(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】蛍光体ホイール、光源装置、および投写型映像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20240621BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20240621BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
G02B5/20
G03B21/14 A
G03B21/00 D
(21)【出願番号】P 2022207299
(22)【出願日】2022-12-23
(62)【分割の表示】P 2018197164の分割
【原出願日】2018-10-19
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2018021678
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】池田 貴司
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-215573(JP,A)
【文献】特開2017-122810(JP,A)
【文献】特開2012-212129(JP,A)
【文献】国際公開第2014/109333(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G03B 21/14
G03B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を出射する光源と、
前記励起光を受け、蛍光を発する蛍光体ホイールと、を備え、
前記蛍光体ホイールは、
基板と、
前記基板の光源側に設けられた環状の蛍光体層と、
前記蛍光体層の光源側の一部の領域上に設けられた反射膜と、
前記反射膜の光源側に拡散層と、を有し、
前記蛍光体層の上面と前記拡散層の上面との間に段差が設けられており、
前記反射膜の厚みは前記蛍光体層の厚みより薄く、前記拡散層の厚みは前記蛍光体層の厚みより薄い、
光源装置。
【請求項2】
励起光を出射する光源と、
前記励起光を受け、蛍光を発する蛍光体ホイールと、を備え、
前記蛍光体ホイールは、
基板と、
前記基板の光源側に設けられた環状の蛍光体層と、
前記蛍光体層の光源側の一部の領域上に設けられた反射膜と、
前記反射膜の光源側に拡散層と、を有し、
前記蛍光体層の上面と前記拡散層の上面との間に段差が設けられており、
前記反射膜の厚みおよび前記拡散層の厚みの合計は前記蛍光体層の厚みより薄い、
光源装置。
【請求項3】
励起光を出射する光源と、
前記励起光を受け、蛍光を発する蛍光体ホイールと、を備え、
前記蛍光体ホイールは、
基板と、
前記基板の光源側に設けられた環状の蛍光体層と、
前記蛍光体層の光源側の一部の領域上に設けられた反射膜と、
前記反射膜の光源側に拡散層と、を有し、
前記蛍光体層の上面と前記拡散層の上面との間に段差が設けられており、
前記反射膜の厚みは前記拡散層の厚みより薄く、前記拡散層の厚みは前記蛍光体層の厚みより薄い、
光源装置。
【請求項4】
前記蛍光体層は、赤色と緑色の色光成分を含む光を発光し、
前記反射膜は青色の色光を反射する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記蛍光体層は、複数の蛍光体セグメントで構成されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項6】
前記複数の蛍光
体セグメントの第1セグメントは、赤色と緑色の色光成分を含む光を発光し、
前記複数の蛍光体セグメントの第2セグメントは、赤色もしくは緑色の色光成分を含む光を発光し、
前記反射膜は青色の色光を反射する、
請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記蛍光体ホイールは、前記蛍光体層の光源側に設けられた反射防止膜を有する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項8】
前記蛍光及び前記励起光が入射するカラーホイールを備えた、
請求項1~7のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項9】
前記カラーホイールは、入射した光の青色光を透過する青色光透過領域を有し、
