(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ラミネート外装体電池および組電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20240621BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240621BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20240621BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20240621BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/04 Z
H01M50/105
H01M50/55 301
(21)【出願番号】P 2020084740
(22)【出願日】2020-05-13
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】水尻 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】山本 英郎
【審査官】山本 佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第00/059063(WO,A1)
【文献】特表2010-501981(JP,A)
【文献】特開2000-200584(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0092421(KR,A)
【文献】特開2014-194883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04 - 10/0587
H01M 50/00 - 50/198
H01M 50/50 - 50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに貼り合わされる2つのラミネート外装体と、
発電要素と、
2つの前記ラミネート外装体の少なくとも一方に設けられ、前記発電要素を収容するための収容凹部と、
前記発電要素の電極面のうち前記収容凹部の底側の電極面から前記ラミネート外装体の外まで延出される面状の集電タブと、
前記収容凹部によって当該ラミネート外装体から突出する凸部の表面および側壁が接する周縁部
の一部
であって、前記ラミネート外装体の平面視において、前記周縁部のうち前記集電タブと重なる部分の一部に、
前記表面の端と前記側壁の端とを接続する縁を凹ませた凹状の第1リブと、を備え
、
前記第1リブは、前記縁を斜めに凹ませた凹状であって、前記凸部の上部から下部に向かうスロープを有している
ラミネート外装体電池。
【請求項2】
前記ラミネート外装体の平面視において、前記第1リブの前記縁と直交する方向の長さは、前記第1リブの前記縁に沿った方向の長さである前記第1リブの幅よりも長い
請求項1に記載のラミネート外装体電池。
【請求項3】
前記集電タブは、前記発電要素の前記収容凹部の底側の面状電極から、前記第1リブのスロープに沿って屈曲する
請求項
1または2に記載のラミネート外装体電池。
【請求項4】
前記ラミネート外装体の平面視において、前記凸部の前記周縁部のうち前記集電タブと重なる部分に2個以上の前記第1リブを備える
請求項
1~3のいずれか1項に記載のラミネート外装体電池。
【請求項5】
さらに、前記凸部の前記周縁部
の一部に、
前記縁を凹ませた凹状の第2リブを備え、
前記第2リブは、前記第1リブのスロープよりも大きい傾きをもつスロープを有する
請求項
1~4のいずれか1項に記載のラミネート外装体電池。
【請求項6】
前記第1リブと前記発電要素との距離は、前記第2リブと前記発電要素との距離よりも大きい
請求項
5に記載のラミネート外装体電池。
【請求項7】
前記ラミネート外装体の平面視において
、前記凸部の前記周縁部のうち前記集電タブと重ならない部分に前記第2リブを備える
請求項
5または6に記載のラミネート外装体電池。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載のラミネート外装体電池を複数備える
組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ラミネート外装体で発電要素を覆ったラミネート外装体電池および組電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、発電要素を覆う電池外装体としてのラミネートフィルムを重ね合わせて形成したフィルム外装体電池を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術によれば、変形により短絡を起こす恐れがあるという課題を有している。
【0005】
