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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】台車の牽引車
(51)【国際特許分類】
   B62D 53/00 20060101AFI20240621BHJP
   B60D 1/00 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B62D53/00 G
B60D1/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023100676
(22)【出願日】2023-06-20
【審査請求日】2023-06-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514154813
【氏名又は名称】フィブイントラロジスティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】太田 晶也
(72)【発明者】
【氏名】福喜多 俊
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特許第7415064(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 53/00
B60D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車を牽引するための牽引装置を後部に配置した牽引車であって、牽引装置は、台車の各側部にそれぞれ沿うことができる二つの側部バー、及びそれらに連続する台車の後部の各角部から内側にそれぞれ沿うことができる二つの後部バーを含む台車包囲バーを備え、牽引装置には二つの側部バーの牽引車側の端部の各々がそれぞれ取り付けられ、二つの後部バーの各々の先端が、台車の後部における内側の位置と外側の位置の間で移動可能であり、台車を牽引せず解放するときには、二つの後部バーの各々の先端がそれぞれ台車の後部の外側の位置に移動することにより、台車を台車包囲バーの外に解放することができ、台車を包囲して牽引するときには、二つの後部バーの各々の先端が台車の後部の内側の位置に移動することにより、台車の側部と後部の角部から内側に沿って台車を包囲することができ、台車の包囲状態での牽引車の進行により台車包囲バーの後部バーが台車を後部から進行方向に押すことで台車を進行方向に牽引することができること、及び二つの後部バーの各々が二つの側部バーのそれぞれに牽引車の幅方向に水平移動可能に取り付けられ、この水平移動により、二つの後部バーの各々の先端が台車の後部における内側の位置と外側の位置の間で移動可能であるように構成されていることを特徴とする牽引車。
【請求項2】
台車を牽引するための牽引装置を後部に配置した牽引車であって、牽引装置は、台車の各側部にそれぞれ沿うことができる二つの側部バー、及びそれらに連続する台車の後部の各角部から内側にそれぞれ沿うことができる二つの後部バーを含む台車包囲バーを備え、牽引装置には二つの側部バーの牽引車側の端部の各々がそれぞれ取り付けられ、二つの後部バーの各々の先端が、台車の後部における内側の位置と外側の位置の間で移動可能であり、台車を牽引せず解放するときには、二つの後部バーの各々の先端がそれぞれ台車の後部の外側の位置に移動することにより、台車を台車包囲バーの外に解放することができ、台車を包囲して牽引するときには、二つの後部バーの各々の先端が台車の後部の内側の位置に移動することにより、台車の側部と後部の角部から内側に沿って台車を包囲することができ、台車の包囲状態での牽引車の進行により台車包囲バーの後部バーが台車を後部から進行方向に押すことで台車を進行方向に牽引することができること、及び二つの後部バーの各々の先端が牽引車の幅方向に互いに向き合う閉鎖位置と牽引車の後方に向く解放位置の間で移動可能であるように二つの後部バーの各々が二つの側部バーのそれぞれに観音開き可能に取り付けられ、この観音開きの動きにより、二つの後部バーの各々の先端が台車の後部の内側における位置と外側の位置の間で移動可能であるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の牽引車。
【請求項3】
二つの側部バーの各々が牽引車の幅方向に互いに離れたり近づいたりすることができるように移動可能であるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の牽引車。
【請求項4】
牽引装置が牽引車から着脱自在に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の牽引車。
【請求項5】
