(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】スプロケットおよび動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 55/30 20060101AFI20240627BHJP
F16G 13/10 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
F16H55/30 Z
F16G13/10
(21)【出願番号】P 2023138090
(22)【出願日】2023-08-28
【審査請求日】2024-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【氏名又は名称】山田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼本 力
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許発明第1098098(FR,A)
【文献】特開2000-304113(JP,A)
【文献】特開昭60-113862(JP,A)
【文献】実公昭61-21456(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/30
F16G 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリンクがらせん状に連結するらせん構造のチェーンと係合可能なスプロケットであって、
前記チェーンの前記リンクと係合する複数の第1のスプロケット歯と、
前記第1のスプロケット歯に対して前記スプロケットの回転中心線の延在方向に間隔をあけて離れ、前記チェーンの前記リンクと係合する複数の第2のスプロケット歯と、を含み、
前記第1のスプロケット歯それぞれが、前記スプロケットの正転方向側に前記チェーンの前記リンクと接触する第1の接触部を備えつつ、逆転方向側に前記チェーンの前記リンクとの接触を回避する第1の逃げ部を備え、
前記第2のスプロケット歯それぞれが、前記スプロケットの前記逆転方向側に前記チェーンの前記リンクと接触する第2の接触部を備えつつ、前記正転方向側に前記チェーンの前記リンクとの接触を回避する第2の逃げ部を備える、スプロケット。
【請求項2】
前記第1の接触部が、前記正転方向且つ前記スプロケットの外方向に向いた平面であって、
前記第2の接触部が、前記逆転方向且つ前記外方向に向いた平面である、請求項1に記載のスプロケット。
【請求項3】
前記スプロケットに係合した状態の前記チェーンに対して前記回転中心線の延在方向に対向し、前記チェーンをガイドするガイド部材を有する、請求項1に記載のスプロケット。
【請求項4】
円盤状の第1の本体部と、前記第1の本体部の外周に沿って設けられた複数の前記第1のスプロケット歯とを含む第1の回転体と、
円盤状の第2の本体部と、前記第2の本体部の外周に沿って設けられた複数の前記第2のスプロケット歯とを含む第2の回転体と、
前記第1の回転体と前記第2の回転体との間に配置され、前記第1のスプロケット歯と前記第2のスプロケット歯を前記回転中心線の延在方向に互いに離間させるスペーサと、を有する、請求項1に記載のスプロケット。
【請求項5】
前記チェーンが、互いに回動可能に連結し、らせん状に延在する第1のらせん状リンク連結体を形成する複数の第1のリンクと、
互いに回動可能に連結し、らせん状に延在する第2のらせん状リンク連結体を形成する複数の第2のリンクと、
対応し合う前記第1のリンクと前記第2のリンクとをそれぞれ連結することによって前記第1および第2のらせん状リンク連結体を連結し、二重らせん構造を形成する複数の連結部材と、を含み、
前記複数の第1のスプロケット歯は、前記第1のリンクと前記第2のリンクに対して交互に接触し、
前記複数の第2のスプロケット歯は、前記第1のリンクと前記第2のリンクに対して交互に接触する、請求項1に記載のスプロケット。
【請求項6】
前記第1および第2のスプロケット歯に対して前記チェーンを係合させるときの前記チェーンのらせん方向を示すマーカーを有する、請求項1に記載のスプロケット。
【請求項7】
複数のリンクがらせん状に連結するらせん構造を備えるチェーンと、
前記チェーンと係合可能なスプロケットと、を有し、
前記チェーンが、
前記チェーンの前記リンクと係合する複数の第1のスプロケット歯と、
前記第1のスプロケット歯に対して前記スプロケットの回転中心線の延在方向に間隔をあけて離れ、前記チェーンの前記リンクと係合する複数の第2のスプロケット歯と、を含み、
前記第1のスプロケット歯それぞれが、前記スプロケットの正転方向側に前記チェーンの前記リンクと接触する第1の接触部を備えつつ、逆転方向側に前記チェーンの前記リンクとの接触を回避する第1の逃げ部を備え、
前記第2のスプロケット歯それぞれが、前記スプロケットの前記逆転方向側に前記チェーンの前記リンクと接触する第2の接触部を備えつつ、前記正転方向側に前記チェーンの前記リンクとの接触を回避する第2の逃げ部を備える、動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スプロケットおよび動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、スプロケットに係合するチェーンとして、ローラチェーン、サイレントチェーンなどが様々な種類が知られている。その一方で、新たなチェーンとして、らせん構造のチェーンが特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されているらせん構造のチェーンにおいては、複数のリンクが直列に回動可能に連結してらせん状に延在するらせん状リンク連結体を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された、複数のリンクがらせん状に連結するらせん構造のチェーンに適したスプロケットは未だ提案されていない。
【0005】
そこで、本開示は、複数のリンクがらせん状に連結するらせん構造のチェーンに係合可能なスプロケットを実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本開示の一態様によれば、
複数のリンクがらせん状に連結するらせん構造のチェーンと係合可能なスプロケットであって、
前記チェーンの前記リンクと係合する複数の第1のスプロケット歯と、
前記第1のスプロケット歯に対して前記スプロケットの回転中心線の延在方向に間隔をあけて離れ、前記チェーンの前記リンクと係合する複数の第2のスプロケット歯と、を含み、
前記第1のスプロケット歯それぞれが、前記スプロケットの正転方向側に前記チェーンの前記リンクと接触する第1の接触部を備えつつ、逆転方向側に前記チェーンの前記リンクとの接触を回避する第1の逃げ部を備え、
前記第2のスプロケット歯それぞれが、前記スプロケットの前記逆転方向側に前記チェーンの前記リンクと接触する第2の接触部を備えつつ、前記正転方向側に前記チェーンの前記リンクとの接触を回避する第2の逃げ部を備える、スプロケットが提供される。
【0007】
また、本開示の別態様によれば、
複数のリンクがらせん状に連結するらせん構造を備えるチェーンと、
前記チェーンと係合可能なスプロケットと、を有し、
前記チェーンが、
前記チェーンの前記リンクと係合する複数の第1のスプロケット歯と、
前記第1のスプロケット歯に対して前記スプロケットの回転中心線の延在方向に間隔をあけて離れ、前記チェーンの前記リンクと係合する複数の第2のスプロケット歯と、を含み、
前記第1のスプロケット歯それぞれが、前記スプロケットの正転方向側に前記チェーンの前記リンクと接触する第1の接触部を備えつつ、逆転方向側に前記チェーンの前記リンクとの接触を回避する第1の逃げ部を備え、
前記第2のスプロケット歯それぞれが、前記スプロケットの前記逆転方向側に前記チェーンの前記リンクと接触する第2の接触部を備えつつ、前記正転方向側に前記チェーンの前記リンクとの接触を回避する第2の逃げ部を備える、動力伝達装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、複数のリンクがらせん状に連結するらせん構造のチェーンに係合可能なスプロケットを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】一例のチェーンが係合した状態の本開示の一実施の形態に係るスプロケットの右前方斜視図
【
図1B】一例のチェーンが係合した状態の本開示の一実施の形態に係るスプロケットの左前方斜視図
【
図5A】一例のチェーンにおける、互いに連結した状態の複数の第1のリンクの斜視図
【
