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特許7511183機能デバイス、および、機能デバイスの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】機能デバイス、および、機能デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/84 20230101AFI20240628BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240628BHJP
   H10K 59/122 20230101ALI20240628BHJP
   H10K 50/115 20230101ALI20240628BHJP
   H10K 50/844 20230101ALI20240628BHJP
   H10K 71/12 20230101ALI20240628BHJP
   H10K 71/13 20230101ALI20240628BHJP
   H10K 71/40 20230101ALI20240628BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240628BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20240628BHJP
【FI】
H10K50/84
H10K50/10
H10K59/122
H10K50/115
H10K50/844
H10K71/12
H10K71/13
H10K71/40
G09F9/30 365
G02B1/18
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020156387
(22)【出願日】2020-09-17
(65)【公開番号】P2022050029
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 修平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英博
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-108737(JP,A)
【文献】特開2003-229260(JP,A)
【文献】特開2009-200061(JP,A)
【文献】国際公開第2009/147838(WO,A1)
【文献】特開2004-288469(JP,A)
【文献】国際公開第2020/085183(WO,A1)
【文献】特開2012-216683(JP,A)
【文献】実開昭63-161361(JP,U)
【文献】特開2006-171365(JP,A)
【文献】特開2016-207352(JP,A)
【文献】特開2007-005056(JP,A)
【文献】国際公開第2011/067895(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0026941(KR,A)
【文献】特開2003-229261(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0033841(US,A1)
【文献】特開2010-056012(JP,A)
【文献】国際公開第2009/113239(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/84
H10K 50/10
H10K 59/122
H10K 50/115
H10K 50/844
H10K 71/12
H10K 71/13
H10K 71/40
G09F 9/30
G02B 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面部に撥液部および前記撥液部よりも撥液性が小さい低撥液部を有するバンクと、
前記バンクによって規定された領域に位置し、かつ、前記撥液部と接する第1の機能層と、
前記低撥液部に接し、かつ、前記第1の機能層を覆う第2の機能層と、
を備え
前記表面部は、前記バンクの側面部を含み、前記側面部の一部に前記低撥液部が設けられている機能デバイス。
【請求項2】
前記撥液部のフッ素原子の濃度は、前記低撥液部のフッ素原子の濃度よりも高い、
請求項1に記載の機能デバイス。
【請求項3】
前記撥液部のフッ素原子の濃度は、5atom%以上10atom%以下であり、
前記低撥液部のフッ素原子の濃度は、0atom%以上5atom%未満である、
請求項2に記載の機能デバイス。
【請求項4】
前記撥液部のシリコン原子の濃度は、前記低撥液部のシリコン原子の濃度よりも高い、
請求項1に記載の機能デバイス。
【請求項5】
前記撥液部のシリコン原子の濃度は、5atom%以上10atom%以下であり、
前記低撥液部のシリコン原子の濃度は、0atom%以上5atom%未満である、
請求項4に記載の機能デバイス。
【請求項6】
前記第1の機能層の材料であるインクに対する前記撥液部の接触角は、20度以上70度以下であり、
前記第2の機能層の材料であるインクに対する前記低撥液部の接触角は、0度以上30度以下である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の機能デバイス。
【請求項7】
前記低撥液部の表面の粗さは、前記撥液部の表面の粗さよりも大きい、
請求項1から6のいずれか一項に記載の機能デバイス。
【請求項8】
前記第1の機能層は、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、および、有機半導体層の中の1つ以上の層を含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載の機能デバイス。
【請求項9】
前記第2の機能層は、電極層、封止層、および、保護層の中の1つ以上の層を含む、
請求項1から8のいずれか一項に記載の機能デバイス。
【請求項10】
前記撥液部と前記低撥液部との間の境界は、前記第1の機能層と前記第2の機能層との間に位置する、
請求項1から9のいずれか一項に記載の機能デバイス。
【請求項11】
基板にバンクを形成するステップと、
前記バンクによって規定された領域に位置し、かつ、前記バンクの表面部の撥液部に接する第1の機能層を形成するステップと、
前記表面部に含まれる前記バンクの側面部の一部に、前記撥液部よりも相対的に撥液性が小さい低撥液部を形成するステップと、
前記低撥液部に接し、かつ、前記第1の機能層を覆う第2の機能層を形成するステップと、
を備える機能デバイスの製造方法。
【請求項12】
前記撥液部には、フッ素原子またはシリコン原子を含む撥液性成分が含まれており、
前記低撥液部を形成するステップは、前記撥液部に含まれる撥液性成分の濃度を減少させて前記撥液部の一部から前記低撥液部を生成するステップである、
請求項11に記載の機能デバイスの製造方法。
【請求項13】
前記低撥液部を形成するステップは、前記撥液部の一部にプラズマ照射を行うステップである、
請求項12に記載の機能デバイスの製造方法。
【請求項14】
前記低撥液部を形成するステップは、前記撥液部の一部に紫外光の照射を行うステップである、
請求項12に記載の機能デバイスの製造方法。
【請求項15】
前記バンクを形成するステップは、前記表面部に前記撥液部を形成するステップを含み、
前記低撥液部を形成するステップは、前記バンクおよび前記第1の機能層が形成された前記基板を収容部に収容し、前記バンクを加熱し、かつ、収容部の真空度を小さくするステップである、
請求項12に記載の機能デバイスの製造方法。
【請求項16】
前記バンクを形成するステップは、前記表面部に前記撥液部を形成するステップを含み、
前記低撥液部を形成するステップは、前記撥液部の一部を削り、前記バンクの内部を露出させるステップである、
請求項11に記載の機能デバイスの製造方法。
【請求項17】
前記低撥液部を形成するステップは、サンドブラストにより前記撥液部の一部を削るステップである、
請求項16に記載の機能デバイスの製造方法。
【請求項18】
前記低撥液部を形成するステップは、機械的な研磨により、前記撥液部の一部を削るステップである、
請求項16に記載の機能デバイスの製造方法。
【請求項19】
前記第2の機能層を形成するステップは、前記第1の機能層と前記第2の機能層との間に前記撥液部と前記低撥液部との間の境界が位置するように前記第2の機能層を形成するステップである、
請求項11から18のいずれか一項に記載の機能デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機能デバイス、および、機能デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷工法で様々な電子デバイスを形成するための検討が盛んに行われている。印刷工法は必要な位置にのみ必要な量のインクを塗布する手法であるため、真空蒸着およびスパッタリング法の手法等に比べて材料の利用効率が高い。
【0003】
印刷工法の中でも、印刷対象物に非接触で、かつ、所望のパターンがオンデマンドに形成可能なインクジェット法が注目されている。
【0004】
印刷工法で形成される電子デバイスとして、例えば、導電性のインクを用いた配線、半導体インクを用いたトランジスタ、および、発光材料を用いたディスプレイデバイス等がある。
【0005】
特許文献1には、電子デバイスの一例である有機ELデバイスが開示されている。特許文献1の有機ELデバイスが有するバンクは、正孔輸送層および有機発光層の材料であるインクをバンクで規定された領域内に保持するために、比較的大きい撥液性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4990415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
撥液性が大きいバンクを備える有機ELデバイスを製造する際、発光層よりも上側に位置する透明陰極、および、透明封止膜等の機能層がインクジェット法等の塗布プロセスで形成されると、当該機能層の膜厚の均一性の低下を招く。
【0008】
同様に、撥液性が大きいバンクを備える有機トランジスタデバイスを製造する場合において、ソース電極、ドレイン電極、および、保護膜等の機能層がインクジェット法等の塗布プロセスで形成されると、当該機能層の膜厚の均一性の低下を招く。
