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特許7511189推定装置、推定方法、および、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】推定装置、推定方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/12 20060101AFI20240628BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
G01V3/12 A
G01S7/02 210
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021548165
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2021005890
(87)【国際公開番号】W WO2021172126
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2020031770
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 翔一
(72)【発明者】
【氏名】中山 武司
(72)【発明者】
【氏名】本間 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】白木 信之
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-117055(JP,A)
【文献】特開2019-197039(JP,A)
【文献】特開2014-228291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00-99/00
G01S 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の生体が存在する空間にN個(Nは2以上の自然数)の送信アンテナ素子から送信され、M個(Mは2以上の自然数)の受信アンテナ素子で受信された電波の受信信号を用いて、前記送信アンテナ素子と前記受信アンテナ素子との間の伝搬特性を示す複素伝達関数を算出する複素伝達関数算出部と、
(a)互いに異なる複数の数値のそれぞれを生体数として用いて、前記複素伝達関数に含まれる生体に対応する成分である生体情報から、前記生体の存在を推定する推定アルゴリズムを用いて導出される、前記存在の尤度を示す尤度スペクトルを算出し、
(b)算出した複数の前記尤度スペクトルを統合した統合スペクトルを算出する、スペクトル算出部と、
前記統合スペクトルから、前記空間に存在する生体数を少なくとも示す生体情報を推定して出力する推定部と、を備える
推定装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記統合スペクトルから、前記空間に存在する生体の位置をさらに示す前記生体情報を推定して出力する
請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記スペクトル算出部は、
(前記N×前記M-1)以下の複数の自然数、前記N以下の複数の自然数、または、前記M以下の複数の自然数を、前記複数の数値として用いて、前記尤度スペクトルを算出する
請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記スペクトル算出部は、
前記空間に存在し得る生体の最大数として定められた数以下の複数の自然数を、前記複数の数値として用いて、前記尤度スペクトルを算出する
請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項5】
さらに、過去に前記推定部が推定した前記生体情報を記憶している記憶部を備え、
前記スペクトル算出部は、前記記憶部に記憶されている前記生体情報に示される前記生体数を含む範囲内の複数の自然数を、前記複数の数値として用いて、前記尤度スペクトルを算出する
請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項6】
前記推定部は、
前記尤度スペクトルの複数の極大値のうちの一以上の極大値であって、当該極大値を含む所定範囲において当該極大値が最大値である一以上の極大値を取得し、
取得した前記一以上の極大値のうちの第一極大値であって、前記第一極大値と、前記第一極大値の次に大きい第二極大値との差異が最大である第一極大値を決定し、
決定した前記第一極大値が、前記一以上の極大値のうち何番目に大きいかを示す数を、前記生体数と推定する
請求項1~5のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項7】
前記推定部は、
前記一以上の極大値のうちの一以上の第三極大値であって、当該第三極大値と、当該第三極大値を含む所定範囲に含まれる値に所定の割合を乗じた値との差異が閾値以上である一以上の第三極大値のみを、前記一以上の極大値として用いて、前記第一極大値を決定する
請求項6に記載の推定装置。
【請求項8】
前記推定部は、
前記尤度スペクトルにおける尤度が閾値以上である区間の個数を、前記生体数と推定する
請求項1~5のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項9】
前記推定部は、
前記空間における生体の存在の尤度を示す尤度スペクトルを示す画像と、前記生体の数とを教師データとして機械学習により事前に作成したモデルに、前記スペクトル算出部が算出した前記統合スペクトルを入力することで出力される生体数を、前記生体数と推定する
請求項1~5のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項10】
前記推定部は、畳み込みニューラルネットワークモデルを前記モデルとして用いて、前記生体情報を出力する
請求項9に記載の推定装置。
【請求項11】
前記スペクトル算出部は、前記推定アルゴリズムとして、前記空間に存在する生体数が入力された場合に入力された前記生体数の前記生体の存在を推定する推定アルゴリズムを用いて、前記尤度スペクトルを算出する
請求項1~10のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項12】
前記スペクトル算出部は、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法を、前記推定アルゴリズムとして用いて、前記尤度スペクトルを算出する
請求項1~11のいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項13】
1以上の生体が存在する空間にN個(Nは2以上の自然数)の送信アンテナ素子から送信され、M個(Mは2以上の自然数)の受信アンテナ素子で受信された電波の受信信号を用いて、前記送信アンテナ素子と前記受信アンテナ素子との間の伝搬特性を示す複素伝達関数を算出し、
互いに異なる複数の数値のそれぞれを生体数として用いて、前記複素伝達関数に含まれる生体に対応する成分である生体情報から、前記生体の存在を推定する推定アルゴリズムを用いて導出される、前記存在の尤度を示す尤度スペクトルを算出し、
算出した複数の前記尤度スペクトルを統合した統合スペクトルを算出し、
前記統合スペクトルから、前記空間に存在する生体数を少なくとも示す生体情報を推定して出力する
推定方法。
【請求項14】