図5B】一例のチェーンにおける、互いに連結した状態の複数の第1のリンク(第1のらせん状リンク連結体)の正面図
【
図5C】一例のチェーンにおける、複数の第1のリンクの分解斜視図
【
図6A】一例のチェーンにおける、互いに連結した状態の複数の第2のリンクの斜視図
【
図6B】一例のチェーンにおける、互いに連結した状態の複数の第2のリンク(第2のらせん状リンク連結体)の正面図
【
図6C】一例のチェーンにおける、複数の第2のリンクの分解斜視図
【
図7】一例のチェーンにおける、二重らせん構造を構成する第1および第2のらせん状リンク連結体を示す斜視図
【
図8】一例のチェーンにおける、連結部材を介して連結された状態の第1および第2のリンクを示すパース図
【
図9】一例のチェーンにおける、複数の連結部材を介する複数の第1および第2のリンクの連結を説明するための分解斜視図
【
図10A】
図2に示すS1-S1線に沿った一例のチェーンの断面図
【
図10B】
図2に示すS2-S2線に沿った一例のチェーンの断面図
【
図11A】幅方向の一方側に曲がる一例のチェーンの一部分を示す斜視図
【
図11B】幅方向の他方側に曲がる一例のチェーンの一部分を示す斜視図
【
図11C】厚さ方向の一方側に曲がる一例のチェーンの一部分を示す斜視図
【
図11D】厚さ方向の他方側に曲がる一例のチェーンの一部分を示す斜視図
【
図16A】一例のチェーンが係合した状態のスプロケットの右側面図
【
図16B】一例のチェーンが係合した状態のスプロケットの左側面図
【
図17】一例のチェーンにおける一周期分の第1および第2のリンクと第1および第2のスプロケット歯との接触を示す斜視図
【
図18】一例のチェーンと係合した状態のスプロケットの部分断面図
【
図19A】別例のチェーンが係合した状態の別の実施の形態に係るスプロケットの右前方斜視図
【
図19B】別例のチェーンが係合した状態の別の実施の形態に係るスプロケットの左前方斜視図
【
図22A】別例のチェーンにおける、互いに連結し合う複数の第1のリンク(第1のらせん状リンク連結体)の正面図
【
図22B】別例のチェーンにおける、互いに連結し合う複数の第2のリンク(第2のらせん状リンク連結体)の正面図
【
図23A】
図20に示すS3-S3線それぞれに沿った別例のチェーンの断面図
【
図23B】
図20に示すS4-S4線それぞれに沿った別例のチェーンの断面図
【
図24A】さらに別例のチェーンが係合した状態のさらに別の実施の形態に係るスプロケットの右前方斜視図
【
図24B】さらに別例のチェーンが係合した状態のさらに別の実施の形態に係るスプロケットの左前方斜視図
【
図26】さらに別例のチェーンの一部分の分解斜視図
【
図27A】さらに別例のチェーンにおける、互いに連結し合う複数の第1のリンク(第1のらせん状リンク連結体)の正面図
【
図27B】さらに別例のチェーンにおける、互いに連結し合う複数の第2のリンク(第2のらせん状リンク連結体)の正面図
【
図28】さらに別例のチェーンにおける、複数の連結部材を介する複数の第1および第2のリンクの連結を説明するための分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の一態様のスプロケットは、複数のリンクがらせん状に連結するらせん構造のチェーンと係合可能なスプロケットであって、前記チェーンの前記リンクと係合する複数の第1のスプロケット歯と、前記第1のスプロケット歯に対して前記スプロケットの回転中心線の延在方向に間隔をあけて離れ、前記チェーンの前記リンクと係合する複数の第2のスプロケット歯と、を含み、前記第1のスプロケット歯それぞれが、前記スプロケットの正転方向側に前記チェーンの前記リンクと接触する第1の接触部を備えつつ、前記逆転方向側に前記チェーンの前記リンクとの接触を回避する第1の逃げ部を備え、前記第2のスプロケット歯それぞれが、前記スプロケットの逆転方向側に前記チェーンの前記リンクと接触する第2の接触部を備えつつ、前記正転方向側に前記チェーンの前記リンクとの接触を回避する第2の逃げ部を備える。
【0011】
このような一態様によれば、複数のリンクがらせん状に連結するらせん構造のチェーンに係合可能なスプロケットを実現することができる。
【0012】
例えば、前記第1の接触部が、前記正転方向且つ前記スプロケットの外方向に向いた平面であって、前記第2の接触部が、前記逆転方向且つ前記外方向に向いた平面であってもよい。
【0013】
例えば、前記スプロケットが、前記スプロケットに係合した状態の前記チェーンに対して前記回転中心線の延在方向に対向し、前記チェーンをガイドするガイド部材を有してもよい。
【0014】
例えば、前記スプロケットが、円盤状の第1の本体部と、前記第1の本体部の外周に沿って設けられた複数の前記第1のスプロケット歯とを含む第1の回転体と、円盤状の第2の本体部と、前記第2の本体部の外周に沿って設けられた複数の前記第2のスプロケット歯とを含む第2の回転体と、前記第1の回転体と前記第2の回転体との間に配置され、前記第1のスプロケット歯と前記第2のスプロケット歯を前記回転中心線の延在方向に互いに離間させるスペーサと、を有してもよい。
【0015】
例えば、前記チェーンとして、互いに回動可能に連結し、らせん状に延在する第1のらせん状リンク連結体を形成する複数の第1のリンクと、互いに回動可能に連結し、らせん状に延在する第2のらせん状リンク連結体を形成する複数の第2のリンクと、対応し合う前記第1のリンクと前記第2のリンクとをそれぞれ連結することによって前記第1および第2のらせん状リンク連結体を連結し、二重らせん構造を形成する複数の連結部材と、を含み、前記複数の第1のスプロケット歯は、前記第1のリンクと前記第2のリンクに対して交互に接触し、前記複数の第2のスプロケット歯は、前記第1のリンクと前記第2のリンクに対して交互に接触する、チェーンであってもよい。
【0016】
例えば、前記スプロケットが、前記第1および第2のスプロケット歯に対して前記チェーンを係合させるときの前記チェーンのらせん方向を示すマーカーを有してもよい。
【0017】
本開示の別態様の動力伝達装置は、複数のリンクがらせん状に連結するらせん構造を備えるチェーンと、前記チェーンと係合可能なスプロケットと、を有し、前記チェーンが、 前記チェーンの前記リンクと係合する複数の第1のスプロケット歯と、前記第1のスプロケット歯に対して前記スプロケットの回転中心線の延在方向に間隔をあけて離れ、前記チェーンの前記リンクと係合する複数の第2のスプロケット歯と、を含み、前記第1のスプロケット歯それぞれが、前記スプロケットの正転方向側に前記チェーンの前記リンクと接触する第1の接触部を備えつつ、前記逆転方向側に前記チェーンの前記リンクとの接触を回避する第1の逃げ部を備え、前記第2のスプロケット歯それぞれが、前記スプロケットの逆転方向側に前記チェーンの前記リンクと接触する第2の接触部を備えつつ、前記正転方向側に前記チェーンの前記リンクとの接触を回避する第2の逃げ部を備える。
【0018】
このような一態様によれば、複数のリンクがらせん状に連結するらせん構造のチェーンと、そのチェーン係合可能なスプロケットとを有する動力伝達装置を実現することができる。
【0019】
以下、本開示に係る一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1Aおよび
図1Bは、一例のチェーンが係合した状態の本開示の一実施の形態に係るスプロケットの右前方斜視図および左前方斜視図である。
【0021】
なお、図に示すX-Y-Z直交座標系は、本開示の実施の形態の理解を容易にするためのものであって、本開示の実施の形態を限定するものではない。X軸方向は、スプロケットの回転中心線の延在方向を示しており、Y軸方向およびZ軸方向は、スプロケットの径方向を示している。
【0022】
図1Aおよび
図1Bに示す本実施の形態に係るスプロケット10は、らせん構造のチェーン110と係合可能に構成されている。それにより、スプロケット10とチェーン110とを含む動力伝達装置が構成されている。まず、スプロケット10の具体的な構成を説明する前に、スプロケット10に係合するチェーン110の特徴について説明する。
【0023】
図2は、一例の一例のチェーンの一部分の斜視図である。また、
図3は、一例のチェーンの一部分の上面図である。さらに、
図4は、一例のチェーンの分解斜視図である。なお、図に示すU-V-W直交座標系は、本開示の実施の形態の理解を容易にするためのものであって、本開示の実施の形態を限定するものではない。U軸方向は、チェーンの幅方向を示し、V軸方向はチェーンの厚さ方向を示し、W軸方向はチェーンの延在方向を示している。
【0024】
