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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-28
(45)【発行日】2024-07-08
(54)【発明の名称】リモートコントローラ
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/08 20060101AFI20240701BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
E03D9/08 A
H05K5/02 J
H05K5/02 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020171133
(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2022062926
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤▲崎▼ 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 龍平
(72)【発明者】
【氏名】山下 智弘
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-139958(JP,A)
【文献】実開平05-061654(JP,U)
【文献】特開2011-127375(JP,A)
【文献】特開2018-046355(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0364278(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00- 9/16
H04Q 9/00- 9/16
H05K 5/00- 5/06
H01H 13/00-13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器装置用のリモートコントローラであって,
機器を遠隔制御する本体の外周縁のうち,少なくとも上面および左右の側面を構成する金属製の外周縁部を有する枠体と,
前面側に設けられたボタン部材とを有し,
前記本体は,
第1のケース部材と,
前記第1のケース部材の前方に位置する第2のケース部材とを有し,
前記枠体は,前記外周縁部の前端から後端までの間に,前記外周縁部の内側に向けて突出して設けられたフランジ部を有し,
前記第1のケース部材と前記第2のケース部材とは,これらの間に前記フランジ部を挟みこんだ状態で固定されているリモートコントローラ。
【請求項2】
便器装置用のリモートコントローラであって,
機器を遠隔制御する本体の外周縁のうち,少なくとも上面および左右の側面を構成する金属製の外周縁部を有する枠体と,
前面側に設けられたボタン部材とを有し,
前記ボタン部材として,第1のボタン部材と,前記第1のボタン部材の下方に位置する第2のボタン部材とを有し,
前記第1のボタン部材の前面である操作面の下部,および,前記第2のボタン部材の前面である操作面の上部の少なくとも一方には,他方に近い位置ほど後方に位置する傾斜面が設けられているリモートコントローラ。
【請求項3】
請求項に記載のリモートコントローラであって,
前記第1のケース部材と前記第2のケース部材とを固定する金属製の固定部品を有し,
前記第1のケース部材および前記第2のケース部材は絶縁性を有する樹脂によって構成されており,
前記固定部品は前記枠体とは接触しないように配置されているリモートコントローラ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載のリモートコントローラであって,
前記ボタン部材の前面である操作面は,前記外周縁部の前端に比べて後方に位置しているリモートコントローラ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載のリモートコントローラであって,
前記本体は,制御対象である機器との通信を電波によって行う通信部を有し,
前記ボタン部材は樹脂によって構成されているリモートコントローラ。
【請求項6】
請求項5に記載のリモートコントローラであって,
壁面に固定され,前記本体の後面を着脱可能に保持する金属製の保持部を有するリモートコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は,リモートコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から,便器装置用のリモートコントローラが使用されている。特許文献1に「リモコン」として記載されているものもその一例である。同文献では,使用者の目につきやすい上面および前面を金属によって構成したリモートコントローラを開示している。これにより,意匠性が向上できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-204270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば,使用者には,リモートコントローラの外面のうちの上面および前面以外の部分についても見えている。このため,リモートコントローラには,意匠性を向上するために改善の余地があった。