請求項13に記載の推定方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、推定装置、推定方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線で送信される信号を利用して検出対象を検出する技術が開発されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、無線で受信した信号に対してフーリエ変換を用いてドップラーシフトを含む成分の固有値を解析することで、検出対象である生体の数または位置を知ることができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-117972号公報
【文献】特開2014-228291号公報
【文献】特許第5047002号公報
【文献】特許第5025170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
検出対象を検出するアルゴリズムによっては、検出対象の数をアルゴリズムに入力する必要があることがある。その場合、検出対象の数が不明であるときには、検出対象を検出することができないという問題がある。
【0006】
本開示は、検出対象である生体の数が不明である場合にも生体に関する情報を推定できる推定装置などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示における推定装置は、1以上の生体が存在する空間にN個(Nは2以上の自然数)の送信アンテナ素子から送信され、M個(Mは2以上の自然数)の受信アンテナ素子で受信された電波の受信信号を用いて、前記送信アンテナ素子と前記受信アンテナ素子との間の伝搬特性を示す複素伝達関数を算出する複素伝達関数算出部と、(a)互いに異なる複数の数値のそれぞれを生体数として用いて、前記複素伝達関数に含まれる生体に対応する成分である生体情報から、前記生体の存在を推定する推定アルゴリズムを用いて導出される、前記存在の尤度を示す尤度スペクトルを算出し、(b)算出した複数の前記尤度スペクトルを統合した統合スペクトルを算出する、スペクトル算出部と、前記統合スペクトルから、前記空間に存在する生体数を少なくとも示す生体情報を推定して出力する推定部と、を備える推定装置である。
【0008】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の推定装置によれば、検出対象である生体の数が不明である場合にも生体に関する情報を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態1におけるセンサの構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施の形態1におけるセンサによる到来方向の推定を示す概念図である。
図3図3は、実施の形態1における推定部の構成を示すブロック図である。
図4図4は、実施の形態1におけるピーク探索部の動作を表す概念図である。
図5図5は、実施の形態1における検定部の動作を表す概念図である。
図6図6は、実施の形態1におけるセンサの処理を示すフローチャートである。
図7図7は、実施の形態1におけるセンサの人情報の算出処理を示すフローチャートである。
図8図8は、実施の形態2における推定部の構成を表すブロック図である。
図9図9は、実施の形態2におけるブロック検出部の動作を表す概念図である。
図10図10は、実施の形態3における推定部の構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の基礎となった知見)
本発明者は、「背景技術」の欄において記載した、検出に関する技術について、以下の問題が生じることを見出した。
【0012】
従来、無線で送信される信号を利用して検出対象を検出する技術が開発されている(例えば特許文献1~4参照)。
【0013】
例えば、特許文献1には、フーリエ変換を用いてドップラーシフトを含む成分の固有値を解析することで、検出対象である人物の数または位置を推定する技術が開示されている。具体的には、特許文献1の処理装置は、受信信号に対してフーリエ変換を行い、特定の周波数成分を抽出した波形に対して自己相関行列を求め、その自己相関行列を固有値分解して固有値を求める。一般に、固有値および固有ベクトルは、それぞれが送信アンテナから受信アンテナに至る電波の伝搬経路、すなわちパスの1本を表している。しかし、特許文献1の技術では、生体情報が含まれない成分は除去されているため、生体により反射された信号に対応するパスとその二次反射、および雑音に対応するパスのみが、固有値および固有ベクトルに現れる。ここで、雑音に対応する固有値の値は、生体に対応する固有値の値よりも小さいため、その固有値のうち、所定の閾値よりも大きいものの個数を数え上げることで生体数が推定可能である。
【0014】
しかしながら、特許文献1に開示される技術では、検出対象となる生体が検出装置から比較的遠い位置に存在する場合、または、生体の数が比較的多い場合には、生体に対応する固有値と雑音に対応する固有値との差が縮まり、人数推定の精度が低下するという問題がある。なぜなら、ドップラー効果が非常に弱い状況では、受信機が持つ内部雑音、または、検出対象以外から飛来する干渉波の影響、および、検出対象以外にドップラーシフトを発生させる物体が存在するなどの影響を受け、ドップラーシフトをしている微弱な信号を検出することが難しくなるからである。また、測定対象となる生体がある程度の大きさを持っており、生体の成分が複数の固有値にまたがって分布するので、生体数が比較的多い場合には、生体の固有値の分離が完全にはできなくなり、人数推定が困難になる。
【0015】
特許文献2には、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法などの方向推定アルゴリズムを利用して、対象物の位置を推定する技術が開示されている。具体的には、送信局が発した信号を受信した受信局は、受信信号に対してフーリエ変換を行い、特定の周波数成分を抽出した波形に対して自己相関行列を求め、MUSIC法などの方向推定アルゴリズムを適用する。これにより、高い精度で方向推定が可能である。しかしながら、特許文献2で用いるMUSIC法は、検出対象となる生体数が与えられる必要があるので、特許文献2の技術を用いた検出では、あらかじめ人数を推定しておくことが必要である。
【0016】
また、例えば特許文献3には、複数のアンテナにより受信された受信信号の固有ベクトルと、電波の到来する可能性のある範囲のステアリングベクトルとの相関から到来波数、すなわち携帯電話など送信機の数を推定する技術が開示されている。
【0017】
また、例えば特許文献4には、複数のアンテナにより受信された受信信号に対し様々な到来波数を仮定し、それぞれに対してステアリングベクトルを用いた評価関数を算出し、評価関数が最大となる到来波数を、真の到来波数として推定する技術が開示されている。
【0018】
しかしながら、特許文献3~4に開示される技術は、電波を発する送信機の数を推定する技術であり、生体の数を推定することはできない。
【0019】
そこで、発明者らはこれらのことを鑑み、対象となる生体に送信機などの特別な機器を所持させずに、無線信号を利用して、より正確かつ、より多くの生体数を推定できる推定装置などを見出し、本開示に至った。
【0020】
本開示の一様態に係る推定装置は、1以上の生体が存在する空間にN個(Nは2以上の自然数)の送信アンテナ素子から送信され、M個(Mは2以上の自然数)の受信アンテナ素子で受信された電波の受信信号を用いて、前記送信アンテナ素子と前記受信アンテナ素子との間の伝搬特性を示す複素伝達関数を算出する複素伝達関数算出部と、(a)互いに異なる複数の数値のそれぞれを生体数として用いて、前記複素伝達関数に含まれる生体に対応する成分である生体情報から、前記生体の存在を推定する推定アルゴリズムを用いて導出される、前記存在の尤度を示す尤度スペクトルを算出し、(b)算出した複数の前記尤度スペクトルを統合した統合スペクトルを算出する、スペクトル算出部と、前記統合スペクトルから、前記空間に存在する生体数を少なくとも示す生体情報を推定して出力する推定部と、を備える推定装置である。
【0021】