なお、本明細書において、チェーンの延在方向(W軸方向)は、チェーンが使用されるときに、チェーンが移動する方向である。チェーンが直線経路に沿って移動するときは、チェーンの延在方向は直線経路の延在方向に相当する。チェーンが曲線経路に沿って移動するときは、チェーンの延在方向は曲線経路の接線方向に相当する。また、一部の図面には、本開示の実施の形態の理解を容易にするために、チェーンの進行方向(前進方向)を白抜き矢印FDで示している。
【0025】
図2~
図4に示すように、チェーン110は、複数の第1のリンク120と、複数の第2のリンク130とを有する。
【0026】
図5Aは、一例のチェーンにおける、互いに連結した状態の複数の第1のリンクの斜視図である。また、
図5Bは、一例のチェーンにおける、互いに連結した状態の複数の第1のリンク(第1のらせん状リンク連結体)の正面図である。そして、
図5Cは、一例のチェーンにおける、複数の第1のリンクの分解斜視図である。
【0027】
図5A~
図5Cに示すように、一例のチェーン110において、複数の第1のリンク120は、同一形状を備えている。また、第1のリンク120は、チェーン110の延在方向(W軸方向)に延在しつつ、チェーン110の延在方向視で屈曲している。すなわち、第1のリンク120は、チェーン110の延在方向視でL字状の形状を備える。
【0028】
また、
図4および
図5A~
図5Cに示すように、複数の第1のリンク120は、直列に連結する。すなわち、第1のリンク120それぞれは、チェーン110の延在方向(W軸方向)の一方側部分で他の第1のリンク120の他方側部分に対して連結するとともに、他方側部分で他の第1のリンク120の一方側部分に対して連結する。なお、具体的な連結方法の詳細については後述する。
【0029】
さらに、第1のリンク120それぞれは、第1および第2の回動中心線C1、C2を中心にして回動する。具体的には、第1のリンク120それぞれは、一方に連結する他の第1のリンク120に対して第1の回動中心線C1を中心にして回動可能に連結しつつ、他方に連結する他の第1のリンク120に対して第2の回動中心線C2を中心にして回動可能に連結する。
【0030】
これらの第1の回動中心線C1と第2の回動中心線C2は、互いに異なる方向に延在している。具体的には、チェーン110の延在方向(W軸方向)視で、第1の回動中心線C1と第2の回動中心線C2が交差する。一例のチェーン110において、第1の回動中心線C1の延在方向(U軸方向)と第2の回動中心線C2の延在方向(V軸方向)は、チェーン110の延在方向視で実質的に90度の角度で交差する。
【0031】
このような複数の第1のリンク120それぞれが第1および第2の回動中心線C1、C2を中心として回動可能に他の第1のリンク120に直列に連結すると、
図4に示すように、らせん状に延在する第1のらせん状リンク連結体140が形成される。第1のらせん状リンク連結体140は、チェーン110の延在方向(W軸方向)に交互に並んだ複数の第1の回動中心線C1と複数の第2の回動中心線C2とを備える変形可能なリンク連結体である。
【0032】
なお、本明細書で言う「らせん」は、一方向に延在する基準線を周回しつつ、基準線の延在方向に進む三次元曲線を言う。本開示では、チェーン110の延在方向(W軸方向)に延在し、その延在方向と直交するチェーン110の断面形状内を通過する線(すなわち延在方向視で断面形状の輪郭内に位置する線)が、らせんの基準線に相当する。
【0033】
上述したように、一例のチェーン110において、複数の第1のリンク120が同一形状であって、チェーン110の延在方向(W軸方向)視で第1および第2の回動中心線C1、C2が実質的に直交する。そのため、
図5Aに示すように、連続する4個の第1のリンク120が、第1のらせん状リンク連結体140の1周期(1ピッチ)分に相当する。また、連続する4個の第1のリンク120は、すなわち第1のらせん状リンク連結体140は、チェーン110の延在方向(W軸方向)視で、
図5Bに示すように、実質的に正方形状の輪郭を備える。
【0034】
図6Aは、一例のチェーンにおける、互いに連結した状態の複数の第2のリンクの斜視図である。また、
図6Bは、一例のチェーンにおける、互いに連結した状態の複数の第2のリンク(第2のらせん状リンク連結体)の正面図である。そして、
図6Cは、一例のチェーンにおける、複数の第2のリンクの分解斜視図である。
【0035】
図6A~
図6Cに示すように、一例のチェーン110において、複数の第2のリンク130は、同一形状を備えている。さらに、第1のリンク120と第2のリンク130は同一形状を備えている。すなわち、一例のチェーン110は、1種類のリンクから構成されている。したがって、第2のリンク130も、チェーン110の延在方向(W軸方向)に延在しつつ、チェーン110の延在方向視で屈曲している。すなわち、第2のリンク130も、チェーン110の延在方向視でL字状の形状を備える。
【0036】
また、
図4および
図6A~
図6Cに示すように、複数の第2のリンク130は、直列に連結する。すなわち、第2のリンク130それぞれは、チェーン110の延在方向(W軸方向)の一方側部分で他の第2のリンク130の他方側部分に対して連結するとともに、他方側部分で他の第2のリンク130の一方側部分に対して連結する。なお、具体的な連結方法の詳細については後述する。
【0037】
さらに、第2のリンク130それぞれは、一方に連結する他の第2のリンク130に対して第3の回動中心線C3を中心にして回動可能に連結しつつ、他方に連結する他の第2のリンク130に対して第4の回動中心線C4を中心にして回動可能に連結する。
【0038】
これらの第3の回動中心線C3と第4の回動中心線C4は、互いに異なる方向に延在している。具体的には、チェーン110の延在方向(W軸方向)視で、第3の回動中心線C3と第4の回動中心線C4が交差する。第3の回動中心線C3の延在方向(U軸方向)と第4の回動中心線C4の延在方向(V軸方向)は、チェーン110の延在方向視で実質的に90度の角度で交差する。
【0039】
このような複数の第2のリンク130それぞれが第3および第4の回動中心線C3、C4を中心として回動可能に他の第2のリンク130に直列に連結すると、
図4に示すように、らせん状に延在する第2のらせん状リンク連結体150が形成される。第2のらせん状リンク連結体150は、チェーン110の延在方向(W軸方向)に交互に並んだ複数の第3の回動中心線C3と複数の第4の回動中心線C4を備える変形可能なリンク連結体である。
【0040】
上述したように、一例のチェーン110において、複数の第2のリンク130が同一形状であって、チェーン110の延在方向(W軸方向)視で第3および第4の回動中心線C3、C4が実質的に直交する。そのため、
図6Aに示すように、連続する4個の第2のリンク130が、第2のらせん状リンク連結体150の1周期分に相当する。また、連続する4個の第2のリンク130は、すなわち第2のらせん状リンク連結体150は、チェーン110の延在方向(W軸方向)視で、
図6Bに示すように、実質的に正方形状の輪郭を備える。
【0041】
複数の第1のリンク120から形成される第1のらせん状リンク連結体140と複数の第2のリンク130から形成される第2のらせん状リンク連結体150は、連結部材によって連結され、チェーン110を構成する。具体的には、第1のらせん状リンク連結体140と第2のらせん状リンク連結体150とが、二重らせん構造を形成するように連結される。
【0042】
図7は、一例のチェーンにおける、二重らせん構造を形成する第1および第2のらせん状リンク連結体を示す斜視図である。
【0043】
図7に示すように、第1のらせん状リンク連結体140と第2のらせん状リンク連結体150は、互いに直接的に接触することなく、二重らせん構造を形成する。
【0044】
具体的には、第1のらせん状リンク連結体140を形成する第1のリンク120の第1の回動中心線C1と第2のらせん状リンク連結体150を形成する第2のリンク130の第3の回動中心線C3が同一直線上に位置する。また、第1のリンク120の第2の回動中心線C2と第2のリンク130の第4の回動中心線C4が同一直線上に位置する。これにより、第1のらせん状リンク連結体140と第2のらせん状リンク連結体150が、互いに直接的に接触することなく、二重らせん構造を形成する。なお、厳密にいえば、少なくともチェーン110が直線状に延在しているときに、第1のらせん状リンク連結体140と第2のらせん状リンク連結体150が、互いに直接的に接触しなければよい。さもなくば、チェーン110を曲げることができないからである。
【0045】
このような第1のらせん状リンク連結体140と第2のらせん状リンク連結体150の連結は、連結部材を介して行われる。
【0046】
図8は、一例のチェーンにおける、連結部材を介して連結された状態の第1および第2のリンクを示すパース図である。また、