【0005】
本明細書の開示技術は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,高い意匠性を有するリモートコントローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術の一態様におけるリモートコントローラは,便器装置用であって,機器を遠隔制御する本体の外周縁のうち,少なくとも上面および左右の側面を構成する金属製の外周縁部を有する枠体と,前面側に設けられたボタン部材とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態に係るリモートコントローラの斜め右上方から見た斜視図である。
図2】実施の形態に係るリモートコントローラの斜め右下方から見た斜視図である。
図3】実施の形態に係るリモートコントローラの本体の分解斜視図である。
図4】実施の形態に係るリモートコントローラの本体の正面図である。
図5】実施の形態に係るリモートコントローラの側視断面図(その1)である。
図6】実施の形態に係るリモートコントローラの側視断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示技術を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,図1に示すリモートコントローラ1として本開示技術を具体化したものである。リモートコントローラ1は,本体10と保持部20とを有する。リモートコントローラ1の前側は,図1における手前側である。
【0009】
本体10は,使用者からの操作入力に基づいて,他の機器を遠隔制御する。本実施の形態において,リモートコントローラ1の制御対象は,便器装置に搭載された機器である。リモートコントローラ1の制御対象である便器装置には,例えば,シャワーノズルと,洗浄装置とが搭載されている。シャワーノズルは,便器装置に着座した使用者の局部に向けて,水を噴射する機器である。洗浄装置は,便器装置を洗浄する水流を発生させる機器である。このようなリモートコントローラ1は,通常,便器装置の周辺の壁面のうち,使用者の目の高さと比較して低い位置に取り付けられる。このため,使用者は,上方からリモートコントローラ1を見る頻度が高い。さらに,リモートコントローラ1が設置される環境では,水が使用される頻度が高い。このため,リモートコントローラ1には,水がかかってしまう可能性がある。
【0010】
本体10は,使用者からの操作入力を受ける操作部を有している。操作部としては,複数の前面ボタン部材100と,複数の上部ボタン部材110とが設けられている。前面ボタン部材100は,本体10の前面11に設けられている。前面ボタン部材100の前面が,操作面101である。複数の前面ボタン部材100は,上下について2段に配置されている。前面ボタン部材100には,上段に位置する上段ボタン部材100Aと,下段に位置する下段ボタン部材100Bとがある。下段ボタン部材100Bは,上段ボタン部材100Aの下方に位置している。上段ボタン部材100Aおよび下段ボタン部材100Bはそれぞれ,左右方向について,複数設けられている。
【0011】
上部ボタン部材110は,本体10の上面12に設けられている。上部ボタン部材110の上面が,操作面111である。上部ボタン部材110の操作面111は,本体10の上面12に比べて上側に突出している。上部ボタン部材110は,左右方向について,複数設けられている。
【0012】
本体10の前面11には,前面ボタン部材100の他に,前面カバー105が設けられている。前面カバー105は,本体10の前面11のうち,最も右側の区画に設けられている。前面カバー105は,前面ボタン部材100とは異なり,操作部ではない。前面カバー105も,上下について2段に配置されている。前面カバー105には,上段に位置する上段カバー105Aと,下段に位置する下段カバー105Bとがある。上段カバー105Aは,上段ボタン部材100Aと同じ形状をしている。下段カバー105Bは,下段ボタン部材100Bと同じ形状をしている。前面カバー105の前面106は,前面ボタン部材100の操作面101とともに,本体10の前面11の意匠を形成している。
【0013】
本体10の上面12には,上部ボタン部材110の他に,ランプ131が設けられている。ランプ131は,例えば,リモートコントローラ1の特定の状態を示す際に点灯する。リモートコントローラ1の特定の状態とは,例えば,リモートコントローラ1に装着した電池の残容量が少ない状態などである。
【0014】
本体10は,枠体140を有している。枠体140は,アルミニウムによって構成されている。枠体140は,外周縁を構成する外周縁部141を有している。外周縁部141の前端は,本体10の前面11の外周縁を構成している。前面ボタン部材100と前面カバー105とは,外周縁部141の前端によって囲われた領域内に位置している。外周縁部141は,前面11から後方に向けて延びている。外周縁部141は,上壁部142と,下壁部143と,左壁部144と,右壁部145とを有している。これにより,本体10の上面12は,外周縁部141の上壁部142によって構成されている。本体10の下面14は,外周縁部141の下壁部143によって構成されている。本体10の左側面15は,外周縁部141の左壁部144によって構成されている。本体10の右側面16は,外周縁部141の右壁部145によって構成されている。
