複数の半導体レーザ素子を有する。複数の半導体レーザ素子の各々は、レーザ光を出射する。また光学素子は、第1面と、第2面と、を有する。第1面は、光強度変換部を有する。また、光強度変換部には、レーザ光が入射する。第1面と第2面との間には、透光部が備えられる。透光部において、レーザ光が透過する。第2面は、コリメータ部を有する。コリメータ部には、光強度変換部を透過したレーザ光が出射する。また、光強度変換部は、複数のレンズアレイを有する。また、コリメータ部は、複数のコリメータレンズを有する。複数の半導体レーザ素子のうち所定の1つから出射したレーザ光は、複数のレンズアレイのうち所定の1つに入射する。所定の1つのレンズアレイに入射したレーザ光は、複数のコリメータレンズのうち所定の1つを透過して出射する。複数のレンズアレイの各々は、複数のレンズセルを有する。レーザ光は、所定の1つのレンズアレイが備える複数のレンズセルのうち少なくとも2つを透過する。少なくとも2つのレンズセルを透過したレーザ光の光強度分布は、均一となる。レーザ光は、所定の1つのコリメータレンズを透過した後に平行な光束を有する。
【0013】
本開示により、均一な光強度分布を有する複数のコリメート光を出射する光源装置の光学系のサイズを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の一実施形態に係る光源装置を模式的に示した構成図である。
【
図2】同光源装置をコリメータレンズの中心を通る平面で切ったときの断面図である。
【
図3】同光源装置を光学素子の中心を通りかつ光学素子の上方から眺めたときの平面図である。
【
図4】同光源装置において、1つのコリメータレンズ4aの中心を通る平面で切った断面図である。
【
図5A】半導体レーザ素子からのレーザ光がレンズアレイに入射するときのレンズアレイのレンズ面に接する平面におけるレーザスポットの大きさを示す図である。
【
図5B】レンズアレイのレンズ面に接する平面におけるレンズアレイとレンズセルとの配置関係を示す平面図である。
【
図5C】1つのレンズセル3bを示す平面図である。
【
図6】半導体レーザ素子と、レンズアレイとコリメータレンズとの配置において、半導体レーザ素子から出射されたレーザ光がコリメータレンズを透過した後にその光強度分布が均一化される様子を示す模式断面図である。
【
図7】半導体レーザ素子から出射してすぐのレーザ光のファーフィールドパターンの光強度分布を示す図である。
【
図8】半導体レーザ素子から出射したレーザ光がコリメータレンズを透過した後の光強度分布を示す図である。
【
図9】本開示の変形例にかかる光源装置の光学素子の一例を示す平面図である。
【
図10】同光源装置の光学素子の別の一例を示す平面図である。
【
図11】本開示の光源装置を用いた白色光源の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の一実施の形態にかかる光源装置について図を用いて説明する。なお、以下に示される光源装置およびその製造方法は、あくまで一例であって以下の内容に限定されない。
【0016】
図1は、一実施の形態に係る光源装置100を模式的に示した構成図である。
図2は、
図1に示す光源装置100を、コリメータレンズ4aの中心を通りx軸に平行なII-II線を含む、xz平面に平行な平面で切った断面図である。
図3は、
図1に示す光源装置100を、上方から眺めたときの平面図である。なお、「上方から眺める」とは、z軸に平行で光学素子5の中心を通る直線上にあり、光学素子5のどの位置よりもzの値が大きくなる位置で、かつ光学素子5より離れた位置から眺める、ということである。なお、
図3においてパッケージ1bの記載は煩雑のため省略している。なお、x軸、y軸、z軸については、後述する。
【0017】
光源装置100は、光源1と、光学素子5と、を有している。
【0018】