台車が平台車、六輪台車、又はカゴ台車であることを特徴とする請求項1又は2に記載の牽引車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商業施設や物流施設などで用いられる台車を牽引するための牽引装置を後部に配置した牽引車に関する。
【背景技術】
【0002】
商業施設や物流施設などでは、商品や荷物の搬送のために様々な台車が用いられている。これらの台車は、人手によって押されて搬送されることが多いが、近年、人手不足の解消のため、無人の自動搬送車(AGV)などの牽引車を利用して、これらの台車を牽引し、目的の場所に搬送することが試みられている。
【0003】
このような牽引手段や牽引方法については、近年、多数提案されている(特許文献1~9参照)。しかしながら、これらの従来提案されている牽引対象の台車と自動搬送車などの牽引車との連結手段は、ピン連結やクランプ連結等の特別な連結方法を使用しており、牽引対象の台車の形態によっては連結部の形状を変更しなければならず、様々な形態の台車を牽引対象とすることが困難であり、汎用性が低かった。特に、牽引対象の台車が平台車のような形態の場合、引っ掛ける部分やクランプする部分が実質的に存在しないため、簡単で安全な連結を作ることが困難であった。
【0004】
また、従来提案されている台車の牽引手段は、台車と牽引車の連結を前提としたものであるため、台車を牽引車から解放するときには、特別な連結状態を解除する必要があり、その作業は極めて煩雑で時間を要していた。
【0005】
かかる問題に対して、出願人は、台車を牽引するための牽引装置を牽引車の後部に配置し、牽引装置から後方に延びる台車包囲バーで台車の両側部と後部の各角部とを包囲することによって、牽引車と台車を直接連結せずに、しかも台車が様々な形態をとっても安全に台車を拘束して牽引できる牽引車を提案した(特許文献10,11参照)。これらの牽引車は、牽引時の台車の包囲・拘束、及び台車の牽引車からの解放の作業を、台車包囲バーの二つの側部バーを幅方向に互いに離したり近づけたりすることによって、又は牽引車側を支点として台車包囲バー全体を上方位置と下方の水平位置の間で移動することによって行なっている。
【0006】
しかしながら、これらの牽引車は、台車の包囲及び解放のために台車包囲バーの二つの長い側部バーを幅方向に互いに拡縮して移動させたり、台車包囲バー全体を上方と下方の位置の間で移動させる必要があるため、その作業は、極めて煩わしく、自動化したとしても、機械的に複雑化する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2021-70420号公報
【文献】特開2019-131046号公報
【文献】特開2017-100575号公報
【文献】特開2016-150692号公報
【文献】特開2016-150691号公報
【文献】特開2015-131591号公報
【文献】特開2014-210528号公報
【文献】特開2011-102076号公報
【文献】特開2009-113650号公報
【文献】特許第7251004号公報
【文献】特許第7289382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来技術の問題を解消するために創案されたものであり、その目的は、台車を牽引するための牽引装置を後部に配置した牽引車において、台車の牽引時の包囲・拘束及び台車の牽引車からの解放を極めて簡単な機構で容易に行うことができる牽引車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、台車を牽引するための牽引装置を後部に配置した牽引車において、この牽引装置から後方に延びる台車包囲バーとして台車の各側部にそれぞれ沿うことができる二つの側部バーと、それらに連続する台車の後部の各角部から内側にそれぞれ沿うことができる二つの後部バーを設けたうえで、二つの後部バーの各々の先端が台車の後部における内側の位置と外側の位置の間で移動可能であるように構成することによって、先端が内側の位置にあるときには台車を包囲・拘束して牽引することができ、先端が外側の位置にあるときには台車を牽引車の台車包囲バーから解放することができ、これにより二つの後部バーのみを動かす簡単な機構で台車の牽引時の包囲・拘束及び台車の牽引車からの解放を極めて容易に行なうことができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
即ち、本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであり、以下の(1)~()の構成を有するものである。