【0015】
保持部20は,前面21と後面23とを有している。保持部20には,前面21から後面23まで貫通する貫通孔25が形成されている。貫通孔25は,保持部20を壁面に固定する際に,固定部品を通す孔である。固定部品としては,例えば,ねじ部品を用いることができる。保持部20を壁面に固定した状態では,後面23と壁面とが接触する。保持部20の前面21には,2つの爪部29が設けられている。爪部29は,前面21と比べて前方へと突出している。爪部29には,本体10を引っ掛けることができる。これにより,保持部20の前面21は,本体10を保持できる。図1には,本体10が保持部20から取り外された状態を示している。保持部20は,ステンレスによって構成されている。
【0016】
リモートコントローラ1の後方側を図2に示す。図2に示すように,本体10の後面13には,後方ケース部材150が設けられている。後方ケース部材150は,絶縁性を有する樹脂によって構成されている。後方ケース部材150には,2つの溝部155が形成されている。溝部155の位置および形状は,保持部20の爪部29に対応した位置および形状である。このため,溝部155には,保持部20の爪部29を引っ掛けることができる。これにより,保持部20は,本体10の後面13を着脱可能に保持できる。
【0017】
後方ケース部材150には,電池カバー160が装着されている。電池カバー160は,後方ケース部材150から取り外すことができる。電池90の交換の際には,まず,本体10を保持部20から取り外す。その後,電池カバー160を本体10から取り外す。これにより,本体10の内部に設けられた電池90の収容空間を外部に開放できる。電池90の交換後には,逆の手順によって本体10を保持部20に装着する。電池90の収容空間の前方には,前面カバー105が配置されている。
【0018】
後方ケース部材150の後方側の一部および電池カバー160は,外周縁部141の後端と比べて後方側へと突出している。外周縁部141の後端から突出した後方ケース部材150の突出長さは,外周縁部141の前後方向の長さに比べて小さい。つまり,本体10は,前後方向について,半分以上が外周縁部141によって覆われている。
【0019】
本体10は,下部後方における中央付近に,照明部132を有している。照明部132は,本体10の下方に向けて光を照射できる。照明部132は,枠体140の外周縁部141の内側に設けられている。外周縁部141の下壁部143には,照明部132によって照射された光が通過する位置に,切り欠き147が形成されている。これにより,照明部132は,照射した光が阻害されることなく,本体10の下面14から外部を照らすことができる。切り欠き147は,下壁部143の後端側に形成されている。切り欠き147は,下壁部143の前端までおよぶものではない。つまり,外周縁部141の前端は,前面11の外周縁を連続して形成している。
【0020】
上記のように,リモートコントローラ1の本体10の外周縁は,外周縁部141によって構成されている。このようなリモートコントローラ1の外観は,外周縁部141によって構成されている割合が高い印象を与える。一般的に,外周縁部141を構成するアルミニウム等の金属は,樹脂等の他の材質に比べて,使用者に重厚かつ堅牢な印象を与える。このため,リモートコントローラ1は,使用者に高級感を与えることができる。これにより,リモートコントローラ1は,意匠性が良好である。
【0021】
使用者は,枠体140に触れることもある。例えば上部ボタン部材110を操作する場合,電池90を交換する場合などである。一般的に,金属の熱伝導率は,樹脂と比較して高い。これにより,リモートコントローラ1は,金属特有の冷たい手触りによって,使用者に高級感を与えることができる。
【0022】
外周縁部141は1つの部材によって構成されている。つまり,上壁部142と,下壁部143と,左壁部144と,右壁部145とは繋がっている。外周縁部141にはつなぎ目がない。このため,本体10の外面には,隙間が少ない。これにより,リモートコントローラ1は,使用者に洗練された印象を与えることができる。隙間が少ないリモートコントローラ1は,清掃が容易である。このため,リモートコントローラ1を清潔な状態で維持することは容易である。さらに,上壁部142と,左壁部144と,右壁部145とは連続した1つの部材である。このため,水が本体10の内部へ入り込むことを抑制できる。これにより,本体10の故障を抑制できる。
【0023】
前後方向について分解した本体10を図3に示す。図3に示すように,本体10の内部には,前方ケース部材120と,基板ユニット130とが設けられている。前方ケース部材120は,絶縁性を有する樹脂によって構成されている。本体10の組付状態において,前面ボタン部材100と前面カバー105とは,前方ケース部材120の前側に装着される。前方ケース部材120と後方ケース部材150との間には,基板ユニット130が挟み込まれる。これにより,基板ユニット130は本体10の内部空間に収容されている。