光源1は、複数の半導体レーザ素子1aと、複数の半導体レーザ素子1aを内部に収容して固定するパッケージ1bを有している。
【0019】
光学素子5は、透光部2と、光強度変換部3と、コリメータ部4と、を有している。
【0020】
以下、本開示の一実施の形態にかかる光源装置100を構成する各要素とその機能について説明する。
【0021】
(1)光源1
(1-1)半導体レーザ素子1a
半導体レーザ素子1aは、多層構造を有する。当該多層構造は、基板の上に窒化ガリウム系の半導体を材料とした複数の層を積層することにより形成される。
【0022】
半導体レーザ素子1aは、多層構造を構成する各層の面に垂直な方向すなわち積層方向をx軸としてパッケージ1bの上に配置されている。
【0023】
半導体レーザ素子1aに所定の電圧を印加して電流を流すことにより、半導体レーザ素子1aからレーザ光Lが出射する。半導体レーザ素子1aが出射するレーザ光の発光波長は、例えば440~460nmの青色波長帯である。また、半導体レーザ素子1aの光出力は、例えば数10mW~数100mWである。
【0024】
一般的にレーザ光Lは、半導体レーザ素子1aの端面窓構造の形状に起因する拡がり角で出射される。本実施の形態において当該レーザ光Lは、単一横モード光である場合を例に説明するが、本発明の効果はこれに限定されるものではなく、高出力化のためにLDの活性層の幅を数10ミクロン程度のワイドストライプ構造としたマルチ横モード光であってもよい。その場合には、半導体レーザ素子1aの光出力は数W以上となる。
【0025】
なお、
図2以降の図面において光軸Cは、レーザ光Lの光分布の中心軸を示す。
【0026】
(1-2)パッケージ1b
パッケージ1bは、例えば縦20mm、横40mm、高さ15mmの直方体の形状を有している。
図1を含むそれ以降の図番にかかる図面において、パッケージ1bの横方向をx軸、縦方向をy軸、高さ方向をz軸と定義する。本実施の形態においては、6個の半導体レーザ素子1aを所定の間隔で、等間隔に配置している。すなわち、6個の半導体レーザ素子1aは、x軸方向に3個、y軸方向に2個配置されている。当該隣接する2個の半導体レーザ素子1aの間隔は、10mmである。
【0027】
パッケージ1bは、一般的なLD用パッケージである窒化アルミニウムや銅、金めっきを施した金属材料、タングステン銅などにより構成される。
【0028】
(2)光学素子5
光学素子5は、縦20mm、横40mm、厚み3mmの直方体の形状を有している。
【0029】
(2-1)透光部2
透光部2は、光学ガラスで構成されている。透光部2は、光源1と対向する第1面2aと、第1面2aと反対側の第2面2bを有している。透光部2の厚み、つまり、第1面2aから第2面2bまで距離は、3mmである。光強度変換部3は、透光部2の第1面2aに形成されている。コリメータ部4は、透光部2の第2面2bに形成されている。
【0030】
(2-2)光強度変換部3
光強度変換部3は、透光部2の第1面2aに配置された複数のレンズアレイ3aで構成される。それぞれのレンズアレイ3aは、単一の半導体レーザ素子1aから出射されたレーザ光L(
図2においてレーザ光Lのビーム拡がりを破線で示している)の光強度分布を均一化するように構成されている。レンズアレイ3aは、それぞれ、複数のレンズセル3bを二次元的に、できるだけ円形状に近くなるように配置した構成である。それぞれのレンズアレイ3aの大きさは、直径が8.5mmである。また、隣り合うレンズセル3bのピッチは、150μmである。レンズセル3bの大きさや曲率を調節することでレーザ光Lの光強度分布を均一化することができる。なお、本実施形態にかかる光源装置100において、レンズセル3bの形状を正六角形とし、複数のレンズセル3bをハニカム状に配置してレンズアレイ3aを構成している。しかし、このレンズセル3bの形状は、正六角形に限定されない。レンズセル3bの他の形状として、正多角形、例えば正三角形、正方形、正五角形や正八角形も可能である。