(1)台車を牽引するための牽引装置を後部に配置した牽引車であって、牽引装置は、台車の各側部にそれぞれ沿うことができる二つの側部バー、及びそれらに連続する台車の後部の各角部から内側にそれぞれ沿うことができる二つの後部バーを含む台車包囲バーを備え、牽引装置には二つの側部バーの牽引車側の端部の各々がそれぞれ取り付けられ、二つの後部バーの各々の先端が、台車の後部における内側の位置と外側の位置の間で移動可能であり、台車を牽引せず解放するときには、二つの後部バーの各々の先端がそれぞれ台車の後部の外側の位置に移動することにより、台車を台車包囲バーの外に解放することができ、台車を包囲して牽引するときには、二つの後部バーの各々の先端が台車の後部の内側の位置に移動することにより、台車の側部と後部の角部から内側に沿って台車を包囲することができ、台車の包囲状態での牽引車の進行により台車包囲バーの後部バーが台車を後部から進行方向に押すことで台車を進行方向に牽引することができること、及び二つの後部バーの各々が二つの側部バーのそれぞれに牽引車の幅方向に水平移動可能に取り付けられ、この水平移動により、二つの後部バーの各々の先端が台車の後部における内側の位置と外側の位置の間で移動可能であるように構成されていることを特徴とする牽引車。
台車を牽引するための牽引装置を後部に配置した牽引車であって、牽引装置は、台車の各側部にそれぞれ沿うことができる二つの側部バー、及びそれらに連続する台車の後部の各角部から内側にそれぞれ沿うことができる二つの後部バーを含む台車包囲バーを備え、牽引装置には二つの側部バーの牽引車側の端部の各々がそれぞれ取り付けられ、二つの後部バーの各々の先端が、台車の後部における内側の位置と外側の位置の間で移動可能であり、台車を牽引せず解放するときには、二つの後部バーの各々の先端がそれぞれ台車の後部の外側の位置に移動することにより、台車を台車包囲バーの外に解放することができ、台車を包囲して牽引するときには、二つの後部バーの各々の先端が台車の後部の内側の位置に移動することにより、台車の側部と後部の角部から内側に沿って台車を包囲することができ、台車の包囲状態での牽引車の進行により台車包囲バーの後部バーが台車を後部から進行方向に押すことで台車を進行方向に牽引することができること、及び二つの後部バーの各々の先端が牽引車の幅方向に互いに向き合う閉鎖位置と牽引車の後方に向く解放位置の間で移動可能であるように二つの後部バーの各々が二つの側部バーのそれぞれに観音開き可能に取り付けられ、この観音開きの動きにより、二つの後部バーの各々の先端が台車の後部の内側における位置と外側の位置の間で移動可能であるように構成されていることを特徴とする(1)に記載の牽引車。
)二つの側部バーの各々が牽引車の幅方向に互いに離れたり近づいたりすることができるように移動可能であるように構成されていることを特徴とする(1)又は(2)に記載の牽引車。
)牽引装置が牽引車から着脱自在に構成されていることを特徴とする(1)又は(2)に記載の牽引車。
)台車が平台車、六輪台車、又はカゴ台車であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の牽引車。
【発明の効果】
【0011】
本発明の牽引車は、その後部に台車を牽引するための牽引装置を配置し、この牽引装置から後方に延びる台車包囲バーとして台車の各側部にそれぞれ沿うことができる二つの側部バーと、それらに連続する台車の後部の各角部から内側にわたってそれぞれ沿うことができる二つの後部バーとを設けたうえで、二つの後部バーの各々の先端が台車の後部における内側の位置と外側の位置の間で移動可能であるように構成されているので、二つの後部バーの各々の先端のみを移動させるだけで台車の牽引時の包囲・拘束及び台車の牽引車からの解放を極めて容易に行なうことができる。また、台車包囲バー全体を移動させないで、二つの後部バーの各々の先端のみを移動させるだけで台車の包囲・拘束及び台車の解放を行なうことができるので、その作業を手動で行なったとしても煩わしくなく、自動化する場合でも簡単な機構で達成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】二つの後部バーの各々の先端が内側の位置にある本発明の牽引車の一例の(a)概略平面図、(b)概略側面図、(c)概略斜視図、及び(d)概略背面図を示す。
図2】二つの後部バーの各々の先端が外側の位置にある本発明の牽引車の一例の(a)概略平面図、(b)概略側面図、(c)概略斜視図、及び(d)概略背面図を示す。
図3】台車を包囲・拘束するために、二つの後部バーの各々の先端が台車の後部における内側の位置にある本発明の牽引車の(a)概略平面図、(b)概略側面図、及び(c)概略斜視図を示す。
図4】台車を解放するために、二つの後部バーの各々の先端が台車の後部における外側の位置にある本発明の牽引車の(a)概略平面図、(b)概略側面図、及び(c)概略斜視図を示す。