図9は、一例のチェーンにおける、複数の連結部材を介する複数の第1および第2のリンクの連結を説明するための分解斜視図である。さらにまた、
図10Aは、
図2に示すS1-S1線に沿った一例のチェーンの断面図である。そして、
図10Bは、
図2に示すS2-S2線に沿った一例のチェーンの断面図である。
【0047】
図8~
図10Bに示すように、一例のチェーン110は、連結部材として、第1および第2のピン160、162を有する。この第1および第2のピン160、162を介して、第1のらせん状リンク連結体140における第1のリンク120と第2のらせん状リンク連結体150における第2のリンク130が連結されている。
【0048】
第1のピン160は、第1のリンク120を回動可能に支持しつつ、第2のリンク130を回動可能に支持する。具体的には、第1のピン160は、基端および先端の一方で、第1のリンク120を第1の回動中心線C1を中心にして回動可能に支持する。また、第1のピン160は、基端および先端の他方で、第2のリンク130を第3の回動中心線C3を中心にして回動可能に支持する。このような第1のピン160による支持により、第1のリンク120の第1の回動中心線C1と第2のリンク130の第3の回動中心線C3が同一直線上に位置する。
【0049】
また、第1のピン160は、連続する2つの第1のリンク120それぞれを第1の回動中心線C1を中心にして回動可能に支持する。これにより、連続する2つの第1のリンク120それぞれが、互いに対して、第1の回動中心線C1を中心にして回動可能に連結する。それとともに、第1のピン160は、連続する2つの第2のリンク130それぞれを第3の回動中心線C3を中心にして回動可能に支持する。これにより、連続する2つの第2のリンク130それぞれが、互いに対して、第3の回動中心線C3を中心にして回動可能に連結する。すなわち、第1のピン160は、2つの第1のリンク120と2つの第2のリンク130を回動可能に支持している。
【0050】
第2のピン162も、第1のリンク120を回動可能に支持しつつ、第2のリンク130を回動可能に支持する。具体的には、第2のピン162は、基端および先端の一方で第1のリンク120を第2の回動中心線C2を中心にして回動可能に支持する。また、第2のピン162は、第2の基端および先端の他方で、第2のリンク130を第4の回動中心線C4を中心にして回動可能に支持する。このような第2のピン162による支持により、第1のリンク120の第2の回動中心線C2と第2のリンク130の第4の回動中心線C4が同一直線上に位置する。
【0051】
また、第2のピン162は、連続する2つの第1のリンク120それぞれを第2の回動中心線C2を中心にして回動可能に支持する。これにより、連続する2つの第1のリンク120それぞれが、互いに対して、第2の回動中心線C2を中心にして回動可能に連結する。それとともに、第2のピン162は、連続する2つの第2のリンク130それぞれを第4の回動中心線C4を中心にして回動可能に支持する。これにより、連続する2つの第2のリンク130それぞれが、互いに対して、第4の回動中心線C4を中心にして回動可能に連結する。すなわち、第2のピン162は、2つの第1のリンク120と2つの第2のリンク130を回動可能に支持している。
【0052】
なお、一例のチェーン110において、第1および第2のピン160、162は、同一形状を備える。
【0053】
第1および第2のピン160、162に回動可能に支持されるために、
図9に示すように、第1および第2のリンク120、130それぞれには、第1および第2のピン160、162がそれぞれ挿入される2つの貫通穴120a、130aが形成されている。第1のリンク120において、一方の貫通穴120aが第1の回動中心線C1の延在方向に貫通し、他方の貫通穴120aが第2の回動中心線C2の延在方向に貫通している。第2のリンク130において、一方の貫通穴130aが第3の回動中心線C3の延在方向に貫通し、他方の貫通穴130aが第4の回動中心線C4の延在方向に貫通している。このような貫通穴120aに第1および第2のピン160、162が挿入されることにより、第1のピン160が第1の回動中心線C1を中心にして回動可能に第1のリンク120を支持するとともに、第2のピン162が第2の回動中心線C2を中心にして回動可能に第1のリンク120を支持する。同様に、貫通穴130aに第1および第2のピン160、162が挿入されることにより、第1のピン160が第3の回動中心線C3を中心にして回動可能に第2のリンク130を支持するとともに、第2のピン162が第4の回動中心線C4を中心にして回動可能に第2のリンク130を支持する。
【0054】
なお、第1および第2のピン160、162の先端には、第1および第2のピン160、162が第1および第2のリンク120、130から抜け落ちないように、止め輪164が取り付けられている。また、一例のチェーン110において、
図10Aおよび
図10Bに示すように、第1および第2のピン160、162それぞれに、ローラ166がブッシュ168を介して取り付けられている。なお、ローラ166およびブッシュ168は、必要に応じて、その両方が設けられてもよいし、両方が省略されてもよい。また、必要に応じて、ローラ166のみが設けられてもよい。さらに、第1および第2のピン160、162の第1および第2のリンク120、130からの抜け止めに関して、止め輪164の使用に限定されず、例えば割ピンなどを使用してもよい。さらには、他の部品を使用することなく、例えばかしめ加工などにより、第1および第2のピン160、162と第1および第2のリンク120、130を結合してもよい。
【0055】
また、一例のチェーン110において、複数の第1および第2のピン160、162それぞれは、2つの第1のリンク120と2つの第2のリンク130それぞれを回動可能に支持している。これと異なり、第1および第2のピン160、162は、第1のリンク120と第2のリンク130に一体的に設けられてもよい。
【0056】
図10Aおよび
図10Bに示すように、第1のリンク120それぞれは、一方に連結する他の第1のリンク120に対して内側に配置される内側部分と、他方に連結する他の第1のリンク120に対して外側に配置される外側部分とを備える。同様に、第2のリンク130それぞれも、一方に連結する他の第2のリンク130に対して内側に配置される内側部分と、他方に連結する他の第2のリンク130に対して外側に配置される外側部分とを備える。例えば、第1のリンク120の内側部分と第2のリンク130の内側部分にブッシュ168が一体的に設けられ、第1および第2のピン160、162が、ブッシュ168内を通過しつつ、第1のリンク120の外側部分と第2のリンク130の外側部分に一体的に設けられてもよい。すなわち、ブッシュ168が第1および第2のリンク120、130それぞれの内側部分に回動不可能に支持された状態で、第1および第2のリンク120、130それぞれの外側部分に回動不可能に支持されている第1および第2のピン160、162が、ブッシュ168に回動可能に支持されている。
【0057】
なお、第1および第2のピン160、162を第1および第2のリンク120、130それぞれに一体的に設ける方法として、例えば「しまりばめ」などがある。「しまりばめ」について簡単に説明すると、まず、第1および第2のリンク120、130に貫通穴が設けられる。それらの貫通穴に第1および第2のピン160、162が圧入される。その結果として、貫通穴に第1および第2のピン160、162が回動不可能に支持される。
【0058】
図11A~
図11Dそれぞれは、異なる方向に曲がる一例のチェーンの一部分を示す斜視図である。
【0059】
図11Aおよび
図11Bに示すように、第2の回動中心線C2(C2A)を中心にして第1のリンク120(120A)が幅方向(X軸方向)の一方側または他方側に回動すると、対応する第2のリンク130(130A)が、第2の回動中心線C2(C2A)と同一直線上に位置する第4の回動中心線C4(C4A)を中心にして同方向に回動する。
【0060】
なお、本明細書では、第1のリンクと第2のリンクがあって、一方に対する他方の相対位置が実質的に一定で維持されている場合、すなわち一方に対して他方が相対的に移動することができない場合、これらの第1のリンクと第2のリンクの間に「対応関係」があるとしている。一例のチェーン110においては、
図8に示すように、共通の第1および第2のピン160、162によって支持されている第1のリンク120と第2のリンク130が対応関係にある。
【0061】
また、
図11Cおよび
