(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】半導体レーザ装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02253 20210101AFI20240621BHJP
【FI】
H01S5/02253
(21)【出願番号】P 2022503171
(86)(22)【出願日】2021-01-26
(86)【国際出願番号】 JP2021002530
(87)【国際公開番号】W WO2021171865
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2020031027
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】菱田 光起
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 隆行
(72)【発明者】
【氏名】山口 秀明
(72)【発明者】
【氏名】多田 昌浩
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/009086(WO,A1)
【文献】特開2005-292242(JP,A)
【文献】特開2008-090097(JP,A)
【文献】特表2017-523467(JP,A)
【文献】特開2012-189910(JP,A)
【文献】特開2011-100526(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0170629(US,A1)
【文献】米国特許第09798087(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極を含む第1のブロックと、
第2の電極を含む第2のブロックと、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に挟持される半導体レーザダイオードと、
前記半導体レーザダイオードからのレーザ光の出射方向側に配置される光学部品と、
固定部品と、を備え、
前記光学部品は、前記固定部品に固定され、
前記第1のブロックの前記レーザ光が出射する側面に、凸部または凹部を有し、
前記固定部品は、前記側面の前記凸部または前記凹部で、前記第1のブロックと接着樹脂により固定され
、
前記固定部品は、前記第1のブロックの前記側面に対向する主面を有し、
前記第1のブロックは前記凸部を有し、前記光学部品が、前記固定部品の前記主面よりも前記第1のブロック側に突出している、半導体レーザ装置。
【請求項2】
前記接着樹脂は、前記レーザ光の光跡における包絡面よりも前記第1のブロックの側にある、請求項1に記載の半導体レーザ装置。
【請求項3】
前記第1のブロックの前記側面は、前記凸部を有し、
前記接着樹脂は、前記半導体レーザダイオードの発光点から、前記凸部の突出面上の点を結ぶ直線のうち前記発光点側にある直線の集合により形成される仮想の面よりも前記第1のブロックの側にある、請求項1または2に記載の半導体レーザ装置。
【請求項4】
前記固定部品は、前記第1のブロックの前記側面に対向する主面を有し、
前記第1のブロックは前記凸部を有し、前記固定部品の前記主面は前記凸部に対応する凹部を有し、前記第1のブロックの前記凸部と前記固定部品の前記凹部との間に前記接着樹脂が介在している、請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項5】
前記第1のブロックは前記凹部を有し、前記固定部品の前記主面は前記凹部に対応する凸部を有し、前記第1のブロックの前記凹部と前記固定部品の前記凸部との間に前記接着樹脂が介在している、請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項6】
前記固定部品と前記第1のブロックとの接着面は、前記出射方向に垂直である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項7】
前記接着樹脂は、紫外線硬化樹脂である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザ装置は、通常、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に挟持される半導体レーザダイオードと、を備え、レーザ光を所定の方向に向けて出射する。半導体レーザダイオードから出射されるレーザ光は、一般にビーム幅の広がりが大きいため、レーザ光の出射位置に近接してコリメートレンズが設けられる(例えば、特許文献1参照)。