本開示は、従来の課題を解決するもので、変形による短絡の可能性を低減するラミネート外装体電池および組電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示のラミネート外装体電池は、互いに貼り合わされる2つのラミネート外装体と、発電要素と、前記ラミネート外装体の少なくとも一方に設けられ、前記発電要素を収容するための収容凹部と、前記収容凹部によって当該ラミネート外装体から突出する凸部の表面および側壁が接する周縁部の少なくとも一部に、縁を凹ませた凹状の第1リブと、を備える。
【0007】
また、本開示の組電池は、上記のラミネート外装体電池33を複数備える。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本開示のラミネート外装体電池および組電池によれば、変形による短絡の可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態1におけるラミネート外装体電池の構成例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1におけるラミネート外装体電池の集電タブ周辺の拡大図である。
【
図4】
図4は、実施の形態2における組電池を示す側面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態3におけるラミネート外装体電池の集電タブ周辺の斜視図である。
【
図6】特許文献1のフィルム外装電池を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見)
本発明者らは、「背景技術」の欄において記載した、ラミネート外装体電池に関し、以下の問題が生じることを見出した。
【0011】
軽量化、薄型化が要求されているモバイル機器や車載用のリチウムイオン電池などには、金属箔と樹脂フィルムとで構成されるラミネートフィルムによって発電要素を覆うラミネート外装体電池が知られている。
【0012】
ラミネート外装体電池は薄型軽量化が可能になる一方で、ラミネート外装体が様々な外力によって変形してしまう恐れがある。そのため、特許文献1では、ラミネート外装体の外力に対する変形を抑制することを目的として、収容凹部に凸部を設ける構成が提案されている。
【0013】
図6は、特許文献1に記載されたラミネート外装体電池としてのフィルム外装電池1の斜視図である。収容凹部に凸形状を設けたラミネート外装体電池を示すものである。
図6において、フィルム外装電池1は、発電要素を覆う収容凹部2を有し、収容凹部2の底面部3と側壁4とに跨って、収容凹部2表面に対して凸状のリブ5が成形されている。リブ5は収容凹部2の縁部を補強する役割を果たしており、充放電時の内圧上昇によって底面部3と側壁4の境界から折れ曲がろうとする変形力を分散させることができる。
【0014】
フィルム外装電池1は、重ね合わせたラミネート外装体同士をシーラーなどで熱溶着させ、真空封止によってラミネート外装体内の脱気をしながら発電要素を密封する。真空封止に伴ってラミネート外装体内が減圧され、ラミネート外装体に圧縮変形が生じる。
【0015】
図6において、ラミネート外装体の圧縮変形に対して変形量抑制の効果は期待できる。一方で、体積エネルギー密度を向上させるために発電要素の体積をラミネート外装体の収容凹部2の体積へできるだけ近づけていく必要がある。しかし、
図6において、発電要素の体積を収容凹部2の体積に近づけていくと、収容凹部2の底面側の集電タブ6は収容凹部2の側壁4に沿って折り曲げられ、真空封止によるラミネート外装体の圧縮変形によって、集電タブ6が発電要素の端部に接触し短絡を起こす恐れがあるという課題を有している。また、真空封止後にも、ラミネート外装体に外圧がかかることによって集電タブ6が発電要素の端部に接触し短絡を起こす恐れがある。
【0016】
そこで、本開示は、従来の課題を解決するもので、変形による短絡の可能性を低減するラミネート外装体電池を提供することを目的としている。
【0017】
上記の問題を解決するために、本開示の一態様に係るラミネート外装体電池は、互いに貼り合わされる2つのラミネート外装体と、発電要素と、前記ラミネート外装体の少なくとも一方に設けられ、前記発電要素を収容するための収容凹部と、前記収容凹部によって当該ラミネート外装体から突出する凸部の表面および側壁が接する周縁部の少なくとも一部に、縁を凹ませた凹状の第1リブと、を備える。
【0018】
これにより、発電要素の端部と凸部の側壁との間に第1リブに相当する距離を置くことができ、変形による短絡の可能性を低減することができる。
【0019】
以下本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の一形態に係る実現形態を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。本開示の実現形態は、現行の独立請求項に限定されるものではなく、他の独立請求項によっても表現され得る。
【0021】
