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  • 特許-画像形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/40 20060101AFI20240627BHJP
   H04N 1/60 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H04N1/40 062
H04N1/60
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022551993
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2021034565
(87)【国際公開番号】W WO2022065299
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】P 2020159437
(32)【優先日】2020-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】村本 秀也
【審査官】豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-175887(JP,A)
【文献】特開2015-12491(JP,A)
【文献】特開2002-288589(JP,A)
【文献】特開2008-92447(JP,A)
【文献】特開2015-27002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/40
H04N 1/46-62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像における注目画素の画素属性が文字であるか否かを判定する画素属性判定部と、
前記注目画素の画素属性が文字である場合、前記注目画素を含む所定サイズのウィンドウ内の画素のうち、画素属性が文字である画素についての所定の色特性値を第1色特性値として導出し、また、画素属性が文字ではない画素についての所定の色特性値を第2色特性値として導出する局所色特性導出部と、
前記第1色特性値と前記第2色特性値との差分が所定閾値未満である場合、前記注目画素の画素属性を文字から非文字へ変更する画素属性変更部と、
画素属性が文字である画素と画素属性が非文字である画素とで異なる所定の画像処理を行い、前記入力画像から出力画像を生成する出力画像処理部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記局所色特性導出部は、前記第1色特性値として、画素属性が文字である画素の各色成分の平均値を導出し、前記第2色特性値として、画素属性が文字ではない画素の各色成分の平均値を導出し、
前記画素属性変更部は、前記第1色特性値と前記第2色特性値との差分として、色成分ごとの前記平均値の差分を導出し、すべての色成分について、色成分ごとの前記平均値の差分が、色成分ごとの閾値未満である場合、前記注目画素の画素属性を文字から非文字へ変更すること、
を特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ウィンドウのサイズは、前記入力画像における文字の上限文字サイズに応じて設定されることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記出力画像処理部は、画素属性が文字である画素と画素属性が非文字である画素とで線数の異なるスクリーン処理、画素属性が文字である画素と画素属性が非文字である画素とでUCR率の異なる色変換処理の少なくとも一方を実行することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ある画像処理装置は、対象画像においてシアン、マゼンタ、イエローおよびブラック(CMYK)の色ごとにエッジを検出し、いずれかの色でエッジが検出された画素を輪郭としその輪郭(エッジ部分)に対して強調処理を行っている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-109573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の画像処理装置では、背景イメージ上に文字がある場合、ユーザーが意図していないにも拘わらず、強調処理によって文字が過度に強調されてしまう。
【0005】
また、強調処理を行わない場合、文字と背景イメージとで異なるスクリーン処理が実行され、文字と背景との境界に、スクリーンの不連続に起因して白抜きドットのような視認可能なノイズが生じてしまうことがある。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、背景イメージ上の文字が意図せず強調されることを抑制する画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像形成装置は、入力画像における注目画素の画素属性が文字であるか否かを判定する画素属性判定部と、前記注目画素の画素属性が文字である場合、前記注目画素を含む所定サイズのウィンドウ内の画素のうち、画素属性が文字である画素についての所定の色特性値を第1色特性値として導出し、また、画素属性が文字ではない画素についての所定の色特性値を第2色特性値として導出する局所色特性導出部と、前記第1色特性値と前記第2色特性値との差分が所定閾値未満である場合、前記注目画素の画素属性を文字から非文字へ変更する画素属性変更部と、画素属性が文字である画素と画素属性が非文字である画素とで異なる所定の画像処理を行い、前記入力画像から出力画像を生成する出力画像処理部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、背景イメージ上の文字が意図せず強調されることを抑制する画像形成装置が得られる。
【0009】