コリメートレンズは、例えば固定部品に取り付けられ、例えば固定部品を第1の電極に接着固定することによって、レーザ光の出射位置に対するコリメートレンズの相対的な位置が固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/063436号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体レーザダイオードは、通常、第1の電極または第2の電極とはんだにより固定される。これにより、半導体レーザダイオードが第1の電極と第2の電極との間に挟持されるように固定され得る。このとき、半導体レーザダイオードが第1の電極または第2の電極に対して僅かに傾いた状態で固定される場合がある。結果として、レーザ光の出射位置にずれが生じたり、出射方向が想定される所定の方向から傾いたりする場合がある。また、半導体レーザダイオードのチップの反りにより、レーザ光の出射方向が所定の方向から僅かに傾く場合もある。
【0005】
レーザ光の出射方向に応じて、コリメートレンズの第1の電極に対する相対的な取り付け位置が調整され得る。調整された取り付け位置に基づいて、固定部品が第1の電極と接着される。接着には、紫外線硬化樹脂が一般的に用いられている。
【0006】
取り付け位置の調整は、レーザ光を出射させながら行われる。通常、接着固定の前に、レーザ光を出射させながら第1の電極に対する固定部品の相対位置を大まかに決定する。その後、固定部品に接着樹脂を付着して、同様にレーザ光を出射させながら第1の電極に対する固定部品の相対位置を確定させ、確定位置に接着固定する。
【0007】
この場合、固定部品の相対位置を確定させるときに、硬化前の接着樹脂にレーザ光が照射される場合がある。硬化前の接着樹脂にレーザ光が照射されることで、接着樹脂が劣化し、接着強度が低下し得る。さらに、青色発光の半導体レーザダイオードを用いた半導体レーザ装置では、紫外線硬化樹脂を用いる場合であっても、青色レーザ光の照射により接着樹脂が反応して硬化が進行する場合があり、接着固定が困難になる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記に鑑み、本開示の一側面は、第1の電極を含む第1のブロックと、第2の電極を含む第2のブロックと、前記第1の電極と前記第2の電極との間に挟持される半導体レーザダイオードと、前記半導体レーザダイオードからのレーザ光の出射方向側に配置される光学部品と、固定部品と、を備え、前記光学部品は、前記固定部品に固定され、前記第1のブロックの前記レーザ光が出射する側面に、凸部または凹部を有し、前記固定部品は、前記側面の前記凸部または前記凹部で、前記第1のブロックと接着され、前記固定部品は、前記第1のブロックの前記側面に対向する主面を有し、前記第1のブロックは前記凸部を有し、前記光学部品が、前記固定部品の前記主面よりも前記第1のブロック側に突出している、半導体レーザ装置に関する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、半導体レーザ装置への光学部品の接着強度の低下が抑制され、信頼性の高い半導体レーザ装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る半導体レーザ装置の概略構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係る半導体レーザ装置の概略構成を模式的に示す上面図である。
【
図3A】
図3Aは、光学部品が固定された固定部品の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【
図3B】
図3Bは、光学部品が固定された固定部品の他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、光学部品が固定された固定部品の他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【
図4B】
図4Bは、
図4Aの固定部品が取り付けられる半導体レーザ装置の例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態に係る半導体レーザ装置の概略構成を模式的に示す斜視図である。
【
図6A】
図6Aは、本開示の一実施形態に係る半導体レーザ装置の概略構成を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係る半導体レーザ装置は、第1の電極を含む第1のブロックと、第2の電極を含む第2のブロックと、第1の電極と第2の電極との間に挟持される半導体レーザダイオード(以下において、単に「LD」とも称する)と、LDからのレーザ光の出射方向側に配置される光学部品と、固定部品と、を備える。光学部品は、固定部品に固定される。
【0012】