上記態様によれば、推定装置は、検出対象である生体の数として互いに異なる複数の数値を用いて算出した複数の尤度スペクトルを統合した統合スペクトルを用いて、空間に存在する生体に関する情報を出力するので、検出対象である生体の数の入力を必要としない。よって、推定装置は、検出対象である生体の数が不明である場合にも生体に関する情報を推定できる。
【0022】
例えば、前記推定部は、前記統合スペクトルから、前記空間に存在する生体の位置をさらに示す前記生体情報を推定して出力してもよい。
【0023】
上記態様によれば、推定装置は、生体に関する情報として、生体の数に加えて、生体の位置を示す情報を推定できる。よって、推定装置は、検出対象である生体の数が不明である場合にも、生体に関する、より多くの情報を推定できる。
【0024】
例えば、前記スペクトル算出部は、(前記N×前記M-1)以下の複数の自然数、前記N以下の複数の自然数、または、前記M以下の複数の自然数を、前記複数の数値として用いて、前記尤度スペクトルを算出してもよい。
【0025】
上記態様によれば、推定装置は、送信アンテナ素子の個数および受信アンテナ素子の個数の少なくとも一方を用いて複数の尤度スペクトルを算出する。複素伝達関数の生体情報を用いる場合、推定される生体数が送信アンテナ素子数と受信アンテナ素子数との積以下である場合に生体情報がより精度よく定められ、また、推定される生体数が送信アンテナ素子数以下または受信アンテナ素子数以下である場合に生体情報がさらに精度よく定められる。よって、推定装置は、検出対象である生体の数が不明である場合にも、より容易に、かつ、より精度よく、生体に関する情報を推定できる。
【0026】
例えば、前記スペクトル算出部は、前記空間に存在し得る生体の最大数として定められた数以下の複数の自然数を、前記複数の数値として用いて、前記尤度スペクトルを算出してもよい。
【0027】
上記態様によれば、推定装置は、空間に存在し得る生体の最大数として定められた数を用いて複数の尤度スペクトルを算出する。空間に存在し得る生体の最大数は、例えば、空間の大きさ(面積または容積)によってあらかじめ定められていることがある。その場合には、その最大数以下の数の生体が空間に存在していると想定され、言い換えれば、その最大数を超える数の生態が空間に存在していることを想定する必要がない。よって、その最大数以下の複数の自然数を用いて複数の尤度スペクトルを算出することで、計算処理を必要かつ十分な量に抑制でき、必要以上に多い生体を想定した計算処理をすることを未然に回避できる。よって、推定装置は、必要かつ十分な計算処理により、検出対象である生体の数が不明である場合にも生体に関する情報を推定できる。
【0028】
例えば、さらに、過去に前記推定部が推定した前記生体情報を記憶している記憶部を備え、前記スペクトル算出部は、前記記憶部に記憶されている前記生体情報に示される前記生体数を含む範囲内の複数の自然数を、前記複数の数値として用いて、前記尤度スペクトルを算出してもよい。
【0029】
上記態様によれば、推定装置は、過去に空間に存在していた生体の数を用いて複数の尤度スペクトルを算出する。これにより、過去に空間に存在していた生体の数と同等の数の生体が存在すると想定される空間において、より容易に、複数の尤度スペクトルを算出することができる。よって、推定装置は、より容易に、検出対象である生体の数が不明である場合にも生体に関する情報を推定できる。
【0030】
例えば、前記推定部は、前記尤度スペクトルの複数の極大値のうちの一以上の極大値であって、当該極大値を含む所定範囲において当該極大値が最大値である一以上の極大値を取得し、取得した前記一以上の極大値のうちの第一極大値であって、前記第一極大値と、前記第一極大値の次に大きい第二極大値との差異が最大である第一極大値を決定し、決定した前記第一極大値が、前記一以上の極大値のうち何番目に大きいかを示す数を、前記生体数と推定してもよい。
【0031】
上記態様によれば、推定装置は、比率法を用いて、尤度スペクトルが有する複数のピークから、虚像に基づくピークを除外して、生体に基づくピークの数を出力することができる。本願発明者らは、尤度スペクトルが有するピークのうち虚像に基づくピークは、ピーク値が比較的低い、または、比較的なだらかであるという特徴があることを見出し、その知見に基づいて、尤度スペクトルが有するピークのうち虚像に基づくピークを比率法を用いて除外する技術に想到した。推定装置は、尤度スペクトルが有する複数のピークを用いた処理を行い、言い換えれば、尤度に閾値を設ける必要がないので、閾値の設定の大小が処理に影響を与えることを回避できる。また、機械学習モデルを用いることがないので、教師データの用意および事前の学習処理のような準備作業が必要となるのを回避できる。よって、推定装置は、より容易に、検出対象である生体の数が不明である場合にも生体に関する情報を推定できる。
【0032】
例えば、前記推定部は、前記一以上の極大値のうちの一以上の第三極大値であって、当該第三極大値と、当該第三極大値を含む所定範囲に含まれる値に所定の割合を乗じた値との差異が閾値以上である一以上の第三極大値のみを、前記一以上の極大値として用いて、前記第一極大値を決定してもよい。
【0033】
上記態様によれば、推定装置は、尤度スペクトルが有するピークのうち虚像に基づくピークをより適切に除外できる。尤度スペクトルにおける虚像に基づくピークは、比較的なだらかであるので、極大値と、当該極大値を含む所定範囲に含まれる値に所定の割合を乗じた値との差異の大きさによって判別され得る。よって、推定装置は、虚像の影響を除外することで、より容易に、検出対象である生体の数が不明である場合にも生体に関する情報を推定できる。
【0034】
例えば、前記推定部は、前記尤度スペクトルにおける尤度が閾値以上である区間の個数を、前記生体数と推定してもよい。
【0035】
上記態様によれば、推定装置は、尤度スペクトルにおける尤度と閾値との大小に基づいて判別される区間を用いて、尤度スペクトルが有する複数のピークのうち、虚像に基づくピークを除外した、生体に基づくピークの数を出力することができる。本願発明者らは、上記知見に基づいて、尤度スペクトルが有するピークのうち虚像に基づくピークを、上記区間を用いる方法で除外する技術に想到した。推定装置は、上記区間を用いる方法を用い、言い換えれば、複数のピークを対象とした差分の比較の処理を行う必要がないので、処理を単純化することができる。また、機械学習モデルを用いたりすることがないので、教師データの用意および事前の学習処理のような準備作業が必要となるのを回避できる。よって、推定装置は、より容易に、検出対象である生体の数が不明である場合にも生体に関する情報を推定できる。
【0036】
例えば、前記推定部は、前記空間における生体の存在の尤度を示す尤度スペクトルを示す画像と、前記生体の数とを教師データとして機械学習により事前に作成したモデルに、前記スペクトル算出部が算出した前記統合スペクトルを入力することで出力される生体数を、前記生体数と推定してもよい。
【0037】
上記態様によれば、推定装置は、事前に機械学習により作成したモデルを用いて、虚像に基づくピークを除外した、生体に基づくピークの数を出力することができる。本願発明者らは、上記知見に基づいて、尤度スペクトルが有するピークのうち虚像に基づくピークを、機械学習により作成したモデルを用いる方法で除外する技術に想到した。推定装置は、機械学習により作成したモデルを用い、言い換えれば、複数のピークを対象とした差分の比較の処理を行う必要がないので、処理を単純化することができる。尤度に閾値を設ける必要がないので、閾値の設定の大小が処理に影響を与えることを回避できる。よって、推定装置は、より容易に、検出対象である生体の数が不明である場合にも生体に関する情報を推定できる。
【0038】
例えば、前記推定部は、畳み込みニューラルネットワークモデルを前記モデルとして用いて、前記生体情報を出力してもよい。
【0039】