前記反射膜にて反射された励起光は、前記青色光透過領域に入射する、
請求項8に記載の光源装置。
【請求項10】
前記青色光透過領域は、全波長域の光を透過する、全波長透過領域である、
請求項9に記載の光源装置。
【請求項11】
前記励起光は、前記基板上における前記反射膜が設けられた領域とは異なる領域の前記蛍光体に入射する、
請求項8~10のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項12】
前記カラーホイールは、赤色波長透過領域と緑色波長透過領域と全波長透過領域を有し、
前記基板上における前記反射膜が設けられた領域とは異なる領域の前記蛍光体に入射した光によって蛍光された光は、前記赤色波長透過領域、前記緑色波長透過領域、及び前記全波長透過領域に入射する、
請求項11に記載の光源装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の光源装置を備えた投写型映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば投写型映像表示装置の光源装置に使用される蛍光体ホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光源と蛍光基板とを有する光源装置が開示されており、蛍光基板は、基板部と、第1の反射膜と、蛍光体層と、第2の反射膜とを有する。第1の反射膜は、基板部の第1の箇所に形成されている。蛍光体層は、第1の反射膜の基板部と反対側の面に形成され、光源からの光により蛍光発光する。第2の反射膜は、基板部の第2の箇所に形成され、光源からの光を反射する。光源からの光が入射する蛍光体層の表面と、光源からの光が反射する第2の反射膜の表面とは、ほぼ同一平面にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、蛍光体ホイールとしてのバランスを確保することで製造性と信頼性の向上と、蛍光と反射光の集光効率向上の両立を図った蛍光体ホイールを備える光源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における第1の態様の光源装置は、励起光を出射する光源と、励起光を受け、蛍光を発する蛍光体ホイールと、蛍光及び前記励起光が入射する、カラーホイールと、を備え、蛍光体ホイールは、基板と、基板上に設けられた環状の蛍光体と、蛍光体の片面の領域上に設けられた反射防止膜と、反射防止膜の一部の領域上に設けられた反射膜と、を有する。
【0006】
また、第2の態様の光源装置は、励起光を出射する光源と、励起光を受け、蛍光を発する蛍光体ホイールと、蛍光及び前記励起光が入射する、カラーホイールと、を備え、蛍光体ホイールは、基板と、基板上に設けられ、複数の蛍光体セグメントで構成された環状の蛍光体層と、前記蛍光体層の片面の領域上に設けられた反射防止膜と、反射防止膜の一部の領域上に設けられた反射膜と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示における蛍光体ホイールは、製造性と信頼性が良好で、かつ蛍光と反射光の集光効率の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】実施の形態1の蛍光体ホイールの構成を示す平面図
【
図2A】実施の形態1の蛍光体ホイールの蛍光体層を示す図
【
図3】実施の形態1のカラーホイールの構成を示す図
【
図4A】実施の形態2の蛍光体ホイールの構成を示す平面図
【
図4B】実施の形態2の蛍光体層を構成する蛍光体セグメントを示す図
【
図5】実施の形態1の蛍光体ホイールを用いた光源装置の構成を示す図
【
図6】実施の形態1の光源装置を用いた投写型映像表示装置の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0010】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0011】
(実施の形態1)
[1-1 蛍光体ホイール]
[1-1-1 構成]
以下、実施の形態1における蛍光体ホイール1の構成について詳細に説明する。
図1Aは蛍光体ホイールの平面図、
図1Bは
図1Aの線1B-1B における断面図、
図1Cは
図1Bに示す断面図により効果を説明するための図である。
図2Aは蛍光体層の平面図、
図2Bは
図2Aの線2B-2Bにおける断面図である。