図5】二つの後部バーの各々の先端が外側の位置にあり、台車を牽引装置から取り出している様子の本発明の牽引車の(a)概略平面図、(b)概略側面図、及び(c)概略斜視図を示す。
図6】本発明の牽引車の後部バーの移動機構の一例の説明図であり、(a)後部バーの先端が内側の位置にある場合の後方からの概略図、(b)(a)の場合の機構の概略図、(c)後部バーの先端が外側の位置にある場合の後方からの概略図、(d)(c)の場合の機構の概略図を示す。
図7図6の後部バーの移動機構を使用した場合の後部バーの先端が外側の位置にある場合の別の二つの例を(a),(b)の概略図で示す。
図8】本発明の牽引車の後部バーの移動機構の別の例の説明図であり、(a)後部バーの先端が内側の位置にある場合の概略図、(b)後部バーの先端が外側の位置にある場合の概略図を示す。
図9】本発明の牽引車の後部バーの移動機構の別の例の(a)後部バーの先端が内側の位置にある場合の概略平面図、(b)(a)の概略側面図、(c)後部バーの先端が外側の位置にある場合の概略平面図、(d)(c)の概略側面図を示す。
図10】本発明の牽引車の牽引装置が包囲して牽引する平台車の概略図を三つ示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の牽引車及びその後部に配置される牽引装置の典型的な実施形態を図面に基づいて以下説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0014】
本発明の牽引車は、一般に物品の仕分けや配送を取り扱う業界において、牽引車の後部に牽引装置を配置し、牽引装置によって台車を牽引して使用されるものである。牽引車の本体は、台車を自力で牽引できれば特に限定されないが、例えば無人搬送車(AGV)が好ましく使用される。牽引装置は、収納やメンテナンスの容易性の点から牽引車から着脱自在に構成されていることが好ましい。台車は、物品を積むことができ、底部に走行車輪を有すれば特に限定されないが、物品を載せる底部が全体として矩形の平面形状を有するものが好ましく、例えば平台車、六輪台車、又はカゴ台車が好ましく使用される。平台車としては、例えば図10に記載のものが使用される。
【0015】
図1,2は、本発明の牽引車の一例の(a)概略平面図、(b)概略側面図、(c)概略斜視図、(d)概略背面図であり、図1は、二つの後部バーの各々の先端が内側の位置にあり、図2は、二つの後部バーの各々の先端が外側の位置にある。図3は、図1の牽引車において台車を包囲・拘束して牽引できる状態を示し、図4は、図2の牽引車において台車を解放できる状態を示す。図5は、図2の牽引車から台車を取り出している状態を示す。図3~5の(a)~(c)は、(a)概略平面図、(b)概略側面図、及び(c)概略斜視図である。
【0016】
図中、1は、本発明の牽引車であり、例えば無人搬送車(AGV)のような牽引車であることができる。2は、台車であり、台車を載せる底部が全体として矩形を有することが好ましい。3は、台車2を牽引するための牽引装置であり、牽引車1の後部に配置される。牽引装置3は、その後部から後方に向いて延びる台車包囲バー4を有する。台車包囲バー4は、基本的に台車2をその各側部と後部の各角部から内側にわたって包囲するためのものであり、その機能を発揮するため、台車包囲バー4は、台車2の各側部にそれぞれ沿うことができる二つの側部バー5と、それらの側部バー5に連続して形成されかつ台車2の後部の各角部から内側にそれぞれ沿うことができる二つの後部バー6を備える。本発明の牽引車1は、牽引車1と台車2を直接連結しないため、台車が様々な形態をとっても台車2を容易に牽引することができ、台車自体に牽引手段を設ける必要がない。
【0017】
本発明の牽引車1では、台車包囲バー4の二つの後部バー6の各々の先端が、台車2を台車包囲バー4で包囲した状態で見た場合の台車2の後部における内側の位置と外側の位置の間で移動可能であるように構成されていることが最大の特徴である。二つの後部バー6は、内側の位置と外側の位置でそれぞれ固定できることが好ましい。
【0018】
ここで台車2の後部における内側の位置とは、二つの側部バー5が台車2の側部に沿った状態(側部に接触又は近接した状態)で見た場合、二つの後部バー6の各々の先端が台車2の後部の角部から内側にわたって存在する位置であり、この内側の位置にある場合、台車包囲バー4は、台車2の各側部とそれらに連続する後部の各角部から内側に沿って台車2を包囲することができ、この台車2の包囲状態での牽引車1の進行方向の進行により台車包囲バー4の後部バー6が台車2を後部から進行方向に押すことで台車2を進行方向に牽引することができる。この内側の位置では、二つの後部バー6の各々の先端がそれぞれ二つの側部バー5の内側の辺より内側に突出し、二つの後部バー6の各々の先端間の距離が台車2の後部における幅方向の長さより短いことが好ましい。この内側の位置は、例えば、図1,3の後部バー6が該当する。