上記態様によれば、推定装置は、畳み込みニューラルネットワークを用いて、より適切に、検出対象である生体の数が不明である場合にも生体に関する情報を推定できる。
【0040】
例えば、前記スペクトル算出部は、前記推定アルゴリズムとして、前記空間に存在する生体数が入力された場合に入力された前記生体数の前記生体の存在を推定する推定アルゴリズムを用いて、前記尤度スペクトルを算出してもよい。
【0041】
上記態様によれば、推定装置は、空間に存在する生体数が入力されることを前提とした推定アルゴリズムを用いて、空間に存在する生体数を入力することなく、空間に存在する生体に関する情報を得ることができる。よって、推定装置は、検出対象である生体の数が不明である場合にも生体に関する情報を推定できる。
【0042】
例えば、前記スペクトル算出部は、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法を、前記推定アルゴリズムとして用いて、前記尤度スペクトルを算出してもよい。
【0043】
上記態様によれば、推定装置は、MUSIC法を用いて、検出対象である生体の数が不明である場合にも生体に関する情報を推定できる。
【0044】
また、本開示の一様態に係る推定方法は、1以上の生体が存在する空間にN個(Nは2以上の自然数)の送信アンテナ素子から送信され、M個(Mは2以上の自然数)の受信アンテナ素子で受信された電波の受信信号を用いて、前記送信アンテナ素子と前記受信アンテナ素子との間の伝搬特性を示す複素伝達関数を算出し、互いに異なる複数の数値のそれぞれを生体数として用いて、前記複素伝達関数に含まれる生体に対応する成分である生体情報から、前記生体の存在を推定する推定アルゴリズムを用いて導出される、前記存在の尤度を示す尤度スペクトルを算出し、算出した複数の前記尤度スペクトルを統合した統合スペクトルを算出し、前記統合スペクトルから、前記空間に存在する生体数を少なくとも示す生体情報を推定して出力する推定方法である。
【0045】
上記態様によれば、上記推定装置と同様の効果を奏する。
【0046】
また、本開示の一様態に係るプログラムは、上記の推定方法をコンピュータに実行させるプログラムである。
【0047】
上記態様によれば、上記推定装置と同様の効果を奏する。
【0048】
なお、本開示は、装置として実現するだけでなく、このような装置が備える処理手段を備える集積回路として実現したり、その装置を構成する処理手段をステップとする方法として実現したり、それらステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したり、そのプログラムを示す情報、データまたは信号として実現したりすることもできる。そして、それらプログラム、情報、データおよび信号は、CD-ROM等の記録媒体やインターネット等の通信媒体を介して配信してもよい。
【0049】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。また、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0050】
(実施の形態1)
以下では、図面を参照しながら実施の形態1におけるセンサ1の人数推定方法等の説明を行う。センサ1は、検出対象である生体の数が不明である場合にも生体に関する情報を推定することができる推定装置の一例である。
【0051】
[センサ1の構成]
図1は、実施の形態1におけるセンサ1の構成を示すブロック図である。図2は、実施の形態1におけるセンサ1による到来方向の推定を示す概念図である。
【0052】
図1に示すセンサ1は、複素伝達関数算出部30と、生体成分抽出部40と、相関行列算出部50と、スペクトル算出部70と、推定部80とを備える。センサ1は、送信機10と、受信機20とに接続されている。なお、センサ1は、送信機10と受信機20との一方または両方を備えてもよい。なお、送信機10と、受信機20とは、同一の筐体内に配置されていてもよい。
【0053】
[送信機10]
送信機10は、送信部11と送信アンテナ部12とを備える。送信機10は、空間Sに電波を送信する。空間Sには生体200が存在すると想定される。生体200は、例えば人(つまり人体)であり、この場合を例として説明する。
【0054】
送信アンテナ部12は、M個の送信アンテナ素子#1~#Mを有するアレーアンテナで構成されている。送信アンテナ部12は、例えば、素子間隔が半波長である4素子パッチアレーアンテナなどである。
【0055】
送信部11は、高周波の信号を生成する。送信部11が生成する高周波の信号は、生体200の在不在、位置、または、人数を推定するために用いられ得る。例えば、送信部11は、2.4GHzのCW(Continuous Wave)を生成し、生成したCWを電波つまり送信波として送信アンテナ部12から送信する。なお、送信する信号はCWに限らず変調をされた信号でも構わない。
【0056】
[受信機20]
受信機20は、受信アンテナ部21と受信部22とを備える。受信機20は、送信機10が電波を送信した空間Sから、電波を受信する。受信される電波には、送信アンテナ部12から送信された送信波の一部が生体200によって反射または散乱された信号である、反射波または散乱波が含まれ得る。
【0057】
受信アンテナ部21は、M個の受信アンテナ素子#1~#Mを有するアレーアンテナで構成されている。例えば、素子間隔が半波長である4素子パッチアレーアンテナなどである。受信アンテナ部21は、アレーアンテナで高周波の信号を受信する。
【0058】
受信部22は、受信アンテナ部21が受信した高周波の信号を、例えばダウンコンバータなどを用いて信号処理が可能な低周波の信号に変換する。また、送信機10が変調信号を送信していた場合、受信部22は受信した変調信号の復調も行う。受信部22は、変換した低周波の信号を複素伝達関数算出部30に伝達する。
【0059】
なお、本実施の形態にて例として挙げた利用周波数は2.4GHzであるが、5GHzまたはミリ波帯などの周波数を用いてもよい。
【0060】
[複素伝達関数算出部30]
複素伝達関数算出部30は、受信アンテナ部21のアレーアンテナで受信された受信信号から、送信機10の送信アンテナ部12と受信アンテナ部21との間の伝搬特性を表す複素伝達関数を算出する。より具体的には、複素伝達関数算出部30は、受信部22により伝達された低周波の信号から、送信アンテナ部12が有するM個の送信アンテナ素子と、受信アンテナ部21が有するM個の受信アンテナ素子との間の伝搬特性を表す複素伝達関数を算出する。
【0061】
なお、複素伝達関数算出部30が算出した複素伝達関数は、送信アンテナ部12から送信された送信波の一部が生体200によって反射または散乱された信号である、反射波または散乱波に対応する成分(生体成分ともいう)を含む場合がある。また、複素伝達関数算出部30が算出した複素伝達関数は、送信アンテナ部12からの直接波、および、固定物由来の反射波など、生体200を経由しない反射波に対応する成分を含む場合もある。また、生体200によって反射または散乱された信号、すなわち生体200経由の反射波および散乱波の振幅および位相は、生体200の呼吸および心拍等の生体活動によって常に変動している。
【0062】
以下、複素伝達関数算出部30が算出した複素伝達関数が、生体200によって反射または散乱された信号である反射波および散乱波に対応する生体成分を含むとして説明する。
【0063】
なお、図1では送信機10と受信機20とが隣接して配置されている状態が図示されているが、送信機10と受信機20との配置は、これに限られず、例えば図2に示すように離れて配置されてもよい。また、送信アンテナと受信アンテナとは、兼用でもよい。また、送信アンテナと受信アンテナとは、Wi-Fi(登録商標)ルータまたは子機といった無線機器のハードウェアと共用してもよい。
【0064】
[生体成分抽出部40]