【0024】
基板ユニット130には,電池90から供給される電力によって動作する電子部品等が搭載されている。基板ユニット130に搭載された部品には,ランプ131と,照明部132と,操作検出部133と,通信部134とが含まれる。操作検出部133は,前面ボタン部材100と上部ボタン部材110とのそれぞれについて設けられている。前面ボタン部材100が操作された際には,その前面ボタン部材100に対応する操作検出部133が操作入力を検出する。
【0025】
通信部134は,制御対象である便器装置と電波によって通信する。電波によって通信する方式としては,Bluetooth(登録商標)が例示できる。例えば,便器装置のシャワーノズルの動作に対応した操作部が操作された場合,通信部134は便器装置に対して信号を送信する。通信部134は,前面ボタン部材100の後方に設けられている。
【0026】
枠体140は,複数のフランジ部148を有している。フランジ部148は,外周縁部141の内側に向けて突出している。フランジ部148の位置は,外周縁部141の前端から後端までの間の位置である。フランジ部148は,本体10の組付状態において,前方ケース部材120と後方ケース部材150との間に挟み込まれる。これにより,枠体140が固定されている。この点については後に詳述する。
【0027】
本体10の正面図を図4に示す。図4に示すように,本体10の前面11は,前面ボタン部材100と,前面カバー105と,枠体140とにより構成されている。前面ボタン部材100が占める面積は,前面カバー105が占める面積と比べて広い。本体10の前面11のほとんどは,前面ボタン部材100の操作面101によって占められている。このため,本体10の前面11における意匠の印象は,ほとんど前面ボタン部材100の操作面101によって構成されている。
【0028】
リモートコントローラ1の図4中A-A位置での側視断面図を図5に示す。図5に示すように,前面ボタン部材100の操作面101は,外周縁部141の前端に比べて後方に位置している。このため,リモートコントローラ1の全体の意匠において,前面ボタン部材100の存在感は控えめである。つまり,高級感を有する枠体140の外周縁部141を際立たせることができる。これにより,リモートコントローラ1は,意匠性が良好である。図5においては,操作面101と外周縁部141の前端との位置の差を,実物と比較して大きく表している。実際には現物を肉眼で見ても分からない程度である。前面カバー105の前面106についても,前面ボタン部材100と同様,外周縁部141の前端に比べて後方に位置している。
【0029】
前面ボタン部材100の操作面101には,外周縁部141を構成するアルミニウムに似た色および質感を有する塗装を施している。前面カバー105についても同様である。このため,前面ボタン部材100および前面カバー105が目立ちすぎてしまうことを抑制できる。これにより,枠体140の外周縁部141をさらに際立たせることができる。さらに,リモートコントローラ1の全体として統一性のある良好な意匠を形成できる。
【0030】
使用者は,本体10を保持部20から取り外すことがある。例えば,電池90を交換する場合などである。このような場合,使用者は誤って本体10を落下させてしまうことが考えられる。しかし,本体10において,操作面101は外周縁部141の前端に比べて後方に位置している。このため,前面11が下方に向いた状態で本体10が落下した場合,枠体140が床に接触する。枠体140を構成するアルミニウムは,前面ボタン部材100を構成する樹脂と比べて破損しにくい。これにより,本体10が落下した際に,本体10の破損を抑制できる。
【0031】
前面ボタン部材100の中には,触覚記号102が設けられているものがある。図5は,触覚記号102が設けられた前面ボタン部材100の位置での断面図である。触覚記号102は,操作面101に設けられた突起である。触覚記号102は,外周縁部141の前端と比べて前方へと突出している。ただし,触覚記号102の突出量は小さい。つまり,触覚記号102の外周縁部141からの出っ張り量は,前面ボタン部材100が操作されていない非操作状態から前面ボタン部材100の操作が検出される操作状態までの移動距離に比べて小さい。このため,前面11を下方に向けて本体10が落下し,触覚記号102が床に接触した場合,前面ボタン部材100が大きな衝撃を受けてしまうことはない。これにより,落下時における本体10の破損を適切に抑制できる。さらに,触覚記号102の小さな出っ張りによって枠体140の高級感が阻害されることはない。
【0032】
触覚記号102は,操作面101に比べて前方へと突出している。このため,操作入力の際に,使用者は触覚記号102へと触れることはあり得る。ただし,触覚記号102は,突出形状から与えられる感触によって,どの機能に対応した操作部であるのかを使用者に伝えるために設けられている。このため,触覚記号102は,操作入力を受ける操作面101には含まれない。
【0033】