固定部品は、第1のブロックと接着樹脂により固定されている。固定部品は、第1の電極と接着固定されていてもよいし、第1の電極に固定され、第1のブロックの一部を構成する別の部材と接着されていてもよい。接着により、第1の電極およびLDに対する光学部品の相対位置が固定される。
【0013】
第1のブロックのレーザ光が出射する側面には、凸部または凹部が設けられており、固定部品は、第1のブロックの側面の凸部または凹部で、第1のブロックと接着されている。凸部または凹部により、接着部位へのレーザ光の照射を抑制でき、固定部品の取り付け位置の調整中に接着樹脂が劣化するのを抑制できる。また、固定部品の取り付け位置の調整中に接着樹脂が硬化してしまうのを抑制できる。
【0014】
凸部または凹部は、例えば、凸部または凹部を有する形状に予め加工された第1の電極を用いて、側面に形成され得る。あるいは、第1の電極の側面に別の部材を取り付けることで、凸部を形成してもよい。この場合、接着樹脂は上記部材の表面に設けられる。また、この場合、上記部材と第1の電極との全体が、第1のブロックを構成する。接着樹脂は、凸部または凹部における側面に配される。これにより、LDから出射されたレーザ光が、接着樹脂に照射されないようにすることができる。
【0015】
LDから出射されたレーザ光は、発光点から遠ざかるに従って拡散しながら伝搬し、ビーム幅が広がる。ここで、拡散しながら伝搬するレーザ光の光跡(複数の発光点を有する場合、各発光点から出射された複数のレーザ光が重ね合わされた光跡)の明部と暗部との境界を、レーザ光の光跡における包絡面とする。すなわち、包絡面は、発光点から出射されたレーザ光の照射範囲の境界であり、LDから出射されるレーザ光の特性に依存する。接着樹脂は、上記包絡面よりも第1のブロックの側となる位置に設けてもよい。これにより、接着樹脂がレーザ光に照らされるのを抑制できる。
【0016】
第1のブロックの側面に凸部を設ける場合、接着樹脂は、凸部の出射方向側に突出する突出面に形成され得る。突出面上の任意の点と発光点を結ぶ直線の集合を考える。接着樹脂は、下記で表される仮想の面よりも第1のブロック側となる位置に設けられてもよい。
【0017】
第1のブロックの側面をXY平面とし、レーザ光の出射方向をZ方向とする。突出面上の任意の点と発光点を結ぶ直線の集合は、一定の体積を有する空間(突出面を底面とし、発光点を頂点とする錐体)を占有する。発光点を含み、且つZ方向に平行な任意の平面について、これらの平面における錐体の断面を考える。断面形状は、突出面上の直線LA、および錐体の側面を構成する二本の直線LB、LCからなる閉じた三角形となる。LB、LCのうち、より発光点側にある直線LCの集合は、仮想の面を構成する。接着樹脂がこの仮想面よりも第1のブロック側にある場合、LDから出射されたレーザ光は、接着樹脂の上方を通過するか、あるいは凸部の側壁により遮られ、接着樹脂がレーザ光に照らされることが抑制される。すなわち、包絡面の形状に依らず、接着樹脂がレーザ光に照らされることが抑制される。なお、複数の発光点を有する場合、接着樹脂は、各発光点に対応する仮想面のそれぞれよりも第1のブロック側に設けられていてもよい。仮想面は、凸部の第1のブロックの側面における位置、突出高さ、形状により任意に設定できる。
【0018】
固定部品は、第1のブロックの側面と対向する主面を有する。固定部品の主面と第1のブロックの側面の凸部とが接着されて、固定部品(および、光学部品)と第1のブロックとの相対位置が固定され得る。凸部を設ける場合、凸部の突出高さによっては、光学部品とLDとの離間距離が大きくなりがちである。そこで、光学部品とLDとの離間距離を一定値以下に維持するために、固定部品の上記主面に凹部を設け、固定部品の凹部と第1のブロックの凸部との間に接着樹脂を介在させてもよい。あるいは、光学部品が固定部品の主面に対して突出するように、固定部品に光学部品を取り付けてもよい。
【0019】
固定部品と第1のブロックとの接着面は、出射方向に垂直(すなわち、側面に平行)であってもよい。この場合、出射方向に平行な面方向の取り付け位置の調整が容易である。なお、接着面が出射方向に垂直であるとは、必ずしも出射方向の接着面とのなす角が90°である場合に限られるものではなく、出射方向の接着面とのなす角が85°~95°の範囲である場合をも含むものとする。
【0020】
光学部品は、例えば、コリメートレンズを含む。光学部品は、コリメートレンズに加えて、コリメートレンズを透過したレーザ光を回転させる回転素子を含んでもよい。コリメートレンズと回転素子は、全体で一部品として取り扱われる。
【0021】
図1および
図2は、本実施形態に係る半導体レーザ装置100の概略の構成を模式的に示す図である。
図1は光学部品が取り付けられていない状態の斜視図であり、
図2は光学部品を取り付けた後の上面の一部を拡大した図である。
【0022】