生体成分抽出部40は、受信アンテナ部21の受信アレーアンテナで受信された信号(受信信号ともいう)を複素伝達関数算出部30から取得する。そして、生体成分抽出部40は、受信信号に含まれている生体成分、つまり、送信アンテナ部12から送信され、かつ、1以上の生体200によって反射または散乱された信号成分を抽出する。
【0065】
より具体的には、生体成分抽出部40は、複素伝達関数算出部30で算出された複素伝達関数を、信号が受信された順である時系列で記録する。そして、生体成分抽出部40は、時系列で記録した複素伝達関数の変化のうち、生体200の影響による変動成分を抽出する。このように抽出される、生体200の影響による複素伝達関数の変動成分が、生体成分に相当する。
【0066】
生体成分を抽出する方法としては、例えば、複素伝達関数の変化をフーリエ変換などにより周波数領域へ変換した後、生体成分に対応する周波数の成分を抽出する方法、または、2つの異なる時間の複素伝達関数の差分を計算することで抽出する方法がある。これらの方法により、複素伝達関数に含まれる直接波および固定物を経由する反射波の成分が除去され、生体200を経由する生体成分が残ることになる。例えば、5秒間の複素伝達関数を用いて、生体成分に対応する周波数として0.3Hzから3Hzの成分を抽出することによって、生体200が静止しているときでも存在する、生体200の呼吸成分を抽出することができる。
【0067】
なお、本実施の形態では、一例として0.3Hzから3Hzの成分を抽出する例を説明したが、より遅い動作、または、より速い動作を抽出したい場合は、抽出したい動作に対応した周波数成分を抽出するように変更すればよいことは言うまでもない。
【0068】
なお、本実施の形態では、送信アレーアンテナを構成する送信アンテナ素子がM個あり、また、受信アレーアンテナを構成する受信アンテナ素子がM個すなわち複数あるので、送信アレーアンテナおよび受信アレーアンテナに対応する複素伝達関数に含まれる、生体200経由の生体成分も複数となる。
【0069】
生体200経由の複数の生体成分は、M行N列の行列(生体成分チャネル行列F(f)ともいう)として、(式1)のように表される。
【0070】
【数1】
【0071】
なお、生体成分複素伝達関数行列すなわち生体成分チャネル行列F(f)の各要素Fijは、複素伝達関数の各要素hijから変動成分を抽出した要素である。また、生体成分複素伝達関数行列すなわち生体成分チャネル行列F(f)は、周波数または周波数に類する差分周期の関数であり、複数の周波数に対応する情報を含む。なお、差分周期とは、2つの異なる時間の複素伝達関数の差分を計算することで生体成分を抽出する方法における、2つの複素伝達関数の時間差である。
【0072】
[相関行列算出部50]
相関行列算出部50は、生体成分抽出部40が算出したM行N列で構成される生体成分チャネル行列の要素を並べ替えることで、(M×N)行1列の生体成分チャネルベクトルFvec(f)に変換する。要素の並べ方としては、例えば(式2)のような方法があるが、行列を並べ替える操作であればよく、要素の順序は問わない。
【0073】
【数2】
【0074】
その後、相関行列算出部50は、生体成分チャネルベクトルFvec(f)から相関行列を算出する。より具体的には、相関行列算出部50は、生体200による複数の変動成分から構成される生体成分チャネルベクトルFvec(f)の相関行列Rを、(式3)に従って算出する。
【0075】
【数3】
【0076】
(式3)中のE[]は、平均演算を表し、演算子Hは複素共役転置を表す。ここで、相関行列算出部50は、相関行列計算において複数の周波数成分を含む生体成分チャネルベクトルFvec(f)を、周波数方向に平均化することで、それぞれの周波数に含まれる情報を同時に使用したセンシングが可能となる。
【0077】
[スペクトル算出部70]
スペクトル算出部70は、空間Sにおける生体200の存在の尤度を示す尤度スペクトルを算出し、また、算出した尤度スペクトルを用いて統合スペクトルを算出する。スペクトル算出部70は、推定アルゴリズムとして、空間に存在する生体数が入力された場合に入力された生体数の前記生体の存在を推定する推定アルゴリズムを用いて、尤度スペクトルを算出する。尤度スペクトルは、例えばMUSIC法により算出され、この場合を例として説明する。MUSIC法により算出される尤度スペクトルをMUSICスペクトルともいう。
【0078】
一般に、尤度スペクトルを算出するためには、到来波の数である到来波数が必要であることがある。MUSIC法によりMUSICスペクトルを算出するためには、到来波数が必要である。到来波数は、本実施例における空間Sに存在する生体200の数に相当する。
【0079】
スペクトル算出部70は、生体数として特定の一の数値を用いるのではなく、互いに異なる複数の数値を順次に生体数として用いて、MUSICスペクトルの算出を行う。
【0080】
すなわち、スペクトル算出部70は、変数Lを初期値LstartからLendまで変化させながら、変数Lを生体数として用いてMUSICスペクトルの算出を行う。そして、スペクトル算出部70は、互いに異なる複数の変数Lを用いて算出された複数のMUSICスペクトルを統合した統合MUSICスペクトルを算出する。以下にMUSICスペクトル算出部70の動作について数式を用いて説明する。
【0081】
相関行列算出部50で算出された相関行列Rを固有値分解すると、
【数4】
と書ける。ここで、
【数5】
【数6】
である。
【0082】
ここで、
【数7】
は、要素数がMR個である固有ベクトルであり、
【数8】
は、固有ベクトルに対応する固有値であり、
【数9】
が成り立つとする。また、Lは、生体数つまり人数として用いられるループ変数である。
【0083】
また、送信アレーアンテナのステアリングベクトル(方向ベクトル)は、
【数10】
と定義され、受信アレーアンテナのステアリングベクトル(方向ベクトル)は、
【数11】
と定義される。なお、使用するアンテナ素子が均一な複素指向性を持たないときは、送信および受信ステアリングベクトルは実測した複素指向性データをもとに作成したものを用いてもよい。ここで、kは波数である。
【0084】
さらに、これらのステアリングベクトルを乗算して、送信アレーアンテナおよび受信アレーアンテナ双方の角度情報を考慮したステアリングベクトルを
【数12】
と定義し、変数Lを様々に変化させながらMUSIC法を適用する。
【0085】
すなわち、スペクトル算出部70は、MUSIC法に基づき、乗算したステアリングベクトルを用いて、下記(式4)で示される複数のMUSICスペクトルが統合された評価関数PmusicTR)を算出する。この評価関数を統合MUSICスペクトルと呼称し、単に統合スペクトルともいう。
【0086】
【数13】
【0087】
なお、統合の演算は、(式4)では総和を用いたが、総和の代わりに総乗を用いてもよい。つまり、(式4)において、総和記号
【数14】
を、総乗記号
【数15】
に置き換えたものを用いてもよい。
【0088】
なお、変数Lの最小値Lstartおよび最大値Lendは、あらかじめ所定の値を設定しておく必要がある。例えば、最小値Lstartは、1、または、測定対象である空間Sに存在する生体の最小数が既知である場合はその数とする。また、最大値Lendは、測定対象である空間Sに存在する生体の最大数が既知である場合はその数またはその数より1から3程度大きな数とすることができる。
【0089】
また、例えば、最大値Lendは、送信アンテナ素子数と受信アンテナ素子数との積より1程度少ない数にしてもよい。なぜならば、MUSIC法で検出可能な、検出対象の最大数は、送信アンテナ素子数と受信アンテナ素子数との積より1少ない数であるからである。また、最大数Lendは、送信アンテナ素子数または受信アンテナ素子数としてもよい。
【0090】