通信部134は枠体140の内側に配置されている。一般的に,アルミニウム等の金属は,樹脂と比較して,電波を透過しにくい。このため,通信部134から送信された電波は,枠体140によって阻害されてしまうおそれがある。ただし,通信部134の前方位置に設けられた前面ボタン部材100は,樹脂によって構成されている。このため,通信部134から送信された電波は,前面ボタン部材100を透過できる。つまり,通信部134から送信された電波は,本体10の前方へと適切に伝播する。これにより,通信部134は,便器装置と適切に通信できる。
【0034】
便器装置と電波によって通信することで,例えば,赤外線によって通信する方式を採用した場合に比べて,リモートコントローラ1の意匠性の向上を図ることができる。例えば,赤外線によって通信する場合,通信部を外面に露出させること,外面に赤外線を通過させる部分を設けることなどが必要である。このような赤外線によって通信するための構成を外面に設けた場合,意匠性が低下する可能性がある。これに対し,リモートコントローラ1では,電波によって通信する通信部134を用いている。さらに,通信部134の前面側に位置する前面ボタン部材100を,樹脂によって構成している。これにより,リモートコントローラ1は,高い意匠性を有している。
【0035】
通信部134から送信された電波は,後方へも伝播する。本体10の後方には,保持部20が設けられている。保持部20は,金属によって構成されている。一般的に,金属は,樹脂と比較して,電波を反射しやすい。このため,通信部134から後方へと伝播した電波は,保持部20によって反射される。保持部20によって反射した電波は,本体10の前方に向けて伝播する。つまり,便器装置へと伝播する電波の強度を高めることができる。これにより,通信部134と便器装置との通信の信頼性を向上できる。さらに,保持部20を金属によって構成することで,樹脂によって構成した場合と比べて,保持部20の厚みを薄くできる。このため,リモートコントローラ1の前後方向における厚みを薄くできる。さらに,外周縁部141の後端と壁面との隙間を小さくできる。これにより,リモートコントローラ1は,使用者に,すっきりとした印象を与えることができる。
【0036】
下段ボタン部材100Bの操作面101の上部には,傾斜面103が設けられている。傾斜面103は,上側ほど後方に位置する面である。つまり,傾斜面103は,上段ボタン部材100Aに近い位置ほど後方に位置する面である。この傾斜面103によって,上段ボタン部材100Aと下段ボタン部材100Bとの境界を強調できる。さらに,リモートコントローラ1が設置される環境では,通常,本体10の前面11に,本体10の上方から光が照射される。その光源としては,例えば,便器装置の設置環境における照明を挙げることができる。本体10の上方から光が照射された場合,傾斜面103の位置には,上下方向について幅の広い影が形成される。この傾斜面103によって形成される影によっても,上段ボタン部材100Aと下段ボタン部材100Bとの境界を強調できる。これにより,上段ボタン部材100Aと下段ボタン部材100Bとを,使用者は容易に区別できる。さらに,傾斜面103によって強調される境界の意匠は,直線的である。これにより,使用者に無機質な印象を与えることができる。傾斜面103の無機質な印象と金属性の枠体140の印象との相性は,良好である。下段カバー105Bの前面106の上部についても同様に,上側ほど後方に位置する傾斜面が設けられている。
【0037】
リモートコントローラ1の図4中B-B位置での側視断面図を図6に示す。つまり図6は,枠体140のフランジ部148の位置での断面図である。図6に示すように,フランジ部148は,枠体140の外周縁部141の前端から後端までの間に,外周縁部141の内側に突出して設けられている。フランジ部148の前面には,前方ケース部材120が接触している。前方ケース部材120におけるフランジ部148に対応した位置には,めねじ穴129が形成されている。フランジ部148の後面には,後方ケース部材150が接触している。後方ケース部材150におけるフランジ部148に対応した位置には,皿穴158と貫通穴159とが形成されている。前方ケース部材120と後方ケース部材150とは,固定部品170によって固定されている。つまり,前方ケース部材120と後方ケース部材150とは,これらの間にフランジ部148を挟み込んだ状態で,固定部品170によって固定されている。フランジ部148の固定部品170が通る位置には,貫通孔149が形成されている。貫通孔149の直径は,固定部品170の軸部172の直径と比べて大きい。
【0038】
本実施の形態に係る固定部品170は,皿ねじである。固定部品170の頭部171は,皿穴158内に収容されている。固定部品170の軸部172は,貫通穴159の内側と貫通孔149の内側とを通って,めねじ穴129まで到達している。このため,固定部品170の頭部171は,後方ケース部材150に接触している。固定部品170の軸部172は,前方ケース部材120に接触している。固定部品170は,フランジ部148には接触していない。
【0039】