半導体レーザ装置100は、第1の電極(上部電極)11を含む第1のブロック、第2の電極(下部電極)12を含む第2のブロック、固定部品13、LD15、および、光学部品16を備える。光学部品16は、固定部品13の下方にあって、固定部品13に固定されている。
【0023】
LD15からのレーザ光が出射される第1の電極11の側面S1には、突起部(凸部)20が設けられている。突起部20は、側面S1から突出し、レーザ光の出射面を基準として出射方向側に突出する突出面S2を有する。突出面は、固定部品13は、側面S1に対向する主面S3を有する。第1の電極11の側面S1と固定部品13の主面S3との間には接着層14が介在している。これにより、固定部品13が第1の電極11に固定され得る。
【0024】
本実施形態では、突出面S2に接着樹脂を配し、樹脂を硬化させて接着層14を形成することにより固定部品13が第1の電極11に接着固定される。なお、突起部20は、本実施形態のように第1の電極11の一部であって、第1の電極11と一体で形成されていてもよく、第1の電極11と別部品であって、第1の電極11に固定されていてもよい。後者の場合、別部品である突起部20と第1の電極11とにより、第1のブロックが構成され得る。
【0025】
発光点Pより、LD15から出射されたレーザ光は、ビーム幅が広がりながら伝搬する。
図2では、上述のレーザ光の光跡の包絡面の一部を破線で、発光点Pと突起部20の突出面S2上の点とを結ぶ直線の集合により定義される上述の仮想面の一部を実線で示している。
図2に示すように、接着層14(接着樹脂)は、仮想面よりも第1のブロック側(すなわち、側面S1側)にある。
【0026】
図2において、突出面S2上にあって最も発光点P側の位置をQとする。直線PQおよび直線PQを固定部品13側に延長した延伸線は、仮想面の一部を構成する。接着層14(接着樹脂)は、その全体が、直線PQの延伸線よりも第1のブロック側(すなわち、側面S1側)にある。この場合、光学部品16および固定部品13の取り付けにおいてLD15からレーザ光が出射される場合においても、レーザ光は突起部20の側壁により遮られるか、接着樹脂の上方を通過し、接着樹脂にレーザ光が照らされることが抑止される。よって、固定部品13および光学部品16の取り付け工程における接着樹脂の劣化を抑制でき、接着樹脂の硬化を抑制できる。
【0027】
図2の例では、接着層14(接着樹脂)は、包絡面よりも第1のブロック側(すなわち、側面S1側)にある。この場合、LD15から出射されるレーザ光は専ら接着樹脂の上方を通過する。しかしながら、レーザ光の広がりが大きい場合、接着層14(接着樹脂)を包絡面よりも固定部品側(すなわち、主面S3側)に配置せざるを得ない場合がある。しかしながら、上述のように、接着層14(接着樹脂)が仮想面よりも第1のブロック側(すなわち、側面S1側)に位置するように突起部20を設けることで、レーザ光の広がりの程度に依らず、接着樹脂にレーザ光が照らされることを抑止できる。
【0028】
突起部20の突出高さは、取り付け工程において、突出面S2に配される接着樹脂にレーザ光が照らされない程度の高さであればよく、側面S1内に設けられる突起部20のLD15までの離間距離、および、LD15から出射されるレーザ光の特性などに応じて決定される。突起部20の突出高さは、例えば、3mm~10mmである。
【0029】
接着樹脂が接着される突出面S2は、第1の電極11(第1のブロック)の側面S1に略平行であってもよい。すなわち、突出面S2は、レーザ光の出射方向に対し垂直であってもよい。突出面S2と側面S1とのなす角が小さいほど、固定部品(光学部品)の出射方向に垂直な方向(X方向およびY方向)の取り付け位置の調整が容易となる。
【0030】
図3Aおよび
図3Bに、本実施形態における固定部品13の他の例を示す。
図3Aに示す固定部品13Aおよび
図3Bに示す固定部品13Bは、ともに、
図3Cに示す半導体レーザ装置101に取り付けられ得る。
【0031】
突起部20を設けることにより、LD15と光学部品16との距離が遠くなる。これを防ぐために、
図3Aに示すように、固定部品13の主面S3に突起部20に対応する凹部S4を設け、固定部品13の凹部S4と第1のブロックの突出面S2との間を接着樹脂で接着固定してもよい。
図3Aの例では、突起部20は半導体レーザ装置101の高さ方向(Y方向)の全幅に渡って形成されており、対応して固定部品13Aの凹部S4も高さ方向の全幅に渡って形成されている。
【0032】
あるいは、
図3Bに示すように、光学部品16を固定部品13Bに固定する際に、光学部品16を固定部品13Bの主面S3に対して突出させてもよい。
【0033】
第1の電極11が凹部を有し、凹部内に接着層14を形成してもよい。この場合、光学部品16および固定部品13の取り付けにおいてLD15からレーザ光が出射される場合においても、凹部内はレーザ光により照らされることがないため、接着樹脂に直接レーザ光が照らされることが抑止される。よって、接着樹脂の劣化を抑制でき、接着樹脂の硬化を抑制できる。