(実施の形態1)
図1は本開示の実施の形態1におけるラミネート外装体電池33の構成例を示す斜視図である。
図2Aは
図1におけるIIA-IIA線の断面図である。
図2Bは、
図1におけるIIB-IIB線の断面図である。
図3は
図1中の集電タブ25a周辺の拡大図である。
【0022】
図1~
図3において、ラミネート外装体電池33は、互いに貼り合わされる2つのラミネート外装体31、32と、発電要素35とを備える。
【0023】
ラミネート外装体31、32のそれぞれは、金属箔と樹脂フィルムとで構成され、ラミネートフィルムとも呼ばれる。2つのラミネート外装体31、32のうちの少なくとも一方は、収容凹部21を有する。
図1では、ラミネート外装体31が収容凹部21を有し、ラミネート外装体32が収容凹部21を有していない例を示す。
【0024】
ラミネート外装体31とラミネート外装体32とは、例えば熱溶着により貼り合わされる。
図1では、ラミネート外装体31および32は、周囲の4辺にある封止面26で貼り合わされている。
【0025】
収容凹部21は、発電要素35を収容する。収容凹部21は、見る方向が異なれば凸部21aでもある。凸部21aは、収容凹部21の底面部22がラミネート外装体31から突出する部分をいう。
図1において収容凹部21は、ラミネート外装体31の下から見れば、つまり、マイナスz方向にある視点から見れば、プラスz方向に凹んだ矩形状の凹部である。また、収容凹部21は、上から見れば、つまり、プラスz方向にある視点から見れば、プラスz方向に突出した矩形状の凸部21aでもある。
【0026】
凸部21aは、矩形状の凸部表面22aと、凸部表面22aの4辺に接続する4つの側壁23a、23bを有する。
図1では、4つの側壁のうち、屈曲した部分を有する集電タブ25aが突出する側に対応する側壁を、側壁23aとし、また、屈曲した部分を有する集電タブ25aが突出しない側に対応する側壁を、側壁23bとする。凸部21aの周縁部は、縁を凹ませた凹状のリブ24を備える。側壁23aおよび23bは、リブ24によって分断されている。
【0027】
図1の破線丸印にリブ24の拡大図を示す。リブ24は、凸部表面22aの端と側壁23aまたは23bの端とを接続する縁を、斜めに凹ませた凹部であって、側壁24a、側壁24bおよびスロープ24cを有する。また、リブ24は、下から見れば、つまり、マイナスz方向の視点から見れば収容凹部21の底面の端と側面の端とを接続する縁から突出する斜めの出っ張りでもある。
【0028】
発電要素35は、例えば、リチウムイオン電池などの二次電池であり、極性の異なる少なくとも2つ集電タブ25a、25bを有する。発電要素35は、例えば、矩形の面状の二次電池であり、電極面としての2つの主面を有する。集電タブ25aは、一方の電極面と,当該電極面から延出された部分とを有する。集電タブ25bは、他方の電極面と、当該電極面から延出された部分とを有する。
【0029】
集電タブ25aは、発電要素35の収容凹部21の底側の面状電極からラミネート外装体31、32の外まで延出される面状の電極である。例えば、
図2Aに示すように、集電タブ25aは、発電要素35の収容凹部21の底側の矩形状の電極部分と、矩形状電極部分の一部分からラミネート外装体31、32の外部にまで引き出された引き出し電極とを含む。引き出し電極は、リブ24により屈曲された部分と、ラミネート外装体31、32から延出した部分とを有する。すなわち、集電タブ25aは、収容凹部21内で出っ張りとしてのリブ24に沿って屈曲される。引き出し電極部分は、発電要素35の矩形状の電極部分から引き出されて屈曲している部分と、発電要素35の当該矩形状電極部分とは異なる平面上に位置する面状部分とを含む。発電要素の端部と凸部の側壁との間に第1リブに相当する距離を置くことができ、屈曲する部分は、鈍角でなだらかに屈曲する。その結果、変形により集電タブ25aと発電要素35の端部との短絡の可能性を低減する。
【0030】
集電タブ25bは、発電要素35の収容凹部21の底でない側の面状電極からラミネート外装体31、32の外まで延出される面状の電極である。例えば、
図2Bに示すように、集電タブ25bは、発電要素35の収容凹部21の底でない側の矩形状の電極部分と、矩形状電極部分の一部分からラミネート外装体31、32の外部にまで引き出された引き出し電極部分とを含む。引き出し電極部分は、リブ24により屈曲されない。すなわち、集電タブ25bは、矩形状の電極部分と引き出し電極部分とを合わせた全体として平面状である。収容凹部21内で出っ張りとしてのリブ24に沿って屈曲される。
【0031】
集電タブ25bは、全体として平面状の電極であり、屈曲した部分を有しない。
【0032】
このように、ラミネート外装体電池33は、収容凹部21を有するラミネート外装体31に発電要素35を収容する。ラミネート外装体31と平面状のラミネート外装体32の対応する各辺は、封止面26として熱溶着して貼り合わされている。凸部21aは、集電タブ25aが延出する側壁23aと集電タブ25aが延出しない側壁23b、および前記側壁23a、23bを接続する凸部表面22aによって構成されている。