このような構成であるため,前方ケース部材120と後方ケース部材150との境界は,前後方向について,フランジ部148の位置に形成される。前述したように,フランジ部148は,外周縁部141の前端から後端までの間に位置している。つまり,前方ケース部材120と後方ケース部材150との境界は,外周縁部141の内側に隠れる。このため,本体10の外面には,隙間が少ない。これにより,リモートコントローラ1は,使用者に洗練された印象を与えることができる。
【0040】
本実施の形態において,固定部品170はステンレスによって構成されている。つまり,枠体140とは異なる金属によって構成されている。例えば,固定部品170と枠体140とが接触した場合,異種金属接触腐食が生じてしまう可能性がある。しかし,固定部品170は,枠体140のフランジ部148に接触していない。固定部品170と枠体140との間には,絶縁性を有する樹脂で構成された前方ケース部材120と後方ケース部材150とが設けられている。このため,リモートコントローラ1においては,異種金属接触腐食が生じない。これにより,リモートコントローラ1は,高い意匠性を長期に渡って維持できる。フランジ部148の貫通孔149の直径は,後方ケース部材150の貫通穴159の直径と比べて大きいことが好ましい。これにより,固定部品170と枠体140との接触を,さらに確実に抑制できる。
【0041】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば,リモートコントローラ1の本体10は,外周縁部141を有する枠体140と,前面ボタン部材100とを有する。外周縁部141の前端は,前面側の外周縁を構成している。外周縁部141は,前面側の外周縁から後方に向けて延びている。枠体140は金属によって構成されている。前面ボタン部材100は,前面側における外周縁部141によって囲われた領域内に設けられている。前面ボタン部材100の操作面101は,外周縁部141の前端に比べて後方に位置している。このような前面ボタン部材100の存在感は控えめである。このため,リモートコントローラ1において,高級感を有する枠体140の外周縁部141を際立たせることができる。これにより,高い意匠性を有するリモートコントローラ1が実現されている。
【0042】
本実施の形態は単なる例示にすぎず,本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,保持部20,枠体140の材質は,単なる一例である。つまり,保持部20を,ステンレス以外の他の金属によって構成してもよい。枠体140を,アルミニウム以外の他の金属によって構成してもよい。ここでの金属には,合金も含まれる。
【0043】
枠体140の外周縁部141は,本体10の外周縁の全周を連続して構成していなくてもよい。例えば,使用者から見えにくい本体10の外周縁のうちの下側の部分は,金属製の外周縁部141によって構成されていなくてもよい。具体的には,例えば,枠体140の外周縁部141の下壁部143の一部は無くてもよい。さらに,例えば,枠体140の外周縁部141の下壁部143はすべて無くてもよい。外周縁部141が本体10の外周縁の全周を連続して構成していない場合,枠体140の外周縁部141は,本体10の外周縁の半分以上を構成していることが好ましい。これにより,リモートコントローラ1の外観全体の印象に占める外周縁部141の印象の割合を高く維持することができる。このため,本体10の外周縁のうち,少なくとも上面12と,左側面15と,右側面16とについては,金属製の外周縁部141によって構成されていることが好ましい。
【0044】
上段ボタン部材100Aと下段ボタン部材100Bとの境界を強調する傾斜面は,上段ボタン部材100Aの下部に設けられていてもよい。上段ボタン部材100Aの傾斜面は,下側ほど後方に位置する面とすればよい。つまり,上段ボタン部材100Aの下部に,下段ボタン部材100Bに近い位置ほど後方に位置する傾斜面を設けておけばよい。上段ボタン部材100Aの下部および下段ボタン部材100Bの上部の両方に,傾斜面を設けることとしてもよい。前面カバー105については,前面ボタン部材100の傾斜面と同じ位置に,傾斜面を設けておけばよい。
【0045】
枠体140のフランジ部148は,貫通孔149がなくてもよい。フランジ部148は,前方ケース部材120と後方ケース部材150とに挟み込まれるとともに,固定部品170に接触しない形状であればよい。前面ボタン部材100は,触覚記号102がなくてもよい。前面ボタン部材100の操作面101には,例えば,触覚記号102の他に,点字を設けてもよい。操作面101に点字を設ける場合においても,触覚記号102と同様に考えることができる。保持部20は,例えば,磁力によって本体10を着脱可能に保持できるものであってもよい。通信部134は,便器装置に搭載された機器から送信された信号を受信する機能を有していてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 リモートコントローラ,10 本体,20 保持部,100 前面ボタン,部材100A 上段ボタン部材,100B 下段ボタン部材,101 操作面,103 傾斜面,134 通信部,140 枠体,141 外周縁部,148 フランジ部,120 前方ケース部材,150 後方ケース部材,170 固定部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6