【0019】
また、台車2の後部における外側の位置とは、二つの側部バー5が台車2の側部に沿った状態(側部に接触又は近接した状態)で見た場合、二つの後部バー6の各々の先端が台車2の後部にない位置(即ち、二つの後部バー6の各々が台車2の真後ろにない位置)であり、この外側の位置にある場合、台車2を台車包囲バー4の外に取り出して解放することができる。この外側の位置では、二つの後部バー6の各々の先端がそれぞれ二つの側部バー5の内側の辺より内側に突出しないことが好ましい。この外側の位置は、例えば、図2,4,5の後部バー6が該当する。
【0020】
本発明の牽引装置3では、台車2を牽引するときには、まず図2に示すように台車包囲バー4の二つの後部バー6の各々の先端を外側の位置にし、その状態で図4に示すように牽引装置3の後方から台車2を入れた後、図3に示すように二つの後部バー6の各々の先端を内側の位置にして台車2を包囲することによって台車2を牽引車1に拘束することができる。そして、この台車2の包囲・拘束状態で牽引車1を進行方向に進行させることにより、台車包囲バー4の後部バー6が台車2を後部から進行方向に押すことで台車2を進行方向に牽引することができる。台車2を牽引せず解放したいときには、台車包囲バー4の二つの後部バー6の各々の先端を図3の内側の位置から図4の外側の位置に移動させた後、図5に示すように台車2を牽引車1の後方へと取り出すことによって台車2を台車包囲バー4の外に解放することができる。本発明の牽引車では、牽引のための台車2の包囲・拘束、及び牽引車1からの台車2の解放を、台車包囲バー4の全体を動かさず、その一部である後部バー6の先端を台車2の後部における内側の位置と外側の位置の間で移動させるだけで達成できるので、その作業が極めて簡単で確実である。
【0021】
本発明の牽引車1では、台車包囲バー4は、二つの側部バー5の各々が牽引車1の幅方向に互いに離れたり近づいたりすることができるように移動可能であるように構成することが好ましい。このような構成は、例えば特許文献9,10に開示されるような手段で達成することができる。これにより、牽引する台車2の幅が変化した場合に台車包囲バー4の二つの側部バー5間の距離を迅速に調整して台車2の両側部のそれぞれに二つの側部バー5を適切に沿わせることができる。
【0022】
台車包囲バー4の二つの側部バー5は、台車2の各側部の全体にそれぞれ沿うことができるのに十分な長さを進行方向に延ばしたものであることが好ましい。また、二つの側部バー5の進行方向側には、台車2の前部の各角部にそれぞれ沿うことができる二つの前部バーをさらに設けることが好ましい。これらにより台車2のしっかりとした拘束が可能になり、牽引時の台車2の安定が確保される。二つの側部バー5は、各々の後方の床面側にそれぞれ車輪が存在することが好ましい。
【0023】
本発明の牽引車1において二つの後部バー6の各々の先端が台車2の後部における内側の位置と外側の位置の間で移動可能にするための手段は、本発明の目的を達成する限り特に限定されず、従来公知の方法や機構を採用することができる。かかる手段としては、例えば、台車2の後部バー6の各々の先端が台車2の後部における内側の位置と外側の位置の間で移動可能であるように、二つの後部バー6の各々が(i)軸回転するもの(第一実施形態)、(ii)水平移動するもの(第二実施形態)、及び(iii)観音開きするもの(第三実施形態)などが挙げられる。以下、これらの実施形態について順に説明する。
【0024】
(第一実施形態)
図6は、二つの後部バー6の各々が二つの側部バー5のそれぞれに牽引車1の進行方向を軸として回転可能に取り付けられた例を示すものであり、(a)は、二つの後部バー6の各々の先端が内側の位置にあることを示し、(b)は、(a)を達成するときの機構の詳細を示し、(c)は、二つの後部バー6の各々の先端が外側の位置にあることを示し、(d)は、(c)を達成するときの機構の詳細を示す。
【0025】
図6の実施形態では、(a),(c)に示すように、二つの後部バー6の各々が軸回転することにより、二つの後部バー6の各々の先端が台車の後部における内側の位置と外側の位置の間で移動可能である。この軸回転は、(b),(d)に示すように、モータ、ロータリーアクチュエーター等の駆動手段により、必要により歯車を介して達成され、牽引車1の進行方向を軸中心として回転することにより、二つの後部バー6の各々の先端が内側の位置と外側の位置の間で移動可能にすることができる。
【0026】