【0012】
図1Aに示されるように、蛍光体ホイール1は、蛍光体層110と、この蛍光体層110が設けられる円盤状の基板103と、基板103の中央に設けられた取付け穴に取付けられ基板103を回転駆動するモータ104とを備える。
【0013】
蛍光体層110は、黄色の光(すなわち、赤色と緑色の色光成分を含む光)を発光する蛍光体111を円環状(リング状)に焼結したもので、その片面全領域に反射防止膜112が形成されている。蛍光体層110は、また、その片面の一部の領域の反射防止膜112上に青色の色光を反射するための第一の反射膜105が形成されている。本実施の形態では、蛍光体層110の厚みは100~200μm程度である。これに対し、第一の反射膜105の膜厚は、数μmと非常に薄く形成される。本実施の形態では、第一の反射膜105上に拡散層106が設けられている。この拡散層106の厚みも、数十μmと非常に薄く形成される。なお、反射防止膜112の膜厚は数μmである。
【0014】
リング状の蛍光体層110は、基板103の中心に対して同心となるように取り付けられるが、その基板103上の取付け位置には、蛍光体層110の幅よりも少し幅広の円環状をした第二の反射膜131が形成されており、この第二の反射膜131上に接着剤102によって取り付けられる。接着剤102は、熱伝導率と反射率を向上させる含有粒子121がシリコーンに充填されたものであり、含有粒子121としては、酸化チタンや酸化アルミニウム、酸化亜鉛などが使用される。
【0015】
反射防止膜112は、誘電体多層膜からなり、後述するレーザ光源601(
図5、
図6参照)からの励起光と、励起光で蛍光体111が励起され波長変換され出射する蛍光との波長域での入出射光の表面反射ロスを最小化するように最適化されている。
【0016】
第一の反射膜105も、誘電体多層膜からなり、後述する凸レンズ609(
図5、
図6参照)から入射するレーザ光源601からの励起光の波長域と、蛍光体層110で波長変換された蛍光の波長域とのいずれに対しても反射率が高くなるように最適化されている。
【0017】
なお、反射防止膜112を蛍光体層110の片面全領域をカバーするように形成しているが、第一の反射膜105を形成する部分を除く領域のみに形成しても良い。
【0018】
第二の反射膜131は、例えば、アルミ、銀、もしくは銀合金の反射膜とその両側に保護膜で挟みこんだ多層膜からなり、後述するレーザ光源601の波長域と、蛍光体層110でレーザ光源601の光が波長変換されて出射した蛍光との波長域で反射率が最大化するように最適化されている。
【0019】
本実施の形態では、蛍光体111を焼結した蛍光体層110を接着剤102で基板103の第二の反射膜131に接着しているが、接着剤102を用いずに、基板103上の第二の反射膜131上に、蛍光体111を樹脂に充填した蛍光体層を形成し、その表面に反射防止膜112と第一の反射膜105を形成するようにしても良い。
【0020】
また、第二の反射膜131を設けない基板103上に、接着剤102を用いて接着してもよい。
【0021】
[1-1-2 効果]
本実施の形態の効果について
図1Cを参照しつつ説明する。まず、第一の反射膜105に励起光201が照射する場合について述べる。この場合、凸レンズ609(
図5、
図6参照)から蛍光体ホイール1の拡散層106に入射した励起光は、第一の反射膜105で反射して、その進行方向が180度変化し、再び拡散層106を通過して、凸レンズ609へと出射する。
【0022】
次に、蛍光体層110に励起光201が照射する場合について述べる。この場合、凸レンズ609(
図5、
図6参照)から反射防止膜112に入射した励起光201は、蛍光体層110で蛍光体111に吸収され、蛍光に波長変換され、蛍光が全方位に発光する。反射防止膜112側に出射した蛍光はそのまま、凸レンズ609へと出射する。また、基板103側に出射した蛍光は、含有粒子121で反射率が向上した接着剤102、もしくは、基板103の表面に形成された第二の反射膜131で反射し、再び、接着剤102、蛍光体層110、反射防止膜112を通過して凸レンズ609へと入射する。
【0023】
拡散層106と、第一の反射膜105の厚みは薄く、
図1B、または
図1Cに示すように、拡散層106と反射防止膜112との表面が略同一平面になるように基板103上に形成されることになる。
【0024】