図1では、矩形状の凸部表面22aの全辺にわたって、下方向、つまり、マイナスz方向に凹ませた凹状のリブ24が間隔を空けて置いて成形されている。リブ24は集電タブ25a、25bの幅に対して二個以上接するような幅で設定されている。
【0033】
図1に示したように、リブ24はラミネート外装体31の収容凹部21から封止面26にかけて、直線状または曲線状のスロープ24cを有する。ラミネート外装体31の平面視において、発電要素35の端部は、底面部22とリブ24との境界とほぼ一致する。発電要素35において収容凹部21の底面部22側の集電タブ25aは、収容凹部21の底面部22とリブ24との境界を始点にリブ24のスロープ24cに沿って折り曲げられ、封止面26とリブ24との境界で再度折り曲げられて封止面26の外側まで延出する。
【0034】
また、集電タブ25bは、ラミネート外装体32の平面に沿って、リブ24の境界から封止面26および外部まで折り曲げられることなく延出する。
【0035】
かかる構成によれば、リブ24が直線状または曲線状のスロープ24cを有することで、発電要素35の端部に集電タブ25aが接触することなく延出させることができる。例えば、
図2Aの距離d、つまり、発電要素35の端部と集電タブ25aとの距離を一定以上に確保することにより、発電要素35の逆極性の端部と集電タブ25aとが短絡する可能性を低減することができる。
【0036】
また、リブ24が底面部22と封止面26とを接続することで、リブ24を隔てて隣接する側壁23a、23b同士の繋がりが完全に隔絶され、真空封止の減圧による変形力をそれぞれ小領域化または断片化した各側壁に分散させることができる。これにより、真空封止の減圧時に、リブ24のスロープ24cの圧縮変形を抑制し、集電タブ25aの発電要素35の端部への接触を防ぐことができる。
【0037】
また、
図1、
図3に示すように、側壁23bと底面部22とを接続する縁にもリブ24を成形することで、真空封止時の減圧による圧縮変形力をリブ24が分散させ、発電要素35の端部周辺のラミネート外装体31、32の圧縮変形を抑制することで、発電要素35の端部の割れを防ぐことができる。
【0038】
なお、本実施の形態において、ラミネート外装体31の収容凹部21の高さは、H=1.2mmと設定されているが、収容する発電要素の厚みに応じて変更してよい。
【0039】
また、本実施の形態では、ラミネート外装体32をラミネート外装体31と異なる形状のものを使用したが、ラミネート外装体32はラミネート外装体31と同様のものを用いてもよい。その場合、集電タブ25bも集電タブ25aと同様に、リブ24のスロープ24cに沿って封止面26より外側に延出される。
【0040】
また、本実施形態において、リブ24は絞り成形によって加工され、例えば、長さB=5mm、幅W=2.4mmと設定される。ただし、長さBおよび幅Wは、リブ24の絞り成形可能な範囲かつ、真空封止時の減圧によるラミネート外装体の圧縮変形を許容範囲内に抑える範囲で設定すればよい。
【0041】
また、本実施形態では、リブ24のスロープ24cは直線である必要はなく、例えば、リブの断面形状を発電要素端部から離れる方向に膨らませた曲線形状とすることもできる。このようにすることで、真空封止の減圧に対するリブの強度を向上させるとともに、発電要素35と集電タブ25aとの接続部分における折り曲げ角度を緩和することができる。曲線状のスロープとすることで、直線状のスロープと比較して、発電要素端部の集電タブ25a延出部に近い箇所における集電タブの接触を防止することができる。
【0042】
また、本実施形態では、リブ24を側壁23a、23bの全辺にわたって成形したが、リブ24は全辺に成形されている必要はなく、集電タブ25aの発電要素35の端部への接触を防止できる範囲で、少なくとも側壁23aにおいて集電タブ25aが延出する箇所のみに成形することもできる。例えば、リチウムイオン二次電池のような電解液をラミネート外装体内に注液して使用する用途においては、ラミネート外装体内に充填した電解液の液圧が真空封止によるラミネート外装体の圧縮変形に抵抗するため、側壁23bにリブを成形しなくても発電要素の端部割れが起こりにくい。その場合、発電要素と側壁23a、23bとの隙間を限りなく小さくし、集電タブ25aの延出する箇所のみリブを成形することで、集電タブ25aと発電要素35の端部との接触を防止しながら、ラミネート外装体電池33の体積エネルギー密度を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態では、集電タブ25a、25bを同一方向から延出させたが、延出させる方向は同一である必要はなく、集電タブ25aと集電タブ25bとを対向して延出してもよいし、直交させて延出させてもよい。また、底面部22から延出する集電タブ25a正極側、負極側問わず適用することができる。以下では,リブ24を第1リブとも呼ぶ。