図6の実施形態では、(a),(b)を、二つの後部バー6の各々の先端が内側の位置をとるものとして示し、それらに対して90°軸回転した(c),(d)を、二つの後部バー6の各々の先端が外側の位置をとるものとして示したが、本発明では、これらに限らず、図7の(a)のように逆方向に90°軸回転したものや図7(b)のように斜めの位置に軸回転したものであっても台車2が二つの後部バー6と干渉せずに台車包囲バー4から後方に取り出せる場合は、これらの場合も二つの後部バー6の各々の先端が外側の位置にあるとする。
【0027】
(第二実施形態)
図8は、二つの後部バー6の各々が二つの側部バー5のそれぞれに牽引車1の幅方向に水平移動可能に取り付けられた例を示すものであり、(a)は、二つの後部バー6の各々の先端が内側の位置にあることを示し、(b)は、二つの後部バー6の各々の先端が外側の位置にあることを示し、(c)は、後部バー6が水平移動するための機構の詳細を示す。
【0028】
図8の実施形態では、(a),(b)に示すように、二つの後部バー6の各々が水平移動することにより、二つの後部バー6の各々の先端が台車の後部における内側の位置と外側の位置の間で移動可能である。この水平移動は、例えば(c)に示すようなラックアンドピニオン機構で行なうことができ、この場合、モータ、ロータリーアクチェエータ等の駆動手段7に連結されたピニオン8(歯車)が回転すると水平方向に置かれたラック9側で直線運動(水平移動)を行ない、ピニオン8の回転方向によって水平移動の方向を制御して後部バー6の各々の先端が内側の位置と外側の位置の間で移動可能にすることができる。
【0029】
(第三実施形態)
図9は、二つの後部バー6の各々の先端が牽引車1の幅方向に互いに向き合う閉鎖位置と牽引車1の後方に向く解放位置の間で移動可能であるように二つの後部バー6の各々が二つの側部バーのそれぞれに観音開き可能に取り付けられた例を示すものであり、(a),(b)は、それぞれ二つの後部バー6の各々の先端が内側の位置にあるときの概略平面図、概略側面図を示し、(c),(d)は、それぞれ後部バー6の各々の先端が外側の位置にあるときの概略平面図、概略側面図を示す。
【0030】
図9の実施形態では、(a),(b),(c),(d)に示すように、二つの後部バー6の各々が後方に向けて観音開き状に開放することにより、二つの後部バー6の各々の先端が台車の後部における外側の位置をとり、逆に観音開き状に閉鎖することにより、内側の位置をとることができる。この観音開き状の動きは、第一実施形態と同様にモータ、ロータリーアクチェエータ等の駆動手段により、必要により歯車を介して側部バーの最後方に取り付けた鉛直軸を中心に回転することにより達成されることができる。
【0031】
本発明の牽引車及び牽引装置について典型的な例を上で説明したが、本発明の特許請求の範囲の要件を逸脱しない限り、細部の技術の変更や修正、従来技術の追加を適宜行なうことができる。従って、本発明の牽引装置の二つの後部バーの内側の位置及び外側の位置は、上述の例に限らず、内側の位置のときは、台車の側部と角部の内側を包囲・拘束することができ、牽引車の進行時に後部バーが台車を後方から押すことができれば十分であり、外側の位置のときは、台車を牽引装置の二つの側部バーの間に出し入れできれば十分である。また、二つの後部バーの内側の位置と外側の位置の間の移動機構も上述の例に限らず、手動で又は他の機構で行なうように構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の牽引車によれば、牽引車と台車を直接連結せずにあらゆる形態の台車を簡単に安全に牽引することができるのに加えて、台車の包囲・拘束と台車の解放が台車包囲バーの一部である後部バーの移動だけで達成されるので、その作業が極めて簡単である。従って、本発明の牽引車は、多量の物品の仕分けや配送を扱う業界において極めて有用である。
【符号の説明】
【0033】
1 牽引車
2 台車
3 牽引装置
4 台車包囲バー
5 側部バー
6 後部バー
7 駆動手段
8 ピニオン
9 ラック
【要約】
【課題】台車を牽引するための牽引装置を後部に配置し、台車の牽引時の包囲・拘束及び台車の牽引車からの解放を極めて簡単な機構で容易に行える牽引車を提供する。
【解決手段】牽引装置は、台車の各側部に沿える二つの側部バー、及びそれらに連続する台車の後部の各角部から内側に沿える二つの後部バーを含む台車包囲バーを備え、牽引装置には二つの側部バーの牽引車側の端部の各々が取り付けられ、二つの後部バーの各々の先端が、台車の後部における内側の位置と外側の位置の間で移動可能であり、台車解放時には、二つの後部バーの各々の先端が台車の後部の外側の位置に移動して台車を台車包囲バーの外に解放でき、台車牽引時には、二つの後部バーの各々の先端が台車の後部の内側の位置に移動して台車の側部と後部の角部から内側に沿って台車を包囲し、牽引車の進行により後部バーが台車を後部から押すことで台車を進行方向に牽引できる。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10