図11Dに示すように、第1の回動中心線C1(C1B)を中心にして第1のリンク120(120B)が厚さ方向(Y軸方向)の一方または他方に回動すると、対応する第2のリンク130(130B)が、第1の回動中心線C1(C1B)と同一直線上に位置する第3の回動中心線C3(C3B)を中心にして回動する。
【0062】
このように第1のリンク120と対応する第2のリンク130が同期して回動することにより、チェーン110は、その延在方向(Z軸方向)視で、幅方向(X軸方向)および厚さ方向(Y軸方向)に曲がることができる。すなわち、一例のチェーン110は、その延在方向視で、4方向に曲がることができる。それにより、チェーン110は、進行方向を自由に変更することができる。その結果、チェーン110は、直線経路はもちろんのこと、複雑に曲がる複雑な経路に沿って移動することができる、すなわちスプロケット10に巻回することができる。また、チェーン110は、らせん構造、すなわち周期構造であるので、スプロケット10は、チェーン110に対して4方向から係合することができる。
【0063】
このようならせん構造のチェーン110と係合するために、本実施の形態に係るスプロケット10は、下記の特徴を備える。
【0064】
図12Aおよび
図12Bは、スプロケットの右前方斜視図および左前方斜視図である。また、
図13Aおよび
図13Bは、スプロケットの右側面図および左側面図である。さらに、
図14は、スプロケットの正面図である。そして、
図15Aおよび
図15Bそれぞれは、異なる視点から見た、スプロケットの分解斜視図である。なお、
図12A~
図14には、モータ(図示せず)などの動力源とスプロケット10とを連結し、スプロケット10を回転駆動するシャフトDSが示されている。なお、スプロケット10は、動力源ではなく、シャフトDSを介して負荷に連結されてもよい。
【0065】
図12A~
図15Bに示すように、本実施の形態に係るスプロケット10は、第1のスプロケット歯12aを備える円盤状の第1の回転体12と、第2のスプロケット歯14aを備える円盤状の第2の回転体14とを有する。
【0066】
具体的には、第1の回転体12は、スプロケット10の回転中心線C0を中心にして回転する円盤状の第1の本体部12bと、第1の本体部12bの外周に沿って間隔をあけて設けられた複数の第1のスプロケット歯12aとを含んでいる。第2の回転体14は、回転中心線C0を中心にして回転する円盤状の第2の本体部14bと、第2の本体部14bの外周に沿って間隔をあけて設けられた複数の第2のスプロケット歯14aとを含んでいる。
【0067】
また、第1のスプロケット歯12aと第2のスプロケット歯14aは、スプロケット10の回転中心線C0の延在方向(X軸方向)の位置が異なる。すなわち、第1のスプロケット歯12aと第2のスプロケット歯14aは、回転中心線C0の延在方向に互いに間隔をあけて離れている。
【0068】
また、本実施の形態の場合、スプロケット10は、第1の回転体12の第1の本体部12bと第2の回転体14の第2の本体部14bとの間に配置され、第1の回転体12と第2の回転体14を離間させる円柱状のスペーサ16を備える。このスペーサ16により、第1のスプロケット歯12aと第2のスプロケット歯14aとが、スプロケット10の回転中心線C0の延在方向に互いに離れる。第1の回転体12と第2の回転体14は、例えばねじ(図示せず)などを介してスペーサ16に固定されている。
【0069】
さらに、本実施の形態の場合、スプロケット10は、詳細は後述するが、スプロケット10に係合したチェーン110をガイドする円環状のガイド部材18を備える。
【0070】
なお、本実施の形態の場合、スプロケット10は、複数の部品から作製されているが、一部品として作製されることも可能である。また、第1の回転体12、第2の回転体14、スペーサ16、およびガイド部材18のいずれかが一部品として一体化されてもよい。
【0071】
また、第1の回転体12、第2の回転体14、およびスペーサ16それぞれは、モータ(図示せず)などの動力源に連結されたシャフトDSが挿通される貫通穴12c、14c、16aを備えている。シャフトDSが回転すると、第1および第2の回転体12、14、すなわち第1および第2のスプロケット歯12a、14aが同期回転する。
【0072】
スプロケット10の第1および第2のスプロケット歯12a、14aは、らせん構造のチェーン110の第1および第2のリンク120、130に係合する。
【0073】
図16Aおよび
図16Bは、一例のチェーンが係合した状態のスプロケットの右側面図および左側面図である。なお、
図16Aおよび
図16Bにおいては、スプロケット10のガイド部材18と、チェーン110における第1および第2のリンク120、130以外の構成要素が、省略されている。
【0074】
また、
図16Aおよび
図16Bに示すように、チェーン110の幅方向(U軸方向)とスプロケット10の回転中心線C0の延在方向(X軸方向)が平行になるように、スプロケット10がチェーン110に係合している。なお、チェーン110は周期構造であるので、チェーン110の高さ方向(V軸方向)とスプロケット10の回転中心線C0の延在方向(X軸方向)が平行になるように、スプロケット10がチェーン110に係合することも可能である。
【0075】
図16Aに示すように、スプロケット10の複数の第1のスプロケット歯12aには、チェーン110の第1のリンク120と第2のリンク130が交互に接触している。すなわち、第1のリンク120に接触する第1のスプロケット歯12aと第2のリンク130に接触する第1のスプロケット歯12aが交互に、スプロケット10の回転方向に並んでいる。
【0076】
なお、厳密に言えば、本実施の形態の場合、第1のスプロケット歯12aは、チェーン110における一部の第1のリンク120と一部の第2のリンク130とに接触する。
【0077】
図17は、一例のチェーンにおける一周期分の第1および第2のリンクと第1および第2のスプロケット歯との接触を示す斜視図である。
【0078】
図17および
図5A~
図6Cに示すように、一周期分の連続する4つの第1のリンク120において第1のスプロケット歯12a間に一部分が存在する第1のリンク120(120C)に対して、第1のスプロケット歯12aは接触する。同様に、一周期分の連続する4つの第2のリンク130において第1のスプロケット歯12a間に一部分が存在する第2のリンク130(130C)に対して、第1のスプロケット歯12aは接触する。
【0079】
図16Aおよび
図17に示すように、スプロケット10の複数の第1のスプロケット歯12aそれぞれは、スプロケット10の正転方向R1にチェーン110の第1および第2のリンク120、130と接触する第1の接触部12dを備える。本実施の形態の場合、第1の接触部12dは、正転方向1に向きつつスプロケット10の外方向に向いた平面である。
【0080】
また、
図16Aおよび
図17に示すように、スプロケット10の複数の第1のスプロケット歯12aそれぞれの第1の接触部12dは、前進するチェーン110における第1および第2のリンク120、130の後端面120b、130bに接触する。なお、本明細書では、スプロケット10の正転方向R1によって移動するチェーン110の方向を前進方向FDとしている。
【0081】
その一方、
図16Aに示すように、スプロケット10の複数の第1のスプロケット歯12aそれぞれは、スプロケット10の逆転方向R2(すなわち正転方向R1と逆方向)に、チェーン110の第1および第2のリンク120、130に接触しない。例えば、第1のリンク120に正転方向R1に接触している第1のスプロケット歯12aは、逆転方向R2に第2のリンク130に接触しない。そのために、複数の第1のスプロケット歯12aそれぞれは、逆転方向R2側に、第1および第2のリンク120、130との接触を回避するための第1の逃げ部12eを備える。本実施の形態の場合、第1の逃げ部12eは、逃げ面である。したがって、第1のスプロケット歯12aそれぞれは、第1のリンク120と第2のリンク130の両方と同時に接触することがない、すなわち第1のリンク120と第2のリンク130に挟持されることがない。なお、このような第1の逃げ部12eを第1のスプロケット歯12aが備える理由については後述する。
【0082】
図16Bに示すように、スプロケット10の複数の第2のスプロケット歯14aには、チェーン110の第1のリンク120と第2のリンク130が交互に接触している。すなわち、第1のリンク120に接触する第2のスプロケット歯14aと第2のリンク130に接触する第2のスプロケット歯14aが交互に、スプロケット10の回転方向に並んでいる。
【0083】
なお、厳密に言えば、本実施の形態の場合、第2のスプロケット歯14aは、チェーン110における一部の第1のリンク120と一部の第2のリンク130とに接触する。
【0084】
図16Bおよび