また、レンズセル3bの他の形状として、正多角形に限らず、他の多角形、例えば、三角形、四角形、五角形や六角形も可能である。また、レンズセル3bの形状として、円形や楕円形とすることができる。但し、レンズセル3bの形状が円形の場合には、レンズセル3bを密に配置した場合であっても隣接するレンズセル3bの間に非レンズ部が生じ、レーザ光Lのうち、非レンズ部を通過する光(レンズセルを通過しない光)成分は強度分布の均一化を阻害する要因となる。従ってレンズセルの外形は、隙間なく2次元配置が可能な形状、例えば正六角形や正方形、正三角形や長方形の方がよい。
【0031】
(2-3)コリメータ部4
コリメータ部4は、複数のコリメータレンズ4aを二次元的に配置したレンズアレイで構成されている。コリメータレンズ4aは、それぞれ、単一のレンズアレイ3aを透過したレーザ光Lをコリメートするように構成されている。隣り合うコリメータレンズ4aのピッチは、9.5mmであり、半導体レーザ素子1aのピッチと同一である。コリメータレンズ4aの直径は、9mmである。なお、ここでコリメートとは、コリメータレンズ4aを透過する光を平行光にすることをいう。
【0032】
コリメータ部4は、6つのコリメータレンズ4aを有する。6つのコリメータレンズ4aは、6つのレンズアレイ3aに応じて縦二列、横三列で等間隔で配置されている。
【0033】
なお、レンズアレイ3aが設けられている領域は、レーザ光Lが透過する領域R(
図1参照)を含む。レンズアレイ3aの外周端は、領域Rよりも外側に設定されている。したがって、透光部2の第1面2aにおいて隣り合うレンズアレイ3aの間は平坦面となっているが、この平坦面にレンズセル3bが存在していてもよい。言換えると、第1面2aの全面にレンズセル3bを配置してもよい。この場合、レンズアレイ3aは上述した領域Rを含み、Rよりも大きい領域に形成されている。
【0034】
(3)光源1と光学素子5との配置関係
(3-1)本開示にかかる光源1と光学素子5との配置関係
以下、本開示にかかる光源1と光学素子5との配置関係の詳細について説明する。
【0035】
光源1を構成する半導体レーザ素子1aと、レンズアレイ3aと、コリメータレンズ4aとは、一対一に対応して配置される。また、光源1を構成する半導体レーザの1aの光軸Cは、z軸に平行である。また、コリメータレンズ4aの光軸は、z軸に平行である。また、レンズアレイ3aの中心を通りz軸に平行な線と、コリメータレンズ4aの光軸と、光軸Cは一致する。
【0036】
図3において、1つのコリメータレンズ4aの中心を通りx軸に平行なIV―IV線を含むxz平面で切った断面図を
図4に示す。すなわち、
図4は、半導体レーザ素子1aと、光学素子5を構成するレンズアレイ3aと1つのコリメータレンズ4aとの配置関係を示す断面図である。なお、
図4においてパッケージ1bの記載は煩雑のため省略している。
【0037】
また、
図5Aは、半導体レーザ素子1aからのレーザ光Lがレンズアレイ3aに入射するときの、レンズアレイ3aのレンズ面に接しかつyz平面に平行な平面3APにおけるレーザスポットの大きさを示す平面図である。なお、レーザスポットは楕円形状を有する。
図5Bは、平面3APにおけるレンズアレイ3aとレンズアレイ3aを構成するレンズセル3bとの配置関係を示す平面図である。
図5Cは、1つのレンズセル3bを示す平面図である。
【0038】
半導体レーザ素子1aの端面とレンズアレイ3aのレンズ面との間の距離をDとすると、D=10mmである。
【0039】
レンズアレイ3aの直径をDmiとすると、Dmi=8.5mmである。レンズアレイ3aを構成するレンズセル3bは、
図5Cに示すように平面視で正六角形の形状を有する。レンズセル3bの大きさは、正六角形の対向する2辺の間隔Lceで定義される。本実施形態においては、Lce=150μmである。また、レンズセル3bのレンズ面は球面で、その曲率半径は0.7mmである。
【0040】