本発明の上記又は他の目的、特徴および優位性は、添付の図面とともに以下の詳細な説明から更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、注目画素に対応するウィンドウの一例を示す図である。
図3図3は、図1に示す画像形成装置の動作について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。図1に示す画像形成装置は、例えばプリンター、コピー機、複合機などといったプリント機能を有する装置である。
【0013】
図1に示す画像形成装置は、画像入力部1、画像処理部2、および画像出力部3を備える。
【0014】
画像入力部1は、画像処理部2に対して、入力画像を指定する。
【0015】
例えば、画像入力部1は、画像読取装置を備え、その画像読取装置で、1ページずつ、原稿画像を光学的に読み取り、その原稿画像の画像データを生成し、入力画像の画像データとして画像処理部2に出力する。
【0016】
また、例えば、画像入力部1は、ネットワークインターフェイスなどの通信装置を備え、パーソナルコンピューターなどといったホスト装置から、入力画像を指定するプリント要求を受信し、画像処理部2に出力する。
【0017】
画像処理部2は、画像入力部1により指定された入力画像に対して、各種画像処理を行い、画像処理後の画像データを画像出力部3に出力する。
【0018】
画像出力部3は、例えば電子写真方式のカラープリントエンジンを有し、画像処理部2からの画像データに基づく画像をプリント用紙にプリントする。
【0019】
画像処理部2は、プログラムを実行するコンピューターや、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)を備え、そのコンピューターやASICでソフトウェア処理および/またはハードウェア処理を実行することで、入力画像処理部11、画素属性決定部12、および出力画像処理部13として動作する。
【0020】
入力画像処理部11は、画像入力部1により指定された入力画像のカラー画像データおよび属性データを生成する。カラー画像データは、画素ごとに、色成分値の組み合わせを示すデータであり、属性データは、画素ごとに、画素属性(文字、非文字(イメージ)など)を示すデータである。
【0021】
例えば、画像読取装置で得られた入力画像の画像データが画像入力部1から入力された場合、入力画像処理部11は、例えば既存の領域分離処理を実行して入力画像の各画素の画素属性を特定し、入力画像の各画素の属性を示す属性データを生成する。
【0022】
例えば、通信装置で受信されたプリント要求が画像入力部1から入力された場合、入力画像処理部11は、そのプリント要求についてラスターイメージ処理などを実行して、入力画像のカラー画像データおよび属性データを生成する。
【0023】
画素属性決定部12は、カラー画像データおよび属性データを解析し、属性データにおける画素属性のうち、所定の条件が成立する画素についての画素属性を文字から非文字へ変更する。
【0024】
画素属性決定部12は、画素属性判定部21、局所色特性導出部22、および画素属性変更部23を備える。
【0025】
画素属性判定部21は、入力画像において注目画素を順番に選択し、入力画像処理部11により入力された属性データに基づいて、注目画素の画素属性が文字であるか否かを判定する。
【0026】
局所色特性導出部22は、入力画像処理部11により入力されたカラー画像データに基づいて、注目画素の画素属性が文字である場合、注目画素を含む所定サイズのウィンドウ内の画素のうち、画素属性が文字である画素についての所定の色特性値を第1色特性値として導出し、また、画素属性が文字ではない画素についての所定の色特性値を第2色特性値として導出する。なお、注目画素の画素属性が文字ではない場合、局所色特性導出部22は、上述の色特性値を導出しない。
【0027】
具体的には、局所色特性導出部22は、第1色特性値として、画素属性が文字である画素の各色成分の平均値を導出し、第2色特性値として、画素属性が文字ではない画素の各色成分の平均値を導出する。
【0028】
ここでは、上述の色成分は、HSV色空間の色相H、彩度S、および明度Vであり、ウィンドウ内における画素属性が文字である画素についての色相Hの平均値Ht、彩度Sの平均値St、および明度Vの平均値Vt、並びに、ウィンドウ内における画素属性が非文字である画素についての色相Hの平均値Hi、彩度Sの平均値Si、および明度Vの平均値Viが導出される。
【0029】
なお、ここでは、上述の色特性値を求めるために使用される色空間は、HSVとされているが、他の色空間でもよい。
【0030】
図2は、注目画素に対応するウィンドウの一例を示す図である。例えば図2に示す場合では、ウィンドウは、9画素×9画素のサイズを有し、ウィンドウの中心に注目画素が位置しており、注目画素の画素属性は文字である。なお、ウィンドウの主走査方向のサイズと副走査方向のサイズは互いに同じでも異なっていてもよい。
【0031】
なお、このウィンドウのサイズは、入力画像における文字の上限文字サイズに応じた固定値として設定される。つまり、上限文字サイズが大きいほど、このウィンドウのサイズは、大きく設定される。
【0032】
画素属性変更部23は、上述の第1色特性値と上述の第2色特性値との差分が所定閾値未満である場合、注目画素の画素属性を文字から非文字へ変更し、そうではない場合には、注目画素の画素属性を文字のままとする。
【0033】
具体的には、画素属性変更部23は、(a)第1色特性値と第2色特性値との差分として、上述の色成分ごとの平均値の差分を導出し、(b)すべての色成分について、色成分ごとの平均値の差分が、色成分ごとの閾値未満である場合、注目画素の画素属性を文字から非文字へ変更する。
【0034】
ここでは、上述の色成分は、HSV色空間の色相H、彩度S、および明度Vであり、差分|Ht-Hi|,|St-Si|,|Vt-Vi|および閾値TH_H,TH_S,TH_Vについて、|Ht-Hi|<TH_Hかつ|St-Si|<TH_Sかつ|Vt-Vi|<TH_Vである場合、注目画素の画素属性が文字から非文字へ変更される。