【0009】
均一性が高い膜が形成されない場合、有機ELデバイス、および、有機トランジスタデバイス等の機能デバイスの品質が低下してしまう。
【0010】
本開示は、材料を有効に使用でき、かつ、高い品質を確保できる機能デバイスおよび機能デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様に係る機能デバイスは、表面部に撥液部および前記撥液部よりも撥液性が小さい低撥液部を有するバンクと、前記バンクによって規定された領域に位置し、かつ、前記撥液部と接する第1の機能層と、前記低撥液部に接し、かつ、前記第1の機能層を覆う第2の機能層と、を備え、前記表面部は、前記バンクの側面部を含み、前記側面部の一部に前記低撥液部が設けられている。
【0012】
本開示の一態様に係る機能デバイスの製造方法は、基板にバンクを形成するステップと、前記バンクによって規定された領域に位置し、かつ、前記バンクの表面部の撥液部に接する第1の機能層を形成するステップと、前記表面部に含まれる前記バンクの側面部の一部に、前記撥液部よりも相対的に撥液性が小さい低撥液部を形成するステップと、前記低撥液部に接し、かつ、前記第1の機能層を覆う第2の機能層を形成するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、材料を有効に使用でき、かつ、高い品質を確保できる機能デバイスおよび機能デバイスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】特許文献1に開示されている有機ELデバイスの構造を示す断面図
図2】本開示の実施形態に係る機能デバイスの構造を示す断面図
図3】基板に電極層およびバンクが形成された状態にある実施形態に係る中間製造物を示す断面図
図4】実施形態に係る中間製造物にCFプラズマが照射されている様子を示す図
図5】発光領域にインクがたまっている状態にある実施形態に係る中間製造物を示す断面図
図6】発光層が形成された状態にある実施形態に係る中間製造物を示す断面図
図7】実施形態に係る中間製造物に遮蔽マスクを介してOプラズマが照射されている様子を示す図
図8】電極層が形成された状態にある実施形態に係る中間製造物を示す断面図
図9A】本開示の変形例1に係る機能デバイスの構造を示す断面図
図9B】本開示の変形例1に係る別の構造を有する機能デバイスの構造を示す断面図
図10】本開示の変形例2に係る機能デバイスの構造を示す断面図
図11】本開示の変形例3に係る機能デバイスの構造を示す断面図
図12】基板に電極層およびバンクが形成された状態にある実施例1に係る中間製造物を示す断面図
図13】赤色発光層が形成された状態にある実施例1に係る中間製造物を示す断面図
図14】実施例1に係る中間製造物に遮蔽マスクを介してOプラズマが照射されている様子を示す図
図15】実施例1に係る機能デバイスの構造を示す断面図
図16】基板に電極層およびバンクが形成された状態にある実施例2に係る中間製造物を示す断面図
図17】実施例2に係る中間製造物にCFプラズマが照射されている様子を示す図
図18】赤色発光層が形成された状態にある実施例2に係る中間製造物を示す断面図
図19】真空乾燥機に収容された状態にある中間製造物を示す断面図
図20】実施例2に係る機能デバイスの構造を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、「機能デバイス」という用語は、目的とする機能を、物理現象を利用して出力するデバイスの総称である。例えば、機能デバイスとして、有機ELデバイス、量子ドット発光デバイス、色変換フィルターデバイス、有機トランジスタデバイス、および、センサーデバイス等が挙げられる。
【0016】
(技術的背景)
機能デバイス、特に、発光デバイスの製造に用いられる材料である発光材料および導電材料等の機能性材料は非常に高価であるため、材料のロスを極力小さくすることが望ましい。
【0017】
印刷工法は、必要な位置にのみ必要な量のインクを塗布できる手法であるため、真空蒸着およびスパッタリング法の手法等に比べて材料の利用効率が高い。さらに、印刷工法は、真空中ではなく大気中で成膜することが可能である。このため、印刷工法は、真空設備の稼働にかかるエネルギーが不要であるため、稼働エネルギーを小さくする観点でも望ましい。なお、本明細書において、インクとは、所定の層の材料であって液体状の材料を意味する。
【0018】
印刷工法には、スクリーン印刷や凸版印刷、凹版印刷、およびインクジェット法等がある。特に、インクジェット法が注目されており、カラーフィルター、有機ELディスプレイ、および、量子ドットディスプレイ等の表示装置をインクジェット法で形成する手法の開発が盛んに行われている。
【0019】
次世代のディスプレイとして、無機材料の量子ドット材料を発光層として用いたディスプレイがある。このディスプレイの開発が盛んに行われている。
【0020】
量子ドットは、非常に小さな、具体的には、直径が2から10nm(言い換えると、原子10から50個程度)のサイズを有する特殊な半導体である。このように、サイズが微小である物質は、比較的サイズが大きい場合に示す性質とは異なる。
【0021】
量子ドットでは、バンドギャップのサイズは、量子の粒径が変更されるだけで制御可能である。量子ドットの発光波長はバンドギャップのサイズに依存するので、量子ドットの発光波長は非常に精密に調節可能である。すなわち、量子ドットの発光波長は、量子の粒径を変更するだけで変更可能である。より詳細には、量子の粒径が小さくなるほど、量子ドットの発光波長は青色側にシフトし、量子の粒径が大きくなるほど赤色側にシフトする。
【0022】
発光波長の半値幅は非常に小さく数十nm以下である。赤、青、および、緑、それぞれの発光波長の半値幅が小さいため、発光波長が高色域特性を示す。その結果、ディスプレイデバイスとしての性能が飛躍的に向上する。
【0023】
量子ドットは、コア、コアの周りに形成されているシェルと呼ばれる層、および、シェルの周りに形成されたリガンドから構成されている。コアの材料の代表的なものは、カドミウム-セレン系、インジウム-リン系、銅-インジウム-硫黄系、銀-インジウム-硫黄系等の無機材料、および、ペロブスカイト構造を有する無機材料である。シェルの材料の代表的なものは、硫化亜鉛等である。
【0024】
量子ドットは、シェルの周囲にリガンドが形成されることで、インクとしての安定性を実現している。このような量子ドット材料で形成された発光デバイスには、量子ドット材料の電子が光エネルギーにより励起されて発光するフォトルミネッセンスデバイス、および、電気エネルギーにより励起されて発光するエレクトロルミネッセンスデバイスがある。
【0025】
フォトルミネッセンスデバイスは、量子ドットディスプレイの一例であるマイクロLEDディスプレイのカラーフィルターとして使用される。
【0026】
エレクトロルミネッセンスデバイスは、量子ドットディスプレイの一例であって、陽極と陰極の間に量子ドット材料が薄膜化されて形成された量子ドット発光ディスプレイに使用されている。
【0027】
フォトルミネッセンスデバイスまたはエレクトロルミネッセンスデバイスが用いられる量子ドットディスプレイは、有機ELディスプレイと比べて輝度が非常に高く、屋外での視認性に優れている。このため、携帯電話および車載用途のディスプレイ、並びに、ヘッドマウントディスプレイ等の用途での活用が期待されている。これらのディスプレイは200ppi(pixels per inch)以上の画素解像度が必要になると予想される。
【0028】
フォトルミネッセンスデバイスおよびエレクトロルミネッセンスデバイス等の発光デバイスを形成する発光材料は、大気中の水分の影響で発光性能が劣化する。このため、これらのデバイスを製造する際、発光層を形成した後に封止膜を形成する必要がある。封止膜は、シリコン窒化膜、および、アクリル樹脂膜やエポキシ樹脂膜等の積層膜から形成されていることが多い。シリコン窒化膜は、CVD(Chemical Vapor Deposition)と言われる真空プロセスで形成される。積層膜は、インクジェット法で形成される。
【0029】
以下の(1)~(3)の理由で、機能デバイスを、真空プロセスを用いずに全て層や膜をインクジェット法等の塗布プロセスで形成する手法の開発が盛んに行われている。
【0030】
(1)材料ロス
蒸着、スパッタリング法、およびCVD等の真空プロセスを用いて機能デバイスを製造する場合、ロスする材料が多い。機能デバイスを構成する膜の材料は非常に高価であるため、ロスする材料を極力少なくすることが望ましい。
【0031】
(2)コスト
真空設備は稼働コストが高いので、真空プロセスを用いる場合、機能デバイスの製造に必要なコストが高くなる。
【0032】
(3)低温での製造
機能デバイスをプラスチックフィルム等のフレキシブル基板上に形成する手法の開発が盛んに行われている。フレキシブル基板の耐熱性は低いため、基板としてフレキシブル基板を用いる場合、低温で機能デバイスを製造する必要がある。
【0033】
材料の使用効率を上げること、大気圧下で機能デバイスを製造することで製造コストを削減すること、および、プラスチックフィルムが耐え得る程度の温度で機能デバイスを製造することを目的として、機能デバイスの全ての層を塗布プロセスで形成するための検討が行われている。
【0034】
<塗布プロセスの問題点>
図1は、特許文献1に開示されている有機ELデバイス1(機能デバイスの一例)の構造を示す断面図である。
【0035】
有機ELデバイス1は、TFTパネル10、陽極12、正孔注入層13、正孔輸送層14、有機発光層15、バンク16、電子注入層18、透明陰極20、および、透明封止膜22を備えている。
【0036】
有機ELデバイス1の製造において、有機発光層15等の機能層はインクジェット法で形成されている。具体的には、有機ELデバイス1は、以下の手順で製造される。
(1)TFTパネル10の上に、陽極(電極)12、および、正孔注入層13を形成する。
(2)正孔注入層13の上に画素領域を規定するバンク16を形成する。
(3)バンク16で規定された領域内にインクジェット法で正孔輸送層14、および、有機発光層15を形成する。