また、コリメータレンズ4aの直径をDcoとすると、Dco=9mmである。コリメータレンズ4aのレンズ面の曲率半径は球面で、その曲率半径は5cmである。すなわち、レンズセル3bの曲率は、コリメータレンズ4aの曲率より大きく、レンズセル3b焦点距離は、コリメータレンズ4aの焦点距離よりも小さい。
【0041】
また、レーザ光1Lの拡がり角について、x軸方向をΘ1、y軸方向をΘ2とすると、本実施の形態で検討した半導体レーザ素子1aについてはΘ1=23°、Θ2=8.5°である。このことから、平面3APにおけるレーザスポットの大きさは、x軸方向について2×Asp=2×D×tan(Θ1)=8.49mm、y軸方向について2×Bsp=2×D×tan(Θ2)=2.99mmである。なお、拡がり角は、光軸Cからレーザ光Lの光強度がピーク値の1/e2の値(eは自然対数の底、e=2.718・・・)となる場所までのビームの拡がりを示す角度(半値)である。
【0042】
なお、
図3に示すように、レンズアレイ3aの外形は、入射されるレーザ光線に応じていればよく、上面視においてレンズアレイ3aの外形は、対応するコリメータレンズの外形の内側とすることが好ましい。
【0043】
(3-2)考察
なお、光源装置100においては、光強度変換部3を構成するレンズアレイ3aの正面視における外形寸法(以降、セルサイズXと称す)が重要なパラメーターとなる。
【0044】
半導体レーザ素子1aから出射されたレーザ光Lが光強度変換部3に入射する際の断面形状は、一般的には
図5Aに示すように楕円形状である。このレーザ光Lの長軸側の拡がり角(半値)をΘ1、短軸側の拡がり角(半値)をΘ2として、半導体レーザ素子1aの出射端面から光強度変換部3までの距離をDとする。このとき、光強度変換部3に入射するレーザ光線Lの長軸側寸法はD×tan(Θ1)、短軸側寸法はD×tan(Θ2)となる。
【0045】
レンズアレイ3aの直径Dmiは半導体レーザ素子1aから出射されるレーザ光Lのスポットをすべて含む大きさがあればよく、Dmi>2×D×tan(Θ1)であればよい。
【0046】
一方、コリメータレンズ4aを出射した光がフラットな分布となるためには、少なくとも2つ以上のレンズセル3bを通過したレーザ光線Lがほぼ同一の空間に重ね合わされることが必要である。すなわち、レーザ光Lのスポットが少なくとも複数のレンズセル3bを照射する必要がある。そのため、X<0.5×D×tan(Θ2)であることが必要である。
【0047】
したがって、1つのレンズアレイ3aの直径Dmiは、少なくともDmi≧2×D×tan(Θ1)となり、かつ、1つのレンズセル3bのセルサイズXが、X≦0.5×D×tan(Θ2)の関係になることが好ましい。
【0048】
なお、レンズセル3bが正六角形の場合、X=Lceである。
【0049】
実用的には、単一の半導体レーザ素子1aから出射されたレーザ光Lは、3つ以上のレンズセル3bを通過するように設計されることが望ましく、この場合には所望の位置における出射光の断面光強度分布が15%以下のバラツキで均一化される。用途に応じて要望される光強度分布の均一度により、セルサイズXと入射光線の短軸側寸法の比が大きくなるように設計・作製することができる。
【0050】
なお、レンズアレイ3aの直径Dmiは半導体レーザ素子1aから出射されるレーザ光Lのスポットをすべて含む大きさがあればよく、Dmi>2×D×tan(Θ1)であればよい。また、レンズセル3bの大きさは、コリメータレンズ4aを出射した光がフラットな分布となるためには、レーザ光Lのスポットが少なくとも複数のレンズセル3bを照射する必要がある。そのため、Lce<0.5×D×tan(Θ2)であることが必要である。
【0051】
本実施の形態においては、Dmi=8.5mmであり、2×D×tan(Θ1)=8.49mmであるので上記関係式を満たしている。また、Lce=150μm=0.15mmであり、0.5×D×tan(Θ2)=0.75mmであるので上記関係式を満たしている。