【0044】
以上説明してきたように、実施の形態1に係るラミネート外装体電池33は、互いに貼り合わされる2つのラミネート外装体31、32と、発電要素35と、2つのラミネート外装体31、32の少なくとも一方に設けられ、発電要素35を収容するための収容凹部21と、収容凹部21によって当該ラミネート外装体31から突出する凸部21aの表面および側壁23aが接する周縁部の少なくとも一部に、縁を凹ませた凹状の第1リブと、を備える。
【0045】
これによれば、発電要素35の端部と凸部表面22aの側壁23aとの間に第1リブに相当する距離を置くことができ、変形による短絡の可能性を低減することができる。
【0046】
ここで、第1リブ24は、凸部21aの縁を斜めに凹ませた凹状であって、凸部21aの上部から下部に向かうスロープ24cを有していてもよい。
【0047】
これによれば、発電要素35から引き出される面状の電極をほぼ直角に屈曲させることを避けられるので、変形による短絡の可能性を低減することができる。
【0048】
ここで、発電要素35電極面のうち収容凹部21の底側の電極面からラミネート外装体の外まで延出される面状の集電タブ25aを備え、ラミネート外装体31の平面視において、周縁部のうち集電タブ25aと重なる部分に第1リブを備えてもよい。
【0049】
これによれば、集電タブ25aをスロープ24cによってなだらかに屈曲させ、ほぼ直角に屈曲させることを避けられるので、変形による短絡の可能性を低減することができる。
【0050】
ここで、発電要素35の収容凹部21の底側の面状電極からラミネート外装体31、32の外まで延出される面状の集電タブ25aを備え、集電タブ25aは、発電要素35の収容凹部21の底側の面状電極から、第1リブのスロープに沿って屈曲してもよい。
【0051】
ここで、ラミネート外装体31の平面視において、凸部21aの周縁部のうち集電タブ25aと重なる部分に2個以上の第1リブを備えてもよい。
【0052】
これによれば、集電タブ25aをスロープ24cによってなだらかに屈曲させることができるので、変形による短絡の可能性を低減することができる。
【0053】
(実施の形態2)
実施の形態2では、ラミネート外装体電池33を複数個積層させた組電池の構成例について説明する。
【0054】
図4は、実施の形態2の組電池を示す側面図である。同図における組電池は、2つのラミネート外装体電池33を上下に積層している。
図4において、
図1、
図2Aおよび
図2Bと同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0055】
図4において、組電池は、ラミネート外装体電池33の上に同一構成のラミネート外装体電池33が積層されて構成されている。各ラミネート外装体電池33の集電タブ同士を接続することで、2つのラミネート外装体電池33を直列接続または並列接続する。この時、下側のラミネート外装体電池33は、凸部表面22aで、上側のラミネート外装体電池33のラミネート外装体32と隙間なく接触するように積層することができる。組電池が備えるラミネート外装体電池33は、2つに限らない。すなわち、ラミネート外装体電池33は、組電池として要求性能を満たす数だけ積層してもよい。積層されたラミネート外装体電池33には、加圧治具などの加圧手段を用いて、積層方向に拘束圧が加えられる。
【0056】
かかる構成によれば、リブ24が凸部21aに対して凹形状に成形されることにより、上側のラミネート外装体電池33と下側のラミネート外装体電池33の接触面間に隙間のない構造とすることができ、積層方向の無駄なスペースを削減することができる。
【0057】
また、リブ24を凸部21aに対して凹形状に成形することにより、加圧手段を用いて積層されたラミネート外装体電池を加圧した時、リブ24に加圧力が直接作用しないため、組電池においてラミネート外装体電池の強度を向上させることができる。
【0058】
なお、本実施形態において、
図4において組電池を構成する際に、下側のラミネート外装体電池33の凸部21aと上側のラミネート外装体電池33のラミネート外装体32とを直接接触させて積層したが、組電池の用途に応じてラミネート外装体電池間に絶縁や放熱性確保を目的として樹脂板や放熱フィンなどを挿入して使用してもよい。
【0059】
また、
図4の組電池は、積層された3つ以上のラミネート外装体電池33を備えてもよい。
【0060】
また、本実施形態において、積層方向に隣接しているラミネート外装体電池33同士は、片方のラミネート外装体32ともう片方の凸部表面22aを対向させて重ね合わせたが、両方のラミネート外装体電池33のラミネート外装体32同士または、凸部表面22a同士を対向させて重ね合わせてもよい。
【0061】
以上説明してきたように、実施の形態2に係る組電池は、ラミネート外装体電池33を複数備える。
【0062】
これによれば、変形による短絡の可能性を低減することができる。しかも、ラミネート外装体電池33の積層方向の無駄なスペースを削減することができる。