(4)有機発光層15の上に、電子注入層18、および、透明陰極20を真空プロセスで形成する。
(5)電子注入層18、および、透明陰極20を覆うように透明封止膜22を形成する。
【0037】
なお、バンク16は、正孔輸送層14、および、有機発光層15の材料であるインクを所定の領域に保持するべく、一定値以上の撥液性を有する必要がある。このため、バンク16は、比較的大きい撥液性を有している。
【0038】
図1で示されている構造を有する有機ELデバイス1を製造する際に、透明陰極20、および、透明封止膜22をインクジェット法で形成する場合、透明陰極20および透明封止膜22の成膜性能が著しく低下する。
【0039】
具体的には、バンク16は比較的大きい撥液性を有しているので、インクで形成された塗布膜がバンク16によって撥かれてしまい、透明陰極20、および、透明封止膜22の膜厚の均一性の低下を招くとともに、透明封止膜22の被覆性の低下を招く。
【0040】
特に、透明陰極20の膜厚の均一性が低下した場合、有機ELデバイス1の抵抗値がばらついてしまい、電気特性の悪化を引き起こす。その結果、有機ELデバイス1の発光特性の低下を招く可能性がある。また、透明封止膜22の被覆性が低下した場合、透明封止膜22の薄い部分から大気中の水分等が有機ELデバイス1内に浸入し、有機発光層15に悪影響を及ぼす。その結果、有機ELデバイス1の発光特性が経時的に低下していく。
【0041】
他の機能デバイスについて説明する。有機トランジスタデバイスが、比較的大きい撥液性を有しているバンクを備えている場合、ソース電極、ドレイン電極、および、保護膜等の機能層をインクジェット法で形成する際に、バンク上に塗布された当該機能層のインクが撥かれてしまう。このため、当該機能層の均一性が低下する。その結果、有機トランジスタデバイスの品質が低下する。
【0042】
このように、機能デバイスをインクジェット法で形成する場合、バンクが比較的大きい撥液性を有することで、機能デバイスの品質低下を招くおそれがある。
【0043】
本開示の機能デバイスは、品質を確保しつつ、機能デバイスの多くの機能層を塗布プロセスで製造することができる。
【0044】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通する構成要素については同一の符号を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0045】
(実施形態)
図2は、本開示の実施形態に係る機能デバイス100の構造を示す断面図である。本明細書における断面図とは、鉛直面による機能デバイス100の断面図のことである。本実施形態において、機能デバイス100は、電界発光する有機ELデバイスであるとして説明する。
【0046】
機能デバイス100は、基板110、電極層120、バンク130、第1の機能層140、および、第2の機能層150を備えている。詳しくは、後述するが、本実施形態において、第1の機能層140は、発光層141から構成されている。なお、機能デバイス100は、発光層141で発光された光を機能デバイス100の上側から外部に向けて出射させるトップエミッション構造である。
【0047】
<基板110>
基板110の一方の面には、様々な層が積層されている。基板110の材料は、絶縁性を有する材料であればよく、透明な材料および不透明な材料のいずれであってもよい。基板110は、ガラスおよびポリイミド等のフレキシブルな樹脂シートであってもよい。
【0048】
<電極層120>
本実施形態において電極層120は、反射電極で構成されている。電極層120は基板110上に形成されている。電極層120の材料は、銀-パラジウム-銅合金、または、アルミニウム等の光学反射性が高い金属材料である。このため、機能デバイス100は、発光層141で発せられた光を効率よく機能デバイス100の外部に出射させることができる。
【0049】
<バンク130>
バンク130は、電極102の一部を覆うように形成されている。バンク130は、第1の機能層140が形成される領域を規定する。
【0050】
バンク130は、一般的に、撥液性が比較的大きくなるように形成されていることが多い。また、インクジェット法等の塗布プロセスで塗布されるインクは、粘度が低いことが多い。インクの粘度が低いことは、インクに含まれる固形分の濃度が低いことを意味する。すなわち、インクの溶剤を乾燥させた後に形成される層を一定以上の厚さにするためには、相応の量のインクを塗布する必要がある。
【0051】
例えば、塗布プロセスで発光層141のインク41(図5参照)を塗布した場合、塗布されたインクを、発光層141の形成に使用するためにはバンク130によって規定される領域(以下、発光領域と称す。)内にインク41を溜める必要がある。バンク130の撥液性が比較的小さければ、塗布されるインク41が発光領域から溢れてしまう。バンク130の撥液性が比較的大きければ、必要な量のインク41を発光領域に溜めることができる。このため、発光層141の厚さを十分な厚さとなるように形成する観点によれば、バンク130の撥液性が大きい方、つまり、濡れ性が小さい方が望ましい。ここで、濡れ性が小さいことは撥液性が大きいことを意味し、濡れ性が大きいことは撥液性が小さいことを意味する。
【0052】
しかしながら、バンク130の撥液性が比較的大きく、かつ、バンク130を覆う第2の機能層150がインクジェット法またはスクリーン印刷等の塗布プロセスで形成される場合、塗布される第2の機能層150のインクがバンク130で撥かれる。その結果、第2の機能層150の均一性の低下を招く。このため、発光層141の上側の層である第2の機能層150を均一性が高くなるように形成する観点によれば、バンク130の撥液性は小さい方、つまり、濡れ性が大きい方が望ましい。
【0053】
そこで、本開示の実施形態に係る機能デバイス100のバンク130は、撥液性が大きい部位と撥液性が小さい部位とを有する。以下、バンク130について詳細に説明する。
【0054】
バンク130は、表面部131、および、内部136を有する。表面部131は、内部136および電極層120の一部を覆っている。
【0055】
表面部131は、撥液部132および低撥液部134を有する。撥液部132は、表面部131のうちの第1の機能層140が接する部位である。撥液部132は、表面部131のうちの撥液部132を除く部位であり、かつ、第2の機能層150が接する部分である
【0056】
撥液部132の材料は、感光性の樹脂材料である。また、撥液部132には、撥液性成分であるフッ素化合物が含まれている。低撥液部134の材料は、撥液部132と同様、感光性の樹脂材料である。低撥液部134には、フッ素化合物が含まれていてもよいし、含まれていなくともよい。なお、感光性の樹脂材料は、具体的には、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、または、ポリイミド等の樹脂材料である。
【0057】
撥液部132のフッ素原子の濃度は、低撥液部134のフッ素原子の濃度よりも高い。具体的には、撥液部132のフッ素原子の濃度は、5atom%以上10atom%以下であり、低撥液部134のフッ素原子の濃度は、0atom%以上5atom%未満である。なお、フッ素原子濃度は、X線光電子分光分析装置(XPSまたはESCAとも称する)で測定することができる。
【0058】
このように、低撥液部134は、撥液部132よりも撥液性成分の濃度が低いため、低撥液部134は撥液部132よりも撥液性が小さい。
【0059】
第1の機能層140のインクに対する撥液部132の接触角は、20度以上70度以下、望ましくは、30度以上60度以下である。第2の機能層150のインクに対する低撥液部134の接触角は、0度以上30度以下、望ましくは0度以上20度以下である。ここで、接触角は、液体に対する濡れ性を示す値であり、接触角が大きいほど濡れ性が小さく、接触角が小さいほど濡れ性が大きくなる。なお、上述した撥液部132の接触角と、低撥液部134の接触角は、同じインクに対する接触角ではなく、互いに異なる物質を含むインクに対する値である。このため、実施形態に係る機能デバイス100が、撥液部132よりも撥液性が大きい低撥液部134を有することを認めることにはならない。
【0060】
低撥液部134における第1の機能層140と接する表面である表面135の粗さは、撥液部132の表面133の粗さよりも大きい。粗さが小さいほど、表面の摩擦係数が小さくなり、粗さが大きいほど表面の摩擦係数が大きくなる。
【0061】
内部136の材料は、感光性の樹脂材料、具体的には、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、または、ポリイミド等の樹脂材料である。
【0062】
<第1の機能層140>
第1の機能層140は、電極層120上であってバンク130によって規定された領域に位置しており、撥液部132と接している。
【0063】
本実施形態において、第1の機能層140は、発光層141から構成されている。
【0064】
発光層141は、赤色の光を発する赤色発光層141R、緑色の光を発する緑色発光層141G、および、青色の光を発する青色発光層141Bを備えている。
【0065】
発光層141の厚さは、例えば数10nmである。発光層141の厚さは、材料の種類、および、製造対象のデバイスの光学設計により異なるが、およそ20nm以上かつ100nm以下である。
【0066】
発光層141の材料は、フルオレン系の高分子有機化合物である。このフルオレン系の高分子有機化合物は、例えば、poly(9,9-dioctylfluorene-alt-benzothiadiazole)、いわゆる、F8BTである。
【0067】
<第2の機能層150>
第2の機能層150は、低撥液部134に接しており、第1の機能層140を覆っている。
【0068】
本実施形態において、第2の機能層150は、電極層151および封止層156から構成されている。
【0069】
電極層151は、透明電極で構成されている。電極層151は、バンク130の一部および発光層141を覆うように形成されている。電極層151の材料は、インジウム-スズ酸化物(ITO)である。電極層151は、高い光学透過性を有するので、発光層141で発せられた光が効率よく機能デバイス100の外部に出射させることができる。
【0070】