図17に示すように、一周期分の連続する4つの第1のリンク120において第2のスプロケット歯14a間に一部分が存在する第1のリンク120(120D)に対して、第2のスプロケット歯14aは接触する。同様に、一周期分の連続する4つの第2のリンク130において第2のスプロケット歯14a間に一部分が存在する第2のリンク130(130D)に対して、第2のスプロケット歯14aは接触する。
【0085】
図16Bおよび
図17に示すように、スプロケット10の複数の第2のスプロケット歯14aそれぞれは、スプロケット10の逆転方向R2にチェーン110の第1および第2のリンク120、130と接触する第2の接触部14dを備える。本実施の形態の場合、第2の接触部14dは、逆転方向R2に向きつつスプロケット10の外方向に向いた平面である。
【0086】
また、
図16Bに示すように、スプロケット10の複数の第2のスプロケット歯14aそれぞれの第2の接触部14dは、前進するチェーン110における第1および第2のリンク120、130の前端面120c、130cに接触する。
【0087】
その一方、
図16Bに示すように、スプロケット10の複数の第2のスプロケット歯14aそれぞれは、スプロケット10の正転方向R1(すなわち逆転方向R2と逆方向)に、チェーン110の第1および第2のリンク120、130に接触しない。例えば、第2のリンク130に逆転方向R2に接触している第2のスプロケット歯14aは、正転方向R1に第1のリンク120に接触しない。そのために、複数の第2のスプロケット歯14aそれぞれは、正転方向R1側に、第1および第2のリンク120、130との接触を回避するための第2の逃げ部14eを備える。本実施の形態の場合、第2の逃げ部14eは、逃げ面である。したがって、第2のスプロケット歯14aそれぞれは、第1のリンク120と第2のリンク130の両方と同時に接触することがない、すなわち第1のリンク120と第2のリンク130に挟持されることがない。なお、このような第2の逃げ部14eを第2のスプロケット歯14aが備える理由については後述する。
【0088】
ここで、
図16Aおよび
図16Bに示すように、第1および第2のスプロケット歯12a、14aそれぞれが異なる回転方向側に第1および第2の逃げ部12e、14eを備える理由について説明する。そのために、本実施の形態と異なる比較例1、2を挙げる。
【0089】
本実施の形態と異なり、第1および第2のスプロケット歯12a、14aそれぞれの同一方向側(例えば正転方向R1側)に第1および第2の逃げ部12e、14eが設けられている場合を比較例1として挙げる。比較例1の場合、スプロケット10に取り付けられた状態のチェーン110は、その延在方向にがたつき、その結果、スプロケット10とチェーン110との間の動力伝達効率が低下する。
【0090】
また、本実施の形態と異なり、第1および第2のスプロケット歯12a、14aそれぞれが第1および第2の逃げ部12e、14eを備えていない場合を比較例2として挙げる。この比較例2の場合、第1および第2のスプロケット歯12a、14aそれぞれは、スプロケット10の回転方向にチェーン110の第1および第2のリンク120、130の両方に同時に接触する。すなわち、第1および第2のスプロケット歯12a、14aそれぞれは、第1および第2のリンク120、130に挟持される。
【0091】
スプロケットと係合するチェーン110は、変形可能ならせん構造であるので、少しでも曲がると第1のリンク120と第2のリンク130の間の距離が変化する。これは、コイルスプリングが曲がると、そのピッチが変化することと類似している。
【0092】
例えば、
図16Aおよび
図16Bに示すようにスプロケット10の径方向に延在する回動中心線C2、C4を中心にして第1および第2のリンク120、130が少しでも回動すると(例えば、チェーン110にテンションを付与したとき)、スプロケット10の回転方向に連続する第1のリンク120と第2のリンク130が、互いに接近する。第1および第2の逃げ部12e、14eがない比較例2の場合には、互いに接近した第1のリンク120と第2のリンク130が、その間の第1のスプロケット歯12aを強い力で挟持し続ける可能性がある。その結果、比較例2の場合、チェーン110がスプロケット10からスムーズに離間せず、スプロケット10とチェーン110との間の動力伝達効率が低下する可能性がある。また、チェーン110におけるスプロケット10に係合する直前の第1および第2のリンク120、130が第1および第2のスプロケット歯12a、14aに乗り上げ、チェーン110がスプロケット10から外れる可能性がある。
【0093】
このような比較例1、2を考慮して、
図16Aおよび
図16Bに示すように、本実施の形態の場合、第1のスプロケット歯12aは逆転方向R2側に第1の逃げ部12eを備え、第2のスプロケット歯14aは正転方向R1側に第2の逃げ部14eを備えている。すなわち、第1のスプロケット歯12aそれぞれは、その間に位置する第1および第2のリンク120、130(120C、130C)の部分に対して正転方向R1にのみ接触する。また、第2のスプロケット歯14aそれぞれは、その間に位置する第1および第2のリンク120、130(120D、130D)の部分に対して逆転方向R2にのみ接触する。これにより、チェーン110は、その延在方向にがたつくことなくスプロケット10に係合することができる。また、変形可能ならせん構造のチェーン110は、スムーズにスプロケット10から離間することができ、且つスプロケット10から外れにくくなる。
【0094】
なお、本実施の形態の場合、
図16Aに示すように、スプロケット10の第1のスプロケット歯12aは、チェーン110の第1および第2のリンク120、130に対して、正転方向R1側の部分「全体」にわたって接触しない。また、
図16Bに示すように、第2のスプロケット歯14aは、第1および第2のリンク120、130に対して、逆転方向R2側の部分「全体」にわたって接触しない。
【0095】
具体的には、第1のスプロケット歯12aの歯先側部分(外周側部分)における正転方向R1側部分(すなわち第1の接触部12d)が第1および第2のリンク120、130に接触する一方、歯元部分(中心側部分)における正転方向R1側部分は第1および第2のリンク120、130に接触していない。すなわち、第1のスプロケット歯12aの歯元部分における正転方向R1側に、第1および第2のリンク120、130との接触を回避する逃げ部12fが設けられている。また、第2のスプロケット歯14aの歯先側部分における逆転方向R2側の部分(すなわち第2の接触部14d)が第1および第2のリンク120、130に接触する一方、歯元部分における逆転方向R2側の部分は第1および第2のリンク120、130に接触していない。すなわち、第2のスプロケット歯14aの歯元部分における逆転方向R2側に、第1および第2のリンク120、130との接触を回避する逃げ部14fが設けられている。
【0096】
また、本実施の形態の場合、
図16Aに示すように、隣接する2つの第1のスプロケット歯12aの間に位置するスプロケット10(第1の回転体12)の歯底部分も、第1および第2のリンク120、130に接触していない。すなわち、隣接する2つの第1のスプロケット歯12aの間に位置するスプロケット10の歯底部分にも第1および第2のリンク120、130との接触を回避する逃げ部12gが設けられている。同様に、
図16Bに示すように、隣接する2つの第2のスプロケット歯14aの間に位置するスプロケット10(第2の回転体14)の歯底部分にも、第1および第2のリンク120、130との接触を回避する逃げ部14gが設けられている。
【0097】
第1のスプロケット歯12aの歯元部分における正転方向R1側部分、隣接する2つの第1のスプロケット歯12aの間の歯底部分、第2のスプロケット歯14aの歯元部分における逆転方向R2側部分、および隣接する2つの第2のスプロケット歯14aの間に歯底部分それぞれに設けられた逃げ部12f、12g、14f、14gによっても、らせん構造のチェーン110は、スムーズにスプロケット10から離間することができ、且つスプロケット10から外れにくくなる。
【0098】
なお、第1および第2の逃げ部12e、14eおよび逃げ部12f、12g、14f、14gの詳細な形状は、第1および第2のリンク120、130の形状に加えて、スプロケット10の回転方向の切替、回転方向の切替によるチェーンの張った部分と緩んだ部分の入れ替わり、チェーンに作用する重力などを考慮して決定される。
【0099】
上述したように、正転方向R1に向いた第1のスプロケット歯12aの第1の接触部12dと逆転方向R2に向いた第2のスプロケット歯14aの第2の接触部14dにより、チェーン110は、その延在方向に変位することなく(がたつくことなく)スプロケット10に係合する。これに対して、スプロケット10の回転中心線C0の延在方向(X軸方向)のチェーン110の変位は、第1の回転体12とガイド部材18とによって抑制されている。