【0034】
図4Aに、本実施形態における固定部品13の他の例を示す。
図4Aに示す固定部品13Cは、光学部品16が固定された状態であり、
図4Bに示す半導体レーザ装置102に取り付けられ得る。
【0035】
図4Bに示す半導体レーザ装置102では、第1の電極11に凹部S5が設けられている。凹部S5に対応して、
図4Aに示す固定部品13Cには出射方向と反対方向に突出する突出面(凸部)S6が設けられ得る。第1の電極11の凹部S5と固定部品の突出面S6とを接着樹脂を介して接着することで、半導体レーザ装置における固定部品(光学部品)の位置が固定される。
【0036】
以下、本実施形態に係る半導体レーザ装置の構成要素について、詳細に説明する。しかしながら、本開示は下記の構成に限定されるものではない。
【0037】
(半導体レーザダイオード(LD))
LD15は、レーザ光を生成する。LD15は、例えば、チップ形状をしたLDチップである。LDチップとしては、端面発光型(EEL:Edge Emitting Laser)のLDチップが好ましく用いられる。端面発光型のLDチップでは、例えば、長尺のバー形状の光共振器が、チップ内において基板面と平行に形成されている。共振器の長手方向の一方の端面は光が殆ど反射するように高反射率の膜で覆われている。一方、共振器の長手方向の他方の端面も高反射率の膜で覆われているが、反射率は一方の端面に設けられた反射膜よりも小さい。よって、両端面からの反射により増幅され位相の揃ったレーザビームが他方の端面から出射される。
【0038】
LDチップ内に共振器が複数設けられる場合、レーザビームは、他方の端面の複数の箇所から出射され得る。この場合、LDは複数の発光点を有し得る。発光点は、共振器の他方の端面であるチップの端面に沿って、一次元的に整列し得る。
【0039】
なお、
図2では、LD15が発光点を3つ有する場合を例示しているが、本開示は発光点の数に限定されるものではない。
【0040】
(固定部品)
固定部品13は、ホルダーブロックとも呼ばれ、光学部品16を固定している。例えば、光学部品16は、UV硬化樹脂などの接着材を用いて、固定部品13に接着により取り付けられ得る。固定部品13の材質は、例えば、石英ガラスである。
【0041】
(接着層)
接着層14は、例えばUV硬化樹脂等の樹脂材料である。接着層14の厚みは、例えば5μm~200μmであってもよい。接着層14の厚みが5μm以上であれば、接着層14を介して、光学部品16が固定された固定部品13を十分な強度で第1の電極11に取り付けることができる。また、接着層14の厚みを200μm以下とすることで、固定部品13の第1の電極11に対する位置決めを精度よく行うことができる。接着層14の厚みは、70μm~120μmであってもよい。
【0042】
なお、接着層14の厚みは、平均の厚みを意味する。
【0043】
接着層14は、突出面S2または側面S3において、複数箇所に、一次元的または二次元的に設けられていてもよい。
【0044】
(光学部品)
光学部品16は、例えば、コリメートレンズ16aを含む。
【0045】
LD15から出射されるレーザ光は、伝播に伴い拡散し、ビーム幅が広がる。コリメートレンズ16aは、LD15から出射されたレーザ光を所定の第1方向に平行光化する。すなわち、コリメートレンズ16aは、LD15から出射されたレーザ光の第1方向におけるビーム幅の拡大を抑制し、第1方向におけるビーム幅が略一定になるようにレーザ光を平行光化する。第1方向は、ビーム幅の広がりが最も大きくなる方向であってもよい。
【0046】
第1方向は、例えば、LDチップの基板面に垂直な方向である。LDチップの基板面に垂直な方向は、一般に、LDチップから発するレーザ光の速軸の方向であり得る。これに対し、LDチップの基板面に平行で且つ光が出射される端面に沿う方向は、一般に、LDチップから発するレーザ光の遅軸の方向であり得る。
【0047】
光学部品16は、コリメートレンズ16aを透過したレーザ光を回転させる回転素子16bを含んでいてもよい。なお、上記において、「光を回転させる」とは、光(ビーム)の伝播方向に垂直な面における断面形状を回転させることを意味する。
【0048】
LD15が複数の発光点を有するLDチップである場合、発光点に対応する複数のレーザ光が生成および出射され、伝播に伴い拡散し、ビーム幅が広がる。コリメートレンズ16aが、例えばレーザ光をLDチップの基板面に垂直な方向(第1方向)において平行光化するものである場合、コリメートレンズ16aを介したレーザ光は、基板面に垂直な方向のビーム幅は略一定となっているが、基板面に平行で且つ端面に沿う方向(すなわち、複数の発光点の整列方向)のビーム幅は広がったままである。すなわち、コリメートレンズ16aを通過後のレーザ光のビーム形状は、第1方向を短軸とする扁平な形状(例えば、楕円または方形)であり得る。