封止層156は、バンク130の少なくとも一部および電極層151を覆うように形成されている。なお、封止層156が、電極層151の下側に位置する発光層141を覆っているのはもちろんのことである。図2に示されているように、本実施形態において、封止層156は、バンク130で規定された複数の領域にまたがるように、いわゆる、ベタ層として形成されている。
【0071】
封止層156の材料は、感光性のエポキシ樹脂、または、アクリル樹脂等の樹脂材料である。
【0072】
機能デバイス100の発光層141は、水分の影響で劣化しやすい。封止層156は、大気中の水分から発光層141を保護する。
【0073】
なお、封止層156は、大気中の水分から、発光層141を保護できさえすれば、バンク130の一部を覆っているだけでもよい。
【0074】
上述した各層およびバンク130の材料は一例であり、これらの材料に限定されない。
【0075】
<機能デバイス100の製造方法>
本実施形態に係る機能デバイス100の製造方法について、図2から図8を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、機能デバイス100の製造途中に形成される物全体を、中間製造物と称する。機能デバイス100の製造方法は、次のステップS1~S5を備える。
【0076】
まず、基板110上に電極層120を形成する(ステップS1)。電極層120はスパッタリング法等の真空成膜法でアルミニウムまたは銀-パラジウム-銅合金等の材料を用いて形成する。
【0077】
次に、電極層120の一部を覆うようにバンク130を形成する(ステップS2)。ステップS2は、撥液性が比較的小さいバンク130を形成するステップS21と、当該バンク130の表面部131に撥液部132を形成するステップS22と、を有する。ここで、撥液性が比較的小さいバンク130とは、表面部131に撥液部132を有さず、かつ、内部136も比較的撥液性が小さいバンク130のことである。
【0078】
ステップS21において、感光性の樹脂材料を用いて、フォトリソグラフィ法で撥液性が小さいバンク130を形成する。感光性の樹脂材料は、上述したように、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、または、ポリイミド等の樹脂材料である。ステップS21は、次のステップS211~S214を含む。
【0079】
まず、紫外光の露光で硬化する感光性の樹脂材料を基板110上に塗布プロセスの一例であるスピンコート法で塗布する(ステップS211)。なお、塗布の条件であるスピンコート法における回転数は、必要なバンク130の高さに応じて調整される。
【0080】
次に、ホットプレート等を用いて塗布層のプリベークを行い、塗布された材料を乾燥させて溶剤成分を取り除く(ステップS212)。そして、所望のパターンが形成されたフォトマスクを介して紫外光の露光を行う(ステップS213)。ここで、感光性の樹脂材料の中には、紫外光が照射された露光部が硬化するネガ型材料と紫外光の未露光部が硬化するポジ型材料とがある。材料の種類によって適切な現像液を用いて未硬化部の除去を行う。そして、残ったパターンを硬化炉等でポストベークを行う(ステップS214)。これらのステップS211~S214により、撥液性が比較的小さいバンク130が形成される。その結果、中間製造物は、基板110に電極層120および撥液性が比較的小さいバンク130が形成された状態にある中間製造物を示す断面図である図3に示されている状態になる。図3に示されている中間製造物が有するバンク130は、撥液性が比較的小さい。
【0081】
次に、図2の中間製造物に対して、バンク130の表面部131に撥液部132を形成する(ステップS22)。本実施形態では、ステップS22において、フルオロカーボンガスを用いてプラズマ照射を行う。フルオロカーボンガスは、例えば、四フッ化炭素(CF)等のフッ素化合物である。以下の説明では、フルオロカーボンガスは四フッ化炭素(CF)であるとして説明する。この場合、図4に示されているように、CFプラズマ310により、フルオロカーボンガスが表面部131に向けて照射されることになる。図4は、中間製造物にCFプラズマ310が照射されている様子を示す図である。
【0082】
フルオロカーボンガスが表面部131に向けて照射されることで、CFプラズマ310によるフッ素化合物は表面部131に導入され、表面部131の撥液性が大きくなる。言い換えると、バンク130の表面部131は濡れ性が小さくなる。これにより、表面部131に撥液部132が形成される(図4参照)。
【0083】
次に、発光領域内に、第1の機能層140のインクを塗布することで、バンク130によって規定された領域に位置し、かつ、バンク130の表面部131の撥液部132に接する第1の機能層140を形成する(ステップS3)。本実施形態では、第1の機能層140は、発光層141のみから構成されるので、ステップS3は、発光層141を形成するステップS31のみを含む。ステップS31は、以下のステップS311~S313を含む。
【0084】
発光特性を有する高分子化合物および低分子化合物を溶解させたインクをインクジェット法で発光領域に塗布する(ステップS311)。ステップS311で塗布されるインクは、赤色発光層141Rのインク41R、緑色発光層141Gのインク41G、および、青色発光層141Bのインク41Bである。
【0085】
インク41において、当該高分子化合物および低分子化合物が有機溶剤を分散媒として分散している。ここで、有機溶剤(以下、単に溶剤と称することもある。)に対する高分子化合物および低分子化合物の濃度は、0.5重量パーセント以上10重量パーセント以下である。
【0086】
バンク130の表面部131には撥液部132が位置しているので、インク41が発光領域に塗布されると、図5に示されるように、発光領域にインク41が盛り上がる。よって、比較的多くの量のインク41を発光領域に溜めることができる。図5は、発光領域にインク41が溜まっている状態にある中間製造物を示す断面図である。
【0087】
インク41が塗布された後、インク41が塗布された基板110に対して、真空乾燥を実行する(ステップS312)。真空乾燥は、真空乾燥機210(図19参照)を用いて行う。真空乾燥機210は、中間製造物を収容可能な収容部211および収容部211内の真空度を下げる排気ポンプ212を備えている。
【0088】
真空乾燥は、基板110が収容された収容部211内を排気ポンプ212で減圧することで溶剤の蒸発を促進させる手法である。インクジェット法で塗布されるインク41は、ノズルでの溶剤乾燥を抑制するために沸点が比較的高い溶剤が用いられていることが多い。このため、早期に乾燥させるべく、真空乾燥が用いられることが多い。
【0089】
真空乾燥の条件は、例えば、収容部211の到達真空度が数Paであり、保持時間が数十分間である。ただし、発光層141のインク41に含まれる溶剤の沸点の高さにより、適切な到達真空度および保持時間の条件は異なるため、真空乾燥の条件は、必ずしも、到達真空度が数Pa、および、保持時間が数十分間であることに限られない。
【0090】
真空乾燥が実行された後、インク41を加熱する(ステップS313)。なお、ステップS313は、必要に応じて行われればよいので、ステップS31は、必ずしもステップS313を含んでいなくてもよい。
【0091】
その結果、図6に示されるように、発光層141R、141G、および、141Bが、それぞれ形成される。図6は、発光層141R、141G、および、141Bが形成された状態にある中間製造物を示す図である。なお、図6に示されている発光層141R、141G、および、141Bの厚さは、発光領域に溜められたインク41R、41G、および、41Bの量に応じた厚さとなる。
【0092】
次に、表面部131の一部に低撥液部134を形成する(ステップS4)。本実施形態では、撥液部132の一部の撥液性成分の濃度を下げて、当該一部から低撥液部134を生成する。
【0093】
具体的には、ステップS4において、図7に示されているように、遮蔽マスク330を介して、表面部131の一部に対して酸素ガス(O)を用いてプラズマ照射を行う。図7は、中間製造物に遮蔽マスク330を介してOプラズマ320が照射されている様子を示す図である。遮蔽マスク330を使用する理由は、発光層141にOプラズマ320が照射されないようにするためである。表面部131の一部とは、表面部131の大部分を占める撥液部132のうち、発光層141と接触している部位以外の部位のことである。
【0094】
プラズマ320が照射された部位はアッシングされ、当該部位からフッ素化合物が除去される。これにより、表面部131のうちのOプラズマ320が照射された部位のフッ素原子の濃度が減少する。すなわち、Oプラズマ320が照射された部位の撥液性が小さくなり、濡れ性が大きくなる。これにより、図7に示されているように、表面部131の大部分を占めていた撥液部132のうちのOプラズマ320が照射された部位が低撥液部134となる(図7参照)。ここで、撥液部132は、表面部131のうちの発光層141と接触している部位のみとなる。
【0095】
なお、Oプラズマ320が照射されたことで、低撥液部134の表面135は、撥液部132の表面133よりも粗くなる。
【0096】
次に、低撥液部134に接し、かつ、発光層141を覆う第2の機能層150を形成する(ステップS5)。本実施形態において、ステップS5は、電極層151を形成するステップS51、および、封止層156を形成するステップS52を含む。
【0097】
ステップS51において、バンク130の少なくとも一部、および、発光層141を覆うように電極層151を形成する。ここで、インジウム-スズ酸化物のナノ粒子が分散されたインクをインクジェット法で塗布し、真空乾燥等の手法で塗布されたインクの溶剤を乾燥させ、200℃程度でインクを加熱することで、図8に示されているように、電極層151が形成される。図8は、電極層151が形成された状態にある中間製造物を示す図である。
【0098】
ステップS51において、塗布されるインクの量は、インクを乾燥させた後の電極層151の厚さが所定の厚さとなるように決定される。
【0099】
ステップS52において、封止層156のインクを塗布することで、バンク130の少なくとも一部、および、電極層151を覆う封止層156を形成する。ステップS52は、ステップS521~S524を含む。