【0100】
図18は、一例のチェーンと係合した状態のスプロケットの部分断面図である。
【0101】
図18には、一周期分の連続する4つの第1のリンク120(120C~120F)が示されている。上述したようにまた
図17に示すように、第1のリンク120(120C)に対して、第1のスプロケット歯12aはスプロケット10の逆転方向R2に接触している。また、別の第1のリンク120(120D)に対して、第2のスプロケット歯14aは正転方向R1に接触している。すなわち、これらの2つの第1のリンク120(120C、120D)は、第1および第2のスプロケット歯12a、14aによって駆動される。
【0102】
残りの2つの第1のリンク120(120E、120F)は、スプロケット10の第1の回転体12とガイド部材18とによってガイドされている。具体的には、
図18に示すように、一方の第1のリンク120(120E)は、第1の回転体12と第2の回転体14との間に位置し、第1の回転体12の内側面12hに対してスプロケット10の回転中心線C0の延在方向(X軸方向)に対向している。他方の第1のリンク120(120F)は、第2の回転体14の外側面に取り付けられたガイド部材18の内側面18aに対して回転中心線C0の延在方向に対向している。したがって、複数の第1のリンク120から形成される第1のらせん状リンク連結体140は、第1の回転体12の内側面12hとガイド部材18の内側面18aとによってガイドされ、これらの間を移動する。したがって、第1のらせん状リンク連結体140は、回転中心線C0の延在方向の変位が抑制されている。その結果、第1のリンク120(120C、120D)において、第1および第2のスプロケット歯12a、14aにおける第1および第2の接触部12d、14dからの脱落が抑制されている。
【0103】
同様に、第2のリンク130(130E、130F)も、スプロケット10の第1の回転体12とガイド部材18とによってガイドされている。したがって、複数の第2のリンク130から形成される第2のらせん状リンク連結体150は、第1の回転体12の内側面12hとガイド部材18の内側面18aとの間を移動し、回転中心線C0の延在方向(X軸方向)の変位が抑制されている。その結果、第2のリンク(130C、130D)において、第1および第2のスプロケット歯12a、14aにおける第1および第2の接触部12d、14dからの脱落が抑制されている。
【0104】
なお、チェーン110がらせん構造であるために、スプロケット10に係合可能ならせん方向が一義的に決まる。本実施の形態の場合、
図1Aおよび
図1Bに示すように、第1および第2のらせん状リンク構造体140、150が前方から見て時計回り方向に回転しつつ前方に向かって延在するように、チェーン110をスプロケット10に係合する必要がある。二重らせん構造のチェーン110を撚り線とみなすと、スプロケット10の回転中心線C0の延在方向に見た場合、スプロケット10に係合した状態のチェーン110のおける第1および第2のらせん状リンク連結体140、150はS撚りである。
図13Bおよび
図16Bに示すように、スプロケット10に係合可能ならせん方向を示すマーカー14hが、第2の回転体14の外側表面に形成されている。なお、らせん方向を示すマーカーは、第2の回転体14に加えてまたは代わって、他の部材、例えば第1の回転体12の外側表面に設けてもよい。このようなマーカー14hにより、ユーザは、チェーン110をスプロケット10に適切に取り付けることができる。
【0105】
以上のような本実施の形態によれば、複数のリンクがらせん状に連結するらせん構造のチェーンに係合可能なスプロケットを実現することができる。
【0106】
なお、本開示の実施の形態に係るスプロケットに係合可能なチェーンは、
図2~
図11Dに示す一例のチェーン110に限らない。
【0107】
図19Aおよび19Bは、別例のチェーンが係合した状態の別の実施の形態に係るスプロケットの左前方斜視図および右前方斜視図である。
【0108】
図19Aおよび
図19Bに示すように、別の実施の形態に係るスプロケット210は、第1および第2のスプロケット歯の形状が異なるものの、上述の実施の形態に係るスプロケット10と、機能的には実質的に同一である。そのため、別の実施の形態に係るスプロケット210の構成の詳細な説明は省略し、そのスプロケット210と係合する別例のチェーン310について説明する。
【0109】
図2~
図11Dに示す一例のチェーン110の場合、第1のらせん状リンク連結体140を形成する複数の第1のリンク120は、1種類である。また、第2のらせん状リンク連結体150を形成する複数の第2リンク130も、1種類である。これに対して、別例のチェーン310は、第1のらせん状リンク連結体を形成する複数の第1のリンクが、形状が異なる複数種類のリンクであって、第2のらせん状リンク連結体を形成するする複数の第2のリンクが、形状が異なる複数の種類のリンクである。その他については、別例のチェーン310は、一例のチェーン110とほとんど同じである。
【0110】
図20は、別例のチェーンの一部分の斜視図である。また、
図21は、別例のチェーンの一部分の分解斜視図である。さらにまた、
図22A、
図22Bは、別例のチェーンにおける、互いに連結し合う複数の第1および第2のリンク(第1および第2のらせん状リンク連結体)それぞれの正面図である。そして、
図23A、
図23Bは、
図20に示すS3-S3、S4-S4線それぞれに沿った別例のチェーンの断面図である。
【0111】
図20~
図23Bに示すように、別例のチェーン310において、第1のらせん状リンク連結体340は、形状の異なる複数種類の第1のリンク320、322から形成されている。また、第2のらせん状リンク連結体350は、形状の異なる複数種類の第2のリンク330、332から形成されている。
【0112】
具体的には、
図21および
図22Aに示すように、第1のリンク322は、第1のリンク320に比べて小さい。また、相対的に小さい第1のリンク322は、その全体が、第1のリンク320の内側に配置されている。さらに、第1のリンク320、322は、交互に連結され、第1のらせん状リンク連結体340を形成している。
【0113】
同様に、
図21および
図22Bに示すように、第2のリンク332は、第2のリンク330に比べて小さい。また、相対的に小さい第2のリンク332は、その全体が、第2のリンク330の内側に配置されている。さらに、第2のリンク330、332は、交互に連結され、第2のらせん状リンク連結体350を形成している。
【0114】
なお、別例のチェーン310の場合、第1のリンク320と第2のリンク330は同一形状を備え、第1のリンク322と第2のリンク332は同一形状を備える。すなわち、別例のチェーン310は、2種類のリンクから構成されている。
【0115】
また、
図23Aおよび
図23Bに示すように、第1のリンク320、322と第2のリンク330、332は、第1の回動中心線C1と第3の回動中心線C3とが同一直線上に位置しつつ、第2の回動中心線C2と第4の回動中心線C4が同一直線上に位置するように、第1および第2のピン360、362に連結且つ支持されている。
【0116】
図19Aおよび
図19Bに示すように、別例のチェーン310における第1および第2のリンク320、330に対して、スプロケット210の第1のスプロケット歯212aは正転方向R1のみに接触する。また、第1および第2のリンク322、332に対して、第2のスプロケット歯214aは逆転方向R2のみに接触する。
【0117】
図24Aおよび
図24Bは、さらに別例のチェーンが係合した状態のさらに別の実施の形態に係るスプロケットの左前方斜視図および右前方斜視図である。
【0118】
図24Aおよび
図24Bに示すように、さらに別の実施の形態に係るスプロケット410は、第1および第2のスプロケット歯の数、大きさ、形状などが異なるもの、上述の実施の形態に係るスプロケット10と、機能的には実質的に同一である。そのため、別の実施の形態に係るスプロケット410の構成の詳細な説明は省略し、そのスプロケット410と係合するさらに別例のチェーン510について説明する。
【0119】
一例のチェーン110においては、複数の第1のリンク120それぞれは、
図5Bに示すように、互いに直交する第1の回動中心線C1と第2の回動中心線C2を備える。また、
図6Bに示すように、複数の第2のリンク130それぞれは、互いに直交する第3の回動中心線C3と第4の回動中心線C4を備える。これに対して、