このため、励起光201が拡散層106の面に入射して形成されるスポットサイズと、励起光201が蛍光体層110上の反射防止膜112の面に入射して形成さるスポットサイズが略同等の大きさとなり、第一の反射膜105で反射して拡散層106を通過してくる励起光と、蛍光体層110の蛍光体111で波長変換され発光する蛍光との、凸レンズ609への集光効率が略同じとなる。この結果、蛍光体ホイールとしての効率を向上させることができる。
【0025】
また、
図1Aに示すように、基板103にリング状の蛍光体層110を接着剤102でモータ104の回転軸に軸対称で接着することができるため、初期アンバランス量を最小化することができ、蛍光体ホイールとしての製造性および信頼性を向上させることができる。
【0026】
[1-2 蛍光体ホイールを備える光源装置]
[1-2-1 構成]
次に、実施の形態1に係る光源装置について、
図5を参照しながら説明する。
図5は実施の形態1に係る光源装置の構成を示す図である。
【0027】
図5に示されるように、実施の形態1に係る光源装置6は、実施の形態1にかかる蛍光体ホイール1と半導体レーザ素子からなる複数のレーザ光源601とを備える。レーザ光源601は、青色の波長域の励起光源の一例である。蛍光体ホイール1の構成は、先に説明したとおりであるので、重複説明は省略する。
【0028】
また、光源装置6は、レーザ光源601のそれぞれの出射側に配置されたコリメータレンズ602と、凸レンズ603と、拡散板604と、凹レンズ605と、波長および偏光選択性ミラー606と、波長板607と、凸レンズ608、609とを備える。これらの光学部品は、レーザ光源601からの出射光を蛍光体ホイール1に導光する光学系の一例である。光源装置6はさらに、凸レンズ610と、カラーホイール3と、ロッドインテグレータ611とを備える。
【0029】
複数のレーザ光源601のそれぞれから出射された青色波長域の光は、レーザ光源601の出射側に配置されたコリメータレンズ602により平行光化される。複数のコリメータレンズ602の出射側には、コリメータレンズ602から出射されるレーザ光源601の光をまとめて光束幅を小さくする凸レンズ603が配置される。凸レンズ603によって光束幅が小さくなった光は、凸レンズ603の出射側に配置された拡散板604に入射する。拡散板604では、凸レンズ603によって解消しきれなかった光束の不均一を低減する。
【0030】
拡散板604から出射した光は、凹レンズ605に入射する。凹レンズ605は、拡散板604から出射した光を平行化する。
【0031】
凹レンズ605から平行化されて出射された光は、凹レンズ605の出射側に配置された波長および偏光選択性ミラー606に入射する。波長および偏光選択性ミラー606は、光軸に対して45度の角度で配置されており、レーザ光源601から出射された青色光の波長域でS偏光の光を反射し、かつ、レーザ光源601から出射された青色光の波長域でP偏光の光と蛍光体ホイール1から出射される黄色の蛍光の波長域の光を透過する特性を有している。なお、レーザ光源601は、出射するレーザの偏光が、波長および偏光選択性ミラー606に対するS偏光が出射するように配置されている。したがって、波長および偏光選択性ミラー606に入射した、凹レンズ605から出射された光は、波長および偏光選択性ミラー606で反射する。
【0032】
波長および偏光選択性ミラー606で反射したレーザ光源601の青色の励起光は波長板607に入射する。波長板607は、レーザ光源601の波長域の励起光の位相を遅相軸方向にλ/4だけ遅らせる機能を持つ。この時、波長板607の遅相軸は、入射するレーザ光源601の光の偏光方向に対して、45度の方向に配置されている。波長板607を通過したレーザ光源601の励起光は、凸レンズ608、凸レンズ609の順に入射することで、光束が収束した状態で蛍光体ホイール1に入射する。
【0033】
蛍光体ホイール1は、蛍光体層110上に設けられた反射防止膜112、もしくは、第一の反射膜105上に設けられた拡散層106が凸レンズ609に対向するように配置されている。前述のように、蛍光体ホイール1は、モータ104によって回転するため、時系列で、励起光が蛍光体層110と第一の反射膜105に順次照射され、蛍光体層110および第一の反射膜105の一点に集中的に励起光が照射されることが抑制される。
【0034】
まず、凸レンズ608および凸レンズ609によって収束したレーザ光源601の光が、時系列で蛍光体層110に照射された場合を、以下に説明する。
【0035】