【0100】
まず、エポキシ樹脂材料またはアクリル樹脂材料を含むインクをインクジェット法で塗布する(ステップS521)。
【0101】
インクを塗布した後、塗布されたインクを一定時間放置する(ステップS522)。これにより、層が形成される。次に、形成された層に対してレベリングを行い、層の厚さを均一化させる(ステップS523)。
【0102】
続いて、均一化された層に紫外光を照射することで、当該層を硬化させる(ステップS524)。ステップS524において、照射する紫外光の波長は350nm以上400nm以下程度である。ステップS524において、メタルハライドランプを用いてもよいし、単一波長の紫外光を出射することができるLEDを用いてもよい。紫外光の照射量は、例えば、200mJ/cm以上1000mJ/cm以下である。
【0103】
バンク130には低撥液部134が形成されているので、ステップS5において、第2の機能層150のインクはバンク130で撥くことなく、均一に塗布できる。
【0104】
ステップS5が行われた結果、図2に示されている機能デバイス100が完成する。
【0105】
以上説明したように、本実施形態によれば、機能デバイス100は、表面部131に撥液部132および撥液部132よりも撥液性が小さい低撥液部134を有するバンク130を備えている。また、第1の機能層140は、撥液部132と接しており、第2の機能層150は、低撥液部134に接している。
【0106】
このため、第1の機能層140を覆う第2の機能層150を、塗布プロセスを用いて形成する際に、第2の機能層150のインクがバンク130によって撥かれない。よって、第2の機能層150の層の厚さの均一性を確保することができる。よって、第2の機能層150の均一性の低下に起因する機能デバイス100の品質の低下を防止できる。その結果、塗布プロセスを用いて第2の機能層150を形成する場合でも、高品質の機能デバイス100を製造できる。したがって、各層の材料を有効に使用でき、かつ、高い品質を確保することができる。
【0107】
さらに、第2の機能層150のインクがバンク130によって撥かれないので、ピンポールが無い第2の機能層150を形成しやすい。このため、第2の機能層150の封止層156の被覆性を高め、封止層156の被覆性の低下に起因する水分の第1の機能層140への侵入を防止できる。このため、機能デバイス100の経時的な信頼性を確保できる。
【0108】
さらに、バンク130は、撥液部132を有しているので、第1の機能層140を形成する際に、バンク130によって規定された領域に十分な量の第1の機能層140のインクを溜めることができる。よって、所望の厚さの第1の機能層140を形成しやすい。また、第1の機能層140のインクを溜めるために比較的高いバンク130を形成する必要がないので、機能デバイス100のサイズが大型化することなく、所望の厚さの第1の機能層140しやすくするとともに、機能デバイス100の品質を確保できる。また、比較的高いバンク130を形成する必要がないため、第2の機能層150の被覆性を低下させるリスクが小さくなる。
【0109】
塗布プロセスを用いて第2の機能層150を形成することで、真空プロセスを用いて形成する場合と比べて、稼働エネルギーを小さくできるので、機能デバイス100の製造にかかるコストを削減できる。
【0110】
また、塗布プロセスを用いて第2の機能層150を形成することで、真空プロセスと比べて低温で機能デバイス100を製造できるので、ガラス基板およびプラスチック基板等の耐熱性が低い基板を用いて、機能デバイス100を製造できる。よって、より多種の機能デバイス100を製造することができる。
【0111】
また、低撥液部134の表面135の粗さは、比較的大きい。より具体的には、低撥液部134の表面135の粗さは、撥液部132の表面133の粗さよりも大きい。よって、低撥液部134の表面135に接触するように形成される第2の機能層150の表面135に対する密着性が高まる。これにより、第2の機能層150による封止性が向上するので、外部から第1の機能層140への水分の侵入を防止でき、機能デバイス100の経時的な信頼性を確保することができる。
【0112】
なお、バンク130の内部136は、撥液部132と同一の材料で構成されていてもよい。すなわち、バンク130の内部136には、撥液性成分であるフッ素化合物が含まれていてもよい。この場合、内部136は、比較的撥液性が高い。また、ステップS21において、フッ素化合物を含有するアクリル樹脂材料を含むインクを用いて、バンク130が形成される。また、ステップS21において、フッ素化合物を含有するアクリル樹脂材料を含むインクを用いる場合、ステップS21を実行することで形成されるバンク130は、表面部131の全範囲が撥液部132で占められている状態となる。すなわち、表面部131にすでに撥液部132が形成されている。よって、ステップS21において、フッ素化合物を含有するアクリル樹脂材料を含むインクを用いる場合、ステップS2は、ステップS22を含まない。
【0113】
また、実施形態において、機能デバイス100は、必ずしもトップエミッション構造を有するものでなくてもよい。
【0114】
(変形例1)
以下、図9Aを参照しつつ、変形例1について、主に上述した実施形態と異なる点について説明する。図9Aは、変形例1に係る機能デバイス100の断面図である。
【0115】
変形例1に係る機能デバイス100が備える封止層156は、バンク130によって規定された領域毎に分断されている。機能デバイス100を構成する層の中で封止層156は層の厚さの多くを占める部分である。よって、機能デバイス100に変形応力(例えば曲げ応力)がかけられたときに、封止層156にかかる応力は大きくなり、封止層156が割れることがある。しかしながら、変形例1に係る機能デバイス100のように、封止層156が分断されていれば、その箇所で応力を緩和する作用が働き、封止層156の割れを抑制することが可能となる。
【0116】
変形例1に係る機能デバイス100の製造方法のステップS521では、バンク130の一部および電極層151上であって、発光領域に対応する領域に封止層156のインクを塗布する。その他の点については、変形例1に係る機能デバイス100の製造方法は、実施形態に係る機能デバイス100の製造方法と同様である。
【0117】
変形例1に係る機能デバイス100によれば、実施形態に係る機能デバイス100と同様の効果が得られる。
【0118】
また、変形例1において、図9Bのように、第2の機能層150は、電極層151および封止層156に加えて、封止層156上に位置する無機層158を含んでいてもよい。より詳しくは、電極層151およびバンク130の上に、封止層156と無機層158とが交互に積層されていてもよい。ここで、封止層156と無機層158との組み合わせを1対としたとき、第2の機能層150は、当該組み合わせをN対含んでいてもよい。Nは1以上の整数である。なお、封止層156および無機層158は、発光層141の上方部分と比べて、バンク130の上方部分の方が、層の厚さが薄い。
【0119】
無機層158の材料は、無機化合物である。
【0120】
図9Bに示されているように、機能デバイス100が、無機層158を有する場合、ステップS52は、ステップS521~S524に加えて、ステップS525を含む。ステップS525は、封止層156上にインクジェット法で無機層158を形成するステップである。さらに、無機層158上に封止層156を形成し、当該形成された封止層156上に無機層158を形成することを、封止層156と無機層158との対がN対形成されるまで行われる。
【0121】
図9Bに示されているように、第2の機能層150が無機層158を有する場合、第2の機能層150の水分透過性を小さくすることができる。このため、機能デバイス100の経時的な信頼性をより確実に確保できる。
【0122】
なお、図9Bに示されているように、第2の機能層150が封止層156と無機層158との対を複数有する場合、バンク130によって規定された領域毎に分断されている必要は必ずしもなく、繋がっていてもよい。
【0123】
(変形例2)
以下、図10を参照しつつ、変形例2について、主に上述した実施形態と異なる点について説明する。図10は、変形例2に係る機能デバイス100の断面図である。
【0124】
変形例2に係る機能デバイス100の第1の機能層140は、発光層141、正孔注入層142、正孔輸送層143、および、電子注入層144から構成されている。
【0125】
<正孔注入層142>
正孔注入層142は、電極層120上に位置している。正孔注入層142は、正孔を発光層141に注入する層である。正孔注入層142の材料は、ポリチオフェン系の材料等の有機材料である。具体的には、正孔注入層142の材料は、poly(3,4-ethylenedioxythiophene):poly(styrenesulfonate)、いわゆる、PEDOT:PSSである。PEDOT:PSSは、導電性高分子材料である。
【0126】
<正孔輸送層143>
正孔輸送層143は、正孔注入層142上に正孔注入層142を覆うように形成されている。正孔輸送層143は、正孔注入層142によって注入された正孔を発光層141に輸送する層である。また、正孔輸送層143は、電子注入層144によって注入された電子が、正孔注入層142に侵入するのを防止する層でもある。正孔輸送層143の材料は、例えば、poly(9,9-dioctylfluorene-co-N-(4-butylphenyl)-diphenylamine)、いわゆる、TFBである。
【0127】
<電子注入層144>
電子注入層144は、発光層141を覆うように形成されている。電子注入層144の材料は、酸化亜鉛等の透明な酸化物半導体である。
【0128】
次に、変形例2に係る機能デバイス100の製造方法について説明する。
【0129】
ステップS3は、上述したステップS31に加えて、ステップS301、S302、および、S321を備える。ステップS301は、ステップS2が完了した後、発光領域内に、正孔注入層142を形成するステップである。ステップS302は、ステップS301が完了した後、正孔注入層142を覆うように正孔輸送層143を形成するステップである。ステップS321は、ステップS31が完了した後、発光層141を覆うように電子注入層144を形成するステップである。