つまり、スペクトル算出部70は、例えば、(送信アンテナ素子数N×受信アンテナ素子数M-1)以下の複数の自然数、送信アンテナ素子数N以下の複数の自然数、または、受信アンテナ素子数M以下の複数の自然数を、変数Lとして用いて、尤度スペクトルを算出することができる。なぜならば、推定される生体数が送信アンテナ素子数と受信アンテナ素子数との積以下である場合に生体情報がより精度よく定められ、また、推定される生体数が送信アンテナ素子数以下または受信アンテナ素子数以下である場合に生体情報がさらに精度よく定められるからである。
【0091】
また、スペクトル算出部70は、空間Sに存在し得る生体の最大数として定められた数以下の複数の自然数を、変数Lとして用いて、尤度スペクトルを算出することができる。
【0092】
さらに、スペクトル算出部70は、記憶部に記憶されている生体数情報に示される生体数を含む範囲内の複数の自然数を、変数Lとして用いて、尤度スペクトルを算出することができる。ここで、記憶部は、過去に推定部80が推定した生体数情報を記憶している記憶装置(不図示)である。
【0093】
なお、上記の例では変数Lを1ずつ増やすこととしたが、等間隔に増やす必要はなく、1ずつ増やすのとは異なる変化パターンで変数Lを変化させてもよい。変化パターンは、あらかじめ定められたものであってもよいし、処理を進めながらランダムに選択されるものであってもよい。
【0094】
なお、MUSICスペクトルは、Beamformer法またはCapon法によるスペクトルでも代用可能である。ただし、Beamformer法またはCapon法は、MUSIC法と比較して精度が悪く、単体では高精度な推定ができないことに留意が必要である。言い換えれば、MUSIC法は、Beamformer法またはCapon法と比較して、単体で、比較的高精度な推定ができる利点がある。
【0095】
[推定部80]
推定部80は、MUSICスペクトル算出部70が算出した統合スペクトルから、測定対象となる空間Sに存在する生体200の数を少なくとも示す生体情報、つまり、空間Sに存在する人の数を少なくとも示す人情報を推定して出力する。また、推定部80は、統合スペクトルから、空間Sに存在する生体の位置をさらに示す生体情報、つまり、空間Sに存在する人の位置をさらに示す人情報を推定して出力してもよい。
【0096】
本来、正しい人数(つまり、空間Sに実際に存在する人の人数)を入力して算出されたMUSICスペクトルには、入力された人数と同じ数のピークが現れる。しかし、本実施の形態では、様々な数値を人数として入力して得られた複数のMUSICスペクトルを統合しているので、統合スペクトルに虚像(つまり、実際には人がいない位置に現れるピーク)が現れることがある。
【0097】
推定部80では、統合スペクトルに現れているピークのうち虚像でないものを判別し、上記ピークのうち虚像でないものを対象として人数を算出することで、空間Sに存在する人の人数を示す人情報を推定する。また、推定部80は、上記ピークのうち虚像でないものを対象としてそのピークの位置を算出することで、空間Sに存在する人の位置をさらに示す人情報を推定してもよい。
【0098】
人の人数または位置の算出には、例えばスペクトルのピーク値に対して比率法を用いる方法、MUSICスペクトルで所定の閾値以上の尤度が連続する区間、言い換えれば尤度が所定の閾値以上である区間(ブロックともいう)の個数を数える方法、または、MUSICスペクトルを画像として扱い畳み込みニューラルネットワークなどの機械学習を用いる方法などがある。本実施の形態では、一例として比率法を用いた人情報の算出方法について説明する。
【0099】
図3は、実施の形態1における推定部80の詳細なブロック図である。
【0100】
図3に示される推定部80は、ピーク探索部81と、誤ピーク判定部82と、ピークソート部83と、検定部84とを備える。
【0101】
<ピーク探索部81>
ピーク探索部81は、統合スペクトルのうち極大値をとるピークの探索を行う。探索により発見されたピークの集合を第一ピーク集合とする。なお、第一ピーク集合は、雑音による細かなピークを除外するために、ピーク値が所定の範囲xで最大値となるピークのみに限定されることが望ましい。
【0102】
図4は、実施の形態1におけるピーク探索部81の動作を表す概念図である。図4を参照しながら、ピーク探索部81の処理を、1次元の統合スペクトル1000を用いて説明する。
【0103】
図4には、統合スペクトル1000に含まれる4つのピークである、ピーク1001-A、1001-B、1001-Cおよび1001-Dが示されている。4つのピークそれぞれについて、当該ピークから距離0.5m以内の範囲(つまり範囲1002-A、1002-B、1002-Cおよび1002-D)において、当該ピークが最大値をとっているピークは、ピーク1001-A、1001-Bおよび1001-Dの3つである。ピーク探索部81は、統合スペクトル1000から上記3つのピークを抽出し、抽出したピークを第一ピーク集合として取得する。
【0104】
第一ピーク集合は、尤度スペクトルの複数の極大値のうちの一以上の極大値であって、当該極大値を含む所定範囲において当該極大値が最大値である一以上の極大値に相当する。
【0105】
<誤ピーク判定部82>
誤ピーク判定部82は、第一ピーク集合に含まれるピークのうち、比較的なだらかなピークを除外する。統合スペクトル1000における虚像は、比較的なだらかなピークとして現れるので、比較的なだらかなピークを除外することで、虚像に基づくピークを除外するためである。
【0106】
具体的には、誤ピーク判定部82は、第一ピーク集合に含まれるピーク値それぞれについて、当該ピークから所定の距離xの範囲に含まれる値のy%値を算出する。誤ピーク判定部82は、ピーク値とy%値との差異が所定の閾値z以上であるものを抽出し、抽出したピークを第二ピーク集合として取得する。ピーク値とy%値との差異は、ピーク値とy%値との差分(つまり、ピーク値-y%値)であってもよいし、ピーク値とy%値との比率(つまり、y%値/ピーク値)であってもよい。また、「所定の距離xの範囲に含まれる値」は、当該範囲に含まれる任意の数値、当該範囲に含まれる値の平均値、最大値または最小値などを用いることができる。
【0107】
これにより、誤ピーク判定部82は、第一ピーク集合に含まれるピークのうち、比較的なだらかなピークを除外することができる。例えば、所定の距離xを0.5mとし、yを70%、zを0.4dBとしたとき、誤ピーク判定部82は、第一ピーク集合に含まれるピーク値それぞれの周囲0.5m以内に含まれる値の70%値よりも0.4dB以上大きいものを抽出する。
【0108】
第一ピーク集合から、誤ピーク判定部82によって虚像に基づくピークが除外された第二ピーク集合は、一以上の第三極大値であって、当該第三極大値と、当該第三極大値を含む所定範囲に含まれる値に所定の割合を乗じた値との差異が閾値以上である一以上の第三極大値に相当する。ここで、所定の割合は、0より大きく1より小さい所定値である。
【0109】
<ピークソート部83>
ピークソート部83は、第二ピーク集合に含まれる複数のピークそれぞれの値を降順にソートする。なお、ピークソート部83は、第二ピーク集合に対して、第二ピーク集合に含まれるピークのうち値が最小のものよりもwだけ小さい値を、仮想ピークとして追加してもよい。仮想ピークは、第二ピーク集合に含まれる複数のピークそれぞれについて、当該ピークと当該ピークの次に大きいピークとの比較をする処理において、ピーク値が最小であるピークの次に大きいピークとして用いられ得る。例えば、wを3.4dBに設定し、最小のピークが最大のピークに対して-3dBであるとき、追加する仮想ピークは最大のピークに対して-6.4dBである。
【0110】
<検定部84>
検定部84は、ピークソート部83によってソートされた第二ピーク集合に対し、隣接するピーク値間の差異を算出することによって人数の推定を行う。より具体的には、降順にソートされた第二ピーク集合のi番目のピークとi+1番目のピークとの差分として、比率または差分を算出し、その差分または比率が最大となるiを人数として出力する。ここでiは1以上、かつ、第二ピーク集合の要素数以下の整数である。