蛍光体層110に入射したレーザ光源601からの励起光は、波長変換される。すなわち、レーザ光源601からの励起光は、励起光と波長域が異なる蛍光に変換される。また、蛍光体層110から出射される黄色波長域の蛍光は、蛍光体層110に入射する光に対して180度進行方向が変換され、蛍光は凸レンズ609側に出射される。凸レンズ609に入射した蛍光は、凸レンズ608に入射し、平行光化される。平行光化された蛍光は、波長板607を透過したのち、波長および偏光選択性ミラー606に入射する。
【0036】
波長および偏光選択性ミラー606は、上述の通り、蛍光の光軸に対して45度の角度で配置されている。また、波長および偏光選択性ミラー606は、レーザ光源601の出射光の青色の波長域でS偏光の光を反射し、レーザ光源601の出射光の青色の波長域でP偏光の光と蛍光体層110(蛍光体ホイール1)からの黄色の蛍光の波長域の光を透過する特性を有している。したがって、波長および偏光選択性ミラー606に入射した蛍光は、そのまま通過する。
【0037】
次に、凸レンズ608および凸レンズ609によって収束したレーザ光源601の光が、時系列で第一の反射膜105に照射された場合を、以下に説明する。
【0038】
第一の反射膜105に照射するレーザ光源601の励起光は、まず、拡散層106を通過し拡散される。その後、第一の反射膜105で、180度進行方向を変換される。つまり、反射光は、凸レンズ609側に進行方向が変わる。進行方向の変わった反射光は、再び拡散層106を通過することで再び拡散される。拡散層106を出射した反射光は凸レンズ609、608に順次入射し平行化される。平行光化したレーザ光源601の励起光の反射光は再び波長板607に入射する。
【0039】
波長板607は、前述のとおり、レーザ光源601の青色波長域の励起光の位相を遅相軸にλ/4だけ遅らせる機能を持ち、波長板607の遅相軸は45度の方向に配置されている。このことにより、波長板607を2回通過したレーザ光源601の励起光は、偏光方向が90度回旋しP偏光となる。
【0040】
波長板607を通過し、偏光方向が90度回旋してP偏光になったレーザ光源601の励起光の反射光は、波長および偏光選択性ミラー606に入射する。
【0041】
波長および偏光選択性ミラー606は、上述の通り、蛍光の光軸に対して45度の角度で配置されている。また、波長および偏光選択性ミラー606は、レーザ光源601の出射光の青色波長域でS偏光の光を反射し、レーザ光源601の青色の出射光の波長域でP偏光の光と蛍光体層101(蛍光体ホイール1)からの蛍光の黄色の波長域の光を透過する特性を有している。したがって、蛍光体ホイール1の第一の反射膜105で反射され、波長および偏光選択性ミラー606に入射した反射光は、そのまま通過する。
【0042】
波長および偏光選択性ミラー606を透過した蛍光体ホイール1からの、黄色波長域の蛍光と、反射光(レーザ光源601の青色波長域の励起光)とは、凸レンズ610で収束し、時系列でカラーホイール3に入射する。
【0043】
図3を用いて、カラーホイール3の構成を説明する。カラーホイール3は、カラーホイール3を回転させるモータ304と、赤色の波長域の光のみを透過する特性をもつように最適化させた誘電体多層膜をガラス板上に形成した赤色光透過領域301と、緑色の波長域の光のみを透過する特性を持つように最適化させた誘電体多層膜をガラス板上に形成した緑色光透過領域302と、全波長域の光の透過率を最大化するように最適化された全波長透過領域303が形成されている。なお、蛍光体ホイール1とカラーホイール3は、図示しない同期回路によって、回転の同期が取られている。
【0044】
まず、蛍光体ホイール1から黄色波長域の蛍光が出射したタイミングに合わせて、凸レンズ610で収束したカラーホイール3上のスポットが、順次、赤色光透過領域301、緑色光透過領域302、全波長透過領域303を移動する。これにより、カラーホイール3に入射した黄色波長域の蛍光は、順次、赤色、緑色、黄色波長域の光となってカラーホイール3を通過し、ロッドインテグレータ611に入射する。ロッドインテグレータ内では多重反射が行われ、光が均一化され、ロッドインテグレータ611を出射する。
【0045】
次に、蛍光体ホイール1から青色波長域の反射光が出射したタイミングに合わせて、凸レンズ610で収束したカラーホイール3上のスポットが、全波長透過領域303を移動する。これにより、カラーホイール3に入射した青色波長域の光は、カラーホイール3を通過し、ロッドインテグレータ611に入射し、ロッドインテグレータ内で多重反射が行われ、光が均一化され、ロッドインテグレータ611を出射する。このようにして、ロッドインテグレータ611からは、時系列で、光強度分布が均一化された赤色、緑色、黄色、青色光が出射される。