【0130】
ステップS301、S302、および、S321において、各層のインクを発光領域に塗布し、真空乾燥等の手法で塗布されたインクの溶剤を乾燥させ、必要に応じて基板110を加熱する。これにより、正孔注入層142、正孔輸送層143および電子注入層144が形成される。
【0131】
変形例2において、ステップS4では、遮蔽マスク330を介して、Oプラズマ320を照射することで、発光層141、正孔注入層142、正孔輸送層143および電子注入層144にOプラズマ320が照射されないようにする。
【0132】
その他、変形例2に係る機能デバイス100の製造方法は、実施形態に係る機能デバイス100の製造方法と同様である。なお、変形例2において、ステップS4が実行されることで、表面部131における、発光層141、正孔注入層142、正孔輸送層143および電子注入層144と接触している部位以外の部位が、低撥液部134となる。
【0133】
変形例2に係る機能デバイス100によれば、実施形態に係る機能デバイス100と同様の効果が得られる。
【0134】
(変形例3)
以下、図11を参照しつつ、変形例3について、主に上述した実施形態と異なる点について説明する。図11は、変形例3に係る機能デバイス100の断面図である。
【0135】
変形例3に係る機能デバイス100は、有機トランジスタデバイスである。図11に示されている機能デバイス100は、ボトムゲート構造およびトップコンタクト構造を有する有機トランジスタデバイスである。
【0136】
機能デバイス100の電極層120は、ゲート電極層121、および、ゲート絶縁層122から構成されている。また、機能デバイス100の第1の機能層140は、有機半導体層145から構成されている。第2の機能層150は、電極層151および保護層157から構成されており、電極層151は、ソース電極152およびドレイン電極153から構成されている。
【0137】
<ゲート電極層121>
ゲート電極層121は、基板110上に位置しており、ゲート電極層121の材料は、例えば、モリブデンである。
【0138】
<ゲート絶縁層122>
ゲート絶縁層122は、ゲート電極層121を覆う層であり、ゲート絶縁層122の材料は、例えば、オレフィンポリマーである。
【0139】
<有機半導体層145>
有機半導体層145は、ゲート絶縁層122を覆っており、バンク130によって規定された領域に撥液部132に接するように位置している。有機半導体層145の材料は、ペンタセンである。ペンタセンの他には、有機半導体層145の材料は、テトラセンおよびフタロシアニン系化合物等の低分子系有機半導体材料、ポリチオフェンおよびポリフェニレンビニレン等の高分子系有機半導体材料、並びに、カーボンナノチューブ等でもよい。
【0140】
<ソース電極152およびドレイン電極153>
ソース電極152およびドレイン電極153は、チャネルを形成するための電極である。ソース電極152およびドレイン電極153は、有機半導体層145の直上に、バンク130の少なくとも一部および有機半導体層145を覆うように位置している。ソース電極152およびドレイン電極153は、互いに一定の距離(例えば、数μm程度)を空け、かつ、対向するように配置されている。なお、ソース電極152とドレイン電極153との間にキャリアが流れることで、機能デバイス100は、半導体特性を示す。キャリアパスを長く確保するために、ソース電極152とドレイン電極153は、櫛歯状に形成されてもよい。ソース電極152およびドレイン電極153の材料は、例えば、金である。
【0141】
変形例3のようなトップコンタクト構造の有機トランジスタデバイスは、有機半導体層145の直上にソース電極152とドレイン電極153を配置するため、安定した半導体特性を示す。
【0142】
保護層157は、バンク130の少なくとも一部、ソース電極152、ドレイン電極153、および、有機半導体層145を覆っている。保護層157には、コンタクトホール400が形成されている。コンタクトホール400は、基板110から最も遠い側の保護層157の端部からドレイン電極153まで、保護層157を貫いている。コンタクトホール400が形成されていることで、ドレイン電極153と、別の機能デバイスの電極とを電気的に接続することができる。これにより、例えば、変形例3に係る機能デバイス100のドレイン電極153と、有機ELデバイスの電極とを電気的に接続して、有機ELデバイスの発光について変形例3に係る機能デバイス100で制御することができる。
【0143】
変形例3では、バンク130の内部136は、撥液部132と同一の材料で構成されている。バンク130の内部136および撥液部132の材料には、感光性の樹脂材料、および、撥液性成分であるフッ素化合物が含まれる。よって、内部136は、比較的撥液性が高い。
【0144】
<機能デバイス100の製造方法>
変形例3に係る機能デバイス100の製造方法は、上述したステップS1~S5を備えているが、有機ELデバイスと有機トランジスタデバイスとの相違点、および、内部136を構成する材料の相違点に関する内容については異なる。
【0145】
変形例3のステップS1において、モリブデンを材料として用い、かつ、スパッタリング法を利用して基板110上に層を形成し、フォトリソグラフィ法を利用して当該層を所望のパターンにパターニングすることで、ゲート電極層121を形成する。さらに、スピンコート法によりオレフィンポリマーを基板110およびゲート電極層121に塗布して層を形成し、当該層を加熱することで、ゲート絶縁層122を形成する。
【0146】
変形例3のステップS2は、フッ素化合物を含有する感光性のアクリル樹脂材料を含むインクを使用して比較的大きい撥液性を有するバンク130を形成すること、および、ステップS22を含まないこと以外は、実施形態のステップS2と同じである。
【0147】
変形例3のステップS3において、バンク130によって規定されている領域に、ペンタセンを有機溶剤に溶解することで生成されたインクをインクジェット法で塗布し、塗布されたインクに真空乾燥および加熱処理を施すことで有機半導体層145を形成する。
【0148】
変形例3のステップS4は、実施形態のステップS4と同じである。
【0149】
変形例3のステップS5において、まず、低撥液部134に接し、かつ、有機半導体層145を覆うソース電極152およびドレイン電極153を形成する。より具体的には、金のナノ粒子が分散されたインクを、インクジェット法で低撥液部134の一部および有機半導体層145に塗布することで、ソース電極152およびドレイン電極153を形成する。ここで、ソース電極152およびドレイン電極153を、互いに一定の距離を空けて、かつ、対向するように形成する。次に、ソース電極152、ドレイン電極153、および、低撥液部134を覆う保護層157を形成する。次に、保護層157にドレイン電極153を露出するためのコンタクトホール400を形成する。
【0150】
変形例3に係る機能デバイス100によれば、実施形態に係る機能デバイス100と同様の効果が得られる。
【0151】
なお、保護層157には、コンタクトホール400が形成されていなくてもよい。その場合、ステップS5において、コンタクトホール400は形成されない。
【0152】
(その他の変形例)
撥液性成分は、フッ素原子またはシリコン原子を含む化合物であればよい。すなわち、撥液性成分として、フッ素化合物に替えてシリコン化合物が用いられてもよい。この場合、撥液部132のシリコン原子の濃度は、低撥液部134のシリコン原子の濃度よりも高い。具体的には、撥液部132のフッ素原子の濃度は、5atom%以上10atom%以下であり、低撥液部134のフッ素原子の濃度は、0atom%以上5atom%未満である。撥液性成分として、フッ素化合物に替えてシリコン化合物が用いられる場合でも、第1の機能層140のインクに対する撥液部132の接触角は、20度以上70度以下、望ましくは、30度以上60度以下である。また、同様の場合、第2の機能層150のインクに対する低撥液部134の接触角は、0度以上30度以下、望ましくは0度以上20度以下である。
【0153】
撥液部132および低撥液部134に含まれている撥液性成分がシリコン化合物である場合でも、撥液性成分がフッ素化合物である場合と同様の効果が得られる。
【0154】
ステップS4は、撥液部132に含まれる撥液性成分の濃度を減少させて撥液部132の一部から低撥液部134を形成することができれば、プラズマ照射に替えて以下に示す(A)~(C)の処理が行われてもよい。
【0155】
(A)ステップS4において、バンク130および第1の機能層140が形成された基板110を、真空乾燥機210(図19参照)の収容部211に収容し、バンク130を加熱しつつ、収容部211の真空度を小さくしてもよい。例えば、収容部211の真空度は、10Paまで減圧される。
【0156】
CFプラズマ310によるフッ素化合物は表面部131の炭素原子と結合することで表面部131に導入される。バンク130の表面部131にCFプラズマ310により導入されたフッ素化合物と表面部131の炭素原子との結合は弱く不安定である。このため、フッ素化合物は経時的に表面部131(撥液部132)から離脱していく。バンク130の加熱と、バンク130の周囲の雰囲気を減圧することで、この離脱現象を加速させることができる。
【0157】
(B)ステップS4において、撥液部132の一部に紫外光の照射を行ってもよい。
【0158】
(C)ステップS4において、撥液部132の一部を削り、バンク130の内部136を露出させてもよい。これにより、撥液性が小さい内部136がバンク130の表面部131に位置するようになり、撥液性が小さい部位が表面部131に形成される。すなわち、低撥液部134を表面部131に形成していることになる。
【0159】
撥液部132の一部を削る際、サンドブラスト、および、機械的研磨等を行ってもよい。
【0160】
なお、ステップS4において、(B)及び(C)のいずれかの処理が行われた場合にも、低撥液部134の表面135の表面の粗さが撥液部132の表面133の表面の粗さよりも大きくなる。特に(C)の処理を行うことで表面粗さが大きく変化する。よって、第2の機能層150の表面135に対する密着性が高まり、第2の機能層150による封止性が向上するので、外部からの水分の侵入を防止でき、機能デバイス100の経時的な信頼性を確保することができる。