【0111】
以降では、差異として差分を用いる場合を例として説明する。
【0112】
図5は、実施の形態1における検定部84の動作を表す概念図である。
【0113】
図5には、第二ピーク集合に含まれるピーク1101-A、1101-B、1101-Cおよび1102がピーク値によって降順にソートされて示されている。なお、ピーク1102は、ピークソート部83で追加された仮想ピークである。
【0114】
ピークソート部83は、第二ピーク集合の隣接するピークの差分1103-A、1103-Bおよび1103-Cを算出し、算出した差分が最大となるピークの組み合わせを求める。
【0115】
図5に示す例では、差分1103-B、つまり、2番目のピーク1101-Bと3番目のピーク1101-Cとの差分が最大であるので、iが2であり、算出される人数は2である。
【0116】
以上のように、検定部84は、ピーク探索部81が取得した一以上の極大値のうちの第一極大値であって、第一極大値と、第一極大値の次に大きい第二極大値との差異が最大である第一極大値を取得し、取得した第一極大値が、一以上の極大値のうち何番目に大きいかを示す数を取得する。そして、推定部80は、検定部84が取得した数を、空間Sに存在する人の人数として推定して出力する。
【0117】
なお、検定部84は、ピーク探索部81が取得した一以上の極大値をそのまま用いて上記のように人情報を出力してもよいし、ピーク探索部81が取得した一以上の極大値のうち誤ピーク判定部82が虚像に基づくピークを除外した、一以上の第三極大値を、一以上の極大値として用いて、上記のように人情報を出力してもよい。
【0118】
なお、上記では、センサ1が人数を示す人情報を出力する場合を例として説明したが、MUSICスペクトルを用いて人の位置を推定し、人の位置を示す人情報を出力してもよい。
【0119】
なお、本実施の形態では送信アンテナと受信アンテナとがともに複数のMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)構成の例を説明したが、送信または受信の一方が単一アンテナの構成を用いてもよい。その場合、スペクトル算出部70が出力する統合スペクトルは1次元となるが、その場合でも2次元の場合と同様にピーク探索による人情報の推定が可能である。
【0120】
なお、空間Sに人が不在、すなわち0人の場合の検出のみ、最大の固有値の大きさ、複素伝達関数の変動成分の電力、または、無人のときとの相関の大きさに基づいて判定を行い、有人であるときのみスペクトル算出部70による尤度スペクトルおよび統合スペクトルの算出を行ってもよい。こうすることで、空間Sに人が不在である場合に、尤度スペクトルおよび統合スペクトルの算出に必要な処理を省くことができ、消費電力の削減に寄与する。
【0121】
[センサ1の動作]
以上のように構成されるセンサ1が生体数を推定する処理について説明する。
【0122】
図6は、実施の形態1におけるセンサ1の処理を示すフローチャートである。
【0123】
図6に示されるように、ステップS10において、センサ1は、受信機20において所定の期間、信号を受信する。
【0124】
ステップS20において、センサ1は、受信信号から複素伝達関数を算出する。
【0125】
ステップS30において、センサ1は、算出した複素伝達関数それぞれを時系列に記録し、記録した時系列の複素伝達関数から生体の影響による変動成分を抽出することで、生体成分チャネル行列を算出する。
【0126】
ステップS40において、センサ1は、抽出した生体成分チャネル行列の相関行列を算出する。
【0127】
ステップS50において、センサ1は、変数Lに初期値Lstartを設定する。
【0128】
ステップS60において、センサ1は、ステップS50またはS75で設定された変数Lと、ステップS40で算出された相関行列とをもとに、MUSIC法により尤度スペクトルを算出する。
【0129】
ステップS70において、センサ1は、変数LがLendに一致しているか否かを判定する。LがLendに一致していると判定した場合(ステップS70でYes)には、ステップS80に進み、そうでない場合(ステップS70でNo)にはステップS75に進む。
【0130】
ステップS75において、センサ1は、変数Lを1加算する。その後、センサ1は、ステップS60を再び実行する。
【0131】
ステップS80において、センサ1は、尤度スペクトルを統合することで、統合スペクトルを算出する。統合される尤度スペクトルは、ステップS50、S60、S70およびS75の処理によって変数LをLstartからLendまで1ずつ変化させながらセンサ1が算出した尤度スペクトルである。
【0132】
ステップS90において、センサ1は、ステップS80で算出した統合スペクトルから人数を算出し、人情報として推定して出力する。ステップS90の処理は、例えば、統合スペクトルのピーク値に対して比率法を用いる方法、統合スペクトルで所定の値以上の区間が連続するブロックの個数を数える方法、または、統合スペクトルを画像として扱い畳み込みニューラルネットワークなどの機械学習を用いる方法などを用いて行われる。
【0133】
図7は、実施の形態1におけるセンサ1の人情報の算出処理を示すフローチャートである。図7に示される処理は、ステップS90の処理を、一例として比率法を用いて行う場合の処理の例である。
【0134】
図7に示すように、ステップS110において、センサ1は、統合スペクトルのピークのうち当該ピークが所定の範囲で最大値であるピークを抽出し、抽出したピークを第一ピーク集合として取得する。
【0135】
ステップS120において、センサ1は、第一ピーク集合に含まれるピークそれぞれについて、当該ピークからの所定の距離の範囲に含まれる値のy%値を算出する。
【0136】
ステップS130において、センサ1は、ステップS110で抽出したピークについて、ピーク値と、ステップS120で算出したy%値との差異が所定の閾値以上であるピークを抽出し、抽出したピークを第二ピーク集合として取得する。
【0137】
ステップS140において、センサ1は、第二ピーク集合に含まれるピークを、ピーク値の降順にソートする。
【0138】
ステップS150において、センサ1は、第二ピーク集合のうちi番目のピークと(i+1)番目のピークとの差異を計算し、その差異が最大となるiを人数として示す人情報を推定して出力する。ここでiは1以上、第二ピーク集合の要素数以下の整数である。
【0139】
[効果等]
本実施の形態のセンサ1によれば、無線信号を利用して、空間Sに存在している生体200の数を高精度に推定できる。
【0140】
空間Sに存在している生体200の数に推定に用いられている既存の尤度スペクトルを導出する推定法では、空間Sに存在している生体数を与える必要があることがある。
【0141】
本実施の形態のセンサ1によれば、空間Sに存在している生体数として複数の数値を用いて算出した尤度スペクトルを統合した統合スペクトルを用いて、空間Sに存在している生体数を推定する。そのため、空間Sに存在している生体数が不明である場合にも、空間Sに存在している生体数を示す生体情報を推定することができる。
【0142】
(実施の形態2)
実施の形態1では、統合スペクトルから比率法を用いて生体情報(つまり人情報)を推定する方法を説明した。実施の形態2では、統合スペクトルから尤度が所定の閾値以上である区間であるブロックの個数を数える方法を用いて生体情報を推定する方法を説明する。
【0143】
本実施の形態におけるセンサは、実施の形態1におけるセンサ1と同様の構成を備えるが、実施の形態1のセンサ1が備える推定部80が、推定部2080に代わる点で異なる。推定部2080以外の構成は、実施の形態1と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0144】