【0046】
なお、上記構成では、カラーホイール3をロッドインテグレータ611の入射側に配置したが、ロッドインテグレータ611の出射側に配置しても良い。
【0047】
また、蛍光体ホイール1からの蛍光が、赤色光透過領域301、緑色光透過領域302、および全波長透過領域303を通過する例を示したが、蛍光体ホイール1からの蛍光が、赤色光透過領域301と緑色光透過領域302のみを透過する構成であっても良い。また、カラーホイール3の各透過領域の色の順序が違っていても良く、カラーホイールをもたない構成となっても良い。
【0048】
[1-2-2 効果]
本実施の形態は、集光性向上と製造性、信頼性を向上させた蛍光体ホイール1を使用することによって、高効率の光源装置を提供し得る。
【0049】
[1-3 蛍光体ホイールを備える光源装置を用いた投写型映像表示装置]
[1-3-1 構成]
次に、実施の形態1の蛍光体ホイールを備えた光源装置を用いた投写型映像装置について、
図6を用いて説明する。
図6は、実施の形態1に係る投写型映像表示装置の構成を示す図である。
【0050】
投写型映像表示装置7は、上述の光源装置6を備え、さらに、リレーレンズ701、702、703と全反射プリズム704とDMD(Digital Micromirror Device)706と、投写レンズ707を備える。
【0051】
以下の説明では、光源装置6の詳細に関してはその重複説明を省略し、ロッドインテグレータ611を出射した、赤色、緑色、黄色、青色の光の挙動について説明する。
【0052】
ロッドインテグレータ611を出射した各色の光は、リレーレンズ701、702、703の3枚の凸レンズで構成されたリレーレンズ系によって、後述するDMD706に写像される。
【0053】
リレーレンズ系を構成する凸レンズからなるリレーレンズ701、702、703を透過した光は、全反射プリズム704に入射する。全反射プリズム704は、2つのガラスブロックを有し、2つのブロックの間には微小ギャップ705が設けられている。全反射プリズム704に入射した光は、微小ギャップ705に臨界角よりも大きい角度で入射することで反射し、DMD706に入射する。
【0054】
DMD706は、図示されない同期回路と映像回路によって、蛍光体ホイール1、カラーホイール3と回転の同期を取ると同時に、駆動され、画像情報に対応して各画素のON/OFFが切り替えられる。これにより、DMD706のそれぞれの画素に入射した光の反射方向が画素ごとに変わる。
【0055】
DMD706において、ON状態の画素によって反射された光は、全反射プリズム704に入射し、微小ギャップ705には臨界角よりも小さい角度で入射し、そのまま通過する。微小ギャップ705を通過した光は、投写レンズ707によって、図示されないスクリーンに拡大投写される。
【0056】
[1-3-2 効果]
本実施の形態は、集光性向上と製造性、信頼性を向上させた蛍光体ホイール1を使用した光源装置を使用することによって、輝度の向上とともに製品としての信頼性を向上させた投写型映像表示装置を提供し得る。
【0057】
(実施の形態2)
[2-1 蛍光体ホイール]
[2-1-1 構成]
以下、実施の形態2に係る蛍光体ホイール5の構成について
図4A、
図4Bを用いて説明する。
図4Aは実施の形態2に係る蛍光体ホイール5を示す平面図、
図4Bは蛍光体ホイール5に使用する蛍光体セグメント501、551を示す図である。ここで、蛍光体セグメント501は、レーザ光源601からの励起光で、緑色の蛍光を発光する蛍光体で構成されており、蛍光体セグメント551は、レーザ光源601からの励起光で、赤色の蛍光を発光する蛍光体で構成されている。蛍光体セグメント501と蛍光体セグメント501と合わせることで、リング状の蛍光体層510が形成される。
【0058】
図4Bに示すように、蛍光体セグメント551の一部の領域の表面に青色の色光を反射する反射膜505が形成されている。蛍光体ホイール5における蛍光体層510および反射膜505の断面構造は、
図2Bに示す蛍光体ホイール1における蛍光体層110および第一の反射膜105の場合と同様であるため、その説明は省略する。
【0059】