【0161】
なお、ステップS4において、バンク130の内部136の撥液性が比較的小さいことを前提として(A)および(C)の処理が行われる。実施形態のように、ステップS21において、バンク130の材料として、フッ素化合物またはシリコン化合物等の撥液性成分を含有しない樹脂材料を含むインクが用いられた場合、バンク130の内部136の撥液性が比較的小さくなる。
【0162】
なお、ステップS4において、第1の機能層140がダメージを受けない程度の小さい強度で、プラズマの照射または紫外光の照射を行ってもよい。この場合、ステップS4の処理が、遮蔽マスク330が用いられることなく実行される。
【0163】
ステップS211において、感光性の樹脂材料を、別の塗布プロセスであるスリットコートで塗布してもよい。この場合、塗布条件であるスリットコートの走査速度が必要なバンク130の高さに応じて調整される。
【0164】
バンク130の表面部131にCFプラズマ310を照射する前に、Oプラズマまたは大気圧プラズマを用いて電極層120をアッシングしてもよい。電極層120をアッシングするメリットは以下の2点である。
【0165】
(I)Oプラズマまたは大気圧プラズマ等でアッシングした場合、電極層120上の炭素原子が極めて少ない状態になる。CFプラズマ310によるフッ素化合物は表面部131の炭素原子と結合することで表面部131に導入される。このため、電極層120をアッシングすることで、フッ素化合物は、電極層120の表面には導入されにくくなり、その反面、樹脂材料で構成されているバンク130の表面部131に導入されやすくなる。
【0166】
(II)電極層120の表面にフッ素化合物が導入されると、電極層120の表面の撥液性が大きくなり、第1の機能層140のインクが電極層120の表面に塗布された際に撥かれてしまい、均一性が高い発光層141が形成できなくなる。言い換えると、電極層120をアッシングして、電極層120の表面の炭素原子の数を少なくしておくことで、CFプラズマ310の照射が行われたとしても、電極層120の表面の撥液性の上昇を抑制できるので、均一性が高い第1の機能層140を形成できる。
【0167】
機能デバイス100は、量子ドット発光デバイスであってもよい。この場合、発光層141の材料は、カドミウム-セレン系化合物が量子ドット状になった無機化合物等である。量子ドット材料は粒子の粒径に応じて発光色が変わり、粒径が大きいほど赤色に発光する。よって、赤色発光層141R、緑色発光層141G、および、青色発光層141Bのインク41R、41G、および、41Bは、それぞれ粒径の異なる材料(すなわち、量子ドット材料)を含む。
【0168】
また、ステップS311において、量子ドット状態になった無機化合物が分散されたインク41をインクジェット法等の塗布プロセスで塗布する。ここで、インク41は、カドミウム-セレン系の無機材料等を含む。これらのインク41は、カドミウム-セレン系の無機材料等が有機溶剤を分散媒として分散しており、その材料の濃度は0.5重量パーセント以上10重量パーセント以下である。
【0169】
発光層141のインク41として、インジウム-リン系、銅-インジウム-硫黄系、銀-インジウム-硫黄系等の材料、およびペロブスカイト構造を有する無機材料等のいずれかが分散されたインクが使用されてもよい。
【0170】
また、機能デバイス100は、発光色を変換する色変換フィルターデバイスであってもよい。この場合、機能デバイス100の第1の機能層140は、量子ドット材料で形成される層を含んでいる。量子ドット材料で形成される層はインクジェット法で形成することができる。
【0171】
また、機能デバイス100は、センサーデバイスであってもよい。この場合、機能デバイス100の第1の機能層140は、圧電材料で形成される層を含んでいる。なお、機能デバイス100がセンサーデバイスである場合、機能デバイス100が、電極として機能する電極層151を有することは言うまでもない。電極層151および圧電材料で形成される層は、インクジェット法により形成することができる。
【0172】
実施形態、変形例1および変形例2において、電極層151の上にシリコン窒化物で薄膜を形成した後に、封止層156を形成してもよい。
【0173】
第1の機能層140は、実施形態、および、変形例1~3に示された層に限らず、発光層141、正孔注入層142、正孔輸送層143、電子注入層144、および、有機半導体層145の中の1つ以上の層を含んでいればよい。
【0174】
また、第2の機能層150は、実施形態、および、変形例1~3に示された層に限らず、電極層151、封止層156、および、保護層157の中の1つ以上の層を含んでいればよい。
【0175】
(実施例1)
発明者は、上述した実施形態、並びに、変形例1から3、および、その他の変形例のいずれかの製造方法により、有機ELデバイスである機能デバイス100を製造した。以下、図12から図15を参照しつつ、機能デバイス100(つまり、有機ELデバイス)の製造について説明する。
【0176】
まず、基板110として、板厚が0.5mmであるAGC製のガラスを準備した。そして、銀-パラジウム-銅合金を材料として用い、かつ、スパッタリング法を利用して、基板110上に層を形成し、フォトリソグラフィ法を利用して所望のパターンにパターニングすることで、電極層120を形成した。
【0177】
次に、フッ素化合物を含有するアクリル樹脂材料であってAGC製の感光性のアクリル樹脂材料を含むインクをスピンコート法により基板110上に塗布し、塗布されたインクを100℃でプリベークして層を形成し、波長が365nmの紫外光を当該層に照射することで矩形状のパターンを形成し、さらにポストベークを行った。これにより、バンク130が形成された。なお、実施例1では、高さが1μmとなるようにバンク130を形成した。その結果、図12に示されている中間製造物が形成された。図12は、基板110に電極層120およびバンク130が形成された状態にある中間製造物を示す断面図である。
【0178】
図12に示されている中間製造物において、バンク130の表面部131にフッ素化合物が偏析していた。表面部131は撥液性が大きく、濡れ性が小さかった。すなわち、表面部131は、撥液部132によって占められていると言える。なお、インク41Rに対するバンク130の撥液部132の接触角は、20度以上70度以下、望ましくは30度以上60度以下となる。なお、内部136は比較的撥液性が大きい。
【0179】
次に、バンク130で規定された領域である発光領域に、インクジェット法で赤色発光層141Rの材料であるインク41Rを塗布した。
【0180】
そして、中間製造物を真空乾燥により乾燥させた。より詳しくは、インク41Rの周囲の雰囲気の圧力を下げて塗布したインク41Rの溶剤を乾燥させた。その結果、図13に示されているように、赤色発光層141Rが形成された。図13は、赤色発光層141Rが形成された状態にある中間製造物を示す断面図である。
【0181】
図14は、中間製造物に遮蔽マスクを介してOプラズマが照射されている様子を示す図である。
【0182】
赤色発光層141Rが形成された後、バンク130にOプラズマ320を照射した。このとき、赤色発光層141RにOプラズマ320が照射されないように遮蔽マスク330を介してOプラズマ320を照射した。この処理により、赤色発光層141Rが接していないバンク130の表面部131からフッ素化合物が除去されるので、赤色発光層141Rが接しているバンク130の表面部131と比較して、フッ素原子の存在密度が小さくなり、フッ素原子の濃度が小さくなる。その結果、図14に示されているように、撥液部132のうち赤色発光層141Rと接していない部位が、低撥液部134となる。撥液部132は表面部131のうちの赤色発光層141Rに接している部位のみである。なお、第2の機能層150のインクに対する低撥液部134の接触角は、0度以上30度以下、望ましくは0度以上20度以下となる。
【0183】
次に、インジウム-スズ酸化物(ITO)のナノ粒子が分散されたインクをインクジェット法でバンク130の一部および赤色発光層141Rに塗布し、真空乾燥により塗布されたインクの溶剤を蒸発させ、インクを200℃程度で加熱した。これにより、バンク130の少なくとも一部および赤色発光層141Rを覆う電極層151が形成された。
【0184】
次に、感光性のアクリル樹脂材料を含むインク(つまり、封止層156のインク)をバンク130の一部および電極層151にインクジェット法で塗布した。塗布されたときのインクの高さ(つまり、厚み)は、4μm程度であった。そして、LEDランプを用いて、照射量が1000mJ/cmになるように照射時間を調整して、395nmの波長の紫外光を封止層156のインクに照射し、アクリル樹脂材料を硬化させた。その結果、封止層156が形成され、図15に示されているように、有機ELデバイスである機能デバイス100が完成した。図15は、実施例1に係る機能デバイス100の構造を示す断面図である。
【0185】
機能デバイス100のデバイス構造を、上述した実施形態、並びに、変形例1から3、その他の変形例のいずれかに示されているデバイス構造にすることで、インクジェット法を用いて均一性が高い電極層151および封止層156を形成できた。
【0186】
よって、第1の機能層140だけでなく第2の機能層150も塗布プロセスを利用して形成する場合であっても、製造される機能デバイス100の品質の確保できると言える。また、真空プロセスを用いて形成する場合と比べて、機能デバイス100の製造にかかるコストを削減できるとともに、比較的低温で機能デバイス100を製造できると言える。低温で機能デバイス100を製造できることは、基板110として、ガラス基板およびプラスチック基板等の耐熱性が低い基板を用いることもできるので、基板110のフレキシブル化を図ることができることを意味する。
【0187】
(実施例2)
発明者は、上述した実施形態、並びに、変形例1から3、および、その他の変形例のいずれかの製造方法のうちの実施例1とは別の方法で、有機ELデバイスである機能デバイス100を製造した。以下、図16から図20を参照しつつ、機能デバイス100(つまり、有機ELデバイス)の製造について、主に実施例1と異なる点について説明する。
【0188】
まず、基板110を準備し、基板110上に電極層120を形成した。