【0063】
(実施の形態3)
図5は、実施の形態3におけるラミネート外装体電池33の集電タブ25a周辺を示す斜視図である。同図では、理解の便宜上、ラミネート外装体31を一部削除し、集電タブ25aを露出させている。
【0064】
同図のラミネート外装体電池33は、
図1と比べて、凸部21aの周縁部に、縁を凹ませた凹状のリブ27を備える点、つまり、リブ24とリブ27とが混在している点が異なっている。
図5において、
図1、
図2A、
図2Bと同じ構成要素については同じ符号を用い、以下、異なる点を中心に説明する。
【0065】
リブ27は、スロープ27cと、側壁27aおよび側壁27bを有する。リブ24のスロープ24cよりも大きい傾きをもつ。
【0066】
また、リブ24と発電要素35との距離は、リブ27と発電要素35との距離よりも、距離Dだけ大きくなっている。
【0067】
次に、リブ24とリブ27とが混在している点について説明する。リブ24は、ラミネート外装体31の平面視において、凸部21aの周縁部のうち集電タブ25aと重なる部分に備えられる。リブ27は、ラミネート外装体31の平面視において、凸部21aの周縁部のうち集電タブ25aと重ならない部分に備えられる。
【0068】
また、リブ24のスロープ24cと凸部表面22aとを接続する辺、および、リブ27のスロープ27cと凸部表面22aとを接続する辺は、同一直線上になく、前者の辺は後者の辺よりも発電要素35に対して距離Dだけ離れる方向にオフセットした位置にある。発電要素35の端部は、リブ27のスロープ27cと凸部表面22aとの境界線上にある。集電タブ25aは、発電要素35の端部からリブ24とリブ27のオフセットの距離Dだけ真っすぐ延出し、スロープ24cと凸部表面22aとの境界を始点にスロープ24cに沿って折り曲げられる。本実施形態では、リブ24とリブ27とはスロープの傾きと長さとが異なり、幅および配列間隔は同様としている。
【0069】
かかる構成によれば、リブ27のスロープ27cを短くすることにより、スロープ27cの傾斜が大きくなり、収容凹部21内における発電要素35の位置決め性を向上させることができる。
【0070】
また、発電要素35に対するリブ24の位置とリブ27の位置のオフセットとして距離Dを設定することによって、集電タブ25aが発電要素35の端部からオフセットとしての距離Dだけ離れて折り曲げられるため、真空封止によるラミネート外装体31の圧縮変形時に、集電タブ25aが発電要素35の端部に接触するリスクをさらに低減することができる。
【0071】
なお、本実施形態においては、リブ24とリブ27とのオフセットの距離は1mmと設定しているが、真空封止の減圧による圧縮変形量が許容変形量を考慮した上で適切な値を使用することができる。以下では、リブ27を第2リブとも呼ぶ。
【0072】
以上説明してきたように、実施の形態3に係るラミネート外装体電池33は、さらに、凸部21aの周縁部に、縁を凹ませた凹状の第2リブを備え、第2リブは、第1リブのスロープ24cよりも大きい傾きをもつスロープ27cを有する。
【0073】
これによれば、第1リブと第2リブとを適宜混在させて、第2リブにより、製造時の発電要素35の位置決めの性能を高め、かつ、第1リブにより、短絡可能性を低減することができる。
【0074】
ここで、第1リブと発電要素35との距離は、第2リブと発電要素35との距離よりも大きくてもよい。
【0075】
これによれば、第1リブにより、短絡可能性をさらに低減することができる。
【0076】
ここで、発電要素35の収容凹部21の底側の面状電極からラミネート外装体の外まで延出される集電タブ25aを備え、ラミネート外装体の平面視において、凸部21aの周縁部のうち集電タブ25aと重なる部分に第1リブを備え、凸部21aの周縁部のうち集電タブ25aと重ならない部分に第2リブを備えてもよい。
【0077】
これによれば、第1リブと第2リブとを適宜混在させて、第2リブにより、製造時の発電要素35の位置決めの性能を高め、かつ、第1リブにより、短絡可能性を低減することができる。
【0078】
これによれば、第1リブと第2リブとを効果的に効率良く混在させることができる。
【0079】
なお、各実施の形態において発電要素35および収容凹部21は矩形である例を示したが、これに限らない。発電要素35および収容凹部21は、円形、楕円形、多角形であってもよいし、切欠きのある形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本開示は、集電タブの延出する高さが異なる発電要素でラミネート外装体電池を構成する場合に有効であり、一次電池やリチウムイオン二次電池、全固体電池問わず適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
21 収容凹部
21a 凸部
22a 凸部表面
24、27 リブ
24c、27c スロープ
25a、25b 集電タブ
26 封止面
31、32 ラミネート外装体
35 発電要素