【0049】
回転素子16bは、例えば、楕円形状のビームの長軸方向と基板面とのなす角が直角に近づくように(短軸方向と基板面とのなす角が0°に近づくように)、発光点の異なるレーザ光のそれぞれについて、楕円形状のビームを回転させる。例えば、第1方向がLDチップの基板面に垂直な方向である場合、レーザ光は回転素子16bによって90°回転され得る。これにより、発光点の異なるレーザ光のビーム同士の重なりが低減されるように、それぞれのレーザビームの断面形状が回転する。これにより、高出力のレーザビームが得られる。
【0050】
さらに、半導体レーザ装置100に近接して、光学部品16から離間した位置に、光学部品16を介したレーザ光を第2方向に平行光化する別のコリメートレンズを配してもよい。これにより、第2方向におけるビーム幅が略一定となるように、レーザ光が平行光化され得る。光学部品16が回転素子16bを設けない場合、第2方向は、第1方向と異なり、例えば第1方向に垂直な方向である。光学部品16が回転素子16bを含む場合、第2方向は、回転素子16bにより回転後の第1方向と異なり、例えば回転後の第1方向に垂直な方向である。回転素子16bがレーザ光を90°回転させる場合、第1方向と第2方向とは平行であり得る。第2方向は、LDチップから発するレーザ光の遅軸の方向であり得る。
【0051】
コリメートレンズ16aは、例えばUV硬化樹脂などの接着剤を用いて、回転素子16bに接着固定され、コリメートレンズ16aと回転素子16bが一体化した光学部品16が構成され得る。この場合、例えば、回転素子16bが、固定部品13に固定されることで、光学部品16の全体が固定部品13に固定され得る。コリメートレンズ16aおよび回転素子16bの材質は、例えば、石英ガラスであり得る。
【0052】
(第1および第2の電極)
第1の電極11および第2の電極12は、LD15に電流を供給するとともに、LD15の作動により生じる熱を外部に逃がす役割を有している。第1の電極11および第2の電極12は、例えば、銅板である。
【0053】
上記実施形態では、LD15を挟持する第1の電極11および第2の電極12のうち、上部電極に相当する第1の電極11の側面S1を固定部品13の取り付け面としている。しかしながら、下部電極に相当する第2の電極12に、固定部品13を固定してもよい。その場合、上述の説明において、第1の電極11と第2の電極12とが入れ替わる。
【0054】
図5は下部電極に相当する第2の電極12に、固定部品13を固定した形態を示す。同図が示すように、第2の電極12に突起部20が形成されており、この突起部20に固定部品13が固定される。
【0055】
ここで突起部20は出射面に相対する方向からみて四角形であるが、その垂直面は三角形状を有している。これは以下の理由からである。第1の電極11および第2の電極12は金属の切り出し加工等によって形成されている。このため、突起部は第2の電極12と同素材で形成されており、導電性を有する例えば銅製である。しかしながら突起部20の存在により、半導体レーザ装置100形成時のばらつきなどによって、この突起部20を介し、第1の電極11と第2の電極12とが短絡する虞を最小限にするためである。同図では三角形状であるが、これに限ることはなく、第2の電極12から、離れる方向にそって、突起部20が第1の電極11から離れる方向に形状が変化すればよい。
【0056】
また、
図6Aは、半導体レーザ装置100を出射面に向かった方向からみた正面図である。
図6Aは、光学部品16は取り付けられていない状態である。第2の電極12から、第1の電極11に向かう方向を高さ方向とした場合、第2の電極12の面U17からの発光点Pの高さと、突起部20に形成される接着層14の位置は、略同一であることが望ましい。
図6Aにおいてこれら高さ位置を破線で示す。これにより光学部品16を半導体レーザ装置100に取り付ける際に位置調整が容易となる。
図6Bは、
図6Aに光学部品16を取り付けた状態の図である。
【0057】
上述した実施形態は本開示の一例に過ぎず、各部の具体的な構成は上述した具体例に限定されるものではなく、本開示の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示の半導体レーザ装置は、半導体レーザ装置への光学部品の固定を、熱によらず安定して行うことができることから、高出力が容易であり、レーザ加工に有用である。
【符号の説明】
【0059】
100、101、102:半導体レーザ装置
11:第1の電極
12:第2の電極
13、13A~13C:固定部品
14:接着層
15:半導体レーザダイオード(LD)
16:光学部品
16a:コリメートレンズ
16b:回転素子
17:面U
20:突起部