図4Aに示すように、モータ504で回転させるようにした基板503に、前述の2つの蛍光体セグメント501、551が、合わせてリング状になるように、それぞれ接着剤502で接着されることにより、蛍光体ホイール5が構成される。この場合、2つの蛍光体セグメント501、551によりリング状に構成された蛍光体層510はモータ504の回転軸に軸対称に配置される。
【0060】
なお、上記では、蛍光体層が蛍光体セグメントを2つ合わせて360度でリング状に構成される例を説明したが、2つより多くの蛍光体セグメントを組み合わせて360度となりリング状に構成しても良い。
【0061】
上記の説明では、反射膜505をいずれかの蛍光体セグメントの一つ(ここでは、蛍光体セグメント551)の一部に形成した構成で説明したが、複数の蛍光体セグメントのそれぞれの一部に形成しても良い。
【0062】
また、リング状(円環状)の蛍光体層を赤色および緑色の蛍光を発光する蛍光体セグメントで構成したが、これに限定されない。例えば、リング状の蛍光体層を形成する蛍光体セグメントとして、黄色の蛍光を発光する蛍光体セグメントと緑色の蛍光を発光する蛍光体セグメントを用いても良く、これに代えて、黄色の蛍光を発光する蛍光体セグメントと赤色の蛍光を発光する蛍光体セグメントを用いても良いなど、黄色のような他の波長域の光を発光する蛍光体セグメントを用いても良い。
【0063】
また、実施の形態1の蛍光体ホイール1のように、蛍光体層510上に反射防止膜を形成し、その反射防止膜上に第一の反射膜として反射膜505を形成してもよいし、さらに、反射膜505上に拡散層を設けてもよい。また、実施の形態1の蛍光体ホイール1のように、基板503上の第二の反射膜を形成し、この第二の反射膜上に接着剤502によって蛍光体層510を取り付けてもよい。
【0064】
[2-1-2 効果]
上述のように、蛍光体セグメント551の表面に反射膜505を設けることで、反射膜505と蛍光体セグメント501、551との表面とを略同一の平面とすることにより、集光効率の向上を実現することができる。
【0065】
また、
図4Aに示すように、基板503に蛍光体セグメント551、501をリンク状にして接着剤102でモータ504の回転軸に軸対称で接着することができるため、初期アンバランス量を最小化することができ、製造性および信頼性を向上することができる。
【0066】
[2-2 蛍光体ホイールを用いた光源装置]
図5に示す光源装置6において、実施の形態1の蛍光体ホイール1の代わりに、実施の形態2による蛍光体ホイール5を設置することにより、光源装置を構成することができる。
【0067】
蛍光体ホイール以外の光学部品の挙動に関しては、実施の形態1の[1-2 蛍光体ホイールを用いた光源装置]で説明した光源装置6と同じであるので、説明を省略する。
【0068】
[2-3 蛍光体ホイールを搭載した光源装置を用いた投写型映像表示装置]
図6に示す投写型映像表示装置7において、実施の形態1の蛍光体ホイール1の代わりに、実施の形態2による蛍光体ホイール5を設置することにより、投写型映像表示装置を構成することができる。
【0069】
蛍光体ホイール以外の光学部品の挙動に関しては、実施の形態1の[1-3-1 蛍光体ホイールを備える光源装置を用いた投写型映像表示装置]で説明した投写型映像表示装置7と同じであるので、説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本開示は、投写型映像表示装置の光源装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 蛍光体ホイール
102 接着剤
103 基板
104 モータ
105 第一の反射膜
106 拡散層
110 蛍光体層
111 蛍光体
112 反射防止膜
121 含有粒子
131 第二の反射膜
201 励起光
3 カラーホイール
301 赤色光透過領域
302 緑色光透過領域
303 全波長透過領域
304 モータ
5 蛍光体ホイール
501、551 蛍光体セグメント
502 接着剤
503 基板
504 モータ
505 反射膜
510 蛍光体層
6 光源装置
601 レーザ光源
602 コリメータレンズ
603 凸レンズ
604 拡散板
605 凹レンズ
606 波長および偏光選択性ミラー
607 波長板
608、609、610 凸レンズ
611 ロッドインテグレータ
7 投写型映像表示装置
701、702、703 リレーレンズ
704 全反射プリズム
705 微小ギャップ
706 DMD
707 投写レンズ