【0052】
(4)光源装置100の特性について
図6は、
図4に示す半導体レーザ素子1aと、光学素子5を構成するレンズアレイ3aと1つのコリメータレンズ4aとの配置における、半導体レーザ素子1aから出射されたレーザ光Lの光強度分布が均一化される理論を説明する模式断面図である。
【0053】
図6に示すグラフAは、半導体レーザ素子1aと光強度変換部3の間のx軸に平行な線分VII-VIIにおけるレーザ光Lの光強度分布(ファーフィールドパターンのx軸方向の光分布)を示す。
図6におけるグラフBは、コリメータ部4を出射した後のx軸に平行な線分VIII-VIIIにおけるレーザ光Lの光強度分布を示す。
【0054】
図7は、位置VII-VIIにおける半導体レーザ素子1aから出射したレーザ光Lのファーフィールドパターンのx軸方向の光強度分布を示す図である。
図7に示す光強度分布のグラフは、
図6におけるグラフAと同じである。また、
図8は、コリメータレンズ4aを出射した後の位置VIII-VIIIにおけるx軸方向の光強度分布を示す図である。
図8に示す光強度分布のグラフは、
図6におけるグラフBと同じである。
【0055】
レンズアレイ3aに入射されるレーザ光Lの光強度分布は、グラフAに示されるようにガウシアン分布である。レンズアレイ3aに入射されるレーザ光Lは、複数のレンズセル3bに分かれて入射される。レンズセル3bに入射されたレーザ光Lは集光した後に発散される。例えば、光強度分布が大きい光軸Cの近傍領域のレーザ光Lは、レンズセル3b1によってコリメータレンズ4aのほぼ全体に発散される。光強度分布が小さい光束の外周近傍領域のレーザ光Lは、レンズセル3b2によってコリメータレンズ4aの全体に発散される。つまり、コリメータレンズ4aから出射されるレーザ光Lの光強度分布は、各々のレンズセル3bにより発散されたレーザ光Lの重ね合わせた像となる。この結果、コリメータレンズ4aから出射されるレーザ光Lの光強度分布は、グラフBに示されるように均一化される。
【0056】
本開示における光源装置100の特徴は、透光部2の第1面に光強度変換部3を一体的に構成して、透光部の第2面にコリメータ部4を一体的に構成したところである。光源装置100において、光強度変換部3は、透光部2の第1面2aに配置されている。つまり、光強度変換部3は、半導体レーザ素子1aから出射されたレーザ光Lが所定の拡がり角をもって広がる段階に配置される。この構成では、レーザ光Lをコリメートした後に光強度変換を行う装置構成に比べ、光源1、光強度変換部3及びコリメータ部4を含む光学系の光路長を短縮することができる。つまり、光源装置100における光学系のサイズを小さくすることができる。
【0057】
(5)透光部2の製造方法
また、このような光学ガラスを用いた透光部2は、プレス金型を用いたガラスモールド工法で作製することができる。プレス金型には、精密加工された超鋼金型が用いられる。超鋼金型の材料としては、例えば炭化タングステンが用いられる。
【0058】
ガラスモールド工法は、金型加工形状の自由度とプリフォーム硝材形状の自由度がある。この結果、大きなサグ量が必要となるコリメータレンズ4aおよび微細な寸法のレンズアレイ3aを転写するプレス金型を実現することができる。なお、ここでサグ量とは、金型加工面に対する掘削量のことをいう。
【0059】
プロジェクタ用光源や蛍光体の励起光として使用するレーザ光は、光ディスク装置等に使用するレーザ光に比べて要求されるビーム品質(収差特性や集光性能)レベルが低い。そのため、レンズの形状精度が例えば5~10μm程度のばらつきが許され、金型加工における加工ツールや加工工数を抑えて低コストで金型作製ができるという利点もある。ガラスモールド工法に適した光学ガラスは、例えば小原光学株式会社の製品であるBSL7や住田光学ガラス株式会社の製品であるPBK40などである。
【0060】