【0189】
次に、日産化学製の感光性のアクリル樹脂材料を含むインクをスピンコート法により基板110上に塗布し、塗布されたインクを100℃でプリベークして層を形成し、波長が365nmの紫外光を当該層に照射することで矩形状のパターンを形成し、さらにポストベークを行った。これにより、バンク130が形成された。なお、実施例2では、高さが1μmとなるようにバンク130を形成した。その結果、図16に示されている中間製造物が形成された。図16は、基板110に電極層120およびバンク130が形成された状態にある中間製造物を示す断面図である。
【0190】
なお、バンク130の形成に使用されたインクには、主にアクリル樹脂材料が含まれており、形成されたバンク130は、表面部131および内部136ともに撥液性が比較的小さい。
【0191】
次に、バンク130にOプラズマ320を照射した。その後、CFプラズマ310をバンク130に照射して、バンク130の表面部131にフッ素化合物を導入した。図17は、中間製造物にCFプラズマ310が照射されている様子を示す図である。CFプラズマ310の照射により、表面部131のフッ素原子の濃度が向上し、表面部131の大部分の撥液性が大きくなる。すなわち、図17に示されているように、表面部131に撥液部132が形成される。
【0192】
次に、バンク130で規定された領域である発光領域に、インクジェット法で赤色発光層141Rの材料であるインク41Rを塗布し、塗布されたインク41Rに対して真空乾燥を行った。その結果、図18に示されているように、赤色発光層141Rが形成された。図18は、赤色発光層141Rが形成された状態にある中間製造物を示す断面図である。
【0193】
次に、図19に示されているように、図17の中間製造物を真空乾燥機210の収容部211に収容した。図19は、真空乾燥機210内に収容された状態にある中間製造物を示す断面図である。なお、真空乾燥機210は、収容部211および排気ポンプ212を備えている。
【0194】
中間製造物を収容部211に収容した後、排気ポンプ212で収容部211内の空気を排気することで、収容部211の真空度を低下させるとともに、バンク130を60度で加熱した。
【0195】
CFプラズマ310によるフッ素化合物は表面部131の炭素原子と結合することで表面部131に導入されている。バンク130の表面部131にCFプラズマ310により導入されたフッ素化合物と表面部131の炭素原子との結合は弱く不安定である。このため、フッ素化合物が経時的に表面部131(撥液部132)から離脱していく。バンク130の加熱と、バンク130の周囲の雰囲気を減圧することで、この離脱現象を加速した。
【0196】
これにより、撥液部132のうち赤色発光層141Rと接していない部位からフッ素化合物が除去され、当該部位のフッ素原子の存在密度が下がる。このため、当該部位の撥液性が小さくなり、濡れ性が大きくなる。すなわち、図19に示されているように、表面部131の当該部位が低撥液部134となる。
【0197】
他方、撥液部132のうちの赤色発光層141Rと接触している部位からは、フッ素化合物が除去されない。
【0198】
次に、実施例1と同様にして、電極層151および封止層156を形成した。その結果、図20に示されているように、有機ELデバイスである機能デバイス100が完成した。図20は、実施例2に係る機能デバイスの構造を示す断面図である。
【0199】
よって、機能デバイス100のデバイス構造を、上述した実施形態、並びに、変形例1から3、および、その他の変形例のいずれかのデバイス構造にすることで、インクジェット法を利用して均一性が高い電極層151および封止層156を形成できた。
【0200】
よって、第1の機能層140だけでなく第2の機能層150も塗布プロセスを利用して形成する場合であっても、製造される機能デバイス100の品質の確保できると言える。また、真空プロセスを用いて形成する場合と比べて、低コストかつ比較的低温で機能デバイス100を製造できると言える。低温で機能デバイス100を製造できることは、基板110のフレキシブル化を図ることができることを意味する。
【0201】
(実施例3)
発明者は、上述した実施形態、並びに、変形例1から3、および、その他の変形例のいずれかの製造方法により、量子ドット発光デバイスである機能デバイス100を製造した。以下、機能デバイス100(つまり、量子ドット発光デバイス)の製造について、主に実施例1と異なる点について説明する。
【0202】
量子ドット発光材料として、粒径が数10nmであり、かつ、カドミウム-セレン系の無機化合物を使用した。
【0203】
量子ドット発光デバイスの製造では、粒径が数10nmであり、かつ、カドミウム-セレン系の無機化合物が芳香族系の有機溶剤に分散しているインクをインクジェット法で発光領域に塗布して発光層を形成した。
【0204】
なお、発光層141の材料が異なる点を除けば、実施例1と同様の製造プロセスで量子ドット発光デバイスである機能デバイス100が形成できた。
【0205】
よって、上述した実施形態、並びに、変形例1から3、および、その他の変形例のいずれかによれば、有機ELデバイスだけでなく、量子ドット発光デバイスも同様に製造できると言える。
【0206】
(実施例4)
発明者は、上述した実施形態、並びに、変形例1から3、および、その他の変形例のいずれかの製造方法のいずれかの方法で、有機トランジスタデバイスである機能デバイス100を製造した。
【0207】
まず、基板110として、板厚が0.5mmであるAGC製のガラスを準備した。そして、モリブデンを材料として用い、かつ、スパッタリング法を利用して基板110上に層を形成し、フォトリソグラフィ法を利用して当該層を所望のパターンにパターニングすることで、ゲート電極層121を形成した。
【0208】
次に、スピンコート法によりオレフィンポリマーを基板110およびゲート電極層121に塗布して層を形成し、当該層を130度で加熱することで硬化させた。これにより、ゲート電極層121を覆うゲート絶縁層122が形成された。
【0209】
次に、フッ素化合物を含有するアクリル樹脂材料であってAGC製の感光性のアクリル樹脂材料を含むインクをスピンコート法により基板110上に塗布し、塗布されたインクを100℃でプリベークして層を形成し、波長が365nmの紫外光を当該層に照射することで矩形状のパターンを形成し、さらにポストベークを行った。これにより、バンク130が形成された。なお、実施例4では、高さが0.3μm以上1μm以下となるようにバンク130を形成した。
【0210】
バンク130の表面部131には、フッ素化合物が偏析しており、表面部131は撥液性が大きく、濡れ性が小さかった。すなわち、表面部131は、撥液部132によって占められていた。有機半導体層145のインクに対する撥液部132の接触角は、20度以上70度以下、望ましくは30度以上60度以下となる。なお、内部136は、撥液性が比較的大きい。
【0211】
次に、バンク130によって規定されている領域に、ペンタセンを有機溶剤に溶解することで生成されたインクをインクジェット法で塗布した。
【0212】
そして、真空乾燥により、塗布されたインクの溶剤を乾燥させ、100℃でインクを加熱した。その結果、有機半導体層145が形成された。
【0213】
次に、実施例1と同じ方法で、バンク130にOプラズマ320を照射した。これにより、バンク130の撥液部132のうち、有機半導体層145が接していない部位からフッ素化合物が除去され、当該部位の撥液性が小さくなり、濡れ性が大きくなった。つまり、表面部131の当該部位が、低撥液部134となった。なお、第2の機能層150のインクに対する低撥液部134の接触角は、0度以上30度以下、望ましくは0度以上20度以下となる。
【0214】
次に、金のナノ粒子が分散されたインクを、インクジェット法で低撥液部134の一部および有機半導体層145に塗布して、ソース電極152およびドレイン電極153を形成した。ここで、ソース電極152およびドレイン電極153を、互いに一定の距離を空けて、かつ、対向するように形成した。
【0215】
次に、ソース電極152、ドレイン電極153、および、低撥液部134を覆う保護層157を形成した。そして、ドレイン電極153を露出するために、コンタクトホール400を形成した。その結果、図11に示されている有機トランジスタデバイスである機能デバイス100が完成した。
【0216】
よって、上述した実施形態、並びに、変形例1から3、および、その他の変形例のいずれかによれば、有機トランジスタデバイスも同様に製造できると言える。
【産業上の利用可能性】
【0217】
本開示の機能デバイスおよび機能デバイスの製造方法は、有機ELデバイス、量子ドット発光デバイス、色変換フィルターデバイス、有機トランジスタデバイス、および、センサーデバイス等の機能デバイスに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0218】
1 有機ELデバイス
10 TFTパネル
12 陽極
13 正孔注入層
14 正孔輸送層
15 有機発光層
16 バンク
18 電子注入層
20 透明陰極
22 透明封止膜
70 光
100 機能デバイス
110 基板
120 電極層
121 ゲート電極層
122 ゲート絶縁層
130 バンク
131 表面部
132 撥液部
133 撥液部の表面
134 低撥液部
135 低撥液部の表面
136 内部
140 第1の機能層
141 発光層
141R 赤色発光層
141G 緑色発光層
141B 青色発光層
41 インク
41R 赤色発光インク
41G 赤緑発光インク
41B 青色発光インク
142 正孔注入層
143 正孔輸送層
144 電子注入層
145 有機半導体層
150 第2の機能層
151 電極層
152 ソース電極
153 ドレイン電極
156 封止層
157 保護層
158 無機層
210 真空乾燥機
211 収容部
212 排気ポンプ
310 CFプラズマ
320 Oプラズマ
330 遮蔽マスク
400 コンタクトホール
図1
図2
図3
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図9A
図9B
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