図8は、実施の形態2における推定部2080の構成を表すブロック図である。図9は、実施の形態2におけるブロック検出部2082の動作を表す概念図である。図9に示される統合スペクトル2100は、スペクトル算出部70が算出した統合スペクトルの一例である。
【0145】
推定部2080は、図8に示すように、閾値設定部2081とブロック検出部2082とを備える。
【0146】
閾値設定部2081は、統合スペクトル2100の最大値からv[dB]小さい閾値2101を設定する。なお、vおよび閾値2101には、あらかじめ設定された固定値を用いてもよいし、事前にvおよび閾値2101を様々に変化させて人数推定の精度を評価し、最も精度が高かった閾値2101を最適値として用いてもよい。例えば、2.47125GHzの無変調連続波を用い、素子間隔が半波長である4素子パッチアレーアンテナで4m四方の部屋をセンシングする場合には、vを3.9dBと設定できる。
【0147】
ブロック検出部2082は、統合スペクトル2100における尤度が閾値2101以上である区間をブロックとして検出し、検出されたブロックの個数を取得する。
【0148】
推定部2080は、ブロック検出部2082が取得したブロックの個数を、空間Sに存在する人の人数と推定する。
【0149】
図9に示す例では、統合スペクトル2100が閾値2101以上である区間として、ブロック2102-Aおよび2102-Bの2つのブロックが検出される。ブロック検出部2082、人数が2であることを示す人情報を算出する。
【0150】
[効果等]
実施の形態2のセンサによれば、実施の形態1におけるセンサ1と比べて推定部2080における計算量を削減することができる。これにより、リアルタイム処理に必要な処理装置の能力基準を下げ、低コストで人に関する情報の推定を実現することができる。
【0151】
(実施の形態3)
実施の形態1では、統合スペクトルから比率法を用いて生体情報(つまり人情報)を推定する方法を説明した。実施の形態3では、統合スペクトルから機械学習モデル(例えば畳み込みニューラルネットワーク)を用いて生体情報を推定する方法を説明する。
【0152】
本実施の形態におけるセンサは、実施の形態1におけるセンサ1と同様の構成を備えるが、実施の形態1のセンサ1が備える推定部80が、推定部3080に代わる点で異なる。推定部3080以外の構成は、実施の形態1と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0153】
図10は、実施の形態3における推定部3080の構成を表すブロック図である。
【0154】
推定部3080は、図10に示すように、教師データ作成部3081と、学習部3082と、ネットワーク記憶部3083と、画像変換部3084と、判定部3085とを備える。
【0155】
教師データ作成部3081と学習部3082とネットワーク記憶部3083とは、事前の機械学習モデルの学習を行う。画像変換部3084と判定部3085とは、事前に学習された機械学習モデルを用い、テストデータに対して人情報の算出を行う。
【0156】
教師データ作成部3081は、事前に人数が既知の場合のMUSICスペクトルを示す画像を複数取得し、教師データ画像として保存する。ここで、教師データ画像には、空間Sに存在すると想定される人数それぞれについて複数のMUSICスペクトルを示す画像が含まれる。例えば、教師データ画像には、測定対象である空間Sに存在する人数の上限が3である場合、0人、1人、2人および3人のそれぞれについて複数枚、例えば100以上の教師データ画像が含まれる。
【0157】
学習部3082は、教師データ画像を入力として機械学習モデルの学習を行う。機械学習モデルは、例えば、畳み込みニューラルネットワークモデルである。入力として用いられる教師データ画像は、教師データ作成部3081が保存した教師データ画像である。なお、ここでは、例えば転移学習のようなニューラルネットワークの学習を効率化させる手法を用いてもよい。
【0158】
ネットワーク記憶部3083は、学習部3082が学習によって生成した畳み込みニューラルネットワークを、コンピュータ上のメモリ、CD-ROM等の記録媒体、または、センサの外部のサーバなどに記憶させる。センサの外部のサーバに記憶させる場合には、ネットワークを介した通信によって上記サーバに畳み込みニューラルネットワークのデータを送信する。
【0159】
画像変換部3084は、スペクトル算出部70が算出した統合スペクトルを畳み込みニューラルネットワークで処理可能な形式に変換することで、入力データを生成する。畳み込みニューラルネットワークで処理可能な形式の画像は、例えば、各画素が統合スペクトルの値に対応するヒートマップ画像である。
【0160】
判定部3085は、ネットワーク記憶部3083に記憶されている畳み込みニューラルネットワークに、画像変換部3084が生成した入力データを入力することで出力される人情報を取得する。
【0161】
推定部3080は、判定部3085が取得した人情報を、空間Sに存在する人を示す人情報として推定する。
【0162】
以上、本開示の一態様に係るセンサについて、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、あるいは異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0163】
また、本開示は、このような特徴的な構成要素を備える、センサとして実現することができるだけでなく、センサに含まれる特徴的な構成要素をステップとする推定方法などとして実現することもできる。また、そのような方法に含まれる特徴的な各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータプログラムとして実現することもできる。そして、そのようなコンピュータプログラムを、CD-ROM等のコンピュータで読取可能な非一時的な記録媒体あるいはインターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができるのは、言うまでもない。
【0164】
[効果等]
実施の形態3のセンサを用いて畳み込みニューラルネットワークによる機械学習を用いることで、当該センサを設置する環境それぞれに対して変更する必要がある、閾値などの各種パラメータ調整を自動で行うことができる。また、学習したネットワークを随時更新していくことにより更なる人数推定精度の改善も期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本開示は、生体の人数や位置を測定する測定器、生体の人数や位置に応じた制御を行う家電機器、生体の侵入を検知する監視装置などに利用できる。
【符号の説明】
【0166】
1 センサ
10 送信機
11 送信部
12 送信アンテナ部
20 受信機
21 受信アンテナ部
22 受信部
30 複素伝達関数算出部
40 生体成分抽出部
50 相関行列算出部
70 スペクトル算出部
80、2080、3080 推定部
81 ピーク探索部
82 誤ピーク判定部
83 ピークソート部
84 検定部
200 生体
1000、2100 統合スペクトル
1001-A、1001-B、1001-C、1001-D、1101-A、1101-B、1101-C、1102 ピーク
1002-A、1002-B、1002-C、1002-D 範囲
1103-A、1103-B、1103-C 差分
2081 閾値設定部
2082 ブロック検出部
2101 閾値
2102-A、2102-B ブロック
3081 教師データ作成部
3082 学習部
3083 ネットワーク記憶部
3084 画像変換部
3085 判定部
S 空間
図1
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図3
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図8
図9
図10