【0035】
例えば、注目画素について、(Ht,St,Vt)=(0,0,182)であり、(Hi,Si,Vi)=(0,0,191)であり、TH_H,TH_S,TH_V=10である場合、|Ht-Hi|=0,|St-Si|=0,|Vt-Vi|=9であり、|Ht-Hi|<TH_Hかつ|St-Si|<TH_Sかつ|Vt-Vi|<TH_Vであるので、注目画素の画素属性が文字から非文字へ変更される。
【0036】
出力画像処理部13は、画素属性が文字である画素と画素属性が非文字である画素とで異なる所定の画像処理を行い、入力画像から出力画像を生成する。
【0037】
例えば、出力画像処理部13は、画素属性に対応した、色変換処理、色補正処理、黒生成/UCR(Under Color Removal)処理、スクリーン処理などを行う。具体的には、出力画像処理部13は、画素属性が文字である画素と画素属性が非文字である画素とで線数の異なるスクリーン処理、画素属性が文字である画素と画素属性が非文字である画素とでUCR(Under Color Removal)率の異なる色変換処理などを実行する。さらに、スクリーン処理の線数に応じて色変換特性が調整される。また、無彩色の画素については、画素属性が文字である画素の色は、可能であれば、単色(Kなど)に色変換され、画素属性が文字ではない画素の色は、混色(CMYK)に色変換される。
【0038】
次に、上記画像形成装置の動作について説明する。図3は、図1に示す画像形成装置の動作について説明するフローチャートである。
【0039】
まず、入力画像処理部11が、画像入力部1からのプリント要求や原稿画像の画像データに基づいて、入力画像の画像データおよび属性データを取得する(ステップS1)。
【0040】
画素属性判定部21は、その入力画像において、所定の走査順序で注目画素を選択し(ステップS2)、属性データに基づいて、注目画素の画素属性が文字であるか否かを判定する(ステップS3)。
【0041】
注目画素の画素属性が文字であると判定された場合、局所色特性導出部22は、注目画素に対応するウィンドウ内の画素を特定し、さらに、属性データに基づいて、ウィンドウ内の文字属性画素(画素属性が文字である画素)および非文字属性画素(画素属性が文字ではない画素)を特定し、文字属性画素の各色成分の平均値Ht,St,Vtおよび非文字属性画素の各色成分の平均値Hi,Si,Viを計算する(ステップS4)。
【0042】
そして、画素属性変更部23は、各色成分についての平均値の差分|Ht-Hi|,|St-Si|,|Vt-Vi|を計算し、|Ht-Hi|<TH_Hかつ|St-Si|<TH_Sかつ|Vt-Vi|<TH_Vであるか否かを判定する(ステップS5)。
【0043】
|Ht-Hi|<TH_Hかつ|St-Si|<TH_Sかつ|Vt-Vi|<TH_Vである場合、画素属性変更部23は、属性データにおける注目画素の画素属性を文字から非文字へ変更する(ステップS6)。
【0044】
一方、|Ht-Hi|<TH_Hかつ|St-Si|<TH_Sかつ|Vt-Vi|<TH_Vではない場合、画素属性変更部23は、注目画素の画素属性を文字から非文字へ変更せず文字のままとする。また、ステップS3において、注目画素の画素属性が文字ではないと判定された場合、ステップS4,S5,S6の処理はスキップされる。
【0045】
そして、画素属性判定部21は、現在の注目画素が入力画像の最後の画素であるか否かを判定し(ステップS7)、現在の注目画素が入力画像の最後の画素でなければ、ステップS2に戻り、次の注目画素を選択する。そして、その次の注目画素に対してステップS3以降の同様の処理が実行される。
【0046】
一方、現在の注目画素が入力画像の最後の画素であれば、画素属性決定部12は、処理後の入力画像の画像データおよび属性データを出力画像処理部13に出力し、出力画像処理部13は、その画像データおよび属性データに基づいて、入力画像に対して上述の画像処理を実行し、出力画像を生成する(ステップS8)。
【0047】
そして、画像出力部3は、その出力画像のプリントを実行する(ステップS9)。
【0048】
以上のように、上記実施の形態によれば、画素属性判定部21は、入力画像における注目画素の画素属性が文字であるか否かを判定する。局所色特性導出部22は、注目画素の画素属性が文字である場合、注目画素を含む所定サイズのウィンドウ内の画素のうち、画素属性が文字である画素についての所定の色特性値を第1色特性値として導出し、また、画素属性が文字ではない画素についての所定の色特性値を第2色特性値として導出する。画素属性変更部23は、導出された第1色特性値と第2色特性値との差分が所定閾値未満である場合、注目画素の画素属性を文字から非文字へ変更する。出力画像処理部13は、画素属性が文字である画素と画素属性が非文字である画素とで異なる所定の画像処理を行い、入力画像から出力画像を生成する。
【0049】
これにより、文字とその背景の濃度および色味が近い場合には、文字とその背景に対して同様の画像処理が施されるため、画像処理後の出力画像(つまり、プリントされる画像)において文字とその背景との境界部分の不連続性が軽減され、背景イメージ上の文字が意図せず強調されることが抑制される。
【0050】
つまり、ユーザーが、プリント対象画像において、文字とその背景の色味を近くして、プリント生成物上で文字を視認させにくくしたい場合に、背景イメージ上の文字が意図せず強調されずにプリント対象画像がプリントされ、プリント生成物上で文字を視認されにくくなる。
【0051】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0052】
例えば、上記実施の形態において、第1色特性値と第2色特性値は、ウィンドウ内の色成分の平均値であるが、別の特性値(中央値、最大値、最小値など)でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、例えば、画像形成装置に適用可能である。
図1
図2
図3