一方で、超鋼金型は、レンズアレイ3aやコリメータレンズ4aを転写する成形面の加工に時間がかかる。すなわち、加工量と加工コストが比例する。つまり、金型コストを下げるためには、プレス金型の加工面積を少なくすることが重要となる。したがって、
図1や
図2に示すように隣り合うレンズアレイ3aの間は、平坦面であることが好ましい。すなわち、上述したように光強度変換部3をレーザ光Lの発散過程に配置することで、レンズアレイ3aを大幅に小型化することができる。そのため、プレス金型の加工コストを削減することができる。
【0061】
また、例えば、レンズセル3bのレンズ曲率を大きく(レンズ曲率半径を小さく)したり、セルサイズXを大きくしたりすると、レンズの飛び出し量(一般的にはレンズのサグ量と呼ばれる、レンズの深さ)が大きくなる。このような場合には、ガラスモールド工法によるレンズ成形プロセスにおいて不都合が生じることがある。特にプリフォーム硝材の光強度変換部3を形成する面がほぼ平坦面であった場合、レンズアレイ3aを転写するためのプレス金型のセル境界(稜線)とプリフォーム硝材との間にできる空間が閉空間に近くなる。これにより転写部分にガラスが十分に充填されない「エアー溜り」と呼ばれる現象が発生しやすい。この現象は、レンズセル3bのサグ量が大きいほど顕著であった。しかし、サグ量が概ね15ミクロンよりも小さい場合には、温度や圧力等のプロセス条件を適正に選択することによりほとんど発生しない成形が可能であることが確認された。従って、高い量産性と歩留りを確保するためには、レンズセル3bにおけるサグ量が15ミクロン以下であることが好ましい。また、サグ量を小さくすることにより、金型加工に係る工数や金型作製費用の低減ができるという利点もある。また更には、サグ量が小さいことによりレンズセル3bの境界(稜線)における光の透過損失を小さくすることができ、半導体レーザ素子1aから出射されたレーザ光Lの利用効率を高くすることができる。
【0062】
(5)変形例
なお、光源1を構成する半導体レーザ素子1aの数は上述した6つに限定されるものではない。また、複数の半導体レーザ素子1aの配置についても上述した列数に限定されない。つまり、光源1を構成する半導体レーザ素子1aは複数個であり、その配置は、一次元的もしくは二次元的に整列配置される。また、レンズアレイ3aやコリメータレンズ4aも半導体レーザ素子1aの配置に応じて適宜配置される。
【0063】
例えば、
図9に示すように、コリメータレンズ4aが縦3個、横3個等間隔に配置されていてもよい。また、
図10に示すように複数のコリメータレンズ4aのうち隣接する3個が正三角形状に配置されていてもよい。また、
図9、
図10に示す配置以外に、長方形状の配列や、五角形、六角形などの多角形状の配置であってもよい。また、円や楕円状の配置であってもよい。
【0064】
なお、
図9、
図10において、煩雑さを避けるため、レンズアレイ3aの記載を省略している。
【0065】
(6)その他の構成
なお、上記一実施の形態において、隣り合うレンズセル3bのピッチを150μmとしたが、その値に限らず、50μm以上かつ500μm以下としてもよい。
【0066】
また、上記一実施の形態において、隣り合うコリメータレンズ4aのピッチは、9.5mmとしたが、その値に限らず、2mm以上かつ10mm以下としてもよい。
【0067】
また、上記一実施の形態において、透光部2の厚みを3mmとしたが、その値に限らず、1mm以上5mm以下であってもよい。
【0068】
また、
図2では、半導体レーザ素子1aのレーザ光Lの出射方向に透光部2を配置した構成として説明したが、半導体レーザ素子1aと透光部2の間にプリズムミラー等の偏向素子を配置して、光路を非直線的なものとしてもよい。
【0069】
(6)白色光源
本開示の光源装置を用いた白色光源について、
図11にその概略を示す。
【0070】