図24Aおよび
図24Bに示すさらに別例のチェーン510においては、第1のリンクそれぞれにおける第1および第2の回動中心線は90度と異なる角度で交差し、第2のリンクそれぞれにおける第3および第4の回動中心線も90度と異なる角度で交差する。その他については、一例のチェーン110とほとんど同じである。したがって、この異なる点を中心にして、さらに別例のチェーン510について説明する。
【0120】
図25は、さらに別例のチェーンの一部分の斜視図である。また、
図26は、さらに別例のチェーンの一部分の分解斜視図である。さらにまた、
図27A、
図27Bは、さらに別例のチェーンにおける、互いに連結し合う複数の第1および第2のリンク(第1および第2のらせん状リンク連結体)それぞれの正面図である。そして、
図28は、さらに別例のチェーンにおける、複数の連結部材を介する複数の第1および第2のリンクの連結を説明するための分解斜視図である。
【0121】
図25~
図28に示すように、さらに別例のチェーン510において、第1のらせん状リンク連結体540は、同一形状を備える複数の第1のリンク520が連結して形成されている。また、第2のらせん状リンク連結体550は、同一形状を備える複数の第2のリンク530が連結して形成されている。さらに別例のチェーン510においては、第1および第2のリンク520、530は同一形状である。すなわち、さらに別例のチェーン510は、1種類のリンクから構成されている。
【0122】
図26および
図27Aに示すように、第1のリンク520それぞれは、第1および第2の回動中心線C1、C2を中心にして回動する。具体的には、第1のリンク520それぞれは、第1の回動中心線C1を中心にして一方に連結する他の第1のリンク520に対して回動するとともに、第2の回動中心線C2を中心にして他方に連結する他の第1のリンクに520に対して回動する。
図27Aに示すように、第1の回動中心線C1と第2の回動中心線C2は、チェーン510の延在方向(W軸方向)視で実質的に60度の角度で交差する。
【0123】
このような第1のリンク520によれば、連続する6個の第1のリンク520が、第1のらせん状リンク連結体540の1周期分に相当する。
【0124】
図26および
図27Bに示すように、第2のリンク530それぞれは、第3および第4の回動中心線C3、C4を中心にして回動する。具体的には、第2のリンク530それぞれは、第3の回動中心線C3を中心にして一方に連結する他の第2のリンク530に対して回動するとともに、第4の回動中心線C4を中心にして他方に連結する他の第2のリンク530に対して回動する。
図27Bに示すように、第3の回動中心線C3と第4の回動中心線C4は、チェーン510の延在方向(W軸方向)視で実質的に60度の角度で交差する。
【0125】
このような第2のリンク530によれば、連続する6個の第2のリンク530が、第2のらせん状リンク連結体550の1周期分に相当する。
【0126】
また、
図28に示すように、第1のリンク520と第2のリンク530は、第1の回動中心線C1と第3の回動中心線C3とが同一直線上に位置しつつ、第2の回動中心線C2と第4の回動中心線C4が同一直線上に位置するように、第1および第2のピン560、562に連結且つ支持されている。
【0127】
なお、さらに別例のチェーン510は、チェーン510の延在方向(W軸方向)視で、6方向に曲がることができる。
【0128】
図24Aおよび
図24Bに示すように、さらに別例のチェーン510における第1および第2のリンク520、530に対して、スプロケット410の第1のスプロケット歯412aは正転方向R1のみに接触する。また、第1および第2のリンク320、330に対して、第2のスプロケット歯414aは逆転方向R2のみに接触する。
【0129】
補足すると、チェーンの延在方向視において、第1の回動中心線と第2の回動中心線が交差する角度と、第3の回動中心線と第4の回動中心線が交差する角度は、90度や60度に限らず、任意の角度であってもよい。ただし、これらの角度は、その整数倍した値が360度となるような角度が好ましい。すなわち、第1および第2のらせん状リンク連結体の1周期分が整数個の第1および第2のリンクで形成されるのが好ましい。これにより、対応するスプロケットを設計しやすくなる。
【0130】
また、上述の実施の形態のスプロケット10の場合、第1および第2のスプロケット歯12a、14aの第1および第2の接触部12d、14dは平面である。また、平面状の第1および第2の接触部12d、14dと接触するチェーンの第1および第2のリンクの部分も平面である。しかしながら、本開示の実施の形態はこれに限らない。例えば、スプロケットの第1および第2の接触部は、曲面であってもよい。この場合、曲面状の第1および第2の接触部と接触するチェーンの第1のリンクと第2のリンクの部分も曲面であってもよい。また例えば、第1および第2の接触部は、スプロケットの回転中心線の延在方向の中央に、凹部(例えば溝)が設けられた形状であってもよい。この場合、第1および第2の接触部と接触する第1および第2のリンクの部分には、凹部と係合する凸部(例えば、溝と係合する突条部)が設けられる。第1および第2の接触部の凹部と第1および第2のリンクの凸部が係合することにより、チェーンの回転中心線の延在方向について、スプロケットに対するチェーンの変位が抑制される。この場合、ガイド部材を省略することができる。
【0131】
さらに、上述の実施の形態の場合、
図16Aおよび
図16Bに示すように、スプロケット10において、第1のスプロケット歯12aの歯元部分(内周側部分)における正転方向R1側部分、隣接する2つの第1のスプロケット歯12aの間の歯底部分、第2のスプロケット歯14aの歯元部分における逆転方向R2側部分、および隣接する2つの第2のスプロケット歯14aの間に歯底部分それぞれには、チェーン10の第1および第2のリンク120、130との接触を回避する逃げ部12f、12g、14f、14gが設けられている。しかしながら、本開示の実施の形態はこれに限らない。これらのスプロケットの部分は、らせん構造のチェーンのリンクの形状によっては接触してもよい。言い換えると、これらのスプロケットの部分にリンクが接触する場合であっても、そのリンクがスプロケットに対してチェーンがスムーズに係合および離間できる形状を備えるのであれば、これらのスプロケットの部分に逃げ部を設けなくてもよい。
【0132】
すなわち、本開示の実施の形態に係るスプロケットは、広義には、複数のリンクがらせん状に連結するらせん構造のチェーンと係合可能なスプロケットであって、前記チェーンの前記リンクと係合する複数の第1のスプロケット歯と、前記第1のスプロケット歯に対して前記スプロケットの回転中心線の延在方向に間隔をあけて離れ、前記チェーンの前記リンクと係合する複数の第2のスプロケット歯と、を含み、前記第1のスプロケット歯それぞれが、前記スプロケットの正転方向側に前記チェーンの前記リンクと接触する第1の接触部を備えつつ、逆転方向側に前記チェーンの前記リンクとの接触を回避する第1の逃げ部を備え、前記第2のスプロケット歯それぞれが、前記スプロケットの前記逆転方向側に前記チェーンの前記リンクと接触する第2の接触部を備えつつ、前記正転方向側に前記チェーンの前記リンクとの接触を回避する第2の逃げ部を備える。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本開示は、複数のリンクがらせん状に連結するらせん構造のチェーンと係合するスプロケットに適用可能である。
【符号の説明】
【0134】
10 スプロケット
12a 第1のスプロケット歯
14a 第2のスプロケット歯
110 チェーン(一例のチェーン)
120 リンク(第1のリンク)
130 リンク(第2のリンク)
C0 回転中心線
R1 正転方向
R2 逆転方向
【要約】
【課題】複数のリンクがらせん状に連結するらせん構造のチェーンに係合可能なスプロケットを実現する。
【解決手段】スプロケット10は、チェーン110のリンク120、130と係合する複数の第1のスプロケット歯12aと、第1のスプロケット歯12aに対してスプロケット10の回転中心線C0の延在方向に間隔をあけて離れ、リンク120、130と係合する複数の第2のスプロケット歯14aとを含んでいる。第1のスプロケット歯12aそれぞれが、スプロケット10の正転方向R1側にリンク120、130と接触する第1の接触部を備えつつ、逆転方向R2側にリンク120、130との接触を回避する第1の逃げ部を備える。第2のスプロケット歯14aそれぞれが、スプロケット10の逆転方向R2側にリンク120、130と接触する第2の接触部を備えつつ、正転方向R1側にリンク120、130との接触を回避する第2の逃げ部を備える。
【選択図】
図1A