図11において、光源装置100の上方に蛍光体層6が配置されている。蛍光体層6は、例えばYAG蛍光体を内部に含む。当該光源装置は、光源装置100からの光を蛍光体層6に照射することにより、蛍光体層6から白色光を得ることができる。
【0071】
なお、蛍光体層6に含まれる蛍光体としては、YAG以外にSIALON蛍光体等がある。
【0072】
また、上記一実施の形態において、半導体レーザ素子1aとして青色発光をする半導体レーザを用いたが、これに限らず、紫外光を発光する半導体レーザであってもよい。
【0073】
なお、蛍光体層6を透過したレーザ光Lのうち蛍光光に変換されなかった成分は、蛍光体層6内において乱反射等により位相が乱れ可干渉性が低下する。そのため、光源装置100のスペックルノイズが低減される。
【0074】
また、パッケージ1bに配置される複数の半導体レーザ素子1aの、それぞれの発光波長を少しずつ異ならせるようにすることにより、光源装置100のスペックルノイズを低減することができる。
【0075】
(7)実施の態様
以下に、本開示の実施の態様について説明する。
【0076】
本開示の第1の実施の態様にかかる光源装置100は、光源1と、光学素子5と、を備える。光源1は、レーザ光Lを出射する。光学素子5は、レーザ光Lの出射方向に配置されている。また光源1は、複数の半導体レーザ素子1aを有する。複数の半導体レーザ素子1aの各々は、レーザ光Lを出射する。また光学素子5は、第1面2aと、第2面2bと、を有する。第1面2aは、光強度変換部3を有する。また、光強度変換部3には、レーザ光Lが入射する。第1面2aと第2面2bとの間には、透光部2が備えられる。透光部2において、レーザ光Lが透過する。第2面2bは、コリメータ部4を有する。コリメータ部4には、光強度変換部3を透過したレーザ光Lが出射する。また、光強度変換部3は、複数のレンズアレイ3aを有する。また、コリメータ部4は、複数のコリメータレンズ4aを有する。複数の半導体レーザ素子1aのうち所定の1つから出射したレーザ光Lは、複数のレンズアレイ3aのうち所定の1つに入射する。所定の1つのレンズアレイ3aに入射したレーザ光Lは、複数のコリメータレンズ4aのうち所定の1つを透過して出射する。複数のレンズアレイ3aの各々は、複数のレンズセル3bを有する。レーザ光Lは、所定の1つのレンズアレイ3aが備える複数のレンズセル3bのうち少なくとも2つを透過する。少なくとも2つのレンズセル3bを透過したレーザ光Lの光強度分布は、均一となる。レーザ光Lは、所定の1つのコリメータレンズ4aを透過した後に平行な光束を有する。
【0077】
本開示の第2の実施の態様にかかる光源装置100は、第1の実施の態様において、所定の半導体レーザ素子1aと、所定のレンズアレイ3aと、所定のコリメータレンズ4aは、レーザ光Lの光軸C上に配置されている。
【0078】
本開示の第3の実施の態様にかかる光源装置100は、第1の態様において、光学素子5を上面からみたとき、レンズアレイ3aの外形は、コリメータレンズ4aの外形より内側に位置している。
【0079】
本開示の第4の実施の態様にかかる光源装置100は、第1の態様において、レンズセル3bのサグ量が15μm以下である。
【0080】
以上説明したように、本開示の光源装置100は、1つの小さなパッケージ1bに複数の光源を配置させて光学系を小さくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本開示は、少ない部品点数で強度分布が均一化された複数のコリメートレーザ光を提供するという効果を有し、小型で高い光利用効率の光学系が求められるレーザプロジェクタ用途やレーザ照明用途において有効である。
【符号の説明】
【0082】
100 光源装置
1 光源
1a 半導体レーザ素子
1b パッケージ
2 透光部
2a 第1面
2b 第2面
3 光強度変換部
3a レンズアレイ
3b、3b1、3b2 レンズセル
4 コリメータ部
4a コリメータレンズ
5 光学